説明

永久磁石同期モータの駆動装置、空気調和装置、換気扇の駆動装置、洗濯機、自動車及び車両

【課題】永久磁石同期モータが強制的に回転させられた場合に生じる回生電圧を部品点数の増加なしに抑制して低コスト化できる永久磁石同期モータの駆動装置、空気調和装置、換気扇の駆動装置、洗濯機、自動車及び車両を得ることを目的とする。
【解決手段】インバータ制御手段50は、回生運転時に、直流電圧検出手段90が検出した回生電圧と予め設定した直流電圧指令値の偏差に基づいて、インバータ40と永久磁石同期モータ30の線間を開放させる時間と短絡させる時間の比率を可変するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省エネ性の高い誘起電圧定数の大きな永久磁石同期モータが強制的に回転させられた場合に発生する回生電圧を抑制することで駆動装置の安全性を確保する永久磁石同期モータの駆動装置、空気調和装置、換気扇の駆動装置、洗濯機、自動車及び車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、永久磁石同期モータは誘起電圧定数が大きいほど、インバータに代表されるモータの駆動装置の低損失化が図れる。しかし、永久磁石同期モータは外風やその他外乱要因により強制的に回転させられた場合に、発電機として働き電圧(回生電圧)が発生する。
そのため、誘起電圧定数が大きい永久磁石同期モータを用いた場合、大きな回生電圧が発生し、電動機の駆動装置を構成する素子が耐圧破壊を起こし、発煙や発火に至る恐れがある。
そこで、従来のブラシレスモータの保護装置に、リレーなどの開閉器によりモータとインバータを切り離すことで、回生電圧に対して素子を保護する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63―206189号公報(第1頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の従来のブラシレスモータの保護装置は、リレーなどの開閉器を追加することによる部品点数や電子基板面積の増加に伴うコストアップという問題があり、また開閉器の耐圧を考慮して設計しなければならないといった課題もあった。
本発明はかかる問題を解決するためになされたもので、永久磁石同期モータが強制的に回転させられた場合に生じる回生電圧を部品点数の増加なしに抑制して低コスト化できる永久磁石同期モータの駆動装置、空気調和装置、換気扇の駆動装置、洗濯機、自動車及び車両を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る永久磁石同期モータの駆動装置は、直流電源の直流電圧を入力とし、永久磁石同期モータに電圧を出力するインバータと、インバータの入力側に現れる直流の回生電圧を検出する直流電圧検出手段と、インバータが出力する電圧を制御するインバータ制御手段を備え、インバータ制御手段は、回生運転時に、直流電圧検出手段が検出した回生電圧と予め設定した直流電圧指令値の偏差に基づいて、インバータと永久磁石同期モータの線間を開放させる時間と短絡させる時間の比率を可変するようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る永久磁石同期モータの駆動装置においては、直流電源の直流電圧を入力とし、永久磁石同期モータに電圧を出力するインバータと、インバータの入力側に現れる直流の回生電圧を検出する直流電圧検出手段と、インバータが出力する電圧を制御するインバータ制御手段を備え、インバータ制御手段は、回生運転時に、直流電圧検出手段が検出した回生電圧と予め設定した直流電圧指令値の偏差に基づいて、インバータと永久磁石同期モータの線間を開放させる時間と短絡させる時間の比率を可変するようにしたので、永久磁石同期モータが強制的に回転させられて回生電圧が生じる場合に、インバータと永久磁石同期モータの線間を短絡し、また短絡及び開放を繰り返すことで、永久磁石同期モータに発生した回生電圧を永久磁石同期モータ内で消費させて直流電圧の上昇を抑制し、回生電圧をインバータの耐圧以下に抑制可能となりインバータを構成するスイッチング素子等の耐圧破壊を部品点数の増加なしに低コストで防止することができ、誘起電圧定数の大きい永久磁石同期モータを用いることが可能となるため、永久磁石同期モータの駆動装置の損失を低下させて省エネにも寄与し、地球温暖化を軽減可能とするという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態1に係る永久磁石同期モータの駆動装置のブロック図。
【図2】同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの三相ブリッジの回路図。
【図3】同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの短絡動作状態の回路図。
【図4】同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの開放動作状態の回路図。
【図5】同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの短絡及び開放動作のフローチャート。
【図6】同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの短絡および開放動作による直流電圧波形図。
【図7】同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの開放、間欠短絡、開放動作時のスイッチング波形を示す説明図。
【図8】同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの短絡および開放動作時間の比率制御を示すブロック図。
【図9】同永久磁石同期モータの駆動装置のコントローラの内部構成を示すブロック図。
【図10】本発明の実施の形態2に係る永久磁石同期モータの駆動装置のブロック図。
【図11】本発明の実施の形態3に係る永久磁石同期モータの駆動装置のブロック図。
【図12】本発明の実施の形態4に係る永久磁石同期モータの駆動装置のブロック図。
【図13】同永久磁石同期モータの駆動装置のもう1つのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態1
図1は本発明の実施の形態1に係る永久磁石同期モータの駆動装置のブロック図、図2は同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの三相ブリッジの回路図、図3は同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの短絡動作状態の回路図、図4は同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの開放動作状態の回路図、図5は同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの短絡及び開放動作のフローチャート(直流電圧検出手段を用いた場合)、図6は同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの短絡および開放動作による直流電圧波形図、図7は同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの開放、間欠短絡、開放動作時のスイッチング波形を示す説明図、図8は同永久磁石同期モータの駆動装置のインバータの短絡および開放動作時間の比率制御を示すブロック図、図9は同永久磁石同期モータの駆動装置のコントローラの内部構成を示すブロック図である。
【0009】
図1において、10は直流電源、20は直流電源10に入力側接続されたモータ駆動装置、30はモータ駆動装置20の出力側に接続された三相の永久磁石同期モータである。
モータ駆動装置20は、インバータ40と、インバータ40を駆動制御するインバータ制御手段50と、永久磁石同期モータ30の線間を短絡するようにインバータ40を制御する短絡手段60と、永久磁石同期モータ30の線間を開放するようにインバータ40を制御する開放手段70と、短絡手段60と開放手段70とを交互に動作させる間欠短絡手段80と、直流電源10の直流電圧を検出する直流電圧検出手段90とを有して構成されている。
【0010】
図2に示すインバータ40の構成について説明する。
インバータ40は、直流電源10の正側に接続される還流ダイオード110が並列接続された3つのIGBTスイッチング素子100aと、直流電源10の負側に接続される還流ダイオード110が並列接続された3つのIGBTスイッチング素子100bとを有し、それぞれが直列に接続された構成となっており、正側と負側の中性点が永久磁石同期モータ30の各相に接続されている。
ここで、直流電源10の3つの正側スイッチング素子100aを上アーム、3つの負側スイッチング素子100bを下アームとして以下、説明する。
【0011】
次に、本発明の実施の形態1に係る永久磁石同期モータの駆動装置の動作について図5のフローチャートに基づいて説明する。ただし、図5は直流電圧検出手段を用いた場合を示しているが、交流電圧検出手段や回転速度検出手段を用いた場合も同様のフローチャートとなる。
インバータ制御手段50は、直流電圧検出手段90の出力に基づいて、回生電圧を抑制するようにインバータ40を制御する。
即ち、永久磁石同期モータ30が駆動停止させられてインバータ40の上アームの3つの正側スイッチング素子100aと下アームの3つの負側スイッチング素子100bが全てオフのとき(このときを開放状態という)に、永久磁石同期モータ30が強制的に回転させられると回生電圧が発生する。
この回生電圧により上アームと下アームの還流ダイオード110に電流が流れて整流され、直流電圧が直流電源10に印加される。その直流電源10に印加される直流電圧を直流電圧検出手段90が検出し、その検出した直流電圧をインバータ制御手段50に出力している。
【0012】
そして、インバータ制御手段50では、直流電圧検出手段90が検出する回生電圧に基づく直流電圧の出力が増大して第1の閾値である短絡閾値を超えた場合(ステップS1)に、短絡手段60を動作させ、図3の(a)に示すように、インバータ40の上アーム100aを全てオンさせるように制御してインバータ40と永久磁石同期モータ30の線間を短絡状態とするか、もしくは図3の(b)に示すようにインバータ40の下アーム100bを全てオンさせることでインバータ40と永久磁石同期モータ30の線間を短絡状態として(ステップS2)、発生した回生電圧を永久磁石同期モータ30内で消費させることで、回生電圧を低下させる。
【0013】
このように、インバータ40と永久磁石同期モータ30の線間が短絡状態となった場合には、直流電源10に回生エネルギーが供給されないが、その直流電源10の直流電圧は例えばインバータ制御手段50の動作電圧として供給されているので、そこで消費されて徐々に低下していく。
そして、インバータ制御手段50では、直流電圧検出手段90が検出する回生電圧に基づく直流電圧の出力が低下して第2の閾値である開放閾値を下回った際に(ステップS3)、図4に示すように、インバータ40のいままでオンしていた上アーム100aを全てオフさせ、もしくはいままでオンしていた下アーム100bを全てオフさせることで前述の短絡状態を解除し、結局上アーム100a及び下アーム100bを全てオフにして開放状態にする(ステップS4)。
【0014】
そうすると、図6に示すように回生電圧は再び上昇し、回生電圧に基づく直流電圧も上昇して第1の閾値に達することになれば、ステップS2に戻り短絡状態にさせられることになる。
このように、インバータ40と永久磁石同期モータ30の線間が短絡及び開放動作を繰り返すことで、永久磁石同期モータ30が強制的に回転させられた場合に生じる回生電圧をインバータ40の耐圧以下に抑制可能となり、インバータ40を構成するスイッチング素子などの耐圧破壊を保護することができる。
【0015】
しかしながら、前記したように短絡手段60及び開放手段70で短絡および開放する直流電圧の短絡閾値と開放閾値が略同一程度に近似している場合、短絡および開放動作が頻繁に発生し、永久磁石同期モータ30に流れる電流にノイズが発生する問題がある。
そのため、短絡動作を開始する短絡閾値と、開放動作を開始する開放閾値の二つの閾値を略同一の値にせず、また短絡閾値と開放閾値の関係を短絡閾値>開放閾値とすることで短絡および開放動作が頻繁に起こることを抑え、ノイズの発生を少なくできるため、ノイズによる誤動作のない信頼性の高い永久磁石同期モータの駆動装置を得ることができる。
但し、短絡閾値と開放閾値はノイズ等が発生しないようにある程度電圧差を持たせたほうがよい。そのときの直流電圧波形を図6に示す。
【0016】
しかし、永久磁石同期モータ30の線間が開放動作から短絡動作に移行する際には、永久磁石同期モータ30に定常状態のおよそ2倍程度の電流が瞬間的に流れる。
永久磁石同期モータ30を構成する永久磁石は大きな電流が流れると、磁力が低下して性能が劣化するおそれがある。
そこで、永久磁石同期モータ30の線間が開放動作から短絡動作に移行する前に、間欠短絡手段80により短絡と開放とを短時間のうちに交互に動作させて間欠短絡動作を行わせ、短絡する時間を徐々に長くしながら間欠的に短絡動作を行った後、短絡手段60により短絡動作を行うことで瞬間的に流れる電流を抑制することができる。
図7は、短絡、間欠短絡、開放動作へ移行する際のインバータ40の上アーム100aもしくは下アーム100bのスイッチング波形を示す。また、図7に示すように、間欠短絡動作時間tを任意に設計できるものとする。
また、間欠短絡手段80はタイマー等で時間の経過と共に短絡時間を徐々に長くするよう制御したり、PWM を用いて徐々にDutyを上げて短絡時間を長くするようにしても良い。
【0017】
さらに、インバータ制御手段50の短絡手段60、開放手段70及び間欠短絡手段80に代わる同様な機能を有する手段として、直流電圧検出手段70の出力と予め設定した直流電圧指令値との偏差に応じて、短絡及び開放動作時間の比率を可変し、直流電圧を一定に保つように制御するようにしたものがある。
それは、例えば、図8に示すように直流電圧指令値を正、直流電圧検出手段90で検出した出力を負として加算器119で加算し、その偏差をコントローラ120の入力とし、偏差をなくすように短絡及び開放動作時間の比率を制御する。
この場合、開放動作時間を0に設定し、短絡動作時間だけ制御するようにすれば、前記短絡手段60と同様に機能し、逆に短絡動作時間を0に設定し、開放動作時間だけ制御するようにすれば、前記開放手段70として機能し、開放動作時間と短絡動作時間を一定の比率に設定すれば、間欠短絡手段80として機能することになる。
コントローラ120は、図9に示すように、例えば、比例動作、積分動作及び微分動作を行なうPID制御器などを用いてもよい。もちろん、偏差をなくすように制御できればよいので、他の制御器でも代用できることは言うまでもない。
【0018】
これにより、永久磁石同期モータ30の定数等が変わる場合でも、偏差に応じて短絡及び開放動作時間の比率を制御することで、永久磁石の磁力が弱まるのを防止できることから経年劣化防止にも効果が期待できる。
また、例えばPID制御器の比例動作、積分動作及び微分動作のゲインを変えて応答を調整することにより、徐々に短絡及び開放動作時間の比率を変化させていき、前述の間欠短絡手段と等価な効果を得ることが出来る。
これにより、開放から短絡状態への移行時における瞬間的な電流を抑制することが可能となり、永久磁石同期モータ30の磁力低下を抑え、信頼性の高い永久磁石同期モータの駆動装置を得ることができる。
【0019】
上述した実施の形態1で説明したインバータ40及びインバータ制御手段50について以下の説明を補足する。
インバータ40は図3に示すようにIGBTスイッチング素子100a、100bとなっているが、MOSFETなどの他のスイッチング素子でも問題はない。
また、インバータ40は図3に示すように三相ブリッジ回路となっているが、二相の場合や複数のブリッジ回路で構成される場合も短絡および開放動作をするようにインバータ制御手段50で制御信号を入力することで同様の結果が得られることはいうまでもない。
【0020】
さらに、インバータ制御手段50は直流電源10により電源が供給されない場合、動作できない問題がある。しかし、永久磁石同期モータ30が強制的に回転させられた場合に生じる回生電圧が所定値以上になると直流電源10により電源が供給されたものと同じ効果が得られるため、動作することが可能となる。
【0021】
また、インバータ制御手段50は、インバータ40の上アーム100aもしくは下アーム100bを全てオンして短絡状態となる場合、所定時間経過後、いままでオンしていた上アーム100aもしくはいままでオンしていた下アーム100bを全てオフし、上アーム100a及び下アーム100bが全てオフして開放状態とする。
これにより、例えば直流電源10が異常で短絡動作する閾値異常の電圧を供給した場合など、何らかの原因で短絡状態が停止できない場合や短絡状態が長時間(数秒〜数十分など)続く動作において、永久磁石同期モータ30が高温となり、永久磁石同期モータ30の巻線抵抗増加による省エネ性能低下や永久磁石同期モータ30の永久磁石の磁力が弱まり易い状態となるのを防ぐことができる。
【0022】
さらに、インバータ制御手段50はインバータ40の上アーム100aもしくは下アーム100bのいずれかを全てオンして短絡動作する場合、上アーム100aと下アーム100bを交互にオンするように制御することで、スイッチング素子の温度上昇を抑えることができる。これにより、片方のスイッチング素子のみに負荷がかかることを防止でき、経年劣化防止にも効果が期待できる。
【0023】
また、インバータ制御手段50は、インバータ40の上アーム100aもしくは下アーム100bのいずれかを全てオンして短絡状態となる場合、温度検出手段(図示省略)である例えばサーミスタのような温度検出素子から得る温度やインバータ40や永久磁石同期モータ30に流れる電流から演算して求めた温度推定値に応じて、上アーム100aもしくは下アーム100bをオフする。
これにより、永久磁石同期モータ30が高温となり、省エネ性能低下や永久磁石同期モータ30の永久磁石の磁力が弱まり易い状態となるのを防ぐことができる。
【0024】
実施の形態2
図10は本発明の実施の形態2に係る永久磁石同期モータの駆動装置のブロック図である。
図10において、10は直流電源、20はモータ駆動装置、30は永久磁石同期モータ、40はインバータ、50はインバータ制御手段、60は短絡手段、70は開放手段、80は間欠短絡手段である。
そして、インバータ40と永久磁石同期モータ30との間に、インバータ40が出力する交流電圧を検出する交流電圧検出手段130が設けられている。
この実施の形態2は、実施の形態1の図1に示す直流電圧検出手段90が交流電圧検出手段130に置き換わったもので、その他の構成は同じである。
つまり、インバータ制御手段50に取り込まれる物理量が直流電圧から交流電圧となり、第1の閾値と第2の閾値が交流の電圧値となることのみが実施の形態1の説明で異なる点であり、インバータ40やインバータ制御手段50での動作は同様となるため、重複する説明は省略する。
【0025】
実施の形態3
図11は本発明の実施の形態3に係る永久磁石同期モータの駆動装置のブロック図である。
図11において、10は直流電源、20はモータ駆動装置、30は永久磁石同期モータ、40はインバータ、50はインバータ制御手段、60は短絡手段、70は開放手段、80は間欠短絡手段、140は永久磁石同期モータ30の回転速度を検出する回転速度検出手段である。
この実施形態3は、実施の形態1の図1に示す直流電圧検出手段90が回転速度検出手段140に置き換わったもので、その他の構成は同じである。
つまり、インバータ制御手段50に取り込まれる物理量が直流電圧から回転速度となり、第1の閾値と第2の閾値が回転速度となることのみが実施の形態1の説明で異なる点であり、インバータ40やインバータ制御手段50での動作は同様となるため重複する説明は省略する。
【0026】
実施の形態4
図12は本発明の実施の形態4に係る永久磁石同期モータの駆動装置のブロック図、図13は同永久磁石同期モータの駆動装置のもう1つのブロック図である。
図12において、10は直流電源、20はモータ駆動装置、30は永久磁石同期モータ、40はインバータ、50はインバータ制御手段、60は短絡手段、70は開放手段、80は間欠短絡手段、90は直流電圧検出手段、130は交流電圧検出手段、140は回転速度検出手段である。
【0027】
上述したように実施の形態1では直流電圧検出手段90、実施の形態2では交流電圧検出手段130、実施の形態3では回転速度検出手段140の各検出手段の出力に基づいてインバータ制御手段50の短絡手段60、開放手段70、間欠短絡手段80により短絡、間欠短絡、開放動作を行った。
しかし、各検出手段が何らかの原因で機能しなくなると同時に短絡、間欠短絡、開放動作することができず、永久磁石同期モータ30が強制的に回転させられた場合に生じる回生電圧を抑制できなくなり、十分な安全性を確保できない。
そこで、図12に示すように三つの検出手段90、130、140を同時に使用し、故障していない少なくとも1つの検出手段の出力に基づいてインバータ制御手段50が短絡手段60と開放手段70を動作させて短絡と開放を行うようにすることで、より高い信頼性でインバータ回路40の保護が可能となる。
また、インバータ制御手段50が短絡手段60と、間欠短絡手段80と、開放手段70を動作させて短絡と間欠短絡と開放を行うようにすることで、より高い信頼性でインバータ回路40の保護が可能となると共に、間欠短絡動作を行うことにより、開放動作から短絡動作に移行する際の瞬間的に流れる電流を抑制することができる。
この場合、1つの検出手段の出力が用いられれば、他の検出手段の出力は用いないようにしている。
【0028】
また、直流電圧検出手段90、交流電圧検出手段130及び回転速度検出手段140の三つの検出手段から予め選択された二つの検出手段の出力のうち、一つの増大する出力に基づいてインバータ制御手段50が短絡手段60と開放手段70を動作させて短絡と開放を行うようにすることで、より高い信頼性でインバータ回路40の保護が可能となる。
さらに、インバータ制御手段50が短絡手段60と、間欠短絡手段80と、開放手段70を動作させて短絡と間欠短絡と開放を行うようにすることで、より高い信頼性でインバータ回路40の保護が可能となると共に、間欠短絡動作を行うことにより、開放動作から短絡動作に移行する際の瞬間的に流れる電流を抑制することができる。
この場合も、1つの検出手段の出力が用いられれば、他の検出手段の出力は用いないようにしている。
【0029】
図13に示すように、直流電圧検出手段90にコンバータなどの電源装置150や圧縮機などの負荷装置160が接続されている場合、直流電圧検出手段90、交流電圧検出手段130及び回転速度検出手段140の三つの検出手段から直流電圧検出手段90と回転速度検出手段140が検出した二つの出力または直流電圧検出手段90と交流電圧検出手段130が検出した二つの出力が共にそれぞれに設定した短絡閾値を越えた場合にインバータ制御手段50が短絡手段60を動作させ、交流電圧検出手段130または回転速度検出手段140の出力が開放閾値を下回った場合にインバータ制御手段50が開放手段70を動作させるようにする。
このように、インバータ40の入力側に生じる直流電圧と出力側に生じる回転速度又は交流電圧の双方の出力を共に検出するようにしたのは、永久磁石同期モータ30が外部から強制的に回転させられることにより、直流電圧の昇圧、回転速度の増大又は交流電圧の昇圧が生じるからである。
【0030】
従って、永久磁石同期モータが外部から強制的に回転させられることによる直流電圧の昇圧ではなく、例えば、図13に示すように直流電圧検出手段90に接続されるコンバータなどの電源装置150や圧縮機などの電気機器160の異常動作や緊急停止などが原因で起こりうる直流電圧の昇圧が生じる場合に、インバータ40の出力側には 回転速度又は交流電圧の出力は生じることはない。
そこで、上記のような電源装置150(コンバータなど)や電気機器160(圧縮機など)の異常動作や緊急停止などが原因で起こりうる直流電圧の昇圧に対しては短絡動作させないことでモータ駆動装置の通常動作を妨げることなく、より高い信頼性でインバータ回路40の保護が可能となる。
さらに、インバータ制御手段50が短絡手段60と、間欠短絡手段80と、開放手段70を動作させて短絡と間欠短絡と開放を行うようにすることで、より高い信頼性でインバータ回路40の保護が可能となると共に、間欠短絡動作を行うことにより、開放動作から短絡動作に移行する際の瞬間的に流れる電流を抑制することができる。
【0031】
上記実施の形態1〜4におけるインバータ制御手段50はアナログ回路、デジタル回路、又はマイコンのいずれにおいても実現できることはいうまでもない。
【0032】
以上、実施の形態1から4で説明したモータ駆動装置の活用例として、空気調和装置、換気扇、洗濯機、自動車、車両などが挙げられる。
【符号の説明】
【0033】
10 直流電源、20 モータ駆動装置、30 永久磁石同期モータ、40 インバータ、50 インバータ制御手段、60 短絡手段、70 開放手段、80 間欠短絡手段、90 直流電圧検出手段、100a 正側スイッチング素子(上アーム)、100b 負側スイッチング素子(下アーム)、110 還流ダイオード、119 加算器、120 コントローラ、130 交流電圧検出手段、140 回転速度検出手段、150 電源装置、160 負荷装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源の直流電圧を入力とし、永久磁石同期モータに電圧を出力するインバータと、
前記インバータの入力側に現れる直流の回生電圧を検出する直流電圧検出手段と、
前記インバータが出力する電圧を制御するインバータ制御手段を備え、
前記インバータ制御手段は、回生運転時に、
前記直流電圧検出手段が検出した回生電圧と予め設定した直流電圧指令値の偏差に基づいて、前記インバータと前記永久磁石同期モータの線間を開放させる時間と短絡させる時間の比率を可変する
ことを特徴とする永久磁石同期モータの駆動装置。
【請求項2】
直流電源の直流電圧を入力とし、永久磁石同期モータに電圧を出力するインバータと、
前記永久磁石同期モータから出力される交流の回生電圧を検出する交流電圧検出手段と、
前記インバータが出力する電圧を制御するインバータ制御手段を備え、
前記インバータ制御手段は、回生運転時に、
前記交流電圧検出手段が検出した回生電圧と予め設定した交流電圧指令値の偏差に基づいて、前記インバータと前記永久磁石同期モータの線間を開放させる時間と短絡させる時間の比率を可変する
ことを特徴とする永久磁石同期モータの駆動装置。
【請求項3】
直流電源の直流電圧を入力とし、永久磁石同期モータに電圧を出力するインバータと、
前記永久磁石同期モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記インバータが出力する電圧を制御するインバータ制御手段を備え、
前記インバータ制御手段は、回生運転時に、
前記回転速度検出手段が検出した回生時の出力と予め設定した回転速度指令値の偏差に基づいて前記インバータと前記永久磁石同期モータの線間を開放させる時間と短絡させる時間の比率を可変する
ことを特徴とする永久磁石同期モータの駆動装置。
【請求項4】
直流電源の直流電圧を入力とし、永久磁石同期モータに電圧を出力するインバータと、
前記インバータの入力側に現れる直流の回生電圧を検出する直流電圧検出手段と、
前記永久磁石同期モータから出力される交流の回生電圧を検出する交流電圧検出手段と、
前記永久磁石同期モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記インバータが出力する電圧を制御するインバータ制御手段を備え、
前記インバータ制御手段は、回生運転時に、
前記直流電圧検出手段、前記交流電圧検出手段及び前記回転速度検出手段のいずれかが検出した回生時の出力と予め設定した指令値の偏差に基づいて、前記インバータと前記永久磁石同期モータの線間を開放させる時間と短絡させる時間の比率を可変する
ことを特徴とする永久磁石同期モータの駆動装置。
【請求項5】
直流電源の直流電圧を入力とし、永久磁石同期モータに電圧を出力するインバータと、
前記インバータの入力側に現れる直流の回生電圧を検出する直流電圧検出手段と、
前記永久磁石同期モータから出力される交流の回生電圧を検出する交流電圧検出手段と、
前記永久磁石同期モータの回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記インバータが出力する電圧を制御するインバータ制御手段を備え、
前記インバータ制御手段は、回生運転時に、
前記直流電圧検出手段、前記交流電圧検出手段及び前記回転速度検出手段の三つの手段のうち、予め選択された二つの手段が検出した二つの回生時の出力のいずれかと予め設定した指令値の偏差に基づいて、前記インバータと前記永久磁石同期モータの線間を開放させる時間と短絡させる時間の比率を可変する
ことを特徴とする永久磁石同期モータの駆動装置。
【請求項6】
前記インバータ制御手段はアナログ回路、またはデジタル回路、またはマイコンにより実現する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の永久磁石同期モータの駆動装置。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の永久磁石同期モータの駆動装置を搭載した
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項8】
請求項1〜6に記載の永久磁石同期モータの駆動装置を搭載した
ことを特徴とする換気扇の駆動装置。
【請求項9】
請求項1〜6に記載の永久磁石同期モータの駆動装置を搭載した
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項10】
請求項1〜6に記載の永久磁石同期モータの駆動装置を搭載した
ことを特徴とする自動車。
【請求項11】
請求項1〜6に記載の永久磁石同期モータの駆動装置を搭載した
ことを特徴とする車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−50333(P2012−50333A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−266982(P2011−266982)
【出願日】平成23年12月6日(2011.12.6)
【分割の表示】特願2008−224963(P2008−224963)の分割
【原出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】