説明

画像形成装置、画像処理装置、画像形成方法及び画像処理方法

【課題】 原稿中にウォーターマーク等の複写禁止情報等を埋め込むことなく、複写禁止原稿の複写を禁止することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 画像データの一部又は全部の色を、エッジ強調のフィルタ処理で画像出力部6の再現可能な範囲外の色に変換される色に変換する制御部7と、変換された画像データを含む画像を形成する画像出力部6とを有している。
従って、印刷された画像データを読み込み、エッジ強調のフィルタ処理をかけることで、画像データ中に所定のデータが含まれるか否かを判定することができる。この所定のデータを複写禁止の情報に設定することで、画像データが複写禁止データであるか否かの判別が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の複写禁止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータやプリンタ、コピー機など、画像形成機能を持つ装置の普及により、書類を複製することが極めて簡単になってきている。このような状況においては、著作権が付与された原稿、あるいは“コピー禁止”、“複製厳禁”、“マル秘”などといった無断複製の禁止が要求される原稿(以下まとめて“機密原稿”ともいう)に対しても容易にコピーが行われてしまうという欠点がある。したがって、画像形成機能を持つ装置には、機密原稿の悪用複製を防止する機能を持たせることが必要である。
【0003】
複写物に複製であることを表示する技術として、特許文献1のように原稿にウォータマーク等の不可視な複写禁止情報を埋め込む技術が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−215852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、画像への複写禁止情報の埋め込みにより、複写禁止情報と原稿画像の絵柄、文字部分が重なり、複写禁止情報が欠落したり、原稿画像が見にくいものとなる場合がある。また、ウォータマーク等の地紋画像の埋め込みにおいても、原稿画像が見にくくなることがあり、下地除去等の処理によって地紋が再現されないこともある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、原稿中にウォーターマーク等の複写禁止情報を埋め込むことなく、複写禁止原稿の複写を禁止することができる画像形成装置、画像処理装置及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために本発明の画像形成装置は、画像データの一部又は全部の色を、エッジ強調のフィルタ処理で画像形成手段の再現可能な範囲外の色に変換される色に変換する色変換手段と、変換された画像データを含む画像を形成する画像形成手段と、を有する構成としている。
従って、印刷された画像データをスキャナ等で読み込み、エッジ強調のフィルタ処理をかけることで、画像データ中に所定のデータが含まれるか否かを判定することができる。この所定のデータを複写禁止の情報に設定することで、画像データが複写禁止データであるか否かの判別が容易となる。
【0008】
本発明の画像処理装置は、画像を読み込む読込み手段と、読み込んだ画像データにエッジ強調のフィルタ処理を施すフィルタ処理手段と、前記フィルタ処理後の画像データが、画像を形成する画像形成手段で再現可能な色範囲内にあるか否かを判定することで、前記画像データが複写禁止に設定されているか否かを判定する判定手段と、を有する構成としている。
このように本発明は、画像データにエッジ強調のフィルタ処理を施すことで、画像データに複写禁止のデータが含まれているか否かを簡単に判定することができる。
【0009】
本発明の画像処理装置は、画像を読み込む読込み手段と、読み込んだ画像データのエッジを検出するエッジ検出手段と、エッジ検出後の画像データにエッジ強調のフィルタ処理を施すフィルタ処理手段と、前記フィルタ処理後の画像データが、画像を形成する画像形成手段で再現可能な色範囲内にあるか否かを判定することで、前記画像データが複写禁止に設定されているか否かを判定する判定手段と、を有することを特徴としている。
このように本発明は、画像データのエッジを検出し、画像データのエッジ部分にエッジ強調のフィルタ処理を施す。このため、画像データのエッジ部分にだけエッジ強調のフィルタ処理を施すことができる。
【0010】
上記画像処理装置において、前記判定手段で複写禁止に設定された画像データであると判定すると、該画像データの画像形成を禁止する、前記画像データに複写禁止を表す画像データを付加する、又は前記画像形成手段で再現可能な色範囲内にない画像データ部分の画像を形成しないとよい。
従って、複写禁止の原稿であることを示すことができる。
【0011】
本発明の画像形成方法は、画像データの一部又は全部の色を、エッジ強調のフィルタ処理で画像形成手段の再現可能な範囲外の色に変換される色に変換するステップと、変換された画像データを含む画像を形成する画像形成ステップと、
を有することを特徴としている。
【0012】
本発明の画像処理方法は、画像を読み込む読込みステップと、読み込んだ画像データのエッジを検出するエッジ検出ステップと、エッジ検出後の画像データにエッジ強調のフィルタ処理を施すフィルタ処理ステップと、前記フィルタ処理後の画像データが、画像を形成する画像形成手段で再現可能な色範囲内にあるか否かを判定することで、前記画像データが複写禁止に設定されているか否かを判定する判定ステップと、を有している。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、原稿中にウォーターマーク等の複写禁止情報を埋め込むことなく、複写禁止原稿の複写を禁止させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例を説明する。
【実施例】
【0015】
まず、図1を参照しながら本実施例の構成を説明する。図1には、画像形成装置1の構成を示す。図1に示すように本実施例の画像形成装置1は、スキャナ部2と、色変換部3と、画像処理部(本発明のエッジ検出手段と、フィルタ処理手段に該当する)4と、画像蓄積部5と、画像出力部6と、制御部(本発明の色変換手段と判定手段に該当する)7と、操作表示部8とを有している。
【0016】
スキャナ部2は、プラテンガラス上に置かれた原稿の画像を読み取り、読み取った画像データを色変換部3に出力する。
【0017】
色変換部3は、スキャナ部2で読み取った画像データの色空間変換を行う。色変換部3は、スキャナ部2の読み取り形式であるR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の画像データを画像出力部6で表現可能なL*a*b*の色空間の画像データに変換する。
【0018】
画像処理部4は、色変換部3から出力されたL*a*b*の画像データに、エッジ検出、エッジ強調のフィルタ処理、スクリーン処理等の画像処理を行う。画像処理後の画像データは画像蓄積部5に出力される。なお、図2には、エッジ強調のフィルタの一例を示す。
【0019】
画像蓄積部5は、画像処理された後の画像データを一旦格納する。
画像出力部6は、制御部7の制御に従って画像蓄積部5から読み出された画像データの画像を用紙に形成する。
【0020】
制御部7は、操作表示部8の操作によって複写禁止原稿の生成が指示されると、画像処理後の画像データの特定領域又は全領域に、所定の色変換を施す。この色変換について説明する。
まず、色変換を行う特定領域は、操作表示部8の操作で選択してもよいし、エッジ検出によって文字データを検出し、検出した文字データを特定領域のデータとしてもよい。また、操作表示部8からの設定で、画像データの全領域を色変換の対象領域に設定することもできる。
制御部7は、色変換の対象領域が選択されると、選択された領域の画像データに対して、色変換を施す。この色変換は、エッジ強調のフィルタ処理で、画像出力部6の再現可能な範囲外に変換される色に変換される。図2に画像処理部4で使用されるエッジ強調のフィルタの一例を示す。また、図3(A)には、画像出力部6で再現可能な色空間(以下、ガミュートという)の一例を示す。選択された画像データの色を、このガミュートの最外郭部分の色に変換すると、エッジ強調のフィルタ処理によって、図3(A)に示すようにガミュート領域外の色に変換される。従って、この色変換を施した画像の印刷物は、コピーをすると、画像処理でオリジナル原稿と異なる色味に変換されて出力される。このため、複写禁止原稿であるとユーザに認識させることができる。
【0021】
また、制御部7は、スキャナ部2で読み込み、画像処理部4で画像処理(エッジ強調のフィルタ処理)が施された画像データに、ガミュート領域外の色が含まれているか否かを判定する。ガミュート領域外の色が画像データに含まれている場合には、読み込んだ画像データは、複写禁止原稿であると判定することができる。また、制御部7は、ガミュート領域外の色の画像データを検出すると、この画像データの色を図3(B)に示すようなガミュート領域内の異なる色にマッピングする。このため、画像出力部6で出力される複写物は、原稿画像とは色味が異なる印刷物となり、複写禁止原稿であることを明示することができる。図4(A)に、原稿の文字部分をガミュート最外郭の色で形成した画像を示し、図4(B)に、この原稿をコピーしたときの印刷出力を示す。図3(B)に示すようにガミュート最外郭の色は、他のガミュート領域の色にマッピングされるため、原稿画像とコピー画像とで色味が異なる。
【0022】
また、制御部7は、エッジ強調のフィルタ処理でガミュート領域外に変換された色を、印刷時に出力しないように制御してもよい。ガミュート領域外に変換された画像データの色が用紙に印刷されないので、白抜け画像となり、複写禁止原稿であることを明示することができる。
【0023】
また、制御部7は、エッジ強調のフィルタ処理で、ガミュート領域外に変換されたデータを検出すると、画像データ自体の印刷を中止するように制御してもよい。また、ガミュート領域外に変換されたデータを検出した場合には、画像データ上に、複写禁止原稿であることを表すメッセージを重ねて印刷するように制御してもよい。画像出力部6で印刷される画像には、複写禁止原稿であるメッセージが重ねて印刷される。
【0024】
なお、画像処理部4で行われるエッジ強調のフィルタ処理は、画像データのエッジを検出し、検出したエッジ部分に施してもよい。エッジ検出によって文字等のエッジ部分にだけ強調フィルタが適用され、絵柄部分に色味の変換が生じないようにすることもできる。
【0025】
次に、図5に示すフローチャートを参照しながら複写禁止原稿の生成手順を説明する。
スキャナ部2による原稿画像の読み込み、又は画像形成装置1に接続したパーソナルコンピュータ等からの画像データの入力が完了し、画像データの印刷要求があると(ステップS1)、制御部7は入力した画像データが複写禁止原稿に設定されているか否かを判定する(ステップS2)。制御部7は、入力した原稿を複写禁止原稿に設定するか否かを問い合わせるメッセージを操作表示部8に表示させ、ユーザからの操作入力を待機する。操作表示部8からの設定操作により、複写禁止の原稿に設定されると(ステップS2/YES)、制御部7は、読み取った画像データの特定領域又は全領域をガミュート領域の最外壁の色に設定する。例えば、図4に示すように画像データ中の文字データの部分を抽出して、ガミュート領域の最外壁の色に設定する。設定された画像データは、画像処理部4から画像蓄積部5に一旦蓄積される。画像蓄積部5に蓄積された画像データは、制御部7の制御によって画像出力部6に出力され、画像出力部6で画像が形成される(ステップS6)。
【0026】
また、複写禁止の原稿に設定されていない場合には(ステップS2/NO)、制御部7は、画像データ中にガミュート外壁の色のデータが存在するか否かを判定する(ステップS4)。ガミュート外壁の色のデータが存在しない場合には(ステップS4/NO)、そのまま画像の形成が画像出力部6で行われる。また、ガミュート外壁の色のデータが存在している場合には(ステップS4/YES)、ガミュート外壁の色のデータを、ガミュート領域内の他の色のデータに変換する(ステップS5)。変換された画像データは、画像出力部6で画像が形成される。
【0027】
次に、図6に示すフローチャートを参照しながら、複写禁止原稿を読み込んだ画像形成装置1の動作手順を説明する。なお、以下のフローは本発明の画像処理装置の実施例として説明する。
画像形成装置1は、原稿台に置かれた原稿の画像をスキャナ部2から読み込む(ステップS10)。スキャナ部2で読み取られた画像データは、色変換部3でRGBの画像データから、L*a*b*表色系の画像データに形式変換される(ステップS11)。次に、画像処理部4で、エッジ検出、エッジ強調のフィルタ処理等の処理が行われる(ステップS12)。
【0028】
次に制御部7は、エッジ強調のフィルタ処理後の画像データに、ガミュート領域外となった画像データが存在するか否かを判定する(ステップS13)。ガミュート外の色を検出した場合(ステップS13/YES)、制御部7は、画像データの印刷出力を禁止にしたり、複写禁止原稿であることを表示した画像を画像データに新たに付加する(ステップS14)。また、制御部7は、ガミュート領域外の色を検出することができなかった場合には(ステップS13/NO)、そのまま画像出力部6で通常の画像を形成して出力する(ステップS15)。
【0029】
このように本実施例は、原稿画像が複写禁止画像に設定されると、画像データの一部又は全部が、エッジ強調のフィルタ処理で画像出力部6の再現可能な範囲外の色に変換されるように色変換をしている。従って、エッジ強調のフィルタ処理によって、画像データが複写禁止原稿であるか否かを簡単に判定することができる。このため、画像データ中に地紋や禁止情報などの複写禁止データを埋め込む必要がなくなる。また、複写禁止原稿を検出して、原稿の複写を禁止にしたり、複写禁止原稿である旨を表示したメッセージを付加することもできる。
【0030】
また、画像出力部6の再現可能な範囲外の色に変換されたデータは、ガミュート領域内の他の色のデータにマッピングされるので、コピー原稿の色が原稿画像と異なる色に印刷される。このため、複写禁止原稿であることを明確に示すことができる。
【0031】
なお、上述した実施例は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】エッジ強調のフィルタの一例を示す図である。
【図3】(A)は、ガミュート最外郭の色がエッジ強調のフィルタによってガミュート領域外に変換される様子を示すものであり、(B)はガミュート領域外に変換された色のデータがガミュート領域内の色のデータにマッピングされる様子を示すものである。
【図4】(A)は、ガミュート最外郭の色で文字データを印刷した印刷物を示し、(B)は、この印刷物をコピーしたときのコピー印刷物を示す図である。
【図5】複写禁止原稿の作成時の手順を示すフローチャートである。
【図6】複写禁止原稿を読み込んだときの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1 画像形成装置
2 スキャナ部
3 色変換部
4 画像処理部
5 画像蓄積部
6 画像出力部
7 制御部
8 操作表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データの一部又は全部の色を、エッジ強調のフィルタ処理で画像形成手段の再現可能な範囲外の色に変換される色に変換する色変換手段と、
変換された画像データを含む画像を形成する画像形成手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
画像を読み込む読込み手段と、
読み込んだ画像データにエッジ強調のフィルタ処理を施すフィルタ処理手段と、
前記フィルタ処理後の画像データが、画像を形成する画像形成手段で再現可能な色範囲内にあるか否かを判定することで、前記画像データが複写禁止に設定されているか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
画像を読み込む読込み手段と、
読み込んだ画像データのエッジを検出するエッジ検出手段と、
エッジ検出後の画像データにエッジ強調のフィルタ処理を施すフィルタ処理手段と、
前記フィルタ処理後の画像データが、画像を形成する画像形成手段で再現可能な色範囲内にあるか否かを判定することで、前記画像データが複写禁止に設定されているか否かを判定する判定手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
前記判定手段で複写禁止に設定された画像データであると判定すると、該画像データの画像形成を禁止する、前記画像データに複写禁止を表す画像データを付加する、又は前記画像形成手段で再現可能な色範囲内にない画像データ部分の画像を形成しないことを特徴とする請求項2又は3記載の画像処理装置。
【請求項5】
画像データの一部又は全部の色を、エッジ強調のフィルタ処理で画像形成手段の再現可能な範囲外の色に変換される色に変換するステップと、
変換された画像データを含む画像を形成する画像形成ステップと、
を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
画像を読み込む読込みステップと、
読み込んだ画像データのエッジを検出するエッジ検出ステップと、
エッジ検出後の画像データにエッジ強調のフィルタ処理を施すフィルタ処理ステップと、
前記フィルタ処理後の画像データが、画像を形成する画像形成手段で再現可能な色範囲内にあるか否かを判定することで、前記画像データが複写禁止に設定されているか否かを判定する判定ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−199471(P2008−199471A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−34761(P2007−34761)
【出願日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】