説明

直流定電流電源装置及びそれを用いたモータ駆動システム

【課題】負荷の正負に係わらず指定された定電流の出力を維持させるための制御をより容易にすることが可能となる直流定電流電源装置を提供することである。
【解決手段】直流電源100と、複数のスイッチ111〜114(第1ブリッジ)を有し、直流電源100に接続されたインバータ11と、インバータ11における各スイッチをオン・オフ制御して、インバータ11から矩形波交流の電圧及び電流を出力させるインバータ駆動手段70と、複数のスイッチ121〜124(第2ブリッジ)を有し、インバータ11に接続され、出力端子X、Yに結合されたコンバータ12と、負荷起電力に係わりなく、出力電流が直流定電流に維持されるように、コンバータ12の各スイッチのオン・オフ制御によりインバータ11の矩形波交流の電圧を基準とした電流の位相を制御して出力端子間に現れる出力電圧を制御する定電流制御手段80とを備えた構成となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の負荷の起電力の正負及び大小に係わらず指示された一定電流を出力するとともに負荷側からの回生エネルギーの回収を可能にした直流定電流電源装置及びそれを用いたモータ駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願の発明者は、既に、直流定電流電源装置、多相定電流インバータ及び多相定電流モータ(Kaisei(登録商標)モータ)にて構成される新規なモータ駆動システムを提案している(特許文献1参照)。このモータ駆動システムは、電気自動車等に適用することができる。
【0003】
前記直流定電流電源装置は、負荷である多相定電流モータ側の起電力の正負、大小に関係なく、一定方向に指定された大きさの直流電流を出力するように動作する。また、この直流定電流電源装置は、負荷である多相定電流モータの制動時、即ち、負荷起電力が負の場合には、負荷側からの回生電力を回収するように動作する。
【0004】
前記多相定電流インバータは、前記直流定電流電源装置からの直流定電流を入力として、多相定電流モータの固定子巻線に流れる電流の向きを反転切換えして、該固定子巻線に矩形波交流電流を供給する機能を有している。この電流の向きを反転切換えする機能を複数設けることによって相数は任意に選択することが可能であり、この多相定電流インバータは、多相の矩形波交流電流を供給することができる。
【0005】
前記多相定電流モータ(Kaisei(登録商標)モータ)では、前記多相定電流インバータからの多相矩形波交流電流を受けると、内部の回転子の磁極に回転力が生じる。これまでの半導体モータは、三相正弦波電流で駆動する同期電動機、あるいは誘導電動機を原形にしているが、本願の発明者が提案した多相定電流モータは、直流電動機が原形であり、多相矩形波交流電流で動作する点において全く新しいタイプのモータである。
【0006】
前述したようなモータ駆動システムに用いられる前記直流定電流電源装置は、図25に示すように構成される。図25において、半導体スイッチS1、S2、S3、S4によってブリッジが構成されている。各半導体スイッチS1〜S4は、IGBT、サイリスタ、パワートランジスタ等のいずれかにて構成することができる。これら半導体スイッチS1〜S4は、非対称でのPWM(パルス幅制御)に従ったオン・オフ制御がなされる。以下、半導体スイッチS1〜S4にて構成されるブリッジを非対称PWMブリッジという。この非対称PWMブリッジにおいて直列接続される半導体スイッチS1とS3との接続点と、同様に直列接続される半導体スイッチS2とS4との接続点とが、直流電源1の正(+)端子と負(−)端子にそれぞれ接続されている。前記非対称PWMブリッジにおける半導体スイッチS1とS2との接続点がリアクトル2を介して出力端子Xに接続され、半導体スイッチS3とS4との接続点が出力端子Yに接続されている。また、半導体スイッチS5が前記非対称PWMブリッジに並列的に接続されている。
【0007】
このような直流定電流電源において、半導体スイッチS1〜S4は、所定の搬送波信号に応じてオン・オフ動作し、そのオン期間(オフ期間)が制御される(PWM制御)。また、非対称PWMブリッジにおいて対角線上にある一方半導体スイッチ対S1、S4と、他方の半導体スイッチ対S2、S3とは、通常のブリッジのように対称的に動作するのではなく、負荷起電力の正或いは負に対応してそれぞれが一体で非対称に動作するように制御される。具体的には、負荷起電力が正の場合(多相定電流モータの駆動時)、一方の半導体スイッチ対S1、S4が動作して、出力端子Xから定電流が出力されるように、出力端子X、Yの両端に正の平均電圧が出力し、その値は、前記半導体スイッチ対S1、S4のオン期間の長さに対応するものとなる。一方、負荷起電力が負の場合(多相定電流モータの制動時)、他方の半導体スイッチ対S2、S3の対が動作して、出力端子Xから前記定電流の出力が維持されるように、出力端子X、Yの両端に負の平均電圧が出力し、その値は、前記半導体スイッチ対S2、S3のオン期間の長さに対応するものとなる。
【0008】
なお、半導体スイッチS5は、リアクトル2及び後段の多相定電流インバータを通した循環回路を構成する。そして、半導体スイッチ対S1、S4のオフ期間、及び半導体スイッチ対S2、S3のオフ期間にオンするように制御される。これにより、両半導体スイッチ対のオフ期間においても多相定電流インバータに対して直流電流を途切れることなく供給することができる。
【0009】
前記直流定電流電源の制御装置は、負荷である定電流多相モータ(Kaisei(登録商標)モータ)の駆動時に、半導体スイッチ対S1、S4を搬送周波数でのパルス信号によってオン・オフ制御するとともに他方の半導体スイッチ対S2、S3をオフ状態に維持する。そして、その制御装置は、定電流多相モータの正の起電力に応じて出力電流が指定された定電流値Iに維持されるように、実効的な出力電圧(正の電圧)を制御すべく半導体スイッチ対S1、S4のオン期間(オフ期間)を制御する。一方、負荷である定電流多相モータの制動時には、制御装置は、半導体スイッチ対S1、S4に対する制御と他方の半導体スイッチ対S2、S3に対する制御とを切換え、半導体スイッチ対S1、S4をオフ状態にするとともに他方の半導体スイッチ対S2、S3を搬送周波数でのパルス信号によってオン・オフ制御する。そして、この制御装置は、制動される定電流多相モータの負の起電力に応じて出力電流が指定された定電流値Iに維持されるように、実効的な出力電圧(負の電圧)を制御すべく半導体スイッチS2、S4のオン期間(オフ期間)を制御する。
【0010】
前記多相定電流モータの制動時では、前記直流定電流電源の出力電圧(出力端子X、Y間の電圧)が負電圧となる状態で、出力端子Xから出力された定電流Iは、多相インバータ及び多相定電流モータを経て出力端子Yに戻り、半導体スイッチS3を介して直流電源100に戻される。即ち、電力回生がなされる。
【特許文献1】特許第4107614号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したような直流定電流電源装置では、負荷起電力が正の場合(多相定電流モータの駆動時)と、負荷起電力が負の場合(多相定電流モータの制動時)とで、非対称PWMブリッジにおいて有効にすべき半導体スイッチ対の切換え制御が必要であり、その有効に切換えた半導体スイッチ対に対して搬送周波数でのオン・オフ及びそのパルス幅制御がなされる。
【0012】
このように、半導体スイッチ対の切換え制御と、半導体スイッチのオン・オフ及びそのパルス幅制御という異なる種類の制御を必要とするため、その分、制御が煩雑になる。負荷起電力の正負が頻繁に変わるような場合には、特にその制御が難しくなり得る。
【0013】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、負荷の正負に係わらず指定された定電流の出力を維持させるための制御をより容易にすることが可能となる直流定電流電源装置を提供するものであり、また、そのような直流定電流電源装置を用いたモータ駆動システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る直流定電流電源装置は、充電可能な直流電源と、複数のスイッチにて構成された第1ブリッジを有し、直流側端子が前記直流電源の出力端子に接続されたインバータと、前記インバータにおける前記第1ブリッジの各スイッチを所定周期のパルス信号にてオン・オフ制御して、前記インバータの交流側端子から矩形波交流の電圧及び電流を出力させるインバータ駆動手段と、複数のスイッチにて構成された第2ブリッジを有し、交流側端子が前記インバータの前記交流側端子に接続され、負荷の接続される出力端子に結合された順逆変換動作を行うコンバータと、負荷起電力の正負及び大きさに係わりなく、出力電流が一定方向及び指示された一定値に維持されるように前記インバータの交流側端子から前記コンバータの交流側端子に供給される矩形波交流電圧を基準とした矩形波交流電流の位相を制御して前記出力端子間に現れる出力電圧を制御する定電流制御手段とを備えた構成となる。
【0015】
このような構成により、インバータの交流側端子からコンバータの交流側端子に矩形波交流の電圧及び電流が供給されている状態で、定電流制御手段が、出力端子に接続される負荷の起電力が正であっても負であってもまたその大きさがどのようなものであっても、出力電流が一定方向及び指示された一定値に維持されるように前記インバータから供給される矩形波交流電圧を基準とした矩形波交流電流の位相を制御して出力端子間に現われる出力電圧を制御する。
【0016】
また、本発明に係る直流定電流装置は、商用交流電源に接続されて所定レベルの正弦波交流の電圧及び電流を二次側端子から出力する変圧回路と、複数のスイッチにて構成されたブリッジを有し、交流側端子が前記変圧回路の二次側端子に接続され、負荷の接続される出力端子に結合された順逆変換動作を行うコンバータと、負荷起電力の正負及び大きさに係わりなく、出力電流が一定方向及び指定された一定値に維持されるように前記変圧回路から前記コンバータの交流側端子に供給される正弦波交流電圧を基準とした正弦波交流電流の位相を制御して前記出力端子に現われる出力電圧を制御する定電流制御手段とを備えた構成となる。
【0017】
このような構成により、変圧回路の二次側端子からコンバータの交流側端子に正弦波交流の電圧及び電流が供給されている状態で、定電流制御手段が、出力端子に接続される負荷の起電力が正であっても負であってもまたその大きさがどのようなものであっても、出力電流が一定方向及び指示された一定値に維持されるように前記変圧回路から供給される正弦波交流電圧を基準とした正弦波交流電流の位相を制御して出力端子間に現われる出力電圧を制御する。
【0018】
本発明に係るモータ駆動システムは、2n(nは整数)個の凸部が周方向に等間隔に形成された磁性体製の回転子と、該回転子の外方に前記各凸部に対して所定の空隙が形成されるように4n個の磁極を等間隔に配置してなる固定子と、該固定子の前記4n個の磁極のうちの1つおきに配置された磁極のそれぞれに巻回される第1のコイルと、前記4n個の磁極のうちの残りの磁極のそれぞれに巻回される第2のコイルとを有するスイッチドリラクタンスモータと、前述したいずれかの直流定電流電源装置と、交互に導通状態の切換えがなされ得る第1の電流路と第2の電流路とを有するフリップフロップ回路と、前記フリップフロップ回路の前記第1の電流路と前記第2の電流路との導通状態を交互に切換えるフリップフロップ制御手段とを備え、前記直流定電流電源装置の一方の出力端子から出力される直流定電流が前記フリップフロップ回路の第1の電流路を通って前記スイッチドリラクタンスモータの前記第1のコイルを流れ、前記直流定電流が前記フリップフロップ回路の前記第2の電流路を通って前記スイッチドリラクタンスモータの前記第2のコイルを流れ、前記第1及び第2のコイルを流れた前記直流定電流が前記直流定電流電源装置の他方の出力端子に帰還するように、前記直流定電流電源装置と、前記フリップフロップ回路と、前記スイッチドリラクタンスモータとが接続され、前記フリップフロップ制御手段は、前記スイッチドリラクタンスモータの前記回転子の角度位置に応じて前記第1及び第2の電流路の導通状態を交互に切換えて、電気角180°幅の矩形波電流を前記第1及び第2のコイルに交互に流し、前記スイッチドリラクタンスモータの駆動時と制動時とで、前記第1及び第2の電流路の導通状態を切換えるタイミングを前記回転子の電気角180°に対応する角度の回転時間だけずらすように前記フリップフロップ回路を制御するように構成される。
【0019】
このような構成により、スイッチドリラクタンスモータの駆動時(正の負荷起電力の場合)においては、直流定電流電源装置の一方の出力端子から出力される直流定電流(一定方向かつ一定値の直流電流)が、スイッチドリラクタンスモータの回転子の回転角度に応じて導通状態が交互に切換えられるフリップフロップ回路の第1の電流路及び第2の電流路を交互に流れる。その結果、スイッチドリラクタンスモータの4n個の磁極に巻回された第1のコイル及び第2のコイルが前記回転子の回転角度に応じて交互に励磁される。この第1のコイル及び第2のコイルの交互の励磁により回転子の2n個の凸部を吸引する磁極が移動し、それによって当該回転子が回転する(駆動)。この場合、直流定電流電源装置からの出力電流は、フリップフロップ回路の第1の電流路及びスイッチドリラクタンスモータの第1のコイルと、フリップフロップ回路の第2の電流路及びスイッチドリラクタンスモータの第2のコイルとのいずれかを通って直流定電流電源装置に戻り、当該直流定電流電源装置における直流電源の電力消費がなされ、または、当該直流定電流電源装置の変圧回路を介した商用交流電源の電力消費がなされる。
【0020】
スイッチドリラクタンスモータの制動時(負の負荷起電力の場合)においては、直流定電流電源装置の出力端子間に負の出力電圧が現われて一方の出力端子からの出力直流電流値が一定に維持される。フリップフロップ回路の第1及び第2の電流路の導通状態を切換えるタイミングがスイッチドリラクタンスモータの回転子の電気角180°に対応する角度の回転時間だけずらされて、前記第1及び第2の電流路の導通状態の交互切換えがなされる。その結果、スイッチドリラクタンスモータの4n個の磁極に巻回された第1のコイル及び第2のコイルの交互励磁のタイミングが回転子の電気各180°に対応する回転時間だけずれ、それに伴った各磁極の吸引力により回転子の2n個の凸部が吸引されて当該回転子に制動がかかる。この場合、直流定電流電源装置からの出力電流は、フリップフロップ回路の第1の電流路及びスイッチドリラクタンスモータの第1のコイルと、フリップフロップ回路の第2の電流路及びスイッチドリラクタンスモータの第2のコイルとのいずれかを通って直流定電流電源装置に戻り、その電流が当該直流定電流電源装置における直流電源に戻され、または、当該直流定電流電源装置における変圧回路を介して商用交流電源に戻される(回生)。
【0021】
本発明に係るモータ駆動システムは、2n(nは整数)個の凸部が周方向に等間隔に形成された磁性体製の回転子と、該回転子の外方に前記各凸部に対して所定の空隙が形成されるように4n個の磁極が等間隔に配置されたm個の固定子部分が軸方向に重ねられて各磁極が周方向に等間隔となるように一体化された固定子と、各固定子部分の前記4n個の磁極のうちの1つおきに配置された磁極のそれぞれに巻回される第1のコイルと、前記4n個の磁極のうちの残りの磁極のそれぞれに巻回される第2のコイルとを有する多重固定子型スイッチドリラクタンスモータと、請求項1及び請求項2のいずれかに記載の直流定電流電源装置と、交互に導通状態の切換えがなされ得る第1の電流路と第2の電流路とを有するm個のフリップフロップ回路と、m個の前記フリップフロップ回路それぞれの前記第1の電流路と前記第2の電流路との導通状態を交互に切換えるフリップフロップ制御手段とを備え、前記スイッチドリラクタンスモータにおける前記m個の固定子部分のそれぞれがm個の前記フリップフロップ回路のいずれかに対応づけられ、各フリップフロップ回路の第1の電流路と対応する固定子部分に設けられた第1のコイルとが直列接続されるとともに第2の電流路と対応する固定子部分に設けられた第2のコイルとが直列接続された状態で、m個の前記フリップフロップ回路が直列的に接続され、前記直流定電流電源装置の一方の出力端子から出力さる直流定電流が前記直列的に接続された初段のフリップフロップ回路の第1及び第2の電流路に入力し、最終段のフリップフロプの第1の電流路に接続された第1のコイル及び第2の電流路に接続された第2のコイルを流れた前記直流定電流が前記直流定電流電源装置の他方の出力端子に帰還するように、前記直流定電流電源装置、m個の前記フリップフロップ回路及び前記スイッチドリラクタンスモータとが接続され、前記フリップフロップ制御手段は、前記スイッチドリラクタンスモータの前記回転子の角度位置に応じてm個のフリップフロップ回路それぞれにおける第1及び第2の電流路の導通状態を交互に切換えて、電気各180°幅の矩形波電流を前記第1及び第2のコイルに交互に流し、前記スイッチドリラクタンスモータの駆動時と制動時とで、前記第1及び第2の電流路の導通状態を切換えるタイミングを前記回転子の電気角180°に対応する角度の回転時間だけずらすように各フリップフロップを制御するように構成される。
【0022】
このような構成により、多重固定子型スイッチドリラクタンスモータの駆動時(正の負荷起電力の場合)においては、直流定電流電源装置の一方の出力端子から出力される直流定電流(一定方向かつ一定値の直流電流)が、多重固定子型スイッチドリラクタンスモータの回転子の回転角度に応じて導通状態が交互に切換えられるm個のフリップフロップ回路それぞれの第1の電流路及び第2の電流路を交互に流れる。その結果、多重固定子型スイッチドリラクタンスモータのm個の固定子部分それぞれの4n個の磁極に巻回された第1のコイル及び第2のコイルが前記回転子の回転角度に応じて交互に励磁される。各固定子部分における前記第1のコイル及び第2のコイルの交互の励磁により回転子の2n個の凸部を吸引する磁極が移動し、それによって当該回転子が回転する(駆動)。この場合、直流定電流電源装置からの出力電流は、m個のフリップフロップ回路それぞれの第1の電流路及び多重固定子型スイッチドリラクタンスモータの第1のコイルと、第2の電流路及び多重固定子型スイッチドリラクタンスモータの第2のコイルとのいずれかを通って直流定電流電源装置に戻り、当該直流定電流電源装置における直流電源の電力消費がなされ、または、当該直流定電流電源装置における変圧回路を介して商用交流電源の電力消費がなされる。
【0023】
多重固定子型スイッチドリラクタンスモータの制動時(負の負荷起電力の場合)においては、直流定電流電源装置の出力端子間に負の出力電圧が現われて一方の出力端子からの出力直流電流値が一定に維持される。m個のフリップフロップ回路それぞれの第1及び第2の電流路の導通状態を切換えるタイミングがスイッチドリラクタンスモータの回転子の電気角180°に対応する角度の回転時間だけずらされて、前記第1及び第2の電流路の導通状態の交互切換えがなされる。その結果、多重固定子型スイッチドリラクタンスモータのm個の固定子部分それぞれの4n個の磁極に巻回された第1のコイル及び第2のコイルの交互励磁のタイミングが前記駆動時に対して回転子の電気角180°に対応する回転時間だけずれ、それに伴った各磁極の吸引力により回転子の2n個の凸部が吸引されて当該回転子に制動がかかる。この場合、直流定電流電源装置からの出力電流は、m個のフリップフロップ回路それぞれの第1の電流路及びスイッチドリラクタンスモータの第1のコイルと、2の電流路及びスイッチドリラクタンスモータの第2のコイルとのいずれかを通って直流定電流電源装置に戻り、その電力が当該直流定電流電源装置における直流電源に戻され、または、当該直流定電流電源装置における変圧回路を介して商用交流電源に戻される(回生)。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る直流定電流電源装置によれば、負荷起電力の正負に応じてスイッチ素子の切換え制御等を行うことなく、負荷起電力の正負に係わりなく常にコンバータのブリッジの各スイッチをインバータから供給される矩形波交流電圧を基準とした矩形波交流電流の位相を出力電流が一定方向及び指示された一定値に維持されるように制御すればよいため、定電流の出力を維持させるための制御をより容易にすることができるようになる。
【0025】
また、本発明係るモータ駆動システムによれば、効率的に電力回生を行い得るスイッチドリラクタンスモータを用いたモータ駆動システムを実現することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0027】
本発明の実施の一形態に係るモータ駆動システムの基本的な構成が図1に示される。図1は、モータ駆動システムを車両(例えば、電気自動車)に用いた例を示している。
【0028】
図1において、車両に搭載されるモータ駆動システムは、直流定電流電源装置10、定電流フリップフロップ回路20及び定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30(スイッチドリラクタンスモータ)を備えている。定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30は、当該車両の動力源であり、その回転力はディファレンシャルギア40を介して左右両側の車輪(駆動輪)に伝えられている。なお、この車両には、公知の構造となる機械ブレーキ50が搭載されている。
【0029】
直流定電流電源装置10は、負荷である定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30側の起電力の正負及び大小に係わりなく、一定方向に指定された一定の大きさの直流電流(直流定電流)を出力するように動作する。また、直流定電流電源装置10は、負荷である定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の制動時、即ち、負荷起電力が負の場合には、負荷側からの回生電力を回収するように動作する。
【0030】
定電流フリップフロップ回路20は、前述した直流定電流電源装置10からの直流定電流を入力して、後述する構造となる定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の2組のコイルに交互に矩形波電流を供給する機能を有する。即ち、定電流フリップフロップ回路20は、2相の矩形波電流を出力し、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30に供給する。
【0031】
定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30は、その詳細な構造は後述するが、定電流フリップフロップ回路20から供給される2相の矩形波電流を受けると、隣り合う2つの固定子磁極が回転子の回転に同期して交互に磁化される。そして、それら隣り合う2つの固定子磁極によって生ずる吸引力によって前記回転子に回転力が生じる。
【0032】
従来のスイッチドリラクタンスモータを用いたモータ駆動システムは、3相PWMインバータが、直流定電圧電源からの定電圧を入力し、擬似正弦波あるいは電気角度120°幅の矩形波電流等を生成してスイッチドリラクタンスモータに供給している。このような従来のスイッチドリラクタンスモータを用いたモータ駆動システムは、直流定電圧電源、励磁コイルの大きなリアクタンス及び励磁極数と、供給電力との関係等、種々の関係によって、励磁磁極にトルクが生じるタイミングで効果的に電流を励磁コイルに供給することが難しい。また、従来のスイッチドリラクタンスモータを用いたモータ駆動システムは、励磁コイルを流れる電流をゼロにすべきタイミングでゼロにすることができずに、無用の反抗トルクが生じてしまう。更には、従来のスイッチドリラクタンスモータを用いたモータ駆動システムは、回生電力が生じた場合に、その回生電力を効果的に取り出す方法が見出されておらず、効果的な回生制動を行うことができなかった。
【0033】
これに対して、本実施の形態に係るモータ駆動システムでは、半導体スイッチにより構成した定電流フリップフロップ回路20が、直流定電流電源装置10の出力電流を、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30内の回転子の回転に同期するように2相に構成したされた励磁コイルに交互に振り分けて、回転子にトルクを発生させるようにしている。このような構成により、トルクが発生するタイミングでは、設計上の最高値の電流が事実上瞬時に励磁コイルに供給され、トルクの発生が終了したタイミングでは、励磁コイルに流れる電流が瞬時にゼロとなって無用な反抗トルクが発生することがない。また、直流定電流電源装置10の出力電流の方向を変えることなく、励磁コイルへの振り分けのタイミングを位相180°だけシフトして負荷起電力を負にすることで、自然な形での電力回生が行われる。その結果、回生制動が当該モータの停止まで可能であり、エネルギー回収効率が高いものとなる。このように回生制動が可能となることから、このモータ駆動システムを搭載した図1に示すような車両(電気自動車)では、通常の運転時には機械ブレーキ5を動作させる必要がなく、この機械ブレーキ5は、車両停止時の車輪のロックや緊急時等、その使用機会は限られたものとなり得る。
【0034】
以下、モータ駆動システムの詳細について説明する。
【0035】
図2は、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30をその回転軸に垂直な方向に切った状態を示す断面図である。図2において、この定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30は、2相4極の構成となり、筒状の固定子32内に回転子31が回転自在に設けられた構造となっている。回転子31は、磁性体である鉄製の回転鉄心313が回転軸312により回転自在に支持された構造となり、回転鉄心313の外周面に回転軸312に平行に延びる2つの凸部(以下、回転子凸極という)313a、313bが周方向に等間隔(180°の角度間隔)に配置形成されている。
【0036】
回転子31を囲む固定子32は、筒状のヨーク321の内周面に4つの固定子磁極321a、321b、321c、321dが周方向に等間隔(90°の角度間隔)に形成された構造となっている。各固定子磁極321a、321b、321c、321dの先端面と回転子31の各回転子凸極313a、313bの先端面との間に所定の空隙が形成さるように固定子32と回転子31との相対的な位置関係が設定されている。
【0037】
固定子32において、4つの固定子磁極321a、321b、321c、321dのうち1つおきに配置された磁極321a、321cに励磁コイル322a、322bが、固定磁極321aから固定磁極321cに向かう方向に磁束が形成されるように巻回され、それら励磁コイル322a、322bが直列接続されている。以下、これら直列接続された励磁コイル322a、322bをA相コイル322(第1のコイル)という。また、残りの固定磁極321b、321dに励磁コイル323a、323bが、固定磁極321bから固定磁極321dに向かう方向に磁束が形成されるように巻回され、それら励磁コイル323a、323bが直列接続されている。以下、これら直列接続された励磁コイル323a、323bをB相コイル323(第2のコイル)という。
【0038】
定電流フリップフロップ回路20は、図3に示すように構成されている。
【0039】
図3において、定電流フリップフロップ回路20は、それぞれ直流定電流電源装置10の一方の出力端子Xに接続され、並列的に延びる第1の電流路210と第2の電流路220とを有している。第1の電流路210においては、第1スイッチング素子211、ダイオード212及びダイオード213が直列接続されている。ダイオード212、213それぞれのカソード及びアノードの向きは、直流定電流電源装置10の出力端子Xからの出力電流が第1の電流路210を流れるように決められている。また、第2の電流路220においては、第2スイッチング素子221、ダイオード222及びダイオード223が直列接続されている。ダイオード222、223それぞれのカソード及びアノードの向きも、第1の電流路210の場合と同様に、直流定電流電源装置10の出力端子Xからの出力電流が第2の電流路220を流れるように決められている。第1の電流路210における2つのダイオード212、213の接続点と第2の電流路220における2つのダイオード222、223の接続点との間に転流用のコンデンサ230が接続されている。なお、第1スイッチング素子211及び第2スイッチング素子221のそれぞれは、IGBT、サイリスタ、電力用トランジスタ等の半導体スイッチを用いて構成することができる。
【0040】
定電流フリップフロップ回路20における第1の電流路210(ダイオード213)に対して直列的に定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30のA相コイル322(図2における励磁コイル322a、322b)が接続されている。また、第2の電流路220(ダイオード223)に対して直列的に定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30のB相コイル323(図2における励磁コイル323a、323b)が接続されている。そして、A相コイル322とB相コイル323とが更に、直流定電流電源装置10の他方の出力端子Yに接続されている。これにより、直流定電流電源装置10の一方の出力端子Xから出力される直流定電流が、定電流フリップフロップ回路20の第1の電流路210(第1スイッチング素子211、ダイオード212、213)及び定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30のA相コイル322を通って、また、定電流フリップフロップ回路20の第2の電流路220(第2スイッチング素子221、ダイオード222、223)及び定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30のB相コイル323を通って、直流定電流電源装置10の他方の出力端子Yに帰還し得るようになっている。
【0041】
定電流フリップフロップ回路20において、第1スイッチング素子211及び第2スイッチング素子221は、一方がオンしているときに他方がオフになる所謂フリップフロップ動作がなされるようにオン・オフ制御される。第1スイッチング素子211がオンで、第2スイッチング素子221がオフの場合には、直流定電流電源装置10の出力端子Xから出力される直流定電流が、第1の電流路210を通って定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30のA相コイル322に流れ、直流定電流電源装置10の他方の出力端子Yに戻る。一方、第1スイッチング素子がオフで、第2スイッチング素子221がオンの場合、直流定電流電源装置10の出力端子Xから出力される直流定電流が、第2の電流路を通って定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30のB相コイル323に流れ、直流定電流電源装置10の他方の出力端子Yに戻る。
【0042】
このように、定電流フリップフロップ回路20において、第1スイッチング素子211及び第2スイッチング素子221が交互にオン・オフ動作することにより、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30のA相コイル322及びB相コイル323には、直流定電流電源装置10からの直流定電流値Iをピーク値とする矩形波電流が流れることになる。
【0043】
なお、転流用のコンデンサ230は、第1スイッチング素子211及び第2スイッチング素子221を切換えてA相コイル322に電流が流れている状態からB相コイル323に電流が流れる状態に切換える際、また、B相コイル323に電流が流れている状態からA相コイル322に電流が流れる状態に切換える際に、過電圧が発生することを防止するためのものである。ダイオード212、213、222、223は、転流用のコンデンサ230の充電作用を補助する。
【0044】
定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30における各励磁コイルの磁気エネルギー(1/2LI2)(L:励磁コイルのリアクタンス、I:励磁コイルの電流)は、一旦、転流用のコンデンサ230に静電エネルギー(1/2CV2)(C:コンデンサ230の静電容量、V:コンデンサ230の充電電圧)として蓄えられる。ここで、コンデンサ230の静電容量を小さくすると、過電圧は大きくなる一方で転流時間は短くなる。また、コンデンサ20の静電容量を大きくすると、過電圧は小さくなる一方で転流時間は長くなる。このような関係から、コンデンサ230の静電容量は、過電圧と転流時間とが適切な値となるように定められる。
【0045】
フリップフロップ制御回路60は、定電流フリップフロップ回路20の第1スイッチング素子211及び第2スイッチング素子221のオン・オフ制御を行う。具体的には、フリップフロップ制御回路60は、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30内の回転子31の角度位置を示す角度位置情報(例えば、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30に設けられた角度センサ(図示略)からの信号)を入力し、その角度位置情報に基づいて、第1スイッチング素子211及び第2スイッチング素子221を交互にオン・オフさせるための動作信号を出力する。また、フリップフロップ制御回路60は、制動指令(例えば、車両におけるアクセルのオフ操作あるいはブレーキペダルの操作に基づいた情報)を入力すると、前記オン・オフのタイミングを定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の駆動時のタイミングから回転子31が電気各180°に対応する角度を回転する時間だけずらす。
【0046】
上述したように、A相コイル322(図2に示す励磁コイル322a、322b参照)とB相コイル323(図2に示す励磁コイル323a、323b参照)とに交互に矩形波電流が流れることによって、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の回転子31に回転トルクが発生する。図4A乃至図4Eは、定電流フリップフロップリラクタンスモータ30の駆動時において回転子31に回転トルクが発生する原理を簡略化して示している。なお、図4A乃至図4Eでは、図2に示す定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30における回転子31の回転子凸極313a、固定子32の固定子磁極321a、321b、A相コイル322を構成する励磁コイル322a及びB相コイル323を構成する励磁コイル323aが直線状に配列された状態で示されている。
【0047】
例えば、図4Aに示すように、A相コイル322を構成する励磁コイル322aに矩形波電流が流れて(矩形電流が流れていることを斜線で示す。図4A乃至図4Eにおいて同様)固定子磁極321aが磁化されている状態では(フリップフロップ回路20における第1スイッチング素子211がオンで、第2スイッチング素子221がオフの場合)、回転子凸極313aが固定子磁極321aに吸引された状態となる。
【0048】
この状態になったタイミングで、フリップフロップ制御回路60は、フリップフロップ回路20の第1スイッチング素子211をオフに切換えるとともに同回路の第2スイッチング素子221をオンに切換える。これにより、A相コイル322を構成する励磁コイル322aに矩形波電流が流れていた状態から、図4Bに示すように、B相コイル323を構成する励磁コイル323aに矩形波電流が流れる状態に遷移する。このとき、回転子凸極313aの回転方向先端部が位置P1にある。以下、回転子凸極313aの回転方向先端部の位置を当該回転子凸極313aの位置とする。矩形波電流により励磁コイル323aが励磁されて固定子磁極321bが磁化されると、固定子磁極321aに正対していた回転子凸極313aが隣の固定子磁極321bに吸引される。
【0049】
回転子凸極313aが固定子磁極321bに吸引されることにより、回転子11に回転トルクが作用し、位置P1にあった回転子凸極313aが、図4C及び図4Dに示すように、位置P2、P3と順次固定子磁極321bに向かうよう(矢印参照)に回転子11が回動する。そして、固定子凸極313aが、図4Eに示すように、磁化されている固定磁極321bに正対する状態になると、即ち、回転子31が、回転子凸極313aが図4Bに示す位置P1となる状態から電気角180°に対応する角度(物理的な角度)90°だけ回動すると(回転子凸極313aが位置P4になると)、フリップフロップ制御回路60は、フリップフロップ回路20の第1スイッチング素子211をオン、同回路の第2スイッチング素子221をオフに切換える。すると、上述したのと同様に、固定子磁極321bに正対する回転子磁極313aが、その固定子磁極321bの隣のA相コイル322を構成する励磁コイル322bにより磁化された固定磁極321c(図2参照)に吸引されて回転子11に作用する回転トルクが維持される。これにより、回転子凸極313aが固定子磁極321bから固定子磁極321cに向かうように、回転子11が更に回動する。以下、同様にして、フリップフロップ回路20における第1スイッチング素子211と第2スイッチング素子221の交互のオン・オフ動作による定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30のA相コイル322及びBコイル323への交互の矩形波電流の供給により、回転子11の回転子凸極313a(313b)を吸引する固定子磁極(321a〜321d)が順次遷移して回転子11に対する回転トルクが維持される。その結果、回転子11が回転することになる(定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の駆動)。
【0050】
定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の駆動時の動作を更に詳細にみると、次のようになる。
【0051】
前述した定電流フリップフロップリラクタンスモータ30の駆動において、図4Bに示す状態から図4Eに示す状態までの間に励磁されるB相コイル323の起電力の時間遷移は、図5の(a)に示すようになり、定電流フリップフロップリラクタンスモータ30のトルクの時間遷移は図5の(b)に示すようになる。なお、図5において、横軸上のtP1、tP2、tP3,tP4は、図4B乃至図4Eに示すように回転子凸極313aが位置P1、P2、P3、P4に到達する時刻を示している。
【0052】
図4Bに示す状態から図4Cに示す状態までの期間(時刻tP1〜時刻tP2までの期間)では、励磁コイル323aには直流定電流Iが流れているが、回転子凸極313aが励磁コイル323aの巻回された固定子磁極321bに対向していないため、励磁コイル323aは空心コイルと同じ状態であり、固定子磁極321bには、実質的に磁束は発生しない。また、励磁コイル323aには、直流抵抗Rと直流定電流Iの積RIに等しい電圧降下(抵抗ドロップ)が生じる。
【0053】
一方、図4Cに示す状態から図4Eに示す状態までの期間(時刻tP2〜時刻tP4までの期間)では、回転子凸極313aと励磁コイル323aの巻回された固定子磁極321bとが少なくとも部分的に対向しており、固定子磁極321bには、その対向部分の面積に略比例した磁束が生じる。この固定磁極321bに生じる磁束は、回転子凸極313aが位置P1にある時刻tP1で最も小さく、回転子凸極313aが位置P2、P3、P4に順次移動する過程で徐々に増加する。固定子磁極321bに巻回された励磁コイル323aを有するB相コイル323には、ファラデーの法則により起電力E1が生じる。
【0054】
図4B乃至図4Eにおける回転子凸極313aの横方向の速度を一定とすると、回転子凸極313aと固定子磁極321bとの対向部分の面積は、時間に比例して増大するため、B相コイル323に生じる起電力E1は一定となる。そして、この起電力E1の極性は、直流定電流Iの方向とは逆方向となる。
【0055】
B相コイル323を構成する励磁コイル323aにこの起電力E1が生じている間、フリップフロップ回路20の第2スイッチング素子221がオンになって、直流定電流Iが励磁コイル323aに流れるようにすることで、直流定電流電源装置10には、図5の(a)に示すような負荷起電力E1が加わる。直流定電流電源装置10が、図5の(a)に示す負荷起電力E1に直流定電流Iを乗じた電力を、負荷である定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30内の励磁コイル323aに供給することにより、抵抗ドロップRIによる電力を除いたI×E1の電力が定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の回転出力となる。
【0056】
また、図4Cに示す状態から図4Eに示す状態までの期間では、図5の(b)に示すように、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30にトルクが生じる。このトルクτ1は、負荷起電力E1に比例した一定値となる。
【0057】
一方、A相コイル322を構成する励磁コイル322aの起電力波形、及び励磁コイル322aへの電力供給により生じるトルク波形は、図5の(a)の起電力波形及び図5の(b)に示すトルク波形を、回転子11が電気角180°に対応する角度を回転する時間だけずらしたものとなる。
【0058】
なお、以上の説明は、回転子凸極313aと、励磁コイル322aの巻回された固定子磁極321a、及び、励磁コイル323aの巻回された固定子磁極321bとについて説明したが、それぞれ対向側に位置する、回転子凸極313bと、励磁コイル322bの巻回された固定子磁極321c、及び、励磁コイル323bの巻回された固定子磁極321dについても同様である。
【0059】
次に、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の回生制動時のトルクの発生の原理を図6A乃至図6Eを参照して説明する。図6A乃至図6Eに示す状態の遷移は、図4A乃至図4Eに示す状態の遷移と比較すると、励磁コイル322a及び323aに直流定電流が流れるタイミングが、回転子11が電気角180°対応する角度(物理的な角度)90°を回転する時間だけずれたものとなる。
【0060】
例えば、図6Aに示すように、B相コイル323を構成する励磁コイル323aに矩形波電流が流れて(矩形電流が流れていることを斜線で示す。図6A乃至図6Eにおいて同様)固定子磁極321bが磁化され(フリップフロップ回路20における第1スイッチング素子211がオフで、第2スイッチング素子221がオンの場合)、回転中の回転子11の回転子凸極313aが固定子磁極321aに正対した状態から固定子磁極321bに向けて移動(矢印参照)を継続しる状態にある。この図6Aに示す状態となったタイミングで、フリップフロップ制御回路60は、フリップフロップ回路20の第1スイッチング素子211をオンに、同回路の第2スイッチング素子221をオフに切換える。これにより、B相コイル323を構成する励磁コイル323aに矩形波電流が流れていた状態から、図6Bに示すように、A相コイル322を構成する励磁コイル322aに矩形波電流が流れる状態に遷移する。このとき、回転子凸極313a(回転方向先端部)は固定子磁極321aに正対する位置P1にある。
【0061】
第1スイッチング素子211のオン動作により励磁コイル322aが励磁されて固定子磁極321aが磁化され、回転子凸極313aには固定子磁極321aに吸引される力が加わる。この力が、回転子11の回転方向とは逆の方向となり、回転子11に対する制動力となる。このように回転子11に制動力が作用しつつ回転子11の回転が継続され、位置P1にあった回転子凸極313aが、図6C及び図6Dに示すように、位置P2、P3と順次固定子磁極321bに向かうよう(矢印参照)に回転子11が回動する。
【0062】
そして、図6Eに示すように、回転子凸極313aが固定子磁極323aに正対した状態となると、即ち、回転子31が、回転子凸極313aが図6Bに示す位置P1となる状態から電気角180°に対応する角度(物理的な角度)90°だけ回動すると(回転子凸極313aが位置P4になると)、フリップフロップ制御回路60は、フリップフロップ回路20の第1スイッチング素子211をオフ、同回路の第2スイッチング素子221をオンに切換える。その後は、B相コイル323を構成する励磁コイル323aが励磁されて固定子磁極321bが磁化し、移動する回転子凸極313aに固定子磁極321bからの吸引力が作用して前述したのと同様に継続して回転する回転子11に制動力が作用する。
【0063】
定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の回生制動時の動作を更に詳細にみると、次のようになる。
【0064】
前述した定電流フリップフロップリラクタンスモータ30の回生制動時において、図6Bに示す状態から図6Eに示す状態までの間に励磁されるA相コイル322を構成する励磁コイル322aの起電力の時間遷移は、図7の(a)に示すようになり、定電流フリップフロップリラクタンスモータ30のトルクの時間遷移は図7の(b)に示すようになる。なお、図7において、横軸上のtP1、tP2、tP3,tP4は、図6B乃至図6Eに示すように回転子凸極313aが位置P1、P2、P3、P4に到達する時刻を示している。
【0065】
A相コイル322を構成する励磁コイル322aの巻回された固定子磁極321aには、回転子凸極313aと当該固定子磁極321aとの対向する部分の面積に略比例した磁束が生じる。従って、固定磁極321aに生じる磁束は、回転子凸極313aが位置P1にある時刻tP1で最も大きくなり、位置P2、P3、P4の位置に遷移する過程で徐々に減少する。固定子磁極321aに巻回された励磁コイル322aを有するA相コイル322には、ファラデーの法則により起電力E2が生じる。
【0066】
回転子凸極313aの横方向の速度を一定とすると、回転子凸極313aと固定子磁極321aとの対向部分の面積は時間に比例して減少するため、A相コイル322に生じる起電力E2は一定となる(図7の(a)参照)。そして、この起電力E2の極性は、直流定電流Iの方向と同一方向となる。
【0067】
A相コイル322を構成する励磁コイル322aにこの起電力E2が生じている間、フリップフロップ回路20の第1スイッチング素子211がオンになって、直流定電流Iが励磁コイル322aに流れるようにすることで、直流定電流電源装置10には、負荷起電力E2の絶対値から抵抗ドロップRIを除いたものに直流定電流Iを乗じた電力が回生される。
【0068】
また、図6Cに示す状態から図6Eに示す状態までの期間では、図7の(b)に示すように、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の回転子11に制動トルクτ2が生じる。この制動トルクτ2は、負荷起電力E2に比例した一定値となる。
【0069】
一方、B相コイル323を構成する励磁コイル323aの起電力、及び、励磁コイル323aへの電力供給により生じる制動トルクは、図7の(a)に示す起電力及び図7の(b)に示す制動トルクを、回転子11が電気角180°に対応する角度を回転する時間だけずらしたものとなる。
【0070】
なお、以上の説明は、回転子凸極313aと、励磁コイル322aを巻回した固定子磁極321a、及び、励磁コイル323aを巻回した固定子磁極321bとについて説明したが、それぞれ対向側に位置する、回転子凸極313bと、励磁コイル322bを巻回した固定子磁極321c、及び、励磁コイル323bを巻回した固定子磁極321dについても同様である。
【0071】
次に、直流定電流電源装置10の詳細について説明する。
【0072】
直流定電流電源装置10は、図8に示すように構成される。
【0073】
図8において、直流定電流電源装置10は、直流電源100、回生型インバータ11、定電流コンバータ12、電流検出器13及びリアクトル素子14を備えている。直流電源100は、放電による駆動電力の供給と、充電による回生電力の回収が効果的に行い得るようになっており、具体的には、リチウムイオン電池等のバッテリとウルトラキャパシティやコンデンサ等の蓄電部とが並列接続された構成となっている。
【0074】
回生型インバータ11は、4つのスイッチ111、112、113、114を有し、それらスイッチ111〜114がブリッジ状に接続されている。以下、スイッチ111〜114にて構成されるブリッジを第1ブリッジという。第1ブリッジの一端となるスイッチ111とスイッチ112との接続点が当該回生型インバータ11の正(+)の直流側端子として直流電源100の端子(+)に接続され、第1ブリッジの他端となるスイッチ113とスイッチ114との接続点が当該回生型インバータ11の負(−)の直流側端子として直流電源100の端子(−)に接続されている。そして、第1ブリッジ内の直列接続される2つのスイッチ111とスイッチ113との接続点と、直列接続される他の2つのスイッチ112とスイッチ114との接続点とが当該回生型インバータ11の交流側端子a、bとなっている。
【0075】
前記第1ブリッジを構成する4つのスイッチ111、112、113、114のそれぞれは、IGBT等の半導体スイッチS1、S2、S3、S4とダイオードD1、D2、D3、D4とが並列接続された構成となっている。各半導体スイッチS1、S2、S3、S4は、一方向の導通特性を有しており、第1ブリッジにおいて(+)の直流側端子から(−)の直流側端子に向けて電流が流れるように接続されている。また、各ダイオードD1、D2、D3、D4は、回生電流を直流電源100側に戻せるように、対応する半導体スイッチS1、S2、S3、S4に対して逆極性にて並列接続されている。
【0076】
直流定電流電源装置10は、クロックパルス発生回路70(インバータ駆動手段)を有している。クロックパルス発生回路70は、所定周期のパルス信号により回生型インバータ11の各スイッチ111、112、113、114(半導体スイッチS1、S2、S3、S4)のオン・オフ制御を行う。具体的には、第1ブリッジの一方の対角線上に位置する2つのスイッチ111、114と、他方の対角線上に位置する2つのスイッチ112、113とが交互にオン・オフ動作するように、クロックパルス発生回路70はパルス信号を各スイッチ111〜114(半導体スイッチS1〜S4)に供給する。その結果、回生型インバータ11の交流側端子a、bから矩形波交流の電圧及び電流が出力される。クロックパルス発生回路70からのパルス信号の周波数は、回生型インバータ11の搬送周波数に対応し、この直流定電流電源装置10の容量、リアクトル素子14の容量、各スイッチング素子S1〜S4の動作周波数性能等の設計上の要因に基づいて決められる。各スイッチ111〜114において半導体スイッチS1〜S4にダイオードD1〜D4が逆極性にて並列接続されているため、交流側電流の向きは、矩形波交流電圧の極性とは無関係に現われ得る。
【0077】
定電流コンバータ12は、4つのスイッチ121、122、123、124を有し、それらスイッチ121〜124がブリッジ状に接続されている。以下、スイッチ121〜124にて構成されるブリッジを第2ブリッジという。第2ブリッジ内の直列接続される一方の2つのスイッチ121とスイッチ123との接続点が一方の交流側端子cとして回生型インバータ11の交流側端子aに接続され、第2ブリッジ内の直列接続される他方の2つのスイッチ122とスイッチ124との接続点が他方の交流側端子dとして回生型インバータ11の交流端子bに接続されている。また、第2ブリッジの出力側の一方端となるスイッチ121とスイッチ122との接続点がリアクトル素子14及び電流検出器13を介して一方の出力端子Xに接続され、第2ブリッジの出力側の他方端となるスイッチ123とスイッチ124との接続点が他方の出力端子Yに接続されている。
【0078】
前記第2ブリッジを構成する4つのスイッチ121、122、123、124のそれぞれは、IGBT等の半導体スイッチS11、S22、S33、S44とダイオードD11、D22、D33、D44とが直列接続された構成となっている。各半導体スイッチS11、S22、S33、S44は、一方向の導通特性を有しており、第2ブリッジにおいて、出力端子Y側から出力端子X側に向けて電流が流れるように接続されている。また、各ダイオードD11、D22、D33、D44は、第2ブリッジにおいて出力端子X側から出力端子Y側に向けて電流が流れるのを阻止するように、対応する半導体スイッチS11、S22、S33、S44に直列接続されている。即ち、各ダイオードD11、D22、D33、D44は直列接続される半導体スイッチS11、S22、S33、S44の逆耐圧を確保している。
【0079】
直流定電流電源装置10は、定電流制御回路80(定電流制御手段)を有している。定電流制御回路80は、出力端子X、Yに接続される負荷の起電力の正負及び大きさに係わりなく、出力電流Iが常に出力端子Xから負荷に向かう一定方向となり、電流検出器13にて検出されるその電流値が指令値となるように、前記第2ブリッジの各スイッチ121、122、123、124(各半導体スイッチS11、S22、S33、S44)の制御により回生型インバータ11の交流側端子a、bから定電流コンバータ12の交流側端子c、dに供給される矩形波交流電圧eiを基準とした矩形波電流iiの位相角を制御して、出力端子X、Y間に現われる出力電圧Eoを制御する。具体的には、回生型インバータ11における第1ブリッジの一方の対角線上に位置する2つのスイッチ111、114と、他方の対角線上に位置する2つのスイッチ112、113との交互のオン・オフ動作に基づいた前記矩形波交流電圧eiの位相を基準として、第2ブリッジの一方の対角線上に位置するスイッチ121、124を制御角(位相角)αで、他方の対角線上に位置するスイッチ122、123を制御角(α+180°)で180°期間オンさせる制御により、前記位相角αが0°〜180°の範囲で制御され、いわゆる順逆変換動作が行なわれる。前記位相角αが90°以下の範囲(α≦90°)では、順変換動作となり、出力端子X、Y間に現われる平均出力電圧は正の値となる。また、前記位相角αが90°を越えて180°以下の範囲(90°<α≦180°)では、逆変換動作となり、出力端子X、Y間に現われる平均出力電圧は負の値となる。
【0080】
なお、リアクトル素子14は、定電流コンバータ12での前記位相制御による脈動電流を平滑化する。
【0081】
直流定電流電源装置10の更に具体的な動作について、図9乃至図22を参照して説明する。
【0082】
各図において、クロックパルス発生回路70からのパルス信号により駆動される回生型インバータ11の交流側端子a、bから定電流コンバータ12の交流側端子c、dに矩形波交流電圧eiが供給され、このように矩形波交流電圧eiが交流側端子c、dに供給された状態で、定電流制御回路80からの制御信号に従って駆動される定電流コンバータ12の交流側端子cから矩形波交流電流iiが入力される。矩形波交流電流iiの位相は、定電流制御回路80からの制御信号(位相角α)によって定まり、回生型インバータ11から供給される矩形波交流電圧eiに基本的に影響されない。
【0083】
負荷(定電流フリップフロップ回路20を通した定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30)が接続される(図3参照)出力端子Xから直流定電流が出力電流Iとして出力される。この出力電流Iのレベルは、定電流コンバータ12を制御する定電流制御回路80に与えられる指令値に対応している。そして、このような直流定電流となる出力電流Iが出力されるように制御される定電流コンバータ12は電圧eo(リアクトル素子14による平滑化前の電圧)を出力し、その電圧eoがリアクトル素子14によって平滑化されることにより、出力端子X、Y間に直流の出力電圧Eoが発生する。この出力電圧Eoは、極性を含めた負荷起電力の値に負荷回路の銅損、半導体損に起因した電圧降下分を加算した値になるように、定電流コンバータ12によって自動的に調整される。
【0084】
例えば、図9は、定電流制御回路80により回生型インバータ11から供給される矩形波交流電圧eiを基準とした矩形波交流電流iiの位相角αがゼロとなるように、定電流コンバータ12における第2ブリッジのスイッチ121、122、123、124を制御する場合を示している。この場合、定電流コンバータ12における第2ブリッジの一方のスイッチ対121、124は、制御角(位相角)α=0で180°期間オン動作し、前記第2ブリッジの他方のスイッチ対122、123は、制御角α=(0+180°)で180°期間オン動作する。そして、回生型インバータ11における第1ブリッジの一方のスイッチ対111、114がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの一方のスイッチ対121、124がオン動作するモード(1)と、回生型インバータ11における第1ブリッジの他方のスイッチ対112、113がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの他方のスイッチ対122、123がオン動作するモード(2)とが1周期となって繰り返される。
【0085】
前記モード(1)では、図10の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(+)からの電流が回生型インバータ11においてオン動作するスイッチ111及び交流側端子aを通って交流側端子cから定電流コンバータ12に入力する。そして、定電流コンバータ12に入力する電流がオン動作するスイッチ121を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、定電流フリップフロップ回路20の第1の電流路210(第1スイッチング素子211、ダイオード212、213)及び定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30のA相コイル322と、定電流フリップフロップ回路20の第2の電流路220(第2スイッチング素子221、ダイオード222、223)及び定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30のB相コイル323とのいずれかを通って直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る(図3参照)。この出力端子Yに戻った電流は、定電流コンバータ12においてオン動作するスイッチ124及び交流側端子dを通って交流側端子bから回生型インバータ11に入力する。この回生型インバータ11に入力する電流がオン動作するスイッチ114を通って直流電源100の端子(−)に戻る。
【0086】
また、前記モード(2)では、図11の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(+)からの電流が回生型インバータ11においてオン動作するスイッチ112及び交流側端子bを通って交流側端子dから定電流コンバータ12に入力する。そして、定電流コンバータ12に入力する電流がオン動作するスイッチ122を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前記モード(1)の場合と同様に、定電流フリップフロップ20及び定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30を通って直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。この出力端子Yに戻った電流は、定電流コンバータ12においてオン動作するスイッチ123及び交流側端子cを通って交流型端子aから回生型インバータ11に入力する。この回生型インバータ11に入力する電流がオン動作するスイッチ113を通って直流電源100の端子(−)に戻る。
【0087】
直流定電流電源装置10の前記モード(1)及び前記モード(2)での動作により、図9に示すように、回生型インバータ11からの矩形波交流電流iiが順変換されてそのピーク値に等しい電流値Iとなる直流電流が出力電流Iとして出力される。また、定電流コンバータ12に入力する矩形波交流電圧eiは、直流電源100の電圧値Eに等しいピーク値を有し、定電流コンバータ12は、前記矩形波交流電圧eiを順変換してそのピーク値Eに等しい値となる電圧eoを出力する。そして、この出力電圧eoがリアクトル素子14によって平滑化されて出力端子X、Y間に電圧値Eの出力電圧Eoが現われる。
【0088】
このように、出力電流Iを一定(直流定電流)に保持した状態で、回生インバータ11からの矩形波交流電圧eiを基準とした矩形波交流電流iiの位相角αをゼロ(α=0)に制御することで、直流定電流電源装置10(定電流コンバータ12)から直流電源100の出力電圧Eoが、直流電源100の電圧値Eに等しい最大の電圧値となる。そして、この出力電圧Eo(=E)に基づいた直流定電流Iが定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の駆動に使用され、直流電源100にてE×Iの電力消費(放電)がなされる。
【0089】
また、例えば、図12は、定電流制御回路80により回生型インバータ11から供給される矩形波交流電圧eiを基準とした矩形波交流電流iiの位相角αが30°となるように、定電流コンバータ12における第2ブリッジのスイッチ121、122、123、124を制御する場合を示している。この場合、定電流コンバータ12における第2ブリッジの一方のスイッチ対121、124は、制御角(位相角)α=30°で180°期間オン動作し、前記第2ブリッジの他方のスイッチ対122、123は、制御角α=(30°+180°=210°)で180°期間オン動作する。そして、回生型インバータ11における第1ブリッジの一方のスイッチ111、114がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの他方のスイッチ対122、123がオン動作するモード(1)と、回生型インバータ11における第1ブリッジの一方のスイッチ対111、114がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの一方のスイッチ対121、124がオン動作するモード(2)と、回生型インバータ11の他方のスイッチ対112、113がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの一方のスイッチ対121、124がオン動作するモード(3)と、回生型インバータ11における第1ブリッジの他方のスイッチ対112、113がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの他方のスイッチ対122、123がオン動作するモード(4)とが1周期となって繰り返される。
【0090】
前記モード(1)では、図13の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(−)からの電流が回生型インバータ11においてオン動作するスイッチ114及び交流側端子bを通って交流側端子dから定電流コンバータ12に入力する。そして、定電流コンバータ12に入力する電流がオン動作するスイッチ122を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前述したのと同様に(図3参照)、定電流フリップフロップ回路20及び定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30を通って直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。この出力端子Yに戻った電流は、定電流コンバータ12でオン動作するスイッチ123及び交流側端子cを通って交流側端子aから回生型インバータ11に入力する。この回生型インバータ11に入力する電流がオン動作するスイッチ111を通って直流電源100の端子(+)に戻る。
【0091】
また、前記モード(2)では、前述した位相角αがゼロでの制御におけるモード(1)の場合と同様であって、図10の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(+)からの電流が回生型インバータ11のスイッチ111、交流側端子aを通って交流側端子cから定電流コンバータ12に入力し、その電流がスイッチ121を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前述したのと同様に(図3参照)、定電流フリップフロップ回路20及び定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30を通って直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。この出力端子Yに戻った電流は、定電流コンバータ12のスイッチ124及び交流側端子dを通って交流側端子bから回生型インバータ11に入力し、その電流がスイッチ114を通って直流電源100の端子(−)に戻る。
【0092】
また、前記モード(3)では、図14の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(−)からの電流が回生インバータ11でオン動作するスイッチ113及び交流側端子aを通って交流側端子cから定電流コンバータ12に入力する。そして、定電流コンバータ12に入力する電流がオン動作するスイッチ121を通り、更に、リアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、モード(1)の場合と同様に、定電流フリップフロップ回路20及び定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30を通って直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。この出力端子Yに戻った電流は、定電流コンバータ12でオン動作するスイッチ124及び交流側端子dを通って交流側端子bから回生型インバータ11に入力する。この回生型インバータ11に入力する電流がオン動作するスイッチ112を通って直流電源100の端子(+)に戻る。
【0093】
更に、モード(4)では、前述した位相角αがゼロでの制御におけるモード(2)の場合と同様であって、図11の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(+)からの電流が回生型インバータ11のスイッチ112、交流側端子bを通って交流側端子cから定電流コンバータ12に入力し、その電流がスイッチ122を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前述したのと同様に(図3参照)、定電流フリップフロップ回路20及び定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30を通って直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。この出力端子Yに戻った電流は、定電流コンバータ12のスイッチ123及び交流側端子cを通って交流側端子aから回生型インバータ11に入力し、その電流がスイッチ113を通って直流電源100の端子(−)に戻る。
【0094】
前記モード(1)及びモード(3)の期間では、矩形波交流電圧eiが正となるときに矩形波交流電流iiが負となり、また、矩形波交流電圧eiが負となるときに矩形波交流電流iiが正となり、この電流iiが電圧eiの正の電位に向かって流れ込むよう、即ち、直流電源100を充電する方向に流れて、電力回生動作がなされる。また、前記モード(2)及びモード(4)の期間では、前述した位相角αがゼロでの制御と同様に、直流電源100が放電を行う。これらモード(1)〜(4)での動作により、図12に示すように、出力電流Iが直流定電流に維持された状態で定電流コンバータ12の出力電圧eoは、モード(1)及びモード(3)の期間において、負電圧(−E)となり、モード(2)及びモード(4)の期間において、正電圧(E)となる。この場合、出力電圧eoが負電圧(−E)となる前記モード(1)及びモード(3)の期間が、出力電圧eoが正電圧(+)となる前記モード(2)及びモード(4)の期間より短い状態であるので、平均出力電圧Eoは、正電圧、具体的には、位相角α=0°における電圧Eから低減した2/3Eとなる。
【0095】
更に、図15は、定電流制御回路80により回生型インバータ11から供給される矩形波交流電圧eiを基準とした矩形波交流電流iiの位相角αが90°となるように、定電流コンバータ12における第2ブリッジのスイッチ121、122、123、124を制御する場合を示している。この場合、定電流コンバータ12における第2ブリッジの一方のスイッチ対121、124は、制御角(位相角)α=90°で180°期間オン動作し、前記第2ブリッジの他方のスイッチ対122、123は、制御角α=(90°+180°=270°)で180°期間オン動作する。そして、前述した位相角α=30°の制御(図12参照)の場合と同様に、回生型インバータ11における第1ブリッジの一方のスイッチ111、114がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの他方のスイッチ対122、123がオン動作するモード(1)と、回生型インバータ11における第1ブリッジの一方のスイッチ対111、114がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの一方のスイッチ対121、124がオン動作するモード(2)と、回生型インバータ11の他方のスイッチ対112、113がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの一方のスイッチ対121、124がオン動作するモード(3)と、回生型インバータ11における第1ブリッジの他方のスイッチ対112、113がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの他方のスイッチ対122、123がオン動作するモード(4)とが1周期となって繰り返される。
【0096】
前記モード(1)では、前述した位相角が30°の制御におけるモード(1)と同様であって、図13の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(−)からの電流が回生型インバータ11におけるスイッチ114及び定電流コンバータ12のスイッチ122を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前述したのと同様に、定電流フリップフロップ回路20を介して定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30(A相コイル322、B相コイル323)に供給されて(図3参照)、直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。そして、この出力端子Yに戻った電流が、定電流コンバータ12のスイッチ123及び回生型インバータ11のスイッチ111を通って直流電源100の端子(+)に戻る。
【0097】
また、モード(2)では、前述した位相角αがゼロでの制御におけるモード(1)の場合と同様であって、図10の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(+)からの電流が回生型インバータ11のスイッチ111及び定電流コンバータ12のスイッチ121を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前述したのと同様に、定電流フリップフロップ回路20を介して定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30(A相コイル322、B相コイル323)に供給されて(図3参照)、直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。そして、この出力端子Yに戻った電流が、定電流コンバータ12のスイッチ124及び回生型インバータ11のスイッチ114を通って直流電源100の端子(−)に戻る。
【0098】
また、前記モード(3)では、位相角αが30°の制御におけるモード(3)と同様であって、図14の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(−)からの電流が回生型インバータ11におけるスイッチ113及び定電流コンバータ12のスイッチ121を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前述したのと同様に、定電流フリップフロップ回路20を介して定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30(A相コイル322、B相コイル323)に供給されて(図3参照)、直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。そして、この出力端子Yに戻った電流が、定電流コンバータ12のスイッチ124及び回生型インバータ11のスイッチ112を通って直流電源100の端子(+)に戻る。
【0099】
更に、モード(4)では、前述した位相角αがゼロでの制御におけるモード(2)の場合と同様であって、図11の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(+)からの電流が回生型インバータ11のスイッチ112及び定電流コンバータ12のスイッチ122を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前述したのと同様に、定電流フリップフロップ回路20を介して定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30(A相コイル322、B相コイル323)に供給されて(図3参照)、直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。そして、この出力端子Yに戻った電流が、定電流コンバータ12のスイッチ123及び回生型インバータ11のスイッチ113を通って直流電源100の端子(−)に戻る。
【0100】
前記モード(1)及びモード(3)の期間では、位相角αが30°の制御の場合と同様に、矩形波交流電圧eiが正となるときに矩形波交流電流iiが負となり、矩形波交流電圧eiが負となるときに矩形波交流電流iiが正となり、この電流iiが直流電源100を充電する方向に流れて、電力回生動作がなされる。また、前記モード(2)及びモード(4)の期間では、前述した位相角αがゼロでの制御と同様に、直流電源100が放電を行う。これらモード(1)〜(4)での動作により、図15に示すように、出力電流Iが直流定電流に維持された状態で定電流コンバータ12の出力電圧eoは、モード(1)及びモード(3)の期間において、負電圧(−E)となり、モード(2)及びモード(4)の期間において、正電圧(E)となる。この場合、出力電圧eoが負電圧(−E)となる前記モード(1)及びモード(3)の期間(電力回生動作の期間)と、出力電圧eoが正電圧(+E)となる前記モード(2)及びモード(4)の期間(放電動作の期間)とが同じ長さになるので、平均出力電圧Eoはゼロ(Eo=0)となる。
【0101】
例えば、図16は、定電流制御回路80により回生型インバータ11から供給される矩形波交流電圧eiを基準とした矩形波交流電流iiの位相角αが150°(α=150°)となるように、定電流コンバータ12における第2ブリッジのイッチ121、122、123、124を制御する場合を示している。この場合、定電流コンバータ12における第2ブリッジの一方のスイッチ対121、124は、制御角(位相角)α=150°で180°期間オン動作し、前記第2ブリッジの他方のスイッチ対122、123は、制御角α=(150°+180°=330°)で180°期間オン動作する。そして、前述した位相角αが30°の制御(図12参照)の場合や位相角αが90°の制御(図15参照)の場合と同様に、回生型インバータ11における第1ブリッジの一方のスイッチ111、114がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの他方のスイッチ対122、123がオン動作するモード(1)と、回生型インバータ11における第1ブリッジの一方のスイッチ対111、114がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの一方のスイッチ対121、124がオン動作するモード(2)と、回生型インバータ11の他方のスイッチ対112、113がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの一方のスイッチ対121、124がオン動作するモード(3)と、回生型インバータ11における第1ブリッジの他方のスイッチ対112、113がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの他方のスイッチ対122、123がオン動作するモード(4)とが1周期となって繰り返される。
【0102】
前記モード(1)では、前述した位相角αが30°の制御や位相角αが90°の制御におけるモード(1)と同様であって、図13の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(−)からの電流が回生型インバータ11におけるスイッチ114及び定電流コンバータ12のスイッチ122を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前述したのと同様に、定電流フリップフロップ回路20を介して定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30(A相コイル322、B相コイル323)に供給されて(図3参照)、直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。そして、この出力端子Yに戻った電流が、定電流コンバータ12のスイッチ123及び回生型インバータ11のスイッチ111を通って直流電源100の端子(+)に戻る。
【0103】
また、モード(2)では、前述した位相角αがゼロでの制御におけるモード(1)の場合と同様であって、図10の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(+)からの電流が回生型インバータ11のスイッチ111及び定電流コンバータ12のスイッチ121を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前述したのと同様に、定電流フリップフロップ回路20を介して定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30(A相コイル322、B相コイル323)に供給されて(図3参照)、直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。そして、この出力端子Yに戻った電流が、定電流コンバータ12のスイッチ124及び回生型インバータ11のスイッチ114を通って直流電源100の端子(−)に戻る。
【0104】
また、前記モード(3)では、位相角αが30°の制御や位相角αが90°の制御におけるモード(3)と同様であって、図14の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(−)からの電流が回生型インバータ11におけるスイッチ113及び定電流コンバータ12のスイッチ121を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前述したのと同様に、定電流フリップフロップ回路20を介して定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30(A相コイル322、B相コイル323)に供給されて(図3参照)、直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。そして、この出力端子Yに戻った電流が、定電流コンバータ12のスイッチ124及び回生型インバータ11のスイッチ112を通って直流電源100の端子(+)に戻る。
【0105】
更に、モード(4)では、前述した位相角αがゼロでの制御におけるモード(2)の場合と同様であって、図11の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(+)からの電流が回生型インバータ11のスイッチ112及び定電流コンバータ12のスイッチ122を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前述したのと同様に、定電流フリップフロップ回路20を介して定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30(A相コイル322、B相コイル323)に供給されて(図3参照)、直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。そして、この出力端子Yに戻った電流が、定電流コンバータ12のスイッチ123及び回生型インバータ11のスイッチ113を通って直流電源100の端子(−)に戻る。
【0106】
前記モード(1)及びモード(3)の期間では、位相角αが30°の制御や位相角αが90°の場合と同様に、電流iiが直流電源100を充電する方向に流れて、電力回生動作がなされる。また、前記モード(2)及びモード(4)の期間では、前述した位相角α=0°での制御と同様に、直流電源100が放電を行う。これらモード(1)〜(4)での動作により、図16に示すように、出力電流Iが直流定電流に維持された状態で定電流コンバータ12の出力電圧eoは、モード(1)及びモード(3)の期間において、負電圧(−E)となり、モード(2)及びモード(4)の期間において、正電圧(E)となる。この場合、出力電圧eoが負電圧(−E)となる前記モード(1)及びモード(3)の期間(電力回生動作の期間)が、出力電圧eoが正電圧(+E)となる前記モード(2)及びモード(4)の期間(放電動作の期間)より長い状態であるので、平均出力電圧Eoは負電圧となり、平均出力電圧Eoは、負電圧、具体的には、−2/3Eとなる。この場合、全体として、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30側からの電力回生がなされる。
【0107】
仮に定電流コンバータ12(直流定電流電源装置10)の負荷が抵抗負荷のような受動負荷の場合は、位相角αが90°の制御(図15参照)で、平均出力電圧Eoがゼロ(Eo=0)となり、定電流制御回路80に与えられる指令値の如何にかかわらず出力電流Iはゼロ(I=0)となって動作限界を与える。従って、位相角αが90°≦α≦180°の範囲内となる場合の当該直流定電流電源装置10の動作は、定電流コンバータ12にモータ負荷のような「負」の起電力を発生し得る能動的負荷が接続されていること、定電流コンバータ12の交流側端子c、dに回生可能な安定した交流電源eiが接続されていること、位相角αが90°≦αの適切な値に保持されていること、という条件のもとで可能となる。
【0108】
更に、例えば、図17は、定電流制御回路80により回生型インバータ11から供給される矩形波交流電圧eiを基準とした矩形波交流電流iiの位相角αが180°となるように、定電流コンバータ12における第2ブリッジのスイッチ121、122、123、124を制御する場合を示している。この場合、定電流コンバータ12における第2ブリッジの一方のスイッチ対121、124は、制御角(位相角)α=180°で180°期間オン動作し、前記第2ブリッジの他方のスイッチ対122、123は、制御角α=(180°+180°)で180°期間オン動作する。そして、回生型インバータ11における第1ブリッジの一方のスイッチ対111、114がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの他方のスイッチ対122、123がオン動作するモード(1)と、回生型インバータ11における第1ブリッジの他方のスイッチ対112、113がオン動作するとともに定電流コンバータ12における第2ブリッジの一方のスイッチ対121、124がオン動作するモード(2)とが1周期となって繰り返される。
【0109】
前記モード(1)では、位相角αが30°、90°、150°それぞれの制御におけるモード(1)の場合と同様であって、図13の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(−)からの電流が回生型インバータ11のスイッチ114及び定電流コンバータ12のスイッチ122を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前述したのと同様に、定電流フリップフロップ回路20を介して定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30(A相コイル322、B相コイル323)に供給されて(図3参照)、直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。そして、この出力端子Yに戻った電流が、定電流コンバータ12のスイッチ123及び回生型インバータ11のスイッチ111を通って直流電源100の端子(+)に戻る。
【0110】
前記モード(2)では、位相角αが30°、90°、150°それぞれの制御におけるモード(3)の場合と同様であって、図14の破線矢印で示されるように、直流電源100の端子(−)からの電流が回生型インバータ11におけるスイッチ113及び定電流コンバータ12のスイッチ121を通り、更にリアクトル素子14及び電流検出器13を通って出力端子Xから出力電流Iとして出力する。この出力電流Iは、前述したのと同様に、定電流フリップフロップ回路20を介して定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30(A相コイル322、B相コイル323)に供給されて(図3参照)、直流定電流電源装置10の出力端子Yに戻る。そして、この出力端子Yに戻った電流が、定電流コンバータ12のスイッチ124及び回生型インバータ11のスイッチ112を通って直流電源100の端子(+)に戻る。
【0111】
前述した位相角αが180°の制御の場合、前記モード(1)及びモード(2)の全期間において、電流iiが電圧eiの正の電位に向かって流れ込むよう、即ち、直流電源100を充電する方向に流れて、電力回生動作がなされる。そして、電流コンバータ12は、回生型インバータ11からの矩形波交流電流eiを逆変換してそのピーク値Eを反転した負電圧値(−E)の電圧eoを出力する。この出力電圧eoがリアクトル素子14によって平滑化されて出力端子X、Y間に負電圧値(−E)の出力電圧Eoが現われる。
【0112】
このように、出力電流Iを一定(直流定電流)に保持した状態で、回生インバータ11からの矩形波交流電圧eiを基準とした矩形波交流電流iiの位相角αを180°(α=180°)に制御することで、直流定電流電源装置10(定電流コンバータ12)から直流電源100の出力電圧Eoが、電圧値−Eの負の最大電圧値(Eo=−E)となる。そして、この出力電圧Eo(=−E)に基づいた直流定電流Iの定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30への供給が維持されつつ、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30側からの電力回生がなされる。
【0113】
前述した直流定電流電源装置10の動作において、位相角αと出力電圧Eoとの関係は、図18に示すようになる。そして、前述した回生可能な安定した矩形波交流電圧eiと、正負、大小の変化する能動的な負荷(定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30)の起電力Eoと、位相角αとの3条件によって、電力は供給、回生のいずれの方向にも遷移し得るものとなる。
【0114】
前述した直流定電流電源装置10によれば、回生型インバータ11からの矩形波交流電圧eiを基準とした定電流コンバータ12における交流側の矩形波交流電流iiの位相角αを0°〜180°の範囲で制御することにより、出力電流Iを指令値に応じた直流定電流に維持しつつ、出力電圧Eoを、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の駆動、回生制動及び速度に応じて、負の電圧から正の電圧までの全域にわたって制御することができるので(図18参照)、従来のようなブリッジ内のスイッチ対の切換え制御を特に必要とせずに、前記位相角αの0°〜180°での制御により、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の駆動、制動とともにそのモータ出力に応じた電力を自動的に供給、回生することができるようになる。
【0115】
なお、前述した直流定電流電源装置10における回生型インバータ11及び定電流コンバータ12における第1ブリッジ及び第2ブリッジは、単相ブリッジになっているが、三相ブリッジ等の多相ブリッジで構成することも可能である。
【0116】
図19は、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の起動加速、定速回転、回生制動及び停止の一連の動作に対応する直流定電流電源装置10の動作について示したものである。図11の(a)に示すように、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の動作(加速、定速、減速(制動))が行われる場合、図11の(b)に示すように、直流定電流電源装置10は、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の駆動(加速)時と制動(減速)時には、定速回転時よりも大きな定電流を定電流フリップフロップ回路20に供給する必要がある。
【0117】
直流定電流電源装置10の出力端子Xから見た負荷起電力は、駆動(加速)状態では正、制動(減速)状態では負であり、その大きさは定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の回転子の回転速度にほぼ比例する。直流定電流電源装置10は、図11の(c)の点線に示すように、正負の負荷起電力に負荷回路の抵抗分による電圧降下(抵抗ドロップ)分を加算した電圧を出力することで、定電流フリップフロップ回路20に直流定電流を供給することができる。これにより、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の制動時には、停止まで回生制動が可能となる。
【0118】
負荷側の定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30が制動(減速)状態では負荷起電力は負である。この場合、直流定電流電源装置10の前述した動作により、図16及び図17に示すように、出力電圧Eoは負になり、負荷側から回生電流が直流電源100の正端子から流れ込む。この現象はあたかもバッテリーの充電と同様の態様となっている。直流電源100は充電機能を有しており、回生電力を充電する。一方、直流電源100が燃料電池等であり充電機能を有しない場合には、エネルギー回収のために、直流電源100に並列にウルトラキャパシタを接続しておく必要がある。更には、直流電源100がリチウムイオン電池のように充電機能を有していても、回生電力が数十秒単位の急峻な変動となる際には適切に充電を行うことができない場合にも、直流電源100に並列にウルトラキャパシタを接続することが望ましい。
【0119】
このように、本発明の実施の形態に係る定電流方式の回生型スイッチドリラクタンスモータ駆動システムでは、定電流フリップフロップ回路20が、スイッチング素子211及び221の一方がオンの場合には他方がオフになる所謂フリップフロップ動作を行うことによって、定電流直流電源装置10からの直流定電流Iを、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30内のA相コイル322及びB相コイル323に交互に振り分けて、これらA相コイル322及びB相コイル323に矩形波電流を流す。そして、固定子磁極321a、321b、321c、321dによる吸引力によって回転子31に生じるトルクが理論上最大となるようにするとともに、制動時には、半導体スイッチ211及び221の切り替えタイミングを、駆動時の出力タイミングから回転子31が電気角180°に対応する角度を回転する時間だけずらすことにより、電力回生を効率よく行うことができる。
【0120】
なお、上述した実施形態では、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30は、回転子32が2個の回転子凸極313a、313bを有し、固定子32が4個の固定子磁極321a、321b、321c、321dを有する2相4極の構成であったが、回転子32が2n個(nは整数)の回転子凸極を有し、固定子32が4n個の固定子磁極を有する2相2n極の構成であってもよい。
【0121】
図20は、2相8極の定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の構造を示す断面図である。図20に示す定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30において、回転子31は、回転鉄心315の外周面に回転軸316に平行に伸びる4つの回転子凸極315a、315b、315c、315dが周方向に等間隔(90°の角度間隔)に配置形成されている。回転子31を囲む固定子32は、筒状の324の内周面に8つの固定子磁極324a、324b、324c、324d、324e、324f、324g、324hが周方向に等間隔(45°の角度間隔)に形成された構造となっている。各固定子磁極324a〜324hの先端面と回転子31の角回転子凸極315a〜315dの先端面との間に所定の空隙が形成されるように固定子32と回転子31との相対的な位置関係が設定されている。
【0122】
固定子32において、8つの固定子磁極324a〜324hのうち1つおきに配置された固定子磁極324a、324c、324e、324gに励磁コイル325a、325b、325c、325dが、固定子磁極324aから固定子磁極324cに向かう方向に磁束が形成され、また、固定子磁極324eから固定子磁極324gに向かう方向にも磁束が形成されるように巻回されている。これら4つの励磁コイル325a〜325dは直列接続されて全体としてA相コイルを構成する。残りの4つの固定子磁極324b、324d、324f、324hに励磁コイル326a、326b、326c、326dが、固定子磁極324bから固定子磁極324dに向かう方向に磁束が形成され、また、固定磁極234eから固定子磁極324gに向かう方向に磁束が形成されるように巻回されている。これら4つの励磁コイル326a〜326dは直列接続されて全体としてB相コイルを構成する。
【0123】
この2相8極の定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30を用いる場合には、ヨーク324の部分の磁路断面積を小さくして小型軽量化を図るとともに、トルクの脈動周期を高域に移行することができる。
【0124】
更に、前述した定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30において、固定子32を複数の固定子部分にて構成することができる(固定子の多重化)。この構成例は、図21に示される。図21において、回転子31を囲む固定子32は、4つの第1固定子部分32−1、第2固定子部分32−2、第3固定子部分32−3、第4固定子部分32−4にて構成される。
【0125】
各固定子部分32−1、32−2、32−3、32−4は、前述した定電流型フリップフロップ型リラクタンスモータ30の固定子32(図2参照)と同じ構造となっている。即ち、各固定子部分32−1、32−2、32−3、32−4は、図22の(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、筒状のヨーク321の内周面に4つの固定子磁極321a、321b、321c、321dが周方向に等間隔(90°の角度間隔)に形成された構造となっている。各固定子部分32−1〜32−4において、固定子磁極321a、321b、321c、321dのうち1つおきに配置された磁極321a、321cに励磁コイル322a、322bが、固定磁極321aから固定磁極321cに向かう方向に磁束が形成されるように巻回され、それら励磁コイル322a、322bが直列接続されている。また、残りの固定磁極321b、321dに励磁コイル323a、323bが、固定磁極321bから固定磁極321dに向かう方向に磁束が形成されるように巻回され、それら励磁コイル323a、323bが直列接続されている。
【0126】
直列接続された励磁コイル322a及び322bは、第1固定子部分32−1において第1のA相コイル322−1を、第2固定子部分32−2において第2のA相コイル322−2を、第3固定子部分32−3において第3のA相コイル322−3を、第4固定子部分32−4において第4のA相コイル322−4を構成する。また、直列接続された励磁コイル323a及び323bは、第1固定子部分32−1において第1のB相コイル323−1を、第2固定子部分32−2において第2のB相コイル323−2を、第3固定子部分32−3において第3のB相コイル323−3を、第4固定子部分32−4において第4のB相コイル323−4を構成する。
【0127】
共通の回転子31を囲む各固定子部分32−1〜32−4は、回転軸312の伸びる方向に所定間隔をもって、かつ、回転子31(回転軸312)の回りに所定角度ずつ回転した状態で配置されている。具体的には、図14の(a)に示す第1固定子部分32−1(基準位置A)に対して、第2固定子部分32−2(基準位置A)が図14の(b)に示すように22.5°回転した状態で配置され、第3固定子部分32−3(基準位置A)が図14の(c)に示すように45°回転した状態で配置され、更に、第4固定子部分32−4(基準位置A)が図14の(d)に示すように67.5°回転した状態で配置されている。このような4つの固定子部分32−1〜32−4の配置の結果、4つ全部の固定子部分32−1〜32−4における16個の磁極は等角度間隔(等角度ピッチ:22.5°)に配置されたものとなる。
【0128】
このように固定子32が4つの固定子部分32−1、32−2、32−3、32−4で構成される定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30(多重固定子型スイッチドリラクタンスモータ)を含むモータ駆動システムは、図23に示すように構成される。図23において、第1定電流フリップフロップ回路20aが定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30における第1固定子部分32−1の第1のA相コイル322−1及び第1のB相コイル323−1に接続され、第2定電流フリップフロップ回路20bがモータ30における第2固定子部分32−2の第2のA相コイル322−2及び第2のB相コイル323−2に接続され、第3定電流フリップフロップ回路20cがモータ30における第3固定子部分32−3の第3Aの相コイル322−3及び第3のB相コイル323−3に接続され、更に、第4定電流フリップフロップ回路20dがモータ30における第4固定子部分32−4の第4のA相コイル322−4及び第4のB相コイル323−4に接続されている。
【0129】
各定電流フリップフロップ回路20a(20b、20c、20d)は、前述した定電流フリップフロップ回路20(図3参照)と同様に、第1スイッチング素子211a(211b、211c、211d)及びダイオード212a(212b、212c、212d)、213a(213b、213c、213d)を含む第1の電流路210a(210b、210c、210d)と、第2スイッチング素子221a(221b、221c、221d)及びダイオード222a(222b、222c、222d)、223a(223b、223c、223d)を含む第2の電流路220a(220b、220c、220d)とを有している。そして、第1の電流路210a(210b、210c、210d)と定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の第1のA相コイル322−1(第2のA相コイル322−2、第3のA相コイル322−3、第4のA相コイル322−4)とが直列接続され、第2の電流路220a(220b、220c、220d)と定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の第1のB相コイル323−1(第2のB相コイル323−2、第3のB相コイル323−3、第4のB相コイル323−4)とが直列接続されている。
【0130】
定電流フリップフロップ回路と定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30のA相コイル及びB相コイルとが接続された4つのユニットが直列接続されている。具体的には、直流定電流電源装置10の出力端子Xが初段の第1の定電流フリップフロップ回路20aにおける第1の電流路210a及び第2の電流路220aに接続されている。そして、第1のA相コイル322−1及び第1のB相コイル323−1が次段の第2定電流フリップフロップ回路20bにおける第1の電流路210bと第2の電流路220bとの接続点に接続され、第2のA相コイル322−2及び第2のB相コイル323−2が次段の第3定電流フリップフロップ回路20cにおける第1の電流路210cと第2の電流路220cとの接続点に接続され、第3のA相コイル322−3及び第3のB相コイル323−3が次段の第4定電流フリップフロップ回路20dにおける第1の電流路210bと第2の電流路220bとの接続点に接続されている。更に、最終段の第4定電流フリップフロップ20dに接続される第4のA相コイル322−4及び第4のB相コイル232−4は、直流定電流電源装置10の出力端子Yに接続されている。
【0131】
フリップフロップ制御回路61は、図3に示すフリップフロップ制御回路60と同様の制御を、第1定電流フリップフロップ回路20a、第2定電流フリップフロップ回路20b、第3定電流フリップフロップ回路20c及び第4定電流フリップフロップ回路20dのそれぞれに対して行う。即ち、フリップフロップ制御回路61は、角度センサからの回転子31の第1固定子部分32−1に対する相対的な角度位置を表す角度位置情報に基づいて、第1定電流フリップフロップ20a内の第1スイッチング素子211a及び第2スイッチング素子221aをオン、オフさせるための動作信号を出力し、角度センサからの回転子31の第2固定子部分32−2に対する相対的な角度位置を表す角度位置情報に基づいて、第2定電流フリップフロップ20b内の第1スイッチング素子211b及び第2スイッチング素子221bをオン、オフさせるための動作信号を出力する。また、フリップフロップ制御回路61は、角度センサからの回転子31の第3固定子部分32−3に対する相対的な角度位置を表す角度位置情報に基づいて、第3定電流フリップフロップ20c内の第1スイッチング素子211c及び第2スイッチング素子221cをオン、オフさせるための動作信号を出力し、角度センサからの回転子31の第4固定子部分32−4に対する相対的な角度位置を表す角度位置情報に基づいて、第4定電流フリップフロップ20d内の第1スイッチング素子211d及び第2スイッチング素子221dをオン、オフさせるための動作信号を出力する。また、フリップフロップ制御回路61は、制動指令を入力すると、動作信号の出力タイミングを、駆動時の出力タイミングから回転子11が電気角180°に対応する角度を回転する時間だけずらす。
【0132】
上述したようなフリップフロップ制御回路61の動作により、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30において、第1固定子部分32−1のA相コイル322−1とB相コイル323−1とへの交互の矩形波交流電流の流れ、第2固定子部分32−2のA相コイル322−2とB相コイル323−2とへの交互の矩形波交流電流の流れ、第3固定子部分32−3のA相コイル322−3とB相コイル323−3とへの交互の矩形波交流電流の流れ、及び第4固定子部分32−4のA相コイル322−4とB相コイル323−4とへの交互の矩形波交流電流の流れが、循環するように切換えられる。それにより、回転子31に前述したのと同様の原理(図4A〜4E参照)にてトルクが発生して、回転子31が回転する(定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の駆動)。また、動作信号の出力タイミングを、駆動時の出力タイミングから回転子31が電気角180°に対応する角度を回転する時間だけずらすことにより、前述したのと同様の原理(図6A〜図6E参照)にて回転子31に制動力が作用して、回転子31の制動がなされる(定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の制動)。
【0133】
定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30において、回転子31を共通にして複数の固定子部分32−1、32−2、32−3、32−4を設け、各固定子部分2−1、32−2、32−3、32−4を所定角度間隔(例えば、22.5°)ずらして配置し、更に、前記複数の固定子部分32−1〜32−4に対応した定電流フリップフロップ回路20a〜20dの切換え動作を行うことにより、トルクゼロ点がなくなって、トルクの脈動を低減させるとともに、励磁コイルの相対的なリアクタンスを低減して、導通させる電流路を切り替える際の過電圧を低減させることができるようになる。
【0134】
前述したモータ駆動システムに用いられる直流定電流電源装置は、図24に示すように構成することもできる。この例では、図8に示す直流電源100及び定電流型インバータ11に変えて、商用交流電源に接続された変圧回路16を用いたことを特徴としている。図24に示す直流定電流電源装置10´は、商用交流電源の使用できる環境において駆動させるモータ(例えば、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30)を含むモータ駆動システムに用いられる。
【0135】
図24に示す直流定電流電源装置10´は、商用交流電源(例えば、交流100V)に接続された変圧回路16、定電流コンバータ12、電流検出器13及びリアクトル素子14を有している。定電流コンバータ12は、前述した例(図8参照)と同様に、ブリッジを構成する4つのスイッチ121、122、123、124を有している。そして、このブリッジのスイッチ121と123との接続点である一方の交流側端子cと、前記ブリッジのスイッチ122と124との接続点である他方の交流側端子dとが変圧回路16の二次側端子に接続されている。また、前記ブリッジの出力側の一方端がリアクトル素子14及び電流検出器12を介して出力端子Xに接続され、前記ブリッジの出力側の他方端が出力端子Yに接続されている。そして、定電流コンバータ12の交流側端子c、dが変圧回路16の二次側端子に接続されている。
【0136】
図24には示していないが、直流定電流電源装置10´は、図8に示した例と同様に、定電流制御回路を有している。この定電流制御回路は、出力端子Xからモータ負荷側に供給される直流定電流I(指令値に基づいている)を維持するように、定電流コンバータ12におけるブリッジの各スイッチ121、122、123、124の制御により変圧回路16からの正弦波交流電圧を基準とした定電流コンバータ12の交流側の正弦波交流電流の位相角αを制御している。この位相角αの制御は、前述した例(図9、図15、図16、図17、図18参照)と同様になされる。
【0137】
このような直流定電流電源装置10´によれば、前述した直流定電流電源装置10(図8参照)と同様に、変圧回路16からの正弦波交流電圧を基準とした定電流コンバータ12に入力する正弦波交流電流の位相角αを0°〜180°の範囲で制御することにより、出力電流Iを指令値に応じた直流定電流に維持しつつ、出力電圧Eoを、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の駆動、回生制動及び速度に応じて、負の電圧から正の電圧までの全域にわたって制御することができるので(図18参照)、従来のようなブリッジ内のスイッチ対の切換え制御を特に必要とせずに、常にスイッチのオン・オフ及びそのパルス幅制御によって、定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ30の駆動、制動とともにそのモータ出力に応じた電力を自動的に供給、回生することができるようになる。そして、その回生電力は、変圧回路16を介して商用交流電源に戻すことができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明に係る直流定電流電源装置は、負荷の正負に係わらず指定された定電流の出力を維持させるための制御をより容易にすることが可能となり、モータ等の負荷の起電力の正負及び大小に係わらず指示された一定電流を出力するとともに負荷側からの回生エネルギーの回収を可能にした直流定電流電源装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】本発明の実施の一形態に係る直流定電流電源装置を用いたモータ駆動システムの基本構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すモータ駆動システムに用いられる定電流フリップフロップリラクタンスモータ(スイッチドリラクタンスモータ)の構造を示す断面図である。
【図3】図1に示すモータ駆動システムに用いられ、定電流フリップフロップリラクタンスモータの励磁コイルの通電制御を行う定電流フリップフロップ回路の構成例を示す回路図である。
【図4A】定電流フリップフロップリラクタンスモータの駆動時において通電される励磁コイルと回転子(回転子凸極)との関係を示す図(その1)である。
【図4B】定電流フリップフロップリラクタンスモータの駆動時において通電される励磁コイルと回転子(回転子凸極)との関係を示す図(その2)である。
【図4C】定電流フリップフロップリラクタンスモータの駆動時において通電される励磁コイルと回転子(回転子凸極)との関係を示す図(その3)である。
【図4D】定電流フリップフロップリラクタンスモータの駆動時において通電される励磁コイルと回転子(回転子凸極)との関係を示す図(その4)である。
【図4E】定電流フリップフロップリラクタンスモータの駆動時において通電される励磁コイルと回転子(回転子凸極)との関係を示す図(その5)である。
【図5】定電流フリップフロップリラクタンスモータの駆動時における負荷起電力(a)と発生トルク(b)とを示す図である。
【図6A】定電流フリップフロップリラクタンスモータの回生制動時において通電される励磁コイルと回転子との関係を示す図(その1)である。
【図6B】定電流フリップフロップリラクタンスモータの回生制動時において通電される励磁コイルと回転子との関係を示す図(その2)である。
【図6C】定電流フリップフロップリラクタンスモータの回生制動時において通電される励磁コイルと回転子との関係を示す図(その3)である。
【図6D】定電流フリップフロップリラクタンスモータの回生制動時において通電される励磁コイルと回転子との関係を示す図(その4)である。
【図6E】定電流フリップフロップリラクタンスモータの回生制動時において通電される励磁コイルと回転子との関係を示す図(その5)である。
【図7】定電流フリップフロップリラクタンスモータの制動時における負荷起電力(a)と発生トルク(b)を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る直流定電流電源装置の構成を示す回路図である。
【図9】位相角αがゼロでの制御における矩形波交流電圧ei、矩形波交流電流ii、出力電流I、コンバータ出力eo、出力電圧Eoを示すタイミングチャートである。
【図10】図9に示す制御のモード(1)において直流定電流電源装置を流れる電流を示す図である。
【図11】図9に示す制御のモード(2)において直流定電流電源装置を流れる電流を示す図である。
【図12】位相角αが30°での制御における矩形波交流電圧ei、矩形波交流電流ii、出力電流I、コンバータ出力eo、出力電圧Eoを示すタイミングチャートである。
【図13】図12に示す制御のモード(1)において直流定電流電源装置を流れる電流を示す図である。
【図14】図12に示す制御のモード(3)において直流定電流電源装置を流れる電流を示す図である。
【図15】位相角αが90°での制御における矩形波交流電圧ei、矩形波交流電流ii、出力電流I、コンバータ出力eo、出力電圧Eoを示すタイミングチャートである。
【図16】位相角αが150°での制御における矩形波交流電圧ei、矩形波交流電流ii、出力電流I、コンバータ出力eo、出力電圧Eoを示すタイミングチャートである。
【図17】位相角αが180°での制御における矩形波交流電圧ei、矩形波交流電流ii、出力電流I、コンバータ出力eo、出力電圧Eoを示すタイミングチャートである。
【図18】0°≦α≦180°の範囲で位相角αが制御される場合の出力電圧Eoの特性を示す図である。
【図19】定電流フリップフロップ型リラクタンスモータの状態(加速、定速、減速(制動))と直流定電流電源装置の動作(設定定電流値、出力電圧)との関係を示す図である。
【図20】定電流フリップフロップ型リラクタンスモータの他の構成例を示す断面図である。
【図21】定電流フリップフロップ型リラクタンスモータの更に他の基本構成例(多重固定子型スイッチドリラクタンスモータ)を示す図である。
【図22】図21に示す構造の定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ(多重固定子型スイッチドリラクタンスモータ)における複数の固定子部分の構成を示す図である。
【図23】図21及び図22に示す定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ(多重固定子型スイッチドリラクタンスモータ)を用いたモータ駆動システムにおける定電流フリップフロップ回路の構成を示す回路図である。
【図24】本発明の他の実施の形態に係る直流定電流電源装置を示す回路図である。
【図25】従来の直流定電流電源装置を示す回路図である。
【符号の説明】
【0140】
10 直流定電流電源装置
11 回生型インバータ
111、112、113、114 スイッチ
12 定電流コンバータ
121、122、123、124 スイッチ
13 電流検出器
14 リアクトル素子
20 定電流フリップフロップ回路
210 第1の電流路
211 第1スイッチ素子
212、213 ダイオード
220 第2の電流路
221 第2スイッチング素子
222、223 ダイオード
230 コンデンサ
30 定電流フリップフロップ型リラクタンスモータ
31 回転子
312 回転軸
313 回転鉄心
313a、313b 回転子凸極
32 固定子
321 ヨーク
321a、321b、321c、321d 固定子磁極
322a、322b 励磁コイル(A相コイル322)
323a、323b 励磁コイル(B相コイル323)
32−1 第1固定子部分
32−2 第2固定子部分
32−3 第3固定子部分
32−4 第4固定子部分
40 ディファレンシャルギア
50 機械ブレーキ
60、61 フリップフロップ制御回路
70 クロックパルス発生回路
80 定電流制御回路
100 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電可能な直流電源と、
複数のスイッチにて構成された第1ブリッジを有し、直流側端子が前記直流電源の出力端子に接続されたインバータと、
前記インバータにおける前記第1ブリッジの各スイッチを所定周期のパルス信号にてオン・オフ制御して、前記インバータの交流側端子から矩形波交流の電圧及び電流を出力させるインバータ駆動手段と、
複数のスイッチにて構成された第2ブリッジを有し、交流側端子が前記インバータの前記交流側端子に接続され、負荷の接続される出力端子に結合されたコンバータと、
負荷起電力の正負及び大きさに係わりなく、出力電流が一定方向及び指示された一定値に維持されるように前記インバータの交流側端子から前記コンバータの交流側端子に供給される矩形波交流電圧を基準とした矩形波交流電流の位相を制御して前記出力端子間に現れる出力電圧を制御する定電流制御手段とを備え、負荷起電力の正負及び大小に対応して負荷電力を自動的に供給及び回生できるようにした直流定電流電源装置。
【請求項2】
商用交流電源に接続されて所定レベルの正弦波交流の電圧及び電流を二次側端子から出力する変圧回路と、
複数のスイッチにて構成されたブリッジを有し、交流側端子が前記変圧回路の二次側端子に接続され、負荷の接続される出力端子に結合されたコンバータと、
負荷起電力の正負及び大きさに係わりなく、出力電流が一定方向及び指定された一定値に維持されるように前記変圧回路から前記コンバータの交流側端子に供給される正弦波交流電圧を基準とした正弦波交流電流の位相を制御して前記出力端子に現われる出力電圧を制御する定電流制御手段とを備え、負荷起電力の正負及び大小に対応して負荷電力を自動的に供給及び回生できるようにした直流定電流電源装置。
【請求項3】
磁性体によりなり、2n(nは整数)個の凸部が周方向に等間隔に形成された回転子と、該回転子の外方に前記各凸部に対して所定の空隙が形成されるように4n個の磁極を等間隔に配置してなる固定子と、該固定子の前記4n個の磁極のうちの1つおきに配置された磁極のそれぞれに巻回される第1のコイルと、前記4n個の磁極のうちの残りの磁極のそれぞれに巻回される第2のコイルとを有するスイッチドリラクタンスモータと、
請求項1記載及び請求項2のいずれかに記載の直流定電流電源装置と、
交互に導通状態の切換えがなされ得る第1の電流路と第2の電流路とを有するフリップフロップ回路と、
前記フリップフロップ回路の前記第1の電流路と前記第2の電流路との導通状態を交互に切換えるフリップフロップ制御手段とを備え、
前記直流定電流電源装置の一方の出力端子から出力される直流定電流が前記フリップフロップ回路の第1の電流路を通って前記スイッチドリラクタンスモータの前記第1のコイルを流れ、前記直流定電流が前記フリップフロップ回路の前記第2の電流路を通って前記スイッチドリラクタンスモータの前記第2のコイルを流れ、前記第1及び第2のコイルを流れた前記直流定電流が前記直流定電流電源装置の他方の出力端子に帰還するように、前記直流定電流電源装置と、前記フリップフロップ回路と、前記スイッチドリラクタンスモータとが接続され、
前記フリップフロップ制御手段は、前記スイッチドリラクタンスモータの前記回転子の角度位置に応じて前記第1及び第2の電流路の導通状態を交互に切換えて、電気角180°幅の矩形波電流を前記第1及び第2のコイルに交互に流し、前記スイッチドリラクタンスモータの駆動時と制動時とで、前記第1及び第2の電流路の導通状態を切換えるタイミングを前記回転子の電気角180°に対応する角度の回転時間だけずらすように前記フリップフロップ回路を制御するモータ駆動システム。
【請求項4】
磁性体によりなり、2n(nは整数)個の凸部が周方向に等間隔に形成された回転子と、該回転子の外方に前記各凸部に対して所定の空隙が形成されるように4n個の磁極が等間隔に配置されたm個の固定子部分が軸方向に重ねられて各磁極が周方向に等間隔となるように一体化された固定子と、各固定子部分の前記4n個の磁極のうちの1つおきに配置された磁極のそれぞれに巻回される第1のコイルと、前記4n個の磁極のうちの残りの磁極のそれぞれに巻回される第2のコイルとを有する多重固定子型スイッチドリラクタンスモータと、
請求項1及び請求項2のいずれかに記載の直流定電流電源装置と、
交互に導通状態の切換えがなされ得る第1の電流路と第2の電流路とを有するm個のフリップフロップ回路と、
m個の前記フリップフロップ回路それぞれの前記第1の電流路と前記第2の電流路との導通状態を交互に切換えるフリップフロップ制御手段とを備え、
前記スイッチドリラクタンスモータにおける前記m個の固定子部分のそれぞれがm個の前記フリップフロップ回路のいずれかに対応づけられ、各フリップフロップ回路の第1の電流路と対応する固定子部分に設けられた第1のコイルとが直列接続されるとともに第2の電流路と対応する固定子部分に設けられた第2のコイルとが直列接続された状態で、m個の前記フリップフロップ回路が直列的に接続され、前記直流定電流電源装置の一方の出力端子から出力さる直流定電流が前記直列的に接続された初段のフリップフロップ回路の第1及び第2の電流路に入力し、最終段のフリップフロプの第1の電流路に接続された第1のコイル及び第2の電流路に接続された第2のコイルを流れた前記直流定電流が前記直流定電流電源装置の他方の出力端子に帰還するように、前記直流定電流電源装置、m個の前記フリップフロップ回路及び前記スイッチドリラクタンスモータが接続され、
前記フリップフロップ制御手段は、前記スイッチドリラクタンスモータの前記回転子の角度位置に応じてm個のフリップフロップ回路それぞれにおける第1及び第2の電流路の導通状態を交互に切換えて、電気各180°幅の矩形波電流を前記第1及び第2のコイルに交互に流し、前記スイッチドリラクタンスモータの駆動時と制動時とで、前記第1及び第2の電流路の導通状態を切換えるタイミングを前記回転子の電気角180°に対応する角度の回転時間だけずらすように各フリップフロップを制御するモータ駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−130754(P2010−130754A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301164(P2008−301164)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(505256939)
【出願人】(505256940)
【Fターム(参考)】