説明

物理量センサおよび物理量計測方法

【課題】物体の高速検知と物理量の高分解能計測とを両立させる。
【解決手段】物理量センサは、半導体レーザ1と、半導体レーザ1から放射されたレーザ光とその戻り光とを受光するフォトダイオード2と、フォトダイオード2の出力信号に含まれる、半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形の周期を検出し、反射壁面10による干渉波形の周期と異なる周期の干渉波形が所定の条件を満たすときに、レーザ光の放射方向に物体12が存在すると判定する物体検知装置11と、フォトダイオード2の出力信号に含まれる干渉の情報から物体12の物理量を計測する計測手段(電流−電圧変換増幅器5、フィルタ回路6、計数装置7、演算装置8)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザから放射したレーザ光と物体からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉の情報から、物体との距離や物体の速度等の物理量を計測する物理量センサおよび物理量計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザによる光の干渉を利用した距離計として、レーザの出力光と測定対象からの戻り光との半導体レーザ内部での干渉(自己結合効果)を利用したレーザ計測器が提案されている(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3参照)。FP型(ファブリペロー型)半導体レーザの複合共振器モデルを図15に示す。図15において、101は半導体レーザ、102は半導体結晶の壁開面、103はフォトダイオード、104は測定対象である。
【0003】
レーザの発振波長をλ、測定対象104に近い方の壁開面102から測定対象104までの距離をLとすると、以下の共振条件を満足するとき、測定対象104からの戻り光と共振器101内のレーザ光は強め合い、レーザ出力がわずかに増加する。
L=qλ/2 ・・・(1)
式(1)において、qは整数である。この現象は、測定対象104からの散乱光が極めて微弱であっても、半導体レーザの共振器101内の見かけの反射率が増加することにより、増幅作用が生じ、十分観測できる。
【0004】
半導体レーザは、注入電流の大きさに応じて周波数の異なるレーザ光を放射するので、発振周波数を変調する際に、外部変調器を必要とせず、注入電流によって直接変調が可能である。図16は、半導体レーザの発振波長をある一定の割合で変化させたときの発振波長とフォトダイオード103の出力波形との関係を示す図である。式(1)に示したL=qλ/2を満足したときに、戻り光と共振器101内のレーザ光の位相差が0°(同位相)になって、戻り光と共振器101内のレーザ光とが最も強め合い、L=qλ/2+λ/4のときに、位相差が180°(逆位相)になって、戻り光と共振器101内のレーザ光とが最も弱め合う。そのため、半導体レーザの発振波長を変化させていくと、レーザ出力が強くなるところと弱くなるところとが交互に繰り返し現れ、このときのレーザ出力を共振器101に設けられたフォトダイオード103で検出すると、図16に示すように一定周期の階段状の波形が得られる。このような波形は一般的には干渉縞と呼ばれる。
【0005】
この階段状の波形、すなわち干渉縞の1つ1つをモードポップパルス(以下、MHP)と呼ぶ。MHPはモードホッピング現象とは異なる現象である。例えば、測定対象104までの距離がL1のとき、MHPの数が10個であったとすれば、半分の距離L2では、MHPの数は5個になる。すなわち、ある一定時間において半導体レーザの発振波長を変化させた場合、測定距離に比例してMHPの数は変わる。したがって、MHPをフォトダイオード103で検出し、MHPの周波数を測定すれば、容易に距離計測が可能となる。
ただし、自己結合型を含め従来の干渉型計測器では、静止した測定対象との距離を計測することはできても、速度を持つ測定対象の距離を計測することはできないという問題点があった。
【0006】
そこで、発明者は、静止した測定対象との距離だけでなく、測定対象の速度も計測することができる距離・速度計を提案した(特許文献1参照)。この距離・速度計の構成を図17に示す。図17の距離・速度計は、測定対象にレーザ光を放射する半導体レーザ201と、半導体レーザ201の光出力を電気信号に変換するフォトダイオード202と、半導体レーザ201からの光を集光して測定対象210に照射すると共に、測定対象210からの戻り光を集光して半導体レーザ201に入射させるレンズ203と、半導体レーザ201に発振波長が連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返させるレーザドライバ204と、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅器205と、電流−電圧変換増幅器205の出力電圧を2回微分する信号抽出回路206と、信号抽出回路206の出力電圧に含まれるMHPの数を数える計数回路207と、測定対象210との距離及び測定対象210の速度を算出する演算装置208と、演算装置208の算出結果を表示する表示装置209とを有する。
【0007】
レーザドライバ204は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ201に供給する。これにより、半導体レーザ201は、発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間とを交互に繰り返すように駆動される。図18は、半導体レーザ201の発振波長の時間変化を示す図である。図18において、P1は第1の発振期間、P2は第2の発振期間、λaは各期間における発振波長の最小値、λbは各期間における発振波長の最大値、WTは三角波の周期である。
【0008】
半導体レーザ201から出射したレーザ光は、レンズ203によって集光され、測定対象210に入射する。測定対象210で反射された光は、レンズ203によって集光され、半導体レーザ201に入射する。フォトダイオード202は、半導体レーザ201の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅器205は、フォトダイオード202の出力電流を電圧に変換して増幅し、信号抽出回路206は、電流−電圧変換増幅器205の出力電圧を2回微分する。計数回路207は、信号抽出回路206の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について数える。演算装置208は、半導体レーザ1の最小発振波長λaと最大発振波長λbと第1の発振期間P1におけるMHPの数と第2の発振期間P2におけるMHPの数に基づいて、測定対象210との距離及び測定対象210の速度を算出する。
【0009】
【特許文献1】特開2006−313080号公報
【非特許文献1】上田正,山田諄,紫藤進,「半導体レーザの自己結合効果を利用した距離計」,1994年度電気関係学会東海支部連合大会講演論文集,1994年
【非特許文献2】山田諄,紫藤進,津田紀生,上田正,「半導体レーザの自己結合効果を利用した小型距離計に関する研究」,愛知工業大学研究報告,第31号B,p.35−42,1996年
【非特許文献3】Guido Giuliani,Michele Norgia,Silvano Donati and Thierry Bosch,「Laser diode self-mixing technique for sensing applications」,JOURNAL OF OPTICS A:PURE AND APPLIED OPTICS,p.283−294,2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図15に示した自己結合型の距離計によれば測定対象との距離を計測することができ、図17に示した距離・速度計によれば、測定対象との距離と測定対象の速度を同時に計測することができる。
しかしながら、これらの自己結合型のレーザ計測器では、物体の検知に時間がかかるという問題点があった。つまり、自己結合型のレーザ計測器では、図18に示したように半導体レーザの発振波長を変化させて、MHPの個数や周波数を計測し、物体との距離を算出するが、距離を算出するまでは半導体レーザの放射方向に物体が存在するかどうかを検知できない。物体を高速に検知するには、図18に示す三角波の周期WTを短くすればよいが、周期WTを短くするには、回路速度を速くする、もしくは距離の分解能を低下させる必要が生じてしまうという問題がある。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、物体の高速検知と物理量の高分解能計測とを両立させることができる物理量センサおよび物理量計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の物理量センサは、変調されたレーザ光を放射する半導体レーザと、前記半導体レーザの内部又はその近傍に配置され、前記半導体レーザから放射されたレーザ光を受光して電気信号に変換する受光器と、前記受光器の出力信号に含まれる、前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形の周期を検出し、静止している基準面による干渉波形の周期と異なる周期の干渉波形が所定の条件を満たすときに、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定する物体検知手段と、前記受光器の出力信号に含まれる干渉の情報から前記物体の物理量を計測する計測手段とを備えるものである。
【0013】
また、本発明の物理量センサの1構成例において、前記基準面は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面であり、前記物体検知手段は、前記干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手段と、この周期測定手段の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する度数分布作成手段と、前記度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値T0を算出する代表値算出手段と、前記レーザ光の1周期前の計数期間において算出された前記代表値T0に対して、現在の計数期間中の検知期間において周期がこの代表値T0の所定数倍よりも長い干渉波形の個数Nを求める個数導出手段と、前記検知期間中に周期が測定された干渉波形の全個数Nallに対する前記個数Nの割合N/Nallが所定の閾値以上のときに、前記レーザ光の放射方向に前記物体が存在すると判定する物体判定手段とからなるものである。
また、本発明の物理量センサの1構成例において、前記所定数は、例えば2である。
【0014】
また、本発明の物理量センサの1構成例において、前記基準面は、前記半導体レーザを保護する透明カバーの内面と外面のうち無反射防止処理が施されていない何れか1つの面であり、前記物体検知手段は、前記干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手段と、この周期測定手段の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する度数分布作成手段と、前記度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値T0を算出する代表値算出手段と、前記レーザ光の1周期前の計数期間において算出された前記代表値T0に対して、現在の計数期間中の検知期間において周期がこの代表値T0の所定数倍よりも短い干渉波形の個数Nを求める個数導出手段と、前記検知期間中に周期が測定された干渉波形の全個数Nallに対する前記個数Nの割合N/Nallが所定の閾値以上のときに、前記レーザ光の放射方向に前記物体が存在すると判定する物体判定手段とからなるものである。
また、本発明の物理量センサの1構成例において、前記所定数は、例えば0.5である。
【0015】
また、本発明の物理量センサの1構成例において、前記基準面は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面であり、前記物体検知手段は、前記干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手段と、この周期測定手段の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する度数分布作成手段と、前記度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値T0を算出する代表値算出手段と、前記度数分布から周期が前記代表値T0の所定数倍よりも長い度数の総和Nwを求めると共に、前記計数期間中の検知期間において周期が前記代表値T0の所定数倍よりも長い干渉波形の個数Nを求める個数導出手段と、前記レーザ光の1周期前の計数期間における度数Nwに対する現在の計数期間中の検知期間における個数Nの割合N/Nwが所定の閾値以上のときに、前記レーザ光の放射方向に前記物体が存在すると判定する物体判定手段とからなるものである。
また、本発明の物理量センサの1構成例において、前記所定数は、例えば1.5である。
【0016】
また、本発明の物理量センサの1構成例は、さらに、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させるレーザドライバを備え、前記計測手段は、前記受光器の出力信号に含まれる、前記レーザ光と前記戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える計数手段と、この計数手段によって干渉波形の数を数える期間における最小発振波長と最大発振波長と前記計数手段の計数結果とから前記物体との距離及び前記物体の速度の少なくとも一方を算出する演算手段とからなるものである。
【0017】
また、本発明の物理量計測方法は、変調されたレーザ光を半導体レーザから放射させる発振手順と、前記半導体レーザの内部又はその近傍に配置された受光器の出力信号に含まれる、前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形の周期を検出し、静止している基準面による干渉波形の周期と異なる周期の干渉波形が所定の条件を満たすときに、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定する物体検知手順と、前記受光器の出力信号に含まれる干渉の情報から前記物体の物理量を計測する計測手順とを備えるものである。
【0018】
また、本発明の物理量計測方法の1構成例において、前記基準面は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面であり、前記物体検知手順は、前記干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手順と、この周期測定手順の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する度数分布作成手順と、前記度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値T0を算出する代表値算出手順と、前記レーザ光の1周期前の計数期間において算出された前記代表値T0に対して、現在の計数期間中の検知期間において周期がこの代表値T0の所定数倍よりも長い干渉波形の個数Nを求める個数導出手順と、前記検知期間中に周期が測定された干渉波形の全個数Nallに対する前記個数Nの割合N/Nallが所定の閾値以上のときに、前記レーザ光の放射方向に前記物体が存在すると判定する物体判定手順とからなるものである。
また、本発明の物理量計測方法の1構成例において、前記所定数は、例えば2である。
【0019】
また、本発明の物理量計測方法の1構成例において、前記基準面は、前記半導体レーザを保護する透明カバーの内面と外面のうち無反射防止処理が施されていない面であり、前記物体検知手順は、前記干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手順と、この周期測定手順の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する度数分布作成手順と、前記度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値T0を算出する代表値算出手順と、前記レーザ光の1周期前の計数期間において算出された前記代表値T0に対して、現在の計数期間中の検知期間において周期がこの代表値T0の所定数倍よりも短い干渉波形の個数Nを求める個数導出手順と、前記検知期間中に周期が測定された干渉波形の全個数Nallに対する前記個数Nの割合N/Nallが所定の閾値以上のときに、前記レーザ光の放射方向に前記物体が存在すると判定する物体判定手順とからなるものである。
また、本発明の物理量計測方法の1構成例において、前記所定数は、例えば0.5である。
【0020】
また、本発明の物理量計測方法の1構成例において、前記基準面は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面であり、前記物体検知手順は、前記干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手順と、この周期測定手順の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する度数分布作成手順と、前記度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値T0を算出する代表値算出手順と、前記度数分布から周期が前記代表値T0の所定数倍よりも長い度数の総和Nwを求めると共に、前記計数期間中の検知期間において周期が前記代表値T0の所定数倍よりも長い干渉波形の個数Nを求める個数導出手順と、前記レーザ光の1周期前の計数期間における度数Nwに対する現在の計数期間中の検知期間における個数Nの割合N/Nwが所定の閾値以上のときに、前記レーザ光の放射方向に前記物体が存在すると判定する物体判定手順とからなるものである。
また、本発明の物理量計測方法の1構成例において、前記所定数は、例えば1.5である。
【0021】
また、本発明の物理量計測方法の1構成例において、前記発振手順は、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させる手順であり、前記計測手順は、前記受光器の出力信号に含まれる、前記レーザ光と前記戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える計数手順と、この計数手順によって干渉波形の数を数える期間における最小発振波長と最大発振波長と前記計数手順の計数結果とから前記物体との距離及び前記物体の速度の少なくとも一方を算出する演算手順とからなるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、物体検知手段を設けることにより、レーザ光の周期(三角波の周期)を短くすることなく、物体を高速に検知することができるので、物体の高速検知と物理量の高分解能計測とを両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る距離・速度計の構成を示すブロック図である。図1の距離・速度計は、レーザ光を放射する半導体レーザ1と、半導体レーザ1の光出力を電気信号に変換する受光器であるフォトダイオード2と、半導体レーザ1からの光を集光して放射すると共に、反射壁面10又は物体12からの戻り光を集光して半導体レーザ1に入射させるレンズ3と、半導体レーザ1を駆動するレーザドライバ4と、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する電流−電圧変換増幅器5と、電流−電圧変換増幅器5の出力電圧から搬送波を除去するフィルタ回路6と、フィルタ回路6の出力電圧に含まれるMHPの数を数える計数装置7と、物体12との距離及び物体12の速度を算出する演算装置8と、演算装置8の算出結果及び後述する物体検知装置11の検知結果を表示する表示装置9と、半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在するかどうかを検知する物体検知装置11とを有する。
【0024】
電流−電圧変換増幅器5とフィルタ回路6と計数装置7と演算装置8とは、計測手段を構成している。また、電流−電圧変換増幅器5とフィルタ回路6と計数装置7とは、計数手段を構成している。
以下、説明容易にするために、半導体レーザ1には、モードホッピング現象を持たない型(VCSEL型、DFBレーザ型)のものが用いられているものと想定する。
【0025】
レーザドライバ4は、時間に関して一定の変化率で増減を繰り返す三角波駆動電流を注入電流として半導体レーザ1に供給する。これにより、半導体レーザ1は、注入電流の大きさに比例して発振波長が一定の変化率で連続的に増加する第1の発振期間P1と発振波長が一定の変化率で連続的に減少する第2の発振期間P2とを交互に繰り返すように駆動される。このときの半導体レーザ1の発振波長の時間変化は、図18に示したとおりである。本実施の形態では、発振波長の最大値λb及び発振波長の最小値λaはそれぞれ常に一定になされており、それらの差λb−λaも常に一定になされている。
【0026】
半導体レーザ1から出射したレーザ光は、レンズ3によって集光され、半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在しない場合は反射壁面10に入射し、物体12が存在する場合は物体12に入射する。反射壁面10又は物体12で反射された光は、レンズ3によって集光され、半導体レーザ1に入射する。ただし、レンズ3による集光は必須ではない。フォトダイオード2は、半導体レーザ1の内部又はその近傍に配置され、半導体レーザ1の光出力を電流に変換する。電流−電圧変換増幅器5は、フォトダイオード2の出力電流を電圧に変換して増幅する。
【0027】
フィルタ回路6は、変調波から重畳信号を抽出する機能を有するものである。図2(A)は電流−電圧変換増幅器5の出力電圧波形を模式的に示す図、図2(B)はフィルタ回路6の出力電圧波形を模式的に示す図である。これらの図は、フォトダイオード2の出力に相当する図2(A)の波形(変調波)から、図18の半導体レーザ1の発振波形(搬送波)を除去して、図2(B)のMHP波形(干渉波形)を抽出する過程を表している。
【0028】
計数装置7は、フィルタ回路6の出力電圧に含まれるMHPの数を第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々について数える。図3は計数装置7と物体検知装置11の構成の1例を示すブロック図である。
計数装置7は、判定部70と、論理積演算部(AND)71と、カウンタ72とから構成される。
物体検知装置11は、周期測定部110と、記憶部111と、度数分布作成部112と、代表値算出部113と、個数導出部114と、物体判定部115とから構成される。
【0029】
図4(A)〜図4(F)は計数装置7と物体検知装置11の動作を説明するための図であり、図4(A)はフィルタ回路6の出力電圧の波形、すなわちMHPの波形を模式的に示す図、図4(B)は図4(A)に対応する判定部70の出力を示す図、図4(C)は計数装置7と物体検知装置11に入力されるゲート信号GSを示す図、図4(D)は図4(B)に対応するカウンタ72の計数結果を示す図、図4(E)は物体検知装置11に入力されるクロック信号CLKを示す図、図4(F)は図4(B)に対応する周期測定部110の測定結果を示す図である。
【0030】
まず、計数装置7の判定部70は、図4(A)に示すフィルタ回路6の出力電圧がハイレベル(H)かローレベル(L)かを判定して、図4(B)のような判定結果を出力する。このとき、判定部70は、フィルタ回路6の出力電圧が上昇してしきい値TH1以上になったときにハイレベルと判定し、フィルタ回路6の出力電圧が下降してしきい値TH2(TH2<TH1)以下になったときにローレベルと判定することにより、フィルタ回路6の出力を2値化する。
【0031】
AND71は、判定部70の出力と図4(C)のようなゲート信号GSとの論理積演算の結果を出力し、カウンタ72は、AND71の出力の立ち上がりをカウントする(図4(D))。ここで、ゲート信号GSは、計数期間(本実施の形態では第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々)の先頭で立ち上がり、計数期間の終わりで立ち下がる信号である。したがって、カウンタ72は、計数期間中のAND71の出力の立ち上がりエッジの数(すなわち、MHPの立ち上がりエッジの数)を数えることになる。なお、計数期間は、それぞれ発振期間P1,P2中に存在し、発振期間P1,P2以下の時間幅を有するものであればよい。
【0032】
一方、物体検知装置11の周期測定部110は、計数期間中のAND71の出力の立ち上がりエッジの周期(すなわち、MHPの周期)を立ち上がりエッジが発生する度に測定する。このとき、周期測定部110は、図4(E)に示すクロック信号CLKの周期を1単位としてMHPの周期を測定する。図4(F)の例では、周期測定部110は、MHPの周期としてTα,Tβ,Tγを順次測定している。図4(E)、図4(F)から明らかなように、周期Tα,Tβ,Tγの大きさは、それぞれ5クロック、4クロック、2クロックである。クロック信号CLKの周波数は、MHPの取り得る最高周波数に対して十分に高いものとする。記憶部111は、周期測定部110の測定結果を記憶する。
【0033】
ゲート信号GSが立ち下がり、計数期間が終了した後に、物体検知装置11の度数分布作成部112は、記憶部111に記憶された測定結果から計数期間中のMHPの周期の度数分布を作成する。記憶部111は、度数分布作成部112が作成した度数分布を記憶する。
【0034】
続いて、物体検知装置11の代表値算出部113は、度数分布作成部112が作成した度数分布から、MHPの周期の中央値(メジアン)T0を算出する。記憶部111は、MHPの周期の中央値T0を記憶する。
【0035】
物体検知装置11の個数導出部114は、記憶部111を参照し、現在より1三角波周期WT前の計数期間において算出されたMHPの周期の中央値T0に対して、現在の計数期間中の任意の検知期間dにおいて周期Tが次式を満たすMHPの個数Nを求める。
2T0<T ・・・(2)
また、個数導出部114は、周期測定部110によって上記検知期間d中に周期が測定されたMHPの全個数Nallを求める。
【0036】
図5はフィルタ回路6の出力電圧波形を模式的に示す図であり、計数期間(第1の発振期間P1と第2の発振期間P2の各々)と検知期間dとの関係を説明するための図である。検知期間dは、一定時間td(td<WT/2)の時間幅を有する。図5に示すように、検知期間dは、計数期間中に複数個設定することができる。
【0037】
物体検知装置11の物体判定部115は、検知期間d中に周期が測定されたMHPの全個数Nallに対する個数Nの割合N/Nallが所定の閾値(例えば60%)以上の場合、半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在すると判定し、物体12を検知したことを示す物体検知信号を出力する。物体検知信号の出力に応じて、表示装置9は物体12を検知したことを表示し、演算装置8は距離および速度の算出を開始する。物体検知装置11は、以上のような物体検知処理を計数期間毎および検知期間毎に行う。
【0038】
図6はMHPの周期の度数分布を示す図であり、物体検知装置11による物体検知の原理を説明するための図である。半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在しない場合、反射壁面10からの光が半導体レーザ1に戻ることになる。この場合、MHPは同じ周期で出現し、MHPの周期は中央値T0を中心にして正規分布する。
【0039】
一方、半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在する場合、この物体12は半導体レーザ1と反射壁面10との間に存在するのであるから、物体12が存在しない場合よりも低い周波数のMHPが出現する。つまり、MHPの周期の度数分布で考えると、物体12が存在しない場合のMHPの周期の中央値T0よりも長い周期の分布が出現する。
【0040】
ここで、MHPの波形には、ノイズのために、欠落が生じたり信号として数えるべきでない波形が生じたりすることがある。特に、本実施の形態の場合、物体12が存在しない場合の戻り光は反射壁面10からの光なので、MHPの強度が小さく、信号の欠落が生じる可能性がある。信号の欠落が生じると、欠落が生じた箇所でのMHPの周期は、本来の周期のおよそ2倍になる。つまり、MHPの強度が小さいために計数時に欠落が生じたMHPの周期は、本来のMHPの周期がT0を中心とした正規分布であるために、平均値が2T0、標準偏差2σの正規分布になる。
【0041】
したがって、このような信号の欠落の影響を除くために式(2)に基づく判定を行い、2T0よりも長い周期のMHPが出現したときに、半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在すると判定する。
なお、物体判定部115が判定に用いる閾値は、半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在しない初期状態において求めた割合N/Nallから予め定められた値である。例えば、初期状態の検知期間dにおいて、Nallが100、Nが5とすると、N/Nall=5%となる。例えばその2倍の値10%を閾値とすると、N/Nallが10%以上の場合、半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在すると判定する。
【0042】
次に、物体検知装置11から物体検知信号が出力されたときの演算装置8の動作について説明する。演算装置8は、半導体レーザ1の最小発振波長λaと最大発振波長λbと計数装置7が数えたMHPの数に基づいて、物体12との距離および物体12の速度を算出する。図7は演算装置8の構成の1例を示すブロック図、図8は演算装置8の動作を示すフローチャートである。
【0043】
演算装置8は、半導体レーザ1の最小発振波長λaと最大発振波長λbとMHPの数に基づいて物体12との距離の候補値と物体12の速度の候補値とを算出する距離・速度算出部80と、距離・速度算出部80で算出された距離の候補値と直前に算出された距離の候補値との差である履歴変位を算出する履歴変位算出部81と、距離・速度算出部80と履歴変位算出部81の算出結果を記憶する記憶部82と、距離・速度算出部80と履歴変位算出部81の算出結果に基づいて物体12の状態を判定する状態判定部83と、状態判定部83の判定結果に基づいて物体12との距離及び物体12の速度を確定する距離・速度確定部84とから構成される。
【0044】
本実施の形態では、物体12の状態を所定の条件を満たす微小変位状態、あるいは微小変位状態よりも動きが大きい変位状態のいずれかであるとする。発振期間P1と発振期間P2の1期間あたりの物体12の平均変位をVとしたとき、微小変位状態とは(λb−λa)/λb>V/Lbを満たす状態であり(ただし、Lbは時刻tのときの距離)、変位状態とは(λb−λa)/λb≦V/Lbを満たす状態である。
【0045】
まず、演算装置8の距離・速度算出部80は、現時刻tにおける距離の候補値Lα(t),Lβ(t)と速度の候補値Vα(t),Vβ(t)を次式のように算出して、記憶部82に格納する(図8ステップS10)。
Lα(t)=λa×λb×(MHP(t−1)+MHP(t))
/{4×(λb−λa)} ・・・(3)
Lβ(t)=λa×λb×(|MHP(t−1)−MHP(t)|)
/{4×(λb−λa)} ・・・(4)
Vα(t)=(MHP(t−1)−MHP(t))×λb/4 ・・・(5)
Vβ(t)=(MHP(t−1)+MHP(t))×λb/4 ・・・(6)
【0046】
式(3)〜式(6)において、MHP(t)は現時刻tにおいて算出されたMHPの数、MHP(t−1)はMHP(t)の1回前に算出されたMHPの数である。例えば、MHP(t)が第1の発振期間P1の計数結果であるとすれば、MHP(t−1)は第2の発振期間P2の計数結果であり、逆にMHP(t)が第2の発振期間P2の計数結果であるとすれば、MHP(t−1)は第1の発振期間P1の計数結果である。
【0047】
候補値Lα(t),Vα(t)は物体12が微小変位状態にあると仮定して計算した値であり、候補値Lβ(t),Vβ(t)は物体12が変位状態にあると仮定して計算した値である。演算装置8は、式(3)〜式(6)の計算を計数装置7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
【0048】
続いて、演算装置8の履歴変位算出部81は、微小変位状態と変位状態の各々について、現時刻tにおける距離の候補値と、記憶部82に格納された、直前の時刻における距離の候補値との差である履歴変位を次式のように算出して、記憶部82に格納する(図8ステップS11)。なお、式(7)、式(8)では、現時刻tの1回前に算出された距離の候補値をLα(t−1),Lβ(t−1)としている。
Vcalα(t)=Lα(t)−Lα(t−1) ・・・(7)
Vcalβ(t)=Lβ(t)−Lβ(t−1) ・・・(8)
【0049】
履歴変位Vcalα(t)は物体12が微小変位状態にあると仮定して計算した値であり、履歴変位Vcalβ(t)は物体12が変位状態にあると仮定して計算した値である。演算装置8は、式(7)〜式(8)の計算を計数装置7によってMHPの数が測定される時刻毎に行う。なお、式(5)〜式(8)においては、物体12が本実施の形態の距離・速度計に近づく方向を正の速度、遠ざかる方向を負の速度と定めている。
次に、演算装置8の状態判定部83は、記憶部82に格納された式(3)〜式(8)の算出結果を用いて、物体12の状態を判定する(図8ステップS12)。
【0050】
特許文献1に記載されているように、物体12が微小変位状態で移動(等速度運動)している場合、物体12を微小変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の符号は一定で、かつ物体12を微小変位状態と仮定して計算した速度の候補値Vα(t)と履歴変位Vcalα(t)の絶対値の平均値とが等しくなる。また、物体12が微小変位状態で等速度運動している場合、物体12を変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の符号は、MHPの数が測定される時刻毎に反転する。
【0051】
したがって、状態判定部83は、物体12が微小変位状態にあると仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の符号が一定で、かつ物体12が微小変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vα(t)と履歴変位Vcalα(t)の絶対値の平均値とが等しい場合、物体12が微小変位状態で等速度運動していると判定する。
【0052】
特許文献1に記載されているように、物体12が変位状態で移動(等速度運動)している場合、物体12を変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の符号は一定で、かつ物体12を変位状態と仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)と履歴変位Vcalβ(t)の絶対値の平均値とが等しくなる。また、物体12が変位状態で等速度運動している場合、物体12を微小変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の符号はMHPの数が測定される時刻毎に反転する。
【0053】
したがって、状態判定部83は、物体12が変位状態にあると仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の符号が一定で、かつ物体12が変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)と履歴変位Vcalβ(t)の絶対値の平均値とが等しい場合、物体12が変位状態で等速度運動していると判定する。
【0054】
特許文献1に記載されているように、物体12が微小変位状態で、等速度運動以外の運動をしている場合、物体12を微小変位状態と仮定して計算した速度の候補値Vα(t)と物体12を微小変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の絶対値の平均値とは一致しない。同様に、物体12を変位状態と仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)と物体12を変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の絶対値の平均値も一致しない。
【0055】
また、物体12が微小変位状態で、等速度運動以外の運動をしている場合、物体12を微小変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の符号はMHPの数が測定される時刻毎に反転し、物体12を変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)では符号の変動はあっても、この変動はMHPの数が測定される時刻毎ではない。
【0056】
したがって、状態判定部83は、物体12が微小変位状態にあると仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の符号がMHPの数が測定される時刻毎に反転し、かつ物体12が微小変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vα(t)と履歴変位Vcalα(t)の絶対値の平均値とが一致しない場合、物体12が微小変位状態で等速度運動以外の運動をしていると判定する。
【0057】
なお、速度の候補値Vβ(t)に着目すると、Vβ(t)の絶対値は定数となり、この値は半導体レーザ1の波長変化率(λb−λa)/λbと等しい。そこで、状態判定部83は、物体12が変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)の絶対値が波長変化率と等しく、かつ物体12が微小変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vα(t)と履歴変位Vcalα(t)の絶対値の平均値とが一致しない場合、物体12が微小変位状態で等速度運動以外の運動をしていると判定してもよい。
【0058】
特許文献1に記載されているように、物体12が変位状態で、等速度運動以外の運動をしている場合、物体12を微小変位状態と仮定して計算した速度の候補値Vα(t)と物体12を微小変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)の絶対値の平均値とは一致せず、物体12を変位状態と仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)と物体12を変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の絶対値の平均値も一致しない。
【0059】
また、物体12が変位状態で、等速度運動以外の運動をしている場合、物体12を変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の符号はMHPの数が測定される時刻毎に反転し、物体12を微小変位状態と仮定して計算した履歴変位Vcalα(t)では符号の変動はあっても、この変動はMHPの数が測定される時刻毎ではない。
【0060】
したがって、状態判定部83は、物体12が変位状態にあると仮定して計算した履歴変位Vcalβ(t)の符号がMHPの数が測定される時刻毎に反転し、かつ物体12が変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)と履歴変位Vcalβ(t)の絶対値の平均値とが一致しない場合、物体12が変位状態で等速度運動以外の運動をしていると判定する。
【0061】
なお、速度の候補値Vα(t)に着目すると、Vα(t)の絶対値は定数となり、この値は半導体レーザ1の波長変化率(λb−λa)/λbと等しい。したがって、状態判定部83は、物体12が微小変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vα(t)の絶対値が波長変化率と等しく、かつ物体12が変位状態にあると仮定して計算した速度の候補値Vβ(t)と履歴変位Vcalβ(t)の絶対値の平均値とが一致しない場合、物体12が変位状態で等速度運動以外の運動をしていると判定してもよい。
【0062】
演算装置8の距離・速度確定部84は、状態判定部83の判定結果に基づいて物体12の速度及び物体12との距離を確定する(図8ステップS13)。
すなわち、距離・速度確定部84は、物体12が微小変位状態で等速度運動していると判定された場合、速度の候補値Vα(t)を物体12の速度とし、距離の候補値Lα(t)を物体12との距離とし、物体12が変位状態で等速度運動していると判定された場合、速度の候補値Vβ(t)を物体12の速度とし、距離の候補値Lβ(t)を物体12との距離とする。
【0063】
また、距離・速度確定部84は、物体12が微小変位状態で等速度運動以外の運動をしていると判定された場合、速度の候補値Vα(t)を物体12の速度とし、距離の候補値Lα(t)を物体12との距離とする。ただし、実際の距離は、距離の候補値Lα(t)の平均値となる。また、距離・速度確定部84は、物体12が変位状態で等速度運動以外の運動をしていると判定された場合、速度の候補値Vβ(t)を物体12の速度とし、距離の候補値Lβ(t)を物体12との距離とする。ただし、実際の距離は、距離の候補値Lβ(t)の平均値となる。
【0064】
なお、MHP(t−1)とMHP(t)の大小関係によって、Vβ(t)は必ず正の値となり、Vα(t)は正又は負の値のいずれかとなるが、これらの符号は物体12の速度の向きを表現したものではない。発振波長が増加している方の半導体レーザのMHPの数が、発振波長が減少している方の半導体レーザのMHPの数よりも大きいとき、物体12の速度は正方向(レーザに接近する方向)となる。
【0065】
演算装置8は、ステップS10〜S13の処理を、計数装置7によってMHPの数が測定される時刻毎(発振期間毎)に行う。
表示装置9は、演算装置8によって算出された物体12との距離及び物体12の速度をリアルタイムで表示する。
【0066】
以上のように、本実施の形態では、三角波の周期WTより短い時間幅の各検知期間dにおいて物体検知装置11が物体検知処理を繰り返し行うので、自己結合型のレーザ計測器よりも高速に物体12を検知することができる。一方、計数装置7や演算装置8等は、自己結合型のレーザ計測器として動作するので、物体12との距離及び物体12の速度を高い分解能で計測することができる。その結果、本実施の形態では、(a)装置を小型化することができ、(b)高速の回路が不要で、(c)外乱光に強く、(d)測定対象を選ばないといった従来の自己結合型のレーザ計測器の利点を活かしつつ、物体の高速検知と物体の物理量の高分解能計測を実現することができる。
【0067】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、反射壁面10を物体検知の基準面として用いたが、半導体レーザ1からのレーザ光の入出射部を形成する透明体の片面にだけ無反射防止処理を施し、透明体の無反射防止処理を施していない面を物体検知の基準面としてもよい。
【0068】
図9は本発明の第2の実施の形態に係る距離・速度計の構成を示すブロック図、図10は本発明の第2の実施の形態に係る半導体レーザの入出射部の要部概略構成を示す図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態と第1の実施の形態との大きな違いは、反射壁面がないことと、物体検知装置11aの物体検知処理が違うことである。
【0069】
図10において、130は半導体レーザ1を収納する密閉ケース、131は半導体レーザ1の前面に設けられて半導体レーザ1を保護するガラス等の透明カバー(透明体)、132は透明カバー131の表面に設けられた反射防止膜(ARコート)である。
透明カバー131は、密閉ケース130の窓部に嵌め込んで設けられる。そして、半導体レーザ1は、その前面であるレーザ光入出射面を透明カバー131に対峙させて密閉ケース130内に組み込まれる。
【0070】
ガラス等の透明体を通してレーザ光を入出力する場合、透明体と空気との界面で僅かではあるがレーザ光の反射が生じる。このような反射を防ぐ場合、専ら、低屈折率材料を分散させたフィラーを透明体の表面にコーティングして反射防止膜を形成することが行われる。本実施の形態においても、レーザ光の入出射面となる透明カバー131での不要な反射を抑えるべく、透明カバー131の表面に反射防止膜132を設けるが、この際、透明カバー131の内面にだけ反射防止膜132を設け、その外面には反射防止膜を形成しないことで、敢えて透明カバー131の外面においてレーザ光の反射が生じるようにしている。そして、半導体レーザ1から出力されたレーザ光の一部が透明カバー131の外面にて反射して半導体レーザ1に戻るようにしている。
【0071】
なお、透明カバー131の外面については、無反射防止処理を施さないことは勿論のことではあるが、敢えて半導体レーザ1において自己結合効果が生じる強度の反射光を得るに必要な処理を施すようにしても良い。具体的には透明カバー131の外面を鏡面研磨したり、或る程度の反射率を有する光学膜を被覆形成することも可能である。
【0072】
図10に示した構成によれば、半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在しない場合、半導体レーザ1から出射したレーザ光は、その一部が透明カバー131の外面によって反射されて半導体レーザ1に戻ることになる。この結果、半導体レーザ1においては、出力光と透明カバー131からの反射光との自己結合効果による干渉が生じる。
【0073】
本実施の形態においても、フォトダイオード2、レーザドライバ4、電流−電圧変換増幅器5、フィルタ回路6、計数装置7、演算装置8および表示装置9の動作は第1の実施の形態と同じなので、説明は省略する。
図11は本実施の形態の物体検知装置11aの構成の1例を示すブロック図である。物体検知装置11aは、周期測定部110と、記憶部111と、度数分布作成部112と、代表値算出部113と、個数導出部114aと、物体判定部115とから構成される。
【0074】
周期測定部110、記憶部111、度数分布作成部112および代表値算出部113の動作は第1の実施の形態と同じである。
物体検知装置11aの個数導出部114aは、記憶部111を参照し、現在より1三角波周期WT前の計数期間において算出されたMHPの周期の中央値T0に対して、現在の計数期間中の任意の検知期間dにおいて周期Tが次式を満たすMHPの個数Nを求める。
0.5T0>T ・・・(9)
検知期間dについては第1の実施の形態で説明したとおりである。また、個数導出部114aは、周期測定部110によって上記検知期間d中に周期が測定されたMHPの全個数Nallを求める。
【0075】
物体判定部115は、検知期間d中に周期が測定されたMHPの全個数Nallに対する個数Nの割合N/Nallが所定の閾値(例えば60%)以上の場合、半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在すると判定し、物体12を検知したことを示す物体検知信号を出力する。
物体検知装置11aは、以上のような物体検知処理を計数期間毎および検知期間毎に行う。
【0076】
図12はMHPの周期の度数分布を示す図であり、物体検知装置11aによる物体検知の原理を説明するための図である。半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在しない場合、無反射防止処理が施されていない透明カバー131の外面からの光が半導体レーザ1に戻ることになる。この場合、MHPは同じ周期で出現し、MHPの周期は中央値T0を中心にして正規分布する。
第1の実施の形態と異なるのは、半導体レーザ1から透明カバー131の外面までの距離が半導体レーザ1から反射壁面10までの距離よりも短いために、MHPの周波数が低く、周期の中央値T0が大きくなることである。
【0077】
一方、半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在する場合、この物体12は透明カバー131よりも遠くに存在するのであるから、物体12が存在しない場合よりも高い周波数のMHPが出現する。つまり、MHPの周期の度数分布で考えると、物体12が存在しない場合のMHPの周期の中央値T0よりも短い周期の分布が出現する。
【0078】
ここで、MHPの波形には、ノイズのために信号として数えるべきでない波形が生じたりすることがある。ノイズを過剰に数えた結果として2分割されたMHPの周期は、分割される前の周期がT0を中心とした正規分布であるために、0.5T0に対して対称な度数分布になる。
【0079】
したがって、このようなノイズのカウントの影響を除くために式(9)に基づく判定を行い、0.5T0よりも短い周期のMHPが出現したときに、半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在すると判定する。
その他の動作は、第1の実施の形態で説明したとおりである。以上のように、本実施の形態によれば、透明カバー131の一方の面を物体検知の基準面とする場合でも本発明を適用することができ、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、物体12が基準面(第1の実施の形態の場合は反射壁面、第2の実施の形態の場合は透明体の無反射防止処理を施していない面)付近に出現した場合、閾値を用いて検出できない場合があるが、その場合は、記述した距離算出方法で基準面との距離と異なる距離が算出されたときに物体検知とすることができる。
【0080】
[第3の実施の形態]
第1、第2の実施の形態では、検知期間dを一定時間tdの時間幅を有する固定長のものとして説明したが、検知期間dは可変長であってもよい。検知期間dを可変長とする場合は、一定個数Nall個のMHPが出現した期間を検知期間dとし、この検知期間dにおいて周期Tが式(2)又は式(9)を満たすMHPの個数Nを求め、物体12が存在するかどうかを判定すればよい。
【0081】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態においても距離・速度計の構成は第1の実施の形態と同様なので、図1の符号を用いて説明する。
フォトダイオード2、レーザドライバ4、電流−電圧変換増幅器5、フィルタ回路6、計数装置7、演算装置8および表示装置9の動作は、第1の実施の形態と同じである。
【0082】
図13は本実施の形態の物体検知装置11の構成の1例を示すブロック図である。物体検知装置11は、周期測定部110と、記憶部111と、度数分布作成部112と、代表値算出部113と、個数導出部114bと、物体判定部115bとから構成される。
周期測定部110、記憶部111、度数分布作成部112および代表値算出部113の動作は、第1の実施の形態と同じである。
【0083】
物体検知装置11の個数導出部114bは、記憶部111を参照し、度数分布作成部112が作成した度数分布から、計数期間中において周期Tが次式を満たすMHPの度数の総和Nwを求める。記憶部111は、度数Nwを記憶する。
1.5T0<T ・・・(10)
また、個数導出部114bは、計数期間中の任意の検知期間dにおいて周期Tが式(10)を満たすMHPの個数Nを求める。
【0084】
図14にMHPの周期の度数分布の1例を示す。図14において、Twは中央値T0の1.5倍の階級値である。なお、図14では記載を簡略化するため、中央値T0とTwとの間の度数分布を省略している。
【0085】
物体判定部115bは、現在より1三角波周期WT前の計数期間における度数Nwに対する現在の計数期間中の検知期間dにおける個数Nの割合N/Nwが所定の閾値以上の場合、半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在すると判定し、物体12を検知したことを示す物体検知信号を出力する。物体検知装置11は、以上のような物体検知処理を計数期間毎および検知期間毎に行う。
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0086】
なお、第1の実施の形態と同様に、物体判定部115bが判定に用いる閾値は、半導体レーザ1の放射方向に物体12が存在しない初期状態において求めた割合N/Nwから予め定められた値である。
【0087】
[第5の実施の形態]
第1〜第4の実施の形態では、MHPの周期の代表値として中央値を用いたが、周期の代表値として最頻値を用いてもよい。具体的には、物体検知装置11,11aの代表値算出部113が、度数分布作成部112が作成した度数分布から、MHPの周期の最頻値を算出すればよい。個数導出部114,114a,114bは、中央値T0の代わりに最頻値を用いて第1〜第4の実施の形態と同じ処理を行えばよい。
また、MHPの周期の代表値として平均値を用いてもよい。この場合は、代表値算出部113がMHPの周期の平均値を算出すればよい。
【0088】
なお、第1〜第5の実施の形態における計数装置7と演算装置8と物体検知装置11,11aとは、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このようなコンピュータを動作させるためのプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、メモリカードなどの記録媒体に記録された状態で提供される。CPUは、読み込んだプログラムを記憶装置に書き込み、このプログラムに従って第1〜第5の実施の形態で説明した処理を実行する。
【0089】
また、第1〜第5の実施の形態では、物理量センサの1例として距離・速度計を例に挙げて説明しているが、これに限るものではなく、距離計でもよいし、速度計でもよいし、その他の物理量を計測するセンサであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、半導体レーザから放射したレーザ光と物体からの戻り光との自己結合効果によって生じる干渉の情報から、物体の物理量を計測する技術に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る距離・速度計の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る電流−電圧変換増幅器の出力電圧波形及びフィルタ回路の出力電圧波形を模式的に示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る計数装置と物体検知装置の構成の1例を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る計数装置と物体検知装置の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における計数期間と検知期間との関係を説明するための図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る物体検知装置による物体検知の原理を説明するための図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る演算装置の構成の1例を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る演算装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る距離・速度計の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る半導体レーザの入出射部の要部概略構成を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る物体検知装置の構成の1例を示すブロック図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る物体検知装置による物体検知の原理を説明するための図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係る物体検知装置の構成の1例を示すブロック図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態におけるモードホップパルスの周期の度数分布の1例を示す図である。
【図15】従来のレーザ計測器における半導体レーザの複合共振器モデルを示す図である。
【図16】半導体レーザの発振波長と内蔵フォトダイオードの出力波形との関係を示す図である。
【図17】従来の距離・速度計の構成を示すブロック図である。
【図18】図17の距離・速度計における半導体レーザの発振波長の時間変化の1例を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
1…半導体レーザ、2…フォトダイオード、3…レンズ、4…レーザドライバ、5…電流−電圧変換増幅器、6…フィルタ回路、7…計数装置、8…演算装置、9…表示装置、10…反射壁面、11,11a…物体検知装置、12…物体、70…判定部、71…論理積演算部、72…カウンタ、80…距離・速度算出部、81…履歴変位算出部、82…記憶部、83…状態判定部、84…距離・速度確定部、110…周期測定部、111…記憶部、112…度数分布作成部、113…代表値算出部、114,114a,114b…個数導出部、115,115b…物体判定部、130…密閉ケース、131…透明カバー、132…反射防止膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調されたレーザ光を放射する半導体レーザと、
前記半導体レーザの内部又はその近傍に配置され、前記半導体レーザから放射されたレーザ光を受光して電気信号に変換する受光器と、
前記受光器の出力信号に含まれる、前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形の周期を検出し、静止している基準面による干渉波形の周期と異なる周期の干渉波形が所定の条件を満たすときに、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定する物体検知手段と、
前記受光器の出力信号に含まれる干渉の情報から前記物体の物理量を計測する計測手段とを備えることを特徴とする物理量センサ。
【請求項2】
請求項1記載の物理量センサにおいて、
前記基準面は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面であり、
前記物体検知手段は、
前記干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手段と、
この周期測定手段の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する度数分布作成手段と、
前記度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値T0を算出する代表値算出手段と、
前記レーザ光の1周期前の計数期間において算出された前記代表値T0に対して、現在の計数期間中の検知期間において周期がこの代表値T0の所定数倍よりも長い干渉波形の個数Nを求める個数導出手段と、
前記検知期間中に周期が測定された干渉波形の全個数Nallに対する前記個数Nの割合N/Nallが所定の閾値以上のときに、前記レーザ光の放射方向に前記物体が存在すると判定する物体判定手段とからなることを特徴とする物理量センサ。
【請求項3】
請求項2記載の物理量センサにおいて、
前記所定数は、2であることを特徴とする物理量センサ。
【請求項4】
請求項1記載の物理量センサにおいて、
前記基準面は、前記半導体レーザを保護する透明カバーの内面と外面のうち無反射防止処理が施されていない何れか1つの面であり、
前記物体検知手段は、
前記干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手段と、
この周期測定手段の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する度数分布作成手段と、
前記度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値T0を算出する代表値算出手段と、
前記レーザ光の1周期前の計数期間において算出された前記代表値T0に対して、現在の計数期間中の検知期間において周期がこの代表値T0の所定数倍よりも短い干渉波形の個数Nを求める個数導出手段と、
前記検知期間中に周期が測定された干渉波形の全個数Nallに対する前記個数Nの割合N/Nallが所定の閾値以上のときに、前記レーザ光の放射方向に前記物体が存在すると判定する物体判定手段とからなることを特徴とする物理量センサ。
【請求項5】
請求項4記載の物理量センサにおいて、
前記所定数は、0.5であることを特徴とする物理量センサ。
【請求項6】
請求項1記載の物理量センサにおいて、
前記基準面は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面であり、
前記物体検知手段は、
前記干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手段と、
この周期測定手段の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する度数分布作成手段と、
前記度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値T0を算出する代表値算出手段と、
前記度数分布から周期が前記代表値T0の所定数倍よりも長い度数の総和Nwを求めると共に、前記計数期間中の検知期間において周期が前記代表値T0の所定数倍よりも長い干渉波形の個数Nを求める個数導出手段と、
前記レーザ光の1周期前の計数期間における度数Nwに対する現在の計数期間中の検知期間における個数Nの割合N/Nwが所定の閾値以上のときに、前記レーザ光の放射方向に前記物体が存在すると判定する物体判定手段とからなることを特徴とする物理量センサ。
【請求項7】
請求項6記載の物理量センサにおいて、
前記所定数は、1.5であることを特徴とする物理量センサ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の物理量センサにおいて、
さらに、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させるレーザドライバを備え、
前記計測手段は、
前記受光器の出力信号に含まれる、前記レーザ光と前記戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える計数手段と、
この計数手段によって干渉波形の数を数える期間における最小発振波長と最大発振波長と前記計数手段の計数結果とから前記物体との距離及び前記物体の速度の少なくとも一方を算出する演算手段とからなることを特徴とする物理量センサ。
【請求項9】
変調されたレーザ光を半導体レーザから放射させる発振手順と、
前記半導体レーザの内部又はその近傍に配置された受光器の出力信号に含まれる、前記半導体レーザから放射されたレーザ光とその戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形の周期を検出し、静止している基準面による干渉波形の周期と異なる周期の干渉波形が所定の条件を満たすときに、前記レーザ光の放射方向に物体が存在すると判定する物体検知手順と、
前記受光器の出力信号に含まれる干渉の情報から前記物体の物理量を計測する計測手順とを備えることを特徴とする物理量計測方法。
【請求項10】
請求項9記載の物理量計測方法において、
前記基準面は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面であり、
前記物体検知手順は、
前記干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手順と、
この周期測定手順の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する度数分布作成手順と、
前記度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値T0を算出する代表値算出手順と、
前記レーザ光の1周期前の計数期間において算出された前記代表値T0に対して、現在の計数期間中の検知期間において周期がこの代表値T0の所定数倍よりも長い干渉波形の個数Nを求める個数導出手順と、
前記検知期間中に周期が測定された干渉波形の全個数Nallに対する前記個数Nの割合N/Nallが所定の閾値以上のときに、前記レーザ光の放射方向に前記物体が存在すると判定する物体判定手順とからなることを特徴とする物理量計測方法。
【請求項11】
請求項10記載の物理量計測方法において、
前記所定数は、2であることを特徴とする物理量計測方法。
【請求項12】
請求項9記載の物理量計測方法において、
前記基準面は、前記半導体レーザを保護する透明カバーの内面と外面のうち無反射防止処理が施されていない面であり、
前記物体検知手順は、
前記干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手順と、
この周期測定手順の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する度数分布作成手順と、
前記度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値T0を算出する代表値算出手順と、
前記レーザ光の1周期前の計数期間において算出された前記代表値T0に対して、現在の計数期間中の検知期間において周期がこの代表値T0の所定数倍よりも短い干渉波形の個数Nを求める個数導出手順と、
前記検知期間中に周期が測定された干渉波形の全個数Nallに対する前記個数Nの割合N/Nallが所定の閾値以上のときに、前記レーザ光の放射方向に前記物体が存在すると判定する物体判定手順とからなることを特徴とする物理量計測方法。
【請求項13】
請求項12記載の物理量計測方法において、
前記所定数は、0.5であることを特徴とする物理量計測方法。
【請求項14】
請求項9記載の物理量計測方法において、
前記基準面は、前記物体が侵入する予定の空間を挟んで前記半導体レーザと向かい合う反射壁面であり、
前記物体検知手順は、
前記干渉波形の数を数える計数期間中の前記干渉波形の周期を干渉波形が入力される度に測定する周期測定手順と、
この周期測定手順の測定結果から前記計数期間中の干渉波形の周期の度数分布を作成する度数分布作成手順と、
前記度数分布から前記干渉波形の周期の分布の代表値T0を算出する代表値算出手順と、
前記度数分布から周期が前記代表値T0の所定数倍よりも長い度数の総和Nwを求めると共に、前記計数期間中の検知期間において周期が前記代表値T0の所定数倍よりも長い干渉波形の個数Nを求める個数導出手順と、
前記レーザ光の1周期前の計数期間における度数Nwに対する現在の計数期間中の検知期間における個数Nの割合N/Nwが所定の閾値以上のときに、前記レーザ光の放射方向に前記物体が存在すると判定する物体判定手順とからなることを特徴とする物理量計測方法。
【請求項15】
請求項14記載の物理量計測方法において、
前記所定数は、1.5であることを特徴とする物理量計測方法。
【請求項16】
請求項9乃至15のいずれか1項に記載の物理量計測方法において、
前記発振手順は、発振波長が連続的に単調増加する期間を少なくとも含む第1の発振期間と発振波長が連続的に単調減少する期間を少なくとも含む第2の発振期間とが交互に存在するように前記半導体レーザを動作させる手順であり、
前記計測手順は、
前記受光器の出力信号に含まれる、前記レーザ光と前記戻り光との自己結合効果によって生じる干渉波形の数を、前記第1の発振期間と前記第2の発振期間の各々について数える計数手順と、
この計数手順によって干渉波形の数を数える期間における最小発振波長と最大発振波長と前記計数手順の計数結果とから前記物体との距離及び前記物体の速度の少なくとも一方を算出する演算手順とからなることを特徴とする物理量計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−92461(P2009−92461A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262012(P2007−262012)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】