説明

異種金属の接合方法及び過給機

【課題】コンプレッサ翼車を中実構造とし、空気の圧力比の増大を可能とし、内燃機関の出力増大、効率の向上を図ると共に、コンプレッサ翼車と回転軸との連結強度を増大し、更にコンプレッサ翼車と回転軸との着脱を繰返した場合でも連結状態の劣化を防止し、連結強度の低下、ガタツキ発生を抑止し、信頼性を向上させる。
【解決手段】タービン翼車7から延出する回転軸2の先端にコンプレッサ翼車8が設けられ、前記回転軸が軸受ハウジング5に回転自在に支持され、前記タービン翼車はタービンハウジング12に収納され、前記コンプレッサ翼車はコンプレッサハウジング13に収納された過給機1であって、前記コンプレッサ翼車はアルミ合金製のディスク部8aと該ディスク部に摩擦接合された鋼製、又は鋼合金製のボス部8bから成り、前記回転軸の先端部に螺子部22が形成され、該螺子部が前記ボス部に螺合して前記回転軸と前記コンプレッサ翼車が連結された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異種金属の接合方法及び該異種金属の接合方法を用いた過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の出力増大、燃焼効率の向上の為、過給機が設けられ、該過給機は、排気ガスのエネルギを利用して駆動されるタービンと、該タービンと同軸に設けられ圧縮した空気を内燃機関に給気するコンプレッサとを有する。
【0003】
内燃機関の一層の出力増大、燃焼効率の向上の為、過給機に対してより高い圧力比が要求されるが、過給機の構造上から得られる圧力比には限界があった。
【0004】
図12に於いて、従来の過給機について説明する。
【0005】
過給機1は、回転軸2を共有するタービン3とコンプレッサ4によって構成されている。
【0006】
前記回転軸2は軸受ハウジング5に軸受6を介して回転自在に支持され、前記回転軸2の一端にはタービン翼車7が設けられ、他端には例えばアルミ合金製のコンプレッサ翼車8が設けられている。
【0007】
前記回転軸2と前記タービン翼車7とは一体物であり、又前記回転軸2の他端部が前記コンプレッサ翼車8を貫通している。前記回転軸2の他端部の突出する部分には螺子部9が形成され、該螺子部9にナット11が螺着され、該ナット11が締付けられることで前記コンプレッサ翼車8が前記回転軸2に固着される。
【0008】
前記タービン翼車7は前記軸受ハウジング5に取付けられたタービンハウジング12に収納され、前記コンプレッサ翼車8は前記軸受ハウジング5に取付けられたコンプレッサハウジング13に収納されている。
【0009】
前記タービン翼車7、前記タービンハウジング12等によって前記タービン3が構成され、前記コンプレッサ翼車8、前記コンプレッサハウジング13等によって前記コンプレッサ4が構成される。
【0010】
前記タービンハウジング12は排気ガス流入口14、排気ガス流出口15を有し、前記排気ガス流入口14には内燃機関からの排気ガスが流入し、前記排気ガス流出口15からは排気エネルギによって前記タービン翼車7を回転した後の排気ガスが排気される。
【0011】
前記コンプレッサハウジング13は、吸入口16、吐出口17を有し、前記コンプレッサ翼車8が前記回転軸2を介して前記タービン翼車7により回転されることで、前記吸入口16より吸入した空気を圧縮し、前記吐出口17より圧縮空気を内燃機関に給気する。
【0012】
前記コンプレッサ4から給気する空気の圧力比を高くすることで、内燃機関の出力増大、燃焼効率の向上が図れる。又、圧力比を高くする為には、前記コンプレッサ翼車8をより高速で回転させる必要がある。
【0013】
ところが、前記コンプレッサ翼車8が高速で回転すると、該コンプレッサ翼車8には大きな遠心力が作用する。特に、該コンプレッサ翼車8の前記回転軸2が貫通する孔の前記コンプレッサ翼車8の最大径部位置Mに該当する個所には遠心力に起因する大きな応力が発生する。
【0014】
図14は、前記コンプレッサ翼車8を回転させた場合に該コンプレッサ翼車8のディスク部8aに発生する最大応力との比の分布を示したものであり、前記回転軸2が貫通する孔の前記コンプレッサ翼車8の最大径部8dに該当する箇所の応力が最大となっていることが分かる。
【0015】
この為、前記コンプレッサ翼車8の回転数は、前記最大径部8dに発生する応力が許容値以下であることに制約され、回転数を大きくして前記最大径部8dの応力が許容値を超えた場合は、前記コンプレッサ翼車8が破損する虞れがあった。
【0016】
前記最大径部8dに発生する応力を低減する方法として、特許文献1に示される様に、前記回転軸2を前記コンプレッサ翼車8に貫通させず、該コンプレッサ翼車8を中実構造とし、前記回転軸2の先端を前記コンプレッサ翼車8に直接螺合して連結したものがある。
【0017】
該コンプレッサ翼車8を中実構造とした場合、該コンプレッサ翼車8に発生する応力分布は、図13に示される。尚、図13中、等高線で示される値は、図14中の最大応力に対する比を示している。図13に示される様に、前記コンプレッサ翼車8を中実構造とすることで、発生する応力が分散され、最大応力が大幅に低減される。
【0018】
ところが、上記した様に、前記コンプレッサ翼車8はアルミ合金製であり、一方前記回転軸2は鋼製である。従って、該回転軸2と前記コンプレッサ翼車8とを螺合により連結した場合は、連結の強度は該コンプレッサ翼車8の螺子部の強度により決定され、充分な連結強度が得られるとは言えず、更に、保守等で前記コンプレッサ翼車8と前記回転軸2との着脱を行った場合は、前記コンプレッサ翼車8の螺子部が摩耗し、又ガタツキが発生する等し、連結部の強度低下の虞れがある。
【0019】
【特許文献1】特開2005−30382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は斯かる実情に鑑み、コンプレッサ翼車を中実構造とし、空気の圧力比の増大を可能とし、内燃機関の出力増大、燃焼効率の向上を図ると共に、コンプレッサ翼車と回転軸との連結強度を増大し、更にコンプレッサ翼車と回転軸との着脱を繰返した場合でも連結状態の劣化を防止し、連結強度の低下、ガタツキ発生を抑止し、過給機の信頼性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、融点の低い金属部材と、融点の高い金属部材とを摩擦接合する接合方法であって、前記融点の高い金属部材に凹部を形成し、摩擦接合時に溶融した前記融点の低い金属部材が前記凹部を充填する様にした異種金属の接合方法に係り、又摩擦接合部を不活性ガス雰囲気とした異種金属の接合方法に係るものである。
【0022】
又本発明は、タービン翼車から延出する回転軸の先端にコンプレッサ翼車が設けられ、前記回転軸が軸受ハウジングに回転自在に支持され、前記タービン翼車はタービンハウジングに収納され、前記コンプレッサ翼車はコンプレッサハウジングに収納された過給機であって、前記コンプレッサ翼車はアルミ合金製のディスク部と該ディスク部に摩擦接合された鋼製、又は鋼合金製のボス部から成り、前記回転軸の先端部に螺子部が形成され、該螺子部が前記ボス部に螺合して前記回転軸と前記コンプレッサ翼車が連結された過給機に係るものである。
【0023】
又本発明は、前記ボス部の前記ディスク部に対する接合面に凹部を形成し、該凹部が溶融した前記ディスク部の金属により充填される様にした過給機に係り、又前記ボス部と前記ディスク部との接合方向に対して交差する方向から凹部を形成し、該凹部が溶融した前記ディスク部の金属により充填される様にした過給機に係り、又前記凹部に連通する通孔を設け、該通孔から不活性ガスを供給する様にした過給機に係り、又前記ディスク部と前記ボス部との接合面は、前記コンプレッサ翼車の最大径位置に到達しない過給機に係り、又前記ボス部の螺子穴の最深位置は前記コンプレッサ翼車の最大径位置に到達しない過給機に係り、更に又前記回転軸の先端部に嵌合軸部と前記螺子部が形成され、前記嵌合軸部が前記ボス部に嵌合すると共に前記螺子部が前記ボス部に螺合する過給機に係るものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、融点の低い金属部材と、融点の高い金属部材とを摩擦接合する接合方法であって、前記融点の高い金属部材に凹部を形成し、摩擦接合時に溶融した前記融点の低い金属部材が前記凹部を充填する様にしたので、異種金属の接合の強度、信頼性が向上する。
【0025】
又本発明によれば、摩擦接合部を不活性ガス雰囲気としたので、溶融金属の酸化が防止され、接合の品質、信頼性が向上する。
【0026】
又本発明によれば、タービン翼車から延出する回転軸の先端にコンプレッサ翼車が設けられ、前記回転軸が軸受ハウジングに回転自在に支持され、前記タービン翼車はタービンハウジングに収納され、前記コンプレッサ翼車はコンプレッサハウジングに収納された過給機であって、前記コンプレッサ翼車はアルミ合金製のディスク部と該ディスク部に摩擦接合された鋼製、又は鋼合金製のボス部から成り、前記回転軸の先端部に螺子部が形成され、該螺子部が前記ボス部に螺合して前記回転軸と前記コンプレッサ翼車が連結されたので、前記コンプレッサ翼車が中実構造となり、該コンプレッサ翼車の回転時に該コンプレッサ翼車の内部に発生する応力が低減し、該コンプレッサ翼車の高速回転が可能となり、圧力比の増大が図れ、前記回転軸と前記コンプレッサ翼車との連結強度が向上し、前記回転軸と前記コンプレッサ翼車との着脱が繰返されても結合強度、信頼性が低下することがない。
【0027】
又本発明によれば、前記ボス部の前記ディスク部に対する接合面に凹部を形成し、該凹部が溶融した前記ディスク部の金属により充填される様にしたので、該ディスク部と前記ボス部との結合強度が増大する。
【0028】
又本発明によれば、前記ボス部と前記ディスク部との接合方向に対して交差する方向から凹部を形成し、該凹部が溶融した前記ディスク部の金属により充填される様にしたので、該ディスク部と前記ボス部との結合強度が増大する。
【0029】
又本発明によれば、前記凹部に連通する通孔を設け、該通孔から不活性ガスを供給する様にしたので、摩擦接合時に接合部を不活性ガス雰囲気とすることができ、溶融金属の酸化が防止され、接合の品質、信頼性が向上する。
【0030】
又本発明によれば、前記ディスク部と前記ボス部との接合面は、前記コンプレッサ翼車の最大径位置に到達しないので、遠心力で発生する最大応力が接合部分に発生せず、接合の信頼性が向上する。
【0031】
又本発明によれば、前記ボス部の螺子穴の最深位置は前記コンプレッサ翼車の最大径位置に到達しないので、遠心力で発生する最大応力が前記螺子穴に発生せず、最大応力の大きさを抑制でき、接合の信頼性が向上する。
【0032】
又本発明によれば、前記回転軸の先端部に嵌合軸部と前記螺子部が形成され、前記嵌合軸部が前記ボス部に嵌合すると共に前記螺子部が前記ボス部に螺合するので、前記回転軸と前記コンプレッサ翼車との芯出しが行える等の優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を参照しつつ本発明を実施する為の最良の形態を説明する。
【0034】
図1、図2に於いて本発明が実施される過給機の一例について説明する。
【0035】
尚、図1、図2に於いて、図12中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
タービン翼車7と一体に形成された回転軸2は、軸受6を介して軸受ハウジング5に回転自在に支持される。前記回転軸2の前記軸受6より更に延出する部分は、前記回転軸2に対して小径の嵌合軸部21及び該嵌合軸部21より小径の螺子部22によって構成されている。
【0037】
コンプレッサ翼車8は、ディスク部8aと該ディスク部8aに摩擦接合(摩擦溶接)されたボス部8bによって構成され、前記ディスク部8aは、例えばアルミ合金製であり、前記ボス部8bは、例えば鋼製、或は鋼合金である。又、前記ディスク部8aと前記ボス部8bの接合面8cは、前記コンプレッサ翼車8の最大径位置Mよりタービン3側に位置し、最大径位置Mに到達しない様に設定されている。
【0038】
前記ボス部8bには盲螺子穴23が穿設され、該盲螺子穴23(螺子の下穴も含めて)の最深位置は、前記コンプレッサ翼車8の最大径位置Mに到達しない様に設定されている。好ましくは、前記接合面8cにも到達しない様に設定される。又、前記盲螺子穴23の開口端部には該盲螺子穴23より大径の嵌合部穴部24が形成されている。
【0039】
前記螺子部22に前記コンプレッサ翼車8が螺着され、前記嵌合軸部21に前記嵌合部穴部24が嵌合することで、前記回転軸2と前記コンプレッサ翼車8との芯が合致する様になっている。
【0040】
前記ディスク部8aの前記コンプレッサ翼車8側の端面と前記回転軸2の端面との間には、該回転軸2側からスラストカラー25、スペーサリング26、スラストカラー27、油切り28が介設され、又前記スラストカラー25と前記スラストカラー27との間に設けられるスラスト軸受29は前記軸受ハウジング5に固定される。
【0041】
前記コンプレッサ翼車8を前記螺子部22に締込み、固着することで、前記コンプレッサ翼車8と前記回転軸2、前記スラストカラー25、前記スペーサリング26、前記スラストカラー27、前記油切り28が一体化して回転する。
【0042】
前記軸受ハウジング5には給油口31が穿設され、更に該給油口31に連通し、複数に分岐した導通油路32が設けられ、該導通油路32の一部は前記軸受6に開口し、一部は前記スラスト軸受29を通って前記スペーサリング26の外周面に開口する。従って、給油された潤滑油の一部は前記導通油路32を経て前記スペーサリング26の外周面、更に前記スラスト軸受29と前記スラストカラー25,27との相対する面に供給される様になっている。
【0043】
而して、前記スラスト軸受29と前記スラストカラー25,27との間が潤滑され、前記回転軸2に作用するスラスト荷重は前記スラスト軸受29を介して前記軸受ハウジング5に支持される様になっている。
【0044】
次に、前記コンプレッサ翼車8を前記回転軸2に螺着する場合について説明する。
【0045】
図3に示す様に、前記ディスク部8aの吸入口16側の先端部(以下、先端部)には、同一円周上に複数の凹部34が穿設されている。本実施の形態では、該凹部34は円周6等分した位置に穿設された断面円の穴を示している。
【0046】
該凹部34は、前記コンプレッサ翼車8を回転させる場合の治具35を着脱可能とするものであり、又該治具35を介してトルクを伝達する手段となる。
【0047】
図4、図5は、前記治具35を示しており、該治具35は、鋼製、或は鉄系の合金鋼で製作されており、6角形状の頭部36と該頭部36より突出する6本の連結子37とを有しており、該連結子37は断面が円であり、円周6等分した位置にあり、前記凹部34と嵌脱可能となっている。
【0048】
前記コンプレッサ翼車8を前記回転軸2に締込む場合は、前記連結子37を前記凹部34に嵌合させ、前記治具35を前記ディスク部8aの先端部に装着する。前記頭部36にスパナ等の工具を掛けて回転力を与える。前記治具35を介して前記コンプレッサ翼車8が回転され、前記螺子部22に螺着され、更に締込まれる。前記コンプレッサ翼車8取付け後は、前記治具35は除去する。
【0049】
前記連結子37の本数は、締込む際のトルクの大きさによって決定する。高強度の前記治具35を介して、前記コンプレッサ翼車8を締付けるので、前記治具35が損傷することがなく、又、トルクは前記連結子37によって分散して伝達されるので、前記コンプレッサ翼車8を損傷させることがなく、又該コンプレッサ翼車8に充分な締付け力を与えることができる。尚、前記連結子37の本数は前記コンプレッサ翼車8の材質がアルミ等であることを考慮すると6本又は6本より多いことが望ましい。
【0050】
又、前記治具35と前記ディスク部8aとの係合の態様としては、前記凹部34を中心に穿設された6角穴とし、前記連結子37を中心に突設し、又断面を6角としてもよい。
【0051】
本発明は上記した様に、前記回転軸2の端部を前記コンプレッサ翼車8に貫通させないで、前記盲螺子穴23に螺着し、又前記コンプレッサ翼車8に穿設する前記盲螺子穴23の最深位置を該コンプレッサ翼車8の最大径位置Mに到達しない様にしたので、遠心力が最大となる部分は中実となり、遠心力によって発生する応力は均一に分散され、特定の部位に応力が集中することが避けられる。
【0052】
前記コンプレッサ翼車8の回転バランスを調整する場合は、前記ディスク部8aの先端部の一部38を切除するか、或は先端部の周囲近傍に穴39を穿設し、該穴39に比重の大きい金属の部材、例えば銅線等を埋込む。
【0053】
前記ディスク部8aの先端部露出部分には、締付けの為の工具等が掛ることがないので、一部38を切除する際の制約がなく、回転バランスの調整は容易である。
【0054】
次に、図6に於いて、接合材料の一方がアルミ合金材料、他方が鋼材料である様な異種金属での摩擦接合について概略を説明する。
【0055】
図中、41はアルミ合金材料、42は鋼材料を示している。
【0056】
前記アルミ合金材料41と前記鋼材料42とを押しつけ、例えば前記アルミ合金材料41を回転させると、接合面で摩擦熱が発生し、該摩擦熱で接合材料が溶融し、接合する。前記アルミ合金材料41と前記鋼材料42では、前記アルミ合金材料41の方が溶融点が低いので、該アルミ合金材料41の方が多く溶融し、接合面の周囲に盛上がる。
【0057】
該アルミ合金材料41と前記鋼材料42の接合後、盛上がり部43を除去して仕上げ加工を行う。
【0058】
尚、前記アルミ合金材料41と前記鋼材料42との摩擦接合による継手効率は、50%以上あり、本接合方法を本発明の前記コンプレッサ翼車8に実施した場合、充分な強度を有する。又、溶融したアルミ合金が酸化しない様に、前記アルミ合金材料41と前記鋼材料42とを真空容器内で接合する、或は接合部にアルゴン、窒素ガス等の不活性ガスを供給し、接合部を不活性ガス雰囲気として接合してもよい。
【0059】
図7は、本発明に於ける接合面8cが球面である場合を示している。
【0060】
本発明の場合は、前記ボス部8bが鋼材であるので、該ボス部8bに該ボス部8bと同じ曲率の球面の凹部を設け、該凹部の深さは前記ディスク部8a接合部の溶融代を見越して、仕上げ寸法より小さくする。
【0061】
又、接合部の外形の仕上げは接合後、盛上がり部を除去する等して行い、更に、前記盲螺子孔23は、前記ボス部8bと前記ディスク部8aの接合完了後、加工する。
【0062】
又、該ディスク部8aと前記ボス部8bとの前記接合面8cの形状は、種々考えられ、例えば、図8に示される様に円錐台形状としてもよい。
【0063】
上記した様に、接合金属の一方の溶融点が、他方の金属の溶融点より低い場合は、他方の金属は形状を維持して、溶融点の低い金属の方が多く溶融する。
【0064】
図9は摩擦接合の変形を示している。図9に示す摩擦接合の変形は、接合面8cに溝44等の凹部を形成したものである。
【0065】
一方の金属の溶融点が低い場合の特性を利用して、前記接合面8cに前記溝44等の凹部を形成することで、該凹部を溶融金属が充填し、接合強度を増大する様にしたものである。
【0066】
前記溝44は、同心多重円状に複数刻設され、球面に対して垂直方向に刻設されている。尚、該溝44は半径方向に刻設された連通溝(図示せず)によって前記ボス部8bの表面に連通させることが好ましい。
【0067】
摩擦接合時に、前記ディスク部8aの接合部が溶融し、前記溝44を前記ディスク部8aの金属が充填する。前記溝44を前記ディスク部8aの金属が充填することで、該ディスク部8aと前記ボス部8b間の接合面積が増大し、接合強度が増加する。
【0068】
更に、前記溝44を前記接合面8cの表面に対して、直角に刻設することで、前記ディスク部8aと前記ボス部8bとの間に離反方向の力が作用した場合、周辺の前記溝44を充填する部分に剪断応力が発生し、結合強度が増大する。
【0069】
尚、前記溝44は、同心円に刻設したが、半径方向に放射状に刻設してもよい。
【0070】
図10に示す変形例では、前記溝44の形状を変更したものである。
【0071】
該溝44を円錐曲面に前記回転軸2の軸心と同心に環状に形成し、又前記溝44の断面形状をアリ溝形状とする。又、先端の円形の端面には断面がアリ溝の円形の凹部45を形成する。前記溝44、前記凹部45の断面をアリ溝形状とすることで、前記ディスク部8aと前記ボス部8b間の結合強度が増大する。
【0072】
図11は、更に他の変形例を示している。該他の変形例では、摩擦面以外の部分、即ち前記ディスク部8aと前記ボス部8bとの接合方向に対して直角方向、又は略直角方向等に交差する方向から溝44を形成したものである。
【0073】
前記ディスク部8aには円筒形の凹部46が形成され、前記ボス部8bは前記凹部46に嵌合する凸部47を有している。該凸部47の円筒面に前記溝44を形成する。該溝44は、前記ディスク部8aと前記ボス部8bの接合方向に対して垂直であり、摩擦接合に寄与しない。接合時に溶融した前記ディスク部8aの金属が、前記溝44を充填し、前記凸部47を前記凹部46に鋳込んだ状態となり、大きな結合力を発揮する。尚、連続した前記溝44に代えて所要深さの穴を所定の間隔で穿設してもよい。
【0074】
又、前記溝44に連通する通孔48,49を前記ボス部8bに軸心方向から穿設し、前記一方の通孔48から不活性ガスを供給し、前記他方の通孔49から排気する様にし、接合部を不活性ガス雰囲気とする。接合部が不活性ガス雰囲気となることで、アルミ溶融金属の酸化が防止され、良好な接合が得られる。又、前記通孔48,49へ溶融金属が充填する際の空気、不活性ガスの逃道となり、前記溝44にガスが残留することを防止する。尚、不活性ガスを供給する前記通孔48のみとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態に係る過給機の断面図である。
【図2】該過給機に於ける回転軸とコンプレッサ翼車との連結部の拡大断面図である。
【図3】該コンプレッサ翼車の先端部の側面図である。
【図4】該コンプレッサ翼車の先端部に嵌合可能な治具の側面図である。
【図5】該治具の正面図である。
【図6】(A)(B)(C)は、溶融点の異なる異種金属の摩擦接合を示す説明図である。
【図7】回転軸とコンプレッサ翼車との他の連結部の部分断面図である。
【図8】回転軸とコンプレッサ翼車との更に他の連結部の部分断面図である。
【図9】回転軸とコンプレッサ翼車との更に他の連結部の部分断面図である。
【図10】回転軸とコンプレッサ翼車との更に他の連結部の部分断面図である。
【図11】回転軸とコンプレッサ翼車との更に他の連結部の部分断面図である。
【図12】従来の過給機の断面図である。
【図13】中実構造のコンプレッサ翼車を回転させた場合に発生する応力分布を示す説明図である。
【図14】回転軸が貫通するコンプレッサ翼車を回転させた場合に発生する応力分布を示す説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1 過給機
2 回転軸
3 タービン
4 コンプレッサ
7 タービン翼車
8 コンプレッサ翼車
8a ディスク部
8b ボス部
8c 接合面
13 コンプレッサハウジング
21 嵌合軸部
22 螺子部
23 盲螺子穴
24 嵌合部穴部
31 給油口
32 導通油路
34 凹部
35 治具
37 連結子
44 溝
45 凹部
47 凸部
48 通孔
49 通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点の低い金属部材と、融点の高い金属部材とを摩擦接合する接合方法であって、前記融点の高い金属部材に凹部を形成し、摩擦接合時に溶融した前記融点の低い金属部材が前記凹部を充填する様にしたことを特徴とする異種金属の接合方法。
【請求項2】
摩擦接合部を不活性ガス雰囲気とした請求項1の異種金属の接合方法。
【請求項3】
タービン翼車から延出する回転軸の先端にコンプレッサ翼車が設けられ、前記回転軸が軸受ハウジングに回転自在に支持され、前記タービン翼車はタービンハウジングに収納され、前記コンプレッサ翼車はコンプレッサハウジングに収納された過給機であって、前記コンプレッサ翼車はアルミ合金製のディスク部と該ディスク部に摩擦接合された鋼製、又は鋼合金製のボス部から成り、前記回転軸の先端部に螺子部が形成され、該螺子部が前記ボス部に螺合して前記回転軸と前記コンプレッサ翼車が連結されたことを特徴とする過給機。
【請求項4】
前記ボス部の前記ディスク部に対する接合面に凹部を形成し、該凹部が溶融した前記ディスク部の金属により充填される様にした請求項3の過給機。
【請求項5】
前記ボス部と前記ディスク部との接合方向に対して交差する方向から凹部を形成し、該凹部が溶融した前記ディスク部の金属により充填される様にした請求項3の過給機。
【請求項6】
前記凹部に連通する通孔を設け、該通孔から不活性ガスを供給する様にした請求項4又は請求項5の過給機。
【請求項7】
前記ディスク部と前記ボス部との接合面は、前記コンプレッサ翼車の最大径位置に到達しない請求項3の過給機。
【請求項8】
前記ボス部の螺子穴の最深位置は前記コンプレッサ翼車の最大径位置に到達しない請求項3の過給機。
【請求項9】
前記回転軸の先端部に嵌合軸部と前記螺子部が形成され、前記嵌合軸部が前記ボス部に嵌合すると共に前記螺子部が前記ボス部に螺合する請求項3の過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−208138(P2009−208138A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55833(P2008−55833)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】