説明

接合方法、半導体装置、多層回路基板および電子部品

【課題】樹脂組成物層内にボイドが生じることを防止することができる接合方法、このような接合方法を用いて製造される半導体装置、多層回路基板および電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の接合方法は、端子52を有する半導体チップ5と、端子44を有する回路基板4とを、半導体チップ5の端子52が設置された面と、回路基板4の端子44が設置された面とが対向するように配置し、端子52とそれに対応する端子44とを電気的に接続するとともに、半導体チップ5の端子52が形成された第1の領域に設けられた樹脂組成物層1で、その第1の領域および回路基板4の端子44が形成された第2の領域を覆うように、半導体チップ5と回路基板4とを接着する接合方法であって、端子52と端子44とを電気的に接続するに際し、減圧雰囲気下で、半導体チップ5と回路基板4とを樹脂組成物層1を介して圧着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法、半導体装置、多層回路基板および電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化および軽薄短小化の要求に伴い、これらの電子機器に使用される半導体パッケージも、従来にも増して、小型化かつ多ピン化が進んできている。これら電子部品の電気的な接続を得るためには、半田接合(半田接続)が用いられている。この半田接合としては、例えば半導体チップ同士の導通接合部、フリップチップで搭載したパッケージのような半導体チップと回路基板間との導通接合部、回路基板同士の導通接合部等が挙げられる。この半田接合部には、電気的な接続強度および機械的な接続強度を確保するために、一般的にアンダーフィル材と呼ばれる封止樹脂が注入されている(アンダーフィル封止)。
【0003】
この半田接合部よって生じた空隙(ギャップ)を液状封止樹脂(アンダーフィル材)で補強する場合、半田接合後に液状封止樹脂(アンダーフィル材)を供給し、これを硬化することによって半田接合部を補強している。しかしながら、電子部品の薄化、小型化に伴い、半田接合部は狭ピッチ化/狭ギャップ化しているため、半田接合後に液状封止樹脂(アンダーフィル材)を供給してもギャップ間に液状封止樹脂(アンダーフィル材)が行き渡らなく、完全に充填することが困難になるという問題が生じている。
【0004】
このような問題に対して、フラックス機能を有する接着フィルムを介して、半田接合と接着とを一括で行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ところで、接着フィルムを用いて、半導体チップ同士、半導体チップと回路基板、回路基板同士を接合する場合、例えば、半導体チップと回路基板と接合する場合は、半導体チップまたは回路基板に接着フィルムを貼り付けた後、半導体チップと回路基板との位置合わせを行う。
【0006】
次に、半導体チップと回路基板とを接着フィルムを介して圧着(仮圧着)し、回路基板上に半導体チップを固定する。
【0007】
次に、半田バンプを溶融してパッド部と半田接合する半田接合部を形成し、この後、接着フィルムを加熱して硬化させる。
【0008】
しかしながら、前記従来の方法では、半導体チップと回路基板とを接着フィルムを介して圧着する際、接着フィルム内に気泡(空気)が混入し、この状態で加熱して、半田バンプの溶融、接着フィルムの硬化を行うので、半導体チップと回路基板とを接合している硬化した接着フィルム内にボイドが生じてしまう。これにより、そのボイドにより、硬化した接着フィルムの強度が低下し、半導体チップや回路基板が剥離し易くなり、信頼性が低下するという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−107006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、樹脂組成物層内にボイドが生じることを防止することができる接合方法、および、このような接合方法を用いて製造される半導体装置、多層回路基板および電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記(1)〜(15)の本発明により達成される。
(1) 第1の端子を有する第1の被着体と、第2の端子を有する第2の被着体とを、前記第1の被着体の前記第1の端子が設置された面と、第2の被着体の前記第2の端子が設置された面とが対向するように配置し、前記第1の端子とそれに対応する前記第2の端子とを電気的に接続するとともに、前記第1の被着体の前記第1の端子が形成された第1の領域と、前記第2の被着体の前記第2の端子が形成された第2の領域との少なくとも一方に設けられた樹脂組成物層で、前記第1の領域および前記第2の領域を覆うように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを接着する接合方法であって、
前記第1の端子とそれに対応する前記第2の端子とを電気的に接続するに際し、減圧雰囲気下で、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを前記樹脂組成物層を介して圧着することを特徴とする接合方法。
【0012】
(2) 前記第1の端子と前記第2の端子との一方に、ろう材で構成されたバンプが設けられており、
前記バンプを溶融しつつ、前記第1の端子と前記第2の端子とを前記ろう材で電気的に接続する上記(1)に記載の接合方法。
【0013】
(3) 前記第1の被着体と前記第2の被着体とを前記樹脂組成物層を介して圧着した後、前記バンプを溶融しつつ、前記第1の端子と前記第2の端子とを前記ろう材で電気的に接続する上記(2)に記載の接合方法。
【0014】
(4) 加圧雰囲気下で、前記バンプを溶融しつつ、前記第1の端子と前記第2の端子とを前記ろう材で電気的に接続する上記(3)に記載の接合方法。
【0015】
(5) 前記加圧雰囲気の圧力は、0.15MPa以上である上記(4)に記載の接合方法。
【0016】
(6) 減圧雰囲気下で、前記バンプを溶融しつつ、前記第1の端子と前記第2の端子とを前記ろう材で電気的に接続する上記(2)または(3)に記載の接合方法。
【0017】
(7) 前記第1の端子と前記第2の端子とを電気的に接続した後、前記樹脂組成物層を硬化し、該樹脂組成物層の硬化物により、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを接着する上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の接合方法。
【0018】
(8) 前記第1の被着体と前記第2の被着体とを前記樹脂組成物層を介して圧着する前に、減圧雰囲気下で、前記第1の被着体と、前記第2の被着体との位置合わせを行う上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の接合方法。
【0019】
(9) 前記減圧雰囲気の圧力は、100kPa以下である上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の接合方法。
【0020】
(10) 前記第1の被着体側と前記第2の被着体側とを接触させたとき、前記第1の被着体側と前記第2の被着体側との間に隙間が形成される上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の接合方法。
【0021】
(11) 前記樹脂組成物層は、フラックス機能を有する化合物を含有する上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の接合方法。
【0022】
(12) 前記樹脂組成物層は、フィルム状をなしている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の接合方法。
【0023】
(13) 上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の接合方法により接合された前記第1の被着体と前記第2の被着体とを有することを特徴とする半導体装置。
【0024】
(14) 上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の接合方法により接合された前記第1の被着体と前記第2の被着体とを有することを特徴とする多層回路基板。
【0025】
(15) 上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の接合方法により接合された前記第1の被着体と前記第2の被着体とを有することを特徴とする電子部品。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、減圧雰囲気下で第1の被着体と第2の被着体とを樹脂組成物層を介して圧着するので、樹脂組成物層内にボイドが生じることを防止することができる。これにより、第1の被着体と第2の被着体との接合強度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の接合方法の実施形態において用いる接着フィルムの構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の接合方法の第1実施形態を用いた半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【図3】本発明の接合方法の第1実施形態を用いた半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【図4】本発明の接合方法の第1実施形態を用いた多層回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の接合方法の第1実施形態を用いた多層回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。
【図6】本発明の接合方法の第3実施形態を用いた半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の接合方法、半導体装置、多層回路基板および電子部品を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0029】
本発明の接合方法は、第1の端子を有する第1の被着体と、第2の端子を有する第2の被着体とを、前記第1の被着体の前記第1の端子が形成された第1の領域と、前記第2の被着体の前記第2の端子が形成された第2の領域との少なくとも一方に設けられた樹脂組成物層で、前記第1の領域および前記第2の領域を覆うように接着する接合方法であるが、下記の実施形態では、代表的に、半導体チップと回路基板とを接合する場合、回路基板同士を接合する場合について説明する。
【0030】
<第1実施形態>
《接着フィルム》
まずは、本発明の接合方法の実施形態において用いる接着フィルムについて説明する。
【0031】
図1は本発明の接合方法の実施形態において用いる接着フィルムの構成例を示す断面図である。
【0032】
なお、以下では、図1中の左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0033】
図1に示すように、接着フィルム1aは、ベースフィルム3と、ベースフィルム3上に設けられ、樹脂組成物で構成されたフィルム状をなす樹脂組成物層1と、樹脂組成物層1上に設けられたカバーフィルム2とを有している。すなわち、樹脂組成物層1は、未使用時には、カバーフィルム2と、ベースフィルム3との間に設置されている。カバーフィルム2およびベースフィルム3は、樹脂組成物層1を保護する機能を有しており、使用時には剥離される。なお、カバーフィルム2やベースフィルム3が省略されていてもよい。
【0034】
接着フィルム1aの樹脂組成物層1は、接着性を有し、半導体チップ(半導体パッケージ)を回路基板に実装する際に用いられ、半導体チップおよび回路基板に貼着するものである。なお、本明細書中において、回路基板とは、例えば、配線回路が形成された、半導体ウエハ、リジット基板、フレキシブル基板、リジットフレキシブル基板等のことをいう。
【0035】
また、樹脂組成物層1は、フラックス機能(フラックス活性)を有していることが好ましいが、フラックス機能を有していなくてもよい。
【0036】
樹脂組成物層1は、例えば、以下に示すような成分で構成することができる。すなわち、樹脂組成物層1は、(A)重量平均分子量が300〜1500であるフェノール系硬化剤(以下、化合物(A)とも記載する。)と、(B)エポキシ樹脂と(以下、化合物(B)とも記載する。)、(C)フラックス機能(活性)を有する化合物(以下、化合物(C)とも記載する。)と、(D)重量平均分子量が1万〜100万である成膜性樹脂(以下、化合物(D)とも記載する。)と、を含むことが好ましい。
【0037】
また、樹脂組成物層1は、化合物(A)を3〜30重量%、化合物(B)を10〜80重量%、化合物(D)を10〜50重量%含むことが好ましい。また、さらに、化合物(A)を5〜25重量%、化合物(B)を15〜75重量%、化合物(D)を15〜40重量%含むことが好ましい。
【0038】
樹脂組成物層1が化合物(A)を含むことにより、樹脂組成物層1の硬化物のガラス転移温度を高めること、および、アウトガスとなるフェノール系ノボラック樹脂の量を低減することができ、さらに、耐イオンマイグレーション性を向上させることが可能となる。また、樹脂組成物層1に適度な柔軟性を付与することができるため、樹脂組成物層1の脆性を改善することが可能となる。さらに、樹脂組成物層1に適度なタック性を付与することができるため、作業性に優れた樹脂組成物層1を得ることができる。
【0039】
前記化合物(A)としては、特に限定されず、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ビスフェノールF型ノボラック樹脂、ビスフェノールAF型ノボラック樹脂等が挙げられる。中でも、上述したような関係をより容易に満足させることができるとともに、また、樹脂組成物層1の硬化物のガラス転移温度を効果的に高めることができ、アウトガスとなるフェノール系ノボラック樹脂の量を低減することができる、フェノールノボラッック樹脂、クレゾールノボラック樹脂を用いるのが好ましい。
【0040】
樹脂組成物層1中における前記化合物(A)の含有量は、特に限定されるわけではないが、3〜30重量%であるのが好ましく、5〜25重量%であるのがより好ましい。化合物(A)の含有量を上記範囲とすることで、樹脂組成物層1の硬化物のガラス転移温度を効果的に高めること、さらに、アウトガスとなるフェノール系ノボラック樹脂の量を効果的に低減することを両立することができる。
【0041】
前記化合物(A)中の1核体から3核体の合計の含有量が30%より小さい(4核体以上の合計の含有量が70%以上)場合、後述する(B)エポキシ樹脂との反応性が低下し、樹脂組成物層1の硬化物中に未反応のフェノール系ノボラック樹脂が残留するため、耐マイグレーション性が低下してしまう場合がある。また、樹脂組成物層1が脆くなってしまい、作業性が低下してしまう場合がある。また、前記化合物(A)中の1核体から3核体の合計の含有量が70%より大きい(4核体以上の合計の含有量が30%以下)場合、樹脂組成物層1を硬化させる際のアウトガス量が増大し、半導体チップ、基板等の支持体または被着体の表面を汚染してしまったり、耐マイグレーション性が低下してしまったり、さらに、樹脂組成物層1のタック性が大きくなり、樹脂組成物層1の作業性が低下してしまうといった問題が生じる場合がある。
【0042】
前記化合物(A)中の2核体と3核体の合計の含有量は、特に限定されないが、30〜70%であるのが好ましい。これにより、樹脂組成物層1を硬化させる際のアウトガス量が増大し、半導体チップ、回路基板等の支持体または被着体の表面を汚染してしまうことをより効果的に防止することができる。また、これにより、樹脂組成物層1の柔軟性と屈曲性をより効果的に確保することができる。
【0043】
前記化合物(A)中の1核体の含有量は、特に限定されないが、1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることが特に好ましい。前記1核体の含有量を、上記範囲とすることで、樹脂組成物層1を硬化する際のアウトガス量を低減することができ、半導体チップ、回路基板等の支持体または被着体の汚染を抑制することができ、さらに、耐マイグレーション性を向上することができる。
【0044】
前記化合物(A)の重量平均分子量は、特に限定されないが、300〜1,500であることが好ましく、400〜1,400であることが特に好ましい。これにより、樹脂組成物層1を硬化させる際のアウトガス量が増大し、半導体チップ、回路基板等の支持体または被着体の表面を汚染してしまうことをより効果的に防止することができる。また、これにより、樹脂組成物層1の柔軟性と屈曲性をより効果的に確保することができる。ここで、重量平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラム)により測定することができる。
【0045】
前記化合物(B)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、樹脂組成物層1の、半導体チップ、基板等の支持体または被着体に対する密着性、さらに、樹脂組成物層1の硬化後の機械特性に優れる、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0046】
また、前記化合物(B)エポキシ樹脂としては、より好ましくは、25℃における粘度が、500〜50,000mPa・sであるもの、さらに好ましくは、800〜40,000mPa・sであるものが挙げられる。25℃における粘度を上記下限値以上とすることで、樹脂組成物層1のタック性が強くなり、ハンドリング性が低下することを防止することができる。また、25℃における粘度を上記上限値以下とすることで、樹脂組成物層1の柔軟性と屈曲性を確保することができる。
【0047】
また、前記化合物(B)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、10〜80重量%であるのが好ましく、15〜75重量%であるのがより好ましい。これにより、樹脂組成物層1の柔軟性と屈曲性をより効果的に発現させることができる。また、これにより、樹脂組成物層1のタック性が強くなり、ハンドリング性が低下することをより効果的に防止することができる。
【0048】
また、樹脂組成物層1が(C)フラックス機能を有する化合物(以下、化合物(C)とも記載する。)を含むことにより、支持体(半導体チップ、基板等)の第一の端子および被着体(半導体チップ、基板等)の第二の端子の少なくとも一方の半田表面の酸化膜を除去すること、また、場合によっては、支持体の第一の端子または被着体の第二の端子表面の酸化膜を除去することができ、前記第一の端子と前記第二の端子を確実に半田接合(半田接続)することができるため、接続信頼性の高い多層回路基板、電子部品、半導体装置等を得ることができる。
【0049】
前記化合物(C)としては、半田表面の酸化膜を除去する働きがあれば、特に限定されるものではないが、カルボキシル基またはフェノール性水酸基のいずれか、あるいは、カルボキシル基およびフェノール水酸基の両方を備える化合物が好ましい。
【0050】
前記化合物(C)の配合量は、1〜30重量%であるのが好ましく、3〜20重量%であるのがより好ましい。化合物(C)の配合量が、上記範囲であることにより、フラックス機能を向上させることができるとともに、樹脂組成物層1を硬化した際に、未反応の化合物(A)、化合物(B)および化合物(C)が残存するのを防止することができ、耐マイグレーション性を向上することができる。
【0051】
また、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する化合物の中には、(C)フラックス機能を有する化合物が存在する(以下、このような化合物を、フラックス機能を有する硬化剤とも記載する。)。例えば、エポキシ樹脂の硬化剤として作用する、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸等は、フラックス作用も有している。本発明では、このような、フラックスとしても作用し、エポキシ樹脂の硬化剤としても作用するようなフラックス機能を有する硬化剤を、好適に用いることができる。
【0052】
なお、カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物とは、分子中にカルボキシル基が1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。また、フェノール性水酸基を備える(C)フラックス機能を有する化合物とは、分子中にフェノール性水酸基が1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。また、カルボキシル基およびフェノール性水酸基を備える(C)フラックス機能を有する化合物とは、分子中にカルボキシル基およびフェノール性水酸基がそれぞれ1つ以上存在するものをいい、液状であっても固体であってもよい。
【0053】
これらのうち、カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物としては、脂肪族酸無水物、脂環式酸無水物、芳香族酸無水物、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0054】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る脂肪族酸無水物としては、無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物等が挙げられる。
【0055】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る脂環式酸無水物としては、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0056】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物芳香族酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート等が挙げられる。
【0057】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る脂肪族カルボン酸としては、例えば、下記一般式(2a)で示される化合物や、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ピバル酸カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸等が挙げられる。
HOOC−(CH−COOH (2a)
(式(2a)中、nは、1以上20以下の整数を表す。)
【0058】
前記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物に係る芳香族カルボン酸としては、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、トリメシン酸、メロファン酸、プレーニト酸、ピロメリット酸、メリット酸、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、トルイル酸、ケイ皮酸、サリチル酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、浸食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフトエ酸誘導体、フェノールフタリン、ジフェノール酸等が挙げられる。
【0059】
これらの前記カルボキシル基を備える(C)フラックス機能を有する化合物のうち、(C)フラックス機能を有する化合物が有する活性度、樹脂組成物層1の硬化時におけるアウトガスの発生量、および硬化後の樹脂組成物層1の弾性率やガラス転移温度等のバランスが良い点で、前記一般式(2a)で示される化合物が好ましい。そして、前記一般式(2a)で示される化合物のうち、式(2a)中のnが3〜10である化合物が、硬化後の樹脂組成物層1における弾性率が増加するのを抑制することができるとともに、半導体チップ、基板等の支持体と被着体の接着性を向上させることができる点で、特に好ましい。
【0060】
前記一般式(2a)で示される化合物のうち、式(2a)中のnが3〜10である化合物としては、例えば、n=3のグルタル酸(HOOC−(CH−COOH)、n=4のアジピン酸(HOOC−(CH−COOH)、n=5のピメリン酸(HOOC−(CH−COOH)、n=8のセバシン酸(HOOC−(CH−COOH)およびn=10のHOOC−(CH10−COOH−等が挙げられる。
【0061】
前記フェノール性水酸基を備える(C)フラックス機能を有する化合物としては、フェノール類が挙げられ、具体的には、例えば、フェノール、o−クレゾール、2,6−キシレノール、p−クレゾール、m−クレゾール、o−エチルフェノール、2,4−キシレノール、2,5キシレノール、m−エチルフェノール、2,3−キシレノール、メジトール、3,5−キシレノール、p−ターシャリブチルフェノール、カテコール、p−ターシャリアミルフェノール、レゾルシノール、p−オクチルフェノール、p−フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAF、ビフェノール、ジアリルビスフェノールF、ジアリルビスフェノールA、トリスフェノール、テトラキスフェノール等のフェノール性水酸基を含有するモノマー類等が挙げられる。
【0062】
上述したようなカルボキシル基またはフェノール水酸基のいずれか、あるいは、カルボキシル基およびフェノール水酸基の両方を備える化合物は、エポキシ樹脂との反応で三次元的に取り込まれる。
【0063】
そのため、硬化後のエポキシ樹脂の三次元的なネットワークの形成を向上させるという観点からは、(C)フラックス機能を有する化合物としては、フラックス作用を有し且つエポキシ樹脂の硬化剤として作用するフラックス機能を有する硬化剤を用いるのが好ましい。フラックス機能を有する硬化剤としては、例えば、1分子中に、エポキシ樹脂に付加することができる2つ以上のフェノール性水酸基と、フラックス作用(還元作用)を示す芳香族に直接結合した1つ以上のカルボキシル基とを備える化合物が挙げられる。このようなフラックス機能を有する硬化剤としては、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸(2,5−ジヒドロキシ安息香酸)、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、没食子酸(3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸)等の安息香酸誘導体;1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,7−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフトエ酸誘導体;フェノールフタリン;およびジフェノール酸等が挙げられ、これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
これらの中でも、半田表面の酸化膜を除去する効果とエポキシ樹脂との反応性に優れる、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、ゲンチジン酸、フェノールフタリンを用いるのが好ましい。
【0065】
また、樹脂組成物層1中、フラックス機能を有する硬化剤の配合量は、1〜30重量%が好ましく、3〜20重量%が特に好ましい。樹脂組成物層1中のフラックス機能を有する硬化剤の配合量が、上記範囲であることにより、樹脂組成物層1のフラックス機能を向上させることができるとともに、樹脂組成物層1中に、エポキシ樹脂と未反応のフラックス機能を有する硬化剤が残存するのが防止される。なお、未反応のフラックス機能を有する硬化剤が残存すると、マイグレーションが発生する。
【0066】
前記化合物(B)と前記化合物(C)の配合比は、特に限定されないが、((B)/(C))が0.5〜12.0であることが好ましく、2.0〜10.0であることが特に好ましい。((B)/(C))を上記下限値以上とすることで、樹脂組成物層1を硬化させる際に、未反応の化合物(C)を低減することができるため、耐マイグレーション性を向上することができる。また、上記上限値以下とすることで、樹脂組成物層1を硬化させる際に、未反応の化合物(B)を低減することができるため、耐マイグレーション性を向上することができる。
【0067】
また、樹脂組成物層1が樹脂組成物層1の成膜性を向上する(D)成膜性樹脂を含むことにより、フィルム状態にするのが容易となる。また、樹脂組成物層1の機械的特性にも優れる。
【0068】
前記(D)成膜性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、シロキサン変性ポリイミド樹脂、ポリブタジエン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ナイロン等を挙げることができる。これらは、1種で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、(D)成膜性樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂およびポリイミド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を用いるのが好ましい。
【0069】
前記(D)成膜性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、1万以上が好ましく、より好ましくは2万〜100万、更に好ましくは3万〜90万である。重量平均分子量が前記範囲であると、樹脂組成物層1の成膜性をより向上させることができる。
【0070】
前記(D)成膜性樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物層1中の10〜50重量%であるのが好ましく、15〜40重量%であるのがより好ましく、20〜35重量%がさらに好ましい。含有量が前記範囲内であると、樹脂組成物層1の流動性を抑制することができ、樹脂組成物層1の取り扱いが容易になる。
【0071】
また、樹脂組成物層1は、硬化促進剤を更に含んでもよい。硬化促進剤は硬化性樹脂の種類等に応じて適宜選択することができる。硬化促進剤としては、例えば融点が150℃以上のイミダゾール化合物を使用することができる。使用される硬化促進剤の融点が150℃以上であると、樹脂組成物層1の硬化が完了する前に、半田バンプを構成する半田成分が半導体チップに設けられた内部電極表面に移動することができ、内部電極間の電気的接続を良好なものとすることができる。融点が150℃以上のイミダゾール化合物としては、2-フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4−メチルヒドロキシイミダゾール等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
樹脂組成物層1中の前記硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、0.005〜10重量%であるのが好ましく、0.01〜5重量%であるのがより好ましい。これにより、硬化促進剤としての機能を更に効果的に発揮させて、樹脂組成物層1の硬化性を向上させることができるとともに、半田バンプを構成する半田成分の溶融温度における樹脂の溶融粘度が高くなりすぎず、良好な半田接合構造が得られる。また、樹脂組成物層1の保存性を更に向上させることができる。
これらの硬化促進剤は、1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
また、前記樹脂組成物層1は、シランカップリング剤を更に含んでもよい。シランカップリング剤を含むことにより、半導体チップ、基板等の支持体または被着体に対する樹脂組成物層1の密着性を高めることができる。シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、芳香族含有アミノシランカップリング剤等が使用できる。これらは1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。シランカップリング剤の配合量は、適宜選択すればよいが、前記樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.05〜5重量%であり、更に好ましくは0.1〜2重量%である。
【0074】
前記樹脂組成物層1は、無機充填材を更に含んでもよい。これにより、樹脂組成物層1の線膨張係数を低下することができ、それによって信頼性を向上することができる。
【0075】
前記無機充填材としては、例えば、銀、酸化チタン、シリカ、マイカ等を挙げることができるが、これらの中でもシリカが好ましい。また、シリカフィラーの形状としては、破砕シリカと球状シリカがあるが、球状シリカが好ましい。
【0076】
前記無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、0.01μm以上、20μm以下であるのが好ましく、0.1μm以上、5μm以下であるのがより好ましい。上記範囲とすることで、樹脂組成物層1内でフィラーの凝集を抑制し、外観を向上させることができる。
【0077】
前記無機充填材の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物層1全体に対して0.1〜85重量%であるのが好ましく、20〜80重量%であるのがより好ましい。上記範囲とすることで、硬化後の樹脂組成物層1と被接体との間の線膨張係数差が小さくなり、熱衝撃の際に発生する応力を低減させることができるため、被接体の剥離をさらに確実に抑制することができる。さらに、硬化後の樹脂組成物層1の弾性率が高くなりすぎるのを抑制することができるため、半導体装置の信頼性が上昇する。
【0078】
上述したような各樹脂成分を、溶媒中に混合して得られたワニスをポリエステルシート等の剥離処理を施した基材(ベースフィルム3)上に塗布し、所定の温度で、実質的に溶媒を含まない程度にまで乾燥させることにより、樹脂組成物層1を得ることができる。ここで用いられる溶媒は、使用される成分に対し不活性なものであれば特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK (ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、DAA(ジアセトンアルコール)等のケトン類、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、DBE(ニ塩基酸エステル)、EEP(3−エトキシプロピオン酸エチル)、DMC(ジメチルカーボネート)等が好適に用いられる。溶媒の使用量は、溶媒に混合した成分の固形分が10〜60重量%となる範囲であることが好ましい。
【0079】
このようにして得られた樹脂組成物層1は、フラックス機能を有しているものであり、半導体チップと回路基板、回路基板と回路基板、半導体チップと半導体チップ等の半田接合を必要とされる部材の接続において好適に用いることができる。
【0080】
また、樹脂組成物層1の厚さは、特に限定されないが、1〜300μmであることが好ましく、5〜200μmであることがより好ましい。厚さが前記範囲内であると、半導体チップと回路基板との間隙、回路基板と回路基板との間隙、半導体チップと半導体チップとの間隙に、樹脂成分を十分に充填することができ、樹脂成分の硬化後の機械的接着強度を十分に確保することができる。
【0081】
《接合方法、半導体装置の製造方法および半導体装置》
次に、本発明の接合方法の実施形態、その接合方法を用いた半導体装置の製造方法および半導体装置について説明する。
【0082】
図2および図3は、本発明の接合方法の第1実施形態を用いた半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。なお、以下では、図2および図3中の左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0083】
図2に示すように、基材41、配線回路42、絶縁部43、複数の端子(第2の端子)44を有する回路基板(第2の被着体)4を用意する(図2(a))。端子44は、回路基板4の本体部40からその本体部40(回路基板4)の厚さ方向、すなわち上側に向って突出している。なお、端子44は、本体部40から突出していなくてもよいことは、言うまでもない。
【0084】
回路基板4の配線回路42の平均厚さは、1〜30μmであるのが好ましく、5〜20μmであるのがより好ましい。
【0085】
また、隣接する配線回路42の中心間距離は、1〜500μmであるのが好ましく、5〜300μmであるのがより好ましい。
【0086】
一方、ろう材で構成されたバンプとして複数の半田バンプ51、複数の端子(第1の端子)52を備えた半導体チップ(第1の被着体)5を用意する(図2(b))。端子52は、半導体チップ5の本体部50からその本体部50(半導体チップ5)の厚さ方向、すなわち下側に向って突出している。また、半田バンプ51は、端子52の下端部に設けられている。この半田バンプ51の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、錫−鉛系、錫−銀系、錫−亜鉛系、錫−ビスマス系、錫−アンチモン系、錫−銀−ビスマス系、錫−銅系、錫−銀−銅系、錫−銀−銅−ビスマス系、インジウム、銀−インジウム、錫−インジウム等の半田を用いることができる。なお、端子52は、本体部50から突出していなくてもよいことは、言うまでもない。
【0087】
そして、半導体チップ5の端子52側の全面を覆うように、上述した樹脂組成物層1をラミネート(貼着)する(図2(b))。これにより、半田バンプ51および端子52は、樹脂組成物層1中に埋まる。
【0088】
なお、樹脂組成物層1は、半導体チップ5の端子52側の全面に限らず、少なくとも半導体チップ5の端子52が形成された領域(第1の領域)に設けられればよい。
【0089】
また、図示の構成では、半田バンプは、端子52に設けられているが、これに限らず、例えば、端子44に設けられていてもよい。
【0090】
なお、樹脂組成物層1は、打ち抜き加工や切り抜き加工によって、半導体チップ5と同じ大きさにカットして用いる。
【0091】
ラミネート条件は、貼り付け温度Tが60〜150℃であることが好ましく、樹脂組成物層1を押圧する圧力が0.2〜1.0MPaであることが好ましい。
【0092】
また、ラミネートは、雰囲気圧100kPa以下の減圧雰囲気下で行うのが好ましく、雰囲気圧80kPa以下の減圧雰囲気下で行うのがより好ましい。なお、ラミネートを減圧雰囲気下で行う場合は、それを後述するチャンバ110内で行うことができる。
【0093】
また、樹脂組成物層1を半導体チップ5にラミネートする方法としては、例えばロールラミネーター、平板プレス、ウェハラミネーター等が挙げられる。中でもウェハラミネーターを用いるのが好ましい。
【0094】
次に、半導体チップ5と回路基板4とを、半導体チップ5の端子52(半田バンプ51)が設置された面と回路基板4の端子44が設置された面とが対向するように配置し、半導体チップ5と回路基板4との位置合わせを行う(図2(b))。すなわち、半導体チップ5上に設けられたアライメントマーク53と、回路基板4上に設けられたアライメントマーク46とを、回路基板4や半導体チップ5の厚さ方向から見て一致させ、回路基板4上に半導体チップ5を載置する。これにより、半導体チップ5の半田バンプ51と、その半田バンプ51に対応する回路基板4の端子44が、回路基板4や半導体チップ5の厚さ方向から見て一致する。また、この回路基板4上に半導体チップ5が載置された状態、すなわち、半導体チップ5側と回路基板4側とが接触した状態では、半導体チップ5にラミネートされた樹脂組成物層1と回路基板4(本体部40)との間、すなわち、半導体チップ5側と回路基板4側との間に、隙間が形成される。
【0095】
なお、回路基板4では、そのアライメントマーク46に換えて、例えば、端子44(突起)等の回路基板4の所定部位をアライメントマークとして用いることができる。また、同様に、半導体チップ5では、アライメントマーク53に換えて、例えば、半田バンプ51(突起)等の半導体チップ5の所定部位をアライメントマークとして用いることができる。
【0096】
次に、前記半導体チップ5および回路基板4をチャンバ110内に入れ、チャンバ110内を減圧する(図2(c))。チャンバ110内の圧力は、100kPa以下であることが好ましく、0.1Pa〜80kPaであることがより好ましく、1Pa〜8kPaであることがさらに好ましい。
【0097】
そして、前記減圧雰囲気下(減圧状態)で、半導体チップ5と回路基板4とを樹脂組成物層1を介して圧着(仮圧着)し、回路基板4上に半導体チップ5を固定する(図3(d))。圧着する方法としては、特に限定されないが、圧着機、フリップチップボンダー等を用い行うことができる。
【0098】
この工程(圧着工程)では、減圧雰囲気下で半導体チップ5と回路基板4とを樹脂組成物層1を介して圧着することにより、樹脂組成物層1内(特に、樹脂組成物層1と回路基板4との間)に気泡が混入することを防止することができ、後述する樹脂組成物層1の硬化物1’内にボイドが生じることを防止することができる。これにより、信頼性の高い半導体装置10を製造することができる。
【0099】
また、チャンバ110内を減圧する際、半導体チップ5にラミネートされた樹脂組成物層1と回路基板4との間に隙間が形成されているので、半導体チップ5と回路基板4とを樹脂組成物層1を介して圧着するとき、樹脂組成物層1内に気泡が混入することをより確実に防止することができる。
【0100】
圧着する条件は、特に限定されないが、温度は、樹脂組成物層1の軟化温度以上で、かつ、樹脂組成物層1の硬化が完了しない程度が好ましい。樹脂組成物層1を軟化させることにより、樹脂組成物層1内に気泡が混入している場合、その気泡を除去することができる。なお、温度を高くすると、樹脂組成物層1の軟化が進み、樹脂組成物層1から気泡が除去され易くなるが、温度を高くし過ぎると、時間等の他の条件によっては、樹脂組成物層1の硬化が完了または進行し過ぎてしまう。このため、温度は40〜200℃が好ましく、60〜180℃が特に好ましい。また、時間は0.1〜60秒が好ましく、1〜60秒が特に好ましい。さらに、半導体チップ5または回路基板4を押圧する圧力が0.1〜2.0MPaが好ましく、0.3〜1.5MPaが特に好ましい。これにより、半導体チップ5を回路基板4に確実に圧着することができる。
【0101】
次に、チャンバ110内を加圧する。チャンバ110内の圧力は、0.15MPa以上であることが好ましく、0.2〜2.0MPaであることがより好ましく、0.3〜1.0MPaであることがさらに好ましい。
【0102】
この場合、チャンバ110内の雰囲気を、例えば、ヘリウム、窒素、アルゴン等の不活性ガスに置換してからチャンバ110内を加圧してもよい。
【0103】
また、チャンバ110内の雰囲気の湿度は、70%RH以下であることが好ましく、60%RH以下であることがより好ましく、50%RH以下であることがさらに好ましい。
【0104】
そして、前記加圧雰囲気下(加圧状態)で、半田バンプ51を溶融しつつ、端子44と端子52とを半田接合する半田接続部511を形成する(図3(e))。これにより、端子44と、その端子44に対応する端子52とが電気的に接続される。この工程(半田接合工程)では、樹脂組成物層1内に気泡が存在していてもその気泡が除去され、樹脂組成物層1の硬化物1’内にボイドが生じることを防止することができる。
【0105】
半田接合する条件は、使用する半田の種類にもよるが、例えばSn3.5Agの場合、温度は220〜260℃が好ましく、230〜250℃が特に好ましい。また、時間は5〜500秒が好ましく、10〜100秒が特に好ましい。さらに、半導体チップ5または回路基板4を押圧する圧力は0.1〜2.0MPaが好ましく、0.3〜1.5MPaが特に好ましい。半田接合する条件は、使用する半田により、適宜選択することができる。なお、半田接合の際は、半導体チップ5や回路基板4を押圧しなくてもよい。
【0106】
この半田接合は、半田バンプ51が溶融した後に、樹脂組成物層1が硬化するような条件で行うことが好ましい。すなわち、半田接合は、半田バンプ51を溶融させるが、樹脂組成物層1の硬化があまり進行しないような条件で実施することが好ましい。これにより、半田接合する際の半田接続部511の形状を接続信頼性に優れるような安定した形状とすることができる。
【0107】
なお、半田接合と、後述する樹脂組成物層1の硬化とを同時に行ってもよいことは、言うまでもない。
【0108】
次に、前記半田接合が完了した半導体チップ5と回路基板4との積層体をチャンバ110から取り出し、樹脂組成物層1を加熱して硬化させる。硬化させる条件は、特に限定されないが、温度は130〜220℃が好ましく、150〜200℃が特に好ましい。また、時間は30〜500分が好ましく、60〜180分が特に好ましい。
【0109】
次に、マザーボードに半導体装置を実装するためのバンプ45を形成する(図3(f))。バンプ45は導電性を有する金属材料であれば、特に制限されないが、導電性と応力緩和性に優れる半田が好ましい。また、バンプ45の形成方法は、特に制限されないが、フラックスを利用して半田ボールを接続することにより形成することができる。
【0110】
このようにして、図3(f)に示すような、回路基板4と半導体チップ5とが樹脂組成物層1の硬化物1’で接着された半導体装置10を得ることができる。なお、硬化物1’により、半導体チップ5の端子52が形成された領域および回路基板4の端子44が形成された領域が覆われる。
【0111】
なお、半導体チップ5と回路基板4との位置合わせ(位置決め工程)は、減圧雰囲気下で行ってもよい。すなわち、半導体チップ5側と回路基板4側とを接触させる前に、減圧を行ってもよい。これにより、樹脂組成物層1内に気泡が混入することをより確実に防止することができる。なお、減圧雰囲気の圧力の好適値は、前述した半導体チップ5と回路基板4とを樹脂組成物層1を介して圧着する工程と同様である。
【0112】
また、樹脂組成物層1を加熱して硬化する工程(硬化工程)は、減圧雰囲気下で行ってもよい。これにより、樹脂組成物層1内に気泡が存在していてもその気泡を除去することができる。なお、減圧雰囲気の圧力の好適値は、前述した半導体チップ5と回路基板4とを樹脂組成物層1を介して圧着する工程と同様である。
【0113】
また、樹脂組成物層1を加熱して硬化する工程は、加圧雰囲気下で行ってもよい。これにより、樹脂組成物層1内に気泡が存在していてもその気泡を除去することができる。なお、加圧雰囲気の圧力の好適値は、前述した端子44と端子52とを半田接合する半田接続部511を形成する工程と同様である。
【0114】
《多層回路基板の製造方法および多層回路基板》
次に、前述した接合方法を用いた多層回路基板の製造方法および多層回路基板について説明する。なお、前述した半導体装置の製造方法との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0115】
図4および図5は、本発明の接合方法の第1実施形態を用いた多層回路基板の製造方法の一例を示す断面図である。なお、以下では、図4および図5中の左側を「左」、右側を「右」、上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0116】
図4に示すように、基材61、配線回路62、絶縁部63、複数の端子(第2の端子)64を有する回路基板(第2の被着体)6を用意する(図4(a))。端子64は、回路基板6の本体部40からその本体部60(回路基板6)の厚さ方向、すなわち上側に向って突出している。
【0117】
一方、基材71、配線回路72、絶縁部73、ろう材で構成されたバンプとして複数の半田バンプ75、複数の端子(第1の端子)76、複数の端子74を有する回路基板(第1の被着体)7を用意する(図4(b))。端子76は、回路基板7の本体部70からその本体部70(回路基板7)の厚さ方向、すなわち下側に向って突出している。また、端子74は、回路基板7の本体部70からその本体部70(回路基板7)の厚さ方向、すなわち上側に向って突出している。なお、半田バンプ75の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、錫−鉛系、錫−銀系、錫−亜鉛系、錫−ビスマス系、錫−アンチモン系、錫−銀−ビスマス系、錫−銅系、錫−銀−銅系、錫−銀−銅−ビスマス系、インジウム、銀−インジウム、錫−インジウム等の半田を用いることができる。
【0118】
そして、回路基板7の端子76側の全面を覆うように、樹脂組成物層1を前述した半導体装置の製造方法と同様の条件でラミネート(貼着)する(図4(b))。
【0119】
次に、回路基板6と回路基板7とを、回路基板6の端子64が設置された面と、回路基板7の端子76(半田バンプ75)が設置された面とが対向するように配置し、回路基板6と回路基板7との位置合わせを行う(図4(b))。すなわち、回路基板6の端子64と、その端子64に対応する回路基板7の半田バンプ75とを、回路基板6や回路基板7の厚さ方向から見て一致させ、回路基板6上に回路基板7を載置する。
【0120】
次に、前述した半導体装置の製造方法と同様の条件にて、チャンバ110内を減圧し(図4(c))、減圧雰囲気下(減圧状態)で、回路基板6と回路基板7とを樹脂組成物層1を介して圧着(仮圧着)し、回路基板6上に回路基板7を固定する(図5(d))。
【0121】
次に、前述した半導体装置の製造方法と同様の条件にて、チャンバ110内を加圧し、加圧雰囲気下(加圧状態)で、半田バンプ75を溶融して端子64と端子76とを半田接合する半田接続部711を形成する(図5(e))。これにより、端子64と、その端子64に対応する端子76とが電気的に接続される。
【0122】
次に、前述した半導体装置の製造方法と同様の条件で、各樹脂組成物層1を硬化させ、図5(f)に示すような、回路基板6と回路基板7とが樹脂組成物層1の硬化物1’で接着された多層回路基板20を得ることができる。なお、硬化物1’により、回路基板6の端子64が形成された領域および回路基板7の端子76が形成された領域が覆われる。
【0123】
なお、本実施形態では、回路基板を2層積層する実施形態について記載したが、積層する基板の数は3層以上でも構わない。
【0124】
また、上記と同様の方法により、半導体チップと半導体チップとを樹脂組成物層1の硬化物1’で接着されている電子部品を得ることができる。
【0125】
<第2実施形態>
本発明の接合方法の第2実施形態、その接合方法を用いた半導体装置の製造方法および半導体装置について説明する。この場合、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0126】
第2実施形態では、チャンバ110内を減圧し、前記減圧雰囲気下(減圧状態)で、半田バンプ51を溶融しつつ、端子44と端子52とを半田接合する半田接続部511を形成する。この工程(半田接合工程)では、樹脂組成物層1内に気泡が存在していてもその気泡が除去され、樹脂組成物層1の硬化物1’内にボイドが生じることを防止することができる。
【0127】
また、チャンバ110内の圧力は、100kPa以下であることが好ましく、1Pa〜80kPaであることがより好ましく、100Pa〜70kPaであることがさらに好ましい。
【0128】
なお、他の工程や他の条件は、前述した第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0129】
なお、本実施形態では、前記半田接合を一定の減圧雰囲気下のみで行っているが、これに限定されず、例えば、雰囲気の圧力を間欠的に変更してもよい。
【0130】
具体例としては、減圧雰囲気から大気圧雰囲気に変更する場合、減圧雰囲気から加圧雰囲気に変更する場合、加圧雰囲気から大気圧雰囲気に変更する場合、加圧雰囲気から減圧雰囲気に変更する場合等や、例えば、加圧と減圧とを交互に繰り返す等の前記の組み合わせが挙げられる。これにより、より確実に樹脂組成物層1から気泡を除去することができる。
【0131】
また、前記雰囲気の圧力を変更する場合は、その圧力を段階的に変更する場合と、連続的に変更する場合のいずれも可能である。
【0132】
この第2実施形態の接合方法は、多層回路基板、電子部品等にも適用することができる。
【0133】
<第3実施形態>
本発明の接合方法の第3実施形態、その接合方法を用いた半導体装置の製造方法および半導体装置について説明する。
【0134】
図6は、本発明の接合方法の第3実施形態を用いた半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。なお、以下では、図6中の左側を「先端」、右側を「基端(後端)」、上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0135】
以下、第3実施形態について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0136】
図6に示すように、第3実施形態では、回路基板4の端子47は、回路基板4の本体部40から突出していない。
【0137】
また、第3実施形態では、半導体チップ5と回路基板4との位置合わせを行う前に、その半導体チップ5および回路基板4をチャンバ110内に入れ、チャンバ110内を減圧する。チャンバ110内の圧力は、前述した第1実施形態において半導体チップ5と回路基板4とを樹脂組成物層1を介して圧着する際の減圧雰囲気の圧力と同様である。
【0138】
そして、前記減圧雰囲気下で、半導体チップ5と回路基板4とを、半導体チップ5の端子52(半田バンプ51)が設置された面と回路基板4の端子47が設置された面とが対向するように配置し、半導体チップ5と回路基板4との位置合わせを行う。すなわち、半導体チップ5上に設けられたアライメントマーク53と、回路基板4上に設けられたアライメントマーク46とを、回路基板4や半導体チップ5の厚さ方向から見て一致させ、回路基板4上に半導体チップ5を載置する。これにより、半導体チップ5の半田バンプ51と、その半田バンプ51に対応する回路基板4の端子44が、回路基板4や半導体チップ5の厚さ方向から見て一致する。また、この回路基板4上に半導体チップ5が載置された状態、すなわち、半導体チップ5側と回路基板4側とが接触した状態では、半導体チップ5にラミネートされた樹脂組成物層1と回路基板4との間、すなわち、半導体チップ5側と回路基板4側との間には、隙間は形成されない。
【0139】
この工程(位置決め工程)では、減圧雰囲気下で回路基板4上に半導体チップ5が載置されることにより、樹脂組成物層1内(特に、樹脂組成物層1と回路基板4との間)に気泡が混入することをより確実に防止することができ、樹脂組成物層1の硬化物1’内にボイドが生じることを防止することができる。
【0140】
なお、他の工程や他の条件は、前述した第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0141】
この第3実施形態の接合方法は、多層回路基板、電子部品等にも適用することができる。また、第3実施形態の接合方法は、第2実施形態の接合方法にも適用することができる。
【0142】
以上、本発明の接合方法、半導体装置、多層回路基板および電子部品を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物や工程が付加されていてもよい。
【0143】
また、本発明は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成や工程(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0144】
なお、前記実施形態では、接着フィルムを用いて樹脂組成物層を設けたが、本発明では、これに限らず、例えば、液状の樹脂組成物を用い、第1の被着体または第2の被着体に、例えば、スピンコートやスクリーン印刷等で樹脂組成物層を設けてもよい。
【0145】
また、前記実施形態では、樹脂組成物層を第1の被着体に設けたが、本発明では、これに限らず、樹脂組成物層を、例えば、第2の被着体に設けてもよく、また、第1の被着体および第2の被着体のそれぞれに設けてもよい。すなわち、樹脂組成物層は、第1の被着体の第1の端子が形成された第1の領域と、第2の被着体の第2の端子が形成された第2の領域との少なくとも一方に設けられればよい。
【0146】
また、例えば、半導体装置、多層回路基板、電子部品の製造方法は、上記方法に限定されない。
【実施例】
【0147】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0148】
[1]樹脂組成物層の製造
<樹脂組成物層の材料の調製>
フェノールノボラック樹脂(住友ベークライト社製、PR55617)7.5重量部と、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業社製、EPICLON−840S)22.5重量部と、フラックス機能を有する化合物であるフェノールフタリン(東京化成工業社製)7.5重量部と、成膜性樹脂としてビスフェノールA型フェノキシ樹脂(東都化成社製、YP−50)12.2重量部と、硬化促進剤として2−フェニル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業社製、2P4MZ)0.05重量部と、シランカップリング剤としてβ−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM−403)0.25重量部と、無機充填材である球状シリカフィラー(アドマテックス社製、SE6050、平均粒径2μm)50重量部とを、メチルエチルケトンに溶解し、樹脂濃度50%の樹脂ワニスを調製した。
【0149】
<樹脂組成物層の製造>
得られた樹脂ワニスを、基材ポリエステルフィルム(ベースフィルム、東レ株式会社製、商品名ルミラー)に厚さ50μmとなるように塗布して、100℃、5分間乾燥して、平均厚さtが25μmのフラックス機能を有する樹脂組成物層を得た。
【0150】
[2]半導体装置の製造
(実施例1)
図2に示す複数の配線回路と複数の端子とを有する回路基板(サイズ20mm×20mm、配線回路の平均厚さ12μm、隣接する配線回路の間隔50μm)を用意した。また、図2に示す複数の半田バンプおよび端子を有する半導体チップ(サイズ10mm×10mm、厚さ0.3mm)を用意した。
【0151】
次に、半田バンプおよび端子を覆うように、半導体チップに得られた樹脂組成物層を真空式ウェハラミネーターで、80℃でラミネートして、樹脂組成物層付きの半導体チップを得た。なお、ラミネート時の圧力は0.3MPa、雰囲気圧は400Paであった。
【0152】
次に、半導体チップと回路基板との位置合わせを行ない、半導体チップの半田バンプと、その半田バンプに対応する回路基板の端子が、回路基板や半導体チップの厚さ方向から見て一致するように、回路基板上に樹脂組成物層付きの半導体チップを載置した。なお、半導体チップにラミネートされた樹脂組成物層と回路基板の本体部との間に隙間が形成された。
【0153】
次に、雰囲気圧200Paの減圧雰囲気下において、100℃、30秒間で、半導体チップと回路基板とを樹脂組成物層を介して圧着(仮圧着)した。なお、圧着時の圧力は0.6MPaであった。
【0154】
次に、雰囲気圧0.8MPaの加圧雰囲気下において、235℃、30秒間加熱して、半田バンプを溶融させて半田接合を行った。なお、半田接合時の圧力は0.6MPaであった。
【0155】
次に、180℃、60分間加熱して、樹脂組成物層を硬化させて、半導体チップと、回路基板とが樹脂組成物層の硬化物で接着された半導体装置を得た。
【0156】
(実施例2)
半田接合における加圧雰囲気を大気圧雰囲気へ変更した以外は、実施例1と同様に半導体装置の製造を行った。
【0157】
(実施例3)
半田接合における加圧雰囲気を雰囲気圧5kPaの減圧雰囲気へ変更した以外は、実施例1と同様に半導体装置の製造を行った。
【0158】
(比較例1)
端子が回路基板の本体部から突出していない回路基板を用意した。回路基板上に樹脂組成物層付きの半導体チップを載置した際は、半導体チップにラミネートされた樹脂組成物層と回路基板の本体部との間に隙間は形成されなかった。そして、減圧雰囲気下において半導体チップと回路基板とを樹脂組成物層を介して圧着する工程を行わず、半田接合における加圧雰囲気を大気圧雰囲気へ変更した以外は、実施例1と同様に半導体装置の製造を行った。
【0159】
(比較例2)
半導体チップと回路基板とを樹脂組成物層を介して圧着する工程における減圧雰囲気を大気圧雰囲気へ変更した以外は、実施例1と同様に半導体装置の製造を行った。
【0160】
(比較例3)
半導体チップと回路基板とを樹脂組成物層を介して圧着する工程における減圧雰囲気を大気圧雰囲気へ変更し、半田接合における加圧雰囲気を大気圧雰囲気へ変更した以外は、実施例1と同様に半導体装置の製造を行った。
【0161】
[3]評価
[3−1]樹脂組成物層の硬化物中の空洞及びボイドの有無
各実施例および各比較例の半導体装置について、超音波顕微鏡を用い、半導体チップと回路基板とを接着している樹脂組成物層の硬化物中の空洞及びボイドの有無を確認した。評価基準は、以下の通りである。
【0162】
◎ :空洞及びボイドが全く観察されなかった。
○ :200μm以上の空洞及びボイドが全く観察されなかった。
△ :400μm以上の空洞及びボイドが全く観察されなかった。
× :400μm以上の空洞及びボイドが観察された。
【0163】
[3−2]接続信頼性
各実施例および各比較例の半導体装置それぞれ20個ずつについて、−55℃の条件下に30分、125℃の条件下に30分ずつ交互に晒すことを1サイクルとする、温度サイクル試験を100サイクル行い、試験後の半導体装置について、半導体チップと回路基板の接続抵抗値をデジタルマルチメーターで測定し、接続信頼性を評価した。評価基準は、以下の通りである。
○ :20個すべての半導体装置の接続抵抗値が10Ω未満であった。
× :1個以上の半導体装置の接続抵抗値が10Ω以上であった。
各評価結果は、下記表1に示す通りである。
【0164】
【表1】

【0165】
上記表1から明らかなように、実施例1では、樹脂組成物層の硬化物中に、空洞及びボイドが全く観察されず、また、実施例2および3では、200μm以上の空洞及びボイドが全く観察されなかった。
【0166】
これに対し、比較例1および3では、樹脂組成物層の硬化物中に、400μm以上の空洞及びボイドが観察され、また、比較例2では、400μm以上の空洞及びボイドは観察されなかったが、400μm未満の空洞及びボイドが観察された。
【0167】
また、実施例1〜3では、接続信頼性について、良好な結果が得られた。これに対し、比較例1および3では、接続信頼性は悪かった。
【符号の説明】
【0168】
1a 接着フィルム
1 樹脂組成物層
1’ 硬化物
2 カバーフィルム
3 ベースフィルム
4 回路基板
40 本体部
41 基材
42 配線回路
43 絶縁部
44 端子
45 バンプ
46 アライメントマーク
47 端子
5 半導体チップ
50 本体部
51 半田バンプ
511 半田接続部
52 端子
53 アライメントマーク
6 回路基板
60 本体部
61 基材
62 配線回路
63 絶縁部
64 端子
7 基板
70 本体部
71 基材
72 配線回路
73 絶縁部
74 端子
75 半田バンプ
711 半田接続部
76 端子
10 半導体装置
20 多層回路基板
110 チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子を有する第1の被着体と、第2の端子を有する第2の被着体とを、前記第1の被着体の前記第1の端子が設置された面と、第2の被着体の前記第2の端子が設置された面とが対向するように配置し、前記第1の端子とそれに対応する前記第2の端子とを電気的に接続するとともに、前記第1の被着体の前記第1の端子が形成された第1の領域と、前記第2の被着体の前記第2の端子が形成された第2の領域との少なくとも一方に設けられた樹脂組成物層で、前記第1の領域および前記第2の領域を覆うように、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを接着する接合方法であって、
前記第1の端子とそれに対応する前記第2の端子とを電気的に接続するに際し、減圧雰囲気下で、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを前記樹脂組成物層を介して圧着することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記第1の端子と前記第2の端子との一方に、ろう材で構成されたバンプが設けられており、
前記バンプを溶融しつつ、前記第1の端子と前記第2の端子とを前記ろう材で電気的に接続する請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記第1の被着体と前記第2の被着体とを前記樹脂組成物層を介して圧着した後、前記バンプを溶融しつつ、前記第1の端子と前記第2の端子とを前記ろう材で電気的に接続する請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
加圧雰囲気下で、前記バンプを溶融しつつ、前記第1の端子と前記第2の端子とを前記ろう材で電気的に接続する請求項3に記載の接合方法。
【請求項5】
前記加圧雰囲気の圧力は、0.15MPa以上である請求項4に記載の接合方法。
【請求項6】
減圧雰囲気下で、前記バンプを溶融しつつ、前記第1の端子と前記第2の端子とを前記ろう材で電気的に接続する請求項2または3に記載の接合方法。
【請求項7】
前記第1の端子と前記第2の端子とを電気的に接続した後、前記樹脂組成物層を硬化し、該樹脂組成物層の硬化物により、前記第1の被着体と前記第2の被着体とを接着する請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
【請求項8】
前記第1の被着体と前記第2の被着体とを前記樹脂組成物層を介して圧着する前に、減圧雰囲気下で、前記第1の被着体と、前記第2の被着体との位置合わせを行う請求項1ないし7のいずれかに記載の接合方法。
【請求項9】
前記減圧雰囲気の圧力は、100kPa以下である請求項1ないし8のいずれかに記載の接合方法。
【請求項10】
前記第1の被着体側と前記第2の被着体側とを接触させたとき、前記第1の被着体側と前記第2の被着体側との間に隙間が形成される請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法。
【請求項11】
前記樹脂組成物層は、フラックス機能を有する化合物を含有する請求項1ないし10のいずれかに記載の接合方法。
【請求項12】
前記樹脂組成物層は、フィルム状をなしている請求項1ないし11のいずれかに記載の接合方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載の接合方法により接合された前記第1の被着体と前記第2の被着体とを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項1ないし12のいずれかに記載の接合方法により接合された前記第1の被着体と前記第2の被着体とを有することを特徴とする多層回路基板。
【請求項15】
請求項1ないし12のいずれかに記載の接合方法により接合された前記第1の被着体と前記第2の被着体とを有することを特徴とする電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−74636(P2012−74636A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220018(P2010−220018)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】