説明

現像装置、プロセスユニット、画像形成装置

【課題】使用前に、現像装置からトナーが漏出することを防止する状態になったマグネットローラを、簡潔な構成で、使用時に所定の画像形成可能な状態に固定する。
【解決手段】ハウジング21の開口部21cを介して感光体ドラム11に対向する現像スリーブ25b内に、複数の磁極が周方向に沿って設けられたマグネットローラ25aが設けられている。マグネットローラ25aは、位置決め部材30によって、最大の磁力を有する第1N極N1に隣接する第3S極S3が、開口部21cにおける現像スリーブ25bの回転方向下流側の側縁部に対向した第1回転位置に保持されている。この状態で現像スリーブ25bが回転されると、マグネットローラ25aは、現像スリーブ25bの回転に追従して回転し、第1N極N1が感光体ドラム11に最も近接した第2回転位置とされて、位置決め部材30によって位置決めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分現像剤を用いて感光体上の静電潜像を現像する現像装置、当該現像装置および感光体を有するプロセスユニット、および、当該プロセスユニットを有する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーによってフルカラー画像を電子写真方式によって形成するプリンタ、複写機等の画像形成装置には、Y、M、C、Kの各色のトナーによるトナー画像をそれぞれ形成するプロセスユニットが設けられている。各プロセスユニットによって形成される各色のトナー画像は、通常、中間転写ベルト上に転写された後に、記録シートに転写されて定着される。
【0003】
各プロセスユニットには、外周面が周回移動する感光体ドラム、感光体ドラムに静電潜像を形成するための帯電器、感光体ドラム上に形成された静電潜像を所定の色のトナーにて現像する現像装置等が設けられている。現像装置では、Y、M、C、Kのそれぞれの色のトナーのみを用いる場合に限らず、トナーと磁性のキャリアとを含む2成分現像剤によって静電潜像を現像する場合がある。
【0004】
2成分現像剤を用いる現像装置の場合、トナーと磁性のキャリアとが収容されたハウジングと、ハウジングに設けられた開口部を介して感光体ドラムに対向配置された円筒形状の現像スリーブと、現像スリーブの内部に同軸状態で固定的に設けられた円柱形状のマグネットローラとを有する現像ローラが用いられる。マグネットローラには、周方向に沿って複数の磁極が設けられている。
【0005】
感光体ドラム上の静電潜像を現像する場合には現像スリーブが回転される。これにより、現像スリーブの外周面には、マグネットローラに設けられた磁極の磁力によってキャリアが磁気ブラシを形成し、磁気ブラシによってハウジング内のトナーが搬送される。現像スリーブの外周面を搬送されるトナーは、感光体ドラムと最も近接した位置において、感光体ドラム上の静電潜像に付着する。これにより、感光体ドラム上の静電潜像が現像される。
【0006】
このような2成分現像剤を用いる現像装置が各プロセスユニットに設けられた画像形成装置では、装置全体を小型化および高速化することが要望されており、このために、各プロセスユニットの小型化が進んでいる。しかし、各プロセスユニットを小型化して高速化すると、各部材の劣化、消耗等により、プロセスユニットの寿命が短くなり、画像形成装置全体の寿命に対応しなくなる。
【0007】
このために、それぞれのプロセスユニットを交換可能に構成して、プロセスユニットが寿命に達すると、新たなプロセスユニットに交換することが行われている。交換可能に構成されたプロセスユニットでは、現像装置のハウジング内に現像剤が収容された状態で輸送されるようになっており、従って、2成分現像剤を用いる現像装置が設けられたプロセスユニットでも、現像装置のハウジング内に2成分現像剤が収容された状態で輸送されるようになって
各現像装置では、ハウジングの内部の現像スリーブの一部が、ハウジングに設けられた開口部内に嵌合されて外部に露出した状態になっている。このために、プロセスユニットの輸送における振動等によって、ハウジング内のトナーが、現像スリーブの外周面と開口部の側縁との隙間から漏出するおそれがある。これにより、現像装置内のトナーが浪費され、経済性が損なわれることになる。
【0008】
また、プロセスユニットが画像形成装置に装着された状態で、画像形成装置が輸送される場合にも、輸送時の振動等によって、現像装置のハウジング内に収容されたトナーが、現像スリーブの外周面と開口部の側縁との隙間から漏出するおそれがある。この場合には、現像装置から漏出するトナーによって画像形成装置の内部、記録シート等が汚染されることになる。
【0009】
特許文献1には、つまみの操作によってマグネットローラが回転される構成になった現像装置が開示されている。この現像装置では、つまみの操作によって、マグネットローラの位置を、輸送時等には、画像形成装置に装着されて画像形成を行う場合における位置から180°回転させた位置として、ハウジングの開口部からトナーが漏出することを防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平07−20715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に開示された現像装置では、輸送時等には、画像形成時における感光体ドラムに対向状態とされる磁極をハウジングの内部に向うように位置されており、現像装置を画像形成装置に装着した後に、オペレータあるいはユーザがつまみの操作を行うことにより、マグネットローラの磁極の位置が変更される。しかし、つまみの操作が実行されない場合には、マグネットローラの磁極の位置が変更されず、マグネットローラの磁極が画像形成時における適切な位置にならず、感光体ドラムの静電潜像を適切に現像できないおそれがある。
【0012】
また、マグネットローラの位置を、輸送時等において、画像形成装置に装着されて画像形成を行う場合における位置から180°回転させた位置では、ハウジングの内部では、キャリアによってトナーが引き付けられるが、ハウジングの開口部付近においては、トナーはキャリアによって引き付けられないために、輸送時において、外部に漏出するおそれがある。
【0013】
このような問題を解決するために、例えば、現像装置が画像形成装置に装着された場合に、つまみが自動的に操作される装置等を設ければよい。しかし、この場合には、そのような装置を構成するための複雑な機構が必要になり、経済性が損なわれるおそれがある。また、そのような装置を設けるためのスペースが必要になるために、画像形成装置が大型化するおそれもある。
【0014】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、輸送時等においては、トナーが漏出することを防止することが可能であり、しかも、簡潔な構成によって、画像形成を行うときに、マグネットローラの磁極を適切に現像できる所定の状態に確実にすることができる現像装置を提供することにある。本発明の他の目的は、そのような現像装置を有するプロセスユニットおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係る現像装置は、感光体の外周面に形成された静電潜像を現像する現像装置であって、内部に2成分現像剤を収容するとともに、前記感光体に対向する開口部が設けられたハウジングと、前記開口部を介して前記感光体に対向するように前記ハウジング内に回転可能に保持された現像スリーブと、周方向に沿って磁力の大きさが異なる複数の磁極が形成され、前記現像スリーブ内に挿入されたマグネットローラと、前記マグネットローラの複数の磁極のうち最大の磁力を有する第1の磁極または当該第1の磁極以外の所定以上の強さの磁力を有する第2の磁極が、前記開口部と前記現像スリーブ周面との隙間のうち前記静電潜像の現像時に前記現像スリーブが回転される方向の下流側の隙間の位置に存する第1の回転位置にあるとき、前記現像スリーブの回転に追従して当該マグネットローラが回転することを許容し、当該回転に連れて前記第1の磁極が前記感光体に最も近接する第2の回転位置になったときに、当該マグネットローラの回転を規制する位置決め手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係るプロセスユニットは、前記現像装置と、当該現像装置のハウジングに形成された開口部を介して現像スリーブに対向して配置された感光体と、を有することを特徴とする。
さらに、本発明に係る画像形成装置は、前記プロセスユニットが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の現像装置は、第1の回転位置で、マグネットローラにおける第1の磁極または第2の磁極が、ハウジングの開口部における現像スリーブの回転方向下流側の側縁部に対向しているために、2成分現像剤のキャリアが、第1の磁極または第2の磁極に吸引される。これにより、ハウジングにおける開口部の側縁部と現像スリーブとの隙間にキャリアが留められた状態になり、ハウジング内のトナーが開口部を通って外部に漏出することを防止することができる。
【0018】
さらには、現像装置を画像形成装置に装着された状態で現像スリーブが回転駆動されると、第1の回転位置にあるマグネットローラは、現像スリーブの回転に追従して回転される。これにより、第1の磁極が感光体ドラムに最も近接する第2の回転位置にまで回転されて位置決めされるために、その後は、固定されたマグネットローラに対して現像スリーブが回転することにより、現像動作を適切に行うことができる。
【0019】
このように、マグネットローラは、現像装置を画像形成装置に装着されると、現像スリーブの回転に追従して回転されるために、マグネットローラを回転させるための特別な機構を必要としない。従って、経済性が損なわれるおそれがなく、また、画像形成装置が大型化するおそれがない。
好ましくは、前記位置決め手段は、前記現像スリーブが回転されるまで前記マグネットローラを前記第1の回転位置に維持することを特徴とする。
【0020】
好ましくは、前記位置決め手段は、前記マグネットローラと一体的に取り付けられた位置決めプレートと、当該位置決めプレートに設けられた位置決め穴または位置決め突部に係合して前記マグネットローラを前記第2の回転位置に位置決めするように、前記ハウジングに設けられた位置決め突部または位置決め穴と、前記マグネットローラが、前記第1の回転位置にある状態で、前記位置決め突部が相手方の部材の前記位置決め穴から外れた位置の表面に圧接されるように付勢する付勢手段と、を備えることを特徴とする。
【0021】
好ましくは、前記位置決めプレートはバネ性を有しており、当該位置決めプレート自身が前記付勢手段を兼ねていることを特徴とする。
好ましくは、前記位置決め突起は、前記位置決めプレートまたは前記ハウジングに、相手方の部材に向ってスライド可能に設けられた位置決めピンであり、
前記付勢手段は、前記位置決めピンを付勢するバネであることを特徴とする。
【0022】
好ましくは、前記開口部における前記現像スリーブの回転方向上流側には、前記現像スリーブの回転によって搬送される2成分現像剤の量を規制する規制部材が設けられていることを特徴とする。
好ましくは、前記第2の磁極が、前記第1の磁極に対して、前記静電潜像の現像時における前記現像スリーブが回転方向の下流側に隣接しており、前記マグネットローラは、前記第2の磁極が前記第1の回転位置にある状態で、前記静電潜像の現像時における前記現像スリーブの回転方向と同方向に回転されることによって、前記第1の回転位置から第2の回転位置にまで回転されることを特徴とする。
【0023】
好ましくは、前記マグネットローラは、前記第1の磁極が前記第1の回転位置にある状態で、前記静電潜像の現像時における前記現像スリーブの回転方向とは反対方向に回転されることによって、前記第1の回転位置から第2の回転位置にまで回転されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態に係る現像装置が設けられた画像形成装置であるタンデム型カラーデジタルプリンタの構成を示す模式図である。
【図2】図1に示すプリンタのプロセスユニットに設けられた現像装置の斜視図である。
【図3】その現像装置の縦断面図である。
【図4】その現像装置の横断面図である。
【図5】その現像装置に設けられた現像ローラの構成を説明するための平断面図である。
【図6】その現像ローラにおける感光体ドラムとの対向部分を拡大して示す断面図である。
【図7】(a)は、マグネットローラに設けられた各磁極の磁力線パターンを説明するための現像装置の横断面図、(b)は、現像装置における位置決め部材が取り付けられた部分の側面図である。
【図8】その位置決め部材を構成する位置決めプレートの平面図ある。
【図9】プロセスユニットの工場出荷時における位置決め部材の状態を説明するための現像ローラの平断面図である。
【図10】(a)は、その場合の現像装置における位置決め部材が取り付けられた部分の側面図、(b)は、その場合のマグネットローラの磁力線パターンを説明するための現像装置の横断面図である。
【図11】図10(b)の主要部の拡大図である。
【図12】現像装置における他の例の位置決め部材が取り付けられた部分の側面図である。
【図13】(a)は、現像装置の他の例を示す横断面図、(b)は、その場合の位置決め部材が取り付けられた部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<画像形成装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る現像装置が設けられた画像形成装置であるタンデム型カラーデジタルプリンタ(以下、単に「プリンタ」という)の構成を示す模式図である。このプリンタは、プリント(印刷)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいて、周知の電子写真方式により、フルカラーあるいはモノクロの画像を記録用紙、OHPシート等の記録シートに形成する。
【0026】
プリンタは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーによるトナー画像を記録シート上に形成する画像形成部Aと、画像形成部Aの下方に配置されて、画像形成部Aに供給される記録シートが内部に収容された複数の給紙カセットを有する給紙部Bとを備えている。
画像形成部Aは、プリンタの概略中央部にて一対のローラ42および43に水平状態に巻き掛けられて周回移動可能になった中間転写ベルト41を備えている。中間転写ベルト41は、図示しないモーターによって矢印Xで示す方向に周回移動するようになっている。
【0027】
中間転写ベルト41の下方には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナーによって中間転写ベルト41上にトナー画像を順次形成するためのプロセスユニット10Y、10M、10C、10Kが、中間転写ベルト41の周回移動方向の上流側からその順番で配置されている。
各プロセスユニット10Y、10M、10C、10Kのそれぞれは、画像形成部Aに対して着脱可能に構成されており、プリンタにおける正面側の側面から内奥側(背面側)の側面に向って画像形成部A内に挿入されることにより画像形成部Aに装着される。各プロセスユニット10Y、10M、10C、10Kのそれぞれは、寿命に達すると新たなプロセスユニット10Y、10M、10C、10Kに交換される。
【0028】
各プロセスユニット10Y、10M、10Cの3つは、同様の構成になっており、K色のトナーによってトナー画像を形成するプロセスユニット10Kの大きさが他のプロセスユニット10Y、10M、10Cよりも大きくなっているが、全てのプロセスユニット10Y、10M、10C、10Kは同様の機能を有しているために、以下においては、主として、プロセスユニット10Yの構成について説明する。
【0029】
プロセスユニット10Yは、中間転写ベルト41に対向して配置された感光体ドラム11を有している。感光体ドラム11は、軸方向が、中間転写ベルト41の幅方向に沿った状態になっており、プリンタにおける正面側の端部から内奥側の端部にわたって直線状に延びている。各感光体ドラム11は、矢印Eで示す方向に回転されるようになっている。
各感光体ドラム11の下方には、感光体ドラム11の表面にレーザ光を照射して静電潜像を形成する露光装置13Yが設けられている。露光装置13Yは、画像形成部Aに取り付けられている。なお、他のプロセスユニット10M、10C、10Kにおける感光体ドラムを露光する露光装置13M、13C、13Kも、それぞれ画像形成部Aに取り付けられている。
【0030】
プロセスユニット10Yには、露光装置13Yからのレーザ光が照射される感光体ドラム11の表面位置に対して回転方向の上流側には、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させる帯電装置12が、感光体ドラム11に近接して配置されており、また、回転方向の下流側には、現像装置20が配置されている。回転される感光体ドラム11の表面は、帯電装置12にて帯電された後に、露光装置13Yから照射されるレーザ光によって静電潜像が形成され、さらにその後に、感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像が、現像装置20にてトナー現像される。
【0031】
なお、プロセスユニット10Kの現像装置20は、他のプロセスユニット10Y、10M、10Cの構成とは異なっているが、機能については、他のプロセスユニット10Y、10M、10Cの現像装置20と同様になっている。
現像装置20にて現像された感光体ドラム11上のトナー画像は、感光体ドラム11に対して中間転写ベルト41を介して対向配置された1次転写ローラ15Yによって中間転写ベルト41上に転写される。1次転写ローラ15Yは、画像形成部Aに取り付けられている。
【0032】
なお、他のプロセスユニット10M、10C、10Kにおける感光体ドラム上に形成された画像を転写する1次転写ローラ15M、15C、15Kも、それぞれ画像形成部Aに取り付けられており、各プロセスユニット10Y、10M、10C、10Kのそれぞれの感光体ドラム11上に形成されたトナー画像は、各1次転写ローラ15Y、15M、15C、15Kによって、中間転写ベルト41上における同一の領域上にそれぞれ転写される。
【0033】
プロセスユニット10Yには、トナー画像が中間転写ベルト41上に転写された感光体ドラム11の表面を清掃する清掃装置16、清掃装置16によって清掃された感光体ドラム11の表面を除電する除電装置17が設けられている。なお、他のプロセスユニット10M、10C、10Kにも、感光体ドラム11の清掃装置16および除電装置17がそれぞれ設けられている。
【0034】
画像形成部Aには、中間転写ベルト41の周回移動方向の最も下流側に位置するプロセスユニット10Kに近接して配置されたローラ42には、中間転写ベルト41を介して2次転写ローラ44が対向配置されている。2次転写ローラ44は中間転写ベルト41に圧接されており、その圧接部分に転写ニップが形成されている。
転写ニップには、給紙部Bに設けられた給紙カセット内の記録シートが搬送される。記録シートは、タイミングローラ対45によって、中間転写ベルト41上に形成されたトナー画像が転写ニップに搬送されるタイミングに同期して搬送される。中間転写ベルト41上に形成されたトナー画像は、転写ニップを通過する記録シートに圧接されると、2次転写ローラ44によって形成される電界の静電力によって記録シート上に一括して転写される。
【0035】
なお、中間転写ベルト41上のトナー画像を形成するトナーは、2次転写ローラ44の静電力によっては完全に記録シート上に転写されず、一部が中間転写ベルト41上に残留する場合があるが、この残留トナーは、プロセスユニット10Yに近接した配置されたローラ43に対して中間転写ベルト41を介して対向配置された残留トナー除去装置46によって、電気的および機械的に除去されるようになっている。
【0036】
転写ニップを通過した記録シートは、画像形成部Aの上部に設けられた定着部50に搬送される。定着部50には、相互に圧接された加熱ローラ51と加圧ローラ52とを備えており、加熱ローラ51と加圧ローラ52とが相互に圧接されることによって定着ニップが形成されている。加熱ローラ51の軸心部にはヒータランプ(図示せず)が配置されており、ヒータランプによって加熱ローラ51が加熱されるようになっている。
【0037】
転写ニップを通過して定着部50に搬送される記録シートのトナー画像は、記録シートが定着ニップを通過する間に、加熱および加圧されて記録シート上に定着される。定着部50においてトナー画像が定着された記録シートは、トナー画像が形成された面を下方に向けた状態で、プリンタの上部に設けられた排紙トレイ48上に排出される。
各プロセスユニット10Y、10M、10C、10Kのそれぞれに設けられた現像装置20は、2成分現像剤(キャリアとトナー)によって、感光体ドラム10Y、10M、10C、10K上の静電潜像を現像するようになっており、中間転写ベルト41の上方に設けられたトナーホッパー47Y、47M、47C、47KからY、M、C、Kの各色のトナーが補給される。プロセスユニット10K以外の3つのプロセスユニット10Y、10M、10Cのそれぞれに設けられた現像装置20は、それぞれ同様の構成になっている。
【0038】
<現像装置の構成>
図2は、3つのプロセスユニット10Y、10M、10Cのそれぞれに設けられた現像装置20の斜視図、図3および図4は、それぞれ、現像装置20の縦断面図および横断面図である。なお、図3の縦断面図は、図2の斜視図に対して左右方向を反転させた状態で示されている。
【0039】
現像装置20は、感光体ドラム11のそれぞれの軸方向に沿って直線状に延びるハウジング21を有している。ハウジング21の一方の端部における上面にはトナー補給口21aが設けられている。
各プロセスユニット10Y、10M、10Cが画像形成部Aに装着される際には、トナー補給口21aが設けられた端部とは反対側の端部から、画像形成部A内に挿入されるようになっている。
【0040】
各プロセスユニット10Y、10M、10Cが画像形成部Aに装着されると、ハウジング21は、プリンタの正面側の端部から内奥側の端部にわたって配置され、画像形成部Aに設けられた各トナーホッパー内のトナーが、トナー補給口21aを介してハウジング21内に補給される。
図3および図4に示すように、ハウジング21内の下部には、ハウジング21の長手方向に沿って延びる第1トナー搬送スクリュー22が設けられており、また、ハウジング21内の上部には、第1トナー搬送スクリュー22とは平行になった第2トナー搬送スクリュー23が設けられている。両者の間には隔壁21bが設けられている。第1トナー搬送スクリュー22および第2トナー搬送スクリュー23は、それぞれ、ハウジング21におけるトナー補給口21aが設けられた端部から反対側の端部にまで達している。
【0041】
第1トナー搬送スクリュー22および第2トナー搬送スクリュー23の軸部は、トナー補給口21aが設けられた端部とは反対側の端部において、ハウジング21の外部に突出しており、突出した端部にギア24および29がそれぞれ設けられている。ギア24および29は相互に噛み合っており、第1トナー搬送スクリュー22と第2トナー搬送スクリュー23との間で駆動力が伝達されるようになっており、駆動時には、第1トナー搬送スクリュー22と第2トナー搬送スクリュー23は反対方向に回転される。また、プロセスユニットが画像形成部Aに装着されると、不図示のカップリング構造により、画像形成部Aを駆動するモーターとプロセスユニットの駆動機構が接続される。これにより、画像形成部Aを駆動するモーターの動力が第1トナー搬送スクリュー22と第2トナー搬送スクリュー23に伝達される。
【0042】
図4に示すように、ハウジング21内の上部には、感光体ドラム11の表面に対向して配置された現像ローラ25が、第2トナー搬送スクリュー23に隣接して設けられている。現像ローラ25は、感光体ドラム11の軸方向長さと同程度の長さを有しており、第2トナー搬送スクリュー23とは平行な状態に配置されている。なお、図2に示すように、現像ローラ25は、第1トナー搬送スクリュー22および第2トナー搬送スクリュー23よりも短く、トナー補給口21aに近接した端部よりも長手方向の中央部寄りの位置に一方の端部が位置している。
【0043】
図3に示すように、トナー補給口21aを通ってハウジング21の内部に補給されたトナーは、隔壁21bにおける一方の端部に設けられた第1現像剤通過穴21mを通って、図3に矢印D1で示すように、ハウジング21の下部にまで落下し、第1トナー搬送スクリュー22の回転によって、図3に矢印D2で示すように、トナー補給口21aとは反対側の端部に向って搬送される。第1トナー搬送スクリュー22によって搬送されるトナーは、ハウジング21の内部に収容された磁性のキャリアと撹拌される。
【0044】
トナー補給口21aとは反対側の端部に搬送されたトナーは、キャリアとともに、隔壁21bに設けられた第2現像剤通過穴21nを通って、図3に矢印D3で示すように、ハウジング21内の第2トナー搬送スクリュー23が設けられた上部へと搬送される。
第2トナー搬送スクリュー23は、第1トナー搬送スクリュー22とは反対方向に回転されていることによって、図3に矢印D4で示すように、第1トナー搬送スクリュー22とは反対方向に、現像ローラ25の軸方向に沿ってトナーおよびキャリアを搬送する。そして、第2トナー搬送スクリュー23によって搬送されるトナーおよびキャリアが、その搬送途中において、現像ローラ25によって感光体ドラム11へ搬送される。
【0045】
図5は、現像ローラ25の構成を説明するための平断面図である。図4および図5に示すように、現像ローラ25は、感光体ドラム11と平行に配置された円柱形状のマグネットローラ25aと、マグネットローラ25aの外側に嵌合された円筒形状の現像スリーブ25bとを有している。現像スリーブ25bはアルミニウムによって構成されている。
現像スリーブ25bにおけるトナー補給口21aとは反対側に位置する端面には、現像スリーブ25bの軸心に沿った状態で現像スリーブ25bの外側に延出するスリーブ駆動軸25cが、連結部材25dによって現像スリーブ25bと一体的に連結されている。スリーブ駆動軸25cは、ハウジング21の一方の端面21eを貫通しており、その端面21eに回転可能に支持されている。
【0046】
スリーブ駆動軸25cは、プロセスユニットが画像形成部Aに対して装着された場合に、不図示のカップリング構造を介して画像形成部Aを駆動するモーターによる回転駆動力が伝達されるようになっている。感光体ドラム11上の静電潜像を現像する場合には、スリーブ駆動軸25cが回転されると、現像スリーブ25bは、スリーブ駆動軸25cと一体となって、図4に矢印Yで示す方向に回転駆動される。
【0047】
図6は、現像ローラ25における感光体ドラム11との対向部分を拡大して示す断面図である。図6に示すように、ハウジング21には、現像スリーブ25bの表面が感光体ドラム11の表面に対向するように、感光体ドラム11の軸方向に沿って開口部21cが設けられており、開口部21cを介して現像スリーブ25bの表面と感光体ドラム11の表面とが相互に近接した状態になっている。
【0048】
開口部21cにおける現像スリーブ25bの回転方向の上流側に位置する上側縁部21xには、現像スリーブ25bに向って突出するブレード25hが設けられている。ブレード25hは、現像スリーブ25bの回転に伴って現像スリーブ25bの外周面上を搬送される2成分現像剤の量を規制する規制部材になっている。ブレード25hの先端部は、現像スリーブ25bの表面に対して0.3mm程度の隙間が形成されるように配置されている。
【0049】
開口部21cにおける現像スリーブ25bの回転方向の下流側に位置する下側縁部21yは、現像スリーブ25bの表面に対して1.0〜1.5mm程度の隙間が形成されている。この下側縁部21yに連続するハウジング21の下側の側壁部の内面は、現像スリーブ25bの外周面とは1.0〜1.5mm程度の隙間を維持するように、現像スリーブ25bの外周面に沿った円弧状に形成されている。
【0050】
図4に示すように、現像スリーブ25b内に嵌合されたマグネットローラ25aには、周方向に沿って5つの磁極が設けられている。各磁極は、マグネットローラ25aを周方向に6分割した領域における1つの領域を除く5つの領域のそれぞれに配置されている。磁極が設けられていない領域の両側の領域には、第1S極S1および第2S極S2がそれぞれ設けられており、第1S極S1および第2S極S2のそれぞれに対して磁極が設けられていない領域とは反対側に隣接するそれぞれの領域に、第1N極N1および第2N極N2が設けられている。そして、それらの第1N極N1および第2N極N2の間の領域に第3S極S3が設けられている。
【0051】
図7(a)は、マグネットローラ25aに設けられた各磁極の磁力線パターンを説明するための現像装置20の横断面図である。図7(a)に示すように、マグネットローラ25aに設けられた全ての磁極において、第1N極N1の磁力が最大になっており、以下、第3S極S3、第1S極S1、第2N極N2、第2S極S2の順番で磁力が小さくなっている。最大の磁力を有する第1N極N1は、プロセスユニットが、画像形成部Aに装着されると、ハウジング21に設けられた開口部21cを介して、感光体ドラム11に最も近接した状態に位置決めされて固定されるように構成されている。
【0052】
図5に示すように、マグネットローラ25aにおけるスリーブ駆動軸25cとは反対側に位置する端面には、ローラ回転軸25fが一体的に取り付けられている。ローラ回転軸25fは、円柱状のマグネットローラ25aの軸心に沿った状態で、スリーブ駆動軸25cが取り付けられた現像スリーブ25bの端面とは反対側の端面を貫通しており、その端面に、軸受25gによって回転可能に保持されている。
【0053】
ローラ回転軸25fは、ハウジング21におけるスリーブ駆動軸25cが保持された端面21eとは反対側に位置する端面21fを貫通してハウジング21の外部に突出している。ローラ回転軸25fは、ハウジング21の端面21fに回転可能に支持されている。
ローラ回転軸25fにおけるハウジング21の外部に突出した部分は、断面「D」形状(図7(a)において破線で示している)に構成されており、その断面「D」形状の部分に位置決めプレート31が取り付けられている。また、ハウジング21の端面21fには、位置決めプレート31を位置決めする位置決めピン32が取り付けられている。
【0054】
位置決めプレート31および位置決めピン32は、マグネットローラ25aをハウジング21に対して所定の状態に位置決めする位置決め部材30を構成している。この位置決め部材30は、後述するように、プロセスユニットが画像形成部Aに装着された後においては、マグネットローラ25aをハウジング21に対して所定の第2の回転位置に固定し、プロセスユニットが画像形成部Aに装着される前においては、マグネットローラ25aを前記第2の回転位置とは異なる第1の回転位置で保持するようになっている。
【0055】
図7(b)は、現像装置20における位置決め部材30が取り付けられた部分の側面図である。なお、図7(b)は、プロセスユニットが画像形成部Aに装着された後にマグネットローラ25aが位置決め部材30にて位置決めされた状態を示しており、この場合には、図7(a)に示すように、マグネットローラ25aの最大の磁力を有する第1N極N1が、現像スリーブ25bおよびハウジング21の開口部21cを介して感光体ドラム11の表面に最も近接した第2の回転位置になっている。
【0056】
図8は、位置決めプレート31の平面図である。位置決めプレート31は、可撓性(バネ性)を有するSUS等の平板によって平行四辺形状に構成されており、中央部よりも上側寄りの位置に、ローラ回転軸25fが貫通する貫通穴31aが形成されている。この貫通穴31aは、上側に位置する直線状の側縁と、下方に向って円弧上に湾曲した下側の側縁とによって、ローラ回転軸25fの断面に対応した断面「D」形状に構成されている。位置決めプレート31は、断面「D」形状のローラ回転軸25fが貫通穴31a内に挿入されることによって、ローラ回転軸25fに対して回転しない状態に取り付けられる。
【0057】
位置決めプレート31には、貫通穴31aにおける円弧上に湾曲した下側の側縁から、それぞれが斜め下方に向って延びる一対の平行な溝部31bが形成されており、これら溝部31bの間に、板バネとして機能する長方形状の切片31cが形成されている。ローラ回転軸25fが貫通穴31a内に挿入されると、切片31cの先端部分は、ローラ回転軸25fの円弧状の表面に当接して挿入方向に撓む。これにより、切片31cはローラ回転軸25fの表面を押圧し、位置決めプレート31が、ローラ回転軸25fに対して軸方向に移動しない状態で一体的に取り付けられる。従って、ローラ回転軸25fが回転されると、位置決めプレート31がローラ回転軸25fと一体となって回転する。
【0058】
位置決めプレート31には、下側に位置する1つのコーナー部の近傍に位置決め穴31dが設けられている。ハウジング21の端面21fに取り付けられた位置決めピン32は、位置決めプレート31がローラ回転軸25fと一体となって、図7(a)に矢印Yで示す方向に回転されると、位置決め穴31dに挿入されるようになっている。位置決めプレート31は、位置決めピン32が位置決め穴31d内に挿入されることによって、ハウジング21の端面21fに対して位置決めされて固定される。
【0059】
位置決めピン32が位置決め穴31d内に挿入されると、位置決めプレート31と一体になったローラ回転軸25f、および、ローラ回転軸25fと一体となったマグネットローラ25aも、ハウジング21に対して位置決めされて固定された状態になり、図7(a)に示すように、マグネットローラ25aの第1N極N1が、現像スリーブ25bおよびハウジング21の開口部21cを介して感光体ドラム11の表面に近接した位置(第2の回転位置)で位置決め(固定)される。
【0060】
マグネットローラ25aは、このように、画像形成部Aにプロセスユニットが装着された後に第2の回転位置に位置決めされる。これに対して、プロセスユニットが画像形成部Aに装着される前である工場から出荷される場合、あるいは、プロセスユニットが画像形成部Aに装着されて工場から出荷される場合には、位置決めプレート31は、位置決めピン32を位置決め穴31dから外した状態で、図7(b)に矢印Z(現像時における現像スリーブ25bの回転方向とは反対方向)で示す方向に所定の角度(15°程度)だけ回転された第1の回転位置とされている。
【0061】
図9は、プロセスユニットの工場出荷時における位置決め部材30の状態を説明するための現像ローラ25の平断面図、図10(a)は、その場合の現像装置20における位置決め部材30が取り付けられた部分の側面図、図10(b)は、その場合のマグネットローラ25aの磁力線パターンを説明するための現像装置20の横断面図、図11は、その拡大図である。
【0062】
位置決めプレート31は、位置決めピン32が位置決め穴31dから外されて、ローラ回転軸25fを中心として、図10(a)に矢印Zで示す方向に回転操作される。この場合、図9に示すように、位置決めプレート31は、下側に位置する側縁部分が位置決めピン32の先端を押圧するように撓み、位置決めピン32の先端に圧接される。
このような状態で、位置決めプレート31は回転されて、図10(b)および図11に示すように、マグネットローラ25aの第3S極S3における磁力が最大になる位置が、ハウジング21の開口部21cの下側縁部21yに対向した第1の回転位置とされて、位置決めプレート31の回転操作が停止される。
【0063】
この場合、撓んだ状態の位置決めプレート31は、位置決めプレート31自体のバネ性によって位置決めピン32の先端を押圧しており、従って、位置決めプレート31は、位置決めピン32との間の摩擦力によって回転しない状態に保持される。従って、位置決めプレート31と一体になったマグネットローラ25aも、回転しない状態に維持されている。
【0064】
なお、この場合の位置決めピン32との摩擦力によって位置決めプレート31(従ってマグネットローラ25a)が回転しないように保持する力を、保持力P1とする。
このよう状態になると、ハウジング21内に収容された磁性のキャリアは、マグネットローラ25aにおけるハウジング21内に位置する各磁極の磁力によって現像スリーブ25bの表面に吸着される。
【0065】
この場合、図11に示すように、第3S極S3における磁力が最大になる位置が、開口部21cの下側の側縁部にほぼ対向しており、第3S極S3によって、ハウジング21における開口部21cとは反対側の内部に位置するキャリアが、現像スリーブ25bの外周面とハウジング21における下部内面との隙間内に留められる。
このような状態では、ハウジング21内のトナーは、前記隙間内に留められたキャリアによって、当該隙間内を流動することを規制され、ハウジング21内のトナーが開口部21cの下側縁部21yと現像スリーブ25bの外周面との隙間から外部に漏出することが防止される。
【0066】
なお、この場合は、マグネットローラ25aは、位置決めピン32と位置決めプレート31との圧接によって回転しない状態に保持されているが、ハウジング21内では、マグネットローラ25aの各磁極の磁力によって現像スリーブ25bを介して吸引されるキャリアによっても、マグネットローラ25aの回転が抑制されている。
プロセスユニットは、このように、位置決めプレート31によって現像装置20におけるマグネットローラ25aが所定の第1の回転位置に保持された状態で、工場から出荷されるか、画像形成部Aに装着された状態で画像形成装置が工場から出荷される。従って、プロセスユニットあるいは画像形成装置を輸送する場合、プロセスユニットをプリンタの画像形成部Aに装着する場合等において、振動等によってマグネットローラ25aが回転するおそれがなく、ハウジング21における開口部21cの下側縁部21yと現像スリーブ25bとの隙間内にキャリアが留められる状態が保持される。これにより、当該隙間を通ってハウジング21内のトナーが漏出をすることが防止される。
【0067】
プロセスユニットが、プリンタの画像形成部Aのプロセスユニットと交換されて、画像形成部Aに装着される場合には、プロセスユニットが画像形成部Aに装着された後に、現像スリーブ25bと一体的に連結されたスリーブ駆動軸25cは、画像形成部Aのモーターによって回転可能な状態になる。なお、プロセスユニットが画像形成部Aに装着された状態では、スリーブ駆動軸25cは、画像形成部Aのモーターによって回転可能な状態になっている。
【0068】
このような状態で、例えば、画像形成部Aが画像形成動作のために駆動されると、現像スリーブ25bは、図11に矢印Yで示す方向に回転されることになる。
現像スリーブ25bが回転されると、ハウジング21内のキャリアは、トナーとともに現像スリーブ25bの外周面の搬送が開始される。この場合、マグネットローラ25aは、位置決めピン32と位置決めプレート31との圧接によって回転しない状態に保持されているが、現像スリーブ25bの外周面を搬送されるキャリアに対してマグネットローラ25aの各磁極における磁力が作用することにより、マグネットローラ25aには、現像スリーブ25bとともに現像スリーブ25bの回転方向と同方向へ回転しようとするキャリアの回転力(以下、この回転力の大きさをQとする)が加わる。
【0069】
現像スリーブ25bが連続して回転されると、搬送による現像スリーブ25bに保持されるキャリアおよびトナーの量が増加して、キャリアによってマグネットローラ25aに作用する回転力Qが増加し、この回転力Qが、位置決めプレート31(従ってマグネットローラ25a)を回転しないように保持する保持力P1を上回ると(P1<Q)、位置決めプレート31が現像スリーブ25bと同方向に追従して回転することになる。
【0070】
これにより、第1の回転位置にある位置決めプレート31は、図10(a)における矢印Yで示す方向に回転される。そして、位置決めプレート31が、所定の角度(15°程度)だけ矢印Y方向に回転されることによって、位置決めピン32が位置決めプレート31に設けられた位置決め穴31d内に挿入される。これにより、位置決めピン32が位置決め穴31dに係合されて、位置決めプレート31はハウジング21に対して第2の回転位置に位置決めされる。
【0071】
このような状態になると、図6に示すように、マグネットローラ25aは、磁力が最大になった第1N極N1における最も磁力の大きな位置が、現像スリーブ25bおよびハウジング21の開口部21cを介して感光体ドラム11の表面に最も近接した対向状態で位置決め(固定)される。
この場合には、位置決めプレート31と位置決めピン32との押圧が解消されているが、位置決めプレート31と位置決めピン32とが係合していることにより、位置決めプレート31は、マグネットローラ25aをハウジング21に対して回転しない状態に固定している。この場合の固定力(P2とする)は、前述した保持力P1よりも大きく(P2>P1)、また、現像スリーブ25bの回転によってマグネットローラ25aに作用する回転力Qも上回ることになる(P2>Q)。
【0072】
このような状態になると、ハウジング21に固定されたマグネットローラ25aに対して現像スリーブ25bのみが図7(a)に示すように矢印Y方向に回転される。これにより、現像スリーブ25bの外周面をマグネットローラ25aの磁極によってキャリアおよびトナーが搬送される。現像スリーブ25bの外周面を搬送されるキャリアおよびトナーは、ハウジング21の上側縁部21xに設けられたブレード25hによって所定量に規制された後に、マグネットローラ25aの第1N極N1によって形成される磁気ブラシにより、感光体ドラム11の静電潜像にトナーが付着する。これにより、その静電潜像がトナー現像される。
【0073】
この場合、第1N極N1がマグネットローラ25aにおいて最大の磁力を有していることにより、キャリアが現像スリーブ25bから飛散することを防止することができる。
以降は、マグネットローラ25aがハウジング21に対して固定されていることにより、現像動作時において上記の現像動作が実行されることになる。
なお、K色のトナーによってトナー画像を形成するプロセスユニット10Kに設けられた現像装置20では、図1に示すように、ハウジング21の下部に、第1トナー搬送スクリュー22および第2トナー搬送スクリュー23が水平方向に並んで配置されて、第2トナー搬送スクリュー23の上方に現像ローラ25が配置されている。また、現像ローラ25が、ハウジング21の上部に設けられた開口部21cを介して感光体ドラム11に対向した状態になっている。その他の構成は、他の3つのプロセスユニット10Y、10M、10Cのそれぞれに設けられた現像装置20と同様の構成になっている。
【0074】
このような構成のプロセスユニット10Kの現像装置20においても、他の3つのプロセスユニット10Y、10M、10Cと同様に、マグネットローラ25aを固定するための位置決め部材30が設けられており、この位置決め部材30によって、プリンタの画像形成部Aに装着される前においては、第3S極S3における磁力が最大になる位置が開口部21cにおける下側縁部21yに対向するようにマグネットローラ25aが第1の回転位置に保持され、画像形成部Aに装着された後においては、現像スリーブ25bの回転によって、マグネットローラ25aにおける第1N極N1の磁力が最大になる位置が感光体ドラム11に最も近接した第2の回転位置になるように、マグネットローラ25aが位置決めされる。
【0075】
なお、上記の実施形態では、位置決めプレート31が可撓性(バネ性)を有する構成として、位置決めピン32をハウジング21の端面21fに固定的に設ける構成であったが、このような構成に限らず、位置決めプレート31に、位置決めピン32等の位置決め突起を設けて、ハウジング21の端面21fに位置決め穴を設ける構成としてもよい。
さらには、図12に示すように、位置決めピン32を、ハウジング21の端面21fに設けられたバネ33によって、端面21fから突出するように位置決めプレート31に向って付勢する構成としてもよい。この場合には、位置決めプレート31が可撓性(バネ性)を有している必要がなく、位置決めピン32の先端がバネ33によって位置決めプレート31に圧接されることにより、位置決めプレート31によるマグネットローラ25aを保持するための保持力P1が生じる。
【0076】
また、上記の実施形態では、工場出荷時に、マグネットローラ25aの第3S極S3をハウジング21における開口部21cの下側の側縁部に対向した第2の回転位置とする構成であったが、図13(a)に示すように、最大の磁力を有する第1N極N1がハウジング21における開口部21cの下側縁部21yに対向した状態(第2の回転位置)で、マグネットローラ25aを保持する構成としてもよい。
【0077】
この場合には、マグネットローラ25aの第1N極N1が、現像スリーブ25bおよびハウジング21の開口部21cを介して感光体ドラム11の表面に対向した第2の回転位置から、図13(b)に示すように、位置決めプレート31の位置決め穴31dから位置決めピン32を外して、位置決めピン32の先端部を位置決めプレート31に圧接した状態で、位置決めプレート31を矢印Zで示す方向に回転操作することによって、マグネットローラ25aは第1の回転位置とされる。
【0078】
従って、プロセスユニットがプリンタの画像形成部Aに装着されると、現像スリーブ25bが、現像時における回転方向とは反対方向(図12(b)に矢印Zで示す方向)に回転駆動される。そして、位置決めプレート31が所定角度にわたって回転されることによって、位置決めピン32が位置決めプレート31に設けられた位置決め穴31d内に挿入された係合状態になり、マグネットローラ25aの第1N極N1が、感光体ドラム11の表面に最も近接した第2の回転位置とされる。
【0079】
なお、本発明は、画像形成部Aに対して、現像装置20のみが装着可能になっている場合にも適用することができる。また、本発明に係る画像形成装置は、タンデム型カラーデジタルプリンタに限るものではなく、モノクロ画像を形成するプリンタであってもよい。さらには、カラーまたはモノクロの画像を形成できる複写機、FAX、MFP(Multiple Function Peripheral)等にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、感光体ドラムの外周面に形成された静電潜像を現像する現像装置において、輸送時等の画像形成動作が開始される前に、現像装置からトナーが漏出することを防止する状態になったマグネットローラを、画像形成の開始時に、現像スリーブの回転によって、所定の状態に固定することができる。
【符号の説明】
【0081】
A 画像形成部
B 給紙部
10Y、10M、10C、10K プロセスユニット
11 感光体ドラム
12 帯電装置
13 露光装置
20 現像装置
21 ハウジング
21c 開口部
21x 上側縁部
21y 下側縁部
22 第1トナー搬送スクリュー
23 第2トナー搬送スクリュー
25 現像ローラ
25a マグネットローラ
25b 現像スリーブ
25c スリーブ駆動軸
25f ローラ回転軸
25h ブレード
30 位置決め部材
31 位置決めプレート
31a 貫通穴
31b 溝部
31c 切片
31d 位置決め穴
32 位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体の外周面に形成された静電潜像を現像する現像装置であって、
内部に2成分現像剤を収容するとともに、前記感光体に対向する開口部が設けられたハウジングと、
前記開口部を介して前記感光体に対向するように前記ハウジング内に回転可能に保持された現像スリーブと、
周方向に沿って磁力の大きさが異なる複数の磁極が形成され、前記現像スリーブ内に挿入されたマグネットローラと、
前記マグネットローラの複数の磁極のうち最大の磁力を有する第1の磁極または当該第1の磁極以外の所定以上の強さの磁力を有する第2の磁極が、前記開口部と前記現像スリーブ周面との隙間のうち前記静電潜像の現像時に前記現像スリーブが回転される方向の下流側の隙間の位置に存する第1の回転位置にあるとき、前記現像スリーブの回転に追従して当該マグネットローラが回転することを許容し、当該回転に連れて前記第1の磁極が前記感光体に最も近接する第2の回転位置になったときに、当該マグネットローラの回転を規制する位置決め手段と、
を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記位置決め手段は、前記現像スリーブが回転されるまで前記マグネットローラを前記第1の回転位置に維持することを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記位置決め手段は、
前記マグネットローラと一体的に取り付けられた位置決めプレートと、
当該位置決めプレートに設けられた位置決め穴または位置決め突部に係合して前記マグネットローラを前記第2の回転位置に位置決めするように、前記ハウジングに設けられた位置決め突部または位置決め穴と、
前記マグネットローラが、前記第1の回転位置にある状態で、前記位置決め突部が相手方の部材の前記位置決め穴から外れた位置の表面に圧接されるように付勢する付勢手段と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記位置決めプレートはバネ性を有しており、当該位置決めプレート自身が前記付勢手段を兼ねていることを特徴とする請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記位置決め突起は、前記位置決めプレートまたは前記ハウジングに、相手方の部材に向ってスライド可能に設けられた位置決めピンであり、
前記付勢手段は、前記位置決めピンを付勢するバネであることを特徴とする請求項3に記載の現像装置。
【請求項6】
前記開口部における前記現像スリーブの回転方向上流側には、前記現像スリーブの回転によって搬送される2成分現像剤の量を規制する規制部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項7】
前記第2の磁極が、前記第1の磁極に対して、前記静電潜像の現像時における前記現像スリーブが回転方向の下流側に隣接しており、
前記マグネットローラは、前記第2の磁極が前記第1の回転位置にある状態で、前記静電潜像の現像時における前記現像スリーブの回転方向と同方向に回転されることによって、前記第1の回転位置から第2の回転位置にまで回転されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項8】
前記マグネットローラは、前記第1の磁極が前記第1の回転位置にある状態で、前記静電潜像の現像時における前記現像スリーブの回転方向とは反対方向に回転されることによって、前記第1の回転位置から第2の回転位置にまで回転されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の現像装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の現像装置と、
当該現像装置のハウジングに形成された開口部を介して現像スリーブに対向して配置された感光体と、
を有することを特徴とするプロセスユニット。
【請求項10】
請求項9に記載のプロセスユニットが設けられていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−128333(P2011−128333A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286043(P2009−286043)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】