説明

浮腫の予防、遅延または軽減のためのジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤の使用

治療的有効量のDPP−IV阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を、処置を必要とする患者に投与することを含む、浮腫の発生を予防、進行遅延または軽減する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮腫、例えば末梢性浮腫または薬剤誘発浮腫の発生の予防、進行遅延または軽減のために、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤(DPP−IV阻害剤)またはその薬学的に許容される塩を患者に投与する、処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処置患者は、好ましくは高血圧、高血糖、例えば真性糖尿病、好ましくは非インスリン依存性真性糖尿病またはグルコース代謝障害(IGM)、好ましくは耐糖能障害(IGT)を有する。
【0003】
真性糖尿病は、比較的一般的な障害(一般的集団における約1%有病率と概算される)であり、高血糖により特徴付けられる。真性糖尿病には3種の基本的な型、I型またはインスリン依存性真性糖尿病(IDDM)、II型または非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)、およびA型インスリン抵抗性が存在する。I型またはII型糖尿病の患者はいずれも、種々の機構を介して外来インスリンに不感性(“インスリン抵抗性”)となり得る。A型インスリン抵抗性は、インスリン受容体遺伝子の変異またはグルコース代謝に必須の受容体後作用部位の欠損のいずれかが原因である。
【0004】
グルコース代謝障害(IGM)は、正常域を超えるが、2型真性糖尿病の診断基準に合うほどには充分に高くない血中グルコースレベルにより特徴付けられる。IGMの発生率は国毎に異なるが、通常明白な糖尿病よりも2−3倍の頻度で起こる。IGM対象において、約58%が耐糖能障害(IGT)を有し、他の29%が空腹時高血糖(IFG)を有し、そして13%が両方の異常(IFG/IGT)を有する。IGTは、上昇した食後(食事後)高血糖により特徴付けられ、一方IFGは、空腹時血糖値に基づき定義される。
【0005】
2型糖尿病は進行性の疾患であり、一部の患者において最初は単剤療法で血中グルコースを管理できるが、高い二次的不成功率に繋がる。この治療不成功の高い発生率は、2型糖尿病患者における長期高血糖関連合併症の高い発生率に対する主たる寄与因子である。
【0006】
チアゾリジンジオン類は、2型真性糖尿病患者における血漿グルコース濃度の制御用医薬として有効であり、一般的に投与されている。チアゾリジンジオンは、常套的に使用される経口抗糖尿病剤である。しかしながらチアゾリジンジオン類は、その使用または安全性を制限する顕著な安全性/耐容性問題を有する。
【0007】
事実、チアゾリジンジオン類の主な安全性上の問題は、処置患者における浮腫の発生の増加であることがよく知られている。体液貯留が、チアゾリジンジオン類を摂取する5%〜15%の患者で起こる。これらの患者の一部で、チアゾリジンジオン類使用は黄斑浮腫の原因であるように思われ、投薬休止が末梢および黄斑浮腫の急速な解消をもたらすことが観察されている。チアゾリジンジオン類使用と関連する体液貯留は、特に末梢性浮腫が付随する糖尿病性黄斑浮腫(DME)患者の処置選択肢を評価するときに考慮しなければならない。ロシグリタゾンおよびピオグリタゾンでの大規模臨床試験において、チアゾリジンジオン処置患者における浮腫の頻度は、プラセボ処置患者より約3〜4倍高かった。末梢性浮腫に加えて、報告はチアゾリジンジオン治療と関連する肺浮腫も記載していた。チアゾリジンジオン関連浮腫の管理のための選択肢は、用量低減、投薬中止、および利尿剤での対症的治療を含む。しかしながら、これは、チアゾリジンジオン類処置に依存する糖尿病性患者にとって適切な解決ではない。
【発明の概要】
【0008】
出願人は、DPP−IV阻害剤、特にビルダグリプチン、またはその薬学的に許容される塩が、患者の浮腫の発生率を減少できることを発見した。
【0009】
特に、驚くべきことに、出願人は、DPP−IV阻害剤、特にビルダグリプチン、またはその薬学的に許容される塩を、チアゾリジンジオン関連浮腫の発生を軽減するために、チアゾリジンジオン類、例えば1種または2種のチアゾリジンジオン類、またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて使用することができることを発見した。すなわち、このような組み合わせでの長期処置は、他の組み合わせよりも不都合な浮腫副作用が顕著に少ない。
【0010】
抗糖尿病性チアゾリジンジオン(すなわちグリタゾン)は、例えば、(S)−((3,4−ジヒドロ−2−(フェニル−メチル)−2H−1−ベンゾピラン−6−イル)メチル−チアゾリジン−2,4−ジオン(エングリタゾン)、5−{[4−(3−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−1−オキソプロピル)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ダルグリタゾン)、5−{[4−(1−メチル−シクロヘキシル)メトキシ)−フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(シグリタゾン)、5−{[4−(2−(1−インドリル)エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(DRF2189)、5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−エトキシ)]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(BM−13.1246)、5−(2−ナフチルスルホニル)−チアゾリジン−2,4−ジオン(AY−31637)、ビス{4−[(2,4−ジオキソ−5−チアゾリジニル)メチル]フェニル}メタン(YM268)、5−{4−[2−(5−メチル−2−フェニル−4−オキサゾリル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(AD−5075)、5−[4−(1−フェニル−1−シクロプロパンカルボニルアミノ)−ベンジル]−チアゾリジン−2,4−ジオン(DN−108)5−{[4−(2−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)エトキシ)フェニルメチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[3−(4−クロロ−フェニル])−2−プロピニル]−5−フェニルスルホニル)チアゾリジン−2,4−ジオン、5−[3−(4−クロロフェニル])−2−プロピニル]−5−(4−フルオロフェニル−スルホニル)チアゾリジン−2,4−ジオン、5−{[4−(2−(メチル−2−ピリジニル−アミノ)−エトキシ)フェニル]メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(ロシグリタゾン)、5−{[4−(2−(5−エチル−2−ピリジル)エトキシ)フェニル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(ピオグリタゾン)、5−{[4−((3,4−ジヒドロ−6−ヒドロキシ−2,5,7,8−テトラメチル−2H−1−ベンゾピラン−2−イル)メトキシ)−フェニル]−メチル}−チアゾリジン−2,4−ジオン(トログリタゾン)、5−[6−(2−フルオロ−ベンジルオキシ)ナフタレン−2−イルメチル]−チアゾリジン−2,4−ジオン(MCC555)、5−{[2−(2−ナフチル)−ベンズオキサゾール−5−イル]−メチル}チアゾリジン−2,4−ジオン(T−174)および5−(2,4−ジオキソチアゾリジン−5−イルメチル)−2−メトキシ−N−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)ベンズアミド(KRP297)である。
【0011】
“ピオグリタゾン”、“ロシグリタゾン”のような特定のグリタゾンはまた、その薬学的に許容される塩、その結晶形態、水和物、溶媒和物、ジアステレオ異性体またはエナンチオマーの何れをも含むことを意図する。
【0012】
チアゾリジンジオン抗糖尿病剤、特にグリタゾンの成人糖尿病性患者(体重:50kg)への投与のために、例えば、1日当たりの用量は通常0.01〜1000mg、好ましくは0.1〜500mgである。この投与量は1日1回〜数回で投与できる。特に、塩酸ピオグリタゾンをインスリン増感剤として使用するとき、1日当たりの塩酸ピオグリタゾンの用量は、通常7.5〜60mg、好ましくは15〜45mgである。トログリタゾンをインスリン増感剤として使用するとき、1日当たりのトログリタゾンの用量は、通常100〜1000mg、好ましくは200〜600mgである。ロシグリタゾン(またはそのマレイン酸塩)をインスリン増感剤として使用するとき、1日当たりのロシグリタゾンの投与量は、通常1〜12mg、好ましくは2〜12mgである。
【0013】
チアゾリジンジオン(グリタゾン)は、好ましくはピオグリタゾン、塩酸ピオグリタゾン、トログリタゾンまたはロシグリタゾン(またはそのマレイン酸塩)、特に、好ましくは塩酸ピオグリタゾンまたはマレイン酸ロシグリタゾンである。
【0014】
アクトス(登録商標)(ピオグリタゾンHCl)の投与量は、単剤療法で、またはスルホニルウレア、メトホルミン、またはインスリンとの組み合わせで、1日1回45mgを超えてはならない。メトホルミンと組み合わせたアクトスは、15mgまたは30mg 1日1回から始め得る。続行中のメトホルミン投与量をアクトス治療の開始に際して維持してよい。メトホルミン投与量を、アクトスとの組み合わせ治療中に起こる低血糖のために調節する必要は殆ど生じない。アクトスは15mg、30mg、および45mg錠剤で入手可能である。
【0015】
AVANDIA(登録商標)(マレイン酸ロシグリタゾン)は、1日1回投与として、または分割して朝晩に投与のいずれかで、開始投与量4mgで投与し得る。8〜12週間の処置の後にFPGの低下で評価した応答が不適切な患者については、投与量を、単剤療法として、またはメトホルミンと組み合わせて、1日8mgに上げてよい。AVANDIAの投与量は、1回投与量として、または分割1日2回投与として、1日8mgを超えてはならない。AVANDIAは、2mg、4mg、および8mg錠剤で入手可能である。
【0016】
メトホルミンおよびチアゾリジンジオン誘導体を含む市販の組み合わせも本発明に従い使用できる。特にロシグリタゾンをメトホルミンと組み合わせて、例えば商品名AVANDAMET(登録商標)の下に市販されている形で投与することも可能である。AVANDAMETでの抗糖尿病治療の投与量は、8mg/2,000mgの最大推奨1日投与量を超えずに、有効性および耐容性に基づいて個々に決定すべきである。AVANDAMET(登録商標)は、種々の錠剤で提供される。各錠剤はマレイン酸塩としてのロシグリタゾンおよび塩酸メトホルミンを以下の通り、含む:1mg/500mg、2mg/500mg、4mg/500mg、2mg/1,000mg、4mg/1,000mg。
【0017】
本文脈において、用語“チアゾリジンジオン”はまたその全ての塩または結晶形態、例えばロシグリタゾンマレイン酸塩を含むことも意図する。
【0018】
メトホルミンは、NIDDMの患者の血中グルコースを低下させるために広範に処方されており、500、750、850および1000mg量(strength)で市販されている。しかしながら、短時間作用型医薬であるため、メトホルミンは1日2回または1日3回投与が必要である(500−850mg錠2−3回/日または1000mgを1日2回、食事と共に)。米国特許3,174,901に開示されたビグアナイド抗高血糖剤メトホルミンは、現在米国でその塩酸塩の形で市販されている((Glucophage@), Bristol-Myers Squibb Company)。メトホルミン(ジメチルジグアニド)およびその塩酸塩の製造法は技術水準を構成し、Emil A. Werner and James Bell, J. Chem. Soc. 121, 1922, 1790-1794に最初に開示された。メトホルミンは、例えば商品名GLUCOPHAGETMの下に市販されている形で投与できる。
【0019】
メトホルミンは、宿主の末端組織におけるインスリンに対する感受性を増大させる。メトホルミンはまた、腸からのグルコース吸収阻害、肝臓における糖新生抑制、および脂肪酸酸化阻害にも関与する。メトホルミンの適当なレジメンは、500mgの単位用量1日2または3回を含み、1日5回までさえ増えてよく、または、850mgを1日1回または2回である。[Martindale, The Complete Drug Reference]。
【0020】
ここで使用する用語“メトホルミン”は、メトホルミンまたはその薬学的に許容される塩、例えば1999年3月4日出願の米国出願番号09/262,526に開示の通りの塩酸塩、メトホルミン(2:1)フマル酸塩、およびメトホルミン(2:1)コハク酸塩、臭化水素酸塩、p−クロロフェノキシ酢酸塩またはエンボナート、および米国特許3、174,901に開示のものを含む、他の既知の一および二塩基性カルボン酸のメトホルミン塩を意味し、全てのこの塩を集合的にメトホルミンと呼ぶ。ここで用いるメトホルミンがメトホルミン塩酸塩、すなわち、GLUCOPHAGE-DまたはGLUCOPHAGE XR(Bristol-Myers Squibb Companyの商標)として市販されているものであることが好ましい。
【0021】
用語“DPP−IV阻害剤”は、DPP−IVおよび機能的に関連する酵素の酵素活性の、1−100%阻害を示し、そして特に、グルカゴン様ペプチド−1、胃阻害ポリペプチド、ペプチドヒスチジンメチオニン、サブスタンスP、ニューロペプチドY、および典型的にアラニンまたはプロリン残基を2番目のアミノ末端位置に含む他の分子を含み、これに限定されない基質分子に対する作用を保存する分子を示すことを意図する。DPP−IV阻害剤での処置はペプチド基質の作用時間を延長し、その無傷な、非分解形態の濃度を増加させ、本明細書の開示に係る生物学的活性のスペクトルを形成する。
【0022】
DPP−IVは、その基質がインスリン分泌性ホルモングルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)および胃阻害ペプチド(GIP)を含むため、グルコース代謝の制御に使用できる。GLP−1およびGIPはその無傷の形態でのみ活性であり;それらの2個のN末端アミノ酸の除去が、それらを不活性にする。DPP−IVの合成阻害剤のインビボ投与は、GLP−1およびGIPのN末端分解を阻止し、これらのホルモンの高い血漿濃度、インスリン分泌の増加、そしてそれ故に、糖耐性改善をもたらす。この目的のために、化学物質を、精製CD26/DPP−IVの酵素活性を阻害するそれらの能力について試験する。要するに、CD26/DPP−IVの活性を、インビトロで合成基質Gly−Pro−p−ニトロアニリド(Gly−Pro−pNA)を開裂するその能力について測定する。DPP−IVによるGly−Pro−pNAの開裂は生成物p−ニトロアニリド(pNA)を遊離させ、その出現速度が酵素活性に直接比例する。特異的酵素阻害剤による酵素活性阻害が、pNAの産生を遅延させる。阻害剤と酵素の間の相互作用が強い程、pNA産生速度が遅くなる。それ故、pNA蓄積の速度を阻害する程度が、酵素阻害の強度の直接指標である。pNAの蓄積は、分光光度計で測定する。各化合物についての阻害定数、Kiを、一定量の酵素と数種の異なる濃度の阻害剤および基質をインキュベートすることにより決定する。
【0023】
本文脈において、“DPP−IV阻害剤”は、その活性代謝物およびプロドラッグ、例えばDPP−IV阻害剤の活性代謝物およびプロドラッグを含むことも意図する。“代謝物”は、DPP−IV阻害剤が代謝されたときに産生される、DPP−IV阻害剤の活性誘導体である。“プロドラッグ”は、DPP−IV阻害剤に代謝されるか、またはDPP−IV阻害剤と同じ代謝物(複数もある)に代謝されるいずれかの化合物である。本文脈において、用語“DPP−IV阻害剤”はまた、その薬学的塩を含むことも意図する。
【0024】
DPP−IV阻害剤は当分野で既知である。以下に、代表的DPP−IV阻害剤を記載する:
好ましいDPP−IV阻害剤は、下記特許出願に記載される;WO02053548(特に化合物1001〜1293および実施例1〜124)、WO02067918(特に化合物1000〜1278および2001〜2159)、WO02066627(特に記載の実施例)、WO02/068420(特に実施例I〜LXIIIに具体的に列記された全ての化合物および記載の対応する類似体、さらに好ましい化合物は、IC50を報告している表の2(28)、2(88)、2(119)、2(136))、WO02083128(例えば請求項1〜5、特に実施例1〜13および請求項6〜10に記載された化合物)、US2003096846(特に具体的に記載された化合物)、WO2004/037181(特に実施例1〜33)、WO0168603(特に実施例1〜109の化合物)、EP1258480(特に実施例1〜60の化合物)、WO0181337(特に実施例1〜118)、WO02083109(特に実施例1A〜1D)、WO030003250(特に実施例1〜166、最も好ましくは1〜8の化合物)、WO03035067(特に実施例に記載された化合物)、WO03/035057(特に実施例に記載された化合物)、US2003216450(特に実施例1〜450)、WO99/46272(特に請求項12、14、15および17の化合物)、WO0197808(特に請求項2の化合物)、WO03002553(特に実施例1〜33の化合物)、WO01/34594(特に実施例1〜4に記載された化合物)、WO02051836(特に実施例1〜712)、EP1245568(特に実施例1〜7)、EP1258476(特に実施例1〜32)、US2003087950(特に記載の実施例)、WO02/076450(特に実施例1〜128)、WO03000180(特に実施例1〜162)、WO03000181(特に実施例1〜66)、WO03004498(特に実施例1〜33)、WO0302942(特に実施例1〜68)、US6482844(特に記載の実施例)、WO0155105(特に実施例1および2に記載された化合物)、WO0202560(特に実施例1〜166)、WO03004496(特に実施例1〜103)、WO03/024965(特に実施例1〜54)、WO0303727(特に実施例1〜209)、WO0368757(特に実施例1〜88)、WO03074500(特に実施例1〜72、実施例4.1〜4.23、実施例5.1〜5.10、実施例6.1〜6.30、実施例7.1〜7.23、実施例8.1〜8.10、実施例9.1〜9.30)、WO02038541(特に実施例1〜53)、WO02062764(特に実施例1〜293、好ましくは実施例95の化合物(2−{{3−(アミノメチル)−4−ブトキシ−2−ネオペンチル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリニル}オキシ}アセトアミドヒドロクロライド))、WO02308090(特に実施例1−1〜1−109、実施例2−1〜2−9、実施例3、実施例4−1〜4−19、実施例5−1〜5−39、実施例6−1〜6−4、実施例7−1〜7−10、実施例8−1〜8−8、90頁の実施例7−1〜7−7、91〜95頁の実施例8−1〜8−59、実施例9−1〜9−33、実施例10−1〜10−20)、US2003225102(特に化合物1〜115、実施例1〜121の化合物、好ましくは化合物a)〜z)、aa)〜az)、ba)〜bz)、ca)〜cz)およびda)〜dk))、WO0214271(特に実施例1〜320)、US2003096857、2001年2月16日出願の米国出願番号09/788,173(代理人ファイル番号LA50)(特に記載の実施例)、WO99/38501(特に記載の実施例)、W099/46272(特に記載の実施例)およびDE19616486A1(特にval−pyr、val−チアゾリジド、イソロイシル−チアゾリジド、イソロイシル−ピロリリド、およびイソロイシル−チアゾリジドおよびイソロイシル−ピロリリドのフマル酸塩)。
【0025】
さらに好ましいDPP−IV阻害剤は、米国特許6124305およびUS6107317、国際特許出願、公開番号WO9819998、WO9515309およびWO9818763に開示された特異的実施例;例えば1[2−[(5−シアノ(eyano)ピリジン−2−イル)アミノエチルアミノ]アセチル−2−シアノ−(S)−ピロリジンおよび(2S)−I−[(2S)−2−アニリノ(arnino)−3,3−ジメチルブタノイル]−2−ピロリジンカルボニトリルを含む。
【0026】
さらに好ましい態様において、DPP−IV阻害剤は、N−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミンまたはその薬学的に許容される塩である。ペプチジル部分は、好ましくは2個のα−アミノ酸、例えばグリシン、アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、リシンまたはプロリンを含み、その中で、ヒドロキシルアミン窒素原子に直接結合しているのは、好ましくはプロリンである。
【0027】
特に請求の化合物および作業実施例の最終生成物における各場合、最終生成物、医薬製剤および請求項の主題を、これらの公報の引用により本明細書に包含させる。
【0028】
WO9819998は、N−(N'−置換グリシル)−2−シアノピロリジン類、特に1−[2−[5−シアノピリジン−2−イル]アミノ]−エチルアミノ]アセチル−2−シアノ−(S)−ピロリジンを開示する。
【0029】
WO03/002553に記載されている好ましい化合物は、9〜11頁に列記されており、引用により本明細書に包含させる。
【0030】
DE19616486A1は、val−pyr、val−チアゾリジド、イソロイシル−チアゾリジド、イソロイシル−ピロリリド、およびイソロイシル−チアゾリジドおよびイソロイシル−ピロリリドのフマル酸塩を開示する。
【0031】
WO0034241およびUS6110949は、N−置換アダマンチル−アミノ−アセチル−2−シアノピロリジン類およびW(置換グリシル)−4−シアノピロリジン類を各々開示する。目的のDPP−IV阻害剤は、特に請求項1〜4に言及されているものである。
【0032】
WO9515309は、DPP−IV阻害剤としてのアミノ酸2−シアノピロリジンアミド類を開示し、WO9529691は、アルファ−アミノアルキルホスホン酸のジエステル類のペプチジル誘導体、特にプロリンまたは関連構造を有するものを開示する。目的のDPP−IV阻害剤は、特に表1〜8に言及されているものである。
【0033】
WO01/72290において、目的のDPP−IV阻害剤は、特に実施例1および請求項1、4および6に言及されているものである。
【0034】
WO01/52825は、(S)−1−{2−[5−シアノピリジン−2yl)アミノ]エチル−アミノアセチル)−2−シアノ−ピロリジンまたは(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジン(LAF237)を開示する。
【0035】
WO9310127は、DPP−IV阻害剤として有用なプロリンボロン酸エステル類を開示する。目的のDPP−IV阻害剤は、特に実施例1〜19に言及されているものである。
【0036】
公開特許出願WO9925719は、ストレプトマイセス微生物の培養により製造したDPP−IV阻害剤であるスルフォスチンを開示する。
【0037】
WO9938501は、N−置換4〜8員ヘテロ環式環を開示する。目的のDPP−IV阻害剤は、特に請求項15〜20に言及されているものである。
【0038】
WO9946272は、DPP−IV阻害剤としてのリン化合物を開示する。目的のDPP−IV阻害剤は、特に請求項1〜23に言及されているものである。
【0039】
他の好ましいDPP−IV阻害剤は、特許出願WO03/057200の14〜27頁に開示された式I、IIまたはIIIの化合物である。最も好ましいDPP−IV阻害剤は、28および29頁に具体的に記載された化合物である。
【0040】
公開特許出願WO9967278およびWO9967279は、A−B−C(式中、Cは安定または不安定DPP−IV阻害剤のいずれかである)の形のDPP−IVプロドラッグおよび阻害剤を開示する。
【0041】
好ましくは、N−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミンは、式VII
【化1】

〔式中、
jは0、1または2であり;
Rεは、天然アミノ酸の側鎖であり;そして
Rεは、低級アルコキシ、低級アルキル、ハロゲンまたはニトロである。〕
の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0042】
本発明の非常に好ましい態様において、N−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミンは、式VIIa
【化2】

の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0043】
例えば式VIIまたはVIIaの、N−ペプチジル−O−アロイルヒドロキシルアミン類、およびそれらの製造方法は、H.U. Demuth et al. in J. Enzyme Inhibition 1988, Vol. 2、129−142頁、特に130−132頁に記載されている。
【0044】
好ましいDPP−IV阻害剤は、Mona Patelおよび同僚(Expert Opinion Investig Drugs. 2003 Apr;12(4):623-33)のパラグラフ5に記載のもの、特にP32/98、K−364、FE−999011、BDPX、NVP−DDP−728およびその他であり、この刊行物、特に記載のDPP−IV阻害剤を、引用により本明細書に包含させる。
他の好ましいDPP−IV阻害剤は、田辺のNo. 815541(T 6666)である。
【0045】
好ましいDPP−IV阻害剤は、特許出願WO02/083128(特に実施例1〜13に記載された化合物)、US6,395,767(実施例1〜109)およびWO03/033671(全ての具体的に記載された化合物、例えば化合物1〜393、67−70頁の化合物)にも記載されている。
FE−999011は、WO95/15309の14頁に、化合物番号18として記載されている。
【0046】
他の好ましい阻害剤は、WO2001068603または米国特許6,395,767(実施例60の化合物)に開示された化合物BMS−477118であり、また、特許出願WO2004/052850の2頁の式Mで示される(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル、ベンゾエート(1:1)および、特許出願WO2004/052850の3頁の式Mに記載された対応する遊離塩基、(lS,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシ−トリシクロ[3.3.1.13,7]デク−1−イル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ−[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリル(M')およびその一水和物(M”)としても既知である。化合物BMS−477118は、サクサグリプチンとしても既知である。
【0047】
他の好ましい阻害剤は、WO03/002531(実施例9)に開示された化合物GSK23Aであり、(2S,4S)−1−((2R)−2−アミノ−3−[(4−メトキシベンジル)スルホニル]−3−メチルブタノイル)−4−フルオロピロリジン−2−カルボニトリルヒドロクロライドとしても既知である。
【0048】
3−[(2S,3S)−2−アミノ−3−メチル−1−オキソペンチル]チアゾリジンとしても既知のP32/98(CAS number: 251572-86-8)は、3−[(2S,3S)−2−アミノ−3−メチル−1−オキソペンチル]チアゾリジンおよび(2E)−2−ブテンジオエート(2:1)混合物としても使用でき、WO99/61431に開示され、下記式
【化3】

はWO99/61431に開示され、またProbiodrug名でDiabetes 1998, 47, 1253-1258にも記載され、化合物P93/01は同社により記載されている。
【0049】
他の非常に好ましいDPP−IV阻害剤は、特許出願WO02/083128の、例えば請求項1〜5に開示の化合物である。最も好ましいDPP−IV阻害剤は、実施例1〜13および請求項6〜10に具体的に記載された化合物である。
【0050】
他の非常に好ましいDPP−IV阻害剤は、サクサグリプチン(BMS477118)のようなBristol-Myers Squibbにより開示された化合物である。
【0051】
他の非常に好ましい本発明のDPP−IV阻害剤は、国際特許出願WO02/076450(特に実施例1〜128)およびWallace T. Ashton (Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 14 (2004) 859-863)により記載され、特に化合物1および表1および2に記載された化合物である。好ましい化合物は、式:
【化4】

の化合物21e(表1)である。
【0052】
他の好ましいDPP−IV阻害剤は、特許出願WO2004/037169(特に実施例1〜48に記載のもの)およびWO02/062764(特に記載の実施例1〜293)に記載され、さらに好ましいのは、特許出願WO2004/024184の7頁に記載された化合物3−(アミノメチル)−2−イソブチル(isobuthyl)−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル(isobuthyl)−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミドおよびまた、特に参考実施例1〜4において記載されたものである。
【0053】
他の好ましいDPP−IV阻害剤は、特許出願WO03/004498、特に実施例1〜33に記載され、そして最も好ましくは実施例7に記載され、MK−0431またはシタグリプチンとしても既知の、式
【化5】

の化合物である。シタグリプチンの好ましい1日投与量は25〜100mgである。
【0054】
特に請求の化合物および実施例の最終生成物における各場合、最終生成物、医薬製剤および請求項の主題を、これらの公報の引用により本明細書に包含させる。
【0055】
好ましいDPP−IV阻害剤は、特許出願WO2004/037181、特に実施例1〜33に開示され、最も好ましくは請求項3〜5に記載された化合物である。
【0056】
好ましいDPP−IV阻害剤は、N−置換アダマンチル−アミノ−アセチル−2−シアノピロリジン類、N(置換グリシル)−4−シアノピロリジン類、N−(N'−置換グリシル)−2−シアノピロリジン類、N−アミノアシルチアゾリジン類、N−アミノアシルピロリジン類、L−allo−イソロイシルチアゾリジン、L−threo−イソロイシルピロリジン、およびL−allo−イソロイシルピロリジン、1−[2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチルアミノ]アセチル−2−シアノ−(S)−ピロリジン、シタグリプチンおよびその薬学的塩である。
【0057】
最も好ましいDPP−IV阻害剤は、[S]−1−[2−(5−シアノ−2−ピリジニルアミノ)エチルアミノ]アセチル−2−ピロリジンカルボニトリル一塩酸塩、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンおよびL−threo−イソロイシルチアゾリジン(Probiodrugに従う化合物コード:上記の通りP32/98)、シタグリプチン、3−(アミノメチル)−2−イソブチル(isobuthyl)−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル(isobuthyl)−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミドおよび所望によりその薬学的塩から選択される。
【0058】
[S]−1−[2−(5−シアノ−2−ピリジニルアミノ)エチルアミノ]アセチル−2−ピロリジンカルボニトリル一塩酸塩および(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンは、WO98/19998の実施例3およびWO00/34241の実施例1に各々具体的に記載されている。DPP−IV阻害剤P32/98(上記参照)は、Diabetes 1998, 47, 1253-1258に具体的に記載されている。[S]−1−[2−(5−シアノ−2−ピリジニルアミノ)エチルアミノ]アセチル−2−ピロリジンカルボニトリル一塩酸塩および(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンは、WO98/19998の20頁またはWO00/34241に記載の通りに製剤できる。
【0059】
特に好ましいのは、式:
【化6】

の1−{2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチルアミノ}アセチル−2−(S)−シアノ−ピロリジン(別名[S]−1−[2−(5−シアノ−2−ピリジニルアミノ)エチルアミノ]アセチル−2−ピロリジンカルボニトリル一塩酸塩)、特にその二塩酸塩および一塩酸塩形態、

【化7】

のピロリジン、1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−、(S)(別名(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジン、LAF237またはビルダグリプチン)、および
L−threo−イソロイシルチアゾリジン(Probiodrugに従う化合物コード:上記の通りP32/98)、シタグリプチン、GSK23A、サクサグリプチン、3−(アミノメチル)−2−イソブチル(isobuthyl)−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル(isobuthyl)−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミドおよび所望によりいずれの場合もその薬学的塩である。
【0060】
DPP728およびLAF237は、WO98/19998の実施例3およびWO00/34241の実施例1に各々具体的に開示されている。DPP−IV阻害剤P32/98(上記参照)は、Diabetes 1998, 47, 1253-1258に具体的に記載されている。DPP728およびLAF237は、WO98/19998の20頁またはWO00/34241、または国際特許出願番号EP2005/000400(出願番号)に記載の通りに製剤できる。
【0061】
引用により本明細書に包含させる上記の特許文献または科学刊行物に開示の物質のいずれも、本発明の実施に際して使用するのに有用な可能性のあるDPP−IV阻害剤であると見なす。
【0062】
本発明に従い単独で使用するDPP−IV阻害剤は、担体と一緒に使用してよい。
【0063】
本文脈における担体は、包埋されている特異的物質を細胞膜を通過して、そして細胞に輸送する、ツール(天然、合成、ペプチド性、非ペプチド性)、例えばタンパク質である。各々が一つの物質または類似物質の群のみを認識するように設計されているため、異なる担体(天然、合成、ペプチド性、非ペプチド性)が、異なる物質を輸送するために必要である。
【0064】
当業者により既知の任意の検出手段を使用して、例えば、担体を標識することにより、DPP−IVと担体の結合を検出できる。
【0065】
DPP−IV阻害剤はペプチド性であってよく、または、好ましくは、非ペプチド性のものである。
最も好ましいのは、経口で活性のDPP−IV阻害剤およびその薬学的塩である。
【0066】
CCB(カルシウムチャネルブロッカー)のクラスは、本質的にジヒドロピリジン類(DHP)およびジルチアゼム型およびベラパミル型CCBのような非DHPを本質的に含む。CCBの主要な安全性問題は、処置患者における浮腫の増加であることが知られている。
【0067】
CCBは、好ましくはアムロジピン、フェロジピン、リオシジン(ryosidine)、イスラジピン、ラシジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニグルジピン、ニルジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、およびニバルジピンから成る群から選択されるDHP代表例、および、好ましくはフルナリジン、プレニラミン、ジルチアゼム、フェンジリン、ガロパミル、ミベフラジル、アニパミル、チアパミルおよびベラパミルから成る群から選択される非DHP代表例、およびいずれの場合も、その薬学的に許容される塩またはプロドラッグである。全てのこれらのCCBは、例えば抗高血圧、抗−狭心症または抗不整脈剤として、治療的に使用される。
【0068】
好ましいCCBは、ムロジピン、ジルチアゼム、イスラジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、およびベラパミル、または、例えば特異的CCBによって、その薬学的に許容される塩またはプロドラッグを含む。DHPとして特に好ましいのは、アムロジピンまたはその薬学的に許容される塩、特にベシル酸塩である。非DHPの特に好ましい代表例は、ベラパミルまたはその薬学的に許容される塩、特に塩酸塩である。CCBは、好ましくはアムロジピンまたはその薬学的に許容される塩、特にベシル酸塩である。CBBは、好ましくは1日約1mg〜約100mg、好ましくは1日約1〜10mg投与する。
【0069】
アムロジピンの場合、好ましい投与形態は、例えば、経口で投与するとき、1日約1mg〜約40mg、好ましくは2.5〜20mgを含む、例えば、錠剤またはカプセルである。特に好ましいのは、1日2.5、5および10mg、特に5mgである。
【0070】
本発明に従う活性成分(例えばチアゾリジンジオン類、カルシウムチャネルブロッカーまたはDPP−IV阻害剤)またはその薬学的に許容される塩は、例えば水和物または結晶化に使用した他の溶媒を含むような、溶媒和物の形でも使用してよい。
【0071】
DPP−IV阻害剤、特にビルダグリプチンまたはその薬学的に許容される塩を、浮腫、特に薬剤関連浮腫、例えばチアゾリジンジオン関連浮腫の発生の予防、進行遅延または軽減に使用できることが、本発明により驚くべきことに判明した。
【0072】
それ故、第一の態様において、本発明は、処置を必要とする患者に、治療的有効量のチアゾリジンジオン、例えば1種または2種のチアゾリジンジオン類、またはその薬学的に許容される塩を、治療的有効量のDPP−IV阻害剤、好ましくはビルダグリプチン、またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて投与することを含む、チアゾリジンジオン関連浮腫の発生を予防、進行遅延または軽減する方法を提供する。
【0073】
本発明はまた、処置を必要とする患者に、治療的有効量のDPP−IV阻害剤、好ましくはビルダグリプチン、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、浮腫の発生を予防、進行遅延または軽減する方法を提供する。
【0074】
本発明は、さらに、チアゾリジンジオン関連浮腫の発生を予防、進行遅延または軽減するための医薬の製造のための、チアゾリジンジオン類、例えば1種または2種のチアゾリジンジオン類と組み合わせた、DPP−IV阻害剤、またはいずれの場合もその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0075】
本発明は、さらに、浮腫の発生を予防、進行遅延または軽減するための医薬の製造のための、DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0076】
浮腫が、好ましくはチアゾリジンジオン関連浮腫、すなわちチアゾリジンジオン類での処置に続発する、すなわちチアゾリジンジオン類、例えば1種または2種のチアゾリジンジオン類で処置している患者における浮腫である、上記の方法または使用。
【0077】
浮腫が、好ましくは薬剤関連浮腫、すなわち薬剤(薬理学的活性剤)での処置に続発する、すなわち薬剤(薬理学的活性剤)で処置している患者における浮腫である、上記の方法または使用。薬剤関連浮腫は、例えば抗糖尿病剤(例えばチアゾリジンジオン類、メトホルミンまたはインスリン)、抗高血圧剤(例えばカルシウムチャネルアンタゴニスト、レニン阻害剤、例えばアリスキレン、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、例えばバルサルタン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、例えばベナゼプリル、アルファアドレナリン受容体ブロッカー、例えばドキサゾシン、カルシウムチャネルブロッカー、例えばアムロジピンまたはジルチアゼム)のような1種または2種の薬剤での処置に由来し得る。
【0078】
浮腫が、好ましくは抗高血圧剤により誘発される浮腫、すなわち抗高血圧剤での処置に続発する、すなわち抗高血圧剤、例えば1種または2種の抗高血圧剤、例えばバルサルタン、アリスキレンまたはアムロジピンで処置している患者における浮腫である、上記の方法または使用。
【0079】
浮腫が、好ましくは末梢性浮腫、糖尿病性黄斑浮腫(DME)または肺浮腫、好ましくはチアゾリジンジオン関連浮腫またはカルシウムチャネルブロッカー関連浮腫である、上記の方法または使用。
【0080】
DPP−4阻害剤を、抗糖尿病剤および抗高血圧剤から選択される、好ましくはスルホニルウレア類、チアゾリジンジオン類、メトホルミン、インスリン、およびカルシウムチャネルブロッカーから選択される1種、2種または3種のさらなる化合物と組み合わせて投与する、上記の方法または使用。
【0081】
DPP−4阻害剤をチアゾリジンジオンおよびメトホルミンと組み合わせて投与する、上記の方法または使用。
【0082】
好ましくはここで請求する方法または使用における処置する患者は、チアゾリジンジオン類誘発浮腫副作用に苦しんでいる、チアゾリジンジオン類処置患者(例えば1種または2種のチアゾリジンジオン類)から選択する。
【0083】
好ましくはここで請求する方法または使用における処置する患者は、抗高血圧剤から選択される1種または2種の薬剤で治療されている、好ましくは抗高血圧剤誘発浮腫副作用またはカルシウムチャネルブロッカー誘発浮腫に苦しんでいる患者から選択する。
【0084】
好ましくは、DPP−IV阻害剤は(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジン(LAF237またはビルダグリプチン)またはその薬学的に許容される塩である。
【0085】
本文脈において、用語“(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジン”または“LAF237”または“ビルダグリプチン”はまた、その全ての塩または結晶形態も含むことを意図する。
【0086】
好ましくはチアゾリジンジオンは、ピオグリタゾンまたはロシグリタゾン、またはいずれの場合もまたはその薬学的に許容される塩から選択される。
【0087】
好ましくは処置患者は、高血糖または高血圧を有する。最も好ましくは、患者は、高血圧、真性糖尿病、I型またはインスリン依存性真性糖尿病(IDDM)、II型または非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)、A型インスリン抵抗性、IGM、IFGまたはIGTから選択される疾患を有する。好ましい態様において、患者はII型糖尿病またはIGTを有する。
【0088】
最も好ましい態様において、DPP−IV阻害剤を、疾患がチアゾリジンジオン類単独により適切に制御されなかった患者における標準糖尿病処置に付加する。
【0089】
本方法または使用は、特にII型糖尿病またはIGTと関連する状態、特に心血管および微小血管状態の予防または進行遅延に有用である。
【0090】
用語“浮腫の発生の減少”は、浮腫の頻度または重症度の減少を意味する。
浮腫は、異常が明白になる前から数リットル増え得る間質性液容量の臨床的に明白な増加として定義される。Anasarcaは総体的な、全身浮腫を述べている。Ascites and hydrothoraxは、腹腔および胸膜洞各々における過剰な液の蓄積を記載し、浮腫の特定の形態であると見なしている。静脈またはリンパ管閉塞による局在性浮腫は、静脈血栓症、慢性リンパ管炎、局所リンパ節切除、フィラリア症などが原因であり得る。全身浮腫を有する患者の大多数は進行した心臓、腎臓、肝臓、または栄養障害を有する。
【0091】
その原因および機構により、浮腫は局所であり得るか、または全身分布を有し得る;眼窩周囲領域に最も急速に現れる顔面の腫れぼったさにより、および“圧痕性”浮腫として知られる、押した後の皮膚の凹みの持続により、その全身な形態で認識される。そのより微妙な形態において、浮腫は、聴診器を胸壁から外した後、そのベル型頭部の縁の凹みが胸部の皮膚上に数分残ることが示されることにより検出され得る。指輪が昔よりもきちんと合う、または患者が特に夜に靴を履くのが困難であることを訴えるとき、浮腫が存在するかもしれない。
【0092】
用語“浮腫”は、局在性浮腫、全身性浮腫、末梢性浮腫、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、肺浮腫、薬剤関連浮腫、チアゾリジンジオン関連浮腫(例えばチアゾリジンジオン関連末梢性浮腫またはチアゾリジンジオン関連糖尿病性黄斑浮腫)、抗高血圧剤関連浮腫、例えばカルシウムチャネルブロッカー誘発浮腫を含み、これに限定されない。
【0093】
さらに、ここで使用する“1日量”は、24時間の期間内に投与する用量を意味する。
用語“予防”は、ここに記載の状態の発症を予防するために健常患者に組合せを予防的に投与することを意味する。さらに、用語“予防”は、処置すべき状態の前段階にある患者へのこのような組合せの予防的投与を意味する。
【0094】
ここで使用する用語“進行遅延”は、処置すべき状態の前段階である患者であって、ここで、対応する状態の前形態が診断された患者への、医薬製剤または医薬組成物のような組合せの投与を意味する。
【0095】
用語“処置”は、疾患、状態、または障害と戦う目的での患者の管理および治療と理解される。
ここで使用する用語“患者”は、疾患または障害、好ましくは高血圧、高血糖または糖尿病またはIGMを有する動物を意味する。好ましい動物は、イヌ、ネコ、ウマ、ウシおよびヒトのような哺乳動物である。患者がヒトであるのが好ましい。
【0096】
ここで使用する用語“疾患がチアゾリジンジオン単独により適切に制御されなかった”は、好ましくは糖尿病、2型糖尿病、IGTまたはIGMのような高血糖関連疾患を意味する。
【0097】
この分野で、好ましい患者集団年齢は45歳以降、最も好ましくは65歳以降である。
関連分野の当業者は、本発明の有益な効果を確認するための関連する試験モデルおよびプロトコールを充分に選択できる。
【0098】
本発明はまた
i) 50mg、100mgまたは150mgのビルダグリプチンまたはその薬学的に許容される塩をチアゾリジンジオンまたはその薬学的に許容される塩、好ましくは15〜45mgのピオグリタゾンまたは2〜8mgのロシグリタゾン、またはいずれの場合もその薬学的に許容される塩と組み合わせて、毎日、それを必要とする患者に投与する、
ii) 処置患チアゾリジンジオン関連浮腫に苦しんでいる患者から選択する、
処置レジメンにも関する。
【0099】
本発明はまた、
i) 50mg、100mgまたは150mgのビルダグリプチンまたはその薬学的に許容される塩を、チアゾリジンジオンまたはその薬学的に許容される塩、好ましくは15〜45mgのピオグリタゾンまたは2〜8mgのロシグリタゾン、またはいずれの場合もその薬学的に許容される塩と組み合わせて、毎日、それを必要とする患者に投与する、
ii) 処置患者が、疾患がチアゾリジンジオン単独により適切に制御されなかった患者である、そして
iii) 処置患チアゾリジンジオン関連浮腫に苦しんでいる患者から選択する
処置レジメンにも関連する。
【0100】
チアゾリジンジオンを、カルシウムチャネルブロッカー、例えばアムロジピンまたはその塩のような他の薬剤に置き換える、ここに記載の処置レジメン。
患者がまたCBB、インスリン、スルホニルウレアまたはメトホルミンのような1種または2種のさらなる活性剤の処置下にある、ここに記載の処置レジメン。
【0101】
250mg〜3000mgのメトホルミンまたはその塩を、毎日患者に投与する、ここに記載の処置レジメン、処置方法または使用。
【0102】
100mgのビルダグリプチンまたはその薬学的に許容される塩を毎日投与するとき、100mgのビルダグリプチン(OD − 1日1回)の1日1回投与、または50mgのビルダグリプチンの1日2回投与(すなわちbid)で投与できる。
【0103】
上記処置レジメンにおいて、用語“毎日”は、(S)−1−[(3−ヒドロキシ−1−アダマンチル)アミノ]アセチル−2−シアノ−ピロリジンまたはその薬学的に許容される塩(ビルダグリプチン)およびチアゾリジンジオンまたはカルシウムチャネルブロッカーのようなさらなる薬剤に適用される。
【0104】
好ましくは上記の方法または使用または処置レジメンにおける処置患者は、高血糖または高血圧を有する。最も好ましくは高血糖を有する患者は、真性糖尿病、I型またはインスリン依存性真性糖尿病(IDDM)、II型または非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)、A型インスリン抵抗性、IGM、IFGまたはIGTから選択される疾患を有する。好ましい態様において、患者はII型糖尿病またはIGTを有する。他の好ましい態様において、処置患者は、疾患がチアゾリジンジオンまたはメトホルミン単独により適切に制御されなかった患者である。
【0105】
コード番号、一般名または商品名により同定した活性剤は、標準概論“The Merck Index”の現行版またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から取り得る。その対応する内容を引用により本明細書に包含させる。全ての当業者は、これらの引用文献に基づき、活性剤を同定することが充分に可能であり、同様に、製造し、標準試験モデルにおいて、インビトロおよびインビボ両方で医薬適応および特性を試験することができる。
【0106】
ここに記載された医薬製剤は、恒温動物への経腸、例えば経腸、およびまた直腸、または非経腸投与用であり、その製剤は、薬理学的活性化合物を単独でまたは慣用的医薬補助物質と共に含む。例えば、医薬製剤は、約0.1%〜90%、好ましくは約1%〜約80%の活性化合物を含む。経腸または非経腸投与およびまた眼投与用医薬製剤は、例えば、単位投与形態、例えば被覆錠、錠剤、カプセルまたは坐薬およびまたアンプルである。これらは、それ自体既知の方法で、例えば慣用の混合、造粒、コーティング、溶解または凍結乾燥過程を使用して製造する。それ故、経口使用のための医薬製剤は、活性化合物と固体賦形剤を合わせ、所望により、得られた混合物を造粒し、要求または要望に応じて、適当な補助物質を添加後に混合物または顆粒を錠剤または被覆錠コアに加工することにより得ることができる。
【0107】
活性化合物の投与量は、種々の因子、例えば投与形態、恒温動物種、年齢および/または個体の状態に依存し得る。
市販されている本発明の医薬組み合わせの活性成分についての好ましい用量は、特に治療的に有効な市販用量である。
【0108】
活性化合物の投与量は、種々の因子、例えば投与形態、恒温動物種、年齢および/または個体の状態に依存し得る。
対応する活性成分またはその薬学的に許容される塩は、水和物の形でも使用してよく、または結晶化に使用した他の溶媒を含んでもよい。
【0109】
正確な投与量は、もちろん、用いる化合物、投与形態および望む処置により変わる。本化合物は、任意の慣用の経路、非経口または好ましくは経口で投与できる。
【0110】
大型哺乳動物について、指示される総1日投与量は、約0.01〜100mg/kgの化合物であり、簡便には1日2〜4回に分けて、例えば約0.1〜約50mgの化合物を持続放出形態で含む単位投与形態で投与する。
【0111】
好ましくはDPP−IV阻害剤特にビルダグリプチンについて、指示される総1日量は1〜500mg、好ましくは10〜200mgの活性成分の範囲である。
他の好ましいDPP−IV阻害剤、特にビルダグリプチンの1日経口投与量は、1〜100mg、好ましくは10〜100mg、例えば10mg、最も好ましくは25〜100mg、例えば25mgまたは30または40または50、61、70、90、100mgである。ビルダグリプチンの非常に好ましい1日経口投与量は、50〜150mgである。
【0112】
経口投与用の適当な単位投与量は、例えば約25〜約150mgのDPP−IV阻害剤、特にビルダグリプチン、例えば、好ましくは25、50、100または150mgを含む。非経腸投与用の適当な投与量は、例えば約1〜約150mg、例えば10〜50mgの本化合物を含む。
DPP−IV阻害剤はまた毎日(例えば1日2回(BiD)または1日1回(OD))、または2日毎、または2週間に1回でも投与できる。
【0113】
本化合物は、これらの用途に使用するための既知の標準と同様の方法で投与し得る。特定の化合物についての適当な1日投与量は、その相対的活性効果のような多くの因子による。関連分野の当業者は、治療的有効量を決定することが充分に可能である。
【0114】
例えば、体重約75kgのヒトを含む温血動物に投与すべきアリスキレンの投与量、特に、例えば、血圧において、レニン活性阻害の有効な投与量は、好ましくは、例えば、同じサイズであり得る1〜4個の単一用量に分割した、約3mg〜約3g、好ましくは約10mg〜約1g、例えば、20〜200mg/ヒト/日である。通常、小児は成体量の約半量を投与される。各個体について必要な投与量は、例えば、活性成分の血清濃度を測定し、最適レベルに調節することにより、モニターできる。単一用量は、例えば、75mg、150mgまたは300mg/成体患者を含む。
【0115】
アンギオテンシンII受容体ブロッカー、例えば、バルサルタンは適当な投与単位形態、例えば、カプセル剤または錠剤の形で供給され、そして患者に適用し得る治療的有効量のアンギオテンシンII受容体ブロッカー、例えば、約20〜約320mgのバルサルタンを含む。活性成分の適用は1日3回までであり、例えば、20mgまたは40mgのアンギオテンシンII受容体ブロッカー、例えば、バルサルタンの1日量で開始し、1日80mgからさらに1日160mgを経て、そして最終的に1日320mgまで増加し得る。好ましくは、アンギオテンシンII受容体ブロッカー、例えば、バルサルタンを1日1回または2回、各々80mgまたは160mgの投与量で適用する。対応する投与量を、例えば、朝、昼または晩に摂取してよい。
【0116】
本発明の化合物は、遊離塩基形でまたは薬学的に許容される酸付加塩または4級アンモニウム塩として投与してよい。このような塩は慣用の方法で製造でき、遊離形と同程度の活性を示す。これらの化合物が、例えば少なくとも1個の塩基性中心を有するならば、それらは酸付加塩を形成できる。対応する酸付加塩は、所望により、さらに塩基性中心を有してまた形成できる。酸基(例えばCOOH)を有する化合物は、また塩基と塩を形成できる。例えば、組み合わせるべき化合物は、ナトリウム塩として、マレイン酸塩としてまたは二塩酸塩として存在できる。活性成分またはその薬学的に許容される塩もまた水和物の形で、または結晶化に使用した他の溶媒を含んでも使用できる。
【0117】
本発明は、遊離または薬学的に許容される塩形のDPP−IV阻害剤、およびさらなる薬剤、例えばチアゾリジンジオンまたはカルシウムチャネルブロッカー、またはその薬学的に許容される塩および所望により少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む組み合わせに言及する;ここで、複数活性成分は、同時にまたは任意の順番で連続的に、別々に、または固定された組み合わせ(同じガレヌス製剤)で投与できる。
【0118】
遊離または薬学的に許容される塩形のDPP−IV阻害剤およびさらなる薬剤、例えばチアゾリジンジオンまたはカルシウムチャネルブロッカー、および所望により少なくとも1種の、すなわち、1種以上の、例えば2種の、同時、別々または連続使用のための薬学的に許容される担体を含む組み合わせ製剤は、成分、遊離または薬学的に許容される塩形のDPP−IV阻害剤およびさらなる薬剤、例えばチアゾリジンジオンまたはカルシウムチャネルブロッカーを、独立して、または、異なる量の成分の異なる固定された組み合わせの使用により、すなわち、異なる時点でまたは同時に投与できる点で、特に“複数パーツのキット”である。次いで、複数パーツのキットのパーツを、例えば、同時にまたは時間的にずらして、すなわち、異なる時点で、複数パーツのキットの任意のパーツと等しいまたは異なる時間間隔で投与できる。好ましくは、時間間隔は、パーツの組み合わせ使用における処置疾患または状態に対する効果が、成分のいずれか一つの使用により得られるであろう効果よりも大きいように選択する。
【0119】
本発明の組合せの各成分の治療的有効量は、同時に、連続的に任意の順番で投与してよく、そして、複数成分を別々にまたは固定された組み合わせとして投与してよい。例えば、本発明の処置方法は、一緒になって治療的有効量の、好ましくは相乗的有効量の、例えばここに記載の比率に対応する1日投与量での、(i)遊離または薬学的に許容される塩形のDPP−IV阻害剤の投与および(ii)同時のまたは任意の順番で連続したさらなる薬剤、例えばチアゾリジンジオンまたはカルシウムチャネルブロッカーの投与を含み得る。
【0120】
本発明の医薬組成物は、それ自体既知の方法で製造でき、ヒトを含む哺乳動物(温血動物)への経腸、例えば経口または経腸、および非経腸投与に適し、治療的有効量の薬理学的活性化合物を、単独でまたは1種以上の、特に経腸または非経腸適用に適する薬学的に許容される担体と組み合わせを含む、組成物である。
【0121】
本発明をさらに説明するために、しかし、限定する目的ではなく、以下の臨床試験を提供する。さらなる実験プロトコールは、DPP−IV阻害剤と抗糖尿病剤、例えばチアゾリジンジオンを含む組合せを記載する特許出願WO01/52825に記載されている。
【0122】
本発明は、上記で、好ましい態様を参照して記載しているが、当業者には認識されるとおり、多くの付加、削除および改変が可能であり、全て添付の特許請求の範囲内である。
【0123】
本明細書に引用する全ての特許および文献は、その全体を引用により本明細書に包含させる。矛盾がある場合、定義および解釈を含む本記載が優先する。
【実施例】
【0124】
臨床試験
材料および方法:
本試験は、T2DM(2型糖尿病)を有する薬剤未処置患者におけるピオグリタゾン30mgと組み合わせたビルダグリプチン100mgおよび低用量組み合わせ(ビルダグリプチン50mg+ピオグリタゾン15mg)の24週間処置を、該成分単剤療法と比較するための、多施設、二重盲検式、無作為化、平行群、活性対照試験である。全薬剤を1日1回(qd)用量で投与した。米国(90)、韓国(15)、イギリス(10)、イタリア(8)、台湾(7)、スロバキア(6)、チェコ(5)およびインド(4)における145施設で行った。
【0125】
治験薬および参照薬治療:
患者を、ダブルダミーテクニックを使用して、ビルダグリプチン100mg qdとピオグリタゾン30mg qdの組み合わせ処置、ビルダグリプチン100mg qd単剤療法、ピオグリタゾン30mg qd単剤療法、またはビルダグリプチン50mg qdおよびピオグリタゾン15mg qdの組み合わせ処置での二重盲検式処置に、1:1:1:1の比率で振り分ける。
【0126】
【表1】

【表2】

【0127】
用語集
【表3】

【0128】
試験設定
これは、多施設、無作為化、二重盲検式、活性対照試験である。2型糖尿病(HbA1c 7.5−11%)の薬剤未処置患者を、ビルダグリプチン100mg qd単剤療法、ピオグリタゾン30mg qd単剤療法、ビルダグリプチン50mg qdとピオグリタゾン15mg qdの組み合わせ処置、またはビルダグリプチン100mg qdとピオグリタゾン30mg qdの組み合わせ処置に等しく無作為化する。各患者は、スクリーニング来院1(−2週目)に参加し、そこで、包含/除外基準を評価する。次いで、適格患者を、来院2(ベースライン、1日目)で無作為化し、全24週間の処置期間中、さらに4回の来院を履行する。
【0129】
包含/除外基準
包含
− 来院1の前少なくとも12週間経口抗糖尿病性薬剤(OAD)での処置を受けておらず、過去のいずれの時点でも連続3ヶ月を超えてOADを投与されていない、T2DMの男性および非繁殖年齢女性(非ホルモン性承認避妊薬法を使用している出産の可能性のある女性)
− 18−80歳、BMI 22−45kg/m、HbA1c 7.5−11%、FPG<15mmol/L
除外
− 過去6ヶ月以内にT1DM、急性代謝合併症の病歴、
− 重篤CVD、肝臓疾患、鬱血性心不全の病歴
− ALT、AST>2.5×ULN、直接ビリルビン>1.3×ULN、血清クレアチニン>2.5mg/dL、空腹時TG>700mg/dL
【0130】
試験アセスメント
− 一次効果アセスメント − HPLC法で測定したHbA1c
− 二次効果アセスメント − FPG、空腹時脂質(TG、総コレステロール、HDL、計算LDL、計算VLDLおよび非HDLコレステロール)および体重
− 重症度および試験薬との関係に関連して評価した有害事象
− SMBG<3.1mmol/L血漿グルコース当量により確認した症状として定義される低血糖。他者の助けを必要とする何らかの事象として定義する重篤低血糖
統計学的分析
− ベースラインから24週またはITT集団におけるエンドポイントまでのLOCFでの変化
− 共変量として測定する分類変数およびベースラインとしての、処置および所定の蓄積センター(pooled center)を含むANCOVAモデル
− 本治験における一次比較はピオグリタゾン単剤療法に対する
− 安全性のアセスメントは、主に二重盲検式、無作為化処置期間中の処置中に発生した有害事象の数、予定された範囲の外に出るベースライン後臨床検査値ならびに低血糖事象の頻度および重症度に基づく。処置群を、末梢性浮腫の発生率に関して、フィッシャーの直接確率検定を使用して特に比較する。
【0131】
結果:
− 試験中、群はベースラインで充分にバランスが取れている。
− 試験1参加者は、主にアジア人または白人であり、平均年齢51.5歳、BMI<30kg/m、2.1年間の疾患期間および8.7%のHbA1cであるが、OADを投薬されていない。
− 参加者の約1/3が高ベースラインHbA1c群(>9.0%)である。
− 各処置は、血糖コントロールにおいては意味のある改善をもたらしたが、いずれの最初の組み合わせレジメンでのHbA1c低下も、ピオグリタゾン(1日30mg)単剤療法より有意に大きかった。
− ピオグリタゾン30mgと組み合わせたビルダグリプチン100mgでのHbA1cにおける調整平均変化(adjusted mean change)(AMΔ)の処置間変化(between-treatment difference)は、−0.6%(95%CI:[−0.8、−0.3%]、P<0.001)である。
− 注目すべきは、低用量ビルダグリプチン(50mg)およびピオグリタゾン(15mg)組み合わせでの最初の組み合わせが、HbA1cを1.7±0.1%低下させ、これはピオグリタゾン30mg単剤療法と比較して有意に大きな減少である。
− ピオグリタゾンと組み合わせたビルダグリプチンは、HbA1c<7.0%のADA推奨治療ゴールを達成する患者割合の用量関連増加を生じる。
− ビルダグリプチン100mg+ピオグリタゾン30mgでの最初の組み合わせ処置で、65%の患者で目的HbA1cレベルが達成可能であることが判明した。
【0132】
安全性および耐容性
【表4】

【0133】
出願人は、ビルダグリプチンが浮腫、特にチアゾリジンジオン関連浮腫の発生を減少させることを驚くべきことに発見した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療的有効量のDPP−IV阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を、それを必要とする患者に投与することを含む、浮腫の発生を予防、進行遅延または軽減する方法。
【請求項2】
治療的有効量のチアゾリジンジオン、またはその薬学的に許容される塩を、治療的有効量のDPP−IV阻害剤、またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて、それを必要とする患者に投与することを含む、チアゾリジンジオン関連浮腫の発生を予防、進行遅延または軽減する方法。
【請求項3】
浮腫の発生を予防、進行遅延または軽減するための医薬を製造するための、DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項4】
チアゾリジンジオン関連浮腫の発生を予防、進行遅延または軽減するための医薬を製造するための、DPP−IV阻害剤またはその薬学的に許容される塩と組み合わせた、チアゾリジンジオンまたはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項5】
浮腫が薬剤関連浮腫である、請求項1に記載の方法または請求項3に記載の使用。
【請求項6】
薬剤関連浮腫が抗高血圧剤関連浮腫または抗糖尿病剤関連浮腫である、請求項5に記載の方法または請求項5に記載の使用。
【請求項7】
浮腫がチアゾリジンジオン関連浮腫またはカルシウムチャネルアンタゴニスト関連浮腫である、請求項5に記載の方法または請求項5に記載の使用。
【請求項8】
薬剤がピオグリタゾン、ロシグリタゾンおよびアムロジピン、またはいずれの場合もその薬学的に許容される塩から選択される、請求項5に記載の方法または請求項5に記載の使用。
【請求項9】
浮腫が末梢性浮腫、糖尿病性黄斑浮腫または肺浮腫である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項10】
DPP−4阻害剤を、抗糖尿病剤および抗高血圧剤またはいずれの場合もその薬学的塩から選択される2種または3種のさらなる化合物と組み合わせて投与する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項11】
さらなる化合物がスルホニルウレア類、チアゾリジンジオン類、メトホルミン、インスリン、およびカルシウムチャネルブロッカーから選択される、請求項10に記載の方法または使用。
【請求項12】
処置患者が、抗高血圧剤誘発浮腫またはカルシウムチャネルブロッカー誘発浮腫に苦しんでいる患者から選択される、請求項1〜11のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項13】
DPP−IV阻害剤が1−{2−[(5−シアノピリジン−2−イル)アミノ]エチルアミノ}アセチル−2−(S)−シアノ−ピロリジン(別名[S]−1−[2−(5−シアノ−2−ピリジニルアミノ)エチルアミノ]アセチル−2−ピロリジンカルボニトリル一塩酸塩)、ビルダグリプチン、L−threo−イソロイシルチアゾリジンP32/98、シタグリプチン、GSK23A、サクサグリプチン、3−(アミノメチル)−2−イソブチル(isobuthyl)−1−オキソ−4−フェニル−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリンカルボキサミドおよび2−{[3−(アミノメチル)−2−イソブチル(isobuthyl)−4−フェニル−1−オキソ−1,2−ジヒドロ−6−イソキノリル]オキシ}アセトアミドおよび所望によりいずれの場合もその薬学的塩から選択される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項14】
DPP−IV阻害剤がビルダグリプチンまたはその薬学的塩である、請求項1〜13のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項15】
50〜150mgのビルダグリプチンまたはその薬学的塩を毎日投与する、請求項1〜14のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項16】
チアゾリジンジオンをピオグリタゾンまたはロシグリタゾンまたは所望によりその薬学的塩から選択する、請求項1〜15のいずれかに記載の方法または使用。
【請求項17】
i) 50mg、100mgまたは150mgのビルダグリプチンまたはその薬学的に許容される塩を、チアゾリジンジオンまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて、毎日、それを必要とする患者に投与し、
ii) 処置患チアゾリジンジオン関連浮腫に苦しんでいる患者から選択する、
処置レジメン。
【請求項18】
i) 50mg、100mgまたは150mgのビルダグリプチンまたはその薬学的に許容される塩を、チアゾリジンジオンまたはその薬学的に許容される塩と組み合わせて、毎日、それを必要とする患者に投与し、
ii) 処置患者が、疾患がチアゾリジンジオン単独により適切に制御されなかった患者であり、そして
iii) 処置患チアゾリジンジオン関連浮腫に苦しんでいる患者から選択する、
処置レジメン。
【請求項19】
− 15〜45mgのピオグリタゾンまたはその薬学的に許容される塩、または
− 2〜8mgのロシグリタゾンまたはその薬学的に許容される塩
を、毎日該患者に投与する、請求項17または18に記載の処置レジメン。
【請求項20】
患者がまた、インスリン、スルホニルウレアまたはメトホルミンのようなさらなる活性剤での処置下にある、請求項17〜19のいずれかに記載の処置レジメン。
【請求項21】
チアゾリジンジオンを、ピオグリタゾンまたはロシグリタゾンまたは所望によりその薬学的塩から選択する、請求項17〜20のいずれかに記載の処置レジメン。
【請求項22】
処置患者が高血圧、真性糖尿病、I型またはインスリン依存性真性糖尿病(IDDM)、II型または非インスリン依存性真性糖尿病(NIDDM)、A型インスリン抵抗性、IGM、IFGまたはIGTを有する、請求項1〜21のいずれかに記載の使用、方法または処置レジメン。
【請求項23】
250mg〜3000mgのメトホルミンまたはその塩を毎日処置患者に投与する、請求項1〜22のいずれかに記載の使用、方法または処置レジメン。
【請求項24】
− 15〜45mgのピオグリタゾンまたはその薬学的に許容される塩、
− 2〜8mgのロシグリタゾンまたはその薬学的に許容される塩、または
− 1〜10mgのCBBまたはその薬学的に許容される塩
を毎日該患者に投与する、請求項1〜23のいずれかに記載の使用、方法または処置レジメン。

【公表番号】特表2010−508348(P2010−508348A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−535293(P2009−535293)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/022902
【国際公開番号】WO2008/057337
【国際公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】