説明

成膜装置および成膜方法

【課題】排気口の周辺に生成物が付着し難い成膜装置および成膜方法を提供する。
【解決手段】成膜装置は、反応ガスが供給されて成膜処理が行われる反応室と、反応室を構成するベースプレート101と、ベースプレート101の上に設置されてベースプレート101の全面を被覆するベースプレートカバー103とを有する。ベースプレート101には、反応室から余剰の反応ガスを排出する排気口6が設けられており、ベースプレートカバー103には、排気口6に勘合する形状と大きさを備えた貫通孔107が設けられている。反応ガスの下流側における貫通孔107の端面109は、排気口6の端面110より突出している。ベースプレートカバー103は、ベースプレート101と対向する面に突起部108を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)などのパワーデバイスのように、比較的膜厚の大きい結晶膜を必要とする半導体素子の製造には、エピタキシャル成長技術が利用されている。
【0003】
エピタキシャル成長技術に使用される気相成長方法では、反応室内に基板を載置した状態で反応室内の圧力を常圧または減圧にする。そして、基板を加熱しながら、反応室内に反応性のガスを供給する。すると、基板の表面でガスが熱分解反応または水素還元反応を起こして気相成長膜が形成される。反応によって生成したガスや、反応に使用されなかったガスは、反応室に設けられた排気口を通じて外部に排出される。
【0004】
反応室は、ベースプレートの上にベルジャが配置された構造を有する。また、反応室内には回転体ユニットが配置されており、この回転体ユニットの上面に設けられた環状の保持部に基板が載置される。保持部の下方には、基板を加熱するためのヒータが設けられている。ヒータに電流を導入するための端子や電線、ヒータを支持する電極などは、回転体ユニットの一部であって、ベースプレートの中央部を貫通する回転軸の内部に配置される。
【0005】
排気口は、ベースプレートに設けられている。気相成長反応に寄与しなかった反応ガスは、上述の通り、排気口を通じて反応室の外部に排出される。ここで、気相成長反応の際は反応室内が非常な高温になるため、ベースプレートの内部には冷却水の流路が設けられている。さらに、外部への放熱は排気口からなされるので、排気口周辺の温度は低下しており、反応ガスに起因する生成物が付着しやすい。
【0006】
そこで、特許文献1には、排気口部分を除いてベースプレートの上を石英ガラス製の板状部材で覆い、さらに、板状部材とベースプレートの間に隙間を設けることで、板状部材を高温に維持して生成物の堆積を抑制した成膜装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の成膜装置では、排気口部分への生成物の付着を防ぐことができない。排気口を取り外すことはできないので、付着した生成物を除去するための作業に長時間を要するという問題があった。
【0008】
これに対して、特許文献2には、排気口カバーを排気口に着脱可能に内挿した成膜装置が開示されている。排気口カバーは、平板状のフランジ部と円筒部からなり、フランジ部がベースプレートの表面に支持され、円筒部が排気口に内挿される。この構造によれば、メンテナンス時に、排気口カバーを取り外して洗浄することができるので、排気口およびその周辺に付着した生成物を除去することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−283450号公報
【特許文献2】特開平10−209049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2の構造では、反応ガスが排気口カバーの裏側に回り込むため、排気口カバーとベースプレートの間に生成物が付着し、メンテナンス時に排気口カバーを取り外すことが困難になるという問題があった。
【0011】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、排気口の周辺に生成物が付着し難い成膜装置および成膜方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、反応ガスが供給されて成膜処理が行われる反応室を備えた成膜装置において、
反応室を構成するベースプレートと、
ベースプレートの上に設置されてベースプレートの全面を被覆するベースプレートカバーとを有し、
ベースプレートには、反応室から余剰の反応ガスを排出する排気口が設けられており、
ベースプレートカバーには、排気口に勘合する形状と大きさを備えた貫通孔が設けられていて、
反応ガスの下流側における貫通孔の端面は、排気口の端面より突出していることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の第1の態様において、ベースプレートカバーは、ベースプレートと対向する面に突起部を有することが好ましい。
【0015】
本発明の第2の態様は、反応室内に反応ガスを供給して基板上に所定の膜を形成し、反応室を構成するベースプレートに設けた排気口から余剰の反応ガスを排出する成膜方法において、
排気口に勘合する形状と大きさの貫通孔を有し、反応ガスの下流側における貫通孔の端面が排気口の端面より突出したベースプレートカバーをベースプレートの上に設置して所定の膜を形成することを特徴とするものである。
【0016】
本発明の第2の態様において、所定の膜を形成した後は、ベースプレートからベースプレートカバーを取り外して洗浄することが好ましい。
【0017】
本発明の第2の態様においては、ベースプレートカバーのベースプレートと対向する面に突起部を設けて、これらの間に所定の隙間が形成されるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の態様によれば、反応ガスの下流側におけるベースプレートカバーの貫通孔の端面が排気口の端面より突出しているので、ベースプレートとベースプレートカバーの隙間に反応ガスが回り込み難い。したがって、排気口の周辺に生成物が付着し難くなる。
【0019】
本発明の第2の態様によれば、反応ガスの下流側における貫通孔の端面が排気口の端面より突出したベースプレートカバーをベースプレートの上に設置して所定の膜を形成するので、ベースプレートとベースプレートカバーの隙間への反応ガスの回り込みを防いで、排気口の周辺に生成物を付着し難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態の成膜装置の模式的な断面図である。
【図2】本実施の形態におけるベースプレートの平面図である。
【図3】本実施の形態におけるベースプレートカバーの斜視図である。
【図4】本実施の形態における排気口周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本実施の形態の成膜装置の模式的な断面図である。尚、この図では、説明のために必要な構成以外を省略している。また、縮尺についても、各構成部を明確に視認できるよう原寸大のものとは変えている。
【0022】
図1に示すように、成膜装置100は、反応室としてのチャンバ1を有する。チャンバ1は、ベースプレート101の上にベルジャ102が配置された構造を有する。ベースプレート101とベルジャ102は、フランジ10によって連結されており、フランジ10はパッキン11でシールされている。ベースプレート101は、例えば、SUS(Steel Use Stainless;ステンレス鋼)からなるものとすることができる。
【0023】
気相成長反応の際には、チャンバ1内が極めて高い温度になる。そこで、チャンバ1の冷却を目的として、ベースプレート101とベルジャ102の内部には、冷却水の流路3が設けられている。
【0024】
ベルジャ102には、反応ガス4を導入する供給口5が設けられている。一方、ベースプレート101には排気口6が設けられており、排気口6を通じて反応後や未反応の反応ガス4がチャンバ1の外部へ排出される。
【0025】
排気口6は、フランジ13によって配管12と連結している。また、フランジ13は、パッキン14でシールされている。尚、パッキン11およびパッキン14には、300℃程度の耐熱温度を有するフッ素ゴムなどが用いられる。
【0026】
チャンバ1の内部には、中空筒状のライナ2が配置されている。ライナ2は、チャンバ1の内壁1aと、基板7上への気相成長反応が行われる空間Aとを仕切る目的で設けられる。これにより、チャンバ1の内壁1aが反応ガス4で腐食されるのを防ぐことができる。気相成長反応は高温下で行われるので、ライナ2は、高い耐熱性を備える材料によって構成される。例えば、SiC部材またはカーボンにSiCをコートして構成された部材の使用が可能である。
【0027】
本実施の形態では、便宜上、ライナ2を胴部2aと頭部2bの2つの部分に分けて称する。胴部2aは、内部にサセプタ8が配置される部分であり、頭部2bは、胴部2aより内径の小さい部分である。胴部2aと頭部2bは、一体となってライナ2を構成しており、頭部2bは胴部2aの上方に位置する。
【0028】
頭部2bの上部開口部には、シャワープレート15が設けられている。シャワープレート15は、基板7の表面に反応ガス4を均一に供給するガス整流板として働く。シャワープレート15には、複数個の貫通孔15aが設けられており、供給口5からチャンバ1に導入された反応ガス4は、貫通孔15aを通って基板7の方へ流下する。ここで、反応ガス4は、無駄に拡散することなく、効率よく基板7の表面に到達することが好ましい。このため、頭部2bの内径は胴部2aより小さく設計されている。具体的には、頭部2bの内径は、貫通孔15aの位置と基板7の大きさを考慮して決められる。
【0029】
また、チャンバ1の内部、具体的には、ライナ2の胴部2aに、基板7を支持するサセプタ8が配置されている。サセプタ8は、高耐熱性の材料で構成される。例えば、基板7の上にSiCをエピタキシャル成長させる場合、基板7は1500℃以上の高温にする必要がある。このため、サセプタ8には、例えば、等方性黒鉛の表面にCVD(Chemical Vapor Deposition)法によってSiCを被覆したものなどが用いられる。尚、サセプタ8の形状は、基板7を載置可能な形状であれば特に限定されるものではなく、リング状や円盤状などから適宜選択して用いられる。
【0030】
基板7の加熱は、回転筒17の内部に配置されたヒータ9によって行われる。ヒータ9は、抵抗加熱型のヒータとすることができ、円盤状のインヒータ9aと、環状のアウトヒータ9bとを有する。インヒータ9aは、基板7に対応する位置に配置される。アウトヒータ9bは、インヒータ9aの上方であって、基板7の外周部に対応する位置に配置される。基板7の外周部は中央部に比べて温度が低下しやすいため、アウトヒータ9bを設けることで外周部の温度低下を防ぐことができる。
【0031】
インヒータ9aとアウトヒータ9bは、アーム形状をした導電性のブースバー20によって支持されている。ブースバー20は、例えば、カーボンをSiCで被覆してなる部材によって構成される。また、ブースバー20は、インヒータ9aとアウトヒータ9bを支持する側とは反対の側で、石英製のヒータベース21によって支持されている。そして、モリブデンなどの金属からなる導電性の連結部22によって、ブースバー20と電極棒23が連結されることにより、電極棒23からインヒータ9aとアウトヒータ9bへ給電が行われる。具体的には、電極棒23からこれらのヒータ(9a、9b)の発熱体に通電がされて発熱体が昇温する。
【0032】
基板7の表面温度は、放射温度計24a、24bによって測定することができる。図1において、放射温度計24aは、基板7の中央部付近の温度を測定するのに用いられる。一方、放射温度計24bは、基板7の外周部の温度を測定するのに用いられる。これらの放射温度計は、図1に示すように、チャンバ1の上部に設けることができる。この場合、ベルジャ102の上部とシャワープレート15を透明石英製とすることにより、放射温度計24a、24bによる温度測定がこれらによって妨げられないようにすることができる。
【0033】
測定した温度データは、図示しない制御機構に送られ、インヒータ9aとアウトヒータ9bの各出力制御にフィードバックすることができる。一例として、SiCエピタキシャル成長を行う場合、各ヒータの設定温度は次のようにすることができる。これにより、基板7を1650℃程度に加熱することが可能である。
インヒータ9aの温度:1680℃
アウトヒータ9bの温度:1750℃
【0034】
ライナ2の胴部2aには、回転軸16と、回転軸16の上端に設けられた回転筒17とが配置されている。サセプタ8は、回転筒17に取り付けられており、回転軸16が回転すると、回転筒17を介してサセプタ8が回転するようになっている。気相成長反応時においては、基板7をサセプタ8上に載置することにより、サセプタ8の回転とともに基板7が回転する。
【0035】
シャワープレート15を通過した反応ガス4は、頭部2bを通って基板7の方へ流下する。基板7が回転していることにより、反応ガス4は基板7に引きつけられ、シャワープレート15から基板7に至る領域で縦フローになる。基板7に到達した反応ガス4は、基板7の表面で乱流を形成することなく、水平方向に略層流となって流れる。このようにして、基板7の表面には、新たな反応ガス4が次々と接触する。そして、基板7の表面で熱分解反応または水素還元反応を起こしてエピタキシャル膜を形成する。尚、成膜装置100では、基板7の外周部からライナ2までの距離を狭くして、基板7の表面における反応ガス4の流れがより均一になるようにしている。
【0036】
以上の構成とすることで、基板7を加熱し且つ回転させながら気相成長反応を行うことができる。基板7を回転させることにより、基板7の表面全体に効率よく反応ガス4が供給され、膜厚均一性の高いエピタキシャル膜を形成することが可能となる。また、新たな反応ガス4が次々と供給されるので、成膜速度の向上が図れる。
【0037】
反応ガス4の内で気相成長反応に使用されなかったガスや、気相成長反応により生成したガスは、ベースプレート101に設けられた排気口6から排出される。
【0038】
図2は、ベースプレート101の平面図である。ベースプレート101には、2箇所に排気口6が設けられている。尚、排気口6の数はこれに限定されるものではない。また、ベースプレート101には、図1の回転軸16、電極棒23、および、ブースバー20と電極棒23を連結する連結部22が貫通する貫通孔104も設けられている。
【0039】
ベースプレート101の上には、ベースプレート101の全面を被覆する形状と大きさを備えたベースプレートカバー103が取り外し可能に設置されている。ベースプレートカバー103は、例えば、石英からなるものとすることができる。
【0040】
図3は、ベースプレートカバー103の斜視図である。貫通孔106は、ベースプレート101の貫通孔104に対応する位置に設けられていて、図1の回転軸16、電極棒23、および、ブースバー20と電極棒23を連結する連結部22が貫通する。また、貫通孔107は、ベースプレート101の排気口6に対応する位置に設けられていて、排気口6に勘合する形状と大きさを有する。
【0041】
図4は、排気口6の周辺を拡大した断面図である。この図は、ベースプレート101の上にベースプレートカバー103が設置された状態を示している。図示するように、ベースプレートカバー103の貫通孔107は、ベースプレート101の排気口6に勘合する。
【0042】
チャンバ1内の熱は、排気口6を通じて放出されるため、排気口6付近の温度は、他の部分の温度よりも低くなる傾向にある。また、図1で説明したように、ベースプレート101の内部には、冷却水の流路3が設けられている。このため、ベースプレート101の温度は周囲の部材より低温となっている。こうしたことから、排気口6付近において、ベースプレート101周辺の温度は特に低くなる(例えば、100℃以下になる。)。したがって、この部分に反応ガス4が触れると、反応ガス4に起因した生成物が付着しやすい。例えば、反応ガスがシリコン系のガスであると、オイリーシランなどの生成物が付着する。
【0043】
従来の排気口部分では、例えば、特許文献2にあるように、排気口カバーの端面とベースプレートの端面とが、排気口の下流側で略一致するように形成されていた。このため、排気口を通過する反応ガスの一部が、排気口カバーの裏側に回り込み、冷却されたベースプレートに触れて生成物を形成することがあった。この生成物は、排気口カバーとベースプレートの間に付着するため、生成物の量が増えると、排気口カバーが生成物を介してベースプレートに接着し、排気口カバーを取り外すことが困難になる。
【0044】
そこで、本発明者は、反応ガスの回り込みを防ぐために、その流れの下流側において、ベースプレートカバーの端面をベースプレートの端面より突出させる構造を考えた。具体的には、図4に示すように、ベースプレートカバー103の貫通孔107について、反応ガス4の下流側端面109を、ベースプレート101の排気口6の下流側端面110より突出させる。突出部Lの長さは、例えば30mm程度とすることができる。この構造によれば、反応ガス4が排気口6から排出される際に、ベースプレート101とベースプレートカバー103の隙間に回り込むのを抑制できる。したがって、ベースプレート101とベースプレートカバー103の間に生成物が付着するのを防ぐことができる。
【0045】
ベースプレートカバー103は、図4に示すように、ベースプレート101と対向する面に突起部108を有することが好ましい。突起部108を設けることで、ベースプレート101とベースプレートカバー103の隙間を所定間隔以上にすることができる。これにより、この隙間に生成物が付着しても、生成物を介してベースプレートカバー103とベースプレート101が接着する現象を起こり難くすることができる。また、生成物は突起部108の近傍に付着しやすいと予想されるが、突起部108とベースプレート101の接触面積は小さいので、ベースプレート101からベースプレートカバー103を容易に取り外すことが可能である。
【0046】
次に、図1〜図4を参照しながら、本実施の形態における成膜方法の一例について述べる。
【0047】
本実施の形態の成膜装置100は、例えば、SiCエピタキシャル成長膜の形成に好適である。そこで、以下では、SiCエピタキシャル膜の形成を例にとる。
【0048】
基板7としては、例えば、SiCウェハを用いることができる。但し、これに限られるものではなく、場合に応じて、他の材料からなるウェハなどを用いてもよい。例えば、Siウェハ、SiO(石英)などの他の絶縁性基板、高抵抗のGaAsなどの半絶縁性基板などを用いることもできる。
【0049】
反応ガス4としては、例えば、プロパン(C)、シラン(SiH)およびキャリアガスとしての水素ガスを用いることができる。この場合、シランに代えて、ジシラン(SiH)、モノクロロシラン(SiHCl)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、テトラクロロシラン(SiCl)などを使用することも可能である。
【0050】
まず、サセプタ8の上に基板7を載置する。
【0051】
次に、チャンバ1の内部を常圧または適当な減圧にした状態で、基板7を回転させる。基板7が載置されたサセプタ8は、回転筒17の上端に配置されている。したがって、回転軸16を通じて回転筒17を回転させると、サセプタ8が回転し、同時に基板7も回転する。回転数は、例えば50rpm程度とすることができる。
【0052】
次に、ヒータ9によって基板7を加熱する。SiCエピタキシャル成長では、基板7は、例えば、1500℃〜1700℃までの間の所定の温度に加熱される。また、基板7の加熱によってチャンバ1内は高温になるので、ベースプレート101とベルジャ102の内部に設けた流路3に冷却水を流す。これにより、チャンバ1が過度に昇温するのを防止できる。
【0053】
放射温度計24a、24bにより、基板7の温度が例えば1650℃に達したことを確認した後は、基板7の回転数を徐々に上げていく。例えば、900rpm程度の回転数まで上げることができる。また、供給口5より反応ガス4を導入する。
【0054】
反応ガス4は、シャワープレート15の貫通孔15aを通り、基板7への気相成長反応が行われる空間Aへ流入する。シャワープレート15を通過することで、反応ガス4は整流され、下方で回転する基板7へ向かって略鉛直に流下して、いわゆる縦フローを形成する。
【0055】
基板7の表面に到達した反応ガス4は、この表面で熱分解反応または水素還元反応を起こしてSiCエピタキシャル膜を形成する。気相成長反応に使用されなかった余剰の反応ガス4や、気相成長反応により生成したガスは、チャンバ1の下方に設けられた排気口6を通じて外部に排気される。
【0056】
チャンバ1の下方には、ベースプレート101が配置されている。そして、ベースプレート101の上には、ベースプレートカバー103が設置されている。ベースプレート101には、排気口6が設けられている。また、ベースプレートカバー103の貫通孔107は、排気口6に勘合する大きさと形状を有する。
【0057】
本実施の形態によれば、図4に示すように、反応ガス4の下流側におけるベースプレートカバー103の貫通孔107の端面109が、ベースプレート101の排気口6の端面110より突出しているので、ベースプレート101とベースプレートカバー103の隙間に反応ガス4が回り込むのを抑制できる。したがって、ベースプレート101とベースプレートカバー103の間に生成物が付着し難くすることができる。
【0058】
また、ベースプレートカバー103は、ベースプレート101と対向する面に突起部108を有するので、ベースプレート101とベースプレートカバー103の隙間に生成物が付着しても、生成物を介したこれらの接着を起こり難くすることができる。
【0059】
基板7の上に、所定の膜厚のSiC膜を形成した後は、反応ガス4の供給を終了する。続いて、ヒータ9による加熱を停止し、基板7が所定の温度まで下がるのを待つ。
【0060】
放射温度計24a、24bにより、基板7の温度が所定の温度まで冷却されたことを確認した後は、チャンバ1の外部に基板7を搬出する。
【0061】
以上の工程を終えた後は、ベースプレート101からベースプレートカバー103を取り外し、ベースプレートカバー103に付着した生成物を除去するための洗浄を行うことが好ましい。また、ベースプレート101に付着した生成物もこの際に除去することができる。生成物は、ベースプレートカバー103の突起部108の近傍に付着しやすいと予想されるが、突起部108とベースプレート101の接触面積は小さいため、ベースプレート101からベースプレートカバー103を容易に取り外すことが可能である。
【0062】
続いて成膜処理を行う際には、再びベースプレート101の上にベースプレートカバー103を設置する。尚、ベースプレートカバー103を取り外しての洗浄は、1回の成膜処理を終える度に行う必要はなく、所定の回数を終えた都度、あるいは、付着した生成物の量が所定量を超えた都度に行ってもよい。
【0063】
本実施の形態の成膜方法によれば、反応ガスの下流側における貫通孔の端面が排気口の端面より突出したベースプレートカバーをベースプレートの上に設置して成膜処理を行うので、反応ガスが排気口から排出される際に、ベースプレートとベースプレートカバーの隙間に回り込むのを抑制できる。したがって、排気口周辺への生成物の付着を低減することが可能である。
【0064】
また、本実施の形態の成膜方法では、ベースプレートカバーのベースプレートと対向する面に突起部を設けて、これらの間に所定の隙間が形成されるようにしているので、生成物を介してベースプレートカバーとベースプレートが接着するのを抑制することができる。また、ベースプレートとベースプレートカバーとの接触は、突起部を通じた極狭い面積を介してのものであるので、生成物が付着しても、ベースプレートからベースプレートカバーを容易に取り外すことができる。
【0065】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施の形態では、基板を回転させながら基板上に膜を形成する例について述べたが、本発明では、基板を回転させない状態で膜を形成してもよい。
【0066】
また、上記実施の形態では、成膜装置の一例としてエピタキシャル成長装置を挙げ、SiC結晶膜の形成について説明したが、これに限られるものではない。反応室内に反応ガスを供給し、反応室内に載置される基板を加熱して基板の表面に膜を形成するものであれば、他の成膜装置であってもよく、また、他のエピタキシャル膜の形成に用いることもできる。
【0067】
さらに、装置の構成や制御の手法など、本発明に直接必要としない部分などについては記載を省略したが、必要とされる装置の構成や、制御の手法などを適宜選択して用いることができる。
【0068】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更し得る全ての成膜装置および各部材の形状は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0069】
1 チャンバ
1a 内壁
2 ライナ
2a 胴部
2b 頭部
3 流路
4 反応ガス
5、25 供給口
6 排気口
7 基板
8 サセプタ
9 ヒータ
9a インヒータ
9b アウトヒータ
10、13 フランジ
11、14 パッキン
12 配管
15 シャワープレート
15a、104、106、107 貫通孔
16 回転軸
17 回転筒
20 ブースバー
21 ヒータベース
22 連結部
23 電極棒
24a、24b 放射温度計
100 成膜装置
101 ベースプレート
102 ベルジャ
103 ベースプレートカバー
108 突起部
109、110 端面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスが供給されて成膜処理が行われる反応室を備えた成膜装置において、
前記反応室を構成するベースプレートと、
前記ベースプレートの上に設置されて前記ベースプレートの全面を被覆するベースプレートカバーとを有し、
前記ベースプレートには、前記反応室から余剰の反応ガスを排出する排気口が設けられており、
前記ベースプレートカバーには、前記排気口に勘合する形状と大きさを備えた貫通孔が設けられていて、
前記反応ガスの下流側における前記貫通孔の端面は、前記排気口の端面より突出していることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記ベースプレートカバーは、前記ベースプレートと対向する面に突起部を有することを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
反応室内に反応ガスを供給して基板上に所定の膜を形成し、反応室を構成するベースプレートに設けた排気口から余剰の反応ガスを排出する成膜方法において、
前記排気口に勘合する形状と大きさの貫通孔を有し、前記反応ガスの下流側における前記貫通孔の端面が前記排気口の端面より突出したベースプレートカバーを前記ベースプレートの上に設置して前記所定の膜を形成することを特徴とする成膜方法。
【請求項4】
前記所定の膜を形成した後は、前記ベースプレートから前記ベースプレートカバーを取り外して洗浄することを特徴とする請求項3に記載の成膜方法。
【請求項5】
前記ベースプレートカバーの前記ベースプレートと対向する面に突起部を設けて、これらの間に所定の隙間が形成されるようにしたことを特徴とする請求項3または4に記載の成膜方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−45799(P2013−45799A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180571(P2011−180571)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】