説明

熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線および積層電極並びにそれらの形成方法

【課題】ガラス基板表面に対する密着性に優れ、さらにヒロックおよびボイドなどの熱欠陥が発生することのない銅合金積層薄膜からなる液晶表示装置用積層配線および積層電極並びにそれらの形成方法を提供する。
【解決手段】希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜並びに希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する酸素含有銅合金薄膜を積層してなる複合銅合金層からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガラス基板表面に対する密着性に優れ、さらにヒロックおよびボイドなどの熱欠陥が発生することのない銅合金積層薄膜からなる液晶表示装置用積層配線および積層電極並びにそれらの形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、フラットパネルディスプレイなどの液晶表示装置にはガラス基板表面に格子状に金属薄膜からなる配線が密着して形成されており、この金属薄膜からなる格子状配線の交差点にTFTトランジスターが設けられており、このTFTトランジスターのゲート電極も金属薄膜で形成されている。前記金属薄膜からなる配線および電極は一般にターゲットを用いてガラス基板表面にスパッタリングすることにより形成され、このガラス基板表面に形成された金属薄膜からなる配線および電極は、液晶表示装置のゲート絶縁膜、アモルファスシリコン膜等をPECVDで成膜する工程において300〜500℃程度まで加熱される。前記配線および電極となる金属薄膜として、純銅薄膜を使用することが知られているが、近年、希土類元素から選ばれる1種または2種以上の元素を総量で0.1〜10原子%を含有する銅合金薄膜が使用されるようになり、この銅合金薄膜は純銅薄膜に比べて電気抵抗は少し上昇するが、前記加熱される工程においてヒロックやボイドなどの熱欠陥の発生がなくなるとされている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−77295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、液晶表示装置は益々大型化しており、30インチ以上の大型液晶パネルが量産されるようになって来た。そのためにガラス基板表面に形成されている配線および電極が長くなり、さらに液晶表示装置は益々高精細化しているためにガラス基板表面に形成される配線および電極を益々細くすることが求められている。そのために配線および電極は、熱処理工程で高温に曝されてもヒロックおよびボイドなどの熱欠陥が発生しないことおよび電気抵抗が低いことが必要されると共に、配線および電極が剥離することのない密着性に優れた金属薄膜で構成されることが必要である。
さらに、大型液晶パネルの低コスト化のためにガラス基板表面に形成される配線および電極を高スピードで成膜すべくスパッタリング装置の出力を上げて可及的に短時間で成膜するよう求められている。
これら要求に対処すべく、従来の希土類元素から選ばれる1種または2種以上の元素を総量で0.1〜10原子%を含有し残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金ターゲットを用いて400W以上の高出力でスパッタリングすると、得られた銅合金配線薄膜は、ヒロックやボイド等の熱欠陥が発生し、さらに比抵抗値が高く、さらにガラス基板表面に対する密着性が悪という欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明者等は、比抵抗値が低く、ガラス基板表面に対する密着性に優れ、さらに高出力でスパッタリングして得られた銅合金薄膜であっても加熱工程でヒロックおよびボイドなどの熱欠陥の発生がない銅合金薄膜を開発し、これを液晶表示装置における配線および電極に適用すべく研究を行った。その結果、
(イ)純銅(特に純度:99.99%以上の無酸素銅)に、希土類元素を0.01〜2原子%を添加し、さらにAgを0.05〜2原子%添加して得られた成分組成を有する銅合金薄膜は、従来の希土類元素を含有する銅合金薄膜に比べて比抵抗値が一層低く、さらに、高温に曝されてもヒロックおよびボイドの熱欠陥が発生することがなく、さらにガラス基板に対する密着性が優れていることから、かかる成分組成を有する銅合金薄膜は液晶表示装置用配線および電極として使用した場合に優れた効果を奏する、
(ロ)純銅(特に純度:99.99%以上の無酸素銅)に、希土類元素を0.01〜2原子%を添加し、さらにAgを0.1〜4原子%添加して得られた成分組成を有するターゲットを用い、酸素を含む雰囲気中でスパッタリングすることにより得られた希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する酸素含有銅合金薄膜は、ガラス基板に対する密着性が一層向上し、したがってこの酸素含有銅合金薄膜を前記(イ)記載の銅合金薄膜に積層させた複合銅合金膜を液晶表示装置用の配線および電極として使用した場合、複合銅合金膜の酸素含有銅合金薄膜がガラス基板に対する密着性が一層優れていることから複合銅合金膜はガラス基板に対する密着性に優れたものとなり、フォトリソやエッチング等の加工中に剥離することがなく、かかる複合銅合金薄膜を液晶表示装置の配線および電極として使用した場合に製造歩留まりが一層向上する、
(ハ)前記純銅にAgと共に添加する希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyのうちの1種または2種以上であることが特に好ましい、という研究結果が得られたのである。
【0005】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、
(1)希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜並びに希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する酸素含有銅合金薄膜を積層してなる複合銅合金膜からなる熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線、
(2)前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyである(1)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線、
(3)希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜並びに希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する酸素含有銅合金薄膜を積層してなる複合銅合金膜からなる熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極、
(4)前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyである(3)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極、に特徴を有するものである。
【0006】
前述のように、この発明の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線および積層電極は、まず、希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを作製し、このターゲットを用いて酸素を含んだ雰囲気中でスパッタリングすることにより希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する酸素含有銅合金薄膜を形成し、次いで酸素を含まない雰囲気中でスパッタリングすることにより希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜を形成することにより複合銅合金膜を作製し、この発明の液晶表示装置用積層配線および積層電極を形成することができる。
【0007】
したがって、この発明は、
(5)希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用いて酸素を含んだ雰囲気中で一定時間スパッタリングし、次いで酸素を含まない雰囲気中で一定時間スパッタリングする(1)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線の形成方法、
(6)前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyである(5)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線の形成方法、
(7)希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用い酸素を含んだ雰囲気中で一定時間スパッタリングし、次いで酸素を含まない雰囲気中で一定時間スパッタリングする(3)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極の形成方法、
(8)前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyである(7)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極の形成方法、に特徴を有するものである。
【0008】
前記ターゲットは、まず純度:99.99%以上の無酸素銅を、不活性ガス雰囲気中、高純度グラファイトモールド内で高周波溶解し、得られた溶湯に希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%を添加して溶解し、さらにAgを0.1〜4原子%を添加して溶解し、得られた溶湯を不活性ガス雰囲気中で鋳造し急冷凝固させたのち、さらに熱間圧延し、最後に歪取り焼鈍を施すことにより作製する。前記Agと共に純銅に添加する希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyのうちの1種または2種以上であることが一層好ましい。
【0009】
この発明の液晶表示装置における積層配線および積層電極を構成する銅合金薄膜に含まれる希土類元素は、ガラス基板との密着性向上作用を有するので添加するが、希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01原子%未満添加しても所望の効果が得られず、一方、2原子%を越えて添加すると、比抵抗値が極端に上昇するだけでなくヒロックが発生するようになるので好ましくない。したがって、銅合金薄膜に含まれる希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%に定めた。
この発明の液晶表示装置における積層配線および積層電極を構成する銅合金薄膜に含まれるAgは結晶粒を微細化し、さらにターゲットの結晶粒を微細化してパーティクルの発生を抑制し、さらにヒロックおよびボイドなどの熱欠陥の発生を抑制する作用を有するが、その含有量が0.05原子%未満では所望の効果が得られないので好ましくなく、一方、2原子%を越えて含有してもコストアップとなるだけなので好ましくない。したがって、銅合金薄膜に含まれるAg含有量を0.05〜2原子%に定めた。
この発明の液晶表示装置における積層配線および積層電極を構成する酸素含有銅合金薄膜に含まれる希土類元素およびAgの限定理由は先に述べた銅合金薄膜の限定理由と同じであるので省略する。この発明の液晶表示装置における積層配線および積層電極を構成する酸素含有銅合金薄膜に含まれる酸素は、ガラス基板表面に対する密着性を一段と格段に向上させ、加工中に剥離が生じて不良品が生じることがないので歩留まりを向上させる作用を有するが、その含有量が0.02原子%未満では所望の効果が得られないので好ましくなく、一方、2原子%を越えて含有すると電気抵抗が著しく上昇してしまうので好ましくない。したがって、酸素含有量を0.02〜2原子%に定めた。
【0010】
この発明の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線および積層電極を構成する酸素含有銅合金薄膜は、ガラス基板表面に接する面の成分組成を希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有するように、その厚さ方向に向かって銅合金薄膜に近づくにしたがってO含有量が少なくなる濃度勾配酸素含有銅合金薄膜であることが一層好ましい。
この濃度勾配酸素含有銅合金薄膜および銅合金薄膜からなるこの発明の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線および積層電極をガラス基板表面に形成するには、希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用いて酸素を含んだ不活性ガス雰囲気中でスパッタリングすることにより酸素含有銅合金薄膜をガラス基板表面に形成したのち、直ちに不活性ガス雰囲気中の酸素供給量を漸次減少させながらスパッタリングすることにより濃度勾配酸素含有銅合金薄膜を形成し、次いで酸素を含まない雰囲気中でスパッタリングすることにより銅合金薄膜を形成することにより作製することができる。したがって、この発明は、
(9)希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜並びに前記銅合金薄膜から厚さ方向に向かって遠ざかるにつれて漸次酸素量が増加し、前記銅合金薄膜から厚さ方向に向かって最も離れた酸素含有銅合金薄膜面の成分組成が希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する濃度勾配酸素含有銅合金薄膜を積層してなる熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線、
(10)前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyである(9)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線、
(11)希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜並びに前記銅合金薄膜から厚さ方向に向かって遠ざかるにつれて漸次酸素量が増加し、前記銅合金薄膜から厚さ方向に向かって最も離れた酸素含有銅合金薄膜面の成分組成が希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する濃度勾配酸素含有銅合金薄膜を積層してなる熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極、
(12)前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyである(11)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極、
(13)希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用いて酸素を含んだ雰囲気中でスパッタリングしたのち雰囲気中の酸素を漸次減少させながらスパッタリングし、次いで酸素を含まない雰囲気中で一定時間スパッタリングする(9)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線の形成方法、
(14)前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyである(13)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線の形成方法、
(15)希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用いて酸素を含んだ雰囲気中でスパッタリングしたのち雰囲気中の酸素を漸次減少させながらスパッタリングし、次いで酸素を含まない雰囲気中で一定時間スパッタリングする(11)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極の形成方法、
(16)前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyである(15)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極の形成方法、に特徴を有するものである。
【0011】
この発明の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線および積層電極は、希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用いて酸素を含んだ雰囲気中で一定時間スパッタリングすることによりガラス基板表面に希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有し所定の厚さを有する酸素含有銅合金膜を形成し、引き続いて雰囲気中の酸素供給量を漸次減少させながらスパッタリングすることにより厚さ方向に向かって近づくにしたがってO含有量が少なくなる濃度勾配酸素含有銅合金薄膜を形成し、最後に酸素を含まない雰囲気中で一定時間スパッタリングすることにより銅合金薄膜を形成することにより酸素含有銅合金膜、濃度勾配酸素含有銅合金薄膜および銅合金薄膜からなるこの発明の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線および積層電極をガラス基板表面に形成することができる。
したがって、この発明は、
(17)希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜と、希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する酸素含有銅合金薄膜との間に前記(9)に記載の濃度勾配酸素含有銅合金薄膜を積層してなる熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線、
(18)前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyである前記(17)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線、
(19)希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜と、希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する酸素含有銅合金薄膜との間に、前記(11)に記載の濃度勾配酸素含有銅合金薄膜を積層してなる複合銅合金膜からなる熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極、
(20)前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyである前記(19)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極、
(21)希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用いて酸素を含んだ雰囲気中で一定時間スパッタリングし、引き続いて雰囲気中の酸素を漸次減少させながらスパッタリングし、次いで酸素を含まない雰囲気中で一定時間スパッタリングする前記(17)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線の形成方法、
(22)前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyである前記(21)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線の形成方法、
(23)希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用い酸素を含んだ雰囲気中で一定時間スパッタリングし、引き続いて雰囲気中の酸素を漸次減少させながらスパッタリングし、次いで酸素を含まない雰囲気中で一定時間スパッタリングする前記(19)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極の形成方法、
(24)前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyである前記(23)記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極の形成方法、に特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明の液晶表示装置における積層配線および積層電極は、酸素含有銅合金薄膜または濃度勾配酸素含有銅合金薄膜がガラス基板表面に対する密着性に優れているのでフォトリソやエッチング等の加工中に剥離などが生じることが無いことから製造歩留まりが向上し、さらに片面の銅合金薄膜で構成されていることから液晶表示装置用積層配線および積層電極は導電性に優れており、さらに高温に曝されてもヒロックおよびボイドなどの熱欠陥の発生がない。したがって、このこの発明の液晶表示装置用積層配線および積層電極は電気抵抗が低いことから高精細化し大型化した液晶表示装置の配線および電極に使用しても消費電力を少なくすることができるなど優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
純度:99.99質量%の無酸素銅を用意し、この無酸素銅をArガス雰囲気中、高純度グラファイトモールド内で高周波溶解し、得られた溶湯に希土類元素としてPr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDy並びにAgを添加し溶解して表1に示される成分組成を有する溶湯となるように成分調整し、得られた溶湯を冷却されたカーボン鋳型に鋳造し、さらに熱間圧延したのち最終的に歪取り焼鈍し、得られた圧延体の表面を機械加工して外径:200mm×厚さ:10mmの寸法を有し、表1に示される成分組成を有するターゲットA〜Zを作製した。
さらに、無酸素銅製バッキングプレートを用意し、この無酸素銅製バッキングプレートに前記ターゲットA〜Zを重ね合わせ、温度:200℃でインジウムはんだ付けすることによりバッキングプレート付きターゲットを作製した。このときAgを4.5原子%含むターゲットXは熱間圧延と焼鈍を繰り返す内に割れが発生してスパッタリングターゲットとして使用不能となった。
【0014】
【表1】

【0015】
実施例1
表1のターゲットA〜Wを無酸素銅製バッキングプレートにはんだ付けして得られたバッキングプレート付きターゲットを、ターゲットとガラス基板(縦:50mm、横:50mm、厚さ:0.7mmの寸法を有するコーニング社製1737のガラス基板)との距離:70mmとなるようにセットし、
電源:直流方式、
スパッタパワー:100W、
到達真空度:5×10−5Pa、
雰囲気ガス組成:表1に示されるOを含有したAr混合ガス、
スパッタガス圧:0.67Pa、
ガラス基板:加熱なし、
の条件で15秒間スパッタリングすることによりガラス基板の表面に、厚さ:15nmを有し、表2〜3に示される成分組成を有する酸素含有銅合金薄膜を形成し、次いで雰囲気ガス組成を純Arガスに切り換えてスパッタパワーを600Wに上げて純Arガス雰囲気中でスパッタリングを行なうことにより厚さ:285nmの銅合金薄膜を形成することにより、銅合金薄膜および酸素含有銅合金薄膜からなる表2〜3に示される本発明銅合金積層薄膜(以下、本発明積層薄膜という)1〜20および比較銅合金積層薄膜(以下、比較積層薄膜という)1〜5を形成した。
【0016】
従来例1
表1に示される成分組成を有するターゲットY〜Zを用い、スパッタリング条件として酸素を含まない純Arガスを雰囲気ガスとして使用する以外は実施例1と同様にして表3に示される従来銅合金薄膜(以下、従来薄膜という)1〜2を形成した。
【0017】
JIS-K5400に準じ、1mm間隔で本発明積層薄膜1〜20、比較積層薄膜1〜6および従来金薄膜1〜2に碁盤目状に切れ目を入れた後、3M社製スコッチテープで引き剥がし、ガラス基板中央部の10mm角内でガラス基板に付着していた薄膜の面積%を測定する碁盤目付着試験を実施し、その結果を表4に示し、ガラス基板に対する本発明積層薄膜1〜20、比較積層薄膜1〜6および従来薄膜1〜2の密着性を評価した。
さらに、得られた本発明積層薄膜1〜20、比較積層薄膜1〜6および従来薄膜1〜2をそれぞれ赤外線加熱炉に装入し、到達真空度:4×10−4Paの真空雰囲気中、昇温速度:5℃/min、最高温度:350℃、30分間保持の熱処理を施した。これら熱処理を施した本発明積層薄膜1〜20、比較積層薄膜1〜6および従来薄膜1〜2の表面を5000倍のSEMで5個所の膜表面を観察し、ヒロックおよびボイドの発生の有無を観察し、その結果を表4に示した。
さらに、得られた本発明積層薄膜1〜20、比較積層薄膜1〜6および従来薄膜1〜2の5点の比抵抗を四探針法により測定し、その平均値を求め、それらの結果を表4に示した。
【0018】
【表2】

【0019】
【表3】

【0020】

【表4】

【0021】
表1〜4に示される本発明積層薄膜1〜20、比較積層薄膜1〜5および従来薄膜1〜2の結果から以下の事項が分かる。
(a)本発明積層薄膜1〜20は、従来薄膜1〜2に比べて比抵抗が小さく、ヒロックおよびボイドの発生がなく、さらに密着性に優れている。
(b)この発明の条件から外れて希土類元素、AgおよびOを含む酸素含有銅合金薄膜を積層した比較積層薄膜1〜5は、密着性が低下するなど好ましくない特性が現れる。
(c)Agを4原子%を越えて含むは熱間圧延で割れが発生してスパッタリングターゲットとして使用不能となる。
【0022】
実施例2
表1のターゲットA〜Wを無酸素銅製バッキングプレートにはんだ付けして得られたバッキングプレート付きターゲットを、ターゲットとガラス基板(縦:50mm、横:50mm、厚さ:0.7mmの寸法を有するコーニング社製1737のガラス基板)との距離:70mmとなるようにセットし、
電源:直流方式、
スパッタパワー:100W、
到達真空度:5×10−5Pa、
雰囲気ガス組成:表1に示されるOを含有したAr混合ガス、
スパッタガス圧:0.67Pa、
ガラス基板:加熱なし、
の条件でスパッタリングを開始して、ガラス基板に接する面が表5〜6に示される成分組成を有する酸素含有銅合金薄膜を形成し、引き続いてその後ただちにAr混合ガス中のO供給量を漸次減らしながらAr混合ガス中のO含有量が0になるまで15秒間スパッタリングすることにより厚さ:15nmを有する表5〜6に示される濃度勾配酸素含有銅合金薄膜を形成し、その後、引き続いてOの供給を止めた状態でスパッタパワーを600Wに上げてスパッタリングすることにより厚さ:285nmを有する酸素を含まない銅合金薄膜を形成し、ガラス基板の表面に銅合金薄膜および表5〜6に示される濃度勾配酸素含有銅合金薄膜からなる全体の膜の厚さ:300nmを有する本発明濃度勾配酸素含有銅合金積層薄膜(以下、本発明濃度勾配積層薄膜という)1〜20および比較濃度勾配酸素含有銅合金積層薄膜(以下、比較濃度勾配積層薄膜という)1〜5を形成した。
【0023】
JIS-K5400に準じ、1mm間隔で本発明濃度勾配積層薄膜1〜20および比較濃度勾配積層薄膜1〜2に碁盤目状に切れ目を入れた後、3M社製スコッチテープで引き剥がし、ガラス基板中央部の10mm角内でガラス基板に付着していた薄膜の面積%を測定する碁盤目付着試験を実施し、その結果を表7に示し、ガラス基板に対する本発明濃度勾配積層薄膜1〜20および比較濃度勾配積層薄膜1〜2の密着性を評価した。
さらに、得られた本発明濃度勾配積層薄膜1〜20および比較濃度勾配積層薄膜1〜5をそれぞれ赤外線加熱炉に装入し、到達真空度:4×10−4Paの真空雰囲気中、昇温速度:5℃/min、最高温度:350℃、30分間保持の熱処理を施した。これら熱処理を施した本発明濃度勾配積層薄膜1〜20および比較濃度勾配積層薄膜1〜5の表面を5000倍のSEMで5個所の膜表面を観察し、ヒロックおよびボイドの発生の有無を観察し、その結果を表7に示した。
さらに、得られた本発明濃度勾配積層薄膜1〜20および比較濃度勾配積層薄膜1〜5の5点の比抵抗を四探針法により測定し、その平均値を求め、それらの結果を表7に示した。
【0024】
【表5】

【0025】
【表6】

【0026】

【表7】

【0027】

従来薄膜1〜2の評価結果を示す表4、本発明濃度勾配積層薄膜1〜20および比較濃度勾配積層薄膜1〜2の評価結果を示す表5〜7に示される結果から以下の事項が分かる。
(d)本発明濃度勾配積層薄膜1〜20は従来薄膜1〜2と比較して比抵抗が小さく、ヒロックおよびボイドの発生がなく、さらにガラス基板に対する密着性に優れている。
(e)しかし、この発明の条件から外れて希土類元素、AgおよびOを含む比較濃度勾配積層薄膜1〜5は比抵抗が大きくなり過ぎたり、密着性が低下するなど好ましくない特性が現れる。
【0028】
実施例3
表1のターゲットA〜Tを無酸素銅製バッキングプレートにはんだ付けして得られたバッキングプレート付きターゲットを、ターゲットとガラス基板(縦:50mm、横:50mm、厚さ:0.7mmの寸法を有するコーニング社製1737のガラス基板)との距離:70mmとなるようにセットし、
電源:直流方式、
スパッタパワー:100W、
到達真空度:5×10−5Pa、
雰囲気ガス組成:表1に示されるOを含有したAr混合ガス、
スパッタガス圧:0.67Pa、
ガラス基板:加熱なし、
の条件で15秒間スパッタリングして厚さ:15nmを有する酸素含有銅合金薄膜を形成し、その後Ar混合ガス中のO含有量を漸次減らしながら15秒間スパッタリングすることにより厚さ:15nmを有する濃度勾配酸素含有銅合金薄膜を形成し、さらにOの供給を止めた状態でスパッタパワーを600Wに上げてスパッタリングすることにより厚さ:270nmを有する銅合金薄膜を形成し、ガラス基板の表面に酸素含有銅合金薄膜、濃度勾配酸素含有銅合金薄膜および銅合金薄膜からなる全体の膜の厚さ:300nmを有する本発明濃度勾配積層薄膜を形成した。
【0029】
JIS-K5400に準じ、1mm間隔で本発明濃度勾配積層薄膜21〜40に碁盤目状に切れ目を入れた後、3M社製スコッチテープで引き剥がし、ガラス基板中央部の10mm角内でガラス基板に付着していた薄膜の面積%を測定する碁盤目付着試験を実施し、その結果を表10に示し、ガラス基板に対する本発明濃度勾配積層薄膜21〜40の密着性を評価した。
さらに、得られた本発明濃度勾配積層薄膜21〜40をそれぞれ赤外線加熱炉に装入し、到達真空度:4×10−4Paの真空雰囲気中、昇温速度:5℃/min、最高温度:350℃、30分間保持の熱処理を施した。これら熱処理を施した本発明濃度勾配積層薄膜21〜40の表面を5000倍のSEMで5個所の膜表面を観察し、ヒロックおよびボイドの発生の有無を観察し、その結果を表10に示した。
さらに、得られた本発明濃度勾配積層薄膜21〜40の5点の比抵抗を四探針法により測定し、その平均値を求め、それらの結果を表10に示した。
【0030】
【表8】

【0031】
【表9】

【0032】
【表10】

【0033】
本発明濃度勾配積層薄膜21〜40の評価結果を示す表8〜10に示される結果から、実施例2とほぼ同じ結果が得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜並びに希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する酸素含有銅合金薄膜を積層してなる複合銅合金膜からなることを特徴とする熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線。
【請求項2】
前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyであることを特徴とする請求項1記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線。
【請求項3】
希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜並びに希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する酸素含有銅合金薄膜を積層してなる複合銅合金膜からなる熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極。
【請求項4】
前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyであることを特徴とする請求項3記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極。
【請求項5】
希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用いて酸素を含んだ雰囲気中で一定時間スパッタリングし、次いで酸素を含まない雰囲気中で一定時間スパッタリングすることを特徴とする請求項1記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線の形成方法。
【請求項6】
前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyであることを特徴とする請求項5記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線の形成方法。
【請求項7】
希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用い酸素を含んだ雰囲気中で一定時間スパッタリングし、次いで酸素を含まない雰囲気中で一定時間スパッタリングすることを特徴とする請求項3記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極の形成方法。
【請求項8】
前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyであることを特徴とする請求項7記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極の形成方法。
【請求項9】
希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜並びに前記銅合金薄膜から厚さ方向に向かって遠ざかるにつれて漸次酸素量が増加し、前記銅合金薄膜から厚さ方向に向かって最も離れた酸素含有銅合金薄膜面の成分組成が希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する濃度勾配酸素含有銅合金薄膜を積層してなることを特徴とする熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線。
【請求項10】
前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyであることを特徴とする請求項9記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線。
【請求項11】
希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜並びに前記銅合金薄膜から厚さ方向に向かって遠ざかるにつれて漸次酸素量が増加し、前記銅合金薄膜から厚さ方向に向かって最も離れた酸素含有銅合金薄膜面の成分組成が希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する濃度勾配酸素含有銅合金薄膜を積層してなることを特徴とする熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極。
【請求項12】
前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyであることを特徴とする請求項11記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極。
【請求項13】
希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用いて酸素を含んだ雰囲気中で一定時間スパッタリングしたのち雰囲気中の酸素を漸次減少させながらスパッタリングし、次いで酸素を含まない雰囲気中で一定時間スパッタリングすることを特徴とする請求項9記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線の形成方法。
【請求項14】
前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyであることを特徴とする請求項13記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線の形成方法。
【請求項15】
希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用いて酸素を含んだ雰囲気中で一定時間スパッタリングしたのち雰囲気中の酸素を漸次減少させながらスパッタリングし、次いで酸素を含まない雰囲気中で一定時間スパッタリングすることを特徴とする請求項11記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極の形成方法。
【請求項16】
前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyであることを特徴とする請求項15記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極の形成方法。
【請求項17】
希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜と、希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する酸素含有銅合金薄膜との間に請求項9に記載の濃度勾配酸素含有銅合金薄膜を積層してなることを特徴とする熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線。
【請求項18】
前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyであることを特徴とする請求項17記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線。
【請求項19】
希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金薄膜と、希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.05〜2原子%、O:0.02〜2原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する酸素含有銅合金薄膜との間に請求項11に記載の濃度勾配酸素含有銅合金薄膜を積層してなる複合銅合金膜からなる熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極。
【請求項20】
前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyであることを特徴とする請求項19記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極。
【請求項21】
希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用いて酸素を含んだ雰囲気中で一定時間スパッタリングし、引き続いて雰囲気中の酸素を漸次減少させながらスパッタリングし、次いで酸素を含まない雰囲気中で一定時間スパッタリングすることを特徴とする請求項17記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線の形成方法。
【請求項22】
前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyであることを特徴とする請求項21記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層配線の形成方法。
【請求項23】
希土類元素のうちの1種または2種以上を合計で0.01〜2原子%、Ag:0.1〜4原子%を含有し、残部がCuおよび不可避不純物からなる組成を有する銅合金からなるターゲットを用い酸素を含んだ雰囲気中で一定時間スパッタリングし、引き続いて雰囲気中の酸素を漸次減少させながらスパッタリングし、次いで酸素を含まない雰囲気中で一定時間スパッタリングすることを特徴とする請求項19記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極の形成方法。
【請求項24】
前記希土類元素は、Pr、Nd、Eu、Gd、TbおよびDyである請求項23記載の熱欠陥発生がなくかつ密着性に優れた液晶表示装置用積層電極の形成方法。

【公開番号】特開2008−191542(P2008−191542A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27808(P2007−27808)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】