説明

真空処理装置及び真空処理方法

【課題】キャリアの数が少数であってもプロセスチャンバの稼働率の向上を図ることができる真空処理装置を提供する。
【解決手段】真空処理装置1は、2つのプロセスチャンバPC1,PC2と3つのロードロックチャンバLL1,LL2,LL3が交互に直列に連結されており、隣り合うプロセスチャンバPC1(PC2)とロードロックチャンバLL1(LL2,LL3)との間でだけ複数のキャリアを搬送する搬送装置を備えている。搬送装置によってキャリアがプロセスチャンバPC1(PC2)内に位置するとき被成膜材は成膜処理され、ロードロックチャンバLL1(LL2,LL3)内に位置するとき被成膜材が交換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の被処理材に対する真空処理に適した真空処理装置及び真空処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板などの被成膜材に対して1〜3層程度の成膜を行う場合には、1室のプロセスチャンバ(PC)に1室のロードロック(LL)が連結された成膜装置を用いることあった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような、プロセスチャンバ(PC)とロードロック(LL)が1室ずつで構成された成膜装置では、ロードロック室(LL)で被成膜材の交換が行われる間はプロセスチャンバ(PC)で成膜することができないため、実質的な設備稼率を向上するには限界があり、成膜処理の生産性(スループット)向上を図ることが困難であった。
【0004】
また、プロセスチャンバ(PC)とロードロック(LL)が1室ずつで構成された成膜装置において、被成膜材をキャリアに保持した状態で真空容器を搬送する装置が用いられることがある。このような装置では、キャリアを真空容器から取り出した状態で、被成膜材の取付けと取り外しを行うことがあり、被成膜材の取付けと取り外しの作業に要する工数が多く生産性の向上が課題となっていた。
【0005】
そこで、ロードロック室(LL)での作業時間短縮を図るために、プロセスチャンバ(PC)を挟んで上流側と下流側にそれぞれロードロック室(LL)を配置し、被成膜材を一方方向に通過させる方法が採用されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0006】
例えば、特許文献2に開示された技術は、LOADチャンバ(LC)とUNLOADチャンバ(UL)の間に複数のプロセスチャンバ(PC)が配設された真空処理装置を用いた方法である。この真空処理装置では被成膜材をキャリアに保持した状態で搬送することができるため、連続的に被成膜材(基板)上に多層膜を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−27297号公報
【特許文献2】特開平7−243037号公報
【特許文献3】特開平11−22915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献2の技術では、被成膜材を保持するキャリア(若しくはホルダ)を真空容器内で搬送するための機構が複雑であり、成膜装置の低コスト化が困難であるという問題があった。
また、被成膜材上に積層させる層の数が少ない場合には、相対的にLOADチャンバ(LC)とUNLOADチャンバ(UL)で作業時間が多くなり、また、プロセスチャンバ(PC)の稼働率を高くするには大量のキャリアを用意しなければならないことからコスト低減が困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、成膜処理の生産性の向上を図ることができ、且つコスト低減に寄与する真空処理装置及び真空処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る真空処理装置は、1つ以上のプロセスユニットと、プロセスユニットの数量よりも1つ多い数量のロードロックチャンバと、プロセスユニットの数量よりも1つ以上多い数量のキャリアと、隣り合うプロセスユニットとロードロックチャンバとの間でそれぞれの前記キャリアを搬送する搬送装置と、を備え、プロセスユニットとロードロックチャンバは直列、且つ交互に配置されるように連結され、ロードロックチャンバは、プロセスユニットと一方側で隣り合う第1ロードロックチャンバと、プロセスユニットと他方側で隣り合う第2ロードロックチャンバとを少なくとも含み、キャリアは、第1ロードロックチャンバとプロセスユニットの間を往復する第1キャリアと、第2ロードロックチャンバとプロセスユニットの間を往復する第2キャリアとを少なくとも含み、搬送装置は、第1キャリアと第2キャリアを同一方向に同期して搬送することを特徴とする。或いは、本発明に係る真空処理方法は、上述した真空処理装置を用いる真空処理方法であって、ロードロックチャンバに位置するキャリアに被処理材を取付ける取付け工程と、取付け工程で被処理材が搭載されたキャリアを隣り合うプロセスユニットに搬送する搬送工程と、搬送工程でプロセスユニット内に搬送されたキャリアに搭載された被処理材に真空処理を行う真空処理工程と、真空処理工程後に、被処理材が搭載されたキャリアをロードロックチャンバに搬送する第2搬送工程と、プロセスユニットと他方側で隣り合う他のロードロックチャンバに位置する他のキャリアに他の被処理材を取付ける第2取付け工程と、第2取付け工程で他の被処理材が搭載された他のキャリアをプロセスユニットに搬送する第3搬送工程とを有し、第2取付け工程は真空処理工程中に行われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
キャリアの数が少数であるにもかかわらずプロセスチャンバ(プロセスユニット)の稼働率の向上を達成できることができる真空処理装置を提供することができる。また、この真空処理装置は、キャリアのメンテナンス、保守などを考慮しても少ない数のキャリアで連続生産を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る真空処理装置の外観斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る真空処理装置の側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る真空処理装置の上面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る真空処理装置の構成摸式図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る真空処理装置での処理工程を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る真空処理装置での処理工程を示す説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る真空処理装置の各チャンバでの処理のタイムチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る真空処理装置の各チャンバでの処理のタイムチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る真空処理装置での処理工程を示す説明図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係る真空処理装置での処理工程を示す説明図である。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る真空処理装置での処理工程を示す説明図である。
【図12】本発明の第5の実施形態に係る真空処理装置での処理工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の各実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する部材、配置等は発明を具体化した一例であって本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変できることは勿論である。
【0014】
本願明細書中では、真空処理装置としてDLC(ダイヤモンドライクカーボン)を成膜するCVD成膜装置(真空処理装置1)を例に挙げて説明するが本発明はこの限りではない。例えば、スパッタリング装置や他のPVD装置若しくは他のCVD装置などにも本発明は好適に適用可能である。本発明は成膜装置以外の処理装置、例えばドライエッチング装置若しくはアッシング装置、熱処理装置などの装置にも好適に適用可能である。また、本発明に係る真空処理装置は、燃料電池製造装置、パネル製造装置、半導体製造装置、ストレージ製造装置として好適に適用可能なものである。
【0015】
なお、本明細書中において「プロセスユニット」とは、図4,5に示されたプロセスチャンバPCのみならず、真空処理装置で真空処理がなされる一連の領域(例えば、図10,11のPC1とPC2のように連続したチャンバ)をも含む用語とする。一方、「プロセスチャンバ」とは、プロセスチャンバPC1のように、個々のプロセスチャンバを示す用語とする。
【0016】
本明細書中においては、任意のプロセスチャンバのいずれか一方側で隣り合うロードロックチャンバを第1ロードロックチャンバとし、プロセスユニットと他方側で隣り合うロードロックチャンバを第2ロードロックチャンバとする。第1キャリアと第2キャリアは、キャリアCa1〜Ca6のうち隣り合って配置される任意の2つのキャリアをいうものとする。
【0017】
(第1の実施形態)
図1〜8は本発明の第1の実施形態に係る真空処理装置を示す図であり、図1は真空処理装置の外観斜視図、図2は真空処理装置の側面図、図3は真空処理装置の上面図、図4は真空処理装置の構成摸式図、図5,6は真空処理装置の処理工程を示す説明図、図7,8は真空処理装置の各チャンバでの処理のタイムチャートである。なお、図面の煩雑化を防ぐため一部を除いて省略している。
【0018】
図1〜4に基づいて真空処理装置1の概略構成を説明する。図1〜3は真空処理装置の外観を示すものであり、図4は真空処理装置の構成摸式図である。真空処理装置1はCVD装置であり、5つの真空チャンバが直列に連結されて構成されている。すなわち真空処理装置1は、ロードロックチャンバLL1、プロセスチャンバPC1、ロードロックチャンバLL2、プロセスチャンバPC2、ロードロックチャンバLL3がゲートバルブGVを介して上記の順番で一列に連結されている。真空処理装置1では、被処理材をキャリアに保持した状態で真空処理が行われる。また、真空処理装置1には、各真空チャンバ間でキャリアを移送する搬送装置が設けられている。
【0019】
プロセスチャンバPC(PC1,PC2)は、DLC(Diamond Like Carbon)を成膜するためのCVD成膜チャンバであり、詳細は省くがガス導入系17と電力供給系19及び排気系などを備えている。ガス導入系17から導入されるガスはCxHy(炭化水素系ガス),H2,N2,Arなどである。また、プロセスチャンバPCには、DLC膜を成膜するCVD処理装置の他にアッシング処理装置及び被処理材5を所定温度に過熱するヒータが備えられている。
【0020】
ロードロックチャンバLL(LL1,LL2,LL3)は、被処理材を導入するLOADチャンバと取り出すUNLOADチャンバの機能を併せ有するものであり、不図示のガス導入系や排気系を備えている。プロセス処理を行うプロセスチャンバPCの両側にゲートバルブGVを介して接続されて、プロセスチャンバPCに両側から被処理材5を供給/排出するように配置されている。ロードロックチャンバLLの排気/ベントを繰り返し行い、被処理材5の装置への供給/排出を行う機構を有している。すなわち、ドアバルブDV(DV1,DV2,DV3)を開放することで、キャリアに被処理材5を取付け(搭載)又は取り外す作業をすることができる。
【0021】
また、真空処理装置1の周囲にはロボットRBとコンベアCUが配置されており、前工程からコンベアCUによって搬送されてきた被処理材5をロボットRBによってキャリアに取付けることができる。そして、処理後の被処理材5はロボットRBによってキャリアから取り外されてコンベアCUに載置され、後工程に搬送される。本実施形態においては、被処理材を交換作業にロボットRBを用いているが、他の交換方法を用いてもよい。なお、処理工程については図5,6に基づいて詳しく説明する。
【0022】
ここで、キャリアを搬送する搬送装置について説明する。
まず、キャリアは、上述したように被処理材5を保持する部材であり、下側には搬送装置のピニオンと噛み合うラックが直線上に取付けてある。搬送装置はキャリアをプロセスチャンバPC及びロードロックチャンバLLの所定位置に移送する真空チャンバ側に備えられた装置であり、回転制御可能な小さなギアであるピニオンを所定間隔に有している。搬送装置のピニオンは、キャリア側のラックと噛み合っているため、ピニオンの回転を制御することでキャリアを任意の位置に移送することができる。
【0023】
キャリアが1つのピニオンと噛み合わない位置まで移送される前に隣に配置されたピニオンがそのキャリアのラックに噛み合うように配置されている。本実施形態における搬送装置には、キャリアが4個設置されており、各キャリアは隣り合うロードロックチャンバLLとプロセスチャンバPCの間を往復するように移送される。全てのピニオンは同期回転するため4つのキャリアも同時に移動することになる。全てのキャリアは、同一方向に同期して移動する。
【0024】
なお、被処理材は本実施形態においては板状若しくはシート状のものが用いられるが、真空処理の目的に応じて適宜変更できるものとする。また、上述した搬送装置は1つの構成例を示すものであり、ラックとピニオンを用いた機構に替えて、磁気ネジやリニアモータを用いた機構などを用いてもよい。
【0025】
図5,6は、真空処理装置での処理工程を示す説明図であり、処理工程の流れを示している。すなわち、図5(a),図5(b),図6(a),図6(b)の順序で所定の真空処理や搬送動作が行われる。
図5(a)は、プロセスチャンバPC1,PC2での真空処理が終了した後にキャリア(Ca1−4)が搬送される工程(搬送工程)である。このとき、キャリアCa1,Ca3には処理前の被処理材が保持(搭載)されており、キャリアCa2,Ca4には処理が終わった被処理材が保持されている。すなわち、プロセスチャンバPC1,PC2での真空処理が終わり、キャリアCa2(Ca4)がロードロックチャンバLL2(LL3)へと移動すると同時にキャリアCa1(Ca3)がプロセスチャンバPC1(PC2)へと移動し、真空処理が開始される。
【0026】
図5(b)は、図5(a)の搬送工程が終了した後にプロセスチャンバPC1,PC2で真空処理が行われる工程(真空処理工程)である。このとき、キャリアCa1,Ca3に保持された被処理材はそれぞれプロセスチャンバPC1,PC2で真空処理される。同時に、キャリアCa2,Ca4から処理が終わった被処理材を取り出し、処理前の被処理材を取付ける作業が行(取付け工程)われる。より詳しくは、ロードロックチャンバLL2,LL3では、プロセスチャンバPC1,PC2での真空処理中に、ベント(大気開放)、被処理材の排出/投入、真空排気の4つ工程(作業工程)が行われる。
【0027】
図6(a)は、図5(b)の工程が終了した後にキャリア(Ca1−4)が搬送される工程(第2搬送工程)である。このとき、キャリアCa2,Ca4には処理前の被処理材が保持されており、キャリアCa1,Ca3には処理が終わった被処理材が保持(搭載)されている。図6(a)でのキャリアの搬送方向は、図5(a)でのキャリアの搬送方向と逆方向である。
【0028】
図6(b)は、図6(a)の搬送工程が終了した後にプロセスチャンバPC1,PC2で真空処理が行われる工程(第2真空処理工程)である。すなわち、プロセスチャンバPC1,PC2でのプロセス処理が終わり、キャリアCa1(Ca3)がロードロックチャンバLL1(LL2)へと移動すると同時にキャリアCa2(Ca4)がプロセスチャンバPC1(PC2)へと移動し、真空処理が開始される。このとき、キャリアCa2,Ca4に保持された被処理材はそれぞれプロセスチャンバPC1,PC2で真空処理される。また、キャリアCa1,Ca3から処理が終わった被処理材を取り出し、処理前の被処理材を取付ける作業(第2取付け工程)が行われる。なお、ロードロックチャンバLL1,LL2で行われる作業工程は、上述した5(b)での作業工程と同様に、ベント(大気開放)、被処理材の排出/投入、真空排気の各工程が行われる。
【0029】
この図6(b)の工程の後には、図5(a)の工程(搬送工程,第3搬送工程)が行われる。つまり、真空処理装置1では、上記の図5(a),図5(b),図6(a),図6(b)を繰り返されることで多数の被処理材の連続処理が行われる。
【0030】
図7、8は、真空処理装置の各チャンバでの処理のタイムチャートである。
図7は、図5(b)で示した段階での各チャンバでの処理のタイムチャートである。
すなわち、プロセスチャンバPC1,PC2では真空処理が行われている間に、ロードロックチャンバLL2,LL3で、ベント(大気開放)、被処理材の排出/投入、真空排気の4つ工程(作業工程)が行われる。
図8は、図6(b)で示した段階での各チャンバでの処理のタイムチャートである。
すなわち、プロセスチャンバPC1,PC2では真空処理が行われている間に、ロードロックチャンバLL1,LL2で、ベント(大気開放)、被処理材の排出/投入、真空排気の4つ工程(作業工程)が行われる。
【0031】
図7、8より、本実施形態に係る真空処理装置1は装置全体としての稼働率が高く効率的な設備運用が行われていることがわかる。これは、ロードロックチャンバLL2,LL3(LL1,LL2)での作業時間と、プロセスチャンバPC1,PC2では真空処理に要する時間がほぼ等しいため、これらのチャンバでの待ち時間はないことから明らかである。
なお、図7,8中の符号A,Bは、それぞれ同一のタイミングであることを示している。すなわち、図7の処理と図8の処理が繰り返し行われる。
【0032】
(第2の実施形態)
図9は、本発明の第2の実施形態に係る真空処理装置での処理工程を示す説明図である。
本実施形態に係る真空処理装置2では、図9(a),図9(b)の真空処理が繰り返し行われる。なお、図9(a)と図9(b)の間に行われるキャリアの搬送工程は図からは省略されている。
図9(b)は、図9(a)の真空処理(真空処理工程)、被処理材の排出/投入(取付け工程)が終了し、搬送工程が行われた後にプロセスチャンバPC1,PC2,PC3で真空処理が行われる工程(第2真空処理工程)である。このとき、キャリアCa1,Ca3,Ca5に保持された被処理材はそれぞれプロセスチャンバPC1,PC2,PC3で真空処理される。同時に、キャリアCa2,Ca4,Ca6から処理が終わった被処理材を取り出し、処理前の被処理材を取付ける作業(第2取付け工程)が行われる。より詳しくは、ロードロックチャンバLL2,LL3,LL4では、プロセスチャンバPC1,PC2,PC3での真空処理中に、ベント(大気開放)、被処理材の排出/投入、真空排気の4つ工程(作業工程)が行われる。
【0033】
(第3の実施形態)
図10は、本発明の第3の実施形態に係る真空処理装置での処理工程を示す説明図である。
本実施形態に係る真空処理装置3では、図10(a),図10(b),図10(c),図10(d)の真空処理が繰り返し行われる。
図10(a)と図10(b)の間(搬送工程)、図10(b)と図10(c)の間(第2搬送工程)、図10(c)と図10(d)の間(第3搬送工程)、図10(d)と図10(a)の間(第4搬送工程)、にそれぞれ行われるキャリアの搬送工程は図からは省略されている。
【0034】
図10(b)は、図10(a)の真空処理、被処理材の排出/投入(取付け工程)が終了し、搬送工程(搬送工程)が行われた後にプロセスチャンバPC1,PC2,PC3,PC4で真空処理が行われる工程である。このとき、キャリアCa1,Ca3に保持された被処理材はそれぞれプロセスチャンバPC1,PC3(第1プロセスチャンバ)で真空処理される(真空処理工程)。同時に、図10(a)にてPC1とPC3にて処理されたキャリアCa2,Ca4内の被処理材はPC2,PC4(第2プロセスチャンバ)で待機、または必要に応じて冷却などの真空処理をされる。
図10(c)は、図10(b)の真空処理が終了し、搬送工程(第2搬送工程)が行われた後にプロセスチャンバPC2,PC4で真空処理が行われる工程(第2真空処理工程)である。
【0035】
このとき、キャリアCa1,Ca3に保持された被処理材はそれぞれプロセスチャンバPC2,PC4で真空処理される。同時に、キャリアCa2,Ca4から処理が終わった被処理材を取り出し、処理前の被処理材を取付ける作業(第2取付け工程)が行われる。より詳しくは、ロードロックチャンバLL2,LL3では、プロセスチャンバPC2,PC4での真空処理中に、ベント(大気開放)、被処理材の排出/投入、真空排気の4つ工程(作業工程)が行われる。
【0036】
図10(d)は、図10(c)の真空処理、被処理材の排出/投入が終了し、搬送工程(第3搬送工程)が行われた後にプロセスチャンバPC1,PC2,PC3,PC4で真空処理が行われる工程である。このとき、キャリアCa2,Ca4に保持された被処理材はそれぞれプロセスチャンバPC2,PC4で真空処理される。同時に、図10(c)にてPC2とPC4にて処理されたキャリアCa1,Ca3内の被処理材はPC1,PC3で待機、または必要に応じて冷却などの真空処理をされる。
【0037】
つまり、Ca1の被処理材はPC1−PC2−(PC1)の順に移送され、Ca2の被処理材はPC2−PC1−(PC2)の順で移送される。同様に、Ca3の被処理材はPC3−PC4−(PC3)の順で移送され、Ca4の被処理材はPC4−PC3−(PC4)の順で移送される。すなわち、各プロセスチャンバPCで真空処理され後にロードロックチャンバLLから排出される。
【0038】
(第4の実施形態)
図11は、本発明の第4の実施形態に係る真空処理装置での処理工程を示す説明図である。
本実施形態に係る真空処理装置4では、図11(a),図11(b),図11(c)の真空処理が繰り返し行われる。
【0039】
図11(a)と図11(b)の間、図11(b)と図11(c)の間、図11(c)と図11(a)の間、にそれぞれ行われるキャリアの搬送工程は図からは省略されている。
図11(b)は、図11(a)の真空処理、被処理材の排出/投入が終了し、搬送工程が行われた後にプロセスチャンバPC1,PC2,PC3,PC4で真空処理が行われる工程である。
【0040】
このとき、図11(a)にて新しく装置へ投入された、キャリアCa1,Ca3に保持された被処理材はそれぞれプロセスチャンバPC1,PC3で真空処理される。同時に、図11(a)にてPC1とPC3にて処理されたキャリアCa2,Ca4内の被処理材はPC2,PC4で真空処理される。図11(c)は、図11(b)の真空処理が終了し、搬送工程が行われた後にプロセスチャンバPC2,PC4で真空処理が行われる工程である。
【0041】
このとき、キャリアCa1,Ca3に保持された被処理材はそれぞれプロセスチャンバPC2,PC4で真空処理される。同時に、キャリアCa2,Ca4から処理が終わった被処理材を取り出し、処理前の被処理材を取付ける作業が行われる。より詳しくは、ロードロックチャンバLL2,LL3では、プロセスチャンバPC2,PC4での真空処理中に、ベント(大気開放)、被処理材の排出/投入、真空排気の4つ工程(作業工程)が行われる。
つまりCa1,Ca2の被処理材はPC1−PC2の順で、Ca3,Ca4の被処理材はPC2−PC1の順で、それぞれ真空処理された後に排出される。
【0042】
(第5の実施形態)
図12は、本発明の第5の実施形態に係る真空処理装置での処理工程を示す説明図である。
本実施形態に係る真空処理装置5は、1つのプロセスチャンバの両側にロードロックチャンバLLを配置した3チャンバ構成の場合である。真空処理装置5では、2つのキャリアCaが交互にプロセスチャンバPCに位置することになる。
【0043】
図12(a)は、キャリアの搬送工程(搬送工程)の後に行われる工程であり、ロードロックチャンバLL1で被処理材の排出/投入(取付け工程)している間に、プロセスチャンバPCで真空処理が行われる工程(真空処理工程)である。図12(c)は、ロードロックチャンバLL2で被処理材の排出/投入(第2取付け工程)している間に、プロセスチャンバPCで真空処理が行われる工程(第2真空処理工程)である。すなわち、ロードロックチャンバLL1,LL2では、プロセスチャンバPCでの真空処理中に、ベント(大気開放)、被処理材の排出/投入、真空排気の4つ工程(作業工程)が行われる。図12(b)は、図12(a)の後、図12(c)前の間に行われるキャリアの搬送工程(第2搬送工程)である。また、図12(d)は、図12(c)の後、図12(a)前に行われるキャリアの搬送工程(第3搬送工程,搬送工程)である。
【0044】
上述した第1〜5の実施形態において、プロセスチャンバPCの数を2、4(ロードロックチャンバLLの数は4,6)とした構成例について説明したが、チャンバの数や構成は必要に応じて変更できることはもちろんである。
【0045】
プロセスチャンバPCとロードロックチャンバLLとを所定の順番で配置する構成であれば、プロセスチャンバPCの個数は任意に設定することができる。例えば、12台のプロセスチャンバPCと13台のロードロックチャンバLLから真空処理装置を構成してもよい。このようにプロセスチャンバPCとロードロックチャンバLLとを直列且つ交互に連結する構成では、ロードロックチャンバLLの数はプロセスチャンバPCよりも1つだけ多い構成となる。また、直列に連結されたチャンバ(PCまたはLL)の先頭と後尾を連結してもよい。すなわち、N個のプロセスユニットを備えるとすると、ロードロックチャンバとキャリアはそれぞれN+1個となり、搬送装置は、キャリアのうち2個を一組として同期して搬送する構成とすることができる。
【0046】
他の例としては、図10,11のように複数のプロセスチャンバPCを挟んで両側にロードロックチャンバLLを備える構成では、プロセスチャンバPCの数は任意の数とすることができる。この場合でも、複数のプロセスチャンバPCとその両側のロードロックチャンバLLとからなるユニットを任意に直列に連結することができる。
【0047】
但し、図10,11のような構成においては、連続する複数のプロセスチャンバPC(PC1とPC2のように隣り合うプロセスチャンバ)を1つのプロセスユニットと考えると、これらの真空処理装置も、プロセスユニットとロードロックチャンバLLとが直列且つ交互に連結される構成とみなすことができる。
【0048】
上述した本発明に係る真空処理装置1,2,3,4を用いることで、キャリアの数が少数であってもプロセスチャンバの稼働率の向上を図ることができる。また、本発明に係る真空処理装置は、キャリアのメンテナンス、保守などを考慮しても少ない数のキャリアで連続生産を行うことができる。従って、ランニングコストや設備費など、生産に要するコストの一層の低減を図ることができる。
【符号の説明】
【0049】
LL1,LL2,LL3,LL4 ロードロック室
PC,PC1,PC2,PC4 プロセス室
CU コンベア
RB 移載ロボット
GV ゲートバルブ
DV ドアバルブ
Ca1〜Ca6 キャリア
1,2,3,4,5 真空処理装置
5 被処理材
17 ガス供給系
19 電力供給系


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のプロセスユニットと、
前記プロセスユニットの数量よりも1つ多い数量のロードロックチャンバと、
前記プロセスユニットの数量よりも1つ以上多い数量のキャリアと、
隣り合う前記プロセスユニットと前記ロードロックチャンバとの間でそれぞれの前記キャリアを搬送する搬送装置と、を備え、
前記プロセスユニットと前記ロードロックチャンバは直列、且つ交互に配置されるように連結され、
前記ロードロックチャンバは、前記プロセスユニットと一方側で隣り合う第1ロードロックチャンバと、前記プロセスユニットと他方側で隣り合う第2ロードロックチャンバとを少なくとも含み、
前記キャリアは、前記第1ロードロックチャンバと前記プロセスユニットの間を往復する第1キャリアと、前記第2ロードロックチャンバと前記プロセスユニットの間を往復する第2キャリアとを少なくとも含み、
前記搬送装置は、前記第1キャリアと前記第2キャリアを同一方向に同期して搬送することを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
N個の前記プロセスユニットと、
N+1個の前記ロードロックチャンバと、
N+1個の前記キャリアとを備え、
前記搬送装置は、前記キャリアのうち2個を一組として同期して搬送することを特徴とする請求項1に記載の真空処理装置。
【請求項3】
前記プロセスユニットが2つ以上あるとき、
前記搬送装置は、全ての前記キャリアを同一方向に同期して搬送することを特徴とする請求項1又は2に記載の真空処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載された真空処理装置を用いた真空処理方法であって、
前記ロードロックチャンバに位置する前記キャリアに被処理材を取付ける取付け工程と、
前記取付け工程で前記被処理材が搭載された前記キャリアを隣り合う前記プロセスユニットに搬送する搬送工程と、
前記搬送工程で前記プロセスユニット内に搬送された前記キャリアに搭載された前記被処理材に真空処理を行う真空処理工程と、
前記真空処理工程後に、前記被処理材が搭載された前記キャリアを前記ロードロックチャンバに搬送する第2搬送工程と、
前記プロセスユニットと他方側で隣り合う他のロードロックチャンバに位置する他のキャリアに他の被処理材を取付ける第2取付け工程と、
前記第2取付け工程で前記他の被処理材が搭載された前記他のキャリアを前記プロセスユニットに搬送する第3搬送工程とを有し、
前記第2取付け工程は前記真空処理工程中に行われることを特徴とする真空処理方法。
【請求項5】
前記プロセスユニットは、連続した複数のプロセスチャンバからなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の真空処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載された真空処理装置を用いた真空処理方法であって、
前記ロードロックチャンバに位置する前記キャリアに被処理材を取付ける取付け工程と、
前記取付け工程で前記被処理材が搭載された前記キャリアを隣り合う第1プロセスチャンバに搬送する搬送工程と、
前記搬送工程で前記第1プロセスチャンバ内に搬送された前記キャリアに搭載された前記被処理材に真空処理を行う真空処理工程と、
前記真空処理工程で真空処理された前記被処理材が搭載された前記キャリアを隣り合う第2プロセスチャンバに搬送する第2搬送工程と、
前記第2搬送工程で前記第2プロセスチャンバ内に搬送された前記キャリアに搭載された前記被処理材に真空処理を行う第2真空処理工程と、
前記第2真空処理工程後に、前記被処理材が搭載された前記キャリアを前記第1プロセスチャンバに搬送する第3搬送工程と、
前記第2プロセスチャンバの他方側で隣り合う他のロードロックチャンバに位置する他のキャリアに他の被処理材を取付ける第2取付け工程と、
前記第2取付け工程で前記他の被処理材が搭載された前記他のキャリアを前記第2プロセスチャンバに搬送する第4搬送工程とを有し、
前記第2取付け工程は、前記第2真空処理工程中に行われることを特徴とする真空処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−202270(P2011−202270A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278803(P2010−278803)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】