説明

有機半導体に電気接点を形成する方法

【課題】雰囲気条件下で簡単に実施でき、安価な金属箔を使用できる、有機半導体表面に電気接点を形成する方法を提供する。
【解決手段】半導体表面に溶媒層を形成し、前記表面、少なくともその下面が部分的に酸化された金属箔を載置し、次いで前記溶媒を蒸発させる。本発明方法によると、経済的な競争力が向上し、同時に半導体の構造の保持、及び高い界面導電性がその品質的な価値を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体と、それを含む電子的及び光電子的デバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
電子的及び光電子的デバイス(太陽電池、ダイオード、発光ダイオード、トランジスタ、センサ等)の性能は、半導体の電荷移動性能、及び前記半導体とデバイスの他の部品間の界面特性に大きく影響される。特に、有機半導体を使用するデバイスでは、界面は基本的な役割を果たす(非特許文献1)。例えば有機発光ダイオードの場合、多くの性能制限因子が、半導体とデバイスの残部間の界面で発生する問題点から生じる。
【0003】
これらの問題点を回避するために、半導体と他の部品(一般的に、電極)の間に、接点材料(一般的に、金属性物質)を配置することが知られている。接点材料は、好適な仕事関数を有しなければならず、仕事関数とは、その表面から電子を引き抜くために必要な最小エネルギである。通常使用される接点材料の場合、仕事関数は比較的狭い範囲内、つまり3eVから6eV内にある。有機半導体の電子親和力及びイオン化ポテンシャルはこれらの値から外れることが多いので、接点金属用の有効な仕事関数の範囲を広げることが望ましい。
【0004】
接点材料で半導体を被覆する2種類の手法がある。半導体を金属性接点材料の表面に被覆する底部接点法と、逆に金属性接点材料を半導体表面に被覆する上部接点法である。
【0005】
前記底部接点法では、界面の品質は次善であることが多い。この品質を改良するため、前記界面の電子構造を修正できかつ半導体(イオン化ポテンシャル及び電子親和性)と金属(仕事関数)間のエネルギレベルをより良く調整できる化合物から成る好適な単分子層(自己組織化単分子層{じこ そしきか たん ぶんし まく}、SAM)を、前記金属と半導体間に挿入することが提案されている(非特許文献2)。これらの化合物は、通常2末端を有するアルキル鎖から成り、一方の末端は金属性表面と反応し、他の末端は修正された表面の性質を制御する。例えば特許文献1は、電極を、SAMで、続いて金属性のナノ粒子で処理することを記載している。次いで、生成した表面に半導体を被覆し、各層を高温焼きなまし法で一体化し、金属を半導体中に拡散させる。
【0006】
前記底部接点法は幾つかの限界を有する。半導体が、単に接点上に配置されている個々の結晶の形態で使用されると、均一な接点表面を形成することが困難である。有機物が薄層として形成されていれば、このようなことは起きない。しかし膜の形態は、SAMの存在に大きく影響されて、有機物/金属界面の核生成密度の増大を招き、膜欠陥密度及びデバイス性能の劣化を生じさせる。
【0007】
他の方法(上部接点法)では、金属性接点が、個々の結晶又は薄層の形態である半導体上に直接形成される。最も一般的な手法は、高真空下で、金属性フィラメントを加熱することにより、サンプル上に金属を蒸着させることである。特許文献2は、高温焼きなましを行って、半導体と金属間に、安定した接点を確保するために、高エネルギを使用する、種々の上部接点金属化法を記載している。特許文献3は、薄膜技術、真空蒸着及び赤外線照射などの高価な技術による、半導体の金属化方法を記載している。特許文献4では、金属化は、高温(例えば250℃)処理により、又は金属の蒸着により進行しているが、この処理は半導体に対して有害である。
【0008】
これらの解決法は、金属性層とサンプル表面間に良好な接着性を確保するが、蒸着チャンバ内が比較的高温(通常100℃以上)に達するため、半導体に機械的な損傷が生じ、サンプル内に金属が侵入するため、その電子構造が変化する(非特許文献3及び非特許文献4参照)。ペリレンやα−クアテルチオフェンのような、特に熱に不安定な半導体の場合、前記手法は非常に不安定になる。これは、前記物質の実質的な昇華又は当初の結晶構造の部分的又は全体の破壊が生じ、これにより前記物質の構造的な性能(活性層の連続性及び可撓性)及び電荷移動性能が劣化するからである。
【0009】
さほど利用されていない方法として、イオンビーム支援金属化法及び接点ラミネーション法がある(非特許文献5〜7)。前者の方法は、金属性表面とイオンビーム(金属カチオン又は電子)との相互作用により生じる金属の昇華に基づくもので、実際にあまり利用されておらず、構造損傷と、半導体中に金属原子が拡散する危険を伴う。後者の接点ラミネーション法は、エラストマ系サポート上に金属接点を蒸着させることを基本とし、次いでこれを、適切なサポート上に支持された半導体と、適合接触させ、次に金属を、エラストマ上から半導体へ移行させ、ラミネーションは、ファン・デル・ワールス親和力のみにより形成される。この方法は、有機物質表面の損傷が少なく、かつ有機層への金属原子の拡散も少ない。しかし解像度と再現性に関して大きな限界があり、更に金属原子のエラストマから半導体への移行は常に理想的に起こる訳ではなく、半導体の被覆が非連続的になることがある。
【0010】
最後に、全てのラミネーション法は、完全に表面酸化物を含まない高純度金属の使用が必須であり、これは前記酸化物が、非導電性で、界面を形成するには欠陥があると考えられているからである(非特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許公開第2007/0020798号
【特許文献2】米国特許公開第2004/0033641号
【特許文献3】米国特許明細書第5622895号
【特許文献4】米国特許明細書第5062939号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J. Polymer. Sci.B: Polymer. Phys. 41 (2003) 2529
【非特許文献2】Phys. Rev. B 54 (1996) R14321
【非特許文献3】J. Appl. Phys. 99 (2006) 094504
【非特許文献4】Appl. Surf. Sci. 211 (2003), 335
【非特許文献5】Natl. Acad. Sci. USA 99 (2002) 10252
【非特許文献6】Appl. Phys. Lett., 81 (2002) 562
【非特許文献7】Sci. Tech. Adv. Mat. 6 (2005) 97
【非特許文献8】Appl. Phys. Lett. 89 (2006) 123508
【非特許文献9】R.A. Laudise et al, J. Crystal Growth, 187 (1998) 449
【非特許文献10】Polymer International, 55 (2006) 583
【非特許文献11】S. M. Sze, 「半導体デバイスの物理」John Wiley, New York, 1981
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述の例は、半導体の構造的な完全性を確保しつつ、界面での十分な導電性を確保する簡明で安価な方法により、半導体用の金属接点を得ることの困難性を示している。これらは、ペリレンやα−クアテルチオフェンのような熱的に不安定で、通常の金属化で容易に損傷を受けてしまう結晶性半導体の場合に、緊急に克服する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明方法は、有機半導体に電気接点を形成する方法で、本方法により、前記半導体と、それを含む電子的又は光電子的デバイスの残りの部分の間の界面導電性を確保できることが見出された。本方法は、半導体の適切な面を、水又は他の好適な溶媒で被覆し、次いでこのように処理された半導体に、その自然酸化物で表面され、かつ好適な厚さ及び仕事関数を有する金属箔を載置することを含む。
【0015】
金属箔の薄さ及び酸化物の混入の少なさと相俟って、安定で長寿命の接点形成には、溶媒層を間に入れることで十分であることが見出された。更に、このようにして形成された界面は、純粋な金属で生成されたものと同じオーダーの導電特性を示すことも観察された。これらの観察は、半導体に電気接点を生成させるための高効率プロセスを開発する基礎として使用されている。雰囲気条件下で有利に実施できる前記方法は、高温の使用を回避でき、半導体構造を完全に保持できる。熱的に不安定な結晶性半導体(特にペリレン、α−クアテルチオフェン)の場合、半導体の初期結晶構造に何らかの修正を施さずに、金属接点を製造できる。更に、本方法は、他の工業分野(修復、美術又は工芸品取引の文や)で一般的に使用されているような、低純度の金属箔の使用を可能にする。
【0016】
纏めると、簡単に実施できること、及び雰囲気条件下で実施できること、及び安価な金属箔を使用できることが組み合わされて、前記本発明方法の経済的な競争力が向上し、同時に半導体の構造の保持、及び高い界面導電性がその品質的な価値を上昇させている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ルブレン(斜方晶系多形)、ペリレン(単斜晶系α−多形)及びα−クアテルチオフェン(低温単斜晶系多形)の分子構造(上)、個々の成長した結晶の接点表面(中央)及びデバイスの構成(下)である。
【図2】(a)ルブレン、(b)ペリレン及び(c)α−クアテルチオフェンによるダイオードの電流/電圧特性である。(a)及び(b)の図中に挿入したグラフは、片対数である。図(c)の曲線は、AM1.5直射日光照度(80mV/cm2)で記録した。
【図3】本発明で使用可能な金属箔(エリック・ドゥンクル・GmBH)の例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、「電気接点」は、半導体表面とそれを被覆する金属層の組み合わせとして定義される。半導体を電子デバイス又は光電子デバイスの素子として使用する際、金属層は、前記(光)電子デバイスの半導体と他の素子間の界面として機能し、必要な電気導電性を確保する。
【0019】
「一貫した結晶構造」とは、全ての部分で結晶中に一貫して組織された物質を意味する。
【0020】
本発明方法は、電気接点生成用の半導体表面に溶媒層を形成することを含む。このような溶媒層を形成した半導体表面に、下記する特性の所望表面を有する金属箔を載置する。前記溶媒を好適な手法で蒸発させると、金属箔で安定に被覆された半導体が得られ、この半導体は、既知デバイスと同等又はそれ以上の、(光)電子デバイスにおける、界面での卓越した導電性と、卓越した機能性を有する。全てのプロセスは、通常の温度(例えば15〜30℃)、圧力及び湿度で実施される。
【0021】
前記有機半導体は、電子及び光電子デバイス分野で使用される物質、又は他の類似する導電性を有する物質から選択される。好ましい半導体は、溶媒非透過性を確保できる一貫した結晶構造を有するものである。本発明を、低分子量有機半導体に接点を形成することに関して記載しているが、他の任意タイプの半導体にも適用できると理解すべきである。
【0022】
前記溶媒は、半導体が不溶な任意の極性溶媒(又はその混合物)、一般に水で、この特性を有する溶媒を、本発明では「液体」としても定義できる。本発明に必須ではないが、前記溶媒は、本分野で使用される1又は2以上の添加剤、例えば接着促進剤、電荷キャリア注入を更に増加させる物質、安定剤などを含んでいても良い。
【0023】
前記溶媒層は、使用できる任意の方法で形成できる。例えば、半導体が連続層(フィルム又は他の連続的な表面)の形態の場合、前記形成は、微粒子化、スプレイ被覆、インクジェット方式、溶媒飽和雰囲気への露出、温度差凝縮、溶媒を吸収したサポートによる表面の機械的処理、対象溶媒中への半導体の浸漬、噴霧などで行われる。溶媒で被覆される半導体が、1又は2以上の独立した結晶の場合、前記形成はマイクロピペット又は他の類似するシステムを使用して実施できる。形成の際には、金属箔と半導体間に溶媒の中間層が存在することが好ましく、溶媒層の厚さは、一般に100から500ミクロンメートルであるが、他の厚さであっても良い。次いで溶媒中間層を蒸発させると、前記金属箔は、半導体表面に、完全に一致した状態で密着し、半導体表面へ圧力を掛けることなく、標準的な接点ラミネーション法で達成できるオーダーの卓越した密着性が得られる。
【0024】
使用する金属箔は、対象とする電子又は光電子デバイスの機能的要求に合致する仕事関数を有する金属からなる。一般的に、前記仕事関数は、3から6eVである。前記特性を有する金属として、金、銅、銀及びアルミニウムがあり、最適の仕事関数を有することと、低価格のため、アルミニウムが好ましい。金属箔の厚さは、一般に500ナノメートル未満で、効果的な範囲は例えば100から500ナノメートルあるいは100から300ナノメートルなどであり、金属の厚さが薄くなるほど、密着性は増加する。金属箔の他の特性は、その表面(特にその「下面」、つまり半導体との接触が意図される面)が表面酸化不純物性を示すことである。このような不純物は、金属と半導体間に良好な密着性を確保しかつ界面における導電性を大きく制限することがないことが観察されている。金属箔に特定の予備酸化処理を施す必要はなく、これは金属箔を大気及び通常の湿度に露出すれば、痕跡量であっても、必要な機能を実行するために十分な酸化物(自然酸化物)が得られるからである。限定するものではないが、金属酸化物の重量とそれを含む金属箔の下面の比は、一般に0.8から1.4μg/cm2、好ましくは0.4から1.2μg/cm2、より好ましくは0.2から0.8μg/cm2である。本発明によると、半導体用接点物質として他の分野で公知の中程度の純度を有する金属箔を使用することが可能になり、このような物質は、復元、美術又は工芸品取引部門で公知である、例えば鍛造された箔金属(つまり金箔、アルミニウム箔、模造金箔)であるが、半導体技術では使用されていない。これらの製品は、例えばエリック・ドゥンクル・GmBH(オーストリア)、イージー・リーフ・プロダクツ(米国)、ファブリッシェ・リユニテ・メタリ・SpA(イタリア)、メッセリーニ・Srl、アッビアテグラッソ(イタリア)が販売している。これらの製品は、中程度の表面酸化度であるにもかかわらず、(光)電子デバイス中の半導体表面に効果的で安定な接点を完璧に生成できることが見出されている。これらの安価な公知物質の使用は予期できないものである。従って、本発明の一態様では、有機半導体の電気接点の生成の際に、少なくともその下面が部分酸化された金属箔を使用することを含む。上記記載から、そのような金属箔は、1又は2以上の下記記載の特徴を有することが好ましい。金、銅、アルミニウムから成ること。3から6eVの仕事関数を有すること。厚さが500ナノメートル未満であること。復元、美術又は工芸品取引部門で使用される物質であること。模造金箔、金箔及びこれらの類似物質から選択されること。
【0025】
金属箔の他の面、つまり半導体と接触しない面の酸化度は、本発明の目的に照らすと、決定的なものではない。従って、前記面は、酸化されていなくても、部分的に酸化されていても、完全に酸化されていても良いが、部分的に酸化されていることが多い。
【0026】
被覆された半導体の生成の際の前記金属箔の使用は、工業的に特に重要で、これは低グレードの金属性物質の用途、通常非常に技術的な内容に乏しいと考えられる用途の範囲と価値に関連するからである。同時に、前記物質の使用は、このように被覆される半導体のコストの低減を可能にする。
【0027】
金属箔の半導体上への載置は、公知方法に従って、専用装置を使用して、手動又は自動的に進行する。載置後は、半導体を好適な時間だけ(例えば4時間)大気中に、つまり通常の温度、湿度及び圧力下に放置して、溶媒を蒸発させる。この段階は、製品を、窒素流又は他の不活性ガス流に露出することにより、又は真空又は減圧下に置くことにより、加速できる。
【0028】
本プロセスは、例えば太陽電池、光電池、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード及びセンサなどの任意の(光)電子デバイスを製造するために使用される任意の半導体に、金属接点を生成するために適用できる。本発明は、例えば太陽電池、光電池に使用されるような、パターニングを必要としない広い表面に接点を生成する際に特に適している。特定のパターニングを必要とする場合は、本プロセスが、選択的な金属化を行うための好適な公知ステップを含むようにする。この金属化は、対象金属箔の不要部分を、例えば、対象金属を好適なマスク又は事前のプロファイリングにより、又は好適なマイクロ流体システム等により、又はマスク又は等価のシステムで達成される選択的除去により行われる。この除去は、層形成の直後、つまり相当量の溶媒が残り、密着が完了していない時点で行われる。太陽電池や光電池あるいは類似するデバイスを製造する場合、前記半導体は、その部分に典型的で一般的な他の素子、例えばインジウムスズ酸化物のような透明な導電性酸化物の層を有することが好ましい、太陽光に露出される表面を備える。同様の考慮は、上述した他の(光)電子デバイスの製造にも当てはまる。
【0029】
本発明によると、上部接点タイプの形成プロセスの大きな簡略化が可能になり、多大なコスト減に繋がる。雰囲気条件下で実施できる、水や他の溶媒介在させる層形成は、金属昇華法や蒸発法のような、高価な方法の使用を回避できる。更に金属純度が低くても良いので、半導体分野での使用がこれまで提案されていない低コストの金属性物質の使用が可能になる。更に、ここで述べている技術は、電荷移動効率と、低エネルギ衝撃のプロセスが組み合わされていて、半導体の機械的性質の全てが保持される。本プロセスは、任意の半導体に適用できる。本プロセスにより金属接点を形成すると、電荷キャリアを有機物質に十分に注入しかつ有機物質から十分に取り出すことを可能にすると同時に、半導体の機械的性質を最大限保持する。このようにして、良好な性能を有する低脆弱性の電子又は光電子デバイスが得られる。電気接点を生成する際の条件が非常に穏和であるため、熱的に不安定な物質(ペリレン及びα−クアテルチオフェン)を使用する有機半導体デバイスを得ることが可能になる。このような製品では、半導体は、その初期結晶構造を実質的に保持できる。電気接点が装着されたこれらの半導体が、本発明により、更に提供される。
【0030】
本発明を、以下の非限定的な実施例により説明する。
【実施例】
【0031】
ルブレン、ペリレン及びα−クアテルチオフェンの市販の粉末を、使用前に、種々の昇華法により精製した。非特許文献9に記載の通り、個々の結晶を、蒸気相から成長させ、次いで、インジウムスズ酸化物(ITO)で被覆したガラス製平板上に位置させた(図1)。個々の結晶は、数ミリ幅で、約1ミリ厚の薄いフレークの形態で得られ、分子レベルで清澄で平滑な表面を有し、使用前に劈開を必要としない。
【0032】
3回蒸留した水の小滴(約10μl)を結晶表面に位置させる。アルミニウム箔片(ブラットアルミニウム、オーストリアのエリック・ドゥンクル・GmBH、約4mm2)を水滴表面に位置させ、サンプルを、窒素雰囲気に維持したチャンバ中で一晩、徐々に乾燥させる。生成したアルミニウム箔組と前記結晶の組み合わせは密着し、かつ好適な接合力を有している。
【0033】
ITO表面に接触するタングステンチップと、側部にアルミニウムで接触する金を使用する、ケイスリ(Keithley)4200−SCS器具で、空気中の電流/電圧(I−V)特性を記録する。使用した構成(図1参照)では、π軌道の重なりが無視できる、分子層に対して直角のチャンネルを電荷キャリアが流れなければならないため、電流は大きく減少することが観察される。特にペリレン及びα−クアテルチオフェンに関するI−V特性は、公知文献には報告されていない。
【0034】
図2aから判るように、ITO/ルブレン(100)/AlデバイスのI−V特性は、公知の整流挙動、つまり逆極性の場合は低電流、順極性の場合は高電流を示す。低い負電圧が印加されると、対称でかつ恐らく損失現象に起因する抵抗性寄与(非特許文献10)に続いて、熱イオン性の拡散理論に基づいて記載できる(非特許文献11)、電流の指数関数的増加が起こる。高電圧では、2種類の寄与が重なることによる電流プロファイルが生じ、1つは金属/半導体界面から生じるもので、他は容量から生じる。該容量は、半導体の非空領域と関連し、約1.5VにおけるI−V特性の下方偏向を生じさせる。この場合、取り得る電流プロファイルは、空間電荷効果に起因して、電圧の平方に比例する。
【0035】
ITO/ペリレン(001)/Al特性に関して、図2bの直線及び片対数目盛りで示すような、同様の挙動が見られた。この場合、低負電圧での抵抗性寄与は検出されず(挿入したグラフ)、−20V未満で、逆損失電流が生じることが観察される。
【0036】
検討した電圧領域では、α−クアテルチオフェンで形成したダイオードは、暗い又は通常の照明下では、器具の感度未満の電流を示す。AM1.5ソーラー・イルミネーション条件では、図2aのI−V特性を示す。デバイスの整流挙動は、これらの条件では、明確である。更に前記デバイスは、明確な光電池的挙動を示し、短絡光電流は、2×10-9A(電流密度:7×10-5mA/cm2)であり、開回路電圧は1.7Vである。ダイオードの推定電力変換効率は、10-4%のオーダーである。
【0037】
前記データは、本発明の金属接点は、有機活性物質の構成的特性を保存し、効果的な電荷注入/取出しを可能にすることを示している。ここで示したI−V特性は、明確なダイオード挙動と、高電圧での良好な応答を示している。金属純度の必要性を強調する先行文献(非特許文献6及び8)に反して、本発明の結果は、半導体と金属接点間の界面の自然酸化物層の存在が、有利な効果を生じさせることを示している。アルミニウム箔は、実際に、特定の前処理なしに、天然の状態で使用した。達成された密着レベルは、公知の接点ラミネート法により達成されるレベルと同等であることが証明された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)半導体表面に溶媒層を形成し、
(b)このように処理した表面に、少なくともその下面が部分的に酸化された金属箔を載置し、
(c)前記溶媒を蒸発させる、
各工程を備える、有機半導体表面に電気接点を形成する方法。
【請求項2】
金属箔が、金、銅、銀又はアルミニウムの箔である請求項1記載の方法。
【請求項3】
金属箔が、3eVから6eVの仕事関数を有する請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
金属箔が、500ナノメートル未満の厚さを有する請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
金属箔が、復元、美術又は工芸品取引部門で公知の物質である請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
金属箔が、模造金箔、金箔、アルミニウム箔及び類似する物質から選択される請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
溶媒が水である請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
周囲温度、周囲圧力及び周囲湿度で行われる請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
使用する半導体が一貫した結晶構造を有し、全工程においてその結晶構造が維持される請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
使用する半導体が、ルブレン、α−クアテルチオフェン、ペリレン及びこれらの混合物から選択される請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
半導体が、電子又は光電子デバイス中に組み込まれている請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
有機半導体表面に電気接点を形成する際に、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法に従って、部分的に酸化された金属箔を使用する方法。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法に従って形成された電気接点を有する有機半導体。
【請求項14】
一貫した結晶構造を有する請求項13記載の半導体。
【請求項15】
結晶構造が単結晶系である請求項14記載の半導体。
【請求項16】
ペリレン及び/又はα−クアテルチオフェンから成る請求項15記載の半導体。
【請求項17】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法に従って形成された電気接点を有する有機半導体を備える電子又は光電子デバイス。
【請求項18】
前記半導体が、一貫した結晶構造を有する請求項17記載のデバイス。
【請求項19】
結晶構造が単結晶系である請求項18記載のデバイス。
【請求項20】
半導体が、ペリレン及び/又はα−クアテルチオフェンから成る請求項19記載のデバイス。
【請求項21】
請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法に従って形成された電気接点を有する有機半導体を含む工程を備える、電子又は光電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−527100(P2012−527100A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510141(P2012−510141)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002767
【国際公開番号】WO2010/130364
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(509236922)ウニヴェルシタ デグリ ステュディ ディ ミラノ‐ビコッカ (3)
【出願人】(511274189)
【Fターム(参考)】