説明

成膜装置、成膜方法及び電子デバイス

【課題】塗布対象物上に形成された塗布膜の膜厚の均一性の低下を抑制できる成膜装置、成膜方法及び電子デバイスを提供する。
【解決手段】実施形態によれば、塗布対象物を載せるステージと、塗布対象物の表面の法線方向を回転軸としてステージを回転する回転機構と、塗布対象物の表面に塗布材料を供給する塗布ノズルと、ステージ上における塗布ノズルの位置を塗布対象物の表面に沿って移動させる塗布移動機構と、回転機構と塗布移動機構を制御して、ステージを回転させると共にステージの回転中心部と外縁部間で塗布ノズルの位置を移動させながら、塗布ノズルを制御して塗布対象物の表面に塗布材料を塗布させる制御部と、塗布対象物上に塗布材料を塗布して形成された塗布膜の表面に照射する音波を発生する音波発生装置とを備え、音波を塗布膜の表面に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、塗布対象物上に塗布材料を塗布して塗布膜を形成する成膜装置、成膜方法及び電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造分野などにおいてフォトレジスト膜や保護膜などの塗布膜を形成するために、スピンコート法によって塗布対象物上に塗布材料を塗布する方法が採用されている。スピンコート法は、ステージ上に固定した塗布対象物の中央に塗布材料を塗布した後、ステージを高速で回転させる方法である。塗布対象物上の塗布材料が遠心力によって塗布対象物の全面に塗り広げられて、塗布膜が形成される。
【0003】
しかし、スピンコート法では、塗布材料が飛散するため、材料使用効率は30%前後と低い。このため、塗布対象物上に渦巻状に塗布材料を塗布することで、塗布材料の使用効率を向上させるスパイラル塗布法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−310155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スパイラル塗布法には、塗布対象物上に形成された塗布膜の膜厚が不均一になる問題がある。即ち、塗布対象物上で塗布材料の一部が重なるような塗布ピッチで塗布ノズルを移動させて塗布膜を形成することにより、塗布膜の膜厚が塗布ピッチで周期的に変化する膜厚むら(以下において、「塗布ピッチむら」という。)が発生する。或いは塗布対象物上で塗布材料を一定の間隔で配置しても、同様に塗布ピッチむらが発生する。また、塗布を開始する塗布対象物の中心部では周速がゼロであるために塗布膜の膜厚が厚いという膜厚むら(以下において、「開始点むら」という。)が発生する。更に、塗布膜の周辺部では乾燥速度が速いために、塗布膜に凸形状(クラウン)が発生する傾向がある。
【0006】
本発明は、塗布対象物上に形成された塗布膜の膜厚の均一性の低下を抑制できる成膜装置、成膜方法及び電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、(イ)塗布対象物を載せるステージと、(ロ)塗布対象物の表面の法線方向を回転軸としてステージを回転する回転機構と、(ハ)塗布対象物の表面に塗布材料を供給する塗布ノズルと、(ニ)ステージ上における塗布ノズルの位置を塗布対象物の表面に沿って移動させる塗布移動機構と、(ホ)回転機構と塗布移動機構を制御して、ステージを回転させると共にステージの回転中心部と外縁部間で塗布ノズルの位置を移動させながら、塗布ノズルを制御して塗布対象物の表面に塗布材料を塗布させる制御部と、(ヘ)塗布対象物上に塗布材料を塗布して形成された塗布膜の表面に照射する音波を発生する音波発生装置とを備え、音波を塗布膜の表面に照射する成膜装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図2】第1の実施形態に係る成膜装置の塗布ノズルの軌道例を示す模式図である。
【図3】第1の実施形態に係る成膜装置を用いた成膜方法を説明するためのフローチャートである。
【図4】第1の実施形態に係る成膜装置を用いた塗布膜の平坦化を説明するための模式図であり、図4(a)は平坦化前の塗布膜の形状を示し、図4(b)は平坦化後の塗布膜の形状を示す。
【図5】第1の実施形態に係る成膜装置を含む成膜システムの構成を示す模式図である。
【図6】図5に示した成膜システムを用いた製造工程を説明するためのフローチャートである。
【図7】塗布膜の周辺部に凸形状が発生する様子を示す模式図である。
【図8】第1の実施形態の変形例に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図9】第2の実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図10】第2の実施形態の第1の変形例に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図11】第2の実施形態の第2の変形例に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図12】第3の実施形態に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図13】第3の実施形態に係る成膜装置による塗布膜の平坦化方法の例を説明するための模式図である。
【図14】第3の実施形態の第1の変形例に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図15】第3の実施形態の第2の変形例に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図16】第3の実施形態の第2の変形例に係る成膜装置による塗布膜の平坦化方法の例を説明するための模式図である。
【図17】第3の実施形態の他の変形例に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【図18】第3の実施形態の他の変形例に係る成膜装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、図面を参照して、第1乃至第3の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る成膜装置1は、図1に示すように、塗布対象物100を載せるステージ10と、塗布対象物100の表面の法線方向を回転軸としてステージ10を回転する回転機構40と、塗布対象物100の表面に塗布材料210を供給する塗布ノズル20と、ステージ10上における塗布ノズル20の位置を塗布対象物100の表面に沿って移動させる塗布移動機構50と、回転機構40と塗布移動機構50を制御して、ステージ10を回転させると共にステージ10の回転中心部と外縁部間で塗布ノズル20の位置を移動させながら、塗布ノズル20を制御して塗布対象物100の表面に塗布材料210を塗布させる制御部30と、塗布対象物100上に塗布材料210を塗布して形成された塗布膜200の表面に照射する音波SWを発生する音波発生装置60とを備え、音波SWを塗布膜200の表面に照射する。以下において、塗布膜200が形成される塗布対象物100の表面の法線方向をz方向とし、図1の紙面の左右方向をx方向、紙面に対して垂直な方向をy方向とする。
【0011】
塗布対象物100は、例えばウェハなどの基板であり、成膜装置1によって塗布対象物100上にフォトレジスト膜や保護膜などの塗布膜200が成膜される。ステージ10は塗布対象物100を固定する固定機構を有しており、この固定機構によってステージ10上に塗布対象物100が固定される。固定機構は、例えばエアー吸着機構などが採用可能である。
【0012】
塗布ノズル20には、チューブやパイプなどの材料供給管22を介して、塗布材料210を貯蔵する材料タンク21から塗布材料210が送られる。なお、材料供給管22には、材料タンク21から塗布ノズル20に送られる塗布材料210の量を調整する塗布量調整装置23が設置されている。塗布量調整装置23により、塗布ノズル20から塗布対象物100の表面に供給される塗布材料210の量が調整される。塗布量調整装置23は、制御部30により制御される。
【0013】
塗布ノズル20が塗布対象物100の表面に塗布材料210を供給する場合に、回転機構40と塗布移動機構50を制御することにより、回転するステージ10の回転中心部から外縁部に向けて直線的に塗布ノズル20が移動する。例えば図2に示すように、円形のステージ10に投影される塗布ノズル20の軌道は渦巻状である。
【0014】
なお、図1では、ステージ10の上方に設置された支持台5に取り付けられた塗布移動機構50によって、位置が固定されたステージ10上で塗布ノズル20をx方向及びy方向に移動させる例を示した。しかし、位置を固定した塗布ノズル20の下でステージ10を移動させてもよい。塗布移動機構50には、例えばリニアモータを駆動源とするリニアモータ移動機構やモータを駆動源とする送りネジ移動機構などが採用可能である。なお、塗布移動機構50によって、塗布ノズル20はz方向にも移動可能である。このため、塗布ノズル20と塗布対象物100の表面との間隔を、制御部30によって調整できる。
【0015】
音波発生装置60は、音波振動子61及び振動制御装置62を備える。音波振動子61は電気エネルギーを音波機械振動に変換する素子である。振動制御装置62は、所定周波数で音波振動子61を振動させるために、所定の駆動電圧を音波振動子61に供給する。
【0016】
図1に示した成膜装置1では、音波振動子61で発生した音波振動が、音波振動子61に接続された音波ホーン65に伝達される。音波ホーン65は伝達された音波振動を増幅し、音波ホーン65の先端は音波の周波数で振動する。その結果、音波ホーン65は、音波発生装置60が生成する音波を塗布膜200の表面に照射する。
【0017】
支持台5に取り付けられたホーン移動機構66によって、ステージ10上における音波ホーン65の位置は、塗布対象物100の表面に沿ってx方向及びy方向に移動させられる。ホーン移動機構66は、制御部30によって制御される。ホーン移動機構66には、例えばリニアモータ移動機構や送りネジ移動機構などが採用可能である。また、ホーン移動機構66によって、音波ホーン65はz方向にも移動可能である。このため、音波ホーン65と塗布膜200の表面との間隔を、制御部30によって調整できる。なお、音波ホーン65の位置を固定して、ステージ10を移動させてもよい。
【0018】
図1に示した成膜装置1を用いて形成される塗布膜200は、塗布膜200の表面に音波SWが照射されることにより、膜厚が均一化される。これは、音圧によって塗布膜200の表面に形成された凸部が平坦化されるため、及び、音波エネルギーが塗布膜200に吸収されることにより塗布膜200が発熱し、塗布膜200の粘度が低下するためである。音波SWの周波数や強度は、塗布材料210の種類に応じて選択される。
【0019】
図3に、図1に示した成膜装置1を用いて塗布膜200を形成する方法の例を示す。
【0020】
図3のステップS1において、ギャップ調整が行われる。具体的には、図示を省略する高さセンサが塗布対象物100を載せたステージ10上を移動し、塗布対象物100の表面粗さについてのプロファイル、即ち、高さプロファイルが取得される。次いで、取得された高さプロファイルを用いて、塗布ノズル20と塗布対象物100の表面との垂直方向(z方向)の距離(以下において、「ギャップ」という。)を設定値に合わすために、例えば設定値と高さプロファイルの平均値との差分が補正量として算出される。そして、算出された補正量だけ、塗布ノズル20と塗布対象物100の表面とのギャップが調整される。なお、塗布対象物100毎のギャップのばらつきが小さい場合には、ギャップ調整は初回のみ行われ、その後は省略される。
【0021】
ステップS2において、回転機構40によってステージ10を回転させながら、塗布移動機構50によって塗布ノズル20を塗布対象物100の表面に沿ってステージ10の回転中心部から外縁部に向けて直線的に移動させる。このとき、塗布ノズル20は、移動しながら塗布材料210を連続して塗布対象物100の表面に吐出し、塗布対象物100の表面上に塗布材料210を塗布する(スパイラル塗布)。これにより、塗布対象物100の表面上に塗布膜200形成される。
【0022】
ステップS3において、塗布膜200の仮乾燥が行われる。仮乾燥では、塗布対象物100上の塗布膜200の流動性を抑制するために、ステージ10が所定速度で所定時間回転し、塗布膜200の乾燥が促進される。特に、塗布膜200の外縁部分の乾燥が促進され、塗布膜200の拡がりが抑止される。なお、塗布膜200の流動性が問題にならない場合には、仮乾燥の工程を省略することも可能である。塗布対象物100に塗布材料210を塗布した後に仮乾燥を行うことによって、塗布膜200がある程度乾燥して塗布膜200の流動性が抑制される。このため、その後に実施される膜厚平坦化処理において塗布対象物100の周辺部に発生する膜形状の変化を抑制できる。
【0023】
ステップS4において、塗布膜200の表面に音波SWを照射することにより、塗布膜200の厚膜平坦化処理を行う。具体的には、音波ホーン65が、ステージ10上の塗布対象物100の全面に亘って移動する。このとき、音波ホーン65は移動しながら音波SWを連続して塗布対象物100上の塗布膜200に照射する。その結果、塗布膜200の表面に形成された凸部が音圧によって平坦化され、更に、音波エネルギーによって塗布膜200の粘度が低下して、塗布膜200の表面が平坦化される。その結果、図4(a)に示す開始点むらA、塗布ピッチむらB、周辺部のクラウンCが平坦化され、図4(b)に示すように平坦な塗布膜200が得られる。
【0024】
なお、制御部30は、音波SWのエネルギーが塗布膜200表面の凸部を平坦化し、塗布膜200の表層の粘度を低下させる量であるように、音波ホーン65の振動を制御する。音波ホーン65の振動の調整は、振動制御装置62を制御することによって行われる。
【0025】
上記では、塗布対象物100の表面の全面に塗布材料210を塗布した後に、塗布膜200の表面に音波SWを照射する例を説明した。しかし、塗布材料210を塗布対象物100の表面に塗布しながら、塗布膜200の表面に音波SWを照射してもよい。具体的には、塗布材料210を塗布対象物100の表面に吐出する塗布ノズル20に続けて音波ホーン65を移動させる。塗布対象物100の表面に形成された直後の塗布膜200の表面に音波SWが照射されることにより、塗布膜200の表面が平坦化される。
【0026】
第1の実施形態に係る成膜装置1を含む図5に示す成膜システム500を用いて、塗布対象物100であるウェハ上に、塗布膜200としてフォトレジスト膜を形成する方法を、図6に示したフローチャートを参照して説明する。
【0027】
ステップS11において、洗浄や前処理が終わったウェハが成膜システム500のインターフェース装置501にセットされて、ウェハの投入が成膜システム500に受け付けられる。次いで、ステップS12において、ウェハがチルプレート502に搬送されて、チルプレート502上でウェハが所定時間冷却される。
【0028】
所定時間経過後、ウェハはチルプレート502から取り出されて成膜装置1に搬送される。ステップS13において、成膜装置1によってウェハ上にフォトレジスト膜の材料が塗布されてフォトレジスト膜が形成され、その後、フォトレジスト膜の膜厚平坦化処理が行われる。ステップS13におけるフォトレジスト膜の塗布及び膜厚平坦化処理は、図3を参照して説明した方法で行われる。
【0029】
その後、ウェハは搬送装置503により順次搬送され、ステップS14においてウェハはベーク装置504により加熱されてウェハ上に形成されたフォトレジスト膜が乾燥され、ステップS15においてウェハがチルプレート502で冷却され、ステップS16においてウェハ上のフォトレジスト膜は露光装置505により露光される。
【0030】
更に、ステップS17においてウェハは再びチルプレート502で冷却され、ステップS18においてウェハ上のフォトレジスト膜が現像装置506により現像されてから洗浄処理される。その後、ステップS19においてウェハは搬送装置503によりインターフェース装置501に戻されて成膜システム500から払い出され、処理が終了する。
【0031】
以上に説明したように、図1に示した成膜装置1によれば、塗布膜200の表面に音波SWを照射することにより、塗布ピッチむらが解消されて、塗布膜200の表面を平坦化できる。また、塗布対象物100の中心部に音波SWを照射することにより、開始点むらを解消できる。
【0032】
また、既に説明したように、塗布膜200の周辺部では乾燥速度が速いために、塗布膜200の周辺部に凸形状(クラウン)が発生する傾向がある。図7(a)〜図7(c)に、溶質と溶媒を含む塗布材料を塗布対象物100の表面に塗布して形成される塗布膜200に、クラウンが発生する様子を示す。
【0033】
塗布対象物100の表面に塗布材料が塗布された直後の塗布膜200の形状は、図7(a)に示す形状になる。例えば、有機エレクトロルミネセンス(EL)のインクを塗布材料として、塗布対象物100であるガラス基板上に塗布する場合には、塗布材料の粘度の調整や塗布対象物100の表面の濡れ性の制御を行うことにより、塗布膜200の形状は図7(a)に示したようになる。
【0034】
塗布対象物100上で塗布膜200の乾燥が始まると、図7(b)に示すように、塗布膜200の表面から溶媒が外気中に拡散して蒸気層Gが形成されるとともに、塗布膜200の内部では矢印で示した対流が発生する。このとき、塗布膜200の周辺部は中央部よりも表面積が広く、且つ、周辺部近傍における雰囲気中の溶媒濃度が中央部よりも薄い。このため、塗布膜200の周辺部から優先的に乾燥が進行することになる。その結果、周辺部は蒸発が速いがゆえに表面張力が上昇し、塗布膜200を引っ張るような作用が働く。このため、図7 (c)に示すように、塗布膜200全体としては、周辺部が盛り上がった凹部形状になる。塗布膜200中の溶媒の揮発性が高く、乾燥速度が速すぎる場合は、図7 (c)に示す形状で乾燥が終了するので、塗布膜200は凹形状の固化物になり、周辺部に凸形状のクラウンCが発生する。
【0035】
図1に示した成膜装置1によれば、塗布膜200の周辺部に音波SWを照射することにより、塗布膜200の周辺部に形成されるクラウンを平坦化できる。
【0036】
したがって、第1の実施形態に係る成膜装置1によれば、スパイラル塗布法を採用することにより塗布材料210の使用効率を向上させつつ、塗布対象物100上に形成された塗布膜200の膜厚の均一性の低下を抑制できる成膜装置、成膜方法、及び上記の成膜装置や成膜方法を用いて製造される膜厚の均一性の低下が抑制された電子デバイスを提供することができる。
【0037】
また、スピンコート法により塗布膜200を形成する場合には、塗布中に塗布対象物100の側面や裏面に、飛散或いはミスト化して回り込んだ塗布材料210が付着してしまう。このため、塗布工程の後に、塗布対象物100の側面や裏面に付着した塗布材料210をシンナーで除去するエッジカット及びバックリンスと呼ばれる工程が必要となる。これらの工程において大量のシンナーを使用するため、環境負荷が大きいという問題があった。しかし、図1に示した成膜装置1によれば、エッジカットやバックリンスなどの工程が不要であり、シンナー使用量を大幅に削減できる。
【0038】
<変形例>
図8に第1の実施形態の変形例に係る成膜装置1を示す。図8に示した成膜装置1では、音波発生装置60の音波振動子61が塗布ノズル20に取り付けられている。つまり、音波発生装置60が塗布ノズル20を振動させ、塗布ノズル20から塗布膜200の表面に音波SWが照射される。音波ホーン65が不要になることにより、成膜装置1を小型化できる。
【0039】
図8に示した成膜装置1では、例えば、塗布対象物100の全面に塗布材料210を塗布した後に、ステージ10上で塗布ノズル20を移動させながら、塗布ノズル20から塗布膜200の表面に音波SWを照射する。
【0040】
或いは、塗布ノズル20から塗布対象物100の表面に塗布材料210を供給しながら、塗布ノズル20から塗布膜200の表面に音波SWを照射してもよい。つまり、塗布対象物100上に供給された直後の塗布材料210を平坦化しながら、塗布対象物100の表面に塗布膜200を形成できる。
【0041】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る成膜装置1は、図9に示すように、塗布対象物100上の塗布膜200の表面に、塗布材料210を溶解する溶媒の蒸気(以下において、「溶媒蒸気」という。)を吹き付ける蒸気吹付装置70を更に備える点が、図1に示した成膜装置1と異なる。その他の構成については、図1に示す第1の実施形態と同様である。
【0042】
蒸気吹付装置70は、塗布膜200の表面に溶媒蒸気を吹き出す吹付部71と、吹付部71に溶媒蒸気を供給する溶媒蒸気供給部700を有する。
【0043】
溶媒蒸気供給部700は、溶媒蒸気を発生させる溶媒蒸気発生部710と、溶媒蒸気発生部710から吹付部71に溶媒蒸気を搬送するための搬送流路である蒸気搬送管720と、溶媒蒸気発生部710で発生した溶媒蒸気を吹付部71に搬送するための搬送気体を溶媒蒸気発生部710に供給する搬送気体供給部730と、搬送気体供給部730から溶媒蒸気発生部710に供給される搬送気体の流路である気体供給管740とを有する。
【0044】
溶媒蒸気発生部710は、溶媒72を貯留する溶媒タンク711と、溶媒タンク711内の溶媒72を加熱する溶媒ヒータ712と、溶媒タンク711内の溶媒蒸気の温度を測定する溶媒温度センサ713とを備える。溶媒ヒータ712及び溶媒温度センサ713は制御部30に電気的に接続されている。制御部30は、溶媒温度センサ713により測定された溶媒蒸気の温度に基づいて、溶媒タンク711内の溶媒72を蒸気化させるように溶媒ヒータ712の温度を調整する。
【0045】
蒸気搬送管720は、溶媒蒸気発生部710から吹付部71に溶媒蒸気を搬送するための搬送流路である。蒸気搬送管720としては、例えばチューブやパイプなどが用いられる。この蒸気搬送管720には、蒸気搬送管720を加熱する搬送管ヒータ721が設置されている。搬送管ヒータ721としては、例えば蒸気搬送管720の外周面に巻かれるシート状のヒータなどが採用可能である。搬送管ヒータ721は制御部30に電気的に接続されており、蒸気搬送管720の温度が溶媒72の露点温度より高くなるように制御部30により蒸気搬送管720の温度が調整される。
【0046】
例えば蒸気搬送管720の温度が溶媒72の露点温度より低い場合には、蒸気搬送管720内の搬送気体中の蒸気化した溶媒72が結露し、所望の溶媒蒸気量を得ることが困難である。しかし、蒸気搬送管720の温度を搬送管ヒータ721によって調整することにより、蒸気搬送管720内の溶媒蒸気は結露しない温度範囲に維持される。
【0047】
搬送気体供給部730は、搬送気体を貯留して溶媒蒸気発生部710に供給する。この搬送気体により、溶媒蒸気発生部710で発生した溶媒蒸気は吹付部71に搬送されて吹き出される。搬送気体としては、例えば窒素などの不活性ガスや空気などが用いられる。
【0048】
気体供給管740は、搬送気体供給部730から溶媒蒸気発生部710に搬送気体を供給するための供給流路である。気体供給管740としては、例えばチューブやパイプなどが用いられる。気体供給管740には、搬送気体の流量を調整する流量調整弁741が設置されている。流量調整弁741は制御部30に電気的に接続されており、制御部30による制御に応じて搬送気体供給部730からの搬送気体の流量が調整される。
【0049】
吹付部71は、溶媒蒸気発生部710から蒸気搬送管720を介して搬送された溶媒蒸気を吹き出す、例えばエアナイフ型の給気ユニットである。吹付部71は、例えばスリット状の吹出口Hを有する箱状に形成されている。吹付部71の側面には、吹付部71を加熱する吹付部ヒータ701が設置されている。吹付部ヒータ701には、例えば吹付部71の外周面に貼り付けられるシート状のヒータが採用可能である。吹付部ヒータ701は制御部30に電気的に接続されており、吹付部71の温度が溶媒72の露点温度より高くなるように制御部30によって吹付部71の温度が調整される。
【0050】
例えば、前述の蒸気搬送管720と同様に、吹付部71の温度が溶媒72の露点温度より低い場合には、搬送気体中の蒸気化した溶媒72が結露し、所望の溶媒蒸気量を得ることが困難である。しかし、吹付部ヒータ701によって調整することにより、吹付部71の温度が吹付部71内の溶媒蒸気が結露しない温度範囲に維持される。
【0051】
支持台5に取り付けられた給気移動機構73によって、ステージ10上における吹付部71の位置は、塗布対象物100の表面に沿ってx方向及びy方向に移動させられる。給気移動機構73は、制御部30によって制御される。給気移動機構73には、例えばリニアモータ移動機構や送りネジ移動機構などが採用可能である。また、給気移動機構73によって、吹付部71はz方向にも移動可能である。このため、吹付部71と塗布膜200の表面との間隔を、制御部30によって調整できる。なお、吹付部71の位置を固定して、ステージ10を移動させてもよい。
【0052】
図9に示した成膜装置1では、図3のステップS4において膜厚平坦化処理を行う際に、例えば塗布膜200の全面に音波SWを照射した後、塗布膜200の全面に溶媒蒸気を吹き付ける。
【0053】
具体的には、吹付部71がステージ10上の塗布対象物100の全面に亘って移動する。このとき、吹付部71は、塗布膜200の表面に沿って移動しながら溶媒蒸気を連続して塗布対象物100上の塗布膜200に吹き付け、塗布膜200の表層を溶解する(再溶解)。なお、制御部30は、溶媒蒸気の吹き付け量(供給量)を塗布膜200の表層の粘度を低下させる量とするように制御する。この溶媒蒸気の吹き付け量の調整は、搬送気体の流量を流量調整弁741により調整したり、溶媒蒸気発生部710の温度設定を変更したり、或いはその両方をすることによって行われる。
【0054】
上記では、塗布膜200の全面に音波SWを照射した後に、塗布膜200の全面に溶媒蒸気を吹き付ける例を説明した。しかし、塗布膜200の全面に溶媒蒸気を吹き付けた後に、塗布膜200の全面に音波SWを照射してもよい。或いは、音波SWを照射すると同時に、塗布膜200の表面に溶媒蒸気を吹き付けてもよい。つまり、塗布膜200の表面に音波SWを照射する工程と溶媒蒸気を吹き付ける工程の順序は任意である。
【0055】
或いは、塗布材料210を塗布対象物100の表面に塗布しながら、塗布膜200の表面に溶媒蒸気を吹き付けてもよい。例えば、塗布材料210を塗布対象物100の表面に吐出する塗布ノズル20に続けて、塗布膜200に溶媒蒸気を吹き付ける吹付部71を移動させる。塗布対象物100の表面に形成された直後の塗布膜200の表面に溶媒蒸気を吹き付けることにより、塗布膜200の表面が平坦化される。更に、塗布材料210を塗布対象物100の表面に塗布しながら、塗布膜200の表面に音波SWを照射し、且つ溶媒蒸気を吹き付けてもよい。
【0056】
また、塗布対象物100の表面に塗布膜200を形成する前に、塗布対象物100の表面に溶媒蒸気を吹き付けてもよい。塗布対象物100の表面に予め溶媒蒸気を吹き付けておくと、その後に塗布対象物100の表面に形成される塗布膜200の粘度が低くなる。その結果、塗布膜200を平坦化することができる。
【0057】
第2の実施形態に係る成膜装置1によれば、音波SWを照射することによる平坦化とともに、溶媒蒸気を吹き付けることにより塗布膜200を平坦化することができる。このため、塗布対象物100上に形成された塗布膜200の膜厚の均一性の低下を抑制できる成膜装置、成膜方法、及び上記の成膜装置や成膜方法を用いて製造される膜厚の均一性の低下が抑制された電子デバイスを提供することができる。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0058】
<第1の変形例>
図10に第2の実施形態の第1の変形例に係る成膜装置1を示す。図9では、音波発生装置60が生成する音波SWを音波ホーン65によって塗布膜200の表面に照射する例を示した。しかし、図10に示すように、音波発生装置60の音波振動子61が塗布ノズル20に取り付けられ、塗布ノズル20から塗布膜200の表面に音波SWが照射される構成にしてもよい。
【0059】
図10に示した成膜装置1を用いて、例えば、塗布対象物100の全面に塗布材料210を塗布した後に、ステージ10上で塗布ノズル20を移動させながら、塗布ノズル20から塗布膜200の表面に音波SWを照射してもよい。或いは、塗布ノズル20から塗布対象物100の表面に塗布材料210を供給しながら、塗布ノズル20から塗布膜200の表面に音波SWを照射してもよい。
【0060】
<第2の変形例>
図11に第2の実施形態の第2の変形例に係る成膜装置1を示す。図11に示した成膜装置1では、音波発生装置60の音波振動子61が吹付部71に取り付けられている。つまり、音波発生装置60が吹付部71を振動させ、吹付部71から塗布膜200の表面に音波SWが照射される。音波振動子61を吹付部71に取り付けることによって音波ホーン65が不要になり、成膜装置1を小型化できる。
【0061】
図10に示した成膜装置1を用いて、例えば、塗布対象物100の全面に塗布材料210を塗布した後に、ステージ10上で吹付部71を移動させながら、吹付部71から塗布膜200の表面に音波SWを照射してもよい。
【0062】
或いは、音波発生装置60によって吹付部71を振動させながら、吹付部71から塗布膜200の表面に塗布材料210を溶解する溶媒の蒸気を吹き付けてもよい。つまり、吹付部71から塗布膜200に溶媒蒸気を吹き付けながら、吹付部71から塗布膜200の表面に音波SWを照射してもよい。
【0063】
なお、図10或いは図11に示した成膜装置1を用いる成膜方法においても、既に述べたように、音波SWによる塗布膜200の表面の平坦化と、溶媒蒸気による塗布膜200の表面の平坦化の順序は任意であり、これらの平坦化を同時に行ってもよい。更に、塗布材料210を塗布対象物100の表面に塗布しながら、塗布膜200の平坦化を行ってもよい。
【0064】
(第3の実施形態)
図12に示す第3の実施形態に係る成膜装置1は、塗布対象物100上の塗布膜200の形状の変位を検出する変位センサ80を更に備える点が、図1に示した成膜装置1と異なる。その他の構成については、図1に示す第1の実施形態と同様である。
【0065】
支持台5に取り付けられたセンサ移動機構81によって、ステージ10上における変位センサ80の位置は、塗布対象物100の表面に沿ってx方向及びy方向に移動させられる。センサ移動機構81は、制御部30によって制御される。センサ移動機構81には、例えばリニアモータ移動機構や送りネジ移動機構などが採用可能である。なお、変位センサ80の位置を固定して、ステージ10を移動させてもよい。
【0066】
図12に示した成膜装置1では、例えば塗布対象物100の表面の全面に塗布材料210を塗布して塗布膜200を形成した後に、変位センサ80によって塗布膜200の形状の変位を検出する。変位センサ80によって検出された塗布膜200の形状の変位は、制御部30に伝達される。制御部30は、塗布膜200の各領域の形状の変位に応じて、振動制御装置62を制御する。即ち、各領域の膜厚に応じて、それぞれの領域に照射する音波SWの振幅、周波数、音波ホーン65と塗布膜200間の距離、などの照射条件が調整される。具体的には、膜厚の厚い領域ほど、音波SWの振幅を大きくしたり、音波SWの周波数を高くしたり、音波ホーン65と塗布膜200間の距離を狭くしたりする。
【0067】
例えば、図13(a)に示すように、音波ホーン65が一定速度で塗布膜200の上方を平行移動する場合を考える。塗布膜200表面の凸形状が顕著な領域では、音波振動子61に供給される駆動電圧Vdを大きくして音波ホーン65の振幅を増大し、平坦化効果を増大させる。
【0068】
図13(a)に示した例では、周辺部のクラウンC、開始点むらA、塗布ピッチむらBの順で凸部が高い。このため、周辺部のクラウンCに音波SWを照射する時の駆動電圧Vdの大きさVC、開始点むらAに音波SWを照射する時の駆動電圧Vdの大きさVA、塗布ピッチむらBに音波SWを照射する時の駆動電圧Vdの大きさVBの間には、図13(b)に示すように、VC>VA>VBの関係がある。
【0069】
また、塗布膜200表面の凸部の上方に音波ホーン65を移動させ、駆動電圧Vdは一定で、凸部が高いほど音波SWの照射時間を長くしてもよい。また、凸部が高いほど、音波ホーン65と塗布膜200との距離を近づけて音波SWの伝搬効率を上げることで塗布膜200を平坦化してもよい。
【0070】
また、塗布材料210に含有される有機溶媒や溶質である高分子材料が持つ構造的な周波数、或いはその高調波に、照射する音波SWの周波数を合わせることにより、塗布膜200での音波SWの吸収が促進され流動性が向上する。
【0071】
したがって、図12に示した成膜装置1によれば、予め取得された塗布膜200の膜厚分布に応じて、塗布膜200に照射される音波SWの特性などが調整される。これにより、塗布膜200をより精密に平坦化できる。
【0072】
また、塗布材料210を塗布対象物100の表面に塗布しながら、変位センサ80によって塗布膜200の形状の変位を検出してもよい。例えば、塗布材料210を塗布対象物100の表面に吐出する塗布ノズル20に続けて変位センサ80を移動させる。その結果、塗布対象物100の表面に形成された直後の塗布膜200の表面形状の変位を検出し、この検出結果に応じて、塗布膜200の表面に音波SWが照射され、塗布膜200が平坦化される。
【0073】
なお、音波SWの照射による塗布膜200の表面の1回目の平坦化が行われた後、変位センサ80によって塗布膜200の形状の変位を検出してもよい。これにより、1回目の平坦化処理で平坦化し切れなかった領域を検出し、この領域を平坦化することができる。
【0074】
また、塗布対象物100上に塗布膜200を形成する前に、塗布対象物100の表面の形状の変位、或いは塗布対象物100を載せるステージ10の表面の形状の変位を、変位センサ80によって検出してもよい。具体的には、塗布膜200が形成される前の塗布対象物100の表面の形状の変位と、塗布対象物100上に形成された塗布膜200の表面との形状の変位を、それぞれ検出する。そして、塗布対象物100の表面と塗布膜200の表面との形状の変位の検出結果を比較して、塗布膜200の平坦化する部分を抽出する。例えば、塗布対象物100の表面で検出された凸部の高さ及び位置と、塗布膜200の表面で検出された凸部の高さ及び位置が一致する場合、塗布対象物100の表面の凸部は、塗布対象物100の表面の凸部を単に反映したものである。この場合は、塗布膜200の表面の凸部は平坦化する必要がないと判断される。これにより、塗布膜200を形成する前の塗布対象物100の表面が平坦ではない場合においても、塗布対象物100の表面に沿って均一の膜厚で塗布膜200を形成することができる。
【0075】
第3の実施形態に係る成膜装置1によれば、塗布膜200の表面形状の変位を検出して、塗布膜200の膜厚の分布に応じた平坦化処理を実行したり、平坦化が必要な部分を選択的に平坦化できる。このため、塗布対象物100上に形成された塗布膜200の膜厚の均一性の低下を抑制できる成膜装置、成膜方法、及び上記の成膜装置や成膜方法を用いて製造される膜厚の均一性の低下が抑制された電子デバイスを提供することができる。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0076】
<第1の変形例>
図14に第3の実施形態の第1の変形例に係る成膜装置1を示す。図12では、音波発生装置60が生成する音波を音波ホーン65によって塗布膜200の表面に照射する例を示した。しかし、図14に示すように、音波発生装置60の音波振動子61が塗布ノズル20に取り付けられ、塗布ノズル20から塗布膜200の表面に音波SWが照射される構成にしてもよい。
【0077】
<第2の変形例>
図15に第3の実施形態の第2の変形例に係る成膜装置1を示す。図15に示した成膜装置1は、蒸気吹付装置70を更に備えることが図12に示した成膜装置1と異なる。図15に示した成膜装置1によれば、変位センサ80によって塗布膜200の形状の変位を検出しながら、音波SWを照射することによる平坦化とともに、溶媒蒸気を吹き付けることにより塗布膜200を平坦化することができる。
【0078】
制御部30は、塗布膜200の各領域の形状の変位に応じて、蒸気吹付装置70を制御する。即ち、各領域の膜厚に応じて、それぞれの領域に吹き付ける溶媒蒸気の供給量、温度、流量、吹付部71と塗布膜200間の距離、などの吹き付け条件が調整される。具体的には、膜厚の厚い領域ほど、溶媒蒸気の供給量や流量を大きくしたり、溶媒蒸気の温度を高くしたり、吹付部71と塗布膜200間の距離を狭くしたりする。
【0079】
例えば、図16(a)に示すように、吹付部71が一定速度で塗布膜200の上方を平行移動する場合を考える。塗布膜200表面の凸形状が顕著な領域では、流量調整弁741の開度Qを上げて溶媒蒸気の供給量を増やし、平坦化効果を増大させる。
【0080】
図16(a)に示した例では、周辺部のクラウンC、開始点むらA、塗布ピッチむらBの順で凸部が高い。このため、周辺部のクラウンCに溶媒蒸気を吹き付ける時の流量調整弁741の開度Qの大きさQC、開始点むらAに溶媒蒸気を吹き付ける時の開度Qの大きさQA、塗布ピッチむらBに溶媒蒸気を吹き付ける時の開度Qの大きさQBの間には、図16(b)に示すように、QC>QA>QBの関係がある。
【0081】
また、最も凸部が高いクラウンCにおいて平坦化効果を上げるために、吹付部71がクラウンC上方を通過するときに、吹付部71に設置された吹付部ヒータ701によって溶媒蒸気の温度を上げてもよい。
【0082】
また、塗布膜200表面の凸部の上方に吹付部71を移動させ、凸部が大きい領域ほど溶媒蒸気の供給時間を長くしてもよい。また、局所的に大きな平坦化効果を得たい場合は、吹付部71を塗布膜200に近接させる。
【0083】
したがって、図15に示した成膜装置1によれば、取得された塗布膜200の膜厚分布に応じて塗布膜200に吹き付けられる溶媒蒸気の量の調整などが行われ、塗布膜200をより精密に平坦化できる。
【0084】
なお、図17に示すように、音波発生装置60の音波振動子61が塗布ノズル20に取り付けられ、塗布ノズル20から塗布膜200の表面に音波SWが照射される構成にしてもよい。
【0085】
或いは、図18に示すように、音波発生装置60の音波振動子61が吹付部71に取り付けられてもよい。図18に示す成膜装置1では、音波発生装置60が吹付部71を振動させ、吹付部71から塗布膜200の表面に音波SWが照射される。
【0086】
なお、既に説明したように、図15〜図18に示した成膜装置1を用いる成膜方法においても、塗布膜200の表面に音波SWを照射する工程と溶媒蒸気を吹き付ける工程の順序は任意である。即ち、塗布膜200の全面に音波SWを照射した後に、塗布膜200の全面に溶媒蒸気を吹き付けてもよい。或いは、塗布膜200の全面に溶媒蒸気を吹き付けた後に、塗布膜200の全面に音波SWを照射してもよい。音波SWを照射すると同時に塗布膜200の表面に溶媒蒸気を吹き付けてもよい。
【0087】
上記のようにいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
1…成膜装置、10…ステージ、20…塗布ノズル、30…制御部、40…回転機構、50…塗布移動機構、60…音波発生装置、61…音波振動子、62…振動制御装置、65…音波ホーン、70…蒸気吹付装置、71…吹付部、80…変位センサ、100…塗布対象物、200…塗布膜、210…塗布材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象物を載せるステージと、
前記塗布対象物の表面の法線方向を回転軸として前記ステージを回転する回転機構と、
前記塗布対象物の表面に塗布材料を供給する塗布ノズルと、
前記ステージ上における前記塗布ノズルの位置を前記塗布対象物の表面に沿って移動させる塗布移動機構と、
前記回転機構と前記塗布移動機構を制御して、前記ステージを回転させると共に前記ステージの回転中心部と外縁部間で前記塗布ノズルの位置を移動させながら、前記塗布ノズルを制御して前記塗布対象物の表面に前記塗布材料を塗布させる制御部と、
前記塗布対象物上に前記塗布材料を塗布して形成された塗布膜の表面に照射する音波を発生する音波発生装置と
を備え、前記音波を前記塗布膜の表面に照射することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記音波発生装置が前記塗布ノズルを振動させ、前記塗布ノズルから前記塗布膜の表面に前記音波を照射することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記音波発生装置が生成する前記音波を前記塗布膜の表面に照射する音波ホーンを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記塗布対象物又は前記塗布膜の表面に、前記塗布材料を溶解する溶媒の蒸気を吹き付ける蒸気吹付装置を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記音波発生装置が前記蒸気吹付装置の吹付部を振動させ、前記吹付部から前記塗布膜の表面に前記塗布材料を溶解する溶媒の蒸気を吹き付けることを特徴とする請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
塗布対象物を載せたステージを前記塗布対象物の表面の法線方向を回転軸として回転させると共に前記ステージの回転中心部と外縁部間で塗布ノズルの位置を移動させながら、前記塗布ノズルから前記塗布対象物の表面に塗布材料を塗布するステップと、
前記塗布対象物上に塗布後の前記塗布材料の表面に音波を照射するステップと
を含むことを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
前記塗布対象物上に前記塗布材料を塗布しながら前記音波の照射を行い、前記塗布対象物上に塗布された直後の前記塗布材料の表面に前記音波を照射することを特徴とする請求項6に記載の成膜方法。
【請求項8】
前記塗布対象物上に塗布された前記塗布材料の表面に、前記塗布材料を溶解する溶媒の蒸気を吹き付けるステップを更に含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の成膜方法。
【請求項9】
前記塗布対象物上に前記塗布材料を塗布する前に、前記塗布対象物の表面に前記塗布材料を溶解する溶媒の蒸気を吹き付けるステップを更に含むことを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の成膜方法。
【請求項10】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成膜装置又は請求項6乃至9のいずれか1項に記載の成膜方法を用いて製造される電子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−61403(P2012−61403A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206715(P2010−206715)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】