説明

樹脂積層体、及び半導体装置とその製造方法

【課題】 本発明は、大口径、薄膜ウエハに対して良好な転写性能を有し、成形後(モールド後)において低反り性及び良好なウエハ保護性能を有し、ウエハーレベルパッケージに好適に用いられる樹脂積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】 樹脂積層体であって、前記第一剥離フィルムの剥離力が100〜250mN/50mmであり、前記第二剥離フィルムの剥離力が35〜100mN/50mmであり、前記第一剥離フィルムの剥離力と前記第二剥離フィルムの剥離力の差が50mN/50mm以上であって、前記第一樹脂層はシリコーン骨格含有高分子化合物、架橋剤およびフィラーを含有し、前記第二樹脂層はシリコーン骨格含有高分子化合物、架橋剤を含有し、さらに、前記第一樹脂層に含まれるフィラーの含有率を100とした場合に、含有率が0以上100未満となるようにフィラーを含有するものであることを特徴とする樹脂積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂積層体、及びこれを用いた半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置の製造に用いられるウエハのサイズは大口径化、薄膜化が進んでおり、これらをウエハレベルで封止する技術が求められている。そこで、従来の固形タイプのエポキシ樹脂のトランスファー成型方法の他、液状タイプのエポキシ樹脂を用いた圧縮成型方法が提案されている(特許文献1)。しかしながら、トランスファー成型では狭部に樹脂を流動させるためワイヤ変形を起こすことが懸念され、封止面積の増大に伴う充填不良も起こしやすくなるという問題がある。また、圧縮成型法ではウエハの端面部分での成型範囲の細かい制御が難しい上、成型機へ液状封止樹脂を流し込む際の流動性と物性とを最適化することが容易ではないという問題があった。その上、近年のウエハサイズの大口径化、ウエハの薄膜化により、これまで問題にならなかったモールド後のウエハの反りが問題となってきており、さらには良好なウエハ保護性能も求められる。そのため、ウエハ表面への充填不良などの問題を生じさせずにウエハを一括してモールドすることができ、モールド後において低反り性及び良好なウエハ保護性能を有するウエハモールド材の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2009−142065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、液状ではなくフィルム状の樹脂積層体であって、ウエハを一括してモールド(ウエハモールド)できるものであり、特に、大口径、薄膜ウエハに対して良好な転写性能を有し、また、モールド前ではウエハ表面への充填性が良好で、同時に、モールド後において低反り性及び良好なウエハ保護性能を有するものであり、さらに、モールド工程を良好に行うことができ、ウエハーレベルパッケージに好適に用いることができる樹脂積層体を提供することを目的とする。また、該樹脂積層体によりモールドされた半導体装置、及びその半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明では、第一剥離フィルム、第一樹脂層、第二樹脂層、第二剥離フィルムがこの順序で積層されてなる樹脂積層体であって、
前記第一剥離フィルムの剥離力が100mN/50mm以上250mN/50mm以下であり、前記第二剥離フィルムの剥離力が35mN/50mm以上100mN/50mm以下であり、前記第一剥離フィルムの剥離力と前記第二剥離フィルムの剥離力の差が50mN/50mm以上であって、
前記第一樹脂層はシリコーン骨格含有高分子化合物、架橋剤およびフィラーを含有し、
前記第二樹脂層はシリコーン骨格含有高分子化合物、架橋剤を含有し、さらに、前記第一樹脂層に含まれるフィラーの含有率を100とした場合に、含有率が0以上100未満となるようにフィラーを含有するものであることを特徴とする樹脂積層体を提供する。
【0006】
このような樹脂積層体であれば、フィルム状であるためウエハを一括してモールド(ウエハモールド)でき、かつ、大口径、薄膜ウエハに対して良好な転写性能を有する。また、低反り性及びウエハ保護性に優れる高フィラータイプである第一樹脂層と、ウエハ表面への充填性が良好でウエハを一括してモールドできる低フィラータイプである第二樹脂層の性能の異なる二種のフィルムの多層構造を有するため、モールド前では優れたウエハ表面の充填性を有し、同時に、モールド後には低反り性及び良好なウエハ保護性能を有することができる。さらに、このような剥離力であれば、第二樹脂層を保護する第二剥離フィルムを第一剥離フィルムよりも先に剥離し、表面に露出した第二樹脂層を半導体ウエハへ貼り付け(モールドし)、その後、第一樹脂層を保護する第一剥離フィルムを剥離するモールド工程を良好に行うことができ、ウエハーレベルパッケージに好適に用いることができる樹脂積層体となる。
【0007】
また、前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層の厚みの合計が100μm以上700μm以下であることが好ましい。
【0008】
このような厚みであれば、より低反り性に優れる樹脂積層体となる。
【0009】
さらに、前記架橋剤は、エポキシ化合物であることが好ましい。
【0010】
このような架橋剤であれば、第一樹脂層は一層低反り性及びウエハ保護性に優れ、第二樹脂層はウエハ表面への充填性が一層良好となる。
【0011】
さらに、前記シリコーン骨格含有高分子化合物は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、重量平均分子量が3000〜500000であることが好ましい。
【化1】

(式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。mは1〜100の整数である。a、b、c、及びdは0又は正数であり、かつa+b+c+d=1である。更に、X、Yはそれぞれ下記一般式(2)又は下記一般式(3)で示される2価の有機基である。)
【化2】

(式中、Zは
【化3】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。kは0、1、及び2のいずれかである。)
【化4】

(式中、Vは
【化5】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。hは0、1、及び2のいずれかである。)
【0012】
このようなシリコーン骨格含有高分子化合物であれば、第一樹脂層は一層低反り性及びウエハ保護性に優れ、第二樹脂層はウエハ表面への充填性が一層良好となる。
【0013】
さらに、本発明では、前記樹脂積層体の第二剥離フィルムを第二樹脂層から剥離し、表面に露出した第二樹脂層を半導体ウエハに貼り付け、第一剥離フィルムを第一樹脂層から剥離して半導体ウエハをモールドする工程と、前記モールドされた半導体ウエハを個片化する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法も提供する。
【0014】
このように、前記樹脂積層体でモールドされた半導体ウエハは反りが少なく十分に保護されたものとなるので、これを個片化することで歩留まりの良い高品質な半導体装置を製造することができる。
【0015】
また、本発明では、前記樹脂積層体を加熱硬化した加熱硬化皮膜でモールドされた半導体ウエハを個片化したものであり、前記加熱硬化皮膜を有することを特徴とする半導体装置も提供する。
【0016】
このように、樹脂積層体を加熱硬化した加熱硬化皮膜でモールドされた半導体ウエハは反りが少なく十分に保護されたウエハであり、これを個片化することで得られる半導体装置は歩留まりの良い高品質な半導体装置となる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の樹脂積層体であれば、フィルム状であるためウエハを一括してモールドでき、かつ、大口径、薄膜ウエハに対して良好な転写性能を有するものとなる。また、低反り性及びウエハ保護性に優れる高フィラータイプである第一樹脂層と、ウエハ表面への充填性が良好でウエハを一括してモールドできる低フィラータイプである第二樹脂層の性能の異なる二種のフィルムの多層構造を有するため、モールド前ではウエハ表面への充填性を有し、同時に、モールド後には低反り性及び良好なウエハ保護性能を有するものとなる。さらに、このような剥離力であれば、第二樹脂層を保護する第二剥離フィルムを第一剥離フィルムよりも先に剥離し、表面に露出した第二樹脂層を半導体ウエハへ貼り付け(モールドし)、その後、第一樹脂層を保護する第一剥離フィルムを剥離するモールド工程を良好に行うことができ、ウエハーレベルパッケージに好適に用いることができる樹脂積層体となる。
【0018】
また、本発明の半導体装置及びその製造方法であれば、歩留まり良く高品質な半導体装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の樹脂積層体、半導体装置及びその製造方法について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前述のように、ウエハ表面への充填不良などの問題を生じさせずにウエハを一括してモールドすることができ、モールド後において低反り性及び良好なウエハ保護性能を有するウエハモールド材の開発が望まれていた。
【0020】
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意検討を重ねた結果、フィラー充填率が高いほど低反り性及びウエハ保護性に優れるウエハモールド材となり、フィラー充填率が低いほどウエハを一括してモールドするためのウエハ表面へのチップ埋め込み性、充填性がよいウエハモールド材となることを見出し、高フィラータイプである第一樹脂層と、低フィラータイプである第二樹脂層の性能の異なる二種の樹脂層の多層構造を含む樹脂積層体であれば、これらの両方の機能を同時に併せ持つウエハモールド材となることを見出した。さらに、第一剥離フィルムの剥離力が100mN/50mm以上250mN/50mm以下であり、第二剥離フィルムの剥離力が35mN/50mm以上100mN/50mm以下であれば、第二樹脂層を保護する第二剥離フィルムを第一剥離フィルムよりも先に剥離し、表面に露出した第二樹脂層を半導体ウエハへ貼り付け(モールドし)、その後、第一樹脂層を保護する第一剥離フィルムを剥離するモールド工程を不良なく行えることを見出して、本発明を完成させた。以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
すなわち、本発明は、第一剥離フィルム、第一樹脂層、第二樹脂層、第二剥離フィルムがこの順序で積層されてなる樹脂積層体であって、
前記第一剥離フィルムの剥離力が100mN/50mm以上250mN/50mm以下であり、前記第二剥離フィルムの剥離力が35mN/50mm以上100mN/50mm以下であり、前記第一剥離フィルムの剥離力と前記第二剥離フィルムの剥離力の差が50mN/50mm以上であって、
前記第一樹脂層はシリコーン骨格含有高分子化合物、架橋剤およびフィラーを含有し、
前記第二樹脂層はシリコーン骨格含有高分子化合物、架橋剤を含有し、さらに、前記第一樹脂層に含まれるフィラーの含有率を100とした場合に、含有率が0以上100未満となるようにフィラーを含有するものであることを特徴とする樹脂積層体を提供する。
【0022】
[フィルム状]
本発明の樹脂積層体は第一剥離フィルム、第一樹脂層、第二樹脂層、第二剥離フィルムがこの順序で積層されてなるものであり、フィルム状であることが好ましい。このような樹脂積層体であれば、特に、大口径、薄膜ウエハに対して良好な転写性能を有するものとなり、ウエハを一括してモールドする際に、樹脂を流し込む必要がない。そのため、従来のトランスファー成型で生じうるワイヤ変形、ウエハ表面への充填不良や、圧縮成型法で生じうる成型範囲の制御の難しさ、液状封止樹脂の流動性と物性の問題は根本的に解消することができる。
【0023】
また、このように、低反り性及びウエハ保護性に優れる高フィラータイプである第一樹脂層と、ウエハ表面への充填性が良好でウエハを一括してモールドできる低フィラータイプである第二樹脂層の性能の異なる二種の樹脂層を多層構造とすることで、それぞれの樹脂層の性能を同時に有することができる樹脂積層体となる。
【0024】
さらに、第一樹脂層及び第二樹脂層の厚みは、100μm以上700μm以下であることが好ましい。このような厚みであれば、より低反り性に優れる樹脂積層体となるため好ましい。また、このとき第一樹脂層の厚みは20μm〜400μmが好ましく、第二樹脂層の厚みは80μm〜680μmが好ましい。
【0025】
[第一樹脂層]
本発明における第一樹脂層は後述するシリコーン骨格含有高分子化合物、架橋剤、及びフィラーを含有する。第一樹脂層は第二樹脂層に比べ高いフィラー充填率を有し、そのため低反り性及びウエハ保護性に優れるものである。ここで、第一樹脂層は、ウエハを一括してモールドしたときの最外層となるものであることが好ましい。第一樹脂層が最外層となれば、ウエハ保護性が良好に発現できる樹脂積層体となるため好ましい。
【0026】
[第二樹脂層]
本発明における第二樹脂層は後述するシリコーン骨格含有高分子化合物、及び架橋剤を含有し、さらに、前記第一樹脂層に含まれるフィラーの含有率を100とした場合に、含有率が0以上100未満となるようにフィラーを含有する。第二樹脂層は第一樹脂層に比べ低いフィラー充填率を有し、そのためウエハ表面への充填性が良好でウエハを一括してモールドできるものである。ここで、第二樹脂層は、ウエハを一括してモールドしたときにウエハ表面に接触する層となるものであることが好ましい。第二樹脂層が接触層となれば、ウエハ表面への充填性が良好に発現できる樹脂積層体となるため好ましい。
【0027】
[シリコーン骨格含有高分子化合物]
本発明におけるシリコーン骨格含有高分子化合物は、前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層に含有される。該シリコーン骨格含有高分子化合物は、シリコーン骨格を含有する高分子化合物であれば特に制限はされないが、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、重量平均分子量が3000〜500000であるものが好ましい。なお、本発明にかかるシリコーン骨格含有高分子化合物は1種を単独でまたは2種以上併用して含まれることができる。
【化6】

(式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。mは1〜100の整数である。a、b、c、及びdは0又は正数であり、かつa+b+c+d=1である。更に、X、Yはそれぞれ下記一般式(2)又は下記一般式(3)で示される2価の有機基である。)
【化7】

(式中、Zは
【化8】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。kは0、1、及び2のいずれかである。)
【化9】

(式中、Vは
【化10】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。hは0、1、及び2のいずれかである。)
【0028】
上記一般式(1)中、R〜Rは同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8の1価炭化水素基、好ましくは炭素数1〜6の1価炭化水素基を示す。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0029】
また、上記一般式(1)中、mは1〜100の整数である。特に、後述する架橋剤との相溶性の観点から、mは1〜80の整数であることが好ましい。
【0030】
さらに、上記一般式(1)中、a、b、c、及びdは0又は正数であり、かつa+b+c+d=1である。特に、基板に対する密着性、電気特性、信頼性の観点から、aは好ましくは0≦a≦0.8、より好ましくは0.2≦a≦0.8、特に好ましくは0.3≦a≦0.7であり、bは好ましくは0≦b≦1.0、より好ましくは0.2≦b≦0.8、特に好ましくは0.2≦b≦0.5であり、cは好ましくは0≦c≦0.3、特に好ましくは0≦c≦0.2であり、dは好ましくは0≦d≦0.3、特に好ましくは0≦d≦0.2である。
【0031】
特に、基板に対する密着性、電気特性、信頼性の観点から好適なa、b、c、及びdの組み合わせは、b=1で、a、c、dがそれぞれ0の組み合わせ、0.2≦a≦0.8、0.2≦b≦0.8で、c、dがそれぞれ0の組み合わせ、0.3≦a≦0.7、0.2≦b≦0.5、0<c≦0.2、0<d≦0.2の組み合わせである。
【0032】
また、上記一般式(1)中、X、Yはそれぞれ上記一般式(2)又は上記一般式(3)で示される2価の有機基である。上記一般式(2)又は上記一般式(3)で示される2価の有機基は、それぞれフェノール性水酸基又はグリシドキシ基を有する2価の芳香族基である。
【0033】
上記一般式(2)中、nは0又は1である。また、R及びRはそれぞれ相互に異なっていても同一でもよい炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。R及びRの具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロピルオキシ基等が挙げられる。さらに、kは0、1、及び2のいずれかである。
【0034】
上記一般式(3)中、pは0又は1である。また、R及びRはそれぞれ相互に異なっていても同一でもよい炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基である。R及びRの具体例としてはR及びRと同様のものが挙げられる。さらに、hは0、1、及び2のいずれかである。
【0035】
上記一般式(1)で示されるシリコーン骨格含有高分子化合物の重量平均分子量は3,000〜500,000である。特に、これを用いた硬化性樹脂組成物の相溶性及び硬化性、並びに、上記硬化性樹脂組成物から得られる硬化物の機械的特性の観点から、5,000〜300,000であることが好ましい。なお、本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算値である。
【0036】
上記一般式(1)で示されるシリコーン骨格含有高分子化合物は、下記式(4)のハイドロジェンシルフェニレン(1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン)
【化11】

と、あるいはこのハイドロジェンシルフェニレン及び下記一般式(5)のジヒドロオルガノシロキサン
【化12】

(式中、R、R及びmは、上記と同一である。)
と、下記一般式(6)で示されるジアリル基を有する特定のエポキシ基含有化合物、
【化13】

(式中、V、R、R、p、hは、上記と同一である。)
更に、下記一般式(7)で示されるジアリル基を有する特定のフェノール化合物
【化14】

(式中、Z、R、R、n、kは、上記と同一である。)
とを、触媒の存在下にいわゆる「ハイドロシリレーション」重合反応を行うことにより、製造することができる。
【0037】
なお、上記一般式(1)で示されるシリコーン骨格含有高分子化合物の重量平均分子量は、上記式(6)で表されるジアリル基を有する特定のエポキシ基含有化合物並びに上記式(7)で表されるジアリル基を有する特定のフェノール化合物のアリル基の総数と、上記式(4)で表されるハイドロジェンシルフェニレン並びに上記式(5)で表されるジヒドロオルガノシロキサンのヒドロシリル基の総数との比(アリル基総数/ヒドロシリル基総数)を調整することにより、容易に制御することが可能である。あるいは、上記ジアリル基を有する特定のエポキシ基含有化合物(式(6))並びにジアリル基を有する特定のフェノール化合物(式(7))、及び、ハイドロジェンシルフェニレン(式(4))並びにジヒドロオルガノシロキサン(式(5))の重合時に、例えば、o−アリルフェノールのようなモノアリル化合物、又は、トリエチルヒドロシランのようなモノヒドロシランやモノヒドロシロキサンを分子量調整剤として使用することにより、上記重量平均分子量は容易に制御することが可能である。
【0038】
上記重合反応において、触媒としては、例えば白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;HPtCl・xHO、HPtCl・xHO、NaHPtCl・xHO、KHPtCl・xHO、NaPtCl・xHO、KPtCl・xHO、PtCl・xHO、PtCl、NaHPtCl・xHO(式中、xは0〜6の整数が好ましく、特に0又は6が好ましい。)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書);塩化白金酸とオレフィンとの錯体(米国特許第3,159,601号明細書、米国特許第3,159,662号明細書、米国特許第3,775,452号明細書);白金黒やパラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィン錯体;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(いわゆるウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン(特にビニル基含有環状シロキサン)との錯体等が挙げられる。その使用量は触媒量であり、通常、白金族金属として反応重合物の総量に対して0.001〜0.1質量%であることが好ましい。
【0039】
上記重合反応においては、必要に応じて溶剤を使用してもよい。溶剤としては、例えばトルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤が好ましい。上記重合条件として、触媒が失活せず、かつ、短時間で重合の完結が可能という観点から、重合温度は、例えば40〜150℃、特に60〜120℃が好ましい。
【0040】
重合時間は、重合物の種類及び量にもよるが、およそ0.5〜100時間、特に0.5〜30時間で終了するのが好ましい。このようにして重合反応を終了後、溶剤を使用した場合はこれを留去することにより、上記一般式(1)で示されるシリコーン骨格含有高分子化合物を得ることができる。
【0041】
[架橋剤]
本発明にかかる架橋剤は、前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層に含有される。該架橋剤は、特に制限はされないがエポキシ化合物が好ましい。なお、本発明にかかる架橋剤は1種を単独でまたは2種以上併用して含まれることができる。
【0042】
前記架橋剤としてのエポキシ化合物の好適な例としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジグリシジルビスフェノールA等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ジグリシジルビスフェノールF等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、トリフェニロールプロパントリグリシジルエーテル等のトリフェニルメタン型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等の環状脂肪族エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルヘキサヒドロフタレート、ジメチルグリシジルフタレート等のグリシジルエステル系樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン等のグリシジルアミン系樹脂、シリコーン変性エポキシなどが挙げられこれらの1種を単独でまたは2種以上併用して用いることができる。さらに必要に応じて1分子中にエポキシ基を1つ含む単官能エポキシ化合物を本発明の架橋剤として添加しても良い。このような架橋剤であれば、第一樹脂層は一層低反り性及びウエハ保護性に優れ、第二樹脂層はウエハ表面への充填性が一層良好となるため好ましい。
【0043】
また、前記架橋剤の添加量は、シリコーン骨格含有高分子化合物と架橋剤の総和を100質量%とした場合において、好ましくは3〜80質量%であり、より好ましくは5〜50質量%である。
【0044】
[フィラー]
本発明にかかるフィラーは、前記第一樹脂層に含有され、また、前記第一樹脂層に含まれるフィラーの含有率を100とした場合に、含有率が0以上100未満となるように前記第二樹脂層に含有される。フィラーは特に限定されないが、好適に用いられる例として、シリカ微粉末、複合シリコーンゴム微粒子、シリコーン微粒子、アクリル微粒子等が挙げられ、公知のものを一種単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
前記シリカ微粉末としては、例えば、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ等の補強性シリカ;石英等の結晶性シリカが挙げられる。具体的には、日本アエロジル社製のAerosil R972、R974、R976;(株)アドマテックス社製のSE−2050、SC−2050、SE−1050、SO−E1、SO−C1、SO−E2、SO−C2、SO−E3、SO−C3、SO−E5、SO−C5;信越化学工業社製のMusil120A、Musil130Aなどが例示される。
【0046】
前記複合シリコーンゴム微粒子としては、例えば、信越化学工業社製のKMP−600、KMP−605、X−52−7030などを使用することができる。
【0047】
前記シリコーン微粒子、としては、例えば、信越化学工業社製のKMP−594、KMP−597、KMP−590、X−52−821などを使用することができる。
【0048】
前記アクリル微粒子、としては、例えば、根上工業製のアートパールG−400、G−800、GR−400などを使用することができる。
【0049】
本発明に係る第一樹脂層に含まれるフィラーの含有量としては、特に制限されないが、第一樹脂層の総質量を100質量%として好ましくは60〜98質量%含まれることができ、より好ましくは75〜93質量%である。第一樹脂層に含まれるフィラーの含有量が60質量%以上であれば一層低反り性及びウエハ保護性に優れ、98質量%以下であれば成形性に優れるため好ましい。また、本発明に係る第二樹脂層に含まれるフィラーの含有量としては、前記第一樹脂層に含まれるフィラーの含有率を100とした場合に、含有率が0以上100未満となる範囲で、好ましくは0〜90質量%含まれることができ、より好ましくは5〜50質量%含まれることができる。第二樹脂層に含まれるフィラーの含有量が、第一樹脂層に含まれるフィラーの含有率を100とした場合に、含有率が0以上100未満となる範囲で、90質量%以下であれば充填性に優れるため好ましい。
【0050】
[その他の成分]
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層に含有されるその他の成分として、架橋剤としての上記エポキシ化合物の反応を促進させる目的で各種硬化促進剤を使用しても良い。硬化促進剤の例としてはトリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の有機ホスフィン化合物、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエタノールアミン等のアミノ化合物、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール及び2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール化合物が挙げられる。
【0051】
また、前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層に含有されるその他の成分として、ウエハとの密着性の向上を目的としてカーボンファンクショナルシランを添加しても良い。
【0052】
[第一剥離フィルム及び第二剥離フィルム]
本発明において、第一剥離フィルムは剥離力が100mN/50mm以上250mN/50mm以下であり、第二剥離フィルムは剥離力が35mN/50mm以上100mN/50mm以下であり、かつ第一剥離フィルムと第二剥離フィルムの剥離力の差は50mN/50mm以上である。また、本発明の樹脂積層体の使用では、第一剥離フィルムはモールド後に剥離されることができ、第二剥離フィルムはモールド前に剥離されることができる。
【0053】
このような第一剥離フィルム及び第二剥離フィルムであれば、本発明の樹脂積層体の効果を発揮するために、第二樹脂層を保護する第二剥離フィルムを第一剥離フィルムよりも先に剥離し、表面に露出した第二樹脂層を半導体ウエハへ貼り付け(モールドし)、その後、第一樹脂層を保護する第一剥離フィルムを剥離するモールド工程を不良なく行うことができる。
【0054】
本発明の樹脂積層体において使用される第一剥離フィルム及び第二剥離フィルムは、特に限定されないが、第一樹脂層及び第二樹脂層の形態を損なうことなく剥離できるものが好ましく、通常、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリメチルペンテン(TPX)フィルム、離型処理を施したポリエステルフィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。これらの中でも適度の可とう性、機械的強度及び耐熱性を有することから、ポリエステルフィルムが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートフィルムに離型剤が塗布されたものを好適に使用することができる。
【0055】
また、第一剥離フィルム及び第二剥離フィルムとしては、基材となる上記フィルム上に離型剤からなる離型層が形成されたものも好適に使用できる。以下、このような離型層を有する剥離フィルムについて説明する。
【0056】
前記離型剤としては、第一剥離フィルムの剥離力が100mN/50mm以上250mN/50mm以下、第二剥離フィルムの剥離力が35mN/50mm以上100mN/50mm以下となる離型層を形成するものであれば特に限定されず、従来公知の離型剤を用いることができる。また、第一剥離フィルム及び第二剥離フィルムの剥離力は、離型剤からなる離型層の種類により、それぞれの種類に対応した公知の方法により制御することができる。また、離型層としては、その離型層に含有される成分が第一樹脂層及び第二樹脂層へ移行する等して、樹脂層の接着性等の特性を変化させないものが好ましい。本発明における第一剥離フィルム及び第二剥離フィルムに用いることができる離型層としては、剥離力を比較的容易に制御でき、また、成分の移行を比較的容易に制御できるという観点から、シリコーン系離型層が特に好ましい。
【0057】
かかるシリコーン系離型層としては、シリコーン系離型剤を主たる(60質量%以上、好ましくは80質量%以上)構成成分とするものが好ましい。シリコーン系離型剤としては、付加反応型シリコーン離型剤、縮合反応型シリコーン離型剤が好ましい。特に、本発明においては、樹脂層への移行成分が少ないという観点から、下記式(8)又は(9)で表されるようなジメチルシロキサン(以下、DMSと省略する場合がある。)成分とメチルビニルシロキサン(以下、MVSと省略する場合がある。)成分との共重合体であるベースポリマーと、下記式(10)又は(11)で表されるようなDMS成分とメチルハイドロジェンシロキサン(以下、MHSと省略する場合がある。)成分との共重合体である架橋ポリマーとからなる、付加反応型シリコーン離型剤が特に好ましい。
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

(上記平均組成式(8)〜(11)中、e、f、i、jは1以上の整数である。)
【0058】
特に、第一剥離フィルムの離型層を構成するシリコーン系離型剤においては、上記平均組成式(8)〜(11)中、eは7000≦e≦25000、fは300≦f≦800、iは5≦i≦50、及び/又は、jは20≦j≦200の範囲の整数であることが好ましい。このような範囲であれば、上記平均組成式(8)〜(11)で示される化合物の架橋反応が好適に進行し、離型層の強度が向上し、第一剥離フィルムの剥離力を本発明の規定する数値範囲に制御することが容易となるため好ましい。また、上記平均組成式(8)〜(11)中、e、fが8000≦e+f≦20000の範囲の整数であり、及び/又はi、jが30≦i+j≦200の範囲の整数であることが好ましい。このような範囲であれば、上記平均組成式(8)〜(11)で示される化合物の架橋反応がより好適に進行し、離型層の強度がより向上し、第一剥離フィルムの剥離力を本発明の規定する数値範囲に制御することがより容易となるため好ましい。
【0059】
さらに、第二剥離フィルムの離型層を構成するシリコーン系離型剤においては、上記平均組成式(8)〜(11)中、eは5000≦e≦30000、好ましくは15000≦e≦20000、fは30≦f≦500、好ましくは100≦f≦200、iは1≦i≦40、及び/又は、jが20≦j≦200の範囲の整数であることが好ましい。このような範囲であれば、上記平均組成式(8)〜(11)で示される化合物の架橋反応が好適に進行し、離型層の強度が向上し、第二剥離フィルムの剥離力を本発明の規定する数値範囲に制御することが容易となるため好ましい。また、上記平均組成式(8)〜(11)中、e、fが10000≦e+f≦25000、好ましくは15000≦e+f≦20000の範囲の整数であり、及び/又は、i、jが25≦i+j≦200の範囲の整数であることが好ましい。このような範囲であれば、上記平均組成式(8)〜(11)で示される化合物の架橋反応がより好適に進行し、離型層の強度がより向上し、第二剥離フィルムの剥離力を本発明の規定する数値範囲に制御することがより容易となるため好ましい。
【0060】
なお、上記平均組成式(8)〜(11)は、これら化合物がブロック共重合体である態様に限定されることを意味しているのではなく、単にそれぞれの繰返し単位の合計数がe、f、i、jからなる化合物を示していると解すべきである。したがって、上記平均組成式(8)〜(11)における共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、またブロック共重合体であってもよい。
【0061】
上記のようなシリコーン系離型層においては、ベースポリマーにおけるMVS成分の共重合比率(上記式(8)又は(9)において[f/(e+f)]で示される比率)を低くすることにより、シリコーン系離型層の架橋密度が低くなり、剥離力が低くなる傾向にある。これにより、シリコーン系離型層の剥離力を制御することができる。また、剥離コントロール剤を用いて剥離力を調整することもできる。すなわち、シリコーンオイル成分等の軽剥離添加剤や、あるいは重剥離添加剤を添加することにより、剥離力を調整することができる。これらにより、第一剥離フィルム及び第二剥離フィルムの剥離力を、本発明の規定する数値範囲となるように調整することができる。
【0062】
上記平均組成式(8)又は(9)で示されるベースポリマーと上記平均組成式(10)又は(11)で示される架橋ポリマーとの配合割合は、ベースポリマーにおけるMVS成分1モルに対して、架橋ポリマーにおけるMHS成分が1.2モル以上3.0モル以下となる範囲が好ましい。配合割合を上記数値範囲とすることによって、離型層のシリコーン成分の樹脂層への移行を抑制することができる。ベースポリマーにおけるMVS成分1モルに対して、架橋ポリマーにおけるMHS成分が1.2モル以上である場合は、硬化不良を抑制できる傾向にあり、塗膜の強度が強くなる傾向にあり、シリコーン成分の移行が減少する傾向にある。他方、ベースポリマーにおけるMVS成分1モルに対して、架橋ポリマーにおけるMHS成分が、3.0モル以下である場合は、架橋反応に用いられなかった残存ハイドロジェンシランは少ない傾向にあり、経時で重剥離化することを防止しやすくなる傾向にある。このような観点から、含有割合は、ベースポリマーにおけるMVS成分1モルに対して、架橋剤におけるMHS成分が、1.4モル以上2.5モル以下となる範囲がさらに好ましく、1.5モル以上2.0モル以下となる範囲が特に好ましい。
【0063】
本発明においては、上記のようなシリコーン系離型剤として、市販品を用いることができる。第一剥離フィルムの離型層を構成するための市販のシリコーン系離型剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング社製、商品名SD7333、SD7320、SD7234、SRX345等、信越化学工業社製、商品名:KS3601等を例示することができる。
【0064】
また、第二剥離フィルムのフィルムを構成するための市販のシリコーン系離型剤としては、付加反応型のものとしては、例えば、東レ・ダウコーニング社製、商品名:LTC750A、LTC310、LTC300B等、信越化学工業社製、商品名:KS3600、KS778等、モメンティブ社製、商品名:TPR6710、TPR6700等、縮合反応型のものとしては、YSR3022等を例示することができる。
【0065】
本発明において、第一剥離フィルムの離型層の厚みは、好ましくは0.03μm以上0.20μm以下である。厚みが上記数値範囲にあると、離型性により優れたものとなる。また、生産性の観点からも好ましい。厚みが0.20μm以下である場合は、生産性に優れる傾向にある。また、剥離力が高くなる傾向にあり、剥離力が低くなりすぎるのを抑制できる。さらに、剥離フィルムの離型層に含有される成分が樹脂層へ移行することを抑制できる傾向にある。他方、厚みが0.03μm以上である場合は、剥離力が低くなる傾向にあり、剥離力が高くなりすぎるのを抑制できる。このような観点から、第一剥離フィルムの剥離層の厚みは、さらに好ましくは0.05μm以上0.15μm以下、特に好ましくは0.80μm以上0.12μm以下である。なお、離型層の厚みは、離型層を塗布により形成する際に、離型層を形成するための離型剤塗液の濃度や塗布量を適宜調整する等、公知の任意の方法によって達成することができる。
【0066】
また、第二剥離フィルムの離型層の厚みは、好ましくは0.03μm以上0.20μm以下である。厚みが上記数値範囲にあると、離型性により優れたものとなる。また、生産性の観点からも好ましい。厚みが0.20μm以下である場合は、生産性に優れる傾向にある。また、剥離力が高くなる傾向にあり、剥離力が低くなりすぎるのを抑制できる。さらに、剥離フィルムの離型層に含有される成分が樹脂層へ移行することを抑制できる傾向にある。他方、厚みが0.03μm以上である場合は、剥離力が低くなる傾向にあり、剥離力が高くなりすぎるのを抑制できる。このような観点から、第二剥離フィルムの離型層の厚みは、さらに好ましくは0.04μm以上0.12μm以下、特に好ましくは0.05μm以上0.10μm以下である。なお、離型層の厚みは、離型層を塗布により形成する際に、離型層を形成するための離型剤塗液の濃度や塗布量を適宜調整する等、公知の任意の方法によって達成することができる。
【0067】
本発明における剥離フィルムは、例えば白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体;HPtCl・xHO、HPtCl・xHO、NaHPtCl・xHO、KHPtCl・xHO、NaPtCl・xHO、KPtCl・xHO、PtCl・xHO、PtCl、NaHPtCl・xHO(式中、xは0〜6の整数が好ましく、特に0又は6が好ましい。)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩;アルコール変性塩化白金酸(米国特許第3,220,972号明細書);塩化白金酸とオレフィンとの錯体(米国特許第3,159,601号明細書、米国特許第3,159,662号明細書、米国特許第3,775,452号明細書);白金黒やパラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの;ロジウム−オレフィン錯体;クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(いわゆるウィルキンソン触媒);塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサン(特にビニル基含有環状シロキサン)との錯体等の触媒を含有することが好ましく、特に白金系触媒が好ましい。かかる触媒の添加量は、通常用いられる量であればよいが、ベースポリマー100質量部に対して、金属の量が、好ましくは1〜1000ppm、さらに好ましくは10〜300ppmとなるような添加量であると、離型層の強度が高くなり、かつ経済的にも優れる。
【0068】
また、このようなシリコーン系離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレート剥離フィルムの市販品としては、例えば第一剥離フィルムとして、セラピールWZ(RX)(剥離力120mN/50mm)、セラピールBX8(R)(剥離力160mN/50mm)(以上、東レフィルム加工(株)製)、E7304(剥離力200mN/50mm)(東洋紡績(株)製)、ピューレックスG71T1(剥離力130mN/50mm)(帝人デュポンフィルム(株)製)等が挙げられる。
【0069】
また、第二剥離フィルムとして、E7302(剥離力90mN/50mm)(東洋紡績(株)製)、ピューレックスA31(剥離力80mN/50mm)(帝人デュポンフィルム(株)製)等が挙げられる。
【0070】
なお、剥離フィルムの剥離力は、ポリエステル粘着テープ(日東電工(株)製、品番:NO.31B)に対する剥離力を測定することによって求められた値である。
【0071】
上記剥離フィルムの厚みはドライフィルム製造の安定性及び巻き芯に対する巻き癖、所謂カール防止の観点から、いずれも好ましくは10〜100μm、特に好ましくは25〜75μmである。
【0072】
[モールドされるウエハ]
本発明の樹脂積層体により一括してモールドされるウエハとしては、特に制限されないが、表面に半導体素子(チップ)が積載されたウエハであっても、表面に半導体素子が作製された半導体ウエハであってもよい。本発明の樹脂積層体は、モールド前にはこのようなウエハ表面に対する充填性が良好であり、また、モールド後には低反り性を有し、このようなウエハの保護性に優れる。また、本発明の樹脂積層体は特に制限されないが、例えば8インチ(200mm)、12インチ(300mm)といった大口径のウエハや薄膜ウエハをモールドするのに好適に用いることができる。
【0073】
[樹脂積層体の製造方法]
本発明の樹脂積層体を製造する方法としては、特に制限されないが第一樹脂層及び第二樹脂層をそれぞれ作製し、それらを貼り合わせることで多層型にする方法、第一樹脂層又は第二樹脂層の一方を作製し、その樹脂層上に他方の樹脂層を作製する方法等が挙げられる。これら製造方法は第一及び第二樹脂層の特性、溶解性などを考慮して適宜決めることができる。
【0074】
このようにして得られた樹脂積層体は、ウエハを一括してモールド(ウエハモールド)できるものであり、特に、大口径、薄膜ウエハに対して良好な転写性能を有し、また、モールド後において低反り性及び良好なウエハ保護性能を有し、ウエハーレベルパッケージに好適に用いられる樹脂積層体となる。その上、樹脂積層体のモールド後の硬化皮膜は可撓性、密着性、耐熱性、電気特性にも優れ、ウエハモールド材として必要な、低ストレス性、ウエハ保護性能を有しており、極薄ウエハの保護モールド材としても好適に使用することができる。
【0075】
[ウエハのモールド方法]
本発明の樹脂積層体を用いたウエハのモールド方法については特に限定されないが、例えば、第二樹脂層上に貼られた第二剥離フィルムを剥がし、(株)タカトリ製の真空ラミネーター(製品名:TEAM−100RF)を用いて、真空チャンバー内を真空度100Paに設定し、100℃で第一剥離フィルムおよび第一樹脂層上の第二樹脂層側を上記ウエハに密着させ、常圧に戻した後、上記基板を25℃に冷却して上記真空ラミネーターから取り出し、第一剥離フィルムを剥離することで行うことができる。
【0076】
[半導体装置]
さらに、本発明では前記樹脂積層体を加熱硬化した加熱硬化皮膜でモールドされた半導体ウエハを個片化したものであり、加熱硬化皮膜を有することを特徴とする半導体装置を提供する。本発明により反りが少なく十分に保護されたウエハを個片化することで得られる半導体装置は歩留まりの良い高品質な半導体装置となる。
【0077】
[半導体装置の製造方法]
また、本発明では樹脂積層体の第二剥離フィルムを第二樹脂層から剥離し、表面に露出した第二樹脂層を半導体ウエハに貼り付け、第一剥離フィルムを第一樹脂層から剥離して半導体ウエハをモールドする工程と、モールドされた半導体ウエハを個片化する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法を提供する。
【0078】
本発明の樹脂積層体の第一剥離フィルムは100mN/50mm以上250mN/50mm以下の剥離力を有し、第二剥離フィルムは35mN/50mm以上100mN/50mm以下の剥離力を有し、第一剥離フィルムの剥離力と第二剥離フィルムの剥離力の差が50mN/50mm以上である。そのため、第二樹脂層を保護する第二剥離フィルムを第一剥離フィルムよりも先に剥離し、表面に露出した第二樹脂層を半導体ウエハへ貼り付け、その後、第一樹脂層を保護する第一剥離フィルムを剥離するモールド工程を良好に行うことができる。
【0079】
また、本発明の樹脂積層体は低反り性及びウエハ保護性に優れる高フィラータイプである第一樹脂層と、ウエハ表面への充填性が良好でウエハを一括してモールドできる低フィラータイプである第二樹脂層の多層構造を有する。そのため、モールド前では優れたウエハ表面の充填性を有し、同時に、モールド後には低反り性及び良好なウエハ保護性能を有する。従って、本発明の樹脂積層体によりモールドされた半導体ウエハは反りが少なく十分に保護されたウエハとなり、これを個片化することにより得られる半導体装置は歩留まりの良い高品質な半導体装置となる。
【実施例】
【0080】
以下、本発明にかかるシリコーン骨格含有高分子の合成例、本発明にかかる樹脂層形成前組成物の組成例、本発明の樹脂積層体について実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明に係るシリコーン骨格含有高分子の合成例1〜2において使用する化合物(M−1)〜(M−6)の化学構造式を以下に示す。
【0081】
【化19】

【0082】
[合成例1]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した5Lフラスコ内に化合物(M−1)396.5gをトルエン1,668gに溶解後、化合物(M−4)859.2gを加え、60℃に加温した。その後、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、内部反応温度が65〜67℃に昇温したのを確認後、更に、3時間、90℃まで加温し、再び60℃まで冷却して、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、化合物(M−5)78.3gを1時間掛けてフラスコ内に滴下した。このときフラスコ内温度は、79℃まで上昇した。滴下終了後、更に、90℃で3時間熟成し、室温まで冷却し、メチルイソブチルケトン1,550gを加え、本反応溶液をフィルターにて加圧濾過することで白金触媒を取り除いた。このシリコーン骨格含有高分子化合物溶液中の溶剤を減圧留去すると共に、シクロペンタノンを2,000g添加して、固形分濃度60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とするシリコーン骨格含有高分子化合物溶液(A−1)を得た。このシリコーン骨格含有高分子化合物溶液中のシリコーン骨格含有高分子化合物の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量42,000であり、式(1)におけるaは0であり、bは1であり、cは0であり、dは0であった。
【0083】
[合成例2]
撹拌機、温度計、窒素置換装置及び還流冷却器を具備した5Lフラスコ内に化合物(M
−1)352.8g、化合物(M−3)90.0gをトルエン1,875gに溶解後、化合物(M−4)949.6g、化合物(M−5)6.1gを加え、60℃に加温した。その後、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、内部反応温度が65〜67℃に昇温したのを確認後、更に、3時間、90℃まで加温し、再び60℃まで冷却して、カーボン担持白金触媒(5質量%)2.2gを投入し、化合物(M−6)107.3gを1時間かけてフラスコ内に滴下した。このときフラスコ内温度は、79℃まで上昇した。滴下終了後、更に、90℃で3時間熟成し、室温まで冷却し、メチルイソブチルケトン1,700gを加え、本反応溶液をフィルターにて加圧濾過することで白金触媒を取り除いた。このシリコーン骨格含有高分子化合物溶液中の溶剤を減圧留去すると共に、シクロペンタノンを980g添加して、固形分濃度60質量%のシクロペンタノンを主溶剤とするシリコーン骨格含有高分子化合物溶液(A−2)を得た。このシリコーン骨格含有高分子化合物溶液中のシリコーン骨格含有高分子化合物の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量64,000であり、式(1)におけるaは0.480、bは0.320、cは0.120、dは0.080であった。
【0084】
[組成例1〜4]
下記成分を表1に示す割合で自転・公転方式の混合機((株)シンキー社製)に仕込み、更に、これら成分の合計の濃度が60質量%となるようにシクロペンタノンを加え、混合して、組成例1〜4の樹脂層形成前組成物を調製した。
架橋剤 :RE−310S(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、日本化薬社製)
jER630LSD(グリシジルアミン型エポキシ樹脂、三菱化学社製)
フィラー :SE−2050(アドマテックス社製)
架橋促進剤 :2PHZ(2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成製)
剥離フィルム:E7302、E7304(東洋紡社製)
A32(帝人デュポンフィルム社製)
WZ(RX)(東レフィルム加工社製)
【表1】

【0085】
[実施例1]
(樹脂層の形成)
フィルムコーターとしてダイコーターを用い、E7304(剥離力200mN/50mm)(東洋紡績(株)製)を第一剥離フィルムとして用いて、組成例1の第一樹脂層の形成前組成物を第一剥離フィルム上に塗布した。次いで、100℃に設定された熱風循環オーブン(長さ4m)を5分間で通過させることにより、膜厚100μmの第一樹脂層を形成した。次に樹脂層の上から、ポリエチレンフィルム(厚さ100μm)を用いて、ポリエチレンフィルムをラミネートロールを用いて線圧力10N/cmにて貼り合わせて、フィルムA−1を作製した。同様にして、A32(剥離力40mN/50mm)(帝人デュポンフィルム(株)製)をその後の多層化工程のための剥離フィルムとして用いて、組成例2の第二樹脂層の形成前組成物を多層化工程用剥離フィルム上に塗布し膜厚100μmの第二樹脂層を形成した。次いで、フィルムA−1と同様にしてフィルムB−1−1を作製した。同様にして、E7302(剥離力90mN/50mm)(東洋紡績(株)製)を第二剥離フィルムとして用いて、組成例2の第二樹脂層の形成前組成物を第二剥離フィルム上に塗布し膜厚100μmの第二樹脂層を形成し、同様にしてフィルムB−1−2を作製した。さらに、得られたフィルムB−1−1およびフィルムB−1−2のポリエチレンフィルムを取り除き、第二樹脂層同士を重ね合せ、60℃に加温された熱ロールラミネーターに投入し、第二樹脂層の膜厚が200μmのフィルムB−1−3を形成した。その後、フィルムB−1−3の多層化工程用剥離フィルム(A32)を取り除き、さらにポリエチレンフィルムを取り除いたフィルムB−1−1の第二樹脂層と重ね、60℃に加温された熱ロールラミネーターに投入し、第二樹脂層の膜厚が300μmのフィルムB−1−4を形成した。最後に同様の方法で第二樹脂層の膜厚が400μmのフィルムB−1−5を作製した。
【0086】
(多層化)
得られたフィルムA−1のポリエチレンフィルム及びフィルムB−1−5の多層化工程用剥離フィルム(A32)を取り除き、表2に示す組み合わせで樹脂層同士を重ねて60℃に加温された熱ロールラミネーターに投入し、多層構造を形成して、本発明の樹脂積層体C−1を得た。
【0087】
[実施例2]
E7304(剥離力200mN/50mm)(東洋紡績(株)製)を第一剥離フィルムとして用い、組成例3の第一樹脂層の形成前組成物を用いた以外は同様にして100μmの第一樹脂層を形成したフィルムA−2を作製した。また、上記同様にして、A32(剥離力40mN/50mm)(帝人デュポンフィルム(株)製)を多層化工程用剥離フィルムとして用いて組成例4の第二樹脂層の形成前組成物を多層化工程用剥離フィルム上に塗布し、膜厚100μmの第二樹脂層を形成したフィルムB−2−1を作製した。次いで、上記同様にしてE7302(剥離力90mN/50mm)(東洋紡績(株)製)を第二剥離フィルムとして用いて、組成例4の第二樹脂層の形成前組成物を第二剥離フィルム上に塗布し膜厚100μmの第二樹脂層を形成したフィルムB−2−2を作製した。その後、実施例1と同様の方法にて、フィルムB−2−1とフィルムB−2−2の第二樹脂層同士を重ねて、第二樹脂層の膜厚が200μmのフィルムB−2−3を得た。さらに、上記同様の方法により、第二樹脂層の膜厚が300μmのフィルムB−2−4を得た。得られたフィルムA−2及びフィルムB−2−4を用いて上記同様に本発明の樹脂積層体C−2を得た。
【0088】
[実施例3]
第一樹脂層の膜厚を50μmとした以外は実施例1のフィルムA−1と同様にして、フィルムA−3を作製した。また、実施例1のフィルムB−1−2と同様にして、フィルムB−3を作製した。得られたフィルムA−3及びフィルムB−3を用いて上記同様に本発明の樹脂積層体C−3を得た。
【0089】
[比較例1]
第一剥離フィルムとしてセラピールWZ(RX)(剥離力120mN/50mm)(東レフィルム加工(株)製)を用いた以外は実施例1のフィルムA−1と同様にして、フィルムA−4を作製した。得られたフィルムA−4及び上記フィルムB−1−5を用いて上記同様に樹脂積層体C−4を得た。
【0090】
[比較例2及び比較例3]
比較例2として、上記フィルムA−1を多層化せずにそのまま樹脂フィルムC−5とした。また、比較例3として、上記フィルムB−2−4を多層化せずにそのまま樹脂フィルムC−6とした。
【0091】
[ウエハへの転写及びモールド]
ウエハ厚み100μmの直径8インチ(200mm)シリコンウエハを用意した。実施例1〜3及び比較例1のフィルムC−1〜C−4について、第二剥離フィルムを剥離し、真空ラミネーター((株)タカトリ製、製品名:TEAM−100RF)を用いて、真空チャンバー内を真空度100Paに設定し、100℃で、第一剥離フィルム側の第一樹脂層及び第二樹脂層から成る樹脂層を上記シリコンウエハに密着させた。常圧に戻した後、上記シリコンウエハを25℃に冷却して上記真空ラミネーターから取り出し、第一剥離フィルムを剥離した。また、同じシリコンウエハを用いて、比較例2〜3について、ポリエチレンフィルム(保護フィルム)を剥離し、(株)タカトリ製の真空ラミネーター(製品名:TEAM−100RF)を用いて、真空チャンバー内を真空度100Paに設定し、100℃で、樹脂層を上記シリコンウエハに密着させた。常圧に戻した後、上記シリコンウエハを25℃に冷却して上記真空ラミネーターから取り出し、剥離フィルムを剥離した。
【0092】
[評価]
樹脂層からの剥離フィルムの剥離性、ウエハへの樹脂積層体のウエハ転写性、モールド樹脂硬化後のウエハサポート性およびウエハ反り量を表2に示す。なお剥離フィルムの剥離性は、第二樹脂層から第二剥離フィルムを剥離する際に、もう一方の剥離フィルム(第一剥離フィルム)が剥離してしまい、第二剥離フィルム側に第二樹脂層が残存したり、第一剥離フィルムと第一樹脂層の間に浮き(所謂「泣き別れ」)が生じた場合を不良とし、第二剥離フィルムが上記のような問題を生じることなく剥離できた場合を良好とした。また、ウエハ転写性は、第二剥離フィルム剥離後の樹脂積層体をラミネーターにてウエハへ気泡を巻き込むことなく貼れた場合を良好、気泡を巻き込んだり、ウエハに貼り付かなかった場合を不良とした。ウエハサポート性はウエハの端を支持した際のウエハのたわみ量を測定し、20mm以内を良好とし、20mmを超えた場合を不良と判断した。
【0093】
【表2】

【0094】
以上の結果、本発明の樹脂積層体は、剥離性良好で、ウエハの反り量が少なく、良好なモールド性、ウエハサポート性を示すことがわかった。
【0095】
以上、説明したように本発明の樹脂積層体であれば、フィルム状であるためウエハを一括してモールド(ウエハモールド)できるものであり、大口径、薄膜ウエハに対して良好な転写性能を有するものであることが示された。また、低反り性及びウエハ保護性に優れる高フィラータイプである第一樹脂層と、ウエハ表面への充填性が良好でウエハを一括してモールドできる低フィラータイプである第二樹脂層の性能の異なる二種のフィルムの多層構造を有するため、モールド前にはウエハ表面への充填性に優れ、同時に、モールド後には低反り性及び良好なウエハ保護性能を有するものであることが示された。さらに、剥離フィルムの剥離性良好で、第二樹脂層を保護する第二剥離フィルムを第一剥離フィルムよりも先に剥離し、表面に露出した第二樹脂層を半導体ウエハへ貼り付け(モールドし)、その後、第一樹脂層を保護する第一剥離フィルムを剥離するモールド工程を良好に行うことができ、ウエハーレベルパッケージに好適に用いることができることが示された。
【0096】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一剥離フィルム、第一樹脂層、第二樹脂層、第二剥離フィルムがこの順序で積層されてなる樹脂積層体であって、
前記第一剥離フィルムの剥離力が100mN/50mm以上250mN/50mm以下であり、前記第二剥離フィルムの剥離力が35mN/50mm以上100mN/50mm以下であり、前記第一剥離フィルムの剥離力と前記第二剥離フィルムの剥離力の差が50mN/50mm以上であって、
前記第一樹脂層はシリコーン骨格含有高分子化合物、架橋剤およびフィラーを含有し、
前記第二樹脂層はシリコーン骨格含有高分子化合物、架橋剤を含有し、さらに、前記第一樹脂層に含まれるフィラーの含有率を100とした場合に、含有率が0以上100未満となるようにフィラーを含有するものであることを特徴とする樹脂積層体。
【請求項2】
前記第一樹脂層及び前記第二樹脂層の厚みの合計が100μm以上700μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂積層体。
【請求項3】
前記架橋剤は、エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂積層体。
【請求項4】
前記シリコーン骨格含有高分子化合物は、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有し、重量平均分子量が3000〜500000であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の樹脂積層体。
【化1】

(式中、R〜Rは同一でも異なっていてもよい炭素数1〜8の1価炭化水素基を示す。mは1〜100の整数である。a、b、c、及びdは0又は正数であり、かつa+b+c+d=1である。更に、X、Yはそれぞれ下記一般式(2)又は下記一般式(3)で示される2価の有機基である。)
【化2】

(式中、Zは
【化3】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、nは0又は1である。R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。kは0、1、及び2のいずれかである。)
【化4】

(式中、Vは
【化5】

のいずれかより選ばれる2価の有機基であり、pは0又は1である。R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基又はアルコキシ基であり、相互に異なっていても同一でもよい。hは0、1、及び2のいずれかである。)
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の樹脂積層体の前記第二剥離フィルムを前記第二樹脂層から剥離し、表面に露出した前記第二樹脂層を半導体ウエハに貼り付け、前記第一剥離フィルムを前記第一樹脂層から剥離して前記半導体ウエハをモールドする工程と、前記モールドされた半導体ウエハを個片化する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の樹脂積層体を加熱硬化した加熱硬化皮膜でモールドされた半導体ウエハを個片化したものであり、前記加熱硬化皮膜を有することを特徴とする半導体装置。


【公開番号】特開2012−224062(P2012−224062A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96072(P2011−96072)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】