説明

油圧式動力伝達装置を備える電気式倍力装置

【課題】機関動作に依存することなく、または特定の機関構成要素の存在を必要とすることなくコンパクトで信頼性のある倍力装置を提供する。
【解決手段】電気式ブレーキが、後部および前部ブレーキ回路用のピストン22、24と、後部ブレーキピストン22を駆動するための電気モータ50とを具備するマスターシリンダ12を有する。帰還回路が、後部ブレーキ回路に供給された流体圧を示す信号を供給し、かつ流体圧を後輪ブレーキ回路に供給するために運転者指令制動力48に応答して動作可能である。第2のピストンとブレーキペダルとの間の機械式結合部44、46が、流体圧を前輪ブレーキ回路に供給するために運転者印加ブレーキペダル力に応答する。流体回路30、82が、後輪ブレーキ回路に供給された流体圧を利用して運転者印加ブレーキペダル力を増加し、それによって倍力流体圧を前輪ブレーキ回路に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両制動システムに関し、さらに詳細には改良された電動式ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
車両制動システムは、単純な機械式ブレーキから油圧式ブレーキに、次いでパワーアシスト式油圧ブレーキに進化してきた。1つの非常に一般的な動力ブレーキ機構は、運転者ブレーキ駆動ペダル機構と、動作可能にされるときに流体圧を個別の車輪ブレーキシリンダまたはアクチュエータに供給するマスターシリンダとの中間にある筐体を使用する。この筐体は、通常では車両マニホルド真空に両側が露出されたピストンまたは隔膜を具備する。運転者がブレーキペダルを駆動するとき、大気圧が、このピストンの片側に通されて、マスターシリンダピストンに追加的な力と個別の車輪シリンダに高められたブレーキ管路圧とを供給する。運転者が加えるペダル力(倍力なし)は、真空が利用可能でなければ、倍力機構を介してマスターシリンダに伝達される。この種の真空倍力装置が、数多くの特許、例えば、米国特許第5943863号に例示されている。
【0003】
多くの車両、例えば、ハイブリッド車またはディーゼル機関を用いるものは、真空源を欠き、油圧源としてパワーステアリングポンプもしくは別体の専用ポンプが利用可能であるか、または空気式ブレーキ用に別体の空気圧縮機が使用可能である。これらのシステムのすべては、運転者ブレーキペダル入力の力を増加するために、車両機関の動作に頼る。
【0004】
いくつかの特許されたシステムは、上述の真空倍力装置に代えて電気機械式機構を用いることによって、マニホルド真空に対するまたは機関動作に依存する他の動力源に対する依存性を排除する。例えば、米国特許第4395883号では、ブレーキペダル力が、歯車の組を介して作用する電気モータによって増幅されるが、これらの歯車の組は、マスターシリンダピストンにエネルギーを与えるために、ボールねじ構成を経由して、このモータからの回転運動およびトルクを直線運動および力に変換する。運転者から入力される押しロッド力が、電子的手段によって検知、増幅、および変調される。電気モータは、休止状態ではまたは電気的不具合が発生すれば、この歯車組から切り離されて、必要なときに利用可能な手動操作様式が存在するようになっている。電力印加様式と非電力印加様式とを分離するために、ソレノイドを使用して電動クラッチを操作する。適切な制御装置が、圧電結晶また何らかの他の適切な圧力変換素子のような力検知手段と、マイクロプロセッサに似た制御論理を含む適切な回路とによって設けられる。
【0005】
米国特許第6574959(B2)号および同第6758041(B2)号が、同様のシステムを開示する。第6574959号特許の構成は、プーリ回りに巻かれたベルトを具備する動力伝達システムを使用して動力をモータからボールねじに伝達し、ベルト、歯付きベルト、チェーンベルト、または歯車を示唆しかつプーリはスプロケットまたは同様物でありうることを示唆する。第6758041号特許では、電気モータからのトルクを倍力装置シャフトに印加される軸方向力に変換するために、ボールねじアセンブリが、このモータの出力シャフトと倍力装置シャフトとの間で、ピニオンおよびボールねじ駆動歯車によって動作可能に連結される。ブレーキペダル入力の力は、圧電または磁気抵抗検知器によって測定される。倍力装置シャフトがその軸に沿って後退する速度を増大させるために、かつ倍力装置シャフトが完全に後退した位置に移動することを保証するために、この倍力装置は、ボールねじ駆動歯車と筐体との間で動作可能に連結された捻りばねまたはクラッチスプリングの形態にある後退ばねを具備する。
【0006】
これらの特許の電気式倍力装置構成のそれぞれは、ちょうど従来の真空倍力装置の場合におけるように、ブレーキペダル押しロッドとマスターシリンダ入力ピストンロッドとの中間に配置される。それぞれが、モータとマスターシリンダピストンロッドとの間に、かなり複雑な機械式結合部を使用する。制動表面を強制的に合わせるために、個別車輪ブレーキの箇所に電磁石を使用する電気式ブレーキも示唆されてきた。
【0007】
機関動作からの独立性を保持し、かついかなる倍力源の不具合にもかかわらず車両制動能力を保持しながら、例えば、複雑な駆動用動力伝達装置、ソレノイド動作式クラッチ、および同様物を排除することによって、複雑な駆動機構を簡素化することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5943863号
【特許文献2】米国特許第4395883号
【特許文献3】米国特許第6574959(B2)号
【特許文献4】米国特許第6758041(B2)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、機関動作に依存することなく、または特定の機関構成要素の存在を必要とすることなくコンパクトで信頼性のある倍力装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、その1つの形態では、マスターシリンダと、運転者ブレーキペダルと、個別車輪ブレーキアクチュエータとを有する電気倍力式車両ブレーキシステムを備える。略円筒形ボアを有するマスターシリンダ筐体が存在し、このボアの中で往復動可能に配置されたピストンが、そのボアと共に可変容積チャンバを画定する。電気機械装置がピストンに結合され、この構成は、チャンバの容積を減少させて車輪ブレーキアクチュエータのうちの特定のアクチュエータに流体圧を加える方向へ第1のピストンを押圧するために、運転者ブレーキペダル力に応答して動作可能である。この電気機械装置は、ボアの中へ延びるねじ付き部分を備える出力シャフトを有する可逆電気モータと、このねじ付き部分の上に螺合して受け入れられるナットとを具備する。このナットは、シャフト回りに回転することが防止される。ナットは、第1の検知においてシャフト回転に応答して、チャンバの容積を減少させて倍力流体圧を車輪ブレーキアクチュエータのうちの特定のアクチュエータに加える方向へピストンに係合してピストンを移動させ、かつ第2の検知においてシャフト回転に応答して、ピストンを解放してチャンバの容積の増大を可能にする。
【0011】
別の形態では、運転者ブレーキペダルと、個別の車輪ブレーキアクチュエータとを有する車両ブレーキシステムで使用するマスターシリンダが、第1および第2の略円筒形ボアを内部に有するマスターシリンダ筐体を具備する。第1のピストンが、第1のボアの中で往復動可能に配置されて、第1のボアと共に第1の可変容積チャンバを画定し、第2のピストンが、第2のボアの中で往復動可能に配置されて、第2のボアと共に第2および第3の可変容積チャンバを画定する。第1および第2のチャンバは、流体を受け取ってブレーキシステム中の流体レベルを所望のレベルに維持するために貯槽に連結され、かつブレーキを効かせるように加圧流体を供給するために後輪および前輪ブレーキアクチュエータにそれぞれ連結される。電気機械装置が第1のピストンに結合されて、この構成は、第1のチャンバの容積を減少させて流体圧を後輪ブレーキアクチュエータに加える方向へ第1のピストンを押圧するために、運転者ブレーキペダル力に応答して動作可能である。第2のピストンと運転者ブレーキペダルとの間には、第2のチャンバの容積を減少させて流体圧を前輪ブレーキアクチュエータに加える方向へ、運転者ブレーキペダル力に応答して第2のピストンを押圧する機械式結合部が存在する。第1のチャンバと第3のチャンバとを相互連結する流体結合導管が、第2のチャンバの容積を減少させて流体圧を前輪ブレーキアクチュエータに加える方向へ第2のピストンを押圧することによって、運転者ブレーキペダル力を補うために第1のチャンバからの流体圧を第2のチャンバに加える。
【0012】
本発明の利点は、機関動作に対する依存性が排除されることである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電気倍力を有する油圧式ブレーキマスターシリンダの模式的な部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで図面を参照すると、筐体16の上に支持された流体貯槽14を有するマスターシリンダ12を具備する車両ブレーキシステムの一部が示されている。筐体16は、往復動可能に内部配置された第1のピストン22および第2のピストン24をそれぞれ具備する略円筒形ボア18および20を含む。ボア18はピストン22と共に可変容積チャンバ26を画定し、一方、ピストン24の両面がボア20内部の2つの可変チャンバ28および30を画定する。チャンバ内部の戻しばね32が、チャンバ26の容積を最大化するように、図の左方へピストン22を押圧する。同様に、戻しばね34が、チャンバ28の容積を最大化しかつチャンバ30の容積を最小化するように、図の右に向かってピストン24を押圧する。マスターシリンダはその休止状態で示されており、このとき、必要に応じて貯槽からの流体がチャンバ26および28を満たすことを可能にするように、ポペット弁36および38が開いた状態に保持されている。これらのポペット弁は、ばねの付勢によって閉じられるが、これらのそれぞれの弁棒40および42によって開いた状態に保持される。これらの弁棒は、それぞれのピストンが図示の箇所から移動するときに解放される。ピストンロッド44および押しロッド46は、従来の足踏みペダル80のような車両運転者入力ブレーキ力48の供給源にピストン24を機械式に結合する。
【0015】
マスターシリンダ12は、チャンバ26から、個別の車輪ディスクおよびキャリパブレーキアセンブリ76および78を駆動するための後部ブレーキ回路に至る増強圧力出力口72を含む。前輪(図示せず)用の同様のブレーキアセンブリが、前部ブレーキ回路を経由してチャンバ28の出口74から駆動流体を受け取る。別法としてドラムブレーキが使用されてもよく、ディスク前部ブレーキおよびドラム後部ブレーキは、しばしば見られる1つの組合せである。導管82が、後部制動回路の増強された出力を前部制動回路の倍力入力チャンバ30に結合する。
【0016】
可逆サーボモータ50が、ボア18の中へ延びるねじ付き部分54を含むシャフト52を有する。シャフト52は、軸受68および70によってのように、適切にジャーナル軸受される。ナット56が、シャフト部分54上に螺合して受け入れられ、長手方向へ延びるボア側壁溝穴またはキー溝60に係合する回転防止キー58を有する。ナットおよびねじ付きシャフト部分は、一体としてボールねじ機構を備える。サーボモータ50は電子制御ユニット62からの入力を受け取り、次に電子制御ユニットは、電圧変換素子64に対する力および電圧変換素子66に対する圧力からの入力を受け取る。
【0017】
動作に際して、車両運転者は、ばね34の付勢力に対抗してピストン24を移動させる押しロッド46およびピストンロッド44経由で、弁38を閉鎖させてチャンバ28内の流体圧を増大させる力48を供給する足踏みペダル80を踏み込む。この増大した圧力は、出口74を経由して前部ブレーキ管路および前輪ブレーキアクチュエータに伝達され、それによって前輪ブレーキを効かせる。これが行われるのに電気的倍力は必要とされない。運転者の指令によるブレーキ力48も任意適切な手段によって検知され、変換素子64によって、大きさを示す電気信号に変換される。この検知および変換は、例えば、米国特許第4395883号に示されたように、圧電デバイスによって実現されてよい。後部ブレーキ回路圧は検知され、かつ変換素子66によって、それを示す信号に変換されて、これらの信号は、後輪回路がこの運転者の指令による制動力によって要求された圧力を受け取っているかどうかを判定するために、電子制御ユニット62において比較される。電子制御ユニット62は、車両蓄電池のような任意の適切な電源に結合される。後輪回路圧が不適当であれば、電子制御ユニット62はサーボモータを動作可能にして、図の右にボールねじユニットのナット56を前進させる方向へねじ付きシャフト54を回転させて、ばね32の付勢力に対抗してピストンを押圧し、それによってチャンバ26内の圧力および後輪制動力を増大させる。検知された後輪回路圧が不適当であれば、電子制御ユニット62はサーボモータを動作可能にして、図の左に戻るようにボールねじユニットのナット56を後退させる方向へねじ付きシャフト54を回転させて、ばね32の付勢力がピストンを左方へ押すことを可能にし、それによってチャンバ26内の圧力および後輪制動力を減少させる。ばね32の付勢力はピストン22をナット56と接触状態に維持するが、他の適切な結合構成が使用されてよい。モータおよびボールねじ駆動装置によって実現可能な制動圧は、運転者が押しロッド46およびピストンロッド44の機械式結合部を介して通常もたらす圧力を超える。すなわち、導管82が備わっていなければ、チャンバ26内の圧力は、制動中ではチャンバ28内の圧力よりも実質的に大きい。しかし、導管82は、チャンバ26の圧力をチャンバ30とピストン24の右側の面とに供給して、所望通りに当該ピストンに対する運転者によってもたらされた機械力を増加し、チャンバ28の圧力を増大させる。
【0018】
このように、推奨される実施形態が開示されたが、当業者ならば数多くの変更を想到しよう。したがって、本発明の範囲は、以下に続く特許請求の範囲によって判断されるべきである。
【符号の説明】
【0019】
12 マスターシリンダ
14 流体貯槽
16 筐体
18、20 略円筒形ボア
22 第1のピストン
24 第2のピストン
26 第1の可変容積チャンバ
28 第2の可変容積チャンバ
30 第3の可変容積チャンバ
32、34 戻しばね
36、38 ポペット弁
40、42 弁棒
44 ピストンロッド
46 押しロッド
48 車両運転者入力ブレーキ力
50 電気モータ
52 シャフト
54 ねじ付き部分
56 ナット
58 回転防止キー
60 ボア側壁溝穴またはキー溝
62 電子制御ユニット
64、66 電圧変換素子
68、70 軸受
72 増強圧力出力口
74 第2のチャンバ出口
76、78 個別車輪ディスクおよびキャリパブレーキアセンブリ
80 足踏みペダル
82 導管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前輪に対する運転者印加ブレーキペダル制動力を増加して運転者指令制動力を車両後輪に供給する電気式ブレーキ倍力装置であって、
後輪ブレーキ回路(72、76、78)用の第1のピストン(22)および前輪ブレーキ回路(74)用の第2のピストン(24)を備えるマスターシリンダ(12)と、
前記第1のピストンに結合され、前記第1のピストンを駆動して流体圧を前記後輪ブレーキ回路に供給するように、運転者指令制動力(48)に応答して動作可能な電気機械装置と、
前記第2のピストンとブレーキペダル(80)との間にあって、流体圧を前記前輪ブレーキ回路に供給するように運転者印加ブレーキペダル力に応答して動作可能な機械式結合部(44、46)と、
前記後輪ブレーキ回路に供給された前記流体圧を利用して運転者印加ブレーキペダル力を増加し、それによって倍力流体圧を前記前輪ブレーキ回路に供給する流体回路(82、30)とを備える電気式ブレーキ倍力装置。
【請求項2】
前記電気機械装置は、電気モータ(50)と、電子制御ユニット(62)および前記後輪ブレーキ回路に供給された前記流体圧を示す信号を供給する変換素子(66)を有する帰還回路とを備え、前記電子制御ユニットは、前記電気モータが、運転者指令制動力が増大するときに倍力流体圧を増大させ、かつ運転者指令制動力が減少するときに倍力流体圧を減少させることを可能にする、請求項1に記載の電気式ブレーキ倍力装置。
【請求項3】
運転者指令制動力を測定して、前記制動力を示す電圧を前記電子制御ユニットに供給するための電圧変換素子(64)に対する力をさらに含む、請求項2に記載の電気式ブレーキ倍力装置。
【請求項4】
前記電気機械装置は、前記第1のピストンを駆動するためのボールねじ機構(54、56)に直接結合される電気モータ(50)を備える、請求項1に記載の電気式ブレーキ倍力装置。
【請求項5】
マスターシリンダ(12)、運転者ブレーキペダル(80)、および個別の車輪ブレーキアクチュエータ(76、78)を有する電気倍力式車両ブレーキシステムであって、
マスターシリンダ筐体(16)と、
前記筐体中の略円筒形ボア(18)と、
前記ボアの中で往復動可能に配置され、前記ボアと共に可変容積チャンバ(26)を画定するピストン(22)と、
前記ピストンに結合されて、前記チャンバの容積を減少させて流体圧を前記車輪ブレーキアクチュエータのうち特定のアクチュエータに加える方向へ前記第1のピストンを押圧するように、運転者ブレーキペダル力に応答して動作可能な電気機械装置とを備え、
前記電気機械装置は、前記ボアの中へ延びるねじ付き部分(54)を備える出力シャフト(52)を有する可逆電気モータ(50)と、前記ねじ付き部分の上に螺合して受け入れられるナット(56)とを備え、装置(58、60)が前記シャフト回りのナットの回転を防止するためにあり、前記ナットは、第1の検知においてシャフト回転に応答して、前記チャンバの容積を減少させて倍力流体圧を前記車輪ブレーキアクチュエータのうち前記特定のアクチュエータに加える方向へ前記ピストンに係合して前記ピストンを移動させ、かつ第2の検知においてシャフト回転に応答して、前記ピストンを解放して前記チャンバの容積の増大を可能にする、電気倍力式車両ブレーキシステム。
【請求項6】
前記電気機械装置は、電子制御ユニット(62)と、運転者ブレーキペダル力を示す、前記電子制御ユニットに供給される信号を生成する第1の変換素子(64)と、倍力流体圧を示す、前記電子制御ユニットに供給される信号を生成する第2の変換素子(66)とをさらに備え、前記電子制御ユニットは、前記電気モータが、運転者ブレーキペダル力が増大するときに倍力流体圧を増大させ、かつ運転者ブレーキペダル力が減少するときに倍力流体圧を減少させることを可能にする、請求項5に記載の電気倍力式車両ブレーキシステム。
【請求項7】
ナット回転を防止するための前記装置は、ボア軸線に平行な前記ボアの側壁に沿って長手方向へ延びる溝穴(60)と、前記側壁溝穴の中へ延びるナット(56)支持キー(58)とを備える、請求項5に記載の電気倍力式車両ブレーキシステム。
【請求項8】
前記マスターシリンダ筐体は、
往復動可能に内部配置された第2のピストン(24)であって、前記車輪ブレーキアクチュエータのうちの前記特定のアクチュエータとは異なる他の車輪ブレーキアクチュエータに流体圧を加えるように運転者ブレーキペダル力(48)に応答する第2のピストンを有する第2のボア(20)と、
前記チャンバからの前記倍力流体圧を利用して倍力を前記第2のピストンに供給するための流体通路(82)とをさらに備える、請求項5に記載の電気倍力式車両ブレーキシステム。
【請求項9】
前記マスターシリンダ筐体は、往復動可能に内部配置された第2のピストン(24)を有して前記第2のピストンと共に第2(28)および第3(30)の可変容積チャンバを前記第2のピストンの両側のそれぞれに画定する第2のボア(20)をさらに含み、前記第2のピストンは、前記第2のチャンバの前記容積を減少させて、前記車輪ブレーキアクチュエータのうちの前記特定のアクチュエータとは異なる他の車輪ブレーキアクチュエータに流体圧を加えるように、運転者ブレーキペダル力に応答する、請求項5に記載の電気倍力式車両ブレーキシステム。
【請求項10】
前記筐体は、前記チャンバと前記第3のチャンバとを結合する導管(82)を含み、それによって運転者ブレーキペダル力の印加時に、前記車輪ブレーキアクチュエータのうちの前記特定のアクチュエータに加えられた前記流体圧は、前記第2のピストンに加えられた前記運転者ブレーキペダル力を増加するために、前記第2のピストンにも加えられる、請求項9に記載の電気倍力式車両ブレーキシステム。
【請求項11】
運転者ブレーキペダル(80)および個別の車輪ブレーキアクチュエータ(76、78)を有する車両ブレーキシステムで使用するマスターシリンダ(12)であって、
マスターシリンダ筐体(16)と、
前記筐体中の第1の略円筒形ボア(18)と、
前記第1のボアの中で往復動可能に配置されて、前記ボアと共に第1の可変容積チャンバ(26)を画定する第1のピストン(22)と、
前記筐体中の第2の略円筒形ボア(20)と、
前記第2のボアの中で往復動可能に配置されて、前記ボアと共に第2(28)および第3(30)の可変容積チャンバを画定する第2のピストン(24)とを備え、
前記第1および第2のチャンバは、流体を受け入れて前記ブレーキシステム中の流体レベルを所望のレベルに維持するように貯槽(14)に連結され、かつブレーキを効かせるように加圧流体を供給するために後輪および前輪ブレーキアクチュエータ(76、78)にそれぞれ連結されており、
前記第1のピストンに結合され、前記第1のチャンバの容積を減少させて流体圧を前記後輪ブレーキアクチュエータに加える方向へ前記第1のピストンを押圧するように、運転者ブレーキペダル力に応答して動作可能な電気機械装置と、
前記第2のピストンと前記運転者ブレーキペダルとの間にあって、前記第2のチャンバの容積を減少させて流体圧を前記前輪ブレーキアクチュエータに加える方向へ前記第2のピストンを押圧するように、運転者ブレーキペダル力(48)に応答して動作可能な機械式結合部(44、46)と、
前記第2のチャンバの容積を減少させて流体圧を前記前輪ブレーキアクチュエータに加える方向へ前記第2のピストンを押圧する運転者ブレーキペダル力を補うように、流体圧を前記第1のチャンバから供給するように前記第1のチャンバと前記第3のチャンバとを相互連結する流体結合導管(82)とを備えるマスターシリンダ。
【請求項12】
前記第1の可変容積チャンバの前記容積を最大化する方向へ前記第1のピストンを付勢するために、前記第1のボアの中に配置された第1の戻しばね(32)と、前記第2の可変容積チャンバの前記容積を最大化しかつ前記第3の可変容積チャンバの前記容積を最小化する方向へ前記第2のピストンを付勢するために、前記第2のボアの中に配置された第2の戻しばね(34)とをさらに備える、請求項11に記載のマスターシリンダ。
【請求項13】
前記電気機械装置は、
ボア軸線に平行な前記第1のボアの側壁に沿って長手方向へ延びる溝穴(60)と、
前記第1のボアの中へ延びるねじ付き部分(54)を含む出力シャフト(52)を有する可逆電気モータ(50)と、
前記ねじ付き部分の上に螺合して受け入れられて、前記シャフト回りのナットの回転を防止するために前記側壁溝穴の中へ延びるキー(58)を含むナット(56)とを備え、前記ナットは、第1の検知においてシャフト回転に応答して、前記第1のチャンバの容積を減少させて流体圧を前記後輪ブレーキアクチュエータに加える方向へ前記第1のピストンに係合して前記ピストンを移動させ、かつ第2の検知においてシャフト回転に応答して、前記第1のピストンを解放して前記第1のチャンバの容積の増大を可能にする、請求項12に記載のマスターシリンダ。
【請求項14】
前記電気機械装置は、前記後輪ブレーキアクチュエータ用の流体圧を発生させる唯一の力を供給する、請求項11に記載のマスターシリンダ。
【請求項15】
電力がない状態で、前記第2のピストンと前記運転者ブレーキペダルとの間の前記機械式結合部は、前記後輪ブレーキアクチュエータが非動作状態に留まる間、流体圧を前記前輪ブレーキアクチュエータに加えるように、運転者ブレーキペダル力に応答して動作可能である、請求項11に記載のマスターシリンダ。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−116145(P2010−116145A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−245352(P2009−245352)
【出願日】平成21年10月26日(2009.10.26)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】