説明

熱伝導シート

【課題】 グラファイトフィルムを熱伝導シートとして利用する際の、(1)電気絶縁性の付与、(2)グラファイトの粉落ち防止、(3)グラファイトとの他の基材との接着・粘着、と言う課題を解決する。
【解決手段】 グラファイトフィルムと粘着性樹脂組成物からなり、該樹脂組成物として反応硬化型飽和炭化水素系重合体を用いて複合熱伝導シートとする。前記粘着性樹脂組成物が、架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基、エポキシ基の群から選ばれる基を1分子あたり少なくとも1個有する飽和炭化水素系重合体である事を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パソコン、携帯電話、PDAなどの機器の放熱に利用される熱伝導シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、携帯電話、PDAなどの電子機器の性能向上は著しく、それはCPU(MPU)の著しい性能向上によっている。この様なCPUの性能向上に伴い、CPUの発熱量も著しく増加し、電子機器における放熱をどの様に行うかが重要な課題になっている。
【0003】
熱対策としてはファンによる空冷やヒートパイプ、水を用いた水冷などの方法があるが、これらはいずれも新たな放熱のための装置を必要とし、機器の重量増加を招くだけでなく、騒音や使用電気量の増加などを招くと言う課題がある。
【0004】
一方で、CPUの発生する熱を出来るだけ迅速に広い面積に拡散させて放熱する方法は冷却効率を上げることを目的としたもので、積極的に冷却をするものではないが、携帯電話やパソコンなどの電子機器における冷却方法としては最も現実的なものである。
この様な目的に使用される熱伝導シートとして、近年シート状のグラファイトが大きな注目をあつめている。その理由は良質のグラファイトシートは100〜1000W/mKの非常に高い熱伝導性を有しており、他のゲル状やシート状の放熱材料の熱伝導度(0.8〜6.5W/mK)の特性に比べて著しく高性能で、熱を拡散させるには最適であるためである。
【0005】
この様な目的に使用される人工的なグラファイトフィルムの製造方法の代表が膨張黒鉛法(エキスパンドグラファイト法)と呼ばれる方法である。これは天然グラファイトを濃硫酸と濃硝酸の混合液に浸漬し、その後急激に加熱する事により製造される。この様にして製造されたグラファイトは洗浄によって酸を除いた後、高圧プレスする事によってフィルム状に加工される。この様にして製造されたグラファイトフィルムの熱伝導値は100〜300W/mK程度であり、機械的強度が弱く、グラファイト粉末の剥がれ落ち(粉落ちと表現する)の課題を抱えている一方で、安価で厚物の製造が楽であると言う事から熱伝導シートとして使用されている。
【0006】
上記のエキスパンドグラファイト法の問題を解決するために、特殊な高分子を直接熱処理によってグラファイト化する方法が開発された。(例えば、特許文献1〜4を参照)この目的に使用される高分子としては、ポリオキサジアゾール、ポリイミド、ポリフェニレンビニレン、などがある。この方法は、本質的に酸などの不純物を含まない方法であり、さらには非常に優れた面方向の熱伝導性(300〜1000W/mK)が得られる、と言う特徴があった。
【0007】
しかし、グラファイトフィルム放熱シートには以下に述べる三つの課題が残っていた。
【0008】
その第一は、グラファイトフィルムは基本的に高い電気伝導性を有し、グラファイトフィルムを放熱用途として用いるには電子回路とのショートを防ぐために何らかの絶縁処理を行う必要がある、という点である。
【0009】
第二の課題は、グラファイトは層状構造を持つために、しばしば剥がれや片落ちが発生すると言う点である。この様な課題は先に述べたようにエキスパンドグラファイト法で作製したフィルムの場合は特に顕著である。高分子の直接熱処理法によって得られるグラファイトフィルムではこの様な剥がれは比較的少ないが、いずれにしても何らかの対策が必要である。
【0010】
第三の課題は、グラファイトフィルムは基本的に接着性がないと言う点である。放熱・熱拡散の用途にはCPUなどの発熱源と熱伝導体であるグラファイトフィルムを十分に接触させる必要があり、さらに冷却フィンや筐体などの冷却・放熱部材との十分な接触を取る必要も生じる。特に発熱源や放熱体が凹凸の在るような表面を有している場合には十分な接触を取れない事が多く、この様な場合にはグラファイトフィルムの高熱伝導特性を生かすことができない。
【0011】
この様な放熱グラファイトフィルムの課題を解決するためにグラファイトフィルムと絶縁性・柔軟性を持つ高分子材料とを複合すると言う検討が行われている。熱伝導グラファイトシートの粘着層として利用する粘着材は天然ゴムが最も一般的である。しかしながら天然ゴムは耐熱性や耐候性に課題があり、熱伝導体の粘着材としては十分なものではない。
また、アクリルモノマーは天然ゴムに次いで一般的に使用されるが、残溶媒を大量に使用する製造上のプロセスの課題、それに付随した残溶媒の課題がある。
【0012】
これに対して接着剤として耐熱性・接着性にすぐれたシリコーンゴムを用いるという事が行われている。例えば、黒鉛シートの片面あるいは両面にシリコーンゴムを塗布してなる事を特徴とする電気部品用熱伝導シートが開示されている(特許文献5〜7)。他の例としてグラファイトシート上にポリウレタンまたはポリウレタン誘導体のプライマー層を設け、グラファイトとシリコーン組成物を強固に接着させる技術が開示されている(特許文献8)。しかし、シリコーン樹脂にはしばしば環状シロキサンの揮発により電気部品の接点不良を誘発すると言う問題があった。
【0013】
他の例として、ポリイミドフィルムを焼成して得られたグラファイトの表面に絶縁層や粘着層を設けると言う技術が開示されている。例えば、厚さ300μm以下の厚さのポリイミドを原料に予備処理、本処理、圧延処理を経て得られたグラファイトシートの製造方法の例(特許文献9)、グラファイトシートとその表面に設けた厚さ100μm以下の粘着層とを備えた放熱部品(特許文献10)の例、さらには、ポリイミドを焼いて得られるグラファイトシートの表面にエポキシ、ポリイミド、フッ素系の溶液状樹脂を塗布する例(特許文献11)、などが開示されている。しかし、これらの例はいずれも絶縁体の耐熱性に課題があったり、あるいは粘着性に課題があったりして、グラファイトフィルム本来の優れた特性を発揮できるものではなかった。
【特許文献1】特公平1−49642号公報
【特許文献2】特公平1−57044号公報
【特許文献3】特開平4−310569号公報
【特許文献4】特開平3−75211号公報
【特許文献5】特公平3−51302号公報
【特許文献6】特開平8−83990号公報
【特許文献7】特開平9−17923号公報
【特許文献8】特開2001−287298号公報
【特許文献9】特開2000−247740号公報
【特許文献10】特開平11−317480号公報
【特許文献11】特開2002−160970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、グラファイト放熱シートの課題を改良するために成されたものであり、グラファイトシートの表面を絶縁化し、グラファイト薄片の脱利を防止し、さらにCPUなどの熱源との十分な粘着性を実現できる様な粘着材料を提供する事を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
我々は、上記の問題を解決するために、グラファイトフィルムと各種の粘着材の複合化を試みた。その結果、本発明に記載する反応硬化型ビニル系重合体粘着材がグラファイトとの良好な接着、およびCPUや筐体との十分な粘着を実現でき、さらに従来用いられて来たアクリルまたはシリコーン系接着剤の問題点を解決し、グラファイト放熱シートとして優れた熱伝導特性を実現できる事を発見し本発明を成すに至った。
【0016】
したがって、(1)本発明の第一は、
少なくともグラファイトフィルムと粘着性樹脂組成物とを含み、該粘着性樹脂組成物が反応硬化型飽和炭化水素系重合体である事を特徴とする、熱伝導シート、
である。粘着性樹脂組成物を反応硬化型飽和炭化水素系重合体にする事により、CPUや筐体との十分な接触を取ることが出来る。反応硬化型飽和炭化水素系重合体は、密着性に優れる。樹脂組成物を反応硬化型重合体とすることで、反応性硬化基を有しているために、グラファイトフィルム及び発熱体との密着性が改善される。さらに、グラファイトフィルムは、厚み方向の熱伝導性に比べて面方向の熱伝導性が格段に優れているため、部分的なホットスポットを作らず、面全体に熱を拡散することができる。その結果、樹脂層に加わる局所的な熱履歴を減らすことが可能となり、樹脂層に加わる熱履歴を下げることができる。その結果、本発明の反応硬化型飽和炭化水素系重合体及びグラファイトフィルムからなる熱伝導体を用いることにより、より高温の発熱体用熱伝導体に用いることが可能となる。また、グラファイトフィルムは、面方向の熱伝導性が高いため、反応硬化型飽和炭化水素系重合体を塗布して、複合材料を作製する場合、塗布後の乾燥または硬化が均一に進行しやすくなり、面全体の密着性、耐熱性に優れた熱伝導体が得られる。
【0017】
(2)本発明の第二は、
前記グラファイトフィルムにおけるフィルム面方向の熱伝導度が100W/mK以上であり、フィルム面に垂直方向の熱伝導度が50W/mK以下である(1)に記載の熱伝導シート、
である。本来粘着層は熱伝導性の悪い材料であるからグラファイトシートと粘着性樹脂組成物の複合体が優れた熱拡散効果をもつためにはグラファイトシートが上記の様な熱伝導の異方性を持つ事が重要である。面方向の熱伝導度が高くなることで、より高温の発熱体に用いることが可能となり、さらに、粘着性樹脂組成物の劣化も抑えることが可能となる。また、反応硬化型飽和炭化水素系重合体に加わる熱が均一化され、耐熱性が改善され、グラファイトフィルム及び発熱体との密着性に優れたものとなる。
【0018】
(3)本発明の第三は、
前記粘着性樹脂組成物が、架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基、エポキシ基の群から選ばれる基を1分子あたり少なくとも1個有する飽和炭化水素系重合体である事を特徴とする、(1)〜(2)のいずれかに記載の熱伝導シート、
である。この様な粘着性樹脂組成物を用いる事により、シリコン系樹脂に見られた環状シロキサンの飛散による電子機器の接点汚染、などの問題を解決する事が出来る。
【0019】
(4)本発明の第四は、
(3)に記載の粘着性樹脂組成物における反応硬化型飽和炭化水素系重合体が、(3)に記載の群から選ばれる基を、分子末端に有するものである事を特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の熱伝導シート、
である。この様な粘着性樹脂組成物を用いる事により、シリコン系樹脂に見られた環状シロキサンの飛散による電子機器の接点汚染、などの問題を解決する事が出来る。
【0020】
(5)本発明の第五は、
(3)〜(4)のいずれかに記載の粘着性樹脂組成物における反応硬化型飽和炭化水素系重合体がイソブチレン系重合体である事を特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の熱伝導シート、
である。この様な粘着性樹脂組成物を用いる事により、シリコン系樹脂に見られた環状シロキサンの飛散による電子機器の接点汚染、などの問題を解決する事が出来る。
【0021】
(6)本発明の第六は、
(3)〜(5)のいずれかに記載の粘着性樹脂組成物における、反応硬化型飽和炭化水素系重合体が、水添ポリイソプレン系重合体及び水添ポリブタジエン系重合体からなる群より選択される少なくとも1種である(1)〜(5)のいずれかに記載の熱伝導シート
である。この様な粘着性樹脂組成物を用いる事により、シリコン系樹脂に見られた環状シロキサンの飛散による電子機器の接点汚染、などの問題を解決する事が出来る。
【0022】
(7)本発明の第七は、
前記グラファイトフィルムが、少なくとも膨張黒鉛を用いて作製されたものである事を特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の熱伝導シート、
である。この様なグラファイトフィルムを用いる事により優れた熱の拡散性が実現でき、すぐれた粘着性を持つ本発明の粘着性樹脂組成物と組み合わせる事によりすぐれた放熱材とすることが出来る。
【0023】
(8)本発明の第八は、
前記グラファイトフィルムが、ポリイミド樹脂、ポリパラフェニレンビニレン樹脂、ポリオキサジアゾール樹脂の熱処理によって得られたものである事を特徴とする、(1)〜(6)のいずれかに記載の熱伝導シート
、である。この様なグラファイトフィルムは面方向の熱伝導性が厚み方向の熱伝導性よりも優れ、また層間の強度にも優れるため、優れた熱の拡散性が実現でき、すぐれた粘着性を持つ本発明の反応硬化型の粘着性樹脂組成物と組み合わせる事によりすぐれた放熱材とすることが出来る。
【0024】
(9)本発明の第九は、
前記グラファイトフィルムが、100〜200℃の範囲における平均線膨張係数が2.5×10-5cm/cm/℃以下であるポリイミドフィルムを2400℃以上の温度で熱処理して得られた事を特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の熱伝導シート、
である。この様なグラファイトフィルムは面方向の熱伝導性が厚み方向の熱伝導性よりも優れ、また層間の強度にも優れるため、優れた熱の拡散性が実現でき、すぐれた粘着性を持つ本発明の反応硬化型の粘着性樹脂組成物と組み合わせる事によりすぐれた放熱材とすることが出来る。
【0025】
(10)本発明の第十は、
前記グラファイトフィルムが、複屈折0.13以上であるポリイミドフィルムを2400℃以上の温度で熱処理して得られた事を特徴とする、(1)〜(8)のいずれかに記載の熱伝導シート、
である。この様なグラファイトフィルムは面方向の熱伝導性が厚み方向の熱伝導性よりも優れ、また層間の強度にも優れるため、優れた熱の拡散性が実現でき、すぐれた粘着性を持つ本発明の反応硬化型の粘着性樹脂組成物と組み合わせる事によりすぐれた放熱材とすることが出来る。
【0026】
(11)本発明の第十一は、
粘着性樹脂組成物を支持体に塗布した後、硬化させる粘着製品製造方法であって、該支持体が(1)〜(10)のいずれかに記載のグラファイトシートであり、該粘着性樹脂組成物が架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基、エポキシ基の群から選ばれる基を1分子あたり少なくとも1個有する飽和炭化水素系重合体である事を特徴とする、熱伝導シートの製造方法、
である。この様な製造方法を用いることにより本発明が目的とする熱伝導シートを実現する事が出来る。
【発明の効果】
【0027】
グラファイトフィルムを熱伝導シートとして利用する際に、本発明の構成によって、(1)電気絶縁性の付与が可能となり、(2)グラファイトの粉落ち防止が可能となり、(3)グラファイトとの他の基材との接着・粘着が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
<粘着性樹脂組成物・粘着剤・接着剤>
以下に本発明の第一の要素である粘着性樹脂組成物について述べる。
【0029】
本発明の1つの態様は、粘着性樹脂組成物が反応硬化型飽和炭化水素系重合体である。
【0030】
本発明に用いる粘着性樹脂組成物の態様の1つは、架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基、エポキシ基の群から選ばれる基を1分子あたり少なくとも1個有する飽和炭化水素系重合体である。
【0031】
反応硬化型飽和炭化水素系重合体について述べる。
【0032】
<反応硬化型飽和炭化水素系重合体>
本発明に用いる粘着性樹脂組成物は、架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基、エポキシ基の群から選ばれる基を1分子あたり少なくとも1個有する飽和炭化水素系重合体である。
【0033】
ここで、飽和炭化水素系重合体とは、芳香環以外の炭素−炭素不飽和結合を実質的に含有しない重合体を意味する概念であり、該アルケニル基を除く主鎖を構成する繰り返し単位が炭化水素基から構成されることを意味する。
【0034】
飽和炭化水素系重合体の骨格をなす重合体は、(1)エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン等の、炭素数2〜6のオレフィン化合物を主要なモノマーとして重合させる方法、(2)ブタジエン、イソプレン等の、ジエン系化合物を単独重合させたり、このジエン系化合物と上記オレフィン系化合物とを共重合させたりした後水素添加する方法等により得ることができる。しかしながら、末端に官能基を導入しやすい、分子量制御しやすい、末端官能基の数を多くすることができる等の点から、イソブチレン系重合体や水添ポリブタジエン系重合体又は水添ポリイソプレン系重合体が好ましい。
【0035】
上記イソブチレン系重合体は、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されていてもよく、又は、イソブチレンと共重合性を有する単量体単位をイソブチレン系重合体中、好ましくは50%(重量%、以下同様)未満、更に好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下の範囲で含有するものであってもよい。
【0036】
上記イソブチレンと共重合性を有する単量体成分としては、例えば、炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエーテル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類等が挙げられる。
【0037】
具体例としては、例えば、1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−ヘキセニルオキシスチレン、p−アリロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0038】
上記水添ポリブタジエン系重合体や他の飽和炭化水素系重合体においても、上記イソブチレン系重合体の場合と同様に、主成分となる単量体単位の他に、他の単量体単位を含有させてもよい。
また、飽和炭化水素系重合体には、本発明の目的が達成される範囲で、ブタジエン、イソプレン、1,13−テトラデカジエン、1,9−デカジエン、1,7−オクタジエン、1,5−ヘキサジエンのようなポリエン化合物等の、重合後に二重結合が残りうる単量体単位を少量、好ましくは10%以下の範囲で含有させてもよい。
【0039】
上記飽和炭化水素系重合体、好ましくはイソブチレン系重合体、水添ポリイソプレン又は水添ポリブタジエン系重合体の数平均分子量(GPC法、ポリスチレン換算)は、その取り扱いやすさや硬化後のゴム弾性の点から、2000〜50000程度であるのが好ましい。
【0040】
このような製造法は、たとえば特願昭61−148895号、同61−150088号、同62−90078号、同62−179733号、同62−194838号の各明細書(それぞれ特開昭63−6041号、特開昭63−6003号、特開昭63−254149号、特開昭64−22904号、特開昭64−38407号の各公報)、特許第2644792号などに記載されている。
【0041】
<重合体の官能基>
反応硬化型飽和炭化水素系重合体の架橋性官能基としては、限定はされないが、架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、重合性の炭素−炭素二重結合、エポキシ基等が好ましい。
【0042】
これら架橋性官能基は全てその用途/目的に応じ、使い分けることができる。
【0043】
反応硬化型飽和炭化水素系重合体は、架橋性官能基を平均して少なくとも1個有するものである。組成物の硬化性の観点から、1個より多く有することが好ましく、より好ましくは平均して1.1〜4.0個、さらに好ましくは平均して1.2〜3.5個である。
【0044】
<架橋性官能基の位置>
本発明の粘着性樹脂組成物の硬化物にゴム的な性質が特に要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、架橋性官能基の少なくとも1個は分子鎖の末端にあることが好ましい。より好ましくは、全ての架橋性官能基を分子鎖末端に有するものである。このような官能基が重合体末端にあるときは、最終的に形成される硬化物の有効網目鎖量が多くなり、高い粘着特性を示す粘着剤が得られやすくなる等の点から好ましい。
【0045】
以下にこれらの官能基について説明する。
【0046】
<架橋性シリル基>
本発明の架橋性シリル基としては、一般式(5);
−[Si(R92-b(Y)bO]m−Si(R103-a(Y)a (5)
{式中、R9、R10は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、または(R’)3SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R9またはR10が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。}
で表される基があげられる。
【0047】
加水分解性基としては、たとえば、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などの一般に使用されている基があげられる。これらのうちでは、アルコキシ基、アミド基、アミノオキシ基が好ましいが、加水分解性がマイルドで取り扱い易いという点から、アルコキシ基がとくに好ましい。
【0048】
加水分解性基や水酸基は、1個のケイ素原子に1〜3個の範囲で結合することができ、(a+Σb)は1〜5個の範囲が好ましい。加水分解性基や水酸基が架橋性シリル基中に2個以上結合する場合には、それらは同じであってもよいし、異なってもよい。架橋性シリル基を形成するケイ素原子は1個以上であるが、シロキサン結合などにより連結されたケイ素原子の場合には、20個以下であることが好ましい。とくに、一般式(6)
−Si(R103-a(Y)a (6)
(式中、R10、Y、aは前記と同じ。)で表される架橋性シリル基が、入手が容易であるので好ましい。
【0049】
なお、特に限定はされないが、硬化性を考慮するとaは2個以上が好ましい。また、aが3個のもの(例えばトリメトキシ官能基)は2個のもの(例えばジメトキシ官能基)よりも硬化性が早いが、貯蔵安定性や力学物性(伸び等)に関しては2個のものの方が優れている場合がある。硬化性と物性バランスをとるために、2個のもの(例えばジメトキシ官能基)と3個のもの(例えばトリメトキシ官能基)を併用してもよい。
【0050】
<アルケニル基>
本発明におけるアルケニル基は、限定はされないが、一般式(7)で表されるものであることが好ましい。
2C=C(R11)− (7)
(式中、R11は水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基である)
一般式(7)において、R11は水素原子あるいは炭素数1〜20の炭化水素基であり、具体的には以下のような基が例示される。
−(CH2n−CH3、−CH(CH3)−(CH2n−CH3、−CH(CH2CH3)−(CH2n−CH3、−CH(CH2CH32、−C(CH32−(CH2n−CH3、−C(CH3)(CH2CH3)−(CH2n−CH3、−C65、−C65(CH3)、−C65(CH32、−(CH2n−C65、−(CH2n−C65(CH3)、−(CH2n−C65(CH32
(nは0以上の整数で、各基の合計炭素数は20以下)
これらの内では、水素原子が好ましい。
【0051】
さらに、限定はされないが、重合体(I)のアルケニル基が、その炭素−炭素二重結合と共役するカルボニル基、アルケニル基、芳香族環により活性化されていないことが好ましい。
【0052】
アルケニル基と重合体の主鎖の結合形式は、特に限定されないが、炭素−炭素結合、エステル結合、エステル結合、カーボネート結合、アミド結合、ウレタン結合等を介して結合されていることが好ましい。
【0053】
<アミノ基>
本発明におけるアミノ基としては、限定はされないが、
−NR122
(R12は水素または炭素数1〜20の1価の有機基であり、2個のR12は互いに同一でもよく異なっていてもよく、また、他端において相互に連結し、環状構造を形成していてもよい。)
が挙げられるが、
−(NR123+-
(R12は上記と同じ。X-は対アニオン。)
に示されるアンモニウム塩であっても何ら問題はない。
【0054】
上記式中、R12は水素または炭素数1〜20の1価の有機基であり、例えば、水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基等が挙げられる。2個のR12は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。また、他端において相互に連結し、環状構造を形成していてもよい。
【0055】
<重合性の炭素−炭素二重結合>
重合性の炭素−炭素二重結合を有する基は、好ましくは、一般式(8):
−OC(O)C(R13)=CH2 (8)
(式中、R13は水素、または、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。)
で表される基であり、更に好ましくは、R13が、水素、または、メチル基である基である。
【0056】
一般式(8)において、R13の具体例としては特に限定されず、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C65、−CH2OH、−CN
等が挙げられるが、好ましくは−H、−CH3である。
【0057】
<官能基導入法>
本発明の反応硬化型飽和炭化水素系重合体への官能基導入法については特許2644792号や特開平3−152164号、特開平7−304969号、米国特許第4316973号、特開昭63−105005号、特開平4−288309号公報に挙げた方法等があるが、これに限定されるものではない。
【0058】
<硬化触媒・硬化剤>
各種官能基を有する重合体は、従来公知の硬化触媒、硬化剤を用いて架橋、硬化させても構わない。特に限定はされないが、特開2004−83865に挙げたもの等が使用できる。
【0059】
<その他配合剤>
本発明の粘着性樹脂組成物には必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、充填材、接着付与剤、物性調整剤、シラノール含有化合物、チキソ性付与剤(垂れ防止剤)、光硬化性物質、空気酸化硬化性物質、酸化防止剤、耐光安定剤、エポキシ樹脂、相溶化剤、脱水剤、難燃剤、硬化性調整剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤等の各種配合剤を添加してもよい。これらの各種添加剤は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。各種配合剤としては、特に限定はされないが、特開2004−83865、特開2004−346146、WO2002068482に挙げたもの等が使用できる。
【0060】
<粘着付与剤>
粘着付与樹脂を添加する必要は必ずしもないが、必要に応じて、各種のものを使用することができる。具体例を挙げるならば、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、シクロペンタジエン−フェノール樹脂、キシレン樹脂、クマロン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂等である。
【0061】
<粘着性樹脂組成物の態様>
本発明の粘着性樹脂組成物は、実質的に無溶剤で使用できる。作業性の観点等から溶剤を使用しても構わないが、環境への影響から使用しないことが望ましい。
【0062】
本発明の粘着性樹脂組成物は、すべての配合成分を予め配合密封保存し、施工後空気中の湿気により硬化する1成分型として調製しても良く、硬化剤として別途硬化触媒、充填材、可塑剤、水等の成分を配合しておき、該配合材と重合体組成物を使用前に混合する2成分型として調整しても良い。2成分型にすると、2成分の混合時に着色剤を添加することができる。また、2成分型と同様の理由で着色剤を、1成分型粘着性樹脂組成物を使用する時に添加してもよく、特に缶容器入り1成分型粘着性樹脂組成物では多色化対応が容易となる。1成分型として調整されたものを使用し施工する際に、容器から取出した後に水を添加して混合等を行なって硬化させても良い。
【0063】
着色剤は、例えば顔料と可塑剤、場合によっては充填材を混合しペースト化したものを用いると作業し易い。また、更に2成分の混合時に遅延剤を添加することにより硬化速度を作業現場にて微調整することができる。
【0064】
<グラファイトフィルム>
次に本発明の第二の要素であるグラファイトフィルムについてのべる。
【0065】
本発明の目的に用いられるグラファイトフィルムは、フィルム面方向の熱伝導度が100W/mK以上であり、フィルム面に垂直方向の熱伝導度が50W/mK以下である事が好ましい。グラファイトの熱伝導度はグラファイト本来の構造に由来する熱伝導の異方性を有し、面方向の熱伝導度を高くするほど厚さ方向の熱伝導度は小さくなる。本発明の目的は熱の拡散であるから本発明のグラファイトにとっては面方向の熱伝導度が大きい事は極めて重要である。この様な異方性を有するグラファイトフィルムの作製方法には代表的な2つの方法がある。
【0066】
本発明で用いられるグラファイトフィルムの第一の製法はグラファイト粉末をシート状に押し固めたグラファイトフィルムである。グラファイト粉末がフィルム状に成型されるためには粉末がフレーク状、あるいはリン片状になっている必要がある。この様なグラファイト粉末の製造のための最も一般的な方法がエキスパンド(膨張黒鉛)法と呼ばれる方法である。これはグラファイトを硫酸などの酸に浸漬し、グラファイト層間化合物を作製し、しかる後にこれを熱処理、発泡させてグラファイト層間を剥離するものである。剥離後、グラファイト粉末を洗浄して酸を除去し薄膜のグラファイト粉末を得る。この様な方法で得られたグラファイト粉末をさらに圧延ロール成型してフィルム状のグラファイトを得る。この様な手法で得られた、膨張黒鉛を用いて作製されたグラファイトフィルムは柔軟性にとみ、フィルム面方向に高い熱伝導性を有するので本発明の目的に好ましく用いられる。
【0067】
本発明の目的に好ましく用いられるグラファイトフィルムの第二の製造方法は、フィルム状グラファイトがポリイミド樹脂、ポリパラフェニレンビニレン樹脂、ポリオキサジアゾール樹脂の熱処理によって作製されたものである。この方法で最も一般的に用いられるの樹脂はポリイミド樹脂であるが、この時用いられるポリイミド樹脂として、下記の
化学式(9)で表される繰り返し単位からなるポリイミド、
化学式(10)で表される繰り返し単位からなるポリイミド、
化学式(11)で表される繰り返し単位からなるポリイミド、などが挙げられる。また、100〜200℃の範囲における平均線膨張係数が2.5×10-5cm/cm/℃以下であるフィルムを2400℃以上の温度で熱処理して作製されたグラファイトフィルムであることは優れた熱伝導性を実現する上で好ましい。
【0068】
また、複屈折が0.13以上であるポリイミドフィルムを2400℃以上の温度で熱処理してグラファイトフィルムを作製する事は優れた熱伝導性を実現する上で好ましい。
【0069】
無論、100〜200℃の範囲における平均線膨張係数が2.5×10-5cm/cm/℃以下であり、かつ、複屈折が0.13以上であるポリイミドフィルムを2400℃以上の温度で熱処理しグラファイトフィルムを作製する事は優れた熱伝導性を実現する上で好ましい。
【0070】
この様なグラファイト化に好ましく用いられるポリイミドは、下記、化学式(9)、化学式(10)、化学式(11)で表される繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも2種以上の繰り返し単位を有するポリイミドの共重合体フィルム、あるいは、化学式(9)、化学式(10)、化学式(11)で表されるポリイミド共重合体からなる群からから選択される少なくとも2種以上のポリイミド共重合体の混合物フィルムである事、でその目的を達成する事が出来る。化学式(9)
【0071】
【化1】


化学式(10)
【0072】
【化2】


化学式(11)
【0073】
【化3】


であり、化学式(11)のR1は、
化学式(12)
【0074】
【化4】

からなる群から選択される2価の有機基であって、
2はそれぞれ独立して、−H、−CH3、−Cl、−Br、−F、または−CH3Oであり、化学式(11)のRは
化学式(13)
【0075】
【化5】

である
(ここでnは1〜3の整数。そしてXおよびYはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、カルボキシル基、炭素数6以下の低級アルキル基、または炭素数6以下のアルコキシ基、そしてAは、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、または−CH2−)。
【0076】
また、上記化学式(9)、化学式(10)および下記化学式(14)、化学式(15)で表される繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも3種以上の繰り返し単位を有するポリイミドの共重合体、あるいは、化学式(9)、化学式(10)、化学式(14)、化学式(15)で表されるポリイミド共重合体からなる群からから選択される少なくとも3種以上の混合物を含むポリイミド共重合体は、本目的のグラファイトを得るために特に好ましい。
化学式(14)
【0077】
【化6】


化学式(15)
【0078】
【化7】


本目的のグラファイトフィルムはこれらのポリイミドを2400℃以上の温度で熱処理して得ることが出来る。
【0079】
さらに、化学式(9)、化学式(10)で表される繰り返し単位をもつポリイミド共重合体ポリイミドフィルムであって、4、4’−オキシジアニリンおよびパラフェニレンジアミンをモル比で9/1〜4/6の割合で含むジアミンを用いて得られるポリイミドフィルムは本目的のグラファイトを得るために最も好ましく用いられる。これらのポリイミドフィルムを2400℃以上の温度で熱処理することにより、本発明の目的のグラファイトフィルムを得ることが出来る。中でも上記、ポリイミドが化学式(9)、化学式(10)、化学式(14)、化学式(15)で表される繰り返し単位をもつポリイミド共重合体であって、それぞれの繰り返し単位の数を、a、b、c、dとし、a+b+c+dをsとしたとき、(a+b)/s、(a+c)/s、(b+d)/s、(c+d)/sが0.25〜0.75を満たすポリイミドフィルムである場合は最も好ましく本発明のグラファイトフィルムを作製する目的で用いられる。
以上述べたポリイミドを用いる事により、100〜200℃の範囲における平均線膨張係数が2.5×10-5cm/cm/℃以下、好ましくは2.0×10-5cm/cm/℃以下、更に好ましくは1.5×10-5cm/cm/℃以下、であるポリイミドフィルムを得ることができる。フィルムの線膨張係数はTMA(熱機械分析装置)を用いて、まず試料を10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させたのち一旦室温まで空冷し、再度10℃/分の昇温速度で350℃まで昇温させ、2回目の昇温時から100℃〜200℃の平均線膨張係数とした。また更にフィルムの弾性率については、200kg/mm2、以上であり、更には250kg/mm2、以上、より好ましくは350kg/mm2、以上である事が好ましい。また、本発明に用いられるポリイミドフィルムは、面内配向性を示す複屈折Δnがフィルム面内のどの方向においても0.13以上、好ましくは0.15以上、最も好ましくは0.16以上であることが好ましい。ここでいう複屈折とはフィルム面内方向の屈折率と厚み方向の屈折率の差であり、本明細書においてはフィルム面内X方向の複屈折Δnxは下式で与えられる。
複屈折Δnx=(面内X方向の屈折率Nx)−(厚み方向の屈折率Nz
具体的測定方法を説明すると、フィルム試料をくさび形に切り出してナトリウム光をフィルム面内のX方向に垂直な方向から当て、偏光顕微鏡で観察すると干渉縞がみられる。この干渉縞の数をnとすると、フィルム面内X方向の複屈折Δnxは、
Δn=n×λ/d
で表される。ここで、λはナトリウム光の波長589nm、dは試料の巾(nm)である。詳しくは「新実験化学講座」第19巻(丸善(株))などに記載されている。
【0080】
なお、前記した「複屈折Δnがフィルム面内のどの方向においても」とは、例えばフィルム製膜時の流れ方向を基準として、面内の0゜方向、45゜方向、90゜方向、135゜方向のどの方向においても、の意味である。
【0081】
<ポリイミドフィルムの作製方法>
本発明で用いられるポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸の有機溶液をイミド化促進剤と混合した後、エンドレスベルトまたはステンレスドラムなどの支持体上に流延し、それを乾燥および焼成してイミド化させることにより製造され得る。
【0082】
本発明に用いられるポリアミド酸の製造方法としては公知の方法を用いることができ、通常は、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種が実質的に等モル量で有機溶媒中に溶解させられる。そして、得られた有機溶液は酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで制御された温度条件下で攪拌され、これによってポリアミド酸が製造され得る。このようなポリアミド酸溶液は、通常は5〜35wt%、好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に、適当な分子量と溶液粘度を得ることができる。
【0083】
重合方法としてはあらゆる公知の方法を用いることができるが、例えば次のような重合方法<1>−<5>が好ましい。
【0084】
<1>芳香族ジアミンを有機極性溶媒中に溶解し、これと実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物を反応させて重合する方法。
【0085】
<2>芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対して過小モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端に酸無水物基を有するプレポリマを得る。続いて、芳香族テトラカルボン酸二無水物に対して実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
【0086】
これは、ジアミンと酸二無水物を用いて前記酸二無水物を両末端に有するプレポリマを合成し、前記プレポリマに前記とは異なるジアミンを反応させてポリアミド酸を合成する方法と同様である。
【0087】
<3>芳香族テトラカルボン酸二無水物とこれに対し過剰モル量の芳香族ジアミン化合物とを有機極性溶媒中で反応させ、両末端にアミノ基を有するプレポリマを得る。続いて、このプレポリマに芳香族ジアミン化合物を追加添加後に、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物が実質的に等モルとなるように芳香族テトラカルボン酸二無水物を用いて重合する方法。
【0088】
<4>芳香族テトラカルボン酸二無水物を有機極性溶媒中に溶解および/または分散させた後に、その酸二無水物に対して実質的に等モルになるように芳香族ジアミン化合物を用いて重合させる方法。
【0089】
<5>実質的に等モルの芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンの混合物を有機極性溶媒中で反応させて重合する方法。
【0090】
本発明においてポリイミドの合成に用いられ得る酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、およびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。
【0091】
本発明においてポリイミドの合成に用いられ得るジアミンとしては、4,4’−オキシジアニリン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−オキシジアニリン)、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル(3,3’−オキシジアニリン)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−オキシジアニリン)、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼンおよびそれらの類似物を含み、それらを単独でまたは任意の割合の混合物で用いることができる。
【0092】
特に、線膨張係数を小さくして弾性率を高くかつ複屈折を大きくし得るという観点から、本発明におけるポリイミドフィルムの製造では、前記化学式(3)で表される繰り返し単位を形成するような酸二無水物を原料に用いることが好ましい。
【0093】
上述の、前記化学式(3)で表される繰り返し単位を形成するような酸二無水物を用いることによって比較的低吸水率のポリイミドフィルムが得られ、このことはグラファイト化過程において水分による発泡を防止し得るという観点からも好ましい。
【0094】
特に、上記繰り返し単位を形成する酸二無水物における化学式(11)のR1として式(12)に示されているようなベンゼン核を含む有機基を使用すれば、得られるポリイミドフィルムの分子配向性が高くなり、線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、複屈折が高く、さらには吸水率が低くなるという観点から好ましい。
【0095】
さらに線膨張係数を小さく、弾性率を高く、複屈折を大きく、吸水率を小さくするためには、本発明におけるポリイミドの合成には、前記化学式(14)や前記化学式(15)で表される繰り返し単位を形成されるような酸二無水物を原料に用いればよい。
【0096】
特に、2つ以上のエステル結合でベンゼン環が直線状に結合された構造を有する酸二無水物を原料に用いて得られるポリイミドフィルムは、屈曲鎖を含むけれども全体として非常に直線的なコンフォメーションをとりやすく、比較的剛直な性質を有する。その結果、この原料を用いることによってポリイミドフィルムの線膨張係数を小さくすることができ、例えば1.5×10-5/cm/cm/℃以下にすることができる。
【0097】
さらに線膨張係数を小さく、弾性率を高く、複屈折を大きくするためには、本発明におけるポリイミドは、p−フェニレンジアミンを原料に用いて合成されることが好ましい。
【0098】
また、本発明においてポリイミドの合成に用いられる最も適当なジアミンは4,4’−オキシジアニリンとp−フェニレンジアミンであり、これらの単独または2者の合計モルが全ジアミンに対して40モル%以上、さらには50モル%以上、さらには70モル%以上、またさらには80モル%以上であることが好ましい。さらに、p−フェニレンジアミンが10モル%以上、さらには20モル%以上、さらには30モル%以上、またさらには40モル%以上を含むことが好ましい。これらのジアミンの含有量がこれらのモル%範囲の下限値未満になれば、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数が大きく、弾性率が小さく、複屈折が小さくなる傾向になる。但し、ジアミンの全量をp−フェニレンジアミンにすると、発泡の少ない厚みの厚いポリイミドフィルムを得るのが難しくなるため、4,4’−オキシジアニリンを使用するのが良い。また炭素比率が減り、分解ガスの発生量を減らすことができ、芳香環の再配列の必要が減り、外観、熱伝導性に優れたグラファイトを得ることができる。
【0099】
本発明においてポリイミドフィルムの合成に用いられる最も適当な酸二無水物はピロメリット酸二無水物および/または式(15)の繰り返し単位が形成されるようなp−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸二無水物)であり、これらの単独または2者の合計モルが全酸二無水物に対して40モル%以上、さらには50モル%以上、さらには70モル%以上、またさらには80モル%以上であることが好ましい。これら酸二無水物の使用量が40モル%未満であれば、得られるポリイミドフィルムの線膨張係数が大きく、弾性率が小さく、複屈折が小さくなる傾向になる。
【0100】
また、ポリイミドフィルム、ポリアミド酸、ポリイミド樹脂に対して、カーボンブラック、グラファイト等の添加剤を添加しても良い。
【0101】
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒であるN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが特に好ましく用いられ得る。
【0102】
次に、ポリイミドの製造方法には、前駆体であるポリアミド酸を加熱でイミド転化する熱キュア法、またはポリアミド酸に無水酢酸等の酸無水物に代表される脱水剤やピコリン、キノリン、イソキノリン、ピリジン等の第3級アミン類をイミド化促進剤として用いてイミド転化するケミカルキュア法のいずれを用いてもよい。中でも、イソキノリンのように沸点の高いものほど好ましい。というのは、フィルム作製中の初期段階では蒸発せず、乾燥の最後の過程まで、触媒効果が発揮されやすいため好ましい。特に、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が高く、複屈折が大きくなりやすく、また比較的低温で迅速なグラファイト化が可能で、品質のよいグラファイトを得ることができるという観点からケミカルキュアの方が好ましい。特に、脱水剤とイミド化促進剤を併用することは、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が大きく、複屈折が大きくなり得るので好ましい。また、ケミカルキュア法は、イミド化反応がより速く進行するので加熱処理においてイミド化反応を短時間で完結させることができ、生産性に優れた工業的に有利な方法である。
【0103】
具体的なケミカルキュアによるフィルムの製造においては、まずポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒からなるイミド化促進剤を加えて、支持板、PET等の有機フィルム、ドラム、またはエンドレスベルト等の支持体上に流延または塗布して膜状にし、有機溶媒を蒸発させることによって自己支持性を有する膜を得る。次いで、この自己支持性膜をさらに加熱して乾燥させつつイミド化させてポリイミド膜を得る。この加熱の際の温度は、150℃から550℃の範囲内にあることが好ましい。加熱の際の昇温速度には特に制限はないが、連続的もしくは段階的に、徐々に加熱して最高温度がその所定温度範囲内になるようにするのが好ましい。加熱時間はフィルム厚みや最高温度によって異なるが、一般的には最高温度に達してから10秒から10分の範囲が好ましい。さらに、ポリイミドフィルムの製造工程中に、収縮を防止するためにフィルムを容器に接触させたり固定・保持したり延伸したりする工程を含めば、得られるフィルムの線膨張係数が小さく、弾性率が高く、複屈折が大きくなりやすい傾向にあるので好ましい。
【0104】
<ポリイミドのグラファイト化>
次に、ポリイミドフィルムのグラファイト化のプロセスについて述べる。
【0105】
本発明では出発物質であるポリイミドフィルムを窒素ガス中で予備加熱し、炭素化を行う。予備加熱は通常1000℃程度の温度で行い、例えば、10℃/分昇温速度で予備処理を行った場合には1000℃の温度領域で30分程度の保持を行う事が望ましい。予備処理の段階では出発高分子フィルムの配向性が失われない様に、フィルムの破壊が起きない程度の面方向の圧力を加える事が有効である。
【0106】
次に、上記の方法で炭素化されたフィルムを自由に伸び縮み出来るように超高温炉内にセットし、グラファイトを行う。グラファイト化は不活性ガス中で行うが不活性ガスとしてはアルゴンが最も適当であり、アルゴンに少量のヘリウムを加えるとさらに好ましい。処理温度は最低でも2400℃以上が必要で、最終的には2700℃以上の温度で処理する事、より好ましくは2800℃以上が好ましい。
【0107】
処理温度は高ければ高いほど良質のグラファイトに転化出来るが、経済性の面からは出来るだけ低温で良質のグラファイトに転化できる事が好ましい。2500℃以上の超高温を作り出すには、通常グラファイトヒーターに直接電流を流し、そのジュ−ル熱を利用して加熱を行う。グラファイト化は前処理で作製した炭素化フィルムをグラファイト構造に転化する事によって起きるが、その際には炭素−炭素結合の開裂・再結合化が起きなくてはならない。グラファイト化をスムーズに起こすためには、その開裂・再結合が最小のエネルギーで起こる様にする必要があり、出発ポリイミドフィルムの分子配向は炭素化フィルムの炭素の配列に影響を与え、それはグラファイト化の際の炭素−炭素結合の開裂・再結合化のエネルギーを少なくする効果を持つ。従って分子が配向するように分子設計を行い、高度な配向を実現することで低温でのグラファイト化と良質のグラファイトフィルムへの転化が可能になる。
【0108】
<粘着性樹脂組成物とグラファイトフィルムの複合化>
本発明の粘着性樹脂組成物は優れた粘着性・接着性を示し、グラファイトフィルムと複合化することができる。本発明の粘着性樹脂組成物をグラファイトフィルムと複合化するためにはグラファイトフィルム表面に粘着性樹脂組成物層を形成すればよい。粘着性樹脂組成物層の形成にはディップやロールによる塗布法、フィルム状の粘着性樹脂組成物をグラファイトフィルムと貼り付ける方法等、があり、いずれも好ましく用いる事が出来る。
【0109】
次に、本発明の粘着性樹脂組成物を用いた、熱伝導シートの製造プロセスを説明する。
【0110】
支持体であるグラファイトフィルム上にコーターで本発明の粘着性樹脂組成物を塗布し、これを加熱硬化させて粘着製品を得る。熱硬化させる方法は特に限定されないが、その温度は、使用する重合体及び添加される化合物等の種類により異なるが、通常50℃〜180℃の範囲内が好ましい。硬化時間は、使用する重合体、添加される化合物、反応温度等により異なるが、通常0.1分〜24時間、好ましくは1分〜10時間、さらに好ましくは1分〜1時間の範囲内である。
【0111】
本発明においては、飽和炭化水素系重合体を用いていることから、得られる粘着性樹脂組成物は優れた耐熱性、耐候性、耐水性、耐薬品性、電気絶縁性を有し、その適用範囲は広く幅広い用途に応用でき得る。さらにイソブチレン系重合体を用いれば、これらの特性に加え、低透湿性、低吸湿性、低気体透過性に優れた粘着剤を得ることができる。
【0112】
本発明の別の製造法として、別の支持体に本発明の粘着性樹脂組成物を塗布硬化して、それをグラファイトシート上に転写する方法を用いることが出来る。持体の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリウレタン、セロハン、含浸紙、コート紙、上質紙、クラフト紙、布、アセテート布、不織布、ガラス布、金属箔が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0113】
複合化に際して粘着性樹脂組成物・接着材に熱伝導性にすぐれる各種のフィラーを添加する事によって放熱効果をより高める事ができる。この様な目的に用いられるフィラーとして、シリカ(熱伝導率1.5W/mK)、アルミナ(熱伝導率20W/mK)、酸化マグネシュウム(熱伝導率40W/mK)、窒化ホウ素(熱伝導率60W/mK)、窒化アルミ(熱伝導率70W/mK)、銅(熱伝導率398W/mK)、アルミ(熱伝導率237W/mK)、等を例示することができる。
【0114】
また、本発明の粘着性樹脂組成物には、各種充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、界面活性剤、溶剤、シリコン化合物を適宜添加してよい。上記充填剤の具体例としては、シリカ微粉末、炭酸カルシウム、クレー、タルク、酸化チタン、亜鉛華、ケイソウ土、硫酸バリウム等が挙げられる。これらの充填剤の中では、特にシリカ微粉末、とりわけ粒子径が50〜70nm(BET比表面積が50〜380m2/g)程度の微粉末シリカが好ましく、その中でも表面処理を施した疎水性シリカが、強度を好ましい方向に改善する働きが大きいので特に好ましい。
【実施例】
【0115】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0116】
<グラファイトフィルム>
まず、本発明に実施例として用いた9種類のグラファイトフィルムについて述べるが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0117】
(1)グラファイトフィルム−A
グラフテック社製(eGRAF−HiTherm,商品番号1210AP)
(2)グラファイトフィルム−B
鈴木総業社製(スーパーλ−GS/λGSA−300)
(3)グラファイトフィルム−C
パナソニック製(PGSグラファイトシート、商品番号:EYGS182310)
(4)グラファイトフィルム−D
パナソニック製(PGSグラファイトシート、商品番号:EYGS121810)
(5)グラファイトフィルム−E、F、G
ピロメリット酸二無水物、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンをモル比で4/3/1の割合で合成したポリアミド酸の18wt%のDMF(ジメチルホルムアミド)溶液100gにカルボン酸基に対して無水酢酸1当量とイソキノリン1当量からなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を120℃で加熱し、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをアルミ箔から剥がし、フレームに固定した。このゲルフィルムを300℃、400℃、500℃で加熱して100〜200℃の平均線膨張係数が1.6×10-5cm/cm/℃のポリイミドフィルムを製造した。フィルム厚さは25μm、50μm、100μm、の3種類である。これらの方法で作製したフィルムの複屈折率は0.13から0.15の間であった。
【0118】
それぞれの厚さのフィルムを電気炉を用いて窒素ガス中、1000℃まで昇温し、1000℃で1時間保って予備処理した。次に得られた炭素化フィルムを自由に伸び縮み出来る様に円筒状のグラファイトヒーターの内部にセットし、20℃/分の昇温速度で2800℃まで昇温、1時間保持し、その後降温した。処理はアルゴン雰囲気で0.5kg/cm2の加圧下でおこなった。
【0119】
この実施例のポリイミドは2800℃で良質グラファイトへの転化が可能である事が分った。原料フィルムが25μm、50μm、100μmの原料フィルムを用いてそれぞれグラファイトフィルム−E、グラファイトフィルム−F、グラファイトフィルム−Gを作製した。それぞれの熱伝導率は、860、800、780W/mKであった。
【0120】
(6)グラファイトフィルム−H
ピロメリット酸二無水物、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、p−フェニレンジアミンをモル比で3/2/1の割合で合成したポリアミド酸の18wt%のDMF溶液100gにカルボン酸基に対して無水酢酸1当量とイソキノリン1当量からなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を120℃で150秒間加熱し、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをアルミ箔から剥がし、フレームに固定した。このゲルフィルムを300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱して100〜200℃の平均線膨張係数が1.0×10-5cm/cm/℃のポリイミドフィルム(厚さ50μm)を製造した。このフィルムの複屈折は、0.15〜0.16の範囲であった。このフィルムを用いて2800℃でグラファイト化を行った。
【0121】
得られたグラファイトフィルム−Hの熱伝導率は840W/mKであった
(7)グラファイトフィルム−I
ピロメリット酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、パラフェニレンジアミン、4−4’−ジアミノジフェニルエーテル、をそれぞれモル比で1/1/1/1となるようにして合成した。ポリアミド酸の18wt%のDMF溶液100gにカルボン酸基に対して無水酢酸1当量とイソキノリン1当量からなる硬化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に流延塗布した。その後実施例1とおなじ方法でポリイミドフィルム(厚さ25μm)を得た。得られたフィルムの100〜200℃の平均線膨張係数は0.9×10-5cm/cm/℃、複屈折は、0.16〜0.17の範囲であった。
【0122】
得られたフィルムを2800℃でグラファイト化した。得られたグラファイトフィルム−Iの熱伝導率は740W/mKであった。
【0123】
<粘着性樹脂組成物の合成>
飽和炭化水素軽重剛体としては、特開平8−134220号公報に記載されている方法により合成した下記の構造(化学式(8))を示す化合物(重合体P1)を用いた。
【0124】
【化8】

重合体P1 100重量部に対し、酸化防止剤としてMARK AO−50(アデカアーガス化学(株))を1重量部加えて、手混ぜ混練した。この際、酸化防止剤を溶解させるため70℃程度に加温した。ついで、この混合物に下記に構造を示す化合物B1を重合体P1 100重量部に対し4.7重量部混合した。
【0125】
【化9】

更に、ビス(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒(17.9×10-5mmol/μl、キシレン溶液)を白金が重合体P1のアルケニル基量のモル数に対して5×10-4当量、及び、保存安定性改良剤として2−フェニル−3−ブチン−2−オールを白金に対して300モル当量を秤量し、均一混合した。このようにして得られた生成物を50℃にて10時間放置することで泡抜きし、粘着性樹脂組成物を得た。

(実施例1〜9)
まず、上記9種類のグラファイトフィルム、(A)〜(I)をそれぞれ6cm×4cmの大きさに切断したものを準備した。
【0126】
前記粘着性樹脂組成物を、80℃程度に加温することで、組成物の粘度を低くし、乾燥後の厚さが約10μmとなるように上記9種類のグラファイトフィルム、(A)〜(I)に塗布し、室温で1時間乾燥させた後、150℃で20分間加熱処理させ、グラファイト複合体を作製した。
【0127】
粘着性樹脂組成物とグラファイトはいずれも充分に密着していた。この粘着性樹脂組成物は銅、アルミ、鉄などの金属、あるいはABS、PETなどの汎用樹脂といずれも充分に密着していた。また、耐熱性にも優れ125℃の連続100時間試験で、従来技術で問題視されている環状シロキサンは見られなかった。また、グラファイトの粉落ちも見られなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともグラファイトフィルムと粘着性樹脂組成物とを含み、該粘着性樹脂組成物が反応硬化型飽和炭化水素系重合体である事を特徴とする、熱伝導シート。
【請求項2】
前記グラファイトフィルムにおけるフィルム面方向の熱伝導度が100W/mK以上であり、フィルム面に垂直方向の熱伝導度が50W/mK以下である請求項1に記載の熱伝導シート。
【請求項3】
前記粘着性樹脂組成物が、架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基、エポキシ基の群から選ばれる基を1分子あたり少なくとも1個有する飽和炭化水素系重合体である事を特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載の熱伝導シート。
【請求項4】
請求項3に記載の粘着性樹脂組成物における反応硬化型飽和炭化水素系重合体が、請求項3に記載の群から選ばれる基を、分子末端に有するものである事を特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の熱伝導シート。
【請求項5】
請求項3〜4のいずれかに記載の粘着性樹脂組成物における反応硬化型飽和炭化水素系重合体がイソブチレン系重合体である事を特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導シート。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の粘着性樹脂組成物における、反応硬化型飽和炭化水素系重合体が、水添ポリイソプレン系重合体及び水添ポリブタジエン系重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の熱伝導シート。
【請求項7】
前記グラファイトフィルムが、少なくとも膨張黒鉛を用いて作製されたものである事を特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の熱伝導シート。
【請求項8】
前記グラファイトフィルムが、ポリイミド樹脂、ポリパラフェニレンビニレン樹脂、ポリオキサジアゾール樹脂の熱処理によって得られたものである事を特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の熱伝導シート。
【請求項9】
前記グラファイトフィルムが、100〜200℃の範囲における平均線膨張係数が2.5×10-5cm/cm/℃以下であるポリイミドフィルムを2400℃以上の温度で熱処理して得られた事を特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の熱伝導シート。
【請求項10】
前記グラファイトフィルムが、複屈折0.13以上であるポリイミドフィルムを2400℃以上の温度で熱処理して得られた事を特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の熱伝導シート。
【請求項11】
粘着性樹脂組成物を支持体に塗布した後、硬化させる粘着製品製造方法であって、該支持体が請求項1〜10のいずれかに記載のグラファイトシートであり、該粘着性樹脂組成物が架橋性シリル基、アルケニル基、水酸基、アミノ基、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基、エポキシ基の群から選ばれる基を1分子あたり少なくとも1個有する飽和炭化水素系重合体である事を特徴とする、熱伝導シートの製造方法。

【公開番号】特開2006−272785(P2006−272785A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−96065(P2005−96065)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】