説明

感光性樹脂組成物及び被エッチング基体の製造方法

【課題】十分な薬品耐性を有しながら良好な剥離性をもち、かつ基材上の金属膜との間で良好な接着性を示すような樹脂パターンを得るための感光性樹脂組成物を提供すること、及びそのような樹脂パターンを使用した被エッチング基体の製造方法を提供する。
【解決手段】酸基含有アクリル系樹脂と脂環式エポキシ基含有不飽和化合物との反応により生成したアルカリ可溶性樹脂(A)と、3官能以上の多官能モノマー(B)と、窒素含有単官能モノマー(C)と、光重合開始剤(D)と、を含有する感光性樹脂組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物及び被エッチング基体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル等の表示装置を駆動するための配線や電子部品を実装するためのプリント基板等の配線は、画面の解像度を増大させることに対する要求や電子部品をより高密度に実装することに対する要求が高まっていることから、微細化や高密度化が進んでいる。これらの配線は、均一な金属膜が設けられた基板の表面にエッチングマスクと呼ばれる樹脂パターンをフォトリソグラフィ法により形成し、その後、エッチングマスクに被覆されていない金属膜をエッチング加工により除去することで形成される(例えば、特許文献1を参照)。そして、エッチング加工の終了後、エッチングマスクとして使用された樹脂パターンがアルカリ性の剥離液によって除去され、微細加工された配線が基板上に完成する。
【0003】
ここで、配線に使用される金属は、必要とされる電気的特性等を考慮して様々な種類のものが使用され、必要に応じ、複数の異なる種類の金属が積層された積層金属配線も使用される(例えば、特許文献2を参照)。このように、エッチングの対象となる金属は様々であり、エッチング加工に使用されるエッチング液も酸性やアルカリ性等様々である。また、場合によっては、複数の異なる種類の金属膜が積層された積層金属膜に対して、複数の種類のエッチング液を使用して段階的にエッチング加工を行うこともある。このため、エッチングマスクとして使用される樹脂パターンには、酸性やアルカリ性のエッチング液を使用しても剥離しないような薬品耐性(エッチング耐性)が求められる。
【特許文献1】特開2003−131369号公報
【特許文献2】特開2000−11863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エッチングマスクとして使用される樹脂パターンに薬品耐性を付与するには、樹脂パターン内部の架橋密度を増加させればよい。これにより、樹脂パターンの内部に薬品が浸透することが防止され、樹脂パターンが薬品によって膨潤してエッチング工程の最中に剥離してしまうことが防止される。
【0005】
しかし、樹脂パターンの架橋密度を増加させると、エッチング工程終了後に剥離液を使用して樹脂パターンを剥離しようとした際に、樹脂パターンが容易に剥離しないことにつながる。その場合には、基板上に樹脂パターンの残渣が残留して製品の不良を発生させたり、樹脂パターンを剥離する工程に多くの時間を要して作業効率の低下を招いたりすることとなる。また、樹脂パターンの薬品耐性が高かったとしても、基材上の金属膜と樹脂パターンとの間の密着性が十分でなければ、金属膜と樹脂パターンとの間にエッチング液が侵入することにより、エッチング工程中にエッチングレジストである樹脂パターンが剥離することにつながる。この場合、必要な配線部分までエッチング液によって除去されてしまうこととなるので、製品の不良を発生させることにつながる。
また、プロセス上、ラインの汚染を防ぐために、エッチング液として用いた酸性やアルカリ性の溶液を洗浄・乾燥させる工程が剥離工程前に必要となる。一般的に、純水洗浄の後、エアブローにより乾燥を行うが、エアブロー工程において、密着性が十分でなくパターンが剥がれてしまうと、結局、(ゴミとなって)ライン汚染の要因となるので好ましくない。
【0006】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、十分な薬品耐性を有しながら良好な剥離性をもち、かつ基材上の金属膜との間で良好な接着性を示すような樹脂パターンを得るための感光性樹脂組成物を提供すること、及びそのような樹脂パターンを使用した被エッチング基体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、酸基含有アクリル系樹脂と脂環式エポキシ基含有不飽和化合物との反応により生成したアルカリ可溶性樹脂に、樹脂パターンの架橋密度を増大させる多官能モノマーと、樹脂パターンの架橋密度が過剰に増大することを抑制する単官能モノマーの中でも特に窒素含有単官能モノマーとを組み合わせて、光重合開始剤の存在下でこれらを重合させて樹脂パターンを作製すると、得られた樹脂パターンが良好な薬品耐性と剥離性を示し、かつ基材上の金属膜と樹脂パターンとの間の接着性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の第一の態様は、酸基含有アクリル系樹脂と脂環式エポキシ基含有不飽和化合物との反応により生成したアルカリ可溶性樹脂(A)と、3官能以上の多官能モノマー(B)と、窒素含有単官能モノマー(C)と、光重合開始剤(D)と、を含有する感光性樹脂組成物である。
【0009】
本発明の第二の態様は、基体上に上記の感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂層を形成する工程と、前記感光性樹脂層を選択的に露光した後、現像して樹脂パターンを形成する露光・現像工程と、前記樹脂パターンをマスクとし、前記基体を選択的にエッチングするエッチング工程と、剥離液を用いて前記樹脂パターンを剥離する剥離工程と、を含むことを特徴とする被エッチング基体の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分な薬品耐性を有しながら良好な剥離性をもち、かつ基材上の金属膜との間で良好な接着性を示すような樹脂パターンを得るための感光性樹脂組成物が提供される。また、そのような樹脂パターンを使用した被エッチング基体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではない。
【0012】
<感光性樹脂組成物>
まず、本発明の感光性樹脂組成物について説明する。本発明の感光性樹脂組成物は、酸基含有アクリル系樹脂と脂環式エポキシ基含有不飽和化合物との反応により生成したアルカリ可溶性樹脂(A)と、3官能以上の多官能モノマー(B)と、窒素含有単官能モノマー(C)と、光重合開始剤(D)とを含有する。
【0013】
[酸基含有アクリル系樹脂と脂環式エポキシ基含有不飽和化合物との反応により生成したアルカリ可溶性樹脂(A)]
本発明の感光性樹脂組成物に含まれるアルカリ可溶性樹脂(以下、「(A)成分ともいう。)は、酸基含有アクリル系樹脂(a1)に由来する酸基の一部と脂環式エポキシ基含有不飽和化合物(a2)に由来するエポキシ基とを反応させて、活性エネルギー線による硬化に必要な脂環式エポキシ基含有不飽和化合物(a2)に由来する不飽和基を導入したものである。
それぞれの成分は、次の通りである。
【0014】
[酸基含有アクリル系樹脂(a1)]
酸基含有アクリル系樹脂(以下、「(a1)成分」ともいう。)としては、エチレン性不飽和結合を有する酸と、(メタ)アクリル酸のエステル類、ビニル芳香族化合物、アミド系不飽和化合物、ポリオレフィン系化合物等のモノマーから選ばれる1種又は2種以上とを共重合させて得られた共重合体を用いることができる。具体的には、(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、(無水)マレイン酸等のエチレン性不飽和結合を有する酸を必須成分とし、これに、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸のエステル類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロロスチレン等のビニル芳香族化合物;(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のアミド系不飽和化合物;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のポリオレフィン系化合物のモノマー、及び(メタ)アクリロニトリル、メチルイソプロペニルケトン、酢酸ビニル、ベオバモノマー(シェル化学製品)、ビニルプロピオネート、ビニルピバレート等のその他のモノマーから選ばれる1種又は2種以上のモノマーを共重合させた共重合体が挙げられる。
【0015】
(a1)成分の酸価は、15mgKOH/g以上、40〜500mgKOH/gの範囲であることが好ましい。(a1)成分がこのような酸価を有することにより、(a1)成分と後述する脂環式エポキシ基含有不飽和化合物(a2)とを反応させて(A)成分に所望の量の不飽和基を導入した後においても、(A)成分に十分な量の酸基が残ることになる。これにより、(A)成分は優れた現像性を奏することができる。
【0016】
[脂環式エポキシ基含有不飽和化合物(a2)]
脂環式エポキシ基含有不飽和化合物(以下、「(a2)成分」ともいう。)としては、一分子中に一つのエチレン性不飽和基と脂環式エポキシ基とを有する化合物が好ましい。具体的には、例えば、下記式(I)〜(XV)により表される化合物が挙げられる。
【0017】
【化1】

【0018】
【化2】

【0019】
【化3】

【0020】
ここで、Rは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。Rは、それぞれ独立に炭素数1〜6の2価の脂肪族飽和炭化水素基である。Rは、それぞれ独立に炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。lは、0〜10の整数である。Rとしては、直鎖又は分枝状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Rとしては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、フェニレン基、シクロへキシレン基、−CH−Ph−CH−(Phは、フェニレン基である。)が好ましい。
【0021】
[アルカリ可溶性樹脂(A)の調製]
(A)成分は、(a1)成分と(a2)成分とを反応させて、(a1)成分中に不飽和基を導入することにより調製される。具体的には、例えば、(a1)成分の不活性有機溶剤溶液と(a2)成分とを約20〜120℃で、約1〜5時間反応させることにより調製される。不活性有機溶剤としては、特に限定されないが、アルコール類、エステル類、脂肪族又は芳香族炭化水素類が挙げられる。(a1)成分と(a2)成分との比率は、(a1)成分の合成に用いたモノマーの種類に応じて変えることができるが、(a1)成分に対する(a2)成分の割合が15モル%以上であることが好ましい。(a1)成分に対する(a2)成分の割合が15モル%以上であれば、(A)成分を含有する感光性樹脂組成物を硬化させて得られた樹脂パターンに対して、良好なエッチング耐性を付与することができる。
【0022】
こうして調製された(A)成分の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により求めることができ、その値は、好ましくは1000〜100000、より好ましくは3000〜70000、さらに好ましくは9000〜30000である。(A)成分は、側鎖に二重結合を有するため光重合開始剤の存在下で光により硬化可能である。すなわち、樹脂である(A)成分自体が高い感光性を有しているので、架橋した際の硬化密度を向上することができ、露光による感光性樹脂組成物の硬化の度合いを高くすることができる。また、側鎖に酸基を有するために、アルカリ現像液により現像を行ったり、形成された樹脂パターンをアルカリ性の剥離液により除去したりすることが可能である。このような(A)成分の酸価は、20〜200mgKOH/gであることが好ましく、30〜150mgKOH/gであることがより好ましく、50〜140mgKOH/gがさらに好ましい。下限値以上とすることにより、優れた現像性を得ることができ、上限値以下とすることで、エッチング耐性が良好となり、また優れたパターン形状が得られる。また、(a2)成分に由来する脂環式基を有することにより、エッチング耐性を向上することができる。
【0023】
[3官能以上の多官能モノマー(B)]
本発明の感光性樹脂組成物は、3官能以上の多官能モノマー(以下、「(B)成分」ともいう。)を含む。ここで、「3官能以上の多官能モノマー」とは、光重合開始剤の存在下で光の照射により付加重合可能なエチレン性の二重結合を1分子中に3個以上有するモノマー成分という意味である。本発明の感光性樹脂組成物は、このような多官能のモノマー成分を含むことにより、架橋密度が高く薬品耐性に優れた樹脂パターンを形成する。
【0024】
(B)成分としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上のアクリレート、ポリイソシアネート化合物とヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートモノマーとを反応させて得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、多官能ウレタン(メタ)アクリレートを他の多官能モノマーと組み合わせて用いることにより、樹脂層の柔軟性が向上する。
【0025】
なお、エッチングマスクである樹脂パターンを1〜3μmという薄膜とする場合には、上記例示された(B)成分の中でも、特に6官能以上のモノマーを使用することが好ましい。樹脂パターンが薄膜で形成されている場合、エッチング耐性、すなわち酸やアルカリに対する薬品耐性という観点からは過酷な条件であり、このような条件においては、(B)成分として6官能以上のモノマーが使用されることにより、樹脂パターン内部の架橋密度を高くすることができ、樹脂パターンに良好な薬品耐性を付与することができる。このような6官能以上のモノマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリイソシアネート化合物とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートモノマーとを反応させて得られる多官能ウレタン(メタ)アクリレート、多価アルコールとN−メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物等が挙げられる。中でも、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)は、エッチング耐性の高い強固な樹脂パターンを形成させるために好適に使用される。これらの6官能以上のモノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができるし、上述の3官能以上のモノマーを組み合わせて用いることもできる。
【0026】
上記(B)成分は、(A)成分100質量部に対して、110〜300質量部含有させることが好ましく、115〜200質量部含有させることがより好ましい。下限値以上とすることにより、優れたエッチング耐性を得ることができ、上限値以下とすることにより、エッチング工程終了後にアルカリ性の剥離液により樹脂パターンを良好に除去することができる。
【0027】
[窒素含有単官能モノマー(C)]
本発明の感光性樹脂組成物は、窒素含有単官能モノマー(以下、「(C)成分」ともいう。)を含む。単官能モノマーとは、1個のエチレン性不飽和基を有するモノマーを意味する。本発明の感光性樹脂組成物が単官能である(C)成分を含むことにより、樹脂パターン内部の架橋密度が過剰に高くなることが防止され、樹脂パターンの膜に柔軟性やアルカリ剥離液に対する良好な剥離性を付与することができる。また、(C)成分は単官能であり、かつ分子内に窒素原子を有するものであるので、(C)成分が重合反応によって樹脂分子に取り込まれると、(C)成分に含まれる窒素原子は、樹脂パターン内部に含まれる樹脂の主鎖に対して外側を向くように配置される。このため、(C)成分に含まれる窒素原子は、基材上の金属膜との接着を向上させるために利用されることとなり、樹脂パターンと基材上の金属膜との密着性が向上する。
【0028】
(C)成分は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【化4】

(一般式(1)中、Aは単結合又は炭素数1〜5のアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。R、Rがともに炭化水素基の場合、互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【0029】
上記一般式(1)において、R、Rにおける炭化水素基は、芳香族炭化水素基でも脂肪族炭化水素基であってもよい。炭化水素基の炭素数は、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6である。脂肪族炭化水素基として、より具体的には、直鎖状または分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基として好ましくは炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。また、当該炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O、−O−)、ヒドロキシアルキル基、シアノ基等が挙げられる。
上記一般式(1)において、R及びRが互いに結合して環構造を形成する場合、R及びRによる2価の炭化水素基は、炭素数3〜6であることが好ましく、炭素数4〜5であることがより好ましい。R及びRによる2価の炭化水素基は、酸素原子(−O−)、窒素原子(−N=、−NH−)を有していてもよい。
【0030】
(C)成分は、当該(C)成分を重合させて得られたホモポリマーのガラス転位温度(Tg)が80℃以上となるようなモノマーであることが好ましい。既に述べたように、(C)成分は、樹脂パターンの架橋密度が高くなることを防止する役割も有する成分であり、架橋密度という観点からは薬品耐性を低下させる方向に作用する。しかし、(C)成分がこのようなTg条件を満たすことにより、薬品に対する堅牢性を樹脂パターンに付与することができ、結果として、樹脂パターンの薬品耐性が向上し、エッチング耐性が向上することになる。このような(C)成分としては、アクリルアミド(ホモポリマーのTg:179℃、以下同様)、メタアクリルアミド(171℃)、N−メチルアクリルアミド(171℃)、ジメチルアクリルアミド(119℃)、N−イソプロピルアクリルアミド(134℃)、アクリロイルモルホリン(145℃)、N−tert−ブチルアクリルアミド(135℃)、N−フェニルアクリルアミド(160℃)、ダイアセトンアクリルアミド(86℃)、アクリロイルピペリジン(116℃)、ジエチルアクリルアミド(81℃)、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド(98℃)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(134℃)等が例示される。これらの中でも、ホモポリマーのTgが140℃以上となるアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−フェニルアクリルアミドがより好ましく、アクリロイルモルホリンが最も好ましい。
【0031】
上記(C)成分は、(A)成分100質量部に対して、10〜80質量部であることが好ましく、20〜75質量部がより好ましく、30〜70質量部がさらに好ましい。下限値以上とすることにより、良好な柔軟性、剥離性及び基材への密着性を樹脂パターンに付与することができ、上限値以下とすることにより、樹脂パターンの架橋密度が過剰に低下することが防止されて良好な薬剤耐性が得られる。
【0032】
[光重合開始剤(D)]
本発明の感光性樹脂組成物に含まれる光重合開始剤(以下、「(D)成分」ともいう。)としては、特に限定されないが、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾル−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−ベンゾイル−4’−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ−2−エチルヘキシル安息香酸、4−ジメチルアミノ−2−イソアミル安息香酸、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2−クロロチオキサンテン、2,4−ジエチルチオキサンテン、2−メチルチオキサンテン、2−イソプロピルチオキサンテン、2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンパーオキシド、2−メルカプトベンゾイミダール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパン、p−メトキシトリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(5−メチルフラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(フラン−2−イル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−[2−(3,4−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−n−ブトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(3−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−トリクロロメチル−6−(2−ブロモ−4−メトキシ)スチリルフェニル−s−トリアジン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
(D)成分の含有量は、(A)〜(C)成分の含有量にあわせて適宜調整すればよいが、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましく、5〜25質量部がより好ましく、10〜20質量部がさらに好ましい。上記の範囲とすることにより、十分な耐熱性、耐薬品性を得ることができ、また塗膜形成能を向上させ、光硬化不良を抑制することができる。
【0034】
[増感剤(E)]
本発明の感光性樹脂組成物は、チオール基を有する化合物を増感剤(以下、「(E)成分ともいう。)として含んでもよい。(E)成分は、紫外線が照射されるとエン−チオール反応によりSラジカルを発生させる。Sラジカルによる重合反応は、酸素阻害の影響を受けずに感光性樹脂組成物の硬化を促進させるので、現像におけるパターンの残膜率を向上させ、樹脂パターンの薬品耐性を向上させることができる。このような(E)成分として、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)等のエステル類;2−メルカプトエタノール、1−チオグリセロール、グリセロールモノチオグリコレート、4−メルカプトフェノール等のアルコール類;チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、メルカプトイソ酪酸、メソ−2,3−ジメルカプトイソ酪酸、チオサリチル酸等のカルボン酸類;2−アミノエタンチオール、2−アミノベンゼンチオール、4−アミノベンゼンチオール等のアミン類;及びシステイン等が挙げられる。
【0035】
感光性樹脂組成物中の(E)成分の含有量は、(A)〜(C)成分の含有量にあわせて適宜調整すればよいが、アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜25質量部がより好ましく、0.8〜20質量部がさらに好ましく、1〜15質量部が特に好ましい。上記の範囲とすることにより、現像性及びエッチング耐性を向上させることができる。
【0036】
[モノマー成分]
本発明の感光性樹脂組成物は、上記各成分の他に、各種モノマー成分を含有させることができる。このようなモノマー成分としては、エチレン性不飽和基を有する化合物が挙げられ、1個のエチレン性不飽和基を有する単官能モノマー(ただし(C)成分を除く)と、2個のエチレン性不飽和基を有する多官能モノマーとが挙げられる。これらの成分は、重合反応性やモノマーの粘度等、感光性樹脂組成物に要求される特性に合わせて1種又は2種以上が適宜選択して使用される。このようなモノマー成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して80質量部以下であることが好ましく、1〜60質量部であることがより好ましい。上限値以下とすることにより、樹脂パターンの内部で十分な架橋密度が維持され、酸性やアルカリ性のエッチング液への耐性を向上させることができる。
【0037】
[有機溶剤]
本発明の感光性樹脂組成物は、塗布性の改善、粘度調整のため、有機溶剤を含むことが好ましい。この有機溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、蟻酸n−ペンチル、酢酸i−ペンチル、プロピオン酸n−ブチル、酪酸エチル、酪酸n−プロピル、酪酸i−プロピル、酪酸n−ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n−プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0038】
有機溶剤の含有量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定される。この際、固形分濃度は5〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましい。
【0039】
[その他の成分]
本発明の感光性樹脂組成物は、その他の成分として、必要に応じて消泡剤、界面活性剤等の添加剤を含有させることができる。消泡剤としては、特に限定されず、シリコーン系、フッ素系化合物等が挙げられる。界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の化合物が挙げられる。
【0040】
<被エッチング基体の製造方法>
次に、上記本発明の感光性樹脂組成物を使用した被エッチング基体の製造方法について説明する。上記感光性樹脂組成物を使用した被エッチング基体の製造方法も本発明の一つである。本発明の被エッチング基体の製造方法は、(1)基体上に上記本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂層を形成する工程と、(2)前記感光性樹脂層を選択的に露光した後、現像して樹脂パターンを形成する露光・現像工程と、(3)前記樹脂パターンをマスクとし、前記基体を選択的にエッチングするエッチング工程と、(4)剥離液を用いて前記樹脂パターンを剥離する剥離工程と、を含む。なお、本発明において「基体」とは、ガラス等の基板上にエッチングの対象となる膜が形成されたものを意味する。エッチングの対象となる膜としては、金属膜が例示される。
【0041】
まず、(1)基体上に上記本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂層を形成する工程について説明する。
【0042】
この工程では、上記本発明の感光性樹脂組成物を基体上に塗布し、感光性樹脂層を形成する。
基体を作成するための基板としては、多くの場合ガラス基板が使用される。ガラス基板には、エッチングの対象となる金属膜が蒸着法あるいはスパッタリング法等により形成され、エッチングの対象となる基体が作製される。金属膜を形成する金属には、金属の他、導電性を有する金属酸化物等が含まれ、例えば、Ni、Cr、Au、Mo、W、Pt、Ti、Cu、Pd、Ag等の金属、これらの金属の合金、In−SnO等の金属酸化物、ポリシリコン等の半導体等が挙げられる。金属膜は単層でもよいが、本発明は、エッチング条件の異なる複数の金属膜からなる複合金属膜を選択的にエッチングすることが可能である点も特徴の一つである。このような複合金属膜としては、第1のCr(クロム)層、Cu(銅)層、第2のCr層が形成されたCr/Cu/Cr積層膜が例示される。
【0043】
上記基体に、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター、スリットコーター等の接触転写型塗布装置やスピンナー(回転式塗布装置)、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いて感光性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて溶媒を除去することにより、感光性樹脂層が基体上に形成される。
【0044】
感光性樹脂層の厚さは、特に限定されないが、エッチングマスクとなる樹脂パターンの厚さが1〜5μmになるようにすることが好ましい。下限値以上とすることにより、樹脂パターンに良好な薬品耐性を付与することができ、上限値以下とすることにより、樹脂パターンに良好な剥離性を付与することができる。
【0045】
次に、(2)上記感光性樹脂層を選択的に露光した後、現像して樹脂パターンを形成する露光・現像工程について説明する。
【0046】
上記感光性樹脂層を選択的に露光するには、遮光パターンを介して、紫外線、エキシマレーザー等の活性エネルギー線を照射して露光すればよい。露光には、高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯等の紫外線を発する光源を用いることができる。照射するエネルギー線量は、感光性樹脂組成物の組成によっても異なるが、例えば5〜2000mJ/cm程度が好ましい。
【0047】
次に、露光後の樹脂層を現像液で現像することにより、樹脂パターンを作成する。現像方法は、特に限定されず、例えば浸漬法、スプレー法等を用いることができる。現像液の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機系のものや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア、4級アンモニウム塩等の水溶液が挙げられる。そして、現像後の樹脂パターンにポストベークを施して加熱硬化してもよい。ポストベークの温度は、150〜250℃が好ましい。
【0048】
次に、(3)上記樹脂パターンをマスクとし、上記基体を選択的にエッチングするエッチング工程について説明する。
【0049】
エッチングの方法としては、例えば、一般的に行われている、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法が挙げられる。ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性タイプ又はアルカリ性タイプのものを適宜選択すればよい。酸性タイプのエッチング液としては、塩酸、硫酸、フッ酸、リン酸等の酸性成分単独の水溶液、酸性成分と塩化第2鉄、フッ化アンモニウム、過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせたものを使用してもよい。また、アルカリ性タイプのエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドのような有機アミンの塩等のアルカリ成分単独の水溶液、アルカリ成分と過マンガン酸カリウム等の塩の混合水溶液等が例示される。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせたものを使用してもよい。
【0050】
本発明の被エッチング基体の製造方法において、特に限定されないが、エッチング液の温度は45℃以下であることが好ましい。本発明でエッチングマスクとして使用される樹脂パターンは、上述した本発明の感光性樹脂組成物を使用して形成されることにより、このような温度域における酸性及びアルカリ性のエッチング液に対して特に優れた耐性を発揮する。したがって、エッチング工程中に樹脂パターンが剥離することが防止され、樹脂パターンの存在しない部分が選択的にエッチングされることになる。
【0051】
また、本発明の被エッチング基体の製造方法においてエッチングマスクとして使用される樹脂パターンが上記のように高い薬品耐性を有することから、例えば、複数種類の金属膜が基材上に形成され、これらの金属膜に対して、順次異なる種類のエッチング液を使用して繰り返しエッチングが行われるような過酷な条件においても、本発明の被エッチング基体の製造方法は好ましく適用される。
【0052】
このような例としては、上述の、第1のCr層、Cu層、第2のCr層が順次形成された基板に対してエッチング加工を施す場合が挙げられる。この種の基板では、例えば、最表面に位置する第2のCr層及びCu層が酸性のエッチング液を用いてエッチングされ、その後、第1のCr層がアルカリ性のエッチング液を用いてエッチングされる。本発明の被エッチング基体の製造方法によれば、このように、酸性条件におけるエッチング工程及びアルカリ性条件におけるエッチング工程を必要とするような基体に対して、樹脂パターンが剥離されることなくエッチングを行うことができる。
上記エッチング後、ライン汚染を防ぐために必要に応じて、洗浄工程・乾燥工程を行ってもよい。洗浄工程については、例えば常温で純水により10〜300秒間基板を洗浄して行い、乾燥工程については、エアブローを使用して、エアブロー圧(0.1〜5kg/cm程度)を適宜調整し行えばよい。
【0053】
次に、(4)剥離液を用いて上記樹脂パターンを剥離する剥離工程について説明する。
【0054】
樹脂パターンの剥離方法としては、特に限定されないが、例えば、30〜80℃、好ましくは50〜80℃にて攪拌中の剥離液に基板を5〜30分間浸漬する方法が挙げられる。本発明でエッチングマスクとして使用される樹脂パターンは、上述のように45℃以下において優れた薬液耐性を示すものであるが、薬液温度が50℃以上になるとアルカリ性の剥離液により膨潤する性質を示す。このような性質により、50〜80℃の剥離液を使用して剥離工程を行うと工程時間が短縮され、樹脂パターンの剥離残渣が少なくなるという利点がある。すなわち、上記エッチング工程と剥離工程との間で薬液温度に差を設けることにより、本発明でエッチングマスクとして使用される樹脂パターンは、エッチング工程において良好な薬液耐性を発揮する一方で、剥離工程において良好な剥離性を示すことになり、薬液耐性と剥離性という、相反する特性を両方とも満足することができる。
剥離液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機アルカリ成分や、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等の有機アルカリ成分を、水、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、又はこれらの混合溶液に溶解させたものが挙げられる。上記の剥離液を使用し、スプレー法、シャワー法、パドル法等により剥離してもよい。
【実施例】
【0055】
本発明について、以下の実施例によりさらに具体的に説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明について例示するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0056】
<感光性樹脂組成物の調製>
表1及び表2に従い、実施例1〜14及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物を調製した。表1に記載された各成分は、以下の通りである。なお、アルカリ可溶性樹脂(A)は、45質量%のDPGME(ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)溶液を作製して感光性樹脂組成物の調製に使用した。表1及び表2に記載した数値は、質量部を表す。ここで、表1においてアルカリ可溶性樹脂(A−1又はA−2)100質量部とは、アルカリ可溶性樹脂の固形分が100質量部であるという意味である。
【0057】
アルカリ可溶性樹脂(A)
A−1:サイクロマーACA Z250(ダイセル化学工業株式会社製、質量平均分子量20000、酸価101.7mgKOH/g、酸基含有アクリル系樹脂と脂環式エポキシ基含有不飽和化合物との反応により生成した下記式(2)、式(3)及び式(4)で表される構成単位からなる樹脂である。)
【化5】

[式(2)中、Rはアルキル基またはヒドロキシアルキル基を表し、式(2)、式(3)及び式(4)中、Xは水素原子又はメチル基を表す。]
A−2:ベンジルメタクリレート及びメタクリル酸の共重合体(ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=80:20(質量比)、質量平均分子量60000)
【0058】
モノマー(B)
B−1:DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、6官能モノマー)
B−2:CN9006(サートマー社製、ウレタンアクリレート、6官能モノマー)
【0059】
窒素含有単官能モノマー(C)
C−1:アクリロイルモルホリン
【0060】
その他のモノマー
B’−1:2−フェノキシエチルアクリレート
B’−2:イソボルニルアクリレート
【0061】
光重合開始剤(D)
IR369:イルガキュア369(チバスペシャリティケミカルズ社製)
EAB−F:4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン(保土ヶ谷化学工業株式会社製)
【0062】
増感剤(E)
E−1:トリメチロールプロパントリメルカプトプロピオネート
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
<被エッチング基体の作成>
スパッタリング法により、第2のCr層/Cu層/第1のCr層が積層されたガラス基板(厚さ1.8mm)を作製し、評価基板とした。評価基板において、第2のCr層及び第1のCr層がそれぞれ最表面及び最下層に位置し、それらの中間にCu層が位置する。各層の厚さは、第2のCr層が100nm、Cu層が2.0μm、第1のCr層が50nmである。この評価基板に対して、スピンコーターを用いて感光性樹脂組成物を塗布し、65℃で6分間乾燥して2.5μmの膜厚を有する感光性樹脂層を有する評価基板を得た。次いで、これらの感光性樹脂層にネガマスクを介して露光量25mJ/cm(増感剤を含む組成物)または50mJ/cm(増感剤を含まない組成物)で紫外線(光源:超高圧水銀灯)を選択的に照射し、現像液として0.25質量%の炭酸ナトリウム溶液を用いて30℃にて120秒間スプレー現像することにより樹脂パターンを形成し、純水洗浄、エアブロー乾燥した。その後、形成された樹脂パターンに対して露光量300mJ/cmで紫外線(光源:超高圧水銀灯)を照射して後露光を施した。
【0066】
次に、樹脂パターンが形成された評価基板に対してエッチングを施した。まず、約15質量%の塩酸水溶液からなる35℃の酸性エッチング液に評価基板を5分間浸漬させ(※耐性評価のため、通常プロセスよりも長い浸漬時間とする)、最表面に位置する第2のCr層をエッチングし、純水で洗浄した。その後、0.3/0.3/0.3(mol/L比)のHCl/FeCl/Cu2+水溶液を調製して酸性エッチング液とし、30℃の当該酸性エッチング液に評価基板を浸漬させ、揺動させながらCu層を60秒間エッチングし、純水で洗浄した。最後に、5質量%のNaSiO水溶液に5質量%の過マンガン酸カリウムを添加した40℃のアルカリ性エッチング液に評価基板を10分間浸漬させ、最下層に位置する第1のCr層をエッチングし、純水で洗浄した。
【0067】
エッチング工程終了(純水による洗浄(23℃にて、60秒間)工程を含む)後、エアガンによるエアブロー乾燥を行った。その後アルカリ性の剥離液を使用して、評価基板上に存在する樹脂パターンを剥離させた。剥離液には、60℃に加温した12質量%の水酸化ナトリウム水溶液を使用した。
【0068】
<評価>
実施例1〜14及び比較例1〜3の感光性樹脂組成物のそれぞれについて、上記のように、2.5μmの膜厚の樹脂パターンを有する評価用基板を作製し、エッチングを行って現像後の残膜率、薬液に対する耐性(エッチング耐性)、エッチング終了後の洗浄・エアブロー工程後のパターン密着性、エッチング終了後の樹脂パターンの剥離に要した時間、及び樹脂パターン剥離後の残渣の有無を評価した。評価結果を表3及び表4に示す。なお、各項目の評価方法及び評価基準は、以下の通りである。
【0069】
[現像時残膜性]
感光性樹脂層を露光してスプレー現像した後の樹脂パターン膜の残存率により評価した。
○:光硬化した樹脂パターンの現像後の残膜率が90%以上
△:光硬化した樹脂パターンの現像後の残膜率が50%以上、90%未満
×:光硬化した樹脂パターンの現像後の残膜率が50%未満
【0070】
[酸・アルカリ耐性]
第2のCr層、Cu層及び第1のCr層のエッチング工程終了後における樹脂パターンの剥離状態を観察することにより評価した。
◎:エッチング工程終了後の樹脂パターンの剥離が観察されない。
○:エッチング工程終了後の樹脂パターンの剥離が殆ど観察されない。
△:エッチング工程中に、樹脂パターンの一部(面積率で30%未満)に剥がれが発生した。
×:エッチング工程中に、樹脂パターンの大部分(面積率で30%以上)に剥がれが発生した。
【0071】
[エッチング・エアブロー後パターン密着性]
エッチング工程終了後、純水による洗浄(23℃にて、60秒間)及びエアガンによるエアブロー乾燥を行った後のパターン密着性を評価した。

◎:露光量25mJ/cm、ライン幅20μmピッチ80μmのパターン寸法において、パターン剥離は観測されず密着している。
○:露光量50mJ/cm以下、ライン幅30μmピッチ90μmのパターン寸法において、パターン剥離は観測されず密着している。
×:露光量25mJ/cm以下、ライン幅30μmピッチ90μmのパターン寸法において、パターン剥離がみられる。
【0072】
[エッチング・エアブロー後パターン直線性]
エッチング工程終了後、純水による洗浄(23℃にて、60秒間)およびエアガンによるエアブロー乾燥を行った後の、パターン直線性を以下の基準で評価した。なお、評価に使用したパターンの寸法は、ライン幅30μmピッチ90μmである。
○:パターンの波うち形状がみられず、直線性が高い。
△:パターンに若干の波うち形状がみられる。
×:パターンに波うち形状がみられ、直線性が低い。
【0073】
[剥離時間]
エッチング工程終了後、アルカリ性の剥離液による樹脂パターンの剥離に要した時間により評価した。
○:剥離に要した時間が120秒以下
×:剥離に要した時間が120秒を超える
【0074】
[剥離性]
アルカリ性の剥離液による樹脂パターンの剥離後において、基板上に残存する樹脂パターンの残渣を観察して評価した。
○:剥離後に樹脂パターンの残渣が存在しない。
△:剥離後に樹脂パターンが僅かに残存する。
×:剥離後に樹脂パターンが大量に残存する。
【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
表4について、比較例1は、酸アルカリ耐性が不十分だったので、エッチング工程後の評価は行っていない。また、比較例2〜5は、エッチング・エアブロー工程後のパターン密着性が不十分で、一部のパターンが剥がれたため、その後の剥離工程の評価は行っていないが、残ったパターンにおけるパターン直線性について、参考までに()書きで併記した。
【0078】
表3及び表4に記載されたように、実施例1〜8は、比較例1〜5に対して良好な酸・アルカリ耐性(薬品耐性)を有し、エッチング工程後の洗浄・エアブロー工程においても十分なパターン密着性を有することが確認された。このことから、酸基含有アクリル系樹脂と脂環式エポキシ基含有不飽和化合物との反応により生成したアルカリ可溶性樹脂や窒素含有単官能モノマーを感光性樹脂組成物に使用することにより、樹脂パターンの薬品耐性が向上することが理解される。一般に、単官能モノマーを添加すると、硬化した後の樹脂内部の架橋密度が低下するので、この点では薬品耐性の面で不利になると予想されるが、本発明で使用される窒素含有単官能モノマーを使用すると、そのような予想に反して上記のように薬品耐性及び密着性が向上する。これは、モノマーに含まれる窒素原子によって基材の表面に対する樹脂パターンの密着性が向上したためと推測される。この点、窒素原子を含まない単官能モノマーを用いた、比較例4及び5はエッチング・エアブロー工程後の密着性が不十分である。
ところで、既に述べたように、多官能モノマーを大量に使用すると、樹脂内部の架橋密度が向上するので、薬品耐性の面では有利だが、剥離性の面で不利となる。この点、本発明の感光性樹脂組成物のように窒素含有単官能モノマーを使用することにより、樹脂内部の架橋密度を過剰に高くすることなく、樹脂パターンに薬品耐性及び密着性を付与することができるので、薬品耐性及び密着性と、剥離性という、相反する性能を両立することができることがわかる。
【0079】
また、実施例7と比較例3とを比較すると、窒素含有単官能モノマーが存在することにより樹脂パターンの酸・アルカリ耐性が向上することが理解される。窒素含有単官能モノマーが存在することにより樹脂パターンの酸・アルカリ耐性が向上したのは、樹脂パターンと基材との密着性が向上したことにより樹脂パターンと基材との間にエッチング液が侵入することが防止されたためと考えられる。
【0080】
また、実施例6と実施例7とを比較すると、両者はいずれもエッチング工程後の樹脂パターンの剥離が無いことが理解される。しかし、実施例6は、実施例7に比較して、低露光量でのエッチング・エアブロー後のパターン密着性に優れることがわかる。このことについては、増感剤を添加することにより感度が良好となり重合反応が十分に起こるので、より小さな寸法のパターンでもエッチング時の薬液による影響を受けにくくなった結果だと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸基含有アクリル系樹脂と脂環式エポキシ基含有不飽和化合物との反応により生成したアルカリ可溶性樹脂(A)と、3官能以上の多官能モノマー(B)と、窒素含有単官能モノマー(C)と、光重合開始剤(D)と、を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記窒素含有単官能モノマー(C)が下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【化1】

(一般式(1)中、Aは単結合又は炭素数1〜5のアルキレン基を示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基を示す。R、Rがともに炭化水素基の場合、互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【請求項3】
前記窒素含有単官能モノマー(C)の含有量が、前記アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して10〜60質量部であることを特徴とする請求項1又は2記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記多官能モノマー(B)が6官能以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記多官能モノマー(B)の含有量が、前記アルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対して110〜300質量部であることを特徴とする請求項4記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、増感剤(E)を含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
基体上に請求項1から6のいずれか1項記載の感光性樹脂組成物を塗布し、感光性樹脂層を形成する工程と、
前記感光性樹脂層を選択的に露光した後、現像して樹脂パターンを形成する露光・現像工程と、
前記樹脂パターンをマスクとし、前記基体を選択的にエッチングするエッチング工程と、
剥離液を用いて前記樹脂パターンを剥離する剥離工程と、を含むことを特徴とする被エッチング基体の製造方法。
【請求項8】
前記基体は、基板上に第1のCr層、Cu層、第2のCr層が順次形成されたものであり、
前記エッチング工程は、酸性のエッチング液を用いて前記第2のCr層を選択的にエッチングする工程と、酸性のエッチング液を用いて前記Cu層を選択的にエッチングする工程と、アルカリ性のエッチング液を用いて前記第1のCr層を選択的にエッチングする工程と、を含むことを特徴とする請求項7記載の被エッチング基体の製造方法。

【公開番号】特開2010−152155(P2010−152155A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331091(P2008−331091)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】