溶液処理型高移動度無機薄膜トランジスタ
薄膜トランジスタデバイス製造用の無機半導体成分を含む流体媒体。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2008年2月1日に出願した米国仮特許出願第61/063,089号及び2008年8月18日に出願した米国仮特許出願第61/189,351号の出願について優先権を主張し、これらの各米国仮特許出願の内容は全て本願明細書に参照文献として組込まれる。
【連邦政府委託研究又は成果に関する記載】
【0002】
本発明は、陸軍航空及びミサイルコマンドによってノースウエスタン大学に授与された許可番号STTR TSI−2260−0674731//W31P4Q−o及び米国−イスラエル二国間科学協会によってノースウエスタン大学に授与された許可番号2006364の下で政府の支援によってなされた。政府は本発明に関してある一定の権利を所有する。
【技術分野】
【0003】
溶液相処理による高性能な薄膜トランジスタ(TFT)の製造は、発展する商業的に実行可能な低コストで大面積エレクトロニクスに対して期待できるアプローチである。溶液処理型有機半導体膜を開発する熱烈な努力にもかかわらず、今日まで報告されてきた有機薄膜トランジスタ(OTFT)の最高電界効果移動度(μFET)は、〜1.0cm2/Vs(p型、小分子)、0.21cm2/V−1s−1(n型、小分子)、〜0.6cm2/Vs(p型、ポリマー)、及び0.1cm2/Vs(n型、ポリマー)である。これらの値は、蒸着又は単結晶有機半導体で製作した最適化OTFTの値より〜10xまでだけ低い。これらの観察では、従来のOTFTは低い或いは中間性能を要求する応用では有効であるが、溶液処理型高速回路には有効でないことが示されている。その結果、無機半導体は、100cm2/Vsを超える大きな電界効果移動度を示すことができるので、潜在候補として浮上している。
【背景技術】
【0004】
しかし、無機半導体は、一般に、普通の溶媒では扱い難く、そのため、可溶性の前駆体を使用し、活性の半導体膜に変換しなければならない。この解決法では、一般に、許容できる電荷転送特性に対して十分な膜結晶化度及び組織性(結晶半導体のための)を達成するのに有害溶剤及び高いアニール温度(>500℃)が必要である。高いアニール温度は安価なプラスチックス物質には合わない。さらに、底部ゲートトランジスタを製作する場合に、ゲート絶縁体は、処理条件に耐えるように十分に丈夫でなければならずしかも低い動作電圧を保証するように十分薄くなければならない。従って、これらの要求は、半導体膜をアニールできる温度及び/又はゲート誘電体用の物質の選択を相当に制限する。例えば、溶液を用いて蒸着した極めて薄い無機膜は、例外なく漏れがあり、しかも構造的に非常に粗い。一方、多くの公知の高分子誘電体材料は、熱も及び/又は機械的にも高いアニール温度及び攻撃的な水溶液に十分耐えるほど安定ではない。さらに、先行技術では明らかではないが、誘電体表面は、底部ゲートTFTを製作する場合に溶液から成長させた無機半導体膜を核にしなければならない。このような事情で、今日まで、TFTは溶液処理型無機半導体及び溶液処理型ゲート誘電体の両方を用いて製造されなかった。
【0005】
近年、低温処理型TFT用の有望な半導体として幾つかの金属酸化物が現れてきている。これらの酸化物には、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化錫(SnO2)、インジウム−ガリウム−酸化物(IGO)、アモルファス亜鉛−錫−酸化物(a−ZTO)、アモルファスインジウム−亜鉛−酸化物(a−IZO)、アモルファスインジウム−ガリウム−亜鉛−酸化物(a−IGZO)、及びアモルファスカドミウム−インジウム−酸化アンチモンがある。ZnOのような多結晶酸化物は、常温で蒸着した際に、柱状粒状体構造である。それらの膜は、O2/H2O/CO2化学吸着による空気に対する不安定性及びファセット形成による膜表面の粗さを含む、粒状体境界の大きな密度に関する問題があることは避けられない。
【0006】
アモルファス金属酸化物膜は、一般に、結晶体酸化物より一様な微細構造及び平滑な表面をもち、このことは、基板に対して良好な固着をもたらす。しかし、これらの膜は、通常、スパッタリング及びパルスレーザー蒸着のような方法を用いて蒸気相から蒸着される。TFTの応用に有効である高い移動度及び低いキャリアドーピング組成物を見出すために組み合わせた解決法が用いられてきた。例えば、In−Ga−Zn−O、In−Zn−O、Zn−Sn−O、及びIn−Sn−Oを含むアモルファス金属酸化物が、TFTの応用のために研究されてきた。しかし、これらの研究では、個々の要素の前駆体の蒸気圧が異なることにより、最適膜組成に合わせるのが困難となり、そして重要なことには、再現性の問題が生じる。さらに、低圧蒸着法は、大面積及び高スループットに適合させるには高価である。一方、溶液蒸着で製作した従来の金属酸化物に基づくTFTは、一般的に、性能が悪く、特に電界効果移動度が低く、Ion:Ioff比が低く、また動作電圧が高く、これらは殆どの実際の応用に妨げとなる傾向がある。
【0007】
従って、当該技術分野においては、溶液中で無機半導体材料を処理するための新規な配合物並びに半導体溶液蒸着技術によって無機(例えば金属酸化物及びカルコゲニド)TFTを製作する関連した方法が必要とされる。さらに、溶液処理型の高μFET無機半導体との有機誘電体の適合性をさらに探ると共に<500℃の温度でアニールし、溶液から高性能なTFTを開発する必要性は当該技術分野において継続して重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に鑑みて、本発明の目的は、種々の半導体及び誘電体構成部材及び/又はトランジスタデバイス並びにそれらの製造及び/又は組立方法を提供することにあり、それにより、上述の概略を含めた先行技術の種々の欠陥及び欠点を解決するものである。当業者には理解されるように、本発明の一つ以上の特徴は、或る特定の目的に適合でき、また一つ以上の他の特徴はある特定の他の目的に適合できる。各目的は、それらの全てに関して、本発明の各特徴に等しく適用できない。このように、本発明の以下の目的は、本発明のいずれかの特徴に関するものとして選択的に見ることができる。
【0009】
本発明の目的は、上述の要求に合致し、しかもTFT技術から得られる利点を十分に実現する材料成分、構造及び/デバイス形態を提供することにあり得る。
【0010】
本発明の目的は、種々の解決法を用いて無機(例えば金属酸化物に基づく)薄膜半導体を作るのに用いることのできる配合物を提供することにあり得る。本解決法による無機薄膜は、電界効果トランジスタ(例えば薄膜トランジスタ)、光起電力技術、有機発光ダイオード(OLED)及び有機発光トランジスタ(OLET)のような有機発光デバイス、相補型金属酸化物半導体(CMOS)、相補型インバータ、Dフリップ・フロップ、整流器並びにリングオシレータのような物品の製造に用いられ得る。本解決法による無機薄膜は、任意の特別な理論に縛られる必要なしに、改良された膜組織、改良された膜化学量論及び/又は界面及び関連した形態学的考察を通して達成され得る有利な電界効果移動度をもたらすことができる。
【0011】
本発明の目的は、単独で或いは上述の目的と共に、上述の種類の製造技術及び/又はアニール温度を用いて溶液処理型無機半導体材料を通して得ることができ、結晶度及び高い電界効果移動度を含む有利な性能特性をもつ、金属酸化物又は金属セレン化物から成り得るがそれら物質に限定されない無機半導体成分を提供することにあり得る。
【0012】
本発明の目的は、トランジスタデバイス用の多成分金属酸化物半導体成分を提供することにあり得る。特に、上述の前駆体組成物を使用した上述の溶液相プロセスにより、真空蒸着のような方法では得ることのできない多成分金属酸化物における多数の金属の比率を最適化することができる。
【0013】
本発明の目的は、種々の無機半導体(n型及びp型の両方を含む)に適合できしかもかかる半導体成分の有効な動作を可能とする有機及び/又は可撓性基板を含む種々の基板に適合できる広範囲の有機又は無機誘電体材料を提供することにあり得る。
【0014】
本発明の別の目的は、単独で或いは上述の一つ以上の目的と共に、溶液処理型無機半導体製造技術の下で、キャパシタンス及び熱安定性を含むがキャパシタンス及び熱安定性に限定されない有利な性能特性をもつ有機誘電体成分を提供することにあり得る。
【0015】
本発明の別の目的は、単独で或いは上述の一つ以上の目的と共に、或る範囲のトランジスタ形態及び関連したデバイス構造の製作を通してかかる成分の種々の適合できる組合せを提供することにあり得る。
【0016】
本発明のその他の目的、特徴、利点及び効果は、この概要及びある幾つかの実施形態についての以下の説明から明らかとなり、また薄膜トランジスタデバイス、トランジスタ成分及び関連した組立/製造技術の知識をもつ当業者には容易に明らかとなろう。本発明のかかる目的、特徴、利点及び効果は、単独で或いは本明細書に挙げた参照文献を考慮して、添付の実施例、データ、図面及びそれらから引き出されることになる全ての推論を結合することにより上記の事項から明らかとなろう。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態において、本発明は、基板と、電気導体(ソース、ドレーン及びゲート)と、ゲート導体及び基板上の又はゲート導体及び基板に結合された誘電体成分と、誘電体成分並びにソース及びドレーン導体に結合された無機半導体成分とを有するトランジスタデバイス及び/又は関連した製造方法に係り得る。利用可能な基板材料は、当該技術分野において公知であり、本明細書に記載した製造技術に適合する任意の全ての材料を、限定することなしに、包含する。利用可能な導電性材料は、当該技術分野において公知であり、本明細書に記載した製造技術に適合する任意の全ての材料を、限定することなしに、包含する。無機半導体成分は誘電体成分に結合でき、そして二つの成分は共に薄膜複合部材を形成できる。他の複数の実施形態において、本発明は、基板と、電気導体(ソース、ドレーン及びゲート)と、ソース及びドレーン導体に結合された無機半導体成分と、無機半導体成分上の又は無機半導体成分に結合された誘電体成分と、誘電体成分に結合されたゲート導体とを有するトランジスタデバイスに係り得る。本明細書で使用した“結合された”は、二つ以上の成分及び/又は化学的成分、原子、又は分子間の化学結合(例えば、イオン結合や共有結合)の形成と共に、任意の化学結合を(例えば、吸着によって)形成することなしに二つの材料を単純に物理的に(例えば、吸着により)固着することを意味し得る。
【0018】
従って、本発明は、一部、トランジスタデバイスの製造方法に係り得る。かかる方法は、基板成分に結合された有機誘電体成分を備えたデバイス構造体を作り、本明細書に記載された種類の或いは本発明に精通した当業者に理解される化合物を含む半導体成分のような無機半導体成分を含む流体媒体を作り、及びかかる半導体成分をかかる誘電体成分に活性的に結合するのに少なくとも部分的に十分に、流体媒体とデバイス構造体とを接触させることを含むことができる。また、本発明に精通した当業者に理解されるように、及び/又は先行技術の方法及び技法と区別されるように、かかる十分な接触は、更なる化学反応及び/又は物理的変更なしに、応用可能なデバイス構造体に関連して、活性な半導電性をもつ半導体成分を提供するために考えられ得る。
【0019】
ある幾つかの実施形態では、かかるデバイス構造体は流体媒体内に位置決めされ得る。このような実施形態では、かかる媒体は水性であることができ、該半導体成分と前駆体試薬との反応生成物は少なくとも部分的に可溶性である。限定することなしに、かかる半導体成分は金属セレン化物から成り得る。ある幾つかの非限定的な実施形態では、流体媒体接触は公知の印刷及び鋳込法から選択した方法から成り得る。このような実施形態では、かかる流体媒体は、該半導体成分を含んでいるゾル・ゲル系であり得る。限定することなしに、かかる半導体成分は金属酸化物から成り得る。
【0020】
ある特定の複数の実施形態では、半導体成分は前駆体組成物によって作られ得る。前駆体組成物は、溶媒中の塩基及び一つ以上の金属塩を含み得、塩基及び金属塩(複数)は、半導体成分の最適な形態学的及び/又は微細構造特徴につながる相対モル比で溶媒中に存在している。例えば、薄膜トランジスタに用いた場合に、本発明により作成した半導体成分では、電界効果特性、例えば電界効果移動度及び/又はIon:Ioff比率を高めることができる。
【0021】
ある特定の複数の実施形態では、本発明は、金属酸化物薄膜半導体を(溶液相で)製造するための前駆体組成物に関する。金属酸化物の例としては、In2O3、InZnO2、InSnO2、In−Ga−Sn−O、及びSnO2がある。前駆体組成物は一般に、溶媒中の塩基及び一つ以上の金属塩を含む。幾つかの実施形態では、前駆体組成物は、一つ以上の三価の金属塩を含むことができる。本発明で使用できる塩形態は、ハロゲン化物(例えば塩化物、臭化物、沃化物)、オキサレート、カーボネート、アセテート、ホルメート、プロピオネート、サルファイト、サルフェート、アセチルアセトネート、水酸化物、ニトレート、過塩素酸塩、トリフルオロアセテート、トリフルオロアセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホネート、トシレート、メシレート、及びそれらの水和物を包含する。ある特定の複数の実施形態では、前駆体組成物は、一つ以上のインジウム(In3+)塩(例えば塩化インジウム、InCl3)を包含できる。ある特定の複数の実施形態では、前駆体組成物は、一つ以上のガリウム(Ga3+)塩(例えば塩化ガリウム、GaCl3)を包含できる。特定の複数の実施形態では、前駆体組成物は、一つ以上の四価の塩、例えば一つ以上の錫(Sn4+)塩(例えば塩化錫(IV)、SnCl4)を包含できる。幾つかの実施形態では、前駆体組成物は、一つ以上の二価の塩、例えば一つ以上の亜鉛(Zn2+)塩(例えば酢酸亜鉛、Zn(Ac)2)を包含できる。ある特定の複数の実施形態では、前駆体組成物は、種々の原子価状態の金属の金属塩を包含できる。例えば、前駆体組成物は、一つ以上のインジウム塩、及び任意ではあるが一つ以上の二価又は四価の金属塩、及び/又は別の非インジウム三価の金属塩を包含できる。
【0022】
前駆体組成物中の金属塩の濃度は、約0.01M〜約5.0Mの範囲であることができる。例えば、金属塩は、約0.02M〜約2.0Mの範囲、約0.05M〜約1.0Mの範囲、約0.05M〜約0.5Mの範囲、或いは約0.05M〜約0.25Mの範囲の濃度であることができる。前駆体組成物が二つ以上の金属塩を含んでいる実施形態では、前駆体組成物は、等モル量の二つ以上の金属塩を含むことができる。例えば、三価の金属塩(例えばIn3+)、四価の金属塩(例えばSn4+)、又は二価の金属塩(Zn2+)を含む前駆体組成物では、[In3+]:[Sn4+]又は[In3+]:[Zn2+]〜1である。
【0023】
前駆体組成物における塩基は、当業者の理解されるように、ブレンステッド塩基又はルイス塩基であることができる。例えば、塩基は、金属(M)水酸化物(M=Li、Na、K、Rb、Cs、Ba、Ca)、金属カーボネート、金属ビカーボネート、及びそれらの混合物と共に、アラニン(C3H5O2NH2)、アンモニア(NH3)、アニリン(C6H5NH2)、ジメチルアミン((CH3)2NH)、2−エタノールアミン(NH2CH2CH2OH)、3−プロパノールアミン,ジエタノールアミン、2−メチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノエタノール、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノシクロへキサン、エチルアミン(C2H5NH2)、グリシン(C2H3O2NH2)、ヘキサメチレンテトラミン(C6H12N4)、ヘキサメチレンジアミン(NH2(CH2)6NH2)、ヒドラジン(N2H4)、メチルアミン(CH3NH2)、トリメチルアミン((CH3)3N)、イミダゾール(C2H5NH2)、ピリジン(C5H5N)、ピリミジン(C4H4N2)、ピラジン(C4H4N2)、ピペリジン(C5H11N)、ピペラジン(C4H10N2)、キノリン(C9H7N)、1−3−チアゾール(C2H3O2NH2)、イミド(R2C=NH)、アミド(RCONH2)から選択され得る。幾つかの実施形態では、前駆体組成物は一つ以上の有機塩基を含むことができる。例えば、前駆体組成物は有機アミンを含むことができる。ある特定の複数の実施形態では、前駆体組成物は、エタノールアミン、プロパノールアミンから選択したアミノアルコールと、ジエタノールアミンのようなアミノジオールとを含むことができる。
【0024】
溶媒は、水又は一つ以上の有機溶媒であることができる。例えば、溶媒は、水、アルコール、アミノアルコール、カルボン酸、グリコール、ヒドロキシエステル、アミノエステル、及びそれらの混合物から選択され得る。幾つかの実施形態では、溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、エチレングリコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、メトキシブタノール、ジメトキシグリコール、N,N−ジメチルホルムアミド、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0025】
幾つかの実施形態では、前駆体組成物は、さらに、洗浄剤、分散剤、結合剤、相溶化剤、硬化剤、開始剤、保湿剤、消泡剤、湿潤剤、pH調節剤、殺生剤、及び制菌剤から個別に選択した一種類以上の添加剤を含むことができる。例えば、界面活性剤、キレート(例えばエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA))、及び/又はその他のポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ―α―メチルスチレン、ポリイソブテン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチルなど)は、分散剤、結合剤、相溶化剤、及び/又は消泡剤として包含され得る。
【0026】
前駆体組成物における塩基と一つ以上の金属塩のモル比([塩基]:[金属塩])は約1〜約20の範囲内であり得る。例えば、前駆体組成物は、約2〜約15の範囲、約2〜約12の範囲、約5〜約15の範囲、約5〜約12の範囲、約5〜約10の範囲、或いは約7〜約10の範囲の[塩基]:[金属塩]比をもつことができる。ある特定の複数の実施形態では、前駆体組成物は、約1〜約15の範囲、約2〜約15の範囲、約2〜約12の範囲、約5〜約15の範囲、約5〜約12の範囲、約5〜約10の範囲、或いは約7〜約10の範囲の[塩基]:[In3+]比をもつことができる。他の複数の実施形態では、前駆体組成物は、約1〜約15の範囲、約2〜約15の範囲、約2〜約12の範囲、約5〜約15の範囲、約5〜約12の範囲、約5〜約10の範囲、或いは約7〜約10の範囲の[塩基]:[In3++Sn4+]比又は[塩基]:[In3++Zn2+]比をもつことができる。
【0027】
本明細書に例示したように、最適な[塩基]:[金属塩]比は、特性を高めた溶液処理型半導体成分を作り出すことができる。例えば、薄膜形態の結果としての半導体成分は、例えば、良好な表面形態(例えば膜の平滑性及び一様な厚さ)、向上した組織、及び/又は良好な半導体性能を与える良好な優先的相成長をもたらし得る。
【0028】
多結晶金属酸化物の相形成は、例えばX線回折(XRD)法を用いて分析され得る。In2O3薄膜の場合、004反射は比較的高いキャリヤ移動度と関連し、一方、222反射は比較的低いキャリヤ移動度と関連する。従って、In2O3薄膜半導体を製作する種々の実施形態において、前駆体組成物は、X線回折で分析した場合に1より大きい(004)/(222)平面回折強度比をもつ結晶In2O3膜をもたらす[塩基]:[In3+]比を含み得る。ある特定の複数の実施形態では、(004)/(222)平面回折強度比は10より大きくでき、例えば、004反射が主であり、222反射は実質的に抑えられる。このように、本発明の開示内容は、一つ以上の金属塩及び塩基を含む前駆体配合物によって結晶金属酸化物を蒸着(堆積)することで、金属酸化物を基材とした薄膜トランジスタの電子移動度を増大する方法に関し、[塩基]:[金属塩]比は、移動度の高い酸化物相の優先的成長をもたらし得る。アモルファス金属酸化物薄膜の場合、上記の[塩基]:[金属塩]比をもつ前駆体配合物を用いてTFTを製作する際に、移動度の増加がまた観察され得る。一方、結晶金属酸物と異なり、結晶金属酸化物が用いられる場合には、このような移動度の増加は特定の理論で縛られることを望むことなく、特定の酸化物相の優先的成長に繋がり得ず、塩基の存在により、向上した膜形態、改善した膜化学量論、及び/又は比較的安定した膜をもたらす金属−OH基(個々では水素結合)の残留量に繋がり得る。
【0029】
本発明によれば、半導体成分は、基板上に前駆体組成物を堆積して半導体前駆体(又は堆積した組成物)を作り、そして半導体成分を形成するように半導体前駆体(又は堆積した組成物)を加熱(すなわちアニ―ル)することによって製作され得る。堆積段階は、種々の溶液−相方法によって実施することができる。例えば、堆積段階は、インクジェット印刷法及び種々の接触印刷法(例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、パッド印刷、リソグラフ印刷、フレキソ印刷、及びマイクロコンタクト印刷)を含む印刷法によって行われ得る。他の複数の実施形態では、堆積段階は、スピンコート法、ドロップ成形法、ゾーン成形法、浸漬コーティング法、ナイフコーティング法、噴霧法、ロッドコーティング法、或いはスタンピング法で行われ得る。
【0030】
それにも係らず、誘電体成分に結合する前(頂部ゲートデバイス構造の場合のように)か又は後(底部ゲートデバイス構造の場合のように)に、かかる半導体成分は例えばアニール処理される。十分な膜結晶化度と組織を得るために又は溶剤を除去するためである。種々の実施形態において、半導体成分の熱的アニール(加熱)処理は、約100℃〜約700℃の温度又は幾つかの温度で実施できる。例えば、加熱処理は、約200℃〜約500℃の温度で実施できる。ある特定の複数の実施形態では、加熱処理は、約500℃より低い温度で行われ得る。幾つかの実施形態では、加熱処理は、予熱型加熱装置を用いてある特定の温度で、瞬時加熱方法により行われ得る。他の複数の実施形態では、加熱処理は、常温から開始してすなわち約25℃〜約100℃の範囲の温度から開始して、例えば毎分約0.5〜約100℃の範囲の加熱速度で徐々に行うことができる。ある特定の複数の実施形態では、半導体の特性、組成及び/又は所望の性質に関連して、かかる半導体成分は、400℃以下、約300℃以下、約250℃以下、約200℃以下、或いは約100℃以下の温度で、アニール処理され得る。幾つかの実施形態では、加熱処理は一つ以上の温度で段階的に行われ得る。加熱処理段階は、当該技術分野において知られた種々の方法、例えば抵抗性要素(たとえばオーブン)、IR放射(例えばIRランプ)、マイクロ波放射(例えばマイクロ波オーブン)、及び/又は磁気加熱を用いて実施され得る。以下に記載しかつ例示するように、このような半導体の製造及び処理は、かかる誘電体成分及び/又は装置の性能に不適切な逆効果を及ぼすことなしに達成できる。
【0031】
ある特定の複数の実施形態では、本半導体成分は、限定するものではないがセレン化カドミウムのような金属セレン化物、或いは限定するものではないがIn2O3、InSnO2、InZnO2、In−Ga−Zn−O、及びSnO2のような金属酸化物を、上述の種類のその他の無機材料と共に含み得る。半導体成分は、結晶体又はアモルファスであり得る。さらに広義では、かかる半導体成分は、他の利用可能な12族金属、13族金属、14族金属、及び/又は15族金属、特にセレン化物及びそれらの酸化物を含むことができる。ある特定のかかる実施形態では、かかる酸化物は二つ以上の金属、例えば三つ以上の金属を含み得る。ある特定の他の複数の実施形態では、かかる半導体成分は二つ以上の異なる種類の金属酸化物及び/又はセレン化物を含み得る。構造的−作用的観点から、かかる半導体成分は、有利な電界効果移動度をもたらす金属酸化物又は金属セレン化物を含み得、かかる移動度は、本明細書に記載した種類の改良した成分の結晶化度及び界面および関連した形態学的考察を通して達し得る。代わりに、本発明のより広義な観点に関して、無機半導体成分は、一つ以上の半導電性金属又はメタロイド(非金属)カルコゲニド(例えば、硫化物、セレン化物、酸化テルルなど)プニクチド(例えば、ガリウム、インジウム、タリウムなど)、炭化物などを含み得る。かかる構成部分は、デバイスを具現化するときの積極的な半導体機能と、本明細書で説明する種類の流体媒体を用いた利用可能性によってのみ限定される(例えば限定するものではないが、溶液処理型又は溶液堆積型無機半導体)。そのような材料と製造方法は本明細書で説明され、しかも本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に理解されるものであろう。にもかかわらず、このような半導体は、薄膜、ワイヤ、ナノワイヤ、ナノチューブ又はナノ粒子形態を含むことができ、すわなち、特殊なデバイス構造に関して機能し得る。そのような形態は、当業者に理解されるであろう。
【0032】
本発明に従って製造した半導体成分は、頂部ゲート頂部コンタクト構造、頂部ゲート底部コンタクト構造、底部ゲート頂部コンタクト構造、及び底部ゲート底部コンタクト構造を含む種々の形式の電界効果トランジスタに用いることができる。半導体成分は、基板成分及び/又は誘電体成分上に堆積され得る。基板成分は、ドープされたシリコン、酸化インジウムスズ(ITO)、ITO被膜ガラス、ITO被膜ポリイミドまたはその他のプラスチック、アルミニウム又はその他の金属のみ又はポリマー又はその他の基板上に被膜したアルミニウム又はその他の金属、ドープされたポリチオフェン、種々の可撓性プラスチックなどから選択できる。
【0033】
本発明の誘電体成分は、有効なキャパシタンス及び/又は絶縁特性をもつ種々の材料から選択できる。誘電体成分は、種々の酸化物(例えばSiO2、Al2O3、HfO2)、窒化物(例えばSi3N4)のような有機誘電体材料、種々の高分子材料(例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリハロエチレン、ポリアクリレート)、及び自己集合した超格子/自己集合した誘電体(SAS/SAND)材料のような無機誘電体材料(例えば、米国特許出願第11/181,132号、Yoon等、PNAS,102(13):4678−4682(2005)に記載されており、これら各々の全ての記載内容は本明細書に参照文献として組み込まれる)、並びにハイブリッド有機/無機誘電体材料(例えば、米国特許出願第11/642,504号に記載されており、これの全ての記載内容は本明細書に参照文献として組み込まれる)を用いて製造できる。幾つかの実施形態では、誘電体成分は、米国特許出願第11/315,076号、米国特許出願第60/816,952号及び米国特許出願第60/861,308号に記載された架橋ポリマーブレンドを含むことができ、これ米国許出願の各々の全ての記載内容は本明細書に参照文献として組み込まれる。
【0034】
種々の実施形態において、誘電体成分は、基板成分(底部ゲートデバイスの場合)上か又は半導体成分(頂部ゲートデバイスの場合)上に種々の溶液相法によって誘電体材料又はそれの前駆体を含む流体媒体を堆積することによって製造できる。例えば、堆積段階は、インクジェット印刷法及び種々の接触印刷法(例えばスクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、パッド印刷法、リソグラフ印刷法、フレキソ印刷法、及びマイクロコンタクト印刷法)を含む印刷法によって実施できる。別の複数の実施形態では、堆積段階は、スピンコート法、ドロップ成形法、ゾーン成形法、浸漬コーティング法、ナイフコーティング法、噴霧法、ロッドコーティング法、或いはスタンピング法で実施できる。幾つかの実施形態では、誘電体成分は加熱及び/又は放射によって硬化され得る。
【0035】
ある特定の非限定的な実施形態では、かかる誘電体成分は、異なる材料が周期的に変わる層を備えたSAND多層有機又は金属−有機アセンブリ/組成物を含むことができる。これらの交互の層は、π分極可能な部分を含む一つ以上の層(“発色団層”)、又は金属酸化物又は幾つかの別の無機材料を含む一つ以上の層、並びにシリル又はシロキサン部分を含む一つ以上の層(“有機層”)を包み得る。交互の層の少なくとも幾つかは、シロキサンマトリクスを含むカップリング又はキャッピング層によって結合され得る。(例えば、限定しないが、図1参照)。
【0036】
π分極可能な部分は、共役π電子を含むことができる。幾つかの実施形態では、π分極可能な部分は、双極子モーメント、電子解放部分、電子取込み部分、かかる部分の組合わせ、双生イオン及び正味電荷の少なくとも一つを含むことができる。限定することなしに、このような成分は非線形光学(NLO)発色団を含むことができる。幾つかの実施形態では、発色団はπ共役系を含むことができ、このπ共役系は、交互に配列した単一及び多(例えば二重)結合(例えば、C=C−C=C−C及びC=C−N=N−C)と共有結合した原子系を含むことができる。π共役系は、限定するものではないが、窒素(N)、酸素(O)、及び硫黄(S)のようなヘテロ原子を含むことができる。幾つかの実施形態では、π共役系は、共役炭化水素鎖で結合した一つ以上の芳香族環(アリール又はヘテロアリール)を含むことができる。ある特定の複数の実施形態では、芳香族環は、ヘテロ原子(例えばアゾ基[−N=N−])を含む共役鎖で結合できる。例えば、π分極可能な部分はスチルバゾリウム部分を含む発色団であることができる。かかる化合物の固有性は、単に、本明細書に記載したそれぞれの実施形態に例示するように、特定の使用又は応用に関連してそれらの電子的/構造的特徴及びその結果として生じる分極性によってのみ制限される。
【0037】
有機層は、ビス(シリレイト)アルキル部分(例えば約C1〜約C20の範囲)を含むことができる。特定の実施形態では、有機層は、発色団層に直接或いはシロキサンマトリクスを含むカップリング又はキャッピング層を介して結合することができる。結合は、公知のシリルの化学的性質を用いて縮合反応又は化学吸着を介して行なうことができる。例えば、シリル部分及びシロキサン部分の前駆体は、限定するものではないが、ハロ基、アミノ基(例えば、ジアルキルアミノ基)、及びアルコキシ基のような加水分解基を含むことができる。このような前駆体の例としては、Cl3Si(CH2)nSiCl3、(CH3O)3Si(CH2)nSi(OCH3)3、及び(Me2N)3Si(CH2)nSi(NMe2)3が挙ることができるがこれらに限定されない。ここでnは、1〜10の範囲の整数であり得る(すなわちn=1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり得る)。さらに十分に説明するように、このような基は、使用した処理又は製造条件の下でシロキサン結合形成を介して基板吸着又は縮合又は分子間架橋のために十分な程度に加水分解できる。同様に、π分極可能な部分は、同様なシリル加水分解基を含み、シロキサンキャッピング層及び/又は有機層と結合形成できるように誘導され得る。特定の複数の実施形態では、有機層及び発色団層は、それぞれシリル又はシロキサン部分、或いはπ分極可能な部分を含む自己集合単分子層であり得る。
【0038】
幾つかの実施形態では、誘電体成分は、少なくとも一つの有機双極子層を含むことができ、この双極子層は、シロキサン結合配列に共有結合又は架橋したπ分極可能な部分からなる化合物を含んでいる。ある特定の複数の実施形態では、このような誘電体成分は、かかる双極子層に対してシリコン−酸素結合で結合した炭化水素層を含むことができる。ある特定の別の複数の実施形態では、かかる誘電体成分は、さらに、シリコン−酸素結合で、かかる双極子層に対して結合した少なくとも一つのシロキサンキャッピング層を含むことができる。かかる実施形態に関して、シロキサンキャッピング層は、双極子層と炭化水素層との間に位置し、双極子層と炭化水素層とはシリコン−酸素結合で、各々に結合している。このような成分は、2005年7月14日に出願された継続中の米国特許出願第11/181,132号に十分に記載されており、その記載内容は本明細書に参照資料として結合される。
【0039】
このようなシリコン−酸素結合配列は、加水分解可能なシリコン部分(限定することではないが、例えばハロゲン化、アルコキシル化及び/又はカルボキシ化したシリル部分)及びヒドロキシル官能価の縮合物であることができる。当該技術分野において理解され、かつ本明細書に組み込まれた参照資料の一つ以上において十分に説明されているように、このような結合配列は、それぞれの誘電体層に対して開始材料化合物を使用することによって誘導でき、かかる化合物は、一つ以上の加水分解可能なシリコン部分と置換し、このような部分は自己集合状態の下で加水分解し、その後の層の開始材料又は前駆体化合物と縮合する。
【0040】
かかる層と結合され得る前駆体化合物には、例えば、ビス−トリクロロシリルオクタン、オクタクロロトリシロキサン及び4−[[[4−(N,N−ビス(ヒドロキシ)エチル)アミノ]フェニル]アゾ]−1−(4−トリクロロシリル)ベンジル−ピリジニウムヨウ化物があり、かかる化合物は、本発明に従って、互いに縮合し、対応する層がアセンブリされて誘電体成分を提供する。
【0041】
上記の誘電体成分化合物、層及び部分のいくつかについては本明細書に組み込まれた参考資料に例示されているが、種々の他の成分化合物及び組合せ部分は、当業者に理解されるように、本発明の範囲内で考慮される。例えば、限定することなしに、種々の他のπ分極可能な成分化合物及び組合せ成分は、米国特許第6,855,274号、特にその図1〜2、11、13、15のNLO構造、米国特許第6,549,685号、特にその図2〜3、及び米国特許第5,156,918号、特にその図4〜5の構造に記載されており、各々、代わりの実施例の合成及び特徴に関しては対応する明細書を参照し、これら米国特許の各々はその全体を参照文献として本明細書に組み込まれる。さらに、当業者には理解されるように、種々の他の非線形光学発色団組成物は、“Supramolecular Approaches to Second−Order Nonlinear Optical Materials. Self−Assembly and Microstructural Characterization of Intrinsically Acentric[(Aminophenyl)azo]pyridinium Superlattices”,Journal of American Chemical Society 1996年118,8034‐8042に記載されており、この文献はその全体を本明細書に参考文献として組み込まれる。かかる層成分化合物は、本明細書に記載したように、種々の二官能価炭化水素層及び/又はシロキサンキャッピング層成分化合物と共に用いることができ、かかる化合物は、官能価の炭化水素の長さ又は程度に関して限定することなしに、本発明による適切な基板及び/又は種々の他の誘電体層又は成分と縮合できる。
【0042】
ある特定の複数の実施形態においては、多層誘電体成分も、無機成分(“無機層”)を含む一つ以上の層を含むことができる。無機層は、有機層及び発色団層の間で周期的に交互にでき、また一つ以上の主族/遷移金属化合物、例えば、3族金属、4族金属、5族金属、及び13族金属から選択した主族又は遷移金属を含むことができる。ある特定の複数の実施形態においては、主族金属は、限定するものではないがイットリウム(Y)のような3族金属、限定するものではないがチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)のような4族金属、限定するものではないがタンタル(Ta)のような5族金属、並びに限定するものではないがガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びタリウム(Tl)などのような13族金属から選択できる。
【0043】
ある特定の他の複数の実施形態においては、誘電体成分は、誘電体高分子成分及び任意ではあるが加水分解可能な部分をもつ二つ以上のシリル基を結合する成分(例えばアルキル基又はハロアルキル基のような成分)を含むシリル化された成分を含むことができる。種々の他の結合成分は、当該技術分野において認識され、分子間シロキサン結合及びマトリクス形成を妨げる構造又は官能価によってのみ制限される。加水分解できるシリル基の範囲は、本発明の分野の当業者には知られており、トリアルコキシシリル、トリハロシリル、ジアルコキシハロシリル、ジアルキルハロシリル、ジハロアルキルシリル及びジハロアルコキシシリルを含むが、これらに限定されない。かかる高分子組成物は、2005年12月22日に出願された同時係続中の米国特許出願第11/315,076号に詳しく記載さており、この文献の全部は本明細書に参照文献として組み込まれる。
【0044】
このような非限定的な実施形態では、ビス(シリレート)成分は、約C1〜約C20の範囲にあり、二つのトリハロシリル基、二つのトリアルコキシシリル基又はそれらの組合わせを結合するアルキル成分を含むことができる。本明細書で十分に説明したように、かかる基は、使用した処理法又は製造条件の下でシロキサン結合形成を介して基板吸着又は縮合或いは分子間架橋するのに十分な程度に加水分解できる。それにもかからず、かかる組成物の高分子成分は、当該技術分野において、TFT製造における分離ゲート絶縁体材料又は層として用いられるような誘電体ポリマーの範囲から選択できる。単に例示を目的として、誘電体ポリマーには、ポリ(ビニルフェノール)、ポリスチレン及びそれらの共重合体が含まれ得る。幾つかの実施形態では、かかる高分子組成物は架橋を形成できる。本発明のこのような組成物は、適当なシリレート成分及び高分子誘電体成分の利用可能性(有効性)、デバイス製造のための相互の混合又は混和性、並びに結果としてのポリマーに組み込まれたシロキサン結合マトリクス/回路網及び対応する誘電体/絶縁体作用によってのみ制限される。
【0045】
複合材料はまた、一つ以上の電気接点を含むことができる。ソース、ドレーンおよびゲート電極に適した材料としては、金属(例えばAu、Ag、Al、Ni、Cu)、透明な導電性酸化物(例えばITO、IZO、ZITO、GZO、GIO、GITO)、及び導電性ポリマー(例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(PPy)がある。
【0046】
限定されることなく、本発明の一つの概念は、基板(ドープ−シリコンウエハ、ガラス上の錫ドープ酸化インジウム、マイラー膜上の錫ドープ酸化インジウム、及びポリエチレンテレフタレート上のアルミニウムのような基板−ゲート材料を含むがこれらに限定されない)、基板/基板−ゲートに堆積させた上述のような誘電体材料、誘電体材料上に堆積させた半導体材料、及びソース−ドレーン接点を含むTFTデバイスに向けられ得る。幾つかの実施形態では、TFTは、以下の一つ以上を含む透明なTFTであり得る:透明な又は実質的に透明な基板、透明な又は実質的に透明なゲート導体、透明な又は実質的に透明な無機半導体成分、透明な又は実質的に透明な誘電体成分、並びに透明な又は実質的に透明なソース及びドレーン接点。ここで使用した用語“透明な”は、スペクトルの可視領域において少なくとも90%の透過率を有することを意味し、また“実質的に透明な”は、スペクトルの可視領域において少なくとも80%の透過率を有することを意味する。
【0047】
ある特定の複数の実施形態では、本発明の開示内容は、薄い有機誘電体の範囲及びチャネル材料として例えば溶液処理型多結晶金属酸化物半導電性薄膜(例えばIn2O3)を用いて製作した高性能な無機−有機ハイブリッドTFTに関する。別の複数の実施形態では、本発明の開示内容は、限定されるものではないがSiO2のような無機誘電体を組み込んだTFTに関する。以下に示すように、十分に微細な結晶度をもつ無機結晶半導体成分は、n型の電界効果動作を示すことができ、また十分な絶縁特性をもつ薄い有機(又は無機)誘電体成分は、極低電圧TFT動作ができる。このようなハイブリッドTFTは、低動作電圧(1〜2V)で>40cm2/Vの非常に大きな電界効果移動度を示すことができる。
【0048】
本発明にとって有用である種々の他の基板、有機誘電体、無機半導体及びトランジスタデバイス形態は、2006年12月20日に出願された同時係続中の米国出願第11/642,217号に記載されており、この文献は全体を参照文献として本明細書に組み込まれる。
【0049】
薄膜トランジスタのようなトランジスタデバイスに加えて、ここで説明した溶液処理型半導体成分は、誘電体成分に結合されるか否かにより、センサ、キャパシタ、単極回路、相補回路(例えばインバータ回路)、リングオシレータなどのような種々の有機電子、光学及び光電子デバイスの範囲内で実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図面は、同スケールである必要はなく、本開示の原理の例示に一般的に重点がおかれると理解されるべきである。また図面は本発明の範囲をいかようにも限定しようとするものではない。
【0051】
【図1】本発明による溶液処理型無機半導体成分を組み込むことのできる薄膜トランジスタを例示し(右側)、また代表的な有機ナノ寸法の誘電体(自己集合ナノ誘電体(SAND))の分子構造及び溶液処理で同じ薄膜トランジスタ又は同様なデバイス構造に組み込むことのできる成分構成を示す(左側)。
【図2】構造:p+−Si/SiO2/CdSe/Au(A及びC)及びn+−Si/SAND/CdSe/Au(B及びD)をもつTFTの代表的な転移及び出力I−Vプロットを示す。
【図3A】アニール温度に対するキャパシタンス及び平均μFETのプロットを示す。
【図3B】15分間指示した温度でアニール処理する前(◇)及び後[■(300℃)、△(400℃)]における構造:Au/SAND(16.5nm)/n+−SiのMISキャパシタに対する電流密度−電界プロットを示す。
【図3C】大気圧の下で15分間指示した温度でアニール処理する前(◇)及び後[■(300℃)、△(400℃)]における構造:Au/SAND(16.5nm)/n+−SiのMISキャパシタに対する電流密度−印加電位プロットを示す。
【図4】指示した基板上に成長しそして400℃でアニール処理したCBD CdSe膜のXRDθ−2θ(A及びB)及びω=0.33°でのGIXD(かすめ入射X線回折)(C及びD)スキャンを示し、p+−Si/SiO2(A及びC)及びn+−Si/SAND(B及びD)である。立方(E;PDF#65−2891)及び六方(F;PDF#65−3436)CdSeについて粉末回折ファイル(PDF)からの表にされた粉末回折パターンがXRD及びGIXDスキャンの下にプロットされている。
【図5A】膜をアニール処理する前のp+−Si/SiO2上に成長したCBD CdSe膜のXRDθ−2θを示す。
【図5B】膜をアニール処理する前のn+−Si/SAND上に成長したCBD CdSe膜のXRDθ−2θを示す。
【図6】指示した基板上に成長し、そして400℃でアニール処理したCBD CdSe膜のAFM像を示し、Aはp+−Si/SiO2基板であり、Bはn+−Si/SAND基板である。
【図7】構造:p+−Si/SiO2/ZIO/Au(A及びC)及びn+−Si/SAND/ZIO/Au(B及びD)をもつTFTの電流−電圧出力(A及びB)及び転移(C及びD)プロットを示す。
【図8A】p+−Si/SiO2基板上に成長したIn2O3膜([エタノールアミン]:[In+3]比10をもつ配合で製造した)のX線回折(XRD)θ−2θスキャンを示す。
【図8B】n+−Si/SAND基板(上部の二つの線)及びp+−Si/SiO2基板(三番目の線及びそれ以下の線)上に成長したIn2O3膜([エタノールアミン]:[In3+]=10)のXRDθ−2θスキャンを示す。
【図8C】及び
【図8D】p+−Si/SiO2基板(C)及びn+−Si/SAND基板(D)上に成長したIn2O3膜([エタノールアミン]:[In3+]=10)のAFM像を示す。
【図9A】及び
【図9B】ガラス基板上にスピンコートしそして400℃で10分間アニール処理したIn2O3膜([エタノールアミン]:[In3+]=10)の光学透過率スペクトル(A)及びバンドギャップ(B)の誘導を示す。
【図10】下記の構造:A及びB−Si/SiO2(300nm)/In2O3(30nm)/Au(50nm)、L=100μm、W=1000μm;C及びD−Si/SAND(16.5nm)/In2O3(30nm)/Au(50nm)、L=100μm、W=500μmをもつ代表的なIn2O3に基づくTFTについての典型的な転移プロット(A、C)及び出力プロット(B、D)を示し、In2O3前駆体溶液は[エタノールアミン]:[In3+]比=10である。
【図11】Si/SAND/In2O3/Auデバイス([エタノールアミン]:[In3+]モル比=10)のチャネル長さ(25、50、100mm)の関数として移動度を比較して示す。
【図12】Si/SiO2(300nm)/In2O3(30nm)/Au(50nm)、L=100μm、W=1000μmの構造をもち、In2O3膜を下記のIn2O3前駆体溶液、すなわちA,B−[ジエタノールアミン]:[In3+]の比=10、C,D−[プロパノールアミン]:[In3+]の比=10で作った代表的にはIn2O3に基づくTFTについての典型的な転移プロット(A、C)及び出力プロット(B、D)を示す。
【図13】Si/SiO2(300nm)/In2O3(30nm)/Au(50nm)、L=100μm、W=1000μmの構造をもち、金属酸化物膜を次の前駆体溶液、すなわちA,B−[エタノールアミン]:[In3++Zn2+]の比=10、C,D−[エタノールアミン]:[In3++Sn4+]の比=10で作った代表的にはInZnO2及びInSnO2に基づくTFTについての典型的な転移プロット(A、C)及び出力プロット(B、D)を示す。
【図14】[エタノールアミン]:[Sn4+]の比=10をもつ前駆体溶液でSnO2膜を作った代表的なSnO2に基づくTFTについての典型的な転移プロットを示す。
【図15】n+−Si/SAND上にスピンコートしそして約200℃〜約250℃でアニール処理した酸化インジウムスズ(ITO)膜のX線回折(XRD)θ−2θスキャンを示す。
【図16】ガラス基板上にスピンコートしそして250℃でアニール処理したITO膜の最適透過率スペクトル(A)及びバンドギャップ(B)の誘導を示す。
【図17】Si/SiO2/ITO/Au、L=100μm、W=1000μmの構造をもち、ITO膜を、[In3+]対[In3++Sn4+]の比〜7をもつ前駆体溶液で作りそして200℃(A、B)及び250℃(C、D)でアニール処理した代表的なITOに基づくTFTについての典型的な転移プロット(A、C)及び出力プロット(B、D)を示す。
【図17F】アニール温度に対する電流のオン/オフ比及び移動度をプロットして示す。
【図17E】[In3+]対[In3++Sn4+]の種々の比に対する電流のオン/オフ比及び移動度をプロットして示す。
【図18】Si/SAND/ITO/Au、L=100μm、W=500μmの構造をもち、ITO膜を、[In3+]対[In3++Sn4+]の比〜7をもつ前駆体溶液で作りそして250℃でアニール処理した代表的なITOに基づくTFTについての典型的な転移プロット(左側)及び出力プロット(右側)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明のある特定の非限定の代表的な実施形態は、SAND誘電体材料の優れた耐熱性及びそれらのユニークな表面化学特性を強調して例示している。例えば、これら及びその他のかかる考察によれば、本発明の種々の特徴は、57cm2/Vs程度の高いμFET値及び<5Vでの動作電圧をもつ溶液処理型SAND/CdSeハイブリッドTFTによって例示できる。これに関連して、化学槽堆積(CBD)法は水溶性前駆体を用いて無機薄膜を製造する普通のスケーラブル技術である。CdSeのホール及び電界効果移動度(800cm2/Vsまで)は両方ともSiの移動度を実質的に越えるので、この材料は、無機TFT用の有望な半導体として認められている。CdSe薄膜を成長する最も普通のCBD法は、水性Cd2+及びセレノ硫酸塩ナトリウム(SeSO2−)溶液を使用している。ヒドロキシル化された表面におけるCdSe膜堆積パラメータが研究されてきて、この情報を、n+−Si/SAND基板におけるCdSeの成長に使用できるという利点がある。
【0053】
さらに特に、底部ゲート/頂部接点のCdSeに基づくTFTは、商業的に利用可能なp+−Si/(300nm)SiO2(コントロール)基板とn+−Si/(16.5nm)SAND基板との両方において、CdSe膜成長用の同一のCBD法に従って製造されてきた。Si/SiO2基板にSAND膜を形成する一般的な方法は、既に報告された文献に発表され、上記の本明細書に組み込まれた参照文献の一つ以上に記載されている。簡単に言えば、基板は、有機層(例えばCl3Si(CH2)8SiCl3)を作る前駆体を含む溶液中に浸漬され得る。過剰な試薬液を除去した後、有機層を被覆した基板は、シロキサンマトリクスを形成するために、キャッピング剤(例えばSi3O2Cl8)を含む溶液中に浸漬され得る。再び、過剰な試薬液を除去した後、有機層及びキャッピング剤を被覆した基板は、π分極成分(例えばStbz発色団前駆体)を含む溶液中に浸漬され得る。これらの段階は繰り返されて、SAND多層誘電体を所望の厚さに成長させることができる。
【0054】
CdSe膜を種々の温度でアニール処理した後、TFTの製作は、シャドーマスクを介してAuソース及びドレーン接点(50nm)を熱蒸着することによって完了する。デバイスパラメータはI−Vプロット分析によって取り出され、そして電界効果移動度は式(1)を用いて計算された。
Ids=(W/2L)μCi(Vg−Vth)2 (1)
ここで、Lはチャネルの長さ、Wはチャネルの幅、Ciは誘電体膜の単位面積当りのキャパシタンス、μは半導体の電界効果移動度、Vthは閾値電圧、Vgはゲート電圧である。図2には代表的な転移及び出力I−Vプロットを示す。SiO2におけるデバイスを制御するために、CdSe膜は真空中及び雰囲気中で300℃で5分間アニール処理し、平均μFET値〜1.3(±1.1)cm2/Vs、最大μFET値〜3.0cm2/Vsを示すTFTを作成した。同じ条件の下で400℃でアニール処理したCdSe膜は、平均μFET値〜4.0(±2.0)cm2/Vs、最大μFET値〜6.7cm2/Vsを示すデバイスを提供する(図2A及び図2C)。400℃でアニール処理したデバイスの平均値Vth、サブ閾値勾配(S)、及びSiO2に基づくIon/Ioffはそれぞれ+25V、3.4V/dec及び106であった。これらのμFET値は、Alソース及びドレーン電極を備えたCBD CdSe/SiO2について前に述べた値より低い大きさの程度である。これらはnチャネルTFTであるので、Al対Auの低い仕事関数は、金属−半導体接触抵抗を低減でき、電子注入を高め、従って実測移動度を高める。それにもかかわらず、これらの移動度値は、1cm2/Vsの最大移動度を示したインクジェットで形成したCdSe膜を用いて製作したTFTの移動度より大きい。半導体成長領域は、次に、Ion/Ioff比及びデバイスの歩留まりを高めるために、ポリスチレン又はポリメチルメタクリル酸塩マスキングでパターン形成した。この方法は、適度な移動度をもってSiO2/CdSe TFT Ion/Ioff比を107に高め、そしてデバイスの歩留まりを>70%に高める。異なるチャネルの長さ/幅を利用する場合には、実測ドレーン電流はデバイスの寸法と線形に対応し、卓越した膜の一様性及び低い寄生漏れ電流を示す。
【0055】
SANDに基づくTFTの製作より以前に、CdSeアニール処理条件下でのSAND誘電体の熱的安定性は、金属(Au)−絶縁体(SAND)−半導体(Si)キャパシタ構造において研究された。n+−Si/SAND基板は空気中において種々の温度で15分間、熱アニール処理され、Auドット接点はシャドーマスク(200μm×200μm)を介して熱蒸着された。次に、コントロール(初期の)及び熱アニール処理した試料の漏れ電流密度(Jleak)対電圧及びキャパシタンス対電圧(又は周波数)は、同じバイアスウインド(−4〜+4V、図3)において測定された。コントロール試料(4Vで〜0.3μA/cm−2)と比較して、SAND Jleakは、300℃でのアニール処理後変化せず、そして空気中における400℃でのアニール処理で単に4xである(4Vで〜1.1μA/cm−2、図3C)。SAND膜のキャパシタンスは、同様に、アニール処理温度が上昇するにつれて、160(コントロール)から225(300℃)へそして274nF/cm−2(400℃図3A)へと相当に増加する。このキャパシタンスの増加についてここでは詳しく説明しないが、予備X線反射率(XRR)測定では、恐らくH2Oの除去で更なるシラノール縮合のために熱アニール処理時に膜は圧縮しそして薄くなることを示している。これらのアニール処理条件の下では、Siはいかなる付加的なSiO2被膜も形成されないことが認められる。従って、キャパシタンス分散は、SAND膜の厚さの増加と合理的に結びついている。その結果、同じバイアスウインドに対して400℃でのJleakの増加は、単に膜の厚さの低減を示し得る。図3Bには、電界に対する漏れ電流密度をプロットしており、SAND Jleakはアニール処理した膜の場合減少することを示している。これらの結果から、SAND膜は雰囲気中で顕著な熱的及び誘電体安定性を示し、それら膜を高温無機膜成長/アニール処理に対して安定にさせることが明らかに立証できる。
【0056】
卓越したSAND熱的安定性のために、SAND/CdSeTFTの製造を実施した。図3Aには、平均CdSe膜μFET値とアニール処理温度との関係を示している。400℃でアニール処理した典型的なパターン形成したSAND/CdSeデバイスは、平均μFET値=41(±15)cm2/Vs、最大実測μFET値〜5.7cm2/Vsを示している。Ion/Ioff比は典型的には〜104であり、最大〜105であり、また典型的なサブ閾値勾配は0.26V/decである。300℃でアニール処理したTFTは、ほぼ同じ最大μFET値でしかも15(±11)cm2/Vsの低い平均移動度を特徴とする大きな飽和移動度分布を示している。これらのデバイスのVthは≦+3.0Vである。ゲート漏れ電流はIdsより低い1〜2台(orders)の大きさである。全体として、SANDデバイスから得られた移動度は、p+−Si/SiO2/CdSeデバイスのものよりかなり大きく、またデバイスは実質的に低い動作電圧で作動する。(SiO2からSANDに基づくTFTへの電界効果移動度の上昇はGaAs及びIn2O3膜のような無機半導体及び酸化物ナノワイヤの場合に以前から観測されてきた。)表1には種々の誘電体及びアニール処理温度でのCBD CdSeに基づくTFTのTFTデータを纏めて示している。アニール処理していないp+−Si/SiO2/CdSe基板は電流変調を示さなかった。
【0057】
【表1】
【0058】
高められたSAND/CdSeのSiO2/CdSeに対するTFT性能が微細構造の原点を有しているかどうかを理解するために、p+−Si/SiO2基板とn+−Si/SAND基板との両方にCBDによって堆積しそして400℃でアニール処理したCdSe膜においてX線回折(XRD)実験を行った(図4)。θ−2θXRD分析によれば、p+−Si/SiO2基板とn+−Si/SAND基板との両方に成長した初期の(図4〜図5)及びアニール処理したCBD CdSe膜について、2θ≒25.4°において唯一つの特徴が観察される。これらの堆積条件の下では、CdSeは六方相と立方相の混合体として堆積され、そして2θ≒25.4°における特徴は閃亜鉛鉱立方体(閃亜鉛鉱構造)からの(111)反射面及び/又は六方(ウルツ鉱−構造)相の(002)反射面に起因し得ると考えられる。おもしろいことには、表面近くのCdSe膜の視射入射X線回折(GIXD)分析により、回折パターンが立方相と殆ど一致することが明らかとなる。300〜400℃で5分間のアニール処理によって、膜結晶度は相当に改善するが、六方相への完全な変換にはつながらない。比較的長いアニール処理時間は六方相への完全な変換にはつながるが、短いアニール処理期間での粒界の減少は許容μFET値をつくるのに十分であり、μFET値は1時間までのアニール処理時間では相当には増大しない。真空堆積立方又は六方相CdSe膜移動度間の報告された違いは無視できるので、六方相は、ある特定の条件の下で、低い電気抵抗率及びバンドギャップ値と関連される。しかし、立方CdSeは準安定であるので、性能におけるこの改善は、また、粒界密度を減少するアニール処理効果により得る。2θ≒25.4°反射の半値全幅分析及びデバイ・シェラーの式を用いると、SiO2基板上に成長したCBD CdSe膜に対する平均微結晶サイズは〜5nmであり、一方、n+−Si/SAND基板における平均微結晶サイズは〜7nmである。タッピングモードAFM像(図6)は、両基板について〜20〜70nmの二乗平均平方根の粗さを示すCdSe膜の多結晶特性を示している。これらの像は、また、CdSeについてX線測定の場合より大きな粒サイズを示す。この相違は、AFMが分解能及び表面限定方法であることにより生じ得る。膜の厚さは両基板について〜200nmであった。
【0059】
上述のように、本発明は、溶液処理型有機ゲート誘電体と結合した溶液処理型無機半導体を用いたTFTの最初の製造を提供する。ここで例示した電界効果移動度は、大きなIon/Ioff比(105)で57cm2/Vs程度に高く、またサブ閾値勾配は0.26V/dec程度に低い。これらの性能パラメータは広範囲の応用に対してこれらのデバイスを注目させる。かかるTFTは、特に半導体及び誘電体膜堆積方法の単純さを考慮して大面積電子素子の製造において重要なステップを与える。
【0060】
本発明のある特定の非限定の代表的な実施形態は、本発明による溶液処理型無機半導体成分に起因する非常に優れた特性をもたらすことができる。例えば、これら及びその他の考察に従って、本発明の種々の特徴は、本発明により前駆体溶液によって製作した種々のインジウム酸化物によって例示することができる。
【0061】
インジウム酸化物(In2O3)は、格子パラメータα=10.11Åをもつ完全に立方の鉄マンガン鉱結晶構造を有するバンドギャップの広い(3.6eV)n型酸化物半導体である。可視領域における高い光学透過率、高いキャリヤ移動度及び同調性導電率の共存により、In2O3を、TFT、太陽電池、及びその他の光学−電子デバイスに応用できるようになる。In2O3の薄膜は、〜1019〜1020cm−3のキャリヤ密度で10〜75cm2/Vsもの高い移動度のためにZnO、CdO、SnO2のような他の透明な酸化物対応品より優れている。しかし、高品質のIn2O3薄膜は、近年、イオンアシスト堆積法のような真空に基づく物理的蒸着法によって成長され、かかる方法は大面積及び高いスループット用には高価である。発明者の認識では、満足な性能を有する溶液処理型In2O3薄膜トランジスタは報告されていない。従って、本発明の種々の他の実施形態に従って、亜鉛インジウム酸化物(ZIO)の膜をSAND誘電体にスピンキャスト(回転成形)して、他の溶液処理型無機半導体にSANDを広範囲に応用できることを示した。300nmのSiO2基板にスピンキャストしたZIO膜では、μFET値は〜0.60cm2/Vsであり、Ion/Ioff比は105であり、Vthは30Vに等しく、またSは8.0V/decに等しかった。SAND基板にスピンキャストしたZIO膜では、μFET値は〜7.2cm2/Vsであり、Ion/Ioff比は104であり、Vthは3.3Vに等しく、またSは1.0V/decに等しかった。これらの結果はまた、デバイスのゲート誘電体をSiO2からSANDに切り替えると、溶液処理型無機半導体の性能を改善できることを示している(図7)。
【発明の実施例】
【0062】
以下の非限定実施例及びデータは、本明細書で説明した製造技術を通して利用できるので、薄膜トランジスタデバイスの組立を含む本発明の方法及び装置に関する種々の概念及び特徴を例示している。先行技術に比較して、本発明の方法及び装置は、予期しない驚くべき結果及びデータをもたらす。本発明の有用性は幾つかのデバイス構造及びそれと共に用いた無機半導体成分の使用を通して例示されているが、同様の結果が、本発明の範囲内において、種々の他のデバイス構造及び関連した方法及び半導体成分で得る事ができることは当業者に理解されよう。
[実施例1a]
【0063】
CdSe膜堆積
試薬CdCl2、Se、及びNa2SO3は、Aldrich Chemicals社から購入し、さらに精製することなく使用した。水性アンモニア(28〜30%)溶液はMallinckrodt Baker社から購入した。全ての堆積段階で使用した水はMilliporeナノ純水システムを用いて精製した。Na2SeSO3溶液は、0.2M(7.9ミリモル)のNa2SO3溶液40mL中の0.37g(4.7ミリモル)のSeを用い、水槽で1.5時間60℃に加熱してNa2SeSO3を作った。その後、溶解してないSeはろ紙でろ過して除去し、結果として、CBD溶液において用いられるのろ液を得た。CBD溶液は20mLの〜0.1M水性CdCl2、6.0mLの濃縮NH4OH、及び20mLの〜0.1M水性Na2SeSO3溶液から作った。その後この溶液は水槽を用いて80℃に加熱した。溶液がオレンジ色になった後、基板(7×2.5cm)をガラスホルダーに装着し、そしてCBD溶液に浸漬した。基板は最初に1分間溶液に入れ、そして脱イオン水で洗浄し、この段階を二回繰り返した。これらの初期表面状態調節段階の後、基板を再び〜15分間溶液に浸漬した。膜の堆積後、基板を新鮮な脱イオン水で5分間にわたって三回超音波処理し、その後空気乾燥してからアニール処理した。代表的なCdSe膜の厚さは160〜200nmであった。
[実施例1b]
【0064】
半導体膜成長のパターン形成のために、ポリスチレン(Mw=250K)及びポリメチルメタクリレート(350K)の溶液を基板上にはけ塗りしてSi基板上に堆積領域を画定した。ポリマー溶液の濃度は、それぞれポリスチレン及びポリメチルメタクリレートについてTFT及びトルエン中100mg/mLであった。20分の空気乾燥の後、パターン形成した基板を真空の下で1時間加熱(65℃)した。その後CdSeのCBDを行った。ナノ純水による洗浄に続いて、CdSe被覆した基板を50mLのTHFで5分間にわたって三回超音波処理し、引き続いて、その後、ナノ純水で5分間で二回洗浄した。この処理の結果、〜12mm2のパターン形成したCdSe膜が得られた。
[実施例2]
【0065】
亜鉛インジウム酸化物膜堆積
2−メトキシ−エタノール中、酢酸亜鉛(Zn(OAC)2)の0.1M溶液を作った。Zn(OAC)2と1:1の比率で溶液に化合物2−アミノ−エタノールを添加し、Zn(OAC)2の溶解度を高めて溶液濃度を0.1Mにした。また2−メトキシ−エタノール中、InCl3の0.1M溶液を作った。0.5mlのInCl3溶液と0.5mlのZn(OAC)2溶液とを混ぜてスピンキャスティング溶液を作った。そして前駆体膜を1500rpmでスピンキャストした。その後、前駆体膜を180℃で10分間予備アニール処理し、そしてZIOの第2の被覆をスピンキャストし、予備アニール処理し、その後ZIO膜を400℃で30分間アニール処理した。
[実施例3]
【0066】
膜特性決定及びTFT製造及び測定
原子間力顕微鏡画像を、シリコン片持ばりを備えたIEOL−5200走査型プローブ顕微鏡を用いてタッピングモードで記録した。WinSPMソフトウエアを用いて像を処理した。Iencor model P10表面プロフィルメータを用いて膜の厚さを測定した。Niフィルタ付きCuKα放射線を用いたRigaku DMAX−A回折計で、CdSe膜の広角θ−2θX線回折(WAXRD)を行った。電気的測定は、ローカル的に書き込んだLABVIEWプログラム及び汎用インターフェースバス通信を用いたKeithley6430Sub−Femtoamp Remoteソースメータ及びKeithley 2400ソースメータで行った。インピーダンス分光分析測定はHewlett−Packard 4192Aインピーダンス分光計で行った。TFT特性決定は雰囲気条件の下で秘密に行った。飽和移動度は本文中の式(1)を用いて評価した。飽和移動度の計算は、デバイス転移プロットから誘導したIds1/2のVGに対する勾配で行った。底部ゲート/頂部接点TFTアーキテクチュアを利用した。Au(50nm)ソース/ドレーン接点は、所望のチャネル寸法にするためにシャドーマスクを介して熱的蒸発によって堆積した。SAND膜は、上記の組み込まれた参照文献に記載されたような従来知られた方法に従って堆積した。
[実施例4a]
【0067】
インジウム塩化物(99.9%、Sigma−Aldrich)、2−メトキシ−エタノール(99%、Sigma−Aldrich)、及び2−エタノールアミン(99%、Sigma−Aldrich)をさらに精製することなしに入手した状態で使用した。七つのバイアル(25mL)を作り、そして各バイアルに、InCl3(0.1ミリモル)の2−メトキシエタノール溶液の10mLアリコートを添加した。そしてInCl3の2−メトキシエタノール溶液に、種々の量のエタノールアミン(それぞれ、0.0、0.10、0.50、0.75、1.0、1.25、1.5ミリモル)を添加して、エタノールアミンとIn3+とのモル比をそれぞれ0.0から15に変化させた。これらの透明な溶液を常温で30分間攪拌してからスピンコート処理した。
[実施例4b]
【0068】
インジウム塩化物(99.9%、Sigma−Aldrich)、2−メトキシ−エタノール(99%、Sigma−Aldrich)、及びジエタノールアミン(99%、Sigma−Aldrich)をさらに精製することなしに入手した状態で使用した。七つのバイアル(25mL)を作り、そして各バイアルに、InCl3(0.1ミリモル)の2−メトキシエタノール溶液の10mLアリコートを添加した。そしてInCl3の2−メトキシエタノール溶液に、種々の量のジエタノールアミン(それぞれ、0.0、0.05、0.10、0.25、0.50、0.75ミリモル)を添加して、エタノールアミンとIn3+とのモル比をそれぞれ0.0から7.5に変化させた。これらの透明な溶液を常温で30分間攪拌してからスピンコート処理した。
[実施例4c]
【0069】
インジウム塩化物(99.9%、Sigma−Aldrich)、2−メトキシ−エタノール(99%、Sigma−Aldrich)、及びプロパノールアミン(99%、Sigma−Aldrich)をさらに精製することなしに入手した状態で使用した。七つのバイアル(25mL)を作り、そして各バイアルに、InCl3(0.1ミリモル)の2−メトキシエタノール溶液の10mLアリコートを添加した。そしてInCl3の2−メトキシエタノール溶液に、種々の量の3−プロパノールアミン(それぞれ、0.0、0.10、0.50、0.75、1.0、1.25ミリモル)を添加して、エタノールアミンとIn3+とのモル比をそれぞれ0.0から12.5に変化させた。これらの透明な溶液を常温で30分間攪拌してからスピンコート処理した。
[実施例4d]
【0070】
インジウム塩化物(99.9%、Sigma−Aldrich)、酢酸亜鉛(99.9%、Sigma−Aldrich)、2−メトキシ−エタノール(99%、Sigma−Aldrich)、及びエタノールアミン(99%、Sigma−Aldrich)をさらに精製することなしに入手した状態で使用した。七つのバイアル(25mL)を作り、そして各バイアルに、Zn(Ac)2(0.05ミリモル)とInCl3(0.05ミリモル)の2−メトキシエタノール溶液の10mLアリコートを添加した。そしてZn(Ac)2とInCl3の2−メトキシエタノール溶液に、種々の量のエタノールアミン(それぞれ、0.0、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50ミリモル)を添加して、エタノールアミンと(Zn2++In3+)とのモル比をそれぞれ0.0から5.0に変化させた。これらの透明な溶液を常温で30分間攪拌してからスピンコート処理した。
[実施例4e]
【0071】
インジウム塩化物(99.9%、Sigma−Aldrich)、塩化スズ(99.9%、Sigma−Aldrich)、2−メトキシ−エタノール(99%、Sigma−Aldrich)、及びエタノールアミン(99%、Sigma−Aldrich)をさらに精製することなしに入手した状態で使用した。七つのバイアル(25mL)を作り、そして各バイアルに、SnCl4(0.05ミリモル)とInCl3(0.05ミリモル)の2−メトキシエタノール溶液の10mLアリコートを添加した。そしてSnCl4とInCl3の2−メトキシエタノール溶液に、種々の量のエタノールアミン(それぞれ、0.0、0.10、0.20、0.30、0.40ミリモル)を添加して、エタノールアミンと(Sn4++In3+)とのモル比をそれぞれ0.0から4.0に変化させた。これらの透明な溶液を常温で30分間攪拌してからスピンコート処理した。
[実施例5]
【0072】
ガラス、シリコンウエハ、及びシリコン基板を含み、無機誘電体材料(例えばSiO2)又は有機誘電体材料(例えば米国特許出願第11/181,132号に記載された自己集合したナノ誘電体(“SAND”))で被覆した種々の基板に実施例4で得た金属酸化物前駆体配合物をスピンコートした。代表的なナノスケールSAND誘電体及びそれの成分の分子構造は図1に示されている。シリコンウエハ(1cm×2cm)を無水エタノールで超音波処理し、窒素気流で乾燥した後、5分間酸素プラズマ処理した。同様に、誘電体被覆したシリコン基板を絶対エタノールで洗浄し、窒素気流で乾燥した。これらの基板上に、435rpm/secの加速度で1500rpmの速度で適切な金属酸化物前駆体配合物をスピンコートした。その後、スピンコートした膜は管状炉でアニール処理した(例えば10分間400℃に加熱した)。常温に冷却した後、処理を繰り返して必要な膜厚を達成した。SAND材料は、確立した溶液相に基づく成長技術によって製作した。得られた膜は平滑であり、強い付着性、良好な熱安定性、ピンホールなしの形態、及び顕著な電気絶縁特性を示した。例えば、SAND材料は、キャパシタンス測定から決められたように、180nF/cm2の大きなキャパシタンス、4.7の有効な誘電率、10−13pA程度の低い漏れ電流、及び8MV/cm程度の高い絶縁破壊電界を示した。結果として、SAND材料のような薄い有機誘電体は、非常に低いゲート及びドレーン−ソース電圧でTFT動作を保証する。このような薄い有機誘電体は機械的及び化学的に丈夫である。IAD成長プロセスを注意深く制御することにより、かかる誘電体材料が金属酸化物の堆積中イオン/プラズマ暴露に耐え得ることができた。SAND誘電体成長及びデバイス製造に関する更なる詳細については、例えば、Yoon等のProc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,vol.102,4678(2005)及びYoon等のJ.Am.Chem.Soc.,vol.127,10388(2005)に見ることができる。一般に、無機及び有機界面間の弱い付着性は、ハイブリッド電界効果トランジスタ性能及び安定性を低下させる重要なファクターである。本デバイスの場合、従来の‘スコッチテープ’付着試験では、試験の前後における多層厚さ、光学顕微鏡的像又は光学透明度の変化は検出できず、有機誘電体上のIn2O3膜が強い界面付着性を示すことを表示していることが分かる。
[実施例6]
【0073】
金属酸化物前駆体配合物(実施例4による)を用いて底部ゲート頂部接点トランジスタ(BGTC TFT)を製作した。さらに特に、スピンコート法により無機誘電体層(例えば300nmのSiO2層)か又は有機誘電体層(例えば溶液処理型SAND層)上に、実施例5に記載したように、かかる配合物を薄膜として堆積した。得られた膜を種々の温度及び250℃程度の低い温度でアニール処理した。シャドーマスクを通して熱的蒸発(圧力〜10−6トール)によりAuソース及びドレーン電極(50nm)を堆積して50/100μm(L)×5mm(W)のチャネル寸法を得た。図1には代表的なBGTC TFTのデバイス構造を例示している。
[実施例7]
【0074】
半導電性金属酸化物薄膜、薄いナノスケール有機誘電体材料、TFTデバイス構造、及びそれらのそれぞれの電気的特性は以下に記載するように特徴付けられた。In2O3膜の厚さは、膜の成長に続くエッチングによってTencorP−10ステッププロフィルメータを用いて確かめた。In2O3のXRDθ−2θスキャンは、Niフィルタ付きCuKα放射線を用いたRigakuDMAX−A回折計で行った。光学透明度スペクトルは、Cary500紫外線−可視−近−赤外線分光光度計を用いて得て、被覆していないCorning 1737Fガラスのスペクトルと照合した。膜表面形態は、Digital Instruments Nanoscope III 原子間力顕微鏡(AFM)で撮像した。定量的二次イオン質量分光器(SIMS)分析は、15keV Ga+イオン源を用いたMATS四重極SIMS機器で実施した。半導電性In2O3薄膜の導電率は、Keithley 2182Aナノ電圧計及び6221電流源を用いて測定した。高電導性ITO及びIn2O3膜の電気的特性は、Bio−Rad HL5500ファン・デル・パウルホール効果測定システムにおいて特徴決めした。TFTデバイスの特徴決定は、ローカル的に書き込んだLabviewプログラム及びGPIB通信で作動するKeithley 6430サブフェムトメートル及びKeithley 2400ソースメータを用いて空気中で特注のプローブ(探針)ステーションにおいて実施した。
[実施例7a]
【0075】
図8Aには、p+−Si/SiO2基板上に成長したIn2O3膜のX線回折(XRD)θ−2θスキャンを示す。In2O3膜は、エタノールアミンとIn3+とのモル比を10にして実施例4aに従って作成した。この特殊な配合では、In2O3膜の大きな組織化を可能にする最低アニール処理温度は約400℃である。図8Bには、n+−Si/SAND基板(頂部の二つの線)及びp+−Si/SiO2基板(三番目の線以下)上に成長したIn2O3膜のX線回折XRDθ−2θスキャンを示す。In2O3膜は、エタノールアミンとIn3+とのモル比を指示したとおりにして実施例4aに従って作成した。全ての膜は400℃でアニール処理した。半導体前駆体配合物に含まれた塩基の濃度の臨界効果は、これらのXRDθ−2θスキャンにおいて明らかである。下側のゲート誘電体に関係なく、塩基のない配合物から堆積したアニール処理した膜は、結晶が不十分であり、低キャリヤ移動度222In2O3反射の存在で特徴付けされる。塩基:In3+とモル比が0から15へ大きくなるにつれて、222In2O3反射は消え、高キャリヤ移動度004In2O3配向が優勢となる。興味深いことに、塩基の濃度がさらに高く(例えば塩基:In3+のモル比が12.5〜15.0に)なると、相応した膜は両方の配向の存在を示す。任意の特殊な理論で境界を決める必要なしに、いずれかの配向又は混合した配向の存在のような微細構造特徴はTFTの電界効果移動度及びその他のデバイス特徴に強く影響を及ぼすと信じられる。
[実施例7b]
【0076】
スピンコートしたIn2O3薄膜の表面形態及び粒サイズは、接触モードAFMで検査し、図8C及び図8Dにそれらの像を示す。In2O3薄膜の成長する誘電体基板に関係なく、膜は、きめ細かく、一様でしかも平滑であることがわかった。In2O3薄膜は、低いRMS粗さ、例えばSi/SiO2基板ではRMS〜3nm、またSi/有機(SAND)誘電体では〜6nmを示した。任意の特殊な理論によるまでもなく、低い粗さは、(1)AFMでさらにサポートされる平滑な下側誘電体(有機か無機か)及び(2)平滑な膜を堆積するスピンコート技術の本来の有効性によるものであると考えられる。
[実施例7c]
【0077】
本溶液処理型In2O3膜の全ては、見た目には無色であり、分光学的に透明であり、ガラス基板に堆積した膜は、可視領域において〜95%の平均透明度を示している(図9A)。光学バンドギャップは(αhν)2のhνに対するプロットの線形部分をα=0と推定することによって光学透過スペクトルにより検討し評価した。バンドギャップデータは、スピンコートした誘導In2O3膜に対して3.65eVの値を示した(図9B)。これらの透過度及びバンドギャップ結果によれば、In2O3薄膜は、透明なTFT製作用の理想的なn−チャネル材料であることを示している。
[実施例7d]
【0078】
実施例4aに記載した配合物(In2O3)を用いてp+−Si/SiO2基板及びn+−Si/SAND基板の両方にTFTを製作した。これらのデバイスは、ガラス/ITOゲート並びにAu又はIn2O3ソース及びドレーン電極を備えている。製作後、デバイスは雰囲気中で評価した。代表的なデバイスI−Vプロットは図10に示され、以下の表2には、塩基:In3+塩のモル比及び誘電体の種類の関数として性能パラメータをまとめて示す。
【0079】
【表2】
【0080】
表2から分かるように、塩基:In3+のモル比が大きくなるにつれて、電界効果移動度は、XRDによって観察された微細構造変化をたどる。全ての場合、最大移動度は、塩基:In3+のモル比が約10の時に観察された。これらの配合物の場合、SiO2ゲート誘電体を用いたIn2O3デバイスは、0.0〜100V範囲の動作電圧(VTH〜29.9V)で妥当な電界効果応答性(μFE=0.7cm2/Vs;Ion/Ioff=106)示している。また表2及び図10を参照すると、SAND誘電体を用いて製作したIn2O3有機ハイブリッドTFTは、古典/波状ピンチオフ線形曲線をもち、非常に低い動作電圧(0.0〜4.0V)で飽和する卓越したI−V特性を示す。n+−Si/SAND/In2O3/Au TFTの電気的応答性の分析によって、約43.7cm2/Vsまでの大きな飽和−レジーム電界効果移動度([塩基]:[In3+]の比=10を使用)が明らかとなる。〜105のIon/Ioff比及び<5Vの動作電圧(VTH〜2.2V)と関連したこの結果により、本In2O3TFTは高速応用例に特に適している。付加的なSi/SiO2/In2O3/Au 頂部接点TFTは、種々の厚さのIn2O3膜と共に、InCl3塩の種々の濃度をもつ配合物を用いて製作した。表3には、前駆体溶液におけるInCl3塩濃度の関数として性能パラメータをまとめて以下に示す([エタノールアミン]:[In3+]のモル比=10)。表4には、In2O3膜厚の関数として性能パラメータをまとめて以下に示す([エタノールアミン]:[In3+]のモル比=10)。得られた結果から明らかなように、得られる基板において、最適化膜厚は〜30nmであり、またIn+3濃度は〜0.1Mである。図11には、Si/SAND/In2O3/Auデバイス([エタノールアミン]:[In3+]のモル比=10)のチャネル長さ(25、50、100mm)の関数として移動度を比較する。図11に示すように、移動度は明らかにチャネル長さに依存していない。このことは低接触抵抗を意味し、従ってAuは、これらのn−チャネル半導体膜に対して卓越した接点材料であることを示している。これは、n−チャネル半導体がp−チャネル半導体と組み合わされることになる相補回路に応用するのに適切である。以下の材料は、通常、適切なp−チャネルTFTを製作するためにAuのような高仕事関数の接点を必要としている。
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
本発明の内容をさらに例示するために、実施例4B(ジエタノールアミン)及び実施例4C(プロパノールアミン)の配合物を用いてSi/SiO2/In2O3/Au頂部接点TFTを製作した。代表的なデバイスI−Vプロットを図12に示す。表5及び表6には、塩基:In3+塩のモル比の関数として性能パラメータをまとめて示す。
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
本発明が種々の金属酸化物に応用できることを例示するために、Si/SiO2/InZnO2/Au、Si/SiO2/InSnO2/Au、及びSi/SiO2/SnO2/Au頂部接点TFTを、In2O3に基づくTFTに関して記載した方法に従って、製作した。代表的なデバイスI−Vプロットを図13及び図14に示す。表7及び表8には、それぞれInZnO2及びInSnO2についてエタノールアミンと結合した塩との比の関数として性能パラメータをまとめて示す。SnO2デバイスは、0.0〜0.4Vの範囲内の動作電圧(VTH〜2.16V)で妥当な電界効果応答性(μFE=0.5cm2/Vs;Ion/Ioff=106)示している。
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
[実施例8]
【0089】
本発明の内容をさらに例示するために、実施例4eの配合物で製作しSAND被覆基板にスピンコートした半導体成分で、Si/SAND/ITO/Au頂部接点TFTを製作した。得られた膜は種々の温度及び200℃程度の低い温度でアニール処理した。アモルファス金属酸化物の形成は、図15に示すようなXRD法により確認した。一回スピンコートしたITO膜の厚さはX線反射率計により約16.4nmであると測定された。
【0090】
スピンコートしたITO薄膜の表面形態及び粒サイズは、接触モードAFMで検査した。アニール処理の温度に関係なく、ITO薄膜は、AFM像によって、きめ細かく、一様でしかも平滑であることがわかった。例えば、ITO薄膜は、低いRMS粗さを示した。任意の特殊な理論によるまでもなく、低い粗さは、(1)平滑な下側誘電体及び(2)平滑な膜を堆積するスピンコート技術の本来の有効性にあり得ると考えられる。
【0091】
成長させたITO膜は、無色であり、光学的に非常に透明であり、また平坦なガラスに堆積した同様な膜は、可視領域において約90%の平均透明度を示している(図16A)。光学バンドギャップは、光学透過スペクトルから約3.65eVの値であると評価された(図16B)。
[実施例9]
【0092】
ITO TFTデバイスの性能は、アニール処理温度及び[In3+]:[Sn4++In3+]の比の関数として試験した。試験したデバイスは、Si/SiO2(300nm)/ITO/Au、L=100μm、W=1000μmの構造を有する。
アニール温度が200℃から250℃に上昇するにつれて移動度が増加することが観察された(図17A〜図17D及び図17F)。さらに、特に、移動度は、200℃での0.04cm2/Vsから250℃での2.11cm2/Vsに徐々に増加する。値は下記表9にまとめて示す。
【0093】
【表9】
[実施例10]
【0094】
250℃でアニール処理したn−チャネル半導体層としてのITOをまたそれぞれ100μm及び500μmのチャネル長さ及び幅をもつ誘電体層としてのSANDを有するTFTのIDS−VDS転移及び出力特性は図18に示す。結果として、低い動作電圧(1.54V)での高い移動度及び高いIon/Ioff比が示されている。それらの電気的応答性の分析によって、良好なIon/Ioff比〜104で約20.1cm2/Vsまでの大きな飽和レジーム電界効果移動度([In3+]:[Sn4++In3+]は〜7を使用)が明らかとなる。
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2008年2月1日に出願した米国仮特許出願第61/063,089号及び2008年8月18日に出願した米国仮特許出願第61/189,351号の出願について優先権を主張し、これらの各米国仮特許出願の内容は全て本願明細書に参照文献として組込まれる。
【連邦政府委託研究又は成果に関する記載】
【0002】
本発明は、陸軍航空及びミサイルコマンドによってノースウエスタン大学に授与された許可番号STTR TSI−2260−0674731//W31P4Q−o及び米国−イスラエル二国間科学協会によってノースウエスタン大学に授与された許可番号2006364の下で政府の支援によってなされた。政府は本発明に関してある一定の権利を所有する。
【技術分野】
【0003】
溶液相処理による高性能な薄膜トランジスタ(TFT)の製造は、発展する商業的に実行可能な低コストで大面積エレクトロニクスに対して期待できるアプローチである。溶液処理型有機半導体膜を開発する熱烈な努力にもかかわらず、今日まで報告されてきた有機薄膜トランジスタ(OTFT)の最高電界効果移動度(μFET)は、〜1.0cm2/Vs(p型、小分子)、0.21cm2/V−1s−1(n型、小分子)、〜0.6cm2/Vs(p型、ポリマー)、及び0.1cm2/Vs(n型、ポリマー)である。これらの値は、蒸着又は単結晶有機半導体で製作した最適化OTFTの値より〜10xまでだけ低い。これらの観察では、従来のOTFTは低い或いは中間性能を要求する応用では有効であるが、溶液処理型高速回路には有効でないことが示されている。その結果、無機半導体は、100cm2/Vsを超える大きな電界効果移動度を示すことができるので、潜在候補として浮上している。
【背景技術】
【0004】
しかし、無機半導体は、一般に、普通の溶媒では扱い難く、そのため、可溶性の前駆体を使用し、活性の半導体膜に変換しなければならない。この解決法では、一般に、許容できる電荷転送特性に対して十分な膜結晶化度及び組織性(結晶半導体のための)を達成するのに有害溶剤及び高いアニール温度(>500℃)が必要である。高いアニール温度は安価なプラスチックス物質には合わない。さらに、底部ゲートトランジスタを製作する場合に、ゲート絶縁体は、処理条件に耐えるように十分に丈夫でなければならずしかも低い動作電圧を保証するように十分薄くなければならない。従って、これらの要求は、半導体膜をアニールできる温度及び/又はゲート誘電体用の物質の選択を相当に制限する。例えば、溶液を用いて蒸着した極めて薄い無機膜は、例外なく漏れがあり、しかも構造的に非常に粗い。一方、多くの公知の高分子誘電体材料は、熱も及び/又は機械的にも高いアニール温度及び攻撃的な水溶液に十分耐えるほど安定ではない。さらに、先行技術では明らかではないが、誘電体表面は、底部ゲートTFTを製作する場合に溶液から成長させた無機半導体膜を核にしなければならない。このような事情で、今日まで、TFTは溶液処理型無機半導体及び溶液処理型ゲート誘電体の両方を用いて製造されなかった。
【0005】
近年、低温処理型TFT用の有望な半導体として幾つかの金属酸化物が現れてきている。これらの酸化物には、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO)、二酸化錫(SnO2)、インジウム−ガリウム−酸化物(IGO)、アモルファス亜鉛−錫−酸化物(a−ZTO)、アモルファスインジウム−亜鉛−酸化物(a−IZO)、アモルファスインジウム−ガリウム−亜鉛−酸化物(a−IGZO)、及びアモルファスカドミウム−インジウム−酸化アンチモンがある。ZnOのような多結晶酸化物は、常温で蒸着した際に、柱状粒状体構造である。それらの膜は、O2/H2O/CO2化学吸着による空気に対する不安定性及びファセット形成による膜表面の粗さを含む、粒状体境界の大きな密度に関する問題があることは避けられない。
【0006】
アモルファス金属酸化物膜は、一般に、結晶体酸化物より一様な微細構造及び平滑な表面をもち、このことは、基板に対して良好な固着をもたらす。しかし、これらの膜は、通常、スパッタリング及びパルスレーザー蒸着のような方法を用いて蒸気相から蒸着される。TFTの応用に有効である高い移動度及び低いキャリアドーピング組成物を見出すために組み合わせた解決法が用いられてきた。例えば、In−Ga−Zn−O、In−Zn−O、Zn−Sn−O、及びIn−Sn−Oを含むアモルファス金属酸化物が、TFTの応用のために研究されてきた。しかし、これらの研究では、個々の要素の前駆体の蒸気圧が異なることにより、最適膜組成に合わせるのが困難となり、そして重要なことには、再現性の問題が生じる。さらに、低圧蒸着法は、大面積及び高スループットに適合させるには高価である。一方、溶液蒸着で製作した従来の金属酸化物に基づくTFTは、一般的に、性能が悪く、特に電界効果移動度が低く、Ion:Ioff比が低く、また動作電圧が高く、これらは殆どの実際の応用に妨げとなる傾向がある。
【0007】
従って、当該技術分野においては、溶液中で無機半導体材料を処理するための新規な配合物並びに半導体溶液蒸着技術によって無機(例えば金属酸化物及びカルコゲニド)TFTを製作する関連した方法が必要とされる。さらに、溶液処理型の高μFET無機半導体との有機誘電体の適合性をさらに探ると共に<500℃の温度でアニールし、溶液から高性能なTFTを開発する必要性は当該技術分野において継続して重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に鑑みて、本発明の目的は、種々の半導体及び誘電体構成部材及び/又はトランジスタデバイス並びにそれらの製造及び/又は組立方法を提供することにあり、それにより、上述の概略を含めた先行技術の種々の欠陥及び欠点を解決するものである。当業者には理解されるように、本発明の一つ以上の特徴は、或る特定の目的に適合でき、また一つ以上の他の特徴はある特定の他の目的に適合できる。各目的は、それらの全てに関して、本発明の各特徴に等しく適用できない。このように、本発明の以下の目的は、本発明のいずれかの特徴に関するものとして選択的に見ることができる。
【0009】
本発明の目的は、上述の要求に合致し、しかもTFT技術から得られる利点を十分に実現する材料成分、構造及び/デバイス形態を提供することにあり得る。
【0010】
本発明の目的は、種々の解決法を用いて無機(例えば金属酸化物に基づく)薄膜半導体を作るのに用いることのできる配合物を提供することにあり得る。本解決法による無機薄膜は、電界効果トランジスタ(例えば薄膜トランジスタ)、光起電力技術、有機発光ダイオード(OLED)及び有機発光トランジスタ(OLET)のような有機発光デバイス、相補型金属酸化物半導体(CMOS)、相補型インバータ、Dフリップ・フロップ、整流器並びにリングオシレータのような物品の製造に用いられ得る。本解決法による無機薄膜は、任意の特別な理論に縛られる必要なしに、改良された膜組織、改良された膜化学量論及び/又は界面及び関連した形態学的考察を通して達成され得る有利な電界効果移動度をもたらすことができる。
【0011】
本発明の目的は、単独で或いは上述の目的と共に、上述の種類の製造技術及び/又はアニール温度を用いて溶液処理型無機半導体材料を通して得ることができ、結晶度及び高い電界効果移動度を含む有利な性能特性をもつ、金属酸化物又は金属セレン化物から成り得るがそれら物質に限定されない無機半導体成分を提供することにあり得る。
【0012】
本発明の目的は、トランジスタデバイス用の多成分金属酸化物半導体成分を提供することにあり得る。特に、上述の前駆体組成物を使用した上述の溶液相プロセスにより、真空蒸着のような方法では得ることのできない多成分金属酸化物における多数の金属の比率を最適化することができる。
【0013】
本発明の目的は、種々の無機半導体(n型及びp型の両方を含む)に適合できしかもかかる半導体成分の有効な動作を可能とする有機及び/又は可撓性基板を含む種々の基板に適合できる広範囲の有機又は無機誘電体材料を提供することにあり得る。
【0014】
本発明の別の目的は、単独で或いは上述の一つ以上の目的と共に、溶液処理型無機半導体製造技術の下で、キャパシタンス及び熱安定性を含むがキャパシタンス及び熱安定性に限定されない有利な性能特性をもつ有機誘電体成分を提供することにあり得る。
【0015】
本発明の別の目的は、単独で或いは上述の一つ以上の目的と共に、或る範囲のトランジスタ形態及び関連したデバイス構造の製作を通してかかる成分の種々の適合できる組合せを提供することにあり得る。
【0016】
本発明のその他の目的、特徴、利点及び効果は、この概要及びある幾つかの実施形態についての以下の説明から明らかとなり、また薄膜トランジスタデバイス、トランジスタ成分及び関連した組立/製造技術の知識をもつ当業者には容易に明らかとなろう。本発明のかかる目的、特徴、利点及び効果は、単独で或いは本明細書に挙げた参照文献を考慮して、添付の実施例、データ、図面及びそれらから引き出されることになる全ての推論を結合することにより上記の事項から明らかとなろう。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態において、本発明は、基板と、電気導体(ソース、ドレーン及びゲート)と、ゲート導体及び基板上の又はゲート導体及び基板に結合された誘電体成分と、誘電体成分並びにソース及びドレーン導体に結合された無機半導体成分とを有するトランジスタデバイス及び/又は関連した製造方法に係り得る。利用可能な基板材料は、当該技術分野において公知であり、本明細書に記載した製造技術に適合する任意の全ての材料を、限定することなしに、包含する。利用可能な導電性材料は、当該技術分野において公知であり、本明細書に記載した製造技術に適合する任意の全ての材料を、限定することなしに、包含する。無機半導体成分は誘電体成分に結合でき、そして二つの成分は共に薄膜複合部材を形成できる。他の複数の実施形態において、本発明は、基板と、電気導体(ソース、ドレーン及びゲート)と、ソース及びドレーン導体に結合された無機半導体成分と、無機半導体成分上の又は無機半導体成分に結合された誘電体成分と、誘電体成分に結合されたゲート導体とを有するトランジスタデバイスに係り得る。本明細書で使用した“結合された”は、二つ以上の成分及び/又は化学的成分、原子、又は分子間の化学結合(例えば、イオン結合や共有結合)の形成と共に、任意の化学結合を(例えば、吸着によって)形成することなしに二つの材料を単純に物理的に(例えば、吸着により)固着することを意味し得る。
【0018】
従って、本発明は、一部、トランジスタデバイスの製造方法に係り得る。かかる方法は、基板成分に結合された有機誘電体成分を備えたデバイス構造体を作り、本明細書に記載された種類の或いは本発明に精通した当業者に理解される化合物を含む半導体成分のような無機半導体成分を含む流体媒体を作り、及びかかる半導体成分をかかる誘電体成分に活性的に結合するのに少なくとも部分的に十分に、流体媒体とデバイス構造体とを接触させることを含むことができる。また、本発明に精通した当業者に理解されるように、及び/又は先行技術の方法及び技法と区別されるように、かかる十分な接触は、更なる化学反応及び/又は物理的変更なしに、応用可能なデバイス構造体に関連して、活性な半導電性をもつ半導体成分を提供するために考えられ得る。
【0019】
ある幾つかの実施形態では、かかるデバイス構造体は流体媒体内に位置決めされ得る。このような実施形態では、かかる媒体は水性であることができ、該半導体成分と前駆体試薬との反応生成物は少なくとも部分的に可溶性である。限定することなしに、かかる半導体成分は金属セレン化物から成り得る。ある幾つかの非限定的な実施形態では、流体媒体接触は公知の印刷及び鋳込法から選択した方法から成り得る。このような実施形態では、かかる流体媒体は、該半導体成分を含んでいるゾル・ゲル系であり得る。限定することなしに、かかる半導体成分は金属酸化物から成り得る。
【0020】
ある特定の複数の実施形態では、半導体成分は前駆体組成物によって作られ得る。前駆体組成物は、溶媒中の塩基及び一つ以上の金属塩を含み得、塩基及び金属塩(複数)は、半導体成分の最適な形態学的及び/又は微細構造特徴につながる相対モル比で溶媒中に存在している。例えば、薄膜トランジスタに用いた場合に、本発明により作成した半導体成分では、電界効果特性、例えば電界効果移動度及び/又はIon:Ioff比率を高めることができる。
【0021】
ある特定の複数の実施形態では、本発明は、金属酸化物薄膜半導体を(溶液相で)製造するための前駆体組成物に関する。金属酸化物の例としては、In2O3、InZnO2、InSnO2、In−Ga−Sn−O、及びSnO2がある。前駆体組成物は一般に、溶媒中の塩基及び一つ以上の金属塩を含む。幾つかの実施形態では、前駆体組成物は、一つ以上の三価の金属塩を含むことができる。本発明で使用できる塩形態は、ハロゲン化物(例えば塩化物、臭化物、沃化物)、オキサレート、カーボネート、アセテート、ホルメート、プロピオネート、サルファイト、サルフェート、アセチルアセトネート、水酸化物、ニトレート、過塩素酸塩、トリフルオロアセテート、トリフルオロアセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホネート、トシレート、メシレート、及びそれらの水和物を包含する。ある特定の複数の実施形態では、前駆体組成物は、一つ以上のインジウム(In3+)塩(例えば塩化インジウム、InCl3)を包含できる。ある特定の複数の実施形態では、前駆体組成物は、一つ以上のガリウム(Ga3+)塩(例えば塩化ガリウム、GaCl3)を包含できる。特定の複数の実施形態では、前駆体組成物は、一つ以上の四価の塩、例えば一つ以上の錫(Sn4+)塩(例えば塩化錫(IV)、SnCl4)を包含できる。幾つかの実施形態では、前駆体組成物は、一つ以上の二価の塩、例えば一つ以上の亜鉛(Zn2+)塩(例えば酢酸亜鉛、Zn(Ac)2)を包含できる。ある特定の複数の実施形態では、前駆体組成物は、種々の原子価状態の金属の金属塩を包含できる。例えば、前駆体組成物は、一つ以上のインジウム塩、及び任意ではあるが一つ以上の二価又は四価の金属塩、及び/又は別の非インジウム三価の金属塩を包含できる。
【0022】
前駆体組成物中の金属塩の濃度は、約0.01M〜約5.0Mの範囲であることができる。例えば、金属塩は、約0.02M〜約2.0Mの範囲、約0.05M〜約1.0Mの範囲、約0.05M〜約0.5Mの範囲、或いは約0.05M〜約0.25Mの範囲の濃度であることができる。前駆体組成物が二つ以上の金属塩を含んでいる実施形態では、前駆体組成物は、等モル量の二つ以上の金属塩を含むことができる。例えば、三価の金属塩(例えばIn3+)、四価の金属塩(例えばSn4+)、又は二価の金属塩(Zn2+)を含む前駆体組成物では、[In3+]:[Sn4+]又は[In3+]:[Zn2+]〜1である。
【0023】
前駆体組成物における塩基は、当業者の理解されるように、ブレンステッド塩基又はルイス塩基であることができる。例えば、塩基は、金属(M)水酸化物(M=Li、Na、K、Rb、Cs、Ba、Ca)、金属カーボネート、金属ビカーボネート、及びそれらの混合物と共に、アラニン(C3H5O2NH2)、アンモニア(NH3)、アニリン(C6H5NH2)、ジメチルアミン((CH3)2NH)、2−エタノールアミン(NH2CH2CH2OH)、3−プロパノールアミン,ジエタノールアミン、2−メチルアミノエタノール、N,N−ジメチルアミノエタノール、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、ジアミノエタン、ジアミノプロパン、ジアミノブタン、ジアミノシクロへキサン、エチルアミン(C2H5NH2)、グリシン(C2H3O2NH2)、ヘキサメチレンテトラミン(C6H12N4)、ヘキサメチレンジアミン(NH2(CH2)6NH2)、ヒドラジン(N2H4)、メチルアミン(CH3NH2)、トリメチルアミン((CH3)3N)、イミダゾール(C2H5NH2)、ピリジン(C5H5N)、ピリミジン(C4H4N2)、ピラジン(C4H4N2)、ピペリジン(C5H11N)、ピペラジン(C4H10N2)、キノリン(C9H7N)、1−3−チアゾール(C2H3O2NH2)、イミド(R2C=NH)、アミド(RCONH2)から選択され得る。幾つかの実施形態では、前駆体組成物は一つ以上の有機塩基を含むことができる。例えば、前駆体組成物は有機アミンを含むことができる。ある特定の複数の実施形態では、前駆体組成物は、エタノールアミン、プロパノールアミンから選択したアミノアルコールと、ジエタノールアミンのようなアミノジオールとを含むことができる。
【0024】
溶媒は、水又は一つ以上の有機溶媒であることができる。例えば、溶媒は、水、アルコール、アミノアルコール、カルボン酸、グリコール、ヒドロキシエステル、アミノエステル、及びそれらの混合物から選択され得る。幾つかの実施形態では、溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、エチレングリコール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、メトキシプロパノール、エトキシプロパノール、メトキシブタノール、ジメトキシグリコール、N,N−ジメチルホルムアミド、及びそれらの混合物から選択され得る。
【0025】
幾つかの実施形態では、前駆体組成物は、さらに、洗浄剤、分散剤、結合剤、相溶化剤、硬化剤、開始剤、保湿剤、消泡剤、湿潤剤、pH調節剤、殺生剤、及び制菌剤から個別に選択した一種類以上の添加剤を含むことができる。例えば、界面活性剤、キレート(例えばエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA))、及び/又はその他のポリマー(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ―α―メチルスチレン、ポリイソブテン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチルなど)は、分散剤、結合剤、相溶化剤、及び/又は消泡剤として包含され得る。
【0026】
前駆体組成物における塩基と一つ以上の金属塩のモル比([塩基]:[金属塩])は約1〜約20の範囲内であり得る。例えば、前駆体組成物は、約2〜約15の範囲、約2〜約12の範囲、約5〜約15の範囲、約5〜約12の範囲、約5〜約10の範囲、或いは約7〜約10の範囲の[塩基]:[金属塩]比をもつことができる。ある特定の複数の実施形態では、前駆体組成物は、約1〜約15の範囲、約2〜約15の範囲、約2〜約12の範囲、約5〜約15の範囲、約5〜約12の範囲、約5〜約10の範囲、或いは約7〜約10の範囲の[塩基]:[In3+]比をもつことができる。他の複数の実施形態では、前駆体組成物は、約1〜約15の範囲、約2〜約15の範囲、約2〜約12の範囲、約5〜約15の範囲、約5〜約12の範囲、約5〜約10の範囲、或いは約7〜約10の範囲の[塩基]:[In3++Sn4+]比又は[塩基]:[In3++Zn2+]比をもつことができる。
【0027】
本明細書に例示したように、最適な[塩基]:[金属塩]比は、特性を高めた溶液処理型半導体成分を作り出すことができる。例えば、薄膜形態の結果としての半導体成分は、例えば、良好な表面形態(例えば膜の平滑性及び一様な厚さ)、向上した組織、及び/又は良好な半導体性能を与える良好な優先的相成長をもたらし得る。
【0028】
多結晶金属酸化物の相形成は、例えばX線回折(XRD)法を用いて分析され得る。In2O3薄膜の場合、004反射は比較的高いキャリヤ移動度と関連し、一方、222反射は比較的低いキャリヤ移動度と関連する。従って、In2O3薄膜半導体を製作する種々の実施形態において、前駆体組成物は、X線回折で分析した場合に1より大きい(004)/(222)平面回折強度比をもつ結晶In2O3膜をもたらす[塩基]:[In3+]比を含み得る。ある特定の複数の実施形態では、(004)/(222)平面回折強度比は10より大きくでき、例えば、004反射が主であり、222反射は実質的に抑えられる。このように、本発明の開示内容は、一つ以上の金属塩及び塩基を含む前駆体配合物によって結晶金属酸化物を蒸着(堆積)することで、金属酸化物を基材とした薄膜トランジスタの電子移動度を増大する方法に関し、[塩基]:[金属塩]比は、移動度の高い酸化物相の優先的成長をもたらし得る。アモルファス金属酸化物薄膜の場合、上記の[塩基]:[金属塩]比をもつ前駆体配合物を用いてTFTを製作する際に、移動度の増加がまた観察され得る。一方、結晶金属酸物と異なり、結晶金属酸化物が用いられる場合には、このような移動度の増加は特定の理論で縛られることを望むことなく、特定の酸化物相の優先的成長に繋がり得ず、塩基の存在により、向上した膜形態、改善した膜化学量論、及び/又は比較的安定した膜をもたらす金属−OH基(個々では水素結合)の残留量に繋がり得る。
【0029】
本発明によれば、半導体成分は、基板上に前駆体組成物を堆積して半導体前駆体(又は堆積した組成物)を作り、そして半導体成分を形成するように半導体前駆体(又は堆積した組成物)を加熱(すなわちアニ―ル)することによって製作され得る。堆積段階は、種々の溶液−相方法によって実施することができる。例えば、堆積段階は、インクジェット印刷法及び種々の接触印刷法(例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、パッド印刷、リソグラフ印刷、フレキソ印刷、及びマイクロコンタクト印刷)を含む印刷法によって行われ得る。他の複数の実施形態では、堆積段階は、スピンコート法、ドロップ成形法、ゾーン成形法、浸漬コーティング法、ナイフコーティング法、噴霧法、ロッドコーティング法、或いはスタンピング法で行われ得る。
【0030】
それにも係らず、誘電体成分に結合する前(頂部ゲートデバイス構造の場合のように)か又は後(底部ゲートデバイス構造の場合のように)に、かかる半導体成分は例えばアニール処理される。十分な膜結晶化度と組織を得るために又は溶剤を除去するためである。種々の実施形態において、半導体成分の熱的アニール(加熱)処理は、約100℃〜約700℃の温度又は幾つかの温度で実施できる。例えば、加熱処理は、約200℃〜約500℃の温度で実施できる。ある特定の複数の実施形態では、加熱処理は、約500℃より低い温度で行われ得る。幾つかの実施形態では、加熱処理は、予熱型加熱装置を用いてある特定の温度で、瞬時加熱方法により行われ得る。他の複数の実施形態では、加熱処理は、常温から開始してすなわち約25℃〜約100℃の範囲の温度から開始して、例えば毎分約0.5〜約100℃の範囲の加熱速度で徐々に行うことができる。ある特定の複数の実施形態では、半導体の特性、組成及び/又は所望の性質に関連して、かかる半導体成分は、400℃以下、約300℃以下、約250℃以下、約200℃以下、或いは約100℃以下の温度で、アニール処理され得る。幾つかの実施形態では、加熱処理は一つ以上の温度で段階的に行われ得る。加熱処理段階は、当該技術分野において知られた種々の方法、例えば抵抗性要素(たとえばオーブン)、IR放射(例えばIRランプ)、マイクロ波放射(例えばマイクロ波オーブン)、及び/又は磁気加熱を用いて実施され得る。以下に記載しかつ例示するように、このような半導体の製造及び処理は、かかる誘電体成分及び/又は装置の性能に不適切な逆効果を及ぼすことなしに達成できる。
【0031】
ある特定の複数の実施形態では、本半導体成分は、限定するものではないがセレン化カドミウムのような金属セレン化物、或いは限定するものではないがIn2O3、InSnO2、InZnO2、In−Ga−Zn−O、及びSnO2のような金属酸化物を、上述の種類のその他の無機材料と共に含み得る。半導体成分は、結晶体又はアモルファスであり得る。さらに広義では、かかる半導体成分は、他の利用可能な12族金属、13族金属、14族金属、及び/又は15族金属、特にセレン化物及びそれらの酸化物を含むことができる。ある特定のかかる実施形態では、かかる酸化物は二つ以上の金属、例えば三つ以上の金属を含み得る。ある特定の他の複数の実施形態では、かかる半導体成分は二つ以上の異なる種類の金属酸化物及び/又はセレン化物を含み得る。構造的−作用的観点から、かかる半導体成分は、有利な電界効果移動度をもたらす金属酸化物又は金属セレン化物を含み得、かかる移動度は、本明細書に記載した種類の改良した成分の結晶化度及び界面および関連した形態学的考察を通して達し得る。代わりに、本発明のより広義な観点に関して、無機半導体成分は、一つ以上の半導電性金属又はメタロイド(非金属)カルコゲニド(例えば、硫化物、セレン化物、酸化テルルなど)プニクチド(例えば、ガリウム、インジウム、タリウムなど)、炭化物などを含み得る。かかる構成部分は、デバイスを具現化するときの積極的な半導体機能と、本明細書で説明する種類の流体媒体を用いた利用可能性によってのみ限定される(例えば限定するものではないが、溶液処理型又は溶液堆積型無機半導体)。そのような材料と製造方法は本明細書で説明され、しかも本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に理解されるものであろう。にもかかわらず、このような半導体は、薄膜、ワイヤ、ナノワイヤ、ナノチューブ又はナノ粒子形態を含むことができ、すわなち、特殊なデバイス構造に関して機能し得る。そのような形態は、当業者に理解されるであろう。
【0032】
本発明に従って製造した半導体成分は、頂部ゲート頂部コンタクト構造、頂部ゲート底部コンタクト構造、底部ゲート頂部コンタクト構造、及び底部ゲート底部コンタクト構造を含む種々の形式の電界効果トランジスタに用いることができる。半導体成分は、基板成分及び/又は誘電体成分上に堆積され得る。基板成分は、ドープされたシリコン、酸化インジウムスズ(ITO)、ITO被膜ガラス、ITO被膜ポリイミドまたはその他のプラスチック、アルミニウム又はその他の金属のみ又はポリマー又はその他の基板上に被膜したアルミニウム又はその他の金属、ドープされたポリチオフェン、種々の可撓性プラスチックなどから選択できる。
【0033】
本発明の誘電体成分は、有効なキャパシタンス及び/又は絶縁特性をもつ種々の材料から選択できる。誘電体成分は、種々の酸化物(例えばSiO2、Al2O3、HfO2)、窒化物(例えばSi3N4)のような有機誘電体材料、種々の高分子材料(例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリハロエチレン、ポリアクリレート)、及び自己集合した超格子/自己集合した誘電体(SAS/SAND)材料のような無機誘電体材料(例えば、米国特許出願第11/181,132号、Yoon等、PNAS,102(13):4678−4682(2005)に記載されており、これら各々の全ての記載内容は本明細書に参照文献として組み込まれる)、並びにハイブリッド有機/無機誘電体材料(例えば、米国特許出願第11/642,504号に記載されており、これの全ての記載内容は本明細書に参照文献として組み込まれる)を用いて製造できる。幾つかの実施形態では、誘電体成分は、米国特許出願第11/315,076号、米国特許出願第60/816,952号及び米国特許出願第60/861,308号に記載された架橋ポリマーブレンドを含むことができ、これ米国許出願の各々の全ての記載内容は本明細書に参照文献として組み込まれる。
【0034】
種々の実施形態において、誘電体成分は、基板成分(底部ゲートデバイスの場合)上か又は半導体成分(頂部ゲートデバイスの場合)上に種々の溶液相法によって誘電体材料又はそれの前駆体を含む流体媒体を堆積することによって製造できる。例えば、堆積段階は、インクジェット印刷法及び種々の接触印刷法(例えばスクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、パッド印刷法、リソグラフ印刷法、フレキソ印刷法、及びマイクロコンタクト印刷法)を含む印刷法によって実施できる。別の複数の実施形態では、堆積段階は、スピンコート法、ドロップ成形法、ゾーン成形法、浸漬コーティング法、ナイフコーティング法、噴霧法、ロッドコーティング法、或いはスタンピング法で実施できる。幾つかの実施形態では、誘電体成分は加熱及び/又は放射によって硬化され得る。
【0035】
ある特定の非限定的な実施形態では、かかる誘電体成分は、異なる材料が周期的に変わる層を備えたSAND多層有機又は金属−有機アセンブリ/組成物を含むことができる。これらの交互の層は、π分極可能な部分を含む一つ以上の層(“発色団層”)、又は金属酸化物又は幾つかの別の無機材料を含む一つ以上の層、並びにシリル又はシロキサン部分を含む一つ以上の層(“有機層”)を包み得る。交互の層の少なくとも幾つかは、シロキサンマトリクスを含むカップリング又はキャッピング層によって結合され得る。(例えば、限定しないが、図1参照)。
【0036】
π分極可能な部分は、共役π電子を含むことができる。幾つかの実施形態では、π分極可能な部分は、双極子モーメント、電子解放部分、電子取込み部分、かかる部分の組合わせ、双生イオン及び正味電荷の少なくとも一つを含むことができる。限定することなしに、このような成分は非線形光学(NLO)発色団を含むことができる。幾つかの実施形態では、発色団はπ共役系を含むことができ、このπ共役系は、交互に配列した単一及び多(例えば二重)結合(例えば、C=C−C=C−C及びC=C−N=N−C)と共有結合した原子系を含むことができる。π共役系は、限定するものではないが、窒素(N)、酸素(O)、及び硫黄(S)のようなヘテロ原子を含むことができる。幾つかの実施形態では、π共役系は、共役炭化水素鎖で結合した一つ以上の芳香族環(アリール又はヘテロアリール)を含むことができる。ある特定の複数の実施形態では、芳香族環は、ヘテロ原子(例えばアゾ基[−N=N−])を含む共役鎖で結合できる。例えば、π分極可能な部分はスチルバゾリウム部分を含む発色団であることができる。かかる化合物の固有性は、単に、本明細書に記載したそれぞれの実施形態に例示するように、特定の使用又は応用に関連してそれらの電子的/構造的特徴及びその結果として生じる分極性によってのみ制限される。
【0037】
有機層は、ビス(シリレイト)アルキル部分(例えば約C1〜約C20の範囲)を含むことができる。特定の実施形態では、有機層は、発色団層に直接或いはシロキサンマトリクスを含むカップリング又はキャッピング層を介して結合することができる。結合は、公知のシリルの化学的性質を用いて縮合反応又は化学吸着を介して行なうことができる。例えば、シリル部分及びシロキサン部分の前駆体は、限定するものではないが、ハロ基、アミノ基(例えば、ジアルキルアミノ基)、及びアルコキシ基のような加水分解基を含むことができる。このような前駆体の例としては、Cl3Si(CH2)nSiCl3、(CH3O)3Si(CH2)nSi(OCH3)3、及び(Me2N)3Si(CH2)nSi(NMe2)3が挙ることができるがこれらに限定されない。ここでnは、1〜10の範囲の整数であり得る(すなわちn=1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10であり得る)。さらに十分に説明するように、このような基は、使用した処理又は製造条件の下でシロキサン結合形成を介して基板吸着又は縮合又は分子間架橋のために十分な程度に加水分解できる。同様に、π分極可能な部分は、同様なシリル加水分解基を含み、シロキサンキャッピング層及び/又は有機層と結合形成できるように誘導され得る。特定の複数の実施形態では、有機層及び発色団層は、それぞれシリル又はシロキサン部分、或いはπ分極可能な部分を含む自己集合単分子層であり得る。
【0038】
幾つかの実施形態では、誘電体成分は、少なくとも一つの有機双極子層を含むことができ、この双極子層は、シロキサン結合配列に共有結合又は架橋したπ分極可能な部分からなる化合物を含んでいる。ある特定の複数の実施形態では、このような誘電体成分は、かかる双極子層に対してシリコン−酸素結合で結合した炭化水素層を含むことができる。ある特定の別の複数の実施形態では、かかる誘電体成分は、さらに、シリコン−酸素結合で、かかる双極子層に対して結合した少なくとも一つのシロキサンキャッピング層を含むことができる。かかる実施形態に関して、シロキサンキャッピング層は、双極子層と炭化水素層との間に位置し、双極子層と炭化水素層とはシリコン−酸素結合で、各々に結合している。このような成分は、2005年7月14日に出願された継続中の米国特許出願第11/181,132号に十分に記載されており、その記載内容は本明細書に参照資料として結合される。
【0039】
このようなシリコン−酸素結合配列は、加水分解可能なシリコン部分(限定することではないが、例えばハロゲン化、アルコキシル化及び/又はカルボキシ化したシリル部分)及びヒドロキシル官能価の縮合物であることができる。当該技術分野において理解され、かつ本明細書に組み込まれた参照資料の一つ以上において十分に説明されているように、このような結合配列は、それぞれの誘電体層に対して開始材料化合物を使用することによって誘導でき、かかる化合物は、一つ以上の加水分解可能なシリコン部分と置換し、このような部分は自己集合状態の下で加水分解し、その後の層の開始材料又は前駆体化合物と縮合する。
【0040】
かかる層と結合され得る前駆体化合物には、例えば、ビス−トリクロロシリルオクタン、オクタクロロトリシロキサン及び4−[[[4−(N,N−ビス(ヒドロキシ)エチル)アミノ]フェニル]アゾ]−1−(4−トリクロロシリル)ベンジル−ピリジニウムヨウ化物があり、かかる化合物は、本発明に従って、互いに縮合し、対応する層がアセンブリされて誘電体成分を提供する。
【0041】
上記の誘電体成分化合物、層及び部分のいくつかについては本明細書に組み込まれた参考資料に例示されているが、種々の他の成分化合物及び組合せ部分は、当業者に理解されるように、本発明の範囲内で考慮される。例えば、限定することなしに、種々の他のπ分極可能な成分化合物及び組合せ成分は、米国特許第6,855,274号、特にその図1〜2、11、13、15のNLO構造、米国特許第6,549,685号、特にその図2〜3、及び米国特許第5,156,918号、特にその図4〜5の構造に記載されており、各々、代わりの実施例の合成及び特徴に関しては対応する明細書を参照し、これら米国特許の各々はその全体を参照文献として本明細書に組み込まれる。さらに、当業者には理解されるように、種々の他の非線形光学発色団組成物は、“Supramolecular Approaches to Second−Order Nonlinear Optical Materials. Self−Assembly and Microstructural Characterization of Intrinsically Acentric[(Aminophenyl)azo]pyridinium Superlattices”,Journal of American Chemical Society 1996年118,8034‐8042に記載されており、この文献はその全体を本明細書に参考文献として組み込まれる。かかる層成分化合物は、本明細書に記載したように、種々の二官能価炭化水素層及び/又はシロキサンキャッピング層成分化合物と共に用いることができ、かかる化合物は、官能価の炭化水素の長さ又は程度に関して限定することなしに、本発明による適切な基板及び/又は種々の他の誘電体層又は成分と縮合できる。
【0042】
ある特定の複数の実施形態においては、多層誘電体成分も、無機成分(“無機層”)を含む一つ以上の層を含むことができる。無機層は、有機層及び発色団層の間で周期的に交互にでき、また一つ以上の主族/遷移金属化合物、例えば、3族金属、4族金属、5族金属、及び13族金属から選択した主族又は遷移金属を含むことができる。ある特定の複数の実施形態においては、主族金属は、限定するものではないがイットリウム(Y)のような3族金属、限定するものではないがチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)のような4族金属、限定するものではないがタンタル(Ta)のような5族金属、並びに限定するものではないがガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びタリウム(Tl)などのような13族金属から選択できる。
【0043】
ある特定の他の複数の実施形態においては、誘電体成分は、誘電体高分子成分及び任意ではあるが加水分解可能な部分をもつ二つ以上のシリル基を結合する成分(例えばアルキル基又はハロアルキル基のような成分)を含むシリル化された成分を含むことができる。種々の他の結合成分は、当該技術分野において認識され、分子間シロキサン結合及びマトリクス形成を妨げる構造又は官能価によってのみ制限される。加水分解できるシリル基の範囲は、本発明の分野の当業者には知られており、トリアルコキシシリル、トリハロシリル、ジアルコキシハロシリル、ジアルキルハロシリル、ジハロアルキルシリル及びジハロアルコキシシリルを含むが、これらに限定されない。かかる高分子組成物は、2005年12月22日に出願された同時係続中の米国特許出願第11/315,076号に詳しく記載さており、この文献の全部は本明細書に参照文献として組み込まれる。
【0044】
このような非限定的な実施形態では、ビス(シリレート)成分は、約C1〜約C20の範囲にあり、二つのトリハロシリル基、二つのトリアルコキシシリル基又はそれらの組合わせを結合するアルキル成分を含むことができる。本明細書で十分に説明したように、かかる基は、使用した処理法又は製造条件の下でシロキサン結合形成を介して基板吸着又は縮合或いは分子間架橋するのに十分な程度に加水分解できる。それにもかからず、かかる組成物の高分子成分は、当該技術分野において、TFT製造における分離ゲート絶縁体材料又は層として用いられるような誘電体ポリマーの範囲から選択できる。単に例示を目的として、誘電体ポリマーには、ポリ(ビニルフェノール)、ポリスチレン及びそれらの共重合体が含まれ得る。幾つかの実施形態では、かかる高分子組成物は架橋を形成できる。本発明のこのような組成物は、適当なシリレート成分及び高分子誘電体成分の利用可能性(有効性)、デバイス製造のための相互の混合又は混和性、並びに結果としてのポリマーに組み込まれたシロキサン結合マトリクス/回路網及び対応する誘電体/絶縁体作用によってのみ制限される。
【0045】
複合材料はまた、一つ以上の電気接点を含むことができる。ソース、ドレーンおよびゲート電極に適した材料としては、金属(例えばAu、Ag、Al、Ni、Cu)、透明な導電性酸化物(例えばITO、IZO、ZITO、GZO、GIO、GITO)、及び導電性ポリマー(例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン))ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)、ポリアニリン(PANI)、ポリピロール(PPy)がある。
【0046】
限定されることなく、本発明の一つの概念は、基板(ドープ−シリコンウエハ、ガラス上の錫ドープ酸化インジウム、マイラー膜上の錫ドープ酸化インジウム、及びポリエチレンテレフタレート上のアルミニウムのような基板−ゲート材料を含むがこれらに限定されない)、基板/基板−ゲートに堆積させた上述のような誘電体材料、誘電体材料上に堆積させた半導体材料、及びソース−ドレーン接点を含むTFTデバイスに向けられ得る。幾つかの実施形態では、TFTは、以下の一つ以上を含む透明なTFTであり得る:透明な又は実質的に透明な基板、透明な又は実質的に透明なゲート導体、透明な又は実質的に透明な無機半導体成分、透明な又は実質的に透明な誘電体成分、並びに透明な又は実質的に透明なソース及びドレーン接点。ここで使用した用語“透明な”は、スペクトルの可視領域において少なくとも90%の透過率を有することを意味し、また“実質的に透明な”は、スペクトルの可視領域において少なくとも80%の透過率を有することを意味する。
【0047】
ある特定の複数の実施形態では、本発明の開示内容は、薄い有機誘電体の範囲及びチャネル材料として例えば溶液処理型多結晶金属酸化物半導電性薄膜(例えばIn2O3)を用いて製作した高性能な無機−有機ハイブリッドTFTに関する。別の複数の実施形態では、本発明の開示内容は、限定されるものではないがSiO2のような無機誘電体を組み込んだTFTに関する。以下に示すように、十分に微細な結晶度をもつ無機結晶半導体成分は、n型の電界効果動作を示すことができ、また十分な絶縁特性をもつ薄い有機(又は無機)誘電体成分は、極低電圧TFT動作ができる。このようなハイブリッドTFTは、低動作電圧(1〜2V)で>40cm2/Vの非常に大きな電界効果移動度を示すことができる。
【0048】
本発明にとって有用である種々の他の基板、有機誘電体、無機半導体及びトランジスタデバイス形態は、2006年12月20日に出願された同時係続中の米国出願第11/642,217号に記載されており、この文献は全体を参照文献として本明細書に組み込まれる。
【0049】
薄膜トランジスタのようなトランジスタデバイスに加えて、ここで説明した溶液処理型半導体成分は、誘電体成分に結合されるか否かにより、センサ、キャパシタ、単極回路、相補回路(例えばインバータ回路)、リングオシレータなどのような種々の有機電子、光学及び光電子デバイスの範囲内で実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図面は、同スケールである必要はなく、本開示の原理の例示に一般的に重点がおかれると理解されるべきである。また図面は本発明の範囲をいかようにも限定しようとするものではない。
【0051】
【図1】本発明による溶液処理型無機半導体成分を組み込むことのできる薄膜トランジスタを例示し(右側)、また代表的な有機ナノ寸法の誘電体(自己集合ナノ誘電体(SAND))の分子構造及び溶液処理で同じ薄膜トランジスタ又は同様なデバイス構造に組み込むことのできる成分構成を示す(左側)。
【図2】構造:p+−Si/SiO2/CdSe/Au(A及びC)及びn+−Si/SAND/CdSe/Au(B及びD)をもつTFTの代表的な転移及び出力I−Vプロットを示す。
【図3A】アニール温度に対するキャパシタンス及び平均μFETのプロットを示す。
【図3B】15分間指示した温度でアニール処理する前(◇)及び後[■(300℃)、△(400℃)]における構造:Au/SAND(16.5nm)/n+−SiのMISキャパシタに対する電流密度−電界プロットを示す。
【図3C】大気圧の下で15分間指示した温度でアニール処理する前(◇)及び後[■(300℃)、△(400℃)]における構造:Au/SAND(16.5nm)/n+−SiのMISキャパシタに対する電流密度−印加電位プロットを示す。
【図4】指示した基板上に成長しそして400℃でアニール処理したCBD CdSe膜のXRDθ−2θ(A及びB)及びω=0.33°でのGIXD(かすめ入射X線回折)(C及びD)スキャンを示し、p+−Si/SiO2(A及びC)及びn+−Si/SAND(B及びD)である。立方(E;PDF#65−2891)及び六方(F;PDF#65−3436)CdSeについて粉末回折ファイル(PDF)からの表にされた粉末回折パターンがXRD及びGIXDスキャンの下にプロットされている。
【図5A】膜をアニール処理する前のp+−Si/SiO2上に成長したCBD CdSe膜のXRDθ−2θを示す。
【図5B】膜をアニール処理する前のn+−Si/SAND上に成長したCBD CdSe膜のXRDθ−2θを示す。
【図6】指示した基板上に成長し、そして400℃でアニール処理したCBD CdSe膜のAFM像を示し、Aはp+−Si/SiO2基板であり、Bはn+−Si/SAND基板である。
【図7】構造:p+−Si/SiO2/ZIO/Au(A及びC)及びn+−Si/SAND/ZIO/Au(B及びD)をもつTFTの電流−電圧出力(A及びB)及び転移(C及びD)プロットを示す。
【図8A】p+−Si/SiO2基板上に成長したIn2O3膜([エタノールアミン]:[In+3]比10をもつ配合で製造した)のX線回折(XRD)θ−2θスキャンを示す。
【図8B】n+−Si/SAND基板(上部の二つの線)及びp+−Si/SiO2基板(三番目の線及びそれ以下の線)上に成長したIn2O3膜([エタノールアミン]:[In3+]=10)のXRDθ−2θスキャンを示す。
【図8C】及び
【図8D】p+−Si/SiO2基板(C)及びn+−Si/SAND基板(D)上に成長したIn2O3膜([エタノールアミン]:[In3+]=10)のAFM像を示す。
【図9A】及び
【図9B】ガラス基板上にスピンコートしそして400℃で10分間アニール処理したIn2O3膜([エタノールアミン]:[In3+]=10)の光学透過率スペクトル(A)及びバンドギャップ(B)の誘導を示す。
【図10】下記の構造:A及びB−Si/SiO2(300nm)/In2O3(30nm)/Au(50nm)、L=100μm、W=1000μm;C及びD−Si/SAND(16.5nm)/In2O3(30nm)/Au(50nm)、L=100μm、W=500μmをもつ代表的なIn2O3に基づくTFTについての典型的な転移プロット(A、C)及び出力プロット(B、D)を示し、In2O3前駆体溶液は[エタノールアミン]:[In3+]比=10である。
【図11】Si/SAND/In2O3/Auデバイス([エタノールアミン]:[In3+]モル比=10)のチャネル長さ(25、50、100mm)の関数として移動度を比較して示す。
【図12】Si/SiO2(300nm)/In2O3(30nm)/Au(50nm)、L=100μm、W=1000μmの構造をもち、In2O3膜を下記のIn2O3前駆体溶液、すなわちA,B−[ジエタノールアミン]:[In3+]の比=10、C,D−[プロパノールアミン]:[In3+]の比=10で作った代表的にはIn2O3に基づくTFTについての典型的な転移プロット(A、C)及び出力プロット(B、D)を示す。
【図13】Si/SiO2(300nm)/In2O3(30nm)/Au(50nm)、L=100μm、W=1000μmの構造をもち、金属酸化物膜を次の前駆体溶液、すなわちA,B−[エタノールアミン]:[In3++Zn2+]の比=10、C,D−[エタノールアミン]:[In3++Sn4+]の比=10で作った代表的にはInZnO2及びInSnO2に基づくTFTについての典型的な転移プロット(A、C)及び出力プロット(B、D)を示す。
【図14】[エタノールアミン]:[Sn4+]の比=10をもつ前駆体溶液でSnO2膜を作った代表的なSnO2に基づくTFTについての典型的な転移プロットを示す。
【図15】n+−Si/SAND上にスピンコートしそして約200℃〜約250℃でアニール処理した酸化インジウムスズ(ITO)膜のX線回折(XRD)θ−2θスキャンを示す。
【図16】ガラス基板上にスピンコートしそして250℃でアニール処理したITO膜の最適透過率スペクトル(A)及びバンドギャップ(B)の誘導を示す。
【図17】Si/SiO2/ITO/Au、L=100μm、W=1000μmの構造をもち、ITO膜を、[In3+]対[In3++Sn4+]の比〜7をもつ前駆体溶液で作りそして200℃(A、B)及び250℃(C、D)でアニール処理した代表的なITOに基づくTFTについての典型的な転移プロット(A、C)及び出力プロット(B、D)を示す。
【図17F】アニール温度に対する電流のオン/オフ比及び移動度をプロットして示す。
【図17E】[In3+]対[In3++Sn4+]の種々の比に対する電流のオン/オフ比及び移動度をプロットして示す。
【図18】Si/SAND/ITO/Au、L=100μm、W=500μmの構造をもち、ITO膜を、[In3+]対[In3++Sn4+]の比〜7をもつ前駆体溶液で作りそして250℃でアニール処理した代表的なITOに基づくTFTについての典型的な転移プロット(左側)及び出力プロット(右側)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明のある特定の非限定の代表的な実施形態は、SAND誘電体材料の優れた耐熱性及びそれらのユニークな表面化学特性を強調して例示している。例えば、これら及びその他のかかる考察によれば、本発明の種々の特徴は、57cm2/Vs程度の高いμFET値及び<5Vでの動作電圧をもつ溶液処理型SAND/CdSeハイブリッドTFTによって例示できる。これに関連して、化学槽堆積(CBD)法は水溶性前駆体を用いて無機薄膜を製造する普通のスケーラブル技術である。CdSeのホール及び電界効果移動度(800cm2/Vsまで)は両方ともSiの移動度を実質的に越えるので、この材料は、無機TFT用の有望な半導体として認められている。CdSe薄膜を成長する最も普通のCBD法は、水性Cd2+及びセレノ硫酸塩ナトリウム(SeSO2−)溶液を使用している。ヒドロキシル化された表面におけるCdSe膜堆積パラメータが研究されてきて、この情報を、n+−Si/SAND基板におけるCdSeの成長に使用できるという利点がある。
【0053】
さらに特に、底部ゲート/頂部接点のCdSeに基づくTFTは、商業的に利用可能なp+−Si/(300nm)SiO2(コントロール)基板とn+−Si/(16.5nm)SAND基板との両方において、CdSe膜成長用の同一のCBD法に従って製造されてきた。Si/SiO2基板にSAND膜を形成する一般的な方法は、既に報告された文献に発表され、上記の本明細書に組み込まれた参照文献の一つ以上に記載されている。簡単に言えば、基板は、有機層(例えばCl3Si(CH2)8SiCl3)を作る前駆体を含む溶液中に浸漬され得る。過剰な試薬液を除去した後、有機層を被覆した基板は、シロキサンマトリクスを形成するために、キャッピング剤(例えばSi3O2Cl8)を含む溶液中に浸漬され得る。再び、過剰な試薬液を除去した後、有機層及びキャッピング剤を被覆した基板は、π分極成分(例えばStbz発色団前駆体)を含む溶液中に浸漬され得る。これらの段階は繰り返されて、SAND多層誘電体を所望の厚さに成長させることができる。
【0054】
CdSe膜を種々の温度でアニール処理した後、TFTの製作は、シャドーマスクを介してAuソース及びドレーン接点(50nm)を熱蒸着することによって完了する。デバイスパラメータはI−Vプロット分析によって取り出され、そして電界効果移動度は式(1)を用いて計算された。
Ids=(W/2L)μCi(Vg−Vth)2 (1)
ここで、Lはチャネルの長さ、Wはチャネルの幅、Ciは誘電体膜の単位面積当りのキャパシタンス、μは半導体の電界効果移動度、Vthは閾値電圧、Vgはゲート電圧である。図2には代表的な転移及び出力I−Vプロットを示す。SiO2におけるデバイスを制御するために、CdSe膜は真空中及び雰囲気中で300℃で5分間アニール処理し、平均μFET値〜1.3(±1.1)cm2/Vs、最大μFET値〜3.0cm2/Vsを示すTFTを作成した。同じ条件の下で400℃でアニール処理したCdSe膜は、平均μFET値〜4.0(±2.0)cm2/Vs、最大μFET値〜6.7cm2/Vsを示すデバイスを提供する(図2A及び図2C)。400℃でアニール処理したデバイスの平均値Vth、サブ閾値勾配(S)、及びSiO2に基づくIon/Ioffはそれぞれ+25V、3.4V/dec及び106であった。これらのμFET値は、Alソース及びドレーン電極を備えたCBD CdSe/SiO2について前に述べた値より低い大きさの程度である。これらはnチャネルTFTであるので、Al対Auの低い仕事関数は、金属−半導体接触抵抗を低減でき、電子注入を高め、従って実測移動度を高める。それにもかかわらず、これらの移動度値は、1cm2/Vsの最大移動度を示したインクジェットで形成したCdSe膜を用いて製作したTFTの移動度より大きい。半導体成長領域は、次に、Ion/Ioff比及びデバイスの歩留まりを高めるために、ポリスチレン又はポリメチルメタクリル酸塩マスキングでパターン形成した。この方法は、適度な移動度をもってSiO2/CdSe TFT Ion/Ioff比を107に高め、そしてデバイスの歩留まりを>70%に高める。異なるチャネルの長さ/幅を利用する場合には、実測ドレーン電流はデバイスの寸法と線形に対応し、卓越した膜の一様性及び低い寄生漏れ電流を示す。
【0055】
SANDに基づくTFTの製作より以前に、CdSeアニール処理条件下でのSAND誘電体の熱的安定性は、金属(Au)−絶縁体(SAND)−半導体(Si)キャパシタ構造において研究された。n+−Si/SAND基板は空気中において種々の温度で15分間、熱アニール処理され、Auドット接点はシャドーマスク(200μm×200μm)を介して熱蒸着された。次に、コントロール(初期の)及び熱アニール処理した試料の漏れ電流密度(Jleak)対電圧及びキャパシタンス対電圧(又は周波数)は、同じバイアスウインド(−4〜+4V、図3)において測定された。コントロール試料(4Vで〜0.3μA/cm−2)と比較して、SAND Jleakは、300℃でのアニール処理後変化せず、そして空気中における400℃でのアニール処理で単に4xである(4Vで〜1.1μA/cm−2、図3C)。SAND膜のキャパシタンスは、同様に、アニール処理温度が上昇するにつれて、160(コントロール)から225(300℃)へそして274nF/cm−2(400℃図3A)へと相当に増加する。このキャパシタンスの増加についてここでは詳しく説明しないが、予備X線反射率(XRR)測定では、恐らくH2Oの除去で更なるシラノール縮合のために熱アニール処理時に膜は圧縮しそして薄くなることを示している。これらのアニール処理条件の下では、Siはいかなる付加的なSiO2被膜も形成されないことが認められる。従って、キャパシタンス分散は、SAND膜の厚さの増加と合理的に結びついている。その結果、同じバイアスウインドに対して400℃でのJleakの増加は、単に膜の厚さの低減を示し得る。図3Bには、電界に対する漏れ電流密度をプロットしており、SAND Jleakはアニール処理した膜の場合減少することを示している。これらの結果から、SAND膜は雰囲気中で顕著な熱的及び誘電体安定性を示し、それら膜を高温無機膜成長/アニール処理に対して安定にさせることが明らかに立証できる。
【0056】
卓越したSAND熱的安定性のために、SAND/CdSeTFTの製造を実施した。図3Aには、平均CdSe膜μFET値とアニール処理温度との関係を示している。400℃でアニール処理した典型的なパターン形成したSAND/CdSeデバイスは、平均μFET値=41(±15)cm2/Vs、最大実測μFET値〜5.7cm2/Vsを示している。Ion/Ioff比は典型的には〜104であり、最大〜105であり、また典型的なサブ閾値勾配は0.26V/decである。300℃でアニール処理したTFTは、ほぼ同じ最大μFET値でしかも15(±11)cm2/Vsの低い平均移動度を特徴とする大きな飽和移動度分布を示している。これらのデバイスのVthは≦+3.0Vである。ゲート漏れ電流はIdsより低い1〜2台(orders)の大きさである。全体として、SANDデバイスから得られた移動度は、p+−Si/SiO2/CdSeデバイスのものよりかなり大きく、またデバイスは実質的に低い動作電圧で作動する。(SiO2からSANDに基づくTFTへの電界効果移動度の上昇はGaAs及びIn2O3膜のような無機半導体及び酸化物ナノワイヤの場合に以前から観測されてきた。)表1には種々の誘電体及びアニール処理温度でのCBD CdSeに基づくTFTのTFTデータを纏めて示している。アニール処理していないp+−Si/SiO2/CdSe基板は電流変調を示さなかった。
【0057】
【表1】
【0058】
高められたSAND/CdSeのSiO2/CdSeに対するTFT性能が微細構造の原点を有しているかどうかを理解するために、p+−Si/SiO2基板とn+−Si/SAND基板との両方にCBDによって堆積しそして400℃でアニール処理したCdSe膜においてX線回折(XRD)実験を行った(図4)。θ−2θXRD分析によれば、p+−Si/SiO2基板とn+−Si/SAND基板との両方に成長した初期の(図4〜図5)及びアニール処理したCBD CdSe膜について、2θ≒25.4°において唯一つの特徴が観察される。これらの堆積条件の下では、CdSeは六方相と立方相の混合体として堆積され、そして2θ≒25.4°における特徴は閃亜鉛鉱立方体(閃亜鉛鉱構造)からの(111)反射面及び/又は六方(ウルツ鉱−構造)相の(002)反射面に起因し得ると考えられる。おもしろいことには、表面近くのCdSe膜の視射入射X線回折(GIXD)分析により、回折パターンが立方相と殆ど一致することが明らかとなる。300〜400℃で5分間のアニール処理によって、膜結晶度は相当に改善するが、六方相への完全な変換にはつながらない。比較的長いアニール処理時間は六方相への完全な変換にはつながるが、短いアニール処理期間での粒界の減少は許容μFET値をつくるのに十分であり、μFET値は1時間までのアニール処理時間では相当には増大しない。真空堆積立方又は六方相CdSe膜移動度間の報告された違いは無視できるので、六方相は、ある特定の条件の下で、低い電気抵抗率及びバンドギャップ値と関連される。しかし、立方CdSeは準安定であるので、性能におけるこの改善は、また、粒界密度を減少するアニール処理効果により得る。2θ≒25.4°反射の半値全幅分析及びデバイ・シェラーの式を用いると、SiO2基板上に成長したCBD CdSe膜に対する平均微結晶サイズは〜5nmであり、一方、n+−Si/SAND基板における平均微結晶サイズは〜7nmである。タッピングモードAFM像(図6)は、両基板について〜20〜70nmの二乗平均平方根の粗さを示すCdSe膜の多結晶特性を示している。これらの像は、また、CdSeについてX線測定の場合より大きな粒サイズを示す。この相違は、AFMが分解能及び表面限定方法であることにより生じ得る。膜の厚さは両基板について〜200nmであった。
【0059】
上述のように、本発明は、溶液処理型有機ゲート誘電体と結合した溶液処理型無機半導体を用いたTFTの最初の製造を提供する。ここで例示した電界効果移動度は、大きなIon/Ioff比(105)で57cm2/Vs程度に高く、またサブ閾値勾配は0.26V/dec程度に低い。これらの性能パラメータは広範囲の応用に対してこれらのデバイスを注目させる。かかるTFTは、特に半導体及び誘電体膜堆積方法の単純さを考慮して大面積電子素子の製造において重要なステップを与える。
【0060】
本発明のある特定の非限定の代表的な実施形態は、本発明による溶液処理型無機半導体成分に起因する非常に優れた特性をもたらすことができる。例えば、これら及びその他の考察に従って、本発明の種々の特徴は、本発明により前駆体溶液によって製作した種々のインジウム酸化物によって例示することができる。
【0061】
インジウム酸化物(In2O3)は、格子パラメータα=10.11Åをもつ完全に立方の鉄マンガン鉱結晶構造を有するバンドギャップの広い(3.6eV)n型酸化物半導体である。可視領域における高い光学透過率、高いキャリヤ移動度及び同調性導電率の共存により、In2O3を、TFT、太陽電池、及びその他の光学−電子デバイスに応用できるようになる。In2O3の薄膜は、〜1019〜1020cm−3のキャリヤ密度で10〜75cm2/Vsもの高い移動度のためにZnO、CdO、SnO2のような他の透明な酸化物対応品より優れている。しかし、高品質のIn2O3薄膜は、近年、イオンアシスト堆積法のような真空に基づく物理的蒸着法によって成長され、かかる方法は大面積及び高いスループット用には高価である。発明者の認識では、満足な性能を有する溶液処理型In2O3薄膜トランジスタは報告されていない。従って、本発明の種々の他の実施形態に従って、亜鉛インジウム酸化物(ZIO)の膜をSAND誘電体にスピンキャスト(回転成形)して、他の溶液処理型無機半導体にSANDを広範囲に応用できることを示した。300nmのSiO2基板にスピンキャストしたZIO膜では、μFET値は〜0.60cm2/Vsであり、Ion/Ioff比は105であり、Vthは30Vに等しく、またSは8.0V/decに等しかった。SAND基板にスピンキャストしたZIO膜では、μFET値は〜7.2cm2/Vsであり、Ion/Ioff比は104であり、Vthは3.3Vに等しく、またSは1.0V/decに等しかった。これらの結果はまた、デバイスのゲート誘電体をSiO2からSANDに切り替えると、溶液処理型無機半導体の性能を改善できることを示している(図7)。
【発明の実施例】
【0062】
以下の非限定実施例及びデータは、本明細書で説明した製造技術を通して利用できるので、薄膜トランジスタデバイスの組立を含む本発明の方法及び装置に関する種々の概念及び特徴を例示している。先行技術に比較して、本発明の方法及び装置は、予期しない驚くべき結果及びデータをもたらす。本発明の有用性は幾つかのデバイス構造及びそれと共に用いた無機半導体成分の使用を通して例示されているが、同様の結果が、本発明の範囲内において、種々の他のデバイス構造及び関連した方法及び半導体成分で得る事ができることは当業者に理解されよう。
[実施例1a]
【0063】
CdSe膜堆積
試薬CdCl2、Se、及びNa2SO3は、Aldrich Chemicals社から購入し、さらに精製することなく使用した。水性アンモニア(28〜30%)溶液はMallinckrodt Baker社から購入した。全ての堆積段階で使用した水はMilliporeナノ純水システムを用いて精製した。Na2SeSO3溶液は、0.2M(7.9ミリモル)のNa2SO3溶液40mL中の0.37g(4.7ミリモル)のSeを用い、水槽で1.5時間60℃に加熱してNa2SeSO3を作った。その後、溶解してないSeはろ紙でろ過して除去し、結果として、CBD溶液において用いられるのろ液を得た。CBD溶液は20mLの〜0.1M水性CdCl2、6.0mLの濃縮NH4OH、及び20mLの〜0.1M水性Na2SeSO3溶液から作った。その後この溶液は水槽を用いて80℃に加熱した。溶液がオレンジ色になった後、基板(7×2.5cm)をガラスホルダーに装着し、そしてCBD溶液に浸漬した。基板は最初に1分間溶液に入れ、そして脱イオン水で洗浄し、この段階を二回繰り返した。これらの初期表面状態調節段階の後、基板を再び〜15分間溶液に浸漬した。膜の堆積後、基板を新鮮な脱イオン水で5分間にわたって三回超音波処理し、その後空気乾燥してからアニール処理した。代表的なCdSe膜の厚さは160〜200nmであった。
[実施例1b]
【0064】
半導体膜成長のパターン形成のために、ポリスチレン(Mw=250K)及びポリメチルメタクリレート(350K)の溶液を基板上にはけ塗りしてSi基板上に堆積領域を画定した。ポリマー溶液の濃度は、それぞれポリスチレン及びポリメチルメタクリレートについてTFT及びトルエン中100mg/mLであった。20分の空気乾燥の後、パターン形成した基板を真空の下で1時間加熱(65℃)した。その後CdSeのCBDを行った。ナノ純水による洗浄に続いて、CdSe被覆した基板を50mLのTHFで5分間にわたって三回超音波処理し、引き続いて、その後、ナノ純水で5分間で二回洗浄した。この処理の結果、〜12mm2のパターン形成したCdSe膜が得られた。
[実施例2]
【0065】
亜鉛インジウム酸化物膜堆積
2−メトキシ−エタノール中、酢酸亜鉛(Zn(OAC)2)の0.1M溶液を作った。Zn(OAC)2と1:1の比率で溶液に化合物2−アミノ−エタノールを添加し、Zn(OAC)2の溶解度を高めて溶液濃度を0.1Mにした。また2−メトキシ−エタノール中、InCl3の0.1M溶液を作った。0.5mlのInCl3溶液と0.5mlのZn(OAC)2溶液とを混ぜてスピンキャスティング溶液を作った。そして前駆体膜を1500rpmでスピンキャストした。その後、前駆体膜を180℃で10分間予備アニール処理し、そしてZIOの第2の被覆をスピンキャストし、予備アニール処理し、その後ZIO膜を400℃で30分間アニール処理した。
[実施例3]
【0066】
膜特性決定及びTFT製造及び測定
原子間力顕微鏡画像を、シリコン片持ばりを備えたIEOL−5200走査型プローブ顕微鏡を用いてタッピングモードで記録した。WinSPMソフトウエアを用いて像を処理した。Iencor model P10表面プロフィルメータを用いて膜の厚さを測定した。Niフィルタ付きCuKα放射線を用いたRigaku DMAX−A回折計で、CdSe膜の広角θ−2θX線回折(WAXRD)を行った。電気的測定は、ローカル的に書き込んだLABVIEWプログラム及び汎用インターフェースバス通信を用いたKeithley6430Sub−Femtoamp Remoteソースメータ及びKeithley 2400ソースメータで行った。インピーダンス分光分析測定はHewlett−Packard 4192Aインピーダンス分光計で行った。TFT特性決定は雰囲気条件の下で秘密に行った。飽和移動度は本文中の式(1)を用いて評価した。飽和移動度の計算は、デバイス転移プロットから誘導したIds1/2のVGに対する勾配で行った。底部ゲート/頂部接点TFTアーキテクチュアを利用した。Au(50nm)ソース/ドレーン接点は、所望のチャネル寸法にするためにシャドーマスクを介して熱的蒸発によって堆積した。SAND膜は、上記の組み込まれた参照文献に記載されたような従来知られた方法に従って堆積した。
[実施例4a]
【0067】
インジウム塩化物(99.9%、Sigma−Aldrich)、2−メトキシ−エタノール(99%、Sigma−Aldrich)、及び2−エタノールアミン(99%、Sigma−Aldrich)をさらに精製することなしに入手した状態で使用した。七つのバイアル(25mL)を作り、そして各バイアルに、InCl3(0.1ミリモル)の2−メトキシエタノール溶液の10mLアリコートを添加した。そしてInCl3の2−メトキシエタノール溶液に、種々の量のエタノールアミン(それぞれ、0.0、0.10、0.50、0.75、1.0、1.25、1.5ミリモル)を添加して、エタノールアミンとIn3+とのモル比をそれぞれ0.0から15に変化させた。これらの透明な溶液を常温で30分間攪拌してからスピンコート処理した。
[実施例4b]
【0068】
インジウム塩化物(99.9%、Sigma−Aldrich)、2−メトキシ−エタノール(99%、Sigma−Aldrich)、及びジエタノールアミン(99%、Sigma−Aldrich)をさらに精製することなしに入手した状態で使用した。七つのバイアル(25mL)を作り、そして各バイアルに、InCl3(0.1ミリモル)の2−メトキシエタノール溶液の10mLアリコートを添加した。そしてInCl3の2−メトキシエタノール溶液に、種々の量のジエタノールアミン(それぞれ、0.0、0.05、0.10、0.25、0.50、0.75ミリモル)を添加して、エタノールアミンとIn3+とのモル比をそれぞれ0.0から7.5に変化させた。これらの透明な溶液を常温で30分間攪拌してからスピンコート処理した。
[実施例4c]
【0069】
インジウム塩化物(99.9%、Sigma−Aldrich)、2−メトキシ−エタノール(99%、Sigma−Aldrich)、及びプロパノールアミン(99%、Sigma−Aldrich)をさらに精製することなしに入手した状態で使用した。七つのバイアル(25mL)を作り、そして各バイアルに、InCl3(0.1ミリモル)の2−メトキシエタノール溶液の10mLアリコートを添加した。そしてInCl3の2−メトキシエタノール溶液に、種々の量の3−プロパノールアミン(それぞれ、0.0、0.10、0.50、0.75、1.0、1.25ミリモル)を添加して、エタノールアミンとIn3+とのモル比をそれぞれ0.0から12.5に変化させた。これらの透明な溶液を常温で30分間攪拌してからスピンコート処理した。
[実施例4d]
【0070】
インジウム塩化物(99.9%、Sigma−Aldrich)、酢酸亜鉛(99.9%、Sigma−Aldrich)、2−メトキシ−エタノール(99%、Sigma−Aldrich)、及びエタノールアミン(99%、Sigma−Aldrich)をさらに精製することなしに入手した状態で使用した。七つのバイアル(25mL)を作り、そして各バイアルに、Zn(Ac)2(0.05ミリモル)とInCl3(0.05ミリモル)の2−メトキシエタノール溶液の10mLアリコートを添加した。そしてZn(Ac)2とInCl3の2−メトキシエタノール溶液に、種々の量のエタノールアミン(それぞれ、0.0、0.10、0.20、0.30、0.40、0.50ミリモル)を添加して、エタノールアミンと(Zn2++In3+)とのモル比をそれぞれ0.0から5.0に変化させた。これらの透明な溶液を常温で30分間攪拌してからスピンコート処理した。
[実施例4e]
【0071】
インジウム塩化物(99.9%、Sigma−Aldrich)、塩化スズ(99.9%、Sigma−Aldrich)、2−メトキシ−エタノール(99%、Sigma−Aldrich)、及びエタノールアミン(99%、Sigma−Aldrich)をさらに精製することなしに入手した状態で使用した。七つのバイアル(25mL)を作り、そして各バイアルに、SnCl4(0.05ミリモル)とInCl3(0.05ミリモル)の2−メトキシエタノール溶液の10mLアリコートを添加した。そしてSnCl4とInCl3の2−メトキシエタノール溶液に、種々の量のエタノールアミン(それぞれ、0.0、0.10、0.20、0.30、0.40ミリモル)を添加して、エタノールアミンと(Sn4++In3+)とのモル比をそれぞれ0.0から4.0に変化させた。これらの透明な溶液を常温で30分間攪拌してからスピンコート処理した。
[実施例5]
【0072】
ガラス、シリコンウエハ、及びシリコン基板を含み、無機誘電体材料(例えばSiO2)又は有機誘電体材料(例えば米国特許出願第11/181,132号に記載された自己集合したナノ誘電体(“SAND”))で被覆した種々の基板に実施例4で得た金属酸化物前駆体配合物をスピンコートした。代表的なナノスケールSAND誘電体及びそれの成分の分子構造は図1に示されている。シリコンウエハ(1cm×2cm)を無水エタノールで超音波処理し、窒素気流で乾燥した後、5分間酸素プラズマ処理した。同様に、誘電体被覆したシリコン基板を絶対エタノールで洗浄し、窒素気流で乾燥した。これらの基板上に、435rpm/secの加速度で1500rpmの速度で適切な金属酸化物前駆体配合物をスピンコートした。その後、スピンコートした膜は管状炉でアニール処理した(例えば10分間400℃に加熱した)。常温に冷却した後、処理を繰り返して必要な膜厚を達成した。SAND材料は、確立した溶液相に基づく成長技術によって製作した。得られた膜は平滑であり、強い付着性、良好な熱安定性、ピンホールなしの形態、及び顕著な電気絶縁特性を示した。例えば、SAND材料は、キャパシタンス測定から決められたように、180nF/cm2の大きなキャパシタンス、4.7の有効な誘電率、10−13pA程度の低い漏れ電流、及び8MV/cm程度の高い絶縁破壊電界を示した。結果として、SAND材料のような薄い有機誘電体は、非常に低いゲート及びドレーン−ソース電圧でTFT動作を保証する。このような薄い有機誘電体は機械的及び化学的に丈夫である。IAD成長プロセスを注意深く制御することにより、かかる誘電体材料が金属酸化物の堆積中イオン/プラズマ暴露に耐え得ることができた。SAND誘電体成長及びデバイス製造に関する更なる詳細については、例えば、Yoon等のProc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,vol.102,4678(2005)及びYoon等のJ.Am.Chem.Soc.,vol.127,10388(2005)に見ることができる。一般に、無機及び有機界面間の弱い付着性は、ハイブリッド電界効果トランジスタ性能及び安定性を低下させる重要なファクターである。本デバイスの場合、従来の‘スコッチテープ’付着試験では、試験の前後における多層厚さ、光学顕微鏡的像又は光学透明度の変化は検出できず、有機誘電体上のIn2O3膜が強い界面付着性を示すことを表示していることが分かる。
[実施例6]
【0073】
金属酸化物前駆体配合物(実施例4による)を用いて底部ゲート頂部接点トランジスタ(BGTC TFT)を製作した。さらに特に、スピンコート法により無機誘電体層(例えば300nmのSiO2層)か又は有機誘電体層(例えば溶液処理型SAND層)上に、実施例5に記載したように、かかる配合物を薄膜として堆積した。得られた膜を種々の温度及び250℃程度の低い温度でアニール処理した。シャドーマスクを通して熱的蒸発(圧力〜10−6トール)によりAuソース及びドレーン電極(50nm)を堆積して50/100μm(L)×5mm(W)のチャネル寸法を得た。図1には代表的なBGTC TFTのデバイス構造を例示している。
[実施例7]
【0074】
半導電性金属酸化物薄膜、薄いナノスケール有機誘電体材料、TFTデバイス構造、及びそれらのそれぞれの電気的特性は以下に記載するように特徴付けられた。In2O3膜の厚さは、膜の成長に続くエッチングによってTencorP−10ステッププロフィルメータを用いて確かめた。In2O3のXRDθ−2θスキャンは、Niフィルタ付きCuKα放射線を用いたRigakuDMAX−A回折計で行った。光学透明度スペクトルは、Cary500紫外線−可視−近−赤外線分光光度計を用いて得て、被覆していないCorning 1737Fガラスのスペクトルと照合した。膜表面形態は、Digital Instruments Nanoscope III 原子間力顕微鏡(AFM)で撮像した。定量的二次イオン質量分光器(SIMS)分析は、15keV Ga+イオン源を用いたMATS四重極SIMS機器で実施した。半導電性In2O3薄膜の導電率は、Keithley 2182Aナノ電圧計及び6221電流源を用いて測定した。高電導性ITO及びIn2O3膜の電気的特性は、Bio−Rad HL5500ファン・デル・パウルホール効果測定システムにおいて特徴決めした。TFTデバイスの特徴決定は、ローカル的に書き込んだLabviewプログラム及びGPIB通信で作動するKeithley 6430サブフェムトメートル及びKeithley 2400ソースメータを用いて空気中で特注のプローブ(探針)ステーションにおいて実施した。
[実施例7a]
【0075】
図8Aには、p+−Si/SiO2基板上に成長したIn2O3膜のX線回折(XRD)θ−2θスキャンを示す。In2O3膜は、エタノールアミンとIn3+とのモル比を10にして実施例4aに従って作成した。この特殊な配合では、In2O3膜の大きな組織化を可能にする最低アニール処理温度は約400℃である。図8Bには、n+−Si/SAND基板(頂部の二つの線)及びp+−Si/SiO2基板(三番目の線以下)上に成長したIn2O3膜のX線回折XRDθ−2θスキャンを示す。In2O3膜は、エタノールアミンとIn3+とのモル比を指示したとおりにして実施例4aに従って作成した。全ての膜は400℃でアニール処理した。半導体前駆体配合物に含まれた塩基の濃度の臨界効果は、これらのXRDθ−2θスキャンにおいて明らかである。下側のゲート誘電体に関係なく、塩基のない配合物から堆積したアニール処理した膜は、結晶が不十分であり、低キャリヤ移動度222In2O3反射の存在で特徴付けされる。塩基:In3+とモル比が0から15へ大きくなるにつれて、222In2O3反射は消え、高キャリヤ移動度004In2O3配向が優勢となる。興味深いことに、塩基の濃度がさらに高く(例えば塩基:In3+のモル比が12.5〜15.0に)なると、相応した膜は両方の配向の存在を示す。任意の特殊な理論で境界を決める必要なしに、いずれかの配向又は混合した配向の存在のような微細構造特徴はTFTの電界効果移動度及びその他のデバイス特徴に強く影響を及ぼすと信じられる。
[実施例7b]
【0076】
スピンコートしたIn2O3薄膜の表面形態及び粒サイズは、接触モードAFMで検査し、図8C及び図8Dにそれらの像を示す。In2O3薄膜の成長する誘電体基板に関係なく、膜は、きめ細かく、一様でしかも平滑であることがわかった。In2O3薄膜は、低いRMS粗さ、例えばSi/SiO2基板ではRMS〜3nm、またSi/有機(SAND)誘電体では〜6nmを示した。任意の特殊な理論によるまでもなく、低い粗さは、(1)AFMでさらにサポートされる平滑な下側誘電体(有機か無機か)及び(2)平滑な膜を堆積するスピンコート技術の本来の有効性によるものであると考えられる。
[実施例7c]
【0077】
本溶液処理型In2O3膜の全ては、見た目には無色であり、分光学的に透明であり、ガラス基板に堆積した膜は、可視領域において〜95%の平均透明度を示している(図9A)。光学バンドギャップは(αhν)2のhνに対するプロットの線形部分をα=0と推定することによって光学透過スペクトルにより検討し評価した。バンドギャップデータは、スピンコートした誘導In2O3膜に対して3.65eVの値を示した(図9B)。これらの透過度及びバンドギャップ結果によれば、In2O3薄膜は、透明なTFT製作用の理想的なn−チャネル材料であることを示している。
[実施例7d]
【0078】
実施例4aに記載した配合物(In2O3)を用いてp+−Si/SiO2基板及びn+−Si/SAND基板の両方にTFTを製作した。これらのデバイスは、ガラス/ITOゲート並びにAu又はIn2O3ソース及びドレーン電極を備えている。製作後、デバイスは雰囲気中で評価した。代表的なデバイスI−Vプロットは図10に示され、以下の表2には、塩基:In3+塩のモル比及び誘電体の種類の関数として性能パラメータをまとめて示す。
【0079】
【表2】
【0080】
表2から分かるように、塩基:In3+のモル比が大きくなるにつれて、電界効果移動度は、XRDによって観察された微細構造変化をたどる。全ての場合、最大移動度は、塩基:In3+のモル比が約10の時に観察された。これらの配合物の場合、SiO2ゲート誘電体を用いたIn2O3デバイスは、0.0〜100V範囲の動作電圧(VTH〜29.9V)で妥当な電界効果応答性(μFE=0.7cm2/Vs;Ion/Ioff=106)示している。また表2及び図10を参照すると、SAND誘電体を用いて製作したIn2O3有機ハイブリッドTFTは、古典/波状ピンチオフ線形曲線をもち、非常に低い動作電圧(0.0〜4.0V)で飽和する卓越したI−V特性を示す。n+−Si/SAND/In2O3/Au TFTの電気的応答性の分析によって、約43.7cm2/Vsまでの大きな飽和−レジーム電界効果移動度([塩基]:[In3+]の比=10を使用)が明らかとなる。〜105のIon/Ioff比及び<5Vの動作電圧(VTH〜2.2V)と関連したこの結果により、本In2O3TFTは高速応用例に特に適している。付加的なSi/SiO2/In2O3/Au 頂部接点TFTは、種々の厚さのIn2O3膜と共に、InCl3塩の種々の濃度をもつ配合物を用いて製作した。表3には、前駆体溶液におけるInCl3塩濃度の関数として性能パラメータをまとめて以下に示す([エタノールアミン]:[In3+]のモル比=10)。表4には、In2O3膜厚の関数として性能パラメータをまとめて以下に示す([エタノールアミン]:[In3+]のモル比=10)。得られた結果から明らかなように、得られる基板において、最適化膜厚は〜30nmであり、またIn+3濃度は〜0.1Mである。図11には、Si/SAND/In2O3/Auデバイス([エタノールアミン]:[In3+]のモル比=10)のチャネル長さ(25、50、100mm)の関数として移動度を比較する。図11に示すように、移動度は明らかにチャネル長さに依存していない。このことは低接触抵抗を意味し、従ってAuは、これらのn−チャネル半導体膜に対して卓越した接点材料であることを示している。これは、n−チャネル半導体がp−チャネル半導体と組み合わされることになる相補回路に応用するのに適切である。以下の材料は、通常、適切なp−チャネルTFTを製作するためにAuのような高仕事関数の接点を必要としている。
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
本発明の内容をさらに例示するために、実施例4B(ジエタノールアミン)及び実施例4C(プロパノールアミン)の配合物を用いてSi/SiO2/In2O3/Au頂部接点TFTを製作した。代表的なデバイスI−Vプロットを図12に示す。表5及び表6には、塩基:In3+塩のモル比の関数として性能パラメータをまとめて示す。
【0084】
【表5】
【0085】
【表6】
【0086】
本発明が種々の金属酸化物に応用できることを例示するために、Si/SiO2/InZnO2/Au、Si/SiO2/InSnO2/Au、及びSi/SiO2/SnO2/Au頂部接点TFTを、In2O3に基づくTFTに関して記載した方法に従って、製作した。代表的なデバイスI−Vプロットを図13及び図14に示す。表7及び表8には、それぞれInZnO2及びInSnO2についてエタノールアミンと結合した塩との比の関数として性能パラメータをまとめて示す。SnO2デバイスは、0.0〜0.4Vの範囲内の動作電圧(VTH〜2.16V)で妥当な電界効果応答性(μFE=0.5cm2/Vs;Ion/Ioff=106)示している。
【0087】
【表7】
【0088】
【表8】
[実施例8]
【0089】
本発明の内容をさらに例示するために、実施例4eの配合物で製作しSAND被覆基板にスピンコートした半導体成分で、Si/SAND/ITO/Au頂部接点TFTを製作した。得られた膜は種々の温度及び200℃程度の低い温度でアニール処理した。アモルファス金属酸化物の形成は、図15に示すようなXRD法により確認した。一回スピンコートしたITO膜の厚さはX線反射率計により約16.4nmであると測定された。
【0090】
スピンコートしたITO薄膜の表面形態及び粒サイズは、接触モードAFMで検査した。アニール処理の温度に関係なく、ITO薄膜は、AFM像によって、きめ細かく、一様でしかも平滑であることがわかった。例えば、ITO薄膜は、低いRMS粗さを示した。任意の特殊な理論によるまでもなく、低い粗さは、(1)平滑な下側誘電体及び(2)平滑な膜を堆積するスピンコート技術の本来の有効性にあり得ると考えられる。
【0091】
成長させたITO膜は、無色であり、光学的に非常に透明であり、また平坦なガラスに堆積した同様な膜は、可視領域において約90%の平均透明度を示している(図16A)。光学バンドギャップは、光学透過スペクトルから約3.65eVの値であると評価された(図16B)。
[実施例9]
【0092】
ITO TFTデバイスの性能は、アニール処理温度及び[In3+]:[Sn4++In3+]の比の関数として試験した。試験したデバイスは、Si/SiO2(300nm)/ITO/Au、L=100μm、W=1000μmの構造を有する。
アニール温度が200℃から250℃に上昇するにつれて移動度が増加することが観察された(図17A〜図17D及び図17F)。さらに、特に、移動度は、200℃での0.04cm2/Vsから250℃での2.11cm2/Vsに徐々に増加する。値は下記表9にまとめて示す。
【0093】
【表9】
[実施例10]
【0094】
250℃でアニール処理したn−チャネル半導体層としてのITOをまたそれぞれ100μm及び500μmのチャネル長さ及び幅をもつ誘電体層としてのSANDを有するTFTのIDS−VDS転移及び出力特性は図18に示す。結果として、低い動作電圧(1.54V)での高い移動度及び高いIon/Ioff比が示されている。それらの電気的応答性の分析によって、良好なIon/Ioff比〜104で約20.1cm2/Vsまでの大きな飽和レジーム電界効果移動度([In3+]:[Sn4++In3+]は〜7を使用)が明らかとなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に溶解できる無機半導体成分を含み、前記無機半導体成分が、金属セレン化物、硫化物、酸化物、テルル化物、プニクチド、リン化物、窒化物、炭化物、ヒ化物、及びそれらの組合せから選択された化合物を含んでいて、金属が12族〜15族金属から選択される、第1流体媒体を作ること、
前記第1流体媒体を基板成分と接触させること、
前記無機半導体成分をアニール処理して半導体膜を形成すること、
少なくとも部分的に溶解できる誘電体成分を含む第2流体媒体を作ること、及び
前記誘電体成分を前記無機半導体膜に結合すること
を含む薄膜トランジスタデバイス製造用の溶液相方法。
【請求項2】
前記第1流体媒体と接触する前に、薄膜組成物を作るように基板成分に前記第2流体媒体を堆積することを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記堆積処理が印刷処理又はスピンコート処理を含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記薄膜組成物が第1流体媒体内に配されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記半導体成分が、前記第1流体媒体内に少なくとも部分的に溶解できる前駆体試薬の反応生成物である請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記半導体成分が金属セレン化物である請求項5記載の方法。
【請求項7】
半導体膜上に前記第2流体媒体を堆積することを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記堆積処理が印刷処理又はスピンコート処理を含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第1流体媒体の前記基板成分との接触が印刷法及びキャスティング法から選択した処理法を含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記接触が、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、パッド印刷法、リソグラフ印刷法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクト印刷法、スピンコート法、ドロップ成形法、ゾーン成形法、浸漬コーティング法、ナイフコーティング法、及び噴霧法から選択した処理法を含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記半導体成分が、前記第1流体媒体内に少なくとも部分的に溶解できる前駆体試薬の反応生成物である請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記第1流体媒体が、溶媒中の塩基及び一つ以上の三価の金属塩を含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記第1流体媒体が、一つ以上の金属塩を含み、一つ以上の金属塩の金属がインジウム、スズ、亜鉛及びガリウムから選択される請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記塩基が、エタノールアミン、プロパノールアミン及びジエタノールアミンから選択したアミノアルコールである請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記塩基の前記一つ以上の三価の金属塩に対する比が、約1〜約15である請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記媒体が、二価の金属塩又は四価の金属塩から選択した第2の金属塩を含む請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記塩基と前記一つ以上の金属塩との比が、約1〜約15である請求項16記載の方法。
【請求項18】
一つ以上の金属塩が、ハロゲン化物、オキサレート、カーボネート、アセテート、ホルメート、プロピオネート、サルファイト、サルフェート、アセチルアセトネート、水酸化物、ニトレート、過塩素酸塩、トリフルオロアセテート、トリフルオロアセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホネート、トシレート、メシレート、及びそれらの水和物から選択される請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記半導体成分が金属酸化物である請求項9記載の方法。
【請求項20】
前記半導体成分が、400℃以下又は約400℃の温度でアニール処理される請求項9記載の方法。
【請求項21】
前記半導体成分が、250℃以下又は約250℃の温度でアニール処理される請求項9記載の方法。
【請求項22】
前記半導体成分が、100℃以下又は約100℃の温度でアニール処理される請求項9記載の方法。
【請求項23】
前記誘電体成分が無機材料である請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記誘電体成分が、誘電体ポリマーと、π分極可能な部分を含む少なくとも一つの有機双極子層を備える成分とのうちから選択され、前記層がシロキサン結合連鎖で架橋されている請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記誘電体ポリマーが、ポリ(ビニルフェノール)、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、及びそれらの共重合体から選択される請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記誘電体成分が、少なくとも一つの前記双極子層にシリコン−酸素結合で結合した炭化水素層を含む請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記誘電体成分が、少なくとも一つの前記双極子層にシリコン−酸素結合で結合した少なくとも一つのシロキサンキャッピング層を含む請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記シロキサンキャッピング層の一つが、一つの前記双極子層と一つの前記炭化水素層との間にあり、シリコン−酸素結合で前記層の各々に結合される請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記双極子層が非線形光学発色団を含んでいる請求項24記載の方法。
【請求項30】
前記発色団がスチルバゾリウム部分を含んでいる請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記誘電体成分が、実質的に透明な基板に結合される請求項24記載の方法。
【請求項32】
デバイスが透明な薄膜トランジスタである請求項31記載の方法。
【請求項33】
基板成分に結合した誘電体成分を備えるデバイス構造を作ること、
前記半導体成分は金属セレン化物、硫化物、酸化物、テルル化物、プニクチド、リン化物、窒化物、炭化物、ヒ化物、及びそれらの組合せから選択された化合物を含んでいる無機半導体成分を含み、前記金属が12族〜15族金属から選択される、流体媒体を作ること、及び
前記半導体成分を前記誘電体成分に活性結合するのに少なくとも部分的に十分であるように前記流体媒体を前記デバイス構造と接触させること
を含むトランジスタデバイスの製造方法。
【請求項34】
前記接触が印刷法及びキャスティング法から選択した処理法を含む請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記接触が、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、パッド印刷法、リソグラフ印刷法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクト印刷法、スピンコート法、ドロップ成形法、ゾーン成形法、浸漬コーティング法、ナイフコーティング法、及び噴霧法から選択した処理法を含む請求項34記載の方法。
【請求項36】
誘電体成分及び誘電体成分に結合した無機半導体成分を有し、前記結合した半導体成分が、前記誘電体成分と前記無機半導体成分を含む流体媒体とを接触させる方法により得ることができ、前記半導体成分が、金属セレン化物、硫化物、酸化物、テルル化物、プニクチド、リン化物、窒化物、炭化物、ヒ化物、及びそれらの組合せから選択した化合物を含み、前記金属が12族〜15族金属から選択され、前記接触が、前記半導体成分を前記誘電体成分に活性結合するのに少なくとも部分的に十分であること
を特徴とする薄膜トランジスタデバイス。
【請求項37】
前記半導体成分が、400℃以下又は約400℃の温度でアニール処理される請求項36記載のデバイス。
【請求項38】
前記誘電体成分が、溶液相処理法で得られる請求項36記載のデバイス。
【請求項39】
前記誘電体成分が無機材料である請求項38記載のデバイス。
【請求項40】
前記誘電体成分が、誘電体ポリマーと、π分極可能な部分を含む少なくとも一つの有機双極子層を備える成分とのうちから選択され、前記層がシロキサン結合連鎖で架橋されている請求項38記載のデバイス。
【請求項41】
前記誘電体ポリマーが、ポリ(ビニルフェノール)、ポリスチレン、及びそれらの共重合体から選択される請求項40記載のデバイス。
【請求項42】
前記誘電体成分が、少なくとも一つの前記双極子層にシリコン−酸素結合で結合した炭化水素層を含む請求項40記載のデバイス。
【請求項43】
前記誘電体成分が、少なくとも一つの前記双極子層にシリコン−酸素結合で結合した少なくとも一つのシロキサンキャッピング層を含む請求項42記載のデバイス。
【請求項44】
前記シロキサンキャッピング層の一つが、一つの前記双極子層と一つの前記炭化水素層との間にあり、シリコン−酸素結合で前記層の各々に結合される請求項43記載のデバイス。
【請求項45】
前記双極子層が非線形光学発色団を含んでいる請求項36記載のデバイス。
【請求項46】
前記発色団がスチルバゾリウム部分を含んでいる請求項45記載のデバイス。
【請求項47】
前記誘電体成分が、実質的に透明な基板に結合される請求項36記載のデバイス。
【請求項48】
デバイスが透明な薄膜トランジスタである請求項47記載のデバイス。
【請求項1】
少なくとも部分的に溶解できる無機半導体成分を含み、前記無機半導体成分が、金属セレン化物、硫化物、酸化物、テルル化物、プニクチド、リン化物、窒化物、炭化物、ヒ化物、及びそれらの組合せから選択された化合物を含んでいて、金属が12族〜15族金属から選択される、第1流体媒体を作ること、
前記第1流体媒体を基板成分と接触させること、
前記無機半導体成分をアニール処理して半導体膜を形成すること、
少なくとも部分的に溶解できる誘電体成分を含む第2流体媒体を作ること、及び
前記誘電体成分を前記無機半導体膜に結合すること
を含む薄膜トランジスタデバイス製造用の溶液相方法。
【請求項2】
前記第1流体媒体と接触する前に、薄膜組成物を作るように基板成分に前記第2流体媒体を堆積することを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記堆積処理が印刷処理又はスピンコート処理を含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記薄膜組成物が第1流体媒体内に配されることを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記半導体成分が、前記第1流体媒体内に少なくとも部分的に溶解できる前駆体試薬の反応生成物である請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記半導体成分が金属セレン化物である請求項5記載の方法。
【請求項7】
半導体膜上に前記第2流体媒体を堆積することを含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記堆積処理が印刷処理又はスピンコート処理を含む請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第1流体媒体の前記基板成分との接触が印刷法及びキャスティング法から選択した処理法を含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記接触が、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、パッド印刷法、リソグラフ印刷法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクト印刷法、スピンコート法、ドロップ成形法、ゾーン成形法、浸漬コーティング法、ナイフコーティング法、及び噴霧法から選択した処理法を含む請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記半導体成分が、前記第1流体媒体内に少なくとも部分的に溶解できる前駆体試薬の反応生成物である請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記第1流体媒体が、溶媒中の塩基及び一つ以上の三価の金属塩を含む請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記第1流体媒体が、一つ以上の金属塩を含み、一つ以上の金属塩の金属がインジウム、スズ、亜鉛及びガリウムから選択される請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記塩基が、エタノールアミン、プロパノールアミン及びジエタノールアミンから選択したアミノアルコールである請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記塩基の前記一つ以上の三価の金属塩に対する比が、約1〜約15である請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記媒体が、二価の金属塩又は四価の金属塩から選択した第2の金属塩を含む請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記塩基と前記一つ以上の金属塩との比が、約1〜約15である請求項16記載の方法。
【請求項18】
一つ以上の金属塩が、ハロゲン化物、オキサレート、カーボネート、アセテート、ホルメート、プロピオネート、サルファイト、サルフェート、アセチルアセトネート、水酸化物、ニトレート、過塩素酸塩、トリフルオロアセテート、トリフルオロアセチルアセトネート、トリフルオロメタンスルホネート、トシレート、メシレート、及びそれらの水和物から選択される請求項12記載の方法。
【請求項19】
前記半導体成分が金属酸化物である請求項9記載の方法。
【請求項20】
前記半導体成分が、400℃以下又は約400℃の温度でアニール処理される請求項9記載の方法。
【請求項21】
前記半導体成分が、250℃以下又は約250℃の温度でアニール処理される請求項9記載の方法。
【請求項22】
前記半導体成分が、100℃以下又は約100℃の温度でアニール処理される請求項9記載の方法。
【請求項23】
前記誘電体成分が無機材料である請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記誘電体成分が、誘電体ポリマーと、π分極可能な部分を含む少なくとも一つの有機双極子層を備える成分とのうちから選択され、前記層がシロキサン結合連鎖で架橋されている請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記誘電体ポリマーが、ポリ(ビニルフェノール)、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、及びそれらの共重合体から選択される請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記誘電体成分が、少なくとも一つの前記双極子層にシリコン−酸素結合で結合した炭化水素層を含む請求項24記載の方法。
【請求項27】
前記誘電体成分が、少なくとも一つの前記双極子層にシリコン−酸素結合で結合した少なくとも一つのシロキサンキャッピング層を含む請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記シロキサンキャッピング層の一つが、一つの前記双極子層と一つの前記炭化水素層との間にあり、シリコン−酸素結合で前記層の各々に結合される請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記双極子層が非線形光学発色団を含んでいる請求項24記載の方法。
【請求項30】
前記発色団がスチルバゾリウム部分を含んでいる請求項29記載の方法。
【請求項31】
前記誘電体成分が、実質的に透明な基板に結合される請求項24記載の方法。
【請求項32】
デバイスが透明な薄膜トランジスタである請求項31記載の方法。
【請求項33】
基板成分に結合した誘電体成分を備えるデバイス構造を作ること、
前記半導体成分は金属セレン化物、硫化物、酸化物、テルル化物、プニクチド、リン化物、窒化物、炭化物、ヒ化物、及びそれらの組合せから選択された化合物を含んでいる無機半導体成分を含み、前記金属が12族〜15族金属から選択される、流体媒体を作ること、及び
前記半導体成分を前記誘電体成分に活性結合するのに少なくとも部分的に十分であるように前記流体媒体を前記デバイス構造と接触させること
を含むトランジスタデバイスの製造方法。
【請求項34】
前記接触が印刷法及びキャスティング法から選択した処理法を含む請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記接触が、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、パッド印刷法、リソグラフ印刷法、フレキソ印刷法、マイクロコンタクト印刷法、スピンコート法、ドロップ成形法、ゾーン成形法、浸漬コーティング法、ナイフコーティング法、及び噴霧法から選択した処理法を含む請求項34記載の方法。
【請求項36】
誘電体成分及び誘電体成分に結合した無機半導体成分を有し、前記結合した半導体成分が、前記誘電体成分と前記無機半導体成分を含む流体媒体とを接触させる方法により得ることができ、前記半導体成分が、金属セレン化物、硫化物、酸化物、テルル化物、プニクチド、リン化物、窒化物、炭化物、ヒ化物、及びそれらの組合せから選択した化合物を含み、前記金属が12族〜15族金属から選択され、前記接触が、前記半導体成分を前記誘電体成分に活性結合するのに少なくとも部分的に十分であること
を特徴とする薄膜トランジスタデバイス。
【請求項37】
前記半導体成分が、400℃以下又は約400℃の温度でアニール処理される請求項36記載のデバイス。
【請求項38】
前記誘電体成分が、溶液相処理法で得られる請求項36記載のデバイス。
【請求項39】
前記誘電体成分が無機材料である請求項38記載のデバイス。
【請求項40】
前記誘電体成分が、誘電体ポリマーと、π分極可能な部分を含む少なくとも一つの有機双極子層を備える成分とのうちから選択され、前記層がシロキサン結合連鎖で架橋されている請求項38記載のデバイス。
【請求項41】
前記誘電体ポリマーが、ポリ(ビニルフェノール)、ポリスチレン、及びそれらの共重合体から選択される請求項40記載のデバイス。
【請求項42】
前記誘電体成分が、少なくとも一つの前記双極子層にシリコン−酸素結合で結合した炭化水素層を含む請求項40記載のデバイス。
【請求項43】
前記誘電体成分が、少なくとも一つの前記双極子層にシリコン−酸素結合で結合した少なくとも一つのシロキサンキャッピング層を含む請求項42記載のデバイス。
【請求項44】
前記シロキサンキャッピング層の一つが、一つの前記双極子層と一つの前記炭化水素層との間にあり、シリコン−酸素結合で前記層の各々に結合される請求項43記載のデバイス。
【請求項45】
前記双極子層が非線形光学発色団を含んでいる請求項36記載のデバイス。
【請求項46】
前記発色団がスチルバゾリウム部分を含んでいる請求項45記載のデバイス。
【請求項47】
前記誘電体成分が、実質的に透明な基板に結合される請求項36記載のデバイス。
【請求項48】
デバイスが透明な薄膜トランジスタである請求項47記載のデバイス。
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図10】
【図13】
【図14】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A)】
【図18B)】
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図9】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【図8C】
【図8D】
【図10】
【図13】
【図14】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図18A)】
【図18B)】
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図9】
【図11】
【図12】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−512029(P2011−512029A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545028(P2010−545028)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/000649
【国際公開番号】WO2009/097150
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/000649
【国際公開番号】WO2009/097150
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(596057893)ノースウエスタン ユニバーシティ (35)
【Fターム(参考)】
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