説明

接着シート及びダイシング−ダイボンディングテープ

【課題】半導体チップを基板又は他の電子部品上に積層し、接着した後、半導体チップを樹脂モールド層により被覆したときに、半導体チップにクラックが生じ難い接着シートを提供する。
【解決手段】硬化後の接着シート3を介して半導体チップ8を基板2上に接着したり、又は硬化後の接着シート4〜7を介して半導体チップ9〜12を他の半導体チップ8〜11上に接着したりするのに用いられる接着シートであって、硬化性樹脂と、弾性粒子とを含有し、弾性粒子3a〜7aの硬化後の接着シート3〜7の厚み方向に沿う寸法が、硬化後の接着シート3〜7の厚みと同等である接着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、半導体チップを基板又は他の半導体チップ上に接着するのに用いられる接着シート、及び該接着シートを用いたダイシング−ダイボンディングテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着シートを介して、複数の半導体チップが積層されている半導体装置が知られている。この種の半導体装置では、複数の半導体チップが樹脂モールド層により被覆されていることがある。
【0003】
半導体チップの接着に用いられる上記接着シートの一例として、下記の特許文献1には、ポリイミド樹脂と、熱硬化性樹脂と、平均粒子径10μm以下かつ最大粒子径25μm以下のシリカとを含有する接着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−210804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の接着シートを用いて半導体装置を製造する際には、接着シートを介して複数の半導体チップを積層する。接着シートを加熱により硬化し、複数の半導体チップを接着する。その後、半導体チップの積層体を樹脂モールドする。樹脂モールドの際には、樹脂モールド層を形成するための樹脂組成物により半導体チップの積層体を被覆し、該樹脂組成物を加熱により硬化する。
【0006】
半導体チップの積層又は樹脂モールドの際に、半導体チップにクラックが生じることがあった。このようなクラックが生じる原因としては、例えば、金属片等の異物が、接着シートに混入していたり、半導体チップに付着していたりすることが挙げられる。半導体チップの積層又は樹脂モールドの際には、半導体チップの異物と接触している部分に応力が集中する。このため、半導体チップにクラックが生じやすかった。
【0007】
本発明の目的は、例えば、半導体チップを基板又は他の電子部品上に積層し、接着した後、半導体チップを樹脂モールド層により被覆したときに、半導体チップにクラックが生じ難い接着シート、及び該接着シートを有するダイシング−ダイボンディングテープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、半導体チップを実装部材上に接着するのに用いられる接着シートであって、硬化性樹脂と、弾性粒子とを含有し、前記弾性粒子の硬化後の接着シートの厚み方向に沿う寸法が、硬化後の接着シートの厚みと同等である、接着シートが提供される。
【0009】
本発明に係る接着シートのある特定の局面では、硬化後の接着シートを平面視したときに、硬化後の接着シートの全面積に占める前記弾性粒子が含有されている領域の面積が、1〜25%の範囲内にある。
【0010】
本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープは、本発明に従って構成された接着シートと、該接着シートの一方の面に直接又は間接に積層されたダイシングフィルムとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る接着シートは、弾性粒子を有し、弾性粒子の硬化後の接着シートの厚み方向に沿う寸法が、硬化後の接着シートの厚みと同等であるので、接着シートを介して半導体チップを実装部材上に積層し、接着した後に、積層された半導体チップを樹脂モールド層により被覆したときに、半導体チップにクラックが生じ難い。
【0012】
本発明に係る接着シートでは、金属片等の異物が、接着シートに混入していたり、半導体チップに付着していたりしたとしても、半導体チップの異物と接触している部分に加わる応力が上記弾性粒子により低減される。このため、半導体チップにクラックが発生するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る接着シートを介して、基板上に複数の半導体チップが接着された半導体装置を示す正面断面図である。
【図2】図2は、図1に示す半導体装置における硬化後の接着シートとしての硬化物層を示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係る接着シートを用いた半導体装置の変形例を示す正面断面図である。
【図4】図4(a),(b)は、本発明の他の実施形態に係る接着シートを用いたダイシング−ダイボンディングテープを示す部分切欠正面断面図及び部分切欠平面図である。
【図5】図5は、金属片及び複数の弾性粒子を含む本発明の別の実施形態の接着シートを介して、半導体チップ上に他の半導体チップを積層するときの状態を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(接着シートを構成する材料の詳細)
本発明に係る接着シートは、硬化性樹脂と、弾性粒子とを含有する。
【0015】
本発明に係る接着シートに含まれている上記弾性粒子は、弾性を有する。上記弾性粒子は、外力を加えることによって弾性変形により形又は体積に変化を生じた後、外力を取り去ると再びもとの状態に弾性回復する性質を有する。硬化後の接着シートにおける上記弾性粒子の状態については、後述する。
【0016】
上記弾性粒子の圧縮弾性率(10%K値)は、5,000〜1,000,000mN/mmの範囲内にあることが好ましい。上記圧縮弾性率(10%K値)が上記範囲内にあると、半導体チップにクラックがより一層生じ難くなる。上記弾性粒子の圧縮弾性率(10%K値)の好ましい下限は10,000mN/mmであり、好ましい上限は900,000mN/mmである。
【0017】
上記圧縮弾性率(10%K値)は、以下のようにして求めることができる。
【0018】
微小圧縮試験機(島津製作所社製PCT−200)を用いて、荷重負荷速度0.3mN/秒で、ダイヤモンド製の四角柱の平滑な端面(50μm×50μm)により弾性粒子を圧縮する。このときの荷重値及び圧縮変位を測定する。得られた測定値から、弾性粒子が10%圧縮変形したときの上記圧縮弾性率(10%K値)を下記式により求めることができる。
【0019】
K値(mN/mm)=(3/21/2)・F・S−3/2・R−1/2
F:弾性粒子が10%圧縮変形したときの荷重値(mN)
S:弾性粒子が10%圧縮変形したときの圧縮変位(mm)
R:弾性粒子の半径(mm)
【0020】
上記10%K値は、弾性粒子の弾性を普遍的かつ定量的に表す。該10%K値により、弾性粒子の弾性を定量的かつ一義的に表すことができる。
【0021】
弾性変形性及び弾性回復性に優れているので、弾性粒子は樹脂粒子であることが好ましい。
【0022】
上記樹脂粒子を形成するための樹脂としては、例えば、ジビニルベンゼン樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、イミド樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂又は塩化ビニル樹脂等が挙げられる。また、上記樹脂粒子は、有機無機ハイブリッド粒子であってもよい。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
【0023】
一般的に、粒子径にばらつきがあるときに、粒子自身が異物として振る舞うことにより、半導体チップが割れてしまう可能性がある。弾性粒子の場合、粒子径に多少のばらつきがあっても、弾性粒子が変形することができるので、弾性粒子と半導体チップとの接触部分が広くなる。このため、半導体チップに局所的に応力が集中しにくい。
【0024】
上記弾性粒子は、樹脂の架橋体により形成された粒子であることが好ましい。この場合には、弾性粒子の耐熱性を高めることができる。このため、接着シート又は樹脂モールド層形成用樹脂組成物を加熱し、硬化させる際に、弾性粒子が変質し難い。上記弾性粒子が樹脂の架橋体である場合には、反応点すなわち架橋点が少ないと、弾性粒子の圧縮弾性率が高くなる傾向にある。架橋点の数を適切な範囲にすることにより、上記弾性粒子の圧縮弾性率を好適な範囲に容易に制御できる。
【0025】
上記弾性粒子は、溶剤に溶解しないことが好ましい。接着シートの作製の際には、例えば、接着シートを構成する材料が溶剤に添加された溶液を、離型フィルム上に塗工した後、溶剤を除去することがある。上記弾性粒子が溶剤に溶解しない場合には、接着シート中に弾性粒子の溶解物は生じない。従って、弾性粒子の溶解物による悪影響が生じ難い。
【0026】
上記弾性粒子は、球体であることが好ましい。上記弾性粒子が球体の場合には、接着シートにおける上記弾性粒子の分散性を高めることができる。さらに、半導体チップにクラックをより一層生じ難くすることができる。
【0027】
本発明に係る接着シートに含まれる硬化性樹脂は、加熱又は光の照射等の刺激により硬化するものであれば特に限定されない。上記硬化性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0028】
上記硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂等が挙げられる。なかでも、接着強度をより一層高くすることができるので、熱硬化性樹脂が好ましい。
【0029】
上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂又はポリウレタン樹脂等が挙げられる。なかでも、接着強度をより一層高くすることができるので、エポキシ樹脂が好ましい。
【0030】
上記光硬化性樹脂としては、例えば感光性オニウム塩等の光カチオン触媒により重合するエポキシ樹脂、又は感光性ビニル基を有するアクリル樹脂等が挙げられる。
【0031】
上記エポキシ樹脂は、エポキシ基を有するものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記「エポキシ樹脂」とは、一般的には、1分子中にエポキシ基を2個以上有する分子量300〜8000程度の比較的低分子のポリマーもしくはプレポリマー、又は該ポリマーもしくはプレポリマーのエポキシ基の開環反応によって生じた硬化性樹脂を意味する。
【0033】
上記エポキシ樹脂は、多環式炭化水素骨格を主鎖に有することが好ましい。多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂の使用により、硬化物は剛直となり、分子の運動が阻害される。従って、硬化物の機械的強度、耐熱性及び耐湿性を高めることができる。
【0034】
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は特に限定されない。上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ジシクロペンタジエンジオキシド、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルエタン型エポキシ樹脂、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、又は3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボネート等が挙げられる。なかでも、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂の内の少なくとも一方の樹脂が好適に用いられる。多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の具体例としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシ樹脂等が挙げられる。上記ナフタレン型エポキシ樹脂の具体例としては、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリシジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、又は1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。
【0036】
上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂の重量平均分子量の好ましい下限は500であり、好ましい上限は1000である。上記重量平均分子量が500未満であると、硬化物の機械的強度、耐熱性又は耐湿性等を十分に高くすることが困難なことがある。上記重量平均分子量が1000を超えると、硬化物が剛直になりすぎて、脆くなることがある。
【0037】
本発明に係る接着シートは、エポキシ樹脂と、該エポキシ樹脂のエポキシ基と反応する官能基を有するポリマーとを含有することが好ましい。
【0038】
上記ポリマーとしては、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基又はエポキシ基等を有するポリマーが挙げられる。なかでも、エポキシ基を有するポリマーが好ましい。エポキシ基を有するポリマーが用いられた場合には、硬化物の可撓性が高くなる。
【0039】
また、多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂と、エポキシ基を有するポリマーとの使用により、上記多環式炭化水素骨格を主鎖に有するエポキシ樹脂により硬化物の機械的強度、耐熱性及び耐湿性が高められる。加えて、上記エポキシ基を有するポリマーにより硬化物の可撓性が高められる。
【0040】
上記エポキシ基を有するポリマーは、末端及び側鎖(ペンダント位)の内の少なくとも一方にエポキシ基を有することが好ましい。上記エポキシ基を有するポリマーの重量平均分子量は、10万〜200万の範囲内にあることが好ましい。
【0041】
上記エポキシ基を有するポリマーとしては、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂又はエポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、硬化物の機械的強度又は耐熱性を高くすることができるため、エポキシ基含有アクリル樹脂が好適に用いられる。上記エポキシ基を有するポリマーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】
エポキシ樹脂100重量部に対して、エポキシ基と反応する官能基を有するポリマーは10〜100重量部の範囲内で含有されることが好ましい。上記エポキシ樹脂100重量部に対する上記ポリマーの含有量の好ましい下限は15重量部であり、好ましい上限は50重量部である。上記ポリマーの量が多すぎると、流動性が不足して、半導体チップに接着シートが充分に密着しなかったり、ダイシング時にひげ状の切削屑が生じやすくなったりすることがある。上記ポリマーの量が少なすぎると、接着シートの成形時に外観不良を引き起こすことがある。
【0043】
本発明に係る接着シートは、硬化性樹脂を硬化させるための硬化剤を含んでいることが好ましい。上記硬化剤は特に限定されない。硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記硬化剤としては、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、又はカチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。
【0045】
なかでも、常温で液状の加熱硬化型硬化剤、又は多官能であり、かつ当量的に添加量が少なくてもよいジシアンジアミド等の潜在性硬化剤が好適に用いられる。これらの好ましい硬化剤の使用により、接着シートの常温での柔軟性を高めることができ、かつ接着シートのハンドリング性を高めることができる。
【0046】
上記常温で液状の加熱硬化型硬化剤の具体例としては、例えば、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の酸無水物系硬化剤等が挙げられる。なかでも、疎水化されているので、メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸が好適に用いられる。
【0047】
上記硬化性樹脂100重量部に対して、上記硬化剤は20〜70重量部の範囲内で含有されることが好ましい。硬化剤の量が少なすぎると、上記硬化性樹脂を充分に硬化させることができないことがある。硬化剤の量が多すぎると、硬化剤の添加効果が飽和することがある。上記硬化性樹脂100重量部に対する上記硬化剤の含有量の好ましい下限は30重量部であり、好ましい上限は50重量部である。
【0048】
上記硬化剤に加えて、硬化促進剤を用いてもよい。硬化剤と硬化促進剤との併用により、硬化速度又は硬化物の物性等を調整できる。硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記硬化促進剤は特に限定されない。硬化促進剤の具体例としては、イミダゾール系硬化促進剤又は3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。イミダゾール系硬化促進剤の使用により、硬化速度又は硬化物の物性等を容易に調整できる。
【0050】
上記イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、又はイソシアヌル酸で塩基性を保護した商品名「2MAOK−PW」(四国化成工業社製)等が挙げられる。イミダゾール系硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0051】
酸無水物系硬化剤とイミダゾール系硬化促進剤等の硬化促進剤とが併用される場合には、酸無水物系硬化剤の添加量を、エポキシ基の当量に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。酸無水物系硬化剤の添加量が過剰であると、硬化物から水分により塩素イオンが溶出しやすくなるおそれがある。例えば、熱水を用いて、硬化物から溶出成分を抽出した際に、抽出水のpHが4〜5程度まで低くなり、エポキシ樹脂から引き抜かれた塩素イオンが多量に溶出することがある。
【0052】
また、アミン系硬化剤と例えばイミダゾール系硬化促進剤等の硬化促進剤とが併用される場合には、アミン系硬化剤の添加量をエポキシ基に対して理論的に必要な当量以下とすることが好ましい。
【0053】
本発明に係る接着シートには、必要に応じて、無機イオン交換体、ブリードアウト防止剤、接着付与剤又は増粘剤等の添加剤を添加してもよい。
【0054】
(接着シート)
本発明に係る接着シートは、半導体チップを基板又は半導体チップを含む他の電子部品などの実装部材上に接着するのに用いられる。接着シートは、硬化性樹脂を含むので、熱又は光等により硬化されて、高い接着力を発現する。
【0055】
硬化後の接着シートの厚み方向に沿う上記弾性粒子の寸法は、硬化後の接着シートの厚みと同等である。このため、硬化後の接着シートでは、弾性変形性及び弾性回復性を有する弾性粒子に半導体チップが接触している。従って、半導体チップの積層又は樹脂モールドの際に、半導体チップの接着シートと接している面に加わる力が上記弾性粒子により低減される。このため、半導体チップにクラックが生じ難くなる。一般的に、樹脂モールドの際に、半導体チップにクラックが生じやすい傾向がある。しかし、本発明に係る接着シートの使用により、樹脂モールドの際に、半導体チップにクラックを生じ難くすることができる。
【0056】
また、例えば、接着シートには、金属片等の異物が混入していることがある。さらに、半導体チップに異物が付着していることがある。このような異物の混入又は付着を完全に無くすことは困難である。金属片等の異物が、接着シートに混入していたり、半導体チップに付着していたりしたとしても、半導体チップの異物に接触している部分に加わる応力が上記弾性粒子により軽減される。
【0057】
すなわち、図5に示すように、金属片61a及び複数の弾性粒子61bを含む本発明の別の実施形態の接着シート61を介して、接着シート61上に他の半導体チップ62を積層すると、半導体チップ62が金属片61aだけでなく、複数の弾性粒子62bに接触する。このため、半導体チップ62に加わる積層時の圧着機からの圧力Xが、半導体チップ62と弾性粒子61bとの接触部分A2により緩和される。このため、圧着機からの圧力Xが、半導体チップ62と金属片61aとの接触部分A1に大きく影響し難い。半導体チップの異物と接触している部分に集中的に応力が加わり難いため、半導体チップのクラックを抑制できる。
【0058】
また、樹脂モールドの際に、例えば樹脂モールド層形成用樹脂組成物が収縮等したとしても、該収縮により半導体チップの接着シート61に接している面に加わる力が、半導体チップ62と弾性粒子61bとの接触部分A2により緩和され、半導体チップ62と金属片61aとの接触部分A1に大きく影響し難い。従って、樹脂モールドの際に、半導体チップのクラックが生じ難い。
【0059】
硬化前の接着シートに含まれている弾性粒子の大きさは全て同一である必要はなく、ばらつきがあってもよい。硬化前の接着シートに含まれている弾性粒子の大きさにばらつきがあっても、例えば弾性粒子を圧縮し変形させることにより、上記弾性粒子の硬化後の接着シートの厚み方向に沿う寸法を、硬化後の接着シートの厚みと同等にできる。
【0060】
硬化前の接着シートに含まれている弾性粒子のCV値(粒度分布の変動係数)は、9%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましい。CV値が大きすぎると、弾性粒子が圧縮変形されても、複数の弾性粒子が所望の大きさに充分に変形しないことがある。
【0061】
上記CV値は、上記弾性粒子の直径の標準偏差をρとし、平均粒子径をDnとすると、下記式で表される。
【0062】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
本発明に係る接着シートの製造方法は特に限定されない。接着シートの製造方法としては、例えば押出機を用いた押出成形法又は溶液キャスト法が挙げられる。なかでも、高温での処理を要しないため、溶液キャスト法が好適に用いられる。
【0063】
上記溶液キャスト法では、先ず接着シートを構成する硬化性組成物を溶剤で希釈して、硬化性組成物溶液を調製する。次に、調製された硬化性組成物溶液をセパレータ上にキャスティングする。その後、硬化性組成物溶液を乾燥し、溶剤を除去することにより、セパレータ上に接着シートを形成できる。
【0064】
(半導体装置)
図1に、本発明の一実施形態に係る接着シートを用いて得られた半導体装置を示す。
【0065】
図1に示す半導体装置1は、基板2と、硬化物層3〜7と、半導体チップ8〜12と、樹脂モールド層13とを備える。基板2の上面2aに、硬化物層3〜7を介して、複数の半導体チップ8〜12が積層されている。すなわち、基板2の上面2aに、半導体チップ8〜12の積層体が積層されている。基板2と半導体チップ8とが、硬化物層3により接着されている。また、複数の半導体チップ8〜12同士が、硬化物層4〜7により接着されている。硬化物層3〜7は、本発明の一実施形態に係り、熱硬化性の接着シートを硬化させることにより形成されている。
【0066】
基板2に代えて、半導体チップなどの他の電子部品を用いてもよい。
【0067】
硬化物層3〜7はそれぞれ、複数の弾性粒子3a〜7aを含有する。
【0068】
基板2及び半導体チップ8〜12は、樹脂モールド層13により被覆されている。すなわち、基板2及び半導体チップ8〜12は、樹脂モールドされている。
【0069】
硬化物層3〜7に含まれている弾性粒子3a〜7aは圧縮変形されており、楕円体である。硬化後の接着シートである硬化物層3〜7に含まれている弾性粒子3a〜7aは、例えば接着シートの硬化収縮又は半導体チップの積層時に加わる圧力により、圧縮変形されていてもよい。硬化物層3〜7に含まれている弾性粒子3a〜7aは、球体である弾性粒子が圧縮変形された楕円体であってもよい。弾性粒子が圧縮変形されている場合には、上記弾性粒子の硬化後の接着シートの厚み方向に沿う寸法は、上記弾性粒子の圧縮変形された状態での寸法である。
【0070】
半導体装置の製造の際には、基板2上に接着シートを積層した後に、該接着シート上に半導体チップ8を積層してもよい。また、半導体チップ8〜11上にそれぞれ接着シートを積層した後に、該接着シート上に半導体チップ9〜12を積層してもよい。
【0071】
また、半導体チップ8の下面に接着シートを貼り付けておき、接着シートが下面に貼り付けられた半導体チップ8を接着シート側から、基板2上に積層してもよい。半導体チップ9〜12の下面に接着シートをそれぞれ貼り付けておき、接着シートが下面に貼り付けられた半導体チップ9〜12を接着シート側から、半導体チップ8〜11上に積層してもよい。半導体ウェーハの下面に接着シートを貼り付けた後、半導体ウェーハを接着シートごとダイシングすることにより、接着シートが下面に貼り付けられた半導体チップ8〜12を得ることができる。
【0072】
接着シートが熱硬化性樹脂を含有する場合には、基板2上に半導体チップ8を積層した後に、かつ半導体チップ8上に半導体チップ9〜12が積層される前に、基板2と半導体チップ8との間に配置された接着シートを硬化させてもよい。また、基板2上に半導体チップ8〜12を積層した後に、基板2と半導体チップ8との間に配置された接着シート及び半導体チップ8〜12の間に配置された接着シートを一括して硬化させてもよい。
【0073】
基板2上に半導体チップ8〜12を積層した後、樹脂モールド層13を形成するための樹脂組成物により基板2及び半導体チップ8〜12を被覆する。その後、該樹脂組成物を硬化させることにより、半導体装置1を得ることができる。接着シートの硬化は、樹脂モールド層13を形成するための樹脂組成物の硬化と同時に行われてもよく、樹脂組成物の硬化の前に別工程で行われてもよい。
【0074】
近年、半導体チップの積層数が増大している。それに伴って、厚みが薄い、例えば厚み50μm以下の半導体チップが用いられてきている。このように半導体チップの積層数が多かったり、半導体チップの厚みが薄かったりする場合には、半導体チップにクラックがより一層生じやすい。半導体チップのクラックを抑制できるので、本発明に係る接着シートは、半導体チップの積層数が2以上の半導体装置を得るのに好適に用いられる。また、半導体チップのクラックを抑制できるので、本発明に係る接着シートは、厚み15μm以下の半導体チップの接着に好適に用いられる。
【0075】
図1に示す半導体装置1における硬化後の接着シートとしての硬化物層3を、図2に平面図で示す。図2では、弾性粒子3が含有されている領域が、斜線を付して示されている。
【0076】
硬化物層3を平面視したときに、硬化物層3の全面積に占める弾性粒子3aが含有されている領域の面積Aは、1〜25%の範囲内にあることが好ましい。また、硬化物層4〜7を平面視したときに、硬化物層4〜7の全面積に占める弾性粒子4a〜7aが含有されている領域の面積Aは、1〜25%の範囲内にあることが好ましい。上記面積Aが上記範囲内にあると、半導体チップにクラックがより一層生じ難くなる。上記面積Aが大きすぎると、上記弾性粒子による半導体チップのクラックの抑制効果が飽和し、かつ接着シートのコストが高くなる。さらに、接着シートの接着性が低下することがある。
【0077】
弾性粒子3a〜7aが含有されている領域は、硬化後の接着シートを平面視したときに、複数の弾性粒子3a〜7aを透視した場合の弾性粒子3a〜7aの外周縁により囲まれた領域を示す。すなわち、弾性粒子3a〜7aが含有されている領域には、弾性粒子3a〜7aが硬化後の接着シートの上面又は下面に露出している領域だけでなく、弾性粒子3a〜7aと硬化後の接着シートの上面及び下面との間に、弾性粒子3a〜7a以外の接着シート構成成分が存在する領域が含まれる。硬化後の接着シートすなわち硬化物層3〜7の全面積に占める弾性粒子3a〜7aが含有されている領域の面積のより好ましい下限は3%であり、さらに好ましい下限は5%であり、より好ましい上限は20%である。
【0078】
図3に、本発明の一実施形態に係る接着シートを用いた半導体装置の変形例を示す。
【0079】
図3に示す半導体装置21は、基板22の上面22aに硬化物層23を介して、半導体チップ24が積層されている。基板22の上面22aに設けられた電極22bと、半導体チップ24の上面24aに設けられた電極24bとが、ボンディングワイヤー25により接続されている。半導体チップ24の上面24aには、硬化物層26を介して、他の半導体チップ27が積層されている。基板22の上面22aに設けられた電極22cと、半導体チップ27の上面27aに設けられた電極27bとが、ボンディングワイヤー28により接続されている。硬化物層23,26はそれぞれ、複数の弾性粒子23a,26aを含有する。弾性粒子23a,26aは球体である。硬化物層23,26は、本発明の一実施形態に係る接着シートを硬化させることにより形成されている。基板22上の半導体チップ24,27は、樹脂モールド層29により被覆されている。
【0080】
半導体チップ27の上面27aに、硬化物層を介して複数の半導体チップがさらに積層されていてもよい。上記接着シートは、ボンディングワイヤーの端部が接着シートの外側の領域に露出するように、複数の半導体チップがずれて積層された半導体装置を得るのに好適に用いられる。
【0081】
なお、上記接着シートは、実装部材上に複数の半導体チップを積層し、接着するためだけでなく、実装部材上に1つの半導体チップを積層し、接着するために用いることもできる。
【0082】
(ダイシング−ダイボンディングテープ)
本発明に係る接着シートの一方の面に、基材フィルムを介して、ダイシングフィルムを直接又は間接に貼り付けることにより、ダイシング−ダイボンディングテープを得ることができる。半導体装置1を製造する際には、上記ダイシング−ダイボンディングテープを用いてもよい。上記ダイシング−ダイボンディングテープの使用により、半導体装置の製造効率を高めることができる。
【0083】
図4(a),(b)に、本発明の他の実施形態に係る接着シートを用いたダイシング−ダイボンディングテープを部分切欠正面断面図及び部分切欠平面図で示す。
【0084】
図4(a),(b)に示すように、ダイシング−ダイボンディングテープ51は、長尺状の離型フィルム52を備える。また、ダイシング−ダイボンディングテープ51は、接着シート53と、接着シート53の一方の面53aに貼り付けられた基材フィルム54と、基材フィルム54の接着シート53が貼り付けられた一方の面54aとは反対側の他方の面54bに貼り付けられたダイシングフィルム55とを備える。接着シート53の一方の面53aに、基材フィルム54を介して、ダイシングフィルム55が間接に貼り付けられている。また、離型フィルム52の上面52aに、接着シート53が一方の面53aとは反対側の他方の面53b側から貼り付けられている。接着シート53が、本発明の他の実施形態に係る接着シートである。接着シート53は複数の弾性粒子53cを含有する。
【0085】
接着シート53は、半導体チップのダイボンディングに用いられるダイボンディングフィルムである。接着シート53の離型フィルム52が貼り付けられた他方の面53bは、半導体ウェーハが貼り付けられる面である。なお、ダイシング−ダイボンディングテープは、離型フィルム52を備えていなくてもよい。
【0086】
なお、基材フィルム54を介さずに、接着シート53の一方の面53aに、ダイシングフィルム55が直接に積層されていてもよい。すなわち、ダイシング−ダイボンディングテープは、接着シート53と、該接着シート53の一方の面に貼り付けられたダイシングフィルム55とを備えていてもよい。
【0087】
基材フィルム54が備えられていることが好ましい。この場合には、ダイシング後に個片化された半導体チップを接着シートごと取り出す際に、ピックアップ性を高めることができる。
【0088】
接着シート53、基材フィルム54及びダイシングフィルム55の平面形状は、円形である。接着シート53の径は、基材フィルム54の径と等しい。なお、接着シート53の径は、基材フィルム54の径よりも大きくてもよい。ダイシングフィルム55の径は、接着シート53及び基材フィルム54の径よりも大きい。基材フィルム54の側面は、接着シート53により覆われていないことが好ましい。
【0089】
図4(b)に示すように、ダイシングフィルム55は延長部55aを有する。ダイシングフィルム55の側面は、接着シート53の側面及び基材フィルム54の側面よりも外側に張り出している。該張り出している部分である延長部55aが、離型フィルム52の上面52aに貼り付けられている。
【0090】
延長部55aが設けられているのは、接着シート53の他方の面53bに半導体ウェーハを貼り付ける際に、ダイシングフィルム55の延長部55aにダイシングリングを貼り付けるためである。
【0091】
基材フィルム54は特に限定されない。基材フィルム54は、(メタ)アクリル樹脂架橋体を含むことが好ましい。基材フィルム54は、(メタ)アクリル樹脂架橋体を主成分として含むことがより好ましい。上記(メタ)アクリル樹脂架橋体を含む基材フィルムは、ポリオレフィン系フィルムに比べて柔らかく、例えば低い貯蔵弾性率を有する。比較的柔らかい基材フィルム54の使用により、基材フィルム54の硬さを接着シート53の硬さよりも相対的に柔らかくすることができる。このため、ダイシング後に個片化された半導体チップを接着シートごと取り出す際に、基材フィルム54を介して接着シート53付き半導体チップを突き上げると、接着シート53付き半導体チップが基材フィルム54から容易に剥離する。従って、ピックアップ性を高めることができる。
【0092】
上記(メタ)アクリル樹脂架橋体は、(メタ)アクリル酸エステルポリマーの架橋体であることが好ましい。
【0093】
上記(メタ)アクリル酸エステルポリマーは、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルポリマーであることが好ましい。炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルポリマーの使用により、基材フィルム54の極性を充分に低くすることができ、かつ基材フィルム54の表面エネルギーを低くすることができる。さらに、接着シート53を基材フィルム54からより一層剥離しやすくなる。上記アルキル基の炭素数が18を超えると、基材フィルム54の製造の際に、溶液重合が困難になる。このため、基材フィルム54の製造が困難になることがある。(メタ)アクリル酸エステルポリマーのアルキル基の炭素数は6以上であることが好ましい。上記アルキル基の炭素数が6以上の場合には、基材フィルム54の極性をより一層低くすることができる。
【0094】
上記(メタ)アクリル酸エステルポリマーは、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを主モノマーとして用いて得られた(メタ)アクリル酸エステルポリマーであることが好ましい。上記(メタ)アクリル酸エステルポリマーは、上記主モノマーと、官能基含有モノマーと、更に必要に応じてこれらと共重合可能な他の改質用モノマーとを常法により共重合させて得られた(メタ)アクリル酸エステルポリマーであることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーのアルキル基の炭素数は、2以上であることが好ましく、6以上であることが特に好ましい。
【0095】
上記(メタ)アクリル酸エステルポリマーの重量平均分子量は、20万〜200万の範囲内にあることが好ましい。重量平均分子量が20万未満であると、塗工成形時に多くの外観欠点が生じることがある。重量平均分子量が200万を超えると、製造時に増粘しすぎてポリマー溶液を取り出すことができないことがある。
【0096】
ダイシングフィルム55は特に限定されない。ダイシングフィルム55としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリビニルアセテートフィルム等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、又はポリイミドフィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。なかでも、ポリオレフィン系フィルムが好適に用いられる。ポリオレフィン系フィルムが用いられた場合には、エキスパンド性を高めることができ、かつ環境負荷を小さくすることができる。
【0097】
ダイシングフィルム55は、基材フィルム54が積層される面側に粘着剤を有することが好ましい。該粘着剤によりダイシングフィルム55が基材フィルム54に貼り付けられていることが好ましい。
【0098】
ダイシング−ダイボンディングテープ51を用いて、接着シート53が下面に貼り付けられた半導体チップを得るには、先ず離型フィルム52を接着シート53から剥離した後、又は剥離しながら、露出した接着シート53の他方の面53bを、半導体ウェーハの裏面に貼り付ける。また、離型フィルム52を剥離した後、又は剥離しながら、露出したダイシングフィルム55の延長部55aを、ダイシングリング上に貼り付ける。
【0099】
次に、半導体ウェーハを接着シート53ごとダイシングし、個々の半導体チップに分割する。その後、基材フィルム54及びダイシングフィルム55を引き延ばして、分割された半導体チップの間隔を拡張する。次に、半導体チップが貼り付けられた状態で、半導体チップ付き接着シート53を基材フィルム54から剥離して取り出す。このようにして、接着シート53が下面に貼り付けられた半導体チップを得ることができる。
【0100】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0101】
(実施例1)
ジシクロペンタジエン型固形エポキシ樹脂70重量部(大日本インキ化学社製、商品名:EXA−7200HH)、ナフタレン型液状エポキシ樹脂20重量部(大日本インキ化学社製、商品名:HP−4032D)、エポキシ基含有アクリル樹脂10重量部(日本油脂社製、商品名:マープルーフG−2050M、平均分子量:約20万、エポキシ当量:340)、可撓性成分としてCTBN(末端カルボキシル基ブタジエン−アクリロニトリル共重合体)10重量部(宇部興産社製、商品名:HYCAR CTポリマー1300×8、平均分子量:約3500)、架橋環式二環性酸無水物40重量部(ジャパンエポキシレジン社製、商品名:YH−309)、イソシアヌル変性固体分散型イミダゾール5重量部(四国化成工業社製、商品名:2MAOK−PW)、エポキシシランカップリング剤2重量部(信越化学工業社製、商品名:KBM403)、表面疎水化ヒュームドシリカ4重量部(トクヤマ社製、商品名:レオロシールMT−10)、および水酸基含有コアシェル型アクリルゴム粒子5重量部(ガンツ化成社製、商品名:スタフィロイドAC−4030)と、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体により形成された弾性粒子(平均粒子径5μm、10%K値115,000mN/mm、CV値6%)11重量部とをエチルメチルケトン145重量部に混合し、硬化性組成物を得た。
【0102】
得られた硬化性組成物を用いて、溶液キャスト法により厚さ5μmの接着シートを得た。得られた接着シートを用いて、接着シート、基材フィルム及びダイシングフィルムの積層構造を有するダイシング−ダイボンディングテープを得た。
【0103】
(実施例2)
弾性粒子の配合量を6重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ダイシング−ダイボンディングテープを得た。
【0104】
(実施例3)
弾性粒子の配合量を25重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ダイシング−ダイボンディングテープを得た。
【0105】
(実施例4)
弾性粒子を、架橋ポリメタクリル酸メチルにより形成された弾性粒子(平均粒子径5μm、10%K値800,000mN/mm、CV値7%)に変更し、さらに該弾性粒子の配合量を2重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ダイシング−ダイボンディングテープを得た。
【0106】
(実施例5)
弾性粒子を、架橋ポリウレタンにより形成された弾性粒子(平均粒子径5μm、10%K値30,000mN/mm、CV値 10%)に変更し、さらに該弾性粒子の配合量を31重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ダイシング−ダイボンディングテープを得た。
【0107】
(比較例1)
弾性粒子を配合しなかったこと以外は実施例1と同様にして、ダイシング−ダイボンディングテープを得た。
【0108】
(評価)
厚み40μmの半導体ウェーハの下面に、縦7mm及び横7mmの間隔で、直径5μm及び高さ5μmの円筒状の異物としての突起を、光硬化性樹脂により形成した。
【0109】
ダイシング−ダイボンディングテープの接着シートを、半導体ウェーハの下面に60℃の温度でラミネートし、評価サンプルを作製した。
【0110】
ダイシング装置DFD651(ディスコ社製)を用いて、送り速度50mm/秒で、評価サンプルを7mm×7mmのチップサイズにダイシングした。
【0111】
ダイシング後に、ダイボンダーbestem D−02(キャノンマシーナリー社製)を用いて、コレットサイズ8mm角、突き上げ速度5mm/秒、ピックアップ温度23℃の条件で、接着シート付き半導体チップのピックアップを行った。
【0112】
その後、ダイボンダーを用いて、接着シート付き半導体チップを接着シート側から基板上に積層し、さらに基板上に積層された半導体チップ上に、接着シート付き半導体チップをさらに積層し、積層体を得た。
【0113】
得られた積層体を170℃で30分加熱し、接着シートを硬化させた。その後、積層体を樹脂モールド層形成用樹脂組成物により被覆し、170℃で4時間加熱することにより樹脂組成物を硬化させ、半導体装置を得た。この半導体装置を500個用意した。
【0114】
得られた半導体装置500個中、半導体チップにクラックが生じている半導体装置を数え、クラック発生率を求めた。
【0115】
また、得られた半導体装置において、半導体チップと硬化後の接着シートとの界面で切断し、硬化後の接着シートを平面視し、硬化後の接着シートの全面積に占める弾性粒子が含有されている領域の面積Aを求めた。
【0116】
結果を下記の表1に示す。
【0117】
【表1】

【符号の説明】
【0118】
1…半導体装置
2…基板
2a…上面
3〜7…硬化物層
3a〜7a…弾性粒子
8〜12…半導体チップ
13…樹脂モールド層
21…半導体装置
22…基板
22a…上面
22b,22c…電極
23,26…硬化物層
23a,26a…弾性粒子
24,27…半導体チップ
24a,27a…上面
24b,27b…電極
25,28…ボンディングワイヤー
29…樹脂モールド層
51…ダイシング−ダイボンディングテープ
52…離型フィルム
52a…上面
53…接着シート
53a…一方の面
53b…他方の面
53c…弾性粒子
54…基材フィルム
54a…一方の面
54b…他方の面
55…ダイシングフィルム
55a…延長部
61…接着シート
61a…金属片
61b…弾性粒子
62,63…半導体チップ
A1…半導体チップと金属片との接触部分
A2…半導体チップと弾性粒子との接触部分
X…圧着機からの圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップを実装部材上に接着するのに用いられる接着シートであって、
硬化性樹脂と、弾性粒子とを含有し、
前記弾性粒子の硬化後の接着シートの厚み方向に沿う寸法が、硬化後の接着シートの厚みと同等である、接着シート。
【請求項2】
硬化後の接着シートを平面視したときに、硬化後の接着シートの全面積に占める前記弾性粒子が含有されている領域の面積が、1〜25%の範囲内にある、請求項1に記載の接着シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接着シートと、該接着シートの一方の面に直接又は間接に積層されたダイシングフィルムとを備える、ダイシング−ダイボンディングテープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−225625(P2010−225625A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68085(P2009−68085)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】