説明

携帯機検知システム

【課題】比較的簡素な構成で、応答性よく携帯機の位置を検知することができる携帯機検知システムを提供する。
【解決手段】車両の進行方向を長手方向とする第1エレメント21と、車両の進行方向及び鉛直方向に垂直な方向を長手方向とし、第1エレメントに電気的に直列接続された第2エレメント22と、第1エレメント21と第2エレメント22の接続点に一端が接続された迂回配線200とを含むアンテナ20と、第1エレメント21に電力を供給する第1電力供給状態、第2エレメント22に電力を供給する第2電力供給状態、第1エレメント21及び第2エレメント22に電力を供給する第3電力供給状態の、3つの電力供給状態を切り換えると共に、電力供給状態を切り換えた際の携帯機からの応答信号に基づいて携帯機の位置を検知する携帯機検知手段(携帯機検知回路11、CPU12)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載器との相互通信を行なう携帯機を検知する携帯機検知システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示されるように、多くの車載アンテナを必要とせずに、携帯機と車載器との相互通信を行なう車両用通信装置があった。
【0003】
この車両用通信装置は、携帯機に対する電力伝送効率を向上させることを目的とするものであり、ビーム方向を任意に変えることができる送受信アンテナと、ドア施解錠意志を検出する接近者検出手段と、送受信アンテナを接近者検出方向に指向させるアンテナ調整手段とを有する車載器と、車両のユーザーが所有する携帯機とを備えている。そして、車載器は、ドア施解錠意志を検出すると、その検出した方向に送受信アンテナのビーム方向を向けて、図4に示されるような指向性の強い電波ビームで電力供給用電波を送信する。その後、携帯機との間の信号送受信で携帯機の認証を確認した場合に、車両ドアを施解錠させるための許可信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−132119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の車両用通信装置では、車両ドア毎のドアハンドルに設けられたスイッチからの信号によって、車両への接近者の存在方向を推定することができる。さらに、送受信アンテナの指向性を単一ビームに切り替えるとともに、各窓方向を含む複数の方向に対して順番にビーム方向を走査し、送受信アンテナを介して、各方向からの到来電波(反射波)を順番に受信する。そして、各ビーム方向の受信電力を比較することにより、最も高い電力を受信したビーム方向を抽出し、最大電力のビーム方向を車両への接近者の存在方向として推定することもできる。
【0006】
しかしながら、このように、車両ドア毎のドアハンドルに設けられたスイッチからの信号や、各窓方向を含む複数の方向に対して順番にビーム方向を走査した際の反射波を用いる場合、車両への接近者の存在方向を推定することはできるものの、携帯機の位置までは検知できない。
【0007】
この車両用通信装置で携帯機の位置を検知する場合、送受信アンテナの指向性を単一ビームに切り替えて、各窓方向を含む複数の方向に対して順番にビーム方向を走査する。そして、携帯機からのウェイクアップ完了信号を受信したときのビーム方向を抽出し、抽出したビーム方向に基づいて、車両への接近者が所有する携帯機の存在位置および方向を推定する必要がある。
【0008】
このように、上述の車両用通信装置では、各窓方向を含む複数の方向に対して順番にビーム方向を走査する必要があるため、携帯機の位置を検知するまでに要する時間が長くなり応答性が低下したり、送受信アンテナを回転させる機構などが必要になり構成が複雑になったりする問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、比較的簡素な構成で、応答性よく携帯機の位置を検知することができる携帯機検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1に記載の携帯機検知システムは、車両に搭載され、携帯機との間で相互通信を行なって携帯機の位置を検知するものであって、
車両の進行方向を長手方向とする第1エレメントと、車両の進行方向及び鉛直方向に垂直な方向を長手方向とし、第1エレメントに電気的に直列接続された第2エレメントと、を含み、携帯機に対して応答信号の返信を要求する要求信号を送信するための電波を放射するアンテナと、
第1エレメントと第2エレメントの接続点に一端が接続された迂回配線と、
迂回配線及び第1エレメントを通電経路として、第1エレメントに電力を供給する第1電力供給状態、迂回配線及び第2エレメントを通電経路として、第2エレメントに電力を供給する第2電力供給状態、第1エレメント及び第2エレメントに電力を供給する第3電力供給状態の、3つの電力供給状態を切り換えると共に、この電力供給状態を切り換えた際の携帯機からの応答信号に基づいて携帯機の位置を検知する携帯機検知手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
このようにすることによって、電力供給状態が第1電力供給状態のときは、車両の進行方向を長手方向とする第1エレメントのみに電力を供給するので、電波の到達範囲(要求信号の送信範囲)を車両の室内とすることができる。よって、第1電力供給状態のときに携帯機からの応答信号があった場合は、携帯機が車室内にあると検知できる。
【0012】
また、電力供給状態が第2電力供給状態のときは、車両の進行方向及び鉛直方向に垂直な方向を長手方向とする第2エレメントのみに電力を供給するので、電波の到達範囲(要求信号の送信範囲)を車両の乗員室内及び運転席側の室外及び助手席側の室外とすることができる。よって、電力供給状態が第1電力供給状態のときに携帯機からの応答信号がなく、且つ、第2状態のときに携帯機からの応答信号があった場合は、携帯機が運転席側の室外及び助手席側の室外にあると検知できる。また、電力供給状態が第1電力供給状態のときに携帯機からの応答信号があり、且つ、第2状態のときに携帯機からの応答信号がなかった場合は、携帯機がトランク室にあると検知できる。
【0013】
さらに、電力供給状態が第3電力供給状態のときは、上述の第1エレメント及び第2エレメントの両方に電力を供給するので、第1エレメントによって放射される電波と第2エレメントによって放射される電波との相互作用によって、電波の到達範囲(要求信号の送信範囲)を車両の運転席側の室外又は助手席側の室外とすることができる。よって、電力供給状態が第1電力供給状態のときに携帯機からの応答信号がなく、且つ、第2電力供給状態のときに携帯機からの応答信号があり、且つ、第3電力供給状態のときに携帯機からの応答信号があった場合は、携帯機が運転席側の室外か助手席側の室外にあると検知できる。
【0014】
このように、二軸(第1エレメントと第2エレメント)のアンテナを用いて、この第1エレメントと第2エレメントに対する電力供給状態を3回切り換えるだけなので、比較的簡素な構成で、応答性よく携帯機の位置を検知することができる。
【0015】
また、請求項2に示すように、携帯機検知手段は、第1電力供給状態、第2電力供給状態、第3電力供給状態に加えて、第1電力供給状態の場合に比べて、第1エレメントへの供給電力を大きくする第4電力供給状態に切り換えるようにしてもよい。
【0016】
このようにすることによって、電力供給状態が第4電力供給状態のときは、電波の到達範囲(要求信号の送信範囲)を車両の室外、つまり、車両の運転席側の室外及び助手席側の室外及びとランク室側の室外にまで達する範囲とすることができる。よって、電力供給状態が第1電力供給状態のときに携帯機からの応答信号がなく、且つ、第4電力供給状態のときに携帯機からの応答信号があり、且つ、第2電力供給状態のときに携帯機からの応答信号がなかった場合は、携帯機がトランク室側の室外にあると検知できる。
【0017】
また、請求項3に示すように、携帯機検知手段は、第1電力供給状態、第2電力供給状態、第3電力供給状態に加えて、第2電力供給状態の場合に比べて、第2エレメントへの供給電力を小さくする第5電力供給状態に切り換えるようにしてもよい。
【0018】
このようにすることによって、電力供給状態が第5電力供給状態のときは、電波の到達範囲(要求信号の送信範囲)を車両の乗員室内のみとすることができる。よって、電力供給状態が第1電力供給状態のときに携帯機からの応答信号があり、且つ、第5電力供給状態のときに携帯機からの応答信号がなかった場合は、携帯機がトランク内にあると検知することができる。
【0019】
なお、例えば、携帯機の電源として電池を用いている場合、この電池の消耗により、車載器と携帯機との相互通信が行えない場合がある。このような場合でも、車載器と携帯機との相互通信を行なえるようにするために、車両にバックアップ回路を設けることがある。このバックアップ装置は、車室内における携帯機がかざせる位置に設けられ、例えば、車室内に設けられたスタートスイッチ(イグニッションスイッチ)が押されたにもかからず、携帯機からの応答信号がなかった場合などに電磁界を発生する。一方、携帯機は、バックアップ装置から発生された電磁界にて起電力を発生する回路が設けられる。これによって、携帯機の電池が消耗した場合であっても、車載器と携帯機との相互通信が行なえるようになる。
【0020】
そこで、請求項4に示すように、携帯機に誘導起電力を生じさせるための電磁界を第1エレメント及び第2エレメントから発生させるために、要求信号を送信するための電波を放射させる場合に比べて供給電力を大きくして第1エレメント及び第2エレメントに対して通電するバックアップ回路を備えるようにしてもよい。
【0021】
このようにすることによって、携帯機との相互通信用のアンテナと、バックアップ用のアンテナとを統合することができ、アンテナの数を減らすことができるので好ましい。
【0022】
また、請求項5に示すように、アンテナは、第1エレメント及び第2エレメントに加えて、第3エレメントを備えるものであり、第1エレメント、第2エレメント、及び第3エレメントは、3次元に配置されるようにしてもよい。
【0023】
このようにすることによって、アンテナをバックアップ用として用いる場合、携帯機がどの方向を向いていても、バックアップする(誘導起電力を生じさせる)ことができる。なお、この第3エレメントは、迂回配線中に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施の形態における携帯機検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施の形態の車両における第1エレメント21及び第2エレメント22の配置と、電波の到達範囲を示すイメージ図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における携帯機検知システムの処理動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施の形態の変形例における携帯機検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態の変形例における携帯機検知システムの処理動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態の変形例における携帯機検知システムの処理動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施の形態の変形例における携帯機検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図8】(a)〜(e)は、本発明の第3の実施の形態の車両における第1エレメント21及び第2エレメント22の配置と、電波の到達範囲を示すイメージ図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態の変形例における携帯機検知システムの処理動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の第3の実施の形態の変形例1における携帯機検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態の変形例2における携帯機検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態における携帯機検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態における携帯機検知システムの処理動作を示すフローチャートである。
【図14】本発明の第4の実施の形態の変形例における携帯機検知システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る携帯機検知システムを、図1〜3に基づいて説明する。図1は、本実施形態による携帯機検知システムの全体の構成を示す構成図である。
【0027】
本実施形態における携帯機検知システムは、車両に搭載され、携帯機との間で相互通信を行なって携帯機の位置を検知するものである。この携帯機検知システムは、例えば、携帯機(図示省略)との双方向通信(相互通信)によるIDコードの照合結果を基に、車両の各ドアのロック・アンロック状態を制御するスマートエントリシステムや、ステアリングロック・アンロック状態、及びエンジン始動の許可・禁止状態などを制御するスマートスタートシステムなどに適用されるものである。
【0028】
図1に示すように、携帯機検知システムは、制御部10とアンテナ20とを備える。この制御部10は、携帯機検知回路11(携帯機検知手段)及びCPU12(携帯機検知手段)などを備える。
【0029】
携帯機検知回路11は、CPU12からの指示に基づいて動作するものであり、携帯機に対して応答信号(以下、レスポンス信号とも称する)の返信を要求する要求信号(以下、リクエスト信号とも称する)を送信するための電波をアンテナ20から放射させる。また、携帯機検知回路11は、アンテナ20の3つの接点A、接点B、接点Cとの接続状態を切り換えることによって、後ほど説明するアンテナ20に対する電力供給状態(3通り)を切り換える。また、携帯機検知回路11は、受信回路(図示省略)などを備える。なお、CPU12は、この受信回路で受信したレスポンス信号に含まれるIDコードが予め登録されている登録コードと一致等、所定の関係を満足するかの照合などを行う。
【0030】
そして、携帯機検知回路11は、この3つの電力供給状態を切り換えると共に、CPU12は、この電力供給状態を切り換えた際の携帯機からのレスポンス信号に基づいて携帯機の位置を検知する。なお、制御部10は、検知した携帯機の位置を示す信号をボデーECU(図示省略)、電源ECU(図示省略)、エンジンECU(図示省略)などに出力する。そして、これらのECUが制御部10からの信号に基づいて、ドアのロック・アンロック状態、ステアリングロック・アンロック状態、エンジン始動の許可・禁止状態等を制御する。換言すると、ボデーECU(図示省略)、電源ECU(図示省略)、エンジンECU(図示省略)は、受信したIDコードの照合が成立か不成立かに応じて、ドアのロック・アンロック状態、ステアリングロック・アンロック状態、エンジン始動の許可・禁止状態等を制御する。
【0031】
一方、アンテナ20は、携帯機に対して応答信号の返信を要求する要求信号を送信するための電波を放射するものである。そして、図1、図2に示すように、車両の進行方向を長手方向とする第1エレメント21と、車両の進行方向及び鉛直方向に垂直な方向を長手方向とし、第1エレメント21に電気的に直列接続された第2エレメント22とを含む。また、アンテナ20は、電波を放射するものではないが、第1エレメント21と第2エレメント22の接続点に一端が接続されて、他端が制御部10に接続された迂回配線を含む。この第1エレメント21及び第2エレメント22は、LF帯電波(周波数120kHz〜135kHz程度)を放射するエレメントである。なお、この迂回配線200は、アンテナ20の外部に設けられるようにしてもよい。
【0032】
さらに、図1に示すように、アンテナ20は、制御部10に接続される、3つの接点A、接点B、接点Cを有している。第1エレメント21は、第2エレメント22との接続点と接点Aとの間に配置される。また、第2エレメント22は、第1エレメント21との接続点と接点Bとの間に配置される。そして、迂回配線200は、第1エレメント21と第2エレメント22の接続点と接点Cとの間に配置される。
【0033】
なお、図2(a)〜(c)は、車両における第1エレメント21及び第2エレメント22の配置と、電波の到達範囲を示すイメージ図である。この電波の到達範囲は、要求信号の送信範囲であり、携帯機を検知するエリアであるため、以下、携帯機検知エリア(第1携帯機検知エリア、第2携帯機検知エリア、第3携帯機検知エリア、第4携帯機検知エリア、第5携帯機検知エリア)とも称する。なお、図2において、符号41は、車両の室内における乗員室であり、符42は、車両の室内におけるトランク室42である。また、紙面上方が車両の進行方向である。
【0034】
上述のように、このような構成のアンテナ20に対して、携帯機検知回路11は、このような構成のアンテナ20の3つの接点A、接点B、接点Cとの接続状態を切り換えることによって、アンテナ20に対する電力供給状態(3通り)を切り換える。具体的には、迂回配線200及び第1エレメント21を通電経路として、第1エレメント21に電力を供給する第1電力供給状態、迂回配線200及び第2エレメント22を通電経路として、第2エレメント22に電力を供給する第2電力供給状態、第1エレメント21及び第2エレメント22に電力を供給する第3電力供給状態の、3つの電力供給状態を切り換える。つまり、接点Aと接点Cとをオン、接点Bをオフすることによって第1電力供給状態とし、接点Bと接点Cとをオン、接点Aをオフすることによって第2電力供給状態とし、接点Aと接点Bとをオン、接点Cをオフすることによって第3電力供給状態とする。
【0035】
このように、アンテナ20に対する電力供給状態(3通り)を切り換えることによって、携帯機検知エリアを切り換えることができる。例えば、電力供給状態が第1電力供給状態のときは、図2(a)に示すように、車両の進行方向を長手方向とする第1エレメント21のみに電力を供給するので、携帯機検知エリアを車両の室内とすることができる。このときの携帯機検知エリアを第1携帯機検知エリアa1と称する。
【0036】
また、電力供給状態が第2電力供給状態のときは、図2(b)に示すように、車両の進行方向及び鉛直方向に垂直な方向を長手方向とする第2エレメント22のみに電力を供給するので、携帯機検知エリアを車両の乗員室41内及び運転席側(図面ではD席)の室外及び助手席側(図面ではP席)の室外とすることができる。このときの携帯機検知エリアを第2携帯機検知エリアa2と称する。
【0037】
さらに、電力供給状態が第3電力供給状態のときは、図2(c)に示すように、上述の第1エレメント21及び第2エレメント22の両方に電力を供給するので、第1エレメント21によって放射される電波と第2エレメント22によって放射される電波との相互作用によって、携帯機検知エリアを車両の室内及び、運転席側の室外又は助手席側の室外とすることができる(ここでは、車両の室内及び運転席側の室外を採用する)。このときの携帯機検知エリアを第3携帯機検知エリアa3と称する。
【0038】
ここで、図3に示すフローチャートを用いて、携帯機検知システムの処理動作に関して説明する。なお、図3に示すフローチャートは、例えば、車両のドアが全ドア閉、全ドアロックのときにスタートして、所定時間毎に実行されるものである。
【0039】
まず、ステップS1では、室内エリアを検知する。このとき、携帯機検知回路11は、接点Aと接点Cとをオン、接点Bをオフすることによって迂回配線200及び第1エレメント21を通電経路として、第1エレメント21に電力を供給する第1電力供給状態とする。このとき、図2(a)に示すように、車両の進行方向を長手方向とする第1エレメント21のみに電力を供給するので、第1携帯機検知エリアa1を形成することができる。つまり、第1携帯機検知エリアa1内でリクエスト信号を送信する。
【0040】
ステップS2では、室内に携帯機があるか否かを判定する。つまり、CPU12は、第1電力供給状態として第1携帯機検知エリアa1を形成しているときに、携帯機からレスポンス信号が送信されて、そのレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立か不成立かによって携帯機が室内にあるか否かを判定する。そして、照合が成立した場合は携帯機が室内にあるとみなす。つまり、室内ユーザー検知とする(S10)。一方、照合が不成立であった場合は携帯機が室内にないとみなして、ステップS3へ進む。
【0041】
ステップS3では、室外エリアを検知する。このとき、携帯機検知回路11は、接点Bと接点Cとをオン、接点Aをオフすることによって迂回配線200及び第2エレメント22を通電経路として、第2エレメント22に電力を供給する第2電力供給状態とする。このとき、図2(b)に示すように、車両の進行方向及び鉛直方向に垂直な方向を長手方向とする第2エレメント22のみに電力を供給するので、第2携帯機検知エリアa2を形成することができる。つまり、第2携帯機検知エリアa2内でリクエスト信号を送信する。
【0042】
ステップS4では、室外(運転席側の室外及び助手席側の室外)に携帯機があるか否かを判定する。つまり、CPU12は、第2電力供給状態として第2携帯機検知エリアa2を形成しているときに、携帯機からレスポンス信号が送信されて、そのレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立か不成立かによって携帯機が室外にあるか否かを判定する。そして、照合が成立した場合は、携帯機が室内になく(ステップS2でNO)、かつ、室外にあるとみなして、ステップS5に進む。一方、照合が不成立であった場合は携帯機が室内になく(ステップS2でNO)、室外にもないとみなす。つまり、ユーザーなしとする(S9)。
【0043】
ステップS5では、運転席側(D席側)エリアを検知する。このとき、携帯機検知回路11は、接点Aと接点Bとをオン、接点Cをオフすることによって第1エレメント21及び第2エレメント22の両方に電力を供給する第3電力供給状態とする。このとき、図2(c)に示すように、第1エレメント21及び第2エレメント22の両方に電力を供給するので、第1エレメント21によって放射される電波と第2エレメント22によって放射される電波との相互作用によって、第3携帯機検知エリアa3を形成することができる。つまり、第3携帯機検知エリアa3内でリクエスト信号を送信する。
【0044】
ステップS6では、運転席側(D席側)室外に携帯機があるか否かを判定する。つまり、CPU12は、第3電力供給状態として第3携帯機検知エリアa3を形成しているときに、携帯機からレスポンス信号が送信されて、そのレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立か不成立かによって携帯機が室外にあるか否かを判定する。そして、照合が成立した場合は、運転席側(D席側)室外にあるとみなす。つまり、運転席側(D席側)室外ユーザー検知とする(S7)。一方、照合が不成立であった場合は、携帯機が室外にあり(ステップS4でYES)、運転席側(D席側)室外にないとみなす。つまり、助手席側(P席側)ユーザーありとする(S8)。
【0045】
このように、本実施の形態における携帯機検知システムは、二軸(第1エレメント21と第2エレメント22)のアンテナ20を用いて、この第1エレメント21と第2エレメント22に対する電力供給状態を3回切り換えるだけなので、比較的簡素な構成で、応答性よく携帯機の位置を検知することができる。具体的には、車両の室内、運転席側の室外、助手席側の室外のいずれに携帯機があるかを検知することができる。さらに、二軸(第1エレメント21と第2エレメント22)のアンテナ20一つで、携帯機の位置を検知することができるので、各ドアのアンテナを設ける場合に比べて、アンテナの個数を減らすことができコストを低減させることができる。
【0046】
なお、上述の実施の形態においては、図3に示すように、車両のドアが全ドア閉、全ドアロックのときに室内エリア検知を開始する例を採用しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1の実施の形態の変形例として、制御部10(CPU12)に対して、トリガ信号を出力するトリガ入力回路30を備え、トリガ入力回路30からトリガ信号が入力されると室内エリア検知を開始するようにしてもよい。なお、上述の実施の形態における携帯機検知システムとこの変形例における携帯機検知システムとにおいて、同一構成のものに関しては同じ符号を付与して説明を省略する。
【0047】
図4に示すように、変形例1における携帯機検知システムは、制御部10(CPU12)にトリガ入力回路30が接続される。トリガ入力回路30は、例えば、車両の各ドアのドアハンドルに設けられたタッチセンサやプッシュスイッチなどからの信号が入力される。そして、トリガ入力回路30は、タッチセンサやプッシュスイッチなどからの信号が入力されると、ユーザーが車両のドアのロック又はアンロックを要求しているとみなして、制御部10(CPU12)にトリガ信号を入力する。
【0048】
そして、図5のステップS11に示すように、変形例における携帯機検知システムでは、CPU12は、電源が供給されているときにトリガ入力回路30からのトリガ信号が入力あるか否かを判定する。そして、トリガ入力回路30からのトリガ信号が入力あると判定した場合は、図3のフローチャートにおけるステップS1に進み、トリガ信号が入力ないと判定した場合は、ステップS11での判定を繰り返し実行する。このように、トリガ入力回路30を備える場合、トリガ入力回路30は、ユーザーがどのドアの周辺にいるかを把握することができる。しかしながら、タッチセンサやプッシュスイッチなどを操作したユーザーが必ず携帯機を持っているとは限らない。そこで、制御部10(CPU12)に対して、トリガ信号を出力するトリガ入力回路30を備える場合であっても、本実施の形態における携帯機検知システムを適用すると好適である。つまり、比較的簡素な構成で、応答性よく携帯機の位置を検知することができる。さらに、二軸(第1エレメント21と第2エレメント22)のアンテナ20一つで、携帯機の位置を検知することができるので、各ドアのアンテナを設ける場合に比べて、アンテナの個数を減らすことができコストを低減させることができる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることはなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
【0050】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る携帯機検知システムを、図6に基づいて説明する。なお、第2実施形態に係る携帯機検知システムにおける構成は、上述の第1の実施の形態と同様であるため説明を省略する(図1参照)。また、第2実施形態に係る携帯機検知システムにおける処理動作に関しては、上述の第1の実施の形態と同様である部分が多いため、同一の部分に関しては説明を省略する。つまり、図6に示すフローチャートでは、図3に示すフローチャートと同一の部分は、図3と同じステップ番号を付与している。第2実施形態に係る携帯機検知システムと、第1実施形態に係る携帯機検知システムとの異なる点は、車両のトランク室内に携帯機を閉じ込めているか否かを判定する点である。
【0051】
つまり、第2実施形態に係る携帯機検知システムでは、図6(図3)のステップS2において、室内に携帯機があると判定した場合、ステップS12へ進む。
【0052】
図6のステップS12では、図3のステップS3と同様に、第2携帯機検知エリアa2を検知する。そして、図6のステップS13では、携帯機があるか否かを判定する。つまり、CPU12は、第2電力供給状態として第2携帯機検知エリアa2を形成しているときに、携帯機からレスポンス信号が送信されて、そのレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立か不成立かによって携帯機があるか否かを判定する。そして、照合が成立した場合は、携帯機が室内にあり(ステップS2でYES)、かつ、乗員室41に携帯機があるとみなす。つまり、室内(乗員室)ユーザーありとする(S10)。一方、照合が不成立であった場合は携帯機が室内にあり(ステップS2でYES)、車両の乗員室41にないとみなす。つまり、トランク内閉じ込め検知とする(S14)。
【0053】
このように、本実施の形態における携帯機検知システムは、二軸(第1エレメント21と第2エレメント22)のアンテナ20を用いて、この第1エレメント21と第2エレメント22に対する電力供給状態を4回切り換えるだけなので、比較的簡素な構成で、応答性よく携帯機の位置を検知することができる。具体的には、車両の乗員室、運転席側の室外、助手席側の室外、トランク内のいずれに携帯機があるかを検知することができる。さらに、二軸(第1エレメント21と第2エレメント22)のアンテナ20一つで、携帯機の位置を検知することができるので、各ドアのアンテナを設ける場合に比べて、アンテナの個数を減らすことができコストを低減させることができる。
【0054】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態に係る携帯機検知システムを、図7〜9に基づいて説明する。なお、第3の実施の形態に係る携帯機検知システムにおける構造は、上述の第1の実施の形態と同様である部分が多いため、同一の部分に関しては説明を省略する。つまり、図7に示すブロック図では、図1に示すブロック図と同一の部分は、図1と同じ符号を付与している。第3の実施の形態に係る携帯機検知システムと、第1の実施の形態に係る携帯機検知システムとで異なる点は、出力電流可変回路13及び出力電圧可変回路14を追加することによって、アンテナ20(第1エレメント21及び第2エレメント22)に対する電力供給状態として、第4電力供給状態、及び第5電力供給状態を追加した点である。
【0055】
図7に示すように、携帯機検知システムは、出力電流可変回路13及び出力電圧可変回路14を備える。この出力電流可変回路13は、CPU12からの指示に基づいて、携帯機検知回路11がアンテナ20に供給する出力電流を設定するものである。一方、出力電圧可変回路14は、CPU12からの指示に基づいて、携帯機検知回路11がアンテナ20に供給する出力電圧を設定するものである。
【0056】
また、第4電力供給状態は、第1電力供給状態の場合に比べて、第1エレメント21への供給電力を大きくしたものである。つまり、携帯機検知回路11は、接点Aと接点Cとをオン、接点Bをオフすると共に、出力電流可変回路13及び出力電圧可変回路14によって、第1電力供給状態の場合に比べて、第1エレメント21への供給電力を大きくする。これによって、電力供給状態が第4電力供給状態のときは、図8(d)に示すように、形態検知エリアを車両の室内及び室外、つまり、車両の室内から運転席側の室外及び助手席側の室外及びトランク室側の室外にまで達する範囲とすることができる。このときの携帯機検知エリアを第4携帯機検知エリアa14とする。
【0057】
また、第5電力供給状態は、第2電力供給状態の場合に比べて、第2エレメント22への供給電力を小さくしたものである。つまり、携帯機検知回路11は、接点Bと接点Cとをオン、接点Aをオフすると共に、出力電流可変回路13及び出力電圧可変回路14によって、第2電力供給状態の場合に比べて、第2エレメント22への供給電力を小さくする。これによって、電力供給状態が第5電力供給状態のときは、図8(b)に示すように、携帯機検知エリアを車両の乗員室41とすることができる。このときの携帯機検知エリアを第5携帯機検知エリアa12とする。
【0058】
なお、図8(a)に示す、本実施の形態における第1携帯機検知エリアa11は、上述の実施の形態における第1携帯機検知エリアa1と同じエリアである。また、図8(e)に示す、本実施の形態における第2携帯機検知エリアa15は、上述の実施の形態における第2携帯機検知エリアa2と同じエリアである。さらに、図8(c)に示す、本実施の形態における第3携帯機検知エリアa13は、上述の実施の形態における第3携帯機検知エリアa3と同じエリアである。
【0059】
ここで、図9に示すフローチャートを用いて、本実施の形態における携帯機検知システムの処理動作に関して説明する。なお、図9に示すフローチャートは、例えば、車両のドアが全ドア閉、全ドアロックのときにスタートして、所定時間毎に実行されるものである。
【0060】
まず、ステップS21では、室内エリアを検知する。このとき、携帯機検知回路11は、接点Aと接点Cとをオン、接点Bをオフすることによって迂回配線200及び第1エレメント21を通電経路として、第1エレメント21に電力を供給する第1電力供給状態とする。このとき、図8(a)に示すように、車両の進行方向を長手方向とする第1エレメント21のみに電力を供給するので、車両の室内をエリアとする第1携帯機検知エリアa11を形成することができる。つまり、第1携帯機検知エリアa11内でリクエスト信号を送信する。
【0061】
ステップS22では、室内に携帯機があるか否かを判定する。つまり、CPU12は、第1電力供給状態として第1携帯機検知エリアa11を形成しているときに、携帯機からレスポンス信号が送信されて、そのレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立か不成立かによって携帯機が室内にあるか否かを判定する。そして、照合が成立した場合は携帯機が室内にあるとみなしてステップS30へ進む。一方、照合が不成立であった場合は携帯機が室内にないとみなしてステップS23へ進む。
【0062】
ステップS23では、室外エリアを検知する。このとき、携帯機検知回路11は、第1電力供給状態と同様に接点Aと接点Cとをオン、接点Bをオフすることによって迂回配線200及び第1エレメント21を通電経路とすると共に、第1電力供給状態の場合に比べて、第1エレメント21への供給電力を大きくした第4電力供給状態とする。このとき、図8(d)に示すように、車両の室内から運転席側の室外及び助手席側の室外及びとランク室側の室外にまで達するエリアとする第4携帯機検知エリアa14を形成することができる。つまり、第4携帯機検知エリアa14内でリクエスト信号を送信する。
【0063】
ステップS24では、室外に携帯機があるか否かを判定する。つまり、CPU12は、第4電力供給状態として第4携帯機検知エリアa14を形成しているときに、携帯機からレスポンス信号が送信されて、そのレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立か不成立かによって携帯機が室外にあるか否かを判定する。そして、照合が成立した場合は、携帯機が室内になく(ステップS22でNO)、かつ、室外にあるとみなして、ステップS25に進む。一方、照合が不成立であった場合は携帯機が室内になく(ステップS22でNO)、さらに、室外にもないとみなす。つまり、ユーザーなしとする(S34)。
【0064】
ステップS25では、運転席側及び助手席側(D/P席)エリアを検知する。このとき、接点Bと接点Cとをオン、接点Aをオフすることによって迂回配線200及び第2エレメント22を通電経路として、第2エレメント22に電力を供給する第2電力供給状態とする。このとき、図8(e)に示すように、車両の進行方向及び鉛直方向に垂直な方向を長手方向とする第2エレメント22のみに電力を供給するので、第2携帯機検知エリアa15を形成することができる。つまり、第2携帯機検知エリアa15内でリクエスト信号を送信する。
【0065】
ステップS26では、室外(運転席側及び助手席側)に携帯機があるか否かを判定する。つまり、CPU12は、第2電力供給状態として第2携帯機検知エリアa15を形成しているときに、携帯機からレスポンス信号が送信されて、そのレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立か不成立かによって携帯機が室外にあるか否かを判定する。そして、照合が成立した場合は、携帯機が室内になく(ステップS22でNO)、かつ、運転席側及び助手席側の室外にあるとみなして、ステップS27に進む。一方、照合が不成立であった場合は、携帯機が室内になく(ステップS22でNO)、室外にはあり(ステップS24でYES)、さらに、運転席側及び助手席側の室外にはないとみなす。つまり、トランク外ユーザー検知とする(S35)。
【0066】
ステップS27では、運転席側(D席側)エリアを検知する。このとき、携帯機検知回路11は、接点Aと接点Bとをオン、接点Cをオフすることによって第1エレメント21及び第2エレメント22の両方に電力を供給する第3電力供給状態とする。このとき、図8(c)に示すように、第1エレメント21及び第2エレメント22の両方に電力を供給するので、第1エレメント21によって放射される電波と第2エレメント22によって放射される電波との相互作用によって、第3携帯機検知エリアa13を形成することができる。つまり、第3携帯機検知エリアa13内でリクエスト信号を送信する。
【0067】
ステップS28では、運転席側(D席側)室外に携帯機があるか否かを判定する。つまり、CPU12は、第3電力供給状態として第3携帯機検知エリアa13を形成しているときに、携帯機からレスポンス信号が送信されて、そのレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立か不成立かによって携帯機が室外にあるか否かを判定する。そして、照合が成立した場合は、運転席側(D席側)の室外にあるとみなす。つまり、運転席側(D席側)室外ユーザー検知とする(S29)。一方、照合が不成立であった場合は、携帯機が運転席側及び助手席側の室外にあり(ステップS26でYES)、運転席側(D席側)の室外にないとみなす。つまり、助手席側(P席側)ユーザーありとする(S36)。
【0068】
なお、ステップS22において、照合が成立した場合に実行するステップS30では、室内エリアを検知する。このとき、携帯機検知回路11は、第2電力供給状態と同様に接点Bと接点Cとをオン、接点Aをオフすることによって迂回配線200及び第2エレメント22を通電経路とすると共に、第2電力供給状態の場合に比べて、第2エレメント22への供給電力を小さくした第5電力供給状態とする。このとき、図8(b)に示すように、車両の乗員室41のみに第5携帯機検知エリアa12を形成することができる。つまり、第5携帯機検知エリアa12内でリクエスト信号を送信する。
【0069】
ステップS31では、室内エリア(乗員室41)に携帯機があるか否かを判定する。つまり、CPU12は、第5電力供給状態として第5携帯機検知エリアa12を形成しているときに、携帯機からレスポンス信号が送信されて、そのレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立か不成立かによって携帯機が室内にあるか否かを判定する。そして、照合が成立した場合は、携帯機が室内にあり(ステップS22でYES)、かつ、乗員室41に携帯機があるとみなす。つまり、室内(乗員室41)ユーザーありとする(S32)。一方、照合が不成立であった場合は携帯機が室内にあり(ステップS22でYES)、乗員室41にないとみなす。つまり、トランク内閉じ込め検知とする(S33)。
【0070】
このようにすることによって、電力供給状態が第1電力供給状態のときに携帯機からの応答信号がなく、且つ、第4電力供給状態のときに携帯機からの応答信号があり、且つ、第2電力供給状態のときに携帯機からの応答信号がなかった場合は、携帯機がトランク室側の室外にあると検知できる。さらに、電力供給状態が第5電力供給状態のときは、電波の到達範囲(要求信号の送信範囲)を車両の乗員室内のみとすることができる。よって、電力供給状態が第1電力供給状態のときに携帯機からの応答信号があり、且つ、第2電力供給状態のときに携帯機からの応答信号がなかった場合は、携帯機がトランク内にあると検知することができる。
【0071】
このように、本実施の形態における携帯機検知システムは、二軸(第1エレメント21と第2エレメント22)のアンテナ20を用いて、この第1エレメント21と第2エレメント22に対する電力供給状態を5回切り換えるだけなので、比較的簡素な構成で、応答性よく携帯機の位置を検知することができる。具体的には、車両の乗員室、運転席側の室外、助手席側の室外、トランク内、トランク室側の室外のいずれに携帯機があるかを検知することができる。さらに、二軸(第1エレメント21と第2エレメント22)のアンテナ20一つで、携帯機の位置を検知することができるので、各ドアのアンテナを設ける場合に比べて、アンテナの個数を減らすことができコストを低減させることができる。
【0072】
なお、本実施の形態においては、アンテナ20への供給電力を変更するために、出力電流可変回路13と出力電圧可変回路14の両方を備える構成を採用したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図10に示すように第3の実施の形態の変形例1として、供給電力を変更するために、出力電流可変回路13のみを用いるようにしてもよい。さらには、図11に示すように第3の実施の形態の変形例2として、供給電力を変更するために、出力電圧可変回路14のみを用いるようにしてもよい。このようにすることによっても、本発明の目的は達成できるものである。
【0073】
また、本実施の形態においては、上述の第1の実施の形態に対して、第4電力供給状態、及び第5電力供給状態を追加する例を採用するが、第4電力供給状態、及び第5電力供給状態の一方のみを採用するようにしてもよい。つまり、第4電力供給状態のみを追加するだけで、トランク室の室外に携帯機があるか否かを検知できる。また、第5電力供給状態のみを追加するだけで、トランク室内に携帯機があるか否かを検知できる。
【0074】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態に係る携帯機検知システムを、図12、13に基づいて説明する。なお、第4の実施の形態に係る携帯機検知システムにおける構造は、上述の第1の実施の形態と同様である部分が多いため、同一の部分に関しては説明を省略する。つまり、図12に示すブロック図では、図1に示すブロック図と同一の部分は、図1と同じ符号を付与している。第4の実施の形態に係る携帯機検知システムと、第1の実施の形態に係る携帯機検知システムとで異なる点は、バックアップ回路を追加した点である。
【0075】
例えば、携帯機の電源として電池を用いている場合、この電池の消耗により、携帯機検知システムと携帯機との相互通信が行えない場合がある。このような場合でも、携帯機検知システムと携帯機との相互通信を行なえるようにするために、車両にバックアップ回路を設けることがある。このバックアップ回路は、車室内における携帯機がかざせる位置に設けられ、例えば、車室内に設けられたスタートスイッチ(イグニッションスイッチ)が押されたにもかからず、携帯機からの応答信号がなかった場合などに電磁界を発生する。一方、携帯機は、バックアップ装置から発生された電磁界にて起電力を発生する回路が設けられる。これによって、携帯機の電池が消耗した場合であっても、携帯機検知システムと携帯機との相互通信が行なえるようになる。つまり、第4の実施の形態に係る携帯機検知システムに対応する携帯機は、外部から受ける電磁界にて誘導された起電力により駆動し、応答信号を送信するトランスポンダが設けられている。
【0076】
そこで、図12に示すように、第4の実施の形態における携帯機検知システムは、バックアップ回路15を備える。このバックアップ回路15は、CPU12からの指示に基づいて、携帯機に誘導起電力を生じさせるための電磁界を第1エレメント21及び第2エレメント22から発生させるために、要求信号を送信するための電波を放射させる場合に比べて供給電力を大きくして第1エレメント21及び第2エレメント22に対して通電する。
【0077】
ここで、図13に示すフローチャートを用いて、本実施の形態における携帯機検知システムの処理動作に関して説明する。なお、図13に示すフローチャートは、例えば、車室内に設けられたスタートスイッチ(イグニッションスイッチ)が押された場合に実行されるものである。
【0078】
まず、ステップS41では、携帯機検知出力を行う。つまり、携帯機検知回路11は、接点Aと接点Cとをオン、接点Bをオフすることによって迂回配線200及び第1エレメント21を通電経路として、第1エレメント21に電力を供給する第1電力供給状態とする。例えば、第3の実施の形態における、図8(a)に示すように、車両の室内をエリアとする第1携帯機検知エリアa11を形成する。つまり、第1携帯機検知エリアa11内でリクエスト信号を送信する。
【0079】
ステップS42では、携帯機があるか否かを判定する。つまり、CPU12は、第1電力供給状態として第1携帯機検知エリアa11を形成しているときに、携帯機からレスポンス信号が送信されて、そのレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立か不成立かによって携帯機が室内にあるか否かを判定する。そして、照合が成立した場合は携帯機が室内にあるとみなしてステップS45へ進む。よって、ステップS45では、ユーザー検知とする。
【0080】
一方、照合が不成立であった場合は携帯機が室内にないとみなしてステップS43へ進む。このとき、スタートスイッチ(イグニッションスイッチ)が押されたにもかかわらず、携帯機からの応答信号がないことになる。よって、携帯機は、電池が消耗して、応答信号を出力できない可能性がある。
【0081】
そこで、ステップS43では、バックアップ出力を行う。このとき、バックアップ回路15は、CPU12からの指示に基づいて、携帯機に誘導起電力を生じさせるための電磁界を第1エレメント21及び第2エレメント22から発生させるために、要求信号を送信するための電波を放射させる場合に比べて供給電力を大きくして第1エレメント21及び第2エレメント22に対して通電する。このとき、携帯機が室内にあった場合、携帯機は、この電磁界にて誘導された起電力により駆動して応答信号を送信することができる。
【0082】
ステップS44では、携帯機があるか否かを判定する。つまり、CPU12は、バックアップ出力をしているときに、携帯機からレスポンス信号が送信されて、そのレスポンス信号に含まれるIDコードの照合が成立か不成立かによって携帯機が室内にあるか否かを判定する。そして、照合が成立した場合は携帯機が室内にあるとみなしてステップS45へ進む。よって、ステップS45では、ユーザー検知とする。一方、照合が不成立となった場合は携帯機が室内にないとみなしてステップS46へ進む。よって、ステップS46では、ユーザー無しとする。
【0083】
このようにすることによって、携帯機との相互通信用のアンテナと、バックアップ用のアンテナとを統合することができ、アンテナの数を減らすことができるので好ましい。
【0084】
なお、本実施の形態においては、第1エレメント21及び第2エレメント22を含むアンテナ20を採用しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0085】
例えば、図14に示すように第4の実施の形態の変形例として、第1エレメント21及び第2エレメント22に加えて、第3エレメント23を備えるアンテナ20fを採用してもよい。上述のように、第1エレメント21は、自身の長手方向が車両の進行方向となるように配置されるものであり、第2エレメント22は、自身の長手方向が車両の進行方向及び鉛直方向に垂直となるように配置されるものである。そして、第3エレメント23は、自身の長手方向が車両の鉛直方向となるように配置する。つまり、この第1エレメント21の方向をX軸、第2エレメント22の方向をY軸とすると、第3エレメント23の方向はZ軸となる。このように、第1エレメント21、第2エレメント22、及び第3エレメント23は、3次元に配置されるようにしてもよい。
【0086】
このようにすることによって、アンテナをバックアップ用として用いる場合、携帯機がどの方向を向いていても、バックアップする(誘導起電力を生じさせる)ことができる。なお、この第3エレメント23は、迂回配線200中に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
10,10a〜10f 制御部、11 携帯機検知回路、11f 携帯機検知回路(バックアップ回路含む)、12 CPU、13 出力電流可変回路、14 出力電圧可変回路、15 バックアップ回路、20,20f アンテナ、21 第1エレメント、22 第2エレメント、23 第3エレメント、200 迂回配線、30 トリガ入力回路、41 乗員室(車内)、42 トランク室(車内)、a1 第1携帯機検知エリア、a2 第2携帯機検知エリア、a3 第3携帯機検知エリア、a11 第1携帯機検知エリア、a12 第5携帯機検知エリア、a13 第3携帯機検知エリア、a14 第4携帯機検知エリア、a15 第2携帯機検知エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、携帯機との間で相互通信を行なって前記携帯機の位置を検知する携帯機検知ユニットであって、
車両の進行方向を長手方向とする第1エレメントと、車両の進行方向及び鉛直方向に垂直な方向を長手方向とし、前記第1エレメントに電気的に直列接続された第2エレメントと、を含み、前記携帯機に対して応答信号の返信を要求する要求信号を送信するための電波を放射するアンテナと、
前記第1エレメントと前記第2エレメントの接続点に一端が接続された迂回配線と、
前記迂回配線及び前記第1エレメントを通電経路として、前記第1エレメントに電力を供給する第1電力供給状態、前記迂回配線及び前記第2エレメントを通電経路として、前記第2エレメントに電力を供給する第2電力供給状態、前記第1エレメント及び前記第2エレメントに電力を供給する第3電力供給状態の、3つの電力供給状態を切り換えると共に、当該電力供給状態を切り換えた際の前記携帯機からの応答信号に基づいて前記携帯機の位置を検知する携帯機検知手段と、
を備えることを特徴とする携帯機検知システム。
【請求項2】
前記携帯機検知手段は、前記第1電力供給状態、前記第2電力供給状態、前記第3電力供給状態に加えて、前記第1電力供給状態の場合に比べて、前記第1エレメントへの供給電力を大きくする第4電力供給状態に切り換えることを特徴とする請求項1に記載の携帯機検知システム。
【請求項3】
前記携帯機検知手段は、前記第1電力供給状態、前記第2電力供給状態、前記第3電力供給状態に加えて、前記第2電力供給状態の場合に比べて、前記第2エレメントへの供給電力を小さくする第5電力供給状態に切り換えることを特徴とする請求項1又は2に記載の携帯機検知システム。
【請求項4】
前記携帯機に誘導起電力を生じさせるための電磁界を前記第1エレメント及び前記第2エレメントから発生させるために、前記要求信号を送信するための電波を放射させる場合に比べて供給電力を大きくして当該第1エレメント及び当該第2エレメントに対して通電するバックアップ回路を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の携帯機検知システム。
【請求項5】
前記アンテナは、前記第1エレメント及び前記第2エレメントに加えて、前記第3エレメントを備えるものであり、当該第1エレメント、当該第2エレメント、及び当該第3エレメントは、3次元に配置されることを特徴とする請求項4に記載の携帯機検知システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−191140(P2011−191140A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56517(P2010−56517)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】