説明

画像処理装置、荷物搬送設備、及びプログラム

【課題】最適な方法で3次元マップを生成できる画像処理装置、荷物搬送設備、及びそのプログラムを提供する。
【解決手段】荷物搬送設備100の制御部70は、カメラ10を移動させて、二地点において撮像させた二枚の2次元画像に基づいて部分的な3次元マップを生成する3次元マップ生成手段を備える。制御部70は、予め、ガイドレール90上の各地点からカメラ10に撮影させて、それらの画像から全体の3次元マップを生成して記憶させる。制御部70は、記憶している全体の3次元マップに基づいて、任意の撮像対象地点を見通せる地点を導出し、その地点の近傍でカメラ10に撮像対象地点が撮影できた3次元マップが生成できるまで撮像させ、その部分の3次元マップを生成し、撮影対象地点の3次元マップを取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一台のカメラが移動して複数の地点で撮像した複数の2次元画像に基づいて3次元マップを生成する画像処理装置、荷物搬送設備、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫や工場等に設置された荷物搬送設備が、安全に荷物を搬送するためには、荷置き地点の3次元マップを生成し、その3次元マップに基づいて荷物を搬送することが適当である。
【0003】
例えば、特許文献1では、車両に搭載された一台もしくは複数台のカメラの2次元画像から、3次元マップを生成し、その3次元マップから、例えば、上空等の視点から見た車両周囲の全方向画像を生成する画像生成装置が提案されている。
【0004】
しかし、現在取得している2次元画像だけから3次元マップを生成しようとすると、車両の死角になる部分が生じ、完全な3次元マップを生成できない。そこで、同じく特許文献1の画像生成装置は、その死角部分を補完する為に、車両の移動に伴い、刻々変化していくカメラの2次元画像を蓄積しておき、蓄積された2次元画像を使用して3次元マップを生成する。
【特許文献1】特許第3286306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の技術では、過去に撮像した2次元画像をそのまま使用して3次元マップを生成していたので、過去に撮像した2次元画像に最適なものが存在しない場合には3次元マップを生成することができず、最適な方法であるとは言えなかった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、最適な方法で3次元マップを生成できる画像処理装置、及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【0007】
また、最適な方法で3次元マップを生成し、生成した3次元マップに基づいて荷物の搬送を行う荷物搬送設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る画像処理装置は、
移動可能領域を移動して2次元画像を撮像するカメラと、
前記カメラが前記移動可能領域の二地点において撮像した二枚の2次元画像に基づいて当該二地点からの3次元マップを生成する3次元マップ生成手段と、
前記3次元マップ生成手段に予め前記移動可能領域の各二地点からの複数の3次元マップを生成させ、それらを合わせて全体マップを生成する全体マップ生成手段と、
前記全体マップ生成手段が生成した全体マップに基づいて、任意の撮像対象を見通せる地点を導出する見通し地点導出手段と、
前記見通し地点導出手段が導出した地点の近傍で前記カメラに撮像させ、前記3次元マップ生成手段に当該地点からの3次元マップを生成させ、前記撮像対象の3次元マップを取得する対象画像取得手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
例えば、前記3次元マップ生成手段が生成した3次元マップが正当であるか否かを判別する3次元マップ判別手段をさらに備え、
前記対象画像取得手段は、
前記見通し地点導出手段が導出した地点の近傍の一地点で前記カメラに撮像させ、
前記カメラを所定の距離、移動させて当該近傍の他の一地点で撮像させ、
前記カメラが当該二地点で撮像した二枚の2次元画像に基づいて前記3次元マップ生成手段に3次元マップを生成させ、
生成した3次元マップが正当であるか否かを前記3次元マップ判別手段に判別させ、
当該3次元マップが正当でない場合には、前記カメラを再び所定の距離、移動させて撮像させ、
得られた2次元画像のうちの二枚に基づいて前記3次元マップ生成手段に3次元マップを生成させる
処理を、正当な3次元マップが得られるまで繰り返してもよい。
【0010】
例えば、前記対象画像取得手段が取得した3次元マップから前記撮像対象の地点に障害物があるか否かを判別する障害物判別手段をさらに備えてもよい。
【0011】
例えば、前記障害物判別手段は、前記全体マップ生成手段が生成した全体マップと、前記対象画像取得手段が取得した3次元マップとを比較して、前記撮像対象の地点に障害物があるか否かを判別してもよい。
【0012】
本発明の第2の観点に係る荷物搬送設備は、
移動可能領域を移動して、任意の荷取り地点で荷取りを行い、任意の荷置き地点で荷置きを行うクレーンと、
前記クレーンと共に前記移動可能領域を移動して2次元画像を撮像するカメラと、
前記カメラが二地点において撮像した二枚の2次元画像に基づいて3次元マップを生成する3次元マップ生成手段と、
前記3次元マップ生成手段に予め移動可能領域の各二地点からの複数の3次元マップを生成させ、それらを合わせて全体マップを生成する全体マップ生成手段と、
前記全体マップ生成手段が生成した全体マップに基づいて、任意の荷置き地点を見通せる地点を導出する見通し地点導出手段と、
前記見通し地点導出手段が導出した地点の近傍で前記カメラに撮像させ、前記3次元マップ生成手段に当該地点からの3次元マップを生成させ、前記荷置き地点の3次元マップを取得する対象画像取得手段と、
前記対象画像取得手段が生成した前記荷置き地点の3次元マップから前記荷置き地点に障害物があるか否かを判別する障害物判別手段と、
前記荷置き地点に障害物がないと前記障害物判別手段が判別した場合に、前記荷置き地点において前記クレーンが荷置きを行うように制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
例えば、前記3次元マップ生成手段が生成した3次元マップが正当であるか否かを判別する3次元マップ判別手段をさらに備え、
前記対象画像取得手段は、
前記見通し地点導出手段が導出した地点の近傍の一地点で前記カメラに撮像させ、
前記カメラを所定の距離、移動させて当該近傍の他の一地点で撮像させ、
前記カメラが当該二地点で撮像した二枚の2次元画像に基づいて前記3次元マップ生成手段に3次元マップを生成させ、
生成した3次元マップが正当であるか否かを前記3次元マップ判別手段に判別させ、
当該3次元マップが正当でない場合には、前記カメラを再び所定の距離、移動させて撮像させ、
得られた2次元画像のうちの二枚に基づいて前記3次元マップ生成手段に3次元マップを生成させる
処理を、正当な3次元マップが得られるまで繰り返してもよい。
【0014】
例えば、前記障害物判別手段は、前記全体マップ生成手段が生成した全体マップと、前記対象画像取得手段が取得した3次元マップとを比較して、前記荷置き地点に障害物があるか否かを判別してもよい。
【0015】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、
移動可能領域を移動して2次元画像を撮像するカメラを備えるコンピュータを、
前記カメラが二地点において撮像した二枚の2次元画像に基づいて当該二地点からの3次元マップを生成する3次元マップ生成手段、
前記3次元マップ生成手段に予め前記移動可能領域の各二地点からの複数の3次元マップを生成させ、それらを合わせて全体マップを生成する全体マップ生成手段、
前記全体マップ生成手段が生成した全体マップに基づいて、任意の撮像対象を見通せる地点を導出する見通し地点導出手段、
前記見通し地点導出手段が導出した地点の近傍で前記カメラに撮像させ、前記3次元マップ生成手段に当該地点からの3次元マップを生成させ、前記撮像対象の3次元マップを取得する対象画像取得手段、
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、最適な方法で3次元マップを生成できる。
【0017】
また、本発明によれば、最適な方法で3次元マップを生成し、生成した3次元マップに基づいて荷物の搬送を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る荷物搬送設備を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1に示すように、荷物搬送設備100は、カメラ10と、カメラコントローラ20と、モータコントローラ40と、クレーン50と、制御部70と、移動体80と、ガイドレール90とを備える。
また、図2に示すように、荷物搬送設備100は、電気系統として、カメラ10と、カメラコントローラ20と、移動モータ30と、モータコントローラ40と、クレーン50と、クレーンコントローラ60と、制御部70とを備える。
【0020】
カメラ10は、図1に示すように、移動体80に下向き(Z軸方向)に固定されて取り付けられており、カメラコントローラ20からの指示により移動体80の真下の様子を撮影する。
【0021】
カメラコントローラ20は、制御部70の指示に従って、カメラ10に所要の動作を実行させるとともに、カメラ10で撮像された画像を制御部70に転送する。
【0022】
移動モータ30は、移動体80の下面に取り付けられ、モータコントローラ40の制御に従って移動体80をガイドレール90に沿って移動させる。
【0023】
モータコントローラ40は、制御部70の指示に従って、移動モータ30を制御する。
【0024】
クレーン50は、図1に示すように、移動体80に下向き(Z軸方向)に固定されて取り付けられており、クレーンコントローラ60からの指示により、任意の荷取り地点で荷取りを行い、任意の荷置き地点で荷置きを行う。
【0025】
クレーンコントローラ60は、制御部70の指示に従って、クレーン50を制御する。
【0026】
制御部70は、動作プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、ユーザによる適当な数値入力等を受けて実行されるプログラム及び必要な情報を適宜記憶しておくRAM(Random Access Memory)、後述する前3次元マップデータ71等を記憶するハードディスク、及びCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)等から構成される。制御部70は、所定の動作プログラムを実行することで、カメラコントローラ20から転送された撮像画像を処理するとともに、カメラコントローラ20とモータコントローラ40とクレーンコントローラ60とを制御する。この制御部70内に3次元マップ生成手段、見通し地点導出手段、対象画像取得手段、3次元マップ判別手段及び障害物判別手段が設けられている。
【0027】
例えば、制御部70は、図3に示すように、荷取り地点でクレーン50に荷物を取らせ、それを見通し地点導出手段により導出させた地点である荷置き地点の近傍に搬送し、荷置き地点近傍の画像をカメラ10に複数枚、撮影させ、3次元マップ生成手段によりそれらの画像に基づいてステレオマッチング法による処理を行い、荷置き地点近傍の3次元マップを生成する。そして、生成した3次元マップに基づいて、障害物判別手段により障害物があるかないかを判別し、障害物がないと判別した場合には、図3に示すように、荷置き地点でクレーン50に荷物を降ろさせる。
【0028】
前3次元マップデータ71は、荷物搬送設備100が設置されたときや荷物搬送設備100に電源が投入されたときに、カメラ10に走査させて得た移動体80真下の床全体(移動可能領域全体)の3次元マップである。前3次元マップデータ71は、XY座標の項目と、そのXY座標における床のZ座標の項目と、そのZ座標を算出するために使用した二枚の2次元画像を撮影したときのカメラ10位置のX座標の項目二つと、から構成される。この前3次元マップデータ71は、荷物搬送設備100が、荷物を搬送する場合において、障害物判別手段による荷置き地点に障害物があるかないかを判別するときに見通し地点導出手段によりカメラ10に荷置き地点を撮影させる場所を決定するために使用される。
【0029】
移動体80には、カメラ10と、カメラコントローラ20と、移動モータ30と、モータコントローラ40と、クレーン50と、クレーンコントローラ60とが取り付けられている。移動体80は、カメラ10やクレーン50等と共に、X軸方向に平行移動する。
移動体80の下面には、図3に示すように、移動モータ30により駆動される複数の車輪35と、被搬送物を把持するクレーン50とが取り付けられている。複数の車輪35は、離間したそれぞれのガイドレール90上に備えられ、図1に示すように、移動体80は、この複数の車輪35を介してガイドレール90に支承されている。
【0030】
図1に示すように、2本のガイドレール90は、平行に配設され、移動体80を図中の矢印で示す方向(X軸方向)にガイド可能に支承している。また、ガイドレール90は、移動体80を支承可能な十分な剛度を備えた鋼材から構成されている。
【0031】
以下、上記構成の荷物搬送設備100の動作を説明する。
【0032】
先ず、荷物搬送設備100は、設置されたときや電源が投入されたときに、図5に示すように、カメラ10を移動可能領域全体に走査させて、移動体80真下の移動可能領域全体の3次元マップを前3次元マップデータ71として得る。
【0033】
具体的に説明すると、荷物搬送設備100は、カメラ10に撮像させてから、所定の距離を移動させ、再び撮像させ、撮像させた2次元画像と、その一つ前に撮像させた2次元画像との二枚の画像に基づいて、ステレオマッチング法により、それらの二画像の重複する部分の3次元マップを生成することを繰り返し、全体の3次元マップを生成する。
【0034】
図6(a)に示すように、カメラ10の光軸方向はZ軸方向であり、カメラ10の移動方向はX軸方向であり、点O’は、カメラ10の光学中心である。点Q(u,v,f)は、カメラ10が焦点距離Z=fにおいて得ることのできる2次元画像(画像1)上の点である。点O’と点Qとの延長線上に、点Qに対応する撮影対象である点P(xp,yp,zp)が存在する。点Qと点Pとのパラメータの間には、次の関係式が成立する。
【0035】
(数1)
xp/u=yp/v=zp/f
・・・・・・(1)
【0036】
図6(b)に示すように、荷物搬送設備100は、カメラ10を移動させ、撮影させて二枚の2次元画像を得る。この場合には、カメラ10の光学中心は点O’から点O’’に移動し、荷物搬送設備100は、画像2を得る。その二枚の2次元画像(画像1と画像2)から所定の特徴抽出フィルタで特徴点を抽出し、テンプレートマッチング法によって二画像間の各特徴点を対応付ける。画面1における点Q(u,v,f)に、画面2における点Q’(u’,v’,f)が対応する場合には、次の関係式が成立する。
【0037】
(数2)
xp/u’=yp/v’=zp/f
・・・・・・(2)
【0038】
ただし、カメラ10は、光軸を平行に保ちながらX軸方向に移動するので、v=v’とすることができる。荷物搬送設備100は、数式(1)と(2)を連立させることによって、点Pの座標を導出し、点Pの座標と、それを導出するための2次元画像を得たときのカメラ10のX座標とを前3次元マップデータ71に記載する。
【0039】
荷物搬送設備100は、二画像間で対応付けられた各特徴点について、このような処理を行うことによって、二画像に基づく部分の3次元マップを生成することができる。また、この処理を繰り返し、全体マップ生成手段により全体の3次元マップ(全体マップ)を生成し、前3次元マップデータ71として記憶する。
【0040】
また、荷物搬送設備100は、ユーザの入力に応答して、荷物の搬送を行う。荷物搬送設備100は、図3に示すように、荷取り地点でクレーン50に荷物を取らせ、荷置き地点の3次元マップを生成するために最適なカメラ10の位置を見通し地点導出手段により前3次元マップデータ71から取得する。荷物搬送設備100は、図7に示すように、見通し地点導出手段により前3次元マップデータ71から取得した位置にカメラ10を移動させ、その位置近傍の画像をカメラ10に複数枚、撮影させる。それらの画像に基づいて、対象画像取得手段は、上記と同様に3次元マップ生成手段によりステレオマッチング法による処理を行い、荷置き地点近傍の3次元マップを生成する。そして、生成した3次元マップに基づいて、障害物判別手段により荷置き地点に障害物があるかないかを判別し、障害物がないと判別した場合には、図3に示すように、荷置き地点でクレーン50に荷物を降ろさせる。
【0041】
ここで、荷物搬送設備100が設置されたときや電源が投入されたときに行う前処理を説明する。荷物搬送設備100は、設置されたときにカメラ10真下にある荷物搬送設備100の移動可能領域全体の3次元マップを生成し、前3次元マップデータ71として記憶する。
【0042】
以下、図8に示すフローチャートを参照しながら、前処理を詳細に説明する。
【0043】
荷物搬送設備100に電源が投入された場合、荷物搬送設備100の制御部70は、移動体80をガイドレール90の片方の端部(移動可能領域の始端部)に移動させ(ステップS110)、カメラ10に撮影させる(ステップS120)。
【0044】
次に、制御部70は、移動体80を上記端部からその反対方向に所定の距離、移動させ(ステップS130)、カメラ10に撮影させる(ステップS140)。
【0045】
制御部70内の3次元マップ生成手段は、ステップS140で撮影した2次元画像と、その一つ前に撮影した2次元画像とに基づく部分の3次元マップをステレオマッチング法により生成する3次元マップ生成処理を行う(ステップS150)。3次元マップ生成処理については、後述する。
【0046】
次に、制御部70内の全体マップ生成手段は、ステップS150において生成した3次元マップの情報と、その3次元マップの生成に使用した2次元画像を撮影した時のカメラ10のX座標の情報とを前3次元マップデータ71に記載する(ステップS160)。
【0047】
制御部70は、移動体80がガイドレール90のもう片方の端部(移動可能領域の終端部)に到達したか否かを判別する(ステップS170)。
【0048】
カメラ10がガイドレール90のもう片方の端部(移動可能領域の終端部)に到達していないと判別すると(S170;NO)、制御部70は、処理をステップS130に戻す。
【0049】
カメラ10がガイドレール90のもう片方の端部(移動可能領域の終端部)に到達したと判別すると(S170;YES)、制御部70は、荷物搬送設備100の移動可能領域全体をカメラ10が撮影したと判断して全体マップ生成のための処理を終了する。
【0050】
このようにして、前処理によれば、荷物搬送設備100は、カメラ10を所定の距離ずつ移動させ、撮影させ、3次元マップ生成手段により各前後二枚の2次元画像に基づいて3次元マップを生成し、全体マップ生成手段により各3次元マップのデータを前3次元マップデータ71に記載することで、荷物搬送設備100の移動可能領域全体の3次元マップを生成することができる。なお、前3次元マップデータ71に記載された3次元マップの情報と、その3次元マップの生成に使用した2次元画像を撮影した時のカメラ10のX座標の情報とは、後の搬送処理において使用される。
【0051】
次に、荷物搬送設備100が行う搬送処理を説明する。荷物搬送設備100は、ユーザの入力に応じて荷取りと荷置きとを行う。
【0052】
以下、図9に示すフローチャートを参照しながら、搬送処理を詳細に説明する。
【0053】
ユーザの入力により所定の荷取り地点で荷取りを行い、所定の荷置き地点で荷置きを行う旨の指示を受けると、制御部70は、先ず、荷取り地点でクレーン50に荷取りを行わせる(ステップS210)。
【0054】
制御部70内の見通し地点導出手段は、全体マップ生成手段により作成された前3次元マップデータ71を参照して、荷置き地点を撮影するために好適なX座標(荷置き地点近傍)を求めて導出する。制御部70は、このX座標にカメラ10を移動させ(ステップS220)、制御部70内の対象画像取得手段により撮影させる(ステップS230)。具体的には、例えば、前3次元マップデータ71における荷置き地点の座標のカメラX座標1又はカメラX座標2を参照してそのX座標又はその付近にカメラ10を移動させる。
【0055】
次に制御部70内の対象画像取得手段は、カメラ10を所定の距離、移動させ(ステップS240)、撮影させる(ステップS250)。
【0056】
制御部70内の対象画像取得手段は、ステップS250で撮影した2次元画像と、ステップS230で撮影した2次元画像とに基づいて、3次元マップ生成手段によりステレオマッチング法により3次元マップを生成する3次元マップ生成処理を行う(ステップS260)。3次元マップ生成処理については、後述する。
【0057】
制御部70内の3次元マップ判別手段は、ステップS260において生成した3次元マップで荷置き地点が撮影されているか否かを判別する(ステップS270)。荷置き地点が撮影されていれば正当と判断し、撮影されていないときは否と判断する。荷置き地点が撮影されているか否かは、3次元マップで荷置き地点周辺の立体物の形状や大きさを判断して荷置き地点が周辺の立体物に隠されているか否かを判断する。
【0058】
人や荷物等の障害物に隠されることによりステップS260において生成した3次元マップで荷置き地点が撮影されていないと3次元マップ判別手段が判別すると(S270;NO)、制御部70は、カメラ10が荷置き地点近傍の外にあるか否かを判別する(ステップS280)。
【0059】
カメラ10が荷置き地点近傍にあると判別すると(S280;NO)、制御部70は、処理をステップS240に戻す。
【0060】
カメラ10が荷置き地点近傍にないと判別すると(S280;YES)、制御部70は、荷置き地点近傍で荷置き地点が写った3次元マップが取得できなかったと判断して移動体80を荷取り地点に戻して(ステップS290)、クレーン50に荷置きを行わせ(ステップS310)、処理を終了する。
【0061】
ステップS260において生成した3次元マップで荷置き地点が撮影されており正当と3次元マップ判別手段が判別すると(S270;YES)、制御部70内の障害物判別手段は、その3次元マップに基づいて荷置き地点に障害物があるか否かを判別する(ステップS300)。なお、荷置き地点に障害物があるか否かは、その3次元マップにおける荷置き地点付近に凹凸があるか否かで判別する。
【0062】
荷置き地点に障害物があると判別すると(S300;NO)、制御部70は、移動体80を荷取り地点に戻して(ステップS290)、荷取り地点でクレーン50に荷置きを行わせ(ステップS310)、処理を終了する。
【0063】
荷置き地点に障害物がないと判別すると(S300;YES)、制御部70は、荷置き地点でクレーン50に荷置きを行わせ(ステップS310)、処理を終了する。
【0064】
このようにして、搬送処理によれば、荷物搬送設備100は、過去のデータ(前3次元マップデータ71)に基づいて荷置き地点を撮影するために最適な地点(見通し地点)を取得し、その地点において荷置きをしようとしている現時点での撮影をし、現時点での3次元マップを生成し、この現時点での3次元マップに人や荷物等の障害物に隠されて荷置き地点が撮影されていなければ、カメラ10を所定距離動かして再度撮影し、その撮影データで3次元マップを生成し直す。そして、荷置き地点が撮影されている現時点の3次元マップができるまでカメラ10を所定距離動かして撮影を繰り返す。荷置き地点が撮影できなければ、荷物を荷取り地点に戻し、荷置き地点が撮影された3次元マップが生成できたら荷置き地点に障害物があるか否かを判別して、障害物がない場合には荷置きさせることができる。このため、人や荷物等の位置が刻々と変化する場所であっても、荷置き地点の3次元マップを高い確率で生成でき、人や荷物等の障害物の上に荷置きをしてしまう事故を起こさず荷置きをさせることができる。
【0065】
次に、荷物搬送設備100が行う3次元マップ生成処理(S150又はS260)を説明する。荷物搬送設備100は、カメラ10が撮影した2次元画像に基づいてステレオマッチング法による処理を行って3次元マップを生成する。
【0066】
以下、図10に示すフローチャートを参照しながら、3次元マップ生成処理を詳細に説明する。
【0067】
先ず、制御部70は、処理に使用する前後の2次元画像を取得する(ステップS310)。具体的に述べると、前処理においては、ステップS140で撮影した2次元画像と、その一つ前(S120又はS140)に撮影した2次元画像とを取得する。また、搬送処理においては、ステップS250で撮影した2次元画像と、ステップS230で撮影した2次元画像とを取得する。
【0068】
次に、制御部70内の3次元マップ生成手段は、ステップS310で取得した二枚の2次元画像から所定の特徴抽出フィルタで特徴点を抽出し(ステップS320)、テンプレートマッチング法によって二画像間の各特徴点を対応付ける(ステップS330)。
【0069】
制御部70内の3次元マップ生成手段は、二画像間の対応する特徴点の各移動ベクトルのうちで、カメラ10の移動ベクトルに見合わないものがある場合に、その特徴点を異常であると判別して除去する(ステップS340)。
【0070】
制御部70内の3次元マップ生成手段は、異常なものを除去した後の各特徴点に基づいて、ステレオマッチング法により、各特徴点の3次元座標を算出し(ステップS350)、3次元マップを生成し(ステップS360)、処理を終了する。
【0071】
このようにして、3次元マップ生成処理によれば、荷物搬送設備100は、二枚の2次元画像に基づいて、3次元マップを生成することができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態に係る荷物搬送設備100によれば、過去のデータに基づいて、最適な2次元画像の撮影位置(見通し地点)を判別し、その位置で撮影した2次元画像に基づいて荷置きをしようとしている現時点での最適な3次元マップを生成し、生成した3次元マップに基づいて障害物の有無を判別し、荷物の搬送を行うことができる。人や荷物等の位置が刻々と変化する場所において、人や荷物等が障害物となり荷置き地点の撮影がうまくいかないときでも、カメラ10を所定距離ずつ動かして荷置き地点が写った3次元マップが生成できるまで撮影を繰り返すので、確実に現時点での荷置き地点の3次元マップが生成でき、その3次元マップによって荷置き地点に障害物があるかないかを判断して荷置きをすることができる。
【0073】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の応用及び変形が可能である。
【0074】
上記実施例では、カメラ10が設けられた移動体80は、ガイドレール90に沿って一軸上を移動したが、これに限らず、移動体80がXY軸の2軸上を平面的に移動するようにしてあってもよい。
また、上記実施形態の前処理においては、ステップS140で撮影した2次元画像と、その一つ前(S120又はS140)に撮影した2次元画像とに基づいて3次元マップを生成したが、任意に二枚の2次元画像を選択して、選択した2次元画像に基づいて3次元マップを生成してもよい。
【0075】
また、上記実施形態の搬送処理においては、ステップS250で撮影した2次元画像と、ステップS230で撮影した2次元画像とに基づいて3次元マップを生成したが、ステップS230で撮影した2次元画像と、その一つ前に撮影した2次元画像とに基づいて3次元マップを生成してもよい。また、任意に二枚の2次元画像を選択して、選択した2次元画像に基づいて3次元マップを生成してもよい。
【0076】
上記実施形態の搬送処理においては、その3次元マップにおける荷置き地点付近で凹凸があるか否かで、荷置き地点に障害物があるか否かを判別した。しかし、前処理で生成した3次元マップ(全体マップ)の荷置き地点付近と、搬送処理で生成した3次元マップの荷置き地点付近とを比較して異なるか否かで、荷置き地点に障害物があるか否かを判別してもよい。
【0077】
また、上記実施形態の3次元マップ生成処理では、3次元マップを生成するためにステレオマッチング法を使用したが、二枚の画像から3次元情報を得るのであれば他の方法を使用してもよい。
【0078】
また、具体的な細部構成や細部方法等についても適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、カメラ10は、移動体の真下の様子を撮影したが、真下ではなくカメラ10の光軸を斜め下になるように設置し、下方の様子を撮影するようにしてもよい。この場合、下方の様子に真下を含ませても含まなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態に係る荷物搬送設備の斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る荷物搬送設備のブロック図である。
【図3】本発明の実施形態に係る荷物搬送設備の動作を説明するための図である。
【図4】図2の制御部が記憶する前3次元マップデータを説明するための表である。
【図5】本発明の実施形態に係る荷物搬送設備が全体の3次元マップを生成するときの動作を説明するための図である。
【図6】ステレオマッチング法による3次元マップの生成方法を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態に係る荷物搬送設備が荷置きを行うために部分的な3次元マップを生成するときの動作を説明するための図である。
【図8】前処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】搬送処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】3次元マップ生成処理を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
10 カメラ
20 カメラコントローラ
30 移動モータ
35 車輪
40 モータコントローラ
50 クレーン
60 クレーンコントローラ
70 制御部
71 前3次元マップデータ
80 移動体
90 ガイドレール
100 荷物搬送設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能領域を移動して2次元画像を撮像するカメラと、
前記カメラが前記移動可能領域の二地点において撮像した二枚の2次元画像に基づいて当該二地点からの3次元マップを生成する3次元マップ生成手段と、
前記3次元マップ生成手段に予め前記移動可能領域の各二地点からの複数の3次元マップを生成させ、それらを合わせて全体マップを生成する全体マップ生成手段と、
前記全体マップ生成手段が生成した全体マップに基づいて、任意の撮像対象を見通せる地点を導出する見通し地点導出手段と、
前記見通し地点導出手段が導出した地点の近傍で前記カメラに撮像させ、前記3次元マップ生成手段に当該地点からの3次元マップを生成させ、前記撮像対象の3次元マップを取得する対象画像取得手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記3次元マップ生成手段が生成した3次元マップが正当であるか否かを判別する3次元マップ判別手段をさらに備え、
前記対象画像取得手段は、
前記見通し地点導出手段が導出した地点の近傍の一地点で前記カメラに撮像させ、
前記カメラを所定の距離、移動させて当該近傍の他の一地点で撮像させ、
前記カメラが当該二地点で撮像した二枚の2次元画像に基づいて前記3次元マップ生成手段に3次元マップを生成させ、
生成した3次元マップが正当であるか否かを前記3次元マップ判別手段に判別させ、
当該3次元マップが正当でない場合には、前記カメラを再び所定の距離、移動させて撮像させ、
得られた2次元画像のうちの二枚に基づいて前記3次元マップ生成手段に3次元マップを生成させる
処理を、正当な3次元マップが得られるまで繰り返す、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記対象画像取得手段が取得した3次元マップから前記撮像対象の地点に障害物があるか否かを判別する障害物判別手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記障害物判別手段は、前記全体マップ生成手段が生成した全体マップと、前記対象画像取得手段が取得した3次元マップとを比較して、前記撮像対象の地点に障害物があるか否かを判別する、
ことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
移動可能領域を移動して、任意の荷取り地点で荷取りを行い、任意の荷置き地点で荷置きを行うクレーンと、
前記クレーンと共に前記移動可能領域を移動して2次元画像を撮像するカメラと、
前記カメラが二地点において撮像した二枚の2次元画像に基づいて3次元マップを生成する3次元マップ生成手段と、
前記3次元マップ生成手段に予め前記移動可能領域の各二地点からの複数の3次元マップを生成させ、それらを合わせて全体マップを生成する全体マップ生成手段と、
前記全体マップ生成手段が生成した全体マップに基づいて、任意の荷置き地点を見通せる地点を導出する見通し地点導出手段と、
前記見通し地点導出手段が導出した地点の近傍で前記カメラに撮像させ、前記3次元マップ生成手段に当該地点からの3次元マップを生成させ、前記荷置き地点の3次元マップを取得する対象画像取得手段と、
前記対象画像取得手段が生成した前記荷置き地点の3次元マップから前記荷置き地点に障害物があるか否かを判別する障害物判別手段と、
前記荷置き地点に障害物がないと前記障害物判別手段が判別した場合に、前記荷置き地点において前記クレーンが荷置きを行うように制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする荷物搬送設備。
【請求項6】
前記3次元マップ生成手段が生成した3次元マップが正当であるか否かを判別する3次元マップ判別手段をさらに備え、
前記対象画像取得手段は、
前記見通し地点導出手段が導出した地点の近傍の一地点で前記カメラに撮像させ、
前記カメラを所定の距離、移動させて当該近傍の他の一地点で撮像させ、
前記カメラが当該二地点で撮像した二枚の2次元画像に基づいて前記3次元マップ生成手段に3次元マップを生成させ、
生成した3次元マップが正当であるか否かを前記3次元マップ判別手段に判別させ、
当該3次元マップが正当でない場合には、前記カメラを再び所定の距離、移動させて撮像させ、
得られた2次元画像のうちの二枚に基づいて前記3次元マップ生成手段に3次元マップを生成させる
処理を、正当な3次元マップが得られるまで繰り返す、
ことを特徴とする請求項5に記載の荷物搬送設備。
【請求項7】
前記障害物判別手段は、前記全体マップ生成手段が生成した全体マップと、前記対象画像取得手段が取得した3次元マップとを比較して、前記荷置き地点に障害物があるか否かを判別する、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の荷物搬送設備。
【請求項8】
移動可能領域を移動して2次元画像を撮像するカメラを備えるコンピュータを、
前記カメラが二地点において撮像した二枚の2次元画像に基づいて当該二地点からの3次元マップを生成する3次元マップ生成手段、
前記3次元マップ生成手段に予め前記移動可能領域の各二地点からの複数の3次元マップを生成させ、それらを合わせて全体マップを生成する全体マップ生成手段、
前記全体マップ生成手段が生成した全体マップに基づいて、任意の撮像対象を見通せる地点を導出する見通し地点導出手段、
前記見通し地点導出手段が導出した地点の近傍で前記カメラに撮像させ、前記3次元マップ生成手段に当該地点からの3次元マップを生成させ、前記撮像対象の3次元マップを取得する対象画像取得手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−155056(P2009−155056A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335738(P2007−335738)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】