説明

有機誘電体を有する有機電界効果トランジスタ

【課題】有機トランジスタの大電流および高速スイッチングを達成するために、ゲート絶縁体材料とその製造方法を提供する。
【解決手段】基板1上に、溶液から有機半導体層3を堆積させる工程、および溶液から低誘電率絶縁材料の層を堆積させて、その低誘電率絶縁材料が有機半導体層3と接触するようにゲート絶縁体2の少なくとも一部を形成する工程を含む有機トランジスタを形成する。低誘電率絶縁材料の比誘電率が1.1から3.0未満までである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
この発明は有機電界効果トランジスタ(OFET)類およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Siのような無機材料に基づく電界効果トランジスタ(FET)は、マイクロエレクトロニクス工業で十分に確立されている。典型的なFETは複数の層より成り、そしてそれら層は色々な仕方で配置させることができる。例えば、FETは基板、絶縁体、半導体、半導体に接続されたソース電極とドレイン電極、および絶縁体に隣接するゲート電極を含むことができる。電位がゲート電極に印加されると、電荷キャリアが半導体中に絶縁体とのその界面において蓄積される。その結果、ソースとドレインとの間に導電性チャンネルが形成され、従って電流は電位がドレインに印加されるならば流れる。
【0003】
過去10年間で、有機材料を用いてFETを開発することに関心が高まってきた。有機デバイスには、構造上の融通性、潜在的に著しく低い製造コスト、および大きな面積で製造プロセスを取り囲む低温の可能性という利点がある。有機回路を完全に利用するためには、FETの色々な素子を形成する効率的なコーティング法に基づく材料および方法の必要がある。
【0004】
大電流および高速スイッチングを達成するために、半導体は高キャリア移動度を有すべきである。かくして、高移動度を有する有機半導体(OSC)材料の開発に著しい努力が集中された。有機半導体材料開発の推移は、IBM Journal of Research & Development、第45巻、第1号、2001年で十分に概説されている。しかし、トランジスタ性能は、FETにおいて使用される他の成分/材料によって、そしてまた製造条件によっても非常に影響される。かくして、例えばゲート絶縁体として使用するための改善された材料の、およびFETを再現可能に製造するための方法の必要がある。
【0005】
本発明の目的は、新規な改善された有機FET、および高品質の有機トランジスタを加工する技術を提供することである。本発明の目的は、また、半導体−絶縁体界面を材料および製造条件の選択によって改善する技術を提供することである。特に、本発明は有機FETで使用される絶縁材料に関係する。
【0006】
次の従来技術は、有機半導体において有用なゲート絶縁体および加工技術を開示するものである。
有機FETと共に最も広く用いられるゲート絶縁体に、比較的高い誘電率(即ち、誘電定数とも称される比誘電率ε)を持つ無機および有機絶縁体がある。例えば、SiO2(ε〜9−10)およびAl2O3(ε〜4)、並びにポリビニルフェノール(ε=3.5)のような有機絶縁体が用いられてきた。蒸発(evaporated)ペンタセン、オリゴ−およびポリチオフェン類のような半導体に関連しては良好な結果が報告されており、この場合報告された移動度は0.01−0.6cm−1−1のオーダーであった。
【0007】
配向(oriented)有機半導体層を作って移動度を改善することに対して多大の努力が向けられた。しかし、半導体層の配向を達成するために、大きな面積に適用することが難しいおよび/または高価である製造方法が用いられ、従ってOFET類の潜在的な利点の1つ、即ち層を大きな面積を覆って溶液塗布することの可能性が損なわれた。
【0008】
WittmannおよびSmith(Nature, 1991, 352, 414)は、有機材料を配向PTFE基板上で配向させる技術を記載している。PTFEは固体PTFEのバーを熱基板上で滑らせることによって配向される。この技術は、PTFE配向膜を電界効果トランジスタの製造において有機半導体を堆積させる基板として使用するために、米国特許第5,912,473号明細書(Matsushita社、1999年、また米国特許第5,556,706号および同第5,546,889号明細書)において応用されている。有機半導体も配向されるようになり、その結果より高いキャリア移動度がもたらされる。PTFE層はWittmannおよびSmithの技術によって、即ち固体PTFEのバーを熱基板上で滑らせることによって堆積される。この配向層は溶液塗布されず、従ってその技術は大きな面積には適用困難である。特に米国特許5,546,889号明細書(Matsushita社、1996年)においては、それは有機材料が堆積されるアライメント層の使用によって有機膜を配向させる方法を述べている。アライメント層はPTFEロッドを熱表面上に押し付け、それを1つの方向に滑らせることによって与えられる。こうして薄い配向PTFE層が表面に堆積される。1つの態様は、OSCの堆積に先立つOFETの絶縁体上へのPTFE層の堆積について述べている。この方法は、基板および絶縁体が許容できないほど高い温度(300℃)に加熱されることを必要とし、従ってそれは好ましくない。加えて、PTFEは溶液形態をしていないので、この方法は大きな面積には適用困難である。最後に、この発明はこの技術によってトップゲート(top gate)OFETのためのいかなる手段も提供しない。
【0009】
JP7221367号明細書(Matsushita社、1995年)は、配向重合体基板の使用によるチオフェンオリゴマーの配向技術を述べている。重合体基板は溶液塗布非晶質ペルフルオロポリマーであることができ、そのペルフルオロポリマーは配向を誘発するためにこすられる。この特許明細書はペルフルオロポリマーのアライメント層としての使用を教示している。ゲート絶縁体材料について、この特許明細書はシアノエチルプルラン(cyanoethyl pullulane)、シアノエチルセルロース、ポリビニルアルコール、SiO2、Ta2O5を提案している。
【0010】
米国特許第5,612,228号明細書(Motorola社、1997年)は、p型有機材料およびn型無機材料を有する相補型FET回路を特許請求している。n材料およびp材料は同一ゲート絶縁体上にボトムゲート配置(bottom gate configuration)を用いて堆積される。有機半導体は、ポリイミド、ポリフェニレンビニレン、フタロシアニン、液晶重合体またはセクシチオフェンであることができる。絶縁体は、「SiOx、SiNx、AlOxのような任意の都合のよい誘電媒体、並びにポリイミド、ポリアクリレート、ポリ(塩化ビニル)、ペルフルオロポリマーおよび液晶重合体のような有機誘電媒体」であることができると示唆されている。その開示はどんな重合体の性質が最も重要であるかを教示していない。
【0011】
欧州特許第0786820号明細書(Motorola社、1997年)は、配向層の使用によって向上した移動度を有する有機FETについて記載している。配向膜にはこすられたポリイミド、ペルフルオロポリマーおよび液晶重合体が提案されている。この発明は、ゲート絶縁体は「SiOx、SiNxおよびAlOxのような無機誘電媒体、並びにポリイミド、ポリアクリレート、ポリ(塩化ビニル)、ペルフルオロポリマーおよび液晶重合体のような有機誘電媒体」であってもよいと提案している。その開示はどんな重合体の性質が最も重要であるかを教示していない。
【0012】
米国特許第6,100,954号(LG Electronics社、2000年)および同第6,188,452号(LG Electronics社、2001年)明細書は、多結晶シリコンFETを使用するLODデバイスにおける、ゲート絶縁体および保護層の両者のための有機絶縁体の使用を提案している。それらの開示は有機半導体には関係しない。
【0013】
Dimitrakopulous等は、Synthetic Metals、第92巻、47頁、1998年において、蒸着パリレン−C、Nissan Polyimide 5211またはポリ(メチルメタクリレート)を絶縁体として用いている蒸着α,ω−ジヘキサチエニレン(DH6T)について述べている。
【0014】
WO0147043号明細書(Plastic Logic社、2001年)は、ゲート絶縁体がポリビニルフェノール(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)である有機FETについて記載している。この絶縁体は、下層半導体の溶解または膨潤を避けるために、その絶縁材料の極性溶媒中溶液からインキジェット印刷される。この特許明細書は、また、ゲート絶縁体が2層以上の層を含む有機FETについて記載している。これらのケースにおいては、極性ゲート絶縁体を通してのイオンの拡散を防ぐために、非極性重合体が極性絶縁体とPEDOT/PSS導電性ゲート電極との間に堆積される。また、PEDOT/PSS分散物の湿潤を向上させるために非極性重合体の上面に表面変性層が用いられる。但し、全てのケースで、半導体に隣接する絶縁体層はPVP、PVAまたはPMMAのいずれかである。
【0015】
米国特許第62045115B1号明細書(Dow Chemical Company)は、フルオレン単位の共重合体に基づく有機FETを開示している。この特許明細書は、広範囲の有機および無機絶縁体が少なくとも3の誘電率を有するという条件で使用できることを示唆している。
【0016】
Sheraw等(Mat. Res. Soc. Symp. Proc., 2000, 58, 403)は、ベンゾシクロブテン(BCB)、SiO2、パリレンCおよびポリイミドのゲート絶縁体を有する蒸発ペンタセンFETを開示している。BCBは2.65の誘電定数を有し、そしてそれは溶液堆積させることができるが、それは高温(200℃)において硬化させることを要する。これはその方法をポリエチレンナフタレートまたはポリエチレンテレフタレートのようなプラスチック基板と合わなくするもので、従って好ましくない。OSCの蒸着も、それが大きな面積に対して適用が難しいので好ましくない。
【0017】
FETの動作電圧を下げるために、高誘電定数を有する絶縁体を使用する傾向があった。これは、チャンネル領域に誘発されるキャリア密度がp=Vεε−1−1(ここで、Vはゲート電圧であり、eは電子電荷であり、εは真空の誘電率であり、εは絶縁体の比誘電率(誘電定数)であり、そしてdは絶縁体の厚さである)に従って誘電率に比例するためである。TiO2(ε〜40−86)、Ta2O5(ε〜25)、SrTiO3(ε〜150)のような高誘電率材料が無機FETにおいて好結果で使用された。これらの技術は、Advanced Material、第7巻、703頁、1995年の“Dielectrics for field effect technology”においてP. Balkによって概説されている。無機FETに似て、米国特許第5,981,970号明細書(IBM社、1999年)は、有機FETのための高誘電定数無機絶縁体の使用を特許請求している。例は、PbZrxTi1-x)O3(PZT)、Bi4Ti3O12、BaMgF4、チタン酸バリウムジルコニウム(BZT)およびチタン酸バリウムストロンチウム(BST)である。上記絶縁体はこれを真空蒸着またはゾル−ゲルスピンコートし、続いて400−600℃でアニールすることができる。この発明は、高誘電率材料は界面でトラップの充填を促進する低ゲート場に高電荷密度を誘発し、それによって追加のキャリアをトラッピング過程によって邪魔されることなく容易に動かすことを可能にする。
【0018】
有機トランジスタにおける高誘電率絶縁の使用は、従来技術(米国特許第6,207,472号明細書、IBM社、2001年;Dimitrakopoulos等、Science、第283巻、822頁、1999年;Dimitrakopoulos等、Adv. Mat.、第11巻、1372頁、1999年)においてさらに教示されている。例えば、蒸着されたチタン酸バリウムジルコニウム(BZT、ε=17.3)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST、ε=16)およびSi3N4(ε=6.2)が蒸発ペンタセンと共に用いられた。
【0019】
米国特許第5,347,144号明細書(CNRS社、1994年)は、有機FETに有利である高誘電率(ε>5)の有機絶縁体を特許請求している。例えば、18.5の誘電率を有するシアノエチルプルランはSiO2またはポリビニルアルコール絶縁体よりも数桁高い移動度をもたらしたことが特許請求されている。この米国特許の開示は、電界効果はポリメチルメタクリレート(PMMA、ε=3.5)またはポリスチレン(ε=2.6)のような低誘電率材料によっては得ることができなかったことを報告している。この米国特許明細書は、この結果を極性基板上の有機半導体の改善された構造組織化に帰している。
【発明の開示】
【0020】
発明の説明
特定の理論によって結びつけられることを望むものではないが、本発明者は、高誘電率絶縁体の極性基がランダムトラップを電荷キャリアの引力によって半導体の局在準位上に導くと考える。無秩序または半無秩序有機半導体、例えば溶液塗布技術によって堆積されている多くの有機半導体は高密度の局在準位を有し、従って電子または正孔のホッピング(hopping)が電荷輸送において制限因子である。他方、例えば0.1cm/Vsに近い移動度を有する高秩序材料における電荷輸送は、このような材料はより高い秩序化の程度を有するので、バンド輸送を暗示し始める。ここで、高誘電率絶縁体のランダム双極子場は、キャリアが大きな距離にわたって非局在化される場合は、電子バンドに及ぼす影響がはるかに低い。従来法の技術は、高誘電率絶縁体を用いて、高電荷密度を誘発することで界面トラップを容易に満たすことによって界面トラッピングを解決する。
【0021】
本発明者は、ゲート絶縁体層での低誘電率の絶縁体の使用が、トラップ自体をなくすることによって界面トラッピングの問題を解決し、そして有機半導体、特に、他を排除するものではないが、無秩序または半無秩序有機半導体によりはるかに良好な性能をもたらすことを発見した。多くの溶液塗布性材料は無秩序性をある程度有し、かつ局在準位が存在するから、ある特定の低誘電率絶縁体を用いてランダム双極子モーメントによるサイトエネルギー(site energies)の変調を回避する際に利益がある。しかし、利用可能な最良の可能なアライメント法によっても、有機半導体は、本質的には、依然として、低誘電率絶縁体の使用が有益であるように無秩序になっていることに留意されるべきである。このような材料を用いたとき、本発明者は、非常に高い品質、再現性、電界効果移動度、および通常は界面トラッピングによって引き起こされる極端に低いヒステリシスを持つFETが加工できることを見いだした。その結果、高品質のトランジスタが移動度の非常に低いゲート場依存性で得ることができる。低誘電率材料はより低いゲート容量に通じ、このことが誘発キャリアの数を減少させる。しかし、それはドレイン電流に対して線形効果を有するだけで、キャリア移動度を有意に増加させる電位による界面トラッピングの低下によって容易に補償される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のFETの4つの可能な配置の断面図である。図1a)およびb)はボトムゲート配置を有し、そして図1c)およびd)はトップゲート配置を有する。
【図2】2つのゲート絶縁体層が存在する場合の、本発明のFETの4つの可能な配置の断面図である。図2a)およびb)はボトムゲート配置を有し、そして図2c)およびd)はトップゲート配置を有する。
【図3】誘電体の誘電率に対する移動度の依存性を示すグラフである。
【図4】実施例12のOFETの、2つのドレイン電圧、即ちVd=2VおよびVd=20Vにおける伝達特性を示す。
【図5】図4の伝達曲線から方程式2に従って計算された移動度を示す。
【0023】
本発明の第一の面によれば、有機電界効果デバイスを製造する方法であって、
a)溶液から有機半導体層を堆積させ;そして
b)溶液から低誘電率絶縁材料の層を堆積させて、その低誘電率絶縁材料が上記有機半導体層と接触するようにゲート絶縁体の少なくとも一部を形成する
工程を含み、ここで上記低誘電率絶縁材料は比誘電率が1.1から3.0未満までである上記の方法が提供される。
本発明の第二の面によれば、本発明の第一の面の方法によって製造された有機電界効果デバイスが提供される。
図1a)−d)および2a)−dにおいて、層1は基板であり、層2は絶縁体であり、層3は有機半導体であり、SおよびDはソース電極およびドレイン電極であり、そしてGはゲート電極である。図2a)−d)において、符号2aは第二絶縁体層である。
【0024】
電位がゲート電極Gに印加されると、電荷キャリアが半導体中に絶縁体とのその界面において蓄積される。
本発明は、有機半導体から低誘電率絶縁体層の他方の側に、少なくとも1つの高誘電率絶縁体層を堆積させてゲート絶縁体のさらなる一部を形成することを含むことができる。この少なくとも1つの高誘電率絶縁体層は低誘電率絶縁体層よりも高い誘電率を有するのが好ましい。この少なくとも1つの高誘電率絶縁体層は、好ましくは3.5以上、さらに好ましくは10以上、最も好ましくは20以上の比誘電率を有する。可能な最高誘電率が好ましい。誘電率は約200までの範囲であることができる。この少なくとも1つの高誘電率絶縁体層は溶液から堆積させることもできる。
【0025】
有機半導体層および/またはゲート絶縁体の層(1つまたは複数)は溶液からスピンコーティングによって堆積させることができる。
前記デバイスを製造する方法全体は約100℃以下で遂行することができ、かくしてこの方法を実施する困難さは従来技術の方法よりもはるかに小さくなる。
【0026】
有利なことに、有機半導体層およびゲート絶縁体層(1つまたは複数)の両層は溶液から堆積されるから、大きな面積が容易にコーティングされ得る。低誘電率ゲート絶縁体層を用いることにより、有機半導体層がたとえ無秩序化または半秩序化されていても良好な移動度が達成されることが見いだされた。
【0027】
ゲート絶縁体層は有機材料、例えば重合体から成ることが好ましい。
1つの好ましい態様では、前もってパターン化されたドレイン電極およびソース電極を有する基板の上に半導体をスピンコーティングすることによって図1cのFET構造が作成される。次に、3未満の比誘電率を有する低誘電率重合体の形の絶縁体が上記半導体の上にスピンコートされ、続いて導電性溶液または分散液の真空蒸着または液体堆積によってゲート電極の堆積が行われる。プロセス工程の順序が図1に示される構造a、bまたはdを達成するために変え得ることは認められるだろう。このOFETは、また、垂直構造を有し得ることも認められるだろう。
【0028】
低誘電率有機絶縁体はゲートへの漏れを避けるために10−6Scm−1未満の導電率を有すべきである。好ましい絶縁体は低極性の材料である。この材料の低周波数(実測周波数50〜10,000Hz)誘電率(誘電定数)εは3.0未満で、好ましくは1.1以上であるべきである。誘電率は1.3−2.5の範囲内、特に1.5−2.1の範囲内であるのがさらに好ましい。誘電率に関するさらに好ましい下限は1.7である。このような材料には、もしあれば半導体との界面での分子サイト上における電荷の局在化を高め得る永久双極子がほとんどない。誘電率(誘電定数)はASTM D150試験法で測定することができる。重合体の誘電率は、例えばHandbook of Electrical and Electronic Insulating Materials(The Institute of Electrical and Electronic Engineers Inc.、ニューヨーク、1995年)の中に見いだすことができる。材料の誘電率は周波数依存性がほとんどない。これは低または非極性材料に典型的なことである。重合体および共重合体は、それらの置換基の誘電率によって選択することができる。低誘電率材料は、非常に低い誘電率を達成するために多孔質であることができる。低極性重合体のリストが表1に与えられる(これらの例には限定されない):
【0029】
【表1】

【0030】
上記リストは他を排除するものではなく、例えばポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(1,3−ブタジエン)またはポリフェニレンを含めて他の重合体が使用できるだろう。上記重合体の繰返単位を含む共重合体も適している。共重合体は溶解性、および絶縁体層の連続性を改善する可能性を提供する。
【0031】
上記の表においてある特定の材料は共通に使用される溶媒に不溶であることが認識されるべきである。事実がこうであるならば、共重合体が使用できる。共重合体の一部の例が表2に与えられる。ランダムまたはブロック共重合体の両者が使用できる。組成物全体の極性が低いままである限り、極性がより大きいある種の単量体成分を加えることも可能である。好ましい低誘電率材料は、例えばポリプロピレン、好ましくは非晶質ポリプロピレン、または低誘電率フルオロポリマー、例えばAldrich社またはDuPont社から商標名Teflon AFで、或いは旭硝子株式会社(Asahi Glass)から商標名CYTOPで入手できる2,2−ビストリフルオロメチル−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソールのような、例えばテトラフルオロエチレンとジオキソール類との共重合体であることができる。後者の非晶質共重合体は、マイクロエレクトロニクスにおいて層間絶縁体として好結果で使用されてきたが、この場合導電性トラック間でのクロストークを低下させるために低誘電率が必要とされる。他の好ましい材料は、低誘電率のフルオロポリマー、フルオロエポキシポリマー、フルオロシラン、例えばCytonic CorporationからPFC GH、PFC GU、PFC MHなる製品範囲内で入手できるフルオロアクリル重合体、並びにポリ(ジメチル)シロキサンおよびその共重合体である。
【0032】
上記重合体は、随意に、コーティング後に熱または放射線で架橋させることができる。
【0033】
【表2】

【0034】
トップゲート配置(例えば、図1c、d)においては、低誘電率絶縁体は有機FETで典型的に使用される半導体を溶解しない溶媒からコーティングされることがさらに好ましい。ゲート絶縁体層の堆積に好ましい溶媒はフルオロ溶媒、好ましくは、特に適し、半導体と絶縁体との間にシャープな界面層をもたらすFluorinert(商標名)FC40、FC75(主としてペルフルオロ環状エーテルより成る)、FC77(主としてペルフルオロオクタン)のようなペルフルオロ溶媒である。オリゴチオフェン類およびポリチオフェン類のような典型的な有機半導体はペルフルオロ溶媒に事実上不溶である。ボトムゲート配置が用いられるとき(例えば、図1a、b)、非晶質ペルフルオロポリマーが有機半導体をコーティングするために用いられる芳香族またはクロロ溶媒に対して卓越した化学的抵抗性を与える。
【0035】
低誘電率材料のさらなる利点は、それら材料が疎水性であって、水に対して良好なバリヤーとなるということである。高度に極性の水分子は、半導体界面に望ましくない双極子の無秩序を導くことがある。
【0036】
溶液コートされた半導体と溶液コートされた絶縁体との間にシャープな界面を画成するために、従来技術はポリビニルフェノール(PVP)のようなアルコール可溶性絶縁体材料を提案している。しかし、PVPは極性が極めて高く、しかも吸湿性である;この両性質は本発明によれば望ましくない。
【0037】
有機半導体層はゲート絶縁体層が堆積される前または後に堆積させることができる。
本発明のさらなる態様において、本発明の有機電界効果トランジスタデバイスは、低誘電率層よりも高い誘電率を持つさらなる絶縁体層を含む。本発明の有機電界効果トランジスタデバイスは、2つ以上のそのようなさらなる絶縁体層を含むことができる。例えば、図2に示されるように、半導体に隣接する薄層に低誘電率ゲート絶縁体層2が使用でき、そして第一絶縁体層の次により高い誘電率を持つ第二絶縁体層2aが使用できる。このような配置の利点は、低極性の第一絶縁体層が第二絶縁体材料のランダム双極子場を半導体から遮蔽するということである。この態様において、絶縁体層2は第二絶縁体材料2aに見いだされる双極子の大きさの数倍よりはるかに厚い必要はないと考えられる。かくして、第一絶縁体層2の実際の層厚は5nm以上で、1μmまでであることができる。高誘電率の第二絶縁体層2aは任意の厚さ、例えば50nm〜10μmであることができる。薄い低誘電率材料の第一層を半導体と接触させて使用するというアイデアに基づいて、複数のさらなる絶縁体層も用いることができるということは認められるだろう。この第二層はゲート容量を最大にするために3.5超の誘電率を有するのが好ましい。第二絶縁体層は、ゲート容量を最大にするために10超の誘電率を有するのがさらに好ましく、20超であるのがそれよりもさらに好ましく、例えば20〜200である。このさらなる絶縁体層は随意に架橋させることができる。この層で用いられる重合体は、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリメチルメタクリレート、シアノエチルプルランのようなシアノエチル化多糖類、ポリフッ化ビニリデンのような高誘電率フルオロポリマー、ポリウレタン重合体およびポリ(塩化ビニル/酢酸ビニル)重合体であることができる。第二絶縁体層は蒸着させることもできるし、或いは溶液から堆積させることもできるが、溶液から堆積させる方が好ましい。高誘電率複合材料、例えばTiO2、Ta2O5、SrTiO3、Bi4Ti3O12、BaMgF4、チタン酸バリウムジルコニウム、チタン酸バリウムストロンチウムの複合材料が、第二ゲート絶縁体層として特に有用である。これらは、好ましくは分散液の形での液体コーティングによって、またはゾル−ゲル法によって堆積させることができる。有機半導体に隣接する低誘電率層と多層ゲート絶縁体中のさらなる高誘電率層との組み合わせは動作電圧を低下させ、同時に界面トラッピング、ヒステリシスを取り除き、そして移動度を増大させることができる。もう1つの態様において、多層絶縁体スタックの低誘電率層と高誘電率層との間に中間層を堆積させることができる。このような中間層はコーティング工程間での接着性および濡れを改善することができる。中間層は、例えば異なる表面特性を有するもう1つの低誘電率材料であることができる。表面処理、例えばプラズマ処理も層の融和性を改善するために用いることができる。
【0038】
有機半導体はn型でもp型でもよく、それは溶液から堆積される。好ましい有機半導体は10−5cm−1−1超のFET移動度を有する。
有機半導体は、少なくとも3つの芳香族環を含んでいる任意の共役芳香族分子であることができる。好ましい有機半導体は5、6または7員の芳香族環を含み、特に好ましい有機半導体は5または6員の芳香族環を含んでいる。
【0039】
芳香族環の各々は、随意に、Se、Te、P、Si、B、As、N、OまたはSから、好ましくはN、OまたはSから選ばれる1個または2個以上のヘテロ原子を含んでいることができる。
【0040】
環は、随意に、アルキル、アルコキシ、ポリアルコキシ、チオアルキル、アシル、アリール若しくは置換アリールの各基、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、または場合によって置換されている第二または第三アルキルアミン若しくはアリールアミン−N(R3)(R4)で置換されていることができ、ここでRおよびRは、各々独立に、H、場合によって置換されているアルキル、場合によって置換されているアリール、アルコキシまたはポリアルコキシの各基である。アルキルおよびアリール基は随意にフッ素化されていることができる。
【0041】
環は場合によって縮合されていてもよいし、或いは−C(T1)=C(T2)−、−C≡C−、−N(R’)−、−N=N−、(R’)=N−、−N=C(R’)−のような共役結合基で結合されていてもよく、ここでTおよびTは、各々独立に、H、Cl、F、−C≡Nまたは低級アルキル基、特にC1−4アルキル基を表し;R’はH、場合によって置換されているアルキルまたは場合によって置換されているアリールを表す。アルキルおよびアリール基は随意にフッ素化されていることができる。
【0042】
この発明で使用することができる他の有機半導性材料に、次のリストの化合物、オリゴマー、および化合物の誘導体がある:次の共役炭化水素重合体のオリゴマーを含めてポリアセン、ポリフェニレン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリフルオレンのような共役炭化水素重合体;アントラセン、テトラセン、クリセン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、コロネンのような縮合芳香族炭化水素;p−クオーターフェニル(p−4P)、p−クインクエフェニル(p-quinquephenyl)(p−5P)、p−セクシフェニル(p−6P)のようなオリゴマー性パラ置換フェニレン;ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−ビス置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−ビス置換ピロール)、ポリフラン、ポリピリジン、ポリ−1,3,4−オキサジアゾール類、ポリイソチアナフテン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(2−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−ビス置換アニリン)、ポリアズレン、ポリピレンのような共役複素環式重合体;ピラゾリン化合物;ポリセレノフェン;ポリベンゾフラン;ポリインドール;ポリピリダジン;ベンジジン化合物;スチルベン化合物;トリアジン類;置換メタロ−または金属不含−ポルフィン、フタロシアニン類、フルオロフタロシアニン類、ナフタロシアニン類またはフルオロナフタロシアニン類;C60およびC70フラーレン;N,N’−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジアミドおよびフルオロ誘導体;N,N’−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリール−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジアミド;バソフェナントロリン;ジフェノキノン類;1,3,4−オキサジアゾール類;11,11,12,12−テトラシアノナフト−2,6−キノジメタン;α,α’−ビス(ジチエノ[3,2−b2’,3’−d]チオフェン);2,8−ジアルキル、置換ジアルキル、ジアリールまたは置換ジアリールアントラジチオフェン;2’,2’−ビベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン。好ましい化合物は上記リストからのものおよび可溶性であるそれらの誘導体である。
【0043】
半導体の好ましい類は式1:
【0044】
【化1】

【0045】
の繰返単位を有し、ここで各Yは独立にP、S、As、NおよびSeから選ばれ、ArおよびArは芳香族基であり、そしてArはYがN、PまたはAsであるときにのみ存在し、この場合Arも芳香族基である;好ましくは、上記半導体はポリアリールアミンであって、その場合YはNである。Ar、ArおよびArは同一でも、或いは異なっていてもよく、そしてそれらが異なる繰返単位中に存在するときは、独立に、少なくとも1個の、場合によって置換されているC1−40カルビル誘導基および/または少なくとも1個の他の随意置換基で随意に置換されている多価(好ましくは二価)の芳香族基(好ましくは単核であるが、場合によっては多核であってもよい)を表し、そしてArは、それが異なる繰返単位中に存在するときは、独立に、少なくとも1個の場合によって置換されているC1−40カルビル誘導基および/または少なくとも1個の他の随意置換基で随意に置換されている一価または多価(好ましくは二価)の芳香族基(好ましくは単核であるが、場合によっては多核であってもよい)を表す;ここで、少なくとも1個の末端基は、重合体中において、重合体鎖をキャップして重合体のさらなる成長を妨げるように、その重合体鎖の末端に位置するAr、Ar、そして随意にArに結合されており、そして少なくとも1個の末端基は当該高分子物質を形成する重合でその分子量を制御するために用いられる少なくとも1種の末端キャップ用試薬から誘導されている。
【0046】
WO99/32537号およびWO00/78843号は本出願人の特許出願であるが、それらは式1の繰返単位を有するある特定の新規なオリゴマーおよび重合体について記載している。これらの物質は本発明において半導体として特に有用であるので、これら特許出願の開示はここで言及することによって本明細書に含められる。
【0047】
数平均重合度はnで示され、そして本発明において分子1個につき存在することができる式1の繰返単位の数は2〜1,000、好ましくは3〜100、さらに好ましくは3〜20(それぞれ両端の数字を含む)であることができる。この重合体は色々な鎖長を持ち、そしてある分子量分布(多分散)を有する、異なる高分子種の混合物から成っていることもできるし、或いは単一分子量(単分散)の分子より成っていることもできる。
【0048】
この好ましい高分子物質は、少なくとも1種の末端キャップ試薬の、重合体鎖のさらなる成長を実質的に低下させるのに十分な量での添加により制御される重合によって得ることができる。
【0049】
式1においてArおよびArから延びている星印は、これらの基が(式1に示される二価を含めて)多価であることができることを示そうとするものである。
本発明は、また、例えば光重合または熱重合によって連鎖延長または架橋する能力のある部分でさらに置換される平均で2個以上のアリール部分でさらに置換されている重合体に関する。このような連鎖延長する能力のある部分は、好ましくはヒドロキシ、グリシジルエーテル、アクリレートエステル、エポキシド、メタクリレートエステル、エテニル、エチニル、ビニルベンジルオキシ、マレイミド、ナドイミド(nadimide)、トリフルオロビニルエーテル、アリール部分上の隣接炭素に結合されているシクロブテン、またはトリアルキルシロキシである。
【0050】
この発明で有用であろう他のアミン物質は、テトラキス(N,N’−アリール)ビアリールジアミン類、ビス(N,N’−[置換]フェニル)ビス(N,N’−フェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(それらの4−メチル、2,4−ジメチルおよび/または3−メチル誘導体を含む)、テトラキス(N,N’−アリール)ビフェニル−4,4’−ジアミン−1,1−シクロヘキサンおよびそれらの誘導体、トリフェニルアミンおよびそのアルキルおよびアリール誘導体、並びにポリ(N−フェニル−1,4−フェニレンアミン)、N−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン−5−イルジエン−N,N’−ジ−p−トリル−ベンゼン−1,4−ジアミン、(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−ジ−p−トリル−アミンおよびそれらの誘導体である。
【0051】
この発明で有用であろうさらなるポリアリールアミン物質は次の式を有する:
【0052】
【化2】

【0053】
これらの分子は、各分子を化学的に純粋な単分散形で生成させる多段化学的合成法で直接製造することができる。
また、この発明に用途があるだろう関連物質は、また、特許DE3610649号、EP0669654−A号(=米国特許第5,681,664号)、EP0765106−A号、WO97−33193号、WO98−06773号、米国特許第5,677,096号および米国特許第5,279,916号明細書に開示されている。
【0054】
共役オリゴマーまたは高分子の複素環式半導体は、式2:
【0055】
【化3】

【0056】
に示されるとおり、随意に置換されている5員環の繰返単位並びに末端基AおよびAを含むことができる;但し、上記の式においてXはSe、Te、または好ましくはO、S若しくは−N(R)−であることができ、ここでRはH、随意に置換されているアルキルまたは随意に置換されているアリールを表し;R、R、AおよびAは独立にH、アルキル、アルコキシ、チオアルキル、アシル、アリール若しくは置換アリール、フッ素原子、シアノ基、ニトロ基、または随意に置換されている第二若しくは第三アルキルアミン若しくはアリールアミン−N(R3)(R4)であることができ、ここでRおよびRは上記定義のとおりである。R、R、R、R、AおよびAで表されるアルキルおよびアリール基は、場合によってフッ素化されていてもよい。式2の共役オリゴマー中における繰返単位の数は整数nで表され、nは式1についていえば定義されているものである。式2の化合物において、nは2〜14であるのが好ましい。好ましいオリゴマーはX=S、RおよびR=H、並びにAおよびA=随意に置換されているC1−12アルキル基を有し、特に好ましい化合物の例は、AおよびA=n−ヘキシルであって、かつn=4の場合のアルファ−オメガ−n−ヘキシルクオーターチエニレン(アルファ−オメガ−4T)、n=5の場合のアルファ−オメガ−n−ヘキシルペンタチエニレン(アルファ−オメガ−5T)、n=6の場合のアルファ−オメガ−n−ヘキシルヘキサチエニレン(アルファ−オメガ−6T)、n=7の場合のアルファ−オメガ−n−ヘキシルヘプタチエニレン(アルファ−オメガ−7T)、n=8の場合のアルファ−オメガ−n−ヘキシルオクタチエニレン(アルファ−オメガ−8T)、およびn=9の場合のアルファ−オメガ−n−ヘキシルノナチエニレン(アルファ−オメガ−9T)である。共役結合基を含むオリゴマーは式3:
【0057】
【化4】

【0058】
で表すことができる;但し、上記の式においてXはSe、Te、または、好ましくはO、Sまたは−N(R)−であることができ;Rは前記定義のとおりであり;R、R、AおよびAは上記で式2について定義したとおりである。結合基Lは−C(T1)=C(T2)−、−C≡C−、−N(R’)−、−N=N−、(R’)=N−、−N=C(R”)−を表し、ここでTおよびTは前記定義のとおりである。
【0059】
重合体は一般的4:
【0060】
【化5】

【0061】
の繰返単位を有する;但し、上記の式においてX、RおよびRは上記のとおり定義される。そのサブユニットは式4〜6:
【0062】
【化6】

【0063】
に示される繰返単位を含む位置規則性または位置不規則性重合体を与えるそのような仕方で重合させることができる。
重合体は一般的7:
【0064】
【化7】

【0065】
の繰返単位を有することができる;但し、上記の式においてXは上記定義のとおりであり、そして橋掛け基Aは場合によってフッ素化されているC1−6アルキル、例えばポリ(3,4−エチレンジオキシ)チオフェン−2,5−ジイルおよびポリ(3,4−トリメチルジオキシ)チオフェン−2,5−ジイルである。
【0066】
重合体は一般式8:
【0067】
【化8】

【0068】
の繰返単位を有することができる;但し、上記の式においてX、RおよびRは上記のとおり定義される。特定の例は、RまたはRの一方が一般式CnH2n+1O−のアルコキシドであり、そしてRまたはRの他方がH、ポリ(ドデシルオキシ−α,α’、−α,α”−ターチエニル)、即ちポリDOT3である場合である。
【0069】
重合体は一般式9:
【0070】
【化9】

【0071】
の繰返単位を有することができる;但し、上記の式においてXは上記定義のとおりであり;RおよびRは、独立に、H、アルキル、アリールまたは置換アリールであることができる。アルキルおよびアリール基は場合によってフッ素化されていてもよい。
【0072】
重合体は一般式10:
【0073】
【化10】

【0074】
の繰返単位を有することができる;但し、上記の式においてRおよびRは、各々独立に、場合によって置換されているC1−20ヒドロカルビル、C4−16ヒドロカルビルカルボニルオキシ、C4−16アリール(トリアルキルシロキシ)であるか、またはRおよびRがどちらもフルオレン環上の9−炭素とC5−20環構造またはS、N若しくはOの1個または2個以上のヘテロ原子を含むC4−20環構造を形成することができる。
【0075】
重合体は一般式11:
【0076】
【化11】

【0077】
の繰返単位を有することができる;但し、上記の式においてRは場合によってジ(C1−20アルキル)アミノ、C1−20ヒドロカルビルオキシ、またはC1−20ヒドロカルビル若しくはトリ(C1−10アルキル)シロキシで置換されているC1−20ヒドロカルビルである。
【0078】
上記の繰返単位、そしてまたそれら繰返単位の1種または2種以上を含む他の繰返単位を含む共重合体が使用できる。共重合体は式10または式11と、式1の1種または2種以上の繰返単位を含むのが好ましい。さらに好ましい態様において、共重合体は式1の1種または2種以上の繰返単位および式2〜9の少なくとも1つの1種または2種以上の繰返単位を含む。半導体層で使用するのに好ましい共重合体に、アリールアミンと共重合した、またはチオフェンと共重合したオレフィンを含んでいるオリゴマーまたは重合体がある。
【0079】
内容がここで言及することによって本明細書に含められる本発明者の出願中の特許出願PCT/GB01/05145号明細書において、本発明者は有機半導体およびバインダー重合体の溶液塗布組成物を用いている有機電界効果トランジスタについて説明した。この発明は、双極子の無秩序性を低下させるために、低誘電率のバインダー材料の必要を強調した。低誘電率の溶液塗布ゲート絶縁体を用いるこの発明は、PCT/GB01/05145号明細書で特許請求されるバインダー/半導体組成物に特に重要であると考えられる。これは、双極子の無秩序性は電子輸送が起こる領域、即ち絶縁体/半導体界面において特に回避されるべきであるからである。
【0080】
半導体がp型半導体である場合、これは単分散ポリアリールアミン、単分散ポリアリールアミンの混合物、フッ素アリールアミン共重合体または架橋性アリールアミンであるのが好ましい。半導体がn型半導体である場合、これはフルオロフタロシアニン類、即ち置換ジアリール−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミドおよびそのオリゴマーであるのが好ましい。
【0081】
半導性チャンネルは、また、同一タイプの半導体の2種または3種以上の複合材料であることができる。さらに、p型チャンネル材料は、例えば層をドーピングする効果のためにn型材料と混合させることができる。多層半導体層も使用できる。例えば、半導体は絶縁体界面の付近に存在するのが固有であり、その固有層の次に高度にドープされた領域がさらにコーティングされ得るのである。
【実施例】
【0082】
実施例
本発明を、次に、次の特定の実施例を参照して説明する。
半導体の製造
実施例1
【0083】
【化12】

【0084】
この物質をPCT/GB01/05145号明細書に記載される手順を用いて製造して黄色粉末(7.8g)を生成させた。M=3700。
実施例2
【0085】
【化13】

【0086】
この物質をPCT/GB01/05145号明細書に記載される手順を用いて製造してM=700〜M=10000の範囲にわたる一連の13画分を生成させた。
実施例3
【0087】
【化14】

【0088】
この物質をWO 99/32537号明細書に記載される手順を用いて製造してオフホワイトの固体(20.2g)を生成させた。(M=3100)。
実施例4
【0089】
【化15】

【0090】
この物質をPCT/GB01/05145号明細書に記載される手順を用いて製造してM=17300のオレンジ色の固体を生成させた。
【0091】
電界効果移動度の測定
材料の電界効果移動度を、J. Appl. Phys.、第75巻、7954頁(1994年)においてHolland等によって説明されている技術を用いて試験した。
次の実施例において、試験用電界効果トランジスタは、Pt/Pdソース電極および同ドレイン電極が標準技術、例えばシャドウマスキング法でパターン化されたMelinex基板を用いることによって製造された。半導体を、1部を99部の溶媒、例えばトルエンに溶解し、それを上記基板上に1000rpmで20秒間スピンコートして〜100nmの膜を与えた。この試料を、完全な乾燥を確実に達成するために、オーブン中に100℃において20分間入れておいた。次に、絶縁体材料の溶液を上記半導体上にスピンコートし、典型的には0.5〜1μmの範囲内の厚さを与えた。この試料をもう一度100℃のオーブン中に入れてその絶縁体から溶媒を蒸発させた。金ゲートコンタクトを、シャドーマスクを通しての蒸発によって上記デバイスチャンネル域全面に画成した。
【0092】
絶縁体層の容量を求めるために、非パターン化Pt/Pdベース層、FETデバイスについてのものと同じ方法で製造された絶縁体層、および既知の幾何形状を持つトップ電極(top electrode)より成る複数のデバイスを作成した。絶縁体の両側の金属に接続されているハンドヘルドマルチメーターを用いて容量を測定した。トランジスタの他の定義用パラメーターは、互いに対面しているドレイン電極およびソース電極の長さ(W=25mm)およびそれらの相互間距離である(L=100μm)。
【0093】
トランジスタに印加される電圧はソース電極の電位に比例する。p型ゲート材料の場合、ゲートに負電位が印加されるとゲート絶縁体の他方の側における半導体中に正電荷キャリア(正孔)が蓄積される。(nチャンネルFETでは、正電圧が印加される。)これは蓄積モードと呼ばれる。ゲート絶縁体の容量/面積Cは、かくして誘発された電荷の量を決める。負電位VDSがドレインに印加されるときは、蓄積キャリアは、主として蓄積キャリアの密度、そしてとりわけソース−ドレインチャンネル中におけるそれらの移動度に依存するソース−ドレイン電流IDSを生じさせる。ドレインおよびソースの電極配置、大きさおよび距離のような幾何形状的因子もその電流に影響を及ぼす。典型的には、ある一定範囲のゲートおよびドレイン電圧がデバイスの研究中にスキャンされる。ソース−ドレイン電流は方程式1:
【0094】
【数1】

【0095】
で記述される;但し、上記の式においてVはオフセット電圧であり、そしてIΩはゲート電圧と無関係のオーミック電流であって、材料の有限の導電率に起因する。他のパラメーターは上記で説明された。
【0096】
電気的測定のために、トランジスタ試料を試料ホルダー中に取り付けた。ゲート、ドレインおよびソースの各電極にKarl Suss PH100ミニチュアプローブヘッドを用いてマイクロプローブを接続させた。これらをHewlett-Pachard 4155Bパラメーターアナライザーにつないだ。ドレイン電圧を−20Vに設定し、そしてゲート電圧を+20Vから−40Vまで1Vステップでスキャンした。|V|>|VDS|のとき、ソース−ドレイン電流はVと共に直線的に変化する。かくして、電界効果移動度は方程式2:
【0097】
【数2】

【0098】
によって与えられるIDS対Vの勾配から計算することができる。
下記において引用される全ての電界効果移動度は、(外に述べられなければ)このレジメから計算された。
【0099】
次の実施例は、OFETで用いられる発明のおよび従来技術のゲート絶縁体により得られた結果を説明するものである。色々なデバイスの性能が表1で適切な絶縁体の誘電率と共に比較されている。デバイスの作製および試験法は先の節で説明されるもので、(外に述べられなければ)全実施例について同じであった。実施例28−33は多層デバイス、即ち追加の絶縁体層を有するデバイスを述べるもので、その結果は下記の表2にまとめて示される。
【0100】
実施例5−6
OFETを式12(実施例5)および式13(実施例6)の有機半導体を使用して作成した。低誘電率ペルフルオロポリマーであるCytop 107M(旭硝子株式会社、Z-1700E01)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はFC75溶媒(Acros 12380-0100)との1:1混合物からスピンコートされた。これらのデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。加えて、移動度は、VがVよりも負が大きいときに印加ゲートバイアスにより変化しなかった。得られた移動度は、次の実施例で得られた全ての移動度と共に表1に示される。
【0101】
実施例7
OFETを式13のOSCを用いて作成した。低誘電率ペルフルオロポリマーであるTeflon AF1600(Aldrich社、46,961-0)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はFC40溶媒(Acros 12376-0100)との25:1混合物からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。加えて、移動度は、VがVよりも負が大きいときに印加ゲートバイアスにより変化しなかった。
【0102】
実施例8
OFETを式14のOSCを用いたことを除いて実施例5に記載されるように作成および試験した。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。加えて、移動度はVがVよりも負が大きいときに印加ゲートバイアスにより変化しなかった。
【0103】
実施例9(比較例)
OFETを式14のOSCを用いて作成した。従来技術の極性重合体であるポリメチルメタクリレート(Aldrich社、18,226-5)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はアセトンとの12.5:1混合物からスピンコートされた。このデバイスはヒステリシス、および移動度の印加ゲートバイアス依存性を示した。
【0104】
実施例10(比較例)
OFETを式14のOSCを用いて作成した。従来技術の極性重合体であるポリ−4−ビニル−フェノール(Aldrich社、43,622-4)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はメタノール中の10:1(重量/重量)溶液からスピンコートされた。このデバイスはヒステリシス、および移動度の印加ゲートバイアス依存性を示した。
【0105】
実施例11(比較例)
OFETを、PCT/GB01/05145号明細書に記載される熱酸化シリコン基板上の前もって画成されたソース電極およびドレイン電極上に式14のOSCを用いて作成した。その200nmのSiO2層はゲート絶縁体として役立った。このようなSiO2絶縁体は従来技術において広く用いられている。このデバイスはヒステリシス、および移動度の印加ゲートバイアスに対する強い依存性を示した。
【0106】
実施例12
OFETをOSCがアニソールから堆積されたことを除いて実施例6に記載されるように作成および試験した。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。
【0107】
実施例13(比較例)
OFETを式14のOSCを用いて作成した。従来技術の極性重合体であるポリシアノプルラン(CYMM)(SinEtsu社)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はアセトン中10%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。このデバイスは非常に強いヒステリシス、および移動度の印加ゲートバイアスに対する有意の依存性を示した。−40V〜+20Vと比較して+20V〜−40Vの方向でゲートに掛かる電圧をスキャンする間のスレッショルド電圧の差はおよそ5Vであった。
【0108】
実施例14(比較例)
OFETを、OSCが絶縁体を堆積させる前にアセトンで洗浄されたことを除いて実施例13に記載されるように作成および試験した。本発明者は、アセトンに溶ける可能性のある全ての半導体重合体分を洗浄除去することによって、OSC層とCYMM絶縁体層との間における混ざり合いを低下させることを目指したのである。しかし、これは移動度を実施例13に比較して改善しなかった。
【0109】
実施例15
OFETを式14のOSCを用いて作成した。低誘電率重合体であるポリイソブチレン(PIB)(Aldrich社、18,145-5)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はヘキサン中3%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。
【0110】
実施例16
OFETを式13のOSCを用いて作成した。低誘電率重合体であるポリイソブチレン(PIB)(Aldrich社、18,145-5)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はヘキサン中3%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。
【0111】
実施例17
OFETを式14のOSCを用いて作成した。低誘電率重合体であるポリイソブチルメタノール(PIBMMA)(Aldrich社、44,576-2)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はイソプロパノール中10%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。
【0112】
実施例18(比較例)
OFETを式14のOSCを用いて作成した。極性重合体であるポリ(4−ビニルフェノール−コ−メチルメタクリレート)(PVPMMA)(Aldrich社、47,457-6)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はエタノール中15%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。
【0113】
実施例19
OFETを式14のOSCを用いて作成した。低誘電率ペルフルオロポリマーであるTeflon AF2400(Aldrich社、46,962-9)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はFC75溶媒との1.5%(重量/重量)混合物からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。
【0114】
実施例20(比較例)
OFETを式14のOSCを用いて作成した。重合体であるポリ塩化ビニル(PVC)(Aldrich社、18,958-8)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体は、ボトムゲート構造を形成するために、テトラクロロエタン中2.5%(重量/重量)溶液からアルミニウム蒸着マイラー片上にスピンコートされた。(式14の)OSCは絶縁体の上面にスピンコートされ、そしてソース−ドレイン電極がシャドーマスクを通しての金の熱蒸発によって上記OSCの上面に堆積された。
【0115】
実施例21
OFETをバインダー重合体であるポリ(α−メチルスチレン)(Aldrich社、19,184-1)と3:1比(重量:重量)で混合された式14のOSCを使用して作成した。低誘電率ペルフルオロポリマーであるCytop 809A(旭硝子株式会社)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はFC75溶媒との1:1混合物(重量/重量)からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。
【0116】
実施例22(比較例)
OFETを実施例20におけると同じ半導体/バインダー層によるが、従来技術のSiO2を絶縁体として用いて実施例10に記載されるように作成した。この半導体は実施例20におけるよりも低い移動度および強いヒストリシスをもたらした。このデバイスはヒステリシス、および移動度の印加ゲートバイアス依存性を示した。
【0117】
実施例23
OFETを式14のOSCを用いて実施例3に記載されるように作成および試験した。低誘電率フルオロポリマーであるCYTONIX PF2050(Cytonix Corp.)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はFC75を溶媒として用いている14%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。
【0118】
実施例24(比較例)
OFETを式14のOSCを用いて作成した。高誘電率重合体であるポリ(ビニルアルコール)(Aldrich社、36,361-2)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体は水中4%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。このデバイスはヒステリシス、および移動度の印加ゲートバイアス依存性を示した。
【0119】
実施例25
OFETを式14のOSCを用いて実施例3に記載されるように作成および試験した。低誘電率重合体であるポリ(プロピレン−コ−1−ブテン)(Aldrich社、43.108-7)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体は(重合体を溶解するために加温された)シクロヘキサン中の2%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。
【0120】
実施例26
OFETを式15の有機半導体を用いて作成した。低誘電率ペルフルオロポリマーであるCytop 107M(旭硝子株式会社、Z-1700E01)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はFC75溶媒(Acros 12380-0100)との1:1混合物からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。
【0121】
実施例27(比較例)
OFETを式15のOSCを用いて作成した。従来技術の極性重合体であるポリメチルメタクリレート(Aldrich社、18,226-5)を用いてゲート絶縁体を形成した。この絶縁体はアセトンとの12.5:1混合物からスピンコートされた。このデバイスはヒステリシス、および移動度の印加ゲートバイアス依存性を示した。
【0122】
実施例28
OFETを式14のOSCを用いて作成した。3層の誘電体層を用いてゲート絶縁体を形成した。第一層(OSCに隣接)は低誘電率ペルフルオロポリマーであるCytop 107M(旭硝子株式会社、Z-1700E01)であった。これはFC75溶媒との1:1混合物からスピンコートされた。第二層のポリイソブチレン(PIB)(Aldrich社、18,145-5)はヘキサン中3%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。第三層のポリシアノプルラン(CYMM)(ShinEtsu社)はアセトン中5%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。この多層絶縁体の結果は表2にまとめて示される。
【0123】
実施例29
OFETをアニソール中で式13のOSCを用いて作成した。2層の誘電体層を用いてゲート絶縁体を形成した。第一層(OSCに隣接)は、ヘキサン中3%(重量/重量)溶液からスピンされた低誘電率重合体のポリイソブチレン(PIB)(Aldrich社、18,145-5)であった。第二層のポリシアノプルラン(CYMM)(ShinEtsu社)はアセトン中10%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらしたが、PIB/CYMMスタックのより高い総容量に起因してPIB単独を用いるよりもはるかに高い電流を達成した。
【0124】
実施例30
OFETを式13のOSCを用いて作成した。2層の誘電体層を用いてゲート絶縁体を形成した。第一層(OSCに隣接)は、ヘキサン中1%(重量/重量)溶液からスピンされた低誘電率重合体のポリプロピレン(Aldrich社、42,818-3)であった。第二層のポリシアノプルラン(CYMM)(ShinEtsu社)はアセトン中10%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。
【0125】
実施例31
OFETを式14のOSCを用いて作成した。2層の誘電体層を用いてゲート絶縁体を形成した。第一層(OSCに隣接)は低誘電率ペルフルオロポリマーであるCytop 107M(旭硝子株式会社、Z-1700E01)であった。これはFC75溶媒中1%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。この試料を空気プラズマに5分間付してその表面をさらに親水性にした。第二層のポリシアノプルラン(CYMM)(ShinEtsu社)はアセトン中10%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。
【0126】
実施例32
OFETを式14のOSCを用いて作成した。3層の誘電体層を用いてゲート絶縁体を形成した。第一層(OSCに隣接)は低誘電率ペルフルオロポリマーであるCytop 107M(旭硝子株式会社、Z-1700E01)であった。これはFC75溶媒との1:1混合物からスピンコートされた。第二層のポリプロピレン(PP)(Aldrich社、42,818-3)はトルエン中飽和溶液からスピンコートされた。第三層のポリフッ化ビニリデン(PVDF)(Aldrich社、42,715-2)はNMP(N−メチルピロリドン)中5%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。
【0127】
実施例33
OFETを式14のOSCを用いて作成した。3層の誘電体層を用いてゲート絶縁体を形成した。第一層(OSCに隣接)は低誘電率ペルフルオロポリマーであるTeflon AF-1600(Aldrich社、46,961-0)であった。これはFC75溶媒中3%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。第二層のポリプロピレン(PP)(Aldrich社、42,818-3)はトルエン中飽和溶液からスピンコートされた。第三層のポリフッ化ビニリデン(PVDF)(Aldrich社、42,715-2)はNMP中5%(重量/重量)溶液からスピンコートされた。このデバイスは非常に低いヒステリシスとスレッショルド電圧をもたらした。
【0128】
移動度対誘電率のグラフ
図3に示されるグラフは誘電体の誘電率に対する移動度の依存性を示す。これは、半導体のすぐ隣の絶縁体について1.1〜3.0の誘電率を有する誘電体を選択することの好ましさを際だたせる。
【0129】
【表3】

【0130】
【表4】

【0131】
図4は、実施例12のOFETの、2つのドレイン電圧、即ちVd=2VおよびVd=20Vにおける伝達特性を説明している。図5は、図4の伝達曲線から方程式2に従って計算された移動度を説明している。この移動度の計算はVgがVdよりはるかに大きいとき正確である。この状態について移動度はゲート電圧と全く無関係であることが分かる。
[発明の態様]
[1]
有機電界効果デバイスを製造する方法であって、
a)溶液から有機半導体層を堆積させ;そして
b)溶液から低誘電率絶縁材料の層を堆積させて、その低誘電率絶縁材料が上記有機半導体層と接触するようにゲート絶縁体の少なくとも一部を形成する
工程を含み、ここで上記低誘電率絶縁材料は比誘電率が1.1から3.0未満までである上記の方法。
[2]
有機半導体層から低誘電率絶縁材料層の他方の側に、少なくとも1層の高誘電率絶縁材料を堆積させることをさらに含み、ここで上記高誘電率絶縁材料は比誘電率が低誘電率絶縁材料よりも高い、1に記載の方法。
[3]
少なくとも1層の高誘電率絶縁材料が溶液から堆積される、2に記載の方法。
[4]
層の1つまたは2つ以上がフルオロ溶媒を含む溶液から堆積される、1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[5]
層の1つまたは2つ以上が溶液からスピンコーティングによって堆積される、1〜4のいずれか1項に記載の方法。
[6]
全ての工程が約100℃以下において遂行される、1〜5のいずれか1項に記載の方法。
[7]
1〜6のいずれか1項に記載の方法によって製造された有機電界効果デバイス。
[8]
低誘電率絶縁材料の誘電率が1.3〜2.5の範囲内、好ましくは1.5〜2.1の範囲内である、7に記載の有機電界効果デバイス。
[9]
デバイスがトップゲート配置を有する、7または8に記載の有機電界効果デバイス。
[10]
デバイスがボトムゲート配置を有する、7または8に記載の有機電界効果デバイス。
[11]
高誘電率絶縁材料が3.5超、好ましくは10超、さらに好ましくは20超で、200までの誘電率を有する、7〜10のいずれか1項に記載の有機電界効果デバイス。
[12]
高誘電率絶縁材料がポリフッ化ビニリデン、シアノプルアン、ポリビニルアルコールまたは他の高極性有機重合体を含む、7〜11のいずれか1項に記載の有機電界効果デバイス。
[13]
高誘電率絶縁材料がTiO2、Ta2O5、SrTiO3、Bi4Ti3O12、BaMgF4、チタン酸バリウムジルコニウム、チタン酸バリウムストロンチウムまたは他の高極性無機材料を含む、7〜11のいずれか1項に記載のOFETデバイス。
[14]
低誘電率絶縁材料層の厚さが5nm〜1μmの範囲内であり、そして少なくとも1つの高誘電率絶縁材料層の厚さが50nm〜10μmの範囲内である、7〜13のいずれか1項に記載の有機電界効果デバイス。
[15]
ゲート絶縁体層が有機材料を含む、7〜14のいずれか1項に記載の有機電界効果デバイス。
[16]
低誘電率絶縁材料層がフルオロポリマーを含む、15に記載の有機電界効果デバイス。
[17]
低誘電率絶縁材料層がポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリイソプレン、ポリ(ビニルシクロヘキサン)、またはこれら材料の少なくとも1種の単量体単位を含む共重合体を含む、15に記載の有機電界効果デバイス。
[18]
低誘電率絶縁材料層がテトラフルオロエチレンとジオキシド類との共重合体を含む、15に記載の有機電界効果デバイス。
[19]
有機半導体層が10−5cm−1−1より大きい移動度を有する、7〜18のいずれか1項に記載の有機電界効果デバイス。
[20]
有機半導体層がポリアリールアミンを含む19に記載の有機電界効果デバイス。
[21]
有機半導体層がn≧2の複数の繰返単位を有する単分散アリールアミン化合物を含んでいる、20に記載の有機電界効果デバイス。
[22]
有機半導体層がアリールアミンと共重合したフルオレンを含んでいるオリゴマーまたはポリマーを含む、19に記載の有機電界効果デバイス。
[23]
有機半導体層がチオフェンを含んでいるオリゴマーまたはポリマーを含む、19に記載の有機電界効果デバイス。
[24]
有機半導体層がチオフェンと共重合したフルオレンを含んでいるオリゴマーまたはポリマーを含む、19に記載の有機電界効果デバイス。
[25]
有機半導体層が少なくとも2種の有機半導体種の複合材料を含む、19に記載の有機電界効果デバイス。
[26]
有機半導体層がバインダー重合体を含んでいる、19に記載の有機電界効果デバイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機電界効果デバイスを製造する方法であって、
a)溶液から有機半導体層を堆積させ;そして
b)溶液から低誘電率絶縁材料の層を堆積させて、その低誘電率絶縁材料が上記有機半導体層と接触するようにゲート絶縁体の少なくとも一部を形成する
工程を含み、ここで前記低誘電率絶縁材料は比誘電率が1.3から2.5までである、上記の方法
【請求項2】
前記有機半導体層から前記低誘電率絶縁材料層の他方の側に、少なくとも1層の高誘電率絶縁材料を堆積させることをさらに含み、ここで前記高誘電率絶縁材料は比誘電率が前記低誘電率絶縁材料よりも高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1層の高誘電率絶縁材料が溶液から堆積される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記層の1つまたは2つ以上がフルオロ溶媒を含む溶液から堆積される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記層の1つまたは2つ以上が溶液からスピンコーティングによって堆積される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
全ての工程が約100℃以下において遂行される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法によって製造された有機電界効果デバイス。
【請求項8】
前記低誘電率絶縁材料の誘電率が1.5〜2.1の範囲内である、請求項7に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項9】
前記有機電界効果デバイスがトップゲート配置を有する、請求項7または8に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項10】
前記有機電界効果デバイスがボトムゲート配置を有する、請求項7または8に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項11】
前記高誘電率絶縁材料が3.5超、好ましくは10超、さらに好ましくは20超で、200までの誘電率を有する、請求項7〜10のいずれか1項に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項12】
前記高誘電率絶縁材料がポリフッ化ビニリデン、シアノプルアン、ポリビニルアルコールまたは他の高極性有機重合体を含む、請求項7〜11のいずれか1項に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項13】
前記高誘電率絶縁材料がTiO2、Ta2O5、SrTiO3、Bi4Ti3O12、BaMgF4、チタン酸バリウムジルコニウム、チタン酸バリウムストロンチウムまたは他の高極性無機材料を含む、請求項7〜11のいずれか1項に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項14】
前記低誘電率絶縁材料層の厚さが5nm〜1μmの範囲内であり、そして少なくとも1つの高誘電率絶縁材料層の厚さが50nm〜10μmの範囲内である、請求項7〜13のいずれか1項に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項15】
前記ゲート絶縁体層が有機材料を含む、請求項7〜14のいずれか1項に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項16】
前記低誘電率絶縁材料層がフルオロポリマーを含む、請求項15に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項17】
前記低誘電率絶縁材料層がポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリイソプレン、ポリ(ビニルシクロヘキサン)、またはこれら材料の少なくとも1種の単量体単位を含む共重合体を含む、請求項15に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項18】
前記低誘電率絶縁材料層がテトラフルオロエチレンとジオキシド類との共重合体を含む、請求項15に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項19】
前記有機半導体層が10−5cm−1−1より大きい移動度を有する、請求項7〜18のいずれか1項に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項20】
前記有機半導体層がポリアリールアミンを含む請求項19に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項21】
前記有機半導体層がn≧2の複数の繰返単位を有する単分散アリールアミン化合物を含んでいる、請求項20に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項22】
前記有機半導体層がアリールアミンと共重合したフルオレンを含んでいるオリゴマーまたはポリマーを含む、請求項19に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項23】
前記有機半導体層がチオフェンを含んでいるオリゴマーまたはポリマーを含む、請求項19に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項24】
前記有機半導体層がチオフェンと共重合したフルオレンを含んでいるオリゴマーまたはポリマーを含む、請求項19に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項25】
前記有機半導体層が少なくとも2種の有機半導体種の複合材料を含む、請求項19に記載の有機電界効果デバイス。
【請求項26】
前記有機半導体層がバインダー重合体を含んでいる、請求項19に記載の有機電界効果デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−243986(P2011−243986A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−109286(P2011−109286)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【分割の表示】特願2003−553638(P2003−553638)の分割
【原出願日】平成14年11月21日(2002.11.21)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】