説明

検出装置

【課題】検出手段の損傷を確実に防止することができる検出装置を提供する。
【解決手段】搬送手段3により搬送される物体Sに接近又は離間する方向に移動して該物体Sの性状を検出可能であると共に、計測手段6が計測した移動方向に沿った物体Sの長さに応じて物体Sに接近可能な検出手段21と、搬送手段3による物体Sの搬送方向に対して検出手段21より上流側で検出手段21と共に物体Sに接近可能であり、前記移動方向における物体Sの規制位置にてこの物体Sに接触して物体Sを検知可能な検知手段7と、検知手段7が物体Sを検知した際に物体Sと検出手段21との接触を回避する回避手段5とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関し、特に、物体から発生する放射線を検出する検出器に適用して好適な検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の性状を検出するための検出装置として、例えば、原子力発電所等の放射性物質を取り扱う施設から搬出される廃棄物等の放射能の汚染度合いを検査するための放射線検出装置が知られている。このような放射線検出装置は、例えば、前記廃棄物等の検査対象物を搬送する搬送部としてのベルトコンベアと、検出器としての放射線センサとを備えており、ベルトコンベアによって検出位置にまで搬送される検査対象物から発生する放射線を、この放射線センサによって連続的に検出する。そして、このような従来の放射線検出装置では、まず、検査対象物の高さを計測し、当該計測された高さに応じて放射線センサを検査対象物にできる限り近接させて放射線を検出することで、検査対象物表面から発生する放射線のより正確な強度を測定するものがある。
【0003】
そして、このような検査対象物の高さなどの形態情報を計測する従来の形態計測装置として、例えば、特許文献1に記載されている形態計測装置は、搬送過程にある検査対象物に対して異なる方向から複数のライン光を照射する光照射部と、光照射部から照射されたライン光のうち、検査対象物に遮られずに透過したライン光を受光する受光部と、受光部において受光したライン光の情報に基づいて、検査対象物の概略形態を認識する形態認識部とを備えている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−24795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された形態計測装置では、例えば、検査対象物に細い突起部があった場合に、光照射部から照射された光がこの突起部を回り込んでしまい、この結果、突起部があるにもかかわらず受光部に光が受光されてしまうことがあった。言い換えれば、検査対象物の正確な高さなどを計測することができないことがあった。また、計測精度が光軸ピッチに依存してしまうことで極めて細い突起部が計測されないおそれもある。そして、検査対象物の突起部が認識されないまま、上記のように放射線センサを検査対象物にできる限り接近させてしまうと、この検査対象物の突起部と放射線センサとが接触してしまい、放射線センサが損傷してしまうおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、検出手段の損傷を確実に防止することができる検出装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための請求項1の発明の検出装置は、搬送手段により搬送される物体に接近又は離間する方向に移動して該物体の性状を検出可能であると共に、計測手段が計測した前記移動方向に沿った前記物体の長さに応じて前記物体に接近可能な検出手段を備える検出装置において、前記搬送手段による前記物体の搬送方向に対して前記検出手段より上流側で前記検出手段と共に前記物体に接近可能であり、前記移動方向における該物体の規制位置にて該物体に接触して該物体を検知可能な検知手段と、前記検知手段が前記物体を検知した際に前記物体と前記検出手段との接触を回避する回避手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明の検出装置では、前記検知手段は、先端部が前記物体の規制位置に設定されると共に、基端部を回転中心として回転可能な回転部と、前記回転部の回転に応じて前記物体を検知する回転検知部とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明の検出装置では、前記搬送手段は、前記物体を載置可能な搬送面を有し、前記回転部は、板状に形成され、前記回転中心が前記搬送方向に対して水平に直交する幅方向に沿って水平な回転軸線をなすと共に、前記幅方向の長さが少なくとも前記搬送面の前記幅方向の長さ以上の長さに設定されることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明の検出装置では、前記回避手段は、前記検知手段が前記物体を検知した際に前記搬送手段を制御して前記物体の搬送を停止することを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明の検出装置では、前記計測手段は、前記物体に対して複数の光を照射する光照射部と、前記光照射部から照射された光のうち、前記物体に遮られずに透過した光を受光する受光部と、前記受光部が受光した光の情報に基づいて前記移動方向に沿った前記物体の長さを計測する計測部とを有することを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明の検出装置では、前記計測手段は、前記搬送手段により搬送される前記物体に先端部が接触可能であると共に、基端部を回転中心として回転可能な回転手段と、前記回転手段の回転角度を計測可能な回転角度計測手段と、前記回転角度に基づいて前記物体の高さを算出する算出手段とを有することを特徴とする。
【0013】
上記の目的を達成するための請求項7の発明の検出装置は、搬送手段により搬送される物体に接近又は離間する方向に移動して該物体の性状を検出可能であると共に、計測手段が計測した前記移動方向に沿った前記物体の長さに応じて前記物体に接近可能な検出手段を備える検出装置において、前記計測手段は、前記物体に先端部が接触可能であると共に、基端部を回転中心として回転可能な回転手段と、前記回転手段の回転角度を計測可能な回転角度計測手段と、前記回転角度に基づいて前記物体の高さを算出する算出手段とを有することを特徴とする。
【0014】
請求項8の発明の検出装置では、前記搬送手段は、前記物体を載置可能な搬送面を有し、前記回転手段は、板状に形成され、前記回転中心が前記搬送方向に対して水平に直交する幅方向に沿って水平な回転軸線をなすことを特徴とする。
【0015】
請求項9の発明の検出装置では、前記回転手段は、前記幅方向の長さが少なくとも前記搬送面の前記幅方向の長さ以上の長さに設定されることを特徴とする。
【0016】
請求項10の発明の検出装置では、前記回転手段は、前記幅方向に沿って複数設けられ、前記回転角度計測手段は、複数の前記回転手段に対応して複数設けられ、前記算出手段は、前記回転角度計測手段が計測したそれぞれの前記回転角度に基づいて前記物体の高さを算出することを特徴とする。
【0017】
請求項11の発明の検出装置では、前記検出手段は、前記物体から発生する放射線を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明の検出装置によれば、検知手段により、表面位置が規制位置より高い物体に物理的に接触して当該物体を検知することから、仮に計測手段が物体の正確な高さを計測できなかったとしても、検知手段が物体を検知した際に回避手段により物体と検出手段との接触を回避するので、物体が検出手段に衝突することを防止することができ、この検出手段が損傷することを防止することができる。
【0019】
請求項2の発明の検出装置によれば、表面位置が規制位置より高い物体が回転部に接触した際に、回転部が回転しこの回転部の回転を回転検知部が検知することで、検知手段にて、物体に物理的に接触して当該物体を検知することができる。この結果、計測手段では、計測漏れしてしまう物体であっても、この物体に物理的に接触して検知する検知手段であれば、見逃すことなく検知することができる。
【0020】
請求項3の発明の検出装置によれば、回転部は少なくとも搬送面の幅方向端部間で連続していることから、幅方向に対して物体が通過しうる範囲を1枚の回転部と1つの回転検知部で全てカバーできるので、表面位置が規制位置より高い物体を検知漏れすることがなく、その上で部品点数も比較的少なくて済むことから、製造コストも抑制することができる。
【0021】
請求項4の発明の検出装置によれば、回避手段により、検知手段が物体を検知した際に、搬送手段を制御し当該物体の搬送を停止することから、確実に物体と検出器との接触を回避することができる。
【0022】
請求項5の発明の検出装置によれば、光照射部により物体に向けて光が照射され、この光を受光する受光部から物体が存在しない位置の高さ出力と、物体が存在する位置の高さ出力とが計測部に送信される。そして、計測部では、物体が存在しない位置の高さ出力と物体が存在する位置の高さ出力との差から、物体の高さを演算し、これにより、このときの最大寸法が物体の高さ寸法として計測される。
【0023】
請求項6の発明の検出装置によれば、物体が接触することで回転される回転手段の回転角度を回転角度計測手段によって計測し、算出手段によりこの回転角度に基づいて物体の高さを計測することから、回転手段がこの物体に物理的に接触して高さを計測するので、計測漏れが発生することを防止することができ、よって、物体の高さを確実に計測することができる。
【0024】
請求項7の発明の検出装置によれば、物体が接触することで回転される回転手段の回転角度を回転角度計測手段によって計測し、算出手段によりこの回転角度に基づいて物体の高さを計測することから、回転手段がこの物体に物理的に接触して高さを計測するので、計測漏れが発生することを防止することができ、よって、物体の高さを確実に計測することができる。このため、正確に計測された物体の高さに応じて、検出手段を前記物体に接近させることができるので、物体が検出手段に衝突することを防止することができ、この検出手段が損傷することを防止することができる。
【0025】
請求項8の発明の検出装置によれば、回転手段は水平な回転軸線周りに回転することができるので、回転角度に基づいて簡易な演算により物体の高さを計測することができる。
【0026】
請求項9の発明の検出装置によれば、回転手段は少なくとも搬送面の幅方向端部間で連続していることから、幅方向に対して物体が通過しうる範囲を1枚の回転手段と1つの回転角度計測手段で全てカバーできるので、物体の高さを計測漏れすることがなく、また、部品点数が比較的少なくて済むことから、製造コストも抑制することができる。
【0027】
請求項10の発明の検出装置によれば、幅方向に沿って複数の回転手段を設け、複数の回転手段に対応して複数の回転角度計測手段を設け、算出手段により、複数の回転角度計測手段が計測したそれぞれの回転角度に基づいて物体の高さを算出することから、幅方向に沿った複数箇所で物体の高さを計測することができる。
【0028】
請求項11の発明の検出装置によれば、物体と検出手段との接触を確実に回避した上で、検出手段を物体と衝突しない範囲で可能な限り物体に近づけた後に物体から発生する放射線を検出することができるので、より正確な放射線を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明に係る検出装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明の実施例1に係る放射線検出装置の概略構成図、図2は、本発明の実施例1に係る放射線検出装置の概略斜視構成図、図3は、本発明の実施例1に係る放射線検出装置の要部の概略回路構成図である。
【0031】
図1、図2に示すように、本実施例にかかる検出装置は、物体として検査対象物Sから発生する放射線を検出する放射線検出装置1に適用した場合で説明するが、これに限らず、検査対象物Sを搬送して性状を検出する種々の検出装置として適用可能である。ここでは、検査対象物Sは放射能汚染を受けた恐れのある物体であり、放射線検出装置1は、この検査対象物Sから発生する放射線を検出して、その放射線強度を測定するものである。
【0032】
この放射線検出装置1は、検出手段としての検出器2と、搬送手段としての搬送部3と、移動手段として昇降装置4と、制御手段としての制御部5と、計測手段としての光学式計測装置6と、検出器保護装置100とを備える。
【0033】
搬送部3は、搬送方向(水平方向)に沿って複数設けられるローラ33により構成されるトレイ搬送ローラ群31と、このローラ33を例えばチェーン駆動により回転駆動する駆動部32と、検査対象物Sを載置可能な搬送面としてトレイ34を有する。トレイ搬送ローラ群31は、搬送方向に対して水平に直交する幅方向に左右一対で設けられる。すなわち、トレイ搬送ローラ群31は、搬送方向下流側に向かって右側に設けられる右搬送ローラ群31aと、左側に設けられる左搬送ローラ群31bとを有する。そして、トレイ34は、フレームと、フレームにはめ込まれたメッシュ状の部材とにより矩形平板上に形成されると共に、幅方向両端のフレームがそれぞれ右搬送ローラ群31aと、左搬送ローラ群31bとに載置される。トレイ34のメッシュ状の部分は、光が透過できる構成となっている。したがって、駆動部32によりトレイ搬送ローラ群31の右搬送ローラ群31a、左搬送ローラ群31bを構成する各ローラ33を駆動することで、トレイ34は搬送方向に移動し、これにより、このトレイ34に載置されている検査対象物Sが所定の速度で水平に搬送される。搬送部3の駆動部32は、制御部5に電気的に接続されており、この制御部5により駆動が制御されている。
【0034】
検出器2は、搬送部3による検査対象物Sの搬送経路上に設けられており、検査対象物Sの性状として、搬送部3により搬送される検査対象物Sから発生する放射線を検出するものである。この検出器2は、検査対象物Sの鉛直方向上側表面から発生する放射線を検出する上部検出器21と、下側表面から発生する放射線を検出する下部検出器22とを有する。上部検出器21は、トレイ搬送ローラ群31の上方にて、トレイ34が通過する高さより上側に設けられる一方、下部検出器22は、トレイ搬送ローラ群31の下方にて、トレイ34が通過する高さより下側に設けられる。そして、この上部検出器21と下部検出器22は、互いに対向して向き合うように設けられる。
【0035】
この検出器2の上部検出器21と下部検出器22とは、検査対象物Sに面する側にシンチレータが配置されている。シンチレータとしては、プラスチックシンチレータやNaIシンチレータが用いられ、検査対象物Sから放射される放射線(β線やγ線)を検出する。シンチレータは、例えば、幅方向に3つ並べた状態で設けられている。上部検出器21、下部検出器22は、ともに制御部5に電気的に接続されており、それぞれ得られた検出結果をこの制御部5に送信するように構成されている。
【0036】
ところで、これらの放射線(β線およびγ線)のうち、γ線は、放射された後に、進行方向にある蔽妨害物の密度の指数関数に比例して減衰する性質がある一方、空気中を伝搬することによる減衰は微小である。これに対してβ線は、空気中での伝搬においても減衰する。このため、検査対象物S表面の放射線汚染をβ線を用いて計測するためには、仮に得られた検出結果を減衰量に応じて補正するとしても、上部検出器21、下部検出器22と検査対象物S表面との間隔は狭ければ狭いほど好ましく、より正確な放射線の検出が可能となる。上部検出器21、下部検出器22と検査対象物S表面との間隔は、例えば数mm程度に設定されることが好ましい。
【0037】
ここで、検査対象物Sは、トレイ34に載置されて搬送されることから、検査対象物Sの鉛直方向下側表面の位置は常にほぼ一定である。このため、下部検出器22は、トレイ34が通過する高さより下側にて、右搬送ローラ群31a、左搬送ローラ群31bのフレームなどに固定して配設される。一方、検査対象物Sの鉛直方向上側表面の位置は必ずしも一定ではない。このため、より正確な放射線の検出を行うためには、検査対象物Sの鉛直方向上側表面の位置、言い換えれば、検査対象物Sの鉛直方向高さを計測し、この検査対象物Sの高さに応じて上部検出器21を検査対象物Sにできる限り近接させることが好ましい。このため、この放射線検出装置1は、検査対象物Sの高さを計測する光学式計測装置6と、計測された検査対象物Sの高さに応じて、上部検出器21を検査対象物Sに接近させるための昇降装置4を備えている。ここで、昇降装置4による上部検出器21の移動方向は、検査対象物Sの高さ方向であり、言い換えれば、鉛直方向である。また、この上部検出器21の移動方向は、上述した搬送方向と幅方向とにそれぞれ直交する方向である。
【0038】
昇降装置4は、上部検出器21に連結された電動シリンダ41を備え、この電動シリンダ41が駆動することで、上部検出器21が検査対象物Sに対して接近又は離間することができる。すなわち、上部検出器21は、昇降装置4の電動シリンダ41が駆動することで、図1、図2に示すように、移動方向(高さ方向)に移動することができる。昇降装置4は、制御部5に電気的に接続されており、この制御部5により駆動が制御されている。
【0039】
光学式計測装置6は、搬送部3による検査対象物Sの搬送方向に対して検出器2より上流側に設けられる。光学式計測装置6は、光学式の高さセンサであり、光照射部61と、受光部62とを備え、計測部として制御部5が兼用される。光照射部61は、検査対象物Sの高さ方向に沿った支柱63aに設けられる複数の光源(例えば、光軸ピッチ=2.7mm)から検査対象物Sに対して複数の光を照射する。受光部62は、光照射部61から照射された光のうち、検査対象物Sに遮られずに透過した光を受光する。受光部62は、検査対象物Sの高さ方向に沿った支柱63bに、受光素子であるCCDを検査対象物Sの高さ方向に沿って配置して構成されるラインセンサ(CCDカメラ)を有し、このラインセンサは、受光した光の強度に基づいて電気信号に変換し、制御部5に出力する。制御部5は、受光部62が受光した光の情報に基づいて、上部検出器21の移動方向に沿った検査対象物Sの長さ、すなわち、検査対象物Sの高さを計測する。
【0040】
制御部5は、マイクロコンピュータを中心として構成され、放射線検出装置1の各部の動作を制御すると共に検出結果や計測結果等の各種の演算等を行う。制御部5には、記憶部と演算部が設けられており、記憶部は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、CD−ROM等の読出しのみ可能な記憶媒体、RAM等の揮発性のメモリ、あるいはこれらの組合せにより実現することができる。演算部は、メモリ及びCPU(中央演算装置)などによって構成され、種々のプログラムをメモリにロードして実行するようになっている。制御部5は、上述したように搬送部3の駆動部32、昇降装置4が電気的に接続されており、これらの駆動を制御する。また、上部検出器21、下部検出器22及び光学式計測装置6も電気的に接続されており、得られた放射線の検出結果、高さの計測結果は、この制御部5に送信され、各検査対象物S毎に対応づけて記憶される。そして、この制御部5は、光学式計測装置6が計測した検査対象物Sの高さに応じて昇降装置4の駆動を制御し、上部検出器21を検査対象物Sに接近させる。したがって、この上部検出器21は、光学式計測装置6が計測した検査対象物Sの高さに応じて検査対象物Sに接近可能な構成となる。
【0041】
上記のように構成される放射線検出装置1は、制御部5の制御により、搬送部3の駆動部32を駆動して各ローラ33を回転駆動させると、トレイ34に載置された検査対象物Sは、トレイ34と共に搬送方向下流側に向かって搬送される。そして、トレイ34が光学式計測装置6まで搬送されると、この光学式計測装置6にて、検査対象物Sの高さ寸法が計測される。光学式計測装置6では、光照射部61により検査対象物Sに向けて光が照射され、この光を受光する受光部62から検査対象物Sが存在しない位置の高さ出力と、検査対象物Sが存在する位置の高さ出力とが制御部5に送信される。制御部5では、検査対象物Sが存在しない位置の高さ出力と検査対象物Sが存在する位置の高さ出力との差から、検査対象物Sの高さを演算し、これにより、このときの最大寸法が検査対象物Sの高さ寸法として計測される。
【0042】
そして、制御部5は、この検査対象物Sの高さ寸法に基づいて昇降装置4の駆動を制御し、上部検出器21を検査対象物Sに接近させる。そして、トレイ34が上部検出器21、下部検出器22の位置まで搬送されると、上部検出器21、下部検出器22により検査対象物Sから発生する放射線が検出され、検出結果が制御部5に送信され、記憶される。上部検出器21、下部検出器22による放射線の検出が終了すると、トレイ34がさらに下流側に搬送され、検査対象物Sが上部検出器21、下部検出器22の位置から離間し、放射線検出装置1による放射線の検出が終了する。したがって、光学式計測装置6によって検査対象物Sの鉛直方向高さを計測し、この検査対象物Sの高さに応じて上部検出器21を検査対象物Sにできる限り近接させてから、上部検出器21、下部検出器22により検査対象物Sから発生する放射線の検出が実行されることから、検査対象物S表面から発生する放射線の正確な強度を検出することができる。
【0043】
ところで、例えば、図1に示すように、検査対象物Sに細い突起部があった場合、光学式計測装置6の光照射部61から照射された光がこの突起部を回り込んでしまい、この結果、突起部があるにもかかわらず受光部62に光が受光されてしまうおそれがある。言い換えれば、光学式計測装置6にて、検査対象物Sの正確な高さを計測することができないおそれがある。そして、検査対象物Sの突起部が認識されないまま、上記のように上部検出器21を検査対象物Sにできる限り接近させてしまうと、この検査対象物Sの突起部と上部検出器21とが接触してしまい、この上部検出器21が損傷してしまうおそれがある。
【0044】
そこで、この放射線検出装置1が備える検出器保護装置100は、上部検出器21の移動方向、すなわち、検査対象物Sの高さ方向における検査対象物Sの規制位置にて、この検査対象物Sに接触して検査対象物Sを検知可能な検知手段としての検知部7を備え、この検知部7が検査対象物Sを検知した際に、検査対象物Sと上部検出器21との接触を回避することで、上部検出器21の損傷を防止している。すなわち、仮に光学式計測装置6にて、検査対象物Sの正確な高さが計測できなかったとしても、検査対象物Sと上部検出器21とが接触する前に、この接触式の検知部7が検査対象物Sを検知することで、上部検出器21の保護するための系が光学式計測装置6と接触式の検知部7とにより多重的に構成されることになる。
【0045】
具体的には、検知部7は、回転部としてのフラップ71と、回転検知部としてのリミットスイッチ72を備える。フラップ71は、搬送部3による検査対象物Sの搬送方向に対して光学式計測装置6と検出器2との間に設けられる。フラップ71は、矩形板状に形成され、一端部が回転軸74を介して一対のブラケット73a、73bに軸支されている。ブラケット73a、73bは、上部検出器21に設けられる。さらに言えば、このブラケット73a、73bは、搬送方向に対して上部検出器21の上流側の面に設けられる。そして、ブラケット73a、73bは、トレイ搬送ローラ群31と同様に、幅方向に左右一対で設けられる。ブラケット73a、73bは、幅方向に沿って右搬送ローラ群31a側にブラケット73aが、左搬送ローラ群31b側にブラケット73bが設けられる。そして、回転軸74は、ブラケット73a、73bにより幅方向に沿って水平に支持されている。したがって、フラップ71は、上部検出器21の上流側にて、この上部検出器21の移動に伴って、上部検出器21と共に検査対象物Sに接近可能となる。また、フラップ71の回転中心は、幅方向に沿って水平な回転軸線をなしている。
【0046】
矩形板状に形成されたフラップ71は、一辺を基端部として、この基端部にて、回転軸74により回転可能に軸支されている。フラップ71は、回転軸74周りに回転自在に取り付けられている。このフラップ71は、検査対象物Sが接触していない状態において、自重により先端部が鉛直方向下側を向くように設置されている。そして、フラップ71は、この状態において、先端位置が上部検出器21の移動方向(高さ方向)における検査対象物Sの規制位置に位置するように、回転軸74の回転中心から先端までの長さ(回転半径)が設定されている。一方、フラップ71の幅方向の長さは、少なくともトレイ34の幅方向長さ以上に設定され、すなわち、フラップ71は、少なくともトレイ34の幅方向端部間で連続している。
【0047】
ここで、上部検出器21の移動方向における検査対象物Sの規制位置とは、検査対象物Sを上部検出器21に接触させないための限界の表面位置であり、上部検出器21からの相対的な距離で定まる位置である。つまり、フラップ71は、上述したように上部検出器21と共に移動することから、フラップ71の先端位置、言い換えれば、上部検出器21の移動方向における検査対象物Sの規制位置も、上部検出器21の移動に伴って変化する。フラップ71の先端部は、鉛直方向下側を向いた状態で、上部検出器21の下面よりも鉛直方向下側に突出している。上述したように、上部検出器21が放射線を検出する際の上部検出器21と検査対象物S表面との好ましい間隔は数mm程度に設定されることから、このフラップ71の先端部の突出量は、この間隔よりも若干短い量に設定される。したがって、搬送部3により搬送される検査対象物Sは、このフラップ71の先端の下側を通過していれば、上部検出器21に接触することはない。
【0048】
そして、リミットスイッチ72は、搬送方向に対してフラップ71の下流側にこのフラップ71と接するように設けられている。リミットスイッチ72は、制御部5に電気的に接続されており、フラップ71が回転軸74周りに搬送方向下流側に回転すると、フラップ71がこのリミットスイッチ72に接触し、リミットスイッチ72は、ON信号を生成し制御部5に出力する。したがって、検知部7は、上部検出器21の移動方向における検査対象物Sの規制位置にて、検査対象物Sに接触して検査対象物Sを検知可能な構成となる。そして、回避手段として兼用される制御部5は、検知部7により検査対象物Sが検知された際に、搬送部3を制御し当該検査対象物Sの搬送を停止して、検査対象物Sと上部検出器21との接触を回避する。
【0049】
上記のように構成される放射線検出装置1では、最大高さ位置が規制位置よりも高い位置にある検査対象物Sが搬送されてきた場合、この検査対象物Sによりフラップ71が押し上げられて回転する。そして、フラップ71が押し上げられて回転しリミットスイッチ72に接触すると、図3の概略回路構成図に示すように、リミットスイッチ72からのON信号が制御部5のシーケンサ53に入力され、このシーケンサ53は、搬送部3の駆動部32の駆動回路に停止信号を出力する。したがって、回避手段として兼用される制御部5は、検知部7によって、表面位置が規制位置より高い検査対象物Sを検知した際に、搬送部3を制御して当該検査対象物Sの搬送を停止することで、検査対象物Sと上部検出器21との接触を回避することができる。
【0050】
これにより、仮に光学式計測装置6にて、検査対象物Sの正確な高さを計測することができなかったとしても、接触式の検知部7が検査対象物Sを検知した際に、制御部5が搬送部3を制御して当該検査対象物Sの搬送を停止することから、検査対象物Sと上部検出器21との接触を確実に回避することができる。つまり、光学式計測装置6が計測する検査対象物Sの高さに応じて上部検出器21を検査対象物Sにできる限り近づけて放射線を検出することができると共に、光学系により構成されたこの光学式計測装置6とは異なる形式の接触式の検知部7により、多重的に検査対象物Sと上部検出器21との接触を回避することができる。この結果、上部検出器21が損傷することを確実に防止することができる。つまり、光学式計測装置6では、計測漏れしてしまう小さくて細い突起部を有する検査対象物Sであっても、フラップ71がこの検査対象物Sに物理的に接触して検知可能な検知部7であれば、見逃すことなく検知することができる。
【0051】
また、フラップ71の幅方向の長さは、少なくともトレイ34の幅方向長さ以上に設定され、すなわち、フラップ71は、少なくともトレイ34の幅方向端部間で連続していることから、幅方向に対して検査対象物Sが通過しうる範囲を1枚のフラップ71と1つのリミットスイッチ72で全てカバーできるので、表面位置が規制位置より高い検査対象物Sを検知漏れすることがなく、その上で部品点数も比較的少なくて済む。
【0052】
以上で説明した本発明の実施例に係る放射線検出装置1によれば、搬送部3により搬送される検査対象物Sに接近又は離間する方向に移動して検査対象物Sの性状を検出可能であると共に、光学式計測装置6が計測した前記移動方向に沿った検査対象物Sの長さに応じて検査対象物Sに接近可能な検出器2の上部検出器21を備える放射線検出装置1において、搬送部3による検査対象物Sの搬送方向に対して上部検出器21より上流側でこの上部検出器21と共に検査対象物Sに接近可能であり、前記移動方向における検査対象物Sの規制位置にて検査対象物Sに接触して検査対象物Sを検知可能な検知部7と、検知部7が検査対象物Sを検知した際に検査対象物Sと上部検出器21との接触を回避する制御部5とを備える。
【0053】
したがって、検知部7により、表面位置が規制位置より高い検査対象物Sに物理的に接触して当該検査対象物Sを検知することから、仮に光学式計測装置6が検査対象物Sの正確な高さが計測できなかったとしても、接触式の検知部7が規制位置にて検査対象物Sを検知した際に制御部5により検査対象物Sと上部検出器21との接触を回避するので、検査対象物Sが上部検出器21に衝突することを防止することができ、この上部検出器21が損傷することを防止することができる。
【0054】
また、以上で説明した本発明の実施例に係る放射線検出装置1によれば、検知部7は、先端部が検査対象物Sの規制位置に設定されると共に、基端部を回転中心として回転可能なフラップ71と、フラップ71の回転に応じて検査対象物Sを検知するリミットスイッチ72とを有する。したがって、表面位置が規制位置より高い検査対象物Sがフラップ71に接触した際に、フラップ71が回転しこのフラップ71の回転をリミットスイッチ72が検知することで、検知部7にて、検査対象物Sに物理的に接触して当該検査対象物Sを検知することができる。この結果、光学式計測装置6では、計測漏れしてしまう小さくて細い突起部を有する検査対象物Sであっても、この検査対象物Sに物理的に接触して検知する検知部7であれば、見逃すことなく検知することができる。
【0055】
また、以上で説明した本発明の実施例に係る放射線検出装置1によれば、搬送部3は、検査対象物Sを載置可能なトレイ34を有し、フラップ71は、板状に形成され、回転中心が幅方向に沿って水平な回転軸線をなすと共に、幅方向の長さが少なくともトレイ34の幅方向の長さ以上の長さに設定される。したがって、フラップ71は少なくともトレイ34の幅方向端部間で連続していることから、幅方向に対して検査対象物Sが通過しうる範囲を1枚のフラップ71と1つのリミットスイッチ72で全てカバーできるので、表面位置が規制位置より高い検査対象物Sを検知漏れすることがなく、その上で部品点数も比較的少なくて済むことから、製造コストも抑制することができる。
【0056】
また、以上で説明した本発明の実施例に係る放射線検出装置1によれば、回避手段は、検知手段が物体を検知した際に搬送手段を制御して物体の搬送を停止する。したがって、回避手段として兼用される制御部5により、検知部7が検査対象物Sを検知した際に、搬送部3を制御し当該検査対象物Sの搬送を停止することから、確実に検査対象物Sと上部検出器21との接触を回避することができる。
【0057】
また、以上で説明した本発明の実施例に係る放射線検出装置1によれば、上部検出器21は、検査対象物Sから発生する放射線を検出する。したがって、上述したように検知部7と制御部5とにより、検査対象物Sと上部検出器21との接触を確実に回避することができることから、上部検出器21を検査対象物Sと衝突しない範囲で可能な限り検査対象物Sに近づけた後に検査対象物Sから発生する放射線を検出することができるので、より正確な放射線を検出することができる。
【0058】
また、以上で説明した本発明の実施例に係る放射線検出装置1によれば、光学式計測装置6は、検査対象物Sに対して複数の光を照射する光照射部61と、光照射部61から照射された光のうち、検査対象物Sに遮られずに透過した光を受光する受光部62と、受光部62が受光した光の情報に基づいて前記移動方向に沿った検査対象物Sの長さを計測する制御部5を有する。したがって、光照射部61により検査対象物Sに向けて光が照射され、この光を受光する受光部62から検査対象物Sが存在しない位置の高さ出力と、検査対象物Sが存在する位置の高さ出力とが制御部5に送信される。そして、制御部5では、検査対象物Sが存在しない位置の高さ出力と検査対象物Sが存在する位置の高さ出力との差から、検査対象物Sの高さを演算し、これにより、このときの最大寸法が検査対象物Sの高さ寸法として計測される。
【実施例2】
【0059】
図4は、本発明の実施例2に係る放射線検出装置の概略構成図、図5は、本発明の実施例2に係る放射線検出装置の接触式計測装置の動作を示す概略構成図、図6は、本発明の実施例2に係る放射線検出装置の概略斜視構成図、図7は、本発明の実施例2に係る放射線検出装置の要部の概略回路構成図、図8は、本発明の実施例2に係る放射線検出装置が実行する放射線検出方法の処理手順を示すフローチャート、図9は、本発明の実施例2に係る放射線検出装置の変形例の概略斜視構成図である。実施例2に係る放射線検出装置は、実施例1に係る放射線検出装置と略同様の構成であるが、検知手段を備えない一方で、計測手段として接触式の高さ計測装置を備える点で実施例1に係る放射線検出装置とは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
【0060】
具体的には、図4、図5、図6に示すように、この放射線検出装置201に適用される高さ計測手段としての接触式計測装置207は、回転手段としてのフラップ271と、回転角度計測手段としてのロータリ式のエンコーダ272を備え、算出手段として制御部5を兼用している。フラップ271は、搬送部3による検査対象物Sの搬送方向に対して検出器2より上流側に設けられる。フラップ271は、矩形板状に形成され、一端部が回転軸274を介して一対の支柱273a、273bに軸支されている。支柱273a、273bは、検出器2より上流側に検査対象物Sの高さ方向に沿って設けられる。さらに言えば、この支柱273a、273bは、トレイ搬送ローラ群31と同様に、幅方向に左右一対で設けられる。支柱273a、273bは、幅方向に沿って右搬送ローラ群31a側に支柱273aが、左搬送ローラ群31b側に支柱273bが設けられる。そして、回転軸274は、支柱273a、273bにより幅方向に沿って水平に支持されている。したがって、フラップ271の回転中心は、幅方向に沿って水平な回転軸線をなす。
【0061】
矩形板状に形成されたフラップ271は、一辺を基端部として、この基端部にて、回転軸274により回転可能に軸支されている。フラップ271は、回転軸274周りに回転自在に取り付けられている。このフラップ271は、検査対象物Sが接触していない状態において、自重により先端部が鉛直方向下側を向くように設置されている。そして、フラップ271は、この状態において、先端位置がトレイ34の近傍に位置するように、回転軸274の回転軸線から先端までの長さ(回転半径)が設定されている。言い換えれば、フラップ271の回転軸線から先端までの長さは、搬送部3によって搬送される最小の検査対象物Sがこのフラップ271に接触することができる長さに設定されている。一方、フラップ271の幅方向の長さは、少なくともトレイ34の幅方向長さ以上に設定され、すなわち、フラップ271は、少なくともトレイ34の幅方向端部間で連続している。なお、以下の説明では、自重により先端部が鉛直方向下側を向いている状態におけるフラップ271の位置をフラップ271の基準位置(図4中に実線で示す)として説明する。つまり、フラップ271の基準位置は、先端が鉛直方向下側となって鉛直方向に沿う位置である。
【0062】
エンコーダ272は、回転軸274の一端部に設けられており、フラップ271の回転角度θを計測可能な種々のロータリ式のエンコーダを用いることができる。そして、このエンコーダ272は、制御部5に電気的に接続されており、計測したフラップ271の回転角度θに関する信号を制御部5に出力することができる。搬送部3によって検査対象物Sがフラップ271まで搬送されてくると、この検査対象物Sはフラップ271に接触する。この状態でさらに検査対象物Sが下流側に搬送されると、フラップ271が押し上げられ、このフラップ271は、回転軸274周りに搬送方向下流側に向かって回転する。エンコーダ272は、このときのフラップ271の基準位置に対する回転角度θを計測する。
【0063】
そして、制御部5は、図5に示すように、このエンコーダ272が計測したフラップ271の回転角度θに基づいて、幾何学的に検査対象物Sの高さを算出することができる。すなわち、トレイ34の載置面から検査対象物Sの上側表面までの最大高さをHmax、トレイ34の載置面からフラップ271の回転軸線までの高さをH、フラップ271の回転軸線から先端までの長さ(回転半径)をR、検査対象物Sの通過時の回転角度θの最大値をθmaxとすると、最大高さHmaxは、例えば、次式(1)で示す数式により算出することができる。

Hmax=H−R・cosθmax ・・・(1)

Hmax;トレイ34の載置面から検査対象物Sの上側表面までの最大高さ
H;トレイ34の載置面からフラップ271の回転軸線までの高さ
R;フラップ271の回転軸線から先端までの長さ(回転半径)
θmax;検査対象物Sの通過時の回転角度θの最大値
【0064】
ここで、エンコーダ272は、図7の概略回路構成図に示すように、計測したフラップ271の回転角度θに関する信号として、角度変位量に応じたパルス信号を制御部5のカウンタ254に入力する。そして、カウンタ254は、このパルス信号のパルス数を、例えば、1パルスにつき0.1°というようにカウントすることで、回転角度θが算出され、この回転角度θが制御部5のシーケンサ255に入力され、このシーケンサ255により例えば、式(1)に基づいて検査対象物Sの最大高さHmaxが演算される。このシーケンサ255は、昇降装置4の駆動回路に高さ信号を出力する。したがって、制御部5は、この検査対象物Sの最大高さHmaxに基づいて昇降装置4を駆動して、上部検出器21を移動し、検査対象物Sに接触しない範囲でこの検査対象物Sに接近させることができる。
【0065】
次に、図8を参照して、上記のように構成される放射線検出装置201による高さ計測方法を含む放射線検出方法の処理手順を説明する。まず、搬送開始工程として、制御部5の制御により、搬送部3の駆動部32を駆動して各ローラ33を回転駆動させると、トレイ34に載置された検査対象物Sは、トレイ34と共に搬送方向下流側に向かって搬送される(S100)。そして、トレイ34が接触式計測装置207まで搬送されると、フラップ回転工程として、トレイ34上の検査対象物Sがフラップ271に接触しながらこのフラップ271を回転させる(S102)。そして、このとき、回転角度計測工程として、エンコーダ272によりフラップ271の回転角度θが計測される(S104)。
【0066】
次に、高さ算出工程として、制御部5により回転角度θに基づいて検査対象物Sの最大高さHmaxを算出する(S106)。そして、上部検出器移動工程として、制御部5により検査対象物Sの最大高さHmaxに基づいて昇降装置4を駆動して上部検出器21を移動し検査対象物Sに接触しない範囲でこの検査対象物Sに接近させ(S108)、トレイ34が上部検出器21、下部検出器22の位置まで搬送されると、放射線検出工程として、上部検出器21、下部検出器22により検査対象物Sから発生する放射線が検出され、この検出結果を制御部5に記憶して終了する(S110)。
【0067】
この間、検査対象物Sがフラップ271に接触するとフラップ271は回転し、エンコーダ272によってこのフラップ271の回転角度θを計測することで、接触式計測装置207にて、フラップ271が検査対象物Sに物理的に接触して当該検査対象物Sの高さを計測することができる。この結果、例えば、光学式計測装置6では、計測漏れしてしまう小さくて細い突起部を有する検査対象物Sであっても、接触式計測装置207のフラップ271がこの検査対象物Sに物理的に接触して高さを計測するので、計測漏れが発生することを防止することができ、よって、検査対象物Sの高さを確実に計測することができる。
【0068】
また、上記のようにフラップ271の回転角度θに基づいて検査対象物Sの高さを計測する場合、例えば、光学式計測装置6などと比べて、比較的高い分解能を得ることができる。例えば、フラップ271の回転軸線から先端までの長さ(回転半径)Rが300mmで、エンコーダ272により0.1°単位で回転角度θを計測可能である場合、接触式計測装置207において計測可能な高さ分解能は0.5μm以下となる。
【0069】
そして、接触式計測装置207により検査対象物Sの正確な高さを計測することができることから、検査対象物Sと上部検出器21との接触を回避し、上部検出器21が損傷することを防止した上で、上部検出器21をできる限り検査対象物Sに接近させてから放射線の検出を行うことができるので、より正確に放射線を検出することができる。
【0070】
また、フラップ271の幅方向の長さは、少なくともトレイ34の幅方向長さ以上に設定され、すなわち、フラップ271は、少なくともトレイ34の幅方向端部間で連続していることから、幅方向に対して検査対象物Sが通過しうる範囲を1枚のフラップ271と1つのエンコーダ272で全てカバーできるので、部品点数も比較的少なくて済む。
【0071】
以上で説明した本発明の実施例に係る放射線検出装置201によれば、搬送部3により搬送される検査対象物Sに接近又は離間する方向に移動して検査対象物Sの性状を検出可能であると共に、接触式計測装置207が計測した前記移動方向に沿った検査対象物Sの長さに応じて検査対象物Sに接近可能な検出器2の上部検出器21を備えた放射線検出装置201において、接触式計測装置207は、相対的に移動する検査対象物Sに先端部が接触可能であると共に、基端部を回転中心として回転可能なフラップ271と、フラップ271の回転角度θを計測可能なエンコーダ272と、計測された回転角度θに基づいて検査対象物Sの高さを算出する制御部5とを備える。
【0072】
したがって、回転角度計測工程(S104)にて、検査対象物Sが接触することで回転されるフラップ271の回転角度θをエンコーダ272によって計測し、高さ算出工程(S106)にて、制御部5によりこの回転角度θに基づいて検査対象物Sの高さを計測することから、フラップ271がこの検査対象物Sに物理的に接触して高さを計測するので、計測漏れが発生することを防止することができ、よって、検査対象物Sの高さを確実に計測することができる。このため、正確に計測された物体の高さに応じて、検出手段を前記物体に接近させることができるので、検査対象物Sが上部検出器21に衝突することを防止することができ、この上部検出器21が損傷することを防止することができる。
【0073】
また、以上で説明した本発明の実施例に係る放射線検出装置201によれば、検査対象物Sを載置可能なトレイ34を有しこの検査対象物Sを搬送可能な搬送部3を備え、フラップ271は、板状に形成され、回転中心が幅方向に沿って水平な回転軸線をなす。したがって、フラップ271は水平な回転軸線周りに回転することができるので、回転角度θに基づいて簡易な演算により検査対象物Sの高さを計測することができる。
【0074】
また、以上で説明した本発明の実施例に係る放射線検出装置201によれば、フラップ271は、幅方向の長さが少なくともトレイ34の幅方向の長さ以上の長さに設定される。したがって、フラップ271は少なくともトレイ34の幅方向端部間で連続していることから、幅方向に対して検査対象物Sが通過しうる範囲を1枚のフラップ271と1つのエンコーダ272で全てカバーできるので、部品点数が比較的少なくて済むことから、製造コストも抑制することができる。
【0075】
なお、上述した本発明の実施例に係る検出装置は、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、検出装置は、物体から発生する放射線を検出する放射線検出装置に適用した場合で説明したが、これに限らず、物体の性状を検出する種々の装置に適用可能である。
【0076】
また、以上で説明した実施例1と実施例2とを適宜組み合わせてもよい。例えば、実施例1の放射線検出装置1において、計測手段としての光学式計測装置6に代えて、実施例2の放射線検出装置201に適用した高さ計測手段としての接触式計測装置207を用いてもよい。この場合、回転角検出手段として例えば、いわゆるレゾルバなどを用いることで放射線に弱い半導体を極力用いずに放射線検出装置を構成することができる。また、回転角度検出手段は、エンコーダやレゾルバに限らず、種々の検出手段を用いることができる。
【0077】
また、以上の実施例1の説明では、検知手段としての検知部7とほぼ同様な構成の第2検知手段をフラップの回転軸線方向が鉛直方向となるように設けることで、検査対象物Sのトレイ34幅方向に対するはみ出しを検知するようにしてもよい。この場合、第2検知手段が検査対象物Sのトレイ34幅方向に対するはみ出しを検知した際に、制御部5により搬送手段の駆動を停止することで、検査対象物Sがフレームに接触するなどの不具合も防止することができる。
【0078】
また、以上の実施例2の説明では、接触式計測装置207は、検査対象物Sの最大高さHmaxのみを計測するものとして説明したが、搬送手段による検査対象物Sの搬送速度と回転角度θとに基づいて、検査対象物Sの高さを搬送方向に沿った複数箇所で計測するようにしてもよい。また、回転角度θに対して閾値を設定し、計測された回転角度θが当該閾値を上回った場合に、最大高さ位置が実施例1で説明した規制位置よりも高い位置にある検査対象物Sが搬送されてきたものと判断し、搬送手段による搬送を停止するようにしてもよい。
【0079】
また、以上の説明では、フラップ71、271は、少なくともトレイ34の幅方向端部間で連続しているものとして説明したが、これに限らず、幅方向に沿って複数設けてもよい。例えば、図9に示す接触式計測装置207Aのように、回転手段として、幅方向に沿って2つのフラップ271a、271bを設け、回転角度計測手段として、2つのフラップ271a、271bに対応して2つのエンコーダ272a、272bを設け、算出手段としての制御部5は、エンコーダ272a、272bが計測したそれぞれの回転角度θに基づいて検査対象物Sの高さを算出するようにしてもよい。この場合、幅方向に沿った複数箇所で検査対象物Sの高さを計測することができる。そして、例えば、幅方向に沿った複数箇所の検査対象物Sの高さに基づいて、検査対象物Sの幅方向に沿った凹凸を検出し、この凹凸が規定よりも大きかった場合に、検査対象物Sを積みなおして、再度、検出手段により検査対象物Sの性状を検出することで、検出装置全体としての精度をさらに向上することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明に係る検出装置は、物体の性状を検出する種々の装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施例1に係る放射線検出装置の概略構成図である。
【図2】本発明の実施例1に係る放射線検出装置の概略斜視構成図である。
【図3】本発明の実施例1に係る放射線検出装置の要部の概略回路構成図である。
【図4】本発明の実施例2に係る放射線検出装置の概略構成図である。
【図5】本発明の実施例2に係る放射線検出装置の接触式計測装置の動作を示す概略構成図である。
【図6】本発明の実施例2に係る放射線検出装置の概略斜視構成図である。
【図7】本発明の実施例2に係る放射線検出装置の要部の概略回路構成図である。
【図8】本発明の実施例2に係る放射線検出装置が実行する放射線検出方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施例2に係る放射線検出装置の変形例の概略部分斜視図である。
【符号の説明】
【0082】
1、201 放射線検出装置(検出装置)
2 検出器
3 搬送部(搬送手段)
4 昇降装置
5 制御部(回避手段、計測部、算出手段)
6 光学式計測装置(計測手段)
7 検知部(検知手段)
21 上部検出器(検出手段)
22 下部検出器
31 トレイ搬送ローラ群
32 駆動部
33 ローラ
34 トレイ(搬送面)
41 電動シリンダ
61 光照射部
62 受光部
71 フラップ(回転部)
72 リミットスイッチ(回転検知部)
100 検出器保護装置
207、207A 接触式計測装置(計測手段)
271、271a、271b フラップ(回転手段)
272、272a、272b エンコーダ(回転角度計測手段)
S 検査対象物(物体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送手段により搬送される物体に接近又は離間する方向に移動して該物体の性状を検出可能であると共に、計測手段が計測した前記移動方向に沿った前記物体の長さに応じて前記物体に接近可能な検出手段を備える検出装置において、
前記搬送手段による前記物体の搬送方向に対して前記検出手段より上流側で前記検出手段と共に前記物体に接近可能であり、前記移動方向における該物体の規制位置にて該物体に接触して該物体を検知可能な検知手段と、
前記検知手段が前記物体を検知した際に前記物体と前記検出手段との接触を回避する回避手段とを備えることを特徴とする、
検出装置。
【請求項2】
前記検知手段は、先端部が前記物体の規制位置に設定されると共に、基端部を回転中心として回転可能な回転部と、前記回転部の回転に応じて前記物体を検知する回転検知部とを有することを特徴とする、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記搬送手段は、前記物体を載置可能な搬送面を有し、
前記回転部は、板状に形成され、前記回転中心が前記搬送方向に対して水平に直交する幅方向に沿って水平な回転軸線をなすと共に、前記幅方向の長さが少なくとも前記搬送面の前記幅方向の長さ以上の長さに設定されることを特徴とする、
請求項2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記回避手段は、前記検知手段が前記物体を検知した際に前記搬送手段を制御して前記物体の搬送を停止することを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項5】
前記計測手段は、前記物体に対して複数の光を照射する光照射部と、前記光照射部から照射された光のうち、前記物体に遮られずに透過した光を受光する受光部と、前記受光部が受光した光の情報に基づいて前記移動方向に沿った前記物体の長さを計測する計測部とを有することを特徴とする、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項6】
前記計測手段は、前記搬送手段により搬送される前記物体に先端部が接触可能であると共に、基端部を回転中心として回転可能な回転手段と、前記回転手段の回転角度を計測可能な回転角度計測手段と、前記回転角度に基づいて前記物体の高さを算出する算出手段とを有することを特徴とする、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の検出装置。
【請求項7】
搬送手段により搬送される物体に接近又は離間する方向に移動して該物体の性状を検出可能であると共に、計測手段が計測した前記移動方向に沿った前記物体の長さに応じて前記物体に接近可能な検出手段を備える検出装置において、
前記計測手段は、前記物体に先端部が接触可能であると共に、基端部を回転中心として回転可能な回転手段と、前記回転手段の回転角度を計測可能な回転角度計測手段と、前記回転角度に基づいて前記物体の高さを算出する算出手段とを有することを特徴とする、
検出装置。
【請求項8】
前記搬送手段は、前記物体を載置可能な搬送面を有し、
前記回転手段は、板状に形成され、前記回転中心が前記搬送方向に対して水平に直交する幅方向に沿って水平な回転軸線をなすことを特徴とする、
請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記回転手段は、前記幅方向の長さが少なくとも前記搬送面の前記幅方向の長さ以上の長さに設定されることを特徴とする、
請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
前記回転手段は、前記幅方向に沿って複数設けられ、
前記回転角度計測手段は、複数の前記回転手段に対応して複数設けられ、
前記算出手段は、前記回転角度計測手段が計測したそれぞれの前記回転角度に基づいて前記物体の高さを算出することを特徴とする、
請求項8に記載の検出装置。
【請求項11】
前記検出手段は、前記物体から発生する放射線を検出することを特徴とする、
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−292284(P2008−292284A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137884(P2007−137884)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】