説明

接着性樹脂組成物及び接着層の形成方法

【課題】ディスペンス、スタンピング、スクリーン印刷方法等の持つ欠点を克服し、薄膜の接着層を安定して形成することができる接着層の形成方法を提供する。
【解決手段】紫外線硬化型樹脂及び熱硬化性樹脂からなる溶質と揮発性溶媒とを含んでなる接着性樹脂組成物であって、溶質の含有量が5〜50質量%であり、かつ、前記樹脂組成物の25℃における粘度が100mPa・s以下である非接触塗布用樹脂組成物を、非接触型の塗布装置を用いて、シリコンウェハ1上に塗布する塗布し、溶媒を除去して接着層2aとし、さらに紫外線を照射する、接着層2aの形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業製品を製造する際の接着層を形成するのに用いる接着性樹脂組成物及びそれを用いた接着層の形成方法に係り、特に、半導体産業分野の基板・シリコンウェハ面に接着層を形成するのに適した接着性樹脂組成物及び接着層の形成方法である。
【背景技術】
【0002】
被接着面上への接着層の形成は、接着剤を被接着面上に塗布することにより行われるが、塗付の方法は、被接着面として何が用いられるか、用いる接着剤の種類等により適宜選択されるものである。
【0003】
そして、従来、半導体製造分野における半導体基板への接着層の形成は、被接着面が半導体基板であり薄く、製造する半導体チップのサイズが微細化しているため、ここで形成する接着層も、細く、薄く形成することが求められ、これまで、例えば、ディスペンス、スタンピング等の方法により行われて来た。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ディスペンス、スタンピング等の方法においては、接着層の厚さを数μm程度の薄膜として形成することが困難であり、また、塗付量にもバラツキが生じ易く、安定して均一な接着層を形成することが困難であった。
【0005】
さらに、半導体チップの接着の用途には、フィルム状の接着剤も用いられているが、ハンドリング性が求められる等の観点から、やはりある程度以上は薄くするのが困難で、薄膜が出来ないし、コストも高くつく等の問題点があった。
【0006】
また、Bステージ型の接着剤層が形成できても、チップに反りがあった場合、マウント時は平たん化しボイドが無く密着できても、接着剤がマウント・硬化時に加熱されるため樹脂層が低粘度になり、チップの反りを押さえきれずボイドや剥離を生じることがあった。
【0007】
そして、チップの個片に接着剤溶液を塗布する場合は、非接触塗布で塗布可能な粘度では乾燥時の液の流動により、外周部が盛り上がり、均一な厚みの接着剤層を得ることができない。
【0008】
また、パターニングについては、スクリーン印刷方法も考えられるが、この場合、厚さが5μm程度の薄膜塗付は困難で、また、接着層形成の操作において、装置が接着層の形成面に触れることから、基板がシリコンウェハ等の場合は、基板自体を破損してしまう危険性が生じる等の問題点があった。
【0009】
そこで、本発明は、このような各種の接着層の形成方法、即ち、ディスペンス、スタンピング、スクリーン印刷方法等の持つ欠点を克服し、また、チップのマウント時のボイド・剥離等の発生を抑えるためのものである。特に、精密なパターニングが必要な、電子工業分野、半導体産業分野で必要とされる、接着力の耐熱性、平坦性、タックフリー性、耐湿信頼性、膜厚制御性、硬化時のボイドの発生、低価格、取り扱いの容易さ、等を克服した接着層の形成方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、紫外線硬化型樹脂及び熱硬化性樹脂と、揮発性有機溶媒と、を含有する接着性樹脂組成物であって、所定の配合、性質とすることにより、これらの問題点を解消することができることを見出し、本発明を完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明の接着性樹脂組成物は、紫外線硬化型樹脂及び熱硬化性樹脂からなる溶質と、揮発性有機溶媒と、を含有する接着性樹脂組成物であって、前記溶質の接着性樹脂組成物における含有量が5〜50質量%であり、かつ、前記樹脂組成物の25℃における粘度が100mPa・s以下であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の接着層の形成方法は、被接着面上に、非接触型の塗布装置を用いて、本発明の接着性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、塗布された接着性樹脂組成物から溶媒を除去する溶媒除去工程と、溶媒除去工程により得られた乾燥後の接着性樹脂組成物に紫外線を照射する紫外線照射工程と、を有することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の他の接着層の形成方法は、被接着面上に、非接触型の塗布装置を用いて、本発明の接着性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、塗布された接着性樹脂組成物に紫外線を照射する紫外線照射工程と、紫外線照射により得られた接着性樹脂組成物から溶媒を除去する溶媒除去工程と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の接着性樹脂組成物及び接着層の形成方法によれば、所望の位置に接着層のパターニングを形成することができ、しかも接着層の厚さを従来できなかった薄層として形成することができ、さらに接着層の厚さの制御を容易にすることができる。
【0015】
また、これを電子工業分野、半導体産業分野等の精密なパターニングが求められる分野に適用すれば、高度のパターニング性、優れた耐熱接着性、平坦性の確保、Bステージ化によるタックフリー性、樹脂の耐湿信頼性、非接触塗布による自在な数ミクロンレベルの膜厚制御と塗布制御、硬化時のボイドの防止、必要な低価格性、樹脂層の形成後の取り扱いの容易さ等の産業用途に必要とされる優れた性質を付与しながら、接着層を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の接着層の形成方法においては、まず、被接着面上に、熱硬化性樹脂及び紫外線硬化型樹脂からなる溶質と揮発性有機溶媒とを含んでなる接着性樹脂溶液を、非接触型の塗付装置を用いて選択的に塗付する塗付工程を行なう。
【0017】
この塗布工程において、被接着面は接着層を形成する面であり、接着する対象物としては特に限定されるものではないが、本願において可能とした薄膜の接着層を均一に形成できるという利点を生かし、この方法に好適なものとしては、半導体装置の製造等に用いられるシリコンウェハの半導体基板等が挙げられる。
【0018】
本発明に用いる非接触型の塗布装置は、接着層を形成する被接着面に対して、非接触で接着層を形成することができるものであれば、特に限定されずに用いることができるが、定量吐出性、吐出精度等を考慮すると、印刷機で用いられるインクジェット装置、ジェットディスペンサ等が挙げられ、インクジェット装置であることが好ましい。
【0019】
このような非接触型の塗付装置を用いることで、被接着面上の接着性樹脂組成物のパターニングは、接着層を設ける位置を定め、その位置に接着性樹脂溶液を選択的に吐出して塗付を行なうことで所望の形状に接着層を形成することができる。
【0020】
このとき用いるインクジェット装置は、例えば、その接着性樹脂溶液を吐出する吐出ノズルにおける吐出口が微細な樹脂層のパターニングを形成できるようになっているが、そのため、吐出する溶液の性質によっては目詰まりをすぐに起こしてしまう可能性があり、効率よく接着層を形成するためには注意しなければならない。
【0021】
このとき用いる本発明の接着性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と紫外線硬化型樹脂からなる溶質と、揮発性有機溶媒とからなるものであり、その接着性樹脂組成物中の溶質の含有量が、5〜50質量%であり、かつ、該接着剤組成物の粘度が100mPa・s以下であることを特徴とする接着性樹脂組成物である。すなわち、樹脂からなる高分子固形分が揮発性溶媒に溶け込んだ溶液状となっているものである。
【0022】
ここで本発明に用いる熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等いずれの熱硬化性樹脂を用いることが可能であり、特に限定されないが、接着性・耐熱性等から、エポキシ樹脂、アクリル樹脂系の熱硬化性樹脂が好ましい。さらに好ましいのは常温で固形の樹脂である。
【0023】
以下、熱硬化性樹脂成分としてエポキシ樹脂組成物を用いる場合を例に説明する。このとき接着性樹脂組成物は、例えば、エポキシ樹脂、エポキシ用硬化剤、硬化促進剤、シランカップリング剤等を構成成分としてなるものである。
【0024】
ここで、エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を使用することができる。
【0025】
また、エポキシ用硬化剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化に使用されている化合物であれば特に制限なく使用でき、例えば、アミン硬化系としては、ジシアンジアミド、芳香族ジアミン等が挙げられ、フェノール硬化系としてはフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、トリアジン変性フェノールノボラック樹脂等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0026】
また、エポキシ用の硬化促進剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化促進剤に使用されているものが使用でき、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、三フッ化ホウ素アミン錯体、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。これらの硬化促進剤は単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0027】
そして、シランカップリング剤としては、エポキシシラン、アクリルシラン等のシランカップリング剤が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0028】
このとき、エポキシ樹脂100質量部に対して、硬化剤を2〜50質量部、硬化促進剤を0.01〜5質量部、シランカップリング剤を0.2〜3質量部配合することが好ましい。
【0029】
また、本発明に用いる紫外線硬化型樹脂としては、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ビニルエステル樹脂等の二重結合を持った樹脂を使用することができる。このとき、例えば、光重合性モノマー、光重合開始剤等を樹脂組成物の構成成分として用いるものである。
【0030】
ここで、本発明に使用することができる光重合性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート類、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール、これらのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物の多価(メタ)アクリレート類、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のε−カプロラクトン変性(メタ)アクリレート類、メラミン(メタ)アクリレート等が挙げられる。このとき、これら光重合性モノマーは希釈剤となり、これらは単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
【0031】
また、本発明に用いる光重合開始剤は、紫外線等の活性光線の照射により活性ラジカルを発生する活性ラジカル発生剤、増感剤等の公知慣用の光重合開始剤であり、例えば、活性ラジカル発生剤としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン類、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4´−ジクロロベンゾフェノン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
さらに、この光重合開始剤としては、N,N´−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤を単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
このとき、紫外線硬化型樹脂 100質量部に対して、光重合性モノマーを1〜100質量部、光重合開始剤を1〜60質量部配合することが好ましい。
【0034】
本発明は、熱硬化性樹脂と紫外線硬化型樹脂とを併用することを必須とするものであるから、上記したような熱硬化性樹脂成分と紫外線硬化型樹脂成分とを混合して接着性の樹脂組成物とするものである。
【0035】
このとき、熱硬化性樹脂と紫外線硬化型樹脂の配合割合としては、熱硬化性樹脂:紫外線硬化型樹脂の質量比が、100:10〜100:120の範囲であることが好ましい。この範囲を外れ、例えば、熱硬化性樹脂の割合が多くなってしまうと溶融粘度が低くなりチップの反りを抑えきれなくなり、そして逆に、紫外線硬化型樹脂の割合が多くなってしまうと接着剤としての接着力が低くなるというような不都合が生じてしまう。
【0036】
また、このように本発明で用いられる接着性の樹脂成分を溶解する溶媒としては、接着性樹脂成分を溶解できるものであれば、特に限定されずに用いることができるが、非接触型の塗付装置を用いる際の、接着性樹脂溶液を吐出する吐出ノズルが詰まらないように、沸点120℃以上の溶剤であることが望ましい。
【0037】
具体的な溶剤としては、ジグライム、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、γ−ブチルラクトン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0038】
ここで、溶媒に樹脂成分を溶解させた接着性樹脂溶液は、非接触型の塗付装置から吐出させる際に、微細な吐出ノズルにより所望の位置に接着性樹脂溶液を形成するようにするものであり、吐出ノズルにおいてノズルの目詰まりを生じさせないように、25℃における粘度を100mPa・s以下とすること、特に、5〜50mPa・sの範囲にすることが好ましい。本明細書における粘度は、25℃においてB型回転粘度計で測定したものである。
【0039】
この粘度は、接着性樹脂溶液中の溶媒と溶質の量により調整することができるが、接着性樹脂溶液中の溶質の含有量が5〜50質量%であることが好ましい。5質量%未満であると接着層形成の塗布量が多くなり、また乾燥時間も余計にかかるようになってしまい、50質量%を超えると粘度が十分に下げられなくなってしまう。
【0040】
次に、溶媒除去工程により、塗付工程により被接着面上にパターニングされた接着性樹脂溶液から、そこに含まれる溶媒を除去して接着層を形成する。ここで、接着性樹脂溶液から溶媒を除去するが、ここで用いている溶媒は揮発性の溶媒であるため、加熱することにより容易に除去することができる。
【0041】
加熱の方法は、含まれる揮発性溶媒が揮発して、接着性樹脂溶液から除去されればよく、例えば、周囲から熱を加えたり、被接着面自体から熱を加えたりして溶媒を揮発させてあげればよい。接着面自体、例えば、ウェハ自体を加熱しておくことにより塗布を行なった直後から溶媒除去が始まり、効率よく接着層を形成することもできる。
【0042】
このように溶媒から揮発性溶媒が除去され接着層が形成されるが、このとき、接着層は、さらにこの被接着面を他の接着面と合わせて接合するものであるから、その機能を発揮できる状態にすればよく、この溶媒除去工程においては、完全に溶媒を除去して樹脂を硬化させるものではなく、接着層の樹脂をBステージ状態で留めるものである。
【0043】
このとき、加熱温度は、例えば、40〜150℃であることが好ましく、60〜120℃であることが特に好ましい。ここで溶媒除去工程においては、用いる接着性溶媒の性質によっても異なるが、一般的には、60〜120℃の温度で1〜60分間加熱することにより接着層の形成を達成することができる。
【0044】
また、本発明における紫外線照射工程は、上記した溶媒除去工程を終えた接着層に紫外線を照射するか、溶媒除去工程に先立って、まずは紫外線照射工程を行い、次いで溶媒除去工程を行って接着層を形成する、いずれの方法によっても良い。
【0045】
この紫外線照射工程は、塗布された接着層に、公知の手法により紫外線を照射すればよく、ここで用いる光源には、特に制限はなく、この種の紫外線照射に用いられる超高圧水銀ランプ、水銀キセノンランプ、メタルハライドランプ等が使用できる。
【0046】
そして、上記したように紫外線の照射は、接着層を形成する工程において、乾燥の前後いずれの段階において行っても良く、例えば、乾燥の後に紫外線照射を行う場合を図1に、乾燥前に紫外線照射を行う場合を図2に、それぞれ操作を模式的に示したので、それぞれ半導体チップを形成する場合を例に簡単に説明する。
【0047】
乾燥後に紫外線照射を行う場合の操作は、まず、被接着面であるシリコン基板1上に接着性樹脂組成物を塗布して接着層2を形成し(図1(a))、これを加熱して乾燥させる(図1(b))。次に、乾燥した接着層2にダイシングテープ3を貼り合わせ(図1(c))、ダイシングソー4により切断した後、ダイシングテープ3側から紫外線を照射することで紫外線硬化成分を架橋させて、接着層2の強度及び溶融粘度を上昇させて、接着層を有する半導体チップが得られる(図1(d))。
【0048】
また、乾燥前に紫外線照射を行う場合の操作は、まず、シリコンウェハが保護テープ5に貼着された状態で、まず切断されて半導体チップが形成され、この半導体チップの個々の表面に接着性樹脂組成物を塗布し接着層2を形成する(図2(a))。形成された接着層2に紫外線を照射することで紫外線硬化成分を架橋させて、接着層の粘度を上昇させた後(図2(b))、加熱して乾燥させることにより溶媒を除去し、接着層を有する半導体チップが得られる(図2(c))。この紫外線照射を行った後に、溶媒除去を行う方法は、乾燥後の高さが均一で、かつ、平坦な接着層を形成するのに適している。
【0049】
この接着層の形成においては、塗布を一回のみ行い、接着層を一層で設けても良いが、これを間歇吐出することで繰り返し接着層を形成し、最終的には積層された接着層として一つの接着層を形成するようにしても良い。このように繰り返し接着層を形成する場合には、所望の厚さになるまで、この操作を繰り返し行なうようにすればよく、厚さの調整を繰り返し回数により容易に制御することができる。
【0050】
このようにして形成した接着層は、最終的には圧着加熱することにより半導体チップ等の被接着物を接着固定するのに用いられる。このとき、例えば、0.5〜20Nの圧力を加え、60〜170℃に加熱しながら行うことが好ましい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0052】
(実施例1)
薄層の接着剤層を形成するために、インクジェット装置(ピエゾ式、ノズル径40μmφ、ノズル間隔0.4mm)を用い、200mm径で厚み100μmのウェハを、裏面を上にして温度を23℃(室温)にした塗付ステージにセットした。
【0053】
塗付するBステージ型接着性樹脂溶液は、紫外線硬化型樹脂としてVR−60(昭和高分子株式会社製、商品名;ビニルエステル樹脂)60質量部、光重合性モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製、商品名:A−TMPT)30質量部、光重合開始剤としてイルガキュア907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)10質量部、熱硬化性樹脂としてEOCN103S(日本化薬株式会社製、商品名;エポキシ樹脂)100質量部、エポキシ樹脂硬化剤としてBRG556(昭和高分子株式会社製、商品名;フェノール樹脂硬化剤)40質量部、シランカップリング剤としてKBM403(信越化学工業株式会社製、商品名)1質量部、硬化促進剤として2E4MZ(四国化成工業株式会社製)0.4質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(協和発酵ケミカル株式会社製)500質量部を混合し、60℃で加熱溶解して作成した。こうして得られたBステージ型接着性樹脂溶液は、その25℃における粘度が20mPa・sであり、樹脂分が32.6質量%であった。
【0054】
この接着性樹脂溶液をインクジェット装置で、200mmウェハの形状に沿って塗布した。その塗布したウェハを100℃で1時間乾燥させた後で、膜厚測定を行なったところ、膜厚は8.0μmであった。この塗布したウェハをダイシングテープ(電気化学工業株式会社製、商品名:UHP−1108)に貼り付け、10mm角にダイシングし、ダイシングテープ・接着剤層にUV照射(300mJ)後ピックアップしマウントに用いた。ピックアップ時にチップ裏面を確認したが、接着剤層のダイシングテープへの転写はみられなかった。チップをピックアップ後、0.3mm厚みの有機パッケージ基板上に、そのチップを150℃に加熱して2段に5Nで圧着積層し、150℃で1時間硬化した。硬化後、封止材料のKE−G1250(京セラケミカル株式会社製、商品名)で0.8mm厚に封止し、175℃で8時間硬化後、吸湿リフロー試験を行った。結果を表1に示すが、接着剤のはみ出し、JEDECレベル3の吸湿処理後の260℃でのリフロー試験ともに問題がなかった。
【0055】
(実施例2)
薄層の接着剤層を形成するために、実施例1と同じインクジェット装置を用い、200mm径で厚み100μmのウェハを、裏面を上にして温度を23℃(室温)にした塗付ステージにセットした。
【0056】
塗付するBステージ型接着性樹脂溶液は、紫外線硬化型樹脂としてVR−60(昭和高分子株式会社製、商品名;ビニルエステル樹脂)50質量部、光重合性モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製、商品:A−TMPT)40質量部、光重合開始剤としてイルガキュア907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)30質量部、熱硬化性樹脂としてJER1002(日本エポキシ株式会社製、商品名;エポキシ樹脂)100質量部、エポキシ樹脂硬化剤としてBRG556(昭和高分子株式会社製、商品名;フェノール樹脂硬化剤)40質量部、シランカップリング剤としてKBM403(信越化学工業株式会社製、商品名)1質量部、硬化促進剤として2E4MZ(四国化成工業株式会社製)0.4質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(協和発酵ケミカル株式会社製)500質量部を混合し、60℃で加熱溶解して作成した。こうして得られたBステージ型接着性樹脂溶液は、その25℃における粘度が19mPa・sであり、樹脂分が31.6質量%であった。
【0057】
この接着性樹脂溶液をインクジェット装置で、200mmウェハの形状に沿って塗布した。その塗布したウェハを100℃で1時間乾燥させた後で、膜厚測定を行なったところ、膜厚は7.7μmであった。この塗布したウェハをダイシングテープ(電気化学工業株式会社製、商品名:UHP−1108)に貼り付け、10mm角にダイシングし、ダイシングテープ・接着剤層にUV照射(300mJ)後ピックアップしマウントに用いた。ピックアップ時にチップ裏面を確認したが、接着剤層のダイシングテープへの転写はみられなかった。チップをピックアップ後、0.3mm厚みの有機パッケージ基板上に、そのチップを150℃に加熱して2段に5Nで圧着積層し、150℃で1時間硬化した。硬化後、封止材料のKE−G1250(京セラケミカル株式会社製、商品名)で0.8mm厚に封止し、175℃で8時間硬化後、吸湿リフロー試験を行った。結果を表1に示すが、接着剤のはみ出し、JEDECレベル3の吸湿処理後の260℃でのリフロー試験ともに問題がなかった。
【0058】
(実施例3)
薄層の接着剤層を形成するために、実施例1と同じインクジェット装置を用い、200mm径で厚み100μmのウェハを、裏面を上にして温度を23℃(室温)にした塗付ステージにセットした。
【0059】
塗付するBステージ型接着性樹脂溶液は、紫外線硬化型樹脂としてEA1020(新中村化学株式会社製、商品名;アクリレート樹脂)60質量部、光重合性モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製、商品名:A−TMPT)30質量部、光重合開始剤としてイルガキュア907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)15量部、熱硬化性樹脂としてJER1002(日本エポキシ株式会社製、商品名;エポキシ樹脂)100質量部、硬化剤としてCUE−4(イハラケミカル株式会社製、商品名;芳香族ジアミン硬化剤)20質量部、シランカップリング剤としてKBM403(信越化学工業株式会社製、商品名)1質量部、硬化促進剤として1B2PZ(四国化成工業株式会社製)0.4質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(協和発酵ケミカル株式会社製)600質量部を混合し、60℃で加熱溶解して作成した。こうして得られたBステージ型接着性樹脂溶液は、その25℃における粘度が18mPa・sであり、樹脂分が31.2質量%であった。
【0060】
この接着性樹脂溶液をインクジェット装置で、200mmウェハの形状に沿って塗布した。その塗布したウェハを100℃で1時間乾燥させた後で、膜厚測定を行なったところ、膜厚は7.0μmであった。この塗布したウェハをダイシングテープ(電気化学工業株式会社製、商品名:UHP−1108)に貼り付け、10mm角にダイシングし、ダイシングテープ・接着剤層にUV照射(300mj)後ピックアップしマウントに用いた。ピックアップ時にチップ裏面を確認したが、接着剤層のダイシングテープへの転写はみられなかった。チップをピックアップ後、0.3mm厚みの有機パッケージ基板上に、そのチップを150℃に加熱して2段に5Nで圧着積層し、150℃で1時間硬化した。硬化後、封止材料のKE−G1250(京セラケミカル株式会社製、商品名)で0.8mm厚に封止し、175℃で8時間硬化後、吸湿リフロー試験を行った。結果を表1に示すが、接着剤のはみ出し、JEDECレベル3の吸湿処理後の260℃でのリフロー試験ともに問題がなかった。
【0061】
(実施例4)
薄層の接着剤層を形成するために、ジェットディスペンサ装置(武蔵エンジニアリング株式会社製、商品名:MJT−2T)を用い、200mm径で厚み100μmのウェハを、裏面を上にして温度を23℃(室温)にした塗付ステージにセットした。
【0062】
塗付するBステージ型接着性樹脂溶液は、紫外線硬化型樹脂としてVR−60(昭和高分子株式会社製、商品名;ビニルエステル樹脂)60質量部、光重合性モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学株式会社製、商品:A−TMPT)30質量部、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)15質量部、熱硬化性樹脂としてECON103S(日本化薬株式会社製、商品名;エポキシ樹脂)100質量部、エポキシ樹脂硬化剤としてCUE−4(イハラケミカル株式会社製、商品名;芳香族ジアミン)20質量部、シランカップリング剤としてKBM1003(信越化学工業株式会社製、商品名)1質量部、硬化促進剤として2E4MZ(四国化成工業株式会社製)0.4質量部、溶剤としてガンマブチロラクトン(三菱化学株式会社製)350質量部を混合し、60℃で加熱溶解して作成した。こうして得られたBステージ型接着性樹脂溶液は、その25℃における粘度が45mPa・sであり、樹脂分が38.6質量%であった。
【0063】
この接着性樹脂溶液をジェットディスペンサ装置で、200mmウェハの形状に沿って塗布した。その塗布したウェハを100℃で1時間乾燥させた後で、膜厚測定を行なったところ、膜厚は4.0μmであった。この塗布したウェハをダイシングテープ(電気化学工業株式会社製、商品名:UHP−1108)に貼り付け、10mm角にダイシングし、ダイシングテープ・接着剤層にUV照射(300mJ)後ピックアップしマウントに用いた。ピックアップ時にチップ裏面を確認したが、接着剤層のダイシングテープへの転写はみられなかった。チップをピックアップ後、0.3mm厚みの有機パッケージ基板上に、そのチップを150℃に加熱して2段に5Nで圧着積層し、150℃で1時間硬化した。硬化後、封止材料のKE−G1250(京セラケミカル株式会社製、商品名)で0.8mm厚に封止し、175℃で8時間硬化後、吸湿リフロー試験を行った。結果を表1に示すが、接着剤のはみ出し、JEDECレベル3の吸湿処理後の260℃でのリフロー試験ともに問題がなかった。
【0064】
(実施例5)
薄層の接着剤層を形成するために、実施例1と同じインクジェット装置を用い、200mm径で、10mm角にダイシング済みの厚み50μmのウェハ(ラップテープ付)を、裏面を上にして塗付ステージにセットした。
【0065】
塗付するBステージ型接着性樹脂溶液は、紫外線硬化型樹脂としてVR−60(昭和高分子株式会社製、商品名;ビニルエステル樹脂)60質量部、光重合性モノマーとしてペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学株式会社製、商品:A−TMM−3)30質量部、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)15質量部、熱硬化性樹脂としてECON103S(日本化薬株式会社製、商品名;エポキシ樹脂)100質量部、エポキシ樹脂硬化剤としてCUE−4(イハラケミカル株式会社製、商品名;芳香族ジアミン)20質量部、シランカップリング剤としてKBM1003(信越化学工業株式会社製、商品名)1質量部、硬化促進剤として2E4MZ(四国化成工業株式会社製)0.4質量部、溶剤としてガンマブチロラクトン(三菱化学株式会社製)600質量部を混合し、60℃で加熱溶解して作成した。こうして得られたBステージ型接着性樹脂溶液は、その25℃における粘度が22mPa・sであり、樹脂分が31.1質量%であった。
【0066】
この接着性樹脂溶液をインクジェット装置で、ダイシングされたチップの形状に沿って塗布した。その塗布した樹脂溶液の乾燥前にウェハ全体にUV照射(600mJ)を行い、ウェハを100℃で1時間乾燥させて膜厚測定を行なったところ、膜厚は5.0μmであった。このとき厚みバラつきは最大0.1μmであった。この塗布したウェハをダイシングテープ(電気化学工業株式会社製、商品名:UHP−1108)に貼り付け、ダイシングテープ・接着剤層にUV照射(300mJ)後、ピックアップしマウントに用いた。ピックアップ時にチップ裏面を確認したが、接着剤層のダイシングテープへの転写はみられなかった。チップをピックアップ後、0.3mm厚みの有機パッケージ基板上に、そのチップを150℃に加熱して2段に5Nで圧着積層し、150℃で1時間硬化した。硬化後、封止材料のKE−G1250(京セラケミカル株式会社製、商品名)で0.8mm厚に封止し、175℃で8時間硬化後、吸湿リフロー試験を行った。結果を表1に示すが、接着剤のはみ出し、JEDECレベル3の吸湿処理後の260℃でのリフロー試験ともに問題がなかった。
【0067】
(実施例6)
薄層の接着剤層を形成するために、実施例4と同じジェットディスペンサ装置を用い、200mm径で、10mm角にダイシング済みの厚み50μmのウェハ(ラップテープ付)を、裏面を上にして塗付ステージにセットした。
【0068】
塗付するBステージ型接着性樹脂溶液は、紫外線硬化型樹脂としてEA1020(新中村化学株式会社製、商品名;アクリレート樹脂)60質量部、光重合性モノマーとしてペンタエリスリトールトリアクリレート(新中村化学株式会社製、商品名:A−TMM−3)30質量部、光重合開始剤としてイルガキュア184(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、商品名)15量部、熱硬化性樹脂としてJER1002(日本エポキシ株式会社製、商品名;エポキシ樹脂)100質量部、硬化剤としてBRG556(昭和高分子株式会社製、商品名;フェノール樹脂硬化剤)35質量部、シランカップリング剤としてKBM403(信越化学工業株式会社製、商品名)1質量部、硬化促進剤として2E4MZ(四国化成工業株式会社製)0.4質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(協和発酵ケミカル株式会社製)400質量部を混合し、60℃で加熱溶解して作成した。こうして得られたBステージ型接着性樹脂溶液は、その25℃における粘度が20mPa・sであり、樹脂分が33.0質量%であった。
【0069】
この接着性樹脂溶液をジェットディスペンサ装置で、ダイシングされたチップの形状に沿って塗布した。その塗布した樹脂溶液の乾燥前にウェハ全体にUV照射(600mJ)を行い、ウェハを100℃で1時間乾燥させて膜厚測定を行なったところ、膜厚は5.0μmであった。このとき厚みバラつきは最大0.1μmであった。この塗布したウェハをダイシングテープ(電気化学工業株式会社製、商品名:UHP−1108)に貼り付け、ダイシングテープ・接着剤層にUV照射(300mJ)後、ピックアップしマウントに用いた。ピックアップ時にチップ裏面を確認したが、接着剤層のダイシングテープへの転写はみられなかった。チップをピックアップ後、0.3mm厚みの有機パッケージ基板上に、そのチップを150℃に加熱して2段に5Nで圧着積層し、150℃で1時間硬化した。硬化後、封止材料のKE−G1250(京セラケミカル株式会社製、商品名)で0.8mm厚に封止し、175℃で8時間硬化後、吸湿リフロー試験を行った。結果を表1に示すが、接着剤のはみ出し、JEDECレベル3の吸湿処理後の260℃でのリフロー試験ともに問題がなかった。
【0070】
(比較例1)
薄層の接着剤層を形成するために、実施例1と同じインクジェット装置を用い、200mm径で厚み100μmのウェハを、裏面を上にして温度を23℃(室温)にした塗付ステージにセットした。
【0071】
塗付するBステージ型接着性樹脂溶液は、熱硬化性樹脂としてEOCN103S(日本化薬株式会社製、商品名;エポキシ樹脂)100質量部、エポキシ樹脂硬化剤としてBRG556(昭和高分子株式会社製、商品名;フェノール樹脂硬化剤)40質量部、シランカップリング剤としてKBM403(信越化学工業株式会社製、商品名)1質量部、硬化促進剤として2E4MZ(四国化成工業株式会社製)0.4質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(協和発酵ケミカル株式会社製)300質量部を混合し、60℃で加熱溶解して作成した。こうして得られたBステージ型接着性樹脂溶液は、その25℃における粘度が21mPa・sであり、樹脂分が32.0質量%であった。
【0072】
この接着性樹脂溶液をインクジェット装置で、200mmウェハの形状に沿って塗布した。その塗布したウェハを100℃で1時間乾燥させた後で、膜厚測定を行なったところ、膜厚は8.0μmであった。この塗布したウェハをダイシングテープ(電気化学工業株式会社製、商品名:UHP−1108)に貼り付け、10mm角にダイシングし、ダイシングテープ・接着剤層にUV照射(300mJ)してピックアップしマウントに用いた。ピックアップ時にチップ裏面を確認したところ、接着剤層のダイシングテープへの転写がみられた。チップをピックアップ後、0.3mm厚みの有機パッケージ基板上に、そのチップを150℃に加熱して2段に5Nで圧着積層し、150℃で1時間硬化した。硬化後、封止材料のKE−G1250(京セラケミカル株式会社製、商品名)で0.8mm厚に封止し、175℃で8時間硬化後、吸湿リフロー試験を行った。結果を表1に示すが、接着剤のはみ出しがみられ、JEDECレベル3の吸湿処理後の260℃でのリフロー試験後に剥離もみられた。
【0073】
(比較例2)
薄層の接着剤層を形成するために、実施例1と同じインクジェット装置を用い、200mm径で厚み100μmのウェハを、裏面を上にして温度を23℃(室温)にした塗付ステージにセットした。
【0074】
塗付するBステージ型接着性樹脂溶液は、熱硬化性樹脂としてJER1002(日本エポキシ株式会社製、商品名;エポキシ樹脂)100質量部、エポキシ樹脂硬化剤としてCUE−4(イハラケミカル株式会社製、商品名;芳香族ジアミン硬化剤)12質量部、シランカップリング剤としてKBM403(信越化学工業株式会社製、商品名)1質量部、硬化促進剤として1B2PZ(四国化成工業株式会社製)0.4質量部、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(協和発酵ケミカル株式会社製)220質量部を混合し、60℃で加熱溶解して作成した。こうして得られたBステージ型接着性樹脂溶液は、その25℃における粘度が24mPa・sであり、樹脂分が34.0質量%であった。
【0075】
この接着性樹脂溶液をインクジェット装置で、200mmウェハの形状に沿って塗布した。その塗布したウェハを100℃で1時間乾燥させた後で、膜厚測定を行なったところ、膜厚は8.0μmであった。この塗布したウェハをダイシングテープ(電気化学工業株式会社製、商品名:UHP−1108)に貼り付け、10mm角にダイシングし、ダイシングテープ・接着剤層にUV照射(300mJ)してピックアップしマウントに用いた。ピックアップ時にチップ裏面を確認したところ、接着剤層のダイシングテープへの転写がみられた。チップをピックアップ後、0.3mm厚みの有機パッケージ基板上に、そのチップを150℃に加熱して2段に5Nで圧着積層し、150℃で1時間硬化した。硬化後、封止材料のKE−G1250(京セラケミカル株式会社製、商品名)で0.8mm厚に封止し、175℃で8時間硬化後、吸湿リフロー試験を行った。結果を表1に示すが、接着剤のはみ出しがみられ、JEDECレベル3の吸湿処理後の260℃でのリフロー試験後に剥離もみられた。
【0076】
(比較例3)
薄層の接着剤層を形成するために、実施例1と同じインクジェット装置を用い、200mm径で、10mm角にダイシング済みの厚み50μmのウェハ(ラップテープ付)を、裏面を上にして塗付ステージにセットした。
【0077】
塗付するBステージ型接着性樹脂溶液は、熱硬化性樹脂としてECON103S(日本化薬株式会社製、商品名;エポキシ樹脂)100質量部、エポキシ樹脂硬化剤としてCUE−4(イハラケミカル株式会社製、商品名;芳香族ジアミン)20質量部、シランカップリング剤としてKBM1003(信越化学工業株式会社製、商品名)1質量部、硬化促進剤として2E4MZ(四国化成工業株式会社製)0.4質量部、溶剤としてガンマブチロラクトン(三菱化学株式会社製)250質量部を混合し、60℃で加熱溶解して作成した。こうして得られたBステージ型接着性樹脂溶液は、その25℃における粘度が18mPa・sであり、樹脂分が32.7質量%であった。
【0078】
この接着性樹脂溶液をインクジェット装置で、ダイシングされたチップの形状に沿って塗布した。その塗布したウェハを100℃で1時間乾燥させて膜厚測定を行なったところ、平均膜厚は7.0μmであった。このときチップの外周部が他の部分より厚くなっており、厚みバラつきは最大1.5μmであった。この塗布したウェハをダイシングテープ(電気化学工業株式会社製、商品名:UHP−1108)に貼り付け、ダイシングテープ・接着剤層にUV照射(300mJ)後、ピックアップしマウントに用いた。ピックアップ時にチップ裏面を確認したところ、接着剤層のダイシングテープへの転写がみられ、接着層の一部が欠落した。チップをピックアップ後、0.3mm厚みの有機パッケージ基板上に、そのチップを150℃に加熱して2段に5Nで圧着積層し、150℃で1時間硬化した。硬化後、封止材料のKE−G1250(京セラケミカル株式会社製、商品名)で0.8mm厚に封止し、175℃で8時間硬化後、吸湿リフロー試験を行った。結果を表1に示すが、接着剤のはみ出しが見られた。また、JEDECレベル3の吸湿処理後の260℃でのリフロー試験を行ったが、接着層で剥離、ボイドがみられた。
【0079】
【表1】

【0080】
*1 吐出性:接着性樹脂溶液の吐出性について評価した。
○:連続吐出が可能であった、×:オリフィスが詰まることがあり、均一吐出ができなかった
*2 接着層の転写:ダイシングテープへの転写の有無を評価した。
○:転写なし、×:転写あり
*3 接着面のボイド:接着層の接着面にボイドが生じているか評価した。
○:ボイドなし、×:スタック硬化後ボイド・剥離あり
*4 樹脂のはみ出し:被接着面を接着したときの端部からの樹脂のはみ出した長さを測定し、次の基準により評価した。
○:150μm未満、×:150μm以上
*5 リフロー信頼性:JEDECレベル3の吸湿処理後の260℃でのリフロー試験後の、クラックの有無を外観検査により、剥離の有無を超音波深傷機でチップと封止材界面を観察した。
【0081】
本発明によれば、精密なパターニングが要求される電子工業分野、半導体産業分野等で必要とされるところの、高度のパターニング性、平坦性の確保、樹脂の耐湿信頼性、膜厚制御と塗布制御、硬化時のボイド発生の防止、低価格性、固形接着剤層化によるタックフリー性等を満たしながら接着層を形成することができ、それを可能とする接着性樹脂溶液を提供することができる。したがって、本発明は産業上、非常なる有用性を有するものである。
【0082】
また、この接着層の形成方法及び接着性樹脂溶液を用いれば、従来フィルム状の接着剤を使用していた半導体チップの積層等の分野に、より薄くかつ低コストで適用することができ、また、半導体の裏面だけでなく、基板面や表面層等にも塗付が可能であり、半導体の組立工程の自由度を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明による接着層の形成方法を示した図である。
【図2】本発明による他の接着層の形成方法を示した図である。
【符号の説明】
【0084】
1…シリコンウェハ、2…接着層、2a…乾燥後の接着層、3…ダイシングテープ、4…ダイシングソー、5…保護テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線硬化型樹脂及び熱硬化性樹脂からなる溶質と、揮発性有機溶媒と、を含有する接着性樹脂組成物であって、前記溶質の接着性樹脂組成物中における含有量が5〜50質量%であり、かつ、前記接着性樹脂組成物の25℃における粘度が100mPa・s以下であることを特徴とする非接触塗布用の接着性樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂が、固形エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1記載の非接触塗布用の接着性樹脂組成物。
【請求項3】
前記揮発性有機溶媒が、沸点120℃以上の溶媒であることを特徴とする請求項1又は2記載の非接触塗布用の接着性樹脂組成物。
【請求項4】
被接着面上に、非接触型の塗布装置を用いて、請求項1乃至3のいずれか1項記載の接着性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
前記塗布された接着性樹脂組成物から溶媒を除去する溶媒除去工程と、
前記溶媒除去工程により得られた乾燥後の接着性樹脂組成物に紫外線を照射する紫外線照射工程と、
を有することを特徴とする接着層の形成方法。
【請求項5】
被接着面上に、非接触型の塗布装置を用いて、請求項1乃至3のいずれか1項記載の接着性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
前記塗布された接着性樹脂組成物に紫外線を照射する紫外線照射工程と、
前記紫外線照射により得られた接着性樹脂組成物から溶媒を除去する溶媒除去工程と、
を有することを特徴とする接着層の形成方法。
【請求項6】
前記接着層の厚さが25μm以下であることを特徴とする請求項4又は5記載の接着層の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−37456(P2010−37456A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−202995(P2008−202995)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(390022415)京セラケミカル株式会社 (424)
【Fターム(参考)】