説明

真空装置の動作方法

【課題】ヒートマスの大きなヒータを有する大型の真空装置のヒータの昇温時間、降温時間を短縮して、メンテナンス前後の非生産時間を短縮し、生産効率を向上させることが可能な真空装置の動作方法を提供する。
【解決手段】被処理体22を載置していない複数の搬送部11〜1nを順次加熱する。主加熱部1a,1bよりも高温に加熱された各搬送部11〜1nは、処理室1内に順次搬送される。搬送部11〜1nが、順次、主加熱部1a,1bに熱量を順次与えるので、熱エネルギーの移動により、主加熱部1a,1bにおける加熱が促進され、主加熱部1a,1bの設定温度までの昇温時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空装置の動作(運転)方法に係り、特にヒートマスの大きなヒータ(主加熱部)を有する大型の真空装置のヒータの昇温、降温動作を含む真空装置の動作(運転)方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセス等で用いられる化学気相成長(CVD)装置等の真空装置において、処理室(真空チャンバ)内に設置されたヒータを400℃〜1000℃等の設定温度(処理温度)に昇温し、処理室内に導入された被処理体をその設定温度(処理温度に加熱して処理が行われる(例えば、特許文献1参照。)。液晶表示装置の等の大型の製品(加工物)の製造等においては、被処理体を処理温度に加熱するヒータとして、プレートヒータ等のヒートマス(熱容量)の大きい構造が採用される。しかしながら、ヒートマスの大きなプレートヒータによる加熱では、ヒータ自身のヒートマスにより、メンテナンス直後に真空装置を室温(例えば25℃)状態から加熱する場合、ヒータが設定温度(定常温度)に昇温するまでに時間を要し、結果として製造プロセスにおける無駄な時間(非生産時間)の増大に繋がる。
【0003】
逆に、処理を終了した後に真空装置の処理室内のメンテナンスを行う場合には、400℃〜1000℃等の設定温度に昇温した処理室内をメンテナンス可能な温度(室温)まで冷却する必要がある(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、ヒートマスの大きな大型の真空装置においては、昇温した処理室内をメンテナンス可能な温度まで冷却するには時間を要し、メンテナンスまで含めた製造プロセスにおける非生産時間の増大に繋がる。
【特許文献1】特開2003−253446号公報
【特許文献2】特開2001−335939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ヒートマスの大きなヒータを有する大型の真空装置のヒータの昇温時間、降温時間を短縮して、メンテナンス前後の非生産時間を短縮し、生産効率を向上させることが可能な真空装置の動作方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の一態様によれば、(イ)室温状態から主加熱部の昇温を開始し、主加熱部の温度よりも高温に加熱された第1の搬送部を主加熱部が配置された処理室内に搬送し、第1の搬送部の熱を主加熱部に移動した後処理室の外部に搬出し、主加熱部の昇温速度を加速するステップと、(ロ)主加熱部が設定温度に到達後、被処理体を第2の搬送部に載置するステップと、(ハ)第2の搬送部を処理室内に搬送し、被処理体を設定温度において処理するステップとを含む真空装置の動作方法が提供される。
【0006】
本願発明の他の態様によれば、(イ)被処理体の設定温度における処理を、処理室内に配置された主加熱部で加熱して実施するステップと、(ロ)被処理体を処理室から排出するステップと、(ハ)被処理体を処理室から排出後、主加熱部よりも低温の搬送部を処理室内に搬送して、主加熱部の熱を搬送部に移動し、主加熱部の降温速度を加速するステップとを含む真空装置の動作方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ヒートマスの大きなヒータを有する大型の真空装置のヒータの昇温時間、降温時間を短縮して、メンテナンス前後の非生産時間を短縮し、生産効率を向上させることが可能な真空装置の動作方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0009】
又、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0010】
(真空装置)
本発明の実施の形態に係る真空装置は、図1に示すように、主加熱部(ヒータ)1a,1bを有し、複数の被処理体22を順次連続的に処理可能な処理室(真空チャンバ)1と、処理室1の手前にゲートバルブ31を介して接続されたロードロック室2と、処理室1の出口側にゲートバルブ32を介して接続されたアンロードロック室3と、複数の被処理体22をそれぞれ載置し、処理室1に順次、循環的に搬送される複数の搬送部(被処理体搬送トレイ)11,12,13,14,15,16,17,18,・・・,1nと、ロードロック室2の内部に配置された予備加熱部(ヒータ)2a,2bとを備えるインライン式の真空装置である。
【0011】
更に、アンロードロック室3の出口側にはゲートバルブ34を介してエレベータコンベア4が接続され、エレベータコンベア4には、ロードロック室2側に戻るリターンコンベア5がその下部に接続されている。そして、リターンコンベア5のロードロック室2側にはエレベータコンベア6が接続され、エレベータコンベア6の上部にはゲートバルブ33を介してロードロック室2が接続されている。ロードロック室2及びアンロードロック室3は、処理室1を大気に開放しないよう、処理室1とはゲートバルブ31,32でそれぞれ仕切られ、エレベータコンベア6,4とはゲートバルブ33,34でそれぞれ仕切られている。
【0012】
エレベータコンベア4,6のそれぞれの上部には被処理体22を載置した搬送部11〜1nを出し入れするためのゲートバルブ7,8がそれぞれ設けられている。図示を省略しているが、処理室1にはターボ分子ポンプ、クライオポンプ等の真空ポンプが接続され、ロードロック室2及びアンロードロック室3にはターボ分子ポンプやメカニカルポンプが接続されている。リターンコンベア5の一部には、ターボ分子ポンプやメカニカルポンプ等の真空ポンプが接続され、エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6を真空排気できるようにしても良く、エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6は大気圧で動作させても良い(以下においては、エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6が真空排気できるようになっている場合について説明するが、この構造に限定される必要はない。)。
【0013】
エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6が真空排気できる場合は、ゲートバルプ33,34は省略可能であるが、その場合はロードロック室2及びアンロードロック室3は、エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6と同時に真空排気される。エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6を真空排気できる場合であっても、ゲートバルブ33,34がある方がロードロック室2、アンロードロック室3、エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6の真空排気時間が短縮できる。エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6は大気圧で動作さる場合は、ゲートバルプ33,34は省略できない。エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6を真空排気できる場合であっても、更に、リターンコンベア5の下部とエレベータコンベア4との間、リターンコンベア5の下部とエレベータコンベア6との間にゲートバルブがそれぞれあっても良いが、その場合はエレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6をそれぞれ真空排気するポンプが必要となるので装置構成が複雑になる。
【0014】
本発明の実施の形態に係る真空装置としては、例えば、シリコン酸化膜(SiO2膜)、燐ガラス(PSG)膜、硼素ガラス(BSG)膜、硼素燐ガラス(BPSG)膜、シリコン窒化膜(Si34膜)、ポリシリコン膜等を成膜する化学気相成長(CVD)装置等が主加熱部(ヒータ)1a,1bによる被処理体22の熱処理を伴う製造装置の例として、挙げられる。
【0015】
被処理体22としては、半導体装置や太陽電池等を製造する場合にはシリコン(Si)等の半導体基板等が使用可能である。又、液晶表示装置を製造する場合にはガラス基板等が、光記録媒体を製造する場合にはポリカーボネイト等の樹脂基板等が被処理体22として用いられても良い。勿論これらのガラス基板や樹脂基板の上には工程の進行に応じて種々の薄膜が形成されうる。
【0016】
図示を省略するが、上記のCVD装置の例では、処理室1内に成膜ガスやパージガス等の種々のガスを供給するためのガス供給部等のCVDを行うために必要な部材が処理室1に備えられている。又、例えば、処理室1が分子線エピタキシャル(MBE)装置ならばクヌーセンセルが、スパッタリング装置ならば放電電極が、真空蒸着装置ならば電子ビーム(EB)装置等が備えられることは勿論である。又、処理室1には、主加熱部1a,1b及び処理室1の温度を検出する温度センサが取り付けられている。
【0017】
本発明の実施の形態に係る真空装置においては、主加熱部1a,1bとしては、例えばヒートマスの大きい大型のプレートヒータ等を使用する場合に好適である。予備加熱部2a,2bは、処理室1に連続的に接続されたロードロック室2内に配置されている。予備加熱部2a,2bとしては、ランプヒータ等が使用可能である。予備加熱部2a,2bは、各搬送部11〜1nを処理室1に搬入する前に予備加熱する。
【0018】
各搬送部(被処理体搬送トレイ)11〜1nとしては、例えば、カーボンからなり、大きなヒートマスを有する大型の構造の場合に好適である。各搬送部(被処理体搬送トレイ)11〜1nの表面は、例えば炭化珪素(SiC)等の被膜でコーティングされていても構わない。図1では便宜上各搬送部11〜1nに1つの被処理体22がそれぞれ載置された場合が図示されているが、実際には各搬送部11〜1nの被処理体22を載置する面は例えば、1.5m×1.5m程度のサイズ、若しくはこれ以上の大型のサイズを有する場合が本発明の実施の形態に係る真空装置として好適である。この場合、被処理体22として直径150mm程度のウェハが25個程度、同時にそれぞれの搬送部11〜1nに載置可能となる。各搬送部11〜1nのそれぞれは回転ローラ等の移動機構21により水平移動される。移動機構21による水平移動及びエレベータコンベア4,6による上下移動により、各搬送部11〜1nは、ロードロック室2、処理室1、アンロードロック室3、エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6内を循環して移動することが可能である。移動機構21は図1では2つのローラが示されているが、3つ以上のローラを備えるようにしても構わないことは勿論である。
【0019】
(真空装置の動作方法)
次に、本発明の実施の形態に係る真空装置の動作方法を、図2のフローチャートを参照しながら説明する(上述したように、以下においては、エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6が真空排気できるようになっている場合について説明するが、これに限定される必要はない。)。
【0020】
(イ)まず、本発明の実施の形態に係る真空装置がステップS10のメンテナンス終了直後であり、本発明の実施の形態に係る真空装置全体が室温状態にあるとする。ステップS11において、主加熱部1a,1bの昇温プロセスを開始する。成膜プロセス開始前には大きなヒートマス(熱容量)を有した主加熱部1a,1bは低温(室温)状態であり、主加熱部1a,1bに入電して予定しているCVD等の処理に必要な設定温度(例えば、600〜800℃程度)までへの昇温プロセスを開始する。メンテナンス直後においては、図3に示すように、被処理体22を載置していない複数の搬送部(第1の搬送部)11〜1nを用意する。この各搬送部11〜1nをロードロック室2内にゲートバルブ8,31〜34を一定のタイムシーケンスで開閉して一定時間毎に順次搬入し、予備加熱部2a,2bを用いて順次加熱する。特に主加熱部1a,1bの昇温プロセス中は、ゲートバルブ33,31,32,34は、開けたままのモードとしておいても良い。搬送部11〜1nは、主加熱部1a,1bよりもヒートマス(熱容量)が小さいので、主加熱部1a,1bよりも早く高温になる。搬送部11〜1nは主加熱部1a,1bの設定温度(通常のCVD等の処理に必要な設定温度)よりも高温に加熱してもよい。したがって、主加熱部1a,1bよりも高温に加熱された各搬送部11〜1nは、開状態のゲートバルブ31を介して処理室1内に順次搬送される。このとき、主加熱部1a,1bよりも高温に加熱された搬送部11〜1nを順次主加熱部1aと主加熱部1bの間に搬送することにより主加熱部1a,1bに熱量を順次与えるので、熱エネルギーの移動により、主加熱部1a,1bにおける加熱が促進され、結果として主加熱部1a,1bの設定温度までの昇温時間を短縮することができる。もし、1回のサイクルで主加熱部1a,1bが設定温度に達しなければ、処理室1からアンロードロック室3を介して搬出された搬送部11〜1nを再度加熱して、順次、ロードロック室2を介して処理室1に再搬送するようにすれば良い。更に、処理室1から搬出された搬送部11〜1nを再度加熱して、順次処理室1に再搬送するサイクルを、主加熱部1a,1bの温度が搬送部11〜1nの温度に等しくなるまで繰り返すようにしても良い。このように、処理室1に搬送するサイクルを繰り返す場合は、アンロードロック室3に予備加熱部2a,2bを備えるようにしてもよい。更に、エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6に予備加熱部2a,2bを備えるようにしても良い。
【0021】
(ロ)主加熱部1a,1bの温度が、予定しているCVD等の処理に必要な設定温度(プロセス温度)に達したら、ステップS12において、予定しているCVD等の定常状態の処理を開始する。まず、すべてのゲートバルブ33,31,32,34を閉じ、処理室1、ロードロック室2及びアンロードロック室3を真空排気する。図4に示すように、ゲートバルブ8を開け被処理体22を載置した搬送部(第2の搬送部)11〜1nのいずれか(ここでは、仮に「搬送部13」とする。)をエレベータコンベア6の上部に投入する。エレベータコンベア6の上部において、搬送部13の上に被処理体22を載置する処理をしてもよい(この場合はエレベータコンベア6の天井部にゲートバルブ8を設けた構造でも良い。)。ゲートバルブ8を閉じ、エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6を真空排気後、被処理体22が載置された搬送部13は、ゲートバルブ33を介してロードロック室2内に搬入され、ロードロック室2内が真空排気される。このとき、ゲートバルブ8が開けられ、被処理体22を載置した搬送部12がエレベータコンベア6の上部に投入される。ロードロック室2内が所定圧力となったら、ゲートバルブ31を開けて処理室1内に搬送部13が搬入される。このとき、ゲートバルブ33が開けられ、搬送部12がロードロック室2の内部に移動する。更に、ゲートバルブ8が開けられ、被処理体22が載置された搬送部11がエレベータコンベア6の上部から投入される。処理室1内が所定の処理圧力まで真空排気されたら、処理室1内では被処理体22が主加熱部1a,1bにより所定温度に保持されてCVD等の成膜プロセスが行われる。CVD等の成膜プロセスが終了したら、成膜された被処理体22が載置された搬送部13は、処理室1からゲートバルブ32を介して予め真空排気されたアンロードロック室3に搬入される。このとき、ゲートバルブ31を介して搬送部12が処理室1に移動し、ゲートバルブ33を介して搬送部11がロードロック室2に移動する。このときゲートバルブ8を介してエレベータコンベア6に位置する搬送部1nに被処理体22が載置される。更に、搬送部12の処理室1内における処理が終了したら、ゲートバルブ34を介して搬送部13がエレベータコンベア4に搬入され、搬送部12がアンロードロック室3に、搬送部11が処理室1に、搬送部1nがロードロック室2に搬入される。被処理体22は、エレベータコンベア4、リターンコンベア5及びエレベータコンベア6が大気圧に戻された後、ゲートバルブ7を介して外部へ取り出される。このときゲートバルブ8を介してエレベータコンベア6に位置する搬送部(図示を省略しているが、ここでは、これを「搬送部1(n−1)」であるとする。)に被処理体22が載置される。空の搬送部11〜1nは、エレベータコンベア4を下降し、リターンコンベア5を介してエレベータコンベア6に戻る。こうして定常状態において処理室1における複数の被処理体22に対する連続的な成膜処理を順次繰り返し、所定のロット数の成膜処理を行う。
【0022】
(ハ)定常状態における所定のロット数の処理が終了し、本発明の実施の形態に係る真空装置のメンテナンスの時期となったら、ステップS13において、主加熱部1a,1b及び予備加熱部2a,2bの通電を停止し、メンテナンスのための冷却プロセスを開始する。図1に示すように、ゲートバルブ33,31,32,34を開状態のモードにして、被処理体22が載置されていない低温(例えば室温25℃)の搬送部(第3の搬送部)11〜1nを処理室1に順次搬送する。一定時間毎に主加熱部1a,1bよりも低温の各搬送部11〜1nが順次処理室1へ搬入される。このとき、主加熱部1a,1bよりも低温の搬送部11〜1nへ処理室1内の熱が搬送部11〜1nに移動し、ヒートマスの大きな主加熱部1a,1b及び処理室1の冷却を促進することができ、結果として処理室1内の冷却時間を短縮することができる。もし、1回のサイクルで主加熱部1a,1b及び処理室1がメンテナンス可能な温度(例えば室温25℃)まで降温しなければ、処理室1からアンロードロック室3を介して搬出され室温で冷却された搬送部11〜1nを、順次、ロードロック室2を介して処理室1に再搬送すればよい。更に、処理室1から搬出され室温で冷却された搬送部11〜1nを順次処理室1に搬送するサイクルを、主加熱部1a,1b及び処理室1がメンテナンス可能な温度に達するまで繰り返しても良い。又、搬送部11〜1nは、室温よりも更に低温に冷却しても良い。又、この冷却プロセスにおいては、ロードロック室2、処理室1及びアンロードロック室3に窒素ガス等の不活性ガスを冷却ガスとして流しながら行っても良い。
【0023】
(ニ)ステップS14において、処理室1内が所定温度(例えば室温)まで冷却されたら、処理室1のメンテナンス(クリーニング)を行う。
【0024】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、ステップS11のメンテナンス直後から定常状態における設定温度までの昇温プロセスにおいて、主加熱部1a,1bよりも高温の各搬送部11〜1nによりヒートマスの大きな主加熱部1a,1bに熱量を与えることができる。このため、ヒートマスの大きな大型の装置の主加熱部1a,1bのメンテナンス直後の昇温時間を短縮でき、生産効率を向上させることが可能となる。更に、各搬送部11〜1nが、被処理体22を搬送する機能に加え、主加熱部1a,1bの昇温を補助する機能を兼ねているので、メンテナンス後の立ち上げ時に、主加熱部1a,1bを昇温させるための他の補助ヒータ等を別途設ける必要がなく、簡易な機構で昇温時間を短縮可能となる。
【0025】
又、ステップS12の定常状態における成膜プロセスにおいて、予備加熱部2a,2bにより処理中の主加熱部1a,1bの温度制御性を向上させる効果もあり、成膜プロセスを安定化することができる。
【0026】
又、ステップS13のメンテナンスのための冷却プロセスにおいて、主加熱部1a,1bよりも低温の各搬送部11〜1nによりヒートマスの大きな大型の主加熱部1a,1b熱を搬送部11〜1nに移動させ、処理室1内を冷却することができる。このため、定常状態の温度装置停止から処理室1がメンテナンス可能な温度に到達するまでの時間を短縮可能となる。よって、定常状態からメンテナンス開始までの時間を短縮でき、生産効率を向上させることができる。更に、搬送部11〜1nが、被処理体22を搬送する機能に加え、処理室1の冷却を補助する機能を兼ねているので、チラーユニット等の冷却機構を別途設ける必要がなく、簡易な機構で冷却時間を短縮可能となる。更に、各搬送部11〜1nを循環させることにより処理室1内に残存したパーティクルを外部へ搬出することも可能となる。
【0027】
なお、上記の説明で用いた「第1の搬送部」、「第2の搬送部」、「第3の搬送部」は便宜上の呼び方であって、現実には第1〜第3の搬送部は同一の搬送部11〜1nで構わない。ただし、昇温や冷却を促進するためには、第1及び第3の搬送部を第2の搬送部11〜1nよりも大きなヒートマスを有するような構成にしても構わない。
【0028】
(その他の実施の形態)
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0029】
例えば、本発明の実施の形態に係る真空装置は、図4に示すように、図1に示した予備加熱部2a,2bがない場合であっても、図2に示したステップS13の冷却プロセスにおいて、被処理体22が載置されていない主加熱部1a,1bよりも低温の各搬送部11〜1nを処理室1に順次搬送することにより、処理室1内の熱が奪われ、処理室1内の冷却を促進することができる。
【0030】
又、本発明の実施の形態では1つの処理室1を示したが、処理室1の数は特に限定されない。例えば図5に示すように処理室1にゲートバルブ35を介して処理室1xを連続して配置していても良い(図5では、処理室1と処理室1xの2室が連続しているが、3室以上連続配置されていても良い。)。複数の処理室1,1x,…が連続している場合であっても、搬送部11〜1nの温度が処理室1内の主加熱部1a,1b及び処理室1x内の主加熱部1c,1dの温度よりも高温である限り、主加熱部1a,1b,1c,1dの加熱を促進することができる。又、複数の処理室1,1x,…が連続している場合であっても、搬送部11〜1nの温度が主加熱部1a,1b,1c,1dの温度よりも低温である限り、主加熱部1a,1b,1c,1dの冷却を促進することができる。図示を省略するが、処理室1xには処理室1と同様に真空ポンプやガス供給部等のCVDを行うために必要な部材が備えられている。この場合、複数(2つ)の処理室1,1x内に複数(2つ)の搬送部11〜1nにより複数(2つ)の被処理体22を同時に搬入し、複数(2つ)の被処理体22に対して同様の成膜プロセスを一括に行っても良い。若しくは、処理室1、処理室1xと順に連続(積層)する異なる種類の多層膜の成膜プロセスを行っても良い。又、ロードロック室2の手前に、予備加熱部2a,2bと同様の予備加熱部やその予備加熱部を有するロードロック室を更に配置していても良い。
【0031】
又、真空装置としては、CVD装置の他にも、例えば、SiO2膜を形成する熱酸化装置、イオン注入装置、不純物拡散装置、PSG膜、BSG膜、BPSG膜等をリフロー(メルト)する熱真空装置、CVD酸化膜等のデンシファイする熱真空装置、シリサイド膜等を形成する熱真空装置等、高温に加熱するヒータ等を有する真空装置であれば、本発明は適用可能である。
【0032】
又、予備加熱部2a,2bをロードロック室2内に設置した場合を説明したが、予備加熱部2a,2bの設置場所は特に限定されず、予備加熱部2a,2bは、各搬送部11〜1nが処理室1内へ搬入される前に各搬送部11〜1nを予備加熱可能な場所に設置すれば良い。又、複数の搬送部11〜1nの個数は特に限定されない。
【0033】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】被処理体が搬送部(第2の搬送部)に載置されている場合の、本発明の実施の形態に係る真空装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る真空装置の動作方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る被処理体が搬送部に載置されていない場合の真空装置の一例を示す概略図である。
【図4】本発明のその他の実施の形態に係るロードロック室に予備加熱部がない場合の真空装置の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る複数の真空室がある場合の真空装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0035】
1,1x…処理室
1a,1b,1c,1d…主加熱部(ヒータ)
2…ロードロック室
2a,2b…予備加熱部(ヒータ)
3…アンロードロック室
4,6…エレベータコンベア
5…リターンコンベア
7,8,31,32,33,34,35…ゲートバルブ
11,12,13,14,15,16,17,18,…,1n…搬送部(被処理体搬送トレイ)
21…移動機構
22…被処理体(基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温状態から主加熱部の昇温を開始し、前記主加熱部の温度よりも高温に加熱された第1の搬送部を前記主加熱部が配置された処理室内に搬送し、前記第1の搬送部の熱を前記主加熱部に移動した後、前記処理室の外部に搬出し、前記主加熱部の昇温速度を加速するステップと、
前記主加熱部が前記設定温度に到達後、被処理体を第2の搬送部に載置するステップと、
前記第2の搬送部を前記処理室内に搬送し、前記被処理体を前記設定温度において処理するステップ
とを含むことを特徴とする真空装置の動作方法。
【請求項2】
前記主加熱部の昇温を開始する前に、前記処理室のメンテナンスを行うステップを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の真空装置の動作方法。
【請求項3】
前記被処理体の前記設定温度における処理が終了後、前記主加熱部の降温を開始し、前記主加熱部よりも低温の第3の搬送部を前記処理室内に搬送して、前記主加熱部の熱を前記第3の搬送部に移動し、前記主加熱部の降温速度を加速するステップと、
前記主加熱部がメンテナンスのための温度に到達後、前記処理室のメンテナンスを行うステップ
とを更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の真空装置の動作方法。
【請求項4】
前記処理室に連続的に接続されたロードロック室の予備加熱部により前記第1の搬送部を加熱することを特徴とする請求項1又は2に記載の真空装置の動作方法。
【請求項5】
前記昇温速度を加速するステップは、複数個の前記第1の搬送部を加熱して前記処理室内に順次搬送することにより連続的になされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の真空装置の動作方法。
【請求項6】
前記昇温速度を加速するステップは、前記処理室から搬出された複数個の前記第1の搬送部を順次再加熱し、再度前記処理室内に順次搬送することを特徴とする請求項5に記載の真空装置の動作方法。
【請求項7】
前記第1の搬送部を順次再加熱し、再度前記処理室内に順次搬送するサイクルを繰り返すことを特徴とする請求項5に記載の真空装置の動作方法。
【請求項8】
前記主加熱部の降温速度を加速するステップは、前記被処理体が載置されていず、前記主加熱部よりも低温の複数の前記第3の搬送部を前記処理室内に順次搬送することを特徴とする請求項3に記載の真空装置の動作方法。
【請求項9】
複数個の前記第3の搬送部を前記処理室から順次搬出して冷却し、再度前記処理室内に順次搬送することを特徴とする請求項8に記載の真空装置の動作方法。
【請求項10】
前記第3の搬送部を順次冷却し、再度前記処理室内に順次搬送するサイクルを繰り返すことを特徴とする請求項9に記載の真空装置の動作方法。
【請求項11】
被処理体の設定温度における処理を、処理室内に配置された主加熱部で加熱して実施するステップと、
前記被処理体を前記処理室から排出するステップと、
前記被処理体を前記処理室から排出後、前記主加熱部よりも低温の搬送部を前記処理室内に搬送して、前記主加熱部の熱を前記搬送部に移動し、前記主加熱部の降温速度を加速するステップ、
とを含むことを特徴とする真空装置の動作方法。
【請求項12】
前記主加熱部の温度がメンテナンスのための温度に到達後、前記処理室のメンテナンスを行うステップを、更に含むことを特徴とする請求項11に記載の真空装置の動作方法。
【請求項13】
前記主加熱部の降温速度を加速するステップは、前記主加熱部よりも低温の複数の前記搬送部を前記処理室内に順次搬送することを特徴とする請求項11に記載の真空装置の動作方法。
【請求項14】
複数個の前記搬送部を前記処理室から順次搬出して冷却し、再度前記処理室内に順次搬送することを特徴とする請求項13に記載の真空装置の動作方法。
【請求項15】
前記搬送部を順次冷却し、再度前記処理室内に順次搬送するサイクルを繰り返すことを特徴とする請求項14に記載の真空装置の動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−280835(P2009−280835A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131118(P2008−131118)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】