説明

組成物、それを用いた金属ベース回路基板

【課題】安価な破砕品の無機フィラーを用いて、金属板や金属箔との接着性に優れ、放熱製と電気絶縁性に優れる混成集積回路用の組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂と前記エポキシ樹脂の硬化剤と無機フィラーとを含む組成物であって、無機フィラーの最大粒径が100μm以下で且つ粒子径1〜12μmのものを50体積%以上含有し、しかもαクリストバライトを含有することを特徴とする組成物であり、好ましくは、無機フィラーが、平均粒子径が5〜50μmである粗粉と、粒径2.0μm以下を70体積%以上含有し、平均粒子径が0.2〜1.5μmである微粉とを含むことを特徴とする前記の組成物であり、更に好ましくは、前記粗粉がαクリストバライトである前記の組成物、前記組成物を用いてなる基板、金属ベース回路基板、及び金属ベース多層回路基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混成集積用の回路基板に適用される組成物に関する。また、本発明は前記組成物を用いた回路用基板、金属ベース回路基板、金属ベース多層回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板上に無機フィラーを充填した樹脂からなる絶縁層を介して回路が形成されている金属ベース回路基板が公知であり、その絶縁層として、樹脂中に球状の無機フィラーを高充填し、接着力を充分に保持し、しかも硬化後には高熱伝導率を達成する組成物が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平2−286768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
球状の無機フィラーは、例えば球状シリカ、球状アルミナ等が知られているが、火炎溶融等の特殊な製造方法により提供されているものであるから、得られる基板、回路基板等の特性は良いものの、価格的に高価とならざるを得ないという欠点を有している。このため、入手容易な破砕品の無機フィラーを用いて、接着力が強く、硬化後には熱伝導率が高く、電気絶縁性に優れる硬化体を提供できる組成物の探索が産業界に於いて重要視されている。
【0004】
即ち、本発明の目的は、破砕品の無機フィラーを用い、金属板や金属箔との接着性に優れ、硬化後には高熱伝導性を発揮し、その結果として、信頼性の高い混成集積回路を提供できる基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エポキシ樹脂と前記エポキシ樹脂の硬化剤と無機フィラーとを含む組成物であって、無機フィラーが最大粒径が100μm以下で且つ粒子径1〜12μmのものを50体積%以上含有し、しかもαクリストバライトを含有することを特徴とする組成物であり、好ましくは、無機フィラーが、平均粒子径が5〜50μmである粗粉と、粒径2.0μm以下を70体積%以上含有し、平均粒子径が0.2〜1.5μmである微粉とを含むことを特徴とする前記の組成物であり、更に好ましくは、前記粗粉がαクリストバライトである前記の組成物である。
【0006】
また、本発明の好ましい実施態様として、前記微粉がαクリストバライトである前記の組成物であり、前記微粉がα石英である前記の組成物であり、前記微粉がアルミナである前記の組成物である。
【0007】
本発明は、金属板上に、前記の組成物からなる絶縁層を設け、前記絶縁層上に金属箔を設けてなることを特徴とする回路用基板であり、金属板上に、前記の組成物からなる絶縁層を設け、前記絶縁層上に金属箔を設け、前記金属箔を加工して回路を形成してなることを特徴とする金属ベース回路基板である。
【0008】
加えて、本発明は、金属板上に、前記の組成物からなる第1の絶縁層を設け、前記第1の絶縁層上に回路基板を設けるとともに、前記第1の絶縁層上に更に前記の組成物からなる第2の絶縁層を設け、前記第2の絶縁層上に高発熱性電子部品を設けてなることを特徴とする金属ベース多層回路基板であり、好ましくは、第1の絶縁層と第2の絶縁層との間に金属層を設けたことを特徴とする前記の金属ベース多層回路基板であり、更に好ましくは、第2の絶縁層の厚さが50μm以上200μm以下であることを特徴とする前記の金属ベース多層回路基板である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物は、エポキシ樹脂と特定のエポキシ樹脂硬化剤を選定し、しかも特定粒度分布で特定組成の無機フィラーを選択しているので、アルミニウム、銅、或いは前記合金等からなる金属板や金属箔との接着性が良く、しかも高熱伝導性の樹脂硬化体を与えることができ、電気部品や電子部品の電気絶縁性で熱放散性に富む部品、特に混成集積回路用の基板や回路基板、特に金属ベース回路基板や金属ベース多層回路基板に用いて好適である。
【0010】
本発明の樹脂硬化体は、金属との接着に富み、しかも電気絶縁性と熱伝導率に優れ、好ましい実施態様に於いては、1.5〜3.0W/mKもの高い熱伝導率を示すので、混成集積回路用の基板、回路基板、特に金属ベース回路基板や金属ベース多層回路基板を初めとするいろいろな電気部品、電子部品の放熱用材料として好適である。
【0011】
本発明の基板、更に本発明の金属ベース回路基板、金属ベース多層回路基板は、前記組成物を用いているので、その樹脂硬化体の特徴を示して、電気絶縁性と熱伝導性に優れるので、これを用いて信頼性の高い混成集積回路を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明ではエポキシ樹脂を用いる。エポキシ樹脂としては、公知のエポキシ樹脂、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂等を用いることができるが、このうちビスフェノールA型エポキシ樹脂が、電気絶縁性、熱伝導率が共に高く、耐熱性の高い樹脂硬化体が得られることから好ましく選択される。
【0013】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂について、エポキシ当量300以下であることが一層好ましい。エポキシ当量が300以下であれば、高分子タイプになるときに見られる架橋密度の低下によるTgの低下、従って耐熱性の低下を引き起こすことが防止されるからである。また、分子量が大きくなると、液状から固形状となり、無機フィラーを硬化性樹脂中にブレンドすることが困難になり、均一な樹脂組成物が得られなくなるという問題をも避けることができる。
【0014】
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂について、加水分解性塩素濃度が600ppm以下であることが好ましい。加水分解性塩素濃度が600ppm以下であれば、混成集積回路基板として充分な耐湿性を示すことができる。
【0015】
本発明では、前記エポキシ樹脂の硬化剤として、フェノールノボラック樹脂が好ましく使用される。フェノールノボラック樹脂は、平均分子量1500以下であることが好ましい。平均分子量が1500以下であれば、軟化点が高温であるために無機フィラーを硬化性樹脂中にブレンドすることが困難になるという問題を避けることができる。
【0016】
フェノールノボラック樹脂は、加水分解性塩素濃度が10ppm以下であることが好ましい。加水分解性塩素濃度が10ppm以下であれば、混成集積回路基板として充分な耐湿性を確保できる。
【0017】
本発明では、無機フィラーとしては特定粒度分布で特定組成のものを採用する。即ち、無機フィラーが、最大粒径が100μm以下であり、且つ粒子径1〜12μmのものを50体積%以上含有し、しかもαクリストバライトを含有するものを選択する。これにより本願発明の効果が達成できる。
【0018】
更に、本発明において、(a)最大粒子径が100μm以下で且つ粒子径1〜12μmのものを50体積%以上含有し平均粒子径が5〜50μmである粗粉と、(b)粒子径2.0μm以下のものを70体積%以上含有し平均粒子径が0.2〜1.5μmである微粉とからなる混合粉を用いることが好ましい。前記の特定な粒度分布を有する粗粉と微粉とを混合使用する時、粗粉と微粉との両方が球状粒子からなる無機フィラーを用いることなく、本発明の目的を達成することができる。尚、(a)と(b)との配合割合については、両者を適宜配合して、粒子の50体積%以上が1〜12μmの範囲になればどのような範囲であっても構わないが、本発明者の検討結果によれば、(a)と(b)との合計量100容量%に対して、(a)が70〜80容量%であることが好ましい。
【0019】
本発明において、無機フィラーとしては、αクリストバライトを含有していれば良く、他に酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、窒化ホウ素等電気絶縁性で樹脂よりも熱伝導性に優れるものならば、いずれのものでも使用できる。本発明では、粗粉としてシリカの一結晶系であるαクリストバライトを選択することが好ましい。αクリストバライトは、誘電率(25℃、1MHz)が4.0以下であり、本発明の組成物とその硬化体を高周波で用いる電気、電子部品の放熱材料に用いる場合に、電気絶縁性が確保しやすいからである。
【0020】
また、αクリストバライトについては、その電気伝導度が50μS/cm以下であること、ClやNaといったイオン性不純物量が20ppm以下であることが、混成集積回路用の基板として充分な耐湿性を確保し易くなるので一層好ましい。
【0021】
無機フィラーの微粉としては、粗粉がαクリストバライトを既に含有しているならば、前記無機フィラーの破砕品を使用できる。しかし、前記αクリストバライトの微粉を用いれば、αクリストバライトの有する特徴を反映して、低誘電率で、高電気絶縁性で、高熱伝導性の樹脂硬化体が得られるので、粗粉にαクリストバライトを含有させる必要性はなくなる。一方、粗粉がαクリストバライトを含有する場合には、微粉にα石英、や溶融石英等のシリカやアルミナを使用することができる。α石英やアルミナの場合には高熱伝導の硬化体が得られるので好ましい。また、球状粒子からなるもの、例えば球状シリカ、球状アルミナ等を使用すれば、樹脂組成物の流動性が高まるので、より無機フィラーの充填量を上げることができ、その結果高電気絶縁性で高熱伝導率の樹脂硬化体を得ることができるのでやはり好ましい。
【0022】
無機フィラーの配合割合としては、エポキシ樹脂25〜50体積%、無機フィラーの粗粉が34〜70体積%、無機フィラーの微粉が3〜24容量%であることが好ましい。前記配合範囲内とすれば、均質で気孔の混入を防止でき、しかも無機フィラーが高充填されて、熱伝導性と電気絶縁性が共に良好な樹脂硬化体が安定して得られるので、これを用いて作製した基板や回路基板、更に混成集積回路が高い信頼性を有するものとなる。
【0023】
本発明の組成物は、公知の方法で得ることができるが、次に示す方法が、樹脂組成物中に気泡が巻き込まれるのを防止し、安定して、金属との接着性に優れ、高電気絶縁性で熱伝導性に優れる樹脂硬化体を得ることができることから、好ましい。
【0024】
即ち、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂の硬化剤とを混合し、その後、硬化する前に、無機フィラーを配合し混合する。ここで用いる混合機については、万能混合攪拌機、遊星式攪拌脱泡装置、加圧ニーダー等の従来公知の混合機を用いれば良く、また、混合条件についても適宜選択すれば良く、格別な条件を設定すべき理由はない。
【0025】
本発明の組成物の樹脂硬化体は高電気絶縁性であると共に高熱伝導性を有し、更にアルミニウム、銅、それらの合金等の金属との接着性にも優れる特徴を有するので、いろいろな電気部品や電子部品の絶縁材料として利用できるが、特に混成集積回路用の基板、回路基板の絶縁層として好適である。また、好ましい実施態様に於いては、1.5〜3.0W/mKもの高い熱伝導率を有する。
【0026】
本発明は、金属板上に、前記の組成物からなる絶縁層を設け、前記絶縁層上に金属箔を設けてなることを特徴とする回路用基板である。ここで、通常、金属板として、0.1〜4.0mmの厚みを有する、アルミニウム、銅、鉄、前記金属の合金、又は前記金属の複合板が用いることができるし、金属箔として、アルミニウム、銅、又はこれらの合金等からなる金属箔が通常選択される。当該回路用基板は、次に示す金属ベース回路基板、金属ベース多層回路基板等の基板として用いられ、前記組成物の硬化体の有する特徴を反映して、電気絶縁性と熱放散性に優れ信頼性の高い回路基板を容易に提供することができる。尚、絶縁層の厚みについては50〜200μmが好ましい。
【0027】
また、本発明の金属ベース回路基板は、前記基板の金属箔よりエッチング等の従来公知の方法で加工して回路を形成することで得ることができ、絶縁層が前記組成物からなるので、信頼性が高い特徴を有している。
【0028】
本発明の金属ベース多層回路基板は、金属板上に設けられた前記組成物からなる第1の絶縁層上に、回路基板を設けると共に、第2の絶縁層を形成して高発熱性電子部品を設けてなる特定な構造を有するので、高発熱性電子部品からの熱放散が助長され、当該高発熱性部品を制御する電子部品を前記回路基板に搭載することができるので、信頼性高く高発熱性電子部品を稼働させることができる特徴がある。尚、前記回路基板としては、他の金属ベース回路基板であっても、ガラスファイバー入りエポキシ樹脂を基材とする、いわゆるガラエポ基板であっても良いし、またポリイミド樹脂等の樹脂からなる樹脂基板であっても構わない。
【0029】
また、本発明に於いて、前記第1の絶縁層と第2の絶縁層との間に金属層を設けることができる。この構造を採用するときに、回路基板のシールド効果を増強することができるし、また高発熱性電子部品からの放熱を助長することもできるので、好ましい。尚、本発明に於いて、第1の絶縁層の厚さは50〜200μmが好ましく、第2の絶縁層の厚さが50μm以上200μm以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の基板、金属ベース回路基板、金属ベース多層回路基板は、金属板上に前記組成物からなる絶縁層を有しているので、前記組成物或いはその硬化体の特性を反映して、耐電圧特性に優れ、また熱放散性にも優れる特徴を有するので混成集積回路に用いて好適である。更に、好ましい実施態様では、無機フィラーの粗粉と微粉のいずれもがαクリストバライトからなるので、誘電容量が小さく、高周波を使用する混成集積回路用の基板として好適である。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
無機フィラーの粗粉としてαクリストバライト(東海工業社製、「XPF6」;最大粒径が96μmで、5〜50μmの粒子を60質量%含有し、平均粒子径が6μm)55質量部と、無機フィラーの微粉としてαクリストバライト(東海工業社製、「XPF6」を自然沈降現象を利用した湿式の水簸分級方法で分級したもの:2.0μm以下が70質量%で、平均粒子径が1.0μm)14質量部とを混合して、原料無機フィラーとした。
【0032】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製、「EP828」)20質量部、フェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業社製、「TD−2131」)を9質量部、シランカップリング剤(日本ユニカー社製、「A−187」)1質量部を配合して、温度90℃で混練機により混練しながら、前記原料無機フィラーを混合して、回路基板用の組成物(a)を作製した。
【0033】
前記組成物(a)100質量部に対して、硬化促進剤としてイミダゾール系硬化促進剤(四国化成社製、「TBZ」)を0.05質量部加え、組成物(b)を得た。
【0034】
組成物(b)を150℃で1時間、更に180℃で2時間加熱して硬化物を得て、この硬化物について、レーザーフラッシュ法での熱伝導率を測定したところ、1.7W/mKであった。この結果を表1に示した。
【0035】
【表1】

【0036】
厚み1.5mmのアルミニウム板上に、前記組成物(b)を、硬化後の厚みが80μmとなるように塗布し、100℃0.1時間加熱して半硬化状態にした後、組成物(b)上に厚さ210μmの銅箔を積層し、更に180℃2時間加熱して硬化を完了させ、混成集積回路用の基板を作製した。
【0037】
得られた混成集積回路用の基板について、後述する通りに、各種の特性を調べ、その結果を表2に示した。
【0038】
【表2】

【0039】
<密着性>
混成集積回路基板について、銅箔をエッチングで除去した後、2cm×10cmに切断し、90度の角度にアルミニウム面側に折り曲げた。その際に、アルミと絶縁層に剥がれが生じない物を良好、剥がれが生じた物を不良とした。
【0040】
<流動性>
組成物(b)について、B型粘度計にて粘度を測定し、室温(25℃)の粘度が200,000cpsを超えるものを不良、200,000cps以下のものを良好とした。
【0041】
<耐電圧>
混成集積回路用の基板の銅箔の周囲をエッチングし、直径20mmの円形部分を残し試料とした。温度121℃、湿度100%RH、2気圧、96時間の条件下に暴露した前後の耐電圧について、試験片を絶縁油中に浸漬し、室温で交流電圧を銅箔とアルミニウム板間に印加させ、JIS C2110に基づき測定した。測定器には、菊水電子工業社製、「TOS−8700」を用いた。
【0042】
<引き剥がし強度>
混成集積回路用の基板から幅10mmの銅箔を残すように加工して試料とした。銅箔と基板を90度の角度とし、50mm/minの引っ張り速度で剥離した。その他の条件はJIS C6481に基づいた。測定機としてはテンシロン(東洋ボールドウィン社製、「U−1160」)を用いた。
【0043】
<誘電損失>
混成集積回路用の基板の銅箔の周囲をエッチングし、直径20mmの円形部分を残し試料とした。測定は、温度25℃、周波数1MHzの条件下にて、JIS C6481に基づき実施した。測定器には、LCRメータ(横河・ヒューレット・パッカード社製、「HP4284」)を用いた。
【0044】
<比誘電率>
先ず、静電容量(X;単位、F)を上記誘電損失と同条件にてJIS C6481に基づき測定した。比誘電率(E)は、静電容量(X;単位、F)と絶縁層の厚み(Y;単位、m)と電極板の面積(Z;単位、m)と真空の誘電率(8.85×10−12;単位、F/m)から、
E=X×Y/(8.85×10−12×Z)
の式を用いて、算出した。
【0045】
<耐熱性>
試料を200℃に設定した恒温器(エスペック社製、「PHH−201」)に500hr放置した後、木片上で冷却する処理を行い、処理後の試験片を絶縁油中に浸漬し、室温で交流電圧を銅箔とアルミニウム板間に印加させ、絶縁破壊する電圧を測定した。
【0046】
<厚銅箔信頼性>
銅箔の厚みが210μmを超えるような混成集積回路基板の評価として実施した。260℃に設定された半田浴に2分間浮かべた後、木片上で冷却する処理を行い、処理後の試験片を絶縁油中に浸漬し、室温で交流電圧を銅箔とアルミニウム板間に印加させ、絶縁破壊する電圧を測定する。また、処理後の試験片の断面観察(走査型電子顕微鏡)を行い、銅箔と絶縁層界面部における絶縁層割れの発生有無を評価した。
【0047】
<熱抵抗値>
測定用試料としては、混成集積回路用の基板を3×4cmに切断し、10×15mmの銅箔を残した。銅箔上にTO−220型トランジスターを半田付けし、水冷した放熱フィン上に放熱グリースを介して固定した。トランジスターに通電し、トランジスターを発熱させ、トランジスター表面と金属基裏面の温度差を測定し、熱抵抗値を測定し、放熱グリースの熱抵抗値を補正する事により、求める試験片の熱抵抗値(A;単位、K/W)を測定した。
【0048】
<熱伝導率>
熱伝導率(H;単位、W/mK)は、前記の熱抵抗値(A;単位、K/W)と、試片の絶縁層の厚み(B;単位、m)及びトランジスター実装面積(C;単位、m)から、
X=B/(A×C)
の式を用いて、算出した。
【0049】
<加工性>
混成集積回路基板をパンチにて穴あけを行い、10,000ショット後のパンチの磨耗量を測定した。
【0050】
<沿面放電耐圧>
測定用試料として、混成集積回路基板の沿面から2mm距離に直線の銅回路を形成した。室温で交流電圧を銅箔回路とアルミニウム板間に印加し、沿面放電の発生電圧を測定した。
【0051】
<電力損失>
静電容量(X;単位、F)を上記誘電損失と同条件にてJIS C6481に基づき測定した。電力損失(G)は、静電容量(X;単位、F)とデバイスの動作周波数(H;400kHz)と動作電圧(I;220V)から、
G=(X×I×H)/2
の式を用いて、算出した。
【0052】
(実施例2〜8)
無機フィラーの粗粉、微粉の種類と配合量とを表1に示す通りに変えたこと以外は実施例1と同様の方法で組成物及び樹脂硬化体、更に基板、金属ベース回路基板、混成集積回路を作製し、評価した。この結果を表1、表2に示した。
【0053】
(比較例1〜5)
硬化剤、粗粉、微粉の種類とこれらの配合量を変えたこと以外は実施例1と同様の操作で組成物及び樹脂硬化体、更に基板、回路基板、混成集積回路を作製し、評価した。この結果を表3、表4に示す。
【0054】
【表3】

【0055】
【表4】

【0056】
(実施例7)
厚み1.5mmのアルミニウム板上に、実施例1の組成物(b)を、硬化後の第1の絶縁層厚みが150μmとなるように塗布し、100℃0.1時間加熱して半硬化状態にした後、前記組成物(b)上に厚さ35μmの銅箔を積層し、更に180℃2時間加熱して硬化を完了させた。得られた回路基板上に更に前記組成物(b)を硬化後の絶縁層厚みが50μmとなるように塗布し、100℃0.1時間加熱して半硬化状態にした後、組成物(b)上に厚さ210μmの銅箔を積層し、更に180℃2時間加熱して硬化を完了させ、混成集積回路用の金属ベース多層回路基板を作製した。
【0057】
(実施例8)
第2の絶縁層厚みを200μmに変えたこと以外は実施例7と同様の方法で金属ベース多層回路基板を作製し、評価した。この結果を表5、表6、表7に示した。
【0058】
(比較例6〜7)
硬化剤、粗粉、微粉の種類とこれらの配合量を変えたこと以外は実施例7と同様の操作で組成物及び樹脂硬化体、更に基板、回路基板、混成集積回路を作製し、評価した。この結果を表5、表6、表7に示す。
【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

【0061】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の組成物は、特定粒度で特定組成の無機フィラーと、特定樹脂との組み合わせにより、高電気絶縁性且つ高熱伝導性に良好で、しかも金属との接着性にも優れる硬化体を与えるので、例えば混成集積回路用の基板の絶縁層に好適である。また、好ましい実施態様に於いては、更に低誘電率の樹脂硬化体、一層熱伝導率に優れる樹脂硬化体を提供できるので、混成集積回路用の基板、回路基板の他、いろいろな用途の電気部品、電子部品の放熱部の材料として使用可能性があり、産業上極めて有用である。
【0063】
本発明の混成集積回路用の基板や金属ベース回路基板、金属ベース多層回路基板は、前記の特徴のある組成物を用いているので、耐電圧特性、熱放散性、更には高周波特性にも優れる特徴を有している。その為に信頼性の高い混成集積回路を得ることができるので産業上非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と前記エポキシ樹脂の硬化剤と無機フィラーとを含む組成物であって、無機フィラーが、最大粒径が100μm以下であり、粒子径1〜12μmのものを50体積%以上含有し、しかもαクリストバライトを含有することを特徴とする組成物。
【請求項2】
無機フィラーが、平均粒子径が5〜50μmである粗粉と、粒径2.0μm以下を70体積%以上含有し、平均粒子径が0.2〜1.5μmである微粉とを含むことを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記粗粉がαクリストバライトである請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
前記微粉がαクリストバライトである請求項1乃至3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記微粉がα石英である請求項1乃至3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記微粉がアルミナである請求項1乃至3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
金属板上に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物からなる絶縁層を設け、前記絶縁層上に金属箔を設けてなることを特徴とする回路用基板。
【請求項8】
金属板上に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物からなる絶縁層を設け、前記絶縁層上に金属箔を設け、前記金属箔を加工して回路を形成してなることを特徴とする金属ベース回路基板。
【請求項9】
金属板上に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物からなる第1の絶縁層を設け、前記第1の絶縁層上に回路基板を設けるとともに、前記第1の絶縁層上に更に請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物からなる第2の絶縁層を設け、前記第2の絶縁層上に高発熱性電子部品を設けてなることを特徴とする金属ベース多層回路基板。
【請求項10】
第1の絶縁層と第2の絶縁層との間に金属層を設けたことを特徴とする請求項9記載の金属ベース多層回路基板。
【請求項11】
第2の絶縁層の厚さが50μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項9又は請求項10記載の金属ベース多層回路基板。

【公開番号】特開2008−266378(P2008−266378A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107866(P2007−107866)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】