説明

空気タイヤの型成形/離型用のシロキサンをベースとする組成物

本発明は、タイヤの製造の際に離型剤として加硫ブラダーに塗布することが予定される、シリコーンオイルエマルションの形の組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造の際の型成形/離型を容易にするために加硫ブラダー及び/又は空気タイヤ若しくは半空気タイヤに塗布することが予定されるシリコーンオイルエマルションの形の組成物に関する。
【0002】
本発明は特に、空気タイヤ若しくは半空気タイヤの造形及び加硫の際に用いられる加硫ブラダーを潤滑する(潤滑性をよくすること、潤滑性を向上するとも言う)のために特に好適な潤滑用組成物としての用途に関する。
【0003】
本発明はまた、本発明に従う潤滑用組成物(即ち潤滑性向上用組成物)及び/又は接着用下塗りで被覆された加硫ブラダー並びに前記潤滑用組成物で被覆された空気タイヤ又は半空気タイヤにも関する。
【0004】
他の2つの局面に従えば、本発明は、本発明の潤滑用組成物の製造方法及び加硫ブラダーの潤滑のための前記潤滑用組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0005】
乗物用のゴムタイヤは従来、生タイヤ(生カバー)(enveloppe crue)、即ち加硫しておらず且つ造形されていないタイヤを、成形プレス中で、内部流体によって膨張させることができるブラダーによって外向きに成形型の表面に向けてプレスして型成形し且つ加硫させることによって、製造されている。この方法に依れば、生タイヤ(即ち未加硫タイヤ)は成形型の外側面に対して造形されて、これが前記タイヤのトレッドのパターン及び側壁の形態を画定する。前記タイヤは加熱することによって加硫する。一般的に、ブラダーは、ホットガス、熱水及び/又はスチームのような流体(これは加硫のための熱移動にも関与する)によって提供される内部圧によって膨張する。この時に前記タイヤを成形型中で僅かに冷ます。この冷却は時としてブラダー中に冷水又はもっと冷たい水を導入することによって促進される。次いで成形型を開き、内部流体の圧力を解放することによってブラダーをしぼませ、タイヤ成形型からタイヤを取り出す。このタイヤの加硫ブラダーの利用は、当技術分野においてよく知られている。
【0006】
生タイヤが完全に加硫する前にブラダーの膨張段階の際にブラダーの外側接触面と生タイヤの内側面との間でかなりの相対運動が起こることが認められている。同様に、生タイヤが型成形されて加硫した後に、ブラダーをしぼませて空気タイヤから取り出す際にも、ブラダーの外側接触面とタイヤの加硫した内側面との間でかなりの相対運動が起こる。
【0007】
ブラダーとタイヤの内側面との間で適切な潤滑性が提供されない場合には、一般的にブラダーが反ってしまう傾向があり、これは成形型中での生タイヤの変形をもたらし、ブラダー自体の表面の過度の摩耗及び過度の粗面化をももたらす。ブラダーの表面はまた、生タイヤの加硫の後及び生タイヤ加硫サイクルの一部としてブラダーをしぼませる際に、このタイヤの内側面に貼り付く傾向もある。さらに、ブラダーの表面と生タイヤの表面との間に気泡が捕捉され、この気泡が熱移動を不完全なものにする結果として生タイヤの加硫不足の発現を促進することがある。
【0008】
この理由で、ブラダーの外側面又は生若しくは未加硫タイヤの内側面は、(時として「ライニング(裏当て)セメント」という名前で称される)好適な潤滑剤で被覆される。
【0009】
当技術分野においては、この目的で多くの潤滑用組成物が提唱されている。
【0010】
特に、フランス国特許第2494294号明細書に記載された潤滑用組成物はよく知られており、これは主成分としての反応性ポリジメチルシロキサン(好ましくは末端ヒドロキシル基を持つもの)、架橋剤(好ましくはSi−H官能基を含むもの)及び随意としての重縮合触媒を含有する。
【0011】
米国特許第3872038号明細書には、シリコーンエマルションと、空気が効率良く逃げられるようにするための充填剤(例えばマイカ)とをベースとする空気タイヤ用内部離型剤が記載されている。反応性の系の代わりに、塗布後にゴムの表面に充填剤が保たれるようにするために、シリコーンガムが用いられる。この配合物は、ブラダーと生タイヤとの間に捕捉された空気が逃げられるようにするが、しかしこの場合には離型操作を複数回実施することはできない。
【0012】
通常は、膨張可能なブラダーは、外側面(タイヤと接触する面)を潤滑用組成物で被覆される前に、「下塗り」又は「接着用下塗り」と称される組成物の均一層を塗布することから成る前処理に付すことができる。
【特許文献1】フランス国特許第2494294号明細書
【特許文献2】米国特許第3872038号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、改良型水性潤滑用組成物であって、優れた滑り特性及び耐久性をも示して、空気タイヤ及び半空気タイヤを加硫させる時に用いられるブラダーに潤滑性を与えるのに非常に好適なものとなる、前記改良型水性潤滑用組成物を提供することにある。
【0014】
これらの組成物は、1回の塗布(1回の適用)で数個のタイヤの離型を行うことを可能にする上、潤滑性に関してだけではなくて空気逃がしに関しても良好な性能を保証することができるので、ブラダー表面とタイヤ表面との間に捕捉された気泡の形成を防止し、従って不完全な熱移動の結果として起こるタイヤの加硫不足の発現をも防止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
一般的に、本発明の主題は、脱水素−縮合によって重合及び/又は架橋することができるポリオルガノシロキサンをベースとする水中油エマルションの形の潤滑用組成物であって、
(a)1分子当たり少なくとも2個のOH基を含み且つ25℃において50〜3×106mPa・sの範囲、好ましくは500〜2×106mPa・sの範囲、さらにより一層好ましくは700〜1.5×106mPa・sの範囲の動的粘度(動粘性係数とも称される)を有する少なくとも1種の反応性ポリオルガノシロキサン(A);
(b)1分子当たり少なくとも3個の反応性単位≡SiHを有する少なくとも1種の架橋剤(B);
(c)次のもの:
・スチレン、o−メチルスチレン及びビニルトルエンより成る群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーと;
・少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルモノマーと;
・随意としての少なくとも1種のエチレン性不飽和モノカルボン酸又はジカルボン酸モノマーと:
を(共)重合させることによって得られる少なくとも1種の有機ポリマーラテックス(C);
(d)少なくとも1種の空気除去剤(D)、例えばマイカ(雲母)、タルク又はカーボンブラック、好ましくはマイカ;
(e)少なくとも1種の界面活性剤(E);
(f)随意としての、線状ホモポリマー又はコポリマーから成り、25℃において約50〜100000mPa・sの動的粘度を有する、少なくとも1種の非反応性線状ポリオルガノシロキサンオイル(F)(その分子中のケイ素原子に結合した一価有機置換基は、互いに同一であっても異なっていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール及びアリールアルキル基から選択される);
(g)随意としての、フィルム形成用ポリマー増粘剤、補完的潤滑剤、減摩剤、凝集(合体)(coalescence)剤、湿潤又は分散剤、無機充填剤、消泡剤、増粘剤、安定剤、酸性化剤、殺生物剤及び抗菌剤より成る群から選択される少なくとも1種の添加剤(G);
(h)随意としての、少なくとも1種の脱水素−縮合触媒;並びに
(i)水:
を含み、界面活性剤及び水の量が水中油エマルションを得るのに充分な量である、前記潤滑用組成物にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
前記有機ポリマーラテックス(C)は、
・スチレン、o−メチルスチレン及びビニルトルエンより成る群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーと;
・少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルモノマーと;
・随意としての少なくとも1種のエチレン性不飽和モノカルボン酸又はジカルボン酸モノマーと:
の乳化(共)重合から得られるものである。
【0017】
前記ラテックスは、それ自体周知の態様で、水性エマルション状で、少なくとも1種のラジカル開始剤の存在下で、一般的に20〜60重量%の反応媒体中のモノマー濃度で実施される(共)重合反応によって調製される。ラジカル重合において用いられる慣用の開始剤又はフリーラジカル開始剤が好適であり得る。
【0018】
開始剤の例には、ヒドロペルオキシド、例えば過酸化水素及びジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、過硫酸ナトリウム、カリウム又はアンモニウム、並びにカチオン開始剤、例えばアゾビス(イソブチロニトリル)が含まれる。
【0019】
これらの開始剤は、還元剤、例えば二亜硫酸塩と組み合わせることができる。その量は一般的に、モノマーの量に対して0.05〜2重量%の範囲とする。
【0020】
重合温度は用いる開始剤に依存するが、一般的に50℃〜100℃の範囲、好ましくは70℃〜90℃の範囲とする。重合を水性エマルション状で実施する場合には、必要ならば任意の既知のコロイド安定化用系、例えばアニオン性、カチオン性、両性及びノニオン性乳化剤によって粒子を安定化させる。前記重合は、連続式で実施することもでき、バッチ態様で実施することもでき、半連続式でモノマーの一部を連続的に導入して実施することもでき、また、均質構造の粒子及び不均質構造の粒子を得るための任意の既知の別法に従った「播種(ensemence)」若しくは「漸増(incremental)」タイプの重合であってもよい。
【0021】
商品として入手できるラテックスの例には、例えば、Rhodia社より販売されているRHODOPAS(登録商標)シリーズのスチレン/アクリル酸アルキル又はスチレン/アクリル酸アルキル/アクリル酸コポリマー{例えばRHODOPAS(登録商標)DS910、RHODOPAS(登録商標)DS2800、RHODOPAS(登録商標)DS1003、RHODOPAS(登録商標)DS2818及びRHODOPAS(登録商標)2810}、Polymer Latex社より販売されているLIPATON(登録商標)シリーズのスチレン/アクリル酸アルキルラテックス、並びにDow Chemical社より販売されているUCAR(登録商標)ラテックスシリーズのスチレン/アクリル酸アルキル又はスチレン/アクリル酸アルキル/アクリル酸コポリマーがある。
【0022】
前記ラテックスは、RHODOPAS(登録商標)シリーズのスチレン/アクリル酸アルキル又はスチレン/アクリル酸アルキル/アクリル酸コポリマーから選択するのが有利である。
【0023】
第1の好ましい実施形態に従えば、前記有機ポリマーラテックス(C)は:
・(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル又はヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロピル又はヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル又はヒドロキシブチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルより成る群から選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルモノマーと;
・スチレンモノマーと;
・随意としてのアクリル酸及びメタクリル酸より成る群から選択される少なくとも1種のモノマーと:
を重合させることによって得られたものである。
【0024】
第2の実施形態に従えば、前記有機ポリマーラテックス(C)は:
・(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル及び(メタ)アクリル酸ブチルより成る群から選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルモノマーと;
・スチレンモノマーと;
・随意としての、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸より成る群から選択される少なくとも1種のモノマーと:
を重合させることによって得られたものである。
【0025】
第3の実施形態に従えば、前記有機ポリマーラテックスは、コポリマーの総重量に対して次の重量比:
・スチレンモノマー:25〜55重量%;
・アクリル酸ブチルモノマー:74.5〜40重量%;及び
・アクリル酸モノマー:0.5〜5重量%:
を有するスチレン/アクリル酸ブチル/アクリル酸コポリマーから選択される。
【0026】
用語「動的粘度」とは、本発明においては、ニュートンタイプの粘度、即ちそれ自体周知の方法で、所定の温度において、測定される粘度が速度勾配から独立したものとなるのに充分低い剪断速度勾配で測定された動的粘度を意味するものとする。
【0027】
好ましい成分として、反応性ポリオルガノシロキサン(A)は、次のシロキシル単位を含む。
M=[(OH)(R2)2SiO1/2]及びD=[R34SiO2/2
{ここで、R2、R3及びR4は、C1〜C6直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル及びn−ヘキシル)、C3〜C8シクロアルキル基(例えばシクロペンチル及びシクロヘキシル)、C6〜C10アリール基(例えばフェニル及びナフチル)並びにC6〜C15アルキルアリール基(例えばトリル及びキシリル)より成る群から選択される同一の又は異なる基である。}
【0028】
反応性ポリオルガノシロキサン(A)についての好ましい反応成分の中では、次式:
【化1】

{ここで、nは50以上の整数であり、
3及びR4は同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6 アルキル、C3〜C8シクロアルキル、C2〜C8アルケニル、C5〜C8シクロアルケニル、アリール、アルキルアリール又はアリールアルキルを表わし、上記の基はそれぞれ、随意にハロゲン(好ましくはフッ素)原子又はシアノ残基で置換されていてよい}
の線状ポリオルガノシロキサンを挙げることができる。
【0029】
工業製品における入手可能性のために特によく用いられるオイルは、R3及びR4がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル、ビニル、フェニル及び3,3,3−トリフルオロプロピルより成る基の群から独立的に選択されるものである。これらの基の少なくとも約80%(数基準)がメチル基であるのが特に好ましい。
【0030】
本発明に従えば、例えばフランス国特許第2697021号明細書に記載されたシリコーン相乳化技術を用い、エマルションの調製のためにすでに重合させたポリオルガノシロキサンオイルAから出発するのが好ましい。
【0031】
本発明の好ましい実施形態に従えば、前記反応性ポリオルガノシロキサン(A)は、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサンである。
【0032】
好ましくは、架橋剤(B)は、下記の式(II)の少なくとも1つの単位を有し且つ式(III)の単位を末端とするもの、又は式(II)の単位から成る環状のものから選択される。
【化2】

{ここで、
記号R1は同一であっても異なっていてもよく:
・1〜8個の炭素原子を有し且つ随意に1個以上のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル若しくは3,3,3−トリフルオロプロピル基、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、又は
・6〜12個の炭素原子を有するアリール基、若しくはアルキル部分が5〜14個の炭素原子を有し且つアリール部分が6〜12個の炭素原子を有するアラルキル基(これらは随意にアリール基若しくは部分上をハロゲン、1〜3個の炭素原子を有するアルキル及び/若しくはアルコキシで置換されていてよい):
を表わし;
記号Z'は同一であっても異なっていてもよく、
・水素基、又は
・R1について上で与えたものと同じ定義を満たす基
を表わし、但し、1分子当たり少なくとも3個の記号Z'がHを表わす。}
【0033】
架橋剤(B)の例としては、次式(IV)の化合物を挙げることができる。
【化3】

{ここで、
xは1〜10000の範囲の整数又は小数を表わし;
yは0〜10000の範囲の整数又は小数を表わし;
R'1及びR''1は互いに独立的に:
・1〜8個の炭素原子を有し且つ随意に1個以上のハロゲン(好ましくはフッ素)で置換された直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3−トリフルオロプロピル、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、
・6〜12個の炭素原子を有し且つ随意に置換されたアリール基、並びに
・アルキル部分が5〜14個の炭素原子を有し且つアリール部分が6〜12個の炭素原子を有し且つ随意にアリール部分上を置換されたアラルキル基:
を表わし;
R''1は随意に水素に相当することもでき;
但し、このポリオルガノシロキサンは少なくとも3個の反応性単位≡SiHを含む。}
【0034】
架橋剤(B)としては、次の化合物が本発明にとって特に好適である。
【化4】

(ここで、a、b、c、d及びeは様々な数を表わし、
式S1のポリマーにおいては、
0≦a≦10000、好ましくは0≦a≦8000、さらに好ましくは0≦a≦5000であり;そして
3≦b≦10000、好ましくは10≦b≦100、さらに好ましくは30≦b≦55であり;
式S2のポリマーにおいては、
1≦d≦10000、好ましくは20≦d≦60であり;そして
0≦e≦10000、好ましくは0≦e≦1000である。)
【0035】
本発明において、「非反応性オイル」とは、潤滑用組成物の乳化及び調製のための条件並びに使用条件下において組成物のどの成分とも化学的に反応しないオイルを意味するものとする。
【0036】
成分(f)としての非反応性線状ポリオルガノシロキサンオイル(F)は、25℃において約50〜100000mPa・sの動的粘度を有する。例として、
・各鎖部が
・・式R56SiO2/2の単位(随意に式(R5)2SiO2/2の単位と組み合わされていてよい)、
・・式(R6)2SiO2/2の単位(随意に式(R5)2SiO2/2の単位と組み合わされていてよい)、
・・式R56SiO2/2の単位及び式(R6)2SiO2/2の単位(随意に式(R5)2SiO2/2の単位と組み合わされていてよい)
から成り;そして
・各鎖末端を式(R7)3SiO1/2の単位でブロックされた:
線状ポリオルガノシロキサンを挙げることができる
{ここで、基R7は同一であっても異なっていてもよく、基R5及びR6から選択され、
上に挙げた各種シロキシル単位の一価有機置換基である基R5及びR6は、次の定義:
・基R5は互いに同一であっても異なっていてもよく、C1〜C6直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル)、C3〜C8シクロアルキル基(例えばシクロペンチル及びシクロヘキシル)並びにC2〜C8直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基(例えばビニル及びアリル)から選択され;そして
・基R6は互いに同一であっても異なっていてもよく、C6〜C10アリール基(例えばフェニル及びナフチル)、C6〜C15アルキルアリール基(例えばトリル及びキシリル)並びにC6〜C15アリールアルキル基(例えばベンジル)から選択される:
を有する}。
【0037】
本発明に従う潤滑用組成物は、好ましくは、(a)〜(i)の成分の合計100重量部当たりに:
・成分(a)1〜30重量部、好ましくは3〜15重量部;
・成分(b)1〜30重量部;
・成分(c)0.1〜10重量部;
・成分(d)3〜25重量部;
・成分(e)0.5〜10重量部;
・成分(f)0〜30重量部;
・成分(g)0〜30重量部;
・成分(h)0〜10重量部;及び
・成分(i)20〜60重量部:
を含む。
【0038】
本発明に従う組成物中には、脱水素−縮合触媒を存在させることができる。この脱水素−縮合触媒を存在させるかどうかは自由選択事項に過ぎず、使用の際に遭遇する温度に依存する。本発明において用いることができる脱水素−縮合触媒の例には、有機金属塩、及びチタン酸塩、例えばオルトチタン酸テトラブチルがある。有機金属塩としては、ナフテン酸ジルコニウム及びオクタン酸ジルコニウムを挙げることができる。また、触媒作用を有するスズ化合物、一般的には有機スズ塩を用いることもできる。用いることができる有機スズ塩は、特にNollの著書「Chemistry and Technology of Silicones」、Academic Press社(1968年)、第397頁に記載されている。また、触媒作用を有するスズ化合物として、ジスタノキサン若しくはポリオルガノスタノキサン、又は米国特許第3862919号明細書に記載されたようなスズ塩(特にジカルボン酸スズ)とポリケイ酸エチルとの反応生成物を挙げることもできる。
【0039】
また、ベルギー国特許第842305号明細書に記載されたようなケイ酸アルキル又はアルキルトリアルコキシシランとジブチルスズジアセテートとの反応から得られる生成物も好適であり得る。
【0040】
別の可能性に従えば、スズ(II)塩、例えばSnCl2又はオクタン酸第一スズを用いることができる。前記触媒は、有機酸のスズ塩、例えばジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート又はジブチルスズジオクトエート、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクタン酸亜鉛、オクタン酸コバルト及びジオクチルスズジ(イソメルカプトアセテート)であることができる。ヨーロッパ特許公開第147323A号及び同第235049A号の各公報にはスズビスキレートのようなスズ塩の例が記載されており、英国特許第1289900号明細書にはジオルガノスズジカルボキシレート及び特に触媒(ジブチルスズ又はジオクチルスズジアセテート及びジブチルスズ又はジオクチルスズジラウレート)が記載されている。
【0041】
脱水素−縮合触媒を存在させる場合、これは一般的に、前記エマルションの総重量に対して0.05〜5重量部の量でエマルション中に導入される。
【0042】
界面活性剤(E)の性状は当業者に容易に決定され、その目的は安定エマルションを調製することである。アニオン性、カチオン性、ノニオン性及び双性(ツビッター)イオン性界面活性剤を単独で又は混合物として用いることができる。
【0043】
アニオン性界面活性剤としては、芳香族炭化水素スルホン酸のアルカリ金属塩又はアルキル硫酸のアルカリ金属塩を挙げることができる。本発明においては、ノニオン性界面活性剤が特に好ましい。これらの中では、ポリアルキレンオキシドのアルキル若しくはアリールエーテル、ポリエトキシル化ソルビタンヘキサステアレート、ポリエトキシル化ソルビタンオレエート(鹸化価102〜108、ヒドロキシル価25〜35のもの)、及びポリエチレンオキシドセチルステアリルエーテルを挙げることができる。
【0044】
ポリアルキレンオキシドのアリールエーテルとしては、ポリエトキシル化アルキルフェノールを挙げることができる。ポリアルキレンオキシドのアルキルエーテルとしては、ポリエチレングリコールイソデシルエーテル及びポリエチレングリコールトリメチルノニルエーテル(1分子当たり3〜15個のエチレンオキシド単位を含有するもの)を挙げることができる。
【0045】
また、エトキシル化イソトリデシルアルコール、例えばイソトリデシルアルコール1モル当たりエチレンオキシド8〜9モルを有するものを挙げることもできる。
【0046】
界面活性剤の量は、存在する各成分のタイプ及び用いられる界面活性剤の実際の性状に依存する。原則的には、前記エマルションは、エマルションの総重量に対して0.5〜10重量%(より好ましくは0.5〜7重量%)の界面活性剤を含む。
【0047】
反応性シリコーン系の存在は、空気除去剤(D)が均質に分散するのを助ける働きをもする。従って、マイカを用いる場合に、マイカの疎水性化が組成物中でその場で行われるので、表面処理する必要はない。このその場での疎水性化は、微細充填剤を分散されたままに保ってエマルションを安定化するのを助ける働きをする。マイカ粒子の寸法は、500μm未満であるのが好ましく、100μm未満であるのがより一層好ましい。マイカは、湿式粉砕マイカであるのが好ましい。
【0048】
前記エマルションはまた、1種以上の添加剤(G)を含むこともでき、これは、例えば補完的潤滑剤、減摩剤、凝集剤、湿潤又は分散剤、無機充填剤、消泡剤、増粘剤、安定剤並びに保存料(例えば殺生物剤及び抗菌剤)のような追加の成分であり、その量はかなり変化することができ、例えばエマルションの0.2〜30重量%の範囲であることができる。
【0049】
増粘剤の例には、セルロース系増粘剤(カルボキシメチルセルロース)、アクリル系増粘剤、ポリウレタン、ヒドロコロイドガム(キサンタンガム)及びそれらの混合物がある。
【0050】
凝集剤としては、グリコール類及び/又は脂肪族石油留分(石油蒸留画分)を用いることができる。
【0051】
本発明において用いることができる湿潤又は分散剤には、例えばリン酸塩、例えばヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール類(PEG)等がある。
【0052】
本発明の組成物は、先行技術における慣用の方法を用いて慣用的な態様で調製することができる。
【0053】
前記乳化は、直接乳化又は逆乳化であることができる。
【0054】
直接乳化の場合、この方法は、以下の工程から成る。まず、界面活性剤を含有させた水性相中に成分(a)、(b)及び(f)の混合物を乳化させる。水中油エマルションが直接得られる。次いで欠けている(残りの)成分を、(水溶性成分の場合には)エマルションに直接、又は(シリコーン相中に可溶の成分の場合には)エマルションの形で後に、添加する。
【0055】
上で得られるエマルションの粒子寸法は、当業者に知られた慣用の方法によって、特に反応器中の撹拌を適当な時間続けることによって、調節することができる。
【0056】
通常は、本発明の方法は周囲温度において実施される。好ましくは、粉砕又は撹拌工程の結果として起こることがある温度上昇を抑制する。特に、温度が60又は65℃以下に保たれるようにする。
【0057】
成分(a)〜(i)は、商品として入手できるか、又は当技術分野において報告されている慣用の方法を実施することによって当業者が容易に得ることができる。
【0058】
本発明の主題はまた、こうして得られた潤滑用組成物を、各種物品を潤滑するために使用することにもある。
【0059】
より特定的には、本発明は、空気タイヤ又は半空気タイヤの造形及び加硫の際に加硫ブラダー(好ましくはゴム製又は類似の膨張性のもの等)を潤滑するために前記潤滑用組成物を使用することに関する。本発明の潤滑用組成物は、任意の態様で、例えば吹付け、ブラッシング又はスポンジ若しくは刷毛を用いて、塗布することができる。被覆されるべき物品が均一の被覆層で覆われるようにするのが好ましい。
【0060】
空気タイヤ又は半空気タイヤの造形及び加硫の際に用いられる加硫ブラダーの潤滑性向上は、2つの異なる方法で実施することができる。
【0061】
空気タイヤ又は半空気タイヤの製造の際に、生タイヤをタイヤ成形型に入れ、膨張性ブラダーをこの成形型に入れ、この成形型を閉じ、熱流体から内部圧を加えることによってブラダーを膨張させて、タイヤが成形型に押し当てられ、造形されて加硫されるようにする。次いで成形型を開き、ブラダーをしぼませ、造形されて加硫したタイヤを回収する。同じブラダーがほぼ数百本のタイヤの製造に用いられる。
【0062】
タイヤの製造の際に用いられる膨張性ゴムブラダーは、最初に本発明に従う潤滑用組成物によって被覆される。
【0063】
最初は、ブラダーの潤滑は端的である。その後に、このブラダーの潤滑効果がなくなっていく。
【0064】
この後の段階の際に、タイヤの内側面(ブラダーと接触させる面)を潤滑用組成物で被覆する。タイヤからの移動によってゴムブラダーの潤滑性が再生される。
【0065】
一般的に、タイヤの製造の際に実施される成形プレス/ブラダー除去サイクルは、連続的に次の態様で進行する:
・ブラダーを最初に潤滑用組成物で被覆し(直接潤滑)、プレスの内又は外において80〜180℃の範囲、好ましくは130〜170℃の範囲に加熱する。次いでブラダーを5〜10回のサイクル(各サイクルで異なるタイヤを製造する)に相当する時間用いる(ブラダーをさらに被覆することなく、原料タイヤ上に被覆を作る)。次いで、
・次のサイクルは、この同じブラダー(潤滑用被覆がなくなったもの)を用い、この場合には毎回本発明の潤滑用組成物で被覆された空気タイヤ又は半空気タイヤを用いて、実施する:この場合には、移動によってブラダーの潤滑が行われる。
【0066】
最初の使用の際にブラダーを処理しないこともでき、この場合には潤滑用組成物を最初の2つの生タイヤの内側面に塗布する。
【0067】
かくして、本発明はまた、生空気タイヤ又は半空気タイヤ(地面と接することが予定される外側トレッドを構成する部品を外側面に含んでいても含んでいなくてもよい)を潤滑するために前記潤滑用組成物を使用することにも関する。
【0068】
本発明の潤滑用組成物はさらに、優れた滑り特性、耐久性及び弾性特性を示す。
【0069】
本発明はまた、直前に記載した方法を実施することによって得ることができる、潤滑用組成物によって潤滑された物品にも関する。
【0070】
より特定的には、本発明は:
・空気タイヤ又は半空気タイヤの造形及び加硫のための、外側面を本発明に従う組成物で被覆された膨張性ゴムブラダー;
・前記膨張性ゴムブラダーを、エマルションの架橋性成分が完全に架橋するように、{特に80〜180℃(好ましくは130〜170℃)に}加熱することによって得ることができる膨張性ゴムブラダー;並びに
・本発明に従う潤滑用組成物で内側面を被覆された生空気タイヤ又は半空気タイヤ(地面と接することが予定される外側トレッドを構成する部品を外側面に含んでいても含んでいなくてもよい):
に関する。
【実施例】
【0071】
以下の実施例は、本発明を例示するものであり、そして本発明の組成物の優れた潤滑特性を証明する。
【0072】
例1:
【0073】
下に示した%値は、組成物の総重量に対する重量によるものである。
【0074】
本発明に従う組成物Aの調製
【0075】
水(40.65重量%)、消泡剤{Rhodia社より供給されるSilicex(登録商標)141、0.2重量%}、殺生物剤(0.15重量%)、PEG 300ポリエチレングリコール(0.95重量%)、マイカ(8.64重量%、39μm粒子寸法)、Rheozan(登録商標)増粘剤(0.235重量%)及びTrycol(登録商標)5950湿潤剤(0.7重量%)をミキサー中に導入した。均質化した後に、次のものを導入した:
・α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサンオイルをベースとし、粘度が135000mPa・sであるエマルション(固形分40%)(12.535重量%);並びに
・Rhodopas(登録商標)DS2800エマルションの形のスチレン/アクリル酸ブチル/アクリル酸ラテックス(7.00重量%、Rhodia社より販売)、酢酸(0.08重量%)及び式MD'50Mのポリジメチルヒドロゲノシロキサン(シリコーンの分野において当業者に知られた命名法を用いる)と粘度100mPa・sのポリジメチルシロキサンとの混合物を含むエマルション(28.46重量%)。
均質化した後に、Silicex(登録商標)120消泡剤(0.4重量%、Rhodia社より供給)を添加し、こうしてエマルション(A)が得られた。
【0076】
組成物B(マイカを含まない比較用組成物)の調製
【0077】
水(46.865%)、Silicex(登録商標)141消泡剤(0.2重量%)、殺生物剤(0.15重量%)、Rheozan(登録商標)増粘剤(0.235重量%)及びTrycol(登録商標)5950湿潤剤をミキサー中に導入した。均質化した後に、次のものを導入した:
・α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサンオイルをベースとし、粘度が135000mPa・sであるエマルション(固形分40%)(15.91重量%);並びに
・Rhodopas(登録商標)DS2800エマルションの形のスチレン/アクリル酸ブチル/アクリル酸ラテックス(7.00重量%、Rhodia社より販売)、酢酸(0.08重量%)及び式MD'50Mのポリジメチルヒドロゲノシロキサン(シリコーンの分野において当業者に知られた命名法を用いる)と粘度100mPa・sのポリジメチルシロキサンとの混合物を含むエマルション(28.46重量%)。
均質化した後に、Silicex(登録商標)120消泡剤(0.4重量%、Rhodia社より供給)を添加し、こうしてエマルション(B)が得られた。
【0078】
組成物C(ラテックスを含有しない比較用組成物)の調製
【0079】
水(34.465重量%)、消泡剤(0.2重量%、Silicex(登録商標)141、Rhodia社より供給)、殺生物剤(0.15重量%)、PEG 300ポリエチレングリコール(1.87重量%)、マイカ(17.28重量%、39μm粒子寸法)、Rheozan(登録商標)増粘剤(0.235重量%)及びTrycol(登録商標)5950湿潤剤(0.7重量%)をミキサー中に導入した。均質化した後に、次のものを導入した:
・α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサンオイルをベースとし、粘度が135000mPa・sであるエマルション(固形分40%)(12.535重量%);並びに
・酢酸(0.08重量%)及び式MD'50Mのポリジメチルヒドロゲノシロキサンと粘度100mPa・sのポリジメチルシロキサンとの混合物を含むエマルション(28.46重量%)。
均質化した後に、Silicex(登録商標)120消泡剤(0.4重量%、Rhodia社より供給)を添加し、こうしてエマルション(C)が得られた。
【0080】
これらのエマルションを、用途試験及びタイヤ生産の実際の場合において評価した。
【0081】
試験の説明:
【0082】
離型試験:
【0083】
プレス中で3mm×150mm×150mmの寸法のブラダーゴムシートを製造して、200℃に30分間加熱した。このシートは、ブラダーの表面をシミュレートするために表面上を構造化した。このシートに塗装場中で圧縮空気を用いて吹付けすることによって離型剤を塗布した。厚さ約20μmの層を付着させた。空気中で乾燥させた後に、組立体を170℃において10分間硬化させた。
【0084】
次いでこのシートをプレス中で金属成形型に入れ、板状物を170℃に加熱した。このシートを20分間予備加熱させておき、次いで離型剤で被覆されたシート上の4箇所に、生ILR(インナーライナーゴム、即ちタイヤの内側面を構成するゴム)部品を付着させた。成形型を閉じ、次いでプレスし、ILRを10分間硬化させた。成形型を開き、薄い型成形されたILRシートを取り出した。離型が満足できるものであると見なすためには、力を加えなくても、そして貼り付くことなく、シートが分離されなければならない。さもなければ、離型は不合格と記録される。
【0085】
離型操作の回数は、貼り付くことなく離型されたILRシートの数に対応する。
【0086】
潤滑試験
【0087】
この試験は、離型剤の潤滑力を評価する。
【0088】
ブラダーゴムのシートは、上記のように調製した(寸法:2mm×7mm×19.5mm、平滑表面)。
【0089】
寸法2mm×5mm×11.5mmのILRゴムのシートをプレス中で調製し、170℃に10分間加熱した。
【0090】
ブラダーゴムのシートを、300mgの離型剤を刷毛を用いて塗布することによって処理した。生成物をオーブン中で170℃において10分間硬化させた。処理されたブラダーゴムのシートを水平な金属支持体に貼り付けた。
【0091】
6.78kgの荷重をかけたILRゴムのシートを引張試験機によって引っ張った。その力を記録した。荷重をかけられたILRゴムシートを引っ張るのに必要な力を荷重の重量で割ることによって、摩擦係数を決定した。kdが0.5より低く保たれるパス回数を記録した。
【0092】
損失試験
【0093】
操作方法は離型試験と同様である。ILRゴム上に移動した物質の量を測定した。ILRゴムシート上に移動した物質の量をILR試験片の面積で割った。mg/cm2で表わされるこれらの結果を離型剤の層の初期厚さで割った。移動%を得た。移動量が大きいほど次の離型操作に利用可能な離型剤の残量が少ない。
【0094】
結果:
【表1】

【0095】
本発明に従う離型剤(A)は、欠陥なしでのタイヤの離型の回数を最も多くすることができる。空気逃がしが不充分なせいでの欠陥は何ら観察されなかった。
【0096】
マイカを含有しない物質Bは、欠陥なしでの離型操作の回数の点で制約がある。
【0097】
本発明に従うラテックスを含有しない試験片Cは、最初の離型操作の際に本発明に従うラテックスを含有する試験片Aよりはるかに大きい物質損失を示し、従って潤滑試験において可能なパス回数が少なく、離型操作可能回数が少ない。
【0098】
本発明に従う組成物における有機ポリマーラテックス(C)と空気除去剤(D)との組合せ使用は、空気逃がし効率が良好であり且つ1回の塗布で可能な離型操作回数が多い離型剤を得ることを可能にする。本発明に従う特定的なラテックスは、良好な空気逃がし性能をもたらすマイカが離型剤のマトリックス中に持続的に保たれることを可能にし、これは半永久的離型剤(多数回の離型)と称することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱水素−縮合によって重合及び/又は架橋することができるポリオルガノシロキサンをベースとする水中油エマルションの形の潤滑用組成物であって、
(a)1分子当たり少なくとも2個のOH基を含み且つ25℃において50〜3×106mPa・sの範囲、好ましくは500〜2×106mPa・sの範囲、さらにより一層好ましくは700〜1.5×106mPa・sの範囲の動的粘度を有する少なくとも1種の反応性ポリオルガノシロキサン(A);
(b)1分子当たり少なくとも3個の反応性単位≡SiHを有する少なくとも1種の架橋剤(B);
(c)次のもの:
・スチレン、o−メチルスチレン及びビニルトルエンより成る群から選択される少なくとも1種のビニルモノマーと;
・少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルモノマーと;
・随意としての少なくとも1種のエチレン性不飽和モノカルボン酸又はジカルボン酸モノマーと:
を(共)重合させることによって得られる少なくとも1種の有機ポリマーラテックス(C);
(d)マイカ、タルク又はカーボンブラックのような少なくとも1種の空気除去剤(D)、好ましくはマイカ;
(e)少なくとも1種の界面活性剤(E);
(f)随意としての、線状ホモポリマー又はコポリマーから成り、25℃において約50〜100000mPa・sの動的粘度を有する、少なくとも1種の非反応性線状ポリオルガノシロキサンオイル(F)(その分子中のケイ素原子に結合した一価有機置換基は、互いに同一であっても異なっていてもよく、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリール及びアリールアルキル基から選択される);
(g)随意としての、フィルム形成用ポリマー増粘剤、補完的潤滑剤、減摩剤、凝集剤、湿潤又は分散剤、無機充填剤、消泡剤、増粘剤、安定剤、酸性化剤、殺生物剤及び抗菌剤より成る群から選択される少なくとも1種の添加剤(G);
(h)随意としての、少なくとも1種の脱水素−縮合触媒;並びに
(i)水:
を含み、界面活性剤及び水の量が水中油エマルションを得るのに充分な量である、前記潤滑用組成物。
【請求項2】
前記有機ポリマーラテックス(C)が:
・(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル又はヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロピル又はヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル又はヒドロキシブチル及び(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルより成る群から選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルモノマーと;
・スチレンモノマーと;
・随意としての、アクリル酸及びメタクリル酸より成る群から選択される少なくとも1種のモノマーと:
を重合させることによって得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機ポリマーラテックス(C)が:
・(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル及び(メタ)アクリル酸ブチルより成る群から選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸アルキルモノマーと;
・スチレンモノマーと;
・随意としての、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸より成る群から選択される少なくとも1種のモノマーと:
を重合させることによって得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載の潤滑用組成物。
【請求項4】
前記有機ポリマーラテックスが、コポリマーの総重量に対して:
・スチレンモノマー:25〜55重量%;
・アクリル酸ブチルモノマー:74.5〜40重量%;及び
・アクリル酸モノマー:0.5〜5重量%:
の重量比を有するスチレン/アクリル酸ブチル/アクリル酸コポリマーから選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑用組成物。
【請求項5】
前記架橋剤(B)が下記の式(II)の少なくとも1つの単位を有し且つ下記の式(III)の単位を末端とするもの、又は下記の式(II)の単位から成る環状のもの:
【化1】

{ここで、
記号R1は同一であっても異なっていてもよく:
・1〜8個の炭素原子を有し且つ随意に1個以上のハロゲン、好ましくはフッ素で置換された直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル若しくは3,3,3−トリフルオロプロピル基、
・5〜8個の環炭素原子を有し且つ随意に置換されたシクロアルキル基、又は
・6〜12個の炭素原子を有するアリール基、若しくはアルキル部分が5〜14個の炭素原子を有し且つアリール部分が6〜12個の炭素原子を有するアラルキル基(これらは随意にアリール基若しくは部分上をハロゲン、1〜3個の炭素原子を有するアルキル及び/若しくはアルコキシで置換されていてよい):
を表わし:
記号Z'は同一であっても異なっていてもよく、
・水素基、又は
・R1について上で与えたものと同じ定義を満たす基
を表わし、但し、1分子当たり少なくとも3個の記号Z'がHを表わす}
から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑用組成物。
【請求項6】
前記反応性ポリオルガノシロキサン(A)が次のシロキシル単位:
M=[(OH)(R2)2SiO1/2]及びD=[R34SiO2/2
{ここで、R2、R3及びR4は、C1〜C6直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル及びn−ヘキシル)、C3〜C8シクロアルキル基(例えばシクロペンチル及びシクロヘキシル)、C6〜C10アリール基(例えばフェニル及びナフチル)並びにC6〜C15アルキルアリール基(例えばトリル及びキシリル)より成る群から選択される同一の又は異なる基である}
を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑用組成物。
【請求項7】
前記反応性ポリオルガノシロキサン(A)がα,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサンであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑用組成物。
【請求項8】
組成物の総重量に対して20〜60重量%の水及び0.5〜10重量%の界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の潤滑用組成物。
【請求項9】
(a)〜(i)の成分の合計100重量部当たりに:
・成分(a)1〜30重量部、好ましくは3〜15重量部;
・成分(b)1〜30重量部;
・成分(c)0.1〜10重量部;
・成分(d)3〜25重量部;
・成分(e)0.5〜10重量部;
・成分(f)0〜30重量部;
・成分(g)0〜30重量部;
・成分(h)0〜10重量部;及び
・成分(i)20〜60重量部:
を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の潤滑用組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の組成物で被覆された物品。
【請求項11】
請求項10に記載の物品を加熱することによって得ることができる物品。
【請求項12】
空気タイヤ又は半空気タイヤの造形及び加硫のための膨張性ゴムブラダーであって、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物で外側面を被覆された、前記膨張性ゴムブラダー。
【請求項13】
請求項12に記載のブラダーを80〜180℃の温度に加熱することによって得ることができる、膨張性ゴムブラダー。
【請求項14】
地面と接することが予定される外側トレッドを構成する部品を含み、内側面を請求項1〜9のいずれかに記載の組成物で被覆された、生の空気又は半空気タイヤ。
【請求項15】
物品の潤滑性をよくするための請求項1〜9のいずれかに記載の潤滑用組成物の使用。
【請求項16】
空気タイヤ若しくは半空気タイヤの造形及び加硫の際に膨張性ゴム加硫ブラダーの潤滑性をよくするための、請求項15に記載の潤滑用組成物の使用。

【公表番号】特表2009−500464(P2009−500464A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518895(P2008−518895)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001343
【国際公開番号】WO2007/003731
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(507421304)ブルースター シリコーン フランス (62)
【氏名又は名称原語表記】BLUESTAR SILICONES FRANCE
【住所又は居所原語表記】21,AVENUE GEORGES POMPIDOU F−69486 LYON CEDEX 03 FRANCE
【Fターム(参考)】