説明

磁気メモリの製造装置

【課題】より小さい磁場で磁性層の磁化方向を所定の方向に設定する。
【解決手段】磁気メモリ21の磁場印加装置30は、磁気メモリ21の磁性層に磁場を印加し、磁性層の磁化方向を初期化する磁石32A及び32Bと、磁性層に磁場が印加されている間に、磁気メモリ21の温度を上昇させる温度上昇機構33と、制御回路34とを含む。磁石32A及び32Bはそれぞれ、設定する磁化方向に応じて、磁場を発生し、磁気メモリ21の上から下へ向かう磁場、又は下から上へ向かう磁場が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気メモリの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ランダムアクセスメモリ(MRAM:Magnetic Random Access Memory)は、磁化の方向により抵抗値が変化する磁気抵抗(magnetoresistive)効果を利用したMTJ(Magnetic Tunnel Junction)素子を記憶素子として用いている。MTJ素子は、参照層と、記憶層と、参照層及び記憶層に挟まれ、トンネル障壁を作る絶縁層との3層構造を持つ。参照層の磁化は一方向に固着されており、書き込み動作を行っても反転しない。一方、記憶層の磁化は書き込み動作によって外部から与えられるトルクによって磁化が反転する。
【0003】
MRAMの製造工程において、参照層の磁化方向を所定の方向に設定する着磁工程が必要である。MTJ素子を微細化していくと、参照層の磁化を反転させるのに必要な反転磁場が大きくなる。参照層の反転磁場が大きくなり過ぎると、一般的に使用される電磁石で発生できる磁場では、参照層の磁化方向を所定の方向に設定することができなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−111824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施形態は、より小さい磁場で磁性層の磁化方向を所定の方向に設定することが可能な磁気メモリの製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気メモリの製造装置は、前記磁気メモリの磁性層に磁場を印加し、前記磁性層の磁化方向を初期化する磁石と、前記磁性層に磁場が印加されている間に、前記磁気メモリの温度を上昇させる温度上昇機構とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態に係るMTJ素子の構成を示す断面図。
【図2】参照層の他の構成を示す断面図。
【図3】MRAMウエハの構成を示す平面図。
【図4】磁性層のサイズと反転磁場との関係を示すグラフ。
【図5】本実施形態に係る磁場印加装置の構成を示す側面図。
【図6】磁性層の反転磁場と温度との関係を示すグラフ。
【図7】着磁工程における磁石と温度上昇機構との動作を説明する図。
【図8】磁場印加装置の他の構成を示す側面図。
【図9】ステージ及び温度上昇機構の構成を示すレイアウト図。
【図10】磁場印加装置の他の構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率などは必ずしも現実のものと同一とは限らないことに留意すべきである。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置などによって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0009】
図1は、本実施形態に係るMTJ素子(磁気抵抗素子)10の構成を示す断面図である。MTJ素子10は、下から順に、記憶層11、非磁性層(トンネルバリア層)12、参照層13、非磁性層(スペーサ層)14、調整層15が積層されて構成されている。なお、図1の積層順序は、逆転していても構わない。図中の矢印は、磁化の様子を表している。MTJ素子10の平面形状は、例えば円である。
【0010】
記憶層11及び参照層13はそれぞれ、強磁性材料からなり、膜面に垂直方向の磁気異方性を有し、それらの容易磁化方向は膜面に対して垂直である。すなわち、MTJ素子10は、記憶層11及び参照層13の磁化方向がそれぞれ膜面に対して垂直方向を向く、垂直磁化型MTJ素子である。
【0011】
記憶層11は、磁化方向が可変である(反転する)。参照層13は、磁化方向が不変である(固着している)。参照層13は、記憶層11よりも十分大きな垂直磁気異方性エネルギーを持つように設計される。磁気異方性の設定は、材料構成や膜厚を調整することで可能である。このようにして、記憶層11の磁化反転電流を小さくし、参照層13の磁化反転電流を記憶層11のそれよりも大きくする。これにより、所定の書き込み電流に対して、磁化方向が可変の記憶層11と磁化方向が不変の参照層13とを備えたMTJ素子10を実現できる。
【0012】
非磁性層12は、非磁性金属、非磁性半導体、又は絶縁体などを用いることができる。非磁性層12として絶縁体を用いた場合はトンネルバリア層と呼ばれる。トンネルバリア層12としては、酸化マグネシウム(MgO)などが用いられる。
【0013】
調整層15は、参照層13からの漏れ磁場を低減し、この漏れ磁場が記憶層11に印加されて記憶層11の保磁力がシフトするのを抑制する機能を有する。MTJ素子10を構成する記憶層11及び参照層13は磁性材料から構成されているため、外部に対して磁場を発生している。一般に、垂直磁化型MTJ素子では、参照層13から発生する漏れ磁場が面内磁化型MTJ素子のそれに比べて大きい。また、参照層13に比べて保磁力の小さい記憶層11は、参照層13からの漏れ磁場の影響を強く受ける。具体的には、参照層13からの漏れ磁場の影響により、記憶層11の保磁力がシフトし、磁化反転電流の増加や、熱安定性の低下を引き起こす。このため、本実施形態のMTJ素子10は、参照層13から記憶層11に印加される漏れ磁場を低減する調整層15を備えている。
【0014】
調整層15は、強磁性材料からなり、膜面に垂直方向の磁気異方性を有し、その容易磁化方向は膜面に対して垂直である。調整層15は、参照層13と同様に、磁化方向が不変である。調整層15は、参照層13と反強磁性結合しており、調整層15と参照層13との磁化方向は反平行に設定される。
【0015】
スペーサ層14は、調整層15と参照層13とが強磁性的に結合しないために設けられている。スペーサ層14は、調整層15と参照層13とが熱工程によって混ざらないための耐熱性を有し、かつ調整層15を形成する際の結晶配向を制御する機能も有している。スペーサ層14としては、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、銀(Ag)、又は銅(Cu)などの非磁性金属を用いることができる。
【0016】
参照層13は、例えば、トンネルバリア層側に配置された界面磁性層13Aと、磁性層13Bとが積層されて構成されている。磁性層13Bは、参照層13に垂直磁化を付与する機能を有し、界面磁性層13Aは、MTJ素子10の磁気抵抗比(MR比)を向上させる機能を有する。磁性層13Bは、例えば、コバルト(Co)、鉄(Fe)の群から選択される少なくとも1つの元素を含む合金と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)の群から選択される少なくとも1つの元素を含む合金とが交互に積層されて構成される。界面磁性層13Aは、スピン偏極率が高い磁性材料が用いられ、例えば、コバルト(Co)、鉄(Fe)、CoFe、或いはCoFeBなどが用いられる。なお、参照層13は、磁性層13Bと同じ材料からなる単層で構成してもよい。記憶層11及び調整層15はそれぞれ、例えば、磁性層13Bと同じ材料が用いられる。
【0017】
図2は、参照層13の他の構成を示す断面図である。参照層13は、SAF(Synthetic Anti-Ferromagnet)構造を有している。具体的には、参照層13は、磁性層13C、非磁性層13D、磁性層13Eが積層されて構成されている。磁性層13Cと磁性層13Eとは反強磁性結合している。参照層13をSAF構造とした場合、調整層15は、磁性層13Cと反強磁性結合するように磁化方向を設定する。磁性層13C及び磁性層13Eはそれぞれ、例えば、コバルト(Co)、鉄(Fe)の群から選択される少なくとも1つの元素を含む合金と、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)の群から選択される少なくとも1つの元素を含む合金とが交互に積層されて構成される。非磁性層13Dは、ルテニウム(Ru)、白金(Pt)、銀(Ag)、或いは銅(Cu)などの非磁性金属を用いることができる。
【0018】
本実施形態では、MTJ素子10に直接に書き込み電流を流し、この書き込み電流によってMTJ素子10の磁化状態を制御するスピン注入書き込み方式を採用する。MTJ素子10は、記憶層11と参照層13との磁化の相対関係が平行か反平行かによって、低抵抗状態と高抵抗状態とのいずれかをとることができる。
【0019】
MTJ素子10に対して、記憶層11から参照層13へ向かう書き込み電流を流すと、記憶層11と参照層13との磁化の相対関係が平行になる。この平行状態の場合、MTJ素子10の抵抗値は最も低くなり、MTJ素子10は低抵抗状態に設定される。MTJ素子10の低抵抗状態を、例えばデータ“0”と規定する。
【0020】
一方、MTJ素子10に対して、参照層13から記憶層11へ向かう書き込み電流を流すと、記憶層11と参照層13との磁化の相対関係が反平行になる。この反平行状態の場合、MTJ素子10の抵抗値は最も高くなり、MTJ素子10は高抵抗状態に設定される。MTJ素子10の高抵抗状態を、例えばデータ“1”と規定する。
【0021】
これにより、MTJ素子10を1ビットデータを記憶可能な記憶素子として使用することができる。MTJ素子10の抵抗状態とデータとの割り当ては任意に設定可能である。MTJ素子10からデータを読み出す場合は、MTJ素子10に読み出し電圧を印加し、この時にMTJ素子10に流れる読み出し電流に基づいてMTJ素子10の抵抗値を検知する。この読み出し電圧は、スピン注入によって磁化反転する閾値よりも十分小さい値に設定される。
【0022】
複数のMTJ素子10を含むMRAM(磁気メモリ)21の製造方法では、図3に示すように、まず、複数のMRAM21を備えたMRAMウエハ20を形成する。各MRAM21は、複数のメモリセルMCからなるメモリセルアレイ22、及びメモリセルアレイ22を制御する周辺回路(図示せず)を備えている。各メモリセルMCは、MTJ素子10と、例えばnチャネルMOSFETからなる選択トランジスタ23とから構成される。MTJ素子10の一端はビット線BLに電気的に接続され、MTJ素子10の他端は選択トランジスタ23の電流経路の一端に電気的に接続されている。選択トランジスタ23の電流経路の他端はビット線/BLに電気的に接続され、選択トランジスタ23のゲートはワード線WLに電気的に接続されている。MRAMウエハ20は、最終的には、複数のMRAM(MRAMチップ)21にダイシングされる。
【0023】
MTJ素子10を作製した段階では、MTJ素子10を構成する複数の磁性層は、磁化方向がランダムになっている。このため、図1のような磁化配列を有するMTJ素子10を得るためには、MTJ素子10を構成する複数の磁性層の各々の磁化方向を所望の方向に設定する、すなわち複数の磁性層の各々の磁化方向を初期化する製造工程が必要である。
【0024】
一般的に、MTJ素子10を微細化すると、MTJ素子10を構成する各磁性層を磁化反転させるのに必要な磁場(反転磁場)が大きくなる。図4は、MTJ素子を構成する磁性層のサイズと反転磁場との関係を示すグラフである。図4の横軸はMTJ素子を構成する磁性層の直径(nm)、図4の縦軸は保磁力(反転磁場)Hc(Oe)を表している。図4から理解できるように、MTJ素子を微細化(すなわち、MTJ素子を構成する各磁性層を微細化)すると、磁性層の反転磁場が大きくなる。従って、MTJ素子を構成する磁性層の磁化方向を初期化するには、大きな磁場が発生できる磁石が必要である。
【0025】
そこで、本実施形態では、MTJ素子10を構成する磁性層の磁化方向を設定する製造工程において、MTJ素子10の温度を上昇させながら、磁性層に磁場を印加するようにしている。図5は、本実施形態に係る磁場印加装置(製造装置)30の構成を示す側面図である。磁場印加装置30は、MRAMウエハ20が載置されるステージ31、MRAMウエハ20に磁場を印加する磁石32A及び32B、MRAMウエハ20の温度を上昇させる温度上昇機構33、及び制御回路34を備えている。
【0026】
磁石32A及び32Bとしては、例えば、電磁石、又は超伝導磁石が用いられる。磁石32A及び32Bの平面形状は例えば円である。磁石32A及び32Bは、ステージ31及びMRAMウエハ20と所定の距離を空けつつ、ステージ31に載置されたMRAMウエハ20を上下から挟むように配置される。磁石32A及び32Bはそれぞれ、設定する磁化方向に応じて、図面の下方向又は上方向に磁場を発生する。これにより、MRAMウエハ20には、図面の上から下へ向かう磁場、又は下から上へ向かう磁場が印加される。
【0027】
温度上昇機構33は、ヒーター、レーザー発生装置、又は電磁波発生装置を用いることができる。ヒーターは、例えば通電されることで発熱する抵抗体が用いられ、この抵抗体が発生する熱によって、MRAMウエハ20の温度を上昇させる。レーザー発生装置は、MRAMウエハ20にレーザーを照射することで、MRAMウエハ20の温度を上昇させる。電磁波発生装置は、MRAMウエハ20に電磁波を印加することで、MRAMウエハ20の温度を上昇させる。この電磁波発生装置は、高い周波数を有する電磁波(マイクロ波)を発生し、例えば電子レンジなどで使用される2.45GHzの周波数を有する電磁波を発生する。すなわち、本実施形態の温度上昇機構33は、抵抗加熱方式、レーザー加熱方式、又は電磁波加熱方式を用いることができる。温度上昇機構33は、例えば磁石32Bに取り付けられており、例えば磁石32Bの先端に埋め込まれている。
【0028】
制御回路34は、磁石32A及び32Bの動作、及び温度上昇機構33の動作を制御する。ステージ31は、二次元に移動可能なように構成されている。ステージ31は、MRAMウエハ20のうち磁場を印加する領域が磁石32A及び32B間に配置されるように、MRAMウエハ20を移動する。
【0029】
図6は、磁性層の反転磁場と温度との関係を示すグラフである。図6の横軸は磁性層の温度を表しており、図6の縦軸は磁性層の保磁力(反転磁場)Hcを表している。図6に示すように、磁性層の温度が上昇するにつれて、磁性層の反転磁場が小さくなるのが分かる。磁性層の温度をキュリー温度まで上昇させると、磁性層は、常磁性体へと遷移する。
【0030】
そこで、本実施形態では、磁性層の磁化方向を所望の方向に設定する、すなわち磁性層の磁化方向を初期化する着磁工程において、MTJ素子10に含まれる磁性層のうち着磁を行う磁性層の温度を温度上昇機構33によって室温より高い温度まで上昇させる。その後、室温時の反転磁場より低い磁場を用いて、磁性層の磁化方向を設定する。磁性層の温度を上昇させる大きさ、すなわち室温からの磁性層の上昇温度ΔTは、磁石32A及び32Bが発生できる磁場の大きさに応じて設定される。図6に示すように、磁石32A及び32Bの磁場Hswであるとすると、反転磁場がHswになる磁性層の温度Th以上になるまで磁性層の温度を上昇させる。磁石32A及び32Bの磁場Hswは、例えば1〜1.5T程度に設定するのが望ましい。温度Thは、室温より高く、かつMRAMウエハ20が熔解する温度より低い範囲で任意に設定することができる。
【0031】
図7は、着磁工程における磁石32A及び32Bと温度上昇機構33との動作を説明する図である。まず、制御回路34が磁石32A及び32Bを起動させることで、磁石32A及び32Bは、定常磁場をMRAMウエハ20に印加する。MRAMウエハ20に定常磁場が印加された後、制御回路34が温度上昇機構33を起動させることで、温度上昇機構33は、MRAMウエハ20を所定温度まで加熱する。続いて、所定時間が経過した後、制御回路34は、温度上昇機構33の動作を停止する。
【0032】
続いて、温度上昇機構33の動作停止から所定時間が経過した後(例えば、MRAMウエハ20の温度が所定温度まで降下した後)、制御回路34は、磁石32A及び32Bの動作を停止する。これにより、MRAMウエハ20への定常磁場の印加が停止される。このようにして、MTJ素子10に含まれる磁性層のうち1つの磁性層の磁化方向が設定される。
【0033】
例えば、図1のMTJ素子10の着磁工程では、参照層13と調整層15との磁化方向が逆方向であるため、2回の着磁工程が行われる。本実施形態では、調整層15の垂直磁気異方性エネルギーは、参照層13の垂直磁気異方性エネルギーより大きい。よって、まず、1回目の着磁工程で、参照層13及び調整層15の磁化方向を図1の調整層15の磁化方向と同じ方向に設定する。続いて、2回目の着磁工程で、参照層13の磁化方向を図1の方向に設定する。この時、2回目の着磁工程における磁石32A及び32Bの磁場Hsw2は、1回目の着磁工程における磁石32A及び32Bの磁場Hsw1より小さく設定される。
【0034】
(磁場印加装置30の構成例)
以下に、磁場印加装置30の他の構成例について説明する。図8は、磁場印加装置30の他の構成を示す側面図である。磁石32A及び32Bの磁場発生領域は、MRAMウエハ20の面積以上である。すなわち、磁石32A及び32Bは、MRAMウエハ20の全面に一度に磁場を印加できるサイズを有している。
【0035】
ステージ31は、MRAMウエハ20全体を載置できるサイズを有している。ステージ31には、温度上昇機構33が取り付けられている。図9は、ステージ31及び温度上昇機構33の構成を示すレイアウト図である。
【0036】
温度上昇機構33としては、例えば、通電により発熱する抵抗体が用いられる。抵抗体33は、ステージ31内に埋め込まれており、ステージ31全体の温度が上昇するようにステージ31全体に配置されている。
【0037】
図8の磁場印加装置30を用いて着磁工程を行った場合、MRAMウエハ20全体を一度に着磁することが可能となる。なお、図8の磁石32Aのサイズが大きくなる場合は、複数の磁石32Aを用意し、この複数の磁石32Aが全体としてMRAMウエハ20全面に一度に磁場を印加できるように構成してもよい。同様に、図8の磁石32Bについても、複数の磁石32Bから構成されるようにしてもよい。
【0038】
図10は、磁場印加装置30の他の構成を示す側面図である。磁場印加装置30は、1個の磁石32を備えている。磁石32は、MRAMウエハ20が載置されたステージ31の上方に配置される。磁石32には、温度上昇機構33が取り付けられている。図10のように単極の磁石32を用いて、MRAMウエハ20に磁場を印加するようにしてもよい。
【0039】
なお、図8の磁場印加装置30を図10のように単極の磁石を用いて構成するようにしてもよい。また、図5及び図10の磁場印加装置30に図9の温度上昇機構33を適用してもよい。
【0040】
(効果)
以上詳述したように本実施形態では、磁場印加装置(MRAM製造装置)30は、MTJ素子10を構成する磁性層(参照層13及び調整層15を含む)に磁場を印加し、磁性層の磁化方向を所定の方向に設定する(磁化方向を初期化する)磁石32A及び32Bと、磁性層に磁場が印加されている間に、MTJ素子10の温度を上昇させる温度上昇機構33とを備えている。
【0041】
従って本実施形態によれば、参照層13及び調整層15の磁化方向を所定の方向に設定する着磁工程において、参照層13及び調整層15の温度を上昇させることができる。これにより、参照層13及び調整層15の保磁力(反転磁場)を小さくすることができるため、より小さい磁場で参照層13及び調整層15の着磁を行うことが可能となる。この結果、着磁工程において、大きな磁場を発生する磁石を用いる必要がないため、磁場印加装置30のコスト及びサイズを低減することができる。
【0042】
また、MTJ素子10を微細化することで、参照層13及び調整層15の反転磁場が大きくなった場合でも、参照層13及び調整層15の磁化方向を所望の方向に設定することができる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10…MTJ素子、11…記憶層、12…トンネルバリア層、13…参照層、14…スペーサ層、15…調整層、20…MRAMウエハ、21…MRAM、22…メモリセルアレイ、23…選択トランジスタ、30…磁場印加装置、32…磁石、33…温度上昇機構、34…制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気メモリの製造装置であって、
前記磁気メモリの磁性層に磁場を印加し、前記磁性層の磁化方向を初期化する磁石と、
前記磁性層に磁場が印加されている間に、前記磁気メモリの温度を上昇させる温度上昇機構と、
を具備することを特徴とする磁気メモリの製造装置。
【請求項2】
前記温度上昇機構は、通電により発熱する抵抗体であることを特徴とする請求項1に記載の磁気メモリの製造装置。
【請求項3】
前記温度上昇機構は、レーザーを前記磁気メモリに照射するレーザー発生装置であることを特徴とする請求項1に記載の磁気メモリの製造装置。
【請求項4】
前記温度上昇機構は、電磁波を前記磁気メモリに印加する電磁波発生装置であることを特徴とする請求項1に記載の磁気メモリの製造装置。
【請求項5】
前記磁気メモリは、磁化方向が可変である第1の磁性層と、磁化方向が不変である第2の磁性層と、前記第2の磁性層の漏れ磁場を低減する第3の磁性層とを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の磁気メモリの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−105769(P2013−105769A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246424(P2011−246424)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「スピントロニクス不揮発性機能技術プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】