説明

磁気レベルシフタ

【課題】多チャンネル化しても形成面積の増大を抑えることができる磁気レベルシフタを提供する。
【解決手段】レベルシフタは、入力信号が印加される磁界発生用配線112と、磁界発生用配線112が発生した磁界に対応した値をとる検出信号を出力する検出用磁気抵抗効果素子11と、一定の値をとる参照信号を出力する参照用磁気抵抗効果素子21,31を備える。当該レベルシフタは、検出信号と参照電圧の差に基づいて出力信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレベルシフト技術に関し、特に、磁気抵抗効果素子を用いた磁気レベルシフタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気抵抗(MR:magnetoresistive)効果は、磁性体に磁界を加えるとその電気抵抗が変化する現象であり、磁界センサや磁気ヘッドなどの動作に利用されている。非常に大きな磁気抵抗効果を示す巨大磁気抵抗(GMR:giant magnetoresistance)効果材料として、Fe/Cr、Co/Cu等の人工格子膜が、下記の非特許文献1,2に開示されている。
【0003】
また、強磁性層間の交換結合作用がなくなる程度に厚い非磁性金属層(非磁性層)を含む、強磁性層/非磁性層/強磁性層/反強磁性層からなる積層構造を用いた磁気抵抗効果素子が提案されている。この積層構造では、一方の強磁性層(固定層)は反強磁性層と交換結合し、その磁気モーメントが固定され、もう一方の強磁性層(自由層)のスピンのみが外部磁場により容易に反転する。これがいわゆる「スピンバルブ膜」として知られる素子である。
【0004】
スピンバルブ膜を用いた磁気抵抗素子では、2つの強磁性層間の交換結合が弱いため、自由層のスピンは小さな外部磁場で反転することができる。このため、スピンバルブ膜を用いた磁気抵抗素子によれば、交換結合膜を用いた素子よりも高い感度を得ることができる。
【0005】
スピンバルブ膜は、高密度磁気記録用再生ヘッドに用いられており、使用の際には膜面内方向に電流が流される。スピンバルブ膜に用いられる反強磁性体としては、FeMn、IrMn、PtMn等が知られている。一方、下記の非特許文献3には、膜面に対して垂直方向に電流を流す垂直磁気抵抗効果を利用すれば、より大きな磁気抵抗効果が得られることが示されている。
【0006】
下記の非特許文献4には、強磁性トンネル接合によるトンネル磁気抵抗(TMR:tunneling magneto-resistive)効果が示されている。トンネル磁気抵抗は、強磁性層/絶縁層/強磁性層からなる3層膜において、外部磁界により2つの強磁性層のスピンを互いに平行にしたときと反平行にしたときとで膜面垂直方向のトンネル電流の大きさが異なることを利用したものである。
【0007】
GMR素子やTMR素子を磁界検出器として用いる検討もされている。この場合、保磁力の異なる2つの強磁性層で非磁性金属層を挟んだ擬スピンバルブ型や、前述のスピンバルブ型の磁気抵抗効果素子の使用が検討されている。
【0008】
GMR素子やTMR素子を磁界検出器へ利用する場合、各素子が有する2つの磁性層の相対角が外部磁界に応答して変化するように構成する。各素子の抵抗値は2つの磁性層の相対角に応じて変化するため、例えば各素子に定電流を流して電圧の変化を検出することにより磁界を検出できる。この電圧信号の読み出しはGMR効果やTMR効果を利用して行われる。GMR素子やTMR素子を用いた磁界検出器は、高精度な磁界検出が可能であるのみならず、高温下でも安定した動作が可能であるという特長がある。
【0009】
また、複数個の磁気抵抗効果素子を用いてブリッジ回路を構成し、かつ固定層の磁化方向が逆向きの素子を組み合わせることでより高性能な磁界検出器を実現できることも知られている(例えば下記の特許文献1)。
【0010】
さて、配線に電流を流すと周囲に磁界が発生するが、その磁界を磁気抵抗効果素子を用いて検出させれば、配線に流す電流を入力信号、磁気抵抗効果素子の電圧出力を出力信号とするレベルシフタを構成することができる。磁気を用いたレベルシフト技術は、例えば下記の特許文献2に開示されている。
【0011】
レベルシフト技術としては、一般的に光システムを用いるものがよく知られている。光システムによるレベルシフタでは、入力電気信号を光に換える発光素子と光信号を受け取って再び電気信号に換える受光素子とが必要になるが、それらは外付けで実装されるため、レベルシフタの小型化が困難であると共に機械的な信頼性の問題が懸念される。また、発光素子および受光素子の温度特性のため、高温下での動作も難しい。
【0012】
また他のレベルシフト技術としては、容量結合を用いたものが知られている(下記の特許文献3)。容量結合レベルシフト素子は、ICチップ上へのモノリシック化が容易という特長がある。しかし、必要な容量を確保するため絶縁層の厚さに限界があるので高耐圧化が困難であり、サージノイズに対する強度が問題となる場合がある。
【0013】
一方、磁気レベルシフト技術では、信号を入力する配線と、信号を出力する磁気抵抗効果素子が必要となるが、それらは半導体デバイスの製造プロセスを用いて同一基板上に形成できるため、モノリシック化が容易である。さらに、磁界は光と同様に空間的に離れた位置でも一定の強度を保てるため、入力側と出力側の間に電気的な接続を必要とせず、高い絶縁性を備えたレベルシフタが実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3017061号公報
【特許文献2】特表2005−515667号公報
【特許文献3】特開平11−136293号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】D. H. Mosca et al., "Oscillatory interlayer coupling and giant magnetoresistance in Co/Cu multilayers", Journal of Magnetism and Magnetic Materials 94 (1991) pp.L1-L5
【非特許文献2】S. S. P. Parkin et al., "Oscillatory Magnetic Exchange Coupling through Thin Copper Layers", Physical Review Letters, vol.66, No.16, 22 April 1991, pp.2152-2155
【非特許文献3】W. P. Pratt et al., "Perpendicular Giant Magnetoresistances of Ag/Co Multilayers", Physical Review Letters, vol.66, No.23, 10 June 1991, pp.3060-3063
【非特許文献4】T. Miyazaki et al., "Giant magnetic tunneling effect in Fe/Al2O3/Fe junction", Journal of Magnetism and Magnetic Materials 139 (1995), pp.L231-L234
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のように磁気レベルシフト素子は容量結合素子と同様にモノリシック化が容易という特長があるが、高信頼で安定した動作をさせるためにブリッジ回路を構成すると、磁気抵抗効果素子が少なくとも4個必要となり、基板(チップ)上で必要な素子面積が大きくなるため小型化に難がある。
【0017】
特に、ブリッジ回路を用いる多チャンネルのレベルシフタを同一基板上に構成すると、チップサイズが大きくなり、モノリシック化による小型化・高機能化の特長が失われるばかりか、チップコスト増大に繋がる。従って、高温下での動作安定性、高耐圧性および高サージノイズ耐性といった磁気抵抗効果素子のメリットを充分に活かした実用的な磁気レベルシフタは実現されていなかった。
【0018】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、多チャンネル化しても形成面積の増大を抑えることができる磁気レベルシフタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る磁気レベルシフタは、入力信号が印加される入力配線と、前記入力配線)が前記入力信号に応じて発生した磁界に対応した値をとる検出信号を出力する磁気抵抗効果素子である検出用素子と、前記検出用素子と同一構造の磁気抵抗効果素子であり、一定の参照電圧を出力する参照用素子とを備え、前記検出信号と前記参照電圧の差に基づいて出力信号を生成するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る磁気レベルシフタによれば、従来のブリッジ回路を用いた構成よりも、多チャンネル化する場合に必要となる時期抵抗効果素子の数が抑えられる。よって磁気レベルシフタの形成面積の縮小化を図ることができ、装置の小型化および製造コストの削減に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】磁気抵抗効果素子の磁界検出動作を説明するための図である。
【図2】磁気抵抗効果素子の抵抗値と磁界との関係を示すグラフである。
【図3】実施の形態1に係るレベルシフタの基本構成を示す図である。
【図4】実施の形態1に係るレベルシフタにおける磁気抵抗効果素子の積層構造を示す図である。
【図5】実施の形態1に係るレベルシフタの部分断面図である。
【図6】実施の形態1に係るレベルシフタの配線構造を示す断面図である。
【図7】実施の形態2に係るレベルシフタの変形例を示す部分断面図である。
【図8】実施の形態3に係るレベルシフタの基本構成を示す図である。
【図9】実施の形態4に係る多チャンネル型レベルシフタの概略構成図である。
【図10】実施の形態5に係る多チャンネル型レベルシフタの概略構成図である。
【図11】実施の形態6に係る多チャンネル型レベルシフタの概略構成図である。
【図12】実施の形態7に係る多チャンネル型レベルシフタの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
【0023】
まず、本発明に係る磁気レベルシフタの説明に先立って、磁気抵抗効果素子における磁界検出動作について図1を参照して説明する。図1のように、スピンバルブ型磁気抵抗効果素子100は、固定層101(磁性層)、非磁性層102および自由層103(磁性層)の積層構造を含んでいる。
【0024】
図1の例では、自由層103の無磁界時の磁化方向100bは、固定層101の磁化方向100aに対しほぼ90度の角度を成すように設定されている。固定層101の磁化方向100aに沿った向きに磁界が印加されると、自由層103の磁化方向が新たな方向100cへと変化する。このとき、磁気抵抗効果素子100の抵抗値は、自由層103の磁化方向100bと固定層101の磁化方向100aが成す角に応じて決まる。
【0025】
すなわち、固定層101の磁化方向100aを基準(0度)とし、磁界印加時の自由層103の磁化方向100cが固定層101の磁化方向100aと成す角をθとすると、磁気抵抗効果素子100の抵抗値Rの変化量はcosθに比例する。自由層103が一軸異方性を持った軟磁性膜である場合、cosθ=H/|Hk|となる。Hは印加された磁界、Hkは自由層103の異方性磁界である。
【0026】
図2は、磁気抵抗効果素子100の抵抗値Rと印加磁界Hとの関係を示すグラフである。同図の如く、R=Rm+(ΔR/2)・(H/|Hk|)の関係が得られる。ここでRmは、磁気抵抗効果素子100がとり得る抵抗の最大値と最小値との中間値であり、無磁界時の磁気抵抗効果素子100の抵抗値である。またΔRは、磁気抵抗効果素子100の磁気抵抗変化率である。磁気抵抗効果素子100の抵抗値Rは磁界Hに比例するため、抵抗値Rを測定すれば磁界Hの大きさを知ることができる。また、固定層101の磁化方向100aに沿った方向で検出可能な磁界の範囲、すなわち磁気抵抗効果素子100の動作領域はH≦|Hk|である。
【0027】
<実施の形態1>
図3は、本発明の実施の形態1に係る磁気レベルシフタの基本構成を示す上面図である。当該レベルシフタは、1個の検出用磁気抵抗効果素子11(以下、「検出用素子」と称す)と1対の参照用磁気抵抗効果素子21,31(以下、「参照用素子」と表記する。)を有している。
【0028】
検出用素子11および参照用素子21,31は、それぞれ図1の磁気抵抗効果素子100と同様の積層構造を含むものであるが、図4にその構造の具体例を示す。検出用素子11および参照用素子21,31のそれぞれは、図4の如く基板104上に第1電極層105、反強磁性層106、固定層(第1磁性層)101、非磁性層102、自由層(第2磁性層)103、第2電極層107をこの順に積層することにより構成できる。固定層101は反強磁性層106により磁化方向が固定され、自由層103は磁界に応じて磁化方向が変化する。
【0029】
反強磁性層106、固定層101、非磁性層102、自由層103の積層順は、図4とは逆に、自由層103、非磁性層102、非磁性層102、反強磁性層106の順であってもよい。また、本実施の形態における固定層101と同様の機能を発揮できれば、必ずしも反強磁性層106を用いる必要はない。また、固定層101,自由層103、第1および第2電極層105,107の各々は多層構造のものであってもよい。
【0030】
図3では、検出用素子11および参照用素子21,31の面積を同じにして、それらの素子抵抗を等しくしている。ここで、検出用素子11および参照用素子21,31が形状磁気異方性を有しその形状が長方向を有する形(例えば長方形や楕円)である場合、あるいは、検出用素子11および参照用素子21,31の磁化容易軸の方向がその形状の長手方向である場合には、検出用素子11および参照用素子21,31の各自由層における無磁界時の磁化方向11b,21b,31bは素子の長手方向となる。
【0031】
本実施の形態では、検出用素子11および参照用素子21,31の各自由層における無磁界時の磁化方向11b,21b,31bは素子の長手方向であり、図3のように、検出用素子11および参照用素子21,31は、参照用素子21,31の長手方向がそれぞれ検出用素子11の長手方向に対し90度の角度を成すように配設されている。つまり無磁界時においては、検出用素子11の自由層の磁化方向11bと、参照用素子21,31の自由層の磁化方向21b,31bとは互いに90度異なる向きとなる。なお、参照用素子21,31の長手方向は同じ向きであり、無磁界時におけるそれらの自由層の磁化方向21b,31bは互いに同じ向きである。
【0032】
一方、検出用素子11および参照用素子21,31それぞれの固定層の磁化方向11a,21a,31aに関しては、検出用素子11の固定層の磁化方向11aと参照用素子21の固定層の磁化方向21aとは互いに平行(平行かつ同一方向)に設定され、参照用素子21の固定層の磁化方向21aと参照用素子31の固定層の磁化方向31aとは互いに反平行(平行かつ逆方向)に設定されている。
【0033】
従って、検出用素子11においては、自由層の無磁界時の磁化方向11bは、固定層の磁化方向11aに対して素子平面内で直交することになる。また参照用素子21においては、自由層の無磁界時の磁化方向21bは、固定層の磁化方向21aに対して平行になる。さらに参照用素子31においては、自由層の無磁界時の磁化方向31bは、固定層の磁化方向31aに対して反平行になる。
【0034】
検出用素子11の自由層と固定層には、それぞれ出力電圧(検出信号)を取り出すための信号検出用配線111が接続される。同様に、参照用素子21の自由層と固定層にはそれぞれ信号検出用配線211が接続され、参照用素子31の自由層と固定層にはそれぞれ信号検出用配線311が接続される。信号検出用配線111,211,311は、不図示の検出回路に接続される。これら信号検出用配線111,211,311は、レベルシフタの出力配線として機能する。
【0035】
また検出用素子11の近傍には、レベルシフタの入力信号を入力するための入力配線として機能する磁界発生用配線112が配設される。磁界発生用配線112は、検出用素子11から絶縁膜を介して電気的に分離されており、例えば検出用素子の直上または直下に、検出用素子11の自由層の無磁界時の磁化方向11bに平行に配置される。磁界発生用配線112にレベルシフタの入力信号としての電流もしくは電圧が印加されると、その周囲に磁界が発生するが、磁界発生用配線112はその発生磁界を検出用素子11が検出できる位置に配設される。
【0036】
検出用素子11および参照用素子21,31それぞれの固定層および自由層は、強磁性体である。強磁性体の材料としては、例えばCo、Fe、Co−Fe合金、Co−Ni合金、Co−Fe−Ni合金、Fe−Ni合金など、Co、Ni、Feを主成分とする合金、またNi−Mn−Sb、Co2−Mn−Geなどのホイスラー合金等がある。また、非磁性層は、Al、Ta、Si、Mg等の金属の酸化物、弗化物、窒化物などの絶縁体であればよく、またはそれらの積層構造であってもよい。
【0037】
検出用素子11および参照用素子21,31それぞれの固定層は、前述のように、反強磁性層上に積層されることにより磁化方向を固定されている。つまり、反強磁性層が固定層のスピンの向きを固定することで、固定層の磁化方向は一定に保たれる。反強磁性層の材料としては、Feなど保磁力が大きな強磁性材料、貴金属、FeおよびNiの少なくとも1つとマンガンあるいは酸素との化合物(例えばIr−Mn、Ni−Mn、Ni−O、Fe−Mn、Pt−Mnなど)がある。
【0038】
検出用素子11および参照用素子21,31の積層構造を構成する各層は、DCマグネトロンスパッタリングにより形成される。あるいは、分子線エピタキシー(MBE)法、各種スパッタ法、化学気相成長(CVD)法、蒸着法によって形成してもよい。
【0039】
また、検出用素子11および参照用素子21,31のパターニングは、例えばフォトリソグラフィ技術を用いることができる。フォトリソグラフィ技術を用いる場合、自由層、非磁性層および固定層となる膜をそれぞれ成膜後、その上にフォトレジストにより所望のパターンを形成する。そして当該フォトレジストをマスクにして、イオンミリングもしくは反応性イオンエッチングを行うことにより、所望の素子形状が得られる。あるいは電子線リソグラフィーや集束イオンビームによるパターニング手法を用いてもよい。
【0040】
信号検出用配線111,211,311は、例えばAlやAl合金、CuやCu合金といった低抵抗金属を含む材料で構成される。
【0041】
検出用素子11および参照用素子21,31は同一のプロセスで同一基板上に同時に形成することが望ましい。上記した各種の成膜法やフォトリソグラフィ法は、同時に実施すれば各層の膜厚や寸法のばらつきを極めて小さくでき、検出用素子11および参照用素子21,31における磁気抵抗のばらつきを抑えることができる。検出用素子11および参照用素子21,31の形状は、長方形に限られず、自由層の磁化方向を所望の向きに規定できれば、円盤形などの等方的形状であってもよい。またここではスピンバルブ膜の検出用素子11および参照用素子21,31を示したが、それらはTMR素子であってもよい。TMR素子を用いれば、大きな出力信号を得ることができると共に、各素子の小型化が可能である。
【0042】
検出用素子11および参照用素子21,31の固定層の磁化方向は、例えば次の方法で設定する。まず、デバイスを加熱して反強磁性層と固定層の見かけ上の交換相互作用が弱くなるブロッキング温度近傍(好ましくはブロッキング温度以上)にし、固定層を飽和磁化させる外部磁界を所望の方向に印加する。そして、その状態でデバイスを冷却させれば、固定層の磁化方向は一定の方向に固定される。
【0043】
この手法では、検出用素子11および参照用素子21,31それぞれの形成領域に、異なる向きの外部磁界を局所的に発生させる必要がある(図3の例では検出用素子11と参照用素子21の固定層の磁化方向11a,21aは同じなのでそれらに印加する外部磁界の向きは同じでよい)。例えば検出用素子11および参照用素子21,31の直上もしくは直下にそれぞれ配線を設け、デバイスを加熱した状態でその配線に異なる向きの電流を流して外部磁界を発生させることで実施可能である。
【0044】
あるいは、検出用素子11および参照用素子21,31の形成領域全体に同じ向きの外部時間を発生させ、検出用素子11および参照用素子21,31のそれぞれに対し、ブロッキング温度近傍にする熱処理を局所的に行う手法をとってもよい。例えば図3の場合、同じ向きの外部磁界を検出用素子11および参照用素子21,31の全体に印加した状態で、検出用素子11と参照用素子21に局所的な熱処理を行いそれらの固定層の磁化方向11a,21aを決定させ、その後、外部磁界の向きを反対にして、参照用素子31に局所的な熱処理を行いその固定層の磁化方向31aを決定させればよい。
【0045】
本実施の形態では、参照用素子21,31の周囲に外部磁界を遮蔽する磁気シールド5を設けてもよい。磁気シールド5は、高透磁率材料で構成できる。高透磁率材料としては、例えばNi−Fe合金がよく知られているが、Co、Ni、Fe等を主成分とする他の合金を用いてもよい。磁気シールド5を設けた場合、参照用素子21,31は外部磁界の影響を受けないので、参照用素子21の固定層および自由層の磁化方向21a,21bが互いに平行であり、参照用素子31の固定層および自由層の磁化方向31a,31bが互いに反平行である限りで、それらの方向は任意でよい。
【0046】
次に、図3の磁気レベルシフタの動作について説明する。レベルシフタの動作時においては、検出用素子11および参照用素子21,31には、それぞれ信号検出用配線111,211,311を通して一定電流Iが流される。
【0047】
その状態で、磁界発生用配線112に入力信号として既知の電流もしくは電圧が印加されると、磁界発生用配線112が発生した磁界Hが検出用素子11に印加される。それにより、検出用素子11の自由層の磁化方向が矢印11cのように回転する。
【0048】
検出用素子11が磁界Hを発生したときの検出用素子11の抵抗値Rは、
11=Rm+ΔR/2×H/|Hk| …(1)
と表されるので、検出用素子11の信号検出用配線111に現れる出力電圧V11(検出信号)は、
11=I×(Rm+ΔR/2×H/|Hk|) …(2)
となる。ここで、Rmは検出用素子11に飽和磁界が印加されたときの素子抵抗、ΔRは検出用素子11の磁気抵抗変化率、Hkは飽和磁界の強度である。
【0049】
参照用素子21においては、固定層の磁化方向21aと自由層の磁化方向21bとが常に平行であり、参照用素子31においては、固定層の磁化方向31aと自由層の磁化方向31bとが常に反平行である。また参照用素子21,31は、検出用素子11と同じ面積で形成されており、その磁気抵抗変化率ΔRと飽和磁界が印加されたときの素子抵抗Rmとが検出用素子11と同じである。そのため参照用素子21,31の抵抗値は、それぞれ正負の飽和磁界が検出用素子11に印加されたときの抵抗値と同じである。
【0050】
従って、参照用素子21の信号検出用配線211に現れる出力電圧V21(参照信号)と、参照用素子31の信号検出用配線311に現れる出力電圧V31(参照信号)のそれぞれは、
21=I×(Rm−ΔR/2) …(3)
31=I×(Rm+ΔR/2) …(4)
となる。
【0051】
よって、検出用素子11の出力電圧V11と参照用素子21の出力電圧V21との差で得られる差動信号ΔV21は、
ΔV21=I×(1+H/|Hk|)×ΔR/2 …(5)
となる。同様に、参照用素子31の出力電圧V31と検出用素子11の出力電圧V11との差で得られる差動信号ΔV31は、
ΔV31=I×(1−H/|Hk|)×ΔR/2 …(6)
と表される。
【0052】
さらに、ΔV21とΔV31の差をとると、
ΔV21−ΔV31=I×ΔR×H/|Hk| …(7)
となる。
【0053】
ここで、ΔRの値は2つの参照用素子21,31の出力信号V21,V31の差からその都度求めることができる。これは、本実施の形態では検出用素子11および参照用素子21,31の飽和磁界は一定の既知の値であり、飽和磁界における磁気抵抗から抵抗変化率を算出できるためである。よって、装置間で抵抗値のばらつきがある場合や温度特性により抵抗値が変化した場合でも、測定の都度、抵抗変化率ΔRを求めることができ、実使用の環境下における正確な抵抗変化率ΔRを用いて磁界Hを検出することが可能である。
【0054】
図3のレベルシフタによれば、検出用素子11および参照用素子21,31の信号検出用配線111,211,311に現れる電圧信号V11,V21,V31と、上記の式(5)〜(7)のいずれかを用いることにより、磁界発生用配線112に入力した入力信号に対応した出力信号を得ることができる。すなわち参照用素子21,31の出力電圧V21,V31から基準信号を生成し、その基準信号と検出用素子11の電圧信号V11と比較することで、出力信号を得ることができる。
【0055】
このように本実施の形態のレベルシフタでは、磁界発生用配線112に入力された入力信号に対応する出力信号を、磁界発生用配線112から電気的に分離された検出用素子11および参照用素子21,31から得ることができる。この構成では、磁界発生用配線112と検出用素子11との間の絶縁膜を厚膜化することによる高耐圧化が可能であり、サージ耐性に優れるレベルシフタを得ることができる。
【0056】
なお、上記の式(5)〜(7)で表される各差動信号は、検出用素子11および参照用素子21,31の各出力電圧V11,V21,V31を数値化して演算処理することによって得てもよい。また上記のΔV21とΔV31は、検出用素子11および参照用素子21,31を用いてブリッジ回路を構成しても得ることが可能であるが、形成面積が大きくなる点に留意すべきである。
【0057】
本実施の形態においては、検出用素子11および参照用素子21,31のそれぞれに一定電流を流すように説明したが、各電流の大きさの比が既知であれば一定でなくてもよい。検出用素子11および参照用素子21,31を流れる電流の大きさの比が分かれば、上記と同様の計算によって磁界発生用配線112が発生する磁界Hを検出することができる。またここでは検出用素子11において、固定層の磁化方向11aと自由層の無磁界時の磁化方向11bとを素子平面内で直交させたが、必ずしも直交させなくてもよい。両者の関係が平行あるいは反平行でなければ、検出用素子11を用いて磁界発生用配線112が発生する磁界Hを検出できる。
【0058】
本実施の形態によれば、検出用素子11および参照用素子21,31の出力電圧V11,V21,V31から得られる差動信号を用いるため大きな出力信号を得ることができる。さらに、検出用素子11および参照用素子21,31の抵抗変化率ΔRを、参照用素子21,31の出力信号からその都度得ることができるため、検出用素子11および参照用素子21,31の抵抗値に装置ごとのばらつきがある場合や、使用環境の温度変化に起因してそれらの抵抗値が変化した場合でも、信頼性の高い出力信号を安定して得ることができる。また、参照用素子21,31の出力電圧V21,V31から、検出用素子11の出力電圧の最大値と最小値の両方が分かり、それらを演算処理に利用すれば、高い信頼性と精度が期待できる。
【0059】
次に、検出用素子11の構造について説明する。図5は、実施の形態1に係るレベルシフタの構造の一例を示す図であり、検出用素子11の形成領域(検出用素子部)と論理集積回路の形成領域(論理回路部)の一部を示す部分断面図である。
【0060】
図5のように、レベルシフタは同一の基板400上に形成されている。基板400としては、従来よりパワーデバイスに広く用いられているSiでもよいが、高耐圧、低損失、高耐熱のパワーデバイスを実現できる半導体材料として近年注目されているSiC、GaN、酸化物半導体、ダイヤモンド半導体などのワイドバンドギャップ半導体を用いることもできる。
【0061】
論理回路領域には、ゲート絶縁膜411、ゲート電極412およびサイドウォール413を備えるトランスファゲートトランジスタ501が形成されている。トランスファゲートトランジスタ501上は、層間絶縁膜410で覆われる。
【0062】
層間絶縁膜410内にはトランスファゲートトランジスタ501と上層の配線425とを接続するコンタクト414が形成される。コンタクト(接続部材)414の形成は、層間絶縁膜410を貫通するコンタクトホールを形成し、それを埋め込むように層間絶縁膜410上にタングステン膜を形成して、当該タングステン膜に対してCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理またはRIE(Reactive Ion Etching)法などを用いたエッチバック処理を施すことにより行われる。コンタクト414の材料としては、タングステンの他、シリコンや、アルミニウム、銅、チタン、タンタルといった金属、またはそれら金属の合金や窒化物等も用いることができる。またコンタクト414の形成方法としえは、上記の方法の他に、メッキ法、スパッタリング法、CVD法などを用いてもよい。
【0063】
一方、検出用素子部において、検出用素子11は、層間絶縁膜410上に形成されている。検出用素子11は、層間絶縁膜410上に所定の多層膜構造(図4参照)を形成し、それを所定の形状にパターニングすることにより形成される。上記したように、検出用素子11としては非磁性層としてトンネル絶縁膜を用いるTMR素子や、非磁性導電層を用い、膜面垂直方向のGMR効果を利用したGMR素子を用いてもよい。
【0064】
図5では、検出用素子11から出力電圧を得るための手段(図3の検出用素子11に相当)として、検出用素子11の上下にそれぞれ接続する配線421,424を設けている。検出用素子11とその上の配線424との間にコンタクト423を介在させているが、その間は直接接続していてもよい。
【0065】
逆に、図5では検出用素子11とその下の配線421との間は直接接続されているが、その間にコンタクト(接続部材)を介在させてもよい。その場合に設けるコンタクトは、ルテニウム、銅、アルミニウム、タンタルなどの低抵抗の金属を用いて形成することが好ましい。またその厚さは、検出用素子11を構成する各層の平坦性が損なわれないように、300nm以下とすることが好ましい。
【0066】
また検出用素子11および配線421,424は、図4に示したように基板400のすぐ上の層に形成されていてもよい。
【0067】
検出用素子11の各磁性層(図4の固定層101および自由層103に相当)となる強磁性材料としては、ニッケル、鉄、および/またはコバルトを主成分とする磁性材料が好ましいが、磁気特性や熱安定性の向上を図る目的で、硼素、窒素、シリコンなどの添加物を導入してもよい。例えばNiMnSb、Co2MnGeなどのハーフメタル材料を用いた場合、ハーフメタルは一方のスピンバンドにエネルギーギャップが存在するので、より大きな磁気抵抗効果を得ることができ、それにより大きな信号出力を得ることができる。各磁性層の厚さは、好ましくは0.3〜50nm程度である。
【0068】
検出用素子11の固定層となる磁性層は、単層構造に限られず、CoFe/Ru/CoFeのように強磁性/非磁性/強磁性の積層構造としてもよい。そのような積層構造を用いて、固定層の磁化に起因する漏洩成分を抑制できる膜構造設計とすれば、より安定した磁気検出動作が可能になる。
【0069】
検出用素子11の非磁性層(図4の非磁性層102に相当)となる非磁性材料としては、アルミニウム、シリコン、タンタル、マグネシウムなどの金属およびそれらの合金、それら金属および合金の酸化物または窒化物が用いられる。非磁性層は、0.3〜5nm程度と非常に薄く形成される。また反強磁性層(図4の反強磁性層106に相当)の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、0.3nm〜50nmの範囲が好ましい。
【0070】
本実施の形態では、反強磁性層として厚み20nmの白金マンガン合金、固定層(強磁性層)として厚み3nmのコバルト鉄合金、非磁性層(トンネル絶縁層)として厚み1nmのアルミニウム酸化物、自由層(強磁性層)として厚み3nmのニッケル鉄合金をそれぞれ用いた。これら各層は、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、各種スパッタ法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、蒸着法など、通常の薄膜形成技術を用いて形成することができる。
【0071】
また本実施の形態では、検出用素子11(並びに不図示の参照用素子21,31)上を保護膜422で覆っている(言い換えれば、検出用素子11上の絶縁膜を、保護膜422と層間絶縁膜410の二層構造にしている)。保護膜422は、検出用素子11の形成後に行われるドライエッチング工程や洗浄工程において、磁気抵抗効果素子をダメージから保護するように機能する。
【0072】
検出用素子11が受ける可能性のあるダメージとしては、例えば検出用素子11上に層間絶縁膜420としてシリコン酸化膜を形成する場合に、400℃程度の酸化雰囲気により磁性層が酸化し、磁気特性が劣化してしまうことがある。この磁性層の酸化を防止する目的であれば、保護膜422は、シリコン窒化膜などの非酸化性雰囲気下で成膜可能な薄膜を用いればよい。検出用素子11の表面がシリコン窒化膜の保護膜422で被膜されることにより、検出用素子11が酸化から保護される。
【0073】
保護膜422としては、絶縁性金属窒化物、絶縁性金属炭化物、およびFeよりも酸化物生成自由エネルギーが低い金属の酸化処理によって形成した金属酸化物、あるいはポリイミドなどの有機膜のうち少なくとも1つを含むものがよい。このような材料の保護膜422を用いれば、少なくともFeを含む磁性層を用いた検出用素子11の製造工程において、検出用素子11の酸化を抑制できる。その結果、製造が容易でかつ動作特性が安定した磁気レベルシフタを得ることができる。また検出用素子11のダメージを防止しつつ層間絶縁膜430を厚く形成できるため、レベルシフタの高耐圧化にも寄与できる。
【0074】
但し、シリコン窒化膜のように比較的誘電率の高い保護膜422を用いる場合には、次のことに留意すべきである。論理回路部では、回路の動作速度やアクセスタイミングをも考慮して、配線間の容量や配線抵抗を設定する必要がある。よって誘電率の高い絶縁膜が論理回路部に形成されると、論理回路部における配線間容量などが設計パラメータから乖離し、回路の動作不良が生じる可能性がある。よって誘電率の高い保護膜422は、必要でなければ論理回路部に設けないことが好ましい。
【0075】
上記の配線421は、層間絶縁膜410上に形成され、その上に検出用素子11が形成される。コンタクト423は、検出用素子11の上に保護膜422および層間絶縁膜420を形成した後、保護膜422および層間絶縁膜420に検出用素子11に達するコンタクトホールを形成して、所定の導電材料を埋め込むことにより形成される。そして層間絶縁膜420の上に所定パターンの配線424が形成される。
【0076】
層間絶縁膜420の上には、さらに層間絶縁膜430が形成される。図5の例では、論理回路部の層間絶縁膜430内には、その上の配線441に接続するコンタクト431が図示されている。コンタクト431は、上記のコンタクト414と同様の材料や形成方法を用いて形成できる。
【0077】
一方、検出用素子部においては、層間絶縁膜430の上に磁界発生用配線112が形成される。ここでは検出用素子11の上方(基板400から遠い側)に磁界発生用配線112を設ける構成を示しているが、磁界発生用配線112は、入力信号に応じた磁界を検出用素子11に与えることができる位置に配設されていればよく、例えば検出用素子11の下方(基板400に近い側)に配設されてもよい。磁界を検出用素子11に効率的に与えるために、磁界発生用配線112は検出用素子の直上または直下に配置されることが好ましい。
【0078】
また本実施の形態では、検出用素子11の上方に形成された磁界発生用配線112の上面および両側面を、図6の如く高透磁率材料112a(磁性材料)で被膜する。これにより磁界発生用配線112から上方、側方への漏洩磁界を抑制することができ、磁界発生用配線112が発生した磁界を効率的に検出用素子11へと与えることができる。それにより検出用素子11の誤動作が抑えられ、様々な環境で安定して動作するレベルシフタが得られる。また、磁界発生用配線112から検出用素子11へと磁界が効率的に与えられることにより、その間の層間絶縁膜430をより厚くできるため、レベルシフタの高耐圧かにも寄与できる。
【0079】
高透磁率材料112aは、磁界発生用配線112の検出用素子11に対抗する面以外の三方に形成することが望ましい。例えば磁界発生用配線112を検出用素子11の下方に配設する場合には、磁界発生用配線112の下面と両側面を高透磁率材料112aで覆うとよい。
【0080】
本実施の形態では、入力信号に応じた磁界を検出用素子11に与える磁界発生用配線112は一本のみ設ける構成としたが、二本以上設けてもよい。例えば複数の検出用素子11を並列配置させれば、検出用素子11に与える磁界の強度を高めたり、磁界の印加範囲を広げることができる。また、複数の磁界発生用配線112のうちの一部に逆極性の電流が流れるようにすれば、一部の漏洩磁界をキャンセルさせることができる。
【0081】
ここで、各配線の材料について説明する。検出用素子11に直接接続される配線421には銅や、タンタル、シリコン、タングステン、アルミニウム、チタン、ルテニウムなどの金属やそれら合金、化合物などを適用できる。それ以外の配線424,425,441および磁界発生用配線112についても同様であるが、銅を用いる場合はダマシン法を用いて形成し、タンタル、シリコン、タングステン、アルミニウム、チタン、ルテニウムなどの金属やそれら合金、化合物などを適用した場合には、スパッタリング法などで薄膜を形成後、フォトリソグラフィ技術ならびにドライエッチングを行ってパターニングする。
【0082】
なお、製造プロセスやデバイス使用時に高温雰囲気に曝されることが想定され、その熱によって配線とそれに接触する部材との相互拡散が懸念される場合には、配線の表面に拡散防止層を設けておくとよい。拡散防止層としては、チタンやタンタル、ルテニウムなどの金属、およびその合金や窒化物が利用できる。
【0083】
また本実施の形態では、検出用素子11および参照用素子21,31の出力信号(検出信号および参照信号)を電圧信号として説明したが、これらは電流信号であってもよい。これは以下の各実施の形態でも同様である。
【0084】
<実施の形態2>
実施の形態2では、図5に示したレベルシフタの構成の変更例を示す。図7は、実施の形態2に係るレベルシフタの構造を示す部分断面図である。本実施の形態では、検出用素子11に接続する配線421を、トランスファゲートトランジスタ502のソースまたはドレインに接続させた構成としている。図7において、図5に示したものと同様の機能を有する要素には同一符号を付してあるので、ここではそれらの説明は省略する。
【0085】
図5では、検出用素子11とそれに接続する配線421,424およびコンタクト423、並びに検出用素子11を覆う保護膜422は、最下層の層間絶縁膜410上に形成していたが、本実施の形態ではそれらを第2層目の層間絶縁膜420上に形成している。層間絶縁膜420の上層に、検出用素子11を覆う層間絶縁膜450が設けられるため、論理回路部の配線441と配線425との間に2層の層間絶縁膜430,450が存在することになる。そのため、配線441と配線425とを接続するコンタクト431は、層間絶縁膜430,450を貫通するように形成される。
【0086】
検出用素子部の基板400上には、素子分離絶縁膜401およびトランスファゲートトランジスタ502が設けられている。トランスファゲートトランジスタ502は、論理回路部のトランスファゲートトランジスタ501と同様に、ゲート絶縁膜415、ゲート電極416、サイドウォール417を有する構造となっている。検出用素子11に接続する配線421は、その下層に形成された配線426およびコンタクト418を介してトランスファゲートトランジスタ502のソースまたはドレインに接続される。
【0087】
<実施の形態3>
図8は、実施の形態3に係るレベルシフタの基本構成を示す図である。当該レベルシフタは、磁界発生用配線112とは別に、検出用素子11の抵抗値を補償するために既知の磁界(補償用磁界)を印加可能な磁界発生用配線(補償用配線)113を有している。補償用配線113は、レベルシフタの入力信号とは別の電流(補償用電流)を流すことで、検出用素子11に補償用電界Hcを印加することができる。
【0088】
検出用素子11および参照用素子21にそれぞれ一定電流Iを流しつつ、補償用配線113から補償用磁界Hcを検出用素子11に与えたとき、検出用素子11の出力電圧V11は、
11=I×(Rm+ΔR/2×Hc/|Hk|) …(8)
となる。一方、参照用素子21の出力電圧V21は上記の式(3)であるので、検出用素子11の出力電圧V11と参照用素子21の出力電圧V21との差で得られる差動信号ΔV21は、
ΔV21=V11−V21=I×(1+Hc/|Hk|)×ΔR/2 …(9)
となる。ここでΔRは、例えば無磁界時の検出用素子11の出力電圧と参照用素子21の出力電圧の差から求めることが可能であり、さらに既知の値である電流Iおよび補償用磁界Hcを用いることで、検出用素子11の飽和磁界Hkを算出できる。例えばレベルシフタの動作中に温度が変化した場合など、必要に応じて飽和磁界Hkの補償を実施すれば、飽和磁界Hkの変動による誤差を補償でき、レベルシフタの動作の信頼性が向上する。また飽和磁界Hkを補償するために、外部の磁界発生器を用いる必要がない。本実施の形態によれば、検出用素子11の抵抗と磁界との関係を確定できるため、アナログ信号のレベルシフトを含めた高精度動作が可能となり、磁気レベルシフタの一層の多機能化が期待できる。
【0089】
なお、外部磁界がない条件下では、1点の補償用磁界Hcのみを検出用素子11で測定すれば飽和磁界Hkの算出が可能である。外部磁界が存在する状態であってもそれが一定であれば、2点の補償用磁界Hc(例えば−Hcと+Hc)を、検出用素子11で測定すれば飽和磁界Hkを算出できる。
【0090】
磁界発生用配線112と同様に、補償用配線113の表面にも、検出用素子11に対向する面を除く表面に高透磁率材料を設けることが好ましい。それにより、補償用配線113から効率よく検出用素子11に補償用磁界Hcを与えることができる。
【0091】
また、磁気抵抗効果素子の磁化回転速度はナノ秒オーダーと高速であるから、補償用配線113を設けることなく、レベルシフタの動作を時間的に分割して飽和磁界Hkの補償用の期間を設け、磁界発生用配線112を用いて飽和磁界Hkの補償動作を行ってもよい。即ち、磁界発生用配線112に入力信号の電流と補償用電流とを交互に流し、補償用電流を流したタイミングでの検出用素子11の出力電圧V11から飽和磁界Hkの算出を行ってもよい。
【0092】
また本実施の形態では、レベルシフタの通常動作に用いられる検出用素子11の出力電圧を用いて飽和磁界Hkの補償を行う構成を示したが、飽和磁界Hkの補償専用の磁気抵抗効果素子を別途も受けてもよい。この場合、飽和磁界Hkを通常動作と同時に行え、補償した飽和磁界Hkの値を随時フィードバックできるため、さらなる高性能化・高精度化を図ることができる。但し、必要な磁気抵抗効果素子が増えるため、形成面積が増大する点に留意すべきである。
【0093】
<実施の形態4>
本発明に係るレベルシフタは、多チャンネル化した場合に従来の磁気レベルシフタに比べて小型化が容易である。以降の各実施の形態では、本発明に係る多チャンネル型レベルシフタの構成例を示す。
【0094】
例えば実施の形態1のレベルシフタ(図3)は、3つの磁気抵抗効果素子を用いて構成されており、4つの磁気抵抗効果素子を用いる一般的なブリッジ回路に対して、素子面積を4分の3程度に低減できる。
【0095】
図9は、実施の形態4に係る多チャンネル型レベルシフタの概略構成図であり、実施の形態1のレベルシフタを4チャンネル化したものである。各チャンネル用に4つの検出用素子11,12,13,14と、4つの磁界発生用配線112,122,132,142が設けられている。検出用素子11,12,13,14には、それぞれ信号検出用配線111,121,131,141が接続しており、各チャンネルの出力電圧を得ることができる。なお図9では、それらのうちの磁界発生用配線142の入力信号が活性化された状態を示している。
【0096】
本発明に係るレベルシフタは、チャンネル数に関わらず、1組の参照用素子21,31を有していればよいので、4チャンネル型レベルシフタは、4つの検出用素子11〜14と2つの参照用素子21,31の合計6つの磁気抵抗効果素子を用いて構成できる。一方従来のブリッジ回路を用いて4チャンネル型レベルシフタを構成すると、各チャンネルごとに4つの磁気抵抗効果素子が用いられるため、合計24個もの磁気抵抗効果素子が必要になる。すなわち本実施の形態の4チャンネル型レベルシフタでは、素子面積を従来の4分の1程度に低減できる。
【0097】
<実施の形態5>
図10は、実施の形態5に係る多チャンネル型レベルシフタの概略構成図であり、図9の4チャンネル型レベルシフタの変形例である。当該レベルシフタでは、図9に対し、参照用素子21,31の配置方向および磁化方向を検出用素子11〜14と同じにした上で、参照用素子21,31に互いに逆向きで同じ大きさの磁界を与える折り返し形状の磁界発生用配線212を設けている。
【0098】
上記したように、磁化抵抗効果素子が形状磁気異方性を有しその形状が長手方向を有する形である場合、あるいは、磁化抵抗効果素子の磁化容易軸の方向がその形状の長手方向である場合には、その自由層における無磁界時の磁化方向は素子の長手方向となる。本実施の形態では、検出用素子11〜14および参照用素子21,31の各自由層における無磁界時の磁化方向は素子の長手方向であり、図10のように、それらの長手方向を全て揃えている。それにより、検出用素子11〜14および参照用素子21,31の各自由層の無磁界時の磁化方向は、全て同じ向きになる。またその向きは、検出用素子11〜14および参照用素子21,31の固定層の磁化方向に対して90度異なる向きである。なお、図10では、磁界発生用配線112,142の入力信号が活性化された状態を示している。
【0099】
参照用素子21,31に磁界を与える磁界発生用配線212には、各チャンネルの入力信号が活性化されるとき一定の電流が流される。それにより参照用素子21,31には逆方向で大きさの等しい磁界が印加される。よってこのときの参照用素子21,31の出力電圧の差(差動出力)から、その中心の値(中点信号)を生成できる。中点信号は、無磁界時の磁気抵抗効果素子(抵抗値Rm)の出力電圧に相当する。この中点信号を基準信号として用い、中点信号と各チャンネルの検出用素子11〜14の出力電圧との比較によってレベルシフト動作が可能となる。
【0100】
ここでは参照用素子21,31に磁界を与える磁界発生用配線212に流す電流を、各入力信号が活性化したときに検出用素子11〜14に磁界を与える磁界発生用配線112,122,132,142に流れる電流と同じにしている。検出用素子11〜14および参照用素子21,31は同一構成であるため、例えば図10のように、磁界発生用配線112,142の入力信号が活性化した状態では、検出用素子11,14の自由層の磁化方向と、片方の信号検出用配線211の自由層の磁化方向とが同じ向きになる。
【0101】
本実施の形態では、検出用素子11〜14および参照用素子21,31の磁化方向が全て同じでよいため、製造工程が簡略化される。
【0102】
図10では、検出用素子11〜14および参照用素子21,31のそれぞれは角部を丸めた形状としているが、素子の磁化方向を決めることができれば形状は任意でよい。参照用素子21,31と検出用素子11〜14の寸法は必ずしも同じでなくてよく、面積比が既知であれば、素子の縦横寸法比が異なってもよい。
【0103】
また、検出用素子11〜14および参照用素子21,31は、必ずしも図10のように一列に並べなくてもよく、正常な動作が可能であればその配置は任意でよい。また、デバイス断面から見た検出用素子11〜14と参照用素子21,31と配置も、正常な動作が可能であればその配置は任意でよい。例えば検出用素子11〜14と参照用素子21,31とを互いに異なる層に配置してもよい。また例えば、参照用素子21,31を、磁界発生用配線212を挟んで上下の層にそれぞれ配置すると、磁界発生用配線212を折り返し形状にすることなく、参照用素子21,31に互いに逆方向の磁界を与えることができる。
【0104】
磁界発生用配線212への電流は、独立の電源回路から供給しても、磁界発生用配線112,122,132,142用の電源回路からスイッチング素子等を介して供給してもよい。独立の電源回路を用いる場合には、参照用素子21,31の磁界発生用配線212と、検出用素子11〜14の磁界発生用配線112,122,132,142とに、異なる大きさの電流を供給してもよい。例えば、磁界発生用配線212に参照用素子21,31に飽和磁界を与える電流を流せば、参照用素子21,31が飽和磁化され、図10のレベルシフタを、図9のレベルシフタと実質的に同様に動作させることができる。
【0105】
<実施の形態6>
図11は、実施の形態6に係る多チャンネル型レベルシフタの概略構成図であり、図10の4チャンネル型レベルシフタの変形例である。当該レベルシフタでは、図10に対し、参照用素子21,31の配置方向を90度回転させたものである。即ち、参照用素子21,31の長手方向は、検出用素子11〜14の長手方向とは90度異なっている。よって本実施の形態では、検出用素子11〜14と参照用素子21,31とでは、の自由層の無磁界における磁化方向が互いに90度異なる。
【0106】
一方、検出用素子11〜14と参照用素子21,31固定層の磁化方向は図10と同じである。よって無磁界の状態では、参照用素子21の固定層と自由層の磁化方向は互いに同じ向きになり、参照用素子31の固定層と自由層の磁化方向は互いに逆向きになる。なお、また図11のレベルシフタにおいても、参照用素子21,31には、折り返し形状の磁界発生用配線212が設けられる。
【0107】
本実施の形態では、磁界発生用配線212から参照用素子21,31に与えられる磁界の向きは、それらの自由層の無磁界時の磁化方向に沿った方向、すなわち参照用素子21,31の長手方向(磁化容易軸方向)である。但し、上記のように磁界発生用配線212から参照用素子21,31に与えられる磁界は互いに逆向きである。
【0108】
従って、磁界発生用配線212から、参照用素子21,31の自由層の磁化反転が生じる強度の磁界を与えれば、参照用素子21,31の固定層と自由層の磁化方向の関係が、片方で同じ向き、もう片方で逆向きとなる。従って、図11のレベルシフタは、実質的に図9のレベルシフタと実質的に同様に動作させることができる。
【0109】
また参照用素子21,31が、検出用素子11〜14の最大抵抗状態または最小抵抗状態と等しくなるため、温度変化により検出用素子11〜14の抵抗変化率が変化しても、その都度、参照用素子11,21の出力電圧から抵抗変化率を算出することができる。よって、低温から高温まで安定した動作が可能となるだけでなく、実使用の環境下における抵抗変化率を用いて精度よく外部磁界を検出することができ、信頼性の高いレベルシフタが得られる。
【0110】
<実施の形態7>
図12は、実施の形態7に係る多チャンネル型レベルシフタの概略構成図であり、4チャンネル型レベルシフタの例を示している。本実施の形態のレベルシフタは、各チャンネル用の4つの検出用素子11〜14と、各チャンネル用の4つの参照用素子21〜24を備えている。検出用素子11〜14および参照用素子21〜24は、磁化方向が全て同じ向きに設定されている。また、参照用素子21〜24には、それぞれ信号検出用配線211〜224が接続されている。
【0111】
上記したように、磁化抵抗効果素子が形状磁気異方性を有しその形状が長手方向を有する形である場合、あるいは、磁化抵抗効果素子の磁化容易軸の方向がその形状の長手方向である場合には、その自由層における無磁界時の磁化方向は素子の長手方向となる。本実施の形態では、検出用素子11〜14および参照用素子21〜24の各自由層における無磁界時の磁化方向は素子の長手方向であり、図11のように、それらの長手方向を全て揃えている。それにより、検出用素子11〜14および参照用素子21〜24の各自由層の無磁界時の磁化方向は、全て同じ向きになる。またその向きは、検出用素子11〜14および参照用素子21〜24の固定層の磁化方向に対して90度異なる向きである。
【0112】
第1のチャンネルに対応する検出用素子11と参照用素子21には、同一の磁界発生用配線112が設けられるが、磁界発生用配線112は、検出用素子11と参照用素子21に互いに90度異なる磁界を印加するよう構成されている。具体的には、磁界発生用配線112が検出用素子11に与える磁界の向きは、当該検出用素子11の自由層の無磁界時の磁化方向と90度異なり、磁界発生用配線112が検出用素子11に与える磁界の向きは、参照用素子21の自由層の無磁界時の磁化方向と同じである。
【0113】
同様に、第2のチャンネルに対応する検出用素子12と参照用素子22には、磁界発生用配線122から互いに90度異なる磁界が印加される。また第3のチャンネルに対応する検出用素子13と参照用素子23には、磁界発生用配線132から互いに90度異なる磁界が印加され、第4のチャンネルに対応する検出用素子14と参照用素子24には、磁界発生用配線142から互いに90度異なる磁界が印加される。
【0114】
図12では、磁界発生用配線132の入力信号が活性化された状態を示している。この状態では、磁界発生用配線132が発生する磁界は、検出用素子13の自由層のスピンの向きを回転させる。また磁界発生用配線132が発生した磁界は、参照用素子23に対しては、自由層の無磁界時の磁化方向に沿った方向に印加されるため、参照用素子23の磁化方向が安定化される。自由層の無磁界時の磁化方向に沿った方向の磁界が印加された参照用素子23の出力電圧は、無磁界時の出力電圧(すなわち中点信号)に等しい。従って、参照用素子23が出力する安定した中点信号を基準信号として用い、この基準信号と参照用素子31の出力電圧との比較によって、安定したレベルシフト動作が可能となる。
【0115】
本実施の形態では、1チャンネルあたり2つの磁気抵抗効果素子が設けられるため、3チャンネル以上のレベルシフタでは実施の形態4〜6の構成よりも多くの磁気抵抗効果素子が必要となるが、1チャンネルあたり4つの磁気抵抗効果素子を用いる従来のブリッジ回路によるレベルシフタに比べると、形成面積を半分程度にできる。
【0116】
図12では、検出用素子11〜14および参照用素子21〜24の形状をそれぞれ楕円形としたが、素子の磁化方向を決めることができれば形状は任意でよい。参照用素子21,31と検出用素子11〜14の寸法は必ずしも同じでなくてよく、面積比が既知であれば、素子の縦横寸法比が異なってもよい。
【0117】
また、検出用素子11〜14および参照用素子21,31は、必ずしも図10のように一列に並べなくてもよく、正常な動作が可能であればその配置は任意でよい。また、デバイス断面から見た検出用素子11〜14と参照用素子21,31と配置も、正常な動作が可能であればその配置は任意でよい。
【0118】
以上の各実施の形態において、検出素子や参照素子に与える磁界は、配線に電流もしくは電圧を印加することによって生じる誘導磁界を利用したが、磁界発生源はこれに限らず、例えば基板上に形成したコイルなどを用いてもよい。また、バイアス磁界は、薄膜状の磁石等から発生させてもよい。
【0119】
また、それぞれの磁気抵抗効果素子は、同じ働きをする複数の磁気抵抗効果素子を直列または並列に接続させたものに置き換えてもよい。この場合、複数の磁気抵抗効果素子の信号の平均化して用いることにより、精度向上が期待できる。
【0120】
本発明に用いる磁気抵抗効果素子としては、トンネル磁気抵抗効果素子が好ましいが、巨大磁気抵抗効果素子など、磁化方向が固定された強磁性層を含むその他の磁気抵抗効果素子を用いることができる。また、このレベルシフタの構成における磁気抵抗効果素子は、それらが積層されたものであってもよい。
【0121】
さらに、磁気抵抗効果素子に磁界を与える配線は、層間絶縁膜を介して磁気抵抗効果素子の上層または下層に配設される旨を説明したが、磁気抵抗効果素子との絶縁を重文に確保できればそれと同一の層に配置してもよい。
【0122】
また本発明のレベルシフタは磁気抵抗効果素子を用いているため、光システムや容量結合などを用いたレベルシフタよりも高温下で安定した動作が可能である。さらに、SiC、GaN、酸化物半導体、ダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ半導体基板と組み合わせることにより、200℃を超える高温域での安定動作が可能である。また、従来のSi半導体基板の場合でも150℃を超える温度域で使用することができる。
【符号の説明】
【0123】
11〜14 検出用素子、21〜24,31,32 参照用素子、5 磁気シールド、112,122,132,142 磁界発生用配線、112a 高透磁率材料、113 補償用配線、212 参照用素子の磁界発生用配線、400 基板、401 素子分離絶縁膜、410 層間絶縁膜、414,418,423,431 コンタクト、420,430,440 層間絶縁膜、421,424,425,426,441,450 配線、422 保護膜、501,502 トランスファゲートトランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号が印加される入力配線と、
前記入力配線が前記入力信号に応じて発生した磁界に対応した値をとる検出信号を出力する磁気抵抗効果素子である検出用素子と、
前記検出用素子と同一構造の磁気抵抗効果素子であり、一定の値をとる参照信号を出力する参照用素子とを備え、
前記検出信号と前記参照信号の差に基づいて出力信号を生成する
ことを特徴とする磁気レベルシフタ。
【請求項2】
前記入力配線は、前記検出用素子に対向する面を除く表面が磁性材料で覆われている
請求項1記載の磁気レベルシフタ。
【請求項3】
前記検出用素子および前記参照用素子を覆う層間絶縁膜と、
前記検出用素子および前記参照用素子と前記層間絶縁膜との間に配設され、前記検出用素子および前記参照用素子を保護する保護膜とをさらに備える
請求項1または請求項2記載の磁気レベルシフタ。
【請求項4】
前記検出用素子の抵抗値の補償を行うために当該検出用素子に既知の磁界を与えることが可能な補償用配線をさらに備える
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の磁気レベルシフタ。
【請求項5】
前記補償用配線は、前記検出用素子に対向する面を除く表面が磁性材料で覆われている
請求項4記載の磁気レベルシフタ。
【請求項6】
前記検出用素子および参照用素子のそれぞれは、
磁化方向が固定された磁性層である固定層と、
外部磁界により磁化方向が変化する磁性層である自由層と、
前記固定層と前記自由層の間に配設された非磁性層とを含む
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の磁気レベルシフタ。
【請求項7】
前記参照用素子を2つ有し、
一方の参照用素子は、固定層の磁化方向と自由層の無磁界時の磁化方向とが同じ向きであり、
他方の参照用素子は、固定層の磁化方向と自由層の無磁界時の磁化方向とが逆向きである
請求項6記載の磁気レベルシフタ。
【請求項8】
前記検出用素子および前記参照用素子は形状磁気異方性を有し、
前記検出用素子と前記参照用素子とは、長手方向が90度異なるように配設されている
請求項7記載の磁気レベルシフタ。
【請求項9】
前記検出用素子と前記参照用素子とは、磁化容易軸の方向が90度異なっている
請求項7記載の磁気レベルシフタ。
【請求項10】
前記参照用素子の周囲には、外部磁界を遮断する磁気シールドが設けられている
請求項7記載の磁気レベルシフタ。
【請求項11】
前記入力配線および前記検出用素子を各チャンネルごとに設けて多チャンネル化した
請求項7から請求項10のいずれか一つに記載の磁気レベルシフタ。
【請求項12】
前記参照用素子に一定の磁界を与える磁界発生用配線をさらに備える
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の磁気レベルシフタ。
【請求項13】
前記検出用素子および参照用素子のそれぞれは、
磁化方向が固定された磁性層である固定層と、
外部磁界により磁化方向が変化する磁性層である自由層と、
前記固定層と前記自由層の間に配設された非磁性層とを含む
請求項12記載の磁気レベルシフタ。
【請求項14】
前記参照用素子を2つ有し、
2つの前記参照用素子は、固定層の磁化方向が互いに同じ向き、且つ、自由層の無磁界時の磁化方向も互いに同じ向きであり、
前記磁界発生用配線は、2つの前記参照用素子に対し、互いに逆向きの磁界を与える
請求項13記載の磁気レベルシフタ。
【請求項15】
前記磁界発生用配線は、2つの前記参照用素子に対し、互いに逆向きの磁界を与えるように折り返された1本の配線である
請求項14記載の磁気レベルシフタ。
【請求項16】
前記検出用素子および前記参照用素子は形状磁気異方性を有し、
前記検出用素子と前記参照用素子とは、長手方向が同じになるように配設されている
請求項14または請求項15記載の磁気レベルシフタ。
【請求項17】
前記検出用素子と前記参照用素子とは、磁化容易軸の方向が同じである
請求項14または請求項15記載の磁気レベルシフタ。
【請求項18】
前記入力信号の活性化により入力配線から磁界が与えられた状態での前記検出用素子の自由層の磁化方向と、前記磁界発生用配線から磁界が与えられた状態での片方の前記参照用素子の自由層の磁化方向とが同じ方向である
請求項16または請求項17記載の磁気レベルシフタ。
【請求項19】
前記検出用素子および前記参照用素子は形状磁気異方性を有し、
前記検出用素子と前記参照用素子とは、長手方向が90度異なるように配設されている
請求項14または請求項15記載の磁気レベルシフタ。
【請求項20】
前記検出用素子と前記参照用素子とは、磁化容易軸の方向が90度異なっている
請求項14または請求項15記載の磁気レベルシフタ。
【請求項21】
前記磁界発生用配線から磁界が与えられた状態での2つの前記参照用素子の自由層の磁化方向は互いに逆向きになる
請求項19または請求項20記載の磁気レベルシフタ。
【請求項22】
前記磁界発生用配線から磁界が与えられた状態での片方の前記参照用素子では、自由層の磁化方向と固定層の磁化方向とが逆向きになる
請求項19または請求項20記載の磁気レベルシフタ。
【請求項23】
前記入力配線および前記検出用素子を各チャンネルごとに設けて多チャンネル化した
請求項14から請求項22のいずれか一つに記載の磁気レベルシフタ。
【請求項24】
前記磁界発生用配線に流れる電流と、前記入力配線に流れる電流とは、それぞれ異なる電源から供給される
請求項12から請求項23のいずれか一つに記載の磁気レベルシフタ。
【請求項25】
前記磁界発生用配線に流れる電流と、前記入力配線に流れる電流とは、同一の電源からそれぞれスイッチング素子を介して供給される
請求項12から請求項23のいずれか一つに記載の磁気レベルシフタ。
【請求項26】
前記入力配線が発生する磁界は、前記参照用素子にも与えられ、
前記入力配線が前記参照用素子に与える前記磁界の向きは、当該参照用素子の自由層の無磁界時の磁化方向と同じ向きである
請求項6記載の磁気レベルシフタ。
【請求項27】
前記検出用素子と前記参照用素子は、固定層の磁化方向が互いに同じ向き、且つ、自由層の無磁界時の磁化方向も互いに同じ向きであり、
前記入力配線が検出用素子に与える前記磁界の向きと、前記入力配線が前記参照用素子に与える前記磁界の向きとは90度異なっている
請求項26記載の磁気レベルシフタ。
【請求項28】
前記検出用素子および前記参照用素子は形状磁気異方性を有し、
前記検出用素子と前記参照用素子とは、長手方向が同じになるように配設されている
請求項27記載の磁気レベルシフタ。
【請求項29】
前記検出用素子と前記参照用素子とは、磁化容易軸の方向が同じである
請求項27記載の磁気レベルシフタ。
【請求項30】
前記入力配線からの磁界が与えられたときの前記参照用素子では、自由層の磁化方向と固定層の磁化方向との角度が90度である
請求項19または請求項20記載の磁気レベルシフタ。
【請求項31】
前記入力配線、前記検出用素子および前記参照用素子を各チャンネルごとに設けて多チャンネル化した
請求項26から請求項30のいずれか一つに記載の磁気レベルシフタ。
【請求項32】
ワイドバンドギャップ半導体基板を用いて形成された
請求項1から請求項31のいずれか一つに記載の磁気レベルシフタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−49847(P2012−49847A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190358(P2010−190358)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】