接続材料、接続材料の製造方法、および半導体装置
【課題】260℃以上の融点を有するZn−Al系合金を接続に適用すること、接続時の濡れを改善すること、材料製造時のプロセスを低減すること、熱応力に対する接続信頼性を向上することを可能とする接続材料を提供する。
【解決手段】接続材料として、Al系合金層102の最表面にZn系合金層101を設けたものである。特に、前記Al系合金層102のAl含有率が99〜100wt.%、または、前記Zn系合金層101のZn含有率が90〜100wt.%である接続材料とする。この接続材料を用いることで、接続時に接続材料の表面のAl酸化膜の形成が抑制され、Zn−Al合金では得られない良好な濡れを得ることができる。また、接続後にAl系合金層を残存させた場合、軟らかいAlが応力緩衝材として機能するため、高い接続信頼性を得ることができる。
【解決手段】接続材料として、Al系合金層102の最表面にZn系合金層101を設けたものである。特に、前記Al系合金層102のAl含有率が99〜100wt.%、または、前記Zn系合金層101のZn含有率が90〜100wt.%である接続材料とする。この接続材料を用いることで、接続時に接続材料の表面のAl酸化膜の形成が抑制され、Zn−Al合金では得られない良好な濡れを得ることができる。また、接続後にAl系合金層を残存させた場合、軟らかいAlが応力緩衝材として機能するため、高い接続信頼性を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続材料の技術に関し、特に、この接続材料の構造および製造方法、さらにこの接続材料を用いた半導体装置、パワー半導体装置、パワーモジュールなどに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者が検討した技術として、接続材料を用いた半導体装置について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、従来の半導体装置の構造を示す図である。図2は、再溶融したはんだによるフラッシュを説明する図である。
【0003】
図1に示すように、半導体装置7は、半導体素子1がフレーム2上にはんだ3により接続され、ワイヤ4によりリード5のインナーリードと半導体素子1の電極がワイヤボンディングされた後、封止用レジン6あるいは不活性ガスにより封止されて製造される。
【0004】
この半導体装置7は、Sn−Ag−Cu系の中温の鉛フリーはんだによりプリント基板にリフローはんだ付けされる。Sn−Ag−Cu系鉛フリーはんだの融点は約220℃と高く、リフロー接続の際に接続部が最高260℃まで加熱されることが想定される。そのため、温度階層を目的として半導体装置内部の半導体素子のダイボンディングには、290℃以上の融点を有する高鉛はんだが使用される。高鉛はんだは、構成成分として85wt.%以上の鉛を含有しており、2006年7月より施行されているRoHS指令で禁止されているSn−Pb共晶はんだに比べて環境への負荷が大きい。よって、高鉛はんだに替わる代替接続材の開発が切望されている。
【0005】
現在、既に開発されているSn−Ag−Cu系等のはんだは融点が260℃以下であるため、半導体素子のダイボンディングに使用した場合、2次実装時(最高温度260℃)にはんだが溶融してしまう。接続部周りがレジンでモールドされている場合、内部のはんだが溶融すると、溶融時の体積膨張により、図2に示すように、フラッシュと言って封止用レジン6とフレーム2の界面からはんだ3が漏れ出すことがある。あるいは、漏れ出さないまでも、漏れ出そうと作用し、その結果、凝固後にはんだの中に大きなボイド8が形成され不良品となる。代替材料の候補としては、融点の面からAu−Sn、Au−Si、Au−Ge等のAu系はんだ、Zn、Zn−Al系のはんだおよびBi、Bi−Cu、Bi−Ag等のはんだが報告されており、世界中で検討が進められている。
【0006】
しかしながら、Au系のはんだは、構成成分としてAuを80wt.%以上含有しており、コストの面で汎用性に難がある。Bi系はんだは、熱伝導率が約9W/mKと現行の高鉛はんだより低く、高放熱性が要求されるパワー半導体装置およびパワーモジュール等への適用は難しいと推定できる。また、ZnおよびZn−Al系はんだは、約100W/mKと高い熱伝導率を有するが、濡れにくく(特にZn−Al系はんだ)、はんだが硬く、接続後の冷却時に熱応力によって半導体素子が破壊しやすい等の問題がある。
【0007】
特許文献1や特許文献2では、Al:1〜7wt.%、Mg:0.5〜6wt.%、Ga:0.1〜20wt.%、P:0.001〜0.5wt.%、残部をZn、Ge:2〜9wt.%、Al:2〜9wt.%、P:0.001〜0.5wt.%、残部をZnあるいはGe:2〜9wt.%、Al:2〜9wt.%、Mg:0.01〜0.5wt.%、P:0.001〜0.5wt.%、残部をZnとすることにより、Zn系はんだ合金のCuやNiに対する濡れ性の向上および融点低下をさせている。しかしながら、AlやMgを成分とするため、接続時の加熱によりAl酸化物およびMg酸化物が溶融部表面に膜を生成する。これらの膜が濡れを阻害するため、スクラブ等により機械的に膜を破らない限り、十分に濡れが得られない恐れがある。また、はんだの硬さに関して、改善がなされていないため、接続後の冷却時あるいは温度サイクル時の熱応力による半導体素子の破壊に対する改善が期待できない。
【0008】
特許文献3では、Zn−Al系合金の最表面にIn、Ag、Au層を設けることにより、Zn−Al系合金表面の酸化を抑制し、濡れ性の向上を図っている。しかしながら、In、AgおよびAu層を設けるためには、Zn−Al表面にめっきおよび蒸着等の処理が不可欠であり、材料製造のプロセス増加に繋がる。また、上記と同様に、Inを添加した場合に硬さを低下させることが可能であるが、接続後の冷却時の熱応力による半導体素子の破壊を抑制するほどの効果は期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−358539号公報
【特許文献2】特開2004−358540号公報
【特許文献3】特開2002−261104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、Zn−Al系合金により高鉛はんだの代替が図れるのではないかと考えた。上記の従来技術においては、以下の点について配慮がなされていなかった。Zn−Al系合金にAlが含有されるために、十分な濡れを確保できない。Zn−Al系合金に表面処理を行うことにより、材料製造時のプロセスが増加する。接続後の冷却時あるいは温度サイクル時の熱応力による半導体素子の破壊を抑制できない。
【0011】
そこで、本発明の目的は、これらの点に配慮して、260℃以上の融点を有するZn−Al系合金を接続に適用すること、接続時の濡れを改善すること、材料製造時のプロセスを低減すること、熱応力に対する接続信頼性を向上することを可能とする接続材料を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
本発明は、Al系合金層の最表面にZn系合金層を設けた接続材料を提供するものである。特に、前記Al系合金層のAl含有率が99〜100wt.%である接続材料、または、前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%である接続材料を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、Zn系合金層の上にAl系合金層、その上にZn系合金層となる接続材料をクラッド圧延、または、加圧成形により製造する接続材料の製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、前記接続材料を用いて、半導体素子をフレームに接続する半導体装置(ダイボンディング構造)、金属キャップを基板に接続する半導体装置(気密封止構造)、バンプにより接続する半導体装置(フリップチップ実装構造)を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
本発明によれば、Al系合金層の最表面にZn系合金層を設けた接続材料を用いるため、接続時に接続材料の表面のAl酸化膜の形成が抑制され、良好な濡れを得ることができる。また、接続後にAl系合金層が応力緩衝材として機能するため、高い接続信頼性を得ることができる。この結果、260℃以上の融点を有するZn−Al系合金を接続に適用すること、接続時の濡れを改善すること、材料製造時のプロセスを低減すること、熱応力に対する接続信頼性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の半導体装置の構造を示す図である。
【図2】図1の半導体装置において、再溶融したはんだによるフラッシュを説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態において、クラッド圧延を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態において、加圧成形を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態における接続材料の断面を示す図である。
【図6】図5の接続材料の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態において、図6の接続材料(実施例1〜12)を用いた半導体装置の断面を示す図である。
【図8】図7の半導体装置において、接続材料による接続部の断面写真を示す図である。
【図9】図7の半導体装置において、濡れ性およびリフロー試験の結果を比較例と共に示す図である。
【図10】本発明の実施の形態において、図6の接続材料(実施例13〜24)を用いた別の半導体装置の断面を示す図である。
【図11】図7の半導体装置において、接続材料一体型の金属キャップを示す図である。
【図12】図10の半導体装置において、濡れ性の結果を比較例と共に示す図である。
【図13】本発明の実施の形態において、図6の接続材料を用いたさらに別の半導体装置の断面および実装構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
(本発明の実施の形態の概要)
第1の発明は、Al系合金層の最表面にZn系合金層を設けた接続材料を提供することにある。Zn−Al合金の場合、Alが成分であるために、溶融した瞬間にAl酸化物膜が表面に形成されるため、機械的に酸化物膜を破らなければ、十分な濡れが得られない。本発明の場合、接続材料の表面が不純物程度にしかAlを含有しないZn系合金であるため、接続時にZn系合金とAl系合金が反応してAl酸化物膜が形成される前に十分な濡れを確保することができる。また、接続時に溶融部はZn−Al系合金となるので、融点は380℃近傍まで低下する。よって、Znの融点420℃より低下するため、純Znに比べて接続後の冷却時に発生する熱応力を低減でき、半導体素子の破壊を抑制できる。接続時にAl合金層を残存させることにより、軟らかいAlが応力緩衝材として機能するため、接続信頼性を向上することができる。接続時にZnの融点420℃まで温度を上げなくても380℃以上の温度であれば、接触したZn層とAl層の間で拡散が進み、融点380℃のZn−Al共晶が形成されるため、接続が可能となる。
【0022】
第2の発明は、前記Al系合金層のAl含有率が99〜100wt.%である接続材料を提供することにある。Alの純度が100%に近づくほど軟らかくなり、応力緩衝機能を得ることが容易になる。一方、Al純度が99wt.%未満の場合、0.2%耐力および硬さが硬くなるため、応力緩衝機能を得ることが難しくなる。0.2%耐力は、30N/mm2以下になることが望ましい。Al層の厚さは、30〜200μmにすることが好ましい。厚さが30μm以下の場合、熱応力を十分に緩衝できないため、チップクラックが発生する場合がある。厚さが200μm以上の場合、Al,Mg,Ag,ZnはCuフレームより熱膨張率が大きいため、熱膨張率の効果が大きくなり、チップクラック発生等の信頼性の低下に繋がる場合がある。
【0023】
第3の発明は、前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%(主成分以外から見た場合はAl含有率が0.01wt.%未満)である接続材料を提供することにある。Zn系合金に含まれるAlが0.01wt.%以上になると、接続時に接続材料の表面にAl酸化物膜量の増加により、良好な濡れが得られない恐れがある。Zn系合金層の厚さは5〜100μmにすることが望ましい。5μm未満の場合、接続部全域の濡れを確保することが難しくなる。
【0024】
第4の発明は、Zn系合金層の上にAl系合金層、その上にZn系合金層となる接続材料をクラッド圧延により製造する製造方法を提供することにある。図3に示すように、ローラー103を用いてクラッド圧延を行うと、Zn系合金層101aとAl系合金層102aが接触すると同時に圧力によって大きな変形が生じるため、Zn系合金層101aおよびAl系合金層102aの表面に形成されていた酸化物膜が破れ、新生面により金属接合される。クラッド圧延では、ZnとAlの拡散が顕著になる温度まで熱負荷がかからない。よって、Alが表面のZn層を拡散し最表層まで達することはなく、接続時に良好な濡れを得ることが可能となる。
【0025】
第5の発明は、Zn系合金層の上にAl系合金層、その上にZn系合金層となる接続材料を加圧成形により製造する製造方法を提供することにある。図4に示すように、加圧成形機104を用いて加圧成形を行うと、Zn系合金層101bとAl系合金層102bが接触すると同時に圧力によって大きな変形が生じるため、Zn系合金層101bおよびAl系合金層102bの表面に形成されていた酸化物膜が破れ、新生面により金属接合される。加圧成形において、ZnとAlの拡散が顕著になる温度まで熱負荷がかからないようにすれば、Alが表面のZn層を拡散し最表層まで達することはなく、接続時に良好な濡れを得ることが可能となる。
【0026】
以下において、前述した第1〜第5の発明に基づいた実施の形態および実施例を具体的に説明する。ここでは、主に半導体装置、パワー半導体装置、パワーモジュール等のダイボンディングに用いるクラッド圧延により製造した接続材料を例に説明する。
【0027】
(実施の形態)
本発明の実施の形態における接続材料の断面を図5に示す。本実施の形態における接続材料は、下からZn系合金層(単にZn層、Znとも記す)101、中間がAl系合金層(単にAl層、Alとも記す)102、一番上がZn系合金層(単にZn層、Znとも記す)101となる。この接続材料は、前述した図3に示すように、Zn系合金層101a、Al系合金層102a、Zn系合金層101aを重ねて圧延加工する、すなわちクラッド圧延を行うことで製造した。
【0028】
この製造した全ての接続材料(ここではクラッド材と呼ぶ)を図6に示す。クラッド材1は、Zn層、Al層、Zn層の厚さがそれぞれ10、50、10μmである。クラッド材2は20、50、20μm、クラッド材3は20、100、20μmである。
【0029】
(実施例1〜12)
実施例1〜12は、図7に示すように、半導体装置11のダイボンディングに接続材料10を用いたものである。この半導体装置11は、半導体素子1と、この半導体素子1を接続するフレーム2と、一端が外部端子となるリード5と、このリード5の他端と半導体素子1の電極とを接続するワイヤ4と、半導体素子1およびワイヤ4を樹脂封止する封止用レジン6とを有し、半導体素子1とフレーム2は接続材料10で接続されて構成される。
【0030】
この半導体装置11の製造においては、Cuむく、あるいはNi、Ni/Ag、Ni/Auめっきを施したフレーム2上に接続材料10を供給し、半導体素子1を積層した後、加圧しながらN2雰囲気中で400℃、1min.加熱してダイボンディングを行った。その際の接続部の断面を図8に示す。フレーム2と接続材料10のAl層の間は、接続時にZnとAlが反応することで形成されたZn−Al合金層になっている。半導体素子1と接続材料10のAl層の間も同様である。その後、半導体素子1とリード5間をワイヤ4でワイヤボンディングし、180℃で封止用レジン6で封止を行った。
【0031】
実施例1〜12(図6のクラッド材1,2,3を使用)について、ダイボンディング時の濡れ性および半導体装置を最高温度260℃以上でリフロー試験を3回行った後の接続維持性について評価した結果を図9に示す。濡れ性については、半導体素子の面積に対して90%以上の濡れが得られた場合に○、90%未満75%以上の場合を△、75%未満の場合を×とした。260℃(最高温度)のリフロー試験については、リフロー試験前の接続面積に対し、リフロー試験後の接続面積が5%以上減少したものを×、5%未満の場合を○とした。
【0032】
この評価の結果、クラッド材1,2,3(Zn/Al/Zn)の接続材料を用いて接続した場合、Ni、Ni/Ag、Ni/Auめっきのフレームに対しては、90%以上の濡れを得られた。ただし、Cuむくのフレームに対しては、約80%の濡れとなり、△となった。260℃のリフロー試験については、実施例1〜12のいずれの場合も試験前後で接続面積は変化しなかった。
【0033】
一方、従来の接続材料(Zn−6Al(wt.%)、Zn)を用いた比較例1〜4の場合は、溶融したZn−Al合金の表面に強固なAl酸化物膜が形成されているため、いずれもフレームに対して75%未満の濡れとなった。特に、Cuむく、Niめっきのフレームの場合には、ほとんど濡らすことが出来なかった。比較例5〜8の場合、Znの融点420℃以上の温度で接続を行うことで、90%以上の濡れが得られた。しかしながら、接続後の冷却時に半導体素子とCu製フレームの熱膨張率差によって生じる熱応力を緩和できず、半導体素子が破壊するものが生じた。破壊を免れたものについて半導体装置を製造してリフロー試験を行ったところ、半導体素子の破壊が生じた。
【0034】
以上により、実施例1〜12によれば、本実施の形態における接続材料10を、半導体装置11のダイボンディングに用いることにより、Alを0.01wt.%以上含まないZn系合金層をAl系合金層の最表面に設けるため、接続時に接続材料の表面のAl酸化膜の形成が抑制され、Zn−Al合金では得られない良好な濡れを得ることができる。また、接続後にAl系合金層を残存させた場合、軟らかいAlが応力緩衝材として機能するため、高い接続信頼性を得ることができる。
【0035】
(実施例13〜24)
実施例13〜24は、図10に示すように、気密封止を必要とする半導体装置21の封止材として本接続材料10aを用いたものである。この半導体装置21は、半導体素子1と、この半導体素子1を接続するモジュール基板23と、一端が外部端子となるリード5と、このリード5の他端と半導体素子1の電極とを接続するワイヤ4と、半導体素子1およびワイヤ4を気密封止し、モジュール基板23に接続する金属キャップ22とを有し、モジュール基板23と金属キャップ22は接続材料10aで接続されて構成される。なお、この半導体装置21においては、モジュール基板23上にチップ部品等も接続されている。
【0036】
この半導体装置21の製造においては、モジュール基板23に、半導体素子1およびチップ部品等をSn系の鉛フリーのはんだ3、もしくは導電性接着剤、Cu粉/Sn粉複合材等で接続した後、接続材料10aをモジュール基板23と金属キャップ22の間に置き、400℃で加圧しながら接続を行った。
【0037】
なお、金属キャップについては、気密封止を行うために、図11に示すように、コバール、インバー等の金属合金24とAl系合金層102およびZn系合金層101を一緒にクラッド圧延で加工して、接続材料一体型の金属キャップ22aとしても構わない。
【0038】
実施例13〜24(図6のクラッド材1,2,3を使用)について、ダイボンディング時の濡れ性について評価した結果を図12に示す。濡れ性については、封止面積に対して気密が維持可能な濡れが得られた場合に○、ボイド、クラック等で気密を維持できない場合を×とした。
【0039】
この評価の結果、クラッド材1,2,3(Zn/Al/Zn)の接続材料を用いて接続した場合、Ni、Ni/Ag、Ni/Auめっきのフレームに対しては、十分に気密を維持できる濡れが得られた。ただし、Cuむくのフレームに対しては、未濡れおよびボイドにより、×となった。
【0040】
一方、従来の接続材料(Zn−6Al(wt.%))を用いた比較例9〜12の場合は、溶融したZn−Al合金の表面に強固なAl酸化物膜が形成されているため、未濡れ、ボイドにより気密封止ができなかった。
【0041】
以上により、実施例13〜24によれば、本実施の形態における接続材料10aを、半導体装置21の封止材として用いることにより、接続時に接続材料の表面のAl酸化膜の形成が抑制され、十分に気密を維持できる濡れを得ることができる。
【0042】
図10に示すような半導体装置21においては、鉛フリーのはんだ3の代わりに、本接続材料10を用いて半導体素子1とモジュール基板23を接続することも可能であり、この場合には前記実施例1〜12と同様の効果を得ることができる。
【0043】
(他の実施例)
他の実施例は、図13に示すように、フリップチップ実装を必要とする半導体装置31のバンプとして本接続材料10bを用いたものである。この半導体装置31は、半導体素子1を有し、この半導体素子1とこれを実装する基板34は接続材料10bで接続されて構成される。
【0044】
この半導体装置31の製造においては、接続材料10bを、基板34のCu配線35にNiまたはNi/Auめっき36を施したパッドと、半導体素子1のAl配線32にZnめっき33を施した電極の間に置き、380℃で加圧しながら接続を行った。
【0045】
この他の実施例においても、本実施の形態における接続材料10bを、半導体装置31のバンプとして用いることにより、接続時に接続材料の表面のAl酸化膜の形成が抑制され、良好な濡れを得ることができる。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0047】
すなわち、上記説明では、本発明の適用について、半導体装置のダイボンディングを例に挙げて説明したが、ダイボンディングさせる半導体装置であれば多様な半導体装置に適用できる。これらには、例えば、オルタネータ用ダイオード、IGBTモジュール、RFモジュール等のフロントエンドモジュール、自動車用パワーモジュール等が挙げられる。
【0048】
また、上記説明では、半導体装置をモジュール基板にリフロー実装する場合を例に挙げて説明したが、例えば、MCM(Multi Chip Module)構成に使用する場合にも当然に適用できるものである。
【符号の説明】
【0049】
1…半導体素子、2…フレーム、3…はんだ、4…ワイヤ、5…リード、6…封止用レジン、7…半導体装置、8…ボイド、 10,10a,10b…接続材料、 11…半導体装置、 21…半導体装置、22,22a…金属キャップ、23…モジュール基板、24…金属合金、 31…半導体装置、32…Al配線、33…Znめっき、34…基板、35…Cu配線、36…NiまたはNi/Auめっき、 101…Zn系合金層、102…Al系合金層、103…ローラー、104…加圧成形機。
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続材料の技術に関し、特に、この接続材料の構造および製造方法、さらにこの接続材料を用いた半導体装置、パワー半導体装置、パワーモジュールなどに適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者が検討した技術として、接続材料を用いた半導体装置について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、従来の半導体装置の構造を示す図である。図2は、再溶融したはんだによるフラッシュを説明する図である。
【0003】
図1に示すように、半導体装置7は、半導体素子1がフレーム2上にはんだ3により接続され、ワイヤ4によりリード5のインナーリードと半導体素子1の電極がワイヤボンディングされた後、封止用レジン6あるいは不活性ガスにより封止されて製造される。
【0004】
この半導体装置7は、Sn−Ag−Cu系の中温の鉛フリーはんだによりプリント基板にリフローはんだ付けされる。Sn−Ag−Cu系鉛フリーはんだの融点は約220℃と高く、リフロー接続の際に接続部が最高260℃まで加熱されることが想定される。そのため、温度階層を目的として半導体装置内部の半導体素子のダイボンディングには、290℃以上の融点を有する高鉛はんだが使用される。高鉛はんだは、構成成分として85wt.%以上の鉛を含有しており、2006年7月より施行されているRoHS指令で禁止されているSn−Pb共晶はんだに比べて環境への負荷が大きい。よって、高鉛はんだに替わる代替接続材の開発が切望されている。
【0005】
現在、既に開発されているSn−Ag−Cu系等のはんだは融点が260℃以下であるため、半導体素子のダイボンディングに使用した場合、2次実装時(最高温度260℃)にはんだが溶融してしまう。接続部周りがレジンでモールドされている場合、内部のはんだが溶融すると、溶融時の体積膨張により、図2に示すように、フラッシュと言って封止用レジン6とフレーム2の界面からはんだ3が漏れ出すことがある。あるいは、漏れ出さないまでも、漏れ出そうと作用し、その結果、凝固後にはんだの中に大きなボイド8が形成され不良品となる。代替材料の候補としては、融点の面からAu−Sn、Au−Si、Au−Ge等のAu系はんだ、Zn、Zn−Al系のはんだおよびBi、Bi−Cu、Bi−Ag等のはんだが報告されており、世界中で検討が進められている。
【0006】
しかしながら、Au系のはんだは、構成成分としてAuを80wt.%以上含有しており、コストの面で汎用性に難がある。Bi系はんだは、熱伝導率が約9W/mKと現行の高鉛はんだより低く、高放熱性が要求されるパワー半導体装置およびパワーモジュール等への適用は難しいと推定できる。また、ZnおよびZn−Al系はんだは、約100W/mKと高い熱伝導率を有するが、濡れにくく(特にZn−Al系はんだ)、はんだが硬く、接続後の冷却時に熱応力によって半導体素子が破壊しやすい等の問題がある。
【0007】
特許文献1や特許文献2では、Al:1〜7wt.%、Mg:0.5〜6wt.%、Ga:0.1〜20wt.%、P:0.001〜0.5wt.%、残部をZn、Ge:2〜9wt.%、Al:2〜9wt.%、P:0.001〜0.5wt.%、残部をZnあるいはGe:2〜9wt.%、Al:2〜9wt.%、Mg:0.01〜0.5wt.%、P:0.001〜0.5wt.%、残部をZnとすることにより、Zn系はんだ合金のCuやNiに対する濡れ性の向上および融点低下をさせている。しかしながら、AlやMgを成分とするため、接続時の加熱によりAl酸化物およびMg酸化物が溶融部表面に膜を生成する。これらの膜が濡れを阻害するため、スクラブ等により機械的に膜を破らない限り、十分に濡れが得られない恐れがある。また、はんだの硬さに関して、改善がなされていないため、接続後の冷却時あるいは温度サイクル時の熱応力による半導体素子の破壊に対する改善が期待できない。
【0008】
特許文献3では、Zn−Al系合金の最表面にIn、Ag、Au層を設けることにより、Zn−Al系合金表面の酸化を抑制し、濡れ性の向上を図っている。しかしながら、In、AgおよびAu層を設けるためには、Zn−Al表面にめっきおよび蒸着等の処理が不可欠であり、材料製造のプロセス増加に繋がる。また、上記と同様に、Inを添加した場合に硬さを低下させることが可能であるが、接続後の冷却時の熱応力による半導体素子の破壊を抑制するほどの効果は期待できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−358539号公報
【特許文献2】特開2004−358540号公報
【特許文献3】特開2002−261104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者は、Zn−Al系合金により高鉛はんだの代替が図れるのではないかと考えた。上記の従来技術においては、以下の点について配慮がなされていなかった。Zn−Al系合金にAlが含有されるために、十分な濡れを確保できない。Zn−Al系合金に表面処理を行うことにより、材料製造時のプロセスが増加する。接続後の冷却時あるいは温度サイクル時の熱応力による半導体素子の破壊を抑制できない。
【0011】
そこで、本発明の目的は、これらの点に配慮して、260℃以上の融点を有するZn−Al系合金を接続に適用すること、接続時の濡れを改善すること、材料製造時のプロセスを低減すること、熱応力に対する接続信頼性を向上することを可能とする接続材料を提供することにある。
【0012】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0014】
本発明は、Al系合金層の最表面にZn系合金層を設けた接続材料を提供するものである。特に、前記Al系合金層のAl含有率が99〜100wt.%である接続材料、または、前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%である接続材料を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、Zn系合金層の上にAl系合金層、その上にZn系合金層となる接続材料をクラッド圧延、または、加圧成形により製造する接続材料の製造方法を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、前記接続材料を用いて、半導体素子をフレームに接続する半導体装置(ダイボンディング構造)、金属キャップを基板に接続する半導体装置(気密封止構造)、バンプにより接続する半導体装置(フリップチップ実装構造)を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0018】
本発明によれば、Al系合金層の最表面にZn系合金層を設けた接続材料を用いるため、接続時に接続材料の表面のAl酸化膜の形成が抑制され、良好な濡れを得ることができる。また、接続後にAl系合金層が応力緩衝材として機能するため、高い接続信頼性を得ることができる。この結果、260℃以上の融点を有するZn−Al系合金を接続に適用すること、接続時の濡れを改善すること、材料製造時のプロセスを低減すること、熱応力に対する接続信頼性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の半導体装置の構造を示す図である。
【図2】図1の半導体装置において、再溶融したはんだによるフラッシュを説明する図である。
【図3】本発明の実施の形態において、クラッド圧延を説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態において、加圧成形を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態における接続材料の断面を示す図である。
【図6】図5の接続材料の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態において、図6の接続材料(実施例1〜12)を用いた半導体装置の断面を示す図である。
【図8】図7の半導体装置において、接続材料による接続部の断面写真を示す図である。
【図9】図7の半導体装置において、濡れ性およびリフロー試験の結果を比較例と共に示す図である。
【図10】本発明の実施の形態において、図6の接続材料(実施例13〜24)を用いた別の半導体装置の断面を示す図である。
【図11】図7の半導体装置において、接続材料一体型の金属キャップを示す図である。
【図12】図10の半導体装置において、濡れ性の結果を比較例と共に示す図である。
【図13】本発明の実施の形態において、図6の接続材料を用いたさらに別の半導体装置の断面および実装構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
(本発明の実施の形態の概要)
第1の発明は、Al系合金層の最表面にZn系合金層を設けた接続材料を提供することにある。Zn−Al合金の場合、Alが成分であるために、溶融した瞬間にAl酸化物膜が表面に形成されるため、機械的に酸化物膜を破らなければ、十分な濡れが得られない。本発明の場合、接続材料の表面が不純物程度にしかAlを含有しないZn系合金であるため、接続時にZn系合金とAl系合金が反応してAl酸化物膜が形成される前に十分な濡れを確保することができる。また、接続時に溶融部はZn−Al系合金となるので、融点は380℃近傍まで低下する。よって、Znの融点420℃より低下するため、純Znに比べて接続後の冷却時に発生する熱応力を低減でき、半導体素子の破壊を抑制できる。接続時にAl合金層を残存させることにより、軟らかいAlが応力緩衝材として機能するため、接続信頼性を向上することができる。接続時にZnの融点420℃まで温度を上げなくても380℃以上の温度であれば、接触したZn層とAl層の間で拡散が進み、融点380℃のZn−Al共晶が形成されるため、接続が可能となる。
【0022】
第2の発明は、前記Al系合金層のAl含有率が99〜100wt.%である接続材料を提供することにある。Alの純度が100%に近づくほど軟らかくなり、応力緩衝機能を得ることが容易になる。一方、Al純度が99wt.%未満の場合、0.2%耐力および硬さが硬くなるため、応力緩衝機能を得ることが難しくなる。0.2%耐力は、30N/mm2以下になることが望ましい。Al層の厚さは、30〜200μmにすることが好ましい。厚さが30μm以下の場合、熱応力を十分に緩衝できないため、チップクラックが発生する場合がある。厚さが200μm以上の場合、Al,Mg,Ag,ZnはCuフレームより熱膨張率が大きいため、熱膨張率の効果が大きくなり、チップクラック発生等の信頼性の低下に繋がる場合がある。
【0023】
第3の発明は、前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%(主成分以外から見た場合はAl含有率が0.01wt.%未満)である接続材料を提供することにある。Zn系合金に含まれるAlが0.01wt.%以上になると、接続時に接続材料の表面にAl酸化物膜量の増加により、良好な濡れが得られない恐れがある。Zn系合金層の厚さは5〜100μmにすることが望ましい。5μm未満の場合、接続部全域の濡れを確保することが難しくなる。
【0024】
第4の発明は、Zn系合金層の上にAl系合金層、その上にZn系合金層となる接続材料をクラッド圧延により製造する製造方法を提供することにある。図3に示すように、ローラー103を用いてクラッド圧延を行うと、Zn系合金層101aとAl系合金層102aが接触すると同時に圧力によって大きな変形が生じるため、Zn系合金層101aおよびAl系合金層102aの表面に形成されていた酸化物膜が破れ、新生面により金属接合される。クラッド圧延では、ZnとAlの拡散が顕著になる温度まで熱負荷がかからない。よって、Alが表面のZn層を拡散し最表層まで達することはなく、接続時に良好な濡れを得ることが可能となる。
【0025】
第5の発明は、Zn系合金層の上にAl系合金層、その上にZn系合金層となる接続材料を加圧成形により製造する製造方法を提供することにある。図4に示すように、加圧成形機104を用いて加圧成形を行うと、Zn系合金層101bとAl系合金層102bが接触すると同時に圧力によって大きな変形が生じるため、Zn系合金層101bおよびAl系合金層102bの表面に形成されていた酸化物膜が破れ、新生面により金属接合される。加圧成形において、ZnとAlの拡散が顕著になる温度まで熱負荷がかからないようにすれば、Alが表面のZn層を拡散し最表層まで達することはなく、接続時に良好な濡れを得ることが可能となる。
【0026】
以下において、前述した第1〜第5の発明に基づいた実施の形態および実施例を具体的に説明する。ここでは、主に半導体装置、パワー半導体装置、パワーモジュール等のダイボンディングに用いるクラッド圧延により製造した接続材料を例に説明する。
【0027】
(実施の形態)
本発明の実施の形態における接続材料の断面を図5に示す。本実施の形態における接続材料は、下からZn系合金層(単にZn層、Znとも記す)101、中間がAl系合金層(単にAl層、Alとも記す)102、一番上がZn系合金層(単にZn層、Znとも記す)101となる。この接続材料は、前述した図3に示すように、Zn系合金層101a、Al系合金層102a、Zn系合金層101aを重ねて圧延加工する、すなわちクラッド圧延を行うことで製造した。
【0028】
この製造した全ての接続材料(ここではクラッド材と呼ぶ)を図6に示す。クラッド材1は、Zn層、Al層、Zn層の厚さがそれぞれ10、50、10μmである。クラッド材2は20、50、20μm、クラッド材3は20、100、20μmである。
【0029】
(実施例1〜12)
実施例1〜12は、図7に示すように、半導体装置11のダイボンディングに接続材料10を用いたものである。この半導体装置11は、半導体素子1と、この半導体素子1を接続するフレーム2と、一端が外部端子となるリード5と、このリード5の他端と半導体素子1の電極とを接続するワイヤ4と、半導体素子1およびワイヤ4を樹脂封止する封止用レジン6とを有し、半導体素子1とフレーム2は接続材料10で接続されて構成される。
【0030】
この半導体装置11の製造においては、Cuむく、あるいはNi、Ni/Ag、Ni/Auめっきを施したフレーム2上に接続材料10を供給し、半導体素子1を積層した後、加圧しながらN2雰囲気中で400℃、1min.加熱してダイボンディングを行った。その際の接続部の断面を図8に示す。フレーム2と接続材料10のAl層の間は、接続時にZnとAlが反応することで形成されたZn−Al合金層になっている。半導体素子1と接続材料10のAl層の間も同様である。その後、半導体素子1とリード5間をワイヤ4でワイヤボンディングし、180℃で封止用レジン6で封止を行った。
【0031】
実施例1〜12(図6のクラッド材1,2,3を使用)について、ダイボンディング時の濡れ性および半導体装置を最高温度260℃以上でリフロー試験を3回行った後の接続維持性について評価した結果を図9に示す。濡れ性については、半導体素子の面積に対して90%以上の濡れが得られた場合に○、90%未満75%以上の場合を△、75%未満の場合を×とした。260℃(最高温度)のリフロー試験については、リフロー試験前の接続面積に対し、リフロー試験後の接続面積が5%以上減少したものを×、5%未満の場合を○とした。
【0032】
この評価の結果、クラッド材1,2,3(Zn/Al/Zn)の接続材料を用いて接続した場合、Ni、Ni/Ag、Ni/Auめっきのフレームに対しては、90%以上の濡れを得られた。ただし、Cuむくのフレームに対しては、約80%の濡れとなり、△となった。260℃のリフロー試験については、実施例1〜12のいずれの場合も試験前後で接続面積は変化しなかった。
【0033】
一方、従来の接続材料(Zn−6Al(wt.%)、Zn)を用いた比較例1〜4の場合は、溶融したZn−Al合金の表面に強固なAl酸化物膜が形成されているため、いずれもフレームに対して75%未満の濡れとなった。特に、Cuむく、Niめっきのフレームの場合には、ほとんど濡らすことが出来なかった。比較例5〜8の場合、Znの融点420℃以上の温度で接続を行うことで、90%以上の濡れが得られた。しかしながら、接続後の冷却時に半導体素子とCu製フレームの熱膨張率差によって生じる熱応力を緩和できず、半導体素子が破壊するものが生じた。破壊を免れたものについて半導体装置を製造してリフロー試験を行ったところ、半導体素子の破壊が生じた。
【0034】
以上により、実施例1〜12によれば、本実施の形態における接続材料10を、半導体装置11のダイボンディングに用いることにより、Alを0.01wt.%以上含まないZn系合金層をAl系合金層の最表面に設けるため、接続時に接続材料の表面のAl酸化膜の形成が抑制され、Zn−Al合金では得られない良好な濡れを得ることができる。また、接続後にAl系合金層を残存させた場合、軟らかいAlが応力緩衝材として機能するため、高い接続信頼性を得ることができる。
【0035】
(実施例13〜24)
実施例13〜24は、図10に示すように、気密封止を必要とする半導体装置21の封止材として本接続材料10aを用いたものである。この半導体装置21は、半導体素子1と、この半導体素子1を接続するモジュール基板23と、一端が外部端子となるリード5と、このリード5の他端と半導体素子1の電極とを接続するワイヤ4と、半導体素子1およびワイヤ4を気密封止し、モジュール基板23に接続する金属キャップ22とを有し、モジュール基板23と金属キャップ22は接続材料10aで接続されて構成される。なお、この半導体装置21においては、モジュール基板23上にチップ部品等も接続されている。
【0036】
この半導体装置21の製造においては、モジュール基板23に、半導体素子1およびチップ部品等をSn系の鉛フリーのはんだ3、もしくは導電性接着剤、Cu粉/Sn粉複合材等で接続した後、接続材料10aをモジュール基板23と金属キャップ22の間に置き、400℃で加圧しながら接続を行った。
【0037】
なお、金属キャップについては、気密封止を行うために、図11に示すように、コバール、インバー等の金属合金24とAl系合金層102およびZn系合金層101を一緒にクラッド圧延で加工して、接続材料一体型の金属キャップ22aとしても構わない。
【0038】
実施例13〜24(図6のクラッド材1,2,3を使用)について、ダイボンディング時の濡れ性について評価した結果を図12に示す。濡れ性については、封止面積に対して気密が維持可能な濡れが得られた場合に○、ボイド、クラック等で気密を維持できない場合を×とした。
【0039】
この評価の結果、クラッド材1,2,3(Zn/Al/Zn)の接続材料を用いて接続した場合、Ni、Ni/Ag、Ni/Auめっきのフレームに対しては、十分に気密を維持できる濡れが得られた。ただし、Cuむくのフレームに対しては、未濡れおよびボイドにより、×となった。
【0040】
一方、従来の接続材料(Zn−6Al(wt.%))を用いた比較例9〜12の場合は、溶融したZn−Al合金の表面に強固なAl酸化物膜が形成されているため、未濡れ、ボイドにより気密封止ができなかった。
【0041】
以上により、実施例13〜24によれば、本実施の形態における接続材料10aを、半導体装置21の封止材として用いることにより、接続時に接続材料の表面のAl酸化膜の形成が抑制され、十分に気密を維持できる濡れを得ることができる。
【0042】
図10に示すような半導体装置21においては、鉛フリーのはんだ3の代わりに、本接続材料10を用いて半導体素子1とモジュール基板23を接続することも可能であり、この場合には前記実施例1〜12と同様の効果を得ることができる。
【0043】
(他の実施例)
他の実施例は、図13に示すように、フリップチップ実装を必要とする半導体装置31のバンプとして本接続材料10bを用いたものである。この半導体装置31は、半導体素子1を有し、この半導体素子1とこれを実装する基板34は接続材料10bで接続されて構成される。
【0044】
この半導体装置31の製造においては、接続材料10bを、基板34のCu配線35にNiまたはNi/Auめっき36を施したパッドと、半導体素子1のAl配線32にZnめっき33を施した電極の間に置き、380℃で加圧しながら接続を行った。
【0045】
この他の実施例においても、本実施の形態における接続材料10bを、半導体装置31のバンプとして用いることにより、接続時に接続材料の表面のAl酸化膜の形成が抑制され、良好な濡れを得ることができる。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0047】
すなわち、上記説明では、本発明の適用について、半導体装置のダイボンディングを例に挙げて説明したが、ダイボンディングさせる半導体装置であれば多様な半導体装置に適用できる。これらには、例えば、オルタネータ用ダイオード、IGBTモジュール、RFモジュール等のフロントエンドモジュール、自動車用パワーモジュール等が挙げられる。
【0048】
また、上記説明では、半導体装置をモジュール基板にリフロー実装する場合を例に挙げて説明したが、例えば、MCM(Multi Chip Module)構成に使用する場合にも当然に適用できるものである。
【符号の説明】
【0049】
1…半導体素子、2…フレーム、3…はんだ、4…ワイヤ、5…リード、6…封止用レジン、7…半導体装置、8…ボイド、 10,10a,10b…接続材料、 11…半導体装置、 21…半導体装置、22,22a…金属キャップ、23…モジュール基板、24…金属合金、 31…半導体装置、32…Al配線、33…Znめっき、34…基板、35…Cu配線、36…NiまたはNi/Auめっき、 101…Zn系合金層、102…Al系合金層、103…ローラー、104…加圧成形機。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn系合金層とからなり、
前記Zn系合金層のAl含有率が0.01wt.%未満であることを特徴とする接続材料。
【請求項2】
請求項1記載の接続材料において、
前記Al系合金層のAl含有率が99〜100wt.%であることを特徴とする接続材料。
【請求項3】
請求項1記載の接続材料において、
前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%であることを特徴とする接続材料。
【請求項4】
請求項1記載の接続材料において、
前記Zn系合金層は、前記Al系合金層の対向する2つの最表面にそれぞれ設けられていることを特徴とする接続材料。
【請求項5】
第1のZn系合金層の上にAl系合金層を重ね、前記Al系合金層の上に第2のZn系合金層を重ねて、クラッド圧延または加圧成形により製造し、
前記第1のZn系合金層および前記第2のZn系合金層は、Zn含有率が90〜100wt.%で、Al含有率が0.01wt.%未満であることを特徴とする接続材料の製造方法。
【請求項6】
半導体素子と、
前記半導体素子を接続するフレームと、
一端が外部端子となるリードと、
前記リードの他端と前記半導体素子の電極とを接続するワイヤと、
前記半導体素子および前記ワイヤを樹脂封止するレジンとを有し、
前記半導体素子と前記フレームとを接続する接続材料は、Al系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn系合金層とからなり、
前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%で、前記Zn系合金層のAl含有率が0.01wt.%未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
半導体素子と、
前記半導体素子を接続する基板と、
一端が外部端子となるリードと、
前記リードの他端と前記半導体素子の電極とを接続するワイヤと、
前記半導体素子および前記ワイヤを気密封止し、前記基板に接続する金属キャップとを有し、
前記基板と前記金属キャップとを接続する接続材料は、Al系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn系合金層とからなり、
前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%で、前記Zn系合金層のAl含有率が0.01wt.%未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置において、
前記半導体素子と前記基板とを接続する接続材料は、Al系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn系合金層とからなり、前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%で、前記Zn系合金層のAl含有率が0.01wt.%未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
半導体素子を有し、
前記半導体素子と該半導体素子を実装する基板とを接続する接続材料は、Al系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn系合金層とからなり、
前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%で、前記Zn系合金層のAl含有率が0.01wt.%未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項1】
Al系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn系合金層とからなり、
前記Zn系合金層のAl含有率が0.01wt.%未満であることを特徴とする接続材料。
【請求項2】
請求項1記載の接続材料において、
前記Al系合金層のAl含有率が99〜100wt.%であることを特徴とする接続材料。
【請求項3】
請求項1記載の接続材料において、
前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%であることを特徴とする接続材料。
【請求項4】
請求項1記載の接続材料において、
前記Zn系合金層は、前記Al系合金層の対向する2つの最表面にそれぞれ設けられていることを特徴とする接続材料。
【請求項5】
第1のZn系合金層の上にAl系合金層を重ね、前記Al系合金層の上に第2のZn系合金層を重ねて、クラッド圧延または加圧成形により製造し、
前記第1のZn系合金層および前記第2のZn系合金層は、Zn含有率が90〜100wt.%で、Al含有率が0.01wt.%未満であることを特徴とする接続材料の製造方法。
【請求項6】
半導体素子と、
前記半導体素子を接続するフレームと、
一端が外部端子となるリードと、
前記リードの他端と前記半導体素子の電極とを接続するワイヤと、
前記半導体素子および前記ワイヤを樹脂封止するレジンとを有し、
前記半導体素子と前記フレームとを接続する接続材料は、Al系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn系合金層とからなり、
前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%で、前記Zn系合金層のAl含有率が0.01wt.%未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
半導体素子と、
前記半導体素子を接続する基板と、
一端が外部端子となるリードと、
前記リードの他端と前記半導体素子の電極とを接続するワイヤと、
前記半導体素子および前記ワイヤを気密封止し、前記基板に接続する金属キャップとを有し、
前記基板と前記金属キャップとを接続する接続材料は、Al系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn系合金層とからなり、
前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%で、前記Zn系合金層のAl含有率が0.01wt.%未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置において、
前記半導体素子と前記基板とを接続する接続材料は、Al系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn系合金層とからなり、前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%で、前記Zn系合金層のAl含有率が0.01wt.%未満であることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
半導体素子を有し、
前記半導体素子と該半導体素子を実装する基板とを接続する接続材料は、Al系合金層と、前記Al系合金層の最表面に設けられたZn系合金層とからなり、
前記Zn系合金層のZn含有率が90〜100wt.%で、前記Zn系合金層のAl含有率が0.01wt.%未満であることを特徴とする半導体装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−285732(P2009−285732A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186960(P2009−186960)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【分割の表示】特願2006−314168(P2006−314168)の分割
【原出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【分割の表示】特願2006−314168(P2006−314168)の分割
【原出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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