説明

熱伝導性絶縁材料及びその製造方法

【課題】絶縁性及び熱伝導性に優れた熱伝導性絶縁材料及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】AlNを主成分とするAlN結晶150を含有する熱伝導性絶縁材料1、及びその製造である。その製造においては、非酸化性ガス雰囲気下で、少なくとも表面がAlNからなるAlN基板11上に溶融アルミニウム層を形成する。次いで、N2ガス雰囲気下で、溶融アルミニウム層を加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層125からなるAlN結晶150を形成する。また、AlN結晶とAlグラジュエント層とを有する熱伝導性絶縁材料及びその製造方法である。その製造においては、AlN層125上に溶融アルミニウム層15を形成しN2雰囲気下で加熱するという加熱工程を少なくとも2回以上繰り返して行う。このとき、加熱工程を繰り返すにつれて溶融アルミニウム層へのN2ガスの溶解量を小さくしていく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AlNを主成分とするAlN層からなるAlN結晶を有する熱伝導性絶縁材料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化アルミニウム(AlN)結晶は、熱伝導性がよく、かつ絶縁性に優れた材料として知られている。そのため、AlN結晶は、熱伝導性が要求される絶縁材料、即ち熱伝導性絶縁材料として用いられている。具体的には、このような熱伝導性絶縁材料は、例えば半導体回路の放熱板等として用いられている。
【0003】
従来、AlN結晶は、AlN粒子を適当なバインダーと共に成形し、これを焼成してなるAlN焼結体が用いられていた(特許文献1参照)。
しかしながら、AlN焼結体からなるAlN結晶は、熱伝導性が不十分であるという問題があった。その熱伝導性を向上させるために、焼結体に熱伝導性に優れた金属粒子等を配合することもおこなわれていたが、この場合には、絶縁性が損なわれてしまうおそれがあった。
【0004】
【特許文献1】特開平10−265267号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、絶縁性及び熱伝導性に優れた熱伝導性絶縁材料及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、AlNを主成分とするAlN層からなるAlN結晶を含有する熱伝導性絶縁材料を製造する方法において、
非酸化性ガス雰囲気下で、少なくとも表面がAlNからなるAlN基板上に溶融アルミニウム層を形成する溶融アルミニウム層形成工程と、
2ガス雰囲気下で、上記溶融アルミニウム層を加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層からなるAlN結晶を形成する反応工程とを有することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法にある(請求項1)。
【0007】
上記第1の発明においては、上記溶融アルミニウム層形成工程と上記反応工程とを行う。上記溶融アルミニウム層形成工程においては、上記のごとく、非酸化性ガス雰囲気下で、少なくとも表面がAlNからなるAlN基板上に溶融アルミニウム層を形成する。このように、上記溶融アルミニウム層形成工程を非酸化性ガス雰囲気下で行うことにより、アルミナ(酸化アルミニウム)の生成を防止しながら上記溶融アルミニウム層を形成することができる。
【0008】
次いで、上記反応工程においては、上記のごとく、N2ガス雰囲気下で、上記溶融アルミニウム層を加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層からなるAlN結晶を形成する。上記反応工程は、上記N2ガス雰囲気下で行っているため、上記溶融アルミニウム層にN2ガスが溶解する。このとき、上記溶融アルミニウム層中のAl元素と上記溶融アルミニウム層中に溶解したN元素とが反応してAlN結晶を生成させることができる。
【0009】
上記第1の発明の製造方法によって製造された熱伝導性絶縁材料は、AlN結晶が本来有する絶縁性を損ねることなく、優れた熱伝導性を示すことができる。
【0010】
上記第1の発明の製造方法によって製造された熱伝導性絶縁材料が上記のごとく優れた熱伝導性を示す理由は次のように考えられる。
上記反応工程において生成するAlN結晶(AlN層)は、上記AlN基板表面の六方晶のAlN結晶粒子の結晶構造を継承することができる。即ち、上記AlN基板表面のAlN結晶粒子を起点として結晶粒が一定の方向に成長してなるAlN結晶が得られる。
そのため、結晶粒子間の空隙が少なく、比較的アスペクト比の大きな結晶粒を有するAlN結晶を製造することができる。それ故、上記熱伝導性絶縁材料は、上述のごとく優れた熱伝導性を発揮できると考えられる。
【0011】
第2の発明は、請求項1〜21のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする熱伝導性絶縁材料にある(請求項22)。
【0012】
上記第2の発明の上記熱伝導性絶縁材料は、上記第1の発明の製造方法によって製造されたものである。かかる熱伝導性絶縁材料は、上述のごとく、結晶粒子間の空隙が少なく、比較的アスペクト比の大きな結晶粒からなるAlN結晶を含有する。該AlN結晶は、AlNが本来有する優れた絶縁性を示すことができると共に、優れた熱伝導性を示すことができる。それ故、上記熱伝導性絶縁材料は、優れた熱伝導性と絶縁性とを示すことができる。
【0013】
第3の発明は、AlNを主成分とするAlN層からなるAlN結晶と、該AlN結晶上に積層形成され、かつその積層方向において上記AlN結晶から離れるにつれてAl濃度が大きくなる、Al及びAlNを含有するAlグラジュエント層とを有する熱伝導性絶縁材料を製造する方法において、
非酸化性ガス雰囲気下で、少なくとも表面がAlNからなるAlN基板上に溶融アルミニウム層を形成する溶融アルミニウム層形成工程と、
2雰囲気下で、上記溶融アルミニウム層を加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層からなるAlN結晶を形成する反応工程と、
形成したAlN層上に非酸化性ガス雰囲気下で溶融アルミニウム層を形成し、該溶融アルミニウム層をN2雰囲気下で加熱するという加熱工程を少なくとも2回以上繰り返すと共に、該加熱工程を繰り返すにつれて上記溶融アルミニウム層へのN2ガスの溶解量を小さくしていくことにより、上記Alグラジュエント層を形成するグラジュエント工程とを有することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法にある(請求項23)。
【0014】
第3の発明においては、上記溶融アルミニウム層形成工程と上記反応工程と上記グラジュエント工程とを行う。
上記溶融アルミニウム層形成工程及び上記反応工程は、上記第1の発明と同様の工程である。その結果、結晶粒子間の空隙が少なく、比較的アスペクト比の大きな結晶粒を含有するAlN結晶からなる上記AlN層を形成することができる。
【0015】
上記加熱工程においては、形成した上記AlN層上に非酸化性ガス雰囲気下で溶融アルミニウム層を形成し、該溶融アルミニウム層をN2雰囲気下で加熱する。即ち、上記AlN基板上に形成した上記AlN層上に上記溶融アルミニウム層形成工程と同様にして上記溶融アルミニウム層を形成し、さらに上記反応工程と同様にして上記AlN層を形成することができる。
また、上記第3の発明においては、上記加熱工程を2回以上繰り返し行う上記グラジュエント工程を行う。該グラジュエント工程においては、上記加熱工程を繰り返すにつれて上記溶融アルミニウム層へのN2ガスの溶解量を小さくしていく。N2ガスの溶解量を少なくすると、上記溶融アルミニウム層はN2ガスと十分に反応できずに、Alが残留したAlN層が形成される。上記加熱工程を繰り返すにつれて上記N2ガスの溶解量を徐々に低下させていくと残留するAl量が徐々に増加する。そのため、上記Alグラジュエント層を形成することができる。
【0016】
このようにして、AlNを主成分とするAlN結晶からなるAlN層と、該AlN結晶上に積層形成され、かつその積層方向において上記AlN結晶から離れるにつれてAl濃度が大きくなる、Al及びAlNを含有するAlグラジュエント層とを有する熱伝導性絶縁材料を作製することができる。
【0017】
第4の発明は、請求項23〜48のいずれか一項の製造方法によって製造されたことを特徴とする熱伝導性絶縁材料にある(請求項49)。
【0018】
上記第4の発明の上記熱伝導性絶縁材料は、上記第3の発明の製造方法によって製造されたものである。かかる熱伝導性絶縁材料は、結晶粒子間の空隙が少なく、比較的アスペクト比が大きな結晶粒子からなるAlN結晶を有する。即ち、上記熱伝導性絶縁材料は、上記AlN結晶によって優れた絶縁性及び熱伝導性を示すことができる。
【0019】
また、上記熱伝導性絶縁材料は、上記Alグラジュエント層を有している。
そのため、上記熱伝導性絶縁材料を、上記Alグラジュエント層を形成した側で、例えば冷却装置及び発熱体等の外部の熱伝導体に接合させる場合に、金属材料を用いて接合させることができる。即ち、熱伝導性に優れた金属材料の特性を生かして、上記熱伝導性絶縁材料と上記熱伝導体との間で熱伝導性を損ねることなく、接合を行うことができる。また、上記Alグラジュエント層は、金属であるAlを含有しているため、接合用の金属材料と容易に接合させることができる。
【0020】
さらに、上記Alグラジュエント層においては、上記AlN結晶から離れるにつれてAl濃度が増加する。そのため、上記Alグラジュエント層の最外層と上記AlN結晶との間の熱膨張差を緩和することができる。そのため、例えば上記Alグラジュエント層と上記AlN層との間の熱膨張差によって、上記熱伝導性絶縁材料が変形したり破損したりすることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず第1の発明について説明する。
上記第1の発明の上記溶融アルミニウム層形成工程においては、非酸化性ガス雰囲気下で、少なくとも表面がAlNからなるAlN基板上に溶融アルミニウム層を形成する。
【0022】
上記非酸化性ガス雰囲気は、N2ガス雰囲気であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記溶融アルミニウム層形成工程を上記反応工程と同様のN2ガス雰囲気で行うことができるため、雰囲気条件の制御が容易になる。また、上記溶融アルミニウム層形成工程においても、N2ガスを上記溶融アルミニウム層に溶解させることができる。そのため、上記AlN層の形成を促進させることができる。
上記溶融アルミニウム層形成工程は、例えば温度650〜1500℃で行うことができる。
【0023】
上記溶融アルミニウム層形成工程においては、厚さ0.001〜1mmで上記溶融アルミニウム層を形成することが好ましい。
溶融アルミニウム層の厚みが0.001mm未満の場合には、上記反応工程において形成される上記AlN結晶中の結晶粒が小さくなるおそれがある。そのため、結晶粒内の結晶粒子同士の界面が多くなり、熱の移動時に熱は多くの界面を経由する必要が生じるため、熱の伝導が阻害されるおそれがある。その結果、熱伝導性が低下するおそれがある。一方、1mmを越える場合には、溶融アルミニウム層の内部までN2ガスと反応させることが困難になり、AlN層中にAlが残留し易くなるおそれがある。その結果、上記熱伝導性絶縁材料の絶縁性が低下するおそれがある。より好ましくは、上記溶融アルミニウム層の厚みは10μm〜50μmであることがよい。
【0024】
上記溶融アルミニウム層形成工程においては、上記AlN基板上に溶融アルミニウムの液滴を滴下しつつ該液滴を上記AlN基板上に配列させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することが好ましい(請求項3)。
この場合には、均一な厚みで上記AlN基板上に上記溶融アルミニウム層を容易に作製することができる。また、上記液滴の粒径を調整することにより、上記溶融アルミニウム層の厚みの制御を容易に行うことができる。さらに、上記溶融アルミニウム層形成工程をN2ガス雰囲気下で行う場合には、上記溶融アルミニウムの液滴が上記AlN基板上に到達するまでに上記液滴にN2ガスを溶融させることができるため、AlN層の形成を促進させることができる。
【0025】
上記液滴の粒径は0.001mm〜1mmであることが好ましい。
粒径0.001mm未満の場合には、上記溶融アルミニウム層形成工程において、上記液滴を上記AlN基板上に配列させることが困難になるおそれがある。即ち、上記溶融アルミニウムの液滴をその自重により落下させて上記AlN基板上に配列させる際に、上記液滴が反応容器内の気流等の影響を受けて、反応容器の側壁等に付着し、上記AlN基板上に配列させることが困難になるおそれがある。また、この場合にも、上述のごとく、上記AlN結晶中の結晶粒が小さくなり、熱の移動時に熱が多くの結晶粒同士の界面を経由しなければならなくなるため、熱の伝導が阻害されるおそれがある。一方、1mmを越える場合には、上記溶融アルミニウム層形成工程において、上記AlN基板上に上記液滴を配列させたときに、液滴間に空間が生じるおそれがある。そのため、高密度の上記AlN層を形成することが困難になるおそれがある。
また、上記溶融アルミニウム層形成工程において、溶融アルミニウムの液滴を滴下させると上記AlN基板に到達するまでに、液滴は周囲のN2ガスと反応してその表面の少なくとも一部にAlNが形成される。このとき、液滴の内部は、まだアルミニウムの溶融状態を維持しているが、表面のAlNの部分は、若干硬化した状態になる。特に、液滴を長い距離落下させると、その表面に形成されるAlN層の厚みはより大きくなる。好ましくは、落下中には薄いAlNの殻が形成される状態にし、上記AlN基板に到達したときに殻が破れ、内部の溶融アルミニウムが流出し、均一な厚みの溶融アルミニウム層が形成されるように、液滴の落下距離等を制御することがよい。また、このとき、液滴の粒径が1mmを越える場合には、上記溶融アルミニウム層の外周に形成されるAlNからなる殻の量が多くなるおそれがある。そのため、殻が破れて内部の溶融アルミニウムが流出したときに、破れた殻が均一な厚みの上記溶融アルミニウム層の形成を阻害するおそれがある。また、AlNからなる殻の部分からランダムに結晶成長が進行するおそれがある。その結果、上記AlN結晶中の結晶粒の大きさ、形状、結晶方向等にばらつきが生じて、AlN結晶の緻密性が低下するおそれがある。そのため、熱伝導性が低下するおそれがある。より好ましくは、10μm〜50μmであることがよい。
【0026】
上記液滴は、例えば、上記AlN基板の上方に配置した溶融アルミニウム供給タンクから上記AlN基板上に自重により滴下させることができる。このとき、上記AlN基板と上記溶融アルミニウム供給タンクとを相対的に移動させることにより、上記AlN基板上に均一な厚みで上記溶融アルミニウム層を形成させることができる。また、上記溶融アルミニウム供給タンクの底部に径及び開閉速度を制御できる液滴供給穴を設けることにより、滴下する液滴の粒径を制御することができる。
【0027】
また、上記溶融アルミニウムの液滴を滴下する際には、複数の液滴供給穴から液滴を供給することが好ましい。この場合には、上記AlN基板上に一度に複数の液滴を滴下させることができため、上記溶融アルミニウム層を形成するまでの時間を短縮させることができる。
【0028】
上記溶融アルミニウムは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記溶融アルミニウム層形成工程における上記溶融アルミニウム層の形成時に、マグネシウムが上記溶融アルミニウムの例えば表面等に形成された酸化物(アルミナ)から酸素を奪い取り、反応性に優れた上記溶融アルミニウム層を形成することができる。その結果、上記反応工程において、上記溶融アルミニウム層と窒素(N)との反応が進行し易くなり、AlN結晶の形成を促進させることができる。
アルミニウム合金としては、Mgを例えば10質量%以下で含有する合金を採用することができる。
上記アルミニウム合金としては、具体的には、5000系のアルミニウム合金等を採用することができる。
【0029】
上記溶融アルミニウム層形成工程においては、上記AlN基板上にアルミニウムシートを配置し、該アルミニウムシートを溶融させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することが好ましい(請求項5)。
この場合には、均一な厚みで上記AlN基板上に上記溶融アルミニウム層を容易に作製することができる。また、上記アルミニウムシートの厚みを調整することにより上記溶融アルミニウム層の厚みの制御を容易に行うことができる。さらにこの場合には、AlN層中のアルミナ(酸化アルミニウム)量を抑制することができる。アルミニウムシートにおいては、その表面だけが酸化されるからである。
【0030】
上記アルミニウムシートの厚みは0.005mm〜1mmであることが好ましい。
厚み0.005mm未満の場合には、アルミニウムシートの表面のAl23等の酸化物層の割合が多くなるおそれがある。即ち、一般にアルミニウムシートには、その厚みにほとんど関係なく両表面に数nm〜数十nm程度の酸化物層が形成されているため、アルミニウムシートの厚さを小さくすると、上述のごとく酸化物層の割合が多くなってしまう。その結果、上記AlN層中に酸化物が残留し、上記AlN層の熱伝導性が低下するおそれがある。AlNの熱伝導率は、200〜300W/m/Kであるのに対し、Al23の熱伝導率は10〜20W/m/KであることからもAlN層中のAl23等の酸化物を低減することが好ましいことがわかる。
一方、アルミニウムシートの厚みが1mmを越える場合には、厚み1mm以下の上記溶融アルミニウム層を形成することが困難になるおそれがある。そのため、上述のごとく、溶融アルミニウム層の内部までN2ガスを溶融させてAlN生成反応を十分に進行させることが困難になり、AlN層中にAlが残留し易くなるおそれがある。より好ましくは、10μm〜50μmであることがよい。
【0031】
上記AlN基板にアルミニウムシートを配置する際には、上記AlN基板の温度を制御することができる。
アルミニウムの融点以上の温度(例えば650℃以上)に加熱した上記AlN基板上に上記アルミニウムシートを配置した場合には、アルミニウムシートがAlN基板に接触したときに少なくとも一部が溶融アルミニウムになる。そのため、アルミニウムシートを溶解させながら上記AlN基板上に溶融アルミニウム層を形成することができる。
また、アルミニウムの融点未満の温度の上記AlN基板上に配置した場合には、上記AlN基板上に上記アルミニウムシートを配置した後、アルミニウムの融点以上の温度に加熱することによりアルミニウムシートを溶融させ上記溶融アルミニウム層を形成することができる。
【0032】
上記アルミニウムシートは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記溶融アルミニウム層形成工程における上記溶融アルミニウム層の形成時に、マグネシウムが上記アルミニウムシートの例えば表面等に形成された酸化物(アルミナ)から酸素を奪い取り、反応性に優れた上記溶融アルミニウム層を形成することができる。その結果、上記反応工程において、上記溶融アルミニウム層と窒素(N)との反応が進行し易くなり、AlN結晶の形成を促進させることができる。
アルミニウム合金としては、Mgを例えば10質量%以下で含有する合金を採用することができる。
上記アルミニウム合金としては、具体的には、5000系のアルミニウム合金等を採用することができる。
【0033】
また、上記AlN基板は、その少なくとも表面がAlNからなる基板である。具体的には、AlNを主成分とする基板や、Al、Cu、スチール等の金属基板又はSi等からなる基板の表面にAlNを主成分とするAlN被覆層が形成された基板等を用いることができる。上記AlN被覆層は、金属基板又はSi基板等の表面全体に形成されていてもよいが、少なくとも上記溶融アルミニウム層を形成する側の面に形成されていればよい。
【0034】
上記AlN基板は、Cuを主成分とするCu基板と、該Cu基板上に形成されたAlNを主成分とするAlN被覆層とからなることが好ましい(請求項20)。
この場合には、上記溶融アルミニウム層形成工程と上記反応工程とを行うことにより、上記AlN被覆層上にAlN結晶を作製することができる。このとき得られるAlN結晶は、その端部に上記Cu基板を含有している。そのため、上記AlN結晶を例えば冷却装置及び発熱体等の外部の熱伝導体と接合させる場合に、金属材料を用いて接合させることができる。熱伝導性に優れた金属材料の特性を生かして、上記AlN結晶と上記熱伝導体との間で熱伝導性を損ねることなく、接合を行うことができる。また、上記Cu基板は、金属であるCuを主成分とするため、接合用の金属材料と容易に接合させることができる。
上記Cu基板上に上記AlN被覆層形成する方法としては、例えば上記Cu基板にAlN粉末をプラズマ溶射等により溶射する方法を採用することができる。
【0035】
また、上記Cu基板と上記AlN被覆層との間には、CuとAlNとを含有し、かつ上記Cu基板から上記AlN被覆層に向けてCu濃度が小さくなると共にAlN濃度が高くなるCuグラジュエント層を有することが好ましい(請求項21)。
この場合には、上記Cu基板と上記AlN被覆層及び上記AlN結晶との間に、熱膨張差による歪みが発生して上記熱伝導性絶縁材料が破損することを防止することができる。
【0036】
上記Cu基板上に上記Cuグラジュエント層を有する上記AlN基板は、例えば上記Cu基板上にAlN粉末とCu粉末との混合粉末を溶射する際に、徐々に混合粉末中のAlN粉末量を増加させながら溶射していくことにより作製することができる。
【0037】
上記AlN基板は、その少なくとも上記溶融アルミニウム層を形成する側の表面に分散されたBN粒子を有していることが好ましい(請求項9)。
この場合には、窒化硼素(BN)粒子がAlNの生成を促す触媒機能として役割を果たすことができる。このときBN粒子は、N元素を含有する溶融アルミニウムと反応してAlNを生成しつつ、AlB12となる。
上記BN粒子が表面に分散された上記AlN基板は、例えばAlN基板上にBN粒子を溶射することにより作製すことができる。
【0038】
また、上記AlN基板の表面は必ずしも平坦でなくてもよい。表面に複数の段差、又は凹凸を有するAlN基板を用いることもできる。
【0039】
次に、上記反応工程においては、N2ガス雰囲気下で、上記溶融アルミニウム層を加熱する。これにより、AlNを主成分とするAlN層からなるAlN結晶を形成することができる。
上記N2ガス雰囲気においては、ガス圧力を0.1MPa〜10MPaにすることが好ましい。
0.1MPa未満の場合には、上記溶融アルミニウム層にN2ガスを十分に溶解させることが困難になり、AlN結晶の生成に要する時間が長くなるおそれがある。また、Alが多量に残存してしまうおそれがある。一方、10MPaを越える場合には、AlN生成反応のスピードが速くなりすぎて、AlN結晶粒の大きさ、形状等にばらつきが発生し、AlN結晶の緻密性が低下するおそれがある。
また、高温高圧状態の反応容器が要求されるという観点から、上記ガス圧力は1MPa以下であることが好ましい。
【0040】
また、上記N2ガス雰囲気は、N2ガスの他にH2ガスを含有することが好ましい。
この場合には、上記溶融アルミニウム層の酸化を防止することができる。
2ガスの含有量は、0.001〜4Vol%であることが好ましい。
【0041】
上記反応工程においては、上記AlN基板を温度650℃〜1500℃で加熱することが好ましい(請求項10)。
温度650℃未満の場合には、溶融アルミニウムから十分なAlNが生成するに前に上記溶融アルミニウム層が固化してしまうおそれがある。一方、1500℃を越える場合には、AlNの生成反応が早く進行しすぎて、AlN結晶の緻密性が低下するおそれがある。より好ましくは750℃〜1200℃がよい。
【0042】
また、上記溶融アルミニウム層形成工程及び上記反応工程は加熱炉中で行うことが好ましい(請求項7)。
この場合には、上記溶融アルミニウム層形成工程及び上記反応工程における温度制御及び雰囲気制御等を容易に行うことができる。
【0043】
上記溶融アルミニウム層形成工程においては、上記加熱炉内に金属マグネシウムを配置し、該金属マグネシウムの少なくとも一部を上記加熱炉内の上記非酸化性ガス雰囲気中に蒸発させ、該非酸化性ガス雰囲気中で上記溶融アルミニウム層の形成を行うことが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記溶融アルミニウム層形成工程における上記溶融アルミニウム層の形成時に、上記雰囲気中の上記金属マグネシウムがアルミニウムの例えば表面などに形成された酸化物(アルミナ)から酸素を奪い取り、反応性に優れた上記溶融アルミニウム層を形成することができる。その結果、上記反応工程において、上記溶融アルミニウム層と窒素(N)との反応が進行し易くなり、AlN結晶の形成を促進させることができる。
また、上記金属マグネシウムは、上記溶融アルミニウム層形成工程において蒸発して雰囲気(上記非酸化性ガス雰囲気)中に含有されていればよいが、その後の上記反応工程における雰囲気ガス(上記N2ガス雰囲気)中にも含有させることができる。
上記金属マグネシウムとしては、例えば板状又はペレット状等のマグネシウムを採用することができる。
【0044】
また、形成した上記AlN層上に非酸化性ガス雰囲気下で溶融アルミニウム層を形成し、該溶融アルミニウム層をN2雰囲気下で加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層を積層形成するという積層工程を少なくとも1回以上繰り返して行う連続積層工程を有することが好ましい(請求項11)。
この場合には、AlN層が複数積層されてなる厚みの大きなAlN結晶を作製することができる。また、積層数を調整することにより、AlN結晶の厚みを制御することができる。
このとき、1回目の積層工程においては、上記反応工程において作製した上記AlN層の結晶構造を継承したAlN結晶を成長させることができる。さらに、2回以上繰り返して行う場合においても、前回行った積層工程において形成されたAlN層中のAlN結晶の結晶構造を継承したAlN結晶を成長させることができる。そのため、上記連続積層工程においても、結晶粒子間の空隙が少なく、結晶粒がそれぞれ一定の方向に成長してなるAlN結晶を形成することができる。
【0045】
上記積層工程においては、上記溶融アルミニウム層形成工程と同様に、上記AlN層上に溶融アルミニウムの液滴を滴下しつつ該液滴を上記AlN層上に配列させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することができる(請求項12)。
また、上記積層工程においても、上記溶融アルミニウム層形成工程と同様の理由により、上記溶融アルミニウムは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることが好ましい(請求項13)。
【0046】
また、上記積層工程においては、上記溶融アルミニウム層形成工程と同様に、上記AlN層上にアルミニウムシートを配置し、該アルミニウムシートを溶融させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することもできる(請求項14)。
また、上記積層工程においても、上記溶融アルミニウム層形成工程と同様の理由により、上記アルミニウムシートは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることが好ましい(請求項15)。
【0047】
また、上記溶融アルミニウム層形成工程と同様に、上記積層工程は加熱炉中で行うことができる(請求項16)。
このとき、上記溶融アルミニウム層形成工程と同様に、上記加熱炉内に金属マグネシウムを配置し、該金属マグネシウムの少なくとも一部を上記加熱炉内の上記非酸化性ガス雰囲気中に蒸発させ、該非酸化性ガス雰囲気中で上記溶融アルミニウム層の形成を行うができる(請求項17)。
また、上記積層工程においては、上記反応工程と同様の理由により、上記AlN基板を温度650℃〜1500℃で加熱することが好ましい(請求項18)。
【0048】
上記反応工程においては、AlN結晶粒が均一に配列され、かつ結晶粒子同士間の空隙が小さくなるように結晶成長させることが好ましい。具体的には、上記反応工程における温度制御及び上記溶融アルミニウム層の厚み等を制御することによって実現できる。
また、溶融アルミニウム層に十分量のN2ガスを溶解させることが重要である。そのため、上述のごとくN2ガスの圧力0.1MPa〜10MPaに制御することが好ましい。
【0049】
また、上記Al結晶を形成した後においては、該AlN結晶から上記AlN基板を取り除く除去工程を行うことができる(請求項19)。
この場合には、上記AlN基板を有していない熱伝導性絶縁材料を得ることができる。上記除去工程は、熱伝導性絶縁材料の用途に応じて適宜行うことができる。
【0050】
次に、上記第3の発明の製造方法について説明する。
上記第3の発明においては、AlNを主成分とするAlN層からなるAlN結晶と、該AlN結晶上に形成Alグラジュエント層とを有する熱伝導性絶縁材料を製造する。Alグラジュエント層は、Al及びAlNを含有し、上記AlN層からなる上記AlN結晶から積層方向(該AlN結晶と上記グラジェント層との積層方向)に離れる向きにAl濃度が大きくなる。
上記第3の発明においては、上記第1の発明と同様に、上記溶融アルミニウム層形成工程と上記反応工程とを行う。
【0051】
したがって、上記第3の発明においても、上述のように上記第1の発明と同様の好ましい形態で上記溶融アルミニウム層形成工程及び上記反応工程を実施することができる。
例えば、上記第2の発明においても、上記第1の発明と同様に、上記非酸化性ガス雰囲気は、N2ガス雰囲気であることが好ましい(請求項24)。
また、上記溶融アルミニウム層形成工程においては、上記AlN基板上に溶融アルミニウムの液滴を滴下しつつ該液滴を上記AlN基板上に配列させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することが好ましい(請求項25)。
また、このとき、上記溶融アルミニウムは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることが好ましい(請求項26)。
【0052】
また、上記溶融アルミニウム層形成工程においては、上記AlN基板上にアルミニウムシートを配置し、該アルミニウムシートを溶融させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することが好ましい(請求項27)。
このとき、上記アルミニウムシートは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることが好ましい(請求項28)。
【0053】
さらに、上記AlN基板は、その少なくとも上記溶融アルミニウム層を形成する側の表面に分散されたBN粒子を有していることが好ましい(請求項45)。
上記AlN結晶から上記AlN基板を取り除く除去工程を有することが好ましい(請求項46)。
上記AlN基板は、Cuを主成分とするCu基板と、該Cu基板上に形成されたAlNを主成分とするAlN層とからなることが好ましい(請求項47)。
上記Cu基板と上記AlN層との間には、CuとAlNとを含有し、かつ上記Cu基板から上記AlN層に向けてCu濃度が小さくなると共にAlN濃度が高くなるCuグラジュエント層を有することが好ましい(請求項48)。
【0054】
また、上記第3の発明においては、上記グラジュエント工程を行う。上記グラジュエント工程においては、形成した上記AlN層上に非酸化性ガス雰囲気下で溶融アルミニウム層を形成し、該溶融アルミニウム層をN2雰囲気下で加熱するという加熱工程を少なくとも2回以上繰り返して行う。このとき、上記加熱工程を繰り返すにつれて上記溶融アルミニウム層へのN2ガスの溶解量を小さくしていくことにより、上記Alグラジュエント層を形成する。
【0055】
上記グラジュエント工程においては、例えばN2雰囲気におけるN2ガスの圧力を上記加熱工程を繰り返すにつれて徐々に低下させていくことにより上記Alグラジュエント層を形成することができる。また、上記加熱工程における加熱時間を徐々に短くすることにより上記Alグラジュエント層を形成することもできる。また、上記加熱工程における加熱温度を徐々に低下させることにより上記Alグラジュエント層を形成することもできる。また、これらの方法を組み合わせることもできる。
【0056】
上記Alグラジュエント層の最外層上にAlからなるAl層を形成するAl層形成工程を有することが好ましい(請求項36)。
この場合には、上記AlN基板側とは反対側の端部にAl層を有する上記熱伝導性絶縁材料を作製することができる。そのため、上記熱伝導性絶縁材料を例えば冷却装置及び発熱体等の外部の熱伝導体と接合させる場合に、上記Al層側で金属材料を用いて接合させることができる。即ち、熱伝導性に優れた金属材料の特性を生かして、上記熱伝導性絶縁材料と上記熱伝導体との間で熱伝導性を損ねることなく、接合を行うことができる。また、上記Al層は、金属であるAlを主成分とするため、接合用の金属材料と容易に接合させることができる。
【0057】
上記Al層形成工程は、例えば上記加熱工程を繰り返して行う上記グラジュエント工程において、最後に行う加熱工程をN2ガスをほとんど含まない雰囲気中で行うことにより簡単に実現できる。
【0058】
上記加熱工程においては、上記溶融アルミニウム層形成工程と同様に、上記AlN層上に溶融アルミニウムの液滴を滴下しつつ該液滴を上記AlN層上に配列させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することができる(請求項29)。
このとき、上記溶融アルミニウム層形成工程の場合と同様に、上記溶融アルミニウムは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることが好ましい(請求項30)。
【0059】
また、上記加熱工程においては、上記溶融アルミニウム層形成工程と同様に、上記AlN層上にアルミニウムシートを配置し、該アルミニウムシートを溶融させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することもできる(請求項31)。
このとき、上記溶融アルミニウム層形成工程の場合と同様に、上記アルミニウムシートは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることが好ましい(請求項32)。
【0060】
また、上記溶融アルミニウム層形成工程、上記反応工程、及び上記加熱工程は、加熱炉中で行うことことができる(請求項33)。
この場合には、上記溶融アルミニウム層形成工程、上記反応工程、及び上記加熱工程における温度制御及び雰囲気制御を容易に行うことができる。
【0061】
また、上記溶融アルミニウム層形成工程及び上記加熱工程においては、上記加熱炉内に金属マグネシウムを配置し、該金属マグネシウムの少なくとも一部を上記加熱炉内の上記非酸化性ガス雰囲気中に蒸発させ、該非酸化性ガス雰囲気中で上記溶融アルミニウム層の形成を行うことが好ましい(請求項34)。
この場合には、上記第1の発明と同様に、上記溶融アルミニウム層の形成時に、上記雰囲気中の上記金属マグネシウムがアルミニウムの例えば表面などに形成された酸化物(アルミナ)から酸素を奪い取り、反応性に優れた上記溶融アルミニウム層を形成することができる。その結果、上記反応工程において、上記溶融アルミニウム層と窒素(N)との反応が進行し易くなり、AlN結晶の形成を促進させることができる。
また、上記金属マグネシウムは、上記溶融アルミニウム層形成工程及び上記加熱工程において蒸発して雰囲気(上記非酸化性ガス雰囲気)中に含有されていればよいが、上記反応工程における雰囲気ガス(上記N2ガス雰囲気)中にも含有させることができる。
上記金属マグネシウムとしては、例えば板状又はペレット状等のマグネシウムを採用することができる。
【0062】
また、上記反応工程及び上記加熱工程においては、上記第1の発明の上記反応工程と同様の理由により、上記AlN基板を温度650℃〜1500℃で加熱することが好ましい(請求項35)。
【0063】
上記反応工程と上記グラジュエント工程との間には、上記第1の発明と同様に、形成したAlN層上に非酸化性ガス雰囲気下で溶融アルミニウム層を形成し、該溶融アルミニウム層をN2雰囲気下で加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層を積層形成するという積層工程を少なくとも1回以上繰り返して行う連続積層工程を行うことが好ましい(請求項37)。
【0064】
上記積層工程においては、上記第1の発明と同様の好ましい実施形態を採用することができる。
例えば、上記積層工程においては、上記AlN層上に溶融アルミニウムの液滴を滴下しつつ該液滴を上記AlN層上に配列させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することが好ましい(請求項38)。
このとき、上記溶融アルミニウムは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることが好ましい(請求項39)。
【0065】
また、上記積層工程においては、上記AlN層上にアルミニウムシートを配置し、該アルミニウムシートを溶融させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することが好ましい(請求項40)。
このとき、上記アルミニウムシートは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることが好ましい(請求項41)。
【0066】
また、上記積層工程は加熱炉中で行うことができる(請求項42)。
また、このとき、上記加熱炉内に金属マグネシウムを配置し、該金属マグネシウムの少なくとも一部を上記加熱炉内の上記非酸化性ガス雰囲気中に蒸発させ、該非酸化性ガス雰囲気中で上記溶融アルミニウム層の形成を行うことができる(請求項43)。
さらに上記積層工程においては、上記AlN基板を温度650℃〜1500℃で加熱することが好ましい(請求項44)。
【実施例】
【0067】
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき、図1〜図13を用いて説明する。
本例においては、溶融アルミニウム層形成工程と反応工程とを行うことにより、AlNを主成分とするAlN結晶を含有する熱伝導性絶縁材料を作製する。
図8に示すごとく、本例の熱伝導性絶縁材料1は、AlNを主成分とするAlN層15からなるAlN結晶150を含有する。特に本例においては、複数のAlN層15が積層形成されてなるAlN結晶150を含有する熱伝導性絶縁材料1を作製する。
【0068】
溶融アルミニウム層形成工程においては、図3に示すごとく、非酸化性ガス雰囲気下で、少なくとも表面がAlNからなるAlN基板11上に溶融アルミニウム層120を形成する。本例の溶融アルミニウム層形成工程においては、図2及び図3に示すごとく、AlN基板11上にアルミニウムシート12を配置し、アルミニウムシート12を溶融させることにより、溶融アルミニウム層120を形成する。また、反応工程においては、N2ガス雰囲気下で、溶融アルミニウム層120を加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層15からなるAlN結晶を形成する。
【0069】
以下、本例の熱伝導性絶縁材料1の作製方法について、図1〜図9を用いて詳細に説明する。
本例においては、図9に示すごとく、加熱炉2を用いて熱伝導性絶縁材料を製造する。加熱炉2は、底部に可動装置(図示略)を内蔵した台座21を有している。台座21からは可動装置の可動部22が突出し、可動部22には断面凹形状の可動台座23が連結されている。可動台座23は、可動装置を作動させることにより図中矢印aの方向及び矢印aと垂直な方向に平行移動させることができる。また、可動台座23内には、AlN基板11を配置するための坩堝24が配置される。つぼ状の可動台座24の底部及び外壁内にはヒータ25が内蔵されており、坩堝23内に配置されたAlN基板11を加熱することができる。
また、可動台座23の上方には、厚み0.018mmのアルミニウムシート(アルミフォイル)12(13)をロール上に巻回させてなるアルミロール19が配置されている。
【0070】
まず、図1に示すごとく、表面にBN粒子115が分散配置されたAlN結晶からなるAlN基板11を準備した。
次に、図9に示すごとく、AlN基板11を加熱炉2内の可動台座23上の坩堝24内に配置した。次いで、加熱炉2内の真空引きを行い、約10-6Paというほぼ真空状態にした後、加熱炉2内にN2ガスを導入して加熱炉2内の圧力を1MPaにした。本例において用いたN2ガスは、N2の他に約4vol%のH2を含有する。
【0071】
次いで、図9に示すごとく、ヒータ25を作動させ、坩堝23内に配置されたAlN基板11を温度800℃に加熱し、アルミニウムシート12がたれ下がるようにアルミロール19を回転させてアルミニウムシート12をAlN基板11上に配置させた。このとき、可動台座23を平行移動させることにより、AlN基板11上の一方の端部から他方の端部に向けてアルミニウムシート12を配置させた(図2参照)。アルミロール19に連なるアルミニウムシートは、AlN基板11上に配置されたアルミニウムシート12が溶融することにより、アルミロール19から分断される。
このようにして、AlN基板11上にアルミニウムシート12を配置すると共に、加熱されたAlN基板11の熱によってアルミニウムシート12を溶融させて、図3に示すごとく、AlN基板11上に厚み約0.018mmの溶融アルミニウム層120を形成した。
【0072】
次に、ヒータ25によりAlN基板11上の溶融アルミニウム層120を温度800℃で2時間加熱した(図9及び図3参照)。これにより、溶融アルミニウム層120が加熱炉2内のN2ガスと反応し、AlN基板11上にAlNを主成分とするAlN層125を形成した(図3、図4、及び図9参照)。このようにして、AlN基板11上にAlN層125からなるAlN結晶を作製した。
【0073】
また、本例においては、形成したAlN層125上に再度溶融アルミニウム層130を形成し、溶融アルミニウム層130をN2雰囲気下で加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層135を積層形成するという積層工程を繰り返して行う連続積層工程を行った(図5〜図8参照)。
即ち、図5に示すごとく、上記のようにしてAlN基板11上に形成したAlN層125上に、上述した方法と同様の方法により、アルミロール19から供給されるアルミニウムシート13を配置すると共に、アルミニウムシート13を溶融させて、図6に示すごとく、AlN基板11上に溶融アルミニウム層130を形成した。次いで、この溶融アルミニウム層130を加熱することにより、溶融アルミニウム層130とN2ガスとを反応させ、図7に示すごとく、AlNを主成分とするAlN層135を積層形成した。さらに積層形成を繰り返すことにより、図8に示すごとく、複数のAlN層15が積層形成されてなるAlN結晶150を作製した。このようにして、AlN結晶を含有する熱伝導性絶縁材料1を得た。これを試料Eとする。
【0074】
次に、本例においては、上記のようにして作製した試料Eの特徴を明らかにするため、その比較用として、AlN粒子を焼結させてなるAlN結晶(試料C)を作製した。
具体的には、まずAlN粒子と有機バインダーとを混合し、混合原料を得た。次いで、この混合原料をシート状に成形して成形体を得た。次に、成形体を温度約1500℃約4時間で焼成することにより、AlN焼結体からなるAlN結晶を得た。これを試料Cとする。
【0075】
次に、試料Eと試料Cについて、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、結晶構造の違いを比較した。なお、試料Eについては、AlN結晶150の断面をSEMで観察した(図8参照)。その結果を図10(試料E)及び図11(試料C)に示す。
【0076】
図11に示すごとく、試料Cにおいては、略球形状のAlN結晶粒が焼結してなっていることがわかる。これに対し、図10に示すごとく、試料Eにおいては、結晶粒がそれぞれ一定の方向に成長して、アスペクト比の大きなAlN結晶粒を形成していることがわかる。また、試料Eにおいては、AlN結晶粒間の空隙は小さく、AlN結晶粒が密集していることがわかる。
このように、試料Eは、焼結によって作製したAlN結晶(試料C)とは明らかに異なる結晶構造を有していた。
【0077】
試料Eにおいて、上記のような特徴的な結晶構造が形成された理由は、溶融アルミニウム層120、130とN2ガスとを反応させてAlN層15からなるAlN結晶を形成させる工程(反応工程及び積層工程)において、析出するAlN結晶粒がAlN基板11又はAlN層125の表面の六方晶のAlN結晶粒子の結晶構造を継承して成長したためであると考えられる(図3、図4、図6、及び図7参照)。その結果、上記のごとく、結晶粒子間の空隙が少なく、アスペクト比の高いAlN結晶粒子からなるAlN結晶を有する熱伝導性絶縁材料を作製できると考えられる。そのため、本例の熱伝導性絶縁材料は、絶縁性を示すと共に、優れた熱伝導性を発揮することができる。
【0078】
また、本例においては、AlNからなるAlN基板を用いたが、AlN基板は必ずしも全体がAlNからなるものを用いる必要はなく、少なくとも溶融アルミニウム層を形成する面がAlNからなるものであればよい。
【0079】
また、図12に示すごとく、Cuを主成分とするCu基板32と、AlNを主成分とするAlN被覆層36と、Cu基板32及びAlN被覆層36の間に形成されたCuグラジュエント層33、34、35とを有するAlN基板31を用いることもできる。このCuグラジュエント層33、34、35は、CuとAlNとを含有し、かつCu基板32からAlN被覆層36に向けてCu濃度が小さくなると共にAlN濃度が高くなっていく層である。
【0080】
このようなCuグラジュエント層33、34、35を有するAlN基板31は、AlN粉末及び/又はCu粉末をCu基板32上にプラズマ溶射等により溶射することにより作製することができる。
即ち、まず、Cu基板32上にAlN粉末とCu粉末との混合粉末を溶射し、Cu粉末とAlN粉末とからなるCu−Al層33を形成する。次いでCu−Al層33上にさらに混合粉末を順次溶射していくことによりCu−Al層34、35を順次積層形成する。このとき、Cu−Al層33(34)上にCu−Al層34(35)を順次積層形成するごとに、徐々に混合粉末中のCu粉末の配合割合を減らすと共に、AlN粉末の割合を増加させることにより、上記のごとくCuグラジュエント層33、34、35を形成することができる。
次に、Cuグラジュエント層35上にAlN粉末を溶射することにより、AlN被覆層36を形成することができる。
以上のようにして、図12に示すごとく、Cu基板32とCuグラジュエント層33、34、35とAlN被覆層36とを順次積層してなるAlN基板31を得ることができる。
【0081】
このAlN基板31を用いて、上述のごとく、本例と同様の溶融工程、反応工程、及び連続積層工程を行ってAlN層15からなるAlN結晶150を形成すると、図13に示すごとく、積層方向の一方の端部にCu基板32を有し、もう一方の端部側にAlN層15からなるAlN結晶150を有する熱伝導性絶縁材料3を作製することができる。
熱伝導性絶縁材料3は、Cu基板32を端部に有しているため、熱伝導性絶縁材料3を例えば冷却装置及び発熱体等の外部の熱伝導体と接合させる場合には、Cu基板32側において金属材料を用いて接合させることができる。この場合には、熱伝導性に優れた金属材料の特性を生かして、熱伝導性絶縁材料3と熱伝導体との間の熱伝導性がほとんど損われることなく、両者の接合を行うことができる。また、Cu基板32は、金属であるCuを主成分とするため、接合用の金属材料と比較的容易に接合させることができる。
【0082】
また、熱伝導性絶縁材料3は、Cu基板32とAlN層15からなるAlN結晶150との間にCuグラジュエント層33、34、35を有している。そのため、熱伝導性絶縁材料2においては、Cuグラジュエント層33、34、35によってCu基板とAlN層との間の熱膨張差が緩和される。したがって、熱膨張差による変形や破損等を防止することができる。
【0083】
(実施例2)
本例は、実施例1とは異なる方法によって溶融アルミニウム層を形成し、熱伝導性絶縁材料を作製する例である。
即ち、本例においては、図14、図15及び図21に示すごとく、AlN基板41上に溶融アルミニウムの液滴42を滴下しつつ該液滴42をAlN基板41上に配列させることにより、溶融アルミニウム層420を形成する。
【0084】
本例においては、図21に示すような加熱炉5を用いて、熱伝導性絶縁材料4を作製する。
同図に示すごとく、加熱炉5は、その底部に、実施例1の加熱炉2(図9参照)と同様の構成で、台座51、可動装置(図示略)、可動部52、可動台座53、坩堝54、ヒータ55を備えている。また、加熱炉5の上部には、可動台座53と対向する位置に、溶融アルミニウム供給タンク6が配置されている。溶融アルミニウム供給タンク6は、底部の中央に直径10〜300μmの液滴供給穴625が形成された坩堝62と、この坩堝625を保持するための加熱炉5の上部に連結された台座61とを有している。台座61には、液滴供給穴625を通過して落下する液滴42が通過できる孔64が形成されている。また、台座61内には、ヒータ615が内蔵されており、このヒータ615によって坩堝62内を加熱することができる。
坩堝62の液滴供給穴625には、供給穴625の開閉を可能にする制御棒63が挿入されている。この制御棒63の供給穴625への抜き差しを制御することにより、液滴供給穴625の開閉を制御することができる。
【0085】
以下、本例の熱伝導性絶縁材料の製造方法について詳細に説明する。
まず、実施例1と同様に、図14に示すごとく、表面にBN粒子415が分散配置されたAlN結晶からなるAlN基板41を準備した。このAlN基板41を加熱炉5内の可動台座53上の坩堝54内に配置した(図21参照)。
また、溶融アルミニウム供給タンク6の坩堝62内に溶融アルミニウムを供給するとともに、ヒータ625の加熱によって、その溶融状態を保持させた。このとき、液滴供給穴625には制御棒63が挿入されて液滴供給穴625は塞がれた状態になっている。
次いで、実施例1と同様にして、加熱炉5内の真空引きを行った後、加熱炉5内にH2ガスを約4vol%含有するN2ガスを導入した。そして、ヒータ55を作動させて、坩堝54内に配置したAlN基板41を温度800℃に加熱した。
【0086】
次に、制御棒63を液滴供給穴625から引き抜く操作と、液滴供給穴625に挿入する操作とを一定の周期で繰り返し行うことにより、液滴供給穴625から連続的に粒径10〜50μmの溶融アルミニウムの液滴42を滴下させた。そして、図14及び図21に示すごとく、液滴42がAlN基板41上に到達する毎に、一定の間隔で可動台座53を矢印bの方向及び矢印bと垂直な方向に平行移動させることにより、溶融アルミニウムの液滴54をAlN基板41上に配列させた。この操作を繰り返し行うことにより、図15に示すごとくAlN基板41上に溶融アルミニウム層420を形成した。
【0087】
その後、実施例1と同様にして、溶融アルミニウム層420をN2ガス雰囲気下で加熱して溶融アルミニウム層420とN2ガスとを反応させ、AlNを主成分とするAlN層425を形成した(図16参照)。さらに、形成したAlN層425上に溶融アルミニウムの液滴43を滴下しすることにより再度溶融アルミニウム層430を形成し、この溶融アルミニウム層430をN2雰囲気下で加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層435を積層形成するという積層工程を繰り返し行った(図17〜図20参照)。
このようにして、図20に示すごとく、AlN基板41上にAlN層45からなるAlN結晶450を有する熱伝導性絶縁材料4を作製した。
【0088】
本例において作製した熱伝導性絶縁材料4のAlN結晶450においても、実施例1と同様に、アスペクト比の大きなAlN結晶粒が形成されていた(図示略)。また、AlN結晶粒間の空隙は小さく、AlN結晶粒が密集していた。
【0089】
(実施例3)
本例は、図26に示すごとく、AlNを主成分とするAlN層15からなるAlN結晶150と、AlN及びAlを含有し、かつAlN層15上に形成されると共に該AlN層15から離れるにつれてAl濃度が増加するAlグラジュエント層171、172、173とを有する熱伝導性絶縁材料7を製造する例である。
【0090】
本例の熱伝導絶縁材料7の作製にあたっては、まず、実施例1と同様にして、加熱炉2を用いて、試料E1と同様の熱伝導性絶縁材料1を作製した(図8及び図9参照)。
次いで、熱伝導性絶縁材料1のAlN結晶150上に実施例1と同様にしてアルミニウムシート129を配置し(図22参照)、このアルミニウムシート129を溶融させて溶融アルミニウム層190を形成した(図23参照)。さらに、加熱を行うことにより溶融アルミニウム層190中のAlNを部分的にN2ガスと反応させてAlNを析出させた。このようにして、AlとAlNとを含有するAlグラジュエント層171を形成した。
【0091】
さらに、このAlNグラジュエント層171上に、再びアルミニウムシートを配置して溶融アルミニウム層を形成する工程と、N2ガス雰囲気で加熱する工程を繰り返すことによりAlNグラジュエント層171、172、173を積層形成した(図25参照)。本例のAlNグラジュエント層171、172、173は、積層形成を繰り返す毎に加熱炉内のN2ガス圧力を低下させることにより形成した。よって、Alグラジュエント層171、172、173においては、AlN層15からなるAlN結晶150から離れるにつれてより高濃度のAlを含有する。その後、N2ガスを含有しない雰囲気条件(非酸化性ガス雰囲気下)でAlグラジュエント層173上に溶融アルミニウム層を形成し、これを冷却固化させることによりAl層18を形成した(図25参照)。
【0092】
次に、図25及び図26に示すごとく、アルミニウム結晶150からAlN基板11を切断により取り除いた。
このようにして、図26に示すごとく、結晶成長によって形成されたAlN層15からなるAlN結晶150と、Alグラジュエント層171、172、173と、AlN層18とが順次積層形成された熱伝導性絶縁材料7を得た。
【0093】
本例の熱伝導性絶縁材料7は、Alグラジュエント層171、172、173を有している。そのため、熱伝導性絶縁材料7を、そのAlグラジュエント層を形成した側で、例えば冷却装置及び発熱体等の外部の熱伝導体に接合させる場合に、金属材料を用いて接合させることができる。即ち、熱伝導性に優れた金属材料の特性を生かして、熱伝導性絶縁材料7と上記熱伝導体との間で熱伝導性を損ねることなく、接合を行うことができる。また、Alグラジュエント層は金属であるAlを含有しているため接合用の金属材料と容易に接合させることができる。
さらに、Alグラジュエント層171、172、173は、Al層18とAlN結晶150との間の熱膨張差を緩和することができる。そのため、例えばAlグラジュエント層とAlN結晶150との間で熱膨張差による歪みが発生し、熱伝導性絶縁材料7が破損することを防止することができる。
【0094】
また、本例において作製した熱伝導性絶縁材料7を2つ作製し、これらをAlN結晶150側で接着させることにより、図27に示すごとく、AlN層からなるAlN結晶を有すると共に、その積層方向の両端部にAlグラジュエント層171、172、173及びAl層18をそれぞれ有する熱伝導性絶縁材料81を作製することができる。接着にもちいる接着剤としては、例えば低融点のSiO2等を用いることができる。
【0095】
また、実施例1におけるCu基板32とAlN層15からなるAlN結晶150との間にCuグラジュエント層33、34、35を有する熱伝導性絶縁材料2と、本例の熱伝導性絶縁材料7とをAlN結晶150同士で接着させることもできる。この場合には、図28に示すごとく、AlN層15からなるAlN結晶150を有すると共に、その積層方向の一方の端部にAlグラジュエント層171、172、173及びAl層18を有し、もう一方の端部にはCuグラジュエント層33、34、35及びCu基板32をそれぞれ有する熱伝導性絶縁材料82を作製することができる。
【0096】
(実施例4)
実施例1〜3においては、BN粒子が分散されたAlN基板を用いて熱伝導性絶縁材料を作製したが、本例においては、BN粒子が分散されていないAlN基板を用いて、AlN結晶を含有する熱伝導性絶縁材料を製造する。また、本例においては、加熱炉内に金属マグネシウムを配置し、その少なくとも一部を加熱炉内の雰囲気中に蒸発させてAlN基板上にAlN結晶を形成する。
【0097】
まず、本例においては、図29(a)に示すごとく、Si基板911と、該Si基板911上に形成されたAlN被膜層910とを有するAlN基板91を作製する。
具体的には、スパッタリングにより、厚さ0.6mmのSi基板911上に厚さ約1μmのAlNからなるAlN被膜層910を形成した。
スパッタリングにおいては、真空チャンバー(真空度0.0001〜0.01Pa、温度室温〜200℃)内にアルミニウム板をターゲットとして設置し、高電圧をかけてプラズマを発生させ、窒素をアルミニウム板に衝突させる。これにより、アルミニウム板からアルミニウムがはじきとばされると共にAlNが生成し、Si基板の表面に到達して上記AlN被膜層を形成する。このようにして、図29(a)に示すごとく、Si基板911上にAlN被膜層910が形成されたAlN基板91を得た。
【0098】
このようにして得られたAlN基板91のAlN皮膜層910について、CuKα線を用いたX線回折測定(XRD、θ−2θ法)を行った。その結果(XRDパターン)を図31に示す。なお、同図には、参照用として、JCPDSカードに登録されているAlN、MgO(ペリクレース)、MgAl24(スピネル)、Si(シリコン)、及びMgCO3(マグネサイト)のXRDパターンを併記してある。
【0099】
図31より知られるごとく、本例のAlN基板91のAlN被膜層910は、AlN由来のピーク(●印)を示しており、AlNが形成されていることがわかる。また、AlN被膜層910は、後述の溶融アルミニウム層を形成する面において、2θ=約42°の位置に顕著なピークを有している。このピークは、AlN結晶構造の(002)面に由来するピークであることから、AlN皮膜層910の溶融アルミニウム層形成面においては、主に(002)面が配向していることがわかる。また、2θ=約83°及び2θ=約92°の位置にも比較的強いピーク(▽印)を有しているが、これはSi基板911のSi由来のピークである。
【0100】
次に、図30に示すごとく、加熱炉20を準備した。
本例の加熱炉20は、実施例1の加熱炉と同様とほぼ同様の構成を有している。即ち加熱炉20は、図30に示すごとく、底部に可動装置(図示略)を内蔵した台座21を有している。台座21からは可動装置の可動部22が突出し、可動部22には断面凹形状の可動台座23が連結されている。可動台座23は、可動装置を作動させることにより図中矢印aの方向及び矢印aと垂直な方向に平行移動させることができる。また、可動台座23内には、AlN基板91を配置するための坩堝24が配置されている。つぼ状の可動台座23の底部及び外壁内にはヒータ25が内蔵されており、坩堝24内に配置されたAlN基板91を加熱することができる。
【0101】
また、可動台座23の上方には、厚み0.018mmのアルミニウムシート(アルミフォイル)92をロール上に巻回させてなるアルミロール99が配置されている。
本例の加熱炉20は、断面凹形状の可動台座23の突出部分に、金属マグネシウム90を配置するためのMg台座28を有しており、Mg台座28には、ペレット状の金属マグネシウム90が配置されている。Mg台座28に配置された金属マグネシウム90は、可動台座23に内蔵されたヒータ25により加熱される。
【0102】
次に、この加熱炉20内の可動台座23上の坩堝24内に、本例において作製した上記AlN基板91を配置した。次いで、加熱炉20内の真空引きを行い、加熱炉20内を約0.001〜0.1Paというほぼ真空状態にした後、加熱炉20内にN2ガスを導入して加熱炉20内の圧力を約0.1MPaにした。
【0103】
次いで、実施例1と同様に、ヒータ25を作動させ、坩堝23内に配置されたAlN基板91を温度900℃に加熱し、アルミニウムシート92がたれ下がるようにアルミロール99を回転させてアルミニウムシート92をAlN基板91上に配置させた。このとき、可動台座23を平行移動させることにより、AlN基板91上の一方の端部から他方の端部に向けてアルミニウムシート92を配置させた。図30に示すごとく、アルミロール99に連なるアルミニウムシート92は、AlN基板91上に配置されたアルミニウムシート92が溶融することにより、アルミロール99から分断される。
このようにして、AlN基板91のAlN皮膜層910上にアルミニウムシート92を配置させた(図29(b)参照)。また、加熱されたAlN基板91の熱によってAlN基板91上に配置されたアルミニウムシート92は溶融し、図29(c)に示すごとく、AlN基板91上で溶融アルミニウム層920を形成した。
【0104】
また、図30に示すごとく、ヒータ25の作動時には、Mg台座28に配置された金属マグネシウム90も加熱される。加熱された金属マグネシウム90の一部は、溶融して気化し、加熱炉20内のN2ガス雰囲気中に分散される。加熱炉20内の雰囲気ガス中に分散されたMgは、アルミニウムシート92の例えば表面等に形成されたアルミナからなる酸化物層から酸素を除去することができる。その結果、アルミニウムシート92の表面が活性化され、アルミニウムシート92と後述のN2ガスとの反応が促進される。
【0105】
次に、図29(c)及び図30に示すごとく、ヒータ25によりAlN基板91上の溶融アルミニウム層920を温度900℃で2時間加熱した。これにより、溶融アルミニウム層920が加熱炉20内のN2ガスと反応し、図29(d)に示すごとく、AlN基板91上にAlNを主成分とするAlN層925を形成した。このようにして、AlN基板91上にAlN層925からなるAlN結晶を作製した。
【0106】
また、本例においても、実施例1と同様に、形成したAlN層上に再度溶融アルミニウム層を形成し、溶融アルミニウム層をN2雰囲気下で加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層を積層形成するという積層工程を繰り返して行う連続積層工程を行った。このようにして、図29(e)に示すごとく、AlN基板91上に複数のAlN層925が積層形成されてなる厚み約10μmのAlN結晶950を作製し(図29(e)参照)、AlN結晶950を含有する熱伝導性絶縁材料9を得た。
【0107】
このようにして得られた熱伝導性絶縁材料の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。その観察結果を図32(SEM写真)及び図33(図32の模式図)に示す。
図32及び図33より知られるごとく、本例において作製した熱伝導性絶縁材料9においては、Si基板911と、その上に形成されたAlN被膜層910とを有するAlN基板91上に、AlN結晶950が形成されている。AlN結晶950は、AlN基板91上に形成された厚み1μmのAlN被膜層910上に形成されている。
【0108】
また、本例の熱伝導性絶縁材料のAlN結晶について、CuKα線を用いたX線回折測定(XRD、θ−2θ法)を行った。その結果(XRDパターン)を図34に示す。なお、同図には、参照用として、JCPDSカードに登録されているAlN、Si(シリコン)、MgSiN2、MgO(ペリクレース)、及びSiC(モアッサナイト)のXRDパターンを併記してある。同図において、各物質名(化学式)の左隣に示してある数字は、JCPDSカードの登録番号である。
【0109】
図34より知られるごとく、本例の熱伝導性絶縁材料のAlN結晶は、AlN由来のピーク(●印)を示しており、AlNが形成されていることがわかる。また、AlN結晶は、2θ=約42°の位置に比較的顕著なピークを有している。このピークは、AlN結晶構造の(002)面に由来するピークであることから、AlN結晶950は、主に(002)面が配向していることがわかる。上述のごとく、AlN基板上のAlN被膜層も(002)面が主に配向していたことから、AlN結晶はAlN被膜の結晶配向を引き継いで成長したと考えられる。
また、AlN結晶は、MgO由来のピークを有している。これは、加熱炉中に分散させたMgがアルミナから酸素を奪いとって生じたMgOがAlN結晶中に検出されたためであると考えられる。
【0110】
以上のように、本例によれば、BN粒子が分散されていないAlN基板を用いても、AlN結晶を含有する熱伝導性絶縁材料を製造することができる。また、加熱炉中に金属マグネシウムを配置することにより、AlN結晶の形成を促進させることができる。
【0111】
(実施例5)
本例は、アルミニウム合金からなるアルミニウムシートを用いて熱伝導性絶縁材料を製造する例である。
具体的には、本例においては、まず、実施例4と同様にして、Si基板上にAlN被膜層が形成されたAlN基板を作製した(図29(a)参照)。
次いで、実施例1と同様の構成の加熱炉を用いて、上記AlN基板上でアルミニウムシートを溶融させて溶融アルミニウム層を形成し、この溶融アルミニウム層をN2ガスと反応させることにより、AlN結晶を作製した。本例においてはアルミニウムシートとして、アルミニウム合金(5N02材料)を用いた。
【0112】
即ち、本例においては、実施例1と同様の加熱炉を用いて、金属マグネシウムを加熱炉中に配置する代わりにアルミニウム合金からなるアルミニウムシートを用いた点を除いては、上述の実施例4と同様にしてAlN結晶を作製した。
【0113】
この場合には、アルミニウム合金中に含まれるマグネシウムがアルミニウムの溶解温度付近で液化し、気化する。このとき、アルミニウムシート表面の酸化物から酸素を取り除くことができる。そのため、溶融アルミニウム層とN2ガスとを反応させてAlNを生成させる際に、その反応性を向上させることができる。
【0114】
このように、上記溶融アルミニウム層形成工程において、アルミニウム合金を用いて溶融アルミニウム層を形成することにより、AlN結晶の形成を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】実施例1にかかる、AlN基板の構成を示す説明図。
【図2】実施例1にかかる、AlN基板にアルミニウムシートを配置した状態を示す説明図。
【図3】実施例1にかかる、AlN基板上に溶融アルミニウム層を形成した状態を示す説明図。
【図4】実施例1にかかる、AlN基板上にAlN層を形成した状態を示す説明図。
【図5】実施例1にかかる、AlN基板上に形成したAlN層上にアルミニウムシートを配置した状態を示す説明図。
【図6】実施例1にかかる、AlN基板上に形成したAlN層上に溶融アルミニウム層を形成した状態を示す説明図。
【図7】実施例1にかかる、AlN基板上に形成したAlN層上にAlN層を積層形成した状態を示す説明図。
【図8】実施例1にかかる、Al基板上にAlN層からなるAlN結晶を形成した状態を示す説明図。
【図9】実施例1にかかる、加熱炉の構成を示す説明図。
【図10】実施例1にかかる、熱伝導性絶縁材料(試料E)のAlN結晶の断面を電子顕微鏡で観察した様子を示す写真代用図。
【図11】実施例1にかかる、焼結によって作製したAlN結晶(試料C)の断面を電子顕微鏡で観察した様子を示す写真代用図。
【図12】実施例1にかかる、Cu基板とAlN被覆層との間にCuグラジュエント層を有するAlN基板の構成を示す説明図。
【図13】実施例1にかかる、Cuグラジュエント層を有するAlN基板上にAlN層からなるAlN結晶を形成した状態を示す説明図。
【図14】実施例2にかかる、AlN基板上に溶融アルミニウムの液滴を配置させる様子を示す説明図。
【図15】実施例2にかかる、AlN基板上に溶融アルミニウム層を形成した状態を示す説明図。
【図16】実施例2にかかる、AlN基板上にAlN層を形成した状態を示す説明図。
【図17】実施例2にかかる、AlN基板上に形成したAlN層上に溶融アルミニウムの液滴を配置させる様子を示す説明図。
【図18】実施例2にかかる、AlN基板上に形成したAlN層上に溶融アルミニウム層を形成した状態を示す説明図。
【図19】実施例2にかかる、AlN基板上に形成したAlN層上にAlN層を積層形成した状態を示す説明図。
【図20】実施例2にかかる、Al基板上にAlN層からなるAlN結晶を形成した状態を示す説明図。
【図21】実施例2にかかる、加熱炉の構成を示す説明図。
【図22】実施例3にかかる、AlN基板上に形成したAlN層からなるAlN結晶上にアルミニウムシートを配置した状態を示す説明図。
【図23】実施例3にかかる、AlN基板上に形成したAlN層からなるAlN結晶上に溶融アルミニウムを形成した状態を示す説明図。
【図24】実施例3にかかる、AlN基板上に形成したAlN層からなるAlN結晶上にAlグラジュエント層(1層目)を形成した状態を示す説明図。
【図25】実施例3にかかる、AlN基板上に形成したAlN層からなるAlN結晶上にAlグラジュエント層とAl層とを形成した状態を示す説明図。
【図26】実施例3にかかる、AlN結晶とAlグラジュエント層とからなる熱伝導性絶縁材料の構成を示す説明図。
【図27】実施例3にかかる、AlN層が積層形成されてなるAlN結晶の積層方向の両端部に、Alグラジュエント層及びAl層をそれぞれ有する熱伝導性絶縁材料の構成を示す説明図。
【図28】実施例3にかかる、AlN層が積層形成されてなるAlN結晶の積層方向の一方の端部に、Alグラジュエント層及びAl層を有し、もう一方の端部にCuグラジュエント層及びCu基板を有する熱伝導性絶縁材料の構成を示す説明図。
【図29】実施例4にかかる、AlN基板の断面構成を示す説明図(a)、AlN基板上にアルミニウムシートを配置した状態の断面構造を示す説明図(b)、AlN基板上に溶融アルミニウム層を形成した状態の断面構造を示す説明図(c)、AlN基板上にAlN層を形成した状態の断面構造を示す説明図(d)、AlN基板上に複数のAlN層を積層させて形成した状態の断面構造を示す説明図(e)。
【図30】実施例4にかかる、加熱炉の構成を示す説明図。
【図31】実施例4にかかる、AlN基板上にスパッタリングにより形成したAlN被膜層のXRD回折パターンを示す説明図。
【図32】実施例4にかかる、AlN基板とその上に形成されたAlN結晶とからなる熱伝導性絶縁材料の断面のSEM写真を示す説明図。
【図33】実施例4にかかる、AlN基板とその上に形成されたAlN結晶とからなる熱伝導性絶縁材料の断面構造を示す説明図(図32の概略図)。
【図34】実施例4にかかる、AlN基板上に形成したAlN結晶のXRD回折パターンを示す説明図。
【符号の説明】
【0116】
1 熱伝導性絶縁材料
11 AlN基板
12 アルミニウムシート
120 溶融アルミニウム層
125 AlN層
13 アルミニウムシート
130 溶融アルミニウム層
135 AlN層
15 AlN層
150 AlN結晶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlNを主成分とするAlN層からなるAlN結晶を含有する熱伝導性絶縁材料を製造する方法において、
非酸化性ガス雰囲気下で、少なくとも表面がAlNからなるAlN基板上に溶融アルミニウム層を形成する溶融アルミニウム層形成工程と、
2ガス雰囲気下で、上記溶融アルミニウム層を加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層からなるAlN結晶を形成する反応工程とを有することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、上記非酸化性ガス雰囲気は、N2ガス雰囲気であることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記溶融アルミニウム層形成工程においては、上記AlN基板上に溶融アルミニウムの液滴を滴下しつつ該液滴を上記AlN基板上に配列させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項4】
請求項3において、上記溶融アルミニウムは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2において、上記溶融アルミニウム層形成工程においては、上記AlN基板上にアルミニウムシートを配置し、該アルミニウムシートを溶融させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、上記アルミニウムシートは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記溶融アルミニウム層形成工程及び上記反応工程は加熱炉中で行うことを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項8】
請求項7において、上記溶融アルミニウム層形成工程においては、上記加熱炉内に金属マグネシウムを配置し、該金属マグネシウムの少なくとも一部を上記加熱炉内の上記非酸化性ガス雰囲気中に蒸発させ、該非酸化性ガス雰囲気中で上記溶融アルミニウム層の形成を行うことを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、上記AlN基板は、その少なくとも上記溶融アルミニウム層を形成する側の表面に分散されたBN粒子を有していることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項において、上記反応工程においては、上記AlN基板を温度650℃〜1500℃で加熱することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項において、形成した上記AlN層上に非酸化性ガス雰囲気下で溶融アルミニウム層を形成し、該溶融アルミニウム層をN2雰囲気下で加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層を積層形成するという積層工程を少なくとも1回以上繰り返して行う連続積層工程を有することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項12】
請求項11において、上記積層工程においては、上記AlN層上に溶融アルミニウムの液滴を滴下しつつ該液滴を上記AlN層上に配列させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項13】
請求項12において、上記溶融アルミニウムは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項14】
請求項11において、上記積層工程においては、上記AlN層上にアルミニウムシートを配置し、該アルミニウムシートを溶融させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項15】
請求項14において、上記アルミニウムシートは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項16】
請求項11〜15のいずれか一項において、上記積層工程は加熱炉中で行うことを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項17】
請求項16において、上記積層工程においては、上記加熱炉内に金属マグネシウムを配置し、該金属マグネシウムの少なくとも一部を上記加熱炉内の上記非酸化性ガス雰囲気中に蒸発させ、該非酸化性ガス雰囲気中で上記溶融アルミニウム層の形成を行うことを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項18】
請求項11〜17のいずれか一項において、上記積層工程においては、上記AlN基板を温度650℃〜1500℃で加熱することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項において、上記AlN結晶から上記AlN基板を取り除く除去工程を有することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか一項において、上記AlN基板は、Cuを主成分とするCu基板と、該Cu基板上に形成されたAlNを主成分とするAlN被覆層とからなることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項21】
請求項20において、上記Cu基板と上記AlN被覆層との間には、CuとAlNとを含有し、かつ上記Cu基板から上記AlN被覆層に向けてCu濃度が小さくなると共にAlN濃度が高くなるCuグラジュエント層を有することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする熱伝導性絶縁材料。
【請求項23】
AlNを主成分とするAlN層からなるAlN結晶と、該AlN結晶上に積層形成され、かつその積層方向において上記AlN結晶から離れるにつれてAl濃度が大きくなる、Al及びAlNを含有するAlグラジュエント層とを有する熱伝導性絶縁材料を製造する方法において、
非酸化性ガス雰囲気下で、少なくとも表面がAlNからなるAlN基板上に溶融アルミニウム層を形成する溶融アルミニウム層形成工程と、
2雰囲気下で、上記溶融アルミニウム層を加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層からなるAlN結晶を形成する反応工程と、
形成したAlN層上に非酸化性ガス雰囲気下で溶融アルミニウム層を形成し、該溶融アルミニウム層をN2雰囲気下で加熱するという加熱工程を少なくとも2回以上繰り返すと共に、該加熱工程を繰り返すにつれて上記溶融アルミニウム層へのN2ガスの溶解量を小さくしていくことにより、上記Alグラジュエント層を形成するグラジュエント工程とを有することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項24】
請求項23において、上記非酸化性ガス雰囲気は、N2ガス雰囲気であることを特徴とするグラジュエント熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項25】
請求項23又は24において、上記溶融アルミニウム層形成工程においては、上記AlN基板上に溶融アルミニウムの液滴を滴下しつつ該液滴を上記AlN基板上に配列させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項26】
請求項25において、上記溶融アルミニウムは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項27】
請求項23又は24において、上記溶融アルミニウム層形成工程においては、上記AlN基板上にアルミニウムシートを配置し、該アルミニウムシートを溶融させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項28】
請求項27において、上記アルミニウムシートは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項29】
請求項23〜28のいずれか一項において、上記加熱工程においては、上記AlN層上に溶融アルミニウムの液滴を滴下しつつ該液滴を上記AlN層上に配列させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項30】
請求項29において、上記溶融アルミニウムは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項31】
請求項23〜28のいずれか一項において、上記加熱工程においては、上記AlN層上にアルミニウムシートを配置し、該アルミニウムシートを溶融させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項32】
請求項31において、上記アルミニウムシートは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項33】
請求項23〜32のいずれか一項において、上記溶融アルミニウム層形成工程、上記反応工程、及び上記加熱工程は、加熱炉中で行うことを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項34】
請求項33において、上記溶融アルミニウム層形成工程及び上記加熱工程においては、上記加熱炉内に金属マグネシウムを配置し、該金属マグネシウムの少なくとも一部を上記加熱炉内の上記非酸化性ガス雰囲気中に蒸発させ、該非酸化性ガス雰囲気中で上記溶融アルミニウム層の形成を行うことを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項35】
請求項23〜34のいずれか一項において、上記反応工程及び上記加熱工程においては、上記AlN基板を温度650℃〜1500℃で加熱することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項36】
請求項23〜35のいずれか一項において、上記Alグラジュエント層の最外層上にAlからなるAl層を形成するAl層形成工程を有することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項37】
請求項23〜36のいずれか一項において、上記反応工程と上記グラジュエント工程との間に、形成したAlN層上に非酸化性ガス雰囲気下で溶融アルミニウム層を形成し、該溶融アルミニウム層をN2雰囲気下で加熱することにより、AlNを主成分とするAlN層を積層形成するという積層工程を少なくとも1回以上繰り返して行う連続積層工程を行うことを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項38】
請求項37において、上記積層工程においては、上記AlN層上に溶融アルミニウムの液滴を滴下しつつ該液滴を上記AlN層上に配列させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項39】
請求項38において、上記溶融アルミニウムは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項40】
請求項37において、上記積層工程においては、上記AlN層上にアルミニウムシートを配置し、該アルミニウムシートを溶融させることにより、上記溶融アルミニウム層を形成することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項41】
請求項40において、上記アルミニウムシートは、マグネシウムを含むアルミニウム合金からなることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項42】
請求項37〜41のいずれか一項において、上記積層工程は加熱炉中で行うことを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項43】
請求項42において、上記積層工程においては、上記加熱炉内に金属マグネシウムを配置し、該金属マグネシウムの少なくとも一部を上記加熱炉内の上記非酸化性ガス雰囲気中に蒸発させ、該非酸化性ガス雰囲気中で上記溶融アルミニウム層の形成を行うことを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項44】
請求項37〜43のいずれか一項において、上記積層工程においては、上記AlN基板を温度650℃〜1500℃で加熱することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項45】
請求項23〜44のいずれか一項において、上記AlN基板は、その少なくとも上記溶融アルミニウム層を形成する側の表面に分散されたBN粒子を有していることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項46】
請求項23〜45のいずれか一項において、上記AlN結晶から上記AlN基板を取り除く除去工程を有することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項47】
請求項23〜46のいずれか一項において、上記AlN基板は、Cuを主成分とするCu基板と、該Cu基板上に形成されたAlNを主成分とするAlN層とからなることを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項48】
請求項47において、上記Cu基板と上記AlN層との間には、CuとAlNとを含有し、かつ上記Cu基板から上記AlN層に向けてCu濃度が小さくなると共にAlN濃度が高くなるCuグラジュエント層を有することを特徴とする熱伝導性絶縁材料の製造方法。
【請求項49】
請求項23〜48のいずれか一項の製造方法によって製造されたことを特徴とする熱伝導性絶縁材料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図32】
image rotate


【公開番号】特開2008−133167(P2008−133167A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243985(P2007−243985)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】