紫外光洗浄装置および紫外光洗浄装置用紫外線ランプ
【課題】被処理物の処理スピードを高め、しかもランプハウスへの白粉の付着によって処理ムラ等が発生することを防止できる紫外光洗浄装置を提供する。
【解決手段】ランプハウス30には、紫外線ランプ32群全体を四周から囲んで下面側を開放させた開放ハウジング33が設けられている。開放ハウジング33の天井部には、例えばステンレス板に1〜3mmの孔を多数形成した多孔のガス拡散板35を配置してあり、ここから清浄な窒素ガス(不活性ガス)を供給して、紫外線ランプ32の周囲からワークWの紫外線照射空間Xにかけて全体が窒素で満たされ、酸素がほとんど存在しない不活性ガス雰囲気に維持される。
【解決手段】ランプハウス30には、紫外線ランプ32群全体を四周から囲んで下面側を開放させた開放ハウジング33が設けられている。開放ハウジング33の天井部には、例えばステンレス板に1〜3mmの孔を多数形成した多孔のガス拡散板35を配置してあり、ここから清浄な窒素ガス(不活性ガス)を供給して、紫外線ランプ32の周囲からワークWの紫外線照射空間Xにかけて全体が窒素で満たされ、酸素がほとんど存在しない不活性ガス雰囲気に維持される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光を利用して被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置およびこれに用いる紫外線ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶ディスプレイや半導体装置の製造プロセスにおいて、基板の表面を清浄化するために基板に紫外光を照射して表面の有機物の酸化分解を行わせる紫外光洗浄装置が利用されている。
この種の紫外光洗浄装置は、基板(被処理物)に紫外光を照射すると、まず、基板の雰囲気中の酸素分子に紫外光が吸収されてオゾンが生成し、このオゾンが紫外光を受けて更に光分解することにより活性酸素等の活性種を生じ、この活性種により基板表面の有機物が酸化分解されると考えられている。
【0003】
このような光洗浄の原理から、被処理物の雰囲気中に酸素が存在していることは必須であると考えられている。一方で、紫外光が大気中の酸素分子に衝突してオゾンを生成させることは、紫外光が大気中の酸素によって吸収されることを意味する。現に、大気の紫外光透過率は極めて小さく、例えば波長172nmの紫外光では大気中を2mm進むだけで約40数%に減衰することが知られており被処理物表面の紫外光強度を高めて洗浄の処理スピードを上げるためには、大気中の酸素の存在は障害になる。
【0004】
そこで、従来の紫外光洗浄装置では、例えば図11に示すように、紫外光を透過する石英ガラスで窓部材1を形成した密閉型のランプハウス2内に紫外線ランプ3を収容し、このランプハウス2内には供給口2Aから窒素を流し込み、排出口2Bから流し出すことでランプハウス2内に窒素を満たして紫外線ランプ3の周囲から酸素を排除する構成としていた。そして、その上で、ランプハウス2外には酸素が存在するため、ランプハウス2の窓部材1を被処理物4に対し数mm程度の近距離に近づけて配置していた。
【0005】
ところが、液晶ディスプレイ用のガラス基板等の板状をなす被処理物4をローラコンベア5等の搬送手段によって搬送しながら洗浄処理を行う関係上、被処理物4自体の反りや、搬送時の振動や微細な跳ね上がりを避け得ないから、窓部材1を被処理物4に近接させるには限界があり、処理スピード向上の制約となっていた。このような事情下で、処理スピードの向上を課題とした技術として特許文献1に記載の発明があるが、未だ十分に処理スピードを向上させることができない。
【0006】
また、この種の紫外光洗浄装置では、窓部材1に次第に白粉が付着し、被処理物の処理不良や処理ムラを発生させ、歩留まり低下の原因となるという問題がある。これは次のような原因によると考えられている。すなわち、半導体や液晶デバイスの製造工程では、有機溶剤、酸、アルカリなどの各種薬品が使用されているため、これらが気化、霧化して空気中に浮遊していることがある。また、それらの薬品の使用後に基板を洗浄したとしても、僅かに付着して残る薬品が基板への紫外光照射時に、熱を受けて基板から気化してくることもある。すると、それらの薬品が紫外光を受けて化学反応を起こし、硫酸アンモニウム等の反応生成物を生じてこれが窓部材1に付着するのである。窓部材1に白粉が付着すると、紫外光の照射ムラの原因となるから、ランプハウス2を反転させて窓部材1の外面を頻繁に掃除しなくてはならず、そのメンテナンス作業の負担は相当に大きい。
なお、このような窓部材1への白粉の付着防止を課題とした技術には特許文献2に記載の発明があるが、窓部材1の加熱手段を必要とするため、装置が複雑化して高価になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−80191号公報
【特許文献2】特開平11−295500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたもので、被処理物の処理スピードを高め、しかもランプハウスに白粉ができるだけ付着しないようにしてメンテナンス作業を軽減できる紫外光洗浄装置およびそれに適した紫外線ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被処理物の表面で紫外光によって有機物が分解される過程において、必要とされる酸素が極めて微量であり、被処理物が大気程度の酸素含有雰囲気中に置かれている状態で自然と被処理物の表面に付着する程度の量で足ることを発見したことに基づく。すなわち、従来は、被処理物表面における有機物の分解原理から、被処理物は大気中で紫外光を照射することが必須であると考えられていた。しかしながら、必ずしもそのような多量の酸素を必要とするのではなく、被処理物が紫外光に照射される空間を不活性ガスで置換して大気(酸素)を排除した状態にしておいても、被処理物をいったん酸素含有雰囲気中に通過させ、それを紫外光照射空間内に搬送すれば、被処理物表面に付着して引きずり込まれる酸素によって十分に有機物の酸化分解が可能であることを発見したのである。
【0010】
そこで、前記目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、搬送される被処理物に、紫外線ランプを備えたランプハウスからの紫外光を照射することで前記被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置であって、前記ランプハウス内の前記紫外線ランプの周囲から、搬送された前記被処理物が前記紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外光照射空間を、不活性ガス雰囲気にするためのガス供給手段を設け、前記被処理物は酸素含有雰囲気中を通った後に前記紫外光照射空間に搬送される構成とした。
【0011】
本発明の紫外光洗浄装置によれば、ガス供給手段から供給される不活性ガスによって、紫外光照射空間が不活性ガス雰囲気にされる。ここで紫外光照射空間とは、ランプハウス内の紫外線ランプの周囲から、搬送された被処理物が紫外光の照射を受ける領域にかけての空間をいうから、紫外線ランプから放射された紫外光は酸素をほとんど含まない空間を通って被処理物に照射されることになり、酸素による吸収を受けずに強い紫外光強度で被処理物が照射される。
一方、被処理物は、大気中等の酸素含有雰囲気中を通って前記紫外光照射空間に搬送されるから、酸素含有雰囲気中に存在していたときに酸素が薄い膜となって被処理物表面に付着しており、これがそのまま紫外光照射空間内に引きずり込まれ、紫外光照射空間内で強い紫外光を受けてそれらの酸素が活性化して表面の有機物が分解される。
【0012】
また、請求項2の発明は、前記ランプハウスは、前記被処理物側の一面を開放させた開放ハウジング内にその開放面に沿わせるように紫外線ランプを並べて構成し、前記ガス供給手段を前記ランプハウスのうち前記紫外線ランプの前記開放面とは反対側に配置した多孔のガス拡散板を通して前記不活性ガスを吐出する構成としたところに特徴を有する。
これによれば、ガス拡散板を通して不活性ガスがランプハウス内に吐出され、この不活性ガスが紫外線ランプの周囲から開放ハウジングの開放面に向かって流れ、その開放面から被処理物の表面を包むように流れ出す。
【0013】
請求項3の発明に係る紫外光洗浄装置は、搬送される被処理物に、紫外線ランプを備えたランプハウスからの紫外光を照射することで前記被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置であって、前記ランプハウスは、前記被処理物側の一面を開放させた開放ハウジング内に、紫外光照射面が平坦な角筒型をなす紫外線ランプをその紫外線照射面が前記開放ハウジングの開放面に沿うように配置して構成され、前記ランプハウスには、前記紫外線ランプの前記開放ハウジングの前記開放面とは反対側に位置する平坦面に対面するように多孔のガス拡散板を備え、このガス拡散板から不活性ガスを吐出して、前記紫外線ランプの周囲から、搬送された前記被処理物が前記紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外光照射空間を不活性ガス雰囲気にするためのガス供給手段を設けるとともに、前記被処理物を酸素含有雰囲気中を通った後に前記紫外光照射空間に搬送する搬送機構を設けたところに特徴を有する。
【0014】
また、請求項4の発明に係る紫外線ランプは、搬送される被処理物に紫外光を照射することで前記被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置のランプハウスに備えられる紫外線ランプであって、前記ランプハウスは、前記被処理物側の一面を開放させた開放ハウジングと、前記開放面とは前記紫外線ランプを挟んで反対側に位置する多孔のガス拡散板とを備え、そのガス拡散板から不活性ガスを吐出して前記紫外線ランプの周囲から、搬送された前記被処理物が前記紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外光照射空間を不活性ガス雰囲気にするようにされており、前記紫外線ランプが、対向する各二面を平坦面とした断面ほぼ長方形状の筒型をなし、長辺側の一対の平坦面の一方を前記ガス拡散板にほぼ平行に対面させ、他方を前記被処理物にほぼ平行に対面させて配置されるものであるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、紫外線ランプからの紫外光が途中で酸素に吸収されることなく、被処理物表面に到達するから、被処理物表面の紫外光強度が飛躍的に強くなる。従って、紫外線ランプの出力が同じであれば、従来よりも高速で洗浄処理を行うことができ、あるいは、従来と同等の速度で洗浄処理を行うには、紫外線ランプの本数を減らすことができる。また、紫外光照射空間の雰囲気が不活性ガス雰囲気となって空気が排除されているから、仮に、本装置が設置してある大気中に有機溶剤、酸、アルカリなどの各種薬品が気化・霧化して浮遊していたとしても、それが紫外光を受けて硫酸アンモニウム等の反応生成物を生じてしまうことがなく、ランプハウス等への白粉の付着を防止してメンテナンス作業が簡単になる。
【0016】
請求項2の発明では、ランプハウスに窓部材がないから構造が極めて簡単になり、かつ、紫外光照射空間を均一な不活性ガス雰囲気にすることができる。
【0017】
請求項3および請求項4の発明によれば、紫外線ランプが角筒型をなし、その平坦な紫外線照射面が被処理物に対して平行に対面することになる。この結果、紫外線ランプの紫外線照射面から被処理物までの距離が均一化され、被処理物表面における紫外線強度を均一化してムラのない洗浄処理が可能である。
【0018】
しかも、紫外線ランプの他方の平坦面もガス拡散板に対して平行に対面することになるから、ガス拡散板から吐出された不活性ガスがいったん紫外線ランプの平坦面に衝突し、ここで横向きに流れを変えて紫外線ランプの両側部から真っ直ぐに被処理物に向かう流れが生成されるようになる。この結果、被処理物表面のうち紫外線ランプに直接対面して紫外線の照射を受けている領域が、紫外線ランプの両側部から流れ出す不活性ガスの流れに両側から包まれるようになる。このため、被処理物表面には微量の酸素しか存在していないという事情があっても、酸素が紫外光の照射を受けてオゾンを生成し、そのオゾンから活性酸素が生成されて有機物が分解されるという光化学反応が円滑に進むものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態の洗浄ラインを示す正面図
【図2】本実施形態の紫外光洗浄装置を示す斜視図
【図3】図2中のII-II線に沿う部分断面図
【図4】図2中のIII−III線に沿う部分断面図
【図5】大気中と窒素中の紫外線の減衰グラフ
【図6】本実施形態の紫外光洗浄装置における紫外線強度を説明するための概略断面図
【図7】角筒型ランプと円筒型ランプとの紫外光照射状況を示す概略的断面図
【図8】本実施形態の洗浄装置による洗浄度合いを示すグラフ
【図9】角筒型ランプと円筒型ランプとの窒素ガスの流れを説明するための概略的断面図
【図10】本実施形態の洗浄装置と従来装置との必要ランプ数を示すためのグラフ
【図11】従来の紫外光洗浄装置を示す概略的断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の紫外光洗浄装置は、液晶ディスプレイ用のガラス基板(本発明の被処理物に相当する)の洗浄を行う基板洗浄装置10に組み込まれている。図1に示すように、基板洗浄装置10はその正面から見て左側から順に、搬送ユニット11、本発明に係る紫外光洗浄装置20,搬送ユニット12、ウエット洗浄を行うウエット洗浄装置13を連続して配置して構成されている。紫外光洗浄装置20及びウエット洗浄装置13の内部には、搬送ユニット11内に設けたと同様な搬送機構14(図2参照)が備えられており、ワークW(ガラス基板)が図1中の矢印に示すように左側から右側に順次搬送され、全体として連続する洗浄ラインをなしている。
【0021】
さて、図2に示すように、紫外光洗浄装置20には上面を開口させた箱形をなす搬送チャンバー21が設けられており、その開口部を塞ぐように2枚のランプハウス30が図示しないヒンジ機構によって開閉可能に配置されている(図2参照)。搬送チャンバー21内には搬送機構14を構成する複数本のコンベア軸22がガラス基板の搬送方向と直交する方向に回転自在に設けられており、それらの各コンベア軸22に設けた複数個のコンベアローラ23に載せてワークW(図3及び図4にのみ図示)が搬送される。
【0022】
ランプハウス30は、支持プレート31の下面に複数本の紫外線ランプ32をワークWの搬送方向と直交する方向に平行に並べて構成してあり、そのランプ32群全体を四周から囲んで下面側を開放させた開放ハウジング33が設けられている。したがって、紫外線ランプ32群は、上記開放ハウジング33内にその開放面に沿わせるように横並びになっており、搬送機構14によってワークWが開放ハウジング33の下方の紫外光照射空間X(図3,図4参照)に搬送されるときに、そのワークWの表面に紫外光を照射できるようになっている。なお、この実施形態では、紫外線ランプ32は、合成石英ガラス製の断面が矩形状をなす扁平な角筒型であり、その上下の一対の平坦面に電極を設けて例えば波長172nmの真空紫外光を放射するエキシマランプとしてある。
【0023】
さて、図4に示すように、開放ハウジング33の天井部(前記開放面とは反対側)には、例えばステンレス板に直径2mmの孔を3mmピッチで多数形成して開口率40%となるようにした多孔のガス拡散板35を開放ハウジング33の開放面と平行になる(紫外線ランプ32の上側の平坦面と平行に対面する)ように配置してある。なお、ガス拡散板35に形成する孔の孔径は1〜3mm、開口率は30〜60%とすることが望ましい。そして、前記支持プレート31には、そのガス拡散板35によって区画された空間に連なるガス供給口36が形成されており、支持プレート31上には前記ガス供給口36を上から覆うようにガス供給ダクト37が設けられている。このガス供給ダクト37には、図示しない窒素ガス供給源が接続され、清浄な窒素ガス(不活性ガス)をガス供給ダクト37及びガス供給口36を通じてガス拡散板35の上方の空間に供給するようになっており、これらの構成がガス供給手段38を構成する。なお、搬送チャンバー21の底部には、図示しない排気装置に連なる排気ダクト24が設けられており、搬送チャンバー21内に供給された窒素ガスと共に内部で発生したオゾンガス等を排出できるようにしている。
【0024】
上記構成の本実施形態によれば、図4の矢印に示すように、ランプハウス30内に設けられているガス拡散板35の微細孔から窒素ガスが下向きに吐出される。吐出された窒素ガスは、まず紫外線ランプ32の平坦面に衝突し、ここで横向きに流れを変え、紫外線ランプ32の両側部から真っ直ぐワークW表面に向かって落ちるように流れる。このため、紫外線ランプ32の周囲からワークWの紫外線照射空間Xにかけて全体が窒素の流れで満たされ、酸素がほとんど存在しない不活性ガス雰囲気に維持される。したがって、各紫外線ランプ32から放射された紫外光はほとんど酸素に吸収されることなく紫外線照射空間Xに到達し、ワークW表面の紫外線強度は従来に比べて飛躍的に高くなる。
【0025】
ちなみに、波長172nmの紫外光の窒素中と空気中の減衰量を測定すると図5に示す通りで、空気(Air)中では極めて急速に減衰し、窒素(N2)中の減衰は僅かであることが明らかである。
【0026】
また、本実施形態の装置において、窒素ガスを供給し続けて紫外光の照射を行った場合と、窒素ガスの供給を止めて大気雰囲気で紫外光の照射を行った場合とで、紫外線ランプ32の下面(図6中A点)、ワークW表面(同B点)及びA、B点の中間(同C点)における紫外線強度とオゾン濃度とを測定すると同図中の表に示す通りであった。同表において、「Air」の表記は空気中で紫外光照射を行った場合(従来タイプの装置に相当する)、「N2」の表記は窒素ガスを供給して紫外光照射を行った場合を示す。A点ーB点間の距離は2mm、窒素ガスの流速は3cm/secであった。また、紫外線強度はウシオ電機株式会社製紫外線受光器VUV−172Sを使用して同社製紫外線強度センサUIT−151によって測定し、オゾン濃度は荏原実業株式会社製のオゾン濃度計EG−2001Bにより測定した。
【0027】
この測定結果から明らかなように、本実施形態の装置によれば、大気雰囲気中で紫外線照射を行う従来の場合に比べて、ワークW表面(B点)における紫外線強度を2.5倍に強めることができる。この結果、従来の同じ処理スピード・洗浄度合いを得るためには、約半分の本数の紫外線ランプ32で足り、装置の製造コストを大幅に削減することができ、加えてランプの消耗・交換に起因するランニングコストも半減させることができる。
【0028】
なお、図6に示した測定結果において、従来タイプの装置(「Air」の表記)では、同一の紫外線ランプ32を使用しながら、ランプ表面(A点)での紫外線強度が40mW/cm3であって、本実施形態の装置(「N2」の表記)に比べて低くなるのは、紫外線センサーをランプ表面に接触させたとしても、センサーとランプとの間に微小なギャップが生ずることを避け得ず、従来装置ではそのギャップ内に大気(酸素)が侵入して紫外線を減衰させるためである。
【0029】
また、本実施形態では、紫外線ランプ32の下側の平坦面(紫外線照射面)は、ワークWに対して平行に対面する形態となっているから、図7(A)に示すように、紫外線ランプ32の紫外線照射面とワークW表面との間の距離は、紫外線ランプが円形の場合(同図(B))に比べて均一化され、ワークW表面の紫外線強度は均一になる。
【0030】
さて、ワークWは、搬送機構14によって紫外線照射空間Xの外(酸素を含有した大気雰囲気)から紫外線照射空間Xの内(窒素雰囲気)へと搬送されるため、ワークWが紫外線照射空間X外に存在していたときにワークW表面に付着した酸素を薄い膜状に引きずりながら、ワークWは紫外線照射空間X内に進入する。このため、紫外線照射空間X内では、ワークWの周囲は窒素雰囲気でありながら、その表面だけに薄い膜状の酸素が付着した状態となっており、紫外光はほとんど吸収されることなくワークW表面の膜状酸素に到達し、ここでオゾンと活性酸素種を生成し、ワークW表面の有機物の酸化分解が行われる。
【0031】
図6の表から明らかなように、本実施形態の装置(「Air」の表記)では、ワークW表面のオゾン濃度は大気雰囲気中での紫外線照射を行う従来の装置(「N2」の表記)に比べて相対的には半分に低下する(200ppm)。しかし、汚染させたワークWに紫外光を照射し、その照射光量に応じて純水の接触角がどのように変化して行くかを測定した結果(図8)から明らかなように、紫外光照射前の接触角が約60degであったところ80mJ/cm2まで照射すれば(50mW/cm2で1.6秒間)、約3degにまで低下したから、十分な洗浄が行われ、この程度のオゾン濃度によって十分な洗浄が行われることが確認できた。
【0032】
また、窒素ガスを吐出するガス拡散板35は紫外線ランプ32の上側の平坦面に平行に対面する形態となっている。このため、図9(A)に示すように、ガス拡散板35から吐出された窒素ガスがいったん紫外線ランプ32の上側の平坦面に衝突し、ここで横向きに流れを変えて紫外線ランプ32の両側部から真っ直ぐにワークWに向かう流れが生成される。この結果、ワークWのうち紫外線ランプ32に直接対面して紫外線の照射を受けている領域Yが、紫外線ランプ32の両側部から流れ出す不活性ガスの流れに両側から包まれるようになり、ワークW表面には微量の酸素しか存在していないという事情があっても、酸素と紫外光による有機物の酸化分解を促進する光化学反応が円滑に進む。
【0033】
このように本実施形態では、ワークW表面に到達するまでの紫外光の減衰を非常に小さくできるから、ワークW表面における単位面積あたりの紫外線強度を大幅に高めることができる。このことは、結局、次のような利点が得られることを意味する。
(1)従来と同等の処理スピードや洗浄度合いを確保しながら必要なランプ本数を、約半分に削減できて装置の製造コストを安価にできる。
ちなみに、同程度の汚れ具合である無アルカリガラスのワークWに対し、本実施形態の装置でランプ本数を変えて紫外光照射を行った場合の純水の接触角変化を測定した結果(「N2」の表記)を図10に示す。この実験で、ランプ出力は400W,照射距離2mm、窒素ガスまたは空気の供給風速は3cm/sec、ワークWの搬送速度は67mm/secであった。ここで、「Air」の表記があるグラフは、窒素ガスの供給を停止して空気を供給した場合であって、従来装置に相当する。このグラフから明らかなように、純水の接触角を5deg以下にするには、従来装置では8本の紫外線ランプを必要としているところ、本実施形態の装置では半分の4本で済む。
【0034】
(2)また、この種の装置では、ランプの寿命が次第に尽きることによって定期的なランプ交換を余儀なくされるが、設置してあるランプ本数が元々少ないため、ランプの交換本数も少なく、ランニングコストを大幅に低減させることができる。
【0035】
(3)紫外線ランプ32とワークWとの間のギャップを従来よりも大きくとることができるからワークWの振動が生じやすい高速搬送にも耐えることができ、かつ、単位面積あたりの紫外線強度が高いから、結局、処理スピードの高速化が可能になる。
しかも、特に本実施形態では、ランプハウス30に開放ハウジング33を使用しているから、従来の密閉型ランプハウスで必須であった窓部材1を省略することができる。この結果、次のような利点がさらに得られる。
【0036】
(4)窓部材1による紫外光の減衰をなくしてワークWにおける単位面積あたりの紫外線強度をより高めることができる。
(5)窓部材1が無い分、ランプハウス30の構造の簡単化と製造コストの引き下げが可能になる。
(6)また、窓部材1が無いから、半導体や液晶デバイスの製造工程で硫酸アンモニウム等の反応生成物が白粉として窓部材1に付着することがなくなり、その除去のためのメンテナンス作業が大幅に軽減される。本実施形態では、紫外線ランプ32の周囲から紫外光照射空間Xにかけて、ガス拡散板35から吐き出された清浄な窒素に囲まれるようになるから、仮に本装置を設置した半導体工場等の大気中に有機溶剤、酸、アルカリなどの各種薬品の蒸気が含まれていたとしても、それが紫外光照射空間Xに入り込むことがない。また、仮に、ワークWへの紫外光の照射時に各種薬品の蒸気がワークWから揮発してきたとしても、それらの蒸気は窒素ガスの流れに乗じて紫外光照射空間Xから排出される。このため、ランプハウス30内で上記薬品の蒸気が紫外光によって光反応を生じたとしても、反応生成物がランプハウス30内に付着することがなく、メンテナンス作業も極めて容易になる。
【0037】
さらに、開放ハウジング33内には紫外線ランプ32の上方にガス拡散板35を配置し、そこに形成した多数の小孔から窒素ガスを吐出させる構成であるから、紫外線ランプ32から紫外線照射領域Xまでを緩やかな流れの窒素ガスで包み込むことができ、少量のガス使用量で均一な洗浄処理を可能にできる。本発明に適用可能な窒素ガスの供給方法としては、ワークWの表面に付着して引きずり込まれる酸素を剥がしてしまわないものであれば、スリット方式やノズル方式等も採用できるが、本実施形態のように窒素ガスを拡散させて均一に供給できるガス拡散板35を使用することが最も好ましい。
【0038】
さらには、本実施形態の紫外線ランプ32は、対向する各二面を平坦面とした断面長方形状の角筒型とし、長辺側の一対の平坦面の一方をガス拡散板35にほぼ平行に対面させ、かつ、他方の平坦面をワークWにほぼ平行に対面させて配置しているから、次のような効果が得られる。
【0039】
(7)図7に示すように、紫外線ランプ32下面の平坦な紫外線照射面がワークW表面に対して平行に対面することになる。この結果、紫外線ランプ32の紫外線照射面の各点からワークW表面までの距離が均一化され、ワークW表面における紫外線強度を均一化してムラのない洗浄処理が可能となる。
【0040】
(8)しかも、紫外線ランプ32の他方の平坦面もガス拡散板35に対して平行に対面することになるから、ガス拡散板35から吐出された窒素ガスが紫外線ランプ32上面の平坦面に衝突し、図9に矢印で示すように紫外線ランプ35の両側部から真っ直ぐにワークW表面に向かう流れが生成される。この結果、ワークW表面のうち紫外線ランプ32に直接対面して紫外線の照射を受けている領域Yが、紫外線ランプ32の両側部から流れ出す窒素ガスの流れに両側から包まれるようになる。このため、被処理物表面には微量の酸素しか存在していないという事情があっても、酸素が紫外光の照射を受けてオゾンを生成し、そのオゾンから活性酸素が生成されて有機物が分解されるという光化学反応が円滑に進む。
【0041】
なお、窒素ガス(不活性ガス)の供給風速は、窒素ガスによる大気の置換を十分に行わせるためには、平均1cm/sec以上とすることが好ましく、特に、ワークWの搬送速度との関係で決定することが好ましいことが判った。すなわち、ワークWの搬送速度をAcm/sec、不活性ガスの供給風速をBcm/secとしたとき、A/Bを2以上とすることがよい。2未満では、ワークWに付着した酸素が剥がれる傾向を呈するものと思われる。
【0042】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)本実施形態では、紫外線ランプとして波長172nmの誘電体バリア放電ランプを使用したが、真空紫外光を放射するエキシマランプであることが最適である。また、これに限らず、波長185nm、254nm等の低圧水銀ランプを使用してもよい。また、ランプ形状は、扁平な角筒状としているが、二重管タイプの誘電体バリア放電ランプであってもよいし、丸みを帯びた筒型であってもよい。紫外線照射面はできるだけ平坦面に近いことがより望ましい。
【0043】
(2)また、本実施形態ではランプハウス30は下面側を開放させた開放ハウジング33内に紫外線ランプ32を配置した構成としたが、必ずしも、開放ハウジング33を使用しなくてもよく、例えば図11に示した密閉型のランプハウス2を使用つつ、そのランプハウス2の下方の紫外線照射空間に向けて窒素等の不活性ガスを供給する構成であってもよい。この場合には、ランプハウス2の窓部材1に多数の小孔を形成し、その小孔から不活性ガスをワークW表面に吐出させる構成としてもよく、また、窓部材1は無孔状とし、ランプハウス2の下部に設けたノズルから不活性ガスをワークW表面に吐出させる構成としてもよい。
このようにしても、ランプハウス2内にも窒素が満たされているから、紫外線ランプ3の周囲から、搬送された被処理物が紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外線照射領域の全体を不活性ガス雰囲気にすることができ、被処理物表面における紫外線強度を大幅に高めることができる。しかも、本実施形態に比べて不活性ガスの消費量を削減することができ、ランニングコストを更に低減することができる。
【0044】
(3)不活性ガスとしては、窒素ガスに限らず、酸素を含まず、紫外光の減衰ができるだけ少なく、かつ、反応性が低いガスであればよい。
(4)被処理物を紫外光照射空間内に搬送するに先立ち通過させる酸素含有雰囲気としては、本実施形態のような大気に限らず、ガス成分を調整した雰囲気であってもよく、必要な酸素が紫外光照射空間内に引きずり込まれるように付着する程度の酸素濃度を有していればよい。
【符号の説明】
【0045】
14…搬送機構
20…紫外光洗浄装置
30…ランプハウス
32…紫外線ランプ
33…開放ハウジング
35…ガス拡散板
36…ガス供給口
37…ガス供給ダクト
W…ワーク(被処理物)
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外光を利用して被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置およびこれに用いる紫外線ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、液晶ディスプレイや半導体装置の製造プロセスにおいて、基板の表面を清浄化するために基板に紫外光を照射して表面の有機物の酸化分解を行わせる紫外光洗浄装置が利用されている。
この種の紫外光洗浄装置は、基板(被処理物)に紫外光を照射すると、まず、基板の雰囲気中の酸素分子に紫外光が吸収されてオゾンが生成し、このオゾンが紫外光を受けて更に光分解することにより活性酸素等の活性種を生じ、この活性種により基板表面の有機物が酸化分解されると考えられている。
【0003】
このような光洗浄の原理から、被処理物の雰囲気中に酸素が存在していることは必須であると考えられている。一方で、紫外光が大気中の酸素分子に衝突してオゾンを生成させることは、紫外光が大気中の酸素によって吸収されることを意味する。現に、大気の紫外光透過率は極めて小さく、例えば波長172nmの紫外光では大気中を2mm進むだけで約40数%に減衰することが知られており被処理物表面の紫外光強度を高めて洗浄の処理スピードを上げるためには、大気中の酸素の存在は障害になる。
【0004】
そこで、従来の紫外光洗浄装置では、例えば図11に示すように、紫外光を透過する石英ガラスで窓部材1を形成した密閉型のランプハウス2内に紫外線ランプ3を収容し、このランプハウス2内には供給口2Aから窒素を流し込み、排出口2Bから流し出すことでランプハウス2内に窒素を満たして紫外線ランプ3の周囲から酸素を排除する構成としていた。そして、その上で、ランプハウス2外には酸素が存在するため、ランプハウス2の窓部材1を被処理物4に対し数mm程度の近距離に近づけて配置していた。
【0005】
ところが、液晶ディスプレイ用のガラス基板等の板状をなす被処理物4をローラコンベア5等の搬送手段によって搬送しながら洗浄処理を行う関係上、被処理物4自体の反りや、搬送時の振動や微細な跳ね上がりを避け得ないから、窓部材1を被処理物4に近接させるには限界があり、処理スピード向上の制約となっていた。このような事情下で、処理スピードの向上を課題とした技術として特許文献1に記載の発明があるが、未だ十分に処理スピードを向上させることができない。
【0006】
また、この種の紫外光洗浄装置では、窓部材1に次第に白粉が付着し、被処理物の処理不良や処理ムラを発生させ、歩留まり低下の原因となるという問題がある。これは次のような原因によると考えられている。すなわち、半導体や液晶デバイスの製造工程では、有機溶剤、酸、アルカリなどの各種薬品が使用されているため、これらが気化、霧化して空気中に浮遊していることがある。また、それらの薬品の使用後に基板を洗浄したとしても、僅かに付着して残る薬品が基板への紫外光照射時に、熱を受けて基板から気化してくることもある。すると、それらの薬品が紫外光を受けて化学反応を起こし、硫酸アンモニウム等の反応生成物を生じてこれが窓部材1に付着するのである。窓部材1に白粉が付着すると、紫外光の照射ムラの原因となるから、ランプハウス2を反転させて窓部材1の外面を頻繁に掃除しなくてはならず、そのメンテナンス作業の負担は相当に大きい。
なお、このような窓部材1への白粉の付着防止を課題とした技術には特許文献2に記載の発明があるが、窓部材1の加熱手段を必要とするため、装置が複雑化して高価になるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−80191号公報
【特許文献2】特開平11−295500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたもので、被処理物の処理スピードを高め、しかもランプハウスに白粉ができるだけ付着しないようにしてメンテナンス作業を軽減できる紫外光洗浄装置およびそれに適した紫外線ランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被処理物の表面で紫外光によって有機物が分解される過程において、必要とされる酸素が極めて微量であり、被処理物が大気程度の酸素含有雰囲気中に置かれている状態で自然と被処理物の表面に付着する程度の量で足ることを発見したことに基づく。すなわち、従来は、被処理物表面における有機物の分解原理から、被処理物は大気中で紫外光を照射することが必須であると考えられていた。しかしながら、必ずしもそのような多量の酸素を必要とするのではなく、被処理物が紫外光に照射される空間を不活性ガスで置換して大気(酸素)を排除した状態にしておいても、被処理物をいったん酸素含有雰囲気中に通過させ、それを紫外光照射空間内に搬送すれば、被処理物表面に付着して引きずり込まれる酸素によって十分に有機物の酸化分解が可能であることを発見したのである。
【0010】
そこで、前記目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、搬送される被処理物に、紫外線ランプを備えたランプハウスからの紫外光を照射することで前記被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置であって、前記ランプハウス内の前記紫外線ランプの周囲から、搬送された前記被処理物が前記紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外光照射空間を、不活性ガス雰囲気にするためのガス供給手段を設け、前記被処理物は酸素含有雰囲気中を通った後に前記紫外光照射空間に搬送される構成とした。
【0011】
本発明の紫外光洗浄装置によれば、ガス供給手段から供給される不活性ガスによって、紫外光照射空間が不活性ガス雰囲気にされる。ここで紫外光照射空間とは、ランプハウス内の紫外線ランプの周囲から、搬送された被処理物が紫外光の照射を受ける領域にかけての空間をいうから、紫外線ランプから放射された紫外光は酸素をほとんど含まない空間を通って被処理物に照射されることになり、酸素による吸収を受けずに強い紫外光強度で被処理物が照射される。
一方、被処理物は、大気中等の酸素含有雰囲気中を通って前記紫外光照射空間に搬送されるから、酸素含有雰囲気中に存在していたときに酸素が薄い膜となって被処理物表面に付着しており、これがそのまま紫外光照射空間内に引きずり込まれ、紫外光照射空間内で強い紫外光を受けてそれらの酸素が活性化して表面の有機物が分解される。
【0012】
また、請求項2の発明は、前記ランプハウスは、前記被処理物側の一面を開放させた開放ハウジング内にその開放面に沿わせるように紫外線ランプを並べて構成し、前記ガス供給手段を前記ランプハウスのうち前記紫外線ランプの前記開放面とは反対側に配置した多孔のガス拡散板を通して前記不活性ガスを吐出する構成としたところに特徴を有する。
これによれば、ガス拡散板を通して不活性ガスがランプハウス内に吐出され、この不活性ガスが紫外線ランプの周囲から開放ハウジングの開放面に向かって流れ、その開放面から被処理物の表面を包むように流れ出す。
【0013】
請求項3の発明に係る紫外光洗浄装置は、搬送される被処理物に、紫外線ランプを備えたランプハウスからの紫外光を照射することで前記被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置であって、前記ランプハウスは、前記被処理物側の一面を開放させた開放ハウジング内に、紫外光照射面が平坦な角筒型をなす紫外線ランプをその紫外線照射面が前記開放ハウジングの開放面に沿うように配置して構成され、前記ランプハウスには、前記紫外線ランプの前記開放ハウジングの前記開放面とは反対側に位置する平坦面に対面するように多孔のガス拡散板を備え、このガス拡散板から不活性ガスを吐出して、前記紫外線ランプの周囲から、搬送された前記被処理物が前記紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外光照射空間を不活性ガス雰囲気にするためのガス供給手段を設けるとともに、前記被処理物を酸素含有雰囲気中を通った後に前記紫外光照射空間に搬送する搬送機構を設けたところに特徴を有する。
【0014】
また、請求項4の発明に係る紫外線ランプは、搬送される被処理物に紫外光を照射することで前記被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置のランプハウスに備えられる紫外線ランプであって、前記ランプハウスは、前記被処理物側の一面を開放させた開放ハウジングと、前記開放面とは前記紫外線ランプを挟んで反対側に位置する多孔のガス拡散板とを備え、そのガス拡散板から不活性ガスを吐出して前記紫外線ランプの周囲から、搬送された前記被処理物が前記紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外光照射空間を不活性ガス雰囲気にするようにされており、前記紫外線ランプが、対向する各二面を平坦面とした断面ほぼ長方形状の筒型をなし、長辺側の一対の平坦面の一方を前記ガス拡散板にほぼ平行に対面させ、他方を前記被処理物にほぼ平行に対面させて配置されるものであるところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、紫外線ランプからの紫外光が途中で酸素に吸収されることなく、被処理物表面に到達するから、被処理物表面の紫外光強度が飛躍的に強くなる。従って、紫外線ランプの出力が同じであれば、従来よりも高速で洗浄処理を行うことができ、あるいは、従来と同等の速度で洗浄処理を行うには、紫外線ランプの本数を減らすことができる。また、紫外光照射空間の雰囲気が不活性ガス雰囲気となって空気が排除されているから、仮に、本装置が設置してある大気中に有機溶剤、酸、アルカリなどの各種薬品が気化・霧化して浮遊していたとしても、それが紫外光を受けて硫酸アンモニウム等の反応生成物を生じてしまうことがなく、ランプハウス等への白粉の付着を防止してメンテナンス作業が簡単になる。
【0016】
請求項2の発明では、ランプハウスに窓部材がないから構造が極めて簡単になり、かつ、紫外光照射空間を均一な不活性ガス雰囲気にすることができる。
【0017】
請求項3および請求項4の発明によれば、紫外線ランプが角筒型をなし、その平坦な紫外線照射面が被処理物に対して平行に対面することになる。この結果、紫外線ランプの紫外線照射面から被処理物までの距離が均一化され、被処理物表面における紫外線強度を均一化してムラのない洗浄処理が可能である。
【0018】
しかも、紫外線ランプの他方の平坦面もガス拡散板に対して平行に対面することになるから、ガス拡散板から吐出された不活性ガスがいったん紫外線ランプの平坦面に衝突し、ここで横向きに流れを変えて紫外線ランプの両側部から真っ直ぐに被処理物に向かう流れが生成されるようになる。この結果、被処理物表面のうち紫外線ランプに直接対面して紫外線の照射を受けている領域が、紫外線ランプの両側部から流れ出す不活性ガスの流れに両側から包まれるようになる。このため、被処理物表面には微量の酸素しか存在していないという事情があっても、酸素が紫外光の照射を受けてオゾンを生成し、そのオゾンから活性酸素が生成されて有機物が分解されるという光化学反応が円滑に進むものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態の洗浄ラインを示す正面図
【図2】本実施形態の紫外光洗浄装置を示す斜視図
【図3】図2中のII-II線に沿う部分断面図
【図4】図2中のIII−III線に沿う部分断面図
【図5】大気中と窒素中の紫外線の減衰グラフ
【図6】本実施形態の紫外光洗浄装置における紫外線強度を説明するための概略断面図
【図7】角筒型ランプと円筒型ランプとの紫外光照射状況を示す概略的断面図
【図8】本実施形態の洗浄装置による洗浄度合いを示すグラフ
【図9】角筒型ランプと円筒型ランプとの窒素ガスの流れを説明するための概略的断面図
【図10】本実施形態の洗浄装置と従来装置との必要ランプ数を示すためのグラフ
【図11】従来の紫外光洗浄装置を示す概略的断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の紫外光洗浄装置は、液晶ディスプレイ用のガラス基板(本発明の被処理物に相当する)の洗浄を行う基板洗浄装置10に組み込まれている。図1に示すように、基板洗浄装置10はその正面から見て左側から順に、搬送ユニット11、本発明に係る紫外光洗浄装置20,搬送ユニット12、ウエット洗浄を行うウエット洗浄装置13を連続して配置して構成されている。紫外光洗浄装置20及びウエット洗浄装置13の内部には、搬送ユニット11内に設けたと同様な搬送機構14(図2参照)が備えられており、ワークW(ガラス基板)が図1中の矢印に示すように左側から右側に順次搬送され、全体として連続する洗浄ラインをなしている。
【0021】
さて、図2に示すように、紫外光洗浄装置20には上面を開口させた箱形をなす搬送チャンバー21が設けられており、その開口部を塞ぐように2枚のランプハウス30が図示しないヒンジ機構によって開閉可能に配置されている(図2参照)。搬送チャンバー21内には搬送機構14を構成する複数本のコンベア軸22がガラス基板の搬送方向と直交する方向に回転自在に設けられており、それらの各コンベア軸22に設けた複数個のコンベアローラ23に載せてワークW(図3及び図4にのみ図示)が搬送される。
【0022】
ランプハウス30は、支持プレート31の下面に複数本の紫外線ランプ32をワークWの搬送方向と直交する方向に平行に並べて構成してあり、そのランプ32群全体を四周から囲んで下面側を開放させた開放ハウジング33が設けられている。したがって、紫外線ランプ32群は、上記開放ハウジング33内にその開放面に沿わせるように横並びになっており、搬送機構14によってワークWが開放ハウジング33の下方の紫外光照射空間X(図3,図4参照)に搬送されるときに、そのワークWの表面に紫外光を照射できるようになっている。なお、この実施形態では、紫外線ランプ32は、合成石英ガラス製の断面が矩形状をなす扁平な角筒型であり、その上下の一対の平坦面に電極を設けて例えば波長172nmの真空紫外光を放射するエキシマランプとしてある。
【0023】
さて、図4に示すように、開放ハウジング33の天井部(前記開放面とは反対側)には、例えばステンレス板に直径2mmの孔を3mmピッチで多数形成して開口率40%となるようにした多孔のガス拡散板35を開放ハウジング33の開放面と平行になる(紫外線ランプ32の上側の平坦面と平行に対面する)ように配置してある。なお、ガス拡散板35に形成する孔の孔径は1〜3mm、開口率は30〜60%とすることが望ましい。そして、前記支持プレート31には、そのガス拡散板35によって区画された空間に連なるガス供給口36が形成されており、支持プレート31上には前記ガス供給口36を上から覆うようにガス供給ダクト37が設けられている。このガス供給ダクト37には、図示しない窒素ガス供給源が接続され、清浄な窒素ガス(不活性ガス)をガス供給ダクト37及びガス供給口36を通じてガス拡散板35の上方の空間に供給するようになっており、これらの構成がガス供給手段38を構成する。なお、搬送チャンバー21の底部には、図示しない排気装置に連なる排気ダクト24が設けられており、搬送チャンバー21内に供給された窒素ガスと共に内部で発生したオゾンガス等を排出できるようにしている。
【0024】
上記構成の本実施形態によれば、図4の矢印に示すように、ランプハウス30内に設けられているガス拡散板35の微細孔から窒素ガスが下向きに吐出される。吐出された窒素ガスは、まず紫外線ランプ32の平坦面に衝突し、ここで横向きに流れを変え、紫外線ランプ32の両側部から真っ直ぐワークW表面に向かって落ちるように流れる。このため、紫外線ランプ32の周囲からワークWの紫外線照射空間Xにかけて全体が窒素の流れで満たされ、酸素がほとんど存在しない不活性ガス雰囲気に維持される。したがって、各紫外線ランプ32から放射された紫外光はほとんど酸素に吸収されることなく紫外線照射空間Xに到達し、ワークW表面の紫外線強度は従来に比べて飛躍的に高くなる。
【0025】
ちなみに、波長172nmの紫外光の窒素中と空気中の減衰量を測定すると図5に示す通りで、空気(Air)中では極めて急速に減衰し、窒素(N2)中の減衰は僅かであることが明らかである。
【0026】
また、本実施形態の装置において、窒素ガスを供給し続けて紫外光の照射を行った場合と、窒素ガスの供給を止めて大気雰囲気で紫外光の照射を行った場合とで、紫外線ランプ32の下面(図6中A点)、ワークW表面(同B点)及びA、B点の中間(同C点)における紫外線強度とオゾン濃度とを測定すると同図中の表に示す通りであった。同表において、「Air」の表記は空気中で紫外光照射を行った場合(従来タイプの装置に相当する)、「N2」の表記は窒素ガスを供給して紫外光照射を行った場合を示す。A点ーB点間の距離は2mm、窒素ガスの流速は3cm/secであった。また、紫外線強度はウシオ電機株式会社製紫外線受光器VUV−172Sを使用して同社製紫外線強度センサUIT−151によって測定し、オゾン濃度は荏原実業株式会社製のオゾン濃度計EG−2001Bにより測定した。
【0027】
この測定結果から明らかなように、本実施形態の装置によれば、大気雰囲気中で紫外線照射を行う従来の場合に比べて、ワークW表面(B点)における紫外線強度を2.5倍に強めることができる。この結果、従来の同じ処理スピード・洗浄度合いを得るためには、約半分の本数の紫外線ランプ32で足り、装置の製造コストを大幅に削減することができ、加えてランプの消耗・交換に起因するランニングコストも半減させることができる。
【0028】
なお、図6に示した測定結果において、従来タイプの装置(「Air」の表記)では、同一の紫外線ランプ32を使用しながら、ランプ表面(A点)での紫外線強度が40mW/cm3であって、本実施形態の装置(「N2」の表記)に比べて低くなるのは、紫外線センサーをランプ表面に接触させたとしても、センサーとランプとの間に微小なギャップが生ずることを避け得ず、従来装置ではそのギャップ内に大気(酸素)が侵入して紫外線を減衰させるためである。
【0029】
また、本実施形態では、紫外線ランプ32の下側の平坦面(紫外線照射面)は、ワークWに対して平行に対面する形態となっているから、図7(A)に示すように、紫外線ランプ32の紫外線照射面とワークW表面との間の距離は、紫外線ランプが円形の場合(同図(B))に比べて均一化され、ワークW表面の紫外線強度は均一になる。
【0030】
さて、ワークWは、搬送機構14によって紫外線照射空間Xの外(酸素を含有した大気雰囲気)から紫外線照射空間Xの内(窒素雰囲気)へと搬送されるため、ワークWが紫外線照射空間X外に存在していたときにワークW表面に付着した酸素を薄い膜状に引きずりながら、ワークWは紫外線照射空間X内に進入する。このため、紫外線照射空間X内では、ワークWの周囲は窒素雰囲気でありながら、その表面だけに薄い膜状の酸素が付着した状態となっており、紫外光はほとんど吸収されることなくワークW表面の膜状酸素に到達し、ここでオゾンと活性酸素種を生成し、ワークW表面の有機物の酸化分解が行われる。
【0031】
図6の表から明らかなように、本実施形態の装置(「Air」の表記)では、ワークW表面のオゾン濃度は大気雰囲気中での紫外線照射を行う従来の装置(「N2」の表記)に比べて相対的には半分に低下する(200ppm)。しかし、汚染させたワークWに紫外光を照射し、その照射光量に応じて純水の接触角がどのように変化して行くかを測定した結果(図8)から明らかなように、紫外光照射前の接触角が約60degであったところ80mJ/cm2まで照射すれば(50mW/cm2で1.6秒間)、約3degにまで低下したから、十分な洗浄が行われ、この程度のオゾン濃度によって十分な洗浄が行われることが確認できた。
【0032】
また、窒素ガスを吐出するガス拡散板35は紫外線ランプ32の上側の平坦面に平行に対面する形態となっている。このため、図9(A)に示すように、ガス拡散板35から吐出された窒素ガスがいったん紫外線ランプ32の上側の平坦面に衝突し、ここで横向きに流れを変えて紫外線ランプ32の両側部から真っ直ぐにワークWに向かう流れが生成される。この結果、ワークWのうち紫外線ランプ32に直接対面して紫外線の照射を受けている領域Yが、紫外線ランプ32の両側部から流れ出す不活性ガスの流れに両側から包まれるようになり、ワークW表面には微量の酸素しか存在していないという事情があっても、酸素と紫外光による有機物の酸化分解を促進する光化学反応が円滑に進む。
【0033】
このように本実施形態では、ワークW表面に到達するまでの紫外光の減衰を非常に小さくできるから、ワークW表面における単位面積あたりの紫外線強度を大幅に高めることができる。このことは、結局、次のような利点が得られることを意味する。
(1)従来と同等の処理スピードや洗浄度合いを確保しながら必要なランプ本数を、約半分に削減できて装置の製造コストを安価にできる。
ちなみに、同程度の汚れ具合である無アルカリガラスのワークWに対し、本実施形態の装置でランプ本数を変えて紫外光照射を行った場合の純水の接触角変化を測定した結果(「N2」の表記)を図10に示す。この実験で、ランプ出力は400W,照射距離2mm、窒素ガスまたは空気の供給風速は3cm/sec、ワークWの搬送速度は67mm/secであった。ここで、「Air」の表記があるグラフは、窒素ガスの供給を停止して空気を供給した場合であって、従来装置に相当する。このグラフから明らかなように、純水の接触角を5deg以下にするには、従来装置では8本の紫外線ランプを必要としているところ、本実施形態の装置では半分の4本で済む。
【0034】
(2)また、この種の装置では、ランプの寿命が次第に尽きることによって定期的なランプ交換を余儀なくされるが、設置してあるランプ本数が元々少ないため、ランプの交換本数も少なく、ランニングコストを大幅に低減させることができる。
【0035】
(3)紫外線ランプ32とワークWとの間のギャップを従来よりも大きくとることができるからワークWの振動が生じやすい高速搬送にも耐えることができ、かつ、単位面積あたりの紫外線強度が高いから、結局、処理スピードの高速化が可能になる。
しかも、特に本実施形態では、ランプハウス30に開放ハウジング33を使用しているから、従来の密閉型ランプハウスで必須であった窓部材1を省略することができる。この結果、次のような利点がさらに得られる。
【0036】
(4)窓部材1による紫外光の減衰をなくしてワークWにおける単位面積あたりの紫外線強度をより高めることができる。
(5)窓部材1が無い分、ランプハウス30の構造の簡単化と製造コストの引き下げが可能になる。
(6)また、窓部材1が無いから、半導体や液晶デバイスの製造工程で硫酸アンモニウム等の反応生成物が白粉として窓部材1に付着することがなくなり、その除去のためのメンテナンス作業が大幅に軽減される。本実施形態では、紫外線ランプ32の周囲から紫外光照射空間Xにかけて、ガス拡散板35から吐き出された清浄な窒素に囲まれるようになるから、仮に本装置を設置した半導体工場等の大気中に有機溶剤、酸、アルカリなどの各種薬品の蒸気が含まれていたとしても、それが紫外光照射空間Xに入り込むことがない。また、仮に、ワークWへの紫外光の照射時に各種薬品の蒸気がワークWから揮発してきたとしても、それらの蒸気は窒素ガスの流れに乗じて紫外光照射空間Xから排出される。このため、ランプハウス30内で上記薬品の蒸気が紫外光によって光反応を生じたとしても、反応生成物がランプハウス30内に付着することがなく、メンテナンス作業も極めて容易になる。
【0037】
さらに、開放ハウジング33内には紫外線ランプ32の上方にガス拡散板35を配置し、そこに形成した多数の小孔から窒素ガスを吐出させる構成であるから、紫外線ランプ32から紫外線照射領域Xまでを緩やかな流れの窒素ガスで包み込むことができ、少量のガス使用量で均一な洗浄処理を可能にできる。本発明に適用可能な窒素ガスの供給方法としては、ワークWの表面に付着して引きずり込まれる酸素を剥がしてしまわないものであれば、スリット方式やノズル方式等も採用できるが、本実施形態のように窒素ガスを拡散させて均一に供給できるガス拡散板35を使用することが最も好ましい。
【0038】
さらには、本実施形態の紫外線ランプ32は、対向する各二面を平坦面とした断面長方形状の角筒型とし、長辺側の一対の平坦面の一方をガス拡散板35にほぼ平行に対面させ、かつ、他方の平坦面をワークWにほぼ平行に対面させて配置しているから、次のような効果が得られる。
【0039】
(7)図7に示すように、紫外線ランプ32下面の平坦な紫外線照射面がワークW表面に対して平行に対面することになる。この結果、紫外線ランプ32の紫外線照射面の各点からワークW表面までの距離が均一化され、ワークW表面における紫外線強度を均一化してムラのない洗浄処理が可能となる。
【0040】
(8)しかも、紫外線ランプ32の他方の平坦面もガス拡散板35に対して平行に対面することになるから、ガス拡散板35から吐出された窒素ガスが紫外線ランプ32上面の平坦面に衝突し、図9に矢印で示すように紫外線ランプ35の両側部から真っ直ぐにワークW表面に向かう流れが生成される。この結果、ワークW表面のうち紫外線ランプ32に直接対面して紫外線の照射を受けている領域Yが、紫外線ランプ32の両側部から流れ出す窒素ガスの流れに両側から包まれるようになる。このため、被処理物表面には微量の酸素しか存在していないという事情があっても、酸素が紫外光の照射を受けてオゾンを生成し、そのオゾンから活性酸素が生成されて有機物が分解されるという光化学反応が円滑に進む。
【0041】
なお、窒素ガス(不活性ガス)の供給風速は、窒素ガスによる大気の置換を十分に行わせるためには、平均1cm/sec以上とすることが好ましく、特に、ワークWの搬送速度との関係で決定することが好ましいことが判った。すなわち、ワークWの搬送速度をAcm/sec、不活性ガスの供給風速をBcm/secとしたとき、A/Bを2以上とすることがよい。2未満では、ワークWに付着した酸素が剥がれる傾向を呈するものと思われる。
【0042】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)本実施形態では、紫外線ランプとして波長172nmの誘電体バリア放電ランプを使用したが、真空紫外光を放射するエキシマランプであることが最適である。また、これに限らず、波長185nm、254nm等の低圧水銀ランプを使用してもよい。また、ランプ形状は、扁平な角筒状としているが、二重管タイプの誘電体バリア放電ランプであってもよいし、丸みを帯びた筒型であってもよい。紫外線照射面はできるだけ平坦面に近いことがより望ましい。
【0043】
(2)また、本実施形態ではランプハウス30は下面側を開放させた開放ハウジング33内に紫外線ランプ32を配置した構成としたが、必ずしも、開放ハウジング33を使用しなくてもよく、例えば図11に示した密閉型のランプハウス2を使用つつ、そのランプハウス2の下方の紫外線照射空間に向けて窒素等の不活性ガスを供給する構成であってもよい。この場合には、ランプハウス2の窓部材1に多数の小孔を形成し、その小孔から不活性ガスをワークW表面に吐出させる構成としてもよく、また、窓部材1は無孔状とし、ランプハウス2の下部に設けたノズルから不活性ガスをワークW表面に吐出させる構成としてもよい。
このようにしても、ランプハウス2内にも窒素が満たされているから、紫外線ランプ3の周囲から、搬送された被処理物が紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外線照射領域の全体を不活性ガス雰囲気にすることができ、被処理物表面における紫外線強度を大幅に高めることができる。しかも、本実施形態に比べて不活性ガスの消費量を削減することができ、ランニングコストを更に低減することができる。
【0044】
(3)不活性ガスとしては、窒素ガスに限らず、酸素を含まず、紫外光の減衰ができるだけ少なく、かつ、反応性が低いガスであればよい。
(4)被処理物を紫外光照射空間内に搬送するに先立ち通過させる酸素含有雰囲気としては、本実施形態のような大気に限らず、ガス成分を調整した雰囲気であってもよく、必要な酸素が紫外光照射空間内に引きずり込まれるように付着する程度の酸素濃度を有していればよい。
【符号の説明】
【0045】
14…搬送機構
20…紫外光洗浄装置
30…ランプハウス
32…紫外線ランプ
33…開放ハウジング
35…ガス拡散板
36…ガス供給口
37…ガス供給ダクト
W…ワーク(被処理物)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被処理物に紫外線ランプを備えたランプハウスからの紫外光を照射することで前記被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置であって、前記ランプハウス内の前記紫外線ランプの周囲から搬送された前記被処理物が前記紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外光照射空間を、不活性ガス雰囲気にするためのガス供給手段を設け、前記被処理物は酸素含有雰囲気中を通った後に前記紫外光照射空間に搬送されることを特徴とする紫外光洗浄装置。
【請求項2】
前記ランプハウスは、前記被処理物側の一面を開放させた開放ハウジング内にその開放面に沿わせるように前記紫外線ランプを配置して構成し、前記ガス供給手段は前記ランプハウスのうち前記紫外線ランプの前記開放面とは反対側に配置した多孔のガス拡散板を通して前記不活性ガスを吐出する構成であることを特徴とする請求項1記載の紫外光洗浄装置。
【請求項3】
搬送される被処理物に、紫外線ランプを備えたランプハウスからの紫外光を照射することで前記被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置であって、前記ランプハウスは、前記被処理物側の一面を開放させた開放ハウジング内に、紫外光照射面が平坦なほぼ角筒型をなす紫外線ランプをその紫外線照射面が前記開放ハウジングの開放面に沿うように配置して構成され、前記ランプハウスには、前記紫外線ランプの前記開放ハウジングの前記開放面とは反対側に位置する平坦面に対面するように多孔のガス拡散板を備えて、前記紫外線ランプの周囲から、搬送された前記被処理物が前記紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外光照射空間を、不活性ガス雰囲気にするためのガス供給手段を設けるとともに、前記被処理物を酸素含有雰囲気中を通った後に前記紫外光照射空間に搬送する搬送機構を設けたことを特徴とする紫外光洗浄装置。
【請求項4】
搬送される被処理物に紫外光を照射することで前記被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置のランプハウスに備えられる紫外線ランプであって、前記ランプハウスは、前記被処理物側の一面を開放させた開放ハウジングと、前記開放面とは前記紫外線ランプを挟んで反対側に位置する多孔のガス拡散板とを備え、そのガス拡散板から不活性ガスを吐出して前記紫外線ランプの周囲から、搬送された前記被処理物が前記紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外光照射空間を不活性ガス雰囲気にするようにされており、前記紫外線ランプが、対向する各二面を平坦面とした断面ほぼ長方形状の筒型をなし、長辺側の一対の平坦面の一方を前記ガス拡散板にほぼ平行に対面させ、他方を前記被処理物にほぼ平行に対面させて配置されることを特徴とする紫外光洗浄装置用紫外線ランプ。
【請求項1】
搬送される被処理物に紫外線ランプを備えたランプハウスからの紫外光を照射することで前記被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置であって、前記ランプハウス内の前記紫外線ランプの周囲から搬送された前記被処理物が前記紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外光照射空間を、不活性ガス雰囲気にするためのガス供給手段を設け、前記被処理物は酸素含有雰囲気中を通った後に前記紫外光照射空間に搬送されることを特徴とする紫外光洗浄装置。
【請求項2】
前記ランプハウスは、前記被処理物側の一面を開放させた開放ハウジング内にその開放面に沿わせるように前記紫外線ランプを配置して構成し、前記ガス供給手段は前記ランプハウスのうち前記紫外線ランプの前記開放面とは反対側に配置した多孔のガス拡散板を通して前記不活性ガスを吐出する構成であることを特徴とする請求項1記載の紫外光洗浄装置。
【請求項3】
搬送される被処理物に、紫外線ランプを備えたランプハウスからの紫外光を照射することで前記被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置であって、前記ランプハウスは、前記被処理物側の一面を開放させた開放ハウジング内に、紫外光照射面が平坦なほぼ角筒型をなす紫外線ランプをその紫外線照射面が前記開放ハウジングの開放面に沿うように配置して構成され、前記ランプハウスには、前記紫外線ランプの前記開放ハウジングの前記開放面とは反対側に位置する平坦面に対面するように多孔のガス拡散板を備えて、前記紫外線ランプの周囲から、搬送された前記被処理物が前記紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外光照射空間を、不活性ガス雰囲気にするためのガス供給手段を設けるとともに、前記被処理物を酸素含有雰囲気中を通った後に前記紫外光照射空間に搬送する搬送機構を設けたことを特徴とする紫外光洗浄装置。
【請求項4】
搬送される被処理物に紫外光を照射することで前記被処理物表面の洗浄を行う紫外光洗浄装置のランプハウスに備えられる紫外線ランプであって、前記ランプハウスは、前記被処理物側の一面を開放させた開放ハウジングと、前記開放面とは前記紫外線ランプを挟んで反対側に位置する多孔のガス拡散板とを備え、そのガス拡散板から不活性ガスを吐出して前記紫外線ランプの周囲から、搬送された前記被処理物が前記紫外光の照射を受ける領域にかけての紫外光照射空間を不活性ガス雰囲気にするようにされており、前記紫外線ランプが、対向する各二面を平坦面とした断面ほぼ長方形状の筒型をなし、長辺側の一対の平坦面の一方を前記ガス拡散板にほぼ平行に対面させ、他方を前記被処理物にほぼ平行に対面させて配置されることを特徴とする紫外光洗浄装置用紫外線ランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−183949(P2009−183949A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114870(P2009−114870)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【分割の表示】特願2003−435401(P2003−435401)の分割
【原出願日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【分割の表示】特願2003−435401(P2003−435401)の分割
【原出願日】平成15年12月26日(2003.12.26)
【出願人】(304021440)株式会社ジーエス・ユアサコーポレーション (461)
【Fターム(参考)】
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