説明

最終減速装置

【課題】最終減速歯車装置の出力ギヤと遊星歯車装置との支持構造の簡素化を図ることができる最終減速装置を提供する。
【解決手段】ベベルリングギヤ142(ファイナルギヤ装置14)及び遊星歯車装置16(ベアリングハウジング15)を支持する軸受部材に、ラジアル荷重及びアキシアル荷重に対する負荷能力があり、かつベベルリングギヤ142の内周面に接合するようにベベルリングギヤ142の内周面に向かって延びた凸部としてのフランジ部181aがアウタレース181に設けられたラジアル軸受としてのアンギュラ玉軸受18を用いる。さらに、ベベルリングギヤ142の内周面には、フランジ部181aの一側端面に接合する係合突起部142cを設け、フランジ部181aの両側端面を係合突起部142cとベアリングハウジング15とが挟んだ状態で、ベベルリングギヤ142とベアリングハウジング15とを結合固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最終減速装置に関し、特に、最終減速歯車装置(ファイナルギヤ装置)、差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ装置)、遊星歯車装置を備えた最終減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、最終減速装置は、エンジンからの駆動力を左右駆動輪に伝達するように前後方向に延びた入力軸の回転方向を、左右方向に延びた左右駆動軸の回転方向に変換する最終減速歯車装置(ファイナルギヤ装置)と、ファイナルギヤ装置を経た駆動力を左右駆動軸(左右駆動輪)に均等に配分しながら、車両旋回時には左右駆動軸を異なる回転数で回転させる差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ装置)とを備えている。
【0003】
ファイナルギヤ装置には、直交軸ギヤの1つであるハイポイドギヤが用いられてきたが(例えば、特許文献1参照)、ハイポイドギヤは、ベベルギヤ(スパイラルベベルギヤも含む)に比べてピニオンギヤをオフセットすることにより、振動を抑えたり減速比を大きくとることができるものの、オフセットが大きくなるにつれて低負荷時のフリクションが増加したり、最終減速装置の大型化を招いてしまう。
【0004】
そこで、ファイナルギヤ装置にオフセット0のベベルギヤを用いると共に、ハイポイドギヤを用いた場合とほぼ同様の減速比を得るために、ファイナルギヤ装置とディファレンシャルギヤ装置との間に、遊星歯車装置(減速機構部)を介設することによって(例えば、特許文献2参照)、最終減速装置の効率を改善し、かつ小型化や歯車異音(ギヤ音)の低減化を図ることが本願出願人から既に提案されている(例えば、出願番号:特願2007−146986号参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2007−40339号公報(図2)
【特許文献2】特開昭64−6548号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、本願出願人が先に提案した最終減速装置(11)にあっては、図4に示されるように、ディファレンシャルケース(141)の半径方向に設けた円筒コロ軸受(20)及びブッシュ(22)によって、ベベルギヤ(12)の出力ギヤであるベベルリングギヤ(122)と遊星歯車装置(13)のサンギヤ(131)とを支持するようになっている。しかしながら、円筒コロ軸受(20)やブッシュ(22)は、アキシアル荷重に対する負荷能力が低い。そのため、ベベルリングギヤ(122)とこれに連なった遊星歯車装置(13)とからのアキシアル荷重を受けるためには、遊星歯車装置(13)のレイアウト上、ディファレンシャルケース(141)とサンギヤ(131)との間、及び、ベベルリングギヤ(122)及びサンギヤ(131)を連結する連結部材(123)とプラネタリキャリア(134)との間にそれぞれ1つずつ、合計2つのスラストベアリング(21),(23)が必要であった。つまり、ベベルリングギヤ(122)と遊星歯車装置(13)とを支持するために4つの軸受部材(20),(21),(22),(23)が必要となるので、ベベルリングギヤ(122)と遊星歯車装置(13)との支持構造が複雑化するという問題があった。そして、ベベルリングギヤ(122)と遊星歯車装置(13)との支持構造が複雑化するために、ベベルリングギヤ(122)及び遊星歯車装置(13)の組付け精度があまくなり、ベベルリングギヤ(122)や遊星歯車装置(13)にディフレクション(軸ぶれ)が発生したり、ギヤ音が発生する虞がある。さらには、製造コスト(部品及び組立コスト)が掛かるうえに、ディファレンシャルケース(141)の軸方向に対する遊星歯車装置(13)の組立寸法が大きくなるという問題もある。
【0007】
本発明は、こうした事情に鑑みてなされたものであり、最終減速歯車装置の出力ギヤと遊星歯車装置との支持構造の簡素化を図ることができる最終減速装置を提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、エンジンからの駆動力を左右駆動輪に伝達する入力軸の回転方向を、前記入力軸と直交する左右駆動軸の回転方向に変換する入出力ギヤを備えた最終減速歯車装置と、前記最終減速歯車装置の出力ギヤの内周面に接合する連結部材を介して前記出力ギヤと連なったサンギヤが入力、かつインターナルギヤが固定、かつ前記サンギヤ及び前記インターナルギヤに噛み合うピニオンギヤを支持するプラネタリキャリアが出力とされ、前記サンギヤから入力された前記出力ギヤの回転数を減速する遊星歯車装置と、前記プラネタリキャリアに連なったディファレンシャルケースを介して駆動力が入力されると共に、入力された駆動力を前記左右駆動軸に均等に配分しながら、車両旋回時には前記左右駆動軸を異なる回転数で回転させる差動歯車装置と、前記ディファレンシャルケースの半径方向に設けられ、前記出力ギヤを前記連結部材を介して回転可能に支持する軸受部材と、を備えた最終減速装置において、
前記軸受部材は、ラジアル荷重及びアキシアル荷重に対する負荷能力があり、かつ前記出力ギヤの内周面に向かって延びた凸部がアウタレースに設けられたラジアル軸受であると共に、前記出力ギヤの内周面には、前記凸部の一側端面に接合する係合突起部が設けられており、前記凸部の両側端面を前記係合突起部と前記連結部材とが挟んだ状態で、前記出力ギヤと前記連結部材とが結合固定していることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するため請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記凸部は、前記アウタレースに一体形成されたフランジ部、または、前記アウタレースの外周面に嵌合され、かつ前記連結部材が軸方向から接合するスナップリング、及び前記スナップリングと前記係合突起部との対向面間に配設されるワッシャであることを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するため請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記ラジアル軸受は、単列、組合せ、複列のうち何れか1つのアンギュラ玉軸受であることを特徴とする。
【0011】
請求項1〜3に記載の発明によれば、最終減速歯車装置(ファイナルギヤ装置)の出力ギヤ及び遊星歯車装置(連結部材も含む)からのラジアル荷重とアキシアル荷重とを受ける能力のあるラジアル軸受としてアンギュラ玉軸受(単列、組合せ、複列)が用いられる。アンギュラ玉軸受を用いるには、ディファレンシャルケースの最大外径より大きい出力ギヤ内径でアンギュラ玉軸受を保持しなければならない。そこで、アンギュラ玉軸受のアウタレースに出力ギヤの内周面に向かって延びた凸部、具体的にはフランジ部、またはスナップリング及び抜け止めワッシャを設ける。また、この凸部の一側端面に接合する係合突起部を出力ギヤの内周面に設ける。そして、凸部の両側端面を連結部材と係合突起部とが挟み込んだ状態で、出力ギヤと連結部材とを結合固定するようにした。
【0012】
これにより、出力ギヤ及び遊星歯車装置からのラジアル荷重は、アンギュラ玉軸受のアウタレースから入力されると共に、出力ギヤ及び遊星歯車装置からのアキシアル荷重は、凸部からアンギュラ玉軸受のアウタレースに入力されることとなる。すなわち、1つのアンギュラ玉軸受によって出力ギヤと遊星歯車装置とを支持することができるようになるので、従来では必要とされていた2つのスラストベアリングとブッシュとを削減することができ、最終減速歯車装置及び遊星歯車装置の支持構造を簡素化することができるようになる。したがって、最終減速歯車装置の出力ギヤと遊星歯車装置との組付け精度が向上し、最終減速歯車装置の出力ギヤと遊星歯車装置との軸ぶれやギヤ音の発生を防止することができるようになる。また、製造コストを低減することができると共に、ディファレンシャルケースの軸方向に対する遊星歯車装置の組立寸法を短縮化することができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の最終減速装置によれば、最終減速歯車装置(ファイナルギヤ装置)の出力ギヤと遊星歯車装置とをアンギュラ玉軸受によって支持させると共に、このアンギュラ玉軸受のアウタレースに、出力ギヤの内周面に向かって延び、かつ最終減速歯車装置の出力ギヤと連結部材とによって左右側から挟み込みこまれる凸部を形成した。これにより、出力ギヤと遊星歯車装置とからのラジアル荷重及びアキシアル荷重を1つのアンギュラ玉軸受で受けることができるようになるので、最終減速歯車装置及び遊星歯車装置の支持構造を簡素化した最終減速装置が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る最終減速装置について図1,2を参照して詳細に説明する。図1は、本最終減速装置の一実施形態を示した断面図、図2は、図1中のA−A矢視断面図である。
なお、図1の最終減速装置にあっては、図示しない縦置きエンジンに連なったフロントドライブ用最終減速装置であるため、図1における紙面下側が前方、紙面上側が後方となっている。
【0015】
図1に示されるように、この発明による最終減速装置10は、入力軸11、左右駆動軸12,13、最終減速歯車装置としてのファイナルギヤ装置14、連結部材としてのベアリングハウジング15、遊星歯車装置16、差動歯車装置としてのディファレンシャル装置17、軸受部材としてのラジアル軸受18、を備えている。
【0016】
入力軸11は、図示しない縦置きエンジン及び変速装置から出力されたエンジンの駆動力を左右駆動軸12,13に伝達するように前後方向に延びた動力伝達軸である。入力軸11の出力側(ファイナルギヤ装置側)は、最終減速装置10の外殻をなすトランスミッションケース19内の左右支持部19a,19b間に配置された2つの単列アンギュラ玉軸受20,21を介して回転可能に支持されている。この入力軸11の軸心方向と、左右駆動軸12,13の軸心方向とは直交していると共に、入力軸11の出力側は、左駆動軸12に対して近接配置されている。
【0017】
左右駆動軸12,13は、後述するディファレンシャルギヤ装置17の外殻をなすディファレンシャルケース171内において、ディファレンシャルケース171に対して相対回転可能となるように支持されている。ディファレンシャルケース171から左右側方に向かって突出した左右駆動軸12,13の軸端部には、図示しないドライブシャフトを介して車輪が連なるようになっている。
【0018】
ファイナルギヤ装置14は、オフセット0のベベルギヤが用いられており、入力軸11の回転方向を左右駆動軸12,13の回転方向に変換する入出力ギヤとして、入力軸11に一体的に設けられたベベルピニオンギヤ141と、このベベルピニオンギヤ141に噛み合うようにディファレンシャルケース171の半径方向に配設されたベベルリングギヤ142(最終減速歯車装置の出力ギヤのこと)とを備えている。このベベルリングギヤ142の背面部142aには、ベアリングハウジング15を共締め固定する固定用ボルト22が螺合するネジ孔142bが形成されている。また、ベベルリングギヤ142の内周面には、詳しくは後述するが、軸受部材18に設けられた凸部としてのフランジ部181aに対して軸方向から接合する係合突起部142cが設けられている。
【0019】
ベアリングハウジング15は、ベベルリングギヤ142の背面部142aに連なるようにディファレンシャルケース171の半径方向に延びた背板部15aと、背板部15aの基端部が連なると共にラジアル軸受18のアウタレース181の外周面に接合するようにディファレンシャルケース171の軸方向に沿って延びたのち、ディファレンシャルケース171の半径方向に延びるように屈曲形成された本体部15bと、本体部15bから遊星歯車装置16のサンギヤ161の内周面にディファレンシャルケース171に接合することなく連なるように、ディファレンシャルケース171の軸方向に沿って張り出された張出部15cと、を備えている。背板部15aには、固定用ボルト22を挿通するための等配孔15a1が複数形成されている(但し、図1中にあっては1つのみ図示)。
これにより、ベアリングハウジング15を遊星歯車装置16の一部とみなすことができる。
【0020】
遊星歯車装置16は、図1,2に示されるように、シングルピニオン式遊星歯車装置が用いられており、ベベルリングギヤ142にベアリングハウジング15を介して一体的に連なると共にディファレンシャルケース171の半径方向に配設されたサンギヤ161と、トランスミッションケース19に固定されたインターナルギヤ162と、サンギヤ161及びインターナルギヤ162に噛み合うピニオンギヤ163と、ピニオンギヤ163を回転可能に支持すると共にディファレンシャルケース171の外周面にスプライン嵌合したプラネタリキャリア164とを備えている。
【0021】
すなわち、この遊星歯車装置16にあっては、ベベルリングギヤ142に連なったサンギヤ161が入力、インターナルギヤ162が固定、ディファレンシャルケース171に連なったプラネタリキャリア164が出力に割り当てられている。そして、この遊星歯車装置16は、サンギヤ161から入力された回転数を、サンギヤ161の歯数aとインターナルギヤ162の歯数cとによって設定される減速比(a+c)/aにより減速してディファレンシャルケース171に伝達する。
なお、遊星歯車装置16は、シングルピニオン式遊星歯車装置に限定されるものではなく、ダブルピニオン式遊星歯車装置を用いてもよい。
【0022】
ディファレンシャル装置17は、プラネタリキャリア164が一体的に連なると共にトランスミッションケース19に単列アンギュラ玉軸受23,24を介して回転可能に支持された中空のディファレンシャルケース171と、ディファレンシャルケース171内において横向のストレートピン172により抜け止め固定された縦置きのピニオンシャフト173と、ピニオンシャフト173の軸両端部において回転可能に支持された差動小歯車としての一対のディファレンシャルベベルピニオン174,174と、これらディファレンシャルベベルピニオン174,174に噛み合うと共に左右の駆動軸12,13に連なった差動大歯車としての左右一対のディファレンシャルベベルギヤ175,175とを備えている。そして、このディファレンシャル装置17は、プラネタリキャリア164に連なったディファレンシャルケース171を介して入力された駆動力を左右駆動軸12,13に均等に配分しながら、車両旋回時には左右駆動軸12,13を異なる回転数で回転させるようになっている。
【0023】
ラジアル軸受18は、ディファレンシャルケース171の半径方向に配置されているものであって、ベベルリングギヤ142及び遊星歯車装置16(遊星歯車装置16をサンギヤ161と言い換えてもよい。また、上述したように遊星歯車装置16にはベアリングハウジング15も含まれる)からのラジアル荷重及びアキシアル荷重に対する負荷能力があり、かつベベルリングギヤ142の内周面に接合するようにベベルリングギヤ142の内周面に向かって延設された凸部としてのフランジ部181aがアウタレース181の半径方向に一体的に設けられたラジアル軸受としてのアンギュラ玉軸受(単列、組合せ、複列)が用いられている。
なお、図中にあっては複列アンギュラ玉軸受が図示されているが、これに限定されるものではなく、単列アンギュラ玉軸受を2個組み合わせた組合せアンギュラ玉軸受を用いてもよいし、また、ラジアル荷重及びスラスト荷重に対する負荷能力があるその他のラジアル軸受を用いてもよい。
【0024】
ラジアル軸受(以下、アンギュラ玉軸受という)18のフランジ部181aは、側面視が環状となるようにアウタレース181の外周を一周するように設けられているものであって、そのフランジ部181aの先端部は、ベベルリングギヤ142の内周面に接合するようになっている。また、このフランジ部181aの左側端面には、ベベルリングギヤ142の内周面に設けられた係合突起部142cが接合し、また、このフランジ部181aの右側端面には、ベアリングハウジング15の本体部15bが接合するようになっている。
【0025】
また、アンギュラ玉軸受18のアウタレース181の左側端面とディファレンシャルケース171とは接合しないようになっていると共に、アウタレースの右側端面とベアリングハウジング15とも接合しないようになっている。
一方、アンギュラ玉軸受18のインナレース182の左側端面には、ディファレンシャルケース171が接合し、また、右側端面には、ディファレンシャルケース171の外周面に嵌合したスナップリング25が接合するようになっている。
【0026】
そして、ベベルリングギヤ142の係合突起部142cとベアリングハウジング15の本体部15bとによって、アンギュラ玉軸受18のアウタレース181に設けられたフランジ部181aを左右側(ディファレンシャルケース171の軸方向)から挟み込んだ状態で、等配孔15a1を挿通し、ネジ孔142bに螺合する固定用ボルト22によってベベルリングギヤ142とベアリングハウジング15とが締結固定されている。これにより、アンギュラ玉軸受18を用いる場合において、ディファレンシャルケース17に干渉することがないように、ディファレンシャルケース171の最大拡径部よりも大きい内径を有するベベルリングギヤ142であっても、アンギュラ玉軸受18を確実に保持することができるようになる。
【0027】
以上述べたように本発明の最終減速装置10によれば、ベベルリングギヤ142及び遊星歯車装置16(ベアリングハウジング15)からのラジアル荷重は、アウタレース181の外周面からアンギュラ玉軸受18に入力される。また、ベベルリングギヤ142からのアキシアル荷重は、フランジ部181aからアンギュラ玉軸受18に入力される。一方、ベアリングハウジング15(サンギヤ161)からのアキシアル荷重も、フランジ部181aからアンギュラ玉軸受18に入力される。
【0028】
すなわち、1つのアンギュラ玉軸受18によってベベルリングギヤ142と遊星歯車装置16(ベアリングハウジング15)とを支持することができるようになるので、従来では必要とされていた2つのスラストベアリングとブッシュとを削減することができるようになる。その結果、ファイナルギヤ装置14及び遊星歯車装置16の支持構造を簡素化することができるようになる。したがって、ファイナルギヤ装置14と遊星歯車装置16との組付け精度が向上し、ファイナルギヤ装置14や遊星歯車装置16の軸ぶれやギヤ音の発生を防止することができるようになる。また、製造コストを低減することができると共に、ディファレンシャルケース171の軸方向に対する遊星歯車装置16の組立寸法を短縮化することができるようになる。
【0029】
なお、上述した構成にあっては、アンギュラ玉軸受18のアウタレース181に設けられた凸部としてのフランジ部181aは、アウタレース181に一体形成するようにしたが、図3に示されるように、アウタレース181とは別形成するようにしてもよい。図3は、本最終減速装置の他の実施形態を示した断面図である。
【0030】
すなわち、図3に示されるように、凸部を、アンギュラ玉軸受18のアウタレース181の外周面に嵌合され、かつベアリングハウジング15の本体15bが軸方向から接合するスナップリング183と、そのスナップリング183及びベアリングハウジング15の本体部15bと係合突起部142cとの対向面間に配設されるワッシャ184と、によって形成するようにしてもよい。これにより、ベベルリングギヤ142及びベアリングハウジング15からのラジアル荷重は、アウタレース181の外周面からアンギュラ玉軸受18に入力される。また、ベベルリングギヤ142からのアキシアル荷重は、ワッシャ184からスナップリング183を経てアンギュラ玉軸受18に入力される。一方、ベアリングハウジング15(サンギヤ161)からのアキシアル荷重は、スナップリング183からアンギュラ玉軸受18に入力される。
【0031】
このように、1つのアンギュラ玉軸受18によってベベルリングギヤ142と遊星歯車装置16(ベアリングハウジング15)とを支持することができるようになるので、上述した構成とほぼ同様の作用効果を得ることができると共に、凸部を一体形成しない分、製造コストを低く抑えることができる。
【0032】
なお、本実施形態にあっては、ファイナルギヤ装置14にオフセット0のベベルギヤを用いたが、これに限定されるものではなく、オフセットが0に近いハイポイドギヤを用いてもよい。
また、本実施形態は、直交軸ギヤを用いた最終減速装置に適用されるのみならず、平行軸ギヤを用いた最終減速装置にも適用することができる。また、リヤディファレンシャル装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本最終減速装置の一実施形態を示した断面図である。
【図2】図1中のA−A矢視断面図である。
【図3】本最終減速装置の他の実施形態を示した断面図である。
【図4】従来の最終減速装置の閉断面図である。
【符号の説明】
【0034】
10…最終減速装置
11…入力軸
12…左駆動軸
13…右駆動軸
14…ファイナルギヤ装置(最終減速歯車装置)
141…ベベルピニオンギヤ(入力ギヤ)
142…ベベルリングギヤ(出力ギヤ)
142c…係合突起部
15…ベアリングハウジング(連結部材)
15b…本体部
16…遊星歯車装置
161…サンギヤ
162…インターナルギヤ
163…ピニオンギヤ
164…プラネタリキャリア
17…ディファレンシャル装置(差動歯車装置)
171…ディファレンシャルケース
18…アンギュラ玉軸受(軸受部材)
181…アウタレース
181a…フランジ部(凸部)
183…スナップリング(凸部)
184…ワッシャ(凸部)
22…固定用ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの駆動力を左右駆動輪に伝達する入力軸の回転方向を、前記入力軸と直交する左右駆動軸の回転方向に変換する入出力ギヤを備えた最終減速歯車装置と、
前記最終減速歯車装置の出力ギヤの内周面に接合する連結部材を介して前記出力ギヤと連なったサンギヤが入力、かつインターナルギヤが固定、かつ前記サンギヤ及び前記インターナルギヤに噛み合うピニオンギヤを支持するプラネタリキャリアが出力とされ、前記サンギヤから入力された前記出力ギヤの回転数を減速する遊星歯車装置と、
前記プラネタリキャリアに連なったディファレンシャルケースを介して駆動力が入力されると共に、入力された駆動力を前記左右駆動軸に均等に配分しながら、車両旋回時には前記左右駆動軸を異なる回転数で回転させる差動歯車装置と、
前記ディファレンシャルケースの半径方向に設けられ、前記出力ギヤを前記連結部材を介して回転可能に支持する軸受部材と、
を備えた最終減速装置において、
前記軸受部材は、ラジアル荷重及びアキシアル荷重に対する負荷能力があり、かつ前記出力ギヤの内周面に向かって延びた凸部がアウタレースに設けられたラジアル軸受であると共に、前記出力ギヤの内周面には、前記凸部の一側端面に接合する係合突起部が設けられており、前記凸部の両側端面を前記連結部材と前記係合突起部とが挟んだ状態で、前記出力ギヤと前記連結部材とが結合固定していることを特徴とする最終減速装置。
【請求項2】
前記凸部は、前記アウタレースに一体形成されたフランジ部、または、前記アウタレースの外周面に嵌合され、かつ前記連結部材が軸方向から接合するスナップリング、及び前記スナップリングと前記係合突起部との対向面間に配設されるワッシャであることを特徴とする請求項1に記載の最終減速装置。
【請求項3】
前記ラジアル軸受は、単列、組合せ、複列のうち何れか1つのアンギュラ玉軸受であることを特徴とする請求項1に記載の最終減速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−144891(P2009−144891A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325663(P2007−325663)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】