説明

欠陥検査方法及び基板検査装置

【課題】スループット良く且つ高精度で試料の欠陥の検出が可能な基板検査装置を提供する。
【解決手段】基板検査装置1は、真空状態のワーキングチャンバ30と、La電子源を備えた電子光学装置70と、ワーキングチャンバへウェーハを搬出入するローダハウジング40と、ワーキングチャンバに接続され、内部が雰囲気制御されているミニエンバイロメント装置20と、を備える。ローダハウジング40は、ミニエンバイロメント装置20に接続する第1のローディングチャンバと、ワーキングチャンバに接続する第2のローディングチャンバと、第1及び第2のローディングチャンバの間の連通を選択的に阻止する第1のシャッタ装置27と、第2のローディングチャンバとワーキングチャンバとの間の連通を選択的に阻止する第2のシャッタ装置45と、を備え、第1及び第2のローディングチャンバには各々真空排気配管と不活性ガス用のベント配管とが接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
半導体プロセスにおいて、デザインルールは、100nmの時代を迎えようとしており、また生産形態はDRAMに代表される少品種大量生産からSOC(Silicon on chip)のように多品種少量生産へ移行しつつある。それに伴い、製造工程数が増加し、各工程毎の歩留まり向上は必須となり、プロセス起因の欠陥検査が重要になる。本発明は、半導体プロセスにおける各工程後のウェーハの検査を電子ビームを用いて実施するための欠陥検査方法及び基板検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの高集積化、パターンの微細化に伴い、高分解能、高スループットの検査装置が要求されている。100nmデザインルールのウェーハ基板の欠陥を調べるためには、100nm以下の分解能が必要であり、デバイスの高集積化による製造工程の増加により、検査量が増大するため、高スループットが要求されている。また、デバイスの多層化が進むにつれて、層間の配線をつなぐビアのコンタクト不良(電気的欠陥)を検出する機能も、検査装置に要求されている。現在は主に光方式の欠陥検査装置が使用されているが、分解能及びコンタクト不良検査の点では、光方式の欠陥検査装置に代わって電子ビームを用いた欠陥検査装置が今後、検査装置の主流になると予想されている。但し、電子ビーム方式の欠陥検査装置にも弱点があり、それはスループットの点で光方式に劣ることである。このため、高分解能、高スループット、且つ、電気的欠陥検出が可能な検査装置の開発が要求されている。光方式での分解能は、使用する光の波長の1/2が限界と言われており、実用化されている可視光の例では0.2μm程度である。
【0003】
一方、電子ビームを使用する方式では、通常、走査型電子顕微鏡方式(SEM方式)が実用化されており、分解能は0.1μm、検査時間は8時間/枚(20cmウェーハ)である。電子顕微鏡方式はまた、電気的欠陥(配線の断線、導通不良、ビアの導通不良等)も検査可能であることが大きな特徴である。しかし、検査時間は非常に遅く、検査速度の速い欠陥検査装置の開発が期待されている。
【0004】
一般に、検査装置は高価であり、またスループットも他のプロセス装置に比べて低いために、現状では重要な工程の後、例えばエッチング、成膜(銅メッキも含む)、又は、CMP(化学的機械研磨)平坦化処理後等に使用されている。
【0005】
電子ビームを用いた走査(SEM)方式の検査装置について説明する。SEM方式の検査装置は電子ビームを細く絞って(このビーム径が分解能に相当する)、これを走査してライン状に試料を照射する。一方、ステージを電子ビームの走査方向に直角の方向に移動させることにより、平面状に観察領域を電子ビームで照射する。電子ビームの走査幅は、一般に数100μmである。前記細く絞られた電子ビーム(一次電子線と呼ぶ)照射により発生した試料からの二次電子を検出器(シンチレータ+フォトマルチプレーヤー(光電子増倍管)又は半導体方式の検出器(PINダイオード型)等)で検出する。照射位置の座標と二次電子の量(信号強度)を合成して画像化し、記憶装置に記憶し、或いは、CRT(ブラウン管)上に画像を出力する。以上はSEM(走査型電子顕微鏡)の原理であり、この方式で得られた画像から工程途中の半導体(通常はSi)ウェーハの欠陥を検出する。検査速度(スループットに相当する)は、一次電子線の量(電流値)、ビーム径、検出器の応答速度で決まる。ビーム径0.1μm(分解能と同じと考えてよい)、電流値100nA、検出器の応答速度100MHzが現在の最高値であり、この場合、検査速度は20cm径のウェーハ1枚当たり約8時間と言われている。
【0006】
上記のSEM方式の検査装置を更に高速にする(スループットを上げる)ため、写像投影方式と呼ばれる新たな方式が提案された。この方式によれば、試料の観察領域を一次電子線で一括して照射し(走査は行わず、一定の面積を照射する)、照射された領域からの二次電子をレンズ系により、一括して検出器(マイクロチャンネルプレート(MCP)+蛍光板)上に電子線の画像として結像させる。該結像画像を二次元CCD(固体撮像素子)又はTDI−CCD(ラインイメージセンサー)により、画像情報を電気信号に変換し、この画像情報から試料ウェーハ(工程途中の半導体(Si)ウェーハ)の欠陥を検出する。
【0007】
そこで、高スループットという利点を有する上記写像投影方式の欠陥検査装置を用いて、基板等を高精度且つ効率的に検査するためのシステム全体の構築が希求されている。例えば、検査対象をその写像投影光学装置の照射位置までクリーンな状態で供給し、アライメントする他のサブシステムとの間の関連性を考慮した検査装置全体の構造については今までほとんど明らかにされていなかった。更に、検査対象となるウェーハの大径化が進められ、サブシステムもそれに対応可能にする要請もでてきている。
【0008】
検査システムでは、チャンバー内で真空を維持することも重要な項目の1つである。欠陥検査装置等の超精密加工を施す装置においては、試料を真空中で精度良く位置決めするステージが使用されているが、該ステージに対して非常に高精度な位置決めが要求される場合には、ステージを静圧軸受けによって非接触支持する構造が採用されている。この場合、静圧軸受けから供給される高圧ガスが直接真空チャンバに排気されないように、高圧ガスを排気する差動排気機構を静圧軸受けの範囲に形成することによって、真空チャンバの真空度を維持している。このようなステージとして、図29[A]、[B]に示すように、静圧軸受けと差動排気機構を組み合わせたステージが提案されている。ステージが移動する際に、静圧軸受け9−7に対向するガイド面6a−7や7a−7は、静圧軸受け部の高圧ガス雰囲気とチャンバ内の真空環境の間を往復運動する。この時ガイド面では、高圧ガス雰囲気に曝されている間にガスが吸着し、真空環境に露出されると吸着していたガスが放出されるという状態が繰り返される。このためステージが移動する度に、チャンバC内の真空度が悪化するという現象が起こり、上述した荷電ビームによる露光や検査や加工等の処理が安定に行えなかったり、試料が汚染されてしまうという問題があった。
【0009】
また、静圧軸受けと差動排気機構を組み合わせたステージ(図29[A]、[B]、図32)では、差動排気機構を設けたため、大気中で使用される静圧軸受け式ステージに比べて構造が複雑で大型になり、ステージとしての信頼性が低く、高コストになるという問題があった。
【0010】
写像投影方式の電子線装置それ自体に関しては、試料面上の複数のピクセルからの信号を同時に取り出せるため、高いスループットでパターン検査を行うことができる利点があるが、複数のピクセルに同時に電子線を照射するため、試料が帯電するという問題点がある。一方、プロセス途中でウェーハ上の位置合わせ用のマークを検出する場合は、パターン検査における写像投影を行う程の視野は必要ではなく、より狭い視野で十分であり、むしろピクセル寸法をより小さくしなければマーク検出精度が不足するという問題点がある。
【0011】
また、MCPは、長時間使用によって総出力電荷量(スクリーン電流×時間)が増加するために、MCP増倍率が低下し、欠陥検査装置において連続的かつ長時間欠陥画像の撮像を行う際に、同一MCP印加電圧においては、欠陥画像コントラストが変化又は劣化する等の問題点を有する。
【0012】
更に、画像ビーム電流量の増幅率は、第1のMCPと第2のMCPとの間に印加される電圧で規定され、例えば、1.4kV印加で1×104の増幅率となる。また、第2のMCPから出力される画像ビームの拡がりを抑制するため、第2のMCPと蛍光面の間に3kV程度の電圧が印加される。従来の電子線装置の検出器においては、撮像センサーと真空フランジが別個に形成され、信号線が長くなり、信号遅延や外乱を受け易く、検出器を高速駆動できず、検査のスループット(時間当たり処理量)を低くさせる要因となっていた。
【0013】
更に、電子ビームを用いて欠陥検査を行うためには、撮像された画像のコントラストを一定に維持するよう、電子銃に流す放出電流を制御する必要があり、通常は、放出電流の制御はLaB6(6ホウ化ランタン)等の、電子銃の下流に備えられたウェーネルト電極の印加電圧を調整することによって行われていた。図15は、ウェーネルト電極に印加される電圧(単位ボルト)と電子銃の放出電流(単位マイクロアンペア)との関係を示すグラフであり、ウェーネルト電極に印加される電圧が−300ボルトよりも高くなると放出電流が急激に増大することがわかる。
【0014】
しかしながら、ウェーネルト電極への印加電圧を一定に保持するという条件下で電子銃を長時間動作させると、電子銃から放出されるLaやB等を含む酸化膜がウェーネルト電極の内側に付着して絶縁膜を形成し、この絶縁膜はプラスに帯電する。これは、電子銃から放出された電子はウェーネルト電極への印加電圧程度の加速エネルギーを持っており、こうした電子が上記絶縁膜と衝突すると、絶縁膜はウェーネルト電極への流入電子以上の二次電子を放出するためである。実際、ウェーネルト電極への印加電圧がプラス方向にシフトすることにより、電子銃の放出電流は漸増し、放出電流を一定に保持することが困難であるという問題があった。
【0015】
一方、従来の走査型電子顕微鏡としての機能を有する検査装置では、写像投影方式に比べて、試料が帯電するという問題点はなく、またマーク検出精度も十分であるという利点を有する。個別的には、次の問題を解決する必要がある。
【0016】
例えば、試料ウェーハの評価作業を行うに際し、ウェーハにビアが形成されている場合には注意を要する。対物レンズとウェーハとの間に大きな減速電界を印加し、且つ、一次電子線をある一定値以上流すと、ビアと対物レンズの間で放電が生じ、ウェーハに形成されたデバイスパターンを破損してしまう恐れがあるからである。このような放電を起こしやすいウェーハと起こしにくいウェーハとがあり、それぞれのウェーハにおける放電が生じる条件(減速電界電圧値および一次電子線量)は異なる。
【0017】
また、パターンのエッジ部分は、二次電子放出率が高いためにぎらついてしまうことが知られている。二次電子放出率が高いと、検出器で出力される二次電子線の検出信号は、その信号強度が大きくなり、その結果、この検出信号が、欠陥によって発生した信号等をマスキングするため、検査率を劣化させてしまうという問題があった。
【0018】
従来例のウェーハの加工状態の評価装置においては、ウェーハ全面を検査しており、そのため、ウェーハ表面の任意の点が電子ビームの光軸上に一致するように、ワーキング・チャンバ内でウェーハを移動させている。したがって、従来例の評価装置においては、ウェーハを移動させる距離だけ前後左右に広がった底面積が必要となり、評価装置の床面積が必然的に大きくなってしまう。床面積が大きくなってしまうことは、クリーンルームを有効に活用することに逆行しており、評価装置の小型化が求められている。
【0019】
また、ウェーハ全面を検査するために、1ウェーハ当たり数時間(数時間/ウェーハ)の検査時間を必要としている。一方、ウェーハの加工装置におけるスループットが1時間当たり約100ウェーハ(約100ウェーハ/時間)であり、したがって、ウェーハの検査時間が加工時間の数十倍にもなっている。このように、評価装置のスループットが加工装置のスループットとマッチしていないため、検査時間を短縮することにより、これらスループットを整合させることが切望されている。
【0020】
半導体デバイスのゲート酸化膜は、年々薄くなる傾向にあり、2005年には1nm、2005年には0.5nm程度になると考えられている。また、被検査試料に形成されたパターンの最小線幅dも小さくなり、それに比例して評価の画素サイズ(pixel size)を小さくすることが必要である。他方、信号のS/N比を一定量得るためには、ピクセル当りの2次電子の検出量を一定量得ることが必要であり、そのため単位面積当りの1次電子の量が大きくなる傾向にある。従って、ゲート酸化膜は、薄くなることにより損傷(破壊を含む)され易くなり、またドーズは増加するのでゲート酸化膜の両側に発生する電圧が増加し、それによりゲート酸化膜は、更に損傷され易くなる傾向にある。従って、被検査試料の薄いゲート酸化膜等を損傷させない電子線装置を提供することが希求されている。
【0021】
また、スループットを可能な限り向上させる必要があり、検査工程前に行われるプロセスの処理時間程度の処理時間で一枚のウェーハのような試料(以下試料)を評価可能なことが望まれている。そこで、一枚の試料のチップのうち任意の少数のチップを評価することによって一枚当たりの評価時間を短くすることも考えられる。
【0022】
更に、一次ビームをマルチビーム化することに伴なう収差をいかに抑制するかについてはほとんど考慮されていなかった。特に、一次ビームの収差の内、最も大きい収差である像面湾曲収差が発生しないような光学系でマルチビームを作る方法が希求されている。
【0023】
上記のような写像投影方式及びマルチビーム走査方式の電子線装置を利用した欠陥検査システムでは、画像認識技術の向上により微細化したパターンの欠陥検出の高速化及び高精度化を図ることも提案されている。しかしながら、従来技術では、一次電子線を試料表面の被検査領域に照射して取得した二次電子線の画像と、予め用意された基準画像との間に位置ずれが発生し、欠陥検出の精度を低下させるという問題があった。この位置ずれは、一次電子線の照射領域がウェーハに対してずれ、検査パターンの一部が二次電子線の検出画像内から欠落するとき、特に大きな問題となり、単にマッチング領域を検出画像内で最適化する技術だけでは対処できない。これは、特に、高精細パターンの検査では致命的欠点となり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたもので、写像投影方式のパターン検査装置の高いスループットを有するが試料が帯電し易く、またマーク検出精度が不足するという問題、並びに、走査型電子顕微鏡としての機能を有するパターン検査装置の、ビアが形成されたウェーハ検査時のパターン破損問題及びパターンエッジ部分の高い二次電子放出率に起因した検査率の低下といった上記問題を解決することを目的とする。
【0025】
更に、本発明は、上記パターン検査装置を使用してプロセス途中のウェーハのパターン検査することによって、検査精度及びスループットの向上を図ったデバイス製造方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るパターン検査装置は、電子銃から放出された電子線を矩形に成形し、該成形された電子ビームを検査されるべき試料面上に照射する電子ビーム照射光学系と、前記試料から放出された二次放出線を検出器に結像させる写像投影光学系とを備え、前記二次放出線の像を写像投影する機能を有するパターン検査装置であって、前記電子ビーム照射光学系は、さらに静電レンズまたは電磁レンズを有し、該静電レンズまたは該電磁レンズにより、前記矩形に成形された電子ビームよりも細く絞られた電子ビームを試料面上に照射しかつ該試料面上で走査し、該試料から放出された二次放出線を検出する機能を更に有することを特徴とする。
【0027】
本発明の好ましい態様では、上記パターン検査装置において、前記二次放出線の像を写像投影する機能は、前記試料の材質がベアシリコンまたはアルミコートシリコンであるときに使用され、前記細く絞り込まれた電子ビームを試料面上に照射しかつ該試料面上で走査し、該試料から放出された二次放出線を検出する機能は、前記試料に酸化シリコンまたは窒化シリコンが成膜されているときに使用されることを特徴とする。
【0028】
本発明の一態様に係るパターン検査方法は、電子銃からの電子線を矩形に成形し、該成形された電子ビームを検査されるべき試料面上に照射し、該試料から放出された二次放出線を検出器に結像させて写像投影する機能と、電子ビーム照射光学系により前記矩形に成形された電子ビームよりも細い電子ビームを成形し、該細い電子ビームを試料面上に照射しかつ該試料面上で走査し、該試料から放出された二次放出線を検出する走査型電子顕微鏡としての機能と、を備えたパターン検査装置を用意し、同一の試料において帯電し難い試料部分は、前記写像投影する機能を使用してパターン検査を行い、帯電し易い試料部分は、前記走査型電子顕微鏡としての機能を使用してパターン検査を行う、各工程を有することを特徴とする。
【0029】
本発明の別の態様に係るパターン検査方法は、電子銃からの電子線を矩形に成形し、該成形された電子ビームを検査されるべき試料面上に照射し、前記試料から放出された二次放出線を検出器に結像させて写像投影する機能と、前記矩形電子ビームの径をさらに細く成形し、該径を成形された細い電子ビームを試料面上に照射しかつ該試料面上で走査し、該試料から放出された二次放出線を検出する走査型電子顕微鏡としての機能と、を備えたパターン検査装置を用意し、ウェーハプロセッシング工程におけるレジストレーションのためのマーク検出時は前記走査型電子顕微鏡としての機能を使用し、その後のパターン欠陥検査時は前記写像投影する機能を使用する、各工程を有することを特徴とする。
【0030】
本発明の一態様に係るデバイスの製造方法は、上記各態様に係る検査装置を使用してプロセス途中のウェーハのパターン検査を行うことを特徴とする。
本発明の作用効果及び他の利点は、次の図面を参照して、発明の詳細な説明を参酌するとき、より明らかとなろう。
【実施例】
【0031】
(第1実施例;写像投影型の欠陥検査システム)
図1には、本発明の第1実施例に係る、写像投影型の電子線装置1−1を用いた欠陥検査システムの概略の全体構成が示されている。同図に示すように、電子線装置1−1は、1次コラム21−1、2次コラム22−1及び検査チャンバー23−1を有する。尚、本願の検査とは、検査の結果を評価する評価装置を含む。
【0032】
1次コラム21−1の内部には、カソード8−1及びアノード9−1から構成された電子銃11−1が設けられており、電子銃11−1から照射される電子ビーム12−1(1次ビーム)の光軸上に1次光学系10−1が配置される。また、検査チャンバー23−1の内部には、ステージ26が設置され、該ステージ26上には、試料として基板S(例えばウェーハ等)が載置される。
【0033】
1次光学系10−1は、非回転対称の四重極又は八極の静電(又は電磁)レンズ25−1を使用する。これは、X軸、Y軸各々で集束と発散とを引き起こすことができる。このレンズを2段、3段で構成し、各レンズ条件を最適化することによって、照射電子を損失することなく、試料面上のビーム照射領域を、任意の矩形状、又は、楕円形状に整形することができる。具体的には、静電レンズを用いた場合、4本の円柱ロッドを使用する。対向する電極同士を等電位にし、互いに逆の電圧特性を与える。なお、4重極レンズとして円柱形ではなく、静電偏向器で、通常使用される円形板を4分割した形状のレンズを用いてもよい。この場合レンズの小型化を図ることができる。
【0034】
電子銃11−1として熱電子線源を使用することができる。電子放出(エミッタ)材料は、LaBである。高融点(高温での蒸気圧が低い)で仕事関数の小さい材料であれば、他の材料を使用することが可能である。先端を円錐形状にしたもの又は円錐の先端を切り落とした円錐台形状のものを使用している。円錐台先端の直系は100μm程度である。他の方式としては、電界放出型の電子線源或いは熱電界放出型のものが使用されているが、本発明の場合のように比較的広い領域(例えば、100×25〜400×100μm)を大きな電流(1μA程度)で照射する場合はLaBを用いた熱電子源が最適である。(SEM方式では、一般に熱電界放出電子線源が使用されている)。尚、熱電子線源は、電子放出材料を加熱することにより電子を放出する方式であり、熱電界放出電子線源とは、電子放出材料に高電界をかけることにより電子を放出させ、更に電子線放出部を加熱することにより、電子放出を安定させた方式である。
【0035】
一方、2次コラム22−1の内部には、基板Sに対して略垂直方向(基板Sから発生する2次電子線(2次ビーム)の略進行方向)に、その光軸が合致された2次光学系20−1及び検出器35−1が配置される。2次光学系20−1は、カソードレンズ28−1、ニューメニカルアパーチャ29−1、第2レンズ31−1、E×B分離ユニット(ウィーンフィルター)30−1、第3レンズ33−1、フィールドアパーチャ32−1、第4レンズ34−1、偏向器35’−1が配置される。なお、ニューメニカルアパーチャ29−1は、開口絞りに相当するもので、円形の穴が開いた金属製(Mo等)の薄板である。そして、開口部が1次ビームの集束位置及びカソードレンズ28−1の焦点位置になるように配置されている。従って、カソードレンズ28−1とニューメニカルアパーチャ29−1とは、2次電子線に対してテレセントリックな電子光学系を構成している。
【0036】
また、検出器35−1は、主要には、マイクロチャンネルプレート(MCP)14−1と、電子を光に変換する蛍光スクリーン15−1と、真空系と外部とを中継する真空透過窓16−1と、光学像を伝達させるためのファイバーオプティカルプレート(FOP)17−1と、光学像を検出する多数の素子からなるTDI−CCD18−1と、を含む。MCP14−1の原理としては、直径6〜25μm、長さ0.24から1.0mmという非常に細いガラスキャピラリを数百万本束ね、薄い板状に整形したもので、所定の電圧印加を行うことで、一本一本のキャピラリが、独立した2次電子増幅器として働き、全体として2次電子増幅器を形成する。TDI−CCD18−1は、メモリ34−1を介してコントロールユニット36−1に接続される。
【0037】
図1の欠陥検査システム全体を制御するための制御系は、主に、マン−マシンインターフェースを備えるコントロールユニット36−1、並びに、コントロールユニット36−1に入力された情報に基づいて、電子線装置1−1により得られた2次電子画像から欠陥検査を行うと共に、各構成要素を制御する制御ユニットを制御指令するCPU37−1から構成される。
【0038】
コントロールユニット36−1には、マン−マシンインターフェースとして、図示しない操作盤が備えられており、オペレータは、該操作盤を介して欠陥検査システムに種々の指示/命令を与えることができる(例えば、レシピなどの入力、検査スタートの指示、自動と手動検査モードの切り替え、手動検査モード時のときの必要な全てのコマンドの入力等)。また、コントロールユニット36−1には、液晶又はCRT等のディスプレイ24−1が接続され、各種指令の確認画像、CPU37−1からの情報の表示、及び、メモリ34−1内に記憶された2次電子画像を適宜表示することができる。
【0039】
CPU37−1は、電子光学系へのフィードバッグ信号等の授受、及び、ステージからの信号の授受を、夫々、1次及び2次コラム制御ユニット38−1、39−1、及び、ステージ駆動機構40−1の図示しないステージコントローラを介して行われる。
【0040】
1次及び2次コラム制御ユニット38−1、39−1は、主に電子線光学系の制御(電子銃、レンズ、アライナー、ウィーンフィルター用等の高精度電源の制御等)を担う。具体的には、照射領域に、倍率が変わったときにも常に一定の電子電流が照射されるようにすること、各倍率に対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の、各オペレーションモードに対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の制御(連動制御)が行われる。
【0041】
ステージコントローラは、主にステージの移動に関する制御を行い精密なX方向及びY方向のμmオーダーの移動(±0.5μm程度の誤差)を可能にしている。また、本ステージでは、誤差精度±0.3秒程度以内で、回転方向の制御(θ制御)も行われる。
【0042】
その他のCPU37−1の制御機能として、搬送機構41−1の図示しない搬送コントローラの制御、工場のホストコンピュータとのコミュニケーション、真空排気系の制御、ウェーハ等の試料搬送、位置合わせの制御、他の制御コントローラやステージコントローラへのコマンドの伝達や情報の受け取り等が挙げられる。また、光学顕微鏡からの画像信号の取得、ステージの変動信号を電子光学系にフィードバッグさせて像の悪化を補正するステージ振動補正機能、試料観察位置のZ方向(二次光学系の軸方向)の変位を検出して、電子光学系へフィードバッグし、自動的に焦点を補正する自動焦点補正機能を備えている。
【0043】
1次コラム21−1、2次コラム22−1、検査チャンバー23−1は、真空排気系(図示せず)と繋がっている。真空排気系は、真空ポンプ、真空バルブ、真空ゲージ、真空配管等から構成され、電子光学系、検出器部、試料室、ロードロック室を所定のシーケンスに従い、真空排気を行う。各部においては必要な真空度を達成するように真空バルブが制御される。常時、真空度のモニターを行い、異常時には、インターロック機能により隔離バルブによるチャンバー間又はチャンバーと排気系間の遮断等の緊急制御を行い、各部において必要な真空度を確保する。真空ポンプとしては主排気にターボ分子ポンプ、粗引き用としてはルーツ式のドライポンプを使用する。検査場所(電子線照射部)の圧力は、10−3〜10−5Pa、好ましくは、その1桁下の10−4〜10−6Paが実用的である。
(クリーナー)
電子線装置1−1が作動すると、近接相互作用(表面近くでの粒子の帯電)により標的物質が浮遊して高圧領域に引きつけられるので、電子ビームの形成や偏向に使用される様々な電極には有機物質が堆積する。表面の帯電により徐々に堆積していく絶縁体は、電子ビームの形成や偏向機構に悪影響を及ぼすので、堆積した絶縁体は周期的に除去しなければならない。絶縁体の周期的な除去は、絶縁体の堆積する領域の近傍の電極を利用して、真空中で水素、酸素や窒素、或いは、フッ素及びそれらを含む化合物、HF、O、NH、HO、C等のプラズマを作り出し、空間内のプラズマ電位を電極面にスパッタが生じる電位(数kV、例えば20V〜5kV)に維持することで、有機物質の酸化、水素化、フッ素化により除去する。
【0044】
(E×Bユニット)
ここで、上記したE×Bユニット30−1(ウィーンフィルター)の詳細な構造について、図2、及び、図2のA−A線に装縦断面を示した図3を用いて、更に詳細に説明する。
【0045】
E×Bユニット30−1は、電極と磁極を直交方向に配置し、電界と磁界とを直交させた電磁プリズム光学系のユニットである。電磁界を選択的に与えると、一方向からその場に入射する電子ビームは偏向され、その反対方向から入射する電子ビームは,電界から受ける力と磁界から受ける力の影響が相殺される条件(ウィーン条件)を作ることが可能で、これにより1次電子ビームは偏向され、ウェーハ上に垂直に照射し、2次電子ビームは検出器に向かって略直進することができる。
【0046】
図2に示すように、E×Bユニット30−1の場は、光軸に垂直な平面内において、電界と磁界とを直交させた構造、即ち、E×B構造としている。
ここで、電界は、凹面状の曲面を持つ電極50a−1及び50b−1により発生させる。電極50a−1及び50b−1が発生する電界は、夫々制御部53a−1及び53b−1により制御される。一方、電界発生用の電極50a−1及び50b−1と直交するように、電磁コイル51a−1及び51b−1を配置させることにより、磁界を発生させている。尚、電界発生用の電極50a−1及び50b−1は、点対称である(同心円でも構わない)。
【0047】
この場合は、磁界の均一性を向上させるために、平行平板形状を有するポールピースを持たせて、磁路を形成している。A−A線に沿う縦断面における電子ビームの挙動は、図3に示される。照射された電子ビーム61a−1及び61b−1は、電極50a−1及び50b−1が発生する電界と、電磁コイル51a−1及び51b−1が発生する磁界とによって偏向された後、試料面上に対して垂直方向に入射する。
【0048】
ここで、照射電子ビーム61a−1及び61b−1の電子ビーム偏向部への入射位置及び角度は、電子のエネルギーが決定されると一義的に決定される。更に、2次電子62a−1及び62b−1が直進するように、電界及び磁界の条件、即ち、vB=E(即ち、evB=eE;eは電荷(C))となるように、電極50a−1及び50b−1が発生する電界と、電磁コイル51a−1及び51b−1が発生する磁界とを、各々の制御部53a−1及び53b−1、54a−1及び54b−1が制御することにより、2次電子は電子ビーム偏向部27を直進して検出系に入射する。ここで、Vは電子32の速度(m/s)、Bは磁場(T)、Eは電界(V/m)である。
【0049】
次に、本実施例に係る電子線装置1−1の動作について図1を用いて説明する。
本電子線装置1−1は、試料の観察領域を1次電子線で一括して照射し(走査は行わず、一定の面積を照射する)、照射された領域からの2次電子をレンズ系により、一括して検出器(マイクロチャンネルプレート+蛍光板)上に電子線の画像として結像させるものである。
(1次ビーム)
電子銃11−1からの1次ビーム(一例として、電子銃のチップとしては、矩形陰極で大電流を取り出すことができるLaB6を用いる)は、1次光学系10−1によりレンズ作用(整形及び結像)を受けながら、ウィーンフィルター30−1に入射し、該ウィーンフィルター30−1の偏向作用により軌道が曲げられる。ウィーンフィルター30−1は、磁界と電界を直交させ、電界をE、磁界をB、荷電粒子の速度をvとした場合、E=vBのウィーン条件を満たす荷電粒子のみを直進させ、それ以外の荷電粒子の軌道を曲げる。1次ビームに対しては、磁界による力FBと電界による力FEとが同方向に働き、ビーム軌道は曲げられる。一方、2次ビームに対しては、力FBと力FEとが逆方向に働くため、互いに相殺されるので、2次ビームはそのまま直進する。
【0050】
1次光学系10−1のレンズ電圧は、1次ビームがニューメニカルアパーチャ29−1の開口部で結像するように予め設定されている。このニューメニカルアパーチャ29−1は、装置内に散乱する余計な電子ビームが試料面に到達することを阻止し、試料Sのチャージアップや汚染を防いでいる。更に、ニューメニカルアパーチャ29−1とカソードレンズ28−1とは二次ビームに対してテレセントリックな電子光学系を構成しているが一次ビームに対してはそうではなく、カソードレンズ28−1を透過した1次ビームは僅かに発散するビームになり、試料Sに均一且つ一様に照射する。この一様な照射は、光学顕微鏡でいうケーラー証明である。
(2次ビーム)
1次ビームが試料に照射されると、試料のビーム照射面からは、2次ビームとして、2次電子、反射電子又は後方散乱電子が発生する。2次ビームは、カソードレンズ28−1によるレンズ作用を受けながら、レンズを透過する。
【0051】
ところで、カソードレンズ28−1は、3枚の電極で構成されている。一番下の電極は、試料S側の電位との間で、正の電界を形成し、電子(特に指向性が小さい2次電子)を引き込み、効率良くレンズ内に導くように設計されている。
【0052】
また、レンズ作用は、カソードレンズ28−1の1番目、2番目の電極に電圧を印加し、3番目の電極をゼロ電位にすることで行なわれる。従って、視野中心外(軸外)から出た電子ビームの平行ビームは、このニューメニカルアパーチャ29−1の中心位置を、けられが生じることなく通過する。
【0053】
なお、ニューメニカルアパーチャ29−1は、2次ビームに対しては、第2レンズ31−1〜第4レンズ34−1のレンズ収差を抑える役割を果たしている。ニューメニカルアパーチャ29−1を通過した2次ビームは、ウィーンフィルター30−1の偏向作用を受けずに、そのまま直進して通過する。なお、2次ビームには、2次電子、反射電子、或いは、後方散乱電子があるが、これらの電子のうち、この場合は、2次電子を選択して説明している。
【0054】
2次ビームを、カソードレンズ28−1のみで結像させると、倍率色収差と歪収差が大きくなる。そこで、第2レンズ31−1と合わせて、1回の結像を行なわせる。2次ビームは、カソードレンズ28−1及び第2レンズ31−1により、ウィーンフィルター30−1上で中間結像を得る。この場合、通常、2次光学系として必要な拡大倍率が、不足することが多いため、中間像を拡大するためのレンズとして、第3レンズ33−1、第4レンズ34−1を加えた構成とする。2次ビームは、第3レンズ33−1、第4レンズ34−1の各々により拡大結像し、ここでは合計2回結像する。なお、第3レンズ33−1と第4レンズ34−1とを合わせて1回(合計1回)結像させてもよい。
【0055】
また、第2レンズ31−1〜第4レンズ34−1は、全てユニポテンシャルレンズ又はアインツェルレンズと呼ばれる回転対称型のレンズである。各レンズは、3枚電極の構成で、通常は外側の2電極をゼロ電位とし、中央の電極に印加する電圧でレンズ作用を行なわせて制御する。また、中間の結像点には、フィールドアパーチャ32−1が配置されている。フィールドアパーチャ32−1は、光学顕微鏡の視野絞りと同様に、視野を必要範囲に制限しているが、電子ビームの場合、余計なビームが、後段の第4レンズ34−1に入射するのを遮断して、検出器35−1のチャージアップや汚染を防いでいる。なお、拡大倍率は、第3レンズ33−1及び第4レンズ34−1のレンズ条件(焦点距離)を変えることで設定される。
【0056】
2次ビームは、2次光学系により拡大投影され、先ずマイクロチャンネルプレート(MCP)14−1で増倍された後、蛍光スクリーン15−1に当たり光の像に変換される。光に変換された画像は、真空透過窓16−1を介して大気中に置かれたファイバーオプティカルプレート(FOP)17−1を介してTDI−CCD18−1上に1対1で投影される。検出された画像信号は、電気信号に変換され、メモリ34−1に一時的に記憶される。
【0057】
コントロールユニット36−1は、メモリ34−1から試料Sの画像信号を読み出し、CPU37−1に伝達する。このとき、画像情報をディスプレイ24−1上に出力してもよい。CPU37−1は、画像信号からテンプレートマッチングや、ダイ対ダイの相互比較等によって基板Sのパターンの欠陥検査を実施する。
【0058】
2次電子画像の取得を実行している間に、CPU37−1は、ステージ26−1の位置を読み取り、ステージ駆動機構40−1に駆動制御信号を出力し、ステージ26−1を駆動させ、順次画像の検出、検査を行う。検出素子としてCCDを用いる場合、ステージ26−1の移動方向は短軸方向であり(長軸方向でも構わない)、移動はステップアンドリピート方式である。検出素子としてTDI−CCDを用いる場合のステージ移動は、積算方向に連続移動をする。TDI−CCDでは、画像を連続的に取得できるので、欠陥検査を連続で行う場合は本実施例のようにTDI−CCD18−1を使用する。分解能は、結像光学系(2次光学系)の倍率と精度等で決まり、実施例では、0.05μmの分解能が得られている。この例において、分解能が0.1μm、電子線照射条件が200μm×50μmの領域に1.6μAのとき、検査時間は20cmのウェーハ1枚当たり1時間程度であり、SEM方式の8倍が得られる。TDI−CCDの仕様は、例えば、2048画素(ピクセル)×512段でラインレートが3.3μs(ライン周波数300kHz)である。この例の照射面積はTDI−CCD18−1の仕様に合わせているが、照射対象物によって、照射面積を変更することもある。
【0059】
本実施例の検査装置1−1では、ニューメニカルアパーチャ29−1に光源像が結像され、且つ、FA開口が試料面に結像しているので、1次ビームに対しては、ビームを試料に均一に照射させることができる。即ち、ケーラー照明条件を容易に実現することができる。
【0060】
更に2次ビームに対しては、試料Sからの全ての主光線が、カソードレンズ28−1に垂直(レンズ光軸に平行)に入射し、ニューメニカルアパーチャ29−1を通過するので、周辺光もけられることがなく、試料周辺部の画像輝度が低下することもない。また、電子が有するエネルギーのばらつきによって、結像する位置が異なる現象、いわゆる倍率色収差が起こる(特に、2次電子は、エネルギーのばらつきが大きいため、倍率色収差が大きい)が、カソードレンズ28−1ト2番目のレンズ24−1の2つのレンズで結像させることにより、この倍率色収差を抑えることができる。
【0061】
また、拡大倍率の変更は、ニューメニカルアパーチャ29−1の通過後に行なわれるので、第3レンズ33−1、第4レンズ34−1のレンズ条件の設定倍率を変えても、検出側での視野前面に均一な像が得られる。なお、本実施例では、むらのない均一な像を取得することができるが、通常、拡大倍率を高倍にすると、像の明るさが低下するという問題点が生じた。そこで、これを改善するため、2次光学系のレンズ条件を変えて拡大倍率を変更する際、それに伴って決まる試料面上の有効視野と、試料面上に照射される電子ビームとを、同一の大きさになるように1次光学系のレンズ条件を設定する。
【0062】
即ち、倍率を上げていけば、それに伴って視野が狭くなるが、それと同時に電子ビームの照射エネルギー密度を上げていくことで、2次光学系で拡大投影されても、検出電子の電流密度は、常に一定に保たれ、像の明るさは低下しない。
【0063】
また、本実施例の検査装置では、1次ビームの軌道を曲げて2次ビームを直進させるウィーンフィルター30−1を用いたが、それに限定されず、1次ビームの軌道を例えば15°曲げ、2次ビームの軌道を曲げるウィーンフィルタを用いた構成の検査装置でもよい。特に、その場合は5°がよい。また、本実施形態では、矩形陰極と四極子レンズとから矩形ビームを形成したが、それに限定されず、例えば、円形陰極から円形ビームや楕円形ビームを作り出してもよいし、円形ビームをスリットに通して矩形ビームを取り出してもよい。
【0064】
また、複数のビームを走査して全体に電子線が照射領域を均一に照射するようにしてもよい。このとき、複数ビームが夫々の決められた領域を任意に(但し、合計の照射が均一になるように)走査するようにする。
【0065】
(検査手順)
次に、図1の欠陥検査システムを用いた基板Sの欠陥検査の手順を説明する。
一般に、電子線を用いた欠陥検査装置は高価であり、またスループットも他のプロセス装置に比べて低いために、現状では最も検査が必要と考えられている重要な工程(例えばエッチング、成膜、又はCMP(化学機械研磨)平坦化処理等)の後に使用されている。
【0066】
検査される基板S(ウェーハ)は、真空系により真空に保持された検査チャンバー23−1内に、搬送機構41−1を通して搬送され、超精密ステージ26−1上に位置合わせした後、静電チャック機構等により固定され、以後、図4(検査フロー)の手順に従って欠陥検査等が以下のように行われる。なお、検査の間、除振機構(図示せず)により検査チャンバーを除振するのが好ましい。
【0067】
最初に光学顕微鏡(図示せず)により、必要に応じて各ダイの位置確認や、各場所の高さ検出が行われ記憶される。光学顕微鏡は、この他に欠陥等の見たい所の光学顕微鏡像を取得し、電子線像との比較等にも使用される。次に、ウェーハの種類(どの工程の後か、ウェーハのサイズは20cmか30cmか等)に応じたレシピの情報を装置に入力し、以下、検査場所の指定、電子光学系の設定、検査条件の設定等を行った後、前述した電子線装置1−1の動作に従って画像取得を行いながら通常はリアルタイムで欠陥検査を行う。セル同士の比較、ダイ比較等が、アルゴリズムを備えた高速の情報処理システムにより検査が行われ、必要に応じてディスプレイ24−1等に結果を出力したり、メモリ34−1に記憶したりする。欠陥には、パーティクル欠陥、形状異常(パターン欠陥)、及び、電気的(配線又はビア等の断線及び導通不良等)欠陥等があり、これらを区別したり欠陥の大きさや、キラー欠陥(チップの使用が不可能になる重大な欠陥等)の分類を自動的にリアルタイムで行うこともできる。電気的欠陥の検出は、コントラスト異状を検出することにより達成される。例えば導通不良の場所は、電子線照射(500eV程度)により、通常、正に帯電し、コントラストが低下するので正常な場所と区別することができる。この場合の電子線照射の手段とは、通常、検査用の電子線照射手段以外に、別途、電位差によるコントラストを際立たせるため設けた、低電位エネルギーの電子線発生手段(例えば、熱電子発生、UV/光電子)をいう。検査対象領域に検査用の電子線を照射する前に、この低電位の電子線を発生、照射している。また、ウェーハ等の試料に、基準電位に対して正又は負の電位をかけること等による(素子の順方向又は逆方向により流れ易さが異なるために生じる)コントラストの違いから欠陥検出ができる。これは、線幅測定装置及び合わせ精度測定にも利用できる。
【0068】
検査の終了した基板Sは、搬送機構41−1により検査チャンバー23−1から搬出される。
(第2実施例)
第2実施例に係るパターン検査装置は、写像投影する機能と、走査型電子顕微鏡としての機能(すなわち、一次電子ビームを走査して発生した二次放出線を検出する機能)との二つの機能を併せ持っており、これら各機能は後述するように電気的な操作だけで容易に切り換えることができる。
【0069】
第2実施例のパターン検査装置は、図1に示す電子線装置1−1の構成を用い、該電子線装置に走査型電子顕微鏡としての機能を持たせることによって実現できる。
写像投影する機能は主として帯電し難い試料のパターン検査に使用され、一方、走査型電子顕微鏡としての機能は、主として帯電し易い試料のパターン検査若しくはパターン検査に先だって行われるレジストレーションでのマーク検出に使用される。ここで帯電し易い試料材料としては、例えば、酸化シリコン及び窒化シリコン等が表面に成膜されているウェーハであり、帯電し難い試料材質としては、ベアシリコン及びアルミコートシリコン等が挙げられる。また、帯電し易いか又は帯電し難いかの判定は、以下の基準により決定される。即ち、シリコンウェーハの表面の何パーセントが絶縁膜で覆われているか、或いは導電膜が島状に孤立しているか互いに繋がっているか等で判断される。
【0070】
写像投影する機能は、第1の実施例で説明したので、詳細な説明を省略する。なお、本実施例を写像投影機能で使用した場合、一例として、静電対物レンズ28−1により試料(例えば、ウェーハ等)S上に縮小結像される電子ビームの照射領域は、250ミクロン角であり、2次電子線は、2次光学系20−1により300倍に拡大されて、MCP14−1に入射する。
【0071】
次に、走査型電子顕微鏡としての機能について図1を用いて説明する。第2実施例のパターン検査装置では、1次光学系10−1において静電(又は電磁)レンズ25−1の後段に、1次電子ビームを偏向可能な走査用偏向器19−1を設置する。
【0072】
カソード8−1から放出された電子線12−1はアノード9−1で加速され、1次光学系10−1の所定位置に設けられた成形開口でその断面形状が長方形に成形される。成形された電子ビームは、次に、回転軸非対称の四重極又は八重極の静電(又は電磁)レンズ25−1でレンズ条件を調整することにより、細く絞られる。すなわち、電子ビームはその長方形形状のうち長径方向の縮小率を特に大きくし、短径方向の縮小率はある程度の縮小率に留めることにより、E×B分離器30−1の偏向主面より僅かに上側で計算上では100ナノメートルの正方形となるように調整される。但し、実際の装置ではレンズの収差があるため、E×B分離器30−1の偏向主面より僅かに上側で120ナノメートル直径の円形ビームとなった。E×B分離器30−1に入射した円形電子ビームは、そこで試料Sの表面に垂直な方向に偏向されかつ静電対物レンズ28−1により1/4に縮小されて試料の表面で約30ナノメートル直径の電子ビームに収束される。走査用偏向器19−1を操作してこの30ナノメートル直径の電子ビームを試料Sの表面で二次元的に走査することにより、試料上で5ミクロン角ないし100ミクロン角の領域が走査される。
【0073】
試料Sから放出された二次放出線は、静電対物レンズ28−1に印加された、二次放出線に対する加速電界で加速され該静電対物レンズを通過し、E×B分離器30−1に入射される。E×B分離器30−1に入射された二次放出線は、上記写像投影する機能の場合と全く同じレンズ条件で、2次光学系20−1の静電中間レンズ31−1及び静電拡大レンズ33−1を通りMCP14−1に入射する。
【0074】
MCP14−1に入射した二次放出線は写像投影する機能の場合と同様に、蛍光スクリーン15−1を照射してパターン画像を結像し、FOP17−1を通過してCCDカメラ18−1により検出されかつ電気信号に変換される。CCDカメラ18−1からの電気信号を全チャンネルに亘り電気的に加算することにより、信号強度を得ることができる。従って、位置情報は走査時間から取得することができる。
【0075】
写像投影する機能と走査型電子顕微鏡としての機能との切り替えは、4極子レンズ25−1を構成する各レンズの倍率を変更すること、走査用偏向器19−1に走査信号を与えること、及びCCDカメラ18−1からの出力信号を写像投影する機能としての通常の信号処理を行うか、又は全チャンネルを電気的に加算する走査型電子顕微鏡としての処理とするかを決定することだけで、全て電気的な操作により行うことができる。
【0076】
第2の実施例によれば、以下のような効果を奏することが可能である。
(1)写像投影する機能と走査型電子顕微鏡としての機能との二つの機能の切り換えは、4極子レンズ及び4極子偏向器の条件、走査用偏向器への操作信号及びCCDカメラからの信号処理を全て電気的に変更するだけで、容易に切り換えることができるから、一枚のウェーハに異種のチップが形成されていて帯電し易いチップと、帯電し難いチップが存在していても、パターン検査中に迅速に両機能を切り換えて、効率よく検査できる。
(2)レジストレションでのマーク検出の場合には、走査範囲を数ミクロン角に小さくすることにより、一ピクセルの寸法を5ナノメートルと小さくして高精度のマーク検出を行うことができる。
(3)パターン検査の場合には、一ピクセルの寸法をCCDカメラの画素と写像投影する機能における倍率とから決定される50ナノメートルとすることにより、パターン検査を高いスループットで行うことができる。
(第3実施例)
第3実施例の欠陥検査装置は、図1の電子線装置1−1を用いた欠陥検査システムを用いるので、本欠陥検査装置の構成に関する詳細な説明は、同一の符号を附して省略する。
【0077】
図1のMCP14−1は、使用時間を横軸に取りMCP14−1の増倍率を縦軸に取ると、図5から明らかなように、使用時間の増加に伴って、増倍率が低下する。また、MCP印加電圧を横軸に取りMCP増倍率を縦軸に取ると、図6のMCP印加電圧とMCP増倍率の相関関係を示すグラフからも明らかなように、飽和値まで単調に増加する。そこで、本発明においては、図7に示されるような制御を行うMCP印加電圧制御回路40−3を使用する。このMCP印加電圧制御回路40−3は、MCP使用時間から現在のMCP増倍率を算出し、現在の使用時間に対するMCP印加電圧−MCP増倍曲線からMCP増倍率が常に一定となるようにMCP印加電圧の制御を行う。つまり、図6の矢印の方向にMCP印加電圧をシフトさせる。このような制御によって撮像された欠陥を含む画像は、長時間の連続使用にも関わらず、常に一定のコントラスト画像が得られる。更に、このMCP印加電圧制御回路40−3は、ラインセンサのラインレートが現在の2倍に変化すれば、現在の2倍のMCP増倍率にするMCP印加電圧となるように制御を行い、また、倍率が現在の2倍に変化すれば、現在の4倍のMCP増倍率にするMCP印加電圧となるように制御を行い、これらのパラメータの変化に対しても画像コントラストが一定になるようにしている。なお、図7はMCP印加電圧制御回路40−3のフローチャートを示す図である。
【0078】
次に、詳細な具体例をウェーハの欠陥検査について説明する。
図8に示されるような欠陥検査用の試料としてウェーハWをX−Yステージ26−1に搭載し、そのウェーハW上に上記欠陥検査装置1−1により1次電子ビームを照射してウェーハWを同図の矢印Aで示されるように上下に走査することによってウェーハ全面の撮像をおこない、ラインセンサ18−1の画像はPCメモリ34−1に格納させた。これらの欠陥検査をMCP印加電圧制御回路40−3で1000時間程度連続して行った。その結果、0時間使用のMCP倍増率は、約4500であったが、1000時間使用後には同一のMCP印加電圧1200Vで、G2は約3000に変化していた(図5)。ところが、本発明のMCP印加電圧制御回路によってMCP増配率を変化させたところ、MCP印加電圧は、約1200Vから約1400Vまでシフトしていき、MCP増倍率は、常に一定で約4500を示していた。また、このような方法で撮像された欠陥画像は、1000時間に亘ってほぼ同程度のコントラスト画像を有していた。
【0079】
本実施例によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)長時間の欠陥検査を行っても欠陥画像のコントラストの変化及び劣化を抑えることができる。
(ロ)MCP印加電圧の制御又はビームのエミッション電流を制御することによってMCPの長時間使用による増倍率の低下を防止し、それによって常に同レベルの欠陥画像コントラストを維持できる。
(ハ)MCPの印加電圧を、現在のMCP印加電圧−MCPゲイン曲線を参照して決定することにより常に同レベルの欠陥画像コントラストを維持できる。
(ニ)欠陥検査において、スループットを低下させることなくその性能を向上させることができる。
(第4実施例)
図9は、本発明の実施例のフィードスルー装置の概略平面図であり、図10は、図9のフィードスルー装置の線A−Aに沿う概略断面図である。図9のフィードスルー装置10−4は、半導体パッケージを形成する半導体デバイスにより構成される。図10に示すように、フィードスルー装置10−4は、電気的絶縁材料からなるフィードスルー部2−4、フィードスルー部2−4に固着される少なくとも1本の電気導入ピン5−4、少なくとも1本の電気導入ピン5−4と図示しない機能素子とを接続する配線9−4、及び金属フランジ1−4を備える。
【0080】
フィードスルー部2−4は、電気的絶縁能力を持つ材料、一般的にはアルミナベースのセラミックにより形成される。フィードスルー部2−4は、シェル3−4を介し金属フランジ1−4に結合される。シェル3−4は、コバールや42合金といった金属から形成され、フィードスルー部2−4と金属フランジ1−4との間の熱膨張係数の違いに起因する熱応力による破損を防ぐ役割を果す。フィードスルー部2−4とシェル3−4との接合は、例えばモリブデン−マンガンメタライズと銀ロウによって封着される。また、シエル3−4と金属フランジ1−4との結合は、例えばTIG全周溶接のような方法で気密処理が施される。
【0081】
フィードスルー部2−4は、パターンメタライズ部4−4及びダイ(機能素子)6−4を備える。パターンメタライズ部4−4とピン5−4とが銀ロウを介し封着される。ダイ6−4は、フィードスルー部2−4の片面に形成されるダイボンディング部7−4に固着される。ダイ6−4は、センサ、電気回路及び半導体素子を含む機能素子により構成される。フィードスルー部2−4は、それを介し圧力状態及びガス種が異なることができるようにされる。
【0082】
図10においてフィードスルー部2−4の真空側表面にダイ6−4が配置され、ダイ6−4は、真空絶縁されたピン5−4の電流導入端子に接続される。ピン5−4は、またダイ6−4の電気信号を電流導入端子を介し、大気中へ取出せるように配置される。図9及び図10に示すフィードスルー装置10−4は、真空絶縁できる機能を備える半導体パッケージ、具体的には、CCD、TDI等の半導体デバイスを収容するパッケージにより構成される。このフィードスルー装置10−4は、図13を参照して後述するように、写像投影系を含む半導体デバイスの欠陥を検出する検出器として用いられる。
【0083】
図9及び図10の装置において、図示しない機能素子は、フィードスルー部2−4の真空側表面に制作される。電気導入ピン5−4と図示しない機能素子とを接続する接続配線9−4は、フィードスルー部2−4の表面に膜状に形成される。フィードスルー部2−4は、金属フランジ1−4に溶接されるか、又はシェル3−4を介し結合される。
【0084】
ダイボンディング部7−4は、図10に示すように、フィードスルー部2−4の一部に落とし込みを形成しても良いし、しなくても良い。固着方法は、接着剤、粘着テープ、低融点金属によるロウ付けを使用することができる。真空中で使用する場合は、真空中での脱ガス量の少ないものが望ましい。図10の実施例においては、ダイパッド部8−4とパターンメタライズ部4−4との間の電気的接続手段として接続配線9−4を用いたが、それに替えて、フリップチップ接続又は通常の電気配線を用いることが可能である。
【0085】
図11は、本発明の他の実施例のフィードスルー装置の概略平面図であり、機能素子6−4の平面の4分の1を示すものである。図12は、図11のフィードスルー装置の線B−Bに沿う概略断面図である。図11及び図12は、ピン5−4の数の多いフィードスルー装置20−4を示す。フィードスルー部2−4と図示しない金属フランジとの封着方法は、図10の実施例と同様である。
【0086】
図11及び図12のようにピン5の本数が多く、下方パターンメタライズ12−4のみで全ての配線を形成できない時は、表面上に上方パターンメタライズ16−4を施した配線板15−4を重ねて設置し、ダイ6−4と下方パターンメタライズ12−4及び上方パターンメタライズ16−4間を下方接続配線19−4及び上方接続配線18−4を用いて電気的に接続する。上方パターンメタライズ16−4とピン5−4との間の電気的接続は、ロウ付けでも、ハンダ付けでも、あるいはワイヤボンディングでも良い。
【0087】
図13は、本発明のフィードスルー装置10−4又は20−4を組込んだウェーハ欠陥検査装置30−4の概略縦断面図である。図13のウェーハ欠陥検査装置30−4は、電子ビーム41−4を真空チャンバ21−4内へ放出する電子銃22−4、静電レンズ群で構成される照明光学系23−4、検査すべきウェーハを支持するステージ24−4、静電レンズ群で構成される写像投影光学系26−4、及び検出器40−4を備える。
【0088】
図13に示すように、検出器40−4は、二次電子像を増幅するMCP(マイクロチャネルプレート)31−4、MCP31−4により増幅された電子像を光信号に変換する蛍光板32−4、蛍光板32−4に密着配置され蛍光板32−4で変換された光学像を伝達するFOP(ファイバーオプティックプレート、符号28−4で示す)、及びFOP28−4から出力された光学像をデジタル電気信号に変換する20−4(機能素子6−4)及びフィードスルー装置10−4、フィードスルー装置の直上に配置されフィードスルー装置の電気信号を変換する撮像カメラ29−4を備える。フィードスルー装置10−4は、真空チャンバ21−4内の真空系を外部に対し密封すると共に電気信号を外部へ伝達する。MCP31−4、蛍光板32−4及びFOP28−4は、共通の支持部材により支持され、MCP/FOPアッセンブリー27−4を形成する。
【0089】
図13のウェーハ欠陥検査装置30−4において、電子銃22−4から放出された電子ビーム41−4は、照明光学系23−4により偏向、成形され、ステージ24−4上のウェーハ25−4の表面に照射される。電子ビームの照射によりウェーハ25−4から放出される二次電子は、写像投影光学系26−4により所定倍率でMCP/FOPアッセンブリー27−4上に結像される。MCP/FOPアッセンブリー27−4上に結像された二次電子像は、増倍され蛍光板32−4により光信号に変換されフィードスルー装置10−4に入射され、フィードスルー装置上の機能素子によりデジタル信号に変換され、このデジタル信号が撮像カメラ29−4へ伝達される。撮像カメラ29−4において、デジタル信号が後段の画像処理装置(図示しない)に取り込み可能な形式の信号に変換され、出力され、ウェーハの欠陥検査等に用いられる。
【0090】
本発明の第4実施例によれば、フィードスルー部に固着される少なくとも1本の電気導入ピン、及び前記少なくとも1本の電気導入ピンと機能素子とを接続する接続配線を備え、前記機能素子は、センサーを含むことにより、撮像センサーと真空フランジを別個に形成するものに比べ、信号線が短いので信号遅延がなく外乱も少なく、センサーを高速駆動することが可能であり、欠陥検査のスループットを向上できる。
【0091】
本発明の第4の実施例に係るフィードスルー装置を組込んだ電子線装置を用いるウェーハの欠陥検査装置は、微細なパターンを有する半導体デバイスでも、高いスループットで検査でき、欠陥製品の出荷を防止できる。
(第5実施例)
図14は、この発明に係る欠陥検査装置の一つの実施の形態の構成を概略的に示している。同図の検査装置は、図14の実施例と同様の写像投影型の欠陥検査装置であり、電子銃1−5から放出された一次電子線5−5は一次電子光学系を経て試料10−5を照射し、該照射によって試料10−5から放出された二次電子線を二次電子光学系を介して検出器14−5に導き、試料10−5の表面のパターンを表す画像データを取得することにより欠陥検査を行うものである。
【0092】
電子銃1−5はLaB6からなるカソードを備え、該カソードの先端には、直径100ミクロン以上の平坦な〈100〉単結晶面が形成されている。電子銃1−5から放出された一次電子線5−5は、一次電子光学系において、ウェーネルト電極2−5によって放出電流量を制御された後、複数枚の陽極3−5によって加速されてガン・アパーチャ4−5にクロスオーバーを結ぶ。その後、一次電子線5−5は静電レンズ6−5に入射して断面形状が矩形又は楕円形となるよう整形され、アラインメント用電極7−5を直進してウィーン・フィルタ8−5に進入する。ウィーン・フィルタ8−5によって一次電子線5−5は試料10−5に垂直に入射するように偏向され、X−Yステージ9−5の上に配置された試料10−5を照射する。このときの一次電子線5−5の断面形状は例えば400ミクロン×600ミクロンの楕円形である。試料10−5には所定のリターディング電圧が印加されているため、一次電子線5は所定のランディング・エネルギとなって試料10−5を照射し、二次電子線を放出させる。
【0093】
こうして試料10−5から放出された二次電子線は、ウィーン・フィルタ8−5を直進し、二次電子光学系の静電レンズ11−5によって所定のレンズ倍率で拡大された後、マイクロチャンネルプレート12−5上に結像する。マイクロチャンネルプレート12−5に結像された二次電子線はマイクロチャンネルプレート12によって増倍されて蛍光板13−5に投影される。蛍光板13−5によって二次電子線は光へ変換されてCCDカメラやラインセンサ等の検出器14−5に入力される。これによって、試料10−5の表面のパターンの画像が取得され、画像処理部15−5に供給される。
【0094】
更に、図14の欠陥検査装置は、ウェーネルト電極2−5及び陽極3−5に印加する電圧を制御するための制御部16−5と、制御部16−5からの指令に基づいた大きさの電圧をウェーネルト電極2−5及び陽極3−5に供給する電源18−5とを備えている。制御部16−5を設けたのは、電子銃1−5の放出電流を或る値に保持するためには、ウェーネルト電極2−5に対する印加電圧を、放出開始からの経過時間と共に変えればよいからである。ただし、ウェーネルト電極2−5への印加電圧を変えると、一次電子線のクロスオーバー径が変化してしまう。これを防止するため、制御部16−5は、常にガン・アパーチャ4−5の中心で一次電子線がクロスオーバーを結ぶよう、ウェーネルト電極2−5に印加する電圧を変えると同時に、陽極3−5に印加する電圧をも変化させる。こうした制御を行うことにより、画像処理部15−5は一定のコントラストの画像を取得することが可能になる。
【0095】
これを実現するため、図14の欠陥検査装置においては、電子銃1−5の放出電流を一定に保持するために必要な、放出開始からの経過時間とウェーネルト電極2−5への印加電圧との関係、及び、ガン・アパーチャ4−5の中心で一次電子線がクロスオーバーを結ぶのに必要な、ウェーネルト電極2−5への印加電圧の変化と陽極3−5に印加する電圧との関係を予め測定しておき、当該放出電流について、経過時間と印加電圧との関係を制御部16−5内にルックアップ・テーブル17−5の形で記憶させておく。
【0096】
そこで、図14の欠陥検査装置を稼動させるとき、制御部16−5は放出開始からの経過時間を監視し、所定の時間間隔でルックアップ・テーブル17−5を参照して、電子銃1−5の放出電流を一定に保持するよう、放出開始からの経過時間に対応する印加電圧を表す値をルックアップ・テーブル17−5から読み出し、その値を電源18−5に与えることで、ウェーネルト電極2−5に対する印加電圧を、当該経過時間に対応する大きさに設定する。同時に、制御部16−5は、このときのウェーネルト電極2−5への印加電圧の変化に対応する陽極3−5の印加電圧を表す値もルックアップ・テーブル17−5から読み出し、その値を電源18−5に与えることで、陽極3−5に対する印加電圧を所望の値に調整する。
【0097】
実際に、図14に示す構成の欠陥検査装置において、放出電流が30マイクロアンペアという一定値を保つようにするため、放出開始からの経過時間と共にウェーネルト電極2−5にどの程度の電圧を印加すべきかを測定したところ、図15に示すように、ウェーネルト電極2−5への印加電圧は、放出開始時には−300ボルト程度、10時間後では−350ボルト程度、100時間後には−400ボルト程度、1000時間後には−450ボルト程度であった。しかも、1000時間経過後であっても、一次電子線のクロスオーバーをガン・アパーチャ4−5の中心に結ばせるよう制御することができた。
【0098】
図14の結果とは対照的に、ウェーネルト電極に印加される電圧(単位ボルト)と電子銃の放出電流(単位マイクロアンペア)との関係を示す従来技術のグラフである図16は、、ウェーネルト電極に印加される電圧が−300ボルトよりも高くなると放出電流が急激に増大することがわかる。
【0099】
以上、第5の実施例に係る電子線装置についての説明から理解されるように、本実施例は、電子銃からの放出電流が一定に保持されるようにウェーネルト電極への印加電圧を時間の経過と共に変えるようにしたので、試料の画像を一定のコントラストで取得することができ、試料に欠陥検査を高スループット且つ高信頼性をもって行うことができるという格別の効果を奏する。
(第6の実施例)
図1で前述した搬送機構40−1、除振機構及び真空系等を含む欠陥検査システム全体の更に詳細なシステムを第6の実施例として説明する。
【0100】
図17及び図18において、第6の実施例の半導体検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。
本実施例の半導体検査装置1は、複数枚のウェーハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、ウェーハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、真空ハウジングに取り付けられた電子光学装置70と、を備え、それらは図17及び図18に示されるような位置関係で配置されている。半導体検査装置1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウェーハに電位を印加する電位印加機構83(図25に図示)と、電子ビームキャリブレーション機構85(図27に図示)と、ステージ装置上でのウェーハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871とを備えている。
【0101】
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウェーハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF、FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施例では2個)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施例では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テール11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に図18で鎖線図示の状態で自動的にセット可能になっていて、セット後、図18で実線図示の状態に自動的に回転されてミニエンバイロメント装置内の第1の搬送ユニットの回動軸線に向けられる。また、昇降テーブル11は図17で鎖線図示の状態に降下される。このように、自動的に装填する場合に使用するカセットホルダ、或いは人手により装填する場合に使用するカセットホルダはいずれも公知の構造のものを適宜使用すれば良いので、その構造及び機能の詳細な説明は省略する。
【0102】
図28に示す別の実施例では、複数の300mm基板Wを箱本体501の内側に固定した溝型ポケット(図示せず)に収納した状態で収容し、搬送保管等を行う。この基板反応箱24は、角筒状の箱本体501と、基板搬出入ドア自動開閉装置に連絡されて箱本体501の側面の開口部を機械により開閉可能な基板搬出入ドア502と、開口部と反対側に位置し、フィルタ類及びファンモータの着脱を行うための開口部を覆う蓋体503と、基板Wを保持するための溝型ポケットと、ULPAフィルタ505、ケミカルフィルタ506、ファンモータ507と、から構成されている。本実施例では、ローター60のロボット式の第1の搬送ユニット61により、基板を出し入れする。
【0103】
なお、カセットc内に収納される基板すなわちウェーハは、検査を受けるウェーハであり、そのような検査は、半導体製造工程中でウェーハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、成膜工程、CMP、イオン注入等を受けた基板すなわちウェーハ、表面に配線パターンが形成されたウェーハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウェーハが、カセット内に収納される。カセットc内に収容されるウェーハは多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置のウェーハと後述する第1の搬送ユニットで保持できるように、第1の搬送ユニットのアームを上下移動できるようになっている。
【0104】
図17ないし図19において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて検査対象としての基板すなわちウェーハを粗位置決めするプリアライナー25とを備えている。
【0105】
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有していてい、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図19に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施例では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。この実施例では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された後述する第1の搬送ユニットによる搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃がウェーハに付着するのを防止するようになっている。したがって、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225をミニエンバイロメント装置側から閉じるようにしてもよい。ウェーハ近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3〜0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間内でなくその外側に設けてもよい。
【0106】
排出装置24は、前記搬送ユニットのウェーハ搬送面より下側の位置で搬送ユニットの下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、搬送ユニットの周囲を流れ下り搬送ユニットにより発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
【0107】
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたアライナー25は、ウェーハに形成されたオリエンテーションフラット(円形のウェーハの外周に形成された平坦部分を言い、以下においてオリフラと呼ぶ)や、ウェーハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出してウェーハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナーは請求項に記載された発明の検査対象の座標を決める機構の一部を構成し、検査対象の粗位置決めを担当する。このプリアライナー自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。
【0108】
なお、図示しないが、プリアライナーの下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナーから排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
図17及び図18において、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施例では、上に載置されるステージ装置等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。この実施例において、ハウジング本体及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁にはウェーハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
【0109】
なお、防振装置は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。
【0110】
図17、図18及び図20において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間でウェーハのやり取りを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。したがって、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけば良い。
【0111】
第1のローディングチャンバ41内には、複数(この実施例では2枚)のウェーハを上下に隔てて水平の状態で支持するウェーハラック47が配設されている。ウェーハラック47は、図21の示されるように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上にウェーハWの周縁を載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームの先端を隣接する支柱間からウェーハに接近させてアームによりウェーハを把持するようになっている。
【0112】
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10-5〜10-6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、ウェーハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ内に収容されていて次に欠陥検査されるウェーハをワーキングチャンバ内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバを採用することによって、後述するマルチビーム型電子線装置の原理と共に、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
【0113】
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、それぞれ真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガスベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
【0114】
なお、電子線を使用する本発明の検査装置において、後述する電子光学系の電子源として使用される代表的な六硼化ランタン(LaB6)等は一度熱電子を放出する程度まで高温状態に加熱された場合には、酸素等に可能な限り接触させないことがその寿命を縮めないために肝要であるが、電子光学系が配置されているワーキングチャンバにウェーハを搬入する前段階で上記のような雰囲気制御を行うことにより、より確実に実行できる。
【0115】
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図17において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図17において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55のウェーハ載置面551上にウェーハを解放可能に保持する。ホルダは、ウェーハを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持されたウェーハを電子光学装置から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図17において上下方向)に、更にウェーハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてウェーハのノッチ或いはオリフラの位置を測定してウェーハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し、回転テーブルを微小角度制御可能なステッピングモータなどにより回転させて制御する。ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。なお、ステージ装置50は、例えばステッパー等で使用されている公知の構造のもので良いので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。また、上記レーザ干渉測距装置も公知の構造のものでよいので、その構造、動作の詳細な説明は省略する。
【0116】
電子ビームに対するウェーハの回転位置やX、Y位置を予め後述する信号検出系或いは画像処理系に入力することで得られる信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたウェーハチャック機構は、ウェーハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、ウェーハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。ウェーハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランクピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
【0117】
なお、この実施例では図18で左右方向に移動するテーブルをXテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをYテーブルとしたが、同図で左右方向に移動するテーブルをYテーブルとし、上下方向に移動するテーブルをXテーブルとしてもよい。
【0118】
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
【0119】
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施例では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、には公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等のウェーハを把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
【0120】
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダに保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容されたウェーハを1枚アームの上に載せ或いはアームの先端に取り付けたチャック(図示せず)により把持して取り出す。その後アームが縮み(図18に示すような状態)、アームがプリアライナー25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアームが再び伸びてアームに保持されたウェーハをプリアライナー25に載せる。プリアライナーから前記と逆にしてウェーハを受け取った後はアームは更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のウェーハ受け47にウェーハを受け渡す。なお、機械的にウェーハを把持する場合にはウェーハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これはウェーハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとデバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
【0121】
第2の搬送ユニット63も第1の搬送ユニットと構造が基本的に同じであり、ウェーハの搬送をウェーハラック47とステージ装置の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
【0122】
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダに保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウェーハの搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、ウェーハのカセットからの取り出し及びそれへの挿入、ウェーハのウェーハラックへの載置及びそこからの取り出し及びウェーハのステージ装置への載置及びそこからの取り出しのときるだけである。したがって、大型のウェーハ、例えば直径30cmのウェーハの移動もスムースに行うことができる。
【0123】
次にカセットホルダに支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウェーハの搬送を順を追って説明する。
カセットホルダ10は、前述のように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施例において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
【0124】
カセットが出入り口225に整合されると、カセットに設けられたカバー(図示せず)が開きまたカセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセット内及びミニエンバイロメント空間内を外部から遮断する。これらの構造は公知のものであるから、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
【0125】
一方第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM1の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているウェーハのうち1枚を受け取る。なお、アームと、カセットから取り出されるべきウェーハとの上下方向の位置調整は、この実施例では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダの昇降テーブルの上下動行っても或いはその両者で行ってもよい。
【0126】
アーム612によるウェーハの受け取りが完了すると、アームは縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アームは伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたウェーハをプリアライナー25の上に載せ、そのプリアライナーによってウェーハの回転方向の向き(ウェーハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると搬送ユニット61はアームの先端にプリアライナー25からウェーハを受け取ったのちアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてウェーハを第1のローディングチャンバ41内のウェーハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてウェーハラック47にウェーハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
【0127】
上記第1の搬送ユニットによるウェーハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置のハウジングの上に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウェーハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施例では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジングの底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
【0128】
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウェーハラック47内に第1の搬送ユニット61によりウェーハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバの真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口434を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウェーハ受け47から1枚のウェーハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウェーハの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めウェーハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
【0129】
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット61のアームはワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図18で上方に移動し、また、Xテーブル53は図18で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバがワーキングチャンバの真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アームが伸びてウェーハを保持したアームの先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置に接近する。そしてステージ装置50の載置面551上にウェーハを載置する。ウェーハの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
【0130】
以上は、カセットc内のウェーハをステージ装置上に搬送するまでの動作に付いて説明したが、ステージ装置に載せられて処理が完了したウェーハをステージ装置からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行って戻す。また、ウェーハラック47に複数のウェーハを載置しておくため、第2の搬送ユニットでウェーハラックとステージ装置との間でウェーハの搬送を行う間に、第1の搬送ユニットでカセットとウェーハラックとの間でウェーハの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
【0131】
具体的には、第2の搬送ユニットのウェーハラック47に、既に処理済みのウェーハAと、未処理のウェーハBとがある場合、以下の手順に従う。
(1) 先ず、ステージ装置50に未処理のウェーハBを移動し、処理を開始する。
(2) この処理中に、処理済みウェーハAを、アームによりステージ装置50からウェーハラック4に移動し、未処理のウェーハCを同じくアームによりウェーハラックから抜き出し、プリアライナで位置決めした後、ローディングチャンバー41のウェーハラック47に移動する。このようにすることにより、ウェーハラック47の中には、ウェーハBを処理中に、処理済みのウェーハAを未処理のウェーハCに置き換えることができる。
【0132】
また、検査及び評価を行う、当該装置の利用の仕方によっては、ステージ装置50を複数台並列に置き、夫々の装置に一つのウェーハラック47からウェーハを移動することにより、複数枚のウェーハを同じく処理することもできる。
【0133】
図22及び23において、主ハウジングの支持方法の変形例が示されている。図22に示された変形例では、ハウジング支持装置33aを厚肉で矩形の鋼板331aで構成し、その鋼板の上にハウジング本体32aが載せられている。したがって、ハウジング本体32aの底壁321aは、前記実施例の底壁に比較して薄い構造になっている。図23に示された変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊り下げて状態で支持するようになっている。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持するようになっている。そして防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。また、ローダハウジング40もフレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。ハウジング本体32bのこの図23に示された変形例では、吊り下げ式に支えるので主ハウジング及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。上記変形例を含めた主ハウジング及びローダハウジングの支持方法では主ハウジング及びローダハウジングに床からの振動が伝わらないようになっている。
【0134】
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本外のみがハウジング支持装置によって下から支えられ、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。
【0135】
電子光学装置70は、図1に示す写像投影型の電子線装置を用いることができる。代替例として、図24に示す別の写像投影型の電子線装置を用いてもよい。同図で略示された写像投影型電子線装置は、ハウジング本体32に固定された鏡筒71を備え、その中には、一次電子光学系(以下単に一次光学系)72と、二次電子光学系(以下単に二次光学系)74とを備える電子光学系と、検出系76とが設けられている。一次光学系72は、電子線を検査対象であるウェーハWの表面に照射する光学系で、電子線を放出する電子銃721と、電子銃721から放出された一次電子線を集束する静電レンズからなるレンズ系722と、ウイーンフィルタすなわちE×B分離器723と、対物レンズ系724と、を備え、それらは、図24に示されるように電子銃721を最上部にして順に配置されている。この実施例の対物レンズ系724を構成するレンズは減速電界型対物レンズである。この実施例では、電子銃721から放出される一次電子線の光軸は、検査対象であるウェーハWに照射される照射光軸(ウェーハの表面に垂直になっている)に関して斜めになっている。対物レンズ系724と検査対象であるウェーハWとの間には電極725が配置されている。この電極725は一次電子線の照射光軸に関して軸対称の形状になっていて、電源726によって電圧制御されるようになっている。
【0136】
二次光学系74は、E×B型偏向器724により一次光学系から分離された二次電子を通す静電レンズから成るレンズ系741を備えている。このレンズ系741は二次電子像を拡大する拡大レンズとして機能する。
【0137】
検出系76は、レンズ系741の結像面に配置された検出器761及び画像処理部763を備えている。
次に、上記構成の電子光学装置70の動作に付いて説明する。
【0138】
電子銃721から放出された一次電子線は、レンズ系722によって集束される。収束された一次電子線はE×B型偏向器723に入射され、ウェーハWの表面に垂直に照射されるように偏向され、対物レンズ系724によってウェーハWの表面上に結像される。
【0139】
一次電子線の照射によってウェーハから放出された二次電子は、対物レンズ系724によって加速され、E×B型偏向器723に入射し、その偏向器を直進して二次光学系のレンズ系741により検出器761に導かれる。そして、その検出器761によって検出され、その検出信号が画像処理部763に送られる。
【0140】
なお、この実施例において、対物レンズ系724は、10ないし20kVの高電圧が印加され、ウェーハは設置されているものとする。
ここで、ウェーハWにビアbがある場合に、電極725に与える電圧を−200Vとすると、ウェーハの電子線照射面の電界は、0〜−0.1V/mm(−はウェーハW側が高電位であることを示す)となった。この状態で、対物レンズ系724とウェーハWとの間に放電は発生せずに、ウェーハWの欠陥検査は行えたが、二次電子の検出効率が若干下がってしまう。したがって、電子線を照射し二次電子を検出する一連の動作を、例えば4回行い、得られた4回分の検出結果を累積加算や平均化等の処理を施して所定の検出感度を得た。
【0141】
また、ウェーハにビアbがない場合に、電極725に与える電圧を+350Vとしても、対物レンズ系724とウェーハとの間に放電は発生せずに、ウェーハWの欠陥検査は行えた。この場合、電極725に与えた電圧によって二次電子が集束され、対物レンズ724によっても更に集束されるので、検出器761における二次電子の検出効率は向上した。よって、ウェーハ欠陥装置としての処理も高速となり、高いスループットで検査が行えた。
【0142】
プレチャージユニット81は、図17に示されるように、ワーキングチャンバ31内で電子光学装置70の鏡筒71に隣接して配設されている。本検査装置では検査対象である基板すなわちウェーハに電子線を走査して照射することによりウェーハ表面に形成されたデバイスパターン等を検査する形式の装置であるから、電子線の照射により生じる二次電子等の情報をウェーハ表面の情報とするが、ウェーハ材料、照射電子のエネルギ等の条件によってウェーハ表面が帯電(チャージアップ)することがある。更に、ウェーハ表面でも強く帯電する箇所、弱い帯電箇所が生じる可能性がある。ウェーハ表面の帯電量にむらがあると二次電子情報もむらを生じ、正確な情報を得ることができない。そこで、本実施例では、このむらを防止するために、荷電粒子照射部811を有するプレチャージユニット81が設けられている。検査するウェーハの所定の箇所に検査電子を照射する前に、帯電むらをなくすためにこのプレチャージユニットの荷電粒子照射部811から荷電粒子を照射して帯電のむらを無くす。このウェーハ表面のチャージアップは予め検出対称であるウェーハ面の画像を形成し、その画像を評価することで検出し、その検出に基づいてプレチャージユニット81を動作させる。
【0143】
また、このプレチャージユニットでは一次電子線をぼかして照射してもよい。
図25において、電位印加機構83は、ウェーハから放出される二次電子情報(二次電子発生率)が、ウェーハの電位に依存すると言う事実に基づいて、ウェーハを載置するステージの設置台に±数Vの電位を印加することにより二次電子の発生を制御するものである。また、この電位印加機構は、照射電子が当初有しているエネルギーを減速し、ウェーハに100〜500eV程度の照射電子エネルギーとするための用途も果たす。
【0144】
電位印加機構83は、図25に示されるように、ステージ装置50の載置面541と電気的に接続された電圧印加装置831と、チャージアップ調査及び電圧決定システム(以下調査及び決定システム)832とを備えている。調査及び決定システム832は、電子光学装置70の検出系76の画像形成部763に電気的に接続されたモニター833と、モニター833に接続されたオペレータコンソール834と、オペレータコンソール834に接続されたCPU835とを備えている。CPU835は、前記電圧印加装置831に信号を供給するようになっている。
【0145】
上記電位印加機構は、検査対象であるウェーハが帯電し難い電位を探し、その電位を印加するように設計されている。
図26において、電子ビームキャリブレーション機構85は、前記回転テーブル上でウェーハの載置面541の側部の複数箇所に設置された、ビーム電流測定用のそれぞれ複数のファラデーカップ851及び852を備えている。ファラデーカップ851は細いビーム用(約φ2μm)で、ファラデーカップ852太いビーム用(約φ30μm)である。細いビーム用のファラデーカップ851では回転テーブルをステップ送りすることで、ビームプロフィルを測定し。太いビーム用のファラデーカップ852ではビームの総電流量を計測する。ファラデーカップ851及び852は、上表面が載置面541上に載せられたウェーハWの上表面と同じレベルになるように配置されている。このようにして電子銃から放出される一次電子線を常時監視する。これは、電子銃が常時一定の電子線を放出できるわけでなく、使用しているうちにその放出量が変化するためである。
【0146】
図27に示すアライメント制御装置87は、ステージ装置50を用いてウェーハWを電子光学装置70に対して位置決めさせる装置であって、ウェーハを光学顕微鏡871を用いた広視野観察による概略合わせ(電子光学系によるよりも倍率が低い測定)、電子光学装置70の電子光学系を用いた高倍率合わせ、焦点調整、検査領域設定、パターンアライメント等の制御を行うようになっている。このように光学系を用いて低倍率でウェーハを検査するのは、ウェーハのパターンの検査を自動的に行うためには、電子線を用いた狭視野でウェーハのパターンを観察してウェーハライメントを行う時に、電子線によりアライメントマークを容易に検出する必要があるからである。
【0147】
光学顕微鏡871は、ハウジングに設けられ(ハウジング内で移動可能な設けられていてもよい)ており、光学顕微鏡を動作させるための光源も図示しないがハウジング内に設けられている。また高倍率の観察を行う電子光学系は電子光学装置70の電子光学系(一次光学系72及び二次光学系74)を共用するものである。その構成を概略図示すれば、図27に示されるようになる。ウェーハ上の被観察点を低倍率で観察するには、ステージ装置50のXステージ53をX方向に動かすことによってウェーハの被観察点を光学顕微鏡の視野内に移動させる。光学顕微鏡871で広視野でウェーハを視認してそのウェーハ上の観察すべき位置をCCD872を介してモニタ873に表示させ、観察位置をおおよそ決定する。この場合光学顕微鏡の倍率を低倍率から高倍率に変化させていってもよい。
【0148】
次に、ステージ装置50を電子光学装置70の光軸と光学顕微鏡871の光軸との間隔δxに相当する距離だけ移動させて光学顕微鏡で予め決めたウェーハ上の被観察点を電子光学装置の視野位置に移動させる。この場合、電子光学装置の軸線O3−O3と光学顕微鏡871の光軸O4−O4との間の距離(この実施例ではX軸線に沿った方向にのみ両者は位置ずれしているものとするが、Y軸方向及びY軸方向に位置ずれしていてもよい)δxは予めわかっているのでその値δxだけ移動させれば被観察点を視認位置に移動させることができる。電子光学装置の視認位置への被観察点の移動が完了した後、電子光学系により高倍率で被観察点をSEM撮像して画像を記憶したり又はCCD761を介してモニタ765に表示させる。
【0149】
このようにして電子光学系による高倍率でウェーハの観察点をモニタに表示させた後、公知の方法によりステージ装置50の回転テーブル54の回転中心に関するウェーハの回転方向の位置ずれすなわち電子光学系の光軸O3−O3に対するウェーハの回転方向のずれδθを検出し、また電子光学装置に関する所定のパターのX軸及びY軸方向の位置ずれを検出する。そしてその検出値並びに別途得られたウェーハに設けられた検査マークのデータ或いはウェーハのパターンの形状等に関するデータに基づいてステージ装置50の動作を制御してウェーハのアライメントを行う。
【0150】
第6の実施例によれば、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)電子線を用いた写像投影方式の検査装置の全体構成が得られ、高いスループットで検査対象を処理することができる。
(ロ)ミニエンバイロメント空間内で検査対象に清浄気体を流して塵埃の付着を防止すると共に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら検査対象の検査を行うことができる。
(ハ)ローディングチャンバ及びワーキングチャンバを一体的に振動防止装置を介して支持したので外部の環境に影響されずにステージ装置への検査対象の供給及び検査を行うことができる。
(ニ)プレチャージユニットを設けているので、絶縁物でできたウェーハも帯電による影響を受けがたい。
(第7の実施例)
第7の実施例は、ステージの改善に関する。本実施例を説明する前に従来のステージを説明する。
【0151】
半導体ウェーハ等の試料表面等に電子ビーム等の荷電ビームを照射することによって、その試料表面上を半導体回路等のパターンで露光し若しくは試料表面上に形成されたパターンを検査する装置、或いは荷電ビームを照射することによって試料に対して超精密加工を施す装置においては、試料を真空中で精度良く位置決めするステージが使用されている。
【0152】
かかるステージに対して非常に高精度な位置決めが要求される場合には、ステージを静圧軸受けによって非接触支持する構造が採用されている。この場合、静圧軸受けから供給される高圧ガスが直接真空チャンバに排気されないように、高圧ガスを排気する差動排気機構を静圧軸受けの範囲に形成することによって、真空チャンバの真空度を維持している。
【0153】
かかる従来技術によるステージの一例が図29に示されている。同図の構造において、真空チャンバCを構成するハウジング8−7に、荷電ビームを発生し試料に照射する荷電ビーム装置の鏡筒1の先端部すなわち荷電ビーム照射部2−7が取り付けられている。鏡筒内部は真空配管10−7によって真空排気されており、チャンバCは真空配管11−7によって真空排気されている。そして、荷電ビームは鏡筒1−7の先端部2−7から、その下に置かれたウェーハ等の試料Sに対して照射される。
【0154】
試料Sは試料台4−7に公知の方法により取り外し可能に保持されており、試料台4−7はXYステージ(以下単にステージ)3−7のY方向可動部5−7の上面に取り付けられている。上記Y方向可動部5−7には、ステージ3−7のX方向可動部6−7のガイド面6a−7と向かい合う面(図29[A]において左右両面及び下面)に静圧軸受け9−7が複数取り付けられており、この静圧軸受け9−7の作用によりガイド面との間に微小隙間を維持しながらY方向(図29[B]で左右方向)に移動できる。さらに静圧軸受けの周りには、静圧軸受けに供給される高圧ガスが真空チャンバCの内部にリークしないように差動排気機構が設けられている。この様子を図30に示す。静圧軸受け9−7の周囲に二重に溝18−7と17−7が構成されており、これらの溝は図示されていない真空配管と真空ポンプにより常時真空排気されている。このような構造により、Y方向可動部5−7は真空中を非接触状態で支持されY方向に自在に移動することができるようになっている。これらの二重の溝18−7と17−7は可動部5−7の静圧軸受け9−7が設けられている面にその静圧軸受けを囲むようにして形成されている。なお、静圧軸受けの構造は公知のもので良いので、その詳細な説明は省略する。
【0155】
このY方向可動部5−7を搭載しているX方向可動部6−7は、図29からも明らかなように、上方に開口している凹形の形状を有していて、そのX方向可動部6−7にもまったく同様の静圧軸受け及び溝が設けられていて、ステージ台7−7に対して非接触で支持されており、X方向に自在に移動することができる。
【0156】
これらのY方向可動部5−7とX方向可動部6−7の移動を組み合わせることによって、試料Sを鏡筒の先端部すなわち荷電ビーム照射部2−7に関して水平方向任意の位置に移動させ、試料の所望の位置に荷電ビームを照射することができる。
【0157】
上記の静圧軸受けと差動排気機構を組み合わせたステージでは、ステージが移動する際に、静圧軸受け9−7に対向するガイド面6a−7や7a−7は、静圧軸受け部の高圧ガス雰囲気とチャンバ内の真空環境の間を往復運動する。この時ガイド面では、高圧ガス雰囲気に曝されている間にガスが吸着し、真空環境に露出されると吸着していたガスが放出されるという状態が繰り返される。このためステージが移動する度に、チャンバC内の真空度が悪化するという現象が起こり、上述した荷電ビームによる露光や検査や加工等の処理が安定に行えなかった、試料が汚染されてしまうという問題があった。
【0158】
以下図面を参照して、上記問題を解決するためなされた本発明の第7の実施例に係る電子線装置の実施例を説明する。なお、図29の従来例及び複数の実施例において共通する構成部材を示す参照番号は同じになっている。
【0159】
図31において、第7の実施例の第1の実施態様が示されている。
ステージ3のY方向可動部5−7の上面には+Y方向と−Y方向(図31[B]で左右方向)に大きくほぼ水平に張り出した仕切り板14−7が取り付けられ、X方向可動部6−7の上面との間に常にコンダクタンスが小さい絞り部50−7が構成されるようになっている。また、X方向可動部6−7の上面にも同様の仕切り板12−7が±X方向(図31[A]で左右方向)に張り出すように構成されており、ステージ台7−7の上面との間に常に絞り部51−7が形成されるようになっている。ステージ台7−7は、ハウジング8−7内において底壁の上に公知の方法で固定されている。
【0160】
このため、試料台4−7がどの位置に移動しても常に絞り部50−7と51−7が形成されるので、可動部5−7及び6−7の移動時にガイド面6a−7や7a−7からガスが放出されても、絞り部50−7と51−7によって放出ガスの移動が妨げられるため、荷電ビームが照射される試料近傍の空間24−7の圧力上昇を非常に小さく押さえることができる。
【0161】
ステージの可動部3−7の側面及び下面並びに可動部6−7の下面には、静圧軸受け9−7の周囲に、図30に示されるような差動排気用の溝が形成されていてこの溝によって真空排気されるため、絞り部50−7、51−7が形成されている場合は、ガイド面からの放出ガスはこれらの差動排気部によって主に排気されることになる。このため、ステージ内部の空間13−7や15−7の圧力は、チャンバC内の圧力よりも高い状態になっている。したがって、空間13−7や15−7を、差動排気溝17−7や18−7で排気するだけでなく、真空排気する箇所を別に設ければ空間13−7や15−7の圧力を下げることができ、試料近傍24−7の圧力上昇を更に小さくすることができる。このための真空排気通路11−1−7と11−2−7とが設けられている。排気通路はステージ台7−7及びハウジング8−7を貫通してハウジング8−7の外部に通じている。また、排気通路11−2−7はX方向可動部6−7に形成されX方向可動部6−7の下面に開口している。
【0162】
また、仕切り板12−7及び14−7を設置すると、チャンバCと仕切り板が干渉しないようにチャンバを大きくする必要が生じるが、仕切り板を伸縮可能な材料や構造にすることによってこの点を改善することが可能である。この実施例としては、仕切り板をゴムで構成したり蛇腹状にして、その移動方向の端部を、仕切り板14−7の場合はX方向可動部6−7に、仕切り板12−7の場合はハウジング8−7の内壁にそれぞれ固定する構成とすることが考えられる。
【0163】
図32において、第2の実施態様が示されている。
この実施態様では、鏡筒の先端部すなわち荷電ビーム照射部2の周囲に、試料Sの上面との間に絞り部ができるように円筒状の仕切り16−7が構成されている。このような構成では、XYステージからガスが放出されてチャンバC内の圧力が上昇しても、仕切りの内部24−7は仕切り16−7で仕切られており真空配管10−7で排気されているので、チャンバC内と仕切りの内部24−7との間に圧力差が生じ、仕切り内部の空間24−7の圧力上昇を低く抑えられる。仕切り16−7と試料面との隙間は、チャンバC内と照射部2−7周辺の圧力をどの程度に維持するかによって変わるが、凡そ数十μmないし数mm程度が適当である。なお、仕切り16−7内と真空配管とは公知の方法により連通されている。
【0164】
また、荷電ビーム照射装置では、試料Sに数kV程度の高電圧を印加することがあり、導電性の材料を試料の近傍に設置すると放電を起こす恐れがある。この場合には、仕切り16−7の材質をセラミックス等の絶縁物で構成すれば、試料Sと仕切り16−7との間で放電を起こすことがなくなる。
【0165】
なお、試料S(ウェーハ)の周囲に配置したリング部材4−1−7は試料台4−7に固定された板状の調整部品であり、ウェーハのような試料の端部に荷電ビームを照射する場合であっても、仕切り16−7の先端部全周に亘って微小隙間52−7が形成されるように、ウェーハと同一の高さに設定されている。これによって、試料Sのどの位置に荷電ビームが照射しても、仕切り16−7の先端部には常に一定の微小隙間52−7が形成され、鏡筒先端部周囲の空間24−7の圧力を安定に保つことができる。
【0166】
図33において、更に別の第3の実施態様が示されている。
鏡筒1−7の荷電ビーム照射部2−7の周囲に差動排気構造を内蔵した仕切り19−7が設けられている。仕切り19−7は円筒状の形状をしており、その内部に円周溝20−7が形成され、その円周溝からは上方に排気通路21−7が延びている。その排気通路は内部空間22−7を経由して真空配管23−7に繋がれている。仕切り19−7の下端は試料Sの上面との間に数十μmないし数mm程度の微小隙間を形成している。
【0167】
このような構成では、ステージの移動に伴ってステージからガスが放出されてチャンバC内の圧力が上昇し先端部すなわち荷電ビーム照射部2−7にガスが流入しようとしても、仕切り19−7が試料Sとの隙間を絞ってコンダクタンスを非常に小さくしているためガスは流入を邪魔され流入量は減少する。更に、流入したガスは、円周溝20−7から真空配管23−7へ排気されるため、荷電ビーム照射部2−7の周囲の空間24−7へ流入するガスはほとんどなくなり、荷電ビーム照射部2−7の圧力を所望の高真空のまま維持することができる。
【0168】
図34において、更に別の第4の実施態様が示されている。
チャンバCと荷電ビーム照射部2−7の周囲には仕切り26−7が設けられ、荷電ビーム照射部2−7をチャンバCから隔てている。この仕切り26−7は、銅やアルミニュウム等の熱伝導性の良い材料からなる支持部材29−7を介して冷凍機30−7に連結されており、−100℃ないし−200℃程度に冷却されている。部材27−7は冷却されている仕切り26−7と鏡筒の間の熱伝導を阻害するためのものであり、セラミックスや樹脂材等の熱伝導性の悪い材料から成っている。また、部材28−7はセラミックス等の非絶縁体から成り、仕切り26−7の下端に形成され試料Sと仕切り26−7が放電することを防ぐ役割を持っている。
【0169】
このような構成により、チャンバC内から荷電ビーム照射部に流入しようとするガス分子は、仕切り26−7で流入を阻害される上、流入しても仕切り26−7の表面に凍結捕集されてしまうため、荷電ビーム照射部24−7の圧力を低く保つことができる。
【0170】
なお、冷凍機としては、液体窒素による冷却や、He冷凍機、パルスチューブ式冷凍機等の様様な冷凍機が使用できる。
図35において、更に別の第5の実施態様が示されている。
【0171】
ステージ3−7の両可動部には、図31に示したのと同様に仕切り板12−7、14−7が設けられており、試料台4−7が任意の位置に移動しても、これらの仕切りによってステージ内の空間13−7とチャンバC内とが絞り50−7、51−7を介して仕切られる。更に、荷電ビーム照射部2−7の周りには図32に示したのと同様の仕切り16−7が形成されており、チャンバC内と荷電ビーム照射部2−7のある空間24−7が絞り52−7を介して仕切られている。このため、ステージ移動時、ステージに吸着しているガスが空間13−7に放出されてこの部分の圧力を上昇させても、チャンバCの圧力上昇は低く抑えられ、空間24−7の圧力上昇は更に低く抑えられる。これにより、荷電ビーム照射空間24−7の圧力を低い状態に保つことができる。また、仕切り16−7に示したように差動排気機構を内蔵した仕切り19−7としたり、図33に示したように冷凍機で冷却された仕切り26−7とすることによって、空間24−7を更に低い圧力で安定に維持することができるようになる。
【0172】
鏡筒1−7内に設けられる電子線装置は、必要に応じて任意の光学系、検出器を使用できる。例えば、図1等に示す写像投影型、図41等に示す走査型のいずれも適用可能である。
【0173】
第7の実施例によれば、適宜、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)ステージ装置が真空内で高精度な位置決め性能を発揮することができ、更に、荷電ビーム照射位置の圧力が上昇しにくい。すなわち、試料に対する荷電ビームによる処理を高精度に行うことができる。
(ロ)静圧軸受け支持部から放出されたガスが仕切りを通過して荷電ビーム照射領域側に通過することがほとんどできない。これによって荷電ビーム照射位置の真空度を更に安定させることができる。
(ハ)荷電ビーム照射領域側に放出ガスが通過することが困難になり、荷電ビーム照射領域の真空度を安定に保ち易くなる。
(ニ)真空チャンバ内が、荷電ビーム照射室、静圧軸受け室及びその中間室の3室に小さいコンダクタンスを介して分割された形になる。そして、それぞれの室の圧力を、低い順に荷電ビーム照射室、中間室、静圧軸受け室となるように真空排気系を構成する。中間室への圧力変動は仕切りによって更に低く抑えられ、荷電ビーム照射室への圧力変動は、もう一段の仕切りによって更に低減され、圧力変動を実質的に問題ないレベルまで低減することが可能となる。
(ホ)第1の実施態様によれば、ステージが移動した時の圧力上昇を低く抑えることが可能になる。
(ヘ)第2の実施態様によれば、ステージが移動した時の圧力上昇を更に低く抑えることが可能である。
(ト)第3の実施態様によれば、ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を実現することができるので、検査性能が高く、試料を汚染する恐れのない検査装置を提供することができる。
(チ)第4の実施態様によれば、ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を実現することができるので、露光精度が高く、試料を汚染する恐れのない露光装置を提供することができる。
(リ)第5の実施態様によれば、ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。
(第8の実施例)
第8の実施例は、ステージの改善に関する。本実施例を説明する前に従来のステージを説明する。
【0174】
第7の実施例と同様の従来技術によるステージの一例が図36に示されている。同図の構造において、真空チャンバCを構成するハウジング14′−8に、荷電ビームを発生し試料に照射する荷電ビーム装置の鏡筒1の先端部すなわち荷電ビーム照射部2−8が取り付けられている。鏡筒内部は真空配管18−8によって真空排気されており、チャンバCは真空配管19′−8によって真空排気されている。そして、荷電ビームは鏡筒1−8の先端部2−8から、その下に置かれたウェーハ等の試料Sに対して照射される。
【0175】
試料Sは試料台tに公知の方法により取り外し可能に保持されており、試料台tはXYステージ(以下単にステージ)3′−8のY方向可動部4′−8の上面に取り付けられている。上記Y方向可動部4′−8には、ステージ3−8のX方向可動部5′−8のガイド面5a′−8と向かい合う面(図36[A]において左右両面及び下面)に静圧軸受け9′−8が複数取り付けられており、この静圧軸受け9′−8の作用によりガイド面との間に微小隙間を維持しながらY方向(図36[B]で左右方向)に移動できる。さらに静圧軸受けの周りには、静圧軸受けに供給される高圧ガスが真空チャンバCの内部にリークしないように差動排気機構が設けられている。この様子を図37に示す。静圧軸受け9−8の周囲に二重に溝g1とg2が構成されており、これらの溝は図示されていない真空配管と真空ポンプにより常時真空排気されている。このような構造により、Y方向可動部4′−8は真空中を非接触状態で支持されY方向に自在に移動することができるようになっている。これらの二重の溝g1とg2は可動部4′−8の静圧軸受け9′−8が設けられている面にその静圧軸受けを囲むようにして形成されている。なお、静圧軸受けの構造は公知のもので良いので、その詳細な説明は省略する。
【0176】
このY方向可動部4′−8を搭載しているX方向可動部5′−8は、図36からも明らかなように、上方に開口している凹形の形状を有していて、そのX方向可動部5′−8にもまったく同様の静圧軸受け及び溝が設けられていて、ステージ台6′−8に対して非接触で支持されており、X方向に自在に移動することができる。
【0177】
これらのY方向可動部4′−8とX方向可動部5′−8の移動を組み合わせることによって、試料Sを鏡筒の先端部すなわち荷電ビーム照射部2−8に関して水平方向任意の位置に移動させ、試料の所望の位置に荷電ビームを照射することができる。
【0178】
上記の静圧軸受けと差動排気機構を組み合わせたステージでは、差動排気機構を設けたため、大気中で使用される静圧軸受け式ステージに比べて構造が複雑で大型になり、ステージとしての信頼性が低く、高コストになるという問題があった。
【0179】
以下図面を参照して、上記問題を解決するためなされた本発明の第8の実施例に係る電子線装置の実施形態を説明する。なお、図36の従来例及び実施形態において共通する構成部材を示す参照番号は同じになっている。なお、この明細書中で「真空」とは当該技術分野において呼ばれる真空であって、必ずしも絶対真空を指すものではない。
【0180】
図38において、第8の実施例の第1の実施態様が示されている。
荷電ビームを試料に向かって照射する鏡筒1−8の先端部すなわち荷電ビーム照射部2−8が真空チャンバCを画成するハウジング14−8に取り付けられている。鏡筒1−8の直下には、XYステージ3−8のX方向(図38において左右方向)の可動テーブル上に載置されている試料Sが配置されるようになっている。この試料Sは高精度なXYステージ3−8によって、その試料面上の任意の位置に対して正確に荷電ビームを照射させることができる。
【0181】
XYステージ3の台座6−8はハウジング14−8の底壁に固定され、Y方向(図38において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル5が台座6−8の上に載っている。Yテーブル5−8の両側面(図38において左右側面)には、台座6−8に載置された一対のY方向ガイド7a−8及び7b−8のYテーブルに面した側に形成された凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝はY方向ガイドのほぼ全長に亘ってY方向に伸びている。凹溝内に突出する突部の上、下面及び側面には公知の構造の静圧軸受け11a−8、9a−8、11b−8、9b−8、がそれぞれ設けられ、これらの静圧軸受けを介して高圧ガスを吹き出すことにより、Yテーブル5はY方向ガイド7a−8、7b−8に対して非接触で支持され、Y方向に円滑に往復運動できるようになっている。また、台座6−8とYテーブル5−8との間には、公知の構造のリニアモータ12−8が配置されており、Y方向の駆動をそのリニアモータで行うようになっている。Yテーブルには、高圧ガス供給用のフレキシブル配管22−8によって高圧ガスが供給され、Yテーブル内に形成されたガス通路(図示せず)を通じて上記静圧軸受け9a−8ないし11a−8及び9b−8ないし11b−8に対して高圧ガスが供給される。静圧軸受けに供給された高圧ガスは、Y方向ガイドの対向する案内面との間に形成された数ミクロンから数十ミクロンの隙間に噴出してYテーブルを案内面に対してX方向とZ方向(図38において上下方向)に正確に位置決めする役割を果たす。
【0182】
Yテーブル上にはXテーブル4−8がX方向(図38において左右方向)に移動可能に載置されている。Yテーブル5−8上にはYテーブル用のY方向ガイド7a−8、7b−8と同じ構造の一対のX方向ガイド8a−8、8b−8(8a−8のみ図示)がXテーブル4−8を間に挟んで設けられている。X方向ガイドのXテーブルに面した側にも凹溝が形成され、Xテーブルの側部(X方向ガイドに面した側部)には凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝はX方向ガイドのほぼ全長に亘って伸びている。凹溝内に突出するX方向テーブル4−8の突部の上、下面及び側面には前記静圧軸受け11a−8、9a−8、10a−8、11b−8、9b−8、10b−8と同様の静圧軸受け(図示せず)が同様の配置で設けられている。Yテーブル5−8とXテーブル4−8との間には、公知の構造のリニアモータ13−8が配置されており、XテーブルのX方向の駆動をそのリニアモータで行うようにしている。そして、Xテーブル4−8にはフレキシブル配管21−8によって高圧ガスが供給され、静圧軸受けに高圧ガスを供給するようになっている。この高圧ガスが静圧軸受けからX方向ガイドの案内面に対して噴出されることによって、Xテーブル4−8がY方向ガイドに対して高精度に非接触で支持されている。真空チャンバCは公知の構造の真空ポンプ等に接続された真空配管19−8、20a−8、20b−8によって排気されている。配管20a−8、20b−8の入口側(真空チャンバ内側)は台座6−8を貫通してその上面において、XYステージ3−8から高圧ガスが排出される位置の近くで開口しており、真空チャンバ内の圧力が静圧軸受けから噴出される高圧ガスにより上昇するのを極力防止している。
【0183】
鏡筒1−8の先端部すなわち荷電ビーム照射部2−8の周囲には、差動排気機構25−8が設けられ、真空チャンバC内の圧力が高くても荷電ビーム照射空間30−8の圧力が十分低くなるようにしてある。すなわち、荷電ビーム照射部2−8周囲に取り付けられた差動排気機構25−8の環状部材26−8は、その下面(試料S側の面)と試料との間で微少隙間(数ミクロンから数百ミクロン)40−8が形成されるように、ハウジング14−8に対して位置決めされており、その下面には環状溝27−8が形成されている。環状溝27−8は排気管28−8により図示しない真空ポンプ等に接続されている。したがって、微少隙間40−8は環状溝27−8及び排気口28−8を介して排気され、真空チャンバCから環状部材26−8によって囲まれた空間30−8内にガス分子が侵入しようとしても、排気されてしまう。これにより、荷電ビーム照射空間30−8内の圧力を低く保つことができ、荷電ビームを問題なく照射することができる。
【0184】
この環状溝は、チャンバ内の圧力、荷電ビーム照射空間30−8内の圧力によっては、二重構造或いは三重構造にしてもよい。
静圧軸受けに供給する高圧ガスは、一般にドライ窒素が使用される。しかしながら、可能ならば、更に高純度の不活性ガスにすることが好ましい。これは、水分や油分等の不純物がガス中に含まれると、これらの不純物分子が真空チャンバを画成するハウジングの内面やステージ構成部品の表面に付着して真空度を悪化させたり、試料表面に付着して荷電ビーム照射空間の真空度を悪化させてしまうからである。
【0185】
なお、以上の説明において、試料Sは通常Xテーブル上に直接載置されるのでなく、試料を取り外し可能に保持したりXYステージ3−8に対して微少な位置変更を行うなどの機能を持たせた試料台の上に載置されているが、試料台の有無及びその構造は本願発明の要旨には関係ないので、説明を簡素化するために省略されている。
【0186】
以上に説明した荷電ビーム装置では、大気中で用いられる静圧軸受けのステージ機構をほぼそのまま使用できるので、露光装置等で用いられる大気用の高精度ステージと同等の高精度のXYステージを、ほぼ同等のコスト及び大きさで荷電ビーム装置用のXYステージに対して実現できる。
【0187】
なお、以上説明した静圧ガイドの構造や配置及びアクチュエータ(リニアモータ)はあくまでも一実施例であり、大気中で使用可能な静圧ガイドやアクチュエータならば何でも適用できる。
【0188】
次に差動排気機構の環状部材26−8及びそれに形成される環状溝の大きさの数値例を図39に示す。なお、この例では環状溝は27a−8及び27b−8の二重構造を有しており、それらは半径方向に隔てられている。
【0189】
静圧軸受けに供給される高圧ガスの流量は、通常おおよそ20L/min(大気圧換算)程度である。真空チャンバCを、内径50mmで長さ2mの真空配管を介して20000L/minの排気速度を有するドライポンプで排気すると仮定すると、真空チャンバ内の圧力は、約160Pa(約1.2Torr)となる。この時、差動排気機構の環状部材26−8及び環状溝等の寸法を、図39に示されるようにすれば、荷電ビーム照射空間30−8内の圧力を10-4Pa(10-6Torr)にすることができる。
【0190】
なお、差動排気機構は、荷電ビーム照射空間30−8内の圧力を所定圧力に維持できるならば、その形状も本実施形態のような同心円状に限らず、矩形や多角形でもよい。更に、全周ではなく、周囲の一部に設けられてもよい。
【0191】
図40において、第8実施例の第2の態様が示されている。ハウジング14−8によって画成された真空チャンバCには、真空配管74−8、75−8を介してドライ真空ポンプ53−8が接続されている。また、差動排気機構25−8の環状溝27−8は排気口28−8に接続された真空配管70−8を介して超高真空ポンプであるターボ分子ポンプ51−8が接続されている。更に、鏡筒1−8の内部は、排気口18−8に接続された真空配管71−8を介して、ターボ分子ポンプ52−8が接続されている。これらのターボ分子ポンプ51−8、52−8は、真空配管72−8、73−8によってドライ真空ポンプ53−8に接続されている。(本図では、ターボ分子ポンプの粗引きポンプと真空チャンバの真空排気用ポンプを1台のドライ真空ポンプで兼用したが、XYステージの静圧軸受けに供給する高圧ガスの流量、真空チャンバの容積や内表面積、真空配管の内径や長さに応じて、それらを別系統のドライ真空ポンプで排気する場合も考えられる。)
XYステージ3−8の静圧軸受けには、フレキシブル配管21−8、22−8を通して高純度の不活性ガス(Nガス、Arガス等)が供給される。静圧軸受けから噴出したこれらのガス分子は真空チャンバ内に拡散し、排気口19−8、20a−8、20b−8を通してドライ真空ポンプ53−8によって排気される。また、差動排気機構や荷電ビーム照射空間に侵入したこれらのガス分子は環状溝27−8或いは鏡筒1−8の先端部から吸引され、排気口28−8及び18−8を通ってターボ分子ポンプ51−8及び52−8によって排気され、ターボ分子ポンプから排出された後ドライ真空ポンプ53−8によって排気される。
【0192】
このように、静圧軸受けに供給された高純度不活性ガスはドライ真空ポンプに集められて排出される。
一方、ドライ真空ポンプ53−8の排気口は、配管76−8を介して圧縮機54−8に接続され、圧縮機54−8の排気口は配管77−8、78−8、79−8及びレギュレータ61−8、62−8を介してフレキシブル配管21−8、22−8に接続されている。このため、ドライ真空ポンプ53−8から排出された高純度不活性ガスは、圧縮機54−8によって再び加圧されレギュレータ61−8、62−8で適正な圧力に調整された後、再びXYテーブルの静圧軸受けに供給される。
【0193】
なお、静圧軸受けに供給されるガスは上述したようにできるだけ高純度にし、水分や油分が極力含まれないようにする必要があるため、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ及び圧縮機は、ガス流路に水分や油分が混入しないような構造であることが求められる。また、圧縮機の排出側配管77の途中にコールドトラップやフィルタ等(60−8)を設け、循環するガス中に混入した水分や油分等の不純物質をトラップして静圧軸受けに供給されないようにすることも有効である。
【0194】
こうすることによって、高純度不活性ガスを循環させて再利用できるので、高純度不活性ガスを節約でき、また、本装置が設置された部屋に不活性ガスをたれ流さないので、不活性ガスによる窒息等の事故が発生する恐れもなくすことができる。
【0195】
なお、循環配管系には高純度不活性ガス供給系63−8が接続されており、ガスの循環を始める際に、真空チャンバCや真空配管70−8〜75−8及び加圧側配管76−8〜80−8を含む全ての循環系に高純度不活性ガスを満たす役割と、何らかの原因で循環するガスの流量が減少した際に不足分を供給する役割とを担っている。
【0196】
また、ドライ真空ポンプ53−8に大気圧以上まで圧縮する機能を持たせることによって、ドライ真空ポンプ53−8と圧縮機54−8を1台のポンプで兼ねさせることも可能である。
【0197】
更に、鏡筒の排気に用いる超高真空ポンプには、ターボ分子ポンプの代わりにイオンポンプやゲッタポンプ等のポンプを使用することも可能である。ただし、これらの溜込み式ポンプを用いた場合は、この部分には循環配管系を構築することはできないことになる。また、ドライ真空ポンプの代わりに、ダイヤフラム式ドライポンプ等、他方式のドライポンプを使用することももちろん可能である。
【0198】
鏡筒1−8内に設けられる電子線装置は、必要に応じて任意の光学系、検出器を使用できる。例えば、図1等に示す写像投影型、図41等に示す走査型のいずれも適用可能である。
【0199】
第8の実施例によれば、適宜、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)大気中で一般に用いられる静圧軸受け式のステージと同様の構造を持ったステージ(差動排気機構を持たない静圧軸受け支持のステージ)を使用して、ステージ上の試料に対して荷電ビームによる処理を安定に行うことができる。
(ロ)荷電ビーム照射領域の真空度に対する影響を最小限に抑えることが可能になり、荷電ビームによる試料への処理を安定化させることができる。
(ハ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を安価に提供することができる。
(ニ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を安価に提供することができる。
(ホ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ荷電ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。
(第9実施例)
図1の欠陥検査システムは、走査型の電子線装置に置き換えることができる。そのような走査型電子線装置に関する、本発明の第9実施例の構成と動作とを、図41を用いて説明する。同図において、電子銃1−9はウェーネルト31−9とカソード32−9とを備え、直径が10ミクロン程度の、クロスオーバーを有する一次電子線を放出する。こうして放出された一次電子線は、軸合わせ用偏向器33−9,34−9を経てコンデンサ・レンズ2−9を通過し、コンデンサ・レンズ2−9によって集束され、偏向器12−9およびウィーン・フィルタ8−9を通過した後、対物レンズ9−9によって縮小されて100nm以下のプローブを形成する。そして、ステージS−9上に載置された試料10−9の表面に形成された、例えば矩形の複数の回路パターンの一つの上に結像される。試料10−9は、偏向器12−9および40−9を用いて一次電子線による走査が行われる。
【0200】
一次電子線による走査の結果、試料10−9上のパターンから放出された二次電子線は、対物レンズ9−9の電界によって引かれて加速され、ウィーン・フィルタ8−9によって光軸Lから逸れるように偏向されて一次電子線から分離される。こうして二次電子線は二次電子線検出部41−9によって検出される。二次電子検出部41−9は、入射した二次電子線の強度を表す電気信号を出力する。この二次電子検出部41−9から出力された電気信号は、その対応の増幅器(図示せず)によって増幅された後、画像処理部42−9に入力される。
【0201】
図41に示すように、電子銃1−9,軸合わせ用偏向器33−9,34−9、コンデンサ・レンズ2−9、偏向器12−9、ウィーン・フィルタ8−9、対物レンズ9−9および二次電子検出部41−9は、試料10−9の所与の範囲に対応する径の鏡筒43−9内に収納されて、一つの電子線走査・検出系44−9が構成され、一つの電子線走査・検出系44−9によって、試料10−9上の回路パターンが走査される。実際には、試料10−9の表面には複数のダイが形成されている。電子線走査・検出系44−9と同様の構成の電子線走査・検出系(図示せず)が、鏡筒43−9と並列する形で、試料10−9上の異なるダイの同じ場所を走査するよう配置される。
【0202】
電子線走査・検出系44−9について既に説明したとおり、それぞれの電子線走査・検出系内の二次電子検出系から出力された電気信号は、画像処理部42−9に入射される。そこで、画像処理部42−9は、それぞれの検出系から入力された電気信号を2値化情報に変換し、この2値化情報を、電子線走査信号を参照して画像データに変換する。これを実現するため、静電偏向器12−9に与えられた信号波形が画像処理部42−9に供給される。試料10−9の表面に形成されたダイ毎に得られた画像データは、適宜の記憶手段に蓄積されると共に、基準のダイパターンと比較される。これにより、試料10−9の表面上に形成された複数のダイパターンの一つひとつについて欠陥を検出することができる。
【0203】
なお、図41に示す実施の形態においては、試料10−9上の或るダイパターンを表す画像データとの比較のために画像処理部42−9が使用する基準の回路パターンとしては、種々のものを使用することができ、例えば、その画像データを生じる走査が行われたダイパターンのCADデータから得られた画像データを用いることができる。
【0204】
ウィーン・フィルタ8−9は静電偏向器39−9とその周囲を取り巻くよう設置された電磁偏向器40−9とを備えている。この電磁偏向器40−9として、例えば、白金合金を用いた永久磁石を電磁コイルの代わりに使用することが望ましい。これは、真空中で電流を流すことが適切でないからである。また、偏向器12−9は一次電子線の方向を対物レンズ9−9の軸と一致させるための軸合わせ装置を兼用する。
【0205】
電子線装置・検出系44−9において、コンデンサ・レンズ2−9と対物レンズ9−9を作製するには、まず、セラミックスを図41に示す断面形状を有するよう高精度加工し、加工済みのセラミックスの表面に選択的に金属をコーティングして上部電極35−9、中央電極36−9および下部電極37−9を形成する。上部電極35−9にはアースに近い電圧が与えられ、中央電極36−9には、金属の電流導入端子38−9から正または負の、絶対値の大きい電圧が印加され、これにより、レンズ作用が得られる。
【0206】
このように、コンデンサ・レンズ2−9および対物レンズ9−9をセラミックスの削り出しで作製するため、これらのレンズを高精度に加工することが可能であり、外径寸法を小さくすることができる。したがって、例えば、コンデンサ・レンズ2−9および対物レンズ9−9の外径を直径20mm以下にすると、直径200mmのウェーハの直径140mmの範囲を検査する場合には、6個の電子線走査・検出系を配置することができ、6倍のスループットを得ることができる。
【0207】
以下に本発明による電子線装置の実施の形態における特徴部分を説明する。対物レンズ9−9は、静電レンズとされ、該レンズのいずれかの電極には正の高電圧が印加されている。一方、試料ウェーハ10−9には負の高電圧が電圧源20−9によって印加されている。これにより、対物レンズ9−9と試料ウェーハ10−9との間には、減速電界が形成される。
【0208】
ウェーハ10−9がビア付きウェーハである場合、ビアに一次電子線が入射すると、ビアはタングステン等の高原子番号金属でできているので、多量の二次電子を放出することになる。また、ビアの近傍は、減速電界のため局部的にさらに大きい電界が生じている。これらの理由で、ビア付きのウェーハは放電が非常に起こりやすい状況にある。
【0209】
しかしながら、このような条件がそろっても、直ちに放電が起こるわけではない。まず、電界の大きい部分の残留気体が局所的に発光する、コロナ放電が起こり、次いで火花放電という過渡状態を経てアーク放電に移行する。本明細書では、このコロナ放電の時期から火花放電の始めにかけてを「放電の前駆現象」と呼ぶ。
【0210】
この放電の前駆現象の時期で、ビーム電流を下げて一次電子線を一定量以下にするか、または、対物レンズ9−9と試料ウェーハ10−9との間の減速電界電圧を下げることにより、あるいは、これら双方の処置を行うことにより、アーク放電に至ることは避けられ、ウェーハの破壊も防止できることが判明した。
【0211】
また、放電を起こしやすいウェーハと起こしにくいウェーハとでは、どの程度の減速電界電圧および一次電子線量ならば放電を起こさないかが異なるため、これらの値を低レベルで固定することなく、それぞれのウェーハについて放電を起こさないための限界値を知ることが望ましい。
【0212】
図41に示す本発明の電子線装置においては、試料ウェーハ10−9と対物レンズ9−9との間の放電あるいは放電の前駆現象を検出して信号を発生するための検出器として、PMT19−9および試料電流計21−9が設けられている。PMT19−9はコロナ放電およびアーク放電の発光を検出し、試料電流計21−9はコロナ放電時およびアーク放電時の異常な電流を検出することができる。
【0213】
放電前駆現象時に、PMT19−9がコロナ放電の発光を検出するか、試料電流計21−9が異常な電流を検出すると、これらの情報はCPU22−9に入力される。このときの減速電界の電圧および電子銃1−9のビーム電流値(一次電子線量に対応)が、放電を起こさない条件を判断する基礎データとなる。CPU22−9は、発光または異常電流あるいはこれらの双方を示す入力に応答して、放電が生じないよう、減速電界の電圧20−9を下げるか、電子銃1−9にフィードバック信号を送ってビーム電流を下げて一次電子線を一定量以下にするなどの制御を行う。CPU22−9は、これらの制御の双方を行ってもよい。
【0214】
PMT19−9および試料電流計21−9は、双方が使用されることが好ましいが、その一方を省略することもできる。
図42は、一枚のウェーハ上におけるデバイスの配置を示す。円形ウェーハ50−9から複数の長方形チップ51−9を取るのであるが、符号52−9、53−9で示すように、完全な1チップ分に満たない欠損チップが周辺の領域に存在する。これらの欠損チップ領域についてもまた、通常のリソグラフィを行い、各種プロセスも完全チップ51−9の領域と同様の処理が行われる。一方、これらの欠損チップは、製品として用いられることはないので、この一部領域が破壊されても問題はない。そこで、これらの欠損チップの領域を用いて、放電の前駆現象を検出するだけにとどまらず、破壊をおそれずに放電現象の検出まで行うようにすれば、放電を起さない条件をより正確に判断することができる。この場合、PMT19−9はアーク放電の発光を検出し、試料電流計21−9はアーク放電時の異常電流を検出してCPU22−9に信号を送ることになる。また、CPU22−9は、放電を生じない限界値としての減速電界の電圧値およびビーム電流値(一次電子線量に対応)を正確に指示することができる。
【0215】
第9実施例の電子線装置によれば、放電しやすいウェーハ、しにくいウェーハのそれぞれについて、放電しない条件を個々に判断することができる。
また、ウェーハの周辺における欠損(不完全)チップの領域を利用して放電現象の検出まで行えば、放電を起こさない限界条件を正確に知ることができる。また、正常な(完全な)チップの領域を利用した場合でも、放電前駆現象の検出にとどめれば、正常なチップを破損することなく、放電を起こさない条件を有効程度に知ることができる。いずれにしろ、正常なチップを破壊することがないので、高スループットの条件で、すなわち二次電子検出効率の良い条件でウェーハの評価作業を行うことができる。マルチビームを用いればさらに高スループットとなる。
(第10実施例)
以下、本発明の第10実施例に係る走査型電子線装置の実施例について図面を参照しながら説明する。図43は、本発明の第10実施例に係る電子線装置を概略的に示す。図43に示すように、電子線装置は、構成が同じ複数の電子光学鏡筒60−10(図示の例では8個)を試料43−10上に並設して構成されている。このうちの一つの電子光学鏡筒6−10は、電子銃20−10と、一次電子線の軸合わせを行うための軸合わせ電極24−10,25−10と、コンデンサレンズ61−10と、一次電子ビーム走査用の静電偏向器27−10と、電磁偏向器29−10と静電偏向器30−10とから構成されたE×B分離器62−10と、対物レンズ41−10と、電位コントラスト測定用の軸対称電極42−10と、一次電子線から分離された二次電子線が結像され、二次電子線の検出信号を検出する検出手段としての検出器28−10とを有している。
【0216】
電子銃20−10は、ショットキーシールド21−10とTFEカソード22−10とアノード23−10とで構成され、一次電子線を放出するためのものである。電子銃20−10から放出された一次電子線は、軸合わせ電極24−10,25−10によってコンデンサレンズ61−10に対して軸合わせが行われ、コンデンサレンズ61−10によって集束される。コンデンサレンズ61−10によって集束された一次電子線は、対物レンズ41−10によって試料43−10に結像される。これと同時に、静電偏向器27−10とE×B分離器62−10の電磁偏向器29−10とで、試料43−10の面上を走査するように偏向される。電磁偏向器29−10による偏向角は、静電偏向器27−10の偏向角の略二倍になるように設定されているため、偏向色収差は、ほとんど生じない。
【0217】
試料43−10上の走査点から放出された二次電子線は、対物レンズ41−10の中央電極に印加された正の高電圧で引かれて加速され、E×B分離器62−10によって一次光学系から分離され、二次光学系に投入されて、検出器28−10に結像される。
【0218】
検出器28−10は、結像された二次電子線を、その強度を表す電気信号(二次電子線の検出信号)として、ローパスフィルター(LPF)2−10に出力する。より具体的に説明すると、検出器28−10から出力された電気信号は、まず、増幅器1−10によって増幅され、その後、ローパスフィルター(LPF)2−10に出力される。ローパスフィルター2−10は、通過帯域の周波数の電気信号のみを通過させるものであり、ローパスフィルター2−10を通過した電気信号は、A/D変換器3−10によってアナログ信号からデジタル信号に変換されて、画像形成装置4−10に送信される。また、画像形成装置4−10には、偏向器制御電源5−10から静電偏向器27−10及び電磁偏向器29−10に与えられた一次電子線を偏向させるための走査信号がさらに供給される。画像形成装置4−10は、走査信号と電気信号とから画像データを合成して、試料43−10の被走査面を表す画像を構成ないしは表示することができる。この画像データを、欠陥の存在しない試料の基準画像データと比較することにより、試料43−10の欠陥を検出することができる。
【0219】
次に、本発明の特徴部分であるローパスフィルター2−10について説明する。ローパスフィルター2−10は、上述の通り、通過帯域の周波数の電気信号のみを通過させるものである。図44(A)には、試料上のパターンを示している。このパターンは、エッチングによって0.5μm掘られた部分31−10と、エッチングされていない部分32−10とが交互に形成されていて、エッチングされていない部分32−10は、エッチングされた部分31−10よりも0.5μm高くなっている。
【0220】
図44(B)及び(C)は、画像形成装置4−10によって受信された上記電気信号(二次電子線の検出信号)の波形を示しており、図44(B)は、検出器28−10から出力された電気信号がローパスフィルター2−10を通過させずに画像形成装置4−10に受信された場合の信号波形を示し、一方、図44(C)は、検出器28−10から出力された電気信号がローパスフィルター2−10を通過して画像形成装置4−10に受信された場合の信号波形を示している。なお、ピクセル周波数は10MHzとし、増幅器1−10は、周波数を100MHzまで通している。また、ローパスフィルター2−10は、3db信号が落ちる周波数が20MHz、12db/オクターブの周波数特性を有しているものである。
【0221】
図44(B)に示す信号波形は、符号33−10で示すように、パターンのエッジ部分で電気信号の強度が大きくなっているのがわかる。また、符号34−10で示すように、パターンの溝の端部では電気信号の強度が小さいのがわかる。一方、図44(C)に示す信号波形は、符号35−10で示すように、パターンのエッジ部分では図44(B)に示すものに比べて電気信号の強度が小さくなっているのがわかる。また、符号36−10で示すように、パターンの溝の端部では図44(B)に示すものに比べて窪みが小さくなっているのがわかる。
【0222】
このように、検出器28−10から出力された電気信号を、ローパスフィルター2−10を通過させて画像形成装置4−10に受信させることにより、パターンのエッジ部分等の、二次電子放出率の高い部分における電気信号の強度を小さくすることができる。従って、二次電子放出率の高い部分における電気信号が、欠陥によって発生した信号等をマスキングするのを防止し、欠陥検出率を向上させることができる。
【0223】
また、アルミパターンの場合には、エッジ部分の電気信号の強度はそれ程大きくならないため、このような場合には、高周波数信号を画像形成装置4−10に受信させた方が忠実なパターン画像を得ることができる。従って、上記ローパスフィルター2−10を、遮断周波数を可変することができるようにしておけば、あらゆるパターンの画像データを良好に検出することができ、より検査率を向上させることができる。
【0224】
また、上記実施例では、ローパスフィルター2−10は、増幅器1−10とA/D変換器3−10との間に設けられているが、検出器28−10と増幅器1−10との間に設けてもよいし、あるいは、A/D変換器3−10と画像形成装置4−10との間に設けてもよい。
【0225】
また、ショット雑音in2は、in2=2eIBで表すことができ、信号の帯域Bを小さくすれば、雑音が小さくなり、S/N比の大きい信号を得ることができる。ここで、eは電子の電荷、Iは電流を示す。
【0226】
また、図43に示すように、コンデンサレンズ61−10は、一体の絶縁材料としてのセラミックを加工して複数の電極を形成し、その表面に選択的に金属コーティングを施すことによって形成されたレンズである。コンデンサレンズ61−10の複数の電極は、上部電極44−10、中央電極45−10、及び下部電極46−10で構成されており、コンデンサレンズ61−10は、リード線取付金具47−10を介して電圧が印加される。また、対物レンズ41−10も、コンデンサレンズ61−10と同様に、一体の絶縁材料としてのセラミックを加工して複数の電極を形成し、その表面に選択的に金属コーティングを施すことによって形成されたレンズである。このように、加工されたコンデンサレンズ61−10及び対物レンズ41−10は、外径の小さいレンズにすることができるため、電子光学鏡筒6−10の外径を小さくすることができ、一枚の試料43−10上に数多くの電子光学鏡筒6−10を並設させることができる。
【0227】
第10実施例によれば、一次電子線を試料に結像し、上記試料から放出された二次電子線を検出手段に結像するよう構成された電子光学鏡筒を、複数並設してなる電子線装置において、ローパスフィルターを備え、上記検出手段は、二次電子線の検出信号を上記ローパスフィルターに出力するため、二次電子放出率が高く且つ狭い幅のパルス状の波形を示す検出信号の信号強度を小さくし、欠陥検出率を向上させることができる。
(第11実施例)
まず、図45を参照して、本発明の第11の実施例に係る半導体デバイスのウェーハの加工状態を評価する評価装置を説明する。
【0228】
図45において、1−11は電子ビームを放出する電子銃、2−11はカソード、3−11はアノード、4−11、5−11、27−11は偏向器、26−11はコンデンサレンズ、29−11及び30−11はそれぞれ偏向器であり、E×B分離器を構成している。31−11は対物レンズ、33−11は検査試料であるウェーハ、28−11は電子ビーム検出器である。また、12−11は画像形成装置、13−11は走査制御装置であり、走査制御装置13−11は、電子ビームを走査するための走査信号を偏向器27−11及び29−11に供給するためのものである。
【0229】
図45の評価装置において、電子銃1−11から放出された電子ビームは、コンデンサレンズ26−11及び対物レンズ31−11によって、ウェーハ33−11の表面に結像され、また、偏向器27−11及び29−11によって、ウェーハ33−11の面を走査される。ウェーハ33−11を保持したステージ(不図示)を固定した状態で、偏向器27−11及び29−11は走査制御回路13−11により制御され、その一方が電子ビームをX軸方向に、他方が電子ビームをY軸方向に走査させる。これにより、ウェーハ33−11を固定した状態で、ウェーハ表面がラスタスキャンされ、ウェーハ33−11表面の所定エリア内のすべての点に電子ビーム・スポットが結像される。
【0230】
このとき、1回のラスタスキャンによって電子ビームがウェーハの予め設定した検査領域全体が走査されない場合、ウェーハ33−11を搭載したステージがX軸方向及び/又はY軸方向にステップ移動され、前回走査されたエリアに隣接するエリアが、同様にして走査される。
【0231】
ウェーハ33−11上に電子ビームが結像されることによって放出された2次電子ビームは、E×B分離器すなわち偏向器29−11、30−11によって偏向され、2次電子ビーム検出器28−11によって電気信号に変換され、検出出力信号として画像形成装置12−11に供給される。
【0232】
コンデンサレンズ26−11は、一体のセラミックス製の円筒から、図45に示したように断面が軸対称形状でかつ3つのアームを有するように削り出され、これらアーム表面に選択的に金属をコーティングすることにより、上部電極34−11、中央電極35−11、及び下部電極36−11が形成されている。中央電極35−11は、電流導入端子37−11より給電され、上部電極34−11及び下部電極36−11はそれぞれ、コンデンサレンズ26−11の外周部にコーティングされた金属部分を給電端子として給電される。コンデンサレンズ26−11を、このように一体形成された軸対称レンズにより構成することにより、外形寸法を小型化することができ、その直径を約40mmにすることができた。
【0233】
対物レンズ31−11も、コンデンサレンズ26−11とほぼ同様な構造及び寸法に形成されている。
画像形成装置12−11には、走査制御装置13−11からの走査信号も供給されており、検出器出力信号は、走査信号に対応づけられピクセル位置の信号として、画像データ記憶装置(不図示)に格納される。これにより、ウェーハ33−11の表面画像が画像形成装置12−11により形成される。
【0234】
このようにして形成されたウェーハ表面の画像は、一致/不一致検出装置(不図示)において、予め格納されている標準のすなわち無欠陥の画像パターンとピクセル毎に対比され、不一致のピクセルが検出された場合に、ウェーハに欠陥があると認定している。あるウェーハの評価結果が大多数のウェーハの評価結果と相違している場合、該ウェーハ欠陥があると判定してもよい。また、ウェーハ表面の画像をモニタ・スクリーンに表示し、経験を積んだオペレータ等が画像を監視してウェーハ表面の欠陥を検査してもよい。
【0235】
さらに、ウェーハ上に形成された配線パターン及び電極パターン等の線幅を測定する場合、評価すべきパターン部分を光軸上又はその間近に移動させ、該部分をライン・スキャンすることによって線幅評価用の電気信号を取り出し、必要に応じて較正を行うことによって、線幅を検出する。
【0236】
このような構成を有する評価装置において、本発明においては、加工装置によって加工されたウェーハ表面を検査するために、評価装置を加工装置の近傍に配置し、しかも、評価装置全体の動作を制御装置(不図示)によって、該加工装置の1枚当たりの加工時間にぼほ等しい検査時間となるように、ウェーハ表面の所定の1つ又は複数のエリアからなる領域のみを検査するよう制御する。この制御においては、まず、評価装置にウェーハを固定し、評価装置の制御装置にウェーハの必要最小の評価項目とウェーハ1枚当たりの加工所要時間とを入力する。評価項目は、例えば、加工装置がリソグラフィ装置であれば、最小線幅のバラツキであり、加工装置がエッチング装置であれば、欠陥検査である。次いで、制御装置は、入力された評価項目と入力された加工所要時間に基づいて、ウェーハ1枚当たりの加工状態評価時間が加工所要時間以内又はほぼ等しくなるように、ウェーハの評価面積を決定する。
【0237】
所定の領域のみを検査するため、ウェーハ33−11を評価装置中で移動させる範囲が少なくなるので、ウェーハ表面全体を検査する場合と対比して、評価装置の床面積を小さくすることができる。また、評価時間と加工時間をほぼ一致させているため、評価装置のスループットが加工装置のスループットとほぼ一致するので、欠陥が発見された場合等において、欠陥状態に対応して加工装置の動作異常等を発見することが容易となる。
【0238】
本発明の第11実施例に係る評価装置の第2の態様を説明する。この第2の態様においては、図45に示した第1の態様の評価装置を1ユニットの鏡筒とし、図46に示したように、鏡筒を8個、4x2(X軸方向に4個、Y軸方向に2個)のアレイ状に複数配置することによって、評価装置を構成している。
【0239】
第1の態様に関連して説明したように、コンデンサレンズ26−11及び対物レンズ31−11を約40mmに小型化した結果、鏡筒の外形直径を約42mmとすることができた。したがって、42mm直径の鏡筒を用いると、8インチ(約203mm)のウェーハ上に、図46に示したように、鏡筒をX軸方向に4本密接配列することができ、その全長が189mm(147mm+42mm)となる。また、図46に示すように、Y軸方向にも鏡筒を密接配置して4x2配置とすることにより、ウェーハ表面を8個の電子ビームで同時にラスタスキャンすることができる。
【0240】
なお、複数の鏡筒の配置関係及び個数は、図46に示したものに限定されず、MxN配列(M、Nは任意の正の整数)を採用することができることは勿論である。その場合、光軸のX方向間隔が等しくなるよう配置する必要がある。
【0241】
複数の鏡筒を用いた第2の態様においても、第1の態様の場合と同様に、評価装置は加工装置の近傍に配置され、しかも、制御装置(不図示)によって、該加工装置の1枚当たりの加工時間にぼほ等しい検査時間となるように、制御される。この場合、複数の鏡筒を用いたことにより検査時間を短くすることができので、加工時間によっては、ウェーハ表面全体を検査領域としてもよい。また、何枚かのウェーハは表面全体を検査するが、他のウェーハは検査を省略してもよい。要は、1枚当たり又は1ロット当たりの加工時間と検査時間とがほぼ一致するように、設定すればよい。
【0242】
第2の態様の場合も、ウェーハ載置用のステージを移動させる範囲が少なくなり、評価装置の床面積を小さくすることができる。また、評価装置のスループットが加工装置のスループットとほぼ一致するので、欠陥が発見された場合等において、加工装置の動作異常等を発見することが容易となる。
【0243】
また、加工時間が特に短い加工装置での加工状態を評価するには、2枚に1枚、あるいは3枚に1枚等のように、抜き取り検査を行うことにより、1ロット当たりの評価時間を加工装置の加工時間とほぼ一致させればよい。
【0244】
第11の実施例は、以上のように構成されているので、半導体デバイスのウェーハの評価装置を小型化することができるとともに、該評価装置のスループットをウェーハの加工装置のスループットと整合させることができる。これにより、欠陥を有するウェーハが検出された時点で、リアルタイムで加工装置の動作をチェックすることができるので、欠陥を有するウェーハを不要に製造しつづける恐れが低減する。
(第12実施例)
図面を参照し本発明の第12の実施例を説明する。図47は、MTF、(MTF)2、IP、(MTF)4PとD/dの関係を示すグラフであり、図48は、本発明の第12の実施例に係る走査型電子線装置の光学系の概略構成を示すブロック図である。図48に示すように、電子銃20−12は、ウエーネルト21−12の内部に配置されるTFEカソード22−12、ウエーネルト21−12の外部に配置されるアノード23−12を備え、電子線がTFEカソード22−12からアノード23−12に向けて放出され、アノード23−12を通過した電子線は、軸合せ偏向器24−12、25−12でコンデンサレンズ34−12、35−12、36−12の中心を通るように軸合せされる。
【0245】
コンデンサレンズ34−12、35−12、36−12で集束された電子線は、E×B分離器30−12の偏向中心にクロスオーバを作り、更に対物レンズ31−12で試料33−12に合焦される。コンデンサレンズの下方に配置される静電偏向器27−12及びE×B分離器30−12に重ねて配置される電磁偏向器29−12により電子線が試料33−12の表面を走査する。試料33−12の走査点から放出された2次電子が対物レンズ31−12の作る電界により加速され細く集束され対物レンズ31−12を通過する。集束された2次電子は、対物レンズ31−12の直上に配置されるE×B分離器30−12により1次電子線から離れる点線の方向へ偏向され2次電子検出器28−12で検出され、画像信号とされる。
【0246】
図48の電子線装置において、試料の欠陥検査は、電子線により試料33−12の表面の200μm幅をx方向(図48において紙面に垂直方向)に走査しながらステージ38−12をy方向へ連続移動させて行われる。試料のy方向の端まで200μm幅(一定の領域)の欠陥検査が終了すると、ステージ38−12をx方向へ201μmだけ移動させ、隣のストライプ(隣接する領域)を検査する。一定の領域の幅より1μmだけ多く移動させるため1μmの非検査領域が残るが、これにより走査領域の重なりを避け、試料の損傷を防止することができる。また電子線走査のデータを取込まない時間は、電子線を試料に照射しないことにより、試料の損傷を最小とすることができる。
【0247】
上記の事例では、走査領域の重なりを避けるため1μmの非検査領域が残るが、面積で僅か0.5%であり、実際上大きい問題にはならない。そして走査歪を小さくし、ステージ38−12の首振り(yaw)や蛇行を正確にビーム位置にフィードバックすることにより、非検査領域の比率を0.05%とすることができる。
【0248】
図49は、図47の電子線装置の鏡筒40−12を変形し複数としたマルチ鏡筒の配置図である。図49のマルチ鏡筒は、図48の電子線装置において、軸対称レンズを、絶縁物表面に金属をコーティングして作ることにより、外径寸法を小さくし、8インチウェーハ上に複数の鏡筒40−12を配置可能にしたものである。図49は、鏡筒40−12を4筒×2列に配置した様子を示す。図49の複数の鏡筒40−12を使用する場合において、隣接する鏡筒の走査幅を、図48の場合と同様に調節することにより、走査領域の間に重なりが生じないようにされる。また電子線走査のデータを取込まない時間は、電子線を試料に照射しないことにより、試料の損傷が最小にされる。
【0249】
図47は、ビーム径Dの電子線で試料上のピッチ2dの周期パターンを走査した時の変調伝達関数MTF、(MTF)2、ビーム電流IP、(MTF)4PとD/dの関係を示すグラフである。図47において、曲線1は、ビーム径Dの電子線の強度分布をガウス分布としたときのMTFとD/dの関係(依存性)を示す。図47において、曲線2は、ビーム電流IPとD/dの関係を示す。曲線3は、MTFの曲線を4乗した値(MTF)4を示す。
【0250】
電子線装置において、1次電子線のビーム電流をIP、1画素を走査する時間をt、素電荷をeとすると、S/N比は、次の式(1)となる(品田他、LSIテスティングシンポジウム/2000会議録、H12.11.9−10、151頁)。
【0251】
S/N=(IP・t)1/2/[3(2e)1/2] ‐‐‐‐‐-(1)
ビーム径が有限であることにより、ピッチが2dである周期パターンを走査したとき、信号コントラストが(MTF)倍に減るとすると、式(1)は、次の式(2)となる。
【0252】
S/N=(IP・t)1/2・(MTF)/[3(2e)1/2] ‐‐(2)
一方、単位面積当りの照射量であるドーズCは、次の式(3)で表される。
C=IP・t‐‐‐‐‐-(3)
測定時間tは、S/N比が大きいと小さい値を取ることができ、S/N比が小さいと測定時間tは、大きい値にしないと必要な画像が得られない。情報理論から測定時間tは、(S/N)2に逆比例すること、即ち、t ∝ 1/(S/N)2が知られている。それ故、式(3)は、次の式で表される。
【0253】
C ∝ IP/(S/N)2t‐‐‐‐‐-(3’)
一般的に、ゲート酸化膜の破壊防止の観点からは、ドーズCは、小さくすることが望まれ、また、スループットを大きくするため、測定時間tは短くすることが望まれる。これら2つの要求を満たすためには、(ドーズC)×(測定時間t)の積を最小にすればよいから、その積の逆数Q、即ち、
Q=1/[(ドーズC)×(測定時間t)]を最大にすればよい。
【0254】
式(3’)及び上記の測定時間t ∝ 1/(S/N)2を代入すると、
Q=(S/N)4/IP
式(2)を代入すると、
Q=[(IP・t)1/2/[3(2e)1/2]]4(MTF)4/IP
Q=[(IP2・t2/[81×4e2]](MTF)4/IP
Q ∝(MTF)4・IP‐‐‐‐-(4)
以上から、本発明において、ゲート酸化膜の破壊を最小限にして、スループットを最大にする条件は、(MTF)4・IPを最大にすることである。
【0255】
図47において、曲線1は、直径Dの電子線の強度分布をガウス分布としたときのMTFとD/dの関係(依存性)を示す。図47において、曲線2は、電子線電流IPの相対値と電子線の直径Dの関係を示す。曲線3は、MTFの曲線を4乗した値(MTF)4を示す。式(4)のQ値は、(MTF)4とIPの積として、即ちQ =a(MTF)4・IPとして、曲線4となる。曲線4は、D/dが0.75のとき最大値となり、D/dが0.75から外れると急激に減少する曲線となる。
【0256】
Qは、D/dが0.65〜0.85のとき、Qの最大値とほぼ同様の値であり、この時のMTFの値は、0.55〜0.7である。またD/dが0.55〜1.0の範囲にあれば、Qは、Qの最大値から大きく離間せず良好であり、MTF値は、0.42−0.8である。図47矢印参照。従って、D/dを0.55〜1.0にあるようにビーム径Dを決めれば、S/N比(信号/雑音比)をほぼ最大にできる。
【0257】
以上は、単一の電子銃とマルチ開口板で複数の電子線を作る場合について述べたが、複数の電子銃から放出される電子線を単一の光学系で試料面へ投影する場合についても、複数の電子銃から放出される電子線がクロスオーバを形成するので、同様のシミュレーションが成立する。また単一ビームの場合は空間電荷効果が大きくなく、ビーム電流IPは、球面収差が優勢の場合、(ビーム径D)8/3に比例するので、図47の曲線2に示すようになる。
【0258】
本発明の第12実施例に係る電子線装置は、重複走査を許す電子線装置に比較すると、ゲート酸化膜を損傷させないでドーズを2倍にできる。またデータを取込まない時間にビームを出さないようにすることによって、更に1〜2割ドーズを多くすることができる。また本発明の電子線装置においては、ドーズを小さくしスループットを大きくする妥協点が見つかり、ゲート酸化膜を損傷させないで高スループが得られる。また本発明によるとマルチ鏡筒の場合にも重複する走査領域を無くすることができる。また本発明によるとシングルビームを用いる場合又は複数の電子線を用いる場合の(D/d)の最適値が明らかになり、ビーム電流が少なすぎたり、MTFが小さすぎたりする問題を解消することができる。
(第13実施例)
以下、図面を参照して本発明の第13実施例に係る評価装置を説明する。
【0259】
図50は複数のチップ(又は)ダイが形成されたシリコンウェーハ1−13の平面図で、図には合計で36個のチップが形成されている。本実施例によれば、これらのチップのうちハッチングが施された4個のチップ3のみの欠陥検査等の評価を行い、残りの32個のチップ2−13については評価を省略して一枚のウェーハの評価を完了させるものである。
【0260】
これに対して、従来の評価方法では、同じ数のチップを有するウェーハに対して、図51で同じくハッチングを施して示されているように、中央部にある24個のチップに付いて評価を行い、残りの12個のチップについては評価を省略して一枚のウェーハの評価を完了させていた。このように多数のチップの評価を行うため、一枚当たり7時間程度の評価時間が必要になっていた。この場合、ウェーハを載置したXYステージをY方向に連続移動させながら評価を行うため、XYステージは高い精密度を要し、しかもXYステージの移動量が大きいため資料室は大きくなり、フットプリントは大面積を必要としていた。
【0261】
しかるに、本実施例によれば、図50で概略的に示されているように、上記4個のチップの位置にそれぞれ、合計で4個の鏡筒10−13を配置し、1個の鏡筒で1個のチップを評価するようにしている。このため、ウェーハが載遣されているXYステージはチップ1個分の距離だけステップアンドリピート方式で移動すればよくなる。したがって、XYステージの移動量はその分小さくなって資料室も小さくて済み、しかもXYステージは連続移動を必要としなくなるのでステージを安価に製造できる。
【0262】
図52に、第13実施例に係る電子線装置の鏡筒10−13内を概路的に示す。同図において、本実施例の電子線装置は、一次電子光学系(以下単に光学系)11−13と、二次電子光学系(以下二次光学系)31−13と、二次電子を検出する検出系41−13を備えている。
【0263】
一次光学系11−13は、電子線をウェーハSの表面に照射する光学系で、電子線を放出する電子銃12−13と、電子銃12−13から放出された電子線を集束するコンデンサレンズ13−13と、複数の小さな開口が形成された開口板14−13と、電子線を集束する縮小レンズ18−13と、軸合わせ偏向器16−13と、非点補正レンズ17−13と、レンズ18−13と、走査用偏向器19−13と、E×B型分離器20−13と、対物レンズ22−13とを備え、それらは、図52に示されるように電子銃12−13を最上部にして順に、しかも電子銃から放出される電子線の光軸がウェーハWの表面に鉛直になるように配置されている。
【0264】
電子銃12−13は、本実施例では、W−Zrの雷界放出チップ122−13をフィラメント123−13にスポット溶接してカソード121−13をつくり、そのカソードの電界放出チップ122−13の先端をショットキーシールド124−13より少し突出させた状態でつくられている。そしてこの電子銃からは5本の電子線が放出されるようになっている。一次光学系のその他の機器の各々の構造、機能は公知のものでよいので説明は省略する。開口板14−13に形成される開口141−13は4個で、光軸からの距離が全て同じになるように光軸を中心とする一つの円上に配置される。この開口141−13の配置状態は図52[B]において実線で示される4個の小さな円で示される。なお、21−13はE×B分離器用の磁場発生コイルである。
【0265】
二次光学系31−13は一次光学系のE×B分離器により一次光学系から分離された二次電子を検出系に送るもので、拡大レンズ32−13、33−13とマルチ検出板34−13とを備えている。検出系41−13は、マルチ検出板34−13の各開口毎に配置された検出器42−13と、各検出器に接続された処理装置43−13とを備えている。マルチ検出板34−13にも一次光学系の開口板14−13の開口に合わせて同一円上に4個の開口341−13が形成され、それらの開口341−13は図52[B]で破線で示される円のように、開口板14−13の開口141−13より大きく形成されている。マルチ検出板34−13の開口341−13は、4本の電子ビームによって発生された4本の二次電子線の像と中心がほぼ一致するように形成されている。なお、Stはウェーハが上に載せられたステージであり、Cは試料室である。
【0266】
上記電子線装置10−13において、電子銃12−13から放出された5本の電子線は、15−13においてクロスオーバーをつくるようにコンデンサレンズ13−13により集束される。コンデンサレンズを通った電子線のうち光軸の電子線は開口板14−13により遮断されるが他の4本の電子線はそれぞれ対応する開口141−13を通して縮小レンズ18−13に向かって進む。これら4本の電子線すなわち電子ビームは、縮小レンズ18−13により面25−13で縮小像をつくり、更に対物レンズ22−13によりウェーハWの表面に結像する。
【0267】
ウェーハ上に各点から放出された二次電子は、対物レンズ22−13により加速され、E×B分離器20−13により一次光学系11−13から分離され二次光学系31−13に進む。この二次電子は拡大レンズ32−13、33−13により各点の像をマルチ開口板34−13の位置で結像される。マルチ開口板34−13の各開口に隣接して配置された検出器42−13は20kV程度の高電圧が印加されているので、開口に近づいた二次電子は全て開口を通過する。二次電子の代表的な軌道が35−13で示されている。開口341−13で結像された二次電子の像は対応する検出器42−13により検出され、処理装置43−13によって処理される。
【0268】
本実施例においては、8インチウェーハ或いは12インチウェーハに対して複数の鏡筒を配置するため、セラミックスの表面に金属コーティングを施して製作した光学部品をつくり、外径形状の小型化を図った。複数の鏡筒の外側を、真空壁と、磁気シールド兼用のパーマロイの外囲器で囲んだ。代表的なセラミックスの偏向器について図53を参照して説明する。
【0269】
図53[A]は静電偏向器又は非点補正レンズの端面から見た図である。外側面51−13、内面52−13、端面53−13を有するセラミックスのパイプ状の部品に電極を分離するスリット57−13を設け、絶縁保持に必要な面58−13、59−13を除き金属(NiP、白金)で無電界メッキ及び電界メッキを行った。その後光軸に平行な貫通穴55−13を形成した。最後にアルミニュウムのリード線60−13をワイヤボンディングで61−13のように結線した。
【0270】
図52[B]は軸対称レンズの実施例であるユニポテンシャルレンズの断面図である。上部電極62−13、下部電極64−13にはアースに近い電圧が与えられ、中央電極63−13には高電圧或いは負の高電圧が与えられる。空洞65−13は金属コーティングのエッジ69−13と70−13との距離を離してエッジ間の放電を避けるための構造である。68−13は中央電極63−13に高電圧を与えるための溝で内面には金属コーティングが施されている。
【0271】
本発明の第13実施例によれば、次のような効果を奏することができる。
(イ)少数のチップしか評価しないので試料一枚当たりの評価時間を短縮できる。
(ロ)鏡筒を複数にし、一つの鏡筒の電子ビームを複数にすることによって、ビーム数に逆比例させて評価時間を短縮できる。
(ハ)セラミックスの静電偏向器、レンズを用いるので、光学系の外径を小さくでき、一枚の試料上に多くの光学系を配置できる。
(第14実施例)
図54は本発明の第14実施例に係る電子線装置を示す。電子銃1−14の中心にはLaB6単結晶がマルチエミッターとなるよう加工されたカソード2−14が配置されている。
【0272】
カソードから放出された電子線はコンデンサレンズ3−14で集束され、クロスオーバを形成する。レンズ3−14とクロスオーバの間にマルチ開口板4−14が設けられ、カソード2−14からの各ビームの強度が強い場所に開口がほぼ一致するように配置されている。マルチ開口板を通過したビームは2段の縮小レンズ5−14,7−14で縮小され、さらに対物レンズ10−14で縮小されて半導体基板等の試料面11−14に結像される。図において、6−14及び8−14は、第1及び第2の縮小像を示す。
【0273】
試料面1−14から放出された電子線は、対物レンズ10−14が作る加速電界で細く集束され、E×B分離器9−14で偏向されて一次光学系から分離され、同一円上に開口が設けられたマルチ開口検出板14−14を通過され検出器15−14で検出され、信号処理される。
【0274】
LaB6単結晶カソード2−14の詳細な先端形状を図55(平面図)、及び、図56(側面図)に示す。
図示のように、該カソードは全体的には2mmφの円筒形のLaB6単結晶から作られており、その先端を45°の角度22−14に削り、さらに先端面24−14にその周縁に沿った三角形状断面の環状突起23−14を残し、さらに該環状突起を切削して45°の斜面26−14を有する四角錐をなす突起すなわちエミッタ領域25−14を複数形成してある。エミッタ領域は、図55で見て、当該先端面24−14の中心線(当該電子線装置における一次電子光学形の光軸に一致する)と直交するx軸方向の線(一次電子線が試料で走査される方向の線)に投影したときに、その投影されたエミッタ領域のx方向間隔が等間隔をなすようにされている。各エミッタ領域間の領域及びエミッタ領域より内側の先端面24−14からは電子が放出されないように、エミッタ領域先端とこれら領域との間の高さの差を十分にとってある。
【0275】
本発明の第14実施例によれば、単一の電子銃によって適正なマルチビームを生じることができる。また、像面湾曲がほぼ補正できるので同じ収差で多くのビームを作れ、検査装置のスループットを大幅に向上できる。更に、LaB6単結晶カソードを用いると空間電荷制限領域で電子銃を動作できるので高S/N比の測定ができる。
(第15実施例)
図57には、本発明の第15の実施例に係る欠陥検査装置の概略構成が示されている。この欠陥検査装置は、いわゆるマルチカラム型の検査装置で、図1の電子線装置1−1と同様の構成である。即ち、一次電子線を放出する電子銃1−15、放出された一次電子線を偏向、成形させる静電レンズ2−15、成形された一次電子線を電場E及び磁場Bの直交する場で半導体ウェーハ5に略垂直に当たるように直進させるE×B偏向器3−15、偏向された一次電子線をウェーハ5−15上に結像させる対物レンズ10−15、真空に排気可能な図示しない試料室内に設けられ、ウェーハ5−15を載置した状態で水平面内を移動可能なステージ4−15、一次電子線の照射によりウェーハ5−15から放出された二次電子線を検出する検出器7−15、及び、装置全体を制御すると共に、検出器7−15により検出された二次電子信号に基づいてウェーハ5−15の欠陥を検出する処理を実行する制御部16−15を含んで構成される。
【0276】
また、縮小レンズ2−15と対物レンズ10−15との間には、一次電子線をウェーハ5上で走査するための偏向電極11−15が介在されている。この偏向電極11−15には、該偏向電極の電場を制御する偏向制御器12−15が接続されている。この偏向制御器12−15は、制御部16−15に接続され、制御部16−15からの指令に応じた電場が偏向電極11−15で生成されるように該偏向電極を制御する。なお、偏向制御器12−15は、偏向電極11−15に与える電圧を制御する電圧制御装置として構成することができる。
【0277】
検出器7−15は、検出信号を出力し、画像形成回路20−15で二次電子画像に変換する。
制御部16−15は、図57に例示されたように、汎用的なパーソナルコンピュータ等から構成することができる。このコンピュータは、所定のプログラムに従って各種制御、演算処理を実行する制御部本体14−15と、本体14−15の処理結果を表示するCRT15−15と、オペレータが命令を入力するためのキーボードやマウス等の入力部18−15と、を備える、勿論、欠陥検査装置専用のハードウェア、或いは、ワークステーションなどから制御部16−15を構成してもよい。
【0278】
制御部本体14−15は、図示しないCPU、RAM、ROM、ハードディスク、ビデオ基板等の各種制御基板等から構成される。RAM若しくはハードディスクなどのメモリ上には、検出器7−15から受信した電気信号から作られたウェーハ5−15の二次電子画像のデジタル画像データを記憶するための二次電子画像記憶領域8−15が割り当てられている。また、ハードディスク上には、予め欠陥の存在しないウェーハの基準画像データを記憶しておく基準画像記憶部13−15が存在する。更に、ハードディスク上には、欠陥検査装置全体を制御する制御プログラムの他、記憶領域8−15から二次電子画像データを読み出し、該画像データに基づき所定のアルゴリズムに従ってウェーハ5−15の欠陥を自動的に検出する欠陥検出プログラム9−15が格納されている。この欠陥検出プログラム9−15は、詳細を更に後述するように、基準画像記憶部13−15から読み出した基準画像と、実際に検出された二次電子線画像とをマッチングして、欠陥部分を自動的に検出し、欠陥有りと判定した場合、オペレータに警告表示する機能を有する。このとき、CRT15−15の表示部に二次電子画像17−15を表示するようにしてもよい。
【0279】
次に、第1実施形態に係る欠陥検査装置の作用を図59乃至図61のフローチャートを例にして説明する。
先ず、図59のメインルーチンの流れに示すように、検査対象となるウェーハ5−15をステージ4−15の上にセットする(ステップ300S)。この詳細な機構は、第6の実施例を適用することができる。
【0280】
次に、ウェーハ5−15表面のXY平面上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得する(ステップ304S)。これら画像取得すべき複数の被検査領域とは、図62に示すように、例えばウェーハ検査表面34−15上に、参照番号32a−15、32b−15、...32k−15、...で示す矩形領域のことであり、これらは、ウェーハの検査パターン30−15の回りで、部分的に重なり合いながら位置がずらされていることがわかる。例えば、図58に示されたように、16個の被検査領域の画像32−15(被検査画像)が取得される。ここで、図58に示す画像は、矩形の桝目が1画素(或いは、画素より大きいブロック単位でもよい)に相当し、このうち黒塗りの桝目がウェーハ5−15上のパターンの画像部分に相当する。このステップ304Sの詳細は図60のフローチャートで後述する。
【0281】
次に、ステップ304Sで取得した複数の被検査領域の画像データを記憶部13−15に記憶された基準画像データと、各々比較照合し(図59のステップ308S)、上記複数の被検査領域により網羅されるウェーハ検査面に欠陥が有るか否かが判定される。この工程では、いわゆる画像データ同士のマッチング処理を実行するが、その詳細については図61のフローチャートで後述する。
【0282】
ステップ308Sの比較結果より、上記複数の被検査領域により網羅されるウェーハ検査面に欠陥が有ると判定された場合(ステップ312S肯定判定)、オペレータに欠陥の存在を警告する(ステップ318S)。警告の方法として、例えば、CRT15−15の表示部に欠陥の存在を知らせるメッセージを表示したり、これと同時に欠陥の存在するパターンの拡大画像17−15を表示してもよい。このような欠陥ウェーハを直ちに試料室3−15から取り出し、欠陥の無いウェーハとは別の保管場所に格納してもよい(ステップ319S)。
【0283】
ステップ308Sの比較処理の結果、ウェーハ5−15に欠陥が無いと判定された場合(ステップ312S否定判定)、現在検査対象となっているウェーハ5−15について、検査すべき領域が未だ残っているか否かが判定される(ステップ314S)。検査すべき領域が残っている場合(ステップ314S肯定判定)、ステージ4−15を駆動し、これから検査すべき他の領域が一次電子線の照射領域内に入るようにウェーハ5−15を移動させる(ステップ316S)。その後、ステップ304Sに戻って当該他の検査領域に関して同様の処理を繰り返す。
【0284】
検査すべき領域が残っていない場合(ステップ314S否定判定)、或いは、欠陥ウェーハの抜き取り工程(ステップ319S)の後、現在検査対象となっているウェーハ5−15が、最終のウェーハであるか否か、即ち図示しないローダーに未検査のウェーハが残っていないか否かが判定される(ステップ320S)。最終のウェーハでない場合(ステップ320S否定判定)、検査済みウェーハを所定の格納箇所に保管し、その代わりに新しい未検査のウェーハをステージ4−15にセットする(ステップ322S)。その後、ステップ302Sに戻って当該ウェーハに関して同様の処理を繰り返す。最終のウェーハであった場合(ステップ320S肯定判定)、検査済みウェーハを所定の格納箇所に保管し、全工程を終了する。
【0285】
次に、ステップ304Sの処理の流れを図60のフローチャートに従って説明する。
図60では、先ず、画像番号iを初期値1にセットする(ステップ330S)。この画像番号は、複数の被検査領域画像の各々に順次付与された識別番号である。次に、セットされた画像番号iの被検査領域について画像位置(Xi,Yi)を決定する(ステップ332S)。この画像位置は、被検査領域を画定させるための該領域内の特定位置、例えば該領域内の中心位置として定義される。現時点では、i=1であるから画像位置(X1,Y1)となり、これは例えば図62に示された被検査領域32a−15の中心位置に該当する。全ての被検査画像領域の画像位置は予め定められており、例えば制御部16−15のハードディスク上に記憶され、ステップ332Sで読み出される。
【0286】
次に、図57の偏向電極11−15を通過する一次電子線が、ステップ332Sで決定された画像位置(Xi,Yi)の被検査画像領域に照射されるように、偏向制御器12−15が偏向電極11−15に電位を加える(図60のステップ334S)。
【0287】
次に、電子銃1−15から一次電子線を放出し、静電レンズ2−15、E×B偏向器3−15、対物レンズ10−15及び偏向電極11−15を通して、セットされたウェーハ5−15表面上に照射する(ステップ336S)。このとき、一次電子線は、偏向電極11−15の作り出す電場によって偏向され、ウェーハ検査表面34−15上の画像位置(Xi,Yi)の被検査画像領域全体に亘って照射される。画像番号i=1の場合、被検査領域は32a−15となる。
【0288】
一次電子線が走査された被検査領域からは二次電子が放出される。そこで、発生した二次電子線を検出器7−15に集束させる。検出器7−15は、二次電子線を検出し、電気信号を出力する。次に、画像形成回路20−15にて該電気信号をデジタル画像データに変換出力する(ステップ338S)。そして、形成され画像番号iのデジタル画像データを二次電子画像記憶領域8−15に転送する(ステップ340S)。
【0289】
次に、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップ342S)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAXを越えているか否かを判定する(ステップ344S)。このiMAXは、取得すべき被検査画像の数であり、図58の上述した例では、「16」である。
【0290】
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップ344S否定判定)、再びステップ332Sに戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像位置(Xi+1,Yi+1)を再び決定する。この画像位置は、前のルーチンで決定した画像位置(Xi,Yi)からX方向及び/又はY方向に所定距離(ΔXi,ΔYi)だけ移動させた位置である。図62の例では、被検査領域は、(X1,Y1)からY方向にのみ移動した位置(X2,Y2)となり、破線で示した矩形領域32b−15となる。なお、(ΔXi,ΔYi)(i=1,2,...iMAX)の値は、ウェーハ検査面34−15のパターン30−15が検出器7−15の視野から実際に経験的にどれだけずれるかというデータと、被検査領域の数及び面積から適宜定めておくことができる。
【0291】
そして、ステップ332S乃至342Sの処理をiMAX個の被検査領域について順次繰り返し実行する。これらの被検査領域は、図62に示すように、k回移動した画像位置(Xk,Yk)では被検査画像領域32k−15となるように、ウェーハの検査面34−15上で、部分的に重なり合いながら位置がずらされていく。このようにして、図58に例示した16個の被検査画像データが画像記憶領域8−15に取得される。取得した複数の被検査領域の画像32−15(被検査画像)は、図58に例示されたように、ウェーハ検査面34−15上のパターン30−15の画像30a−15を部分的若しくは完全に取り込んでいることがわかる。
【0292】
インクリメントした画像番号iがiMAXを越えた場合(ステップ344S肯定判定)、このサブルーチンをリターンして図59のメインルーチンの比較工程(ステップ308S)に移行する。
【0293】
なお、ステップ340でメモリ転送された画像データは、検出器7−15により検出された各画素毎の二次電子の強度値(いわゆるベタデータ)からなるが、後段の比較工程(図59のステップ308S)で基準画像とマッチング演算を行うため、様々な演算処理を施した状態で記憶領域8−15に格納しておくことができる。このような演算処理には、例えば、画像データのサイズ及び/又は濃度を基準画像データのサイズ及び/又は濃度に一致させるための正規化処理や、所定画素数以下の孤立した画素群をノイズとして除去する処理などがある。更には、単純なベタデータではなく、高精細パターンの検出精度を低下させない範囲で検出パターンの特徴を抽出した特徴マトリクスにデータ圧縮変換しておいてもよい。このような特徴マトリクスとして、例えば、M×N画素からなる2次元の被検査領域を、m×n(m<M,n<N)ブロックに分割し、各ブロックに含まれる画素の二次電子強度値の総和(若しくはこの総和値を被検査領域全体の総画素数で割った正規化値)を、各マトリックス成分としてなる、m×n特徴マトリックスなどがある。この場合、基準画像データもこれと同じ表現で記憶しておく。本発明の実施形態でいう画像データとは、単なるべタデータは勿論のこと、このように任意のアルゴリズムで特徴抽出された画像データを包含する。
【0294】
次に、ステップ308Sの処理の流れを図61のフローチャートに従って説明する。
先ず、制御部16−15のCPUは、基準画像記憶部13−15(図57)から基準画像データをRAM等のワーキングメモリ上に読み出す(ステップ350S)。この基準画像は、図58では参照番号36−15で表される。そして、画像番号iを1にリセットし(ステップ352S)、記憶領域8−15から画像番号iの被検査画像データをワーキングメモリ上に読み出す(ステップ354S)。
【0295】
次に、読み出した基準画像データと、画像iのデータとをマッチングして、両者間の距離値Diを算出する(ステップ356S)。この距離値Diは、基準画像と、被検査画像iとの間の類似度を表し、距離値が大きいほど基準画像と被検査画像との差異が大きいことを表している。この距離値Diとして類似度を表す量であれば任意のものを採用することができる。例えば、画像データがM×N画素からなる場合、各画素の二次電子強度(又は特徴量)をM×N次元空間の各位置ベクトル成分とみなし、このM×N次元空間上における基準画像ベクトル及び画像iベクトル間のユークリッド距離又は相関係数を演算してもよい。勿論、ユークリッド距離以外の距離、例えばいわゆる市街地距離等を演算することもできる。更には、画素数が大きい場合、演算量が膨大になるので、上記したようにm×n特徴ベクトルで表した画像データ同士の距離値を演算してもよい。
【0296】
次に、算出した距離値Diが所定の閾値Thより小さいか否かを判定する(ステップ358S)。この閾値Thは、基準画像と被検査画像との間の十分な一致を判定する際の基準として実験的に求められる。
【0297】
距離値Diが所定の閾値Thより小さい場合(ステップ358S肯定判定)、当該ウェーハ5−15の当該検査面34−15には「欠陥無し」と判定し(ステップ360S)、本サブルーチンをリターンする。即ち、被検査画像のうち1つでも基準画像と略一致したものがあれば、「欠陥無し」と判定する。このように全ての被検査画像とのマッチングを行う必要が無いので、高速判定が可能となる。図58の例の場合、3行3列目の被検査画像が、基準画像に対して位置ずれが無く略一致していることがわかる。
【0298】
距離値Diが所定の閾値Th以上の場合(ステップ358S否定判定)、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップ362S)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAXを越えているか否かを判定する(ステップ364S)。
【0299】
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップ364S否定判定)、再びステップ354Sに戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像データを読み出し、同様の処理を繰り返す。
【0300】
画像番号iが一定値iMAXを越えた場合(ステップ364S肯定判定)、当該ウェーハ5−15の当該検査面34−15には「欠陥有り」と判定し(ステップ366S)、本サブルーチンをリターンする。即ち、被検査画像の全てが基準画像と略一致していなければ、「欠陥有り」と判定する。
【0301】
本発明の欠陥検査装置においては、上記したマルチカラム型の電子線装置のみならず、いわゆるマルチビームによる走査型の電子線装置を利用することができる。これを第15実施例における第2の態様として図63を用いて説明する。
【0302】
図63は、本発明に係る電子線装置の一つの実施形態を概略的に示す図で、同図において、電子銃61−15から放出された電子線は、コンデンサレンズ62−15によって集束されて点64−15においてクロスオーバを形成する。
【0303】
コンデンサレンズ62−15の下方には、複数の開口を有する第1のマルチ開口板63−15が配置され、これによって複数の一次電子線が形成される。第1のマルチ開口板63−15によって形成された一次電子線の夫々は、縮小レンズ65−15によって縮小されて点75−15に投影される。点75−15で合焦した後、対物レンズ67−15によって試料68−15に合焦される。第1のマルチ開口板63−15から出た複数の一次電子線は、縮小レンズ65−15と対物レンズ67−15との間に配置された偏向器80−15により、同時に試料68−15の面上を走査するように偏向される。
【0304】
縮小レンズ65−15及び対物レンズ67−15の像面湾曲収差が発生しないように、図63に示すように、マルチ開口板63−15は、円周上に小開口が配置され、そのX方向へ投影したものは等間隔となる構造となっている。
【0305】
合焦された複数の一次電子線によって、試料68−15の複数の点が照射され、照射されたこれらの複数の点から放出された二次電子線は、対物レンズ67−15の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器66−15で偏向され、二次光学系に投入される。二次電子像は、点75−15より対物レンズ67−15に近い点76−15に焦点を結ぶ。これは、各一次電子線は試料面上で500eVのエネルギーを持っているのに対し、二次電子線は数eVのエネルギーしか持っていないためである。
【0306】
二次光学系は、拡大レンズ69−15、70−15を有しており、これらの拡大レンズ69−15、70−15を通過した二次電子線は、第2マルチ開口板71−15の複数の開口に結像する。そして、これらの開口を通って複数の検出器72−15で検出される。なお、検出器72−15の前に配置された第2のマルチ開口板71−15に形成された複数の開口と、第1のマルチ開口板63−15に形成された複数の開口とは一対一に対応している。
【0307】
夫々の検出器72−15は、検出した二次電子線を、その強度を表す電気信号へ変換する。こうした各検出器から出力された電気信号は増幅器73−15によって夫々増幅された後、画像処理部74−15によって受信され、画像データへ変換される。画像処理部74−15には、一次電子線を偏向させるための走査信号が偏向器80−15から更に供給されるので、画像処理部74−15は試料68−15の面を表す画像を表示する。この画像は、第15実施例における第1の態様で説明した位置の異なる複数の被検査画像(図58)のうち1つの画像に相当している。この画像を基準画像36−15と比較することにより、試料68−15の欠陥を検出することができる。また、レジストレーションにより試料68−15上の被評価パターンを一次光学系の光軸の近くへ移動させ、ラインスキャンすることによって線幅評価信号を取り出し、これを適宜に校正することにより、試料68−15上のパターンの線幅を測定することができる。
【0308】
ここで、第1のマルチ開口板63−15の開口を通過した一次電子線を試料68−15の面上に合焦させ、試料68−15から放出された二次電子線を検出器72−15に結像させる際、一次光学系及び二次光学系で生じるコマ収差、像面湾曲及び視野非点という3つの収差による影響を最小にするよう配慮した方がよい。
【0309】
次に、複数の一次電子線の間隔と、二次光学系との関係については、一次電子線の間隔を、二次光学系の収差よりも大きい距離だけ離せば複数のビーム間のクロストークを無くすことができる。
【0310】
図63の走査型電子線装置においても、図59及び図60のフローチャートに従って、試料68−15の検査を行う。この場合、図60のステップ332−15の画像位置(Xi,Yi)は、マルチビームを走査して得られる複数のライン画像を合成した2次元画像の中心位置に対応する。この画像位置(Xi,Yi)は、後の工程で順次、変更されるが、これは、例えば偏向器80−15のオフセット電圧を変更することによって行う。偏向器80−15は、設定されたオフセット電圧の回りに電圧を変化させることによって、通常のライン走査を行う。勿論、偏向器80−15とは別体の偏向手段を設け、これにより画像位置(Xi,Yi)の変更を行ってもよい。
【0311】
以上が上記第15の実施例の各態様であるが、本発明は、上記例にのみ限定されるものではなく本発明の要旨の範囲内で任意好適に変更可能である。
例えば、被検査試料として半導体ウェーハ5−15を例に掲げたが、本発明の被検査試料はこれに限定されず、電子線によって欠陥を検出することができる任意のものが選択可能である。例えばウェーハへの露光用パターンが形成されたマスク等を検査対象とすることもできる。
【0312】
また、本発明は、電子以外の荷電粒子線を用いて欠陥検出を行う装置にも適用できるばかりでなく、試料の欠陥を検査可能な画像を取得できる任意の装置にも適用可能である。
更に、偏向電極80−15は、対物レンズ67−15とウェーハ68−15との間のみならず、一次電子線の照射領域を変更できる限り任意の位置に置くことができる。例えば、E×B偏向器66−15と対物レンズ67−15との間、電子銃61−15とE×B偏向器66−15との間などがある。更には、E×B偏向器66−15が生成する場を制御することによって、その偏向方向を制御するようにしてもよい。即ち、E×B偏向器66−15に偏向電極80−15の機能を兼用させてもよい。
【0313】
また、上記実施形態では、画像データ同士のマッチングを行う際に、画素間のマッチング及び特徴ベクトル間のマッチングのいずれかとしたが、両者を組み合わせることもできる。例えば、最初、演算量の少ない特徴ベクトルで高速マッチングを行い、その結果、類似度の高い被検査画像については、より詳細な画素データでマッチングを行うという2段階の処理によって、高速化と精度とを両立させることができる。
【0314】
また、本発明の実施形態では、被検査画像の位置ずれを一次電子線の照射領域の位置ずらしのみで対応したが、マッチング処理の前若しくはその間で画像データ上で最適マッチング領域を検索する処理(例えば相関係数の高い領域同士を検出してマッチングさせる)と本発明とを組み合わせることもできる。これによれば、被検査画像の大きな位置ずれを本発明による一次電子線の照射領域の位置ずらしで対応すると共に、比較的小さな位置ずれを後段のデジタル画像処理で吸収することができるので、欠陥検出の精度を向上させることができる。
【0315】
また、図59のフローチャートの流れも、これに限定されない。例えば、ステップ312Sで欠陥有りと判定された試料について、他の領域の欠陥検査は行わないことにしたが、全領域を網羅して欠陥を検出するように処理の流れを変更してもよい。また、一次電子線の照射領域を拡大し1回の照射で試料のほぼ全検査領域をカバーできれば、ステップ314S及びステップ316Sを省略することができる。
【0316】
以上詳細に説明したように第15実施例に係る欠陥検査装置によれば、試料上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得し、これらの被検査領域の画像と基準画像とを比較することによって、試料の欠陥を検査するようにしたので、被検査画像と基準画像との位置ずれによる欠陥検査精度の低下を防止できる、という優れた効果が得られる。
(第16の実施例)
第16の実施例は、上記第1乃至第15の実施例で示した電子線装置を半導体デバイス製造工程におけるウェーハの評価に適用したものである。
【0317】
デバイス製造工程の一例を図64のフローチャートに従って説明する。
この製造工程例は以下の各主工程を含む。
(1) ウェーハを製造するウェーハ製造工程(又はウェーハを準備する準備工程)(ステップ100S)
(2) 露光に使用するマスクを製作するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)(ステップ101S)
(3) ウェーハに必要な加工処理を行うウェーハプロセッシング工程(ステップ102S)
(4) ウェーハ上に形成されたチップを1個ずつ切り出し、動作可能にならしめるチップ組立工程(ステップ103S)
(5) 組み立てられたチップを検査するチップ検査工程(ステップ104S)
なお、各々の工程は、更に幾つかのサブ工程からなっている。
【0318】
これらの主工程の中で、半導体デバイスの性能に決定的な影響を及ぼす主工程がウェーハプロセッシング工程である。この工程では、設計された回路パターンをウェーハ上に順次積層し、メモリやMPUとして動作するチップを多数形成する。このウェーハプロセッシング工程は以下の各工程を含む。
(1) 絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、或いは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程(CVDやスパッタリング等を用いる)
(2) 形成された薄膜層やウェーハ基板を酸化する酸化工程
(3) 薄膜層やウェーハ基板等を選択的に加工するためにマスク(レチクル)を用いてレジストのパターンを形成するリソグラフィー工程
(4) レジストパターンに従って薄膜層や基板を加工するエッチング工程(例えばドライエッチング技術を用いる)
(5) イオン・不純物注入拡散工程
(6) レジスト剥離工程
(7) 加工されたウェーハを検査する検査工程
なお、ウェーハプロセッシング工程は必要な層数だけ繰り返し行い、設計通り動作する半導体デバイスを製造する。
【0319】
上記ウェーハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィー工程を図65のフローチャートに示す。このリソグラフィー工程は以下の各工程を含む。
(1) 前段の工程で回路パターンが形成されたウェーハ上にレジストをコートするレジスト塗布工程(ステップ200S)
(2) レジストを露光する露光工程(ステップ201S)
(3) 露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程(ステップ202S)
(4) 現像されたパターンを安定化させるためのアニール工程(ステップ203S)
以上の半導体デバイス製造工程、ウェーハプロセッシング工程、リソグラフィー工程には周知の工程が適用される。
【0320】
上記(7)のウェーハ検査工程において、本発明の上記各実施例に係る電子線装置を用いた場合、微細なパターンを有する半導体デバイスでも、二次電子画像の像障害が無い状態で高精度に欠陥を検査できるので、製品の歩留向上、欠陥製品の出荷防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0321】
【図1】図1は、本発明の第1実施例に係る、写像投影型の電子線装置を用いた欠陥検査システムの概略構成図である。
【図2】図2は、図1の電子線装置で用いられるE×Bユニットの詳細な構成を示す上面図である。
【図3】図3は、図2のA−A線に沿って取られたE×Bユニットの断面図である。
【図4】図4は、図1の電子線装置の欠陥検査の流れを示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の第3実施例における、総使用時間とMCP倍増率との相関関係を示す図である。
【図6】図6は、本発明の第3実施例における、MCP印加電圧とMCP倍増率との相関関係を示す図である。
【図7】図7は、本発明の第3実施例における、MCP印加電圧制御回路のフローチャートを示す図である。
【図8】図8は、本発明の第3実施例における、ウェーハWの検査手順を示す図である。
【図9】図9は、本発明の第4実施例のフィードスルー装置の概略平面図である。
【図10】図10は、図9のフィードスルー装置の線A−Aに沿う概略断面図である。
【図11】図11は、本発明の第4実施例の他の形態のフィードスルー装置のほぼ4分の1を示す概略平面図である。
【図12】図12は、図11のフィードスルー装置の線B−Bに沿う概略断面図である。
【図13】図13は、本発明の第4実施例に係るフィードスルー装置を組込んだ欠陥検査装置の概略縦断面図である。
【図14】図14は、本発明の第5の実施例に係る欠陥検査装置を概略的に示す図である。
【図15】図15は、第5の実施例において、電子銃からの放出電流を一定に保持するための、ウェーネルト電極印加電圧と経過時間との関係を示すグラフである。
【図16】図16は、第5の実施例の従来技術における、電子銃からの放出電流とウェーネルト電極印加電圧との関係を示すグラフである。
【図17】図17は、本発明の第6の実施例に係る検査装置の主要構成要素を示す立面図であって、図18の線A−Aに沿って見た図である。
【図18】図18は、図17に示す検査装置の主要構成要素の平面図であって、図17の線B−Bに沿って見た図である。
【図19】図19は、図17のミニエンバイロメント装置を示す断面図であって、線C−Cに沿って見た図である。
【図20】図20は、図17のローダハウジングを示す図であって、図18の線D−Dに沿って見た図である。
【図21】図21は、ウェーハラックの拡大図であって、[A]は側面図で、[B]は[A]の線E−Eに沿って見た断面図である。
【図22】図22は、主ハウジングの支持方法の変形例を示す図である。
【図23】図23は、主ハウジングの支持方法の別の変形例を示す図である。
【図24】図24は、図17の検査装置の電子光学装置の概略構成を示す模式図である。
【図25】図25は、電位印加機構を示す図である。
【図26】図26は、電子ビームキャリブレーション機構を説明する図であって、[A]は側面図であり、[B]は平面図である。
【図27】図27は、ウェーハのアライメント制御装置の概略説明図である。
【図28】図28は、基板出し入れ機構の別の態様を示す図である。
【図29】図29は、本発明の第7の実施例における従来の荷電ビーム装置の真空チャンバ及びXYステージを示す図であって、[A]が正面図で[B]が側面図である。
【図30】図30は、図29のXYステージに使用されている電子銃から放出される電子の強度分布を説明する図である。
【図31】図31は、本発明の第7の実施例に係る荷電ビーム装置の一実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図であって、[A]が正面図で[B]が側面図である。
【図32】図32は、本発明の第7の実施例に係る荷電ビーム装置の他の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図33】図33は、本発明の第7の実施例に係る荷電ビーム装置の別の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図34】図34は、本発明の第7の実施例に係る荷電ビーム装置の更に別の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図35】図35は、本発明の第7の実施例に係る荷電ビーム装置の更に別の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図36】図36は、本発明の第8の実施例における従来の荷電ビーム装置の真空チャンバ及びXYステージを示す図であって、[A]が正面図で[B]が側面図である。
【図37】図37は、図36のXYステージに使用されている差動排気装置の説明図である。
【図38】図38は、本発明の第8の実施例に係る荷電ビーム装置の一実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図39】図39は、図38に示された装置に設けられた差動排気機構の一例を示す図である。
【図40】図40は、図38に示された装置のガスの循環配管系を示す図である。
【図41】図41は、本発明の第9実施例に係る電子線装置の概略構成図である。
【図42】図42は、第9実施例において、一枚のウェーハ上におけるデバイスの配置を示す平面図である。
【図43】図43は、本発明の第10実施例に係る電子線装置を示す概略構成図である。
【図44】図44は、図10実施例において、試料上のパターンとこのパターンの二次電子線の検出信号を示す波形図である。
【図45】図45は、本発明の第11の実施例に係る評価装置の第1態様の構成を説明するための概略ブロック図である。
【図46】図46は、本発明の第11の実施例に係る、複数の鏡筒を有する第2の態様の評価装置を説明するための、鏡筒の配置関係を表した説明図である。
【図47】図47は、本発明の第12の実施例における、MTF、(MTF)2、IP、(MTF)4PとD/dの関係を示すグラフである。
【図48】図48は、本発明の第12の実施例に係る、電子線装置の光学系の概略構成を示すブロック図である。
【図49】図49は、図47の電子線装置の鏡筒40を変形し複数としたマルチ鏡筒の配置図である。
【図50】図50は、本発明の第13実施例に係る試料の評価方法を説明する図である。
【図51】図51は、第13実施例における従来のウェーハの評価方法を説明する図である。
【図52】図52は、本発明の第13実施例に係る評価装置の電子線装置を示す概略図である。
【図53】図53は、第13実施例において、セラミックスに表面処理してできた静電偏向器、軸対称レンズ又は非点補正レンズを示す図であり、[A]は静電偏向器又は軸対称レンズの端面図であり、[B]は軸対称レンズの断面図である。
【図54】図54は、本発明の第14実施例に係る電子光学装置の概略構成図である。
【図55】図55は、図54の電子光学装置で用いられる電子銃の単結晶LaB6カソード先端の平面図である。
【図56】図56は、図54の電子光学装置で用いられる電子銃のカソードの側面図である。
【図57】図57は、本発明の第15の実施例に係る欠陥検査装置の概略構成図である。
【図58】図58は、図57の欠陥検査装置で取得される複数の被検査画像及び基準画像の例を示す図である。
【図59】図59は、図57の欠陥検査装置におけるウェーハ検査のメインルーチンの流れを示すフローチャートである。
【図60】図60は、図59における複数の被検査画像データ取得工程(ステップ304S)のサブルーチンの詳細な流れを示すフローチャートである。
【図61】図61は、図59における比較工程(ステップ308S)のサブルーチンの詳細な流れを示すフローチャートである。
【図62】図62は、半導体ウェーハの表面上で部分的に重なり合いながら互いから位置がずらされた複数の被検査領域を概念的に示す図である。
【図63】図63は、第15実施例に係る欠陥検査装置として使用可能な走査型電子線装置の構成図である。
【図64】図64は、半導体デバイス製造プロセスを示すフローチャートである。
【図65】図65は、図64の半導体デバイス製造プロセスのうちリソグラフィープロセスを示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子銃から放出された電子線を矩形に成形し、該成形された電子ビームを検査されるべき試料面上に照射する電子ビーム照射光学系と、前記試料から放出された二次放出線を検出器に結像させる写像投影光学系とを備え、前記二次放出線の像を写像投影する機能を有するパターン検査装置であって、
前記電子ビーム照射光学系は、さらに静電レンズまたは電磁レンズを有し、該静電レンズまたは該電磁レンズにより、前記矩形に成形された電子ビームよりも細く絞られた電子ビームを試料面上に照射しかつ該試料面上で走査し、該試料から放出された二次放出線を検出する機能を更に有することを特徴とする、パターン検査装置。
【請求項2】
前記二次放出線の像を写像投影する機能は、前記試料の材質がベアシリコンまたはアルミコートシリコンであるときに使用され、
前記細く絞り込まれた電子ビームを試料面上に照射しかつ該試料面上で走査し、該試料から放出された二次放出線を検出する機能は、前記試料に酸化シリコンまたは窒化シリコンが成膜されているときに使用されることを特徴とする、請求項1に記載のパターン検査装置。
【請求項3】
電子銃からの電子線を矩形に成形し、該成形された電子ビームを検査されるべき試料面上に照射し、該試料から放出された二次放出線を検出器に結像させて写像投影する機能と、
電子ビーム照射光学系により前記矩形に成形された電子ビームよりも細い電子ビームを成形し、該細い電子ビームを試料面上に照射しかつ該試料面上で走査し、該試料から放出された二次放出線を検出する走査型電子顕微鏡としての機能と、を備えたパターン検査装置を用意し、
同一の試料において帯電し難い試料部分は、前記写像投影する機能を使用してパターン検査を行い、帯電し易い試料部分は、前記走査型電子顕微鏡としての機能を使用してパターン検査を行う、各工程を有することを特徴とするパターン検査方法。
【請求項4】
電子銃からの電子線を矩形に成形し、該成形された電子ビームを検査されるべき試料面上に照射し、前記試料から放出された二次放出線を検出器に結像させて写像投影する機能と、前記矩形電子ビームの径をさらに細く成形し、該径を成形された細い電子ビームを試料面上に照射しかつ該試料面上で走査し、該試料から放出された二次放出線を検出する走査型電子顕微鏡としての機能と、を備えたパターン検査装置を用意し、
ウェーハプロセッシング工程におけるレジストレーションのためのマーク検出時は前記走査型電子顕微鏡としての機能を使用し、その後のパターン欠陥検査時は前記写像投影する機能を使用する、各工程を有することを特徴とするパターン検査方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のパターン検査装置を使用してプロセス途中のウェーハのパターン検査を行うことを特徴とする、デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【図63】
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【図64】
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【図65】
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【公開番号】特開2008−180721(P2008−180721A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23853(P2008−23853)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【分割の表示】特願2007−31703(P2007−31703)の分割
【原出願日】平成13年11月2日(2001.11.2)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】