説明

磁気トンネル接合素子及びその製造方法

【課題】 イオンミリングを適用することなく、書込み電流の増加やリーク電流の増加を抑制することができる技術が望まれている。
【解決手段】 基板の上に磁化固定層が形成されている。磁化固定層の上に絶縁膜が形成され、絶縁膜を貫通する溝部が形成されている。溝部の底面にトンネル絶縁膜が形成されている。溝部の底面の上に、前記トンネル絶縁膜を介して第1の磁化自由層が形成されている。絶縁膜の上に、第1の磁化自由層と同一の磁性材料で形成された第2の磁化自由層が配置されている。溝部の側面に、第1の磁化自由層から第2の磁化自由層まで到達し、第1の磁化自由層を形成する磁性材料の酸化物で形成された非磁性膜が配置されている。第1の磁化自由層、非磁性膜、及び第2の磁化自由層の上に、第1の磁化自由層及び第2の磁化自由層に電気的に接続された上部電極が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁化固定層と磁化自由層との間にトンネル絶縁膜を挟んだ磁気トンネル接合素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性磁気記憶装置に磁気トンネル接合(MTJ)が用いられる。MTJを構成する積層膜(以下、MTJ積層膜という。)は遷移金属を含むため、化学的にドライエッチングすることが困難である。このため、MTJ積層膜のパターニングに、イオンミリングが用いられる。イオンミリングを適用すると、パターニングされたMTJ積層膜の側面が傾斜してしまうため、高精度の寸法制御が困難である。また、MTJ積層膜の側面にリスパッタされた金属原子が付着し、上部電極と下部電極との短絡故障が生じやすい。イオンミリングを適用しないでMTJ積層膜をパターニングする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−299724号公報
【特許文献2】特開2001−284679号公報
【特許文献3】特開2001−168418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
絶縁膜に形成した溝部内にMTJ積層膜を堆積させることにより、イオンミリングを適用することなく、パターニングされたMTJ積層膜を形成することができる。この方法では、磁化自由層が溝部の側面にも付着する。このため、磁化自由層の体積が大きくなり、書込み電流を小さくすることが困難になる。溝部の開口部に庇を形成しておくことにより、側面に磁化自由層等が付着することを防止できる。ところが、この方法では、磁化自由層やトンネル絶縁膜の側面が成膜中の雰囲気や大気に露出してしまう。このため、側面への異物の付着等によるリーク電流の増加が懸念される。
【0005】
イオンミリングを適用することなく、書込み電流の増加やリーク電流の増加を抑制することができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
基板の上に形成された磁化固定層と、
前記磁化固定層の上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜を貫通する溝部と、
前記溝部の底面に形成されたトンネル絶縁膜と、
前記溝部の底面の上に、前記トンネル絶縁膜を介して形成された第1の磁化自由層と、
前記絶縁膜の上に形成され、前記第1の磁化自由層と同一の磁性材料で形成された第2の磁化自由層と、
前記溝部の側面に形成され、前記第1の磁化自由層から前記第2の磁化自由層まで到達し、前記第1の磁化自由層を形成する磁性材料の酸化物で形成された非磁性膜と、
前記第1の磁化自由層、前記非磁性膜、及び前記第2の磁化自由層の上に配置され、前記第1の磁化自由層及び前記第2の磁化自由層に電気的に接続された上部電極と
を有する磁気トンネル接合素子が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると、
基板の上に、磁化固定層を形成する工程と、
前記磁化固定層の上に、絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜に、該絶縁膜の底面まで達する溝部を形成する工程と、
前記溝部の底面と側面、及び前記絶縁膜の上に、トンネル絶縁膜を形成する工程と、
前記トンネル絶縁膜の上に、酸化されることによって非磁性になる材料からなる磁化自由層を形成する工程と、
前記磁化自由層の上に、上部電極用導電膜を形成する工程と、
前記磁化自由層のうち、前記溝部の側面に沿う部分を酸化する工程と
を有する磁気トンネル接合素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
溝部内に第1の磁化自由層を配置するため、磁化自由層をイオンミリング等によってパターニングすることなく、所望の領域に第1の磁化自由層を配置することができる。第1の磁化自由層と第2の磁化自由層とが非磁性膜で接続されるため、溝部の側面に形成された強磁性膜によって、第1の磁化自由層と第2の磁化自由層と接続される場合に比べて、書込み電流の増加を抑制することができる。また、MTJ素子として機能する部分のトンネル絶縁膜や磁化自由層の端面が露出しないため、露出した端面に起因するリーク電流の増加を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】(1A)は、実施例によるスピン注入型磁気記憶装置の概略図であり、(1B)は低抵抗状態の磁化の向きを示すMRJ素子の断面図であり、(1C)は高抵抗状態の磁化の向きを示すMRJ素子の断面図である。
【図2−1】(2A)〜(2B)は、実施例1による磁気トンネル接合素子の製造方法の製造途中段階における素子の断面図である。
【図2−2】(2C)〜(2D)は、実施例1による磁気トンネル接合素子の製造方法の製造途中段階における素子の断面図である。
【図2−3】(2E)〜(2F)は、実施例1による磁気トンネル接合素子の製造方法の製造途中段階における素子の断面図である。
【図2−4】(2G)〜(2H)は、実施例1による磁気トンネル接合素子の製造方法の製造途中段階における素子の断面図である。
【図2−5】(2I)〜(2J)は、実施例1による磁気トンネル接合素子の製造方法の製造途中段階における素子の断面図である。
【図2−6】(2K)〜(2L)は、実施例1による磁気トンネル接合素子の製造方法の製造途中段階における素子の断面図である。
【図2−7】(2M)は、実施例1による磁気トンネル接合素子の断面図である。
【図3−1】(3A)〜(3B)は、実施例2による磁気トンネル接合素子の製造方法の製造途中段階における素子の断面図である。
【図3−2】(3C)は、実施例2による磁気トンネル接合素子の製造方法の製造途中段階における素子の断面図であり、(3D)は、実施例2による磁気トンネル接合素子の断面図である。
【図4】(4A)は、実施例3による磁気トンネル接合素子の製造方法の製造途中段階における素子の断面図であり、(4B)は、実施例3による磁気トンネル接合素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1Aに、実施例によるスピン注入型磁気記憶装置の1つのセルの概略図を示す。1つのメモリセルは、1つのトランジスタ10及び1つのMTJ素子11を含む。MTJ素子11は、トンネル絶縁膜11Bを、磁化固定層(ピンド層)11Pと磁化自由層(フリー層)11Fとで挟んだ積層構造を有する。トランジスタ10のゲート電極がワード線12に接続され、ソースがソース線13に接続されている。トランジスタ10のドレインは、MTJ素子11を介してビット線14に接続される。制御回路15が、書込みまたは読出しを行うべきセルに対応するワード線12、ソース線13、及びビット線14に、書込みまたは読出し用の信号を供給する。
【0011】
図1Bに、MTJ素子11が低抵抗状態のときの磁化方向を示す。磁化固定層11Pの磁化方向と、磁化自由層11Fの磁化方向とが平行になっている。
【0012】
図1Cに、MTJ素子11が高抵抗状態のときの磁化方向を示す。磁化固定層11Pの磁化方向と、磁化自由層11Fの磁化方向とが反平行になっている。
【0013】
以下、書込み方法について説明する。MTJ素子11を低抵抗状態にするには、ビット線14からソース線13に書き込み電流を流す。このとき、磁化固定層11Pの磁化と同じ向きにスピン偏極した電子が、磁化固定層11Pから磁化自由層11Fに輸送される。磁化自由層11Fに輸送された電子により、磁化自由層11Fの磁化の向きが、磁化固定層11Pの磁化の向きと平行になる。これにより、MTJ素子11は、図1Bに示した低抵抗状態になる。
【0014】
MTJ素子11を高抵抗状態にするには、ソース線13からビット線14に書き込み電流を流す。このとき、磁化自由層11Fから磁化固定層11Pに電子が輸送される。磁化固定層11Pの磁化の方向と反対向きにスピン偏極した電子は、反射されて磁化自由層11Fに戻る。磁化自由層11Fに戻った電子により、磁化自由層11Fの磁化の向きが磁化固定層11Pの磁化の向きと反平行になる。これにより、MTJ素子11は、図1Cに示した高抵抗状態になる。
【0015】
次に、読出し方法について説明する。ソース線13とビット線14との間に読出し電圧を印加する。MTJ素子11に、その抵抗に応じた電流が流れる。この電流の大きさにより、低抵抗状態か高抵抗状態かを判定することができる。読出し電流の大きさは、磁化自由層11Fの磁化の向きが変化しない程度にされている。
【0016】
なお、以下に説明する実施例は、図1Aに示した1Tr−1MTJ型メモリセルのみならず、1Tr−2MTJ型メモリセルにも適用することができる。さらに、スピン注入型磁気記憶装置のみではなく、電流磁場書き込み方式の磁気記憶装置にも適用することができる。
【0017】
[実施例1]
図2A〜図2Mを参照して、実施例1によるMTJ素子の製造方法について説明する。
【0018】
図2Aに示すように、シリコン等の基板20の表面に画定され活性領域内にMOSトランジスタ21が形成されている。基板20の上に、MOSトランジスタ21を覆うように層間絶縁膜22を形成する。層間絶縁膜22の上に、多層配線層25を形成する。多層配線層25の最上層の層間絶縁膜26は、例えば酸化シリコン膜26Aと炭化シリコン膜26Bとの2層構造を有する。層間絶縁膜26に、タングステン(W)等の導電プラグ27が埋め込まれている。導電プラグ27は、下層の配線及び導電プラグを介してMOSトランジスタ21のドレインに接続されている。
【0019】
図2Bに示すように、層間絶縁膜26の上に、下部電極30、反強磁性層31、及び磁化固定層32を順番に堆積させる。図2B〜図2Mでは、層間絶縁膜26よりも下方の構造の記載を省略している。
【0020】
下部電極30には、例えばTa等の導電材料が用いられ、その厚さは、例えば30nmである。反強磁性層31には、例えばPtMn等の反強磁性材料が用いられ、その厚さは、例えば15nmである。磁化固定層32には、例えばCoFeB等の強磁性材料が用いられ、その厚さは、例えば3nmである。これらの膜の堆積には、例えばスパッタリングが適用される。磁化固定層32は、反強磁性層31及び下部電極30を介して、導電プラグ27に電気的に接続される。
【0021】
磁化固定層32の上に絶縁膜35及びハードマスク膜36を形成する。絶縁膜35には、例えば窒化シリコンが用いられ、その厚さは、例えば20nmである。ハードマスク膜36には、例えば酸化シリコンが用いられ、その厚さは、例えば30nmである。絶縁膜35及びハードマスク膜36の成膜には、例えば化学気相成長(CVD)が適用される。
【0022】
ハードマスク膜36の上に、レジストパターン37を形成する。レジストパターン37には、導電プラグ27から面内方向にややずれた位置に開口が形成されている。この開口の平面形状は、例えば短辺及び長辺の長さが、それぞれ60nm及び120nmの長方形である。
【0023】
図2Cに示すように、レジストパターン37をエッチングマスクとして、ハードマスク膜36をエッチングし、開口を形成する。ハードマスク膜36のエッチングには、例えばCFとCHFとの混合ガスを用いたドライエッチングが適用される。ハードマスク膜36に開口を形成した後、レジストパターン37をアッシングして除去する。
【0024】
図2Dに示すように、ハードマスク膜36をエッチングマスクとして、絶縁膜35をエッチングし、絶縁膜35の底面まで達する溝部35Aを形成する。溝部35Aの平面形状は、ハードマスク膜36に形成された開口の平面形状を反映した長方形になる。なお、溝部35Aの平面形状は、正方形や、その他の形状であってもよい。絶縁膜35のエッチングには、例えばCFを用いたドライエッチングが適用される。平面視において、溝部35Aは導電プラグ27と重ならない位置に配置される。
【0025】
図2Eに示すように、希フッ酸を用いてハードマスク膜36(図2D)を除去する。絶縁膜36に形成された溝部35Aの底面には、磁化固定層32が露出している。
【0026】
図2Fに示すように、溝部35Aの底面と側面、及び絶縁膜35の上に、トンネル絶縁膜40を形成する。トンネル絶縁膜40には、例えば酸化マグネシウム(MgO)が用いられ、その厚さは、例えば1nmである。トンネル絶縁膜40の成膜には、例えばスパッタリングが適用される。スパッタリングにより形成されたトンネル絶縁膜40は、溝部35Aの側面に沿う部分が、平坦面上の部分よりも薄くなる。
【0027】
トンネル絶縁膜40の上に、磁化自由層41を形成する。磁化自由層41には、CoFeB等の強磁性材料が用いられる。磁化自由層41の成膜には、例えばスパッタリングが適用される。溝部35Aの底面、及び絶縁膜35の上面の上、すなわち平坦面上に堆積した磁化自由層41の厚さは、例えば2.5nmである。溝部35Aの側面の上に堆積した磁化自由層41は、平坦面上の磁化自由層41よりも薄い。磁化自由層41を形成する強磁性材料は、酸化されることによって強磁性を失い、非磁性になる。
【0028】
磁化自由層41の上に、上部電極用導電膜42を形成する。上部電極用導電膜42には、酸化されても導電性を維持する材料、例えばルテニウム(Ru)が用いられる。上部電極用導電膜42の成膜には、例えばスパッタリングが適用される。平坦面上における上部電極用導電膜42の厚さは、例えば10nmである。上部電極用導電膜42のうち、溝部35Aの側面に沿う部分は、平坦面上の上部電極用導電膜42よりも薄い。
【0029】
図2Gに示すように、酸素ガス雰囲気中で熱処理を行う。一例として、熱処理温度は300℃とし、熱処理時間は3分とする。この熱処理により、上部電極用導電膜42の表層部分が酸化され、酸化ルテニウム(RuO)からなる酸化物導電膜42aが形成される。溝部35Aの側面においては、上部電極用導電膜42が平坦面上の厚さより薄いため、酸化反応が、上部電極用導電膜42と磁化自由層41との界面まで進行する。さらに、溝部35Aの側面に沿う磁化自由層41が酸化される。この磁化自由層41が酸化されることにより、非磁性膜41aが形成される。
【0030】
磁化自由層41は、非磁性膜41aにより、第1の磁化自由層41bと第2の磁化自由層41cとに分断される。第1の磁化自由層41bは、溝部35Aの底面のトンネル絶縁膜40の上に配置され、第2の磁化自由層41cは、絶縁膜35の上に配置される。非磁性膜41aは、溝部35Aの側面に沿って配置され、第1の磁化自由層41bから第2の磁化自由層41cまで達する。
【0031】
上部電極用導電膜42は、第1の磁化自由層41bの上に配置された第1の導電部分42b、第2の磁化自由層41cの上に配置された第2の導電部分42c、及び元の上部電極用導電膜42の表層部である第3の導電部分(酸化物導電膜)42aに区分される。第3の導電部分42aは、第1の導電部分42b、第2の導電部分42c、及び非磁性膜41aの上に配置される。
【0032】
なお、酸素ガス中の熱処理に代えて、酸素プラズマに晒すことにより非磁性膜41aを形成してもよい。
【0033】
図2Hに示すように、磁化方向を規定するための磁場中アニールを、真空中で行う。アニール温度は、例えば350℃とする。
【0034】
図2Iに示すように、第3の導電部分42aの上に、導電膜45及びハードマスク膜46を形成する。導電膜45には、例えばアルミニウム(Al)が用いられ、ハードマスク膜46には、例えばTiNが用いられる。導電膜45の厚さは、例えば60nmであり、ハードマスク膜46の厚さは、例えば40nmである。導電膜45及びハードマスク膜46の成膜には、例えばスパッタリングが適用される。
【0035】
ハードマスク膜46の上にレジストパターン50を形成する。レジストパターン50は、平面視において、導電プラグ27及び溝部35Aを内包する。レジストパターン50の平面形状は、例えば短辺及び長辺の長さがそれぞれ120nm及び200nmの長方形である。
【0036】
図2Jに示すように、レジストパターン50をエッチングマスクとして、ハードマスク膜46及び導電膜45をエッチングする。ハードマスク膜46及び導電膜45のエッチングには、例えばClとBClとの混合ガスを用いたドライエッチングが適用される。このエッチング後、レジストパターン50をアッシングすることにより除去する。
【0037】
図2Kに示すように、ハードマスク膜46及び導電膜45をエッチングマスクとして、第3の導電部分42a、第2の導電部分42c、磁化自由層41、トンネル絶縁膜40、絶縁膜35、磁化固定層32、反強磁性層31、及び下部電極30をエッチングする。RuOの第3の導電部分42a及びRuの第2の導電部分42cのエッチングには、例えばCFとOとの混合ガスを用いたドライエッチングが適用される。磁化自由層41、トンネル絶縁膜40、磁化固定層32、及び反強磁性層31のエッチングには、例えばCHOHを用いたドライエッチングが適用される。窒化シリコンの絶縁膜35及びTaの下部電極30のエッチングには、例えばCFを用いたドライエッチングが適用される。このエッチング時に、ハードマスク膜46もエッチングされる。このため、下部電極30をエッチングした時点では、ハードマスク膜46は消失している。
【0038】
下部電極30から導電膜45までの層構造により、凸部51が形成される。凸部51の周囲には、層間絶縁膜26が露出する。凸部51は、磁化固定層32、溝部35Aの底面上のトンネル絶縁膜40、第1の磁化自由層41bからなるMTJ積層膜を含む。
【0039】
図2Lに示すように、層間絶縁膜26及び凸部51の上に、バリア絶縁膜55を形成する。バリア絶縁膜55には、例えば窒化シリコンが用いられる。バリア絶縁膜55の厚さは、例えば30nmである。バリア絶縁膜55の成膜には、例えばCVDが適用される。
【0040】
バリア絶縁膜55の上に層間絶縁膜56を形成する。層間絶縁膜56には、例えば酸化シリコンが用いられる。層間絶縁膜56は、CVDによって酸化シリコン膜を成膜した後、化学機械研磨(CMP)を施して表面を平坦化することにより形成される。層間絶縁膜56の厚さは、例えば300nmである。
【0041】
図2Mに示すように、層間絶縁膜56及びバリア絶縁膜55に、導電膜45まで達するビアホール56Aを形成する。ビアホール56A内を、タングステン(W)等の導電プラグ58で埋め込む。導電プラグ58は、CVDによってW膜を成膜した後、CMPを施して不要部分の除去することにより形成される。磁化固定層32、絶縁膜35、第2の磁化自由層41c、及び上部電極42は、導電プラグ27と部分的に重なる位置に配置される。
【0042】
実施例1では、溝部35A内のMTJ積層膜が、MTJ素子として機能する。凸部51の占める領域は、溝部35Aの占める領域よりも広い。このため、導電プラグ27と凸部51との位置合わせは、導電プラグ27とMTJ積層膜(溝部35A)との位置合わせに比べて容易である。同様に、上側の導電プラグ58と凸部51との位置合わせも容易である。
【0043】
MTJ素子として機能する第1の磁化自由層41bは、非磁性膜41aによって、MTJ素子として機能しない第2の磁化自由層41cから磁気的に隔離されている。このため、平面視において凸部51の面積を広くしても、書込み電流の増加を抑制することができる。
【0044】
実施例1では、図2Bに示した絶縁膜35及びハードマスク膜36に、それぞれ窒化シリコン及び酸化シリコンを用いたが、その逆に、絶縁膜35に酸化シリコンを用い、ハードマスク膜36に窒化シリコンを用いてもよい。絶縁膜35及びハードマスク膜36には、相互にエッチング耐性の異なる絶縁材料を用いればよい。
【0045】
[実施例2]
図3A〜図3Dを参照して、実施例2による磁気トンネル接合素子の製造方法について説明する。以下の説明では、実施例1の方法との相違点に着目し、同一の構成については説明を省略する。
【0046】
図3Aは、実施例1の図2Bの段階に対応する。実施例2においては、絶縁膜35の下に、エッチング停止膜60が形成されている。エッチング停止膜60には、絶縁膜35とはエッチング耐性の異なる絶縁材料が用いられる。例えば絶縁膜35に窒化シリコンが用いられる場合には、エッチング停止膜60には酸化シリコンが用いられる。エッチング停止膜60の厚さは、例えば5nmである。
【0047】
図3Bは、実施例1の図2Dの段階に対応する。実施例1では、溝部35Aの底面に磁化固定層32が露出していたが、実施例2では、溝部35Aの底面にエッチング停止膜60が露出する。
【0048】
図3Cは、実施例1の図2Eの段階に対応する。希フッ酸を用いてハードマスク膜36(図3B)をエッチングする際に、溝部35Aの底面に露出していたエッチング停止膜60も除去され、磁化固定層32が露出する。その後の工程は、実施例1の工程と共通である。
【0049】
図3Dは、実施例1の図2Mの段階に対応する。磁化固定層32と絶縁膜35との間に、エッチング停止膜60が残っている。その他の構造は、実施例1による方法で作製された磁気トンネル接合素子の構造と同一である。
【0050】
実施例2では、図3Bに示した工程で、磁化固定層32がドライエッチングの雰囲気に直接晒されることがない。このため、ドライエッチングによって磁化固定層32が受けるダメージを低減させることができる。
【0051】
[実施例3]
図4A及び図4Bを参照して、実施例3による磁気トンネル接合素子の製造方法について説明する。以下の説明では、実施例1による方法との相違点に着目し、同一の構成については説明を省略する。
【0052】
図4Aは、実施例1の図2Fに示した段階の構造と同一である。ただし、実施例3では、絶縁膜35に、水分を含んだ窒化シリコンが用いられる。水分を含んだ窒化シリコン膜は、例えばプラズマCVDにより形成される。成膜条件は、例えば下記の通りである。
・原料ガス SHとNHとの混合ガス
・成膜温度 350℃以下
・圧力 670Pa(約5Torr)以下
なお、ハードマスク膜36(図2B)に窒化シリコンを用いる場合には、絶縁膜35には、水分を含む酸化シリコンが用いられる。水分を含む酸化シリコン膜は、例えばプラズマCVDにより形成される。成膜条件は、例えば下記の通りである。
・原料ガス SHとNOとの混合ガス
・成膜温度 350℃以下
・圧力 670Pa(約5Torr)以下
実施例3では、実施例1の図2Gに示した酸化雰囲気中での熱処理は行われない。
【0053】
図4Bは、実施例1の図2Hに示した磁場中アニールの工程に対応する。このアニール中に、絶縁膜35に含まれる水分によって、磁化自由層41(図4A)の一部が酸化され、非磁性膜41aが形成される。磁場中アニールは、溝部35Aの側面に沿った部分において、磁化自由層41と上部電極用導電膜42の界面まで酸化が進む条件で行われる。このため、溝部35Aの側面に沿った領域には、強磁性の磁化自由層41(図4A)は残存しない。絶縁膜35の上に堆積している磁化自由層41(図4A)は、溝部35Aの側面に沿った部分よりも厚い。このため、絶縁膜35の上に堆積している磁化自由層41(図4A)は、基板側の一部分のみが酸化されて非磁性膜41aが形成され、その上に、酸化されない第2の磁化自由層41cが残存する。
【0054】
実施例1では、溝部35Aの側面に沿った部分にのみ非磁性膜41a(図2G)が形成されたが、実施例3では、非磁性膜41aが、溝部35Aに沿った部分から、第2の磁化自由層41cと絶縁膜35との間まで延伸している。この延伸した部分は、第2の磁化自由層41cの底面に接する。
【0055】
実施例3においても、第1の磁化自由層41bが、非磁性膜41aによって、第2の磁化自由層41cから磁気的に隔離される。
【0056】
実施例3では、磁場中アニールが、非磁性膜41aを形成する工程を兼ねるため、工程数を削減することができる。上部電極用導電膜42が酸化されないため、上部電極用導電膜42に、酸化されて絶縁性になる導電材料を用いることも可能である。
【0057】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0058】
10 トランジスタ
11 MTJ素子
11P 磁化固定(ピンド)層
11B トンネル絶縁膜
11F 磁化自由(フリー)層
12 ワード線
13 ソース線
14 ビット線
15 制御回路
20 基板
21 MOSトランジスタ
22 層間絶縁膜
25 多層配線層
26 層間絶縁膜
26A 酸化シリコン膜
26B 炭化シリコン膜
27 導電プラグ
30 下部電極
31 反強磁性層
32 磁化固定層
35 絶縁膜
35A 溝部
36 ハードマスク膜
37 レジストパターン
40 トンネル絶縁膜
41 磁化自由層
41a 非磁性膜
41b 第1の磁化自由層
41c 第2の磁化自由層
42 導電膜
42a 第3の導電部分(酸化物導電膜)
42b 第1の導電部分
42c 第2の導電部分
45 導電膜
46 ハードマスク膜
50 レジストパターン
51 凸部
55 バリア絶縁膜
56 層間絶縁膜
56A ビアホール
58 導電プラグ
60 エッチング停止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に形成された磁化固定層と、
前記磁化固定層の上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜に形成され、前記絶縁膜を貫通する溝部と、
前記溝部の底面に形成されたトンネル絶縁膜と、
前記溝部の底面の上に、前記トンネル絶縁膜を介して形成された第1の磁化自由層と、
前記絶縁膜の上に形成され、前記第1の磁化自由層と同一の磁性材料で形成された第2の磁化自由層と、
前記溝部の側面に形成され、前記第1の磁化自由層から前記第2の磁化自由層まで到達し、前記第1の磁化自由層を形成する磁性材料の酸化物で形成された非磁性膜と、
前記第1の磁化自由層、前記非磁性膜、及び前記第2の磁化自由層の上に配置され、前記第1の磁化自由層及び前記第2の磁化自由層に電気的に接続された上部電極と
を有する磁気トンネル接合素子。
【請求項2】
前記上部電極は、
前記第1の磁化自由層の上に配置され、酸化物が導電性を示す金属で形成された第1の導電部分と、
前記第2の磁化自由層の上に配置され、前記第1の導電部分と同一の金属で形成された第2の導電部分と、
前記第1の導電部分、前記第2の導電部分、及び前記非磁性膜の上に配置され、前記第1の導電部分を形成する金属の酸化物で形成された第3の導電部分と
を含む請求項1に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項3】
前記非磁性膜が、前記溝部の開口部の縁から前記絶縁膜の上まで延伸しており、延伸部分は、前記第2の磁化自由層の底面に接している請求項1に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項4】
前記基板の上面に、層間絶縁膜及び導電プラグが露出しており、
前記磁化固定層、前記絶縁膜、前記第2の磁化自由層、及び前記上部電極は、前記導電プラグと部分的に重なる位置に配置されている請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁気トンネル接合素子。
【請求項5】
基板の上に、磁化固定層を形成する工程と、
前記磁化固定層の上に、絶縁膜を形成する工程と、
前記絶縁膜に、該絶縁膜の底面まで達する溝部を形成する工程と、
前記溝部の底面と側面、及び前記絶縁膜の上に、トンネル絶縁膜を形成する工程と、
前記トンネル絶縁膜の上に磁化自由層を形成する工程と、
前記磁化自由層の上に、上部電極用導電膜を形成する工程と、
前記磁化自由層のうち、前記溝部の側面に沿う部分を酸化する工程と
を有する磁気トンネル接合素子の製造方法。
【請求項6】
前記基板の上面に、層間絶縁膜、及び該層間絶縁膜に埋め込まれた導電プラグが露出しており、
前記磁化固定層を形成する工程において、前記磁化固定層が前記導電プラグに電気的に接続されるように前記磁化固定層を形成し、
前記溝部を形成する工程において、前記溝部が前記導電プラグと重ならない位置に前記溝部を形成し、
前記酸化する工程の後、さらに、前記磁化固定層から前記上部電極用導電膜までの各層をパターニングし、前記導電プラグ及び前記溝部の両方と重なる領域に、前記磁化固定層から前記上部電極用導電膜までの各層を残す工程を有する請求項5に記載の磁気トンネル接合素子の製造方法。
【請求項7】
前記上部電極用導電膜を形成する工程において、前記上部電極用導電膜の、前記溝部の側面に沿う部分の厚さが、前記溝部の底面及び前記絶縁膜の上面に沿う部分の厚さよりも薄くなる条件で前記上部電極用導電膜を形成し、
前記酸化する工程において、酸化性雰囲気で熱処理を行うことにより、前記上部電極用導電膜のうち、前記溝部の側面に沿う相対的に薄い部分を介して、前記磁化自由層の、前記溝部の側面に沿う部分が酸化され、前記上部電極膜のうち、前記溝部の底面に沿う相対的に厚い部分の下の前記磁化自由層は酸化されない条件で酸化処理を行う請求項5または6に記載の磁気トンネル接合素子の製造方法。
【請求項8】
前記上部電極用導電膜は、酸化されても導電性を有する導電材料で形成されている請求項7に記載の磁気トンネル接合素子の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁膜を形成する工程において、前記絶縁膜に水分が含まれる条件で前記絶縁膜を形成し、
前記酸化する工程において、前記トンネル絶縁膜を介して、前記絶縁膜内の水分により前記磁化自由層を酸化する請求項5または6に記載の磁気トンネル接合素子の製造方法。
【請求項10】
前記磁化自由層は、酸化されることによって非磁性になる材料で形成されている請求項5乃至9のいずれか1項に記載の磁気トンネル接合素子の製造方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−43854(P2012−43854A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181586(P2010−181586)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】