説明

新規2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸化合物、その製造法、およびそれを含有する薬学的組成物

【課題】新規なTAFIaインヒビター化合物および
その利用方法を提供する。
【解決手段】式(I):


[式中、R1は、水素原子、または式COR4で示される基を表すか、二量体化したジスルフィドの片側部分を表す。R2は、式NR56で示される基を表すか、またはR2は、窒素含有複素環基、アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、R3は、水素原子、アルキル基を表す。]で示される化合物、その光学異性体、および薬学的に許容され得る酸とのその付加塩医薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸化合物、その製造法、およびそれを含有する薬学的組成物に関するものである。
【0002】
本発明の化合物は、TAFIa(活性化されたトロンビン活性化性フィブリン溶解インヒビター(activated thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor))のインヒビターである。
【0003】
TAFI(血漿プロカルボキシペプチダーゼB、プロカルボキシペプチダーゼRまたはプロカルボキシペプチダーゼUとも呼ばれる)は、肝臓が産生する60kDaの血漿糖タンパク質であって、チモーゲンの形態で循環している。血液凝固およびフィブリン溶解の際、トロンビンおよびプラスミンは、TAFIのプロセグメントをArg92−Ala93結合で切断して、これを、半減期が37℃で8〜15分である活性酵素、すなわちTAFIaに転換する。トロンビンによるプロセグメントの切断は、血漿中および血管内皮細胞表面に存在する補助因子、すなわちトロンボモジュリンによって加速される[Bouma, B,N. & Meijers, J.C,, Thrombin-activatable fibrinolysis inhibitor, 2003, Journal of Thrombosis and Haemostasis, 1:1566-1574]。TAFIaは、プラスミンの最初の痕跡によるフィブリンの部分分解の際に出現するフィブリン繊維のC末端リシン残基を切断することによって、フィブリン溶解を負の方向に調節する。部分的に分解されたフィブリン上のこれらのC末端リシン残基は、循環する血漿プラスミノーゲン、および血栓性虚血の場合に内皮細胞が産生する組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)のリガンドとして作用する。したがって、それらは、循環プラスミンインヒビターであるα2−アンチプラスミンにも組織プラスミノーゲンアクチベーターの循環インヒビター(PAI−1)にも干渉せずに、tPAによるプラスミノーゲンからプラスミンへの転換の所在を突きとめるのを可能にする。そのため、TAFIaによるC末端リシン部位の切断は、プラスミンが産生される速度を低下させる。そうして、内因性フィブリン溶解は、阻害され、フィブリン性の動脈および静脈血栓の溶解、ならびに血栓症後の急性虚血期の患者に生じる治癒性血栓溶解を低下させる。そのため、TAFIaのインヒビターは、内因性および治癒性フィブリン溶解能力を増大させ、また血小板活性化にも、血液の止血の際の凝固にも干渉しないため、大出血の危険性なしに抗血栓剤およびフィブリン溶解促進剤として作用する可能性がある。
【0004】
上記により、TAFIaを阻害するという特性によって、リスクのある患者における血栓性事象の治療および予防に、本発明の化合物を用いるのを考慮することが可能になる。その使用は、(アテローム血栓性疾患、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、高脂質血症、高血圧、慢性静脈疾患、肥満症に付随する代謝症候群、および癌に関係する)血管性併発症、より特別には心血管、肺および脳血管の併発症の治療、予防ならびに二次的予防に価値があると思われる。本発明の化合物は、心筋梗塞、狭心症、脳血管発作、大動脈瘤、下肢の動脈炎、静脈血栓症および肺塞栓症の治療、予防ならびに二次的予防に特に役立つ。
【0005】
高血圧、肥満、糖尿病、心臓病、脳血管疾患および高脂質血症、したがってまたアテローム性動脈硬化症のような血管性の危険因子ならびに疾患は、アルツハイマー病および血管性認知症のような認知症の発生に役割を果たす[Qiu, C., De Ronchi, D. & Fratiglioni, L., The epidemiology of the dementias: an update, 2007, Current Opinion in Psychiatry, 20:380-385]。したがって、本発明の化合物は、アルツハイマー病および血管性認知症のような認知症の治療ならびに/または予防にも役立つであろう。
【0006】
TAFIaは、内因性フィブリン溶解能力を低下させる。そのため、TAFIaのインヒビターとして、本発明の化合物は、緊急事態(たとえば心筋梗塞、脳血管発作)に用いられる組換えtPA(たとえばアルテプラーゼ、テネクテプラーゼ(tenecteplase)、レテプラーゼ(reteplase))、組換えuPAまたはストレプトキナーゼのような、注射可能フィブリン溶解剤による急性処置に対する佐剤として役立つ。本発明の化合物は、これらの注射可能フィブリン溶解剤の活性を強化し、そのため、それらが出血および神経毒性の、より少ない危険性のもとで用いられる(それらの用量を少なくし、そのためそれらの副作用を軽減する)という結果をもたらす。
【0007】
より具体的には、本発明は、式(I):
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、
1は、水素原子、または式COR4で示される基(R4は、直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基またはアリール基を表す)を表すか、あるいはR1は、式(A):
【0010】
【化2】

【0011】
で示される基を表し、
2は、式NR56で示される基(R5およびR6は、同じであるか、または異なり、それぞれ水素原子、または直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基を表す)を表すか、あるいはR2は、窒素含有複素環基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
3は、水素原子、または直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基を表し、
mは、両端を含めて1〜6の整数を表し、
nは、0、1または2を表す]
で示される化合物、その光学異性体、および薬学的に許容され得る酸とのその付加塩に関するものである。
【0012】
アリール基は、ハロゲン、直鎖または分枝鎖C1〜C6アルキル、直鎖または分枝鎖C1〜C6アルコキシ、アミノ(一つまたは二つの直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基で場合により置換されている)およびアミノアルキル(アミノ基は、一つまたは二つの直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基で場合により置換されている)から選ばれる、同じであるか、または異なる一つもしくはそれ以上の基で場合により置換されたフェニルであると解される。
【0013】
ヘテロアリール基は、酸素、窒素および硫黄から選ばれる、1、2または3個のヘテロ原子を含む、5〜12員の単環または二環の芳香族基であると解され、ハロゲン、直鎖または分枝鎖C1〜C6アルキル、直鎖または分枝鎖C1〜C6アルコキシ、アミノ(一つまたは二つの直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基で場合により置換されている)およびアミノアルキル(アミノ基は、一つまたは二つの直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基で場合により置換されている)から選ばれる、同じであるか、または異なる一つもしくはそれ以上の基で場合により置換されていてもよいと解される。
【0014】
ヘテロアリール基のうちでも、基チエニル、ピリジル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニルをいかなる限定も意味せずに列挙し得る。
【0015】
窒素含有複素環基は、一つまたはそれ以上の窒素原子と、場合により、酸素および硫黄から選ばれる一つまたはそれ以上のその他のヘテロ原子とを含む、4〜7員の飽和または不飽和単環の基であると解される。窒素含有複素環基のうちでも、基アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジルおよびピペラジニルを、いかなる限定も意味せずに列挙し得る。
【0016】
光学異性体は、ジアステレオ異性体および鏡像異性体であると解される。式(I)の化合物は、少なくとも二つの不斉中心を(環の1および2位に)有し、そのため、単一の鏡像異性体、単一のジアステレオ異性体の形態でか、またはジアステレオ異性体の混合物の形態で存在し得る。
【0017】
薬学的に許容され得る酸のうちでも、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ショウノウ酸を、いかなる限定も意味せずに列挙し得る。
【0018】
本発明の一態様は、R1が水素原子を表す、式(I)の化合物に関するものである。
【0019】
本発明のもう一つの態様は、R2がアミノ基を表す、式(I)の化合物に関するものである。
【0020】
本発明のもう一つの態様は、R2がピリジル基を表す、式(I)の化合物に関するものである。
【0021】
本発明のもう一つの態様は、R3が水素原子を表す、式(I)の化合物に関するものである。
【0022】
本発明のもう一つの態様は、mが3を表す、式(I)の化合物に関するものである。
【0023】
本発明のもう一つの態様は、nが1を表す、式(I)の化合物に関するものである。
【0024】
本発明のもう一つの態様は、式(I)の化合物の特定の場合である、式(Ia):
【0025】
【化3】

【0026】
[式中、n、R1、R3、R5およびR6は、式(I)で定義されたとおりである]
で示される化合物に関するものである。
【0027】
本発明のもう一つの態様は、下記の式(I)の化合物である:
− (1R,2S)−1−(3−アミノプロピル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸、およびその光学異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸とのその付加塩、
− (1R,2S)−2−アセチルチオ−1−(3−アミノプロピル)シクロペンタンカルボン酸、およびその光学異性体、ならびに薬学的に許容され得る酸とのその付加塩。
【0028】
本発明は、式(I)の化合物を製造する方法であって、式(II)
【0029】
【化4】

【0030】
[式中、nは、0、1または2を表し、そしてGは、カルボキシ基の保護基を表す]
で示される化合物から出発して、これを、式(III):
【0031】
【化5】

【0032】
[式中、Xは、ハロゲン原子、またはトリフラート、トシラートもしくはメシラート基を表し、mは、両端を含めて1〜6の整数を表し、そしてR’2は、式NR’5R’6(R’5およびR’6は、同じであっても、または異なってもよく、それぞれ、アミノ基の保護基、または直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基を表す)で示される基を表すか、またはR’2は、アミノ基の保護基で場合により置換されている窒素含有複素環基を表すか、またはR’2は、アリールもしくはヘテロアリール基を表す]
で示される化合物と反応させて、式(IV):
【0033】
【化6】

【0034】
[式中、R’2、G、mおよびnは、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これをオキソ基の還元剤に供し、式(V):
【0035】
【化7】

【0036】
[式中、R’2、G、mおよびnは、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、塩化メシル、塩化トシル、トリフルオロメタンスルホン酸無水物またはハロゲン化剤と反応させて、式(VI):
【0037】
【化8】

【0038】
[式中、R’2、G、mおよびnは、上記に定義されたとおりであり、そしてXは、メシラート、トシラートもしくはトリフラート基、またはハロゲン原子を表す]
で示される化合物を得て、式(I)の化合物を単一のジアステレオ異性体の形態で得るのが所望されるときは、そのジアステレオ異性体を分離して、次いで、これを、式(VII):
【0039】
【化9】

【0040】
[式中、Mは、カリウム、ナトリウムまたはリチウムを表し、そしてR’1は、アルキルまたはアリール基を表す]
で示される化合物と反応させて、式(VIII):
【0041】
【化10】

【0042】
[式中、R’1、R’2、G、mおよびnは、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、式(I)の化合物を単一の鏡像異性体の形態で得るのが所望されるときは、その鏡像異性体をキラルクロマトグラフィーによって分離し、適用可能ならば、そのチオール、アミノおよびカルボキシ基を脱保護して、式(I)の化合物を得て、薬学的に許容され得る酸との式(I)の化合物の付加塩を得るのが所望されるときは、対応する酸と反応させる、式(I)の化合物を製造する方法にも関するものである。
【0043】
本発明は、mが3を表し、そしてR2がNR56を表す、式(I)の化合物の特定の場合である式(Ia)の化合物を製造する方法であって、式(II)
【0044】
【化11】

【0045】
[式中、nは、0、1または2を表し、そしてGは、カルボキシ基の保護基を表す]
で示される化合物から出発して、これを、立体配置(1R)または(1S)の化合物を得るのが所望されるかに応じて、たとえば触媒QまたはQD:
【0046】
【化12】

【0047】
のような不斉触媒の存在下で、アクロレインと反応させて、立体配置(1R)または(1S)の式(IX):
【0048】
【化13】

【0049】
[式中、nおよびGは、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、そのアルデヒド基を還元して、式(X):
【0050】
【化14】

【0051】
[式中、nおよびGは、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、塩化メシル、塩化トシル、トリフルオロメタンスルホン酸無水物またはハロゲン化剤と反応させて、式(XI):
【0052】
【化15】

【0053】
[式中、nおよびGは、上記に定義されたとおりであり、そしてXは、ハロゲン原子、またはトリフラート、トシラートもしくはメシラート基を表す]
で示される化合物を得て、そのケトン基を、還元剤を用いて還元して、式(XII):
【0054】
【化16】

【0055】
[式中、n、GおよびXは、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、式(XIII):
【0056】
【化17】

【0057】
[式中、R”5およびR”6は、それぞれ、アミノ基の保護基、または直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基を表す]
で示される化合物と反応させて、式(XIV):
【0058】
【化18】

【0059】
[式中、n、G、R”5およびR”6は、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、塩化メシル、塩化トシル、トリフルオロメタンスルホン酸無水物またはハロゲン化剤と反応させて、式(XV):
【0060】
【化19】

【0061】
[式中、n、G、R”5およびR”6は、上記に定義されたとおりであり、そしてXは、メシラート、トシラートもしくはトリフラート基、またはハロゲン原子を表す]
で示される化合物を得て、そうしてこれを、式(VII):
【0062】
【化20】

【0063】
[式中、Mは、カリウム、ナトリウムまたはリチウムを表し、そしてR’1は、アルキルまたはアリール基を表す]
で示される化合物と反応させて、式(XVI):
【0064】
【化21】

【0065】
[式中、n、R’1、G、R”5およびR”6は、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、適用可能ならば、そのチオール、アミノおよびカルボキシ基を脱保護して、式(Ia):
【0066】
【化22】

【0067】
[式中、n、R1、R3、R5およびR6は、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、薬学的に許容され得る酸との式(Ia)の化合物の付加塩を得るのが所望されるときは、対応する酸と反応させる、式(Ia)の化合物を製造する方法にも関するものである。
【0068】
式(Ia)のいずれかの光学的に純粋な化合物は、キラルな還元剤を用いた、式(XI)のケトンの不斉還元によって得られるか、または後期の段階でジアステレオ異性体の混合物から分離される。
【0069】
本発明の化合物は、TAFIaのインヒビターである。
【0070】
そのようなものとして、リスクのある患者における血栓性事象の予防または治療に役立つ。その使用は、(アテローム血栓性疾患、アテローム性動脈硬化症、糖尿病、高脂質血症、高血圧、慢性静脈疾患、肥満症に付随する代謝症候群、および癌に関係する)血管性併発症、より特別には心血管、肺および脳血管の併発症の治療ならびに予防に価値があるだろう。
【0071】
本発明の化合物は、心筋梗塞、狭心症、任意の起源による(特にアテローム血栓性の、心臓塞栓性の、または心房細動によって生じる)脳血管発作、下肢の大動脈瘤または動脈炎、静脈血栓症(特に挿管された癌患者における)、および肺塞栓症の治療、予防ならびに二次的予防に特に役立つ。
【0072】
高血圧、肥満、糖尿病、心臓病、脳血管疾患および高脂質血症、したがってまたアテローム性動脈硬化症のような血管性の危険因子ならびに血管性の疾患は、アルツハイマー病および血管性認知症のような認知症の発生に役割を果たす[Qiu, C., De Ronchi, D. & Fratiglioni, L., The epidemiology of the dementias: an update, 2007, Current Opinion in Psychiatry, 20:380-385]。したがって、本発明の化合物は、アルツハイマー病および血管性認知症のような認知症の治療ならびに/または予防にも役立つであろう。
【0073】
TAFIaは、内因性フィブリン溶解能力を低下させる。そのため、TAFIaのインヒビターとして、本発明の化合物は、緊急事態(たとえば心筋梗塞、脳血管発作)に用いられる組換えtPA(たとえばアルテプラーゼ、テネクテプラーゼ、レテプラーゼ)、組換えuPAまたはストレプトキナーゼのような、注射可能フィブリン溶解剤による急性処置に対する佐剤として役立つ。
【0074】
本発明の化合物は、これらの注射可能フィブリン溶解剤の活性を強化し、そのため、それらが出血および神経毒性の、より少ない危険性のもとで用いられる(それらの用量を少なくし、そのためそれらの副作用を軽減する)という結果をもたらす。
【0075】
本発明は、式(I)の化合物を、薬学的に許容され得る、不活性かつ無毒性の一つまたはそれ以上の賦形剤もしくは担体とともに含む薬学的組成物にも関するものである。
【0076】
本発明の薬学的組成物のうちでも、より特別には、経口、非経口(静脈内、筋内または皮下)、経皮もしくは貫皮、経鼻、直腸、舌下、眼内または呼吸器投与に適切であるものを、また特に錠剤または糖衣錠、舌下錠、カプセル剤、ハードゼラチンカプセル剤、坐剤、クリーム剤、軟膏、皮膚ゲル剤、注射可能または服用可能な製剤、エアゾル、点眼剤および点鼻剤を列挙し得る。
【0077】
式(I)の化合物に加え、本発明の薬学的組成物は、希釈剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤、吸収剤、着色剤、甘味料のような、一つまたはそれ以上の賦形剤もしくは担体を含む。
【0078】
賦形剤または担体を例示するならば、
・希釈剤としては:乳糖、デキストロース、ショ糖、マンニトール、ソルビトール、セルロース、グリセリンを、
・潤滑剤としては:シリカ、タルク、ステアリン酸ならびにそのマグネシウムおよびカルシウム塩、ポリエチレングリコールを、
・結合剤としては:ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、でん粉、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびポリビニルピロリドンを、
・崩壊剤としては:寒天、アルギン酸およびそのナトリウム塩、発泡性混合物を
列挙し得る。
【0079】
該薬学的組成物中の式(I)の活性成分の百分率は、好ましくは5〜50重量%である。
【0080】
有用な投与量は、患者の年齢および体重、投与経路、障害の性質および重篤度、ならびに付随するいかなる処置にも応じて変動し、1日あたり1回またはそれ以上の投与で0.5〜1,000mgの範囲にわたる。
【0081】
本発明の一態様によれば、本発明の薬学的組成物は、式(I)の化合物以外のいかなる活性成分も含有しない。
【0082】
本発明のもう一つの態様によれば、本発明の薬学的組成物は、式(I)の化合物に加えて、フィブリン溶解剤、より格別には、組換えtPA(たとえばアルテプラーゼ)、組換えuPAまたはストレプトキナーゼのような注射可能フィブリン溶解剤も含む。この場合、該組成物は注射可能な形態にある。tPA用量は、0〜100mgの程度に変動することができるであろう。
【0083】
本発明のもう一つの態様によれば、本発明の薬学的組成物は、式(I)の化合物に加えて、たとえばワルファリン、ダビガトラン=エテキシラート(dabigatran etexilate)、リバロキサバン(rivaroxaban)のような、抗凝固剤を含む。ワルファリンの用量は、1〜100mgの程度に変動することができるであろう。
【0084】
本発明のもう一つの態様によれば、本発明の薬学的組成物は、式(I)の化合物に加えて、たとえばアスピリン、クロピドグレル、プラスグレル(prasugrel)等々のような抗血小板剤を含む。アスピリンの用量は、10〜1,000mgの程度に変動することができるであろう。クロピドグレルの用量は、10〜1,000mgの程度に変動することができるであろう。
【0085】
下記の実施例は、本発明を例示する。実施例に記載された化合物の構造は、慣用の分光分析の手法(赤外、核磁気共鳴、質量分析)に従って決定した。
【0086】
略号
(+)−DIPCl:(+)−ジイソピノカンフェニルクロロボラン((+)−ジイソピノカンフェニルボロン=クロリド)
DMAP:ジメチルアミノピリジン
DMF:ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
eq.:モル当量
HMPA:ヘキサメチルホスホラミド、
HPLC:高性能液体クロマトグラフィー
NMR:核磁気共鳴
TAFIa:活性化されたトロンビン活性化性フィブリン溶解インヒビター
THF:テトラヒドロフラン
tPA:組織プラスミノーゲンアクチベーター
uPa:ウロキナーゼまたはウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベーター
【0087】
実施例1
(1R,2S)−1−(3−アミノプロピル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート
工程A:2−オキソシクロペンタンカルボン酸ベンジル
ディーン・スターク装置およびコンデンサーを備えた4リットル入りフラスコ内で、2−オキソシクロペンタンカルボン酸メチル(380ml;3mol)、ベンジルアルコール(342ml;3.3mol;1.1eq.)およびDMAP(18.3g;0.15mol;0.05eq.)をシクロヘキサン1,800mlに溶解した。反応混合物を、還流にて(混合物の温度:90℃)48時間撹拌し、形成されたメタノールを、留去した。冷却した後、反応混合物を、濃縮し、ジクロロメタン1,500mlに入れた。有機相を、1N塩酸、水、次いで飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。次いで、乾燥し、ろ過し、次いで蒸発させた。これによって得られた油状物を、減圧下での分留(128〜130℃/4×10-2ミリバール)によって精製して、期待される生成物を得た。
【0088】
工程B:1−(4−tert−ブトキシ−4−オキソブチル)−2−オキソ−シクロペンタンカルボン酸ベンジル
環境温度で、上記工程で得た2−オキソシクロペンタンカルボン酸ベンジル(1g;5.43mmol)の無水アセトン5ml中の溶液を、無水アセトン10ml中の乾燥炭酸カリウム(3g;21.7mmol;4eq.)の懸濁液に、激しく撹拌しつつ注ぎ込んだ。反応混合物の激しい撹拌を1時間継続し、次いで、アセトン2mlに溶解した4−ブロモブタン酸tert−ブチル(2.04g;9.16mmol;2eq.)を急速に注ぎ込んだ。反応混合物を、還流にて一晩加熱した。冷却した後、反応混合物を、ろ過し、次いでジクロロメタン20mlに入れた。有機相を、洗浄し、乾燥し、ろ過し、次いで蒸発させた。粗生成物を、ヘプタン/酢酸エチル(95/5)混合物を溶離剤として用いるシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0089】
工程C:4−{1−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−2−オキソシクロペンチル}ブタン酸
トリフルオロ酢酸140mlを、上記工程で得たtert−ブチルエステル(200g:0.545mol)の無水ジクロロメタン700ml中の溶液に、環境温度で20分かけて注ぎ込んだ。反応混合物を、環境温度で一晩撹拌した。
注:一晩撹拌した後に出発材料がいくらかでも残留する場合は、トリフルオロ酢酸を更に10%加え、撹拌を3時間継続する。
【0090】
最大量のトリフルオロ酢酸を除去するために、反応混合物を、蒸発させ、トルエン(3×500ml)に入れた。真空ポンプ下で乾燥した後、得られた粗油状物を炭酸水素ナトリウム溶液(84g/1L;2eq.)に入れた。次いで、塩基性の水相を、エーテル(3×300ml)で洗浄し、次いで4N塩酸溶液で再酸性化した。酸性の水相を、酢酸エチル(3×300ml)で抽出した。合わせた有機相を、洗浄し、乾燥し、蒸発させた。生成物は、精製せずに次工程に用いた。
【0091】
工程D:1−(3−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}プロピル)−2−オキソ−シクロペンタンカルボン酸ベンジル
上記工程からの酸(123.7g;0.406mol)の無水トルエン1L中の溶液に、トリエチルアミン(84.5ml;0.610mol;1.5eq.)、ベンジルアルコール(75.6ml;0.731mol;1.8eq.)、次いでジフェニルホスホリル=アジド(96.3ml;0.447mol;1.1eq.)を、環境温度で5分間かけて滴加した。反応混合物を、還流にて一晩撹拌した。冷却した後、反応混合物を、蒸発させ、酢酸エチル1Lに入れた。酢酸エチル相を、1N塩酸溶液(3×200ml)、水、飽和炭酸水素ナトリウム溶液、次いで飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を、乾燥し、ろ過し、次いで蒸発させた。粗生成物を、4×10-2ミリバールの下、50〜70℃で不純物(主としてベンジルアルコール)を留去することによって精製した。
【0092】
工程E:1−(3−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}プロピル)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸ベンジル
上記工程からのケトエステル(98g;0.239mol)の無水メタノール600ml中の溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(11.4g;0.301mol;1.25eq.)を−10℃で10部分として加えた。反応混合物を、−10℃に1時間保ち、次いで環境温度まで復帰させ、2時間撹拌した。メタノールを蒸発し去った後、反応混合物を、酢酸エチル1Lに入れた。有機相を、10%塩化アンモニウム溶液、水、次いで飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄した。有機相を、乾燥し、ろ過し、次いで蒸発させた。
【0093】
工程F:1−(3−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}プロピル)−2−[(メチルスルホニル)オキシ]シクロペンタンカルボン酸ベンジル(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
上記工程で得たアルコール(98g;0.238mol)の無水テトラヒドロフラン950ml中の溶液に、トリエチルアミン(49.53ml;0.357mol;1.5eq.)を環境温度で加えた。反応混合物を−30℃に冷却し、次いで、無水テトラヒドロフラン120mlに溶解した塩化メシル(27.61ml;0.357mol;1.5eq.)を滴加した。混合物を環境温度まで復帰させ、2時間撹拌した。テトラヒドロフランを蒸発し去った後、反応混合物を酢酸エチル1Lに入れた。有機相を、洗浄し、乾燥し、ろ過し、次いで蒸発させた。粗生成物を、ヘプタン/酢酸エチルの勾配(7/3〜6/4)を溶離剤として用いるシリカゲル(5kg)でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。トランスジアステレオ異性体は、溶出順の一番目である。
【0094】
工程G:2−(アセチルチオ)−1−(3−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}プロピル)シクロペンタンカルボン酸ベンジル(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
チオ酢酸カリウムの調製:非常に吸湿性−乾燥しないこと−その場で調製かつ使用する
無水アセトニトリル350ml中のチオ酢酸カリウム40gの懸濁液を、還流にて30分間加熱し、ろ過し、次いで2回目の操作を繰り返した。上記工程で得た(ラセミ性トランスの)メシラート(25g;0.051mol)の無水アセトニトリル800ml中の溶液に、予め洗浄したチオ酢酸カリウム(45g、吸引ろ過せず−理論値:29.2g;0.255mol;5eq.)、および18C6クラウンエーテル(13.5g;0.051mol;1eq.)を加え、反応混合物を還流にて20時間加熱した。冷却した後、反応混合物をろ過し、次いで、溶媒を蒸発し去った。粗生成物を、ヘプタン/酢酸エチルの勾配(8/2〜5/5)を溶離剤として用いるシリカゲル(2kg)でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
注:この最初のカラムは、予備精製、および反応しなかった出発材料の回収を許す。
期待される生成物(6.5g)を含有する部分を、ジクロロメタン/酢酸エチルの勾配(99/1〜95/5)を溶離剤として用いるシリカゲル(200g)でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0095】
工程H:(1R,2S)−2−(アセチルチオ)−1−(3−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}プロピル)シクロペンタンカルボン酸ベンジル
上記工程で得たラセミ性シス化合物の鏡像異性体を、CO2/EtOH(80/20)混合物を移動相として用いる、CHIRALPAK AD−H 5μmカラムでの分取キラルクロマトグラフィーによって分離した。検出波長は230nmであった。
(1R,2S)鏡像異性体=鏡像異性体2は、溶出順の二番目である。
【0096】
工程I:(1R,2S)−1−(3−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}プロピル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸ベンジル
上記工程で得た化合物(8.16g;0.0174mol)の脱気した無水ジオキサン150ml中の溶液に、1N水酸化ナトリウム溶液(35ml;0.0348mol;2eq.)を10℃で滴加した。混合物を60℃で30分間加熱した。冷却した後、反応混合物を、1N塩酸35mlを加えることによって中和し、次いで凍結乾燥に付した。
【0097】
工程J:(1R,2S)−1−(3−アミノプロピル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート
2リットル入り反応器内で、アンモニア600mlを濃縮し、−78℃で、ナトリウム(10g;0.435mol;25eq.)を10部分として加えた。反応混合物を−78℃に45分間保った。次いで、上記工程で得た化合物のテトラヒドロフラン/メタノール(140ml/12ml)の予め脱気した混合物中の溶液を、30分かけて滴加した。撹拌を−78℃で1時間継続し、混合物を環境温度まで復帰させ、撹拌した。アンモニアを除去した後、塩化アンモニウム溶液(水110ml中23.3g)を反応混合物に30分かけて加え、テトラヒドロフランを蒸発し去り、次いで、6M塩酸溶液(15ml)による酸性化を実施した。ろ過、次いで凍結乾燥を実施した。
【0098】
粗生成物を、水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸の勾配(10分間100/0/0.1、次いで20分かけて100/0/0.1〜70/30/0.1、その後70/30/0.1での定組成操作)を移動相として用いる、クロマジル(Kromasil)カラムでの分取HPLCによって脱塩した。期待される生成物、および対応する二量体(ジスルフィド架橋)も含有する画分を、凍結乾燥に付した。酢酸100ml中の上記凍結乾燥体(4.3g)の溶液に、亜鉛4.5g(10eq.)を加え、次いで、激しく撹拌しつつ、二量体が消失するまで(約6時間)、反応混合物を60℃に加熱した。冷却した後、反応混合物をろ過し、ろ液を水400mlで希釈し、次いで凍結乾燥に付した。
【0099】
粗生成物を、水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸の混合物(85/15/0.1)を移動相として用いる、クロマジルカラム(1kg;600mm×60mm;70ml/分)での分取HPLCによって精製した。期待される生成物を含有する画分を、凍結乾燥に付した。
旋光度:溶媒:メタノール、C=1、T=21℃、L=589nm、[α]D=+32.46°
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って204.1。
【0100】
実施例2
(1R,2S)−2−アセチルチオ−1−(3−アミノプロピル)シクロペンタンカルボン酸塩酸塩
実施例1工程Hの化合物(2.40g;4.72mmol)の無水ジクロロメタン20ml中の溶液に、4MHCl/ジオキサン溶液(35.5ml;141.6mmol;30eq.)を環境温度で滴加した。二つの機能が脱保護されるまで(LC/MSで確認;概算継続時間:一晩)、反応混合物を、撹拌しつつ環境温度で放置し、次いで、溶媒を蒸発し去った。得られた生成物を、水/アセトニトリル/1N塩酸混合物(1,000/1,000/2)を移動相として用いるBIOGEL P2カラムで精製した。期待される生成物を含有する画分を、凍結乾燥に付した。
【0101】
【表1】

【0102】
実施例3
(1R,2S)−1−(3−アミノプロピル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸塩酸塩
実施例2の化合物(4.51g;16mmol)の4MHCl溶液148ml中の溶液を、45℃に一晩加熱した。冷却した後、反応混合物を、水150mlで希釈し、次いで凍結乾燥に付した。粗生成物を、水/アセトニトリル混合物(95/5)を移動相として用いる、クロマジルカラム(1kg;600mm×60mm;70ml/分)での分取HPLCによって精製した。期待される生成物を含有する画分を、凍結乾燥に付した。
【0103】
【表2】

【0104】
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って204.1。
【0105】
実施例3a
(1R,2S)−1−(3−アミノプロピル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸
工程A:アジピン酸ジ−tert−ブチル
塩化アジポイル(629.8g;3.44mol)を、無水トルエン3L中のtert−ブタノール(3.27L;34.4mol;10eq.)およびピリジン(800ml;10.32mol;3eq.)の溶液に、環境温度で滴加した。反応混合物を、70℃で一晩撹拌しつつ加熱した。冷却した後、塩化ピリジニウムの沈殿をろ別し、トルエンで洗浄した。トルエン相を、1N塩酸溶液(4×500ml)、10%炭酸ナトリウム溶液(1×500ml)、水(1×500ml)、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(1×500ml)で洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、次いで蒸発させた。得られた粗生成物を、減圧下での分留(100℃/2×10-2mmHg)によって精製した。
【0106】
工程B:2−オキソシクロペンタンカルボン酸tert−ブチル
tert−ブタノール(5.66ml;0.06mol;0.05eq.)およびアジピン酸ジ−tert−ブチル14gを、無水トルエン1.1L中のNaH(60%の物質108.54g;2.71mol;2.15eq.)の懸濁液に環境温度で注ぎ込んだ。反応混合物を還流にて加熱した。その温度で、無水トルエン500mlに溶解したアジピン酸ジ−tert−ブチル(324.6g;1.26mol)の溶液を、気体の発生を制御しつつ滴加した。添加の概算継続時間:3時間
注:アジピン酸ジ−tert−ブチルの添加の途上で、反応混合物の実質的な凝集が観察されると思われるが、これは懸濁液へと進展することになる。
【0107】
添加が完了したならば、反応混合物を還流にて5時間保った。冷却した後、反応混合物を、10%酢酸溶液(1L)を用いて、0℃で加水分解した。有機相を分離し、水相をトルエン(300ml)で抽出した。併せたトルエン相を、水(2×300ml)、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(300ml)で洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、次いで蒸発させた。橙色の油状物を、減圧下での分留(65〜70℃/1×10-1mmHg)によって精製した。
【0108】
工程C:(1S)−2−オキソ−1−(3−オキソプロピル)シクロペンタンカルボン酸tert−ブチル
無水ジクロロメタン10ml中のアクロレイン(4.19g;74.83mmol;2.5eq.)の溶液を、無水ジクロロメタン60ml中の2−オキソ−シクロペンタンカルボン酸tert−ブチル(5.51g;29.93mmol)および触媒Q(1.46g;2.99mmol;0.1eq.)の溶液に、アルゴン下、−25℃で30分かけて、徐々に撹拌しつつ注ぎ込んだ。
【0109】
【化23】

【0110】
添加の終点で、反応混合物を、その温度で4時間、次いで−5℃で一晩撹拌した。ろ液を蒸発させて、無色の油状物を得た。
【0111】
工程D:(1S)−1−(3−ヒドロキシプロピル)−2−オキソシクロペンタンカルボン酸tert−ブチル
上記工程からのケトエステルアルデヒド(6.5g;26.9mmol)の無水テトラヒドロフラン80ml中の溶液に、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(6.84g;32.3mmol;1.2eq.)を加えた。反応混合物を、還流にて撹拌しつつ5時間30分加熱した。環境温度に復帰させた後、反応混合物を蒸発させた。残渣をCH2Cl2100mlに入れ、飽和重炭酸ナトリウム溶液(2×20ml)で洗浄した。塩基性の水相をCH2Cl2で抽出した。合わせた有機相を、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、次いで蒸発させた。粗生成物を、CH2Cl2/イソプロパノール混合物(95/5)を溶離剤として用いる、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0112】
工程E:(1S)−1−(3−ブロモプロピル)−2−オキソシクロペンタンカルボン酸tert−ブチル
上記工程からのアルコール(5.4g;22.12mmol)およびトリフェニルホスフィン(6.7g;25.44mmol;1.15eq.)の無水ジクロロメタン35ml中の溶液に、N−ブロモスクシンイミド(4.53g;25.44mmol;1.15eq.)を、温度を5℃に保ちつつ部分として加えた。環境温度で1時間撹拌した後、反応混合物を蒸発させた。残渣をイソプロピルエーテル100mlに入れ、摩砕して、トリフェニルホスフィン=オキシドの結晶を得た。この固体をろ別し、すすいだ。ろ液を濃縮し、次いでペンタンに入れ、次いで再びろ過した。ペンタンを含有するろ液を蒸発させた。粗生成物を、ヘプタン/酢酸エチル混合物(8/2)を溶離剤として用いる、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによってろ過した。
【0113】
工程F:(1S,2R)−1−(3−ブロモプロピル)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸tert−ブチル
環境温度で撹拌しつつ、商業的に入手可能である(+)DIPClのヘキサン中1.8Mの溶液(320ml;0.577mol;1.5eq.)を、上記工程の途上で得られたケトエステル(117.5g;0.385mol)に注ぎ掛けた。反応混合物を、55℃で一晩、環境温度で撹拌した。反応混合物に、エチルエーテル950ml、次いで0℃で撹拌しつつ、アセトアルデヒド(35.9ml;0.635mol;9.65eq.)を加えた。反応混合物を、環境温度で4時間撹拌した。反応混合物を10℃に冷却した後、6N水酸化ナトリウム溶液(480ml;2.88mol;7.5eq.)を加えた。反応混合物を、環境温度で1時間撹拌した。有機相を、分離し、水(3×300ml)、10%クエン酸溶液(2×300ml)、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(3×150ml)で洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥し、次いで蒸発させた。粗生成物を、ヘプタン/酢酸エチルの勾配(95/5〜85/15)を溶離剤として用いる、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0114】
工程G:(1S,2R)−1−{3−[ビス(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]プロピル}ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸tert−ブチル
上記工程からの臭素化したアルコール(11.8g;36.06mmol)の無水DMF110ml中の溶液に、環境温度で、イミノジカルボン酸ジ−tert−ブチル(7.83g;36.06mmol;1eq.)、次いで炭酸セシウム(11.75g;36.06mmol;1eq.)を加えた。反応混合物を、環境温度で3時間撹拌した。反応混合物をろ過した。ろ液を濃縮した後、油状の残渣を酢酸エチル300mlに入れた。酢酸エチル相を、水(3×100ml)、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(100ml)で洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、蒸発させた。粗生成物を、ヘプタン/酢酸エチルの勾配(9/1〜85/15)を溶離剤として用いる、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0115】
工程H:(1S,2R)−1−{3−[ビス(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]プロピル}−2−[(メチルスルホニル)オキシ]シクロペンタンカルボン酸tert−ブチル
上記工程からのアルコール(8.70g;19.7mmol)の無水テトラヒドロフラン130ml中の溶液に、トリエチルアミン(4.11ml;29.55mmol;1.5eq.)を環境温度で加えた。反応混合物を、−30℃に冷却し、次いで、無水テトラヒドロフラン10mlに溶解した塩化メシル(2.29ml;29.55mmol;1.5eq.)に滴加した。混合物を環境温度に復帰させ、2時間撹拌した。テトラヒドロフランを蒸発し去った後に、反応混合物を酢酸エチル200mlに入れた。酢酸エチル相を、水(2×20ml)、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(1×20ml)で洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、次いで蒸発させた。粗生成物を、ヘプタン/酢酸エチルの勾配(85/15〜8/2)を溶離剤として用いる、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。
【0116】
工程I:(1R,2S)−2−(アセチルチオ)−{3―[ビス(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]プロピル}シクロペンタンカルボン酸tert−ブチル
上記工程で得た化合物から出発して、実施例1の工程Gの手順に従って、期待される生成物を得た。
【0117】
工程J:(1R,2S)−1−(3−アミノプロピル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸塩酸塩
酸およびアミン機能の脱保護
上記工程で得た化合物(8.80g;17.6mmol)の無水CH2Cl2100ml中の溶液に、4MHCl/ジオキサン溶液(132ml;0.53mol;30eq.)を環境温度で滴加した。二つの機能が脱保護されるまで(LC/MSで確認;概算継続時間:一晩)、反応混合物を、撹拌しつつ環境温度で放置し、次いで、溶媒を蒸発し去った。得られた生成物は、精製せずに次の工程で用いた。
【0118】
チオールの脱保護
蒸発生成物を、予めアルゴンで脱気した4MHCl水溶液200mlに入れ、次いで45℃に一晩加熱した。冷却した後、反応混合物を脱気した水100mlで希釈し、次いで凍結乾燥に付した。
【0119】
工程K:(1R,2S)−1−(3−アミノプロピル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸
上記工程の化合物(10g;41.5mmol)を水80mlに溶解し、撹拌した。溶液は、透明な淡黄色になった(pH:約1.2)。撹拌しつつ、飽和重炭酸ナトリウム溶液約11mlを加えた。pH=4から最初の沈殿が観察されて、これをろ別した。次いで、ろ液をpH=5.5まで更に塩基性にさせ、形成される都度、沈殿をろ別した。ろ液を減圧下で蒸発させた(浴温=55℃)。約10mlの溶液が残存するときに、再びろ過を実施した。相当する量の沈殿を回収し、減圧下で乾燥して、標記生成物を得た。
【0120】
【表3】

【0121】
実施例3b
(1R,2S)−1−(3−アミノプロピル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸ホスファート
実施例3aの化合物を、水中85%のリン酸と反応させ、次いで凍結乾燥に付した。
【0122】
【表4】

【0123】
実施例3c
(1R,2S)−1−(3−アミノプロピル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸=ベシラート
実施例3aの化合物を、水中でベンゼンスルホン酸と反応させ、次いで凍結乾燥に付した。
【0124】
【表5】

【0125】
実施例4
(1S,2R)−1−(3−アミノプロピル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート
実施例1の工程IおよびJに記載の手順に従い、実施例1の工程Hで得た他方の鏡像異性体、すなわち(1S,2R)−2−(アセチルチオ)−1−(3−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}プロピル)シクロペンタンカルボン酸ベンジルから出発して、期待される生成物を得た。
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って204.1。
【0126】
実施例5
(1S,2R)−2−アセチルチオ−1−(3−アミノプロピル)シクロペンタンカルボン酸塩酸塩
実施例2について記載の手順に従い、実施例1の工程Hで得た他方の鏡像異性体、すなわち(1S,2R)−2−(アセチルチオ)−1−(3−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}プロピル)シクロペンタンカルボン酸ベンジルから出発して、期待される生成物を得た。
【0127】
【表6】

【0128】
実施例6
1−(3−アミノプロピル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例1の工程IおよびJに記載の手順に従い、実施例1の工程Gで得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って204.1。
【0129】
実施例7
1−(4−アミノブチル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
工程A:1−(4−ブロモブチル)−2−オキソシクロペンタンカルボン酸ベンジル
磁気撹拌器およびコンデンサーを備えた500ml入り三ツ口フラスコ内、不活性窒素雰囲気下で、95%水素化ナトリウム(2.2g;87.1mmol;1.25eq.)を無水THF(115ml)およびHMPA(14.6ml)の混合物に懸濁させた。無水THF45ml中の2−オキソシクロペンタンカルボン酸ベンジル(15.3g;70.3mmol)の溶液を、45℃未満の温度を保つように滴加した。反応混合物を環境温度で1時間撹拌した。透明な黄色の溶液に、1,4−ジブロモブタン(12.6ml;105.4mmol;1.5eq.)を加えた。反応混合物を、還流にて14時間再び撹拌した。環境温度に復帰した後、飽和塩化アンモニウム水溶液80mlを加えた。混合物を、エーテル500mlに注ぎ込み、有機相を、水100ml、次いで飽和塩化ナトリウム水溶液100mlで5回洗浄した。有機相を、MgSO4で乾燥し、ろ過し、濃縮した。生成物を、シクロヘキサン/酢酸エチルの混合物(勾配:95/5〜80/20)を溶離剤として用いるシリカゲルで精製して、期待される生成物を黄色の油状物の形態で得た。
【0130】
工程B:1−(4−ブロモブチル)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸ベンジル
実施例1の工程Eに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
【0131】
工程C:1−(4−アジドブチル)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸ベンジル
フラスコ内、不活性窒素雰囲気下で、上記工程で得た化合物(4.41g;16.6mmol)、アジ化ナトリウム(5.5g;84.6mmol;5eq.)およびヨウ化ナトリウム(0.2g)を、エタノール60mlに懸濁させた。反応混合物を、還流にて24時間撹拌し、次いで濃縮乾固した。油状の残渣を、エーテル150mlおよび水80mlに溶解した。有機相を、水80mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液40mlで洗浄した。有機相を、MgSO4で乾燥し、ろ過し、濃縮した。形成されたラセミ性トランスおよびラセミ性シスアジ化物の混合物を、そのようなものとして次の反応で用いた。
【0132】
工程D:1−(4−アミノブチル)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸ベンジル
フラスコ内で、ラセミ性トランスおよびラセミ性シスアジ化物の混合物(20.64g;62.3mmol)、およびトリフェニルホスフィン(24.4g;93mmol;1.5eq.)をTHF500mlに溶解した。溶液を、50℃で1時間撹拌した。水(10ml;556mmol;9eq.)を加えた。反応混合物を、50℃で4時間撹拌し、次いで濃縮乾固した。油状の残渣をエーテル250mlに溶解し、有機相を1N塩酸水溶液120mlで2回抽出した。水相をエーテル100mlで洗浄した。水相のpHを、固体の水酸化カリウムを加えることによって12〜13にした。水相を酢酸エチル250mlで3回抽出した。合わせた有機相を、水100ml、次いで飽和塩化ナトリウム水溶液100mlで洗浄した。有機相を、MgSO4で乾燥し、ろ過し、濃縮した。シス/トランス混合物の形態で得た期待される生成物を、そのようなものとして次の反応で用いた。
【0133】
工程E:1−(4−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}ブチル)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸ベンジル
フラスコ内で、上記工程で得た生成物(62.3mmol)をジオキサン160mlに溶解した。水160ml中の炭酸ナトリウム(13.16g;124mmol;2eq.)の水溶液を加えた。0℃で、ジオキサン30ml中のクロロギ酸ベンジル(12ml;84.4mmol;1.35eq.)の溶液を徐々に加えた。反応混合物を、環境温度で12時間撹拌し、次いで部分的に濃縮した。水相をエーテル250mlで2回抽出した。合わせた有機相を、洗浄し、乾燥し、ろ過し、そして濃縮した。
【0134】
生成物を、シリカゲル(石油エーテル/酢酸エチル:9/1〜2/8の勾配)で精製して、期待される生成物を黄色の油状物の形態で得た。
【0135】
工程F:1−(4−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}ブチル)−2−[(メチルスルホニル)オキシ]シクロペンタンカルボン酸ベンジル(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例1の工程Fに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。このシスジアステレオ異性体は、溶出順の一番目である。
【0136】
工程G:2−(アセチルチオ)−1−(4−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}ブチル)シクロペンタンカルボン酸ベンジル(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
実施例1の工程Gに記載の手順に従い、上記工程で得たシス化合物から出発して、期待される生成物を得た。
【0137】
工程H:1−(4−アミノブチル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
実施例1の工程IおよびJに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
【0138】
【表7】

【0139】
実施例8
1−(4−アミノブチル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
工程A:1−(4−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}ブチル)−2−[(メチルスルホニル)オキシ]シクロペンタンカルボン酸ベンジル(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
期待される生成物は、実施例7の工程Fで得た他方のジアステレオ異性体(トランスジアステレオ異性体)である。
【0140】
工程B:1−(4−アミノブチル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例1の工程G、IおよびJに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
【0141】
【表8】

【0142】
実施例9
1−(4−アミノブチル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(シスジアステレオ異性体、鏡像異性体1)
工程A:2−(アセチルチオ)−1−(4−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}ブチル)シクロペンタンカルボン酸ベンジル(シスジアステレオ異性体、鏡像異性体1)
実施例1の工程GおよびHに記載の手順に従い、実施例8の工程Aで得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。鏡像異性体1は、溶出順の一番目である。
【0143】
工程B:1−(4−アミノブチル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(シスジアステレオ異性体、鏡像異性体1)
実施例1の工程IおよびJに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って218。
【0144】
実施例10
1−(4−アミノブチル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(シスジアステレオ異性体、鏡像異性体2)
工程A:2−(アセチルチオ)−1−(4−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}ブチル)シクロペンタンカルボン酸ベンジル(シスジアステレオ異性体、鏡像異性体2)
期待される生成物は、実施例9の工程Aで得た他方の鏡像異性体である。
【0145】
工程B:1−(4−アミノブチル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(シスジアステレオ異性体、鏡像異性体2)
実施例1の工程IおよびJに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って218。
【0146】
実施例11
1−[(4−アミノメチル)ベンジル]−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
工程A:1−[(4−ブロモメチル)ベンジル]−2−オキソシクロペンタンカルボン酸ベンジル
実施例7の工程Aに記載の手順に従い、2−オキソシクロペンタンカルボン酸ベンジルおよび1,4−ジブロモメチルベンゼンから出発して、期待される生成物を得た。
【0147】
工程B:1−[(4−ブロモメチル)ベンジル]−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸ベンジル(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
実施例1の工程Eに記載の手順に従い、それによって得られた化合物のジアステレオ異性体分離の後、シクロヘキサン/酢酸エチルの混合物(90/10〜65/35の勾配)を溶離剤として用いるシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーによって、期待される生成物を得た。このトランスジアステレオ異性体は、溶出順の一番目である。
【0148】
工程C:1−[(4−アミノメチル)ベンジル]−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例7の工程C〜Hに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って266.1。
【0149】
実施例12
2−メルカプト−1−(ピペリジン−4−イルメチル)シクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
工程A:4−({1−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−2−ヒドロキシシクロペンチル}メチル)−1−ピペリジンカルボン酸ベンジル(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例7の工程AおよびBに記載の手順に従い、2−オキソシクロペンタンカルボン酸ベンジルおよび4−ブロモメチル−1−ピペリジンカルボン酸ベンジルから出発して、期待される生成物を得た。このシスジアステレオ異性体は、溶出順の二番目である。
【0150】
工程B:4−({1−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−2−[(メチルスルホニル)オキシ]シクロペンチル}メチル)−1−ピペリジンカルボン酸ベンジル(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例1の工程Fに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
【0151】
工程C:2−メルカプト−1−(ピペリジン−4−イルメチル)シクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
実施例1の工程G、IおよびJに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
【0152】
【表9】

【0153】
実施例13
2−メルカプト−1−(ピペリジン−4−イルメチル)シクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
工程A:4−({1−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−2−[(メチルスルホニル)オキシ]シクロペンチル}メチル)−1−ピペリジンカルボン酸ベンジル(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
期待される生成物は、実施例12の工程Bで得た他方のジアステレオ異性体(トランスジアステレオ異性体)である。
【0154】
工程B:2−メルカプト−1−(ピペリジン−4−イルメチル)シクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例1の工程G、IおよびJに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
【0155】
【表10】

【0156】
実施例14
1−(5−アミノペンチル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
工程A:1−(5−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}ペンチル)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸ベンジル
実施例7の工程A〜Eに記載の手順に従い、2−オキソシクロペンタンカルボン酸ベンジルおよび1,5−ジブロモペンタンから出発して、期待される生成物を得た。
【0157】
工程B:1−(5−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}ペンチル)−2−[(メチルスルホニル)オキシ]シクロペンタンカルボン酸ベンジル(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例1の工程Fに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。このシスジアステレオ異性体は、溶出順の二番目である。
【0158】
工程C:1−(5−アミノペンチル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
実施例1の工程G、IおよびJに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って232.1。
【0159】
実施例15
1−(5−アミノペンチル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
工程A:1−(5−{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}ペンチル)−2−[(メチルスルホニル)オキシ]シクロペンタンカルボン酸ベンジル(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
期待される生成物は、実施例14の工程Bで得られた他方のジアステレオ異性体(トランスジアステレオ異性体)である。
【0160】
工程B:1−(5−アミノペンチル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例1の工程G、IおよびJに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
【0161】
【表11】

【0162】
実施例16
2−メルカプト−1−(2−ピペリジン−4−イルエチル)シクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
工程A:4−(2−{1−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−2−ヒドロキシシクロペンチル}エチル)−1−ピペリジンカルボン酸ベンジル
実施例7の工程AおよびBに記載の手順に従い、2−オキソシクロペンタンカルボン酸ベンジルおよび4−(2−ブロモエチル)−1−ピペリジンカルボン酸ベンジルから出発して、期待される生成物を得た。このトランスジアステレオ異性体は、溶出順の一番目である。
【0163】
工程B:4−(2−{1−[(ベンジルオキシ)カルボニル]−2−[(メチルスルホニル)オキシ]シクロペンチル}エチル)−1−ピペリジンカルボン酸ベンジル(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
実施例1の工程Fに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
【0164】
工程C:2−メルカプト−1−(2−ピペリジン−4−イルエチル)シクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例1の工程G、IおよびJに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って258。
【0165】
実施例17
2−メルカプト−1−(ピリジン−3−イルメチル)シクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
工程A:2−オキソ−1−(3−ピリジルメチル)シクロペンタンカルボン酸ベンジル
磁気撹拌器およびコンデンサーを備えた1L入り三ツ口フラスコ内、不活性窒素雰囲気下で、32%水素化カリウム(25g;200mmol;1.1eq.)を無水THF(200ml)に懸濁させた。反応混合物を、−78℃に冷却し、次いで温度を−78℃未満に保ちつつ、2−オキソシクロペンタンカルボン酸ベンジル(39.7g;182mmol)を滴加した。反応混合物を環境温度で1時間撹拌した。無水THF100ml中の3−(クロロメチル)ピリジンなる塩基(38.7g;226mmol;1.24eq.)の溶液を、この透明な黄色の溶液に加えた。反応混合物を、還流にて12時間撹拌した。環境温度に復帰させた後、反応混合物を蒸発乾固し、水80mlおよび酢酸エチル500mlに入れた。水相を酢酸エチル50mlで3回抽出した。合わせた有機相を、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、次いでMgSO4で乾燥し、ろ過かつ濃縮した。生成物を、ジクロロメタン/エタノールの混合物(98/2〜95/5の勾配)を溶離剤として用いるシリカゲルで精製して、期待される生成物を黄色の油状物の形態で得た。
【0166】
工程B:2−ヒドロキシ−1−(3−ピリジルメチル)シクロペンタンカルボン酸ベンジル(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
実施例1の工程Eに記載の手順に従って、期待される生成物を得た。生成物を、ジクロロメタン/酢酸エチルの混合物(7/3〜5/5の勾配)を溶離剤として用いるシリカゲルで精製して、期待される生成物を無色の油状物の形態で得た。このトランスジアステレオ異性体は、溶出順の二番目である。
【0167】
工程C:2−メルカプト−1−(ピリジン−3−イルメチル)シクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例1の工程F、G、IおよびJに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
【0168】
【表12】

【0169】
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って238.1。
【0170】
実施例18
2−メルカプト−1−(2−ピペリジン−2−イルエチル)シクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
工程A:2−オキソ−1−(2−ピリジン−2−イルエチル)シクロペンタンカルボン酸ベンジル
実施例17の工程Aに記載の手順に従い、2−オキソシクロペンタンカルボン酸ベンジルおよび2−ピリジン−2−イルエタニル=メタンスルホナートから出発して、期待される生成物を得た。
【0171】
工程B:2−ヒドロキシ−1−(2−ピリジン−2−イルエチル)シクロペンタンカルボン酸ベンジル(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
実施例17の工程Bに記載の手順に従って、期待される生成物を得た。このトランスジアステレオ異性体は、溶出順の二番目である。
【0172】
工程C:2−メルカプト−1−(2−ピリジン−2−イルエチル)シクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例1の工程F、G、IおよびJに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
【0173】
【表13】

【0174】
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って252.1。
【0175】
実施例19
1−[(6−アミノピリジン−3−イルメチル)]−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
工程A:2−オキソシクロペンタンカルボン酸tert−ブチル
(1)アジピン酸ジ−tert−ブチル:
無水トルエン3L中のtert−ブタノール(3.27L;34.4mol;10eq.)およびピリジン(800ml;10.32mol;3eq.)の溶液に、塩化アジポイル(629.8g;3.44mol)を環境温度で滴加した。反応混合物を、撹拌しつつ70℃で一晩加熱した。冷却した後、塩化ピリジニウムの沈殿を、ろ別し、トルエンですすいだ。トルエン相を、1N塩酸溶液(4×500ml)、10%炭酸ナトリウム溶液(1×500ml)、水(1×500ml)、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(1×500ml)で洗浄した。有機相を、乾燥し、ろ過し、次いで蒸発させた。得られた粗油状物を、減圧下での分留(100℃/2×10-2mmHg)によって精製した。
【0176】
(2)2−オキソシクロペンタンカルボン酸tert−ブチル
無水トルエン1.1L中のNaH(実質60%、108.54g;2.71mol;2.15eq.)の懸濁液に、tert−ブタノール(5.66ml;0.06mol;0.05eq.)およびアジピン酸ジ−tert−ブチル14gを環境温度で注ぎ込んだ。反応混合物を還流にて加熱した。その温度で、無水トルエン500mlに溶解したアジピン酸ジ−tert−ブチル(324.6g;1.26mol)の溶液を、気体の発生を制御しつつ滴加した。添加の概算継続時間:3時間。
【0177】
注:アジピン酸ジ−tert−ブチルの添加の途上で、反応混合物の実質的な凝集が観察されるだろうが、これは懸濁液へと進展することになる。
【0178】
添加が完了したならば、反応混合物を還流にて5時間保った。冷却した後、反応混合物を、10%酢酸溶液(1L)を用いて、0℃で加水分解した。有機相を分離し、水相をトルエン(300ml)で抽出した。合わせたトルエン相を、水(2×300ml)、次いで飽和塩化ナトリウム溶液(300ml)で洗浄した。有機相を、硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、次いで蒸発させた。橙色の油状物を、減圧下での分留(65〜70℃/1×10-1mmHg)によって精製した。
【0179】
工程B:1−({6−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−ピリジル}メチル)−2−オキソシクロペンタンカルボン酸tert−ブチル
実施例17の工程Aに記載の手順に従い、2−オキソシクロペンタンカルボン酸tert−ブチルおよび[5−(クロロメチル)ピリジン−2−イル]カルバミン酸tert−ブチルから出発して、期待される生成物を得た。
【0180】
工程C:1−({6−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−ピリジル}メチル)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸tert−ブチル
実施例17の工程Bに記載の手順に従って、期待される生成物を得た。生成物を、ジクロロメタン/エタノールの混合物(98/2〜95/5の勾配)を溶離剤として用いるシリカゲルで精製して、期待される生成物を無色の油状物の形態で得た。このトランスジアステレオ異性体は、溶出順の二番目である。
【0181】
工程D:1−({6−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−3−ピリジル}メチル)−2−[(メチルスルホニル)オキシ]シクロペンタンカルボン酸tert−ブチル(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
実施例1の工程Fに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
【0182】
工程E:1−[(6−アミノピリジン−3−イルメチル)]−2−(アセチルチオ)シクロペンタンカルボン酸(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例1の工程Gに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
【0183】
工程F:1−[(6−アミノピリジン−3−イルメチル)]−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
酸およびアミン機能の脱保護
上記工程で得た化合物(2.40g;4.72mmol)の無水CH2Cl220ml中の溶液に、4MHCl/ジオキサン溶液(35.5ml;141.6mmol;30eq.)を環境温度で滴加した。二つの機能(アミンおよび酸)が脱保護されるまで(LC/MSによって確認;概算継続時間:一晩)、反応混合物を、撹拌しつつ環境温度で放置し、次いで、溶媒を蒸発し去った。
【0184】
チオールの脱保護
蒸発生成物を4MHCl水溶液に入れ、次いで45℃に一晩加熱した。反応混合物を水で希釈し、次いで凍結乾燥に付した。生成物を、水/アセトニトリル混合物(1/1)を溶離剤として用いるBIOGEL P2で精製した。期待される生成物を含有する画分を凍結乾燥に付した。
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って253.1。
【0185】
実施例20
(1R,2S,1’R,2’S)−2,2’−ジスルファンジイルビス[1−(3−アミノプロピル)シクロペンタンカルボン酸]二塩酸塩
実施例1の工程Jに記載の化合物(0.44g;1.39mmol)の1N水酸化ナトリウム3ml中の溶液を、65℃に一晩加熱した。冷却した後、反応混合物を1N塩酸溶液3mlで中和した。生成物を、水/アセトニトリル混合物(1/1)を溶離剤として用いるBIOGEL P2で精製した。期待される生成物を含有する画分を凍結乾燥に付した。
【0186】
【表14】

【0187】
実施例21
(1R,2S)−1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート
工程A:(1R,2S,1’R,2’S)−2,2’−ジスルファンジイルビス[1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)シクロペンタンカルボン酸
実施例20で得た化合物(0.57g;0.70mmol)のギ酸4.5ml中の溶液に、37%ホルムアルデヒド水溶液0.2mlを環境温度で滴加した。反応混合物を、撹拌しつつ還流にて1時間加熱した。冷却した後、反応混合物を水10mlで希釈し、溶媒を蒸発し去った。生成物は、精製せずに次の工程で用いた。
【0188】
工程B:(1R,2S)−1−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート
上記工程で得た化合物の水/THF混合物(1/1)35ml中の溶液に、トリブチルホスフィン2mlを環境温度で滴加した。反応混合物を、撹拌しつつ50℃で一晩加熱した。冷却した後、反応混合物を水100mlで希釈し、次いで、水相をエーテル(3×25ml)で洗浄した。水相を蒸発させた。粗生成物を、水/アセトニトリル/トリフルオロ酢酸混合物(85/15/0.1)を移動相として用いるクロマジルカラム(1kg;600mm×60mm;70ml/分)での分取HPLCによって精製した。期待される生成物を含有する画分を凍結乾燥に付した。
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って232.1。
【0189】
実施例22
1−[3−(メチルアミノ)プロピル]−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
工程A:2−[(メチルスルホニル)オキシ]−1−(3−ピリジルメチル)シクロペンタンカルボン酸ベンジル(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
実施例17の工程A、BおよびCに記載の手順に従い、2−オキソシクロペンタンカルボン酸ベンジルおよび3−[[(ベンジルオキシ)カルボニル](メチル)アミノ]プロピル=メタンスルホナートから出発して、期待される生成物を得た。このトランスジアステレオ異性体は、溶出順の二番目である。
【0190】
工程B:1−[3−(メチルアミノ)プロピル]−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例1の工程G、IおよびJに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って218.1。
【0191】
実施例23
2−メルカプト−1−(アゼチジン−3−イルメチル)シクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
工程A:3−({1−(tert−ブチルオキシカルボニル)−2−ヒドロキシシクロペンチル}メチル)−1−アゼチジンカルボン酸ベンジル
実施例7の工程AおよびBに記載の手順に従い、2−オキソシクロペンタンカルボン酸ベンジルおよび3−{[(メチルスルホニル)オキシ]メチル}アゼチジン−1−カルバミン酸tert−ブチルから出発して、期待される生成物を得た。
【0192】
工程B:3−({1−(tert−ブチルオキシカルボニル)−2−[(メチルスルホニル)オキシ]シクロペンチル}メチル)−1−アゼチジンカルボン酸ベンジル(ラセミ性トランスジアステレオ異性体)
実施例19の工程Dに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。生成物を、ジクロロメタン/酢酸エチル混合物(9/1〜8/2の勾配)を溶離剤として用いるシリカゲルで精製して、期待される生成物を無色の油状物の形態で得た。このトランスジアステレオ異性体は、溶出順の二番目である。
【0193】
工程C:2−メルカプト−1−(アゼチジン−3−イルメチル)シクロペンタンカルボン酸トリフルオロアセタート(ラセミ性シスジアステレオ異性体)
実施例19の工程Fに記載の手順に従い、上記工程で得た化合物から出発して、期待される生成物を得た。
[M+H]+のCAD/MS/MSスペクトル=期待される構造に従って216.1。
薬理学的研究
【0194】
実施例24
TAFIaの阻害
精製したヒトTAFI(25ng)を、塩化カルシウムの存在下でトロンビン−トロンボモジュリン複合体を加えることによって活性化した。20℃で20分間インキュベートした後、不可逆的トロンビンインヒビターであるPPACK(TAFI Activity Kit、American Diagnostica)を加えることによって、反応を停止した。
【0195】
(3.2nMの)TAFIa溶液に、試験下の化合物を加え、20℃で5分間インキュベートした。発色性のTAFIa基質を加え、次いで37℃で30分間インキュベートした。硫酸(TAFI Activity Kit、American Diagnostica)を加えることによって、この酵素反応を停止した。分光光度計(Spectramax、Molecular Devices)を用いて、溶液の光学密度(OD)を490nmで測定した。測定されたOD値のそれぞれから、TAFIなしの試薬を含むウェルのOD値を減算した。試験下の化合物の与えられた濃度でのTAFIaの阻害百分率を、下記の公式を用いて決定した:
阻害百分率=100−[(化合物のOD×100)/担体のOD]
増加する濃度の試験下の化合物について測定したOD値の阻害百分率から、本発明の化合物の、TAFIaの酵素活性の50%を阻害する濃度(IC50)を、S字状4パラメーター方程式による非線形回帰(効果/用量)を用いて算出した。本発明の代表的な化合物で得られたIC50値を、下表にnMで記録した:
【0196】
【表15】

【0197】
実施例25
薬学的組成物−錠剤
活性成分10mgをそれぞれ含有する1,000錠の製造処方:
実施例1〜23の一つの化合物・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10g
ヒドロキシプロピルセルロース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2g
コムギでん粉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10g
乳糖・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100g
ステアリン酸マグネシウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3g
タルク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3g
【0198】
実施例26
薬学的組成物−錠剤:ワルファリンと併用
活性成分10mgをそれぞれ含有する1,000錠の製造処方:
実施例1〜23の一つの化合物・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10g
ワルファリン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2g
ヒドロキシプロピルセルロース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2g
コムギでん粉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10g
乳糖・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100g
ステアリン酸マグネシウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3g
タルク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3g
【0199】
実施例27
薬学的組成物−錠剤、アスピリンと併用
活性成分10mgをそれぞれ含有する1,000錠の製造処方:
実施例1〜23の一つの化合物・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10g
アスピリン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100g
ヒドロキシプロピルセルロース・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2g
コムギでん粉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10g
乳糖・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・100g
ステアリン酸マグネシウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3g
タルク・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3g
【0200】
実施例28
注射可能液剤、アルテプラーゼと併用
液剤10mlの製造処方:
実施例1〜23の一つの化合物・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20mg
アルテプラーゼ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10mg
L−アルギニン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・350μg
ポリソルベート80・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1mg
リン酸・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・pH7となる量
注射用水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10ml

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化24】


[式中、
1は、水素原子、または式COR4で示される基(R4は、直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基またはアリール基を表す)を表すか、あるいはR1は、式(A):
【化25】


で示される基を表し、
2は、式NR56で示される基(R5およびR6は、同じであるか、または異なり、それぞれ水素原子、または直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基を表す)を表すか、あるいはR2は、窒素含有複素環基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、
3は、水素原子、または直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基を表し、
mは、両端を含めて1〜6の整数を表し、
nは、0、1または2を表す]
で示される化合物、その光学異性体、および薬学的に許容され得る酸とのその付加塩。
【請求項2】
1が、水素原子を表す、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
2が、アミノまたはピリジル基を表す、請求項1または2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
3が、水素原子を表す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
mが、3を表す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
nが、1を表す、請求項1〜5のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
式(Ia):
【化26】


[式中、n、R1、R3、R5およびR6は、請求項1に定義されたとおりである]
で示される、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
(1R,2S)−1−(3−アミノプロピル)−2−メルカプトシクロペンタンカルボン酸、その光学異性体および薬学的に許容され得る酸とのその付加塩、ならびに
(1R,2S)−2−アセチルチオ−1−(3−アミノプロピル)シクロペンタンカルボン酸、その光学異性体および薬学的に許容され得る酸とのその付加塩
から選ばれる、請求項1記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
請求項1記載の式(I)の化合物を合成する方法であって、式(II)
【化27】


[式中、nは、0、1または2を表し、そしてGは、カルボキシ基の保護基を表す]
で示される化合物から出発して、これを、式(III):
【化28】


[式中、Xは、ハロゲン原子、またはトリフラート、トシラートもしくはメシラート基を表し、mは、両端を含めて1〜6の整数を表し、そしてR’2は、式NR’5R’6(R’5およびR’6は、同じであっても、または異なってもよく、それぞれ、アミノ基の保護基、または直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基を表す)で示される基を表すか、またはR’2は、アミノ基の保護基で場合により置換されている窒素含有複素環基を表すか、またはR’2は、アリールもしくはヘテロアリール基を表す]
で示される化合物と反応させて、式(IV):
【化29】


[式中、R’2、G、mおよびnは、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これをオキソ基の還元剤に供し、式(V):
【化30】


[式中、R’2、G、mおよびnは、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、塩化メシル、塩化トシル、トリフルオロメタンスルホン酸無水物またはハロゲン化剤と反応させて、式(VI):
【化31】


[式中、R’2、G、mおよびnは、上記に定義されたとおりであり、そしてXは、メシラート、トシラートもしくはトリフラート基、またはハロゲン原子を表す]
で示される化合物を得て、式(I)の化合物を単一のジアステレオ異性体の形態で得るのが所望されるときは、そのジアステレオ異性体を分離して、次いで、これを、式(VII):
【化32】


[式中、Mは、カリウム、ナトリウムまたはリチウムを表し、そしてR’1は、アルキルまたはアリール基を表す]
で示される化合物と反応させて、式(VIII):
【化33】


[式中、R’1、R’2、G、mおよびnは、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、式(I)の化合物を単一の鏡像異性体の形態で得るのが所望されるときは、その鏡像異性体をキラルクロマトグラフィーによって分離し、適用可能ならば、そのチオール、アミノおよびカルボキシ基を脱保護して、式(I)の化合物を得て、薬学的に許容され得る酸との式(I)の化合物の付加塩を得るのが所望されるときは、対応する酸と反応させる、式(I)の化合物を製造する方法。
【請求項10】
請求項7記載の式(Ia)の化合物を製造する方法であって、式(II):
【化34】


[式中、nは、0、1または2を表し、そしてGは、カルボキシ基の保護基を表す]
で示される化合物から出発して、これを、不斉触媒の存在下で、アクロレインと反応させて、立体配置(1R)または(1S)の式(IX):
【化35】


[式中、nおよびGは、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、そのアルデヒド基を還元して、式(X):
【化36】


[式中、nおよびGは、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、塩化メシル、塩化トシル、トリフルオロメタンスルホン酸無水物またはハロゲン化剤と反応させて、式(XI):
【化37】


[式中、nおよびGは、上記に定義されたとおりであり、そしてXは、ハロゲン原子、またはトリフラート、トシラートもしくはメシラート基を表す]
で示される化合物を得て、そのケトン基を、還元剤を用いて還元して、式(XII):
【化38】


[式中、n、GおよびXは、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、式(XIII):
【化39】


[式中、R”5およびR”6は、それぞれ、アミノ基の保護基、または直鎖もしくは分枝鎖C1〜C6アルキル基を表す]
で示される化合物と反応させて、式(XIV):
【化40】


[式中、n、G、R”5およびR”6は、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、これを、塩化メシル、塩化トシル、トリフルオロメタンスルホン酸無水物またはハロゲン化剤と反応させて、式(XV):
【化41】


[式中、n、G、R”5およびR”6は、上記に定義されたとおりであり、そしてXは、メシラート、トシラートもしくはトリフラート基、またはハロゲン原子を表す]
で示される化合物を得て、そうしてこれを、式(VII):
【化42】


[式中、Mは、カリウム、ナトリウムまたはリチウムを表し、そしてR’1は、アルキルまたはアリール基を表す]
で示される化合物と反応させて、式(XVI):
【化43】


[式中、n、R’1、G、R”5およびR”6は、上記に定義されたとおりである]
で示される化合物を得て、適用可能ならば、そのチオール、アミノおよびカルボキシ基を脱保護して、式(Ia)の化合物を得て、薬学的に許容され得る酸との式(Ia)の化合物の付加塩を得ることが所望されるときは、対応する酸と反応させる方法。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の式(I)の化合物を、薬学的に許容され得る、不活性かつ無毒性の一つまたはそれ以上の賦形剤もしくは担体とともに含む薬学的組成物。
【請求項12】
フィブリン溶解剤、抗凝固剤または抗血小板剤を更に含むことを特徴とする、請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項13】
組換えtPA、組換えuPAおよびストレプトキナーゼから選ばれるフィブリン溶解剤を更に含むことを特徴とする、注射可能形態での請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項14】
医薬の製造における請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物の使用であって、心筋梗塞、狭心症、下肢動脈炎、静脈血栓症、肺塞栓症、脳血管発作、糖尿病の血管併発症、大動脈瘤または認知症の予防、二次的予防ならびに治療のための使用。
【請求項15】
フィブリン溶解剤、抗凝固剤または抗血小板剤と併用する、請求項14記載の化合物の使用。

【公開番号】特開2011−6416(P2011−6416A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−144460(P2010−144460)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(500287019)レ ラボラトワール セルヴィエ (166)
【出願人】(510178024)アンスティテュ・ナショナル・デ・シアンス・アプリケ・ドゥ・ルーアン (2)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DES SCIENCES APPLIQUEES DE ROUEN
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【出願人】(509017435)ユニヴェルシテ・ドゥ・ルーアン (5)
【Fターム(参考)】