説明

発電機を搭載したエンジン駆動車両の制御装置

【課題】停車時に発電機を運転して外部負荷に電力を供給するエンジン駆動車両において、発電機を運転しているときに車両が暴走したり、エンジンの回転速度の上昇により発電機の出力が過大になって発電機及び発電機の出力側回路が破損したりするのを防止する。
【解決手段】車両を停車させて発電モードでエンジン1を運転しているときに、スロットルバルブ15が発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かを判定するスロットル位置判定手段35と、この判定手段によりスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときに、エンジンが設定した制限速度を超える状態で運転されるのを阻止する制御を行なう保安用エンジン制御手段36とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動用のエンジンにより駆動される発電機を搭載していて、停車時に発電機から負荷に電力を供給することができるようにしたエンジン駆動車両のエンジンを制御するエンジン駆動車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不整地を走行することを主目的としたエンジン駆動車両であるATV(All Terrain Vehicle、いわゆるバギー車)や、トラクター、或いはレクリエーションビークルなどのエンジン駆動車両においては、電動工具や、家庭電化製品等の屋外での使用を可能にするために、車両駆動用のエンジンにより駆動される発電機を搭載して、車両の停車時に、AC100VやAC200V(50Hzまたは60Hz)等の商用交流出力を負荷に供給することが行われている。この種のエンジン駆動車両は例えば特許文献1に示されている。
【0003】
この種のエンジン駆動車両では、発電機を運転した際に、車両が発進するのを防ぐために、動力伝達装置のギアポジションを検出するギアポジションセンサを設けて、このギアポジションが動力の伝達を断つポジションにあることが検出されているときにのみ、発電モードでの回転速度の制御を行わせるようにしている。
【特許文献1】特開2004−92634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、ギアポジションが動力の伝達を断つポジションにあることが検出されているときにのみ、発電モードでの回転速度の制御を行わせるようにすれば、発電モードで運転していているときに車両が発進するのを防ぐことができる。しかしながら、このように構成されたエンジン駆動車両においては、発電モードで運転している状態で運転者が誤ってスロットルバルブを増速側に操作すると、エンジンの回転速度が上昇して発電機の出力が過大になり、発電機の出力側に接続された回路が破壊されたり、発電機の負荷が破壊されたりするおそれがあった。
【0005】
また上記のように、ギアポジションが動力の伝達を断つポジションにあることが検出されているときにのみ、発電モードでの回転速度の制御を行わせるようにした場合でも、もしギアポジションセンサやギアボックスが故障していたとすると、動力伝達装置が動力の伝達を行い得る状態にあるにもかかわらず、動力の伝達を断つ状態にあるとの誤検出がされる状態で発電モードが選択されるおそれがある。この場合、動力伝達装置が遠心クラッチを備えたものであると、発電機の運転が開始されたときに、動力伝達装置が駆動輪への動力の伝達を行ない得る状態でエンジンの回転速度が上昇させられれるため、エンジンの回転速度が遠心クラッチのクラッチイン速度を超えて車両が発進するおそれがある。
【0006】
上記のような問題が生じるのを避けるためには、発電モードで運転する際のエンジンの許容回転速度を定めておいて、発電モードで運転中にスロットルバルブが操作されたときに、エンジンの回転速度が許容される回転速度を超えないようにしておくことが好ましい。
【0007】
本発明の目的は、発電モードで運転中に誤ってスロットルバルブが操作されたときに、エンジンが発電モード選択時に許容される回転速度を超えた状態で運転されるのを防止することができるようにした発電機を搭載したエンジン駆動車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、駆動輪を有する車体と、該車体に搭載されたエンジンと、該エンジンのクランク軸と駆動輪との間に設けられた動力伝達装置と、動力伝達装置を通すことなくエンジンにより駆動されるように設けられた発電機とを備えたエンジン駆動車両のエンジンを制御するエンジン駆動車両の制御装置に適用される。
【0009】
本発明においては、エンジン駆動車両が停車している状態で発電モードが選択されたときに、発電機から外部負荷に電力を供給するのに適した回転速度でエンジンを回転させるようにエンジンの吸入空気量を制御する発電時吸入空気量制御手段と、発電モードが選択されているときにエンジンのスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かを判定するスロットル位置判定手段と、スロットル位置判定手段によりスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときに、エンジンが発電モード選択時の制限速度を超える回転速度で運転されるのを阻止するための制御を行なう保安用エンジン制御手段とが設けられる。
【0010】
発電時吸入空気量制御手段は、スロットルバルブとは別個に設けられたバルブ(例えばISCバルブ)を制御することによりエンジンの吸入空気量を制御するように構成してもよく、スロットルバルブを制御することによりエンジンの吸入空気量を制御するように構成してもよい。スロットルバルブを制御することによりエンジンの吸入空気量を制御するように発電時吸入空気量制御手段を構成する場合には、スロットルバルブの全閉位置を調整する機構(スロットルバルブの全閉時における開度を調整する機構)を設けて、スロットルバルブの全閉位置を制御することにより、エンジンの吸入空気量を制御するようにするのがよい。
【0011】
スロットルバルブとは別個に設けられたバルブを制御することによりエンジンの吸入空気量を制御する場合も、スロットルバルブの全閉位置を制御することによりエンジンの吸入空気量を制御する場合も、発電モード選択時のスロットルバルブの正規位置は全閉位置である。
【0012】
上記のように構成すると、発電モードでエンジンを運転している状態で、誤ってスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側に操作されたときに、発電機の出力電圧が許容上限値に達する時のエンジンの回転速度以下に設定された回転速度を制限速度として、エンジンが制限速度を超える回転速度で運転されるのを阻止するための制御が行なわれるため、発電モードでエンジンを運転する際にエンジンの回転速度の上昇により発電機の出力が過大になって発電機の出力側の回路が破損したり、発電機の負荷が破壊したりするのを防ぐことができる。
【0013】
エンジンが制限速度を超える回転速度で運転されるのを阻止するための制御は、エンジンの回転速度を制限速度以下に制限する制御でも良く、エンジンを停止させる制御でもよい。
【0014】
即ち、本発明において用いる保安用エンジン制御手段は、スロットル位置判定手段によりスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときに、エンジンの回転速度を発電モード選択時の制限速度以下に制限する制御を行なう手段でも良く、スロットル位置判定手段によりスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときにエンジンを停止させる制御を行なう手段でもよい。
【0015】
スロットル位置判定手段によりスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときに、エンジンの回転速度を制限速度以下に制限する制御を行なう保安用エンジン制御手段は、エンジンの回転速度が制限速度を超えたときにエンジンへの燃料供給の停止及びエンジンの点火動作の停止の少なくとも一方を行なうことによりエンジンの回転速度を制限速度以下に制限する制御を行なうように構成するのが好ましい。
【0016】
またスロットル位置判定手段によりスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときにエンジンを停止させる制御を行なう保安用エンジン制御手段は、エンジンへの燃料供給の停止及びエンジンの点火動作の停止の少なくとも一方を行なうことによりエンジンを停止させる制御を行なうように構成するのが好ましい。
【0017】
上記制限速度は、発電モード選択時に許容されるエンジンの回転速度の上限値に設定される。本発明の好ましい態様では、上記制限速度が、発電機の出力電圧が許容上限値に達するときのエンジンの回転速度以下に設定される。
【0018】
このように制限速度を設定しておくと、発電モードでエンジンを制御している状態でスロットルバルブが操作されたときに、発電機の出力電圧が過大になるのを防ぐことができるため、発電機の出力側に接続される回路が過電圧により破壊されたり、発電機の負荷が過電圧により破壊されたりするのを防ぐことができる。
【0019】
本発明が対象とするエンジン駆動車両において、動力伝達装置として遠心クラッチを備えたものが用いられる場合には、動力伝達装置のギアポジションがニュートラル位置及びパーキング位置以外の位置にあって、動力伝達装置を通して動力の伝達が行われ得る状態で発電機の運転が行なわれると、エンジンの回転速度がクラッチイン速度以上になったときに遠心クラッチがつながって車両が発進してしまう。このような事態が生じるのを防ぐため、動力電圧装置として、エンジンの回転速度が所定のクラッチイン速度以上になったときに閉じる遠心クラッチを備えたものを用いる場合には、上記制限速度を、発電機の出力電圧が許容上限値に達するときのエンジンの回転速度以下で、かつ遠心クラッチのクラッチイン速度未満に設定する。
【0020】
上記のように、制限速度を設定した場合には、発電モードでエンジンを運転している状態で、誤ってスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置に操作されたときに、発電機の出力電圧が過大になるのを防ぐことができるだけでなく、発電モードでエンジンを運転している際にエンジンがクラッチイン速度以上の回転速度で運転されるのを防いで、車両が発進するのを防ぐことができる。
【0021】
上記のように、制限速度を、遠心クラッチのクラッチイン速度未満に設定する場合には、エンジンの回転速度がアイドル回転速度とクラッチイン速度との間にあるときに発電機が定格出力を発生するように構成しておくのが好ましい。
【0022】
スロットル位置判定手段は、スロットルバルブの位置を検出する位置センサの出力からスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かを判定するように構成することができる。位置センサは、スロットルバルブの位置の情報を含む電気信号を発生するものであれば如何なるものでもよい。
【0023】
またスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置にあるときと該発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるときとで異なる状態をとる位置検出スイッチ(例えばリミットスイッチ)を設けておいて、この位置検出スイッチの状態からスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かの判定を行なうようにスロットル位置判定手段を構成することもできる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、発電モードでエンジンを運転している状態で、誤ってスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側に操作されたときに、エンジンが発電モード選択時の制限速度を超える回転速度で運転されるのを阻止するための制御が行なわれるため、発電モードでエンジンを運転する際にエンジンの回転速度の上昇により発電機の出力が過大になって発電機の出力側の回路が破損したり、発電機の負荷が破壊したりするのを防ぐことができる。
【0025】
また動力伝達装置が遠心クラッチ備えている場合に、制限速度を遠心クラッチのクラッチイン速度未満に設定した場合には、発電モードでエンジンを運転している状態で、誤ってスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置に操作されたときに、エンジンがクラッチイン速度以上の回転速度で運転されるのを防ぐことができるため、発電モードでエンジンを運転している際に車両が発進するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明が制御の対象とするエンジン駆動車両の要部の構成例を概略的に示したものである。本発明が制御の対象とするエンジン駆動車両は、車両を駆動するエンジンに取り付けられた発電機を電源として商用周波数の交流電力を出力する電源装置を搭載したものである。このようなエンジン駆動車両としては、ATV(バギー車)、トラクタ、レクリエーショナルビークル等がある。
【0027】
図1において1は駆動輪2を有する図示しない車体に搭載されたエンジン(内燃機関)である。エンジン1は2サイクルエンジンでもよく、4サイクルエンジンでもよい。エンジン1のクランク軸1aの一端は、エンジンの回転速度が所定のクラッチイン速度(通常2000r/min〜3000r/min)以上になったときに接続状態になる遠心クラッチ3と、ベルト変速機構4及びギアボックス5を有するCVT(無断変速機)6とからなる動力伝達装置7と、歯車機構8とを通して、駆動輪2が取り付けられた車軸9に結合されている。
【0028】
ギアボックス5にはギアポジション選択レバー5aが取り付けられていて、このレバーを操作することにより、ギアポジションをパーキングポジションP、ハイポジションH、ローポジションL、ニュートラルポジションN及びリバース(後退)ポジションRにそれぞれ切り換えることができるようになっている。ギアボックス5には、ギアポジションを検出するギアポジションセンサ10が取り付けられている。
【0029】
上記のギアポジションの内、ニュートラルポジションN及びパーキングポジションPは、エンジンから駆動車輪側への動力の伝達を断つポジションであり、ハイポジションH、ローポジションL及びリバース(後退)ポジションRは、エンジンから駆動車輪側へ動力を伝達するポジションである。
【0030】
エンジン1のクランク軸1aの他端には発電機11の回転子が取り付けられている。発電機11の固定子はエンジンのケースやカバーなどに設けられた取付け部に固定されている。
【0031】
図示の発電機11は、回転子側に永久磁石からなる界磁を有し、固定子側に電機子コイルを有する磁石式交流発電機で、この発電機の交流出力は整流回路12により直流出力に変換された後インバータ13に入力されている。図示のインバータ13は、ブリッジの各辺をスイッチ素子により構成したブリッジ形のスイッチ回路からなる周知のものである。インバータ13は、後記する制御装置内に設けられたインバータ制御手段により制御されて、整流回路12から与えられる直流出力を所定の周波数(通常は商用周波数)の交流出力に変換する。この例では、発電機11と、整流回路12と、インバータ13と、インバータ13を制御するインバータ制御手段とにより、商用周波数の交流電圧を発生する電源装置が構成され、インバータ13の交流出力が外部の負荷14に与えられている。
【0032】
1cはエンジンの吸気管で、この吸気管にはスロットルバルブ15が取り付けられている。スロットルバルブ15の操作軸には、該スロットルバルブが増速側に変位するに従って大きさが大きくなる位置検出信号(スロットルバルブの開度に比例した大きさの位置検出信号)を発生する位置センサ16の入力軸が接続されている。位置センサ16としては、例えば、スロットルバルブの操作軸に回転軸が連結されたポテンショメータを用いることができる。
【0033】
吸気管1cには、スロットルバルブ15をバイパスするバイパス通路1dが設けられ、エンジンのアイドル回転速度を制御する際にこのバイパス通路を流れる空気の量を調節するためにISCバルブ17が設けられている。ISCバルブ17にはソレノイドからなるアクチュエータ18が取り付けられ、このアクチュエータ18に与える駆動電流IcをPWM制御することにより、ISCバルブ17の開度を調節することができるようになっている。
【0034】
図示してないが、エンジン1の吸気管1cにインジェクタ(電磁式燃料噴射弁)が取り付けられ、エンジン1のシリンダヘッドに点火プラグが取り付けられている。
【0035】
20はマイクロプロセッサ、点火回路、インジェクタ駆動回路等を備えた制御装置、21は手動操作される切換スイッチからなるモード選択手段である。モード選択手段21は、切換スイッチの状態に応じて、エンジンの運転モードとして、車両運転モードを選択するか、発電モードを選択するかを指令するモード選択指令を制御装置20に与える。
【0036】
エンジン1にはまた、そのクランク角位置が特定の位置に一致したときにパルス信号を発生する信号発生器22が取り付けられている。図示の信号発生器22は、エンジンのクランク軸1aの他端に直結されたロータ23の外周に設けられたリラクタ(誘導子)23aの回転方向の前端側エッジ及び後端側エッジをそれぞれ検出したときにパルス信号を発生する公知のものである。信号発生器22の出力は、ギアポジションセンサ10の出力及びスロットルバルブの位置を検出する位置センサ16の出力とともに制御装置20に入力されている。リラクタ23aは突起でもよく、凹部でもよい。
【0037】
図示してないが、エンジンの点火時期及び燃料噴射量を制御するために用いる制御条件(エンジンの温度、大気圧等)を検出する各種のセンサが設けられていて、これらのセンサの出力が制御装置20に入力されている。
【0038】
制御装置20は、マイクロプロセッサに所定のプログラムを実行させることにより、エンジンの運転に必要な制御(点火時期の制御や燃料噴射量の制御)を行うエンジン制御装置(ECU)20Aと、モード選択手段21により発電モードが選択されているときに、発電機から外部負荷14を駆動するために必要な出力を発生させるための制御を行なう発電制御装置20Bとを構成する。
【0039】
図2は、図1のエンジン駆動車両で用いる制御装置20の構成を示したものである。図2に示した例では、エンジンを点火する点火回路25と、インジェクタ駆動回路26と、回転速度検出手段27と、点火時期制御手段28と、燃料噴射制御手段29と、過回転防止制御手段30と、制限速度設定手段31と、アイドル制御手段32とによりエンジン制御装置20Aが構成されている。
【0040】
これらの各部を説明すると、点火回路25は、点火時期制御手段28から点火信号Siが与えられたときに点火用の高電圧Vhを発生する回路で、点火コイルと、後記する点火時期制御回路から点火信号Siが与えられたときに点火コイルの二次側に高電圧を誘起させるために該点火コイルの一次電流に急激な変化を生じさせる一次電流制御回路とにより構成されている。点火回路25が発生する点火用高電圧Vhは、エンジン1のシリンダヘッドに取り付けられた点火プラグに印加される。点火プラグに点火用高電圧が与えられると、該点火プラグの放電ギャップ間に火花放電を生じてエンジンが点火される。
【0041】
インジェクタ駆動回路26は、エンジンの吸気管などに取り付けられたインジェクタ(電磁式燃料噴射弁)のソレノイドに駆動電流を供給する回路である。インジェクタ駆動回路26は、燃料噴射制御手段29から噴射指令信号が与えられている間インジェクタに駆動電圧Vjを印加してインジェクタのソレノイドに駆動電流を流す。インジェクタは、インジェクタ駆動回路26から駆動電流が与えられている間その弁を開いて燃料を噴射する。インジェクタには図示しない燃料ポンプから燃料が所定の圧力で与えられている。インジェクタに与えられる燃料の圧力は圧力レギュレータにより一定に保たれるため、燃料噴射量はインジェクタが燃料を噴射する時間(燃料噴射時間)により管理される。
【0042】
回転速度検出手段27は、エンジンの回転速度を検出する手段で、信号発生器22が出力するパルスの発生間隔(エンジンが一定の角度を回転するのに要する時間)からエンジンの回転速度を演算により求める。
【0043】
点火時期制御手段28は、エンジンの点火時期を制御する手段で、回転速度検出手段27により検出されたエンジンの回転速度などの各種の制御条件に対してエンジンの点火時期を演算する点火時期演算手段と、エンジンのクランク角位置が演算された点火時期に相当するクランク角位置に一致したときに点火信号Siを発生する点火信号発生手段とにより構成されている。点火時期制御手段28が発生する点火信号Siは、点火回路25に与えられる。
【0044】
燃料噴射制御手段29は、エンジンの回転速度、スロットルバルブ開度、大気圧、エンジンの温度などの各種の制御条件に応じて燃料噴射時間を演算し、演算した燃料噴射時間にインジェクタの無効噴射時間を加えた時間に相当する信号幅を有する矩形波状の噴射指令信号をインジェクタ駆動回路26に与える。
【0045】
過回転防止制御手段30は、エンジンの回転速度が制限速度を超えないようにエンジンの点火動作と燃料噴射動作とを制御する手段で、この過回転防止制御手段は、回転速度検出手段27により検出されるエンジンの回転速度が制限速度を超えたときに燃料噴射制御手段29からの噴射指令信号Sjの出力を停止させて燃料噴射動作を停止させるとともに、点火時期制御手段28からの点火信号Siの出力を停止させてエンジンの点火動作を停止させることにより、エンジンの回転速度を制限速度以下に低下させる。過回転防止制御手段30はまた、エンジンの回転速度が上記制限速度よりも僅かに低く設定された設定値以下になったときに燃料噴射動作及び点火動作を回復させる。
【0046】
制限速度設定手段31は、過回転防止制御手段30がエンジンの回転速度を制限する制御を行なう際の制限速度を与える手段である。この制限速度設定手段は、車両運転モードが選択されているときに、車両の定常運転時に許容されるエンジンの最高回転速度を車両運転モード用制限速度として過回転防止制御回路30に与え、後記する保安用エンジン制御手段から制限速度切替指令が与えられたときに、制限速度を遠心クラッチのクラッチイン速度よりも低く設定された発電モード用制限速度に切り替える。
【0047】
アイドル制御手段32は、エンジンのアイドル運転時に、回転速度検出手段27により検出されるアイドル回転速度を設定値に保つように、アクチュエータ18に与える駆動電流のデューティ比を制御してISCバルブ17の開度を制御する。
【0048】
また図2に示した例では、インバータ制御手段33と、発電時吸入空気量制御手段34と、スロットル位置判定手段35と、保安用エンジン制御手段36とが設けられて、これらの手段により発電制御装置20Bが構成されている。
【0049】
インバータ制御手段33は、モード選択手段21により発電モードが選択されているときに、インバータ13から商用周波数の交流電圧を出力させるようにインバータ13を構成するスイッチ素子をオンオフ制御する手段と、インバータ13の出力電圧の目標値(定格値)と発電機11の出力を整流する整流回路12の出力電圧との偏差に基づいて、インバータ13の出力電圧を目標値に一致させるために必要なエンジンの回転速度を目標回転速度として演算する目標回転速度演算手段(図示せず。)とを備えており、目標回転速度演算手段により演算された目標回転速度を、発電時吸入空気量制御手段34に与える。
【0050】
発電時吸入空気量制御手段34は、発電モードが選択されているときに、発電機11から外部負荷14に電力を供給するのに適した回転速度でエンジン1を回転させるようにエンジンの吸入空気量を制御する手段である。発電時吸入空気量制御手段34は、モード選択手段21により発電モードが選択され、かつ車両が停止していて、ギアポジションセンサ10によりギアボックス5のギアポジションが動力の伝達を行なわない位置にある等の発電モード移行条件が成立しているときに、エンジンの回転速度を上記目標回転速度に一致させるように制御するべく、アクチュエータ18を制御してバイパス通路1dを通して流れる吸入空気量を調節する。発電モードでエンジンを制御する際には、スロットルバルブ15の位置を全閉位置に保持しておく。
【0051】
本実施形態においては、エンジンがアイドル回転速度とクラッチイン速度との間のある回転速度で回転しているときに発電機11が定格出力を発生するように構成されている。このように、エンジンがアイドル回転速度とクラッチイン速度(遠心クラッチ3がつながる回転速度)との間のある回転速度で回転しているときに発電機が定格出力を発生するように構成しておくと、発電時吸入空気量制御手段34は、発電モード選択時にエンジンをアイドル回転速度とクラッチイン速度との間の速度で回転させるように制御するため、スロットルバルブが全閉位置にある限り、発電モード選択時にエンジンの回転速度がクラッチイン速度に達することはない。従って、発電時に遠心クラッチがつながって車両が走り出すのを防ぐことができる。
【0052】
エンジンのアイドル回転速度とクラッチイン速度との間の回転速度で発電機から定格出力を発生させるようにするためには、例えば、発電機の電機子巻線の巻数を従来よりも多くしたり、界磁を強くしたりすればよい。
【0053】
また、遠心クラッチのクラッチイン速度を高くすることにより、アイドル回転速度とクラッチイン速度との間の速度で発電機から定格出力を発生させることを可能にしてもよい。即ち、発電機から定格出力を発生させるために、従来用いられていた遠心クラッチのクラッチイン速度が低すぎる場合には、クラッチイン速度を、発電機から定格出力を発生させるために必要な回転速度よりも高くするように変更するようにしてもよい。
【0054】
またエンジンのクランク軸と発電機11の回転子との間に歯車機構などからなる増速機構を設けて、クランク軸の回転速度よりも高い速度で発電機の回転子を回転させることにより、クラッチイン速度以上の速度で定格出力を発生させていた従来の発電機と同等の発電機を用いて、エンジンのアイドル回転速度とクラッチイン速度との間の回転速度で発電機から定格出力を発生させるようにすることができる。
【0055】
上記のように、エンジンがアイドル回転速度とクラッチイン速度との間のある回転速度で回転しているときに定格出力を発生するように構成しておくと、スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置(全閉位置)にある限り、発電モード選択時にエンジンの回転速度がクラッチイン速度に達するのを防ぐことができる。
【0056】
しかしながら、上記のように構成しておいても、発電モードでエンジンを運転している状態で、運転者が誤ってスロットルバルブ15を増速側に操作すると、エンジンの吸入空気量が増加するため、エンジンの回転速度が上昇してクラッチイン速度を超えることがある。
【0057】
発電モードへの移行は、ギアボックス5のギアポジションが動力の伝達を断つ位置にないと許可されないため、ギアポジションセンサ10やギアボックス5が正常であれば、動力伝達装置が動力の伝達を行ない得る状態で発電モードに移行することはない筈である。しかし、ギアポジションセンサ10が故障していたり、ギアボックス5が故障していたりすると、ギアボックス5のギアポジションが動力の伝達を行なう位置にあるにもかかわらず、動力の伝達を行なわない位置にあるとの誤検出が行なわれて、発電モードへの移行が許可されることがある。このような状態で発電モードへの移行が行なわれて、エンジンが発電モードで運転されているときに運転者が誤ってスロットルバルブを増速側に操作すると、エンジンの回転速度がクラッチイン速度を超えたときにエンジン1の回転が駆動輪8に伝達されて車両が発進するおそれがある。
【0058】
本実施形態においては、上記のような現象が起きないようにするため、発電モードが選択されているときに随時エンジンのスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かを判定するスロットル位置判定手段35と、このスロットル位置判定手段35によりスロットルバルブ15が発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときにエンジン1が発電モード選択時の制限速度を超えた状態で運転されるのを阻止するための制御を行なう保安用エンジン制御手段36とを設けた。本実施形態では、発電モード選択時の制限速度が、遠心クラッチのクラッチイン速度未満で、かつ発電機の出力電圧が許容上限値に達するときのエンジンの回転速度以下に設定される。
【0059】
即ち、本実施形態で用いる保安用エンジン制御手段36は、スロットル位置判定手段35によりスロットルバルブ15が発電モード選択時の正規位置(本実施形態では全閉位置)よりも増速側の位置にあると判定されたときに、エンジンの回転速度を、遠心クラッチ3のクラッチイン速度未満で、かつ発電機の出力電圧が許容上限値に達する時のエンジンの回転速度以下に設定された発電モード用制限速度以下に制限する制御を行なうように構成されている。
【0060】
図示の保安用エンジン制御手段36は、発電モードが選択されている状態で、スロットル位置判定手段35が、位置センサ16の出力からスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定したときに、制限速度設定手段31に切替指令を与えて、エンジンの制限速度を遠心クラッチのクラッチイン速度未満に設定された発電モード用制限速度に切り替えるように構成されている。
【0061】
従って、発電モードが選択されている状態で、スロットルバルブが増速側に操作されたときには、過回転防止制御手段30が、直ちにエンジンの点火動作と燃料噴射動作とを停止させて、エンジンの回転速度をクラッチイン速度よりも低い発電モード用制限速度以下に低下させ、エンジンの回転速度がクラッチイン速度に達するのを阻止する。過回転防止制御手段30は、エンジンの回転速度が制限速度以下になったときにエンジンの点火動作と燃料噴射動作とを回復させる。このときスロットルバルブが未だ開かれていて、エンジンの回転速度が上昇しようとした場合には、再び点火動作及び燃料噴射動作を停止させてエンジンの回転速度を低下させる。発電モード選択時にスロットルバルブが操作されたときには、上記の動作が繰り返されることにより、エンジンの回転速度が遠心クラッチ3のクラッチイン速度に達するのが阻止されるため、車両が発進するのが防止されるとともに、発電機11の回転速度が過大になって発電機の出力側に接続された回路が破壊されたり、発電機の負荷が破壊されたりするのが防止される。
【0062】
上記の説明では、スロットル位置判定手段33によりスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときに、過回転防止制御手段がエンジンの点火動作と、エンジンへの燃料の供給との双方を停止させることにより、エンジンの回転速度を低下させるとしたが、発電モード選択時にスロットル位置判定手段35により、スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側に位置にあると判定されたときに、エンジンへの燃料供給の停止及びエンジンの点火動作の停止のうちの一方を行なうことによりエンジンの回転速度を制限速度以下に低下させる制御を行なうように過回転防止制御手段30を構成するようにしてもよい。
【0063】
上記の例では、スロットル位置判定手段35によりスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときに、エンジンの回転速度をクラッチイン速度未満に設定された設定回転速度以下に制限する制御を行なうとしたが、スロットル位置判定手段35によりスロットルバルブ15が発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときにエンジンを停止させるようにしてもよい。
【0064】
発電モード選択時にスロットル位置判定手段35によりスロットルバルブ15が発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときにエンジンを停止させるには、例えば、エンジンの制限速度を0とする指令(停止指令)を制限速度設定手段31に与えるようにすればよい。保安用エンジン制御手段36から制限速度設定手段31に停止指令が与えられると、過回転防止制御手段30は、エンジンへの燃料供給を停止する制御及びエンジンの点火動作を停止する制御の少なくとも一方を行なうことによりエンジンを停止させる。
【0065】
また上記のように、制限速度設定手段31に停止指令を与えてエンジンの制限速度を0とする代りに、点火時期制御手段28及び燃料噴射制御手段29の少なくとも一方に直接指令を与えて、点火信号Si及び噴射指令信号Sjの少なくとも一方の出力を停止させるように保安用エンジン制御手段36を構成してもよい。
【0066】
上記のように、車両の運転を停止させて発電モードでエンジンを運転しているときに、スロットルバルブ15が発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かの判定を行なうスロットル位置判定手段を設けて、発電モード選択時にスロットルバルブ15の位置が発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときに、エンジンの回転速度が制限速度を超えないように制御すると、エンジンの回転速度の上昇により発電機の出力が過大になって発電機の出力側に接続された回路が破損したり、発電機の負荷が破壊したり、発電モードでエンジンを運転しているときに車両が発進したりするおそれをなくすことができる。
【0067】
図2に示した制御装置において、発電モードが選択されていないとき(車両運転モードが選択されているとき)には、発電時吸入空気量制御手段34による吸入空気量調節バルブ17の制御は行なわれず、スロットル位置判定手段35による判定及び保安用エンジン制御手段36による制御も行なわれない。この場合には、運転者のスロットル操作に応じて、エンジンの点火時期及び燃料噴射時間が制御され、車両運転時のエンジンの制御が行なわれる。発電モードが選択されていないときには、制限速度設定手段31がエンジンの制限速度を車両運転時に許容されるエンジンの回転速度の上限値に切り替えるため、車両の運転は支障なく行なわれる。
【0068】
図2に示した制御装置の各種の制御手段を構成するために、制御装置20に設けられたマイクロプロセッサに実行させるタスクのアルゴリズムの一例を図4に示した。図4に示したタスクは、エンジンの運転中微小時間毎に実行されるもので、このアルゴリズムによる場合には、同タスクが開始されたときに先ずステップ1で発電モードが選択されているか否かを判定する。その結果発電モードが選択されていないと判定されたときには、ステップ2に移行して車両運転時の制御を行なわせる。
【0069】
ステップ1で発電モードが選択されていると判定されたときには、ステップ3に移行して発電モードに移行するための条件が成立しているか否かを判定する。発電モードに移行するための条件は、例えば、車両が停止していることと、ギアポジションセンサ10がパーキング位置を検出していることである。ステップ3での判定の結果、発電モードに移行する条件が満たされていないと判定されたときには、ステップ2に移行し、車両運転時の制御を行なわせる。
【0070】
ステップ3で発電モードに移行する条件が成立していると判定されたときには、次いでステップ4に進んで、位置センサ16の出力からスロットルバルブが全閉位置(発電モード選択時の正規位置)にあるか否かを判定する。その結果、スロットルバルブが全閉位置にあると判定されたときには、ステップ5に移行して、インバータ13の制御や、吸入空気量調節バルブ17の制御等、発電モードにおける通常の制御動作を行なわせる。
【0071】
ステップ4でスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときには、ステップ6に移行して吸入空気量調節バルブ(ISCバルブ)を閉じる制御と、インバータ31の出力を停止させる制御と、エンジンの制限速度を、遠心クラッチのクラッチイン速度未満で、かつ発電機の出力電圧が許容上限値に達する時のエンジンの回転速度以下に設定された発電モード用制限速度に切り替えてエンジンの回転速度を発電モード用制限速度以下に制限する制御と、警告灯等によるエラー表示動作とを行なわせる。
【0072】
図4に示したアルゴリズムによる場合には、ステップ4によりスロットル位置判定手段35が構成され、ステップ5により、発電時吸入空気量制御手段34が構成される。またステップ6により保安用エンジン制御手段36が構成される。
【0073】
上記の実施形態では、スロットルバルブの位置を検出する位置センサ16の出力からスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置(全閉位置)にあるか否かを判定するようにスロットル位置判定手段を構成したが、スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置にあるときと該正規位置よりも増速側の位置にあるときとで異なる状態をとる位置検出スイッチ(例えばリミットスイッチ)を設けて、この位置検出スイッチの状態からスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かの判定を行なうようにスロットル位置判定手段を構成してもよい。
【0074】
上記の実施形態では、発電モード選択時に、スロットルバルブをバイパスするバイパス通路を開閉するISCバルブを吸入空気量調節手段として用いて、このISCバルブを制御することによりエンジンを発電機から負荷に与える電力を発生させるのに適した回転速度で回転させるように制御するようにしたが、発電モード選択時にスロットルバルブ15を吸入空気量調節手段として用いて、エンジンの回転速度を、発電機から負荷に所要の電力を与えるために必要な目標回転速度に一致させる制御を行なわせてもよい。
【0075】
発電モード選択時にスロットルバルブ15を吸入空気量調節手段として用いる場合には、スロットルバルブ15の全閉位置を調整するスロットル全閉位置調整機構を用いてスロットルバルブ15の全閉位置を制御することにより、エンジンの回転速度を、発電機から負荷に所要の電力を与えるために必要な目標回転速度に一致させる制御を行なわせる。
【0076】
スロットル全閉位置調整機構は、エンジンのアイドル回転速度を制御する際に吸入空気量の調節手段として用いられるアイドルアップ機構として知られたもので、その構成例を図5に示した。図5に示した例では、スロットルバルブ15を回動操作する操作軸15aにスロットルドラム40が取り付けられている。スロットルドラム40はスロットルバルブ15とともに変位するように設けられていて、図示しないバネにより、常時スロットルバルブ15を閉じようとする方向に(図面上反時計方向に)付勢されている。スロットルドラム40にはスロットルワイヤ41が巻き付けられていて、図示しないアクセル操作部材(例えばアクセルペダル)と連動する機構によりスロットルワイヤ41のスロットルドラムからの巻き戻し量を変えることにより、スロットルバルブ15の開度を調節することができるようになっている。スロットルドラム40にはストッパ突起40aが設けられ、このストッパ突起40aが、回動軸42により回動自在に支持されたストッパカム43のカム面43aに当接されている。ストッパ突起40a及びストッパカム43は、スロットルバルブの全閉位置を定めるために設けられたもので、ストッパ突起40aがストッパカム43に当接したときのスロットルバルブの位置が、スロットルバルブの全閉位置である。
【0077】
ストッパカム43は、モータなどを駆動源とした図示しないアクチュエータにより回転操作されるようになっていて、ストッパカム43の回転に伴ってスロットルバルブ15の全閉位置が変化させられるようになっている。図5に示した例では、ストッパカム43が図示の位置にあるときにスロットルバルブ15の全閉位置が、該スロットルバルブの全閉時の開度を最小にする位置となり、ストッパカム43が図示の位置から反時計方向に回転させられたときに、ストッパカム43によりストッパ突起40aが押し上げられてスロットルドラム40が時計方向に回動させられることにより、図5に波線で示したように、スロットルバルブ15の全閉位置が、該スロットルバルブの全閉時の開度を増大させる側に変化させられる。この例では、ストッパ突起40aと、ストッパカム43とによりスロットル全閉位置調整機構(アイドルアップ機構)17′が構成されている。
【0078】
図5に示したようなスロットル全閉位置調整機構17′を用いてエンジンの吸入空気量を調整することにより、発電モード選択時のエンジンの制御を行なう場合の制御装置の構成例を図3に示した。図3に示した制御装置では、図2の実施形態で用いた吸入空気量調節バルブ(ISCバルブ)に代えて、スロットル全閉位置調整機構17′が用いられている。またアイドル制御手段32及び発電時吸入空気量制御手段34は、スロットル全閉位置調整機構のストッパカム43を操作するアクチュエータ18′を制御することにより、スロットルバルブ15の全閉位置を調整して吸入空気量を制御する。
【0079】
図3のように制御装置を構成した場合、発電時吸入空気量制御手段34は、エンジン駆動車両が停車している状態で発電モードが選択されたときに、発電機11から外部負荷14に所要の電力を供給するのに適した回転速度でエンジンを回転させるように、ストッパカム43を操作するアクチュエータ18′を制御して、スロットルバルブ15の全閉位置を制御することにより、エンジンの吸入空気量を制御する。このように構成する場合も、発電モード選択時のスロットルバルブの正規位置は全閉位置である。
【0080】
図3に示したスロットル位置判定手段35は、発電モードが選択されているときに位置センサ16の出力から検出されるスロットルバルブの位置が、スロットルバルブの全閉時の開度が最大になるときのスロットルバルブ位置よりも更に増速側の位置にあるか否かを判定することにより、スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かを判定するように構成することができる。
【0081】
また保安用エンジン制御手段36は、発電モードでエンジンが運転されている状態で、スロットル位置判定手段35によりスロットルバルブ15が発電モード選択時の正規位置(全閉位置)よりも増速側の位置にあると判定されたときに、エンジンの回転速度をクラッチイン速度未満に設定された発電モード用制限速度以下に低下させる制御を行なうか、またはエンジンを停止させる制御を行なうように構成されている。その他の点は図2に示した実施形態と同様に構成されている。
【0082】
上記の発電機11は、車両の停車時に外部負荷14に電力を供給するための専用の発電機であってもよく、車両の走行時に、車両に搭載された各種の電装品を駆動したり、バッテリを充電したりするための発電機を兼ねていてもよい。発電機11が外部負荷を駆動するための専用の発電機である場合には、エンジンに各種の電装品を駆動するための発電機を別個に取り付ける。
【0083】
図3に示した例では、位置センサ16の出力からスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かを判定するようにスロットル位置判定手段35を構成したが、この場合も、スロットルバルブの位置が発電モード選択時の正規位置にあるときと、該正規位置よりも増速側の位置にあるときとで異なる状態をとる位置検出スイッチ(例えばリミットスイッチ)を設けて、位置検出スイッチの状態からスロットルバルブの位置が発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かの判定を行なうようにスロットル位置判定手段35を構成してもよい。
【0084】
上記の各実施形態では、エンジンの回転速度がアイドル回転速度とクラッチイン速度との間にあるときに発電機が定格出力を発生するように構成されていて、保安用エンジン制御手段によりエンジンの回転速度を制御する際の制限速度を、遠心クラッチのクラッチイン速度よりも十分に低く、かつ発電機の出力電圧が許容上限値に達する時のエンジンの回転速度以下に設定したが、ギアポジションセンサの信頼性を十分に確保することができる場合(動力伝達装置が動力の伝達を行なう状態にあるにもかかわらず動力の伝達を断つ状態にあるとの誤検出が行なわれるおそれがない場合)には、遠心クラッチのクラッチイン速度を特に考慮せずに、発電モード選択時に発電機の出力電圧が過大になるのを防ぐことを主目的として、上記制限速度を、発電機の出力電圧が許容上限値に達する時のエンジンの回転速度以下に設定するようにしてもよい。この場合、発電機が遠心クラッチのクラッチイン速度を超える回転速度で定格出力を発生するように構成されていてもよい。
【0085】
上記の実施形態では、発電機11として磁石発電機を用いたが、発電機11として励磁式の同期発電機を用いることもできる。励磁式の発電機を用いる場合には、インバータを設けることなく、発電機11から直接負荷14に電力が供給される。この場合には、発電モード選択時に、発電機11の出力周波数を商用周波数とするために必要なエンジンの回転速度を目標回転速度として、発電モード選択時にエンジンの回転速度を目標回転速度に保つようにエンジンの吸入空気量を制御する。また発電機11から負荷14に所要の出力を供給するように発電機の界磁が制御される。
【0086】
上記の実施形態では、エンジンのクランク軸と車両の駆動輪との間に設ける動力伝達装置として、遠心クラッチを備えたものが用いられているが、運転者により操作される通常のクラッチを備えた動力伝達装置が用いられる場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明を適用するエンジン駆動車両の構成例を概略的に示した構成図である。
【図2】図1のエンジン駆動車両で用いる制御装置の構成を示したブロック図である。
【図3】図1のエンジン駆動車両で用いる制御装置の他の構成を示したブロック図である。
【図4】図2の実施形態においてマイクロプロセッサが実行するタスクのアルゴリズムを示したフローチャートである。
【図5】図3の実施形態において用いるスロットル全閉位置調整機構の構成例を示した断面図である。
【符号の説明】
【0088】
1 エンジン
2 車体の駆動輪
3 遠心クラッチ
5 ギアボックス
7 動力伝達装置
11 発電機
12 整流回路
13 インバータ
15 スロットルバルブ
16 位置センサ
17 吸入空気量調節バルブ
17′スロットル全閉位置調整機構
18 アクチュエータ
20 制御装置
20A エンジン制御装置
20B 発電制御装置
21 モード選択手段
34 発電時吸入空気量制御手段
35 スロットル位置判定手段
36 保安用エンジン制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪を有する車体と、前記車体に搭載されたエンジンと、前記エンジンのクランク軸と前記駆動輪との間に設けられた動力伝達装置と、前記動力伝達装置を通すことなく前記エンジンにより駆動されるように設けられた発電機とを備えたエンジン駆動車両の前記エンジンを制御するエンジン駆動車両の制御装置であって、
前記エンジン駆動車両が停車している状態で発電モードが選択されたときに、発電機から外部負荷に電力を供給するのに適した回転速度でエンジンを回転させるようにエンジンの吸入空気量を制御する発電時吸入空気量制御手段と、
前記発電モードが選択されているときに前記エンジンのスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かを判定するスロットル位置判定手段と、
前記スロットル位置判定手段によりスロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときに、前記エンジンが発電モード選択時の制限速度を超える回転速度で運転されるのを阻止するための制御を行なう保安用エンジン制御手段と、
を具備してなる発電機を搭載したエンジン駆動車両の制御装置。
【請求項2】
駆動輪を有する車体と、前記車体に搭載されたエンジンと、前記エンジンのクランク軸と前記駆動輪との間に設けられた動力伝達装置と、前記動力伝達装置を通すことなく前記エンジンにより駆動されるように設けられた発電機とを備えたエンジン駆動車両の前記エンジンを制御するエンジン駆動車両の制御装置であって、
前記エンジン駆動車両が停車している状態で発電モードが選択されたときに、前記発電機から外部負荷に電力を供給するのに適した回転速度で前記エンジンを回転させるように、前記エンジンのスロットルバルブをバイパスする空気通路を流れる空気の量を調節する吸入空気量調節バルブを制御する発電時吸入空気量制御手段と、
前記発電モードが選択されているときに前記スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かを判定するスロットル位置判定手段と、
前記スロットル位置判定手段により前記スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときに、前記エンジンの回転速度を発電モード選択時の制限速度以下に制限する制御を行なう保安用エンジン制御手段と、
を具備してなる発電機を搭載したエンジン駆動車両の制御装置。
【請求項3】
駆動輪を有する車体と、前記車体に搭載されたエンジンと、前記エンジンのクランク軸と前記駆動輪との間に設けられた動力伝達装置と、前記動力伝達装置を通すことなく前記エンジンにより駆動されるように設けられた発電機とを備えたエンジン駆動車両の前記エンジンを制御するエンジン駆動車両の制御装置であって、
前記エンジン駆動車両が停車している状態で発電モードが選択されたときに、前記発電機から外部負荷に電力を供給するのに適した回転速度で前記エンジンを回転させるように前記エンジンのスロットルバルブの全閉位置を制御する発電時吸入空気量制御手段と、
前記発電モードが選択されているときに前記スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かを判定するスロットル位置判定手段と、
前記スロットル位置判定手段により前記スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときに、前記エンジンの回転速度を発電モード選択時の制限速度以下に制限する制御を行なう保安用エンジン制御手段と、
を具備してなる発電機を搭載したエンジン駆動車両の制御装置。
【請求項4】
前記制限速度は、前記発電機の出力電圧が許容上限値に達するときのエンジンの回転速度以下に設定されている請求項1,2又は3に記載の発電機を搭載したエンジン駆動車両の制御装置。
【請求項5】
前記動力伝達装置は、前記エンジンの回転速度がクラッチイン速度以上になっているときに閉じる遠心クラッチを備え、
前記制限速度は、前記発電機の出力電圧が許容上限値に達するときのエンジンの回転速度以下で、かつ前記クラッチイン速度未満に設定されている請求項1,2,3または4に記載の発電機を搭載したエンジン駆動車両の制御装置。
【請求項6】
前記保安用エンジン制御手段は、前記エンジンの回転速度が前記制限速度を超えたときに前記エンジンへの燃料供給の停止及び前記エンジンの点火動作の停止の少なくとも一方を行なうことにより前記エンジンの回転速度を前記制限速度以下に制限する制御を行なうように構成されている請求項1ないし5のいずれか1つに記載の発電機を搭載したエンジン駆動車両の制御装置。
【請求項7】
駆動輪を有する車体と、前記車体に搭載されたエンジンと、前記エンジンのクランク軸と前記駆動輪との間に設けられた動力伝達装置と、前記動力伝達装置を通すことなく前記エンジンにより駆動されるように設けられた発電機とを備えたエンジン駆動車両の前記エンジンを制御するエンジン駆動車両の制御装置であって、
前記エンジン駆動車両が停車している状態で発電モードが選択されたときに、前記発電機から外部負荷に電力を供給するのに適した回転速度で前記エンジンを回転させるように、前記エンジンのスロットルバルブをバイパスする空気通路を流れる空気の量を調節する吸入空気量調節バルブを制御する発電時吸入空気量制御手段と、
前記発電モードが選択されているときに前記スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かを判定するスロットル位置判定手段と、
前記スロットル位置判定手段により前記スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときに前記エンジンを停止させる制御を行なう保安用エンジン制御手段と、
を具備してなる発電機を搭載したエンジン駆動車両の制御装置。
【請求項8】
駆動輪を有する車体と、前記車体に搭載されたエンジンと、前記エンジンのクランク軸と前記駆動輪との間に設けられた動力伝達装置と、前記動力伝達装置を通すことなく前記エンジンにより駆動されるように設けられた発電機とを備えたエンジン駆動車両の前記エンジンを制御するエンジン駆動車両の制御装置であって、
前記エンジン駆動車両が停車している状態で発電モードが選択されたときに、前記発電機から外部負荷に電力を供給するのに適した回転速度で前記エンジンを回転させるように前記エンジンのスロットルバルブの全閉位置を制御する発電時吸入空気量制御手段と、
前記発電モードが選択されているときに前記スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かを判定するスロットル位置判定手段と、
前記スロットル位置判定手段により前記スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあると判定されたときに、前記エンジンを停止させる制御を行なう保安用エンジン制御手段と、
を具備してなる発電機を搭載したエンジン駆動車両の制御装置。
【請求項9】
前記保安用エンジン制御手段は、前記エンジンへの燃料供給の停止及び前記エンジンの点火動作の停止の少なくとも一方を行なうことにより前記エンジンを停止させる制御を行なうように構成されている請求項7または8に記載の発電機を搭載したエンジン駆動車両の制御装置。
【請求項10】
前記スロットルバルブの位置を検出する位置センサが設けられ、
前記スロットル位置判定手段は、前記位置センサの出力から前記スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かを判定するように構成されている請求項1ないし9のいずれか1つに記載の発電機を搭載したエンジン駆動車両の制御装置。
【請求項11】
前記スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置にあるときと該発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるときとで異なる状態をとる位置検出スイッチが設けられ、
前記スロットル位置判定手段は、前記位置検出スイッチの状態から前記スロットルバルブが発電モード選択時の正規位置よりも増速側の位置にあるか否かを判定するように構成されている請求項1ないし9のいずれか1つに記載の発電機を搭載したエンジン駆動車両の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−118477(P2006−118477A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−309490(P2004−309490)
【出願日】平成16年10月25日(2004.10.25)
【出願人】(000001340)国産電機株式会社 (191)
【Fターム(参考)】