説明

損傷のない半導体の湿式洗浄のための高い負のゼータ電位の多面体シルセスキオキサン組成物および方法

(a)1以上の金属イオンを含まない塩基;(b)水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサン;(c)酸化剤;および(d)金属イオンを含まない水を含む、集積回路基板から粒子状物質を除去するための組成物、ならびに(a)、(b)、(c)および(d)を含む成分を組み合わせることよって得られる組成物。(a)、(b)、(c)および(d)を含む組成物を表面に付与する工程、または(a)、(b)、(c)および(d)を含む成分を組み合わせることによって得られる組成物を表面に付与する工程を含む、集積回路デバイスの表面から粒子状物質を除去するための方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、2007年11月13日に出願された米国特許仮出願第60/987,706号に関し、そして優先権を主張する。その全体は参照として、本明細書に完全に複写されたかのように、本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、多面体シルセスキオキサンオニウム塩を含む組成物および半導体基板の湿式洗浄に該組成物を使用するための方法に関する。より詳細には、半導体基板を洗浄するための高pH溶液における、水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンオニウム塩の使用に関し、これは特に、そのような基板からナノサイズ粒子を除去するために有用である。
【背景技術】
【0003】
半導体の製造中には、微細粒子(ナノメートルスケールの粒子(「ナノ粒子」))の形成を生じ得る多くのプロセスが付与される。これらの非常に小さなナノ粒子は、サイズが小さいためおよび比較的大きな表面付着力が存在するため、効果的に除去することが非常に困難であり得る。公知の半導体洗浄組成物、例えば、アンモニア−過酸化物−水(SC−1「standard clean 1」として公知である)は、一般的に、ナノ粒子を除去することができず、また粒子に隣接する半導体表面および構造を損傷することなくこれらの粒子を除去することもできない。デバイスの寸法が縮小し続けるにつれて、半導体表面から効果的にナノ粒子を除去する必要性は、より急を要するものになっている。デバイスの寸法が縮小し続けるにつれて、粒子のサイズが小さいためならびに半導体表面および構造への損傷に対する非受容性が増加するため、ナノ粒子を除去することの困難性もまた、より困難なものになっている。ナノ粒子を除去することならびに洗浄領域における半導体表面および構造への損傷を避けることの両方の目標を達成することが重要である。したがって、このような半導体デバイスからのナノ粒子の損傷のない効果的な除去を提供するための改良された組成物および方法に対する引き続く必要性が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題の解決を提供し、そしてこのような半導体デバイスからのナノ粒子の損傷のない効果的な除去を提供するための改良された組成物および方法に対する引き続く必要性に応える。
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの実施態様では、本発明は、集積回路基板から粒子状物質を除去するための組成物に関し、該組成物は:
(a)金属イオンを含まない1以上の塩基;
(b)金属イオンを含まない水溶性の多面体シルセスキオキサン塩;
(c)酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水、
を含む。
【0006】
別の実施態様では、本発明はさらに、集積回路基板から粒子状物質を除去するための組成物に関し、該組成物は:
(a)金属イオンを含まない1以上の塩基;
(b)金属イオンを含まない水溶性の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩であり、該オニウムが、一般式:
【0007】
【化1】

【0008】
(ここで、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立してH、C〜C18のアルキル基、C〜C18のアルコキシ基またはC〜C18のアルカノール基であり、そしてA=NまたはPである)を有する;
(c)酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水、
を含む。
【0009】
別の実施態様では、本発明はさらに、集積回路基板から粒子状物質を除去するための組成物に関し、該組成物は:
(a)金属イオンを含まない1以上の塩基;
(b)金属イオンを含まない水溶性の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩であり、一般式
Si5n/2n−
(ここで、nは、約6から約20までの範囲である)を有し、;そして
該オニウムが、一般式:
【0010】
【化2】

【0011】
(ここで、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立してH、C〜C18のアルキル基、C〜C18のアルコキシ基またはC〜C18のアルカノール基であり、そしてA=NまたはPである)を有する;
(c)酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水、
を含む。
【0012】
別の実施態様では、本発明はさらに、集積回路基板から粒子状物質を除去するための組成物に関し、該組成物は:
(a)金属イオンを含まない1以上の塩基;
(b)金属イオンを含まない水溶性の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩であり、該多面体シルセスキオキサンが、式Si208−および構造(I):
【0013】
【化3】

【0014】
を有し、該オニウムが一般式(II):
【0015】
【化4】

【0016】
(ここで、(II)において、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立してH、C〜C18のアルキル基、C〜C18のアルコキシ基またはC〜C18のアルカノール基であり、そしてA=NまたはPである)を有する;
(c)過酸化水素を含む酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水、
を含む。
【0017】
1つの実施態様では、組成物は、
(a)金属イオンを含まない1以上の塩基;
(b)金属イオンを含まない水溶性の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩;
(c)酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水、
を含む成分を、約50℃から約85℃までの温度で組み合わせることによって得られたものである。この実施態様では、これらの成分は、本明細書に記載のような使用のための組成物を調製するために組み合わせられるが、組み合わせると成分が相互作用し得、そのため得られる種類は、組み合わせの結果としてある程度変化する。
【0018】
1つの実施態様では、水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンおよび/または水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンのオニウム塩は、第4級オニウム水酸化物と二酸化ケイ素とを実質的に1:1の化学量論比で、約55℃から約85℃までの範囲で昇温して共に反応させることによって調製されたものである。第4級オニウム水酸化物と二酸化ケイ素とを実質的に1:1の化学量論比で昇温して得られる反応生成物は、本発明の水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンおよび/または水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンのオニウム塩であり、そして1つの実施態様では、反応を実質的に1:1の化学量論比で昇温して行わないと、本発明の水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンおよび/または水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンのオニウム塩は得られない。すなわち、1つの実施態様では、この比および温度でこの反応によって得られる生成物は、従来技術の第4級アンモニウムケイ酸塩と同じではない。
【0019】
したがって、上述の実施態様において、本発明は、集積回路および半導体表面を洗浄するために、そして特にそのような表面からナノ粒子を除去するために有用な新規で効果的な組成物を提供する。
【0020】
さらなる実施態様では、本発明は、特に、前工程(front-end-of-line(FEOL))中の集積回路の表面を洗浄するための方法に関し、上記のような本発明による組成物は、この洗浄に用いられ、そのため表面は、誘電材料、ケイ素含有導体および半導体材料、または金属の1つ以上をエッチングすることなく、効果的に洗浄される。理解されるように、この組成物および方法は、もちろん、他の工程および/または半導体製造工程におけるFEOL以外の時点にも好適に使用され得る。本発明による方法では、上述の組成物が表面に付与され、その後、表面は金属を含まない水で洗い流され、その結果効果的な洗浄およびナノ粒子を含む粒子の除去が行われ、同時に、洗浄中の表面のかなりの量のエッチングを回避する(すなわち、生成物に有害な程度のエッチングを回避する)。
【発明の効果】
【0021】
したがって、本発明は、洗浄中の表面のかなりの程度のエッチングを生じさせることなく、必要とされる洗浄を提供できる効果的な洗浄および粒子除去のための組成物について、技術的な必要性に取り組む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による組成物の実施態様について、観察された負のゼータ電位の相乗的な増加を示すグラフである。
【図2】本発明による組成物の実施態様について、観察されたシュテルン層の厚みの減少および増加した負のゼータ電位を示す概略図である。
【図3】本発明による組成物の実施態様について、仮想の汚染粒子の半導体デバイスの表面への付着および半導体デバイスの表面からの除去を示す概略図である。
【図4】本発明による組成物の実施態様について、観察されたケイ素および二酸化ケイ素に関するエッチング速度を示すグラフである。
【図5】本発明による組成物の実施態様について、観察された窒化ケイ素についてのゼータ電位を示すグラフである。
【図6】3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるアニオンサイズにおける、カチオンサイズのゼータ電位への影響を示す。
【図7】3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるアニオンサイズにおける、カチオンサイズのゼータ電位への影響を示す。
【図8】3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるアニオンサイズにおける、カチオンサイズのゼータ電位への影響を示す。
【図9】3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるアニオンサイズにおける、カチオンサイズのゼータ電位への影響を示す。
【図10】3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるカチオンサイズにおける、アニオンサイズのゼータ電位への影響を示す。
【図11】3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるカチオンサイズにおける、アニオンサイズのゼータ電位への影響を示す。
【図12】3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるカチオンサイズにおける、アニオンサイズのゼータ電位への影響を示す。
【図13】3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるカチオンサイズにおける、アニオンサイズのゼータ電位への影響を示す。
【図14】3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるアニオンおよびカチオンサイズにおける、ゼータ電位への濃度影響を示す。
【図15】3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるアニオンおよびカチオンサイズにおける、ゼータ電位への濃度影響を示す。
【図16】3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるアニオンおよびカチオンサイズにおける、ゼータ電位への濃度影響を示す。
【図17】3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるアニオンおよびカチオンサイズにおける、ゼータ電位への濃度影響を示す。
【図18】3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるカチオンサイズにおける、ゼータ電位へのpHの影響を示す棒グラフである。
【図19】本発明の実施態様による組成物とポリシリコンまたは二酸化ケイ素で形成された表面から粒子を除去するために用いられる他の塩処方物との間のポリシリコンおよび二酸化ケイ素についてのエッチング速度を比較した棒グラフである。
【図20】本発明の実施態様による組成物および二酸化ケイ素で形成された表面から粒子を除去するために用いられる他の塩処方物のゼータ電位に対する規格化粒子除去効率性(PRE)を示すグラフである。
【図21】一方は本発明の多面体シルセスキオキサンのテトラメチルアンモニウム塩から作製した組成物、他方、比較として、市販のテトラメチルアンモニウムケイ酸塩から作製した組成物について規格化アンモニア濃度に対する水中にケイ酸塩種およびアンモニウムイオンを含む組成物のゼータ電位を示すグラフである。
【図22】本発明の実施態様による多面体シルセスキオキサン塩の濃度に対するゼータ電位を示すグラフである。
【図23】本発明の実施態様によるいくつかの組成物および本発明ではないいくつかの組成物について、過酸化水素含有量に対するゼータ電位を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に記載される方法の工程および構成が、半導体デバイスまたは集積回路の製造のための完全なプロセスフローを形成しないことを理解すべきである。本発明は、当該分野で現在用いられる製造技術と併用して実施され得、そして本発明の理解に必要とされる程度に限られた、一般的に実施される方法の工程が含まれる。
【0024】
粒子除去および洗浄組成物の改良のための新たに発生するおよび長年存続する必要性に応えて、本発明者は、半導体の湿式洗浄に使用するための高い負のゼータ電位の多面体シルセスキオキサン組成物を開発した。本発明は、(1)損傷のない二酸化ケイ素およびシリコン表面を維持しながら効果的なナノ粒子の除去および洗浄効率性を提供する、および(2)特にナノ粒子の除去に関して、高い粒子除去効率性(PRE)を達成する高められたゼータ電位を提供するという課題に取り組む。
【0025】
本発明は、半導体の湿式洗浄処方物に、調製されたままの多面体シルセスキオキサンオニウム塩を強塩基溶液中で酸化剤と組み合わせて用いる。本発明者は、多面体シルセスキオキサン塩と塩基との間の相乗効果を見出し、該効果は、粒子表面および半導体表面上のゼータ電位を高め得、高い粒子除去効率性(PRE)に導く。多面体シルセスキオキサン塩は、多くの半導体表面(例えば、二酸化ケイ素、シリコンなど)と類似の化学構造を有するので、多面体シルセスキオキサン塩を含む本発明の処方物は、半導体表面を損傷しないか、または損傷を最小限にし、次世代ULSIデバイスの寸法、すなわちナノメートル範囲の寸法で用いるために適切な損傷レベルを達成する。本発明の組成物は、損傷なしの性能の半導体ナノスケール洗浄を提供する。本発明の組成物は、(1)損傷のない洗浄を提供し;そして(2)効果的にナノ粒子を除去するという、現在入手可能な半導体洗浄処方物に優る利点を有する。
【0026】
1つの実施態様では、本発明は、集積回路基板から粒子状物質を除去するための組成物に関し、この組成物は:
(a)金属イオンを含まない1以上の塩基;
(b)金属イオンを含まない水溶性の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩;
(c)酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水、
を含む。
【0027】
1つの実施態様では、本発明の組成物は多面体オリゴマーケイ酸塩を含み、これは、本明細書で多面体シルセスキオキサンアニオンといわれ、一般式Si5n/2n−を有する。1つの実施態様では、nは、約6から約20までの範囲の値を有する。1つの実施態様では、多面体シルセスキオキサンアニオンは、n=8の式Si208−を有する構造を含む。多くの実施態様では、多面体シルセスキオキサンのオニウム塩は、式Si208−を有する構造を含み、ここで、nが主として8の値を有する(すなわち、組成物の大部分においてn=8)が、n=6、10、12、14、16およびまたは18を含む他の多面体シルセスキオキサンアニオンの混合物もまた存在する。
【0028】
多面体シルセスキオキサンのオニウム塩に加えて、組成物は塩基をさらに含む。1つの実施態様では、塩基は、水酸化アンモニウムおよび/または水酸化第4級アンモニウム(例えば、1つの実施態様では、水酸化テトラメチルアンモニウム)である。適切な塩基は、本明細書に記載される。
【0029】
多面体シルセスキオキサンのオニウム塩および塩基に加えて、組成物は酸化剤をさらに含む。1つの実施態様では、酸化剤は、過酸化水素または他の金属を含まない酸化剤(例えば、次亜塩素酸アンモニウム、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム、次亜塩素酸テトラエチルアンモニウムなど)である。
【0030】
他の実施態様では、本発明の組成物は、界面活性剤、キレート剤および有機溶媒をさらに含み得る。
【0031】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、脱イオン水または他の高純度の実質的にまたは全く金属を含まない水を含む。
【0032】
ほとんどの実施態様では、組成物は、主として水溶液であるが、水溶性または水混和性の有機溶媒の大部分を含み得る。いくつかの実施態様では、本発明による組成物中の有機溶媒の含有量が、水の含有量を超え得る。
【0033】
1つの実施態様では、多面体シルセスキオキサンアニオンは、式Si208−を有し、そして以下であると考えられる構造式:
【0034】
【化5】

【0035】
を有する。上記ポリアニオンに対する適切な対イオンとしては、任意の非金属カチオンが挙げられる。1つの実施態様では、非金属カチオンはオニウムである。1つの実施態様では、非金属対イオンは、アンモニウム、第4級アンモニウムまたは第4級ホスホニウムである。1つの実施態様では、オニウムは一般式:
【0036】
【化6】

【0037】
(ここで、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立してH、C〜C18アルキル基、C〜C18アルコキシ基またはC〜C18アルカノール基であり、そしてA=NまたはPである)を有する。
【0038】
したがって、1つの実施態様では、本発明は、集積回路基板から粒子状物質を除去するための組成物に関し、この組成物は:
(a)金属イオンを含まない1以上の塩基;
(b)金属イオンを含まない水溶性の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩であり、オニウムが一般式:
(ここで、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立してH、C〜C18アルキル基、C〜C18アルコキシ基またはC〜C18アルカノール基であり、そしてA=NまたはPである)を有する;
(c)酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水
を含む。
【0039】
別の実施態様では、本発明は、集積回路基板から粒子状物質を除去するための組成物に関し、この組成物は:
(a)金属イオンを含まない1以上の塩基;
(b)水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンのオニウム塩であり、一般式
Si5n/2n−
(ここで、nは、約6から約20までの範囲である)を有し;そして
オニウムが一般式:
【0040】
【化7】

【0041】
(ここで、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立してH、C〜C18アルキル基、C〜C18アルコキシ基またはC〜C18アルカノール基であり、そしてA=NまたはPである)を有する;
(c)酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水
を含む。
【0042】
別の実施態様では、本発明は、集積回路基板から粒子状物質を除去するための組成物に関し、この組成物は:
(a)金属イオンを含まない1以上の塩基;
(b)金属イオンを含まない水溶性の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩であり、多面体シルセスキオキサンアニオンが式Si208−および構造(I):
【0043】
【化8】

【0044】
を有し、オニウムが一般式(II):
【0045】
【化9】

【0046】
(ここで、(II)において、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立してH、C〜C18アルキル基、C〜C18アルコキシ基またはC〜C18アルカノール基であり、そしてA=NまたはPである)を有する;
(c)過酸化水素を含む酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水
を含む。
【0047】
1つの実施態様において、多面体シルセスキオキサンはSi208−であり、オニウムはテトラメチルアンモニウムであり、そして多面体シルセスキオキサンのオニウム塩は以下に示される構造を有する:
【0048】
【化10】

【0049】
(ここで、8個の頂点の酸素原子のそれぞれの負電荷は、テトラメチルアンモニウムイオンの1つに由来する正電荷によって平衡が保たれている)。この構造および全ての他の構造において、種々の数の水分子が、示される化合物およびイオンと結合し得ることに留意のこと。このような水分子は、明確にするため示さないが、当業者が容易に理解するように一般的に存在する。
【0050】
本発明による組成物は、8以上のpHを有する。1つの実施態様では、組成物は8から約14までの範囲のpHを有し、別の実施態様では、組成物は約10から約12までの範囲のpHを有し、そして別の実施態様では、組成物は約11から約13までの範囲のpHを有し、そして別の実施態様では、pHは約10から約13までの範囲である。
【0051】
1つの実施態様では、組成物は、約0.1質量%から約10質量%の多面体シルセスキオキサン塩を含む。1つの実施態様では、組成物は、約0.25質量%から約5質量%の多面体シルセスキオキサン塩を含む。1つの実施態様では、組成物は、約0.5質量%から約1.5質量%の多面体シルセスキオキサン塩を含む。1つの実施態様では、組成物は、約0.6質量%から約0.85質量%の多面体シルセスキオキサン塩を含む。1つの実施態様では、組成物は、約0.69質量%から約0.83質量%の多面体シルセスキオキサン塩を含み、そして1つの実施態様では、約0.78質量%の多面体シルセスキオキサン塩を含む。
【0052】
本明細書の実施例のいくつかでは、本発明による組成物および本発明による方法に用いられる組成物の成分の濃度は、用語「C」で表わされる。「C」は、標準的な洗浄組成物SC−1の成分の濃度に関して定義された濃度である。成分それぞれにおける「C」の値は異なる。この目的のために、SC−1中の成分のそれぞれにおける濃度「C」は、1.0gの29質量%水酸化アンモニウム溶液、1.5gの30質量%過酸化水素溶液、および50gの水を組み合わせることにより調製されるSC−1組成物に関して得られる。このSC−1処方物に、適量の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩が添加され得、本発明の基礎となる組成物が得られる。上述に基づき、本明細書で使用するために、成分それぞれにおける「C」の値が得られる。したがって、本明細書で用いられるように、水酸化アンモニウムにおける「C」の値は0.56質量%;過酸化水素における「C」の値は0.86質量%;テトラメチルアンモニウム多面体シルセスキオキサンにおける「C」の値は4.64質量%である。したがって、例えば、1つの実施態様では、テトラメチルアンモニウム多面体シルセスキオキサンの濃度は約0.17Cであり、そしてこれはテトラメチルアンモニウム多面体シルセスキオキサンの0.78質量%の含有量に相当する。多面体シルセスキオキサンおよびSC−1の標準成分以外の化学成分において、「C」の値は以下のように計算される:
成分=0.032616×成分の分子量(MW)。
【0053】
1つの実施態様では、酸化剤は過酸化水素であるか、または含む。他の実施態様では、酸化剤は、非金属次亜塩素酸塩、例えば、次亜塩素酸アンモニウムまたは次亜塩素酸第4級アンモニウムまたは次亜塩素酸第4級ホスホニウム(例えば、次亜塩素酸テトラメチルアンモニウム)であるか、または含む。1つの実施態様では、酸化剤は、過ヨウ素酸第4級アンモニウムまたは過ヨウ素酸第4級ホスホニウム(例えば、過ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム)、あるいはオゾンであるか、またはそれらの1以上を含む。上述の第4級アンモニウムまたは第4級ホスホニウム酸化剤は、他の第4級アンモニウムまたは第4級ホスホニウム化合物のいずれかにおいて、本明細書で定義されるアルキル基またはアルコキシ基のいずれかを含み得る。上述の酸化剤の任意の組み合わせもまた、有利に用いられ得る。
【0054】
1つの実施態様では、組成物は、約0.01質量%から約10質量%までの酸化剤を含む。1つの実施態様では、組成物は、約0.05質量%から約5質量%までの酸化剤を含む。1つの実施態様では、組成物は、約0.2質量%から約2質量%までの酸化剤を含む。1つの実施態様では、組成物は、約0.1質量%から約1質量%までの酸化剤を含む。酸化剤は、30質量%のHとして入手できる市販の過酸化水素のような溶液として添加され得、そしてこのような市販の調製物は、所望の濃度を達成するために適量用いられ得る。
【0055】
1つの実施態様では、金属イオンを含まない塩基は、アンモニア、水酸化アンモニウム、オニウム水酸化物またはこれらの任意の2以上の組み合わせを含む。1つの実施態様では、オニウム水酸化物は、一般式(III):
【0056】
【化11】

【0057】
(ここで、(III)において、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立してH、C〜C18を含むアルキル基、C〜C18を含むアルコキシ基またはC〜C18を含むアルカノール基であり、そしてA=NまたはPである)を有する。1つの実施態様では、A=Nであり、そしてR、R、RおよびRのそれぞれはアルキルであり、そして塩基は水酸化テトラアルキルアンモニウムである。1つの実施態様では、A=Pであり、そしてR、R、RおよびRのそれぞれはアルキルであり、そして塩基は水酸化テトラアルキルホスホニウムである。1つの実施態様では、アルキルのそれぞれはメチルであり、そして1つの実施態様ではアルキルのそれぞれはエチルである。
【0058】
金属イオンを含まず、そして本発明において用いるために適切な塩基は、以下の1つ以上を含む。1つの実施態様では、上記に示すように、塩基は水酸化第4級アンモニウム、例えば、水酸化テトラアルキルアンモニウム(アルキル基またはアルコキシ基中の炭素原子が、一般的に1から4までであるが18までの水酸基含有アルキル基およびアルコキシ含有アルキル基を含む)、または相当するテトラアルキルホスホニウム化合物である。1つの実施態様では、塩基は、水酸化テトラメチルアンモニウムおよび水酸化トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム(コリン)の1以上を含む。他の使用し得る水酸化第4級アンモニウムとしては、例えば、以下が挙げられる:水酸化トリメチル−3−ヒドロキシプロピルアンモニウム、水酸化トリメチル−3−ヒドロキシブチルアンモニウム、水酸化トリメチル−4−ヒドロキシブチルアンモニウム、水酸化トリエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、水酸化トリプロピル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、水酸化トリブチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、水酸化ジメチルエチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム、水酸化ジメチルジ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化モノメチルトリ(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化モノメチルトリエチルアンモニウム、水酸化モノメチルトリプロピルアンモニウム、水酸化モノメチルトリブチルアンモニウム、水酸化モノエチルトリメチルアンモニウム、水酸化モノエチルトリブチルアンモニウム、水酸化ジメチルジエチルアンモニウム、水酸化ジメチルジブチルアンモニウムなどおよびこれらの混合物。上記のように、1つの実施態様では、塩基は、上述のアンモニウム化合物のいずれかに相当するホスホニウム化合物を含み、そして1つの実施態様では、塩基は、上述のアンモニウム化合物のいずれかと上述のホスホニウム化合物のいずれかとの混合物を含み得る。
【0059】
他の実施態様では、塩基は、水酸化アンモニウム、有機アミン(特に、アルカノールアミン、例えば、2−アミノエタノール、1−アミノ−2−プロパノール、1−アミノ−3−プロパノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)エチルアミンなど)、および他の強有機塩基(例えば、グアニジン、1,3−ペンタンジアミン、4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン、アミノエチルピペラジン、4−(3−アミノプロピル)モルホリン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、トリス(2−アミノエチル)アミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミンおよびヒドロキシアミン)を含み得る。上記のように、1つの実施態様では、塩基は上述の任意のアンモニウム化合物に相当するホスホニウム化合物を含む。
【0060】
ナトリウムまたはカリウムのような金属イオンを含むアルカリ溶液は、半導体物質のような基板に有害な残留金属汚染が生じ得るため、使用されるべきではない。
【0061】
1つの実施態様では、塩基は、水酸化テトラメチルアンモニウムを基準として、約0.01質量%から約25質量%までの範囲の濃度で存在する。1つの実施態様では、塩基は、水酸化テトラメチルアンモニウムを基準として、約0.1質量%から約10質量%までの範囲の濃度で存在する。1つの実施態様では、塩基は、水酸化テトラメチルアンモニウムを基準として、約1質量%から約5質量%までの範囲の濃度で存在する。1つの実施態様では、塩基は、組成物のpHをpH10からpH13までの範囲で維持するのに十分な濃度で水酸化第4級アンモニウムまたは水酸化第4級ホスホニウムとして添加される。
【0062】
1つの実施態様では、塩基は、アンモニアを基準として、約0.01質量%から約10質量%までの範囲の濃度で存在する。1つの実施態様では、塩基は、アンモニアを基準として、約0.1質量%から約7質量%までの範囲の濃度で存在する。1つの実施態様では、塩基は、アンモニアを基準として、約1質量%から約5質量%までの範囲の濃度で存在する。1つの実施態様では、塩基は、組成物のpHをpH10からpH13までの範囲で維持するのに十分な濃度で水酸化アンモニウムまたは水酸化ホスホニウムとして添加される。
【0063】
1つの実施態様では、さらなるアルカリ成分(特に水酸化アンモニウム)の任意の1以上と上述の水酸化テトラアルキルアンモニウムとの混合物が用いられる。1つの実施態様では、金属イオンを含まない塩基は、水酸化アンモニウム(すなわち、水に溶解したアンモニア)および水酸化テトラメチルアンモニウムの混合物である。
【0064】
1つの実施態様では、組成物は、金属キレート剤をさらに含む。適切な金属キレート剤は以下に開示される。
【0065】
1つの実施態様では、組成物は、界面活性剤をさらに含む。適切な界面活性剤は以下に開示される。
【0066】
1つの実施態様では、組成物は、水混和性有機溶媒をさらに含む。適切な水混和性有機溶媒は以下に開示される。
【0067】
(ゼータ電位)
ゼータ電位は、表面から少しの距離にある粒子のせん断面に存在する電位である。
【0068】
粒子(例えば、エッチング中および他の半導体製造工程中に形成される粒子(ナノ粒子を含む))は、洗浄液または濯ぎ液に供されると、洗浄液または濯ぎ液中で分散してコロイド粒子になると考えられ得る。溶液中に分散したコロイド粒子は、そのイオン的特徴および双極性のため帯電している。溶液中に分散した各コロイド粒子は、固定層またはシュテルン層と称される逆電荷のイオンによって取り囲まれる。シュテルン層の外側には、対の極性の種々の組成物のイオンがあり、雲様の領域を形成している。この領域は、拡散層と称され、そしてその領域全体は、電気的に中性である。
【0069】
したがって、基板表面の粒子−液体接触面の領域に、電気二重層が形成される。この二重層は、2つの部分からなると考えられ得る:基板表面に比較的強く結合されるイオンを含む内側のシュテルン層領域、およびイオン分布が静電気力とランダムな熱運動とのバランスによって決定される外側の拡散層または領域。したがって、この外側の拡散領域では、電位は、表面からの距離とともに減少し、一定の距離になると0になる。
【0070】
ゼータ電位は、粒子の表面電荷、接触面の任意の吸着された層ならびに粒子が懸濁される周囲の媒体の性質および組成の関数である。ゼータ電位は、以下のスモルコフスキーの式を用いて計算され得る:
【0071】
【数1】

【0072】
水に浸漬されたとき、ほとんどの物質はゼータ電位を示す。ほとんどの粒子は負の表面電荷を有する。
【0073】
一般的に、粒子除去は、粒径によって異なる力が支配する。所定の表面からの粒子除去について、接着力は、ゼータ力と流れけん引力(すなわち、表面に対する溶液の動きによって粒子に付与される物理的な力)との組み合わせによって克服されなければならない。粒径が約100nm以上の場合、流れけん引力が、所定の表面からの粒子の除去に支配的である。粒径が約30nm以下の場合、ゼータ力が、所定の表面からの粒子の除去に支配的である。粒径が約30nmと約100nmとの間の場合、ゼータ力および流れけん引力の両方が重要であり、そして両方存在し得る。一般的に、ゼータ電位が高ければ高いほど(すなわち、ゼータ電位の負の値が大きくなればなるほど)、ゼータ力が大きくなり、そして粒子の除去がより良好になる。最も高い可能なゼータ電位が最も望ましい(すなわち、ゼータ電位の最も大きな負の値が最も望ましい)。
【0074】
半導体業界では、寸法が縮小し続けているので、半導体表面に残存する粒子のサイズもまた、より決定的になる。すなわち、寸法が小さいために、より小さな粒子が問題になるが、より大きな寸法では、同じ粒子にこのような問題は存在し得ない。したがって、例えば、2005年には、100nmの限界寸法レベルで、粒子のサイズの限界は、FEOL(front end of line)において50nmおよびBEOL(back end of line)において100nmであったが、2008年には、70nmの限界寸法レベルで、粒子のサイズの限界は、FEOLにおいて35nmおよびBEOLにおいて70nmであった。2014年までに、35nmの限界寸法レベルで、粒子のサイズの限界は、FEOLにおいて18nmおよびBEOLにおいて36nmになり得る。したがって、ますます小さくなる粒子を効果的に除去することがより重要になっている。本発明は、このような小さな粒子を効果的に除去し得る組成物および方法を提供する。
【0075】
本発明者は、本発明の組成物の使用によって、集積回路の表面または半導体デバイスの表面からの粒子(および特にナノ粒子)の除去のためのゼータ電位に関する相乗効果が、適切な相対濃度で達成され得ることを見出した。本発明に見られるような多面体シルセスキオキサンのオニウム塩と塩基との間のゼータ電位に関する相乗効果が、図1に示される。多面体シルセスキオキサンの純オニウム塩と純塩基とは、どちらももっと高いゼータ電位を示さない。しかし、多面体シルセスキオキサンのオニウム塩と塩基との混合物について、高められたゼータ電位(純成分よりも1〜3倍まで高い)が観察される。
【0076】
1つの実施態様では、半導体デバイスの表面および集積回路デバイスの表面を汚染する粒子状物質が、本発明の組成物および方法の第1の目的物である。1つの実施態様では、粒子状物質は、ナノ粒子を含む。1つの実施態様では、粒子状物質は、約0.1nmから約80nmまでの範囲の粒径を有する粒子の大部分を含む。1つの実施態様では、粒子状物質は、約0.5nmから約50nmまでの範囲の粒径を有する粒子の大部分を含む。1つの実施態様では、粒子状物質は、約0.5nmから約30nmまでの範囲の粒径を有する粒子の大部分を含む。1つの実施態様では、粒子状物質は、約1nmから約10nmまでの範囲の粒径を有する粒子の大部分を含む。
【0077】
(多面体シルセスキオキサンのオニウム塩の調製)
本発明に用いられる多面体シルセスキオキサンのオニウム塩は、例えば、米国特許第5,047,492号の実施例8(a)に概説される、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムと沈降ケイ酸との反応による方法によって調製され得る。所望の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩を得るために、反応物の比は、モル基準で1:1にするかまたは1:1に非常に近づけるべきであり、そして反応温度は約60℃にすべきであり、そして1つの実施態様では、反応温度は、約50℃から約85℃まででもよい。反応は、低温で開始され得るが、所望の多面体シルセスキオキサンアニオンを得るために、昇温が必要である。
【0078】
このようにして調製された多面体シルセスキオキサンのオニウム塩は、一般式[M(Si5n/2n−](ここで、nは約6から約20までの偶数であるが、より高いnの値も生じ得る)を有する。1つの実施態様では、式は[M(Si208−](n=8)であり、Mは金属を含まないカチオンを表し、1つの実施態様ではテトラメチルアンモニウムである。1つの実施態様では、生成物は、上記に示される構造(I)を有する多面体シルセスキオキサンを含む。1つの実施態様では、上述の反応の反応生成物は、主として式[M(Si5n/2n−](ここで、n=8である)を含むが、n=6からn=約20であり、nは偶数(すなわち、6、8、10、12、14、16、18または20)であり、そしてnのおそらくより大きな値である多面体シルセスキオキサンのオニウム塩もまた含み得る。理論に束縛されないが、nが奇数(例えば、7、9、11など)には形成されないが、またはもし一時的に形成されても、自然にnが偶数の構造に再配列されると理論づけられている。
【0079】
本発明の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩はまた、水酸化第4級アンモニウムとTEOSまたはヒュームドシリカとの反応によって調製され得る。全ての場合において、モル比は、実質的に1:1であるべきであり、そして反応は、上記に開示されるように昇温して行われ、本発明の所望の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩が得られる。
【0080】
このようにして調製された多面体シルセスキオキサンのオニウム塩は、US6,465,403B1、US6,599,370B2、US6,585,825B1、EP1,326,951B1、US2004/0220066A1、およびJP10097082Aの特許に開示されるケイ酸塩とは構造的に異なる。これらの特許に用いられるケイ酸塩は、市販のケイ酸塩であり、そして本発明の多面体シルセスキオキサンを有意量で含んでいないと考えられる。これらのケイ酸塩におけるカチオンとSiOとのモル比は、一般的にモル基準で1:1ではなく、それどころか大部分はモル基準で約0.5:1であり(Sigma-Aldrichのテトラメチルアンモニウムケイ酸塩を参照のこと)、そして化学構造はランダムなオリゴマーを含む。一方、本明細書に開示される調製されたままの多面体シルセスキオキサンのオニウム塩は、本明細書に記載されるように、多面体かご様構造(cage-like structure)で、1:1のモル比のカチオンとSiOとを有する。
【0081】
(実施例1:本発明の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩の調製)
適切な容器内の水1ガロンに、ヒュームドシリカ207.64gおよび水酸化テトラメチルアンモニウム1247.6gを加える(25.25質量%)。混合物を攪拌し、60℃まで緩やかに加熱する。24時間、または混合物が透明な溶液になるまで、この温度で反応を行う。調製されたままの溶液は、水溶液中に多面体シルセスキオキサンのオニウム塩を含み、そして本発明による組成物の処方に直接用いることができる。
【0082】
(実施例2:本発明の高い負のゼータ電位の多面体シルセスキオキサン塩処方物の調製)
プラスチック容器に、上記調製されたままの多面体シルセスキオキサン塩溶液、水酸化アンモニウムと水酸化テトラメチルアンモニウムとの混合物、過酸化水素および脱イオン水のそれぞれを表1に記載の量でを加えることによって、代表的な高い負のゼータ電位の多面体シルセスキオキサン塩処方物を調製する。この溶液を完全に混ざるまで振盪し、室温で1晩保存することもできる。
【0083】
表1は、本発明による組成物について、これらの代表的な処方を示す。表2は、表1の処方物について、代表的なエッチング速度およびpH値を示す。表2において、試験粒子は、二酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(「SiN」)またはポリスチレンラテックス粒子(「PS」)で形成される。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
(実施例3:塩基濃度と無関係な高い負のゼータ電位を有する処方物)
以下の処方物を調製し、その結果を図5に示す。
多面体 0.17C(上記のように、シルセスキオキサン
シルセスキオキサン: については、C=4.64質量%)
水酸化アンモニウム 0.1Cから10Cまで変更(NHOHにおけるC)
過酸化水素 0.1Cから10Cまで変更(HにおけるC)
ここで、C=本明細書に定義されるようにSC−1の各成分の濃度。結果については図5を参照のこと。その議論は以下に説明する。
【0087】
組成物のさらなる任意成分
1つの実施態様では、組成物はキレート剤をさらに含む。キレート剤は、溶液中に金属を溶解させて保持するという組成物の能力を増加させるために、そしてウエハ基板の金属残渣の溶解を促進するために添加され得る。この目的のために有用なキレート剤の代表例は、以下の有機酸ならびにそれらの異性体および塩である:(エチレンジニトリロ)四酢酸(ETDA)、ブチレンジアミン四酢酸、シクロヘキサン−1,2−ジアミン四酢酸(CyDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DETPA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、N,N,N’,N’−エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン)酸(EDTMP)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン−N,N,N’,N’−四酢酸(DHPTA)、メチルイミノ二酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸(nitrolotriacetic acid)(NTA)、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、糖酸、グリセリン酸、シュウ酸、フタル酸、マレイン酸、マンデル酸、マロン酸、乳酸、サリチル酸、カテコール、没食子酸、没食子酸プロピル、ピロガロール、8−ヒドロキシキノリンおよびシステイン。
【0088】
1つの実施態様では、用いられるキレート剤の量は、約0.001質量%から約10質量%までの範囲である。他の実施態様では、用いられる有機溶媒の量は、約0.1質量%から約1質量%までの範囲である。
【0089】
1つの実施態様では、組成物は界面活性剤をさらに含む。任意の適切な水溶性両性、非イオン性、陽イオン性または陰イオン性の界面活性剤が用いられ得る。
【0090】
1つの実施態様では、界面活性剤としては、例えば、3MTMNovecTM4200(水中で陰イオンフッ素系界面活性剤であり、25質量%の濃度であると考えられる)などのフッ化陰イオン界面活性剤が挙げられる。
【0091】
本発明の組成物に有用な両性界面活性剤としては、ベタインおよびスルホベタイン(アルキルベタイン、アミドアルキルベタイン、アルキルスルホベタインおよびアミドアルキルスルホベタインなど);アミノカルボン酸誘導体(アムホ(ampho)グリシネート、アムホプロピオネート、アムホジグリシネートおよびアムホジプロピオネートなど);イミノ二酸(アルコキシアルキルイミノ二酸(iminodiacids)またはアルコキシアルキルイミノ二酸など);アミン酸化物(アルキルアミン酸化物およびアルキルアミドアルキルアミン酸化物など);フルオロアルキルスルホネートおよびフッ化アルキル両性物質(amphoterics);およびこれらの混合物が挙げられる。
【0092】
本発明の組成物に有用な非イオン性界面活性剤としては、アセチレンジオール、エトキシル化アセチレンジオール、フッ化アルキルアルコキシレート、フッ化アルキルエステル、フッ化ポリオキシエチレンアルカノール、多価アルコールの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジオール、シロキサン型界面活性剤およびアルキレングリコールモノアルキルエーテルが挙げられる。
【0093】
本発明の組成物に有用な陰イオン性界面活性剤としては、カルボン酸塩、N−アシルサルコシネート、スルホン酸塩、硫酸塩、ならびにオルトリン酸のモノおよびジエステル(リン酸デシルなど)が挙げられる。好ましくは、陰イオン性界面活性剤は、金属を含まない界面活性剤である。
【0094】
本発明の組成物に有用な陽イオン性界面活性剤としては、アミンエトキシレート、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ジアルキルモルホリウム(morpholinum)塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩およびアルキルピリジニウム塩が挙げられる。好ましくは、陽イオン性界面活性剤は、ハロゲンを含まない界面活性剤である。
【0095】
1つの実施態様では、用いられる界面活性剤の量は、約0.001質量%から約5質量%までの範囲である。他の実施態様では、用いられる界面活性剤の量は、約0.01質量%から約1質量%までの範囲である。
【0096】
1つの実施態様では、組成物は1つ以上の水混和性有機溶媒をさらに含む。種々の有機溶媒のうち、適切なのはアルコール、多価アルコール、グリコール、グリコールエーテル、アルキルピロリジノン(N−メチルピロリジノン(NMP)など)、1−ヒドロキシアルキル−2−ピロリジノン(1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン(HEP)など)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、スルホランまたはジメチルスルホキシド(DMSO)である。1つの実施態様では、水混和性有機溶媒は、多価アルコール(グリセロールなど)および/または1−ヒドロキシアルキル−2−ピロリジノン(1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン(HEP)など)の1つ以上である。
【0097】
1つの実施態様では、用いられる有機溶媒の量は、約0.1質量%から約20質量%までの範囲である。他の実施態様では、用いられる有機溶媒の量は、約1質量%から約10質量%までの範囲である。
【0098】
1つの実施態様では、本発明の組成物は多量の有機溶媒を含まない。
【0099】
方法
本発明はさらに、上述の組成物を使用する方法に関する。したがって、1つの実施態様では、本発明は集積回路デバイスの表面から粒子状物質を除去する方法に関し、上述の組成物のいずれかを表面に付与する工程を含む。1つの実施態様では、集積回路デバイスの製造中にその表面から粒子状物質を除去する方法は:
(a)1つ以上の金属イオンを含まない塩基;
(b)水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサン塩;
(c)酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水;
を含む組成物を表面に付与する工程;および
金属イオンを含まない水で表面をすすぐ工程、
を含む。もちろん、当業者に理解されるように、追加の方法工程は、さらなる濯ぎ、乾燥などが含まれ得る。多面体シルセスキオキサン塩は、本明細書に開示されたもののいずれかであり得るが、簡潔にするために、その説明はここでは繰り返さない。
【0100】
1つの実施態様では、半導体または集積回路デバイスの表面から粒子状物質を除去するために用いる場合、組成物は、集積回路デバイスに付着したナノ粒子について、実質的に単にケイ酸塩として従来のテトラアルキルアンモニウムケイ酸塩を含む組成物のゼータ電位よりも実質的に低い(すなわち、より負の)ゼータ電位を示す。1つの実施態様では、本発明の方法によって付与される場合、本発明の組成物は、Sigma/Aldrichから入手可能なテトラメチルアンモニウムケイ酸塩などの、市販されている従来のケイ酸塩を用いた組成物と比較して、相乗的に高められたゼータ電位を提供する。1つの実施態様では、市販のケイ酸塩中の塩基とケイ酸塩とのモル比が約0.5:1であるのと比較して、本発明の多面体シルセスキオキサン塩の調製に用いられるテトラメチルアンモニウム塩基と二酸化ケイ素とのモル比は、実質的に1:1である。本発明者が見出したように、本発明の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩が本発明による組成物に用いられる場合、集積回路デバイスの表面から粒子状物質が除去されることについて、負のゼータ電位の相乗的な増加が観察される。1つの実施態様では、集積回路デバイスの表面からナノ粒子が除去されることについて、負のゼータ電位の相乗的な増加が観察される。1つの実施態様では、負のゼータ電位の相乗的な増加に加えて、本発明の方法で用いられる組成物は、誘電材料のエッチングを実質的に生じることなく、この改良を提供する。このような誘電材料としては、例えば、二酸化ケイ素、ドープ二酸化ケイ素、窒化ケイ素、高K誘電材料および低K誘電材料の1つ以上が挙げられ得る。
【0101】
したがって、1つの実施態様では、集積回路は少なくとも1つの誘電材料を含み、そして組成物は誘電材料のエッチングを実質的に示さない。エッチングが実質的にないとは、観察される露出が、1分あたり約0.5Å未満のことをいう。
【0102】
さらに、本発明の組成物は、シリコン材料(ポリシリコン、シリコンゲルマニウム、ドープシリコン、またはドープシリコンゲルマニウムなど)のエッチングをほとんどあるいは全く生じない。したがって、集積回路デバイスが少なくとも1つのシリコン材料を含む場合、組成物はシリコン材料のエッチングを実質的に示さない。
【0103】
さらに、本発明の組成物は、金属(アルミニウム、銅、タングステンまたは集積回路デバイスに一般に用いられる他の金属など)のエッチングをほとんどあるいは全く生じない。したがって、集積回路デバイスが少なくとも1つの金属を含む場合、組成物は金属のエッチングを実質的に示さない。
【0104】
図1は、本発明による組成物の実施態様について、観察された負のゼータ電位の相乗的な増加を示すグラフである。図1において、塩含有量は、本発明の実施態様による組成物中の多面体シルセスキオキサンの含有量である。図1に示すように、塩含有量のモル%が約10モル%から約80モル%まで増加するにつれて、この範囲では、負のゼータ電位の相乗的な増加が観察される。図1に示していないが、従来の四級アンモニウムケイ酸塩および塩基を含む組成物では、このような負のゼータ電位の大幅な増加は得られない。むしろ、試験は、相対的な塩含有量が増加するにつれて、ゼータ電位は約−40mvにとどまることを示し、図1に示すグラフに当てはめると実質的に水平な線が得られる。これは、従来のケイ酸塩組成物では観察されない、本発明の組成物によって得られる相乗作用の明確な実証である。
【0105】
図2は、本発明による組成物の実施態様について、観察されたシュテルン層の厚みの減少および増加した負のゼータ電位を示す概略図である。図2に示すように、本発明の実施態様による組成物を付与する前は、所定の厚みを有する初期のシュテルン層は、仮想「汚染ナノ粒子」の表面電位面で存在する。図2の「大アニオン(big anions)」は、本発明の多面体シルセスキオキサン含有組成物を表す。大アニオン(シュテルン層の正電荷に干渉する)の存在の結果、シュテルン層の厚みが減少し、図2に示す圧縮されたシュテルン層を形成する。また、図2に示すように、ゼータ電位は、シュテルン層の減少の結果として、初期のゼータ電位から増加したゼータ電位まで増加する。
【0106】
図3は、本発明による組成物の実施態様について、仮想の汚染粒子の半導体デバイスの表面への付着および半導体デバイスの表面からの除去を示す概略図である。図3に示すように、仮想「汚染粒子」はまず半導体表面に付着され、そして粒子の表面を取り囲む電荷の二重層を含む。図3の「大アニオン(large anions)」は、本発明の多面体シルセスキオキサン含有組成物を表す。大アニオン(二重層の正電荷に干渉する)の存在の結果、二重層が崩壊され、そして「汚染粒子」は半導体の表面からより容易に離される。
【0107】
図4は、本発明による組成物の実施態様について、観察されたケイ素および二酸化ケイ素に関するエッチング速度を示すグラフである。図4は、一定の多面体シルセスキオキサン含有量について、添加されたNH含有量に大きな変化があったとしても、エッチングによるポリSiまたはSiO損失において実質的な変化が観察されないことを示す。図4の「C]の乗数は、NHの約0.55質量%であり、これは、基準となるSC−1標準液中のNHの含有量である。固定された多面体シルセスキオキサンの含有量は、0.17Cまたは約0.09質量%までである。このグラフは、本発明の実施態様による組成物が、ポリSiおよびSiOのような遍在材料を含む半導体基板の損傷のない洗浄を達成し得ることを示す。
【0108】
図5は、本発明による組成物の実施態様について、観察された窒化ケイ素についてのゼータ電位を示すグラフであり、上記実施例3に関する。図5は、一定の多面体シルセスキオキサン塩含有量(図4について説明したのと同様に0.17C)について、NHおよび過酸化水素の両方の含有量に大きな変化があったとしても、ゼータ電位で実質的な変化が観察されないことを示す。図5に示される実施態様において、多面体シルセスキオキサンのオニウム塩における0.17Cの値は、多面体シルセスキオキサンの含有量の最適範囲内にあり、そしてNHおよび過酸化水素の含有量を変更して、最小のゼータ電位値(すなわち、最大の負のゼータ電位)を見出す。実施例3および図5は、本発明の実施態様による組成物が高い負のゼータ電位を達成し得ることを示す。
【0109】
図6〜20のすべてにおいて、アニオンXはフッ化物であり、Yは塩化物であり、Zは臭化物であり、そしてカチオンA、B、C、DおよびEはそれぞれ、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムおよびフェニルトリメチルアンモニウムである。
【0110】
図6〜9は、標準的な濃度Mにおいて、3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるアニオンサイズにおける、カチオンサイズのゼータ電位への影響を示す。図6は、本質的に中性のpH(pH約7〜8)での効果を示す。図6に示すように、アニオンXおよび中性のpHでは、すべての粒子について、最も小さい(最も低い分子量(mw)の)カチオンで最小のゼータ電位が達成される。図7は、高いpH(pH約11)での結果を示す。図7に示すように、アニオンXおよびpH11では、すべての粒子について、最も小さい(最も低い分子量の)カチオンで最小のゼータ電位が達成される。この依存は、pH11にてすべての粒子に当てはまる。図8および図9において、アニオンYは塩化物であり、そしてカチオンA、B、CおよびDはそれぞれ、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウムおよびテトラブチルアンモニウムである。図8は、本質的に中性のpH(pH約7〜8)での結果を示す。図8に示すように、アニオンYおよびpH7〜8では、すべての粒子について、最も小さい(最も低い分子量の)カチオンで最小のゼータ電位が達成される。この依存は、pH7〜8にて無機粒子では非常に弱い。図9は、高いpH(pH約11)での結果を示す。図9に示すように、アニオンYおよびpH11では、すべての粒子について、最も小さい(最も低い分子量の)カチオンで最小のゼータ電位が達成される。この依存は、pH11にて示された粒子の全てに当てはまる。
【0111】
図10〜13は、標準的な濃度Mにおいて、3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるカチオンサイズにおける、アニオンサイズのゼータ電位への影響を示す。図10および11において、カチオンAはテトラメチルアンモニウムであり、そしてアニオンX、YおよびZはそれぞれ、フッ化物イオン、塩化物イオンおよび臭化物イオンである。図10は、本質的に中性のpH(pH約7〜8)での効果を示す。図10に示すように、カチオンAおよびpH7〜8では、すべての粒子について、ゼータ電位はアニオンの分子量と相関関係にない。1つ(PSL)は、1つのアニオンについてゼータ電位の減少を示す。図11は、高いpH(pH約11)での結果を示す。図11に示すように、カチオンAおよびpH11では、すべての粒子について、小さいアニオンでゼータ電位が最大となる。図12および図13において、カチオンDはテトラブチルアンモニウムであり、アニオンX、YおよびZはそれぞれ、フッ化物イオン、塩化物イオンおよび臭化物イオンである。図12は、実質的に中性のpH(pH約7〜8)での結果を示す。図12に示すように、カチオンDおよびpH7〜8では、すべての粒子について、ゼータ電位が比較的高く、そしてアニオンの分子量と相関関係にない。図13は、高いpH(pH約11)での結果を示す。図13に示すように、カチオンDおよびpH11では、すべての粒子について、最も高いアニオン分子量でゼータ電位が最小となる。
【0112】
図14〜17は、3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるアニオンおよびカチオンサイズにおける、ゼータ電位への濃度影響を示す。規格化濃度は範囲にわたって変化する。図14および15では、カチオンは小さく、例えば、テトラメチルアンモニウムイオンであり、そしてアニオンは大きく、例えば、塩化物である。図14は、中性のpH(pH約7〜8)でのゼータ電位への濃度影響を示す。図15は、小カチオンおよび大アニオンを用いた高いpH(pH約11)でのゼータ電位への濃度影響を示す。図14および15のグラフの比較から明らかなように、低い規格化濃度における高いpH条件(すなわち、pH11における約0.1C)は、中性のpHまたは高い濃度におけるよりもはるかに良好なゼータ電位を提供する。図16および17では、カチオンは大きく、例えば、テトラブチルアンモニウムイオンであり、そしてアニオンは大きく、例えば、塩化物である。図16は、中性のpH(pH約7〜8)でのゼータ電位への濃度影響を示す。図17は、小カチオンおよび大アニオンを用いた高いpH(pH約11)でのゼータ電位への濃度影響を示す。図16に示すように、特にSiN除去のために、大カチオンは最適ではなく、そしてpHおよびカチオンサイズは最適ではない。図17に示すように、高いpHはゼータ電位を向上させるが、大カチオンにおいては、図15に示す小カチオンにおけるほどは高くない。
【0113】
図18は、3つの異なる材料からなる粒子について、異なるpH条件および異なるカチオンサイズにおける、ゼータ電位へのpHの影響を示す棒グラフである。図18に示されるように、カチオンが小さく、例えばテトラメチルアンモニウムであり、そしてアニオンが大きい場合に、そしてpHが高く、例えばpH11である場合に、最適なゼータ電位が得られる。
【0114】
図19は、本発明の実施態様による組成物(多面体シルセスキオキサン、ここでは、単に「TMAケイ酸塩」という)と、ポリシリコンまたは二酸化ケイ素から形成された表面から粒子を除去するために用いられる他の塩処方物との間で、ポリシリコンおよび二酸化ケイ素に対するエッチング速度を比較した棒グラフである。図19に示されるように、ポリシリコン表面および二酸化ケイ素表面の両方のエッチングは、本発明の多面体シルセスキオキサン塩が小カチオン、例えばテトラメチルアンモニウムとともに用いられることによって最小化される。示されるように、本発明の多面体シルセスキオキサンによる二酸化ケイ素のエッチングは、ほぼゼロであり、一方、ポリシリコンのエッチングは、他の塩処方物によるよりも著しく低い。
【0115】
図20は、本発明の実施態様による組成物(多面体シルセスキオキサンのオニウム塩、ここでは、単に「TMAケイ酸塩」という)、および二酸化ケイ素から形成された表面から粒子を除去するために用いられる他の塩処方物の、ゼータ電位に対する規格化粒子除去効率性(PRE)を示すグラフである。図20から明らかなように、ゼータ電位の値がより負であるほど、二酸化ケイ素粒子のPREはより大きい。さらに、図20から明らかなように、本発明の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩は、図20に示される他の塩処方物のいずれよりも非常に改良されたゼータ電位および高いPREを得る。
【0116】
図21は、水中にケイ酸塩およびアンモニウムイオンを含む処方物の、0.17C TMAケイ酸塩についての規格化アンモニウム濃度に対するゼータ電位を示すグラフである。ここで、ケイ酸塩は、一方は、本発明の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩であり、または、他方は、米国特許第6,020,292号および6,465,403 B1号に記載されるような市販のテトラメチルアンモニウムケイ酸塩(Aldrichが提供)である。図21の2本のグラフ線(graphical line)から明らかに観察されるように、本発明の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩は、従来のテトラメチルアンモニウムケイ酸塩と比較して非常に改良された、すなわち著しくより負のゼータ電位を提供する。
【0117】
図22は、本発明の実施態様による多面体シルセスキオキサンのオニウム塩の濃度に対するゼータ電位を示すグラフである。図22は、多面体シルセスキオキサンのオニウム塩の濃度とゼータ電位との関係を示す。図22において、「C」は、粒子除去のための試験粒子としてのSiN粒子によって得られる規格化濃度およびゼータ電位を表す。図22のグラフから明らかなように、約0.16Cから約0.185Cに及ぶ最小濃度範囲があり、1つの実施態様では、その範囲内の約0.17Cの値が有用な平均濃度である。示された実施態様では、約0.16Cから約0.185Cまでの範囲がゼータ電位の望ましい低値を提供するのに対し、他の実施態様では、その範囲はこの値と異なり得ることに留意のこと。他の実施態様では、多面体シルセスキオキサン塩の濃度は、約0.1Cから約0.5Cまでの範囲であり得、そして他の実施態様では、多面体シルセスキオキサン塩の濃度は、約0.125Cから約0.3Cまでの範囲であり得、そして他の実施態様では、多面体シルセスキオキサン塩の濃度は、約0.15Cから約0.25Cまでの範囲であり得る。より高い濃度の多面体シルセスキオキサン塩が、いくつかの実施態様で用いられ得る。
【0118】
図23は、本発明の実施態様によるいくつかの組成物および本発明によるものではないくつかの組成物の、過酸化水素含有量に対するゼータ電位のグラフである。図23は、多面体シルセスキオキサン(図23において「かご型(caged)TMAケイ酸塩」という)を含む本発明の組成物によって実現されるゼータ電位の向上を示す。図23は、酸化剤濃度に応じた種々の処方物のゼータ電位変化を示す。図23に示されるゼータ電位は、SiN粒子によって得られた。図23に示すように、グラフは、2つの群に分かれた曲線を示す。多面体シルセスキオキサンのオニウム塩(グラフにおいて、「かご型TMAケイ酸塩成分」という)を含む処方物は、より負のゼータ電位を示し、本発明の多面体シルセスキオキサンのオニウム塩の組成物に含まれることにより、ゼータ電位の著しい驚くべき向上を示す。
【0119】
1つの実施態様では、本発明の組成物は、ジメチルスルホキシドをを実質的に含まない。1つの実施態様では、本発明の組成物は、スルホランを実質的に含まない。1つの実施態様では、本発明の組成物は、ピペリドンを実質的に含まない。
【0120】
明細書および請求の範囲を通して、開示されている範囲および比の数値限定は、組み合わせられ得、そして介在するすべての値を含むとみなされることに留意のこと。したがって、例えば、1から100および10から50の範囲が特に開示されている場合、介在する整数値であるような1から10、1から50、10から100、および50から100の範囲が、開示の範囲内にあるとみなされる。さらに、すべての数値の前には修飾語「約」が、この言葉が具体的に明記されているか否かにかかわらず、付くものとみなされる。最後に、構成要素のすべての可能な組み合わせおよび/または順列を列挙することは不可能であるため、開示された要素および成分のすべての可能な組み合わせは、具体的に開示されているか否かにかかわらず、開示の範囲内にあるとみなされる。したがって、開示された発明の各要素の開示された一部分の組み合わせおよび順列のそれぞれおよびすべてが、例えば、EPC123(2)による開示の範囲内にあるとみなされ、そして当業者に認められる。
【0121】
本発明の原理は、ある特定の実施態様に関して説明され、そして説明の目的のために提供されているが、それらの種々の改変が明細書を読めば当業者に明らかになることが、理解されるべきである。したがって、本明細書に開示されている発明は、そのような改変を含み、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図されていることが理解されるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)金属イオンを含まない1以上の塩基;
(b)金属イオンを含まない水溶性の多面体シルセスキオキサン塩;
(c)酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサン(b)が、水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンのオニウム塩として存在し、該オニウムが、一般式:
【化1】

(ここで、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立してH、C〜C18のアルキル基、C〜C18のアルコキシ基またはC〜C18のアルカノール基であり、そしてA=NまたはPである)を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多面体シルセスキオキサン(b)が、一般式:
Si5n/2n−
(ここで、nは、約6から約20までの範囲である)を有する、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記多面体シルセスキオキサン(b)が、式Si208−および構造(I):
【化2】

を有する、請求項1から3のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、約8から約14までの範囲のpHを有する、前記いずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、約0.001質量%から約40質量%までの範囲の(b)を含む、前記いずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、約0.01質量%から約10質量%までの範囲の酸化剤を含む、前記いずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項8】
前記金属イオンを含まない塩基が、アンモニア、オニウム水酸化物またはそれらの2以上のいずれかの組み合わせを含む、前記いずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項9】
前記オニウム水酸化物が、一般式(III):
【化3】

(ここで、(III)において、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立してH、C〜C18を含むアルキル基、C〜C18を含むアルコキシ基またはC〜C18を含むアルカノール基であり、そしてA=NまたはPである)を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
A=Nであり、そしてR、R、RおよびRのそれぞれがアルキルである、請求項2または9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記アルキルが、メチルまたはエチルである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
A=Pであり、そしてR、R、RおよびRのそれぞれがアルキルである、請求項2または9のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記アルキルが、メチルまたはエチルである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、金属キレート剤をさらに含む、前記いずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項15】
前記多面体シルセスキオキサンが、一般式:
Si5n/2n−
(ここで、nは、約6から約20までの範囲である)を有する、前記いずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項16】
前記酸化剤が、過酸化水素、オゾン、非金属次亜塩素酸塩またはそれらのいずれか2以上の組み合わせを含む、前記いずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項17】
前記多面体シルセスキオキサンが、式Si208−および構造(I):
【化4】

を有する、前記いずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項18】
前記水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンが、第4級オニウム水酸化物と二酸化ケイ素との実質的に1:1の化学量論比の反応で得られる、前記いずれかの請求項に記載の組成物。
【請求項19】
集積回路デバイスの表面から粒子状物質を除去するための方法であって、前記いずれかの請求項に記載の組成物を該表面に付与する工程を含む、方法。
【請求項20】
集積回路デバイスの製造中に、その表面から粒子状物質を除去するための方法であって、
(a)金属イオンを含まない1以上の塩基;
(b)金属イオンを含まない水溶性の多面体シルセスキオキサン塩;
(c)酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水、
を含む組成物を該表面に付与する工程、および
金属イオンを含まない水で該表面をすすぐ工程、
を含む、方法。
【請求項21】
前記水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサン(b)が、水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンのオニウム塩として存在し、該オニウムが、一般式:
【化5】

(ここで、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立してH、C〜C18のアルキル基、C〜C18のアルコキシ基またはC〜C18のアルカノール基であり、そしてA=NまたはPである)を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンのオニウム塩(b)が、一般式:
Si5n/2n−
(ここで、nは、約6から約20までの範囲である)を有する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記多面体シルセスキオキサン(b)が、式Si208−および構造(I):
【化6】

を有する、請求項20から22のいずれかの項に記載の方法。
【請求項24】
前記組成物が、約8から約14までの範囲のpHを有する、請求項20から23のいずれかの項に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、約0.001質量%から約40質量%までの範囲の(b)を含む、請求項20から24のいずれかの項に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、約0.01質量%から約10質量%までの範囲の酸化剤を含む、請求項20から25のいずれかの項に記載の方法。
【請求項27】
前記金属イオンを含まない塩基が、アンモニア、オニウム水酸化物またはそれらのいずれか2以上の組み合わせを含む、請求項20から26のいずれかの項に記載の方法。
【請求項28】
前記オニウム水酸化物が、一般式(III):
【化7】

(ここで、(III)において、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立してH、C〜C18を含むアルキル基、C〜C18を含むアルコキシ基またはC〜C18を含むアルカノール基であり、そしてA=NまたはPである)を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
A=Nであり、そしてR、R、RおよびRのそれぞれがアルキルである、請求項21または27のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記アルキルが、メチルまたはエチルである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
A=Pであり、そしてR、R、RおよびRのそれぞれがアルキルである、請求項21または27のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記アルキルが、メチルまたはエチルである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が、金属キレート剤をさらに含む、請求項20から32のいずれかの項に記載の方法。
【請求項34】
前記多面体シルセスキオキサンが、一般式:
Si5n/2n−
(ここで、nは、約6から約20までの範囲である)を有する、請求項20から33のいずれかの項に記載の方法。
【請求項35】
前記酸化剤が、過酸化水素、オゾン、金属を含まない次亜塩素酸塩またはそれらのいずれか2以上の組み合わせを含む、請求項20から34のいずれかの項に記載の方法。
【請求項36】
前記多面体シルセスキオキサンが、式Si208−および構造(I):
【化8】

を有する、請求項20から35のいずれかの項に記載の方法。
【請求項37】
前記粒子状物質が、ナノ粒子を含む、請求項20から36のいずれかの項に記載の方法。
【請求項38】
前記粒子状物質が、約0.1nmから約80nmまでの範囲の粒径を有する粒子を大部分を含む、請求項20から37のいずれかの項に記載の方法。
【請求項39】
前記組成物が、前記集積回路デバイスに付着したナノ粒子について、実質的に唯一のケイ酸塩としてテトラアルキルアンモニウムケイ酸塩を含む組成物のゼータ電位よりも実質的に低いゼータ電位を示す、請求項20から38のいずれかの項に記載の方法。
【請求項40】
前記集積回路デバイスが、少なくとも1つの誘電材料を含み、そして前記組成物が、該誘電材料のエッチングを実質的に示さない、請求項20から39のいずれかの項に記載の方法。
【請求項41】
前記集積回路デバイスが、少なくとも1つのケイ素材料を含み、そして前記組成物が、該ケイ素材料のエッチングを実質的に示さない、請求項20から40のいずれかの項に記載の方法。
【請求項42】
前記集積回路デバイスが、少なくとも1つの金属を含み、そして前記組成物が、該金属のエッチングを実質的に示さない、請求項20から41のいずれかの項に記載の方法。
【請求項43】
前記供給工程が、第4級オニウム水酸化物と二酸化ケイ素とを実質的に1:1の化学量論比で反応させることによって前記水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンを調製する工程をさらに含む、請求項20から42のいずれかの項に記載の方法。
【請求項44】
(a)金属イオンを含まない1以上の塩基;
(b)金属イオンを含まない水溶性の多面体シルセスキオキサン塩;
(c)酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水、
を含む成分を組み合わせることによって得られる、組成物。
【請求項45】
前記水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンが、第4級オニウム水酸化物と二酸化ケイ素とを実質的に1:1の化学量論比で反応させることによって得られる、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
集積回路デバイスの製造中に、その表面から粒子状物質を除去するための方法であって、
(a)金属イオンを含まない1以上の塩基;
(b)金属イオンを含まない水溶性の多面体シルセスキオキサン塩;
(c)酸化剤;および
(d)金属イオンを含まない水、
を含む成分を組み合わせることによって組成物を供給する工程;
該供給された組成物を該表面に付与する工程、および
金属イオンを含まない水で該表面をすすぐ工程、
を含む、方法。
【請求項47】
前記供給工程が、第4級オニウム水酸化物と二酸化ケイ素とを実質的に1:1の化学量論比で反応させることによって前記水溶性の金属イオンを含まない多面体シルセスキオキサンを調製する工程をさらに含む、請求項46に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2011−503326(P2011−503326A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534130(P2010−534130)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/083161
【国際公開番号】WO2009/064745
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(507374789)サッチェム,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】