説明

溶接部の検査装置

【課題】 正確で迅速に溶接良否判定を行なえる検査装置を提供する。
【解決手段】 検査装置は、所定位置に設置されて、溶接部4とその周囲部を含む検査対象を撮影する1台の撮影手段と、上記検査対象に規則的な光パターンP(図3(B))を投射する投射手段と、評価手段とを備えている。評価手段は、光パターンPが投射された検査対象の上記撮影手段による第1画像データを取り込むとともに、光パターンPが投射されない検査対象の上記撮影手段による第2画像データを取り込む。そして、第1画像データから三次元の溶接部輪郭4aを認識し、三次元の溶接部輪郭4aを認識できない領域については、第2画像データに基づき認識した二次元の溶接部輪郭4aで補完する。最後に完成された三次元の溶接部輪郭4aから溶接の良否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接部、たとえば車両用ホイールのリムとディスク間の溶接部の位置,寸法等を検査して溶接の良否を自動判定する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ツーピースタイプの車両用ホイールは、リムとディスクを有し、ディスクをリムの内周に嵌合させ、ディスク嵌合部の周縁の複数箇所をリムの内周に溶接することにより構成されている。溶接が良好に行なわれたか否かは、検査者が目で確認しながら行なっているため、良否判定基準にバラツキがあり、検査に時間とコストがかかった。
【0003】
そこで、本願発明者は、液晶プロジェクタとCCDカメラを用いて溶接部およびその周囲部を三次元で認識し、溶接の良否を自動判定する装置の開発を図っている。なお、液晶プロジェクタとCCDカメラを用いた三次元形状演算の基本原理および構成については、公知であり例えば特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特許2711042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記検査装置を用いた場合、溶接部とその周囲部が滑らかな面で連なっていると、溶接ビードの輪郭を確定できないという不都合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、溶接部の検査装置において、(ア)所定位置に設置されて、溶接部とその周囲部を含む検査対象を撮影する1台の撮影手段と、(イ)上記検査対象に規則的な光パターンを投射する投射手段と、(ウ)上記光パターンが投射された検査対象の上記撮影手段による第1画像データを取り込むとともに、上記光パターンが投射されない検査対象の上記撮影手段による第2画像データを取り込み、上記第1画像データから三次元の溶接部輪郭を認識し、三次元の溶接部輪郭を認識できない領域については、上記第2画像データに基づき認識した二次元の溶接部輪郭で補完し、完成された三次元の溶接部輪郭から溶接の良否を判定する評価手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
上記構成によれば、第1画像データから三次元の溶接部輪郭を認識するので、溶接の良否を正確に判断することができる。しかも、三次元の溶接部輪郭を認識できない領域については、上記第2画像データに基づき認識した二次元の溶接部輪郭で補完するので、全周囲にわたって三次元の溶接部輪郭を認識することができる。また、所定位置に設置された1台の撮影手段から第1,第2画像データを得るので、両画像データに位置誤差が生じず、信頼性の高い良否判定ができる。
【0007】
好ましくは、さらに、上記検査対象を照らす照明手段を備え、上記撮影手段が第1画像を得る時には、上記投射手段がオンで上記照明手段がオフとなり、上記第2画像を得る時には上記投射手段がオフで上記照明手段がオンになる。
この構成によれば、鮮明な第2画像のデータが得られる。
【0008】
好ましくは、上記評価手段は、上記第1画像データによって算出された検査対象の三次元形状に基づき、検査対象の複数の特定点を基準点として認識し、これら基準点に基づき第1,第2の基準座標軸を設定し、これら基準座標軸に対する上記溶接部輪郭の位置に基づき、溶接の良否を判定する。
この構成によれば、検査対象毎に撮影手段との相対位置が若干ずれても、正確に検査対象における溶接部の位置を認識することができ、溶接部の位置に関する良否判定を正確に行なうことができる。
【0009】
好ましくは、上記基準点に基づき上記撮影手段の撮影範囲よりも狭い検査領域を設定し、この検査領域内において、上記第1画像データから算出された三次元形状に基づき、上記第1基準座標軸と平行な断面形状を等間隔で算出し、この断面形状から上記三次元の溶接部輪郭を認識する。
この構成によれば、狭い検査領域で断面形状を演算するので、演算時間を短縮することができる。
【0010】
好ましくは、上記検査対象が、リムと、このリムの内周に溶接されるディスクとを有する車両用ホイールからなり、上記ディスクは、上記リムの内周に沿う複数の溶接縁と、隣接する溶接縁間に配置された弧状のベンチレーションとを有し、上記溶接部が上記溶接縁に沿って形成され、上記評価手段は、上記溶接縁の両端を上記基準点として認識する。
この構成によれば、車両用ホイールにおけるリムとディスクの間の溶接の良否判定を正確に行なうことができる。
【0011】
好ましくは、上記第2基準座標軸は上記溶接縁に沿うように湾曲しており、上記第1基準座標軸は上記基準点間の中央において第2基準座標軸と直交する。
この構成によれば、溶接縁に沿って湾曲する第2基準座標軸を基準にして溶接部輪郭の位置を認識するので、溶接部輪郭の位置の良否を容易に判定できる。
【0012】
好ましくは、上記車両用ホイールを間欠回転させる回転テーブルを備え、上記車両用ホイールがこの回転テーブルに設置された状態で、上記溶接部は、上記リムの上側開口から露出されており、上記撮影手段および投射手段は上記車両用ホイールの斜め上方に配置され、検査位置にある溶接ビードは、これら撮影手段および投射手段から最も遠く離れている。
この構成によれば、車両用ホイールの複数の溶接部を効率よく検査することができる。
【0013】
好ましくは、上記評価手段は、上記第2画像データに基づき上記溶接部輪郭内の表面における黒色部を認識し、さらに、上記第1画像データから算出された三次元形状に基づき、上記黒色部を通る上記第1基準座標軸と平行な断面の形状を、少なくとも溶接部輪郭内において上記溶接部輪郭認識時の間隔より狭い間隔で算出し、この断面形状に基づき上記黒色部が穴か否かを確認する。
この構成によれば、第1画像データに基づく演算時間を短縮するにも拘わらず、正確にブローホール等の穴を検出でき、溶接部の表面の良否を正確に判定できる。
【0014】
上記溶接部が細長く形成され、上記光パターンが縞模様からなり、この縞模様は、溶接部の長手方向と交差する方向に延びる直線を溶接部の長手方向に並べることにより構成されていることを特徴とする。
この構成によれば、溶接部およびその周囲部の三次元形状の算出を容易に行なうことができる。
【0015】
上記投射手段が液晶プロジェクタからなり、この液晶プロジェクタは、上記溶接部の長手方向に位相をずらした縞模様の光パターンを複数回にわたって投射し、上記評価手段は、位相をずらした複数枚の第1画像データから、上記三次元形状を算出する。
これによれば、分解能を高めてより正確な三次元形状を算出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溶接の良否判定を正確かつ簡単に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態をなす検査装置について図面を参照しながら説明する。図1,図2に示すように、この検査装置は、車両用ホイール1の溶接の良否を判定する。
車両用ホイール1は、タイヤを装着するための円筒形状のリム2と、このリム2の内周に溶接されたディスク3とを有している。
【0018】
ディスク3はリム2と同軸の円筒部3aを有し、この円筒部3aの周縁は、真円上に配置された複数例えば4つの溶接縁3xと、この溶接縁3x間に配置され溶接縁3xから後退した弧状をなすベンチレーション3yとを有している。この溶接縁3xと上記リム2の内周とが溶接される。溶接ビード4(溶接部)は、この溶接縁3xに沿い円弧状をなして細長く形成されている。
【0019】
上記車両用ホイール1は、回転テーブル10に設置された状態で検査されるようになっている。この回転テーブル10は、ディスク3のハブ穴3bの周囲部を載せる筒形状の載置部11を有しており、この載置部11の上端面には挿入凸部11aが4箇所に形成されている。この挿入凸部11aにディスク3のボルト穴3cを嵌めることにより、車両用ホイール1は、回転テーブル10に位置決めされて回動不能に設置される。
【0020】
車両用ホイール1が上記設置状態にある時、上記溶接ビード4はリム2の上側の開口部を介して露出している。
【0021】
上記回転テーブル10の斜め上方、例えば図1,図2における右上方には、2本のLED照明器具20(照明手段)と1台の液晶プロジェクタ30(投射手段)と1台のCCDカメラ40(撮影手段)が配置されており、左側の溶接ビード4およびその周囲部を検査するようになっている。
【0022】
回転テーブル10は90°回転する毎に停止し、4つの溶接ビード4を順次、左側の検査位置に位置させるようになっている。
【0023】
上記2本のLED照明器具20は、検査対象となる左側の溶接ビード4とほぼ平行に細長く延びており、互いに上下に離れている。
上記液晶プロジェクタ30とCCDカメラ40は、共通のフレーム50(支持部材)に支持され、2本のLED照明器具20の中間高さに配置されている。
【0024】
上記CCDカメラ40は、図3(A)に示す撮影範囲で、検査対象となる溶接ビード4およびその周囲部を撮影する。
【0025】
上記液晶プロジェクタ30は、図3(B)に示すように、検査対象となる溶接ビード4とその周囲部に縞模様の光パターンPを投射する。この縞模様は、溶接ビード4を横切る多数の平行な直線を溶接ビード4の長手方向に並べることにより構成されており、溶接ビード4に沿う照度分布が正弦波形状をなしている。
【0026】
図2に示すように、上記液晶プロジェクタ30とCCDカメラ40は、水平方向すなわち上記溶接ビード4の長手方向とほぼ平行な方向に離れて配置されている。そのため、上記液晶プロジェクタ30からの光パターンPの縞模様は、CCDカメラ40から見た時、溶接ビード4およびその周囲部の三次元形状に対応して歪む。なお、図3(B)では図を簡略化するために縞模様を直線状に示す。
【0027】
さらに検査装置は、コンピュータ60(制御・評価手段;図1にのみ示す)およびその付属機器を備えている。このコンピュータ60は、車両用ホイール1の搬入,上記回転テーブル10の間欠回転、LED照明器具20および液晶プロジェクタ30のオン,オフ、CCDカメラ40からの画像取り込み、この画像データに基づく溶接ビード4の良否判定等を行なうようになっている。
【0028】
次に、上記コンピュータ60で実行されるメインルーチンについて、図6を参照しながら説明する。最初に、溶接工程を終了した車両用ホイール1を、図1に示すように搬送ロボットにより回転テーブル10に設置する(ステップ100)。
【0029】
次に、LED照明器具20をオフにし、液晶プロジェクタ30をオンし(ステップ101)、CCDカメラ40から縞模様の第1画像データを取り込む(ステップ102)。
【0030】
次に、必要枚数の第1画像取得を完了したか否かを判断する(ステップ103)。ここで否定判断したときには、液晶プロジェクタ30を制御して、縞模様の位相を水平方向(溶接ビード4の長手方向)にずらし(ステップ104)、再びステップ102を実行する。
【0031】
縞模様の位相をずらした第1画像データを必要枚数(4枚以上,好ましくは8枚)取得した時には、ステップ103で肯定判断してステップ105に進み、ここで液晶プロジェクタ30をオフにしてLED照明器具20をオンし、CCDカメラ40から通常の画像データすなわち第2画像データを取り込む(ステップ106)。
【0032】
上記のようにして、検査位置にある溶接ビード4およびその周囲部の第1画像データと第2画像データを取得する。
【0033】
次に、車両用ホイール1の4つの溶接ビード4の全てについて画像取得が完了したか否かを判断する(ステップ107)。ここで否定判断したときには、回転テーブル10を90°回転し(ステップ108)、この回転の途中で、上記第1,第2画像データに基づく溶接良否判定のサブルーチンを実行する(ステップ109)。このサブルーチンについては後述する。
【0034】
回転テーブル10を90°回転し終わった後に、再び上記ステップ101〜109を実行する。このループを3回繰り返すことにより、3つの溶接ビード4に関する溶接良否判定を行なう。
【0035】
ステップ101〜106で4つ目の溶接ビード4の画像取得を行なった時(全ての溶接ビード4での画像取得が終了した時)には、ステップ107で肯定判断することにより上記ループを抜けて、ステップ110に進み、ここで車両用ホイール1を搬送ロボットで回転テーブル10から搬出するとともに(ステップ110)、最後の溶接ビード4の画像データに基づき、ステップ109と同じ溶接良否判定のサブルーチンを実行する(ステップ111)。
【0036】
最後に上記溶接良否判定に基づく処理を行なう(ステップ112)。具体的には、4つの溶接ビード4のうち1つでも溶接不良と判定した場合には、図示しない表示装置(ディスプレイ,音声表示器等)に不良品表示をし、上記搬送ロボットに把持された車両用ホイールをラインから外し、不良品用のボックスに移す。全ての溶接ビード4が溶接良好と判定した場合には、その旨の表示をするとともに、通常のライン上に乗せる。
【0037】
次に、上記ステップ109,111で実行される溶接良否判定のサブルーチンについて図7を参照しながら説明する。まず、上記縞模様の第1画像データを解析して、検査対象となっている溶接ビード4とその周囲部の三次元形状を算出する(ステップ120)。複数枚の第1画像データから算出するので、高精度の三次元形状が得られる。
【0038】
次に、上記三次元形状のデータに基づき、2つの基準点を決定する(ステップ121)。詳述すると、図3(C)に示すように、画面において左右2つの予め決められた領域R1,R2から、ディスク3の溶接縁3xとベンチレーション3yの交差点(溶接縁3xの両端においてリム2から離れた角)を探し、ここを基準点A1,A2とする。
【0039】
次に、図3(D)に示すように、上記交差点A1,A2に基づき、2つの基準座標軸X,Yを決定する(ステップ122)。基準座標軸X(第2基準座標軸)は、上記基準点A1,A2を通り、上記溶接縁3xに沿う線(溶接縁3xにおいてリム2から離れた方の縁)と一致する。なお、溶接縁3xは画面において楕円の一部として表示されるため、基準座標軸Xも予め設定された楕円を描く。また、基準座標軸Y(第1基準座標軸)は、上記基準点A1,A2の間の中央において基準座標軸Xと直交するとともに、リム2の中心軸線と平行をなす。なお、三次元形状を算出するために用いられるもう1つの基準座標軸Z(図示しない)は、基準座標軸X,Yと直交し、リム2の中心軸線と直交する。
【0040】
次に、図3(D)に示すように、検査領域R0を決定する(ステップ123)。この検査領域R0の左右両端縁は例えば基準点A1,A2と一致し、溶接ビード4全体を余裕を持って含む大きさに設定されている。ただし、CCDカメラ40の撮影範囲に比べれば狭い。
【0041】
次に、溶接ビード4の輪郭4aを三次元で認識する(ステップ124)。詳述すると、上記三次元形状のデータから、検査領域R0内における基準座標軸Yと平行な断面形状を等間隔で算出する。この断面形状から、この断面を横切る輪郭4aの交差点を算出する。この交差点はリム2の面およびディスク3の面からの盛り上がり部の端に相当する。そして、この交差点を繋げて三次元の輪郭4aを認識する。
【0042】
なお、上記三次元形状のデータによれば、溶接ビード4が図4(A)に示すようにリム2およびディスク3の表面から盛り上がっている箇所では輪郭4aを認識できるが、図4(B)に示すように溶接ビード4の表面がリム2およびディスク3の表面と滑らかに連なっている領域では輪郭4aを認識できない。したがって、三次元形状から算出される輪郭4aは、途切れることもある。
【0043】
次に、上記検査領域R0内の第2画像データを2値化し、この2値化情報から、溶接ビード4の二次元の輪郭4aを認識する(ステップ125)。
【0044】
第2画像データに基づき認識される二次元の輪郭4aは、第1画像データに基づき認識される三次元の輪郭4aに比べて不正確である。例えば溶接ビード4が図4(A)のように突出している場合には、LED照明器具20からの照明により溶接ビード4の頂部が照らされて白く光るがその両側が暗く映され、そのため溶接ビード4の輪郭4aを狭く認識してしまうからである。
【0045】
しかし、図4(B)のように溶接ビード4の表面がリム2およびディスク3の表面と滑らかに連なっている領域では、第二画像データに基づき輪郭4aを正確に認識できる。溶接ビード4は白く光り、その周囲部が溶接焼けで黒ずんでいるからである。
【0046】
次に、上記ステップ124で認識した三次元形状の輪郭を基にして溶接ビード4の全周にわたる輪郭を決定する(ステップ126)。前述したようにこの基本となる三次元形状の輪郭が途切れている箇所がある場合には、上記ステップ125で認識した二次元形状の輪郭で補い、全周の三次元の輪郭4aを完成させる。
なお、上記二次元の輪郭4aの三次元の輪郭4aへの組み込みは、上記三次元形状のデータにより滑らかに連続する面の座標が分かっているので、容易に行なうことができる。
【0047】
次に、上記溶接ビード4の三次元の輪郭4aと、上記溶接ビード4およびその周囲部の表面の三次元形状(上記基準座標軸と平行な断面形状によって算出される)に基づき、種々の検査を行ない溶接良否の判定を行なう(ステップ127)。以下、各検査項目について詳述する。
【0048】
(ア)溶接ビード4の位置
溶接ビード4の輪郭4aの中心線(最小二乗線)がY軸方向において閾値を超えてリム寄りかディスク寄りの場合には、溶接不良と判定する。
同中心線のX軸に対する傾き角度が閾値を超えている場合には、蛇行(溶接不良)と判定する。
溶接ビード4の左右端と基準点A1,A2との距離の差が閾値を超えている場合には、溶接不良と判定する。
(イ)溶接ビード4の寸法
溶接ビード4のビード幅が全長にわたって許容範囲内にある場合を溶接良好と判断し、それ以外を溶接不良と判定する。
溶接ビード4の脚長を上記輪郭4aと溶接ビード4の表面の三次元形状から求め、この脚長が許容範囲内にある場合を溶接良好と判断し、それ以外を溶接不良と判定する。
溶接ビード4の長さが許容範囲内にある場合を溶接良好と判断し、それ以外を溶接不良と判定する。
(ウ)溶接ビード4の形状
溶接ビード4の表面の三次元形状から、閾値を超えたオーバーラップがある時には、溶接不良と判定する。
(エ)溶接ビード4の周囲部の形状
上記溶接ビード4の周囲部の表面の三次元形状から、この周囲部が閾値を超えて凹んでいる場合には、アンダーカット(溶接不良)と判定する。
【0049】
次に、溶接ビード4の表面状態から溶接の良否を判定する(ステップ128)。詳述すると、最初に第2画像の2値化情報に基づき、図5に示すように溶接ビード4の表面において黒くなっている部分Bをブローホール(穴)と認識する。しかし、溶接ビード4の表面の汚れをブローホールと誤検出する場合もあるので、第1画像データから算出された三次元形状に基づき、再確認する。すなわち、三次元形状から上記黒い箇所Bを横切るように細かい間隔で断面形状を演算する(この間隔は溶接ビード4の輪郭4aを決定する時の断面の間隔より狭い)。この断面形状によりブローホールか否かを確認する。所定規模以上のブローホールを認識した場合には溶接不良と判定する。
【0050】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の態様を採用可能である。例えば、光パターンは縞模様の他に、縦横線からなる格子模様,市松模様等を選択することができる。
スリット形状のレーザー光を溶接ビードの長手方向に所定間隔毎に照射して第1画像データを得てもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態をなす検査装置の側面図である。
【図2】同装置の平面図である。
【図3】(A)は溶接ビードを含む検査対象を示すカメラ視野図、(B)は光パターンを投射した状態の検査対象を示すカメラ視野図、(C)は基準点を特定する手法を説明するカメラ視野図、(D)は基準座標軸と検査範囲を特定する手法を説明するカメラ視野図である。
【図4】(A),(B)は溶接ビードの異なる断面形状を示す拡大図である。
【図5】ブローホール認識の手法を説明する溶接ビードの拡大正面図である。
【図6】溶接ビード評価のメインルーチンを示すフローチャートである。
【図7】溶接ビード評価のサブルーチンを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 車両用ホイール
2 リム
3 ディスク
3x 溶接縁
3y ベンチレーション
4 溶接ビード(溶接部)
10 回転テーブル
20 LED照明器具(照明手段)
30 液晶プロジェクタ(投射手段)
40 CCDカメラ(撮影手段)
60 コンピュータ(評価手段)
A1,A2 基準点
X 第2基準座標軸
Y 第1基準座標軸
R0 検査領域
P 縞模様の光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ア)所定位置に設置されて、溶接部とその周囲部を含む検査対象を撮影する1台の撮影手段と、
(イ)上記検査対象に規則的な光パターンを投射する投射手段と、
(ウ)上記光パターンが投射された検査対象の上記撮影手段による第1画像データを取り込むとともに、上記光パターンが投射されない検査対象の上記撮影手段による第2画像データを取り込み、上記第1画像データから三次元の溶接部輪郭を認識し、三次元の溶接部輪郭を認識できない領域については、上記第2画像データに基づき認識した二次元の溶接部輪郭で補完し、完成された三次元の溶接部輪郭から溶接の良否を判定する評価手段と、
を備えたことを特徴とする溶接部の検査装置。
【請求項2】
さらに、上記検査対象を照らす照明手段を備え、上記撮影手段が第1画像を得る時には、上記投射手段がオンで上記照明手段がオフとなり、上記第2画像を得る時には上記投射手段がオフで上記照明手段がオンになることを特徴とする請求項1に記載の溶接部の検査装置。
【請求項3】
上記評価手段は、上記第1画像データによって算出された検査対象の三次元形状に基づき、検査対象の複数の特定点を基準点として認識し、これら基準点に基づき第1,第2の基準座標軸を設定し、これら基準座標軸に対する上記溶接部輪郭の位置に基づき、溶接の良否を判定することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接部の検査装置。
【請求項4】
上記基準点に基づき上記撮影手段の撮影範囲よりも狭い検査領域を設定し、この検査領域内において、上記第1画像データから算出された三次元形状に基づき、上記第1基準座標軸と平行な断面形状を等間隔で算出し、この断面形状から上記三次元の溶接部輪郭を認識することを特徴とする請求項3に記載の溶接部の検査装置。
【請求項5】
上記検査対象が、リムと、このリムの内周に溶接されるディスクとを有する車両用ホイールからなり、上記ディスクは、上記リムの内周に沿う複数の溶接縁と、隣接する溶接縁間に配置された弧状のベンチレーションとを有し、上記溶接部が上記溶接縁に沿って形成され、
上記評価手段は、上記溶接縁の両端を上記基準点として認識することを特徴とする請求項3または4に記載の溶接部の検査装置。
【請求項6】
上記第2基準座標軸は上記溶接縁に沿うように湾曲しており、上記第1基準座標軸は上記基準点間の中央において第2基準座標軸と直交することを特徴とする請求項5に記載の溶接部の検査装置。
【請求項7】
さらに上記車両用ホイールを間欠回転させる回転テーブルを備え、上記車両用ホイールがこの回転テーブルに設置された状態で、上記溶接部は、上記リムの上側開口から露出されており、
上記撮影手段および投射手段は上記車両用ホイールの斜め上方に配置され、検査位置にある溶接ビードは、これら撮影手段および投射手段から最も遠く離れていることを特徴とする請求項5または6に記載の溶接部の検査装置。
【請求項8】
上記評価手段は、上記第2画像データに基づき上記溶接部輪郭内の表面における黒色部を認識し、さらに、上記第1画像データから算出された三次元形状に基づき、上記黒色部を通る上記第1基準座標軸と平行な断面の形状を、少なくとも溶接部輪郭内において上記溶接部輪郭認識時の間隔より狭い間隔で算出し、この断面形状に基づき上記黒色部が穴か否かを確認することを特徴とする請求項4に記載の溶接部の検査装置。
【請求項9】
上記溶接部が細長く形成され、上記光パターンが縞模様からなり、この縞模様は、溶接部の長手方向と交差する方向に延びる直線を溶接部の長手方向に並べることにより構成されていることを特徴とする請求項1〜8に記載の溶接部の検査装置。
【請求項10】
上記投射手段が液晶プロジェクタからなり、この液晶プロジェクタは、上記溶接部の長手方向に位相をずらした縞模様の光パターンを複数回にわたって投射し、上記評価手段は、位相をずらした複数枚の第1画像データから、上記三次元形状を算出することを特徴とする請求項9に記載の溶接部の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−275536(P2006−275536A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90532(P2005−90532)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000110251)トピー工業株式会社 (255)
【出願人】(391065356)ワイエムシステムズ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】