説明

放射線撮像装置、その制御方法及び放射線撮像システム

【課題】 動画撮影に必要な感度を得る目的で画素出力を加算して読み出す画素加算を行った際に、放射線撮像装置のダイナミックレンジの低下や感度特性の悪化を回避できるようにする。
【解決手段】 被写体121からのX線を電気信号に変換する変換素子と、前記電気信号を外部に転送する転送部とを具備する画素が2次元状に配置された2次元センサと103と、各転送部から転送される電気信号を増幅して読み出す読み出し回路104と、読み出し回路104で電気信号を読み出す際に、当該電気信号を転送する転送部に対して電圧を供給し、当該転送部を駆動させる垂直駆動回路105と、読み出し回路104において電気信号を同時に読み出す画素数に応じて、垂直駆動回路105から前記転送部に供給する電圧を可変させる制御部108とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体からの放射線を電気信号に変換する変換素子と、前記電気信号を外部に転送する転送部とを具備する画素が2次元状に配置された2次元センサを有する放射線撮像装置、その制御方法及び放射線撮像システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体技術の進歩により、光を電気信号に変換する光電変換装置を備えたデジタルX線撮像装置が実用化され普及している。
【0003】
このデジタルX線撮像装置は、従来のフィルム式より優れた感度や画質を有することや、デジタルデータにより画像が保存できるため、撮影後に各種の画像処理を行うことにより診断しやすい画像に加工できる、あるいは画像管理が容易である等の利点がある。また、これらの利点を生かして、より低線量で撮影することや、ネットワークを利用して画像データを転送して遠隔診断などの新たな医療サービスを提供すること、あるいはより患者にやさしい診断を行うことが可能となる。
【0004】
よって、これらの利点を持つデジタルX線撮像装置を用いれば、診断精度の向上や、診断の効率化、新たな医療サービスへの展開など、従来のX線撮像装置に比べて質の高い医療サービスを提供することができる。
【0005】
このデジタルX線撮像装置の従来の技術としては、下記の特許文献1〜3に挙げたものがある。これらのデジタルX線撮像装置では、放射線を可視光に変換する蛍光体と、蛍光体で変換された可視光を電気信号に変換するMIS型光電変換素子を用いて、被写体を透過した放射線を電気信号へと変換している。
【0006】
また、これらのデジタルX線撮像装置では、静止画撮影のほかに、読み出し動作を高速にすることや感度を上げることにより、従来ではイメージ・インテシファイア(I・I)や、CCD、あるいは特殊な固体撮像素子を用いた撮像装置でしか撮影ができなかった透視撮影やCT撮影といった動画撮影も可能である。
【0007】
デジタルX線撮像装置によって透視撮影等の動画撮影が行えるようになると、従来、用途別に用意して設置していたX線撮像装置が1つの装置で済むことになり、作業性の向上や省スペース化が実現できる。さらに、デジタルX線撮像装置は、I・Iに比べて画像の歪みが無く、また視野の面で優れているために、動画像の画質や視野の向上を図れる利点がある。
【0008】
一方、I・IやCCDを用いたX線撮像装置では、静止画像として診断に耐えうる画像を得ることができなく、動画撮影中に静止画を撮影したい場合には、動画撮影中にフィルムによる撮影装置に切り替えて撮影を行うことになる。このような装置構成では、その装置構成が大掛かりになって高価であるうえに、I・IやCCDからフィルムに切り替えるまでのディレイがあるために使い勝手が良くない。
【0009】
前述したデジタルX線撮像装置で動画撮影が可能であれば、1台の装置で静止画と動画が撮影でき、動画撮影中に静止画撮影を行う場合においても当該静止画撮影を効率よく行うことができる。さらには、1台の装置で透視や断層撮影など様々な撮影をこなすことができ、医療現場の効率化が可能になる。ゆえに、静止画と動画の両方を高品質に効率よく撮影可能なデジタルX線撮像装置の実用化が望まれている。
【0010】
しかしながら、単純撮影から透視やCT撮影までを対象としたデジタルX線撮像装置を実現するためには、単純撮影に要求される解像度とCT撮影や透視撮影に要求される感度との二律背反する特性を両立しなくてはならない。
【0011】
デジタルX線撮像装置において、解像度は、蛍光体の組成や厚さ、蛍光体と光電変換素子との間の層構成、及び画素ピッチ等に依存する。特に、画素ピッチは、単純撮影(静止画)に必要とされる解像度を実現するため、100〜200μm程度にしなければならい。
【0012】
一方、透視撮影やCT撮影等では、デジタルX線撮像装置のシグナル・ノイズ比(以下S/Nと略記する)と動画のフレームレートが高いことが望まれる。その理由としては、透視撮影やCT撮影では、患者に長時間、X線を照射しなくてはならないことから、単位時間あたりのX線照射量が単純撮影の1/10〜1/100程度に制限されるからである。デジタルX線撮像装置に到達するX線量が単純撮影の1/10〜1/100程度となるため、透視撮影やCT撮影において診断に必要なS/Nを実現するためには、光電変換素子の感度が高いことが望まれている。一方で解像度に関しては、単純撮影ほど精細である必要はない。特にCT撮影では、画像をコンピュータにより演算して人体の断層画像へと変換するため、100μm〜200μm単位の解像度は必要とされない。また、透視撮影では、撮影する部位、撮影目的に応じて必要な解像度は異なり、静止画撮影のためのプレビュー的な撮影では、あまり解像度は要求されない。
【0013】
一般に、光電変換素子を用いた光センサのS/Nを向上させるには、画素を大きくし(画素ピッチを大きくし)1画素あたりの信号値である感度を大きくすることが簡便な方法である。しかしながら、画素を大きくすることは解像度の低下に繋がり、単純撮影時の解像度を満たせなくなる。
【0014】
そこで、単純撮影に最適化された画素ピッチの画素を有するデジタルX線撮像装置において、CT撮影や透視撮影の際は、複数画素をまとめて読み出して、画素出力を加算する画素加算を行うことにより、見かけ上、大きな画素として扱うことができる。この方法を用いることで、単純撮影に要求される解像度とCT撮影や透視撮影に要求されるS/Nとの二律背反する問題を解決することが可能である。このとき、画素加算によって向上するS/Nは、画素加算をしないときに比べ約√n倍(nは画素加算数)である。
【0015】
このような画素加算によって、透視撮影やCT撮影時に大きなS/Nを得ることができ、単純撮影時には1画素単位で読み出すことで必要な解像度が得られる。また、複数画素をまとめて読み出すので、センサにおけるすべての画素を読み出すまでの時間が短くて済み、フレームレートを向上させることができる。以上から、画素加算を行うことにより、単純撮影から、透視、CT撮影まで可能なX線撮像装置が実現可能である。
【0016】
【特許文献1】特開2003−78124号公報
【特許文献2】特開平9−293850号公報
【特許文献3】特開平9−288184号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
図13は、一般的なX線撮像装置を構成するFPD(フラット・パネル・ディテクター)の回路図である。
このFPDは、1つの光電変換素子11と、転送部として1つのTFT12とを具備する画素10が2次元状に配置された2次元センサ103と、TFT12のON/OFFを制御する垂直駆動回路205と、TFT12から出力される電気信号を増幅する信号増幅回路201と、信号増幅回路201からの信号をA/Dコンバータ106へ転送するまでの期間、保持するサンプルホールド回路203と、サンプルホールド回路203に保持された電気信号を時系列的に読み出すマルチプレクサ回路204と、マルチプレクサ回路204から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ106と、光電変換素子11に光電変換に必要な電圧を供給するセンサ電源206と、TFT12をONするための電圧Vcomを供給するTFTオン電源207と、TFT12をOFFするための電圧Vssを供給するTFTオフ電源208とを有して構成されている。
【0018】
図13において1画素は、信号線31を上下方向(列方向)の画素と共有し、また、ゲート線32を左右方向(行方向)の画素と共有している。さらに、センサバイアス線33は、全画素に対して共通化されている。
【0019】
垂直駆動回路205は、シフトレジスタによって構成されており、シフトレジスタへ出力パルスを与えるシフトクロックの制御信号DIO、シフトレジスタの駆動クロックの制御信号CPV、及び出力切り替えの制御信号OEによって制御される。そして、図13のように構成された撮像装置において、画素10に蓄積された電気信号を読み出すには、図14に示す駆動タイミングで撮像装置を駆動すればよい。
【0020】
図14は、一般的なX線撮像装置の駆動を示したタイミングチャートである。図14(a)には、2次元センサの画素出力を1つの信号線31あたり1画素づつ読み出す静止画撮影モードの際のタイミングチャートを示す。また、図14(b)には、2次元センサの画素出力を1つの信号線31あたり2画素加算して読み出す動画撮影モードの際のタイミングチャートを示す。
【0021】
光電変化素子11に蓄積された、人体の情報を担った電気信号を読み出す場合、まず、信号増幅回路201やこの信号増幅回路201に接続されている信号線31の電位を初期化するため、RCをHiにする。これにより、信号増幅回路201内のアンプ20に付随するキャパシタCfがリセットされ、信号増幅回路201の出力や、信号線31の電位がリセットされる。このリセット動作によって、前回の読み出し時に発生したオフセット成分やノイズといった人体の情報とは無関係な電気信号を除去して画質の向上が図れる。
【0022】
アンプ20のリセット動作期間中に、制御信号CPV、DIOとして所望のパルスを与え、垂直駆動回路205のシフトレジスタを動作させる。制御信号CPV、DIOとして必要なパルスを与え、リセット動作を十分行った後、制御信号OEをHiにしてTFT12をONさせる。例えば、図14(a)では、制御信号DIOがHiの期間に、制御信号CPVを1クロック入力しているため、横1ラインすべてのTFT12がONする。このとき、1つの信号線31につき1画素分の電気信号が信号増幅回路201のアンプ20に付随するキャパシタCfに蓄積される。
【0023】
そして、光電変換素子11内の電気信号が十分転送されるまでTFT12をONした後、TFT12をOFFし、制御信号SHをHiにして、アンプ20の出力をサンプルホールド回路203に保持する。サンプルホールド回路203に保持された電気信号は、次ラインの読み出しを行っている間にマルチプレクサ回路204によって時系列的にA/Dコンバータ106に送られる。そして、2次元センサ103内の全画素の読み出しを行うためには、図14(a)に示した区間Bの動作をくり返し行う。
【0024】
一方、画素加算して読み出す場合は、TFT12を複数ライン同時にONする駆動を行う。TFT12を複数ライン同時にONさせるためには、図14(b)に示すように区間Cの駆動タイミングにおいて制御信号DIOがHiのときに制御信号CPVのクロックを画素加算数分(図14(b)に示す例では2画素分)入力し、かつ、区間Dの駆動タイミングにおいて制御信号DIOがHiのときに制御信号CPVのクロックを画素加算数分(図14(b)に示す例では2画素分)入力する。この駆動タイミングによって、図14(b)に示す例では、隣接する上下方向の2ラインのTFT12が一斉にONし、1つの信号線31あたり2画素分の電気信号(電荷)が各アンプ20に転送される。各アンプ20では、2画素分の電荷が積算され電圧に変換されて出力される。
【0025】
以上のように、画素加算による読み出し駆動は、制御信号の変更のみで行うことができる。しかしながら、デジタルX線撮像装置で画素加算を行った場合、TFT12のON/OFFにおけるゲート線32の電圧変動がゲート線32と信号線31との間の容量によって大きくなってしまうため、以下に述べる問題が発生する。
【0026】
図15は、TFT12のON/OFFにおける2次元センサ内部の電圧変動を説明するための図である。図15(a)には、2次元センサにおける1画素分の回路図を示し、図15(b)には、図15(a)に示した2次元センサの各地点におけるタイミングチャートを示す。
【0027】
図15(a)に示すように、信号線31とゲート線32との間に形成される容量は、大きく分けて3つ存在する。その1つは、TFT12のソース/ゲート間に形成される容量Cgsであり、2つ目は、TFT12のドレイン/ゲート間に形成される容量Cgdであり、3つ目は、信号線31とゲート線32とが交差する部分に形成される容量Ccrossである。
【0028】
TFT12のON/OFFの際、ゲート線32に供給される電圧が変化し、このとき、上述した3つの容量の影響により信号線31の電圧変動が引き起こされる。図15(b)に示す電圧波形は、図15(a)に示すゲート線32、及び、地点A、B、Cの各地点における電圧変動を示したものである。
【0029】
図15(b)に示すように、ゲート線32にTFT12をONするための電圧Vcomが印加されると、地点Aの電圧は正の方向へ振られる。そして、この振られ量VAは、以下の数式1で表すことができる。
【0030】
【数1】

【0031】
地点Aでは、TFT12がONすると一度電圧VA分の電圧変動が起こるが、TFT12がONして地点Aとアンプ20とがTFT12を介して接続されるため、その後、アンプ20の基準電源21の基準電圧(図15(b)の一点鎖線で示した電圧)へと変化する。
【0032】
同様に、信号線31上の地点Bにおいても、以下の数式2で示すVBだけ電圧が上昇した後、アンプ20の基準電源21の基準電圧になる。
【0033】
【数2】

【0034】
このとき、アンプ20では、地点Aと地点Bの電圧変動によって発生した電流を積分し増幅して出力し、地点Cではアンプ20の基準電源21の基準電圧よりも低い電圧となる。よって、アンプ20の出力電圧は、同時に電圧Vcomとなる信号線31の数が多いほど、すなわち、画素加算数が多くなるほど小さくなる。このため、TFT12のONによって変動した電圧分、アンプ20の出力レンジが小さくなる。
【0035】
例えば、光電変換素子11内に、人体を透過したX線に起因する電気信号(電荷)が蓄積されていた場合、アンプ20の出力は、図15(b)の地点Cに示した状態から、光電変換素子11に蓄積された電荷に比例した電圧を出力する。このため、TFT12のONによる電圧変動が大きい場合、アンプ20が光電変換素子11に蓄積された電荷に比例した電圧を出力できなくなるという問題が発生する。
【0036】
次に、TFT12をOFFする場合、地点Aではゲート線32が電圧Vcom→電圧Vssへと変動するためにマイナス方向へ振られる。このとき、TFT12がOFFし、地点Aとアンプ20とが不導通となるため、地点Aでは、振られた状態を維持する。地点Bでは、地点Aと同様にマイナス方向に振られるが、すぐにアンプ20の基準電源21の基準電圧へと回復する。地点Cでは、上述した地点A及びBの電圧変動を受けてプラス方向へと振られるが、完全にもとの電圧、すなわち、アンプ20の基準電圧には戻らない。これは、TFT12がOFFするため、地点Aにおける電圧変動が信号線31に伝わらなくなるためである。
【0037】
この状態でアンプ20の出力をサンプルホールド回路203でサンプルホールドすると、アンプ20の出力が戻りきらない分がオフセットとして出力される。このオフセット成分も、画素加算数が増えると増加する。画像信号として意味をなさないオフセット成分が増加すると、撮像装置のダイナミックレンジの低下を招くことになる。
【0038】
以上説明したように、動画撮影に必要な感度を得る目的で画素出力を加算して読み出す画素加算を行うと、電気的なオフセット成分の増大や画素出力を読み出すアンプの出力電圧の減少を招き、放射線撮像装置のダイナミックレンジの低下や感度特性の悪化といった問題が発生する。
【0039】
本発明は前述の問題点にかんがみてなされたものであり、動画撮影に必要な感度を得る目的で画素出力を加算して読み出す画素加算を行った際に、放射線撮像装置のダイナミックレンジの低下や感度特性の悪化を回避できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明の放射線撮像装置は、被写体を透過した放射線を電気信号に変換する変換素子と、前記電気信号を外部に転送する転送部とを具備する画素が2次元状に配置された2次元センサと、各前記転送部から転送される電気信号を増幅して読み出す読み出し手段と、前記読み出し手段で前記電気信号を読み出す際に前記転送部に対して駆動信号を供給し当該転送部を駆動させる駆動手段と、前記読み出し手段において前記電気信号を同時に読み出す画素数に応じて前記駆動信号の電圧値を変化させる制御手段とを有する。
【0041】
本発明の放射線撮像システムは、前記放射線撮像装置と、前記被写体に放射線を出射する放射線発生装置とを有し、前記変換素子は、前記放射線発生装置から出射され、前記被写体を透過した放射線を電気信号に変換する。
【0042】
本発明の放射線撮像装置の制御方法は、被写体を透過した放射線を電気信号に変換する変換素子と、前記電気信号を外部に転送する転送部とを具備する画素が2次元状に配置された2次元センサと、各前記転送部から転送される電気信号を増幅して読み出す読み出し手段と、前記読み出し手段で前記電気信号を読み出す際に前記転送部に対して駆動信号を供給し当該転送部を駆動させる駆動手段とを有する放射線撮像装置における制御方法であって、前記読み出し手段において前記電気信号を同時に読み出す画素数に応じて、前記駆動信号の電圧値を変化させる。
【0043】
前述した問題点を解決するためには、信号線とゲート線との間に形成される容量を減らすことが必要であるが、例えば、図15(a)に示した容量Cgd、Cgsを減らすことは、TFTの製造プロセスそのものを大きく変更しなくてはならないために困難である。
【0044】
そこで、本発明では、電気信号を同時に読み出す画素数に応じて、駆動手段から転送部(TFT)に供給する電圧を可変させるようにした。これにより、例えば、画素を加算して読み出す場合には、1画素ずつ読み出す場合と比較して、TFTをONするための電圧を小さくすることにより、信号線の電圧変動を抑えることができる。この方法を用いると、TFTの転送能力に鑑みて電圧を設定するだけでよいため、制御自体も簡易である。
【0045】
一般に、TFTの転送能力は、TFTをONする電圧が高いほどよいが、画素加算を行う動画撮影おいて、光電変換素子内の電荷を完全に転送する必要は必ずしもない。また、TFTは定電流領域で使用されるため、ON電圧が下がったとしてもTFTの転送能力が大きく低下することは無い。さらに、画素加算では、画素加算を行わない場合と比較してS/Nが約√n倍(nは画素加算数)であるため、TFTのON電圧を下げることによりTFTの転送能力が下がったとしても、S/Nが大きく変化することは無い。
【0046】
したがって、画素加算を行う動画撮影の場合には、TFTのON電圧(電圧Vcom)を小さくすることにより、前述した問題点を解決することができる。さらに、静止画撮影と動画撮影との両方で最良の画像を得るためには、静止画で必要とされる転送能力を満たすためのTFTのON電圧と、動画撮影の画素加算時に前述した不具合が発生しないように設定されたTFTのON電圧との少なくとも2つの電圧を切り替えることにより達成される。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、読み出し手段において電気信号を同時に読み出す画素数に応じて、駆動手段から転送部に供給する駆動信号の電圧値を変化させるようにしたので、電気的なオフセット成分の増大や画素出力を読み出すアンプの出力電圧の減少を防止することができる。これにより、放射線撮像装置のダイナミックレンジの低下や、感度特性の悪化を回避することが可能となる。また、複数パターンの画素加算にも対応することができるので、1台の放射線撮像装置において様々な撮影を行うことが可能となり、医療現場の効率化を図ることができる。
【0048】
また、本発明の他の特徴によれば、被写体を載置する載置機構を更に有し、当該載置機構を回転させながら放射線発生装置から放射線を出射して、被写体の任意の断層画像を撮影するCT(Computed-Tomography)撮影を行うようにしたので、複雑な可動装置を設ける必要が無く、装置構成を簡易にすることができ、システム全体を小型化することが可能となる。これにより、中小規模の病院のような設置スペース的に余裕のない場所においても設置可能となり、飛躍的に医療サービスの向上が図られる。
【0049】
また、本発明のその他の特徴によれば、放射線撮像装置と放射線発生装置とを正対させた状態で一体的に可動させる可動機構を更に有し、当該可動機構を被写体を中心に回転させながら放射線発生装置から放射線を出射して、被写体の任意の断層画像を撮影するCT(Computed-Tomography)撮影を行うようにしたので、被写体(患者)の意識が無い場合や、被写体(患者)が直立できない場合、あるいは造影剤を使用する場合などに有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の好適な実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、本発明の実施形態においては放射線としてX線を用いた実施例を示すが、本発明の放射線とは、X線に限られるわけではなく、α線、β線、γ線等の電磁波も含んでいる。
【0051】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るX線撮像システムの概略構成図である。
本実施形態のX線撮像システムは、被写体121にX線120を出射するX線発生装置119と、被写体121を透過したX線120を撮像するX線撮像装置100と、X線撮像装置100で処理された画像データを印刷出力するためのプリンタ116と、当該画像データを記録するための外部記録装置117と、当該画像データを表示するためのモニター118と、当該画像データを外部のシステムに送信するためのネットワーク126とを有して構成されている。
【0052】
X線撮像装置100は、被写体121を透過したX線120を電気信号として読み出すフラットパネルディテクター(FPD)112と、X線像撮影装置100を統括的に制御するコントロールPC111と、被写体121のID登録の設定や撮影部位の設定、X線撮像装置100の撮影モードに関する諸設定(後述の読み出し回路104において電気信号を同時に読み出す画素数の設定も含む)、X線発生装置119に関する諸設定、並びに撮影した画像の画像処理方法の設定などを操作入力するための操作入力部113と、FPD112に電圧を供給する電源114と、操作入力部113によるX線発生装置119の設定に基づいて、X線発生装置119の制御を行うX線制御部115と、X線像撮影装置100の動作状態等を表示する動作表示部125とを有して構成されている。
【0053】
FPD112は、被写体121を透過したX線120を可視光102に変換する蛍光体などの波長変換体101と、可視光102を受光して電気信号に変換する光電変換素子及び当該電気信号を外部に転送する転送部であるTFTを具備する画素が2次元状に配置された2次元センサ103と、2次元センサ103のTFTから転送される電気信号を増幅して読み出す読み出し回路104と、読み出し回路104で電気信号を読み出す際に、当該電気信号を転送するTFTに対して駆動信号を供給し、当該TFTを駆動させる駆動回路105と、読み出し回路104で読み出されたアナログの電気信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ106と、2次元センサ103、読み出し回路104及び垂直駆動回路105で必要な電圧を生成し、生成した電圧を低ノイズ電源127を介して供給するレギュレータ107と、読み出し回路104や垂直駆動回路105に対して2次元センサ103を駆動するための制御信号を送信する制御部108とを有して構成されている。
【0054】
また、FPD112は、中継基板123及び制御基板124を具備している。中継基板123は、読み出し回路104内に構成されている不図示の信号増幅回路で増幅された電気信号を制御基板124のA/Dコンバータ106に送信する。制御基板124には、上述したA/Dコンバータ106、レギュレータ107及び制御部108が構成されている。
【0055】
制御部108は、読み出し回路104において電気信号を同時に読み出す画素数に応じて、垂直駆動回路105から2次元センサ103のTFTに供給する駆動信号の電圧値を変化させるようにレギュレータ107を制御する。ここで、読み出し回路104において電気信号を同時に読み出す画素数は、操作入力部113で設定される撮影モードに関する諸設定により決定される。
【0056】
コントロールPC111は、A/Dコンバータ106からの出力されたデジタル信号に対して所定の画像処理を行う画像処理部109と、画像処理部109により処理されたデジタル信号を画像データとして記録するための記録部122と、当該画像データの保存処理や当該画像データの出力処理、X線発生装置119の駆動処理、並びにFPD112の駆動処理等のX線像撮影装置100全体の処理を統括的に制御する統括制御部110とを有して構成されている。
【0057】
2次元センサ103の画素を構成する光電変換素子及びTFTは、アモルファスシリコンプロセスによって形成されている。ここで、アモルファスシリコンプロセスを用いるのは、光電変換素子たTFTなどの能動素子を大面積かつ均一に成膜できるからである。
【0058】
図2は、図1に示したFPDの回路図である。
このFPD112は、1つの光電変換素子11と、転送部として1つのTFT12とを具備する画素10が2次元状に配置された2次元センサ103と、TFT12のON/OFFを制御する垂直駆動回路105と、TFT12から出力される電気信号を増幅する信号増幅回路201と、信号増幅回路201からの信号をA/Dコンバータ106へ転送するまでの期間、保持するサンプルホールド回路203と、サンプルホールド回路203に保持された電気信号を時系列的に読み出すマルチプレクサ回路204と、マルチプレクサ回路204から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ106と、光電変換素子11に光電変換に必要な電圧を供給するセンサ電源206と、TFT12をONするための電圧Vcomを供給するTFTオン電源27と、TFT12をOFFするための電圧Vssを供給するTFTオフ電源208とを有して構成されている。
【0059】
ここで、図2の信号増幅回路201、サンプルホールド回路203及びマルチプレクサ回路204は、図1の読み出し回路104に相当するものである。また、図2のセンサ電源206、TFTオン電源27及びTFTオフ電源208は、図1のレギュレータ107及び低ノイズ電源127から構成されるものである。また、信号増幅回路201に対する制御信号RC、サンプルホールド回路203に対する制御信号SH、マルチプレクサ回路204に対する制御信号MUX及びCLK、垂直駆動回路105に対する制御信号DIO、CPV及びOE、並びに、TFTオン電源27に対する制御信号VGC1及びVGC2は、図1の制御部108により出力されるものである。
【0060】
図2において1画素は、信号線31を上下方向(列方向)の画素と共有し、また、ゲート線32を左右方向(行方向)の画素と共有している。さらに、センサバイアス線33は、全画素に対して共通化されている。
【0061】
TFTオン電源27は、制御部108からの制御信号VGC1及びVGC2により、読み出し回路104において電気信号を同時に読み出す画素数に応じた電圧を垂直駆動回路105を介して2次元センサ103のTFTに供給する。
【0062】
垂直駆動回路105は、シフトレジスタによって構成されており、シフトレジスタへ出力パルスを与えるシフトクロックの制御信号DIO、シフトレジスタの駆動クロックの制御信号CPV、出力切り替えの制御信号OEによって制御される。
【0063】
図3は、本発明の第1の実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサにおける1画素分の回路図である。
【0064】
制御部108は、操作入力部113により設定された、読み出し回路104において電気信号を同時に読み出す画素数に応じて、TFTオン電源27に対して垂直駆動回路105に供給する電圧を可変させる制御信号VGC1及びVGC2を送信する。ここで、制御信号VGC1及びVGC2については、図4の説明において後述する。
【0065】
本実施形態では、TFTオン電源27からは、制御部108からの制御信号VGC1及びVGC2に基づいて、異なる3つの電圧Vcom(a)、Vcom(b)及びVcom(c)が供給可能に構成されている。ただし、電圧の大きさは、Vcom(a)>Vcom(b)>Vcom(c)である。
【0066】
具体的に、本実施形態では、読み出し回路104において電気信号を1画素づつ読み出す静止画撮影モードの場合には、TFTオン電源27から垂直駆動回路105に電圧Vcom(a)が供給される。また、読み出し回路104において電気信号を同時に2〜4画素加算して読み出す動画撮影モードの場合には、TFTオン電源27から垂直駆動回路105に電圧Vcom(b)が供給される。また、読み出し回路104において電気信号を同時に5画素以上加算して読み出す動画撮影モードの場合には、TFTオン電源27から垂直駆動回路105に電圧Vcom(c)が供給される。すなわち、制御部108は、読み出し回路104において電気信号を同時に読み出す画素数が増加するのにともなって、垂直駆動回路105からTFT12に供給する電圧が小さくなるように制御する。
【0067】
上述したように、制御部108において、読み出し回路104で加算して読み出す画素数に応じて、垂直駆動回路105からTFT12に供給される電圧を可変させることにより、TFT12のON/OFFによって発生する信号線31の電圧変動を抑制して画素出力を読み出すアンプの出力電圧の減少を回避するとともに、画素加算時に発生するオフセット成分の増大を回避する。
【0068】
図4は、本発明の第1の実施形態に係るX線撮像装置の駆動を示したタイミングチャートである。図4(a)には、2次元センサの画素出力を1つの信号線31あたり1画素づつ読み出す静止画撮影モードの際のタイミングチャートを示す。図4(b)には、2次元センサの画素出力を1つの信号線31あたり2画素加算して読み出す動画撮影モードの際のタイミングチャートを示す。
【0069】
光電変換素子11に蓄積された、人体の情報を担った電気信号を読み出す場合、まず、信号増幅回路201やこの信号増幅回路201に接続されている信号線31の電位を初期化するため、RCをHiにする。これにより、信号増幅回路201内のアンプ20に付随するキャパシタCfがリセットされ、信号増幅回路201の出力や、信号線31の電位がリセットされる。このリセット動作によって、前回の読み出し時に発生したオフセット成分やノイズといった人体の情報とは無関係な電気信号を除去して画質の向上が図れる。
【0070】
アンプ20のリセット動作期間中に、制御信号CPV、DIOとして所望のパルスを与え、垂直駆動回路105のシフトレジスタを動作させる。制御信号CPV、DIOとして必要なパルスを与え、リセット動作を十分行った後、制御信号OEをHiにしてTFT12をONさせる。この際、図4(a)の静止画撮影モードでは、制御部108からTFTオン電源27に対する制御信号VGC1及びVGC2がともにHiであるため、TFTオン電源27から垂直駆動回路105を介してTFT12をONさせるための電圧として、電圧Vcom(a)が各ゲート線32に供給される。この電圧Vcom(a)は、静止画で必要とされる画質が得られるように、光電変換素子11に蓄積された電気信号(電荷)を完全に転送できるTFT特性を実現するため、TFT12をONさせるための他の電圧(Vcom(b)及びVcom(c))よりも大きく設定されている。また、図4(a)では、制御信号DIOがHiの期間に、制御信号CPVを1クロック入力しているため、横1ラインすべてのTFT12がONする。このとき、1つの信号線31につき1画素分の電気信号が信号増幅回路201のアンプ20に付随するキャパシタCfに蓄積される。
【0071】
そして、光電変換素子11内の電気信号が十分転送されるまでTFT12をONした後、TFT12をOFFし、制御信号SHをHiにして、アンプ20の出力をサンプルホールド回路203に保持する。サンプルホールド回路203に保持された電気信号は、次ラインの読み出しを行っている間にマルチプレクサ回路204によって時系列的にA/Dコンバータ106に送られる。そして、2次元センサ103内の全画素の読み出しを行うためには、図4(a)に示した区間Bの動作をくり返し行う。
【0072】
一方、図4(b)に示す2つの画素出力を加算して読み出す場合は、TFT12を2ライン同時にONする駆動を行う。TFT12を2ライン同時にONさせるためには、図4(b)に示すように区間Cの駆動タイミングにおいて制御信号DIOがHiのときに制御信号CPVのクロックを2画素分入力し、かつ、区間Dの駆動タイミングにおいて制御信号DIOがHiのときに制御信号CPVのクロックを2画素分入力する。この駆動タイミングによって、図4(b)に示す例では、隣接する上下方向の2ラインのTFT12が一斉にONし、1つの信号線31あたり2画素分の電気信号(電荷)が各アンプ20に転送される。各アンプ20では、2画素分の電荷が積算され電圧に変換されて出力される。
【0073】
また、本実施形態では、TFT12を2ライン同時にONさせる際、制御部108からTFTオン電源27に対する制御信号VGC1がHi、VGC2がLoであるため、TFTオン電源27から垂直駆動回路105を介してTFT12を2ライン同時にONさせるための電圧として、電圧Vcom(a)よりも小さい電圧Vcom(b)がゲート線32に2ラインずつ同時に供給される。
【0074】
さらに、多くの画素出力を加算して読み出す場合(本実施形態では5画素以上加算して読み出す場合)は、制御信号DIOがHiのときに制御信号CPVのクロックを加算して読み出す画素数分入力して、TFT12を当該画素数分同時にONする駆動を行うとともに、制御部108からTFTオン電源27に対する制御信号VGC1及びVGC2をともにLoとする。そして、TFTオン電源27から垂直駆動回路105を介して各TFT12を同時にONさせるための電圧として、電圧Vcom(b)よりも小さい電圧Vcom(c)を各ゲート線32に供給するようにする。
【0075】
ここで、本実施形態では、TFT12をONさせるためのTFTオン電源27の供給電圧として、Vcom(a)〜Vcom(c)の3種類を例に挙げて説明したが、本発明においてはこれに限定されるわけではない。例えば、X線撮像装置における画素加算数分だけTFTオン電源27の供給電圧を用意するようにした形態であってもよい。また、TFTオン電源27から供給される電圧値は、X線撮像装置の用途と、その撮影用途にあった画素加算数を考慮して設定される。
【0076】
また、本実施形態のX線撮像装置における駆動タイミングは、TFT12や光電変換素子11の特性、2次元センサ103に接続される回路の制約、あるいは動画撮影に求められるフレームレート等を鑑みて最適化されたものが用いられる。
【0077】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、2次元センサ103の光電変換素子として、MIS型光電変換素子を適用した形態である。
【0078】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサにおける1画素分の回路図である。また、図6は、本発明の第2の実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサにおける1画素の概略断面図である。
【0079】
図5に示すように、本実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサにおける画素は、MIS型光電変換素子13と、転送部としてのTFT14とを具備して構成されている。MIS型光電変換素子13には、センサ電源54からセンサバイアス線53を介して電圧が供給される。また、TFT14には、TFTオン電源27から垂直駆動回路105及びゲート線52を介して、読み出し回路104において電気信号を同時に読み出す画素数に応じた電圧が供給される。また、TFT14から転送される電気信号は、信号線51を介してアンプ20に入力する。
【0080】
本実施形態では、2次元センサ103の光電変換素子として、MIS型光電変換素子を用いているため、後述するリフレッシュ動作が必要となる。このため、センサ電源54及びアンプ20の基準電源55は、2種類の電圧が切り替え可能に構成されている。この電圧の切り替えは、制御部108から出力される制御信号VSC及びVRCにより行われる。
【0081】
センサ電源54は、MIS型光電変換素子13の光電変換モードの際には電圧fを供給し、MIS型光電変換素子13のリフレッシュモードの際には電圧g(電圧g<電圧f)を供給する。また、基準電源55は、MIS型光電変換素子13の光電変換モードの際には電圧eを供給し、MIS型光電変換素子13のリフレッシュモードの際には電圧d(電圧d>電圧e)を供給する。
【0082】
また、TFTオン電源27からは、第1の実施形態と同様に、異なる3つの電圧Vcom(a)、Vcom(b)及びVcom(c)が供給可能に構成されている。ただし、電圧の大きさは、Vcom(a)>Vcom(b)>Vcom(c)である。電圧Vcom(a)は、読み出し回路104において電気信号を1画素づつ読み出す静止画撮影モードの場合に供給され、電圧Vcom(b)及び電圧Vcom(c)は、読み出し回路104において電気信号を同時に複数画素加算して読み出す動画撮影モードの場合に供給される。
【0083】
次に、図6を参照して、本実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサにおける1画素の断面構成について説明する。
【0084】
TFT14は、絶縁性基板であるガラス基板601上に形成され、アルミニウム、クロム又はこれらとの合金からなるゲート電極層602と、ゲート電極層602上に形成され、正負両方の電荷の流入を遮断する窒化アモルファスシリコンからなる絶縁層603と、絶縁層603上に形成され、水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)からなるチャネル層604と、チャネル層604の上方にそれぞれ所定距離をおいて形成され、アルミニウム、クロム又はこれらとの合金からなるソース電極層606及びドレイン電極層607と、チャネル層604とソース電極層606との間、及びチャネル層604とドレイン電極層607との間に形成され、チャネル層604とソース電極層606又はドレイン電極層607とをオーミックコンタクトする不純物半導体層であるN+型アモルファスシリコン層605とを有して構成されている。
【0085】
MIS型光電変換素子13は、絶縁性基板であるガラス基板601上に形成され、アルミニウム、クロム又はこれらとの合金からなる下部電極層608と、下部電極層608上に形成され、正負両方の電荷の流入を遮断する窒化アモルファスシリコンからなる絶縁層609と、絶縁層609上に形成され、入射したX線の量に応じた電荷を生成する水素化アモルファスシリコンの半導体層である光電変換層610と、光電変換層610上に形成され、後述のセンサバイアス電極層612から光電変換層610への正の電荷(正孔)の流入を遮断するブロッキング層となるN+型アモルファスシリコン層611と、N+型アモルファスシリコン層611上の一部に形成され、アルミニウム、クロム又はこれらとの合金からなるセンサバイアス線53となるセンサバイアス電極層612と、N+型アモルファスシリコン層611の上面及びセンサバイアス電極層612の上面を覆うように形成され、透明なITO薄膜からなる透明電極層613とを有して構成されている。
【0086】
また、信号線51は、TFT14と同様の層構成で形成されており、絶縁性基板であるガラス基板601上に形成され、アルミニウム、クロム又はこれらとの合金からなる下部電極層614と、下部電極層614上に形成され、窒化アモルファスシリコンからなる絶縁層615と、絶縁層615上に形成され、水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)からなる半導体層616と、半導体層616の上方に形成され、アルミニウム、クロム又はこれらとの合金からなる上部電極層618と、半導体層616と上部電極層618とをオーミックコンタクトするN+型アモルファスシリコン層617とを有して構成されている。
【0087】
さらに、ガラス基板601上に成膜されて形成されているMIS型光電変換素子13、TFT14及び信号線51の上方には、これらを湿度や異物から守るための保護層619と、X線を可視光に変換する波長変換体である蛍光体621と、保護層619と蛍光体621とを接着するための接着層620と、蛍光体621を湿度から保護するための蛍光体保護層622が形成されている。ここで、蛍光体621の材料としては、Gd22S、Gd23及びCsIのうち、少なくともいずれか1つを主成分とするものが挙げられる。
【0088】
なお、MIS型光電変換素子13の下部電極層608と、TFT14のドレイン電極層607とは、電気的に接続されている。また、MIS型光電変換素子13の下部電極層608、TFT14のゲート電極層602及び信号線51の下部電極層614を同一の工程で形成するようにしてもよい。また、MIS型光電変換素子13の絶縁層609、TFT14の絶縁層603及び信号線51の絶縁層615を同一の工程で形成するようにしてもよい。また、MIS型光電変換素子13の光電変換層610、TFT14のチャネル層604及び信号線51の半導体層616を同一の工程で形成するようにしてもよい。また、MIS型光電変換素子13のN+型アモルファスシリコン層611、TFT14のN+型アモルファスシリコン層605及び信号線51のN+型アモルファスシリコン層617を同一の工程で形成するようにしてもよい。MIS型光電変換素子13のセンサバイアス電極層612、TFT14のソース電極層606及びドレイン電極層607、並びに信号線51の上部電極層618を同一の工程で形成するようにしてもよい。
【0089】
図7は、MIS型光電変換素子13の動作原理を説明するためのエネルギーバンド図である。
【0090】
図7(a)は、MIS型光電変換素子13のセンサバイアス電極層612に正の電圧を印加した蓄積動作時(光電変換モード)を示している。この光電変換モードでは、光電変換層610内における光電効果によって入射した光901から電子902と正孔903が生成される。
【0091】
正孔903は、電界によって光電変換層610の絶縁層609と界面に移動し、電子902は、N+型アモルファスシリコン層611側へと移動する。このとき、正孔903は、絶縁層609を抜けて移動することができないため、上述したように光電変換層610の絶縁層609と界面に蓄積される。この正孔903の蓄積によって、光901の照射量や時間に比例した電圧が当該MIS型光電変換素子13内に発生し、下部電極層608のポテンシャルが下げられる。TFT14をONすることにより下部電極層608に電流が流れ、この電流を検出することで画像信号を得ることができる。
【0092】
しかしながら、図7(b)に示すように、ある一定量の正孔903を蓄積すると、光電変換層610の絶縁層609との界面に蓄積された正孔903に起因する電圧と、MIS型光電変換素子13に印加されている電圧とが等しくなり、光電変換層610内に電界が発生しなくなる。このような状態を飽和状態という。この飽和状態では、光電変換層610で発生した正孔903は、光電変換層610の絶縁層609との界面に移動することができず、電子902と再結合して消滅してしまう。このため、光901の照射量や時間に比例した電圧が発生しなくなり、このままでは正常なX線画像を得ることができない。
【0093】
MIS型光電変換素子13の状態を再び図7(a)の光電変換モードの状態にするためには、センサバイアス電極層612の電圧を図7(a)及び図7(b)の状態よりも低い電圧にして、光電変換層610の絶縁層609との界面に蓄積された正孔903を掃き出す動作が必要である。この状態をリフレッシュモードといい、図7(c)にその際のエネルギーバンド図を示す。
【0094】
図7(c)のリフレッシュモード時に掃き出した正孔903の量だけ、図7(a)の光電変換モード時において、新たに正孔903を蓄積できるようになる。つまり、リフレッシュモード時に与えるセンサバイアスをより低く設定することにより、光901が多量に照射されてもMIS型光電変換素子13が飽和状態になりにくくなる。
【0095】
しかし、図7(c)のリフレッシュモードから図7(a)の光電変換モードに切り替わった直後は、リフレッシュモード時に注入された電子902に起因する電流が流れ、一時的に暗電流が大きくなる。また、光電変換層610へ注入される電子902の量は、リフレッシュ時のセンサバイアスを低くすればするほど多くなる。よって、図7(c)のリフレッシュモード及び図7(a)の光電変換モードにおけるセンサバイアスは、MIS型光電変換素子13がX線撮像装置として望まれるダイナミックレンジ及び暗電流となるように最適化されて設定される。
【0096】
図8は、本発明の第2の実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサの画素出力を1つの信号線51あたり2画素加算して読み出す動画撮影モードの際の駆動を示したタイミングチャートである。
【0097】
MIS型光電変換素子13を用いた2次元センサで動画撮影を行うためには、ゲート線52(画素加算時には複数のゲート線)に接続された画素の読み出しと、読み出した画素のリフレッシュを交互に行う必要がある。
【0098】
まず、制御信号RCをHiにしてアンプ20の出力をリセットする。この動作によって、アンプ20の出力及び信号線51の電圧は、アンプ20の基準電源55における電圧eとなる。画素出力を読み出す前に、信号線51やアンプ20の出力をリセットすることによって、前回の読み出し時に発生した不要なオフセットやノイズを除去することができ、画像の高画質化が可能となる。
【0099】
続いて、制御信号DIO及びCPVを図8に示すように垂直駆動回路105に入力して、2つのゲート線(図8のVg1及びVg2)52におけるTFT14を同時にONする準備を行う。そして、アンプ20を十分な時間リセットした後、制御信号OEをHiにして、TFTオン電源27から所望の電圧を供給する。このとき、TFTオン電源27には、制御部108から制御信号VGC1がHi、制御信号VGC2がLoのものが送信される。これにより、TFTオン電源27から2つのゲート線(図8のVg1及びVg2)52に、電圧Vcom(b)が供給され、TFT14が2ライン同時にONする。このとき、1つ
の信号線51につき、2つの画素の電荷が同時にアンプ20に転送されて加算される。
【0100】
MIS型光電変換素子13に蓄積された電荷を転送するのに十分な期間、TFT14をONした後、制御信号OEをLoにして、TFT14をOFFにする。そして、TFT14をOFFした後、制御信号SHをHiにして、各アンプ20の出力をサンプルホールド回路203にて保持する。以上の読み出し動作によって、1つの信号線51について2画素分の電荷を加算して読み出すことができる。
【0101】
読み出し動作が終了した後、続いて、MIS型光電変換素子13のリフレッシュ動作を行う。
本実施形態におけるリフレッシュ動作は、MIS型光電変換素子13の下部電極層608の電位をアンプ20によって高くする(ポテンシャルを下げる)ことにより行う。このため、制御信号RCをHiにして、アンプ20をリセット状態にする。このとき、制御信号VRCをHiにして、アンプ20から電圧dが出力するように制御する。この際、信号線51の電位も同時に電圧dとなる。
【0102】
この状態で制御信号OEをHiにしてTFT14をONすることにより、下部電極層608の電位は、読み出し時よりも高くなり、MIS型光電変換素子13はリフレッシュ状態となる。
【0103】
MIS型光電変換素子13のリフレッシュ動作を十分行った後、制御信号VRCをLoにして下部電極層608の電位を電圧eにすることにより、リフレッシュ動作を終了してMIS型光電変換素子13を光電変換モードにする。下部電極層608の電位が電圧eになった後、制御信号OEをLoにしてTFT14をOFFする。そして、2次元センサの全画素を2画素加算で読み出すには、図8に示した区間Bの駆動パターンを繰り返し行えばよい。
【0104】
図9は、本発明の第2の実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサの画素出力を1つの信号線51あたり1画素ずつ読み出す静止画撮影モードの際の駆動を示したタイミングチャートである。図9(a)には、リフレッシュ動作におけるタイミングチャートを示し、図9(b)には、読み出し動作におけるタイミングチャートを示す。
【0105】
静止画撮影である本実施形態におけるリフレッシュ動作は、動画撮影モードの際の動作とは異なり、センサーバイアス線53に印加する電圧を切り替えることにより行う。まず、制御信号VSCをLoにしてセンサーバイアス線にかかる電圧をfからgに切り替える。また、制御信号VRCをLoにして、アンプ20から電圧eが出力するように制御する。この際、信号線51の電位も同時に電圧eとなる。
【0106】
この状態で制御信号OEをHiにしてTFT14をONすることにより、下部電極層608は電圧eに固定される。これにより、MIS型光電変換素子の両端にはg−eの電圧がかかる。ここで、電圧の大小関係はf>g>eであるから、このとき、MIS型光電変換素子13のN+型アモルファスシリコン層側のポテンシャルが上がり、リフレッシュ状態となる。2次元センサの全画素をリフレッシュするには、区間Bの駆動パターンを繰り返し行う。
【0107】
全画素をリフレッシュ状態にしたのち、制御信号VSCをHiにセンサーバイアス線にfの電圧を印加する。この状態で、制御信号OEをHiにし再度、下部電極層608を電圧eに固定する。この動作によって、N+型アモルファスシリコン層側のポテンシャルが光電変換層の絶縁層609側に対して下がりMIS型光電変換素子は蓄積モードとなる。2次元センサの全画素を光電変換モードにするには、区間Dの駆動パターンを繰り返し行う。
【0108】
MIS型光電変換素子13のリフレッシュ動作を十分行った後、制御信号VRCをLoにして下部電極層608の電位を電圧eにすることにより、図9(a)のリフレッシュ動作を終了して図9(b)の光電変換モードとなる。
【0109】
図9(b)の光電変換モードでは、まず、制御信号RCをHiにしてアンプ20の出力をリセットする。この動作によって、アンプ20の出力及び信号線51の電圧は、アンプ20の基準電源55における電圧eとなる。画素出力を読み出す前に、信号線51やアンプ20の出力をリセットすることによって、前回の読み出し時に発生した不要なオフセットやノイズを除去することができ、画像の高画質化が可能となる。
【0110】
続いて、制御信号DIO及びCPVを図9(b)に示すように垂直駆動回路105に入力して、ゲート線(図9(b)のVg1、Vg2)52におけるTFT14を各ゲート線毎にONする準備を行う。そして、アンプ20を十分な時間リセットした後、制御信号OEをHiにして、TFTオン電源27から所望の電圧を供給する。このとき、TFTオン電源27には、制御部108から制御信号VGC1及びVGC2がともにHiのものが送信され、TFTオン電源27から各ゲート線に、電圧Vcom(a)が供給される。そして、2次元センサの全画素を読み出すには、図9(b)に示した区間Bの駆動パターンを繰り返し行えばよい。
【0111】
(第3の実施形態)
第3の実施形態は、2次元センサ103の光電変換素子として、PIN型光電変換素子を適用した形態である。PIN型光電変換素子は、第2の実施形態で示したMIS型光電変換素子13とは異なり、リフレッシュ動作を必要としない。したがって、PIN型光電変換素子を用いた場合の2次元センサにおける1画素分の回路図は、図3に示したものと同様である。このとき、センサ電源206は、PIN型光電変換素子が光電変換するのに必要な電圧を出力するように設計される。
【0112】
図10は、本発明の第3の実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサにおける1画素の概略断面図である。
【0113】
TFT16は、絶縁性基板であるガラス基板1001上に形成され、アルミニウム、クロム又はこれらとの合金からなるゲート電極層1002と、ゲート電極層1002上に形成され、正負両方の電荷の流入を遮断する窒化アモルファスシリコンからなる絶縁層1003と、絶縁層1003上に形成され、水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)からなるチャネル層1004と、チャネル層1004の上方にそれぞれ所定距離をおいて形成され、アルミニウム、クロム又はこれらとの合金からなるソース電極層1006及びドレイン電極層1007と、チャネル層1004とソース電極層1006との間、及びチャネル層1004とドレイン電極層1007との間に形成され、チャネル層1004とソース電極層1006又はドレイン電極層1007とをオーミックコンタクトする不純物半導体層であるN+型アモルファスシリコン層1005とを有して構成されている。
【0114】
PIN型光電変換素子15は、絶縁性基板であるガラス基板1001上に形成され、アルミニウム、クロム又はこれらとの合金からなる下部電極層1008と、下部電極層1008の上方に形成され、X線の量に応じた電荷を生成する水素化アモルファスシリコンの半導体層である光電変換層1010と、下部電極層1008と光電変換層1010との間に形成され、当該光電変換層1010への正の電荷の流入を遮断する第1のブロッキング層となるN+型アモルファスシリコン層1009と、光電変換層1010上に形成され、当該光電変換層1010への負の電荷の流入を遮断する第2のブロッキング層となるP+型アモルファスシリコン層1011と、P+型アモルファスシリコン層1011上の一部に形成され、アルミニウム、クロム又はこれらとの合金からなるセンサバイアス電極層1012と、P+型アモルファスシリコン層1011の上面及びセンサバイアス電極層1012の上面を覆うように形成され、透明なITO薄膜からなる透明電極層1013とを有して構成されている。
【0115】
また、信号線17は、TFT16と同様の層構成で形成されており、絶縁性基板であるガラス基板1001上に形成され、アルミニウム、クロム又はこれらとの合金からなる下部電極層1014と、下部電極層1014上に形成され、窒化アモルファスシリコンからなる絶縁層1015と、絶縁層1015上に形成され、水素化アモルファスシリコン(a−Si:H)からなる半導体層1016と、半導体層1016の上方に形成され、アルミニウム、クロム又はこれらとの合金からなる上部電極層1018と、半導体層1016と上部電極層1018とをオーミックコンタクトするN+型アモルファスシリコン層1017とを有して構成されている。
【0116】
さらに、ガラス基板1001上に成膜されて形成されているPIN型光電変換素子15、TFT16及び信号線17の上方には、これらを湿度や異物から守るための保護層1019と、X線を可視光に変換する波長変換体である蛍光体1021と、保護層1019と蛍光体1021とを接着するための接着層1020と、蛍光体1021を湿度から保護するための蛍光体保護層1022が形成されている。ここで、蛍光体1021の材料としては、Gd22S、Gd23及びCsIのうち、少なくともいずれか1つを主成分とするものが挙げられる。
【0117】
なお、PIN型光電変換素子15の下部電極層1008と、TFT16のドレイン電極層1007とは、電気的に接続されている。
【0118】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、2次元センサ103の光電変換素子として、図6に示した蛍光体621(あるいは、図10に示した蛍光体1021)を用いずに、入射したX線を直接、電気信号に変換する直接変換型変換素子を適用した形態である。本実施形態で用いられる直接変換型変換素子は、アモルファスセレン(a−Se)、PbI2、HgI2及びCdTeのうち、少なくともいずれか1つを主成分とする材料からなるものである。
【0119】
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、X線撮像装置100を用いたCT撮影を行うX線撮像システムに適用した形態である。CT撮影とは、被写体を複数の方向からX線撮影し、それらの撮影画像から被写体における任意の断層画像をコンピュータによって計算・画像化するものである。本実施形態では、CT撮影手段として、X線発生装置から被写体に円錐状のX線(コーンビーム)を出射するCBCT(Corn-BeamCT)撮影を例にして説明を行う。図11及び図12は、本発明の第5の実施形態に係るX線撮像システムの模式図である。
【0120】
図11に示すX線撮像システムは、被写体(患者)121に円錐状のX線(コーンビーム)を出射するX線発生装置119と、X線発生装置119と正対する位置に配置され、被写体121を透過したX線を撮像するX線撮像装置100と、被写体121を載置する回転台1101を有して構成されている。
【0121】
図11のX線撮像システムでは、X線発生装置119とX線撮像装置100とを所定の位置に正対させた状態で、被写体121を載置した回転台1101を図11の矢印で示す方向に回転させながらX線発生装置119からコーンビームを出射して、被写体121の任意の断層画像を撮影する。
【0122】
図11のX線撮像システムでは、理論上、被写体(患者)121を半回転させることにより、胸部のCT撮影が可能であることから、従来のCT撮影を行うX線撮像装置よりも短時間で撮影が可能である。さらに、被写体121を回転させてCT撮影を行うので、複雑な可動装置を設ける必要が無く、装置構成を簡易にすることができるため、システム全体を小型化することができる。
【0123】
また、図11のX線撮像システムは、CT撮影以外に単純撮影も可能であるため、クリニックや小規模の病院のような設置スペース的に余裕のない場所においても、設置可能である。ただし、被写体(患者)121が直立した状態で撮影を行うことが条件になるため、患者の意識がない、あるいは患者が直立できないなどの場合には、CT撮影が困難になってしまう事態が生じる。以上、説明したように、図11のX線撮像システムでは、クリニックや小規模の病院での検診を行う際のCT撮影に用いて好適である。
【0124】
図12に示すX線撮像システムは、被写体(患者)121に円錐状のX線(コーンビーム)を出射するX線発生装置119と、X線発生装置119と正対する位置に配置され、被写体121を透過したX線を撮像するX線撮像装置100と、被写体121を載置するベッド1201と、X線撮像装置100とX線発生装置119とを正対させた状態で一体的に可動させる可動装置1202とを有して構成されている。
【0125】
図12のX線撮像システムでは、可動装置1202を被写体121を載置したベッド1201を中心に図12の矢印で示す方向に回転させながらX線発生装置119からコーンビームを出射して、被写体121の任意の断層画像を撮影する。
【0126】
図12のX線撮像システムでは、患者の意識が無い場合や、患者が直立できない場合、あるいは造影剤を使用する場合などに有効である。ただし、重量のあるX線発生装置119やX線撮像装置100を可動させるため、装置構成が大規模になることや、安全に配慮したスペースが必要となるため、設置スペース等で余裕のある場所でしか使用できない。
【0127】
図11及び図12に示したX線撮像装置100では、2次元センサ103をガラス基板上にアモルファスシリコンプロセスを用いて形成しているため、50×60cm程度の大きさのものを容易に形成することができる。この2次元センサ103を有するX線撮像装置を用いてCT撮影を行う場合、従来のCT撮影装置のようにX線照射範囲が狭くなくX線が広範囲に照射され、撮影部位の全体を撮影することができるため、CT撮影に要する時間を短縮することができる。
【0128】
なお、本発明の諸実施形態によってデジタルX線撮像装置を用いたCT撮影が可能となるが、単純撮影とCT撮影の両方を撮影可能なデジタルX線撮像装置を実現するためには、必要な断層厚みが得られるように画素出力の加算をし、見かけ上の画素サイズを大きくする必要がある。その理由としては、CT撮影では200μm以上の解像度は要求されておらず、現在、一般的に普及しているCT撮像装置で撮影される断層厚みとしては、0.5mm〜10mm程度だからである。したがって、仮に200μmピッチの2次元センサで0.5mmの断層厚みを実現する場合、画素加算数として250が必要である。そして、このように多くの画素加算数を必要とするCT撮影においては、本発明の各実施形態で示したX線撮像装置及びX線撮像システムが好適である。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、デジタルX線撮像装置の高感度化、高速読み出し化に必要不可欠な画素加算に関するものであり、本発明を用いることにより、画素加算時に発生するX線撮像装置におけるダイナミックレンジの低下や感度特性の悪化を回避することが可能である。したがって、本発明を用いることにより、画素加算時に発生するX線撮像装置におけるダイナミックレンジの低下や感度特性の悪化を回避しながら、デジタルX線撮像装置の高感度化、高速読み出し化を行うことが可能となり、デジタルX線撮像装置による透視撮影やCT撮影等の様々な撮影が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るX線撮像システムの概略構成図である。
【図2】図1に示したFPDの回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサにおける1画素分の回路図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るX線撮像装置の駆動を示したタイミングチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサにおける1画素分の回路図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサにおける1画素の概略断面図である。
【図7】MIS型光電変換素子の動作原理を説明するためのエネルギーバンド図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサの画素出力を1つの信号線あたり2画素加算して読み出す動画撮影モードの際の駆動を示したタイミングチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサの画素出力を1つの信号線あたり1画素ずつ読み出す静止画撮影モードの際の駆動を示したタイミングチャートである。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るX線撮像装置の2次元センサにおける1画素の概略断面図である。
【図11】本発明の第5の実施形態に係るX線撮像システムの模式図である。
【図12】本発明の第5の実施形態に係るX線撮像システムの模式図である。
【図13】一般的なX線撮像装置を構成するFPD(フラット・パネル・ディテクター)の回路図である。
【図14】一般的なX線撮像装置の駆動を示したタイミングチャートである。
【図15】TFTのON/OFFにおける2次元センサ内部の電圧変動を説明するための図である。
【符号の説明】
【0131】
100 X線撮像装置
101 蛍光体
102 可視光
103 2次元センサ
104 読み出し回路
105 垂直駆動回路
106 A/Dコンバータ
107 レギュレータ
108 制御部
109 画像処理部
110 統括制御部
111 コントロールPC
112 FPD(フラットパネルディテクター)
113 操作入力部
114 電源
115 X線制御部
116 プリンタ
117 外部記録装置
118 モニター
119 X線発生装置
120 X線
121 被写体(患者)
122 記録部
123 中継基板
124 制御基板
125 動作表示部
126 ネットワーク
127 低ノイズ電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を透過した放射線を電気信号に変換する変換素子と、前記電気信号を外部に転送する転送部とを具備する画素が2次元状に配置された2次元センサと、
各前記転送部から転送される電気信号を増幅して読み出す読み出し手段と、
前記読み出し手段で前記電気信号を読み出す際に前記転送部に対して駆動信号を供給し当該転送部を駆動させる駆動手段と、
前記読み出し手段において前記電気信号を同時に読み出す画素数に応じて前記駆動信号の電圧値を変化させる制御手段と、
を有することを特徴とする放射線撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記画素数の増加にともなって、前記駆動手段から前記転送部に供給する電圧を小さくすることを特徴とする請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記変換素子には、前記被写体からの放射線を可視光に変換する波長変換体が具備されており、
前記波長変換体は、Gd22S、Gd23及びCsIのうち、少なくともいずれか1つを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線撮像装置。
【請求項4】
前記変換素子は、絶縁性基板上に配置された第1の電極層と、前記第1の電極層上に配置され、正負両方の電荷の流入を遮断する絶縁層と、前記絶縁層上に配置され、放射線の量に応じた電荷を生成する半導体層と、前記半導体層上に配置され、当該半導体層への正の電荷の流入を遮断する不純物半導体層と、前記不純物半導体層上の一部に配置された第2の電極層とを有するMIS型構造の変換素子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項5】
前記変換素子は、絶縁性基板上に配置された第1の電極層と、前記第1の電極層の上方に配置され、放射線の量に応じた電荷を生成する半導体層と、前記第1の電極層と前記半導体層との間に形成され、当該半導体層への正の電荷の流入を遮断する第1導電型の不純物半導体層と、前記半導体層上に配置され、当該半導体層への負の電荷の流入を遮断する前記第1導電型とは正負の異なる第2導電型の不純物半導体層と、前記第2導電型の不純物半導体層上の一部に配置された第2の電極層とを有するPIN型構造の変換素子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項6】
前記変換素子は、前記放射線を直接前記電気信号に変換する直接変換型の変換素子であり、前記直接変換型の変換素子は、アモルファスセレン(a−Se)、PbI2、HgI2及びCdTeのうち、少なくともいずれか1つを主成分とする材料からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射線撮像装置。
【請求項7】
前記転送部は、絶縁性基板上に配置された第1の電極層と、前記第1の電極層上に配置され、正負両方の電荷の流入を遮断する絶縁層と、前記絶縁層上に配置されたチャネル層と、前記チャネル層の上方にそれぞれ所定距離をおいて配置された第2の電極層及び第3の電極層と、前記チャネル層と前記第2の電極層との間、及び前記チャネル層と前記第3の電極層との間に配置され、前記チャネル層と前記第2の電極層又は前記第3の電極層とをオーミックコンタクトする不純物半導体層とを有する薄膜トランジスタ(TFT)で形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項8】
前記読み出し手段で読み出された電気信号に対して画像処理を行う画像処理手段を更に有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線撮像装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の放射線撮像装置と、
前記被写体に放射線を出射する放射線発生装置と
を有し、
前記変換素子は、前記放射線発生装置から出射され、前記被写体を透過した放射線を電気信号に変換することを特徴とする放射線撮像システム。
【請求項10】
前記被写体を載置する載置機構を更に有し、
前記載置機構を回転させながら前記放射線発生装置から放射線を出射して、前記被写体の任意の断層画像を撮影するCT(Computed-Tomography)撮影を行うことを特徴とする請求項9に記載の放射線撮像システム。
【請求項11】
前記放射線撮像装置と前記放射線発生装置とを正対させた状態で一体的に可動させる可動機構を更に有し、
前記可動機構を前記被写体を中心に回転させながら前記放射線発生装置から放射線を出射して、前記被写体の任意の断層画像を撮影するCT(Computed-Tomography)撮影を行うことを特徴とする請求項9に記載の放射線撮像システム。
【請求項12】
被写体を透過した放射線を電気信号に変換する変換素子と、前記電気信号を外部に転送する転送部とを具備する画素が2次元状に配置された2次元センサと、各前記転送部から転送される電気信号を増幅して読み出す読み出し手段と、前記読み出し手段で前記電気信号を読み出す際に前記転送部に対して駆動信号を供給し当該転送部を駆動させる駆動手段とを有する放射線撮像装置における制御方法であって、
前記読み出し手段において前記電気信号を同時に読み出す画素数に応じて、前記駆動信号の電圧値を変化させることを特徴とする放射線撮像装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−68014(P2007−68014A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253559(P2005−253559)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】