説明

無人搬送車および走行制御方法

【課題】障害物を回避する無人搬送車および走行制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】経路データ上に、回避距離を予め設定しておき、進行方向前方に障害物1701を検知すると、回避距離だけ横行した後、前方へ走行することを特徴とする。また、回避距離は、回避方向と共に経路データにおける区間毎に設定されていてもよい。さらに、回避経路を走行中に取得した計測データに、障害物1701が検出されなくなったときから、車長+所定距離だけ前方に移動した後、元の経路1702に戻る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車および走行制御方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ラインや倉庫等において、省人化や搬送の正確性を向上させるため、自動制御で、目標走行経路上を自動的に走行させ、荷物の積み降ろしを行う無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)が導入されている。このような無人搬送車の障害物回避方式として各種のものが開発・適用されている。
【0003】
特許文献1には、斜方向にレーザ光を発射し、レール上に備えられた反射板からの反射レーザ光を受光すると、無人搬送車が障害物ありと判定し、自身を停止させる無人搬送台の衝突防止装置が開示されている。
特許文献2には、レーザ光などの光を発光し、その光が地上ステーションに設置されている反射板によって反射された反射光を受光できなかった場合、地上ステーションと無人搬送車との間に障害物が存在していると判定し、無人搬送車を停止させる無人搬送車走行システムの安全装置が開示されている。
また、特許文献3には、無人搬送車の前輪に、先行する無人搬送車との距離を計測する距離計測センサを配設し、先行する無人搬送車との車間距離が一定距離以下となると、自身を減速または停止させる無人搬送車の衝突防止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−259133号公報
【特許文献2】特開平8−161047号公報
【特許文献3】特開2000−20126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1〜特許文献3に記載の技術は、前方に障害物を検知すると減速または停止させるものである。
【0006】
このような背景に鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、障害物を回避する無人搬送車および走行制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、経路データ上に、回避距離を予め設定しておき、進行方向前方に障害物を検知すると、回避距離だけ横行した後、前方へ走行することを特徴とする。
その他の解決手段については、実施形態中で適宜記載する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、障害物を回避する無人搬送車および走行制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る無人搬送システムの構成例を示す図である。
【図2】本実施形態に係る無人搬送車におけるコントローラの構成例を示すブロック図である。
【図3】地図データ作成処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】計測データの収集方法を示す図である。
【図5】地図データの例を示す図である。
【図6】経路データ作成処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】経路の例を示す図である。
【図8】経路データの例を示す図である。
【図9】本実施形態に係る経路と座標の対応情報の例を示す図である。
【図10】本実施形態に係る無人搬送車の走行時における処理の手順を示すシーケンス図である。
【図11】本実施形態に係る走行制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】経路が直線である場合における操舵角および実際の移動距離の決定方法を説明する図である。
【図13】経路が曲線である場合における操舵角および実際の移動距離の決定方法を説明する図である。
【図14】本実施形態に係る回避制御処理を概要を示す図である。
【図15】本実施形態に係る障害物の回避制御処理の流れを説明するための図である(その1)。
【図16】本実施形態における各種範囲の例を示す図である。
【図17】本実施形態に係る障害物の回避制御処理の流れを説明するための図である(その2)。
【図18】本実施形態に係る回避制御処理の流れを示すフローチャートである(その1)。
【図19】本実施形態に係る回避制御処理の流れを示すフローチャートである(その2)。
【図20】本実施形態に係る停止判定方法を示す図である。
【図21】本実施形態に対する停止判定を用いた場合における無人搬送車の停止状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において同様の構成要素には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0011】
(システム構成)
図1は、本実施形態に係る無人搬送システムの構成例を示す図である。
無人搬送システム9は、無人搬送車1、ホストコンピュータ(外部装置)2および運行管理コンピュータ(外部装置)3を有している。さらに、ホストコンピュータ2の上に上位ホストを設置することもある(図示省略)。
無人搬送車1は、経路データ133(図2)に従って走行エリア内を移動し、荷を積んで移動したり、卸したりするものである。
ホストコンピュータ2は、LAN(Local Area Network)などのネットワーク5を介して運行管理コンピュータ3と接続しており、運行管理コンピュータ3と同じく無人搬送車1から送られた計測データ131(図2)などから地図データ132(図2)を作成したり、ユーザによる経路データ133の作成を行ったりする機能を有する。
運行管理コンピュータ3は、ホストコンピュータ2と同じく無人搬送車1から送られた計測データ131(図2)などから地図データ132を作成したり、無線親局4を介した無線LANなどによって、無人搬送車1に対し指示を送ったり、無人搬送車1から状態報告を受けたりする機能を有している。
【0012】
無人搬送車1は、コントローラ10、レーザ距離センサ20、プログラマブルコントローラ30、操舵輪40、走行輪50、タッチパネルディスプレイ60および無線子局70を有している。
コントローラ10は、無人搬送車1の動作を制御する装置である。なお、コントローラ10の詳細は図2を参照して後記する。
レーザ距離センサ20は、物体までの距離を計測可能なセンサであり、レーザや、ミリ波などを発射し、その反射光(反射波)を検知して障害物までの距離を測定するセンサである。レーザ距離センサ20は、レーザ波や、ミリ波を左右に大きくスキャンすることから、レーザ距離センサ20は、無人搬送車1の180度以上計測可能な位置に取り付けられる。つまり、レーザ距離センサ20は、180度以上のレンジで回転することができ、所定の角度ごとにレーザを発射することができるようになっている。
プログラマブルコントローラ30は、操舵角をパラメータとして制御される操舵輪40および速度をパラメータとして制御される走行輪50の制御を行う装置である。
タッチパネルディスプレイ60は、無人搬送車1の各種設定や、保守などを行う際の情報入出力装置である。
無線子局70は、無線親局4から送信される通信伝文を受信し、コントローラ10へわたす装置である。
【0013】
(コントローラ構成)
次に、図1を参照しつつ、図2に沿ってコントローラの構成を説明する。
図2は、本実施形態に係る無人搬送車におけるコントローラの構成例を示すブロック図である。
コントローラ10は、ROM(Read Only Memory)などのプログラムメモリ110と、RAM(Random Access Memory)などのデータメモリ130と、図示しないCPU(Central Processing Unit)とを有している。
データメモリ130には、計測データ131、地図データ132および経路データ133が格納されている。
計測データ131は、レーザ距離センサ20により測定した障害物までの距離に関するデータである。
地図データ132は、計測データ131に基づき、認識処理された結果を用いて、ホストコンピュータ2、運行管理コンピュータ3あるいは図示しない地図データ作成用パソコンにて作成され、伝送された地図情報であり、無人搬送車1が走行する走行エリアの地図情報である。地図データ132については、後記して説明する。
経路データ133は、地図データ132上に作成された無人搬送車1の走行を予定している経路情報である。なお、経路データ133は、地図データ132の作成同様、ユーザがホストコンピュータ2などで実行されている地図データ132を参照して編集ソフトウェアにより作成されるものである。経路データ133は、ホストコンピュータ2、運行管理コンピュータ3あるいは図示しない地図データ作成用パソコンから無人搬送車1へ送られることによってデータメモリ130に格納される。なお、経路データ133には、各場所における無人搬送車1の速度情報などが含まれている。経路データ133については、後記して説明する。
【0014】
プログラムメモリ110には、無人搬送車1を制御するための各プログラムが格納されており、これらのプログラムがCPUで実行されることにより、情報を処理する処理部111を具現化している。処理部111は、座標変換部112、データ取得部113、計測データ取得部114、マッチング部115、位置推定部116、走行経路決定部117、走行制御部118、停止制御部119および回避制御部120を含んでいる。
【0015】
座標変換部112は、ホストコンピュータ2から取得した作業指示に含まれている目的番地を地図データ132で定義されている(すなわち、走行エリアに設定されている)座標に変換する機能を有する。ここで、番地とは、無人搬送車1が走行する走行エリアにおける所定の場所である。
データ取得部113は、データメモリ130から経路データ133や、地図データ132などの各種データを取得する機能を有する。
計測データ取得部114は、リモコンによる手動運転時や、無人搬送車1の走行制御時に、レーザ距離センサ20で収集された計測データ131を取得する機能を有する。
マッチング部115は、無人搬送車1の走行制御時にレーザ距離センサ20から送られた計測データ131と、地図データ132とをマッチングさせる機能を有する。
位置推定部116は、マッチング部115によるマッチング結果を基に、無人搬送車1の現在位置を推定する機能を有する。
【0016】
走行経路決定部117は、経路データ133に含まれている無人搬送車1の速度情報と、位置推定部116で推定された現在位置に基づいて、経路上における次の移動先位置を決定する機能を有する。また、無人搬送車1の経路からのずれから、操舵角を算出する機能も有している。
走行制御部118は、経路データ133に含まれている速度情報や、走行経路決定部117が算出した操舵角をプログラマブルコントローラ30へ指示する機能を有する。
停止制御部119は、無人搬送車1が目的番地に達したか否かを判定し、達していれば無人搬送車1を停止させる機能を有する。
回避制御部120は、無人搬送車1の走行中において、前方に障害物を検知すると、その障害物を回避して走行するよう制御する機能を有する。
【0017】
無人搬送車1を走行させるためには、無人搬送車1をオンライン投入(自動運転)する前に地図データ132と経路データ133を作成して、無人搬送車1に記憶させる必要がある。また、目的番地と、経路データ133の座標とを対応付ける必要がある。以下、図1および図2を参照しつつ、図3〜図9に沿って地図データ132と経路データ133の作成手順について説明する。
【0018】
<地図データ作成処理>
図3は、地図データ作成処理の手順を示すフローチャートであり、図4は計測データの収集方法を示す図である。
まず、手動コントローラまたはリモコン(リモートコントローラ)などでユーザが周囲を目視しつつ、無人搬送車1を手動により低速運転する。この際、レーザ距離センサ20が計測データ131を収集する(S101)。
このとき、図4に示されるように、レーザ距離センサ20は、図示しないレーザ発射部を、例えば0.5度ずつ、180度(または180度以上)回転させて、30ms周期でレーザ光411を発射する。これは、無人搬送車1が1cmから10cm程度進む毎に180度分の計測を行っていることになる。レーザ距離センサ20は、発射したレーザ光411の反射光を受光し、レーザ光411が発射されてから受光するまでの時間を基に障害物421までの距離を算出(計測)する。計測データ取得部114は、算出した障害物までの距離に関するデータを計測データ131としてデータメモリ130に格納する。なお、計測データ131は、一定時間毎に収集される。符号401〜403は区間を示しており、これらの区間毎に回避情報(回避距離および回避方向など)が設定されている。
【0019】
エリア内におけるすべての計測データ131を収集後、計測データ131は図示しない外部インタフェースなどを介して、ホストコンピュータ2、運行管理コンピュータ3あるいは図示しない地図データ作成用パソコンに出力される。
そして、ユーザが、ホストコンピュータ2、運行管理コンピュータ3あるいは図示しない地図データ作成用パソコン上で稼動している地図作成ソフトウェアを操作することで、出力された計測データ131に基づく地図データ132を作成する(図3のS102)。具体的には、収集した各計測データ131を重ね合わせることで地図データ132を作成する。
作成された地図データ132は、図示しない外部インタフェースなどを介して無人搬送車1に送られ、データメモリ130に格納される。
なお、一度作成された地図データ132は、再度ステップS101〜S102の処理が行われない限り、更新されることはない。
【0020】
(地図データ例)
図5は、地図データの例を示す図である。
図5に示すように、地図データ132には走行エリアにおける壁501および障害物502がデータとして記録されている。
【0021】
<経路データ作成処理>
次に、図6〜図9を参照して、無人搬送車1が進むべき経路を示す経路データを予め作成する経路データ作成処理を説明する。
図6は、経路データ作成処理の手順を示すフローチャートである。
まず、ユーザは、ホストコンピュータ2、運行管理コンピュータ3あるいは図示しない地図データ作成用パソコンで実行されている経路作成ソフトウェアを利用して、地図データ132上に経路を指定することによって経路位置情報を設定する(S201)。経路作成ソフトウェアは、ユーザが経路作成ソフトウェアで表示している地図データを参照し、地図画面上をマウスなどのポインティングデバイスでなぞることにより、簡単に地図上に経路を作成できる機能を有している。このように作成された経路位置情報は地図データ132において定義される座標の羅列によって表現されているデータである。また、経路位置情報の設定の際に、ユーザは番地の設定を行うことによって、経路データ133に番地と座標との対応情報を設定する。
【0022】
次に、ユーザは、経路作成ソフトウェアにより作成した経路上に無人搬送車1が無人で走行するときの速度を指定する速度情報の設定を行う(S202)。例えば、図4を参照して説明すると、最初の区間403では、2速(1.2[km/h])、次のカーブの区間402では、1速(0.6[km/h])、カーブを抜けた区間401では、3速(2.4[km/h])で走行するというように経路上に設定する。
速度設定は、クリープ速度(微速前進速度)、1速、2速などの順で何段階かに設定できる。例えば、最高速度を9km/hr(150m/min)として、10分割するなどして決定してもよい。ただし、クリープ速度は、1速よりも遅い速度に決めておく(例えば、0.3km/hrなど)。
【0023】
そして、ユーザは、ホストコンピュータ2、運行管理コンピュータ3あるいは図示しない地図データ作成用パソコンで実行されている経路作成ソフトウェアを利用して、経路データ132における区間毎に回避距離および回避方向などの回避情報を設定する(S203)。回避情報は、具体例は後記するが、例えば(回避方向,回避距離)のように設定する。例えば、(進行方向右,5m)などである。
【0024】
(経路データ例)
次に、図7および図8を参照して経路データ133の例を説明する。
図7は、経路の例を示す図である。
図7では無人搬送車1の走行エリアである工場内における経路の例を示しており、「A」〜「H」は「A番地」〜「H番地」を示している。
また、図7の「A番地」、「C番地」、「E番地」および「G番地」は「卸作業」が行われる箇所を示している。また、図7の「B番地」、「D番地」、「F番地」および「H番地」は「積作業」が行われる箇所を示している。
なお、番地の指定は、白線のライン上を無人搬送車が走行する従来のシステムから引き継いだレガシな部分である。
【0025】
図8は、経路データの例を示す図である。
図8において、「B」、「C」、「E」、「G」は図7の「B」、「C」、「E」、「G」に対応するものである。
図8(a)では、「B番地」で荷を積んで、「C番地」で卸す経路を示している(B→C)。
同様に、図8(b)では、「B番地」で荷を積んで、「E番地」で卸す経路を示しており(B→E)、図8(c)では、「B番地」で荷を積んで、「G番地」で卸す経路を示している(B→G)。
このように、経路データ133は積箇所→卸箇所あるいは卸箇所→積箇所で指定することができる。
【0026】
図7の例で、設定可能な経路データ133は、例えば以下の通りとなる。
(1)卸→積
A→B、A→D、A→F、A→H
C→B、C→D、C→F、C→H
E→B、E→D、E→F、E→H
G→B、G→D、G→F、G→H
【0027】
(2)積→卸
B→A、B→C、B→E、B→G
D→A、D→C、D→E、D→G
F→A、F→C、F→E、F→G
H→A、H→C、H→E、H→G
【0028】
地図データ132と、経路データ133の作成は、1台の無人搬送車1で収集した計測データ131を基にホストコンピュータ2、運行管理コンピュータ3あるいは図示しない地図データ作成用パソコンで行われ、使用するすべての無人搬送車1に適用する。
なお、地図データ132と経路データ133の作成は、オンライン投入するすべての無人搬送車1のそれぞれについて行うこともできる。なぜならば、レーザ距離センサ20や走行系(操舵輪40、走行輪50)の固体差が大きい場合は、1台の無人搬送車1で収集した地図データ132をすべての無人搬送車1に適用するよりは、個別に適用した方が有効と考えられるからである。
【0029】
図9は、本実施形態に係る経路と座標の対応情報の例を示す図である。
図9に示すように、経路データ133では、経路が座標で管理されている。具体的には、経路データ133は、座標の羅列で表現されている。そして、経路データ133には、番地1101〜1103が座標に対応付けられたデータも格納されている。なお、番地1101〜1103は、図7および図8の番地「A」〜「H」などに相当するものである。
【0030】
<走行時における制御処理>
次に、図1および図2を参照しつつ、図10および図11に沿って無人搬送車1を無人で走行させる際の処理を説明する。
図10は、本実施形態に係る無人搬送車の走行時における処理の手順を示すシーケンス図である。
オンライン投入する際、まず、ユーザが無人搬送車1をある番地まで持っていき、例えばタッチパネルディスプレイ60を介して現在番地を入力する。
これにより、無人搬送車1はホストコンピュータ2へオンライン投入した旨の情報を送る(S301)。ここで、オンライン投入は、次作業の問い合わせを兼ねている。
運行管理コンピュータ3を介して、無人搬送車1からの兼・次作業問い合わせを受信したホストコンピュータ2は無人搬送車1へ作業指示を送信する(S302)。この作業指示には、目的番地と、その目的番地で行われる作業内容に関する情報が格納されている(ステップS302の例では積作業が行われる)。
運行管理コンピュータ3を介して作業指示を受信した無人搬送車1は、図11で後記する走行制御を行い(S303)、現在の状態(番地通過情報、作業完了情報など)を運行管理コンピュータ3へ報告する(S304)。
無人搬送車1は、目的番地へ到着するまでステップS303およびステップS304の処理を繰り返す。
【0031】
そして、走行制御(S305)後、目的番地へ到着し、作業(ここでは、積作業)が完了すると、無人搬送車1は積作業が完了した旨の状態報告を運行管理コンピュータ3へ送信する(S306)。
積作業が完了した旨の状態報告を受信した運行管理コンピュータ3は、同様の状態報告をホストコンピュータ2へ送信する。
次に、ホストコンピュータ2は、次作業として卸作業の作業指示を運行管理コンピュータ3を介して無人搬送車1へ送信する(S307)。この作業指示には、目的番地と作業内容(ステップS307の例では卸作業)に関する情報が格納されている。
運行管理コンピュータ3を介して作業指示を受信した無人搬送車1は、図11で後記する走行制御を行い(S308)、現在の状態(番地通過情報、作業完了情報など)を運行管理コンピュータ3へ報告する(S309)。
無人搬送車1は、目的番地へ到着するまでステップS308およびステップS309の処理を繰り返す。
【0032】
そして、走行制御(S310)後、目的番地へ到着し、作業(ここでは、卸作業)が完了すると、無人搬送車1は卸作業が完了した旨の状態報告(卸作業完了報告)を運行管理コンピュータ3へ送信する(S311)。これは、次作業の問い合わせを兼ねている。
卸作業が完了した旨の状態報告を受信した運行管理コンピュータ3は、同様の状態報告をホストコンピュータ2へ送信する。
【0033】
運行管理コンピュータ3を介して、卸作業完了報告を受信したホストコンピュータ2は無人搬送車1へ、次の作業指示を送信する(S312)。
ここでは、作業内容として移動(積作業および卸作業を行わない)を指示することとする。
運行管理コンピュータ3を介して作業指示を受信した無人搬送車1は、図11で後記する走行制御を行い(S313)、現在の状態(番地通過情報、作業完了情報など)を運行管理コンピュータ3へ報告する(S314)。
無人搬送車1は、目的番地へ到着するまでステップS313およびステップS314の処理を繰り返す。
【0034】
そして、走行制御(S315)後、目的番地へ到着すると、無人搬送車1は目的番地へ到着した旨の状態報告(移動作業完了報告)を運行管理コンピュータ3へ送信する(S316)。これは、次作業の問い合わせを兼ねている。
移動作業が完了した旨の状態報告を受信した運行管理コンピュータ3は、同様の状態報告をホストコンピュータ2へ送信する。
運行管理コンピュータ3を介して移動作業完了報告を受信したホストコンピュータ2は、次作業の確認を行う(S317)。
【0035】
なお、図10では、ステップS306で積作業の完了報告を受けたホストコンピュータ2が、すぐに次作業である卸作業の指示を無人搬送車1に送信しているが、無人搬送車1からの次作業問い合わせを受信してから次作業の指示を無人搬送車1へ送信するようにしてもよい。なお、卸作業や、移動作業の場合も同様である。
また、図10で目的番地に到達していない場合は、無人搬送車1は状態報告を行わないようにしてもよい。
【0036】
さらに、無人搬送車1に異常が発生した場合、オンライン投入時と同じように例えばタッチパネルディスプレイ60を介して無人搬送車1に現在番地を入力することによって、無人搬送車1が自律的に現在位置を取得するようにしてもよい。
【0037】
<走行制御処理>
図11は、本実施形態に係る走行制御処理の手順を示すフローチャートである。なお、図11の処理は、図10のステップS303,S305,S308,S310,S313,S315の処理の詳細に該当する処理である。
まず、無人搬送車1は運行管理コンピュータ3を介して作業指示を受信する(S401)。
次に、無人搬送車1の座標変換部112は、経路データ133に格納されている番地と座標との対応情報に従って、作業指示に含まれている目的番地を座標に変換する(S402)。
そして、無人搬送車1のデータ取得部113は、データメモリ130に格納されている経路データ133より、現在番地から目的番地へ向かう経路データ133を選択すると、該当する経路データ133を取得する(S403)。
【0038】
続いて、レーザ距離センサ20が、図4で説明したレーザ測距を行い、計測データ取得部114がレーザ測距の結果を取得する位置決定用レーザ距離センサ計測を行う(S404)。
そして、マッチング部115が、データメモリ130に格納されている地図データ132と、ステップS404で取得した計測データ131とのマッチングを行う(S405)。
次に、回避制御部120が回避制御処理を行う(S406)。回避制御処理については、後記して説明する。
そして、位置推定部116が、ステップS405のマッチング結果を基に現在の無人搬送車1の現在位置(X,Y)を推定する(S407)。ステップS405およびステップS407の処理は特許第4375320号明細書などに記載の技術であるため詳細な説明を省略するが、概略すると計測データ131の形状に合致する箇所を地図データ132上で検索し、その検索結果から無人搬送車1の現在位置を推定する。推定された現在位置は、座標の形で得られる。
【0039】
次に、走行経路決定部117が、経路データ133に設定されている速度情報vに基づき、移動距離d、実際の移動距離daを決定する(S408)。実際の移動距離daの算出は図12および図13を参照して後記する。
なお、ステップS408において、無人搬送車1が、経路から外れている場合、走行経路決定部117は、無人搬送車1から一番近い経路の部分に設定されている速度情報を用いる。本実施形態では、無人搬送車1の基準点から経路に垂線を伸ばして、その垂線と経路が交わる点に設定されている速度情報を用いる。なお、本実施形態では、無人搬送車1の基準点を、無人搬送車1の前面中央とする。
移動距離の決定は、経路データ133に設定されている速度が大きいほど、移動距離が大きくなるようにする。例えば、速度と移動距離を正比例の関係を持たせるようにしてもよいし、速度と移動距離の関係を二次関数や、さらに、高次の関数の関係を有するようにしてもよい。
【0040】
ここで、速度と移動距離dとの関係を例示する。以下のように、次の距離センサ計測時までに移動距離dの終点である移動先まで到達するよう、十分な長さをとるようにしている。
1速:5.0mm/30ms(0.6km/h)、移動距離d:100mm
2速:10.0mm/30ms(1.2km/h)、移動距離d:200mm
3速:20.0mm/30ms(2.4km/h)、移動距離d:300mm
4速:26.7mm/30ms(3.2km/h)、移動距離d:400mm
ここで、30ms毎の距離となっているのは、レーザ距離センサ20の計測間隔が30msとした場合の例示であり、計測間隔により数値は変わってくる。
【0041】
ステップS408の後、走行経路決定部117は、ステップS408で求めた移動距離dと、現在位置座標(X,Y)に基づいて、経路上に目標となる移動先座標を決定することによって当面の移動先位置を決定する(S409)。
【0042】
次に、走行経路決定部117は、現在座標(X,Y)とステップS409で決定した移動先座標を基に、操舵角θを決定する(S410)。ステップS410の処理は、図12および図13を参照して後記する。
また、走行経路決定部117は、現在座標(X,Y)に基づき、経路上に設定されている速度vを経路データ133から再度取得することによって速度を決定する(S411)。
【0043】
この段階で、無人搬送車1を動かすための操舵角θ、速度vが決定されたので、走行制御部118は、これらのパラメータをプログラマブルコントローラ30に送ることにより、移動距離dの終点である移動先を目指して、無人搬送車1を移動させる(S412)。実際には、移動距離d分の移動時間より早いタイミングで、次のレーザ距離センサ20の計測が行われる。
【0044】
次のレーザ距離センサ計測時(30msec後)、停止制御部119は、無人搬送車1が目的番地(目的番地に対応した座標)に到達したか否かを判定する(S413)。ステップS413の処理は、図14〜図21を参照して後記する。
ステップS413の結果、無人搬送車1が目的番地に到達していない場合(S413→No)、コントローラ10はステップS404へ処理を戻す。
ステップS413の結果、無人搬送車1が目的番地に到達している場合(S413→Yes)、コントローラ10は走行制御処理を終了する。
【0045】
なお、無人搬送車1が目的番地まで到達したら、コントローラは現在座標の情報をそのままデータメモリ130に保持することで、次の作業時に用いることができる。
【0046】
<操舵角・実際の移動距離の決定>
次に、図1および図2を参照しつつ、図12および図13に沿って操舵角および実際の移動距離の決定方法を説明する。これは、図11のステップS408,S410で行われる処理である。
図12は、経路が太い実線で示すような直線である場合における操舵角および実際の移動距離の決定方法を説明する図である。
本実施形態では、無人搬送車1の基準点1201を無人搬送車1の前面中央としている。速度に基づいて移動距離dが求まると、走行経路決定部117は、無人搬送車1の基準点1201から経路上(経路データ132で示される座標の羅列)に下ろした垂線の足1203から経路に沿って移動距離dにあたる点を求め、移動先座標1202とする。そして、走行経路決定部117は、無人搬送車1を移動先座標1202の方向に動かせる(向かわせる)ように、操舵輪40の角度を操舵角θとする。
このとき、実際の移動距離daと、移動距離dとの関係は、da=d/cosθとなる。
【0047】
図13は、経路が太い実線で示すような曲線である場合における操舵角および実際の移動距離の決定方法を説明する図である。
経路が曲線である場合においても、走行経路決定部117は、無人搬送車1の基準点1201から、経路上に垂線の足1301(無人搬送車1の基準点1201から経路上において最短距離となる点)を求め、点1301から曲線の長さを移動距離dとして計算することによって、経路上の移動先座標1302を決定する。このような方法では、計算量が大きくなるが、経路の曲率が大きいときに、正確な経路上の移動先座標1302を求めることができる。
なお、実際の移動距離daと、移動距離dとの関係は、da=d/cosθとなる。
【0048】
図12および図13に記載の方法によれば、現在座標が経路上にのっていなくても次の移動先座標で経路上にのるように操舵角と速度を決めることができる。
前記したように、本実施形態では、無人搬送車1の走行速度に応じて、速度が大きくなるにつれて、移動距離を大きくとり、経路上の目標となる移動先座標を遠くにとるので、無人搬送車1のブレの少ない安定した走行を行うように制御することができる。
【0049】
<回避制御>
図14は、本実施形態に係る回避制御処理を概要を示す図である。
本実施形態では、図14(a)に示すように、経路1702を走行している無人搬送車1が前方に障害物1701を検知すると、図14(b)に示すように障害物1701を迂回することによって、障害物を回避する。
【0050】
(回避制御処理の流れ)
次に、図15〜図17を参照して、本実施形態に係る障害物の回避制御処理の流れを説明する。
まず、無人搬送車1が経路1702上を走行しているときに、回避制御部120が前方に障害物1701を検知する(図15(a))。障害物1701の検知は、レーザ距離センサ20から取得した計測データ131において、自車前方に物体が検知されたか否かによって判定される。
図16に示すように、無人搬送車1と障害物の距離によって、注意・減速範囲(第1の距離)1903、停止範囲(第2の距離)1902、緊急停止範囲1901が設定されている。障害物との距離が、どの範囲にあるかは、回避制御部120が、現在の走行速度や、地図データ132とのマッチング結果などから推測する。
【0051】
ここで、各範囲について説明すると、障害物が注意・減速範囲1903に存在する場合、回避制御部120は無人搬送車1を低速走行(例えば、1速走行)させる。
障害物が停止範囲1902内に存在する場合、回避制御部120は一定時間停止した後、障害物1701を迂回する回避制御処理を行う。なお、一定時間停止するのは、停止中に障害物が移動することを期待してのものである。
緊急停止範囲1901は、急に無人搬送車1の前に障害物が置かれた場合などに使用される範囲であり、回避制御部120が行う処理は停止範囲1902と同様である。
【0052】
図15(a)で検知された障害物1701が注意・減速範囲1903(図16)内であれば、回避制御部120は、無人搬送車1を低速走行(例えば、1速走行)させる。
障害物1701が除去されず、無人搬送車1と障害物1701との距離が、停止範囲1902(図16)内に入ると、回避制御部120は、無人搬送車1を一定時間停止させる(図15(b))。
一定時間停止後においても、障害物1701が除去されていない場合、無人搬送車1は予め設定されている距離xaだけ、無人搬送車1を横行させる(図15(c))。横行距離xaは、前記したように経路データ133において、区間毎に設定されている。例えば、ある区間Aでは、左方向に3m、次の区間Bでは、右方向に2mなどという具合に設定されている。1つの区間に左方向に3m、右方向に2m設定し、左方向を優先し、レーザ距離センサ20による計測の結果、障害物が左方向に3m以上あるようであれば、右方向に移動するなどのように設定してもよい。
【0053】
横行後、無人搬送車1は、レーザ距離センサ20による計測データ131を取得しつつ、前方へ低速走行する(図15(d))。つまり、経路1702と平行に進む。
【0054】
回避制御部120は、計測データ131に障害物が検出されているか否かを常に判定しながら、前方に進み、計測データ131に障害物が検出されなくなったときを、無人搬送車1の先頭が障害物1701の後方の縁と重なったものと判定する(図17(a))。
回避制御部120は、計測データ131に障害物1701が検出されなくなったときから、車長+αだけ前方へ低速走行すると、再び無人搬送車1を横行させて(図17(b))、経路1702上に無人搬送車1を戻し、通常走行を開始する(図17(c))。
【0055】
(回避制御処理の詳細)
次に、図1および図2を参照しつつ、図18および図19に沿って、回避制御処理の詳細を説明する。
図18および図19は、本実施形態に係る回避制御処理の流れを示すフローチャートである。これまでの無人搬送車は、経路前方に障害物を検知すると、一次停止し、一定時間以内に障害物を除去しなければ、異常通知を行いつつ停止する異常停止を行うものであった(図18のステップS511〜S513の処理に相当)。
これに対し、本実施形態に係る無人搬送車1は、以下のような回避処理を行うことによって、このような異常停止を減少させるものである。
回避制御部120は、経路前方に障害物を検知したか否かを判定する(図18のS501)。前記したように、この判定は、レーザ距離センサ20による測距の際に経路前方に物体があるか否かを回避制御部120が判定することによって行われる。
ステップS501の結果、経路前方に障害物を検知していない場合(S501→No)、回避制御部120は、図11のステップS407へ処理を進める。
ステップS501の結果、経路前方に障害物を検知した場合(S501→Yes:図15(a))、回避制御部120は、その障害物までの距離が注意・減速範囲内であるか否かを判定する(S502)。
ステップS502の結果、障害物までの距離が注意・減速範囲内ではない場合(S502→No)、処理部111は、通常の走行を行った(S503)後、ステップS502へ処理を戻す。ステップS503の処理は、図11のステップS404,405,407〜412の処理と同様であるため、詳細を省略する。
【0056】
ステップS502の結果、障害物までの距離が注意・減速範囲内である場合(S502→Yes)、回避制御部120は無人搬送車1を低速走行(1速走行)させる(S504)。このとき、回避制御部120は、タッチパネルディスプレイ60に警告表示を行うとともに、ホストコンピュータ2などにも警告表示を行わせるようにしてもよい。また、回避制御部120が、図示しない音声発生装置から警告音を出力させてもよい。
その後、回避制御部120は、障害物までの距離が停止範囲内であるか否かを判定する(S505)。
ステップS505の結果、障害物までの距離が停止範囲内ではない場合(S505→No)、回避制御部120はステップS504へ処理を戻す。
【0057】
ステップS505の結果、障害物までの距離が停止範囲以内である場合(S505→Yes)、回避制御部120は無人搬送車1を一時停止させる(S506:図15(b))。
一時停止している間、回避制御部120は一定周期で障害物が除去されたか否かを判定する(S507)。障害物が除去されたか否かは、レーザ距離センサ20から取得した計測データ131を基に判定される。
ステップS507の結果、障害物が除去されていれば(S507→Yes)、処理部100は図11のステップS404へ処理を戻す。
【0058】
ステップS507の結果、障害物が除去されていなければ(S507→No)、回避制御部120は、回避経路上に障害物を検知したか否かを判定する(S508)。ここでは、現在停止している位置でレーザ距離センサ20による計測データ131を取得し、取得して計測データ131で認識できる範囲内において、回避経路上に障害物が検知されたか否かを回避制御部120が判定する。なお、回避経路とは、横行後に無人搬送車1が走行する経路である。
ステップS508の結果、回避経路上に障害物が検知された場合(S508→Yes)、回避制御部120は、一時停止を継続しつつステップS506へ処理を戻す。
【0059】
ステップS508の結果、回避経路上に障害物が検知されなかった場合(S508→No)、回避制御部120は経路データ133から現在無人搬送車1が存在している区間に設定されている回避距離および回避方向などの回避情報を取得し(S509)、操舵輪を制御して、取得した回避方向に回避距離だけ無人搬送車1を横行させて、障害物回避を行う(S510:図15(c))。
【0060】
そして、回避制御部120は、レーザ距離センサ20による測距を行いつつ、無人搬送車1を回避経路上で低速(例えば1速走行)で走行させる(S514:図15(d))。
そして、回避経路上を低速走行させつつ、回避制御部120は前方に障害物を検知したか否かを判定する(S515)。
ステップS515の結果、経路前方に障害物を検知した場合(S515→Yes)、回避制御部120は、無人搬送車1を停止させる(S511)。以降、作業者が回避経路上および経路上の障害物を除去し、タッチパネルディスプレイ60における再走行ボタンを押下するまで、無人搬送車1は停止したままとなる。
作業者が経路(図15の符号1702)上の障害物を除去し、タッチパネルディスプレイ60における再走行ボタンを押下すると(S512)、回避制御部120は無人搬送車1を経路(図15の符号1702)まで戻し(S513)、処理部100が図11のステップS404まで処理を戻し、通常走行制御を行う。
【0061】
なお、ステップS515において、経路前方に障害物を検知した場合(S515→Yes)、回避制御部120がステップS502〜S505と同様の処理を行った後、ステップS506と同様に一時停止し、前方の障害物が除去されるまで(レーザ距離センサ20によって障害物が検知されなくなるまで)待機し、障害物の除去を検知すると(障害物が検知されなくなると)、元の経路(図14の符号1702で示す経路)に無人搬送車1を戻し、処理を図11のステップS404へ戻してもよい。
【0062】
ステップS515の結果、経路前方に障害物を検知しなかった場合(S515→No)、回避制御部120は、現在位置が経路データ133の回避区間を越えているか否かを判定することによって、障害物が異なる回避区間をまたいで存在しているか否かを判定する(図19のS516)。回避区間とは、経路データ133において、回避距離や、回避方向が適用可能に定義されている区間のことである。回避区間は、図3の符号401〜403などに示す区間と一致してもよいし、個別に設定してもよい。
ステップS516の結果、障害物が異なる回避区間をまたいで存在している場合(S516→Yes)、回避制御部120は無人搬送車1を停止させる(図18のS511)。以降、作業者が回避経路上および経路上の障害物を除去し、タッチパネルディスプレイ60における再走行ボタンを押下するまで無人搬送車1は停止したままとなる(図18のS512,S513)。
【0063】
ステップS516の結果、異なる回避区間をまたいで存在していない場合(S516→No)、回避制御部120はレーザ距離センサ20が測距している範囲(測距範囲)内に障害物があるか否かを判定することによって、障害物を通過したか否かを判定する(S517)。これは、図17(a)に示すように、レーザ距離センサは180°の方向に回転して発射されているレーザが障害物を検知しなければ、無人搬送車1は障害物を越えていると判定できるためである。
ステップS517の結果、障害物を通過していない場合(S517→No)、処理部111は図18のステップS514へ処理を戻す。
ステップS517の結果、障害物を通過している場合(S517→Yes:図17(a))、回避制御部120は回避経路上を所定距離(車長+α)走行した(S518:図17(b))後、無人搬送車1を横行させて、経路上に無人搬送車1を戻す(S519:図17(c))。以降、処理部100が図11のステップS404へ処理を戻し、無人搬送車1は経路1702(図17)上を走行する通常走行制御を行う。
【0064】
<停止判定>
次に、図1および図2を参照しつつ、図20、図21に沿って停止判定方法を説明する。これは、図11のステップS413の処理で行われる処理である。
【0065】
図20に示すように、停止制御部119は、無人搬送車1が経路から外れていたとき、すなわち、無人搬送車1の進行方向が図12および図13の移動先座標1202および移動先座標1302に向かう操舵角θを有するとき、無人搬送車1の中心点1501を通って、操舵輪40の方向(進行方向)と直角を有するように目標停止線1502を定める。この目標停止線1502は、横断線1503との間で、角度θ(操舵角)をなすことになる。なお、符号1601は目的番地に対応した座標である。
【0066】
図21は、本実施形態に対する停止判定を用いた場合における無人搬送車1の停止状態を示した図である。
図21に示されるように、図20で説明した目標停止線1502が目的番地に対応した座標1601上にのるか、目的番地に対応した座標を越えたときに、停止判定部は、無人搬送車1が目的番地に到達したと判定する(図11のS413→Yes)。無人搬送車1は経路上を走行するように制御されているので、最後には、目的番地に対応した座標1601と中心点1501が、目標停止線1502を停止の判定に用いることにより。操舵角θが0度ではない場合、つまり無人搬送車1が経路からずれている状態でも、停止時における無人搬送車1の中心点1501と、目的番地に対応した座標1601のずれを小さくして停止することができる。
【0067】
また、本実施形態では、番地を座標に変換しているが、これに限らず、座標情報のみで無人搬送車1の走行制御を行ってもよい。
【0068】
(まとめ)
本実施形態によれば、目的番地を座標で管理しているため、電線や反射テープなどのハードウェア的な走行制御で行われていた番地の指定を可能としつつ、電線や反射テープなど使用せずに無人搬送車1を自走させることができる。加えて、経路上に障害物が存在するような場合も、この障害物を自律的に回避することができる。これにより、作業を滞らせるような状況が生じることを減らすことができる。
また、操舵角θを算出し、操舵輪40を操舵角θで制御することにより、無人搬送車1が経路から外れていても、経路上に戻ることが可能となる。
また、目標停止線1502を算出し、適用することで、目的番地到達時のずれを小さくすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 無人搬送車1
2 ホストコンピュータ
3 運行管理コンピュータ
4 無線親局
5 ネットワーク
9 無人搬送システム
10 コントローラ
20 レーザ距離センサ
30 プログラマブルコントローラ
40 操舵輪
50 走行輪
70 無線子局
110 プログラムメモリ
111 処理部
112 座標変換部
113 データ取得部
114 計測データ取得部
115 マッチング部
116 位置推定部
117 走行経路決定部
118 走行制御部
119 停止制御部
120 回避制御部
130 データメモリ
131 計測データ
132 地図データ
133 経路データ
1902 停止範囲(第2の距離)
1903 注意・減速距離範囲(第1の距離)
d 移動距離
da 実際の移動距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体までの距離を測定可能なセンサにより周辺環境の状況を計測して、地図データと前記計測により得られる計測データとをマッチングすることによって、現在位置を求め、前記求められた現在位置を基に、予め設定されている経路データに沿って走行する無人搬送車であって、
前記経路データ上に、回避距離を予め設定しておき、進行方向前方に障害物を検知すると、前記回避距離だけ横行した後、前方へ走行する回避制御処理を行う回避制御部
を有することを特徴とする無人搬送車。
【請求項2】
前記回避制御部は、
前記障害物を検知した後、前記障害物との距離が第1の距離以内である場合、減速走行し、
前記障害物との距離が、第1の距離より短い第2の距離以内となった場合、前記回避制御処理を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項3】
前記回避制御部は、
前記障害物との距離が、前記第2の距離以内となった場合、一時停止し、該停止後、前記障害物が検知されると、前記回避制御処理を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の無人搬送車。
【請求項4】
前記回避制御部は、
前記横行後、前方へ走行中に、前記計測データにおいて、前記障害物が検知されなくなると、
前記無人搬送車の車長+所定の距離だけ走行した後、前記元の経路へ前記無人搬送車を戻す
ことを特徴とする請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項5】
前記回避距離は、経路データの区間毎に設定されており、
前記回避制御部は、
前記横行後、前方へ走行中に、障害物が異なる区間をまたいで存在していることを検知した場合、前記無人搬送車を停止させる
ことを特徴とする請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項6】
物体までの距離を測定可能なセンサにより周辺環境の状況を計測して、地図データと前記計測により得られる計測データとをマッチングすることによって、現在位置を求め、前記求められた現在位置を基に、予め設定されている経路データに沿って走行する無人搬送車による走行制御方法であって、
前記無人搬送車は、
前記経路データ上に、回避距離を予め設定しておき、進行方向前方に障害物を検知すると、前記回避距離だけ横行した後、前方へ走行する回避制御処理を行う
ことを特徴とする走行制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−53838(P2012−53838A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197866(P2010−197866)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】