説明

絶縁膜形成用組成物、ならびにシリカ系膜およびその形成方法

【課題】高集積化および多層化が望まれている半導体素子などにおいて好適に用いることができ、貯蔵安定性に優れ、低比誘電率であり、かつ、機械的強度に優れた絶縁膜の形成に用いることができる絶縁膜形成用組成物、シリカ系膜およびその形成方法を提供する。
【解決手段】絶縁膜形成用組成物は、下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物を加水分解縮合して得られたポリマーと、有機溶媒と、を含み、前記ポリマーはシラノール基を含み、前記シラノール基に含まれる水酸基の数が、前記ポリマー中のケイ素原子の数に対して70〜130%である。
Si(OR ・・・・・(1)
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
(RO)3−aSi−(R−Si(OR3−b ・・・(2)
(式中、R〜Rは同一または異なり、それぞれ1価の有機基を示し、aおよびbは同一または異なり、0〜1の数を示し、Rは酸素原子、フェニレン基または−(CH−で表される基(ここで、mは1〜6の整数である。)を表し、cは0または1を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁膜形成用組成物、ならびにシリカ系膜およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子などにおける層間絶縁膜として、CVD法などの真空プロセスで形成されたシリカ(SiO)膜が多用されている。そして、近年、より均一な層間絶縁膜を形成することを目的として、SOG(Spin on Glass)膜と呼ばれるテトラアルコキシランの加水分解生成物を主成分とする塗布型の絶縁膜も使用されるようになっている。
【0003】
通常、半導体装置に用いられる低比誘電率絶縁膜用の有機シリカゾル組成物は、CMP(Chemical Mechanical Polishing)やパッケージング等の力学的ストレスの生ずる工程での収率を考慮して、熱硬化後に得られた有機シリカ膜が高い弾性率を示すように、有機シリカゾルの組成が制御されている(例えば米国特許第6495264号明細書)。具体的には、有機シリカゾル内の4官能性シラン化合物あるいはそれ以上の数の加水分解性置換基を有するシラン化合物を、通常40モル%以上に増やすことで、シリカ膜中の絶対的な架橋密度の向上を図っている。これらのシラン化合物の成分比を上げることで架橋密度が上昇し、弾性率および硬度が高い膜が得られる。しかしながら、ゾル状態においてこれらのシラン化合物が有するシラノール基(−SiOH)の量を十分に制御することに関しては、これまでほとんど知見が無い。
【0004】
ゾル中のシラノール基の量が多い場合、ゾルを含む塗膜を焼成した際に生じるゾル同士の結合が多くなるため、得られる膜の機械的強度を向上させることができる一方で、架橋しうる官能基の数が多いことから、ゾル粒子間の縮合反応が起こりやすいため、ゾルの貯蔵安定性が低下するおそれがある。
【0005】
これに対して、ゾル中のシラノール基の量が少ない場合、架橋しうる官能基の数が少なくなるため、組成物の貯蔵安定性が良好になる一方、焼成時のゲル化温度が一般的に高くなる傾向があるため、プレベークから本焼成にかけての膜収縮が大きくなりやすく、ゾルを含む塗膜を焼成した際に生成するゾル同士の結合が少ないことから、得られる膜の機械的強度が低下するおそれがある。
【特許文献1】米国特許第6495264号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景により、貯蔵安定性に優れ、低比誘電率であり、かつ機械的強度に優れた絶縁膜を形成するための有機シリカゾルの開発が求められている。
【0007】
本発明は、高集積化および多層化が望まれている半導体素子などにおいて好適に用いることができ、貯蔵安定性に優れ、低比誘電率であり、かつ機械的強度に優れた絶縁膜の形成に用いることができる絶縁膜形成用組成物を提供する。
【0008】
本発明はまた、低比誘電率であり、かつ機械的強度に優れたシリカ系膜およびその形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る絶縁膜形成用組成物は、
下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物を加水分解縮合して得られたポリマーと、有機溶媒と、を含み、
前記ポリマーはシラノール基を含み、
前記シラノール基に含まれる水酸基の数が、前記ポリマー中のケイ素原子の数に対して70〜130%である、絶縁膜形成用組成物。
Si(OR ・・・・・(1)
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
(RO)3−aSi−(R−Si(OR3−b ・・・(2)
(式中、R〜Rは同一または異なり、それぞれ1価の有機基を示し、aおよびbは同一または異なり、0〜1の数を示し、Rは酸素原子、フェニレン基または−(CH−で表される基(ここで、mは1〜6の整数である。)を表し、cは0または1を示す。)
上記絶縁膜形成用組成物では、前記加水分解縮合において、上記一般式(2)で表される化合物の使用量が、前記シラン化合物の総量の50〜100モル%であることができる。
【0010】
上記絶縁膜形成用組成物において、前記シラン化合物は、下記一般式(3)で表される化合物をさらに含むことができる。
Si(OR4−d ・・・・・(3)
(式中、Rは水素原子、フッ素原子または1価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表し、dは1〜3の整数を示す。)
上記絶縁膜形成用組成物において、膜中空孔形成剤として有機高分子をさらに含むことができる。
【0011】
本発明の一態様に係るシリカ系膜の形成方法は、
上記絶縁膜形成用組成物を基板に塗布し、塗膜を形成する工程と、前記塗膜に硬化処理を施す工程と、を含む。
【0012】
本発明の一態様に係るシリカ系膜は、上記シリカ系膜の形成方法により得られる。
【発明の効果】
【0013】
上記絶縁膜形成用組成物によれば、前記ポリマーがシラノール基を含み、前記シラノール基に含まれる水酸基の数が、前記ポリマー中のケイ素原子の数に対して70〜130%であることにより、貯蔵安定性に優れるうえ、塗膜の焼成時における膜収縮率が小さいため、機械的強度に優れ、かつ、比誘電率が小さい絶縁膜を形成することができる。
【0014】
上記シリカ系膜は比誘電率が小さく、機械的強度に優れ、かつ、比誘電率が小さい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る絶縁膜形成用組成物、ならびにシリカ系膜およびその形成方法について具体的に説明する。
【0016】
1.絶縁膜形成用組成物およびその製造
本発明の一実施形態に係る絶縁膜形成用組成物は、下記一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物1」ともいう。)および下記一般式(2)で表される化合物(以下、「化合物2」ともいう。)の群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物(以下、単に「シラン化合物」ともいう。)を加水分解縮合して得られたポリマー(加水分解縮合物)と、有機溶媒と、を含み、
ポリマーはシラノール基を含み、シラノール基に含まれる水酸基の数が、ポリマー中のケイ素原子の数に対して70〜130%である。
Si(OR ・・・・・(1)
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
(RO)3−aSi−(R−Si(OR3−b ・・・(2)
(式中、R〜Rは同一または異なり、それぞれ1価の有機基を示し、aおよびbは同一または異なり、0〜1の数を示し、Rは酸素原子、フェニレン基または−(CH−で表される基(ここで、mは1〜6の整数である。)を表し、cは0または1を示す。)
ポリマー中のシラノール基に含まれる水酸基の数、ならびにポリマー中のケイ素原子の数は、ポリマーに関する29Si NMRスペクトルの波形分離解析により得られたSi含有構造単位の面積比により算出することができ、より具体的には、本願実施例に示した方法により算出することができる。
【0017】
本実施形態に係る絶縁膜形成用組成物において、ポリマー中のシラノール基に含まれる水酸基の数が、ポリマー中のケイ素原子の数に対して70%未満であると、膜収縮率が高くなり、機械的強度に劣る場合があり、一方、130%を超えると、貯蔵安定性に劣る場合がある。
【0018】
ポリマー中のシラノール基に含まれる水酸基の数は例えば、シラン化合物における化合物1および化合物2の割合、反応時間、反応温度、使用する触媒の種類、加水分解縮合後の濃縮工程の有無等を適宜設定することで制御することができる。
【0019】
また、本実施形態に係る絶縁膜形成用組成物において、ポリマー中のシラノール基に含まれる水酸基の数が、ポリマー中のケイ素原子の数に対して80〜120%であることがより好ましい。
【0020】
以下、本実施形態に係る絶縁膜形成用組成物を製造するために使用する各成分について説明する。
【0021】
1.1.ポリマー(加水分解縮合物)
上述したように、ポリマーは、4官能性以上のシラン化合物(化合物1および/または化合物2)を主原料とする。シラン化合物の加水分解縮合により、Si−O−Si結合を有するポリマーを得ることができる。また、シラン化合物は、化合物2をシラン化合物の総量の50〜100モル%(原料比)含有することが好ましく、65〜100モル%含有することがより好ましく、85モル%〜100モル%含有することがさらに好ましい。
【0022】
1.1.1.化合物1
上記一般式(1)において、Rで表される1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリル基、グリシジル基等を挙げることができる。なかでも、Rで表される1価の有機基は、アルキル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0023】
ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜5であり、これらのアルキル基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子等に置換されていてもよい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基等を挙げることができる。アルケニル基としては、例えばビニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、3−ヘキセニル基を挙げることができる。
【0024】
化合物1の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシランなどを挙げることができ、特に好ましい化合物としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが挙げられる。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0025】
1.1.2.化合物2
上記一般式(2)において、R〜Rとしては、前記一般式(1)のRとして例示したものと同様の基を挙げることができる。
【0026】
上記一般式(2)においてc=0の化合物2としては、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、ヘキサフェノキシジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−メチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−エチルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタメトキシ−2−フェニルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタエトキシ−2−フェニルジシラン、1,1,1,2,2−ペンタフェノキシ−2−フェニルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジエチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2,2−テトラフェノキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリメチルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリエチルジシラン、1,1,2−トリメトキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,1,2−トリエトキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,1,2−トリフェノキシ−1,2,2−トリフェニルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラエチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン等を挙げることができる。
【0027】
これらのうち、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン等を、好ましい例として挙げることができる。
【0028】
また、上記一般式(2)においてc=1の化合物2としては、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)メタン、ビス(トリ−n−ブトキシシリル)メタン、ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)メタン、ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)エタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(トリメトキシシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(トリエトキシシリル)メタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−1−(トリ−n−プロポキシシリル)メタン、1−(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)−1−(トリ−iso−プロポキシシリル)メタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−n−ブトキシシリル)メタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−sec−ブトキシシリル)メタン、1−(ジ−tert−ブトキシメチルシリル)−1−(トリ−tert−ブトキシシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(トリメトキシシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(トリエトキシシリル)エタン、1−(ジ−n−プロポキシメチルシリル)−2−(トリ−n−プロポキシシリル)エタン、1−(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)−2−(トリ−iso−プロポキシシリル)エタン、1−(ジ−n−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−n−ブトキシシリル)エタン、1−(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−sec−ブトキシシリル)エタン、1−(ジ−tert−ブトキシメチルシリル)−2−(トリ−tert−ブトキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−n−プロポキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−n−ブトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジ−tert−ブトキシメチルシリル)メタン、1,2−ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−n−プロポキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−iso−プロポキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−n−ブトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−sec−ブトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジ−tert−ブトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−n−プロポキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−iso−プロポキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−n−ブトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−sec−ブトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリ−tert−ブトキシシリル)ベンゼン等を挙げることができる。
【0029】
これらのうち、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(トリメトキシシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(トリエトキシシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(トリメトキシシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(トリエトキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、1,2−ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン等を好ましい例として挙げることができる。
【0030】
上述した化合物2は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0031】
1.1.3.化合物3
シラン化合物は例えば、下記一般式(3)で表される化合物(以下、「化合物3」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。
Si(OR4−d ・・・・・(3)
(式中、Rは水素原子、フッ素原子または1価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表し、dは1〜3の整数を示す。)
上記一般式(3)において、R,Rの1価の有機基としては、前記一般式(1)のRとして例示したものと同様の基を挙げることができる。
【0032】
シラン化合物は化合物3を含まなくてもよいが、シラン化合物が化合物3を含む場合、シラン化合物は、化合物3をシラン化合物の総量の1〜50モル%(原料比)含有することが好ましく、5〜45モル%含有することがより好ましく、10モル%〜40モル%含有することがさらに好ましい。
【0033】
化合物3の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−sec−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ−n−プロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリ−n−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−tert−ブトキシシラン、イソプロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリイソプロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルイソトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリイソプロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、tert−ブチルト−n−プロポキシシラン、tert−ブチルトリイソプロポキシシラン、tert−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、tert−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−フェノキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジイソプロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−フェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−フェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−フェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシランが挙げられる。これらは1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0034】
化合物3として特に好ましい化合物は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等である。これらは1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0035】
1.1.4.触媒
シラン化合物を加水分解縮合する際に、触媒を使用することができる。触媒は、塩基性化合物、酸性化合物、および金属キレート化合物から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0036】
1.1.4−1.金属キレート化合物
触媒として使用可能な金属キレート化合物は、下記一般式(4)で表される。
【0037】
M(OR10f−e ・・・・・(4)
(式中、Rはキレート剤、Mは金属原子、R10はアルキル基またはアリール基を示し、fは金属Mの原子価を示し、eは1〜fの整数を示す。)
ここで、金属Mとしては、IIIB族金属(アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム)およびIVA族金属(チタン、ジルコニウム、ハフニウム)より選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましく、チタン、アルミニウム、ジルコニウムがより好ましい。また、R10で表されるアルキル基またはアリール基としては、上記一般式(1)におけるRで表されるアルキル基またはアリール基を挙げることができる。
【0038】
金属キレート化合物の具体例としては、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノイソプロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン、等のチタンキレート化合物;トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリイソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノイソプロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−tert−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノイソプロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−tert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、等のジルコニウムキレート化合物;トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリイソプロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリイソプロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ジ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノイソプロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ−tert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)アルミニウム、等のアルミニウムキレート化合物;等の1種または2種以上が挙げられる。
【0039】
特に、(CH(CH)HCO)4−tTi(CHCOCHCOCH,(CH(CH)HCO)4−tTi(CHCOCHCOOC,(CO)4−tTi(CHCOCHCOCH,(CO)4−tTi(CHCOCHCOOC,(C(CH)CO)4−tTi(CHCOCHCOCH,(C(CH)CO)4−tTi(CHCOCHCOOC,(CH(CH)HCO)4−tZr(CHCOCHCOCH,(CH(CH)HCO)4−tZr(CHCOCHCOOC,(CO)4−tZr(CHCOCHCOCH,(CO)4−tZr(CHCOCHCOOC,(C(CH)CO)4−tZr(CHCOCHCOCH,(C(CH)CO)4−tZr(CHCOCHCOOC,(CH(CH)HCO)3−tAl(CHCOCHCOCH,(CH(CH)HCO)3−tAl(CHCOCHCOOC,(CO)3−tAl(CHCOCHCOCH,(CO)3−tAl(CHCOCHCOOC,(C(CH)CO)3−tAl(CHCOCHCOCH,(C(CH)CO)3−tAl(CHCOCHCOOC等の1種または2種以上が、使用される金属キレート化合物として好ましい。
【0040】
金属キレート化合物の使用量は、シラン化合物の総量100重量部(完全加水分解縮合物換算)に対して、0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部である。金属キレート化合物の使用割合が0.0001重量部未満であると、塗膜の塗布性が劣る場合があり、10重量部を超えるとポリマー成長を制御できずゲル化を起こす場合がある。
【0041】
金属キレート化合物の存在下でシラン化合物を加水分解縮合させる場合、得られる組成物の含有水分量を2質量%以下に調整するためには、シラン化合物の総量1モル当たり0.5〜20モルの水を用いることが好ましく、1〜10モルの水を加えることが特に好ましい。添加する水の量が0.5モル未満であると加水分解反応が十分に進行せず、塗布性および貯蔵安定性に問題が生じる場合があり、20モルを越えると加水分解および縮合反応中のポリマーの析出やゲル化が生じる場合がある。また、濃縮などによる水分の除去を行わない場合、得られる組成物の含有水分量を2質量%以下に調整するためには、加水分解性置換基の総量1モルに対し0.5〜1.5、好ましくは0.5〜1.0モルの水を用いる。なお、水は断続的あるいは連続的に添加されることが好ましい。
【0042】
1.1.4−2.酸性化合物
触媒として使用可能な酸性化合物としては、有機酸または無機酸が例示できる。有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸の加水分解物、無水マレイン酸の加水分解物、無水フタル酸の加水分解物等を挙げることができる。無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げることができる。
【0043】
なかでも、加水分解縮合反応中のポリマーの析出やゲル化のおそれが少なく、組成物のpHを3.0〜5.0の範囲に調整しやすい点で有機酸が好ましく、このうち、カルボキシル基を有する化合物がより好ましく、なかでも、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、ギ酸、マロン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、無水マレイン酸の加水分解物などの有機酸が特に好ましい。これらは1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0044】
酸性化合物の使用量は、シラン化合物の総量100重量部(完全加水分解縮合物換算)に対して、0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部である。酸性化合物の使用量がシラン化合物の総量100重量部に対して0.0001重量部未満であると、塗膜の塗布性が劣る場合があり、一方、10重量部を超えると、急激に加水分解縮合反応が進行しゲル化を起こす場合がある。
【0045】
酸性化合物の存在下でシラン化合物を加水分解縮合させる場合、得られる組成物の含有水分量を2質量%以下に調整するためには、シラン化合物の総量1モル当たり0.5〜20モルの水を用いることが好ましく、1〜10モルの水を加えることが特に好ましい。添加する水の量が0.5モル未満であると加水分解反応が十分に進行せず、塗布性および貯蔵安定性に問題が生じる場合があり、20モルを越えると加水分解および縮合反応中のポリマーの析出やゲル化が生じる場合がある。また、濃縮などによる水分の除去を行わない場合、得られる組成物の含有水分量を2質量%以下に調整するためには、加水分解性置換基の総量1モルに対し0.5〜1.5、好ましくは0.5〜1.0モルの水を用いる。なお、水は断続的あるいは連続的に添加されることが好ましい。
【0046】
1.1.4−3.塩基性化合物
触媒として使用可能な塩基性化合物としては、例えば、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−エチルメタノールアミン、N−プロピルメタノールアミン、N−ブチルメタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−エチルプロパノールアミン、N−プロピルプロパノールアミン、N−ブチルプロパノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N−プロピルブタノールアミン、N−ブチルブタノールアミン、N,N−ジメチルメタノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジプロピルメタノールアミン、N,N−ジブチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジエチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルプロパノールアミン、N,N−ジブチルプロパノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N,N−ジプロピルブタノールアミン、N,N−ジブチルブタノールアミン、N−メチルジメタノールアミン、N−エチルジメタノールアミン、N−プロピルジメタノールアミン、N−ブチルジメタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−エチルジプロパノールアミン、N−プロピルジプロパノールアミン、N−ブチルジプロパノールアミン、N−メチルジブタノールアミン、N−エチルジブタノールアミン、N−プロピルジブタノールアミン、N−ブチルジブタノールアミン、N−(アミノメチル)メタノールアミン、N−(アミノメチル)エタノールアミン、N−(アミノメチル)プロパノールアミン、N−(アミノメチル)ブタノールアミン、N−(アミノエチル)メタノールアミン、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N−(アミノエチル)プロパノールアミン、N−(アミノエチル)ブタノールアミン、N−(アミノプロピル)メタノールアミン、N−(アミノプロピル)エタノールアミン、N−(アミノプロピル)プロパノールアミン、N−(アミノプロピル)ブタノールアミン、N−(アミノブチル)メタノールアミン、N−(アミノブチル)エタノールアミン、N−(アミノブチル)プロパノールアミン、N−(アミノブチル)ブタノールアミン、メトキシメチルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシメチルアミン、エトキシエチルアミン、エトキシプロピルアミン、エトキシブチルアミン、プロポキシメチルアミン、プロポキシエチルアミン、プロポキシプロピルアミン、プロポキシブチルアミン、ブトキシメチルアミン、ブトキシエチルアミン、ブトキシプロピルアミン、ブトキシブチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラプロピルエチレンジアミン、テトラブチルエチレンジアミン、メチルアミノメチルアミン、メチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルアミノブチルアミン、エチルアミノメチルアミン、エチルアミノエチルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノブチルアミン、プロピルアミノメチルアミン、プロピルアミノエチルアミン、プロピルアミノプロピルアミン、プロピルアミノブチルアミン、ブチルアミノメチルアミン、ブチルアミノエチルアミン、ブチルアミノプロピルアミン、ブチルアミノブチルアミン、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モルホリン、メチルモルホリン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。
【0047】
塩基性化合物としては、特に、下記一般式(5)で表される含窒素化合物(以下、「化合物4」ともいう。)であることが好ましい。
【0048】
(XN)Y ・・・・・(5)
上記一般式(5)において、X,X,X,Xは同一または異なり、それぞれ水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基など)、ヒドロキシアルキル基(好ましくはヒドロキシエチル基など)、アリール基(好ましくはフェニル基など)、アリールアルキル基(好ましくはフェニルメチル基など)を示し、Yはハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、1〜4価のアニオン性基(好ましくはヒドロキシ基など)を示し、gは1〜4の整数を示す。
【0049】
化合物4の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウム、水酸化テトラ−iso−プロピルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化テトラ−iso−ブチルアンモニウム、水酸化テトラ−tert−ブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化テトラヘプチルアンモニウム、水酸化テトラオクチルアンモニウム、水酸化テトラノニルアンモニウム、水酸化テトラデシルアンモニウム、水酸化テトラウンデシルアンモニウム、水酸化テトラドデシルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラ−n−プロピルアンモニウム、塩化テトラ−n−プロピルアンモニウム、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化−n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化−n−オクタデシルトリメチルアンモニウム、臭化−n−オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化トリデシルメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート、臭化トリブチルメチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化トリラウリルメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、臭化ベンジルトリブチルアンモニウム、臭化フェニルトリメチルアンモニウム、コリン等を好ましい例として挙げることができる。これらのうち特に好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラ−n−プロピルアンモニウム、塩化テトラ−n−プロピルアンモニウムである。化合物4は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0050】
塩基性化合物の使用量は、シラン化合物中の加水分解性基の総量1モルに対して、通常、0.00001〜10モル、好ましくは0.00005〜5モルである。
【0051】
塩基性化合物を触媒として使用する場合、加水分解縮合反応の後、酸性化合物を使用して、組成物のpHを3.0〜5.0の範囲に調整することが好ましい。ここで使用する酸性化合物としては、触媒として例示した酸性化合物を使用することができ、有機酸を使用するのがより好ましい。
【0052】
1.1.5.有機溶剤
ポリマー(加水分解縮合物)を製造する際に使用可能な有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどの多価アルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコール部分エーテル系溶剤;エチルエーテル、i−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、などのケトン系溶剤が挙げられる。
【0053】
シラン化合物の加水分解縮合における反応温度は0〜100℃、好ましくは20〜80℃、反応時間は30〜1000分間、好ましくは30〜180分間である。
【0054】
1.2.有機溶媒
本実施形態に係る膜形成用組成物で使用可能な有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒および含ハロゲン溶媒の群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0055】
アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコールなどのモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコールなどの多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール部分エーテル系溶媒;などを挙げることができる。これらのアルコール系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0056】
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、ジアセトンアルコール、アセトフェノン、フェンチョンなどのケトン系溶媒を挙げることができる。これらのケトン系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0057】
アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドンなどの含窒素系溶媒を挙げることができる。これらのアミド系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0058】
エーテル系溶媒としては、エチルエーテル、i−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、2−エチルヘキシルエーテル、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソールなどのエーテル系溶媒を挙げることができる。これらのエーテル系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0059】
エステル系溶媒としては、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチルなどのエステル系溶媒を挙げることができる。これらのエステル系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0060】
脂肪族炭化水素系溶媒としては、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの脂肪族炭化水素系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0061】
芳香族炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンセン、i−プロピルベンセン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン、トリメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの芳香族炭化水素系溶媒は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。含ハロゲン溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、フロン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、などの含ハロゲン溶媒を挙げることができる。
【0062】
本実施形態に係る絶縁膜形成用組成物においては、沸点が150℃未満の有機溶媒を使用することが望ましく、溶媒種としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒が特に望ましく、さらにそれらを1種あるいは2種以上を同時に使用することが望ましい。
【0063】
これらの有機溶媒は、加水分解縮合物の合成に用いたものと同じものであってもよいし、加水分解縮合物の合成が終了した後に、合成に使用した有機溶剤を所望の有機溶媒に置換することもできる。
【0064】
本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物の全固形分濃度は、好ましくは0.1〜20質量%であり、使用目的に応じて適宜調整される。本発明の一実施形態に係る膜形成用組成物の全固形分濃度が0.1〜20質量%であることにより、塗膜の膜厚が適当な範囲となり、より優れた貯蔵安定性を有するものとなる。なお、この全固形分濃度の調整は、必要であれば、濃縮および有機溶媒による希釈によって行われる。
【0065】
1.3.その他の添加物
本実施形態に係る膜形成用組成物には、さらに有機高分子や界面活性剤などの成分を添加してもよい。
【0066】
1.3.1.有機高分子
本実施形態に係る膜形成用組成物は、膜中空孔形成剤として有機高分子をさらに含むことができる。
【0067】
有機高分子としては、例えば、糖鎖構造を有する重合体、ビニルアミド系重合体、(メタ)アクリル系重合体、芳香族ビニル化合物系重合体、デンドリマー、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリアリーレン、ポリアミド、ポリキノキサリン、ポリオキサジアゾール、フッ素系重合体、ポリアルキレンオキサイド構造を有する重合体などを挙げることができる。
【0068】
ポリアルキレンオキサイド構造を有する重合体としては、ポリメチレンオキサイド構造、ポリエチレンオキサイド構造、ポリプロピレンオキサイド構造、ポリテトラメチレンオキサイド構造、ポリブチレンオキシド構造などが挙げられる。
【0069】
具体的には、ポリオキシメチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ポリオキシエテチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなどのエーテル型化合物、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸アルカノールアミド硫酸塩などのエーテルエステル型化合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエーテルエステル型化合物などを挙げることができる。
【0070】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーとしては、下記のようなブロック構造を有する化合物が挙げられる。
【0071】
−(X′)−(Y′)
−(X′)−(Y′)−(X′)
(式中、X′は−CHCHO−で表される基を、Y′は−CHCH(CH)O−で表される基を示し、lは1〜90、mは10〜99、nは0〜90の数を示す。)
これらの中で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、などのエーテル型化合物をより好ましい例として挙げることができる。前述の有機ポリマーは、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0072】
1.3.2.界面活性剤
界面活性剤としては、たとえば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、さらには、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、ポリ(メタ)アクリレート系界面活性剤などを挙げることができ、好ましくはフッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤を挙げることができる。
【0073】
界面活性剤の使用量は、得られる加水分解縮合物100重量部に対して、通常、0.00001〜1重量部である。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用しても良い。
【0074】
2.シリカ系膜の形成方法
本発明の一実施形態に係るシリカ系膜(絶縁膜)の形成方法は、上記膜形成用組成物を基板に塗布し、塗膜を形成する工程と、塗膜に硬化処理を施す工程とを含む。
【0075】
膜形成用組成物が塗布される基板としては、Si、SiO、SiN、SiC、SiCN等のSi含有層が挙げられる。膜形成用組成物を基板に塗布する方法としては、スピンコート、浸漬法、ロールコート法、スプレー法などの塗装手段が用いられる。基板に膜形成用組成物を塗布した後、溶剤を除去し塗膜を形成する。この際の膜厚は、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜2.5μm、2回塗りでは厚さ0.1〜5.0μmの塗膜を形成することができる。その後、得られた塗膜に対して、硬化処理を施すことでシリカ系膜を形成することができる。
【0076】
硬化処理としては、加熱、電子線や紫外線などの高エネルギー線照射、プラズマ処理、およびこれらの組み合わせを挙げることができ、加熱処理または高エネルギー線照射が好ましい。
【0077】
加熱により硬化を行う場合は、この塗膜を不活性雰囲気下または減圧下で80〜450℃(好ましくは300℃〜450℃)に加熱する。この際の加熱方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネスなどを使用することができ、加熱雰囲気としては、不活性雰囲気下または減圧下で行うことができる。
【0078】
また、上記塗膜の硬化速度を制御するため、必要に応じて、段階的に加熱したり、あるいは窒素、空気、酸素、減圧などの雰囲気を選択したりすることができる。このような工程により、シリカ系膜の製造を行うことができる。
【0079】
3.シリカ系膜
本発明の一実施形態に係るシリカ系膜は、低誘電率であり、かつ表面平坦性に優れるため、LSI、システムLSI、DRAM、SDRAM、RDRAM、D−RDRAMなどの半導体素子用層間絶縁膜として特に優れており、かつ、エッチングストッパー膜、半導体素子の表面コート膜などの保護膜、多層レジストを用いた半導体作製工程の中間層、多層配線基板の層間絶縁膜、液晶表示素子用の保護膜や絶縁膜などに好適に用いることができる。また、本実施形態に係るシリカ系膜は、銅ダマシンプロセスを含む半導体装置に有用である。
【0080】
本実施形態に係るシリカ系膜は、その比誘電率が、好ましくは1.5〜4.0、より好ましくは1.8〜3.5であり、その弾性率が、好ましくは1〜100GPa、より好ましくは2〜50GPaであり、その膜密度が、好ましくは0.7〜1.5g/cm、より好ましくは0.8〜1.4g/cmである。これらのことから、本実施形態に係る有機シリカ系膜は、機械的特性、薬液耐性、および低比誘電率等の絶縁膜特性に極めて優れているといえる。
【0081】
4.実施例
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特記しない限り、それぞれ重量部および質量%であることを示している。
【0082】
4.1.評価方法
各種の評価は、次のようにして行った。
【0083】
4.1.1.シラノール基の定量方法
BRUKER AVANCE 500型(ブルカー(Bruker)社製)を用いて、ポリマー(加水分解縮合物)の29Si NMRスペクトル(100MHz)の測定を行った(溶媒:重ベンゼン)。この測定において、各ピークは、表1に示すケイ素原子(T1〜T3およびQ1〜Q4)に帰属される。波形分離解析を行った上で各ケイ素原子の面積比を求めることにより、全ケイ素原子数に対するシラノールの数(以下、「比率X」ともいう。)を定量することができる。すなわち、ケイ素原子T1〜T3およびQ1〜Q4の面積比をそれぞれST1〜ST3およびSQ1〜SQ4とすると、全ケイ素原子数はST1〜ST3およびSQ1〜SQ4の総和(ST1+ST2+ST3+SQ1+SQ2+SQ3+SQ4)であり、比率Xは式{X=(2×ST1+1×ST2+0×ST3+3×SQ1+2×SQ2+3×SQ3+0×SQ4)/(ST1+ST2+ST3+SQ1+SQ2+SQ3+SQ4)}で表される。
【0084】
【表1】

【0085】
4.1.2.貯蔵安定性
固形分濃度10%の膜形成用組成物を調製した後、直ちに該組成物を25℃保管庫に入れ1ヶ月保管した。保管後の当該組成物の動粘度を、ウベローデ粘度管532−13(ショット社製)を用いて測定した。保管前後における動粘度の変化に応じて、貯蔵安定性を以下のように評価した。
【0086】
A:保管前後での動粘度増加率が5%未満
B:保管前後での動粘度増加率が5%以上
4.1.3.膜収縮率
0.1Ω・cm以下の抵抗率を有する8インチのN型シリコンウエハ上に、スピンコート法を用いて膜形成用組成物を塗布し、ホットプレート上にて90℃で3分間、次いで窒素雰囲気下200℃で3分間乾燥し、さらに50mTorrの減圧下(真空雰囲気)420℃の縦型ファーネスで1時間焼成してシリカ系膜を得た。この際、膜焼成の前後における膜厚を測定し、以下の式により膜収縮率を得た。
【0087】
膜収縮率(%)=[1−(焼成後の膜厚)/(焼成前の膜厚)]×100(%)
4.1.4.比誘電率
膜収縮率の測定で得られた、シリカ系膜を成膜したシリコンウエハ上に、蒸着法によりアルミニウム電極パターンを形成し、比誘電率測定用サンプルを作成した。該サンプルについて、周波数100kHzの周波数で、アジデント社製、HP16451B電極およびHP4284AプレシジョンLCRメータを用いてCV法により、200℃における当該膜の比誘電率を測定した。
【0088】
4.1.5.弾性率
MTS社製超微小硬度計(Nanoindentator XP)にバーコビッチ型圧子を取り付け、連続剛性測定法により、下記の方法で形成されたシリカ系膜の弾性率を測定した。
【0089】
4.1.6.重量平均分子量(Mw)
加水分解縮合物の重量平均分子量(Mw)は、下記条件によるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)法により測定した。
【0090】
試料:濃度10mmol/LのLiBr−HPOの2−メトキシエタノール溶液を溶媒として使用し、加水分解縮合物0.1gを100ccの10mmol/L LiBr−HPOの2−メトキシエタノール溶液に溶解して調製した。
【0091】
標準試料:WAKO社製、ポリエチレンオキサイドを使用した。
【0092】
装置:東ソー(株)社製、高速GPC装置(モデル HLC−8120GPC)を使用した。
【0093】
カラム:東ソー(株)社製、TSK−GEL SUPER AWM−H(長さ15cm)を直列に3本設置して使用した。
【0094】
測定温度:40℃
流速:0.6ml/min.
検出器:東ソー(株)社製、高速GPC装置(モデル HLC−8120GPC)内臓のRIにより検出した。
【0095】
4.2.膜形成用組成物の製造および膜の形成
4.2.1.実施例1
窒素置換した石英製セパラブルフラスコ内に、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン536.3gおよびプロピレングリコールモノエチルエーテル217.7gを加え、これを水浴で60℃に加熱した後に、20%シュウ酸水溶液3.4gおよび超純水242.6gを加えて60℃で1時間撹拌させた。この液をプロピレングリコールモノエチルエーテルにて固形分10%まで希釈し、ポリマー(加水分解縮合物)を含む組成物を得た。
【0096】
得られた組成物を8インチシリコンウエハ上にスピンコート法により塗布し、大気中80℃で5分間、次いで窒素下200℃で5分間加熱したのち、さらに真空下425℃で1時間加熱し、無色透明の膜を形成した。組成物および膜の評価結果を表2に示す。
【0097】
4.2.2.比較例1
窒素置換した石英製セパラブルフラスコ内に、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン268.2gおよびプロピレングリコールモノエチルエーテル608.8gを加え、これを水浴で40℃に加熱した後に、20%シュウ酸水溶液1.7gおよび超純水121.3gを加えて40℃で1時間撹拌させ、ポリマー(加水分解縮合物)を含む組成物を得た。
【0098】
得られた組成物を8インチシリコンウエハ上にスピンコート法により塗布し、大気中80℃で5分間、次いで窒素下200℃で5分間加熱したのち、さらに真空下425℃で1時間加熱し、無色透明の膜を形成した。組成物および膜の評価結果を表2に示す。
【0099】
4.2.3.比較例2
窒素置換した石英製セパラブルフラスコ内に、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン536.3gおよびプロピレングリコールモノエチルエーテル217.7gを加え、これを水浴で60℃に加熱した後に、20%シュウ酸水溶液3.4gおよび超純水242.6gを加えて60℃で4時間撹拌させた。この液をプロピレングリコールモノエチルエーテルにて固形分10%まで希釈し、ポリマー(加水分解縮合物)を含む組成物を得た。
【0100】
得られた組成物を8インチシリコンウエハ上にスピンコート法により塗布し、大気中80℃で5分間、次いで窒素下200℃で5分間加熱したのち、さらに真空下425℃で1時間加熱し、無色透明の膜を形成した。組成物および膜の評価結果を表2に示す。
【0101】
4.2.4.実施例2
実施例1で得られた組成物100gに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン ブロックコポリマー(商品名「PE−61」、三洋化成工業製)6gを加えて、実施例2の組成物を得た。得られた組成物を8インチシリコンウエハ上にスピンコート法により塗布し、大気中80℃で5分間、次いで窒素下200℃で5分間加熱したのち、さらに真空下425℃で1時間加熱し、無色透明の膜を形成した。組成物および膜の評価結果を表2に示す。
【0102】
4.2.5.比較例3
比較例1で得られた組成物100gに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン ブロックコポリマー(商品名「PE−61」、三洋化成工業製)6gを加えて、比較例3の組成物を得た。得られた組成物を8インチシリコンウエハ上にスピンコート法により塗布し、大気中80℃で5分間、次いで窒素下200℃で5分間加熱したのち、さらに真空下425℃で1時間加熱し、無色透明の膜を形成した。組成物および膜の評価結果を表2に示す。
【0103】
4.2.6.比較例4
比較例2で得られた組成物100gに、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン ブロックコポリマー(商品名「PE−61」、三洋化成工業製)6gを加えて、比較例4の組成物を得た。得られた組成物を8インチシリコンウエハ上にスピンコート法により塗布し、大気中80℃で5分間、次いで窒素下200℃で5分間加熱したのち、さらに真空下425℃で1時間加熱し、無色透明の膜を形成した。組成物および膜の評価結果を表2に示す。
【0104】
4.2.7.実施例3
窒素置換した石英製セパラブルフラスコ内に、メチルトリメトキシシラン60.9g、ビス(トリエトキシシリル)メタン201.7gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル604.8gを加え、内温を30℃に制御した上で、20%硝酸水溶液1.9gおよび超純水130.8gを加えて30℃で1時間撹拌させ、ポリマー(加水分解縮合物)を含む組成物を得た。
【0105】
得られた組成物を8インチシリコンウエハ上にスピンコート法により塗布し、大気中80℃で5分間、次いで窒素下200℃で5分間加熱したのち、さらに真空下425℃で1時間加熱し、無色透明の膜を形成した。組成物および膜の評価結果を表2に示す。
【0106】
4.2.8.比較例5
窒素置換した石英製セパラブルフラスコ内に、メチルトリメトキシシラン60.9g、ビス(トリエトキシシリル)メタン201.7gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル604.8gを加え、内温を30℃に制御した上で、20%硝酸水溶液1.9gおよび超純水130.8gを加えて30℃で1時間撹拌させた。この液を一旦ロータリーエバポレーターで固形分20%まで濃縮した後、この液をプロピレングリコールモノメチルエーテルにて固形分10%まで希釈し、ポリマー(加水分解縮合物)を含む組成物を得た。
【0107】
得られた組成物を8インチシリコンウエハ上にスピンコート法により塗布し、大気中80℃で5分間、次いで窒素下200℃で5分間加熱したのち、さらに真空下425℃で1時間加熱し、無色透明の膜を形成した。組成物および膜の評価結果を表2に示す。
【0108】
4.2.9.実施例4
窒素置換した石英製セパラブルフラスコ内に、メチルトリメトキシシラン142.1g、ビス(トリエトキシシリル)メタン86.4gおよびプロピレングリコールモノメチルエーテル645.4gを加え、内温を30℃に制御した上で、20%硝酸水溶液1.8gおよび超純水124.3gを加えて30℃で1時間撹拌させ、ポリマー(加水分解縮合物)を含む組成物を得た。
【0109】
得られた組成物を8インチシリコンウエハ上にスピンコート法により塗布し、大気中80℃で5分間、次いで窒素下200℃で5分間加熱したのち、さらに真空下425℃で1時間加熱し、無色透明の膜を形成した。組成物および膜の評価結果を表2に示す。
【0110】
4.2.10.実施例5
窒素置換した石英製セパラブルフラスコ内に、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン1.59g、超純水104.4g、プロピレングリコールモノエチルエーテル677.0gの混合溶液中に、1,2−ビス(メチルジエトキシシリル)エタン140.9gおよびテトラメトキシシラン76.0gを加えて、60℃で3時間反応させて、ポリマー(加水分解縮合物)を含む組成物を得た。
【0111】
4.2.11.実施例6
窒素置換した石英製セパラブルフラスコ内に、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン1.12g、超純水147.2g、プロピレングリコールモノエチルエーテル613.9gの混合溶液中に、1,2−ビス(メチルジエトキシシリル)エタン60.4gおよびテトラメトキシシラン177.7gを加えて、60℃で3時間反応させて、ポリマー(加水分解縮合物)を含む組成物を得た。
【0112】
4.2.12.比較例6
窒素置換した石英製セパラブルフラスコ内に、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン1.59g、超純水104.4g、プロピレングリコールモノエチルエーテル677.0gの混合溶液中に、1,2−ビス(メチルジエトキシシリル)エタン140.9gおよびテトラメトキシシラン76.0gを加えて、60℃で3時間反応させた。これを一旦ロータリーエバポレーターで固形分濃度20%まで濃縮し、再度プロピレングリコールモノエチルエーテルで固形分濃度10%に希釈して、ポリマー(加水分解縮合物)を含む組成物を得た。
【0113】
4.2.13.比較例7
窒素置換した石英製セパラブルフラスコ内に、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン1.12g、超純水147.2g、プロピレングリコールモノエチルエーテル613.9gの混合溶液中に、1,2−ビス(メチルジエトキシシリル)エタン60.4gおよびテトラメトキシシラン177.7gを加えて、60℃で3時間反応させた。これを一旦ロータリーエバポレーターで固形分濃度20%まで濃縮し、再度プロピレングリコールモノエチルエーテルで固形分濃度10%に希釈して、ポリマー(加水分解縮合物)を含む組成物を得た。
【0114】
4.2.14.比較例8
窒素置換した石英製セパラブルフラスコ内に、テトラメトキシシラン38.0g、1,2−ビス(メチルジエトキシシリル)エタン70.5g、およびエタノール781.3gを加え、この混合溶液中にテトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイドの40%水溶液を99.4gおよび超純水を10.8g加え、60℃で1時間反応させた。次にマレイン酸の20%水溶液170.2gを加え中和し、反応を終了させた。ここにプロピレングリコールモノエチルエーテルを500g加え、ロータリーエバポレーターで固形分濃度20%まで濃縮した。さらにこれをプロピレングリコールモノエチルエーテルで固形分濃度10%に希釈して、ポリマー(加水分解縮合物)を含む組成物を得た。
【0115】
【表2】

【0116】
4.3.結果の考察
(1)実施例1では、ケイ素原子の数に対するシラノール基の数が70〜130%の範囲内であり、組成物の貯蔵安定性が良好であり、膜収縮率が小さく、かつ、絶縁膜の弾性率と比誘電率とのバランスが優れていることがわかる。これに対して、比較例1では、ケイ素原子の数に対するシラノール基の数が130%を超えており、膜の低貯蔵安定性が劣る。また、比較例2では、ケイ素原子の数に対するシラノール基の数が70%未満であり、膜収縮率が高いうえに、膜の弾性率と比誘電率とのバランスが実施例1に比べて劣る。
【0117】
(2)また、実施例2および比較例3・4は、実施例1および比較例1・2と同様の組み合わせであり、膜の比誘電率を下げる目的で膜中空孔形成剤(有機高分子)を組成物中に含む例である。実施例2および比較例3・4では、貯蔵安定性、膜収縮率、および膜の弾性率と比誘電率のバランスについては、実施例1および比較例1・2と同様の傾向を有する。さらに興味深いことに、いずれも同じ有機高分子を同一量加えているにも関わらず、実施例2および比較例3では、膜の比誘電率が比較例4と比べて低かった。比較例3の膜の比誘電率が低かったのは、比較例3のように、ケイ素原子の数に対するシラノール基の数が130%を超えるポリマーの場合、ゲル化に要する温度が、ケイ素原子の数に対するシラノール基の数が70〜130%であるポリマーに比べて低いことから、焼成時に有機高分子が揮発あるいは分解する以前に骨格が固まり、有機高分子が消失した空間がそのまま空孔として残るため、比誘電率が下がるためと考えられる。
【0118】
(3)実施例3および比較例5は同様の原料組成および反応条件である。比較例5では、反応後に濃縮操作を行ったため、シラノール基の縮合が進行し、結果として組成物中のポリマーに含まれるシラノール基の数が70%未満であった。これにより、比較例5においては、膜収縮率および膜の弾性率と比誘電率とのバランスが実施例3の膜より劣ると考えられる。また、実施例5は、実施例3におけるメチルトリメトキシシランとビス(トリエトキシシリル)メタンとの組成比を入れ替えた事例である。実施例3の膜は、膜の弾性率と比誘電率とのバランスが実施例5の膜と比べて良好であることがわかる。このことは、原料として化合物2を用いることにより、膜の弾性率と比誘電率とのバランスが良好になる傾向があることを示している。
【0119】
(4)実施例5と比較例6、および実施例6と比較例7もそれぞれ同じ原料組成で同一の反応条件であるが、比較例6および比較例7では、反応後濃縮操作を実施したことにより、ケイ素原子の数に対するシラノール基の数が70%未満となり、これまでの例と同様に、膜収縮率および膜の弾性率と比誘電率とのバランスが、実施例5および実施例6にそれぞれ劣る。なお、実施例5では、ケイ素−炭素鎖−ケイ素骨格を有する原料(化合物2)を主原料としており、絶縁膜の弾性率と比誘電率とのバランスが実施例6と比較してさらに良好となっている。この結果から、化合物2の使用により、ポリマー合成の際に架橋構造をより効率良く構築できることがわかる。
【0120】
(5)さらに、実施例5および比較例8では、使用する原料の組成が同一であり、かつ、ポリマーの分子量も同等であるが、シラノール基の量が異なることがわかる。また、上述したように、シラノール基が多い実施例5の膜は比較例8の膜よりも低い膜収縮率を有し、かつ、絶縁膜の弾性率と比誘電率とのバランスにおいても、実施例5の膜が比較例8の膜より優れていることがわかる。
【0121】
以上により、本発明により得られる絶縁膜形成用組成物は貯蔵安定性に優れている。また、本発明により得られるシリカ系膜は、プリベーク時から焼成時にかけての膜収縮率が低く、さらに弾性率と比誘電率とのバランスが優れていることから、例えば半導体素子などの層間絶縁膜として好適である。
【0122】
本発明に係る実施の形態の説明は以上である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物および下記一般式(2)で表される化合物の群から選ばれた少なくとも1種のシラン化合物を加水分解縮合して得られたポリマーと、有機溶媒と、を含み、
前記ポリマーはシラノール基を含み、
前記シラノール基に含まれる水酸基の数が、前記ポリマー中のケイ素原子の数に対して70〜130%である、絶縁膜形成用組成物。
Si(OR ・・・・・(1)
(式中、Rは1価の有機基を示す。)
(RO)3−aSi−(R−Si(OR3−b ・・・(2)
(式中、R〜Rは同一または異なり、それぞれ1価の有機基を示し、aおよびbは同一または異なり、0〜1の数を示し、Rは酸素原子、フェニレン基または−(CH−で表される基(ここで、mは1〜6の整数である。)を表し、cは0または1を示す。)
【請求項2】
請求項1において、
前記加水分解縮合において、上記一般式(2)で表される化合物の使用量が、前記シラン化合物の総量の50〜100モル%である、絶縁膜形成用組成物。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記シラン化合物は、下記一般式(3)で表される化合物をさらに含む、絶縁膜形成用組成物。
Si(OR4−d ・・・・・(3)
(式中、Rは水素原子、フッ素原子または1価の有機基を表し、Rは1価の有機基を表し、dは1〜3の整数を示す。)
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
膜中空孔形成剤として有機高分子をさらに含む、絶縁膜形成用組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の絶縁膜形成用組成物を基板に塗布し、塗膜を形成する工程と、前記塗膜に硬化処理を施す工程と、を含む、シリカ系膜の形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載のシリカ系膜の形成方法により得られる、シリカ系膜。

【公開番号】特開2010−43190(P2010−43190A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208414(P2008−208414)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】