説明

現在位置推定方法、測位方法、プログラム及び移動体端末

【課題】移動体端末が停止している場合であっても、現在位置を正しく推定すること。
【解決手段】測位部であるGPS受信部10の測位終了の際に、最後に測位された測位位置を最新測位位置とし、その際に携帯電話用無線通信回路部70により無線通信されていた基地局(停止時基地局)の識別情報(ID)の組合せがフラッシュROM80に記憶される。そして、GPS受信部10の測位再開の際に、携帯電話用無線通信回路部70により無線通信されている基地局の組合せと、フラッシュROM80に記憶されている停止時基地局の組合せとが比較判定され、一致すると判定された場合に、フラッシュROM80に記憶されている最新測位位置が携帯型電話機1の現在位置と推定される。そして、推定された現在位置が初期位置とされて、測位再開の最初の測位に利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現在位置推定方法、測位方法、プログラム及び移動体端末に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星を利用した測位システムとしては、GPS(Global Positioning System)が広く知られており、携帯型電話機等の移動体端末に利用されている。GPSでは、自機の位置を示す3次元の座標値と、時計誤差との4つのパラメータの値を、複数のGPS衛星の位置や各GPS衛星から自機までの擬似距離等の情報に基づいて求める測位演算を行うことで、自機の現在位置を測位する。
【0003】
測位演算では、複数のGPS衛星の擬似距離についての連立方程式に対して逐次計算法(ニュートン法)等に基づく収束計算を行って測位位置とする解を算出するが、初期位置を適切に設定しないと解が誤収束する可能性がある。そこで、初期位置とするための移動体端末の現在位置を推定するための様々な技術が考案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−71460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の技術は、前回測位時から今回測位時までの間に移動体端末が移動することを前提としていた。例えば、特許文献1に開示されている技術では、前回測位時から今回測位時までの経過時間に、予め設定された移動体端末の移動速度(例えば「100km/h」)を乗算することで、前回測位から今回測位までの間の移動体端末の移動距離を推定し、当該推定移動距離と近隣の基地局の位置情報とに基づいて移動体端末の現在位置を決定して、初期位置として利用している。
【0005】
ところが、前回の測位から今回の測位までの間、移動体端末が移動していない場合には、移動体端末の実際の移動距離は「0」である。それにも関わらず、停止時間が長くなればなるほど推定移動距離として大きな値が算出されるため、現在位置が正しく推定されず、移動体端末の実在位置とかけ離れた位置が初期位置として設定され得た。
【0006】
例えば、測位機能を内蔵した電子機器であって、電源ON/OFFと連動して測位の実行/停止が制御される電子機器にあっては、電子機器の使用を中止して電源OFFした場所と、次回に使用を開始するために電源ONした場所とが同一の場所であることが往々にしてある。このような場合には、電源OFF直前の最後に測位した時刻から電源ONされるまでの間、相当の時間が経過しているため、特許文献1の技術を適用して適切に現在位置を推定することは困難であった。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みて為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するための第1の発明は、測位用衛星からの衛星信号を受信して現在位置を測位する測位部と、各所に設置された基地局との間でハンドオーバーをしつつ無線通信を行う無線通信部とを備えた移動体端末の現在位置を推定する現在位置推定方法であって、前記測位部の測位終了の際に、前記測位部により最後に測位された測位位置と少なくとも前記無線通信部により無線通信されていた基地局の識別情報を含む通信状況とを記憶することと、前記測位部の測位再開の際に、前記無線通信部による現在の無線通信の通信状況と前記記憶した通信状況とを比較判定することと、前記比較判定により一致すると判定された場合に、前記記憶した測位位置を前記移動体端末の現在位置と推定することとを含む現在位置推定方法である。
【0009】
また、第11の発明として、測位用衛星からの衛星信号を受信して現在位置を測位する測位部と、各所に設置された基地局との間でハンドオーバーをしつつ無線通信を行う無線通信部とを備えた移動体端末であって、前記測位部の測位終了の際に、前記測位部により最後に測位された測位位置と少なくとも前記無線通信部により無線通信されていた基地局の識別情報を含む通信状況とを記憶する記憶制御部と、前記測位部の測位再開の際に、前記無線通信部による現在の無線通信の通信状況と前記記憶制御部に記憶された通信状況とを比較判定する比較判定部と、前記比較判定部により一致すると判定された場合に、前記記憶制御部により記憶された測位位置を前記移動体端末の現在位置と推定する現在位置推定部とを備えた移動体端末を構成してもよい。
【0010】
この第1の発明等によれば、測位部の測位終了の際に、測位部により最後に測位された測位位置と少なくとも無線通信部により無線通信されていた基地局の識別情報を含む通信状況とが記憶される。そして、測位部の測位再開の際に、無線通信部による現在の無線通信の通信状況と、記憶された通信状況とが比較判定され、一致すると判定された場合に、記憶された測位位置が移動体端末の現在位置と推定される。
【0011】
最終測位時から移動体端末が移動していれば、基地局との間の現在の無線通信の通信状況は、最終測位時における通信状況とは異なっているはずである。言い換えると、通信状況が一致するということは、移動体端末が停止しているか、ほとんど移動していないことを意味する。従って、通信状況が一致する場合に、最後に測位された測位位置を移動体端末の現在位置と推定することで、移動体端末が停止している場合であっても、現在位置を正しく推定することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明の現在位置推定方法における前記記憶することは、前記測位部の測位終了の際の前記無線通信部の通信相手の基地局の組合せを前記通信状況に含めて記憶することであり、前記比較判定は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せと前記記憶した基地局の組合せとを比較判定することである現在位置推定方法である。
【0013】
また、第12の発明として、第11の発明の移動体端末における前記記憶制御部は、前記測位部の測位終了の際の前記無線通信部の通信相手の基地局の組合せを前記通信状況に含めて記憶し、前記比較判定部は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せと前記記憶制御部により記憶された基地局の組合せとを比較判定する移動体端末を構成してもよい。
【0014】
この第2の発明等によれば、測位部の測位終了の際の無線通信部の通信相手の基地局の組合せが記憶され、無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せと、記憶された基地局の組合せとが比較判定される。移動体端末が停止していれば、通常、最終測位時における通信相手の基地局の組合せと現在の通信相手の基地局の組合せとは一致するはずである。従って、基地局の組合せの一致を比較判定することで、移動体端末が停止しているか否かを簡易に判断することができる。
【0015】
第3の発明は、第2の発明の現在位置推定方法であって、前記比較判定は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局と前記記憶した基地局それぞれに同一のフェムトセル用基地局が含まれている、又は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局と前記記憶した基地局とが同一のフェムトセル用基地局であるかを判定することを含み、前記現在位置の推定は、前記判定により同一のフェムトセル用基地局が含まれている、又は、同一のフェムトセル用基地局であると判定された場合に、前記同一のフェムトセル用基地局の位置情報を、前記無線通信部による前記無線通信が可能な基地局の位置情報を記憶した記憶部から読み出し、該読み出した位置情報の示す位置を前記移動端末の現在位置と推定することを含む、現在位置推定方法である。
【0016】
また、第13の発明として、第12の発明の移動体端末であって、前記比較判定部は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局と前記記憶制御部により記憶された基地局それぞれに同一のフェムトセル用基地局が含まれている、又は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局と前記記憶制御部により記憶された基地局とが同一のフェムトセル用基地局であるかを判定するフェムトセル用基地局判定部を含み、前記現在位置推定部は、前記判定により同一のフェムトセル用基地局が含まれている、又は、同一のフェムトセル用基地局であると判定された場合に、前記同一のフェムトセル用基地局の位置情報を、前記無線通信部による前記無線通信が可能な基地局の位置情報を記憶した記憶部から読み出し、該読み出した位置情報の示す位置を前記移動端末の現在位置と推定する、移動体端末を構成することとしてもよい。
【0017】
この第3の発明等によれば、測位部の測位終了の際の無線通信部の通信相手の基地局のと、無線通信部による現在の通信相手の基地局とに同一のフェムトセル用基地局が含まれている、或いはそれぞれの基地局が同一のフェムトセル用基地局である場合には、その同一のフェムトセル用基地局の位置が移動端末の現在位置と推定される。フェムトセル用基地局は、通信範囲(いわゆるカバーエリア)が狭小であるため、フェムトセル用基地局の位置を移動端末の現在位置と推定することができる。
【0018】
また、第4の発明として、第3の発明の現在位置推定方法であって、前記同一のフェムトセル用基地局の位置を前記移動端末の現在位置と推定した後、前記同一のフェムトセル用基地局或いは他のフェムトセル用基地局との通信が可能な状態であれば、フェムトセル用通信基地局との通信が可能な間は、当該通信可能なフェムトセル用基地局の位置を前記移動端末の現在位置と推定することを含む現在位置推定方法を構成することとしてもよい。
【0019】
この第4の発明によれば、フェムトセル用基地局との通信が可能な状態であれば、そのフェムトセル用基地局の位置を移動端末の現在位置と推定することができる。
【0020】
第5の発明は、第1の発明の現在位置推定方法における前記記憶することは、前記測位部の測位終了の際の前記無線通信部の通信相手の基地局の組合せ及び該各基地局との間の電波状態を前記通信状況に含めて記憶することであり、前記比較判定は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せ及び該各基地局との間の電波状態を、前記記憶した基地局の組合せ及び電波状態と比較判定することである現在位置推定方法である。
【0021】
また、第14の発明として、第11の発明の移動体端末における前記記憶制御部は、前記測位部の測位終了の際の前記無線通信部の通信相手の基地局の組合せ及び該各基地局との間の電波状態を前記通信状況に含めて記憶し、前記比較判定部は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せ及び該各基地局との間の電波状態を、前記記憶制御部により記憶された基地局の組合せ及び電波状態と比較判定する移動体端末を構成してもよい。
【0022】
この第5の発明等によれば、測位部の測位終了の際の無線通信部の通信相手の基地局の組合せ及び該各基地局との間の電波状態が記憶され、無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せ及び該各基地局との間の電波状態が、記憶された基地局の組合せ及び電波状態と比較判定される。基地局の組合せばかりでなく電波状態の一致を判定することで、移動体端末が停止しているか否かの判断の確実性を高めることができる。
【0023】
第6の発明は、第5の発明の現在位置推定方法における前記比較判定は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せと前記記憶した基地局の組合せとが同一であり、且つ、電波状態の差異が所定の近似条件を満たす場合に、前記無線通信部による現在の無線通信の通信状況と前記記憶した通信状況とが同一であると判定することであり、前記現在位置の推定は、前記比較判定により、基地局の組合せが同一であるが、電波状態の差異が前記所定の近似条件を満たさないと判定された場合に、前記記憶しておいた各基地局との間の電波状態と、現在の電波状態とに基づいて、前記記憶した測位位置を補正して現在位置を推定することを含む現在位置推定方法である。
【0024】
また、第15の発明として、第14の発明の移動体端末における前記比較判定部は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せと前記記憶制御部により記憶された基地局の組合せとが同一であり、且つ、電波状態の差異が所定の近似条件を満たす場合に、前記無線通信部による現在の無線通信の通信状況と前記記憶制御部により記憶された通信状況とが同一であると判定し、前記現在位置推定部は、前記比較判定部により、基地局の組合せが同一であるが、電波状態の差異が前記所定の近似条件を満たさないと判定された場合に、前記記憶制御部により記憶された各基地局との間の電波状態と、現在の電波状態とに基づいて、前記記憶された測位位置を補正して現在位置を推定する第1の補正推定部を有する移動体端末を構成してもよい。
【0025】
この第6の発明等によれば、無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せと、記憶された基地局の組合せとが同一であり、且つ、電波状態の差異が所定の近似条件を満たす場合に、無線通信部による現在の無線通信の通信状況と、記憶された通信状況とが同一であると判定される。また、基地局の組合せが同一であるが、電波状態の差異が所定の近似条件を満たさないと判定された場合は、記憶された各基地局との間の電波状態と、現在の電波状態とに基づいて、記憶された測位位置が補正されて現在位置が推定される。
【0026】
最終測位時と現在における通信相手の基地局の組合せが一致し、且つ、各通信基地局との間の電波状態も一致していれば、移動体端末は最終測位時から移動していないと考えられる。しかし、基地局の組合せが一致したとしても、電波状態が一致していなければ、移動体端末が最終測位時から移動している可能性がある。そこで、この場合に、最終測位位置を補正することで、移動体端末の移動を考慮して現在位置を適切に推定することができる。
【0027】
第7の発明は、第2〜第6の何れかの発明の現在位置推定方法における前記現在位置推定ステップが、前記比較判定ステップにより、基地局の組合せの一部が同一であると判定された場合に、現在の通信相手の基地局のうち、前記記憶ステップにおいて記憶された基地局ではない基地局の位置情報を、前記無線通信部による前記無線通信が可能な基地局の位置情報を記憶した記憶部から読み出して取得し、該取得した位置情報で、前記記憶ステップにおいて記憶された測位位置を補正して現在位置を推定する第2の補正推定ステップを含む現在位置推定方法である。
【0028】
また、第16の発明として、第12〜第15の何れかの発明の移動体端末における前記記憶制御部は、前記無線通信部による前記無線通信が可能な基地局の位置情報を記憶する位置情報記憶制御部を有し、前記現在位置推定部は、前記比較判定部により、基地局の組合せの一部が同一であると判定された場合に、現在の通信相手の基地局のうち、前記記憶制御部により記憶された基地局ではない基地局の位置情報を、前記位置情報記憶制御部から読み出して取得し、該取得した位置情報で、前記記憶制御部により記憶された測位位置を補正して現在位置を推定する第2の補正推定部を有する移動体端末を構成してもよい。
【0029】
この第7の発明等によれば、基地局の組合せの一部が同一であると判定された場合に、現在の通信相手の基地局のうち、記憶された基地局ではない基地局の位置情報が記憶部から読み出されて取得される。そして、取得された位置情報で、記憶された測位位置が補正されて現在位置が推定される。
【0030】
基地局の組合せが一致しない場合は、移動体端末は最終測位時から大きく移動したものと考えられる。但し、一部の基地局が同一である場合には、最終測位時の測位位置に比較的近い位置に位置していると考えられる。そこで、この場合に、記憶された基地局ではない基地局の位置情報に基づいて最終測位位置を補正することで、現在位置を推定することができる。
【0031】
第8の発明は、第1〜第7の何れかの発明の現在位置推定方法における前記測位部は前記衛星信号の受信状況に応じて演算精度を可変して測位を行い、前記記憶ステップは、測位終了の際の前記測位部の演算精度を更に記憶するステップであり、前記測位部の測位再開の際に、前記記憶ステップにおいて記憶された演算精度が所定の精度条件を満たすか否かを判定する測位精度判定ステップを更に含み、前記現在位置推定ステップは、前記測位精度判定ステップにおいて前記所定の精度条件を満たすと判定された場合には現在位置の推定を行わず、満たさないと判定された場合に現在位置の推定を行うステップである現在位置推定方法である。
【0032】
また、第17の発明として、第11〜第16の何れかの発明の移動体端末における前記測位部は前記衛星信号の受信状況に応じて演算精度を可変して測位を行い、前記記憶制御部は、測位終了の際の前記測位部の演算精度を更に記憶し、前記測位部の測位再開の際に、前記記憶制御部により記憶された演算精度が所定の精度条件を満たすか否かを判定する測位精度判定部を更に備え、前記現在位置推定部は、前記測位精度判定部により前記所定の精度条件を満たすと判定された場合には現在位置の推定を行わず、満たさないと判定された場合に現在位置の推定を行う移動体端末を構成してもよい。
【0033】
この第8の発明等によれば、測位部により衛星信号の受信状況に応じて演算精度が可変されて測位が行われ、測位終了の際の演算精度が更に記憶される。そして、測位部の測位再開の際に、記憶された演算精度が所定の精度条件を満たすか否かが判定され、満たすと判定された場合には現在位置の推定が行われず、満たさないと判定された場合に現在位置の推定が行われる。最終測位時の演算精度に基づいて現在位置の推定を行うか否かを判定することで、信頼性の低い測位位置を移動体端末の現在位置として推定することを防止することができる。
【0034】
また、第9の発明として、測位用衛星からの衛星信号を受信して現在位置を測位する測位部と、各所に設置された基地局との間でハンドオーバーをしつつ無線通信を行う無線通信部とを備えた移動体端末の前記測位部が行う測位方法であって、第1〜第8の何れかの発明の現在位置推定方法により推定された現在位置を初期位置として、前記受信した衛星信号に基づく測位を行う測位方法を構成してもよい。
【0035】
この第9の発明によれば、推定された現在位置を初期位置として、受信した衛星信号に基づく測位が行われることになる。
【0036】
さらには、第10の発明として、測位用衛星からの衛星信号を受信して現在位置を測位する測位部と、各所に設置された基地局との間でハンドオーバーをしつつ無線通信を行う無線通信部とを備えた移動体端末であるコンピュータに、第1〜第8の何れかの発明の現在位置推定方法、又は、第9の発明の測位方法を実行させるためのプログラムを構成してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、図面を参照して、移動体端末の一種である携帯型電話機に本発明を適用した場合の実施形態について説明する。但し、本発明を適用可能な実施形態がこれに限定されるわけではない。
【0038】
1.第1実施形態
1−1.構成
図1は、本実施形態における携帯型電話機1の機能構成を示すブロック図である。携帯型電話機1は、GPSアンテナ5と、GPS受信部10と、TCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator)20と、ホストCPU30と、操作部40と、表示部50と、携帯電話用アンテナ60と、携帯電話用無線通信回路部70と、フラッシュROM(Read Only Memory)80と、RAM(Random Access Memory)90とを備えて構成される。
【0039】
GPSアンテナ5は、測位用衛星であるGPS衛星から発信(送出)されたGPS衛星信号を含むRF信号を受信するアンテナであり、受信した信号をGPS受信部10に出力する。尚、GPS衛星信号は、C/A(Coarse and Acquisition)コードと呼ばれるスペクトラム拡散変調された信号であり、1.57542[GHz]を搬送波周波数とするL1帯の搬送波に重畳されている。
【0040】
GPS受信部10は、GPSアンテナ5から出力された信号に基づいて携帯型電話機1の現在位置を測位する測位部であり、いわゆるGPS受信機に相当する機能ブロックである。GPS受信部10は、RF(Radio Frequency)受信回路部11と、ベースバンド処理回路部13とを備えて構成される。尚、RF受信回路部11と、ベースバンド処理回路部13とは、それぞれ別のLSI(Large Scale Integration)として製造することも、
1チップとして製造することも可能である。
【0041】
RF受信回路部11は、高周波信号(RF信号)の回路ブロックであり、TCXO20により生成された発振信号を分周或いは逓倍することで、RF信号乗算用の発振信号を生成する。そして、生成した発振信号を、GPSアンテナ5から出力されたRF信号に乗算することで、RF信号を中間周波数の信号(以下、「IF(Intermediate Frequency)信号」と称す。)にダウンコンバートし、IF信号を増幅等した後、A/D変換器でデジタル信号に変換して、ベースバンド処理回路部13に出力する。
【0042】
ベースバンド処理回路部13は、RF受信回路部11から出力されたIF信号に対して相関処理等を行ってGPS衛星信号を捕捉・抽出し、データを復号して航法メッセージや時刻情報等を取り出し、疑似距離の演算や測位演算等を行う回路部である。ベースバンド処理回路部13は、相関処理を行う回路や相関処理用の拡散符号を発生させる回路、データを復号する回路の他、プロセッサとしてのCPUと、メモリとしてのROM及びRAMとを備えて構成される。
【0043】
TCXO20は、所定の発振周波数を有する発振信号を生成する温度補償型水晶発振器であり、生成した発振信号をRF受信回路部11及びベースバンド処理回路部13に出力する。尚、TCXO20は、GPS受信部10と別体とするのではなく、GPS受信部10と一体化してもよい。
【0044】
ホストCPU30は、フラッシュROM80に記憶されているシステムプログラム等の各種プログラムに従って携帯型電話機1の各部を統括的に制御するプロセッサである。特に、ホストCPU30は、フラッシュROM80に記憶されている制御プログラムに従って、GPS受信部10を制御する処理を行う。
【0045】
操作部40は、例えばタッチパネルやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、押下されたキーやボタンの信号をホストCPU30に出力する。この操作部40の操作により、通話指示やメールの送受信指示、電源の投入/切断指示等がなされる。
【0046】
表示部50は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、ホストCPU30から入力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置である。表示部50には、時刻情報やナビゲーション画面等が表示される。
【0047】
携帯電話用アンテナ60は、携帯型電話機1の通信サービス事業者が設置した無線基地局(以下、単に「基地局」と称す。)との間で携帯電話用無線信号の送受信を行うアンテナである。
【0048】
携帯電話用無線通信回路部70は、RF変換回路、ベースバンド処理回路等によって構成される携帯電話の通信回路部であり、携帯電話用無線信号の変調・復調等を行うことで、通話やメールの送受信等を実現する。
【0049】
携帯電話用無線通信回路部70は、各基地局との間で行う携帯電話用の通信(以下、この通信を「基地局通信」、基地局通信に係る信号を「基地局通信信号」と称す。)を、携帯電話用アンテナ60を介して常時受信・検出している。そして、複数の基地局との間で基地局通信を行い、携帯型電話機1の移動に伴う基地局との間の電波状態の変化に従って通信相手先の基地局を切り替えるハンドオーバーを行う。
【0050】
フラッシュROM80は、読み書き可能な不揮発性のメモリであり、携帯型電話機1を制御するためのシステムプログラムや、ナビゲーション機能を実現するための各種プログラムやデータ等を記憶している。フラッシュROM80に記憶されているデータは、携帯型電話機1の電源を切断しても失われない。
【0051】
RAM90は、読み書き可能なメモリであり、ホストCPU30により実行されるシステムプログラム、各種処理プログラム、各種処理の処理中データ、処理結果などを一時的に記憶するワークエリアを形成している。
【0052】
図2(A)、図2(B)は、フラッシュROM80及びRAM90に格納されたデータの一例を示す図である。フラッシュROM80には、ホストCPU30により読み出され、GPS制御処理(図7参照)として実行されるGPS制御プログラム801と、基地局データ803と、地図データ805と、最新測位データ807と、停止時基地局データ809とが記憶されている。
【0053】
GPS制御処理とは、ホストCPU30が、GPS受信部10の起動時に、現在の通信圏内にある基地局の組合せと、前回のGPS受信部10の停止時に通信圏内にあった基地局の組合せとを比較判定し、その比較判定結果に基づいて、携帯型電話機1の現在位置を推定する処理である。そして、ホストCPU30は、推定した現在位置を初期位置として、起動後の最初の測位演算をGPS受信部10に実行させる。また、測位終了指示を検出した場合には、GPS受信部10を停止させるように制御する。GPS制御処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0054】
基地局データ803は、携帯型電話機1の各基地局の識別情報(ID)や設置位置等の情報を含む基地局情報が記憶されたデータである。
【0055】
地図データ805は、道路情報や建物情報を含む地図情報が記憶されたデータであり、場所毎に高度を定めた高度データ8051がこれに含まれる。但し、地球上のあらゆる場所の高度が定められているわけではなく、高度が定められていない場所も存在する。
【0056】
図3は、最新測位データ807のデータ構成の一例を示す図である。最新測位データ807には、GPS停止時における最新測位結果として、最新測位モード8071と最新測位位置8073とが対応付けて記憶される。GPS制御処理において、ホストCPU30は、測位終了指示を検出した場合に、RAM90の測位データ901に記憶されている測位結果のうちの最新の1レコード分の測位結果を、最新測位結果として最新測位データ807に記憶させる。
【0057】
図4は、停止時基地局データ809のデータ構成の一例を示す図である。停止時基地局データ809には、GPS停止時の通信状況として、GPS停止時に通信圏内にあった基地局(以下、「停止時基地局」と称す。)のIDが記憶される。GPS制御処理において、ホストCPU30は、GPS受信部10の動作を停止させる際の通信相手先の基地局を停止時基地局とし、当該停止時基地局のIDを停止時基地局データ809に記憶させる。
【0058】
また、RAM90には、測位データ901と、起動時基地局データ903とが記憶される。
【0059】
図5は、測位データ901のデータ構成の一例を示す図である。測位データ901には、測位結果として、測位モード9011と測位位置9013とが対応付けて、測位された順に時系列に蓄積記憶される。測位モード9011は、GPS受信部10が行った測位演算の種類(モード)であり、「3D」、「高度あり2D」、「高度なし2D」の何れかが記憶される。この測位モード9011により、測位演算の精度(以下、「演算精度」と称す。)が決定付けられる。
【0060】
「3D」は、捕捉したGPS衛星(以下、「捕捉衛星」と称す。)の数が4個以上である場合の測位モードである。この場合、GPS受信部10は、各捕捉衛星の衛星位置や擬似距離等の情報に基づいて測位演算を行う。
【0061】
「高度あり2D」は、捕捉衛星の数が3個の場合の測位モードであって、高度データ8051を利用して高度を含む現在位置を測位するモードである。この場合、GPS受信部10は、各捕捉衛星の衛星位置や擬似距離等の情報の他に、高度データ8051に定められている高度の情報を利用して測位演算を行う。
【0062】
また、「高度なし2D」は、捕捉衛星の数が3個の場合の測位モードであるが、高度データ8051を利用して高度を特定することができない場合の測位モードである。この場合、GPS受信部10は、各捕捉衛星の衛星位置や擬似距離等の情報の他に、仮定した高度(例えば「標高0m」)の情報を利用して測位演算を行う。但し、高度を仮定して測位演算を行うため、「3D」又は「高度あり2D」に比べて演算精度は低くなる。
【0063】
測位位置9013は、GPS受信部10の測位演算により求められた位置であり、例えば地球基準座標系における3次元の座標値が記憶される。GPS制御処理において、ホストCPU30は、設定した初期位置に基づく測位演算をGPS受信部10に実行させる。そして、GPS受信部10から測位モード9011及び測位位置9013を取り込み、今回の測位結果として測位データ901に蓄積する。
【0064】
図6は、起動時基地局データ903のデータ構成の一例を示す図である。起動時基地局データ903には、GPS起動時の通信状況として、GPS起動時に通信圏内にあった基地局(以下、「起動時基地局」と称す。)のIDが記憶される。GPS制御処理において、ホストCPU30は、GPS起動時に、各基地局との間で基地局通信を試み、基地局通信に成功した相手先の基地局を起動時基地局とする。そして、当該起動時基地局のIDを起動時基地局データ903に記憶させる。
【0065】
1−2.処理の流れ
図7は、ホストCPU30によりフラッシュROM80に記憶されているGPS制御プログラム801が読み出されて実行されることで、携帯型電話機1において実行されるGPS制御処理の流れを示すフローチャートである。GPS制御処理は、ホストCPU30が、操作部40から測位開始指示を検出した場合に実行を開始する処理であり、通話やメールの送受信といったメインの処理と並行して行われる処理である。尚、携帯型電話機1の電源のON/OFFとGPSの起動/停止とを連動させ、携帯型電話機1の電源投入操作を検出した場合に処理の実行を開始させることにしてもよい。
【0066】
先ず、ホストCPU30は、GPS受信部10を起動する(ステップA1)。そして、ホストCPU30は、フラッシュROM80の停止時基地局データ809に停止時基地局のIDが記憶されているか否かを判定し(ステップA3)、記憶されていると判定した場合は(ステップA3;Yes)、各基地局との間の基地局通信を試みる(ステップA5)。
【0067】
次いで、ホストCPU30は、ステップA5において通信可能となった基地局を起動時基地局とし、当該起動時基地局のIDをRAM90の起動時基地局データ903に記憶させる(ステップA7)。そして、ホストCPU30は、起動時基地局データ903の起動時基地局の組合せが、停止時基地局データ809の停止時基地局の組合せと同一であるか否かを判定する(ステップA9)。
【0068】
ステップA9において基地局の組合せが同一であると判定した場合は(ステップA9;Yes)、ホストCPU30は、フラッシュROM80の最新測位データ807に記憶されている最新測位モード8071を判定する(ステップA11)。そして、最新測位モード8071が「3D」又は「高度あり2D」であると判定した場合は(ステップA11;3D又は高度あり2D)、ホストCPU30は、最新測位データ807に記憶されている最新測位位置8073を携帯型電話機1の現在位置と推定し、推定した現在位置を初期位置として設定する(ステップA13)。
【0069】
起動時基地局と停止時基地局とが同一の組合せであるということは、携帯型電話機1が、前回のGPS停止時から停止しているか、ほとんど移動していないことを意味する。また、最新測位モードが「3D」又は「高度あり2D」であるということは、前回の最後の測位は演算精度が高かったことを意味する。そこで、これらの条件が共に成立した場合に限り、前回最後に測位された測位位置を携帯型電話機1の現在位置と推定し、初期位置として設定する。
【0070】
次いで、ホストCPU30は、設定した初期位置に基づいてGPS受信部10に測位演算を実行させるGPS測位処理を行う(ステップA15)。尚、GPS受信部10は、捕捉衛星数及び高度情報の有無に応じて「3D」、「高度あり2D」、「高度なし2D」の3種類の測位モードを切り替えながら測位演算を行うが、その詳細については公知であるため説明を省略する。
【0071】
GPS測位処理の後、ホストCPU30は、GPS受信部10から測位結果を取り込んで、RAM90の測位データ901の測位モード9011及び測位位置9013に新たなデータとして蓄積する(ステップA17)。そして、ホストCPU30は、操作部40から測位終了指示がなされたか否かを判定し(ステップA19)、なされなかったと判定した場合は(ステップA19;No)、ステップA15に戻る。
【0072】
一方、ステップA19において測位終了指示がなされたと判定した場合は(ステップA19;Yes)、ホストCPU30は、測位データ901に記憶されている最新の1レコード分の測位結果を、最新測位結果として最新測位データ807に記憶させて最新測位データ807を更新させる(ステップA21)。
【0073】
次いで、ホストCPU30は、現在の通信相手先の基地局を停止時基地局とし、当該停止時基地局のIDをフラッシュROM80の停止時基地局データ809に記憶させる(ステップA23)。そして、ホストCPU30は、GPS受信部10を停止させた後(ステップA25)、GPS制御処理を終了する。
【0074】
一方、ステップA3において停止時基地局のIDが記憶されていないと判定した場合は(ステップA3;No)、ホストCPU30は、いわゆるネットワークアシスト機能による初期位置取得処理を行う(ステップA27)。
【0075】
また、ステップA9において基地局の組合せが同一ではないと判定した場合(ステップA9;No)、又は、ステップA11において最新測位モード8071が「高度なし2D」であると判定した場合にも(ステップA11;高度なし2D)、ホストCPU30は、ステップA27へと処理を移行し、ネットワークアシスト機能による初期位置取得処理を行う。
【0076】
起動時基地局の組合せと停止時基地局の組合せとが一致しないということは、携帯型電話機1が、前回のGPS停止時から大きく移動したことを意味する。また、最新測位モードが「高度なし2D」であるということは、前回の最後の測位は演算精度が低かったことを意味する。そこで、これらの場合は、前回最後に測位された測位位置を携帯型電話機1の現在位置とは推定せずに、ネットアワークアシスト機能によって位置情報を取得する。
【0077】
ネットワークアシスト機能を用いた初期位置取得処理では、ホストCPU30は、各基地局との間の基地局通信を試み、通信可能となった相手先の基地局に対して現在位置の問い合わせを行う。問い合わせを受けた基地局は、全ての基地局を管理するサーバにアクセスして現在位置を照会する。
【0078】
サーバは、例えばアクセス元の複数の基地局の設置位置の情報に基づいて携帯型電話機1の現在位置を推定・算出し、アクセス元の基地局に送信する。そして、基地局は、サーバから受信した位置を、携帯型電話域1の現在位置の情報として携帯型電話機1に送信する。
【0079】
尚、基地局への問い合わせを行わず、ホストCPU30が単体で現在位置を算出することにしてもよい。具体的には、ホストCPU30は、フラッシュROM80に記憶されている基地局データ803を参照し、基地局通信を行っている相手先の各基地局それぞれの設置位置を平均処理して求めた位置を初期位置に決定する。
【0080】
ステップA27において初期位置取得処理を行った後、ホストCPU30は、ステップA15へと処理を移行し、取得した初期位置に基づいた測位演算をGPS受信部10に実行させる。
【0081】
1−3.作用効果
第1実施形態によれば、測位部であるGPS受信部10の測位終了の際に、最後に測位された測位位置を最新測位位置とし、その際に携帯電話用無線通信回路部70により無線通信されていた基地局(停止時基地局)の識別情報(ID)の組合せがフラッシュROM80に記憶される。そして、GPS受信部10の測位再開の際に、携帯電話用無線通信回路部70により無線通信されている基地局として検出された起動時基地局の組合せと、フラッシュROM80に記憶されている停止時基地局の組合せとが比較判定され、一致すると判定された場合に、フラッシュROM80に記憶されている最新測位位置が携帯型電話機1の現在位置と推定される。そして、推定された現在位置が初期位置とされて、測位再開の最初の測位に利用される。
【0082】
携帯型電話機1が最終測位時から大きく移動していれば、停止時基地局の組合せと、起動時基地局の組合せとは異なるはずである。言い換えると、基地局の組合せが一致するということは、測位を中止していた間、携帯型電話機1は停止していたか、ほとんど移動していなかったことを意味する。従って、起動時における基地局の組合せが停止時における基地局の組合せと一致する場合に、停止時の測位位置を現在位置と推定することで、携帯型電話機1が停止している場合の現在位置を正しく推定することができる。
【0083】
また、第1実施形態では、GPS受信部10によりGPS衛星信号の受信状況(捕捉したGPS衛星の数)に応じて測位モードが可変されて測位が行われ、測位終了の際の測位モードが最新測位モードとしてフラッシュROM80に記憶される。そして、GPS受信部10の測位再開の際に、フラッシュROM80に記憶されている最新測位モードが判定され、最新測位モードが「高度なし2D」である場合は、演算精度が低いものとして現在位置の推定が行われず、「3D」又は「高度あり2D」である場合に限り、現在位置の推定が行われる。
【0084】
このように、最終測位時の演算精度に基づいて現在位置の推定を行うか否かを判定することで、信頼性の低い測位位置を携帯型電話機1の現在位置として推定することを防止することができ、ひいては、不適切な初期位置に基づいて測位演算を行うことを回避することができる。
【0085】
2.第2実施形態
2−1.構成
図8は、第2実施形態におけるフラッシュROM82及びRAM92の構成を示す図であり、図8(A)がフラッシュROM82に格納されるデータの一例を、図8(B)がRAM92に格納されるデータの一例をそれぞれ示している。尚、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付して、説明を省略する。
【0086】
フラッシュROM82には、ホストCPU30に読み出され、第2GPS制御処理(図13、図14参照)として実行される第2GPS制御プログラム821と、基地局データ803と、地図データ805と、第2最新測位データ827と、第2停止時基地局データ829とが記憶されている。
【0087】
第2GPS制御処理とは、ホストCPU30が、起動時基地局の組合せ及び停止時基地局の組合せと、各起動時基地局及び各停止時基地局それぞれとの間の電波状態(通信状況)とに基づいて、携帯型電話機1の現在位置を推定する処理である。そして、ホストCPU30は、推定した現在位置を初期位置としてGPS受信部10に測位演算を実行させる。また、測位終了指示を検出した場合には、GPS受信部10を停止させるように制御する。第2GPS制御処理については、フローチャートを用いて詳細に後述する。
【0088】
図9は、第2最新測位データ827のデータ構成の一例を示す図である。第2最新測位データ827には、最新測位結果として、最新測位モード8271と、最新測位位置8273と、最新測位誤差8275とが対応付けて記憶される。第2GPS制御処理において、ホストCPU30は、測位終了指示を検出した場合に、RAM92の第2測位データ921に記憶されている測位結果のうちの最新の1レコード分の測位結果を、最新測位結果として第2最新測位データ827に記憶させる。
【0089】
図10は、第2停止時基地局データ829のデータ構成の一例を示す図である。第2停止時基地局データ829には、GPS停止時の通信状況として、停止時基地局のID8291と、当該停止時基地局との通信において当該停止時基地局から受信した基地局通信信号の信号強度8293とが対応付けて記憶される。
【0090】
RAM92には、第2測位データ921と、第2起動時基地局データ923とが記憶される。
【0091】
図11は、第2測位データ921のデータ構成の一例を示す図である。第2測位データ921には、測位結果として、測位モード9211と、測位位置9213と、測位誤差9215とが対応付けて記憶される。尚、測位モード9211及び測位位置9213に格納されるデータは、図5の測位データ901の測位モード9011及び測位位置9013に格納されるデータとそれぞれ同一である。
【0092】
測位誤差9215は、測位演算により求められた当該測位位置9213に内在している位置誤差の最大値であり、例えば「5m」といった値が記憶される。GPS受信部10は、測位演算と併せて、測位位置に含まれ得る位置誤差の範囲(以下、「位置誤差範囲」と称す。)を演算し、ホストCPU30に出力する。そして、ホストCPU30は、GPS受信部10から入力した位置誤差範囲の最大値を、測位誤差9215として第2測位データ921に記憶させる。尚、位置誤差の演算方法については公知であるため、詳細な説明を省略する。
【0093】
図12は、第2起動時基地局データ923のデータ構成の一例を示す図である。第2起動時基地局データ923には、GPS起動時の通信状況として、起動時基地局のID9231と、当該起動時基地局との間の基地局通信において当該起動時基地局から受信した基地局通信信号の信号強度9233とが対応付けて記憶される。
【0094】
2−2.処理の流れ
図13及び図14は、ホストCPU30によりフラッシュROM82に記憶されている第2GPS制御プログラム821が読み出されて実行されることで、携帯型電話機1において実行される第2GPS制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0095】
先ず、ホストCPU30は、GPS受信部10を起動する(ステップB1)。次いで、ホストCPU30は、フラッシュROM82の第2停止時基地局データ829に停止時基地局のID8291が記憶されているか否かを判定し(ステップB3)、記憶されていると判定した場合は(ステップB3;Yes)、各基地局との間の基地局通信を試みる(ステップB5)。
【0096】
次いで、ホストCPU30は、ステップB5において通信可能となった相手先の基地局を起動時基地局とし、当該起動時基地局のID9231をRAM92の第2起動時基地局データ923に記憶させる(ステップB7)。また、ホストCPU30は、ステップB5において通信可能となった基地局から受信した基地局通信信号の信号強度9233を算出し、起動時基地局のID9231と対応付けて第2起動時基地局データ923に記憶させる(ステップB9)。
【0097】
その後、ホストCPU30は、第2起動時基地局データ923の起動時基地局の組合せが、第2停止時基地局データ829の停止時基地局の組合せと同一であるか否かを判定する(ステップB11)。そして、基地局の組合せが同一であると判定した場合は(ステップB11;Yes)、ホストCPU30は、フラッシュROM82の第2最新測位データ827に記憶されている最新測位モード8271を判定する(ステップB13)。
【0098】
ステップB13において最新測位モード8271が「高度なし2D」であると判定した場合は(ステップB13;高度なし2D)、ホストCPU30は、ステップB39へと処理を移行する。
【0099】
一方、「3D」又は「高度あり2D」であると判定した場合は(ステップB13;3D又は高度あり2D)、ホストCPU30は、第2起動時基地局データ923に記憶されている起動時基地局の信号強度9233と、第2停止時基地局データ829に記憶されている停止時基地局の信号強度8293との差を、各基地局それぞれについて算出し、算出した差の平均値を算出する(ステップB15)。
【0100】
そして、ホストCPU30は、算出した信号強度の差の平均値が所定の閾値以下であるか否かを判定し(ステップB17)、閾値以下であると判定した場合は(ステップB17;Yes)、フラッシュROM82の第2最新測位データ827に記憶されている最新測位位置8273を携帯型電話機1の現在位置と推定し、推定した現在位置を初期位置として設定する(ステップB19)。
【0101】
起動時基地局と停止時基地局とが同一の組合せであり、且つ、停止時と起動時の基地局通信信号の信号強度の差が小さいということは、携帯型電話機1が前回のGPS停止時から全く移動していないか、移動したとしても僅かであることを意味する。また、最新測位モードが「3D」又は「高度あり2D」であるということは、前回の最後の測位結果が演算精度の高いものであることを意味する。そこで、これらの条件が共に成立した場合に限り、前回の最終測位位置を携帯型電話機1の現在位置と推定し、初期位置として設定する。
【0102】
その後、ホストCPU30は、第2最新測位データ827に記憶されている最新測位モード8271が「3D」であり、且つ、最新測位誤差8275が所定の閾値以下であるか否かを判定し(ステップB21)、この条件を満たさないと判定した場合は(ステップB21;No)、ステップB25へと処理を移行する。
【0103】
一方、ステップB21において条件を満たすと判定した場合は(ステップB21;Yes)、ホストCPU30は、フラッシュROM82の第2最新測位データ827に記憶されている最新の測位結果を、初回測位結果としてRAM92の第2測位データ921に蓄積する(ステップB23)。
【0104】
最新測位モードが「3D」であり、且つ、最新測位誤差が小さければ、前回の最後の測位結果は極めて信頼性の高いものであるといえる。そこで、この場合は、最新測位結果をGPS起動後の初回の測位結果とみなし、各種処理(例えばマップマッチング処理)に流用する。
【0105】
その後、ホストCPU30は、設定した初期位置に基づいてGPS受信部10に測位演算を実行させることで、GPS測位処理を行う(ステップB25)。尚、GPS測位処理では、GPS受信部10は、測位演算と併せて、測位位置に含まれる位置誤差範囲を演算する。
【0106】
次いで、ホストCPU30は、GPS受信部10から測位結果を取り込んで、RAM92の第2測位データ921の測位モード9211、測位位置9213及び測位誤差9215に新たなデータとして蓄積する(ステップB27)。そして、ホストCPU30は、操作部40から測位終了指示がなされたか否かを判定し(ステップB29)、なされなかったと判定した場合は(ステップB29;No)、ステップB25に戻る。
【0107】
一方、ステップB29において測位終了指示がなされたと判定した場合は(ステップB29;Yes)、ホストCPU30は、第2測位データ921に記憶されている最新の1レコード分の測位結果を、最新測位結果として第2最新測位データ827に記憶させて第2最新測位データ827を更新させる(ステップB31)。
【0108】
次いで、ホストCPU30は、現在の通信相手先の基地局を検出して停止時基地局とし、当該停止時基地局のID8291をフラッシュROM82の第2停止時基地局データ829に記憶させる(ステップB33)。また、ホストCPU30は、基地局通信における当該相手先の基地局からの基地局通信信号の信号強度8293を算出し、当該停止時基地局のID8291と対応付けて第2停止時基地局データ829に記憶させる(ステップB35)。そして、ホストCPU30は、GPS受信部10を停止させた後(ステップB37)、第2GPS制御処理を終了する。
【0109】
一方、ステップB3において停止時基地局のID8291が記憶されていないと判定した場合は(ステップB3;No)、ホストCPU30は、いわゆるネットワークアシスト機能による初期位置取得処理を行う(ステップB39)。この初期位置取得に係る処理は、図7のGPS起動処理のステップA27で説明した通りである。そして、ホストCPU30は、ステップB25へと処理を移行する。
【0110】
また、ステップB11において基地局の組合せが同一ではないと判定した場合は(ステップB11;No)、ホストCPU30は、起動時基地局として新しく追加された基地局(以下、「新規基地局」と称す。)が1個であり、且つ、当該新規基地局が何れかの停止時基地局から所定距離内(例えば1km以内)であるか否かを、フラッシュROM82に記憶されている基地局データ803を参照して判定する(ステップB41)。
【0111】
そして、当該条件を満たさないと判定した場合は(ステップB41;No)、ホストCPU30は、ステップB39へと処理を移行する。また、当該条件を満たすと判定した場合は(ステップB41;Yes)、ホストCPU30は、基地局データ803に基づいて新規基地局基準補正処理を行い、新規基地局の設置位置を基準として、第2最新測位データ827に記憶されている最新測位位置8273を補正する(ステップB43)。
【0112】
図15は、新規基地局基準補正処理における位置補正の原理を説明するための図である。
今、前回のGPS停止時に通信圏内にあった基地局(停止時基地局)が「BS1」、「BS2」及び「BS3」であったが、今回のGPS起動時に通信圏内にある基地局(起動時基地局)が「BS2」、「BS3」及び「BS4」に変化した場合を考える。つまり、この場合は、基地局「BS4」が新規基地局として追加されたことになる。また、新規基地局「BS4」の設置位置は、停止時基地局「BS3」の設置位置から所定距離内であるものとする。
【0113】
この場合、新規基地局は「BS4」の1個であり、且つ、新規基地局「BS4」は停止時基地局「BS3」から所定距離内であるため、ステップB41の条件が成立し、新規基地局「BS4」の設置位置を基準として、最新測位位置を補正することになる。具体的には、最新測位位置と新規基地局「BS4」の設置位置とを結ぶ線分を考え、当該線分の中点に最新測位位置を補正する。
【0114】
尚、本実施形態では、新規基地局が1個である場合を例に挙げて説明したが、新規基地局が2以上である場合についても、各新規基地局の設置位置を平均処理して補正位置を求めることで、最新測位位置の補正を同様に行うことが可能である。
【0115】
ステップB43において最新測位位置8273を補正した後、ホストCPU30は、当該補正位置を携帯型電話機1の現在位置と推定し、推定した現在位置を初期位置として設定する(ステップB45)。そして、ホストCPU30は、ステップB25へと処理を移行する。
【0116】
また、ステップB17において信号強度の差の平均値が閾値を超えたと判定した場合は(ステップB17;No)、ホストCPU30は、フラッシュROM82に記憶されている基地局データ803を参照して信号強度基準補正処理を行い、起動時基地局及び停止時基地局それぞれの信号強度に基づいて、第2最新測位データ827に記憶されている最新測位位置8273を補正する(ステップB47)。
【0117】
図16は、信号強度基準補正処理における位置補正の原理を説明するための図である。
ここでは、起動時基地局及び停止時基地局が「BS1」、「BS2」及び「BS3」であるものとして説明する。前回のGPS停止時に各停止時基地局から受信した基地局通信信号の信号強度が「P1」、「P2」、「P3」であり、今回のGPS起動時に各起動時基地局から受信した基地局通信信号の信号強度が「P1−Δα」、「P2−Δβ」、「P3+Δγ」にそれぞれ変化したとする。但し、信号強度の差分「Δα」、「Δβ」、「Δγ」はそれぞれ正である。
【0118】
この場合は、信号強度「P1」、「P2」、「P3」からの増減(±)と、信号強度の差分に基づく比率(Δα/P1):(Δβ/P2):(Δγ/P3)とに基づいて、最新測位位置を補正する。より具体的には、信号強度の増減が「+」となった基地局に近付けるように、最新測位位置をシフトさせる。この結果、図中においては、信号強度が「Δγ」だけ増加した基地局「P3」寄りの位置に最終測位位置が補正されている。
【0119】
ステップB47において最新測位位置8273を補正した後、ホストCPU30は、当該補正位置を携帯型電話機1の現在位置と推定し、推定した現在位置を初期位置として設定する(ステップB49)。そして、ホストCPU30は、ステップB25へと処理を移行する。
【0120】
2−3.作用効果
第2実施形態によれば、携帯電話用無線通信回路部70による現在の通信相手である起動時基地局の組合せと、フラッシュROM82に記憶されている停止時基地局の組合せとが同一であり、且つ、これら各基地局から受信した基地局通信信号の信号強度の差の平均値が所定の閾値以下である場合に、フラッシュROM82に記憶されている最新測位位置が携帯型電話機1の現在位置と推定されて、GPSを起動した初回の測位時の初期位置とされる。また、基地局の組合せが同一であるが、信号強度の差の平均値が閾値を超えた場合は、停止時基地局及び起動時基地局の信号強度に基づいて最新測位位置が補正されて、現在位置が推定される。
【0121】
最終測位時及び現在の通信相手の基地局の組合せが一致し、且つ、各基地局から受信した基地局通信信号の信号強度が最終測位時と現在とで近似していれば、携帯型電話機1は最終測位時から移動していないものと考えられる。しかし、基地局の組合せが一致したとしても、信号強度が大きく異なっていれば、携帯型電話機1が最終測位時から移動している可能性が高い。この場合に、最新測位位置を補正して現在位置を推定することで、携帯型電話機1の移動を考慮して初期位置を適切に設定することができる。
【0122】
また、第2実施形態では、基地局の組合せの一部が同一であると判定された場合は、起動時基地局のうち、フラッシュROM82に記憶されている停止時基地局ではない基地局の位置情報が基地局データ803から読み出されて取得される。そして、取得された位置情報で、フラッシュROM82に記憶されている最新測位位置が補正されて現在位置が推定される。
【0123】
基地局の組合せが一致しない場合は、携帯型電話機1が最終測位時から大きく移動したことが予想される。しかし、一部の基地局が一致する場合には、最終測位時の位置から比較的近い位置に位置していると考えられる。そこで、この場合に、新規基地局の位置情報に基づいて最終測位位置を補正して現在位置を推定することで、携帯型電話機1が大きく移動した場合であっても初期位置を設定することが可能となる。
【0124】
3.変形例
3−1.移動体端末
本発明は、携帯型電話機の他、PHS(Personal Handyphone System)についても同様に適用可能である。
【0125】
3−2.衛星測位システム
上述した実施形態では、衛星測位システムとしてGPSを例に挙げて説明したが、WAAS(Wide Area Augmentation System)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO等の他の衛星測位システムについても同様に適用可能である。
【0126】
3−3.処理の分化
ホストCPU30が行う処理の一部又は全部を、ベースバンド処理回路部13が行うことにしてもよい。この場合、ベースバンド処理回路部13のCPUは、基地局通信において当該相手先の基地局から受信した基地局通信信号に基づいて、起動時基地局と停止時基地局との同一性の判定や、当該相手先の基地局から受信した基地局通信信号の信号強度差の判定、最新測位モードの判定等を行うことで、携帯型電話機1の現在位置を推定する。そして、CPUは、推定した現在位置を初期位置として測位演算を行い、測位結果をホストCPU30に出力する。
【0127】
尚、この場合において、CPUは、(1)起動時基地局と停止時基地局の組合せが一致し、(2)各基地局から受信した基地局通信信号の信号強度差が閾値以下であり、(3)最新測位モードが「3D」であり、且つ、(4)最新測位誤差の閾値以下であると判定した場合は、測位演算を開始する前に、最新測位結果をホストCPU30に出力するようにする。これは、ホストCPU30が、最新測位結果をGPS起動後の初回測位結果として流用できるようにするためである。
【0128】
また、ベースバンド処理回路部13が測位演算を行うのではなく、ホストCPU30が測位演算を行うことにしてもよい。この場合、ベースバンド処理回路部13は、RF受信回路部11から出力されたIF信号からGPS衛星信号を捕捉・抽出して、航法メッセージや時刻情報を取り出し、ホストCPU30に出力する。そして、ホストCPU30は、ベースバンド処理回路部13から入力した情報に基づいて擬似距離の演算や測位演算を行う。
【0129】
3−4.フェムトセル用基地局
携帯型電話機1の基地局には、半径1km〜数km程度の半径をカバーする大型の基地局の他に、フェムトセルと呼ばれる狭小な範囲をカバーする小型の基地局がある。フェムトセル用基地局は、半径数m程度の範囲をカバーする基地局であり、家庭やSOHO(Small Office / Home office)に設置される基地局である。通信可能距離が短いため、携帯型電話機1が基地局間通信を行って通信可能となった基地局がフェムトセル用基地局である場合には、フェムトセル用基地局の位置を携帯型電話機1の位置とみなしても十分に実用に供する。そのため、上述した実施形態において、起動時基地局と停止時基地局それぞれに同一のフェムトセル用基地局が含まれている場合(勿論、起動時基地局と停止時基地局それぞれの基地局が1つであり、それがフェムトセル用基地局である場合であってもよい。)には、そのフェムトセル用基地局の位置を測位位置(現在位置)とみなして出力することとしてもよい。
【0130】
なお、通信可能となった基地局がフェムトセル用基地局であるか否かの判定は、基地局間通信において基地局から受信する基地局IDをもとに判定する。その際の判定方法は、基地局IDのうち、基地局の種別を表すIDのビット(桁)をもとに判定することとしてもよいし、基地局データ803に記憶されている情報をもとに判定することとしてもよい。
【0131】
より具体的には、例えば、図7に示したGPS制御処理は、図17に示す第3GPS制御処理のように変更してもよい。図17における第3GPS制御処理は、図7のGPS制御処理に対して、ステップC101〜C107の処理が追加された内容となっている。即ち、ステップA7の処理の後、ホストCPU30は、起動時基地局と停止時基地局それぞれに同一のフェムトセル用基地局が含まれているか否かを判定する(ステップS101)。
【0132】
そして、同一のフェムトセル用基地局が含まれていなければ(ステップS101;No)処理をステップA9に移行する。含まれていれば(ステップS101;Yes)、そのフェムトセル用基地局の位置を基地局データ803から読み出して、測位位置として出力する(ステップS102)。そして、ホストCPU30は、測位モード9011を「フェムトセル位置出力モード」とし、測位位置9013をフェムトセル用基地局の位置として測位データ901に新たに蓄積するとともに(ステップC103)、フェムトセル用基地局の位置を初期位置として設定する(ステップC104)。
【0133】
次いで、ホストCPU30は、操作部40から測位終了指示がなされたか否かを判定し(ステップC105)、なされたと判定した場合は(ステップC105;Yes)処理をステップA21へ移行する。一方、測位終了指示がなされていない場合には(ステップC105;No)、ホストCPU30は、各基地局との間の基地局通信を試み(ステップC106)、通信可能となった基地局にフェムトセル用基地局が含まれているか否かを判定する(ステップC107)。フェムトセル用基地局が含まれている場合には(ステップC107;Yes)、ステップC102に戻り、再度ステップC102〜C107の処理を繰り返す。一方、フェムトセル用基地局が含まれていない場合には、ステップA15へ処理を移行してGPS測位処理を実行する(ステップA15)。
【0134】
以上の処理により、起動時基地局と停止時基地局それぞれに同一のフェムトセル用基地局が有った場合には、GPS測位処理を行わず、その同一のフェムトセル用基地局の位置を現在位置(測位位置)として出力することができる。また、フェムトセル用基地局との間で基地局通信ができる間は、GPS測位処理を行わず、そのフェムトセル用基地局の位置を現在位置(測位位置)として出力することができる。また、上述のステップC101〜C107を図13に示した第2GPS制御処理に組み込むことも可能である。この場合、ステップB7の後にステップC101〜C107の処理を組み込むとよい。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】携帯型電話機の構成を示すブロック図。
【図2】(A)フラッシュROMの構成を示す図。(B)RAMの構成を示す図。
【図3】最新測位データのデータ構成例を示す図。
【図4】停止時基地局データのデータ構成例を示す図。
【図5】測位データのデータ構成例を示す図。
【図6】起動時基地局データのデータ構成例を示す図。
【図7】GPS制御処理の流れを示すフローチャート。
【図8】(A)フラッシュROMの構成を示す図。(B)RAMの構成を示す図。
【図9】第2最新測位データのデータ構成例を示す図。
【図10】第2停止時基地局データのデータ構成例を示す図。
【図11】第2測位データのデータ構成例を示す図。
【図12】第2起動時基地局データのデータ構成例を示す図。
【図13】第2GPS制御処理の流れを示すフローチャート。
【図14】第2GPS制御処理の流れを示すフローチャート。
【図15】新規基地局基準補正処理における位置補正の原理を説明するための図。
【図16】信号強度基準補正処理における位置補正の原理を説明するための図。
【図17】第3GPS制御処理の流れを示すフローチャート。
【符号の説明】
【0136】
1 携帯型電話機、 5 GPSアンテナ、 10 GPS受信部、
11 RF受信回路部、 13 ベースバンド処理回路部、 20 TCXO、
30 ホストCPU、 40 操作部、 50 表示部、 60 携帯電話用アンテナ、
70 携帯電話用無線通信回路部、 80 フラッシュROM、 90 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位用衛星からの衛星信号を受信して現在位置を測位する測位部と、各所に設置された基地局との間でハンドオーバーをしつつ無線通信を行う無線通信部とを備えた移動体端末の現在位置を推定する現在位置推定方法であって、
前記測位部の測位終了の際に、前記測位部により最後に測位された測位位置と少なくとも前記無線通信部により無線通信されていた基地局の識別情報を含む通信状況とを記憶することと、
前記測位部の測位再開の際に、前記無線通信部による現在の無線通信の通信状況と前記記憶した通信状況とを比較判定することと、
前記比較判定により一致すると判定された場合に、前記記憶した測位位置を前記移動体端末の現在位置と推定することと、
を含む現在位置推定方法。
【請求項2】
前記記憶することは、前記測位部の測位終了の際の前記無線通信部の通信相手の基地局の組合せを前記通信状況に含めて記憶することであり、
前記比較判定は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せと前記記憶した基地局の組合せとを比較判定することである、
請求項1に記載の現在位置推定方法。
【請求項3】
前記比較判定は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局と前記記憶した基地局それぞれに同一のフェムトセル用基地局が含まれている、又は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局と前記記憶した基地局とが同一のフェムトセル用基地局であるかを判定することを含み、
前記現在位置の推定は、前記判定により同一のフェムトセル用基地局が含まれている、又は、同一のフェムトセル用基地局であると判定された場合に、前記同一のフェムトセル用基地局の位置情報を、前記無線通信部による前記無線通信が可能な基地局の位置情報を記憶した記憶部から読み出し、該読み出した位置情報の示す位置を前記移動端末の現在位置と推定することを含む、
請求項2に記載の現在位置推定方法。
【請求項4】
前記同一のフェムトセル用基地局の位置を前記移動端末の現在位置と推定した後、前記同一のフェムトセル用基地局或いは他のフェムトセル用基地局との通信が可能な状態であれば、フェムトセル用通信基地局との通信が可能な間は、当該通信可能なフェムトセル用基地局の位置を前記移動端末の現在位置と推定することを含む請求項3に記載の現在位置推定方法。
【請求項5】
前記記憶することは、前記測位部の測位終了の際の前記無線通信部の通信相手の基地局の組合せ及び該各基地局との間の電波状態を前記通信状況に含めて記憶することであり、
前記比較判定は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せ及び該各基地局との間の電波状態を、前記記憶した基地局の組合せ及び電波状態と比較判定することである、
請求項1に記載の現在位置推定方法。
【請求項6】
前記比較判定は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せと前記記憶した基地局の組合せとが同一であり、且つ、電波状態の差異が所定の近似条件を満たす場合に、前記無線通信部による現在の無線通信の通信状況と前記記憶した通信状況とが同一であると判定することであり、
前記現在位置の推定は、前記比較判定により、基地局の組合せが同一であるが、電波状態の差異が前記所定の近似条件を満たさないと判定された場合に、前記記憶しておいた各基地局との間の電波状態と、現在の電波状態とに基づいて、前記記憶した測位位置を補正して現在位置を推定することを含む請求項5に記載の現在位置推定方法。
【請求項7】
前記現在位置の推定は、前記比較判定により、基地局の組合せの一部が同一であると判定された場合に、現在の通信相手の基地局のうち、前記記憶した基地局ではない基地局の位置情報を、前記無線通信部による前記無線通信が可能な基地局の位置情報を記憶した記憶部から読み出し、該読み出した位置情報で、前記記憶した測位位置を補正して現在位置を推定することを含む請求項2〜6の何れか一項に記載の現在位置推定方法。
【請求項8】
前記測位部は前記衛星信号の受信状況に応じて演算精度を可変して測位を行い、
前記記憶することは、測位終了の際の前記測位部の演算精度を更に記憶することを含み、
前記測位部の測位再開の際に、前記記憶した演算精度が所定の精度条件を満たすか否かを判定することを更に含み、
前記現在位置の推定は、前記所定の精度条件を満たすと判定された場合には現在位置の推定を行わず、満たさないと判定された場合に現在位置の推定を行うことである、
請求項1〜7の何れか一項に記載の現在位置推定方法。
【請求項9】
測位用衛星からの衛星信号を受信して現在位置を測位する測位部と、各所に設置された基地局との間でハンドオーバーをしつつ無線通信を行う無線通信部とを備えた移動体端末の前記測位部が行う測位方法であって、
請求項1〜8の何れか一項に記載の現在位置推定方法により推定された現在位置を初期位置として、前記受信した衛星信号に基づく測位を行う測位方法。
【請求項10】
測位用衛星からの衛星信号を受信して現在位置を測位する測位部と、各所に設置された基地局との間でハンドオーバーをしつつ無線通信を行う無線通信部とを備えた移動体端末であるコンピュータに、請求項1〜8の何れか一項に記載の現在位置推定方法、又は、請求項9に記載の測位方法を実行させるためのプログラム。
【請求項11】
測位用衛星からの衛星信号を受信して現在位置を測位する測位部と、各所に設置された基地局との間でハンドオーバーをしつつ無線通信を行う無線通信部とを備えた移動体端末であって、
前記測位部の測位終了の際に、前記測位部により最後に測位された測位位置と少なくとも前記無線通信部により無線通信されていた基地局の識別情報を含む通信状況とを記憶する記憶制御部と、
前記測位部の測位再開の際に、前記無線通信部による現在の無線通信の通信状況と前記記憶制御部に記憶された通信状況とを比較判定する比較判定部と、
前記比較判定部により一致すると判定された場合に、前記記憶制御部により記憶された測位位置を前記移動体端末の現在位置と推定する現在位置推定部と、
を備えた移動体端末。
【請求項12】
前記記憶制御部は、前記測位部の測位終了の際の前記無線通信部の通信相手の基地局の組合せを前記通信状況に含めて記憶し、
前記比較判定部は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せと前記記憶制御部により記憶された基地局の組合せとを比較判定する、
請求項11に記載の移動体端末。
【請求項13】
前記比較判定部は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局と前記記憶制御部により記憶された基地局それぞれに同一のフェムトセル用基地局が含まれている、又は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局と前記記憶制御部により記憶された基地局とが同一のフェムトセル用基地局であるかを判定するフェムトセル用基地局判定部を含み、
前記現在位置推定部は、前記判定により同一のフェムトセル用基地局が含まれている、又は、同一のフェムトセル用基地局であると判定された場合に、前記同一のフェムトセル用基地局の位置情報を、前記無線通信部による前記無線通信が可能な基地局の位置情報を記憶した記憶部から読み出し、該読み出した位置情報の示す位置を前記移動端末の現在位置と推定する、
請求項12に記載の移動体端末。
【請求項14】
前記記憶制御部は、前記測位部の測位終了の際の前記無線通信部の通信相手の基地局の組合せ及び該各基地局との間の電波状態を前記通信状況に含めて記憶し、
前記比較判定部は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せ及び該各基地局との間の電波状態を、前記記憶制御部により記憶された基地局の組合せ及び電波状態と比較判定する、
請求項11に記載の移動体端末。
【請求項15】
前記比較判定部は、前記無線通信部による現在の通信相手の基地局の組合せと前記記憶制御部により記憶された基地局の組合せとが同一であり、且つ、電波状態の差異が所定の近似条件を満たす場合に、前記無線通信部による現在の無線通信の通信状況と前記記憶制御部により記憶された通信状況とが同一であると判定し、
前記現在位置推定部は、前記比較判定部により、基地局の組合せが同一であるが、電波状態の差異が前記所定の近似条件を満たさないと判定された場合に、前記記憶制御部により記憶された各基地局との間の電波状態と、現在の電波状態とに基づいて、前記記憶された測位位置を補正して現在位置を推定する第1の補正推定部を有する請求項14に記載の移動体端末。
【請求項16】
前記記憶制御部は、前記無線通信部による前記無線通信が可能な基地局の位置情報を記憶する位置情報記憶制御部を有し、
前記現在位置推定部は、前記比較判定部により、基地局の組合せの一部が同一であると判定された場合に、現在の通信相手の基地局のうち、前記記憶制御部により記憶された基地局ではない基地局の位置情報を、前記位置情報記憶制御部から読み出して取得し、該取得した位置情報で、前記記憶制御部により記憶された測位位置を補正して現在位置を推定する第2の補正推定部を有する請求項12〜15の何れか一項に記載の移動体端末。
【請求項17】
前記測位部は前記衛星信号の受信状況に応じて演算精度を可変して測位を行い、
前記記憶制御部は、測位終了の際の前記測位部の演算精度を更に記憶し、
前記測位部の測位再開の際に、前記記憶制御部により記憶された演算精度が所定の精度条件を満たすか否かを判定する測位精度判定部を更に備え、
前記現在位置推定部は、前記測位精度判定部により前記所定の精度条件を満たすと判定された場合には現在位置の推定を行わず、満たさないと判定された場合に現在位置の推定を行う、
請求項11〜16の何れか一項に記載の移動体端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−224657(P2008−224657A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338825(P2007−338825)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】