説明

緊急車両検出装置、緊急車両検出方法および緊急車両検出プログラム

【課題】報知対象となる人物に対して確実に異常の報知を行うことができなかった。
【解決手段】複数の車両の位置を示す車両位置情報を取得し、前記複数の車両のそれぞれに搭載された音声取得部にて取得された緊急車両の出力音によって特定される、前記緊急車両と前記複数の車両のそれぞれとの距離を示す距離情報を取得し、前記車両位置情報と前記距離情報とに基づいて、前記複数の車両の位置および前記緊急車両と前記複数の車両のそれぞれとの距離に整合する前記緊急車両の位置を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急車両の位置を検出する緊急車両検出装置、緊急車両検出方法および緊急車両検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両に搭載された複数のマイクにて取得する音声に基づいて自車両から緊急車両までの距離および方向を検出する技術(特許文献1参照)が知られている。
【特許文献1】特開平11−48886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術においては、緊急車両の位置を正確に検出することができなかった。
すなわち、従来の技術においては、複数の方向に向けて配置されたマイクによって緊急車両のサイレン音を検出し、各マイクのそれぞれが取り込む音の大きさの違いに基づいて自車両からみた緊急車両の方向を算出している。しかし、このような構成において各マイクにて検出するサイレン音の大きさの差は微小であるため、当該サイレン音の大きさに基づいて緊急車両の方向を正確に特定することは困難である。従って、一台の自車両に搭載されたマイクの集合体を用いて正確に緊急車両の位置を特定することはできない。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、緊急車両の位置を正確に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するため、本発明においては、複数の車両において取得された緊急車両の出力音に基づいて特定される緊急車両と各車両との距離を取得し、各車両の位置と各車両から緊急車両までの距離とに整合する位置を緊急車両の位置として取得する。すなわち、車両の位置と当該車両から緊急車両までの距離との組み合わせを取得すれば、車両の位置と距離とに整合する緊急車両の位置(緊急車両の位置たり得る位置の候補)を限定することができる。
【0005】
そこで、複数の車両について、各車両の位置と各車両から緊急車両までの距離とを取得すると、各位置と各距離との組み合わせに整合し得る緊急車両の位置がさらに限定され、当該限定された位置を緊急車両の位置として取得すれば緊急車両の位置を正確に特定することができる。なお、本発明によれば、マイクによって正確に特定することが困難な緊急車両の方向に関する情報を利用することなく緊急車両の位置を特定可能であり、正確に緊急車両の位置を特定することができる。また、各車両と緊急車両との距離には誤差が含まれ得るものの、車両の数が多くなれば緊急車両の位置を正確に特定することが可能になる。
【0006】
ここで、車両位置情報取得手段は、複数の車両のそれぞれについて車両の位置を示す車両位置情報を取得することができればよく、種々の構成を採用可能である。複数の車両には、本発明にかかる緊急車両検出装置が搭載された車両(自車両)が含まれていても良いし、自車両以外の他車両のみであっても良い。いずれにしても、複数の車両の位置を示す車両位置情報を緊急車両検出装置にて取得すればよい。また、車両位置情報を収集する構成としては無線通信が好ましい。なお、各種の無線通信を採用可能であるが、車車間通信を行う通信部によれば、自車両において極めて容易に他車両の位置を示す車両位置情報を取得することができる。
【0007】
むろん、自車両の車両位置情報を取得する際には無線通信ではなく各種の有線通信を利用可能である。また、車両の位置を取得する構成としては、種々の手法を採用可能であり、例えば、車両の位置をセンサやカメラによって特定する構成や、GPSからの信号や地図上での自車両の軌跡,車車間通信,路車間通信等によって位置を取得する構成等を採用可能である。
【0008】
距離情報取得手段においては、緊急車両の音によって特定された距離情報を取得することができればよい。すなわち、緊急車両はサイレンやスピーカー等から警報音を出力しながら走行し、当該警報音の音圧は車両と緊急車両との距離が増大するとともに減衰する。このため、各車両に搭載された音声取得部にて緊急車両の出力音を取得すれば、その音圧から緊急車両と各車両との距離を特定することができる。
【0009】
そこで、距離情報取得手段においては、緊急車両の出力音によって特定される、緊急車両と車両の距離を示す距離情報を複数の車両のそれぞれについて取得する。距離情報取得手段においても、複数の車両に関する情報を収集するため、距離情報を収集する構成としては無線通信が好ましい。ここでも、各種の無線通信を採用可能であるが、車車間通信を行う通信部によれば、自車両において極めて容易に距離情報を取得することができる。
【0010】
なお、通信部を介して距離情報を取得する際には距離情報を通信によって直接的に取得しても良いし、間接的に取得しても良い。後者としては、例えば、音圧を示す情報を取得し、距離情報取得手段において当該音圧に基づいて距離を取得する構成を採用可能である。また、音圧に基づいて距離を取得するためには、予め音圧と距離とを対応付けたテーブルを参照する構成としても良いし、音圧と距離とによって音の物理的特性を記述した式に基づいて算出する構成としても良く、種々の構成を採用可能である。
【0011】
緊急車両位置取得手段においては、複数の車両の位置と、各車両から緊急車両までの距離とに整合する位置を緊急車両の位置として取得することができればよい。すなわち、各車両から緊急車両までの距離が特定されていれば、各車両の位置から各距離に矛盾しない位置として想定し得る緊急車両の位置が限定されるので、当該位置を緊急車両の位置とすればよい。
【0012】
例えば、各車両の位置に基づいて地図上に各車両の位置をプロットし、各車両から緊急車両までの距離を半径とする円を想定すれば、緊急車両の位置の候補を当該円の円周上に限定することができる。そこで、複数の車両について当該円を想定すれば、緊急車両の位置の候補を各円の交点に限定することができ、当該交点に基づいて緊急車両の位置を取得することができる。
【0013】
なお、当該交点に基づいて緊急車両の位置を一カ所に限定するためには上述の円が3個以上必要になるため、位置および距離を取得する対象となる車両は3台以上であることが好ましい。この構成によれば、極めて容易に正確な緊急車両の位置を特定することが可能である。むろん、車両の数が2台であるとしても、各車両から見た緊急車両の方向を、例えば、緊急車両の出力音等に基づいて特定すれば、上述の円を2つ想定するとともにその交点であって、緊急車両の方向に近い位置に存在する交点を緊急車両の位置として特定することが可能である。
【0014】
円の交点に基づいて緊急車両の位置を特定する構成において、緊急車両と各車両との距離が正確であれば各円の交点が一致するが、当該距離に誤差が含まれる場合には各円の交点が一致しなくなる。従って、この場合には、交点が密集している地点を緊急車両の位置として特定すればよいが、このとき、密集した交点の中央や密集した交点に隣接する地図上の道路を緊急車両の位置と見なすことによって当該位置を特定する際の精度を向上することができる。また、異常値(例えば、他の交点と所定距離以上離れた交点を形成する円)を除外する構成とすれば、さらに、位置の特定精度を向上することができる。
【0015】
なお、上述の交点に隣接する地図上の道路を緊急車両の位置と見なす構成においては、ナビゲーション装置等にて利用される地図情報を参照して地図上の道路を特定すればよい。また、交点に隣接する道路上で緊急車両の位置を特定する際には、当該交点から最も距離の短い道路上の位置を緊急車両の位置とする構成や、異なる時刻にて特定した複数の交点の軌跡を緊急車両の軌跡と見なし、当該緊急車両の軌跡に最も合致する道路を選択して当該道路上で緊急車両の位置を特定する構成としても良い。むろん、道路上の位置は、地図情報におけるノードに一致していても良いし、緊急車両が存在することが推定されるリンクを特定することによって当該リンク上の道路に緊急車両が存在すると見なしても良く、種々の構成を採用可能である。
【0016】
さらに、本発明のように、複数の車両の位置と各車両から緊急車両までの距離とに基づいて緊急車両の位置を取得する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のような緊急車両検出装置、緊急車両検出方法および緊急車両検出プログラムは、単独の緊急車両検出装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような緊急車両検出装置の一部あるいは全部を備えた緊急車両検出装置や方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、緊急車両検出装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)緊急車両検出装置の構成:
(2)緊急車両検出処理:
(3)他の実施形態:
【0018】
(1)緊急車両検出装置の構成:
図1は、本発明にかかる緊急車両検出装置を含むナビゲーション装置を示すブロック図である。本実施形態においては、図1に示す緊急車両検出装置と他車両とが協働することによって緊急車両の位置を特定する。なお、他車両においては、少なくとも当該他車両の位置を示す他車両位置情報と、当該他車両から緊急車両までの距離を当該緊急車両の出力音に基づいて特定した他車両距離情報とを送信する通信部を備えていればよいが、他車両においても図1と同様の構成とし、当該構成において他車両位置情報と他車両距離情報とを自車両に送信する構成としても良い。
【0019】
ナビゲーション装置10は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20と記録媒体30とを備えており、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。本実施形態においては、このプログラムの一つとして図示しないナビゲーションプログラムを実行可能であり、当該ナビゲーションプログラムを実行しているときに、さらに緊急車両検出プログラム21を実行可能である。
【0020】
ナビゲーション装置10が備えられた自車両には、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43と通信部44と音声取得部45とスピーカー46と表示部47とが備えられており、これらの各部と制御部20とが協働することによって緊急車両の位置を案内する機能を実現する。
【0021】
GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して自車両の位置を算出するための情報を出力する。制御部20は、この信号を取得して自車両の位置を示す自車両位置情報を取得する。車速センサ42は、自車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、自車両の速度を取得する。
【0022】
ジャイロセンサ43は、自車両の角速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、自車両の向きを示す情報を取得する。車速センサ42とジャイロセンサ43とは、自車両の速度および向きを示す情報を取得するために利用されるとともに、上述の自車両位置情報を補正するためにも利用される。
【0023】
むろん、自車両の位置や向きを取得するための構成は上述の構成に限られず、ステアリングセンサ等によって特定される自車両の動作に基づいて自車両の位置や向きを取得する構成を採用してもよい。なお、自車両の動作を示す情報を取得するための構成は、ほかにも種々の構成を採用可能であり、自車両の位置をセンサやカメラによって特定する構成や、地物との通信等によって自車両の動作を示す情報を取得する構成等を採用可能である。
【0024】
通信部44は、無線通信回路を備えており、他車両に備えられた通信部と通信を行って情報を送受信することができる。本実施形態において、制御部20は、図示しないインタフェースを介して当該通信部44を制御し、他車両から送信される当該他車両の位置を示す他車両位置情報と他車両から緊急車両までの距離を示す他車両距離情報とを取得する。なお、本実施形態においては、少なくとも2台の他車両と通信を行って、各他車両の他車両位置情報と他車両距離情報とを取得する。
【0025】
音声取得部45は、自車両の外部で出力された音声の音圧に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、緊急車両の出力音を検出するとともに当該出力音に基づいて自車両と緊急車両との距離を示す自車両距離情報を取得する。なお、本実施形態における自車両距離情報および他車両距離情報は請求項における距離情報に相当し、自車両位置情報および他車両位置情報は請求項における車両位置情報に相当する。
【0026】
制御部20は、自車両距離情報および他車両距離情報、自車両位置情報および他車両位置情報に基づいて、後述の処理によって、自車両および他車両の位置と各車両から緊急車両までの距離に整合する緊急車両の位置を取得する。本実施形態においては、ナビゲーションプログラムによって自車両の位置を地図上に提示する処理を行っているときに当該緊急車両の位置を案内する構成を採用している。すなわち、制御部20は、音声によって各種の案内を行うための制御信号をスピーカー46に出力し、画像によって各種の案内を行うための制御信号を表示部47に出力し、スピーカー46および表示部47から各種の案内を出力可能であり、この案内の一つとして緊急車両の位置を案内する。
【0027】
本実施形態においては、緊急車両検出プログラム21が緊急車両の位置を検出する機能を実施するとともに、当該位置を案内する機能を実施して、ナビゲーション装置10を本発明にかかる緊急車両検出装置として機能させる。緊急車両検出プログラム21は、これらの処理を行うために、車両位置情報取得部21aと距離情報取得部21bと緊急車両位置取得部21cとを備えている。
【0028】
また、記録媒体30には、ナビゲーションプログラムによる案内を実施するため地図情報30aが記憶されており、自車両の位置を特定するために当該地図情報30aが参照される。地図情報30aは、道路上に設定されたノードを示すノードデータやノード同士の連結を示すリンクデータ、目標物を示すデータ等を含み、自車両の位置の特定や目的地への案内に利用される。
【0029】
車両位置情報取得部21aは、自車両位置情報および他車両位置情報を取得するモジュールであり、制御部20は、車両位置情報取得部21aの処理により、GPS受信部41を制御し、当該GPS受信部41からの信号に基づいて自車両の位置を特定して自車両位置情報とする。また、制御部20は、車両位置情報取得部21aの処理により、通信部44を制御して他車両と通信を行って、他車両の位置を示す他車両位置情報を取得する。すなわち、他車両においても図1に示す構成と同様にGPS受信部41等によって当該他車両の位置を特定する機能を備えており、他車両において他車両の位置を示す他車両位置情報を取得すると、通信部44からの要求に応じて他車両の通信部が当該他車両位置情報を送信する。自車両においては、通信部44を介して少なくとも2台の他車両が送信する他車両位置情報を取得する。
【0030】
距離情報取得部21bは、自車両と他車両とのそれぞれに搭載された音声取得部にて取得された緊急車両の出力音によって特定される、自車両距離情報および他車両距離情報を取得するモジュールであり、制御部20は、距離情報取得部21bの処理により、音声取得部45を制御し、当該音声取得部45が出力する信号を取得する。当該信号は音声取得部45にて取得した音に対応した信号であり、制御部20は、距離情報取得部21bの処理によって当該信号を解析し、緊急車両の出力音を検出する。例えば、緊急車両の出力音の周波数を示す情報を予め記録媒体30に記録しておき、音声取得部45にて取得した音が当該情報に示される周波数に対応しているときに緊急車両の出力音を取得したと判定する。
【0031】
さらに、当該緊急車両の出力音の音圧に基づいて緊急車両と自車両との距離を取得する。例えば、当該出力音の音圧に対して緊急車両と自車両との距離を対応付けたテーブルデータを予め記録媒体30に記録しておき、緊急車両の出力音の音圧を取得するとともに当該テーブルデータを参照し、当該音圧に対応した距離を取得して自車両距離情報とする。
【0032】
ここでは、緊急車両の音によって特定された距離情報を取得することができればよく、緊急車両がサイレンやスピーカー等から警報音を出力しながら走行している状態において、当該警報音の音圧が距離とともに減衰することに基づいて車両から緊急車両までの距離を特定すればよい。従って、音圧と距離とによって音の物理的特性を記述した式を予め定義しておき、当該式に基づいて距離を算出する構成としても良い。
【0033】
また、制御部20は、距離情報取得部21bの処理により、通信部44を制御して他車両と通信を行って、他車両と緊急車両との距離を示す他車両距離情報を取得する。すなわち、他車両においても図1に示す構成と同様に音声取得部45によって緊急車両の出力音を取得し、当該出力音から緊急車両と他車両との距離を示す他車両距離情報を取得する構成を備えている。そして、他車両において他車両距離情報を取得すると信部44からの要求に応じて他車両の通信部が当該他車両距離情報を送信する。自車両においては、通信部44を介して少なくとも2台の他車両が送信する他車両距離情報を取得する。なお、当該他車両距離情報を送信する他車両は上述の他車両位置情報を送信する他車両と同じ他車両であり、各他車両距離情報がいずれの位置の他車両であるか否かを特定可能な状態で以上の通信が行われる。
【0034】
緊急車両位置取得部21cは、車両位置情報と距離情報とに基づいて、複数の車両の位置および緊急車両と前記複数の車両のそれぞれとの距離に整合する緊急車両の位置を取得するモジュールである。すなわち、制御部20は、緊急車両位置取得部21cの処理により、各車両の位置と各車両から緊急車両までの距離との組み合わせに基づいて、各車両の位置と各距離とに整合する緊急車両の位置(緊急車両の位置たり得る位置の候補)を限定する。そして、複数の車両(本実施形態においては自車両と少なくとも2台の他車両)について、各車両の位置と各距離とに基づいて緊急車両の位置の候補を限定することによって緊急車両の位置を一カ所に特定する。
【0035】
緊急車両の位置が特定されると、制御部20は、緊急車両位置取得部21cの処理により、当該緊急車両の位置を自車両の運転者に案内する。すなわち、制御部20は、緊急車両位置取得部21cの処理により、スピーカー46および表示部47に制御信号を出力し、緊急車両の接近や緊急車両の位置を示す音声をスピーカー46に出力させ、緊急車両の接近や緊急車両の位置を示す画像を表示部47に表示させる。なお、表示部47においては、ナビゲーションプログラムの処理によって表示部47に対して地図および自車両の位置を表示している状態において、当該地図上に緊急車両の位置を示す画像を表示することが好ましい。
【0036】
以上のようにして緊急車両の位置を取得して当該位置を案内すると、自車両の運転者は緊急車両の位置を認識することが可能である。また、以上の処理においては、複数の車両の位置と各車両から緊急車両までの距離に基づいて緊急車両の位置を特定する。従って、緊急車両の位置を正確に特定することができる。なお、本発明においては、マイクによって正確に特定することが困難な緊急車両の方向に関する情報を利用することなく緊急車両の位置を特定可能であるため、正確に緊急車両の位置を特定することができる。また、各車両と緊急車両との距離には誤差が含まれ得るものの、車両の数が多くなれば緊急車両の位置を正確に特定することが可能になる。
【0037】
(2)緊急車両検出処理:
次に、以上の構成においてナビゲーション装置10が実施する緊急車両検出処理を説明する。ナビゲーション装置10においては、制御部20が図2に示す緊急車両検出処理を所定のタイミング毎に繰り返し実行する。緊急車両検出処理において、制御部20は、距離情報取得部21bの処理により、音声取得部45を介して音声情報を取得し(ステップS100)、緊急車両の出力音を検出したか否かを判別する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、音声取得部45が出力する信号に基づいて自車両の外部で発生している音が緊急車両の出力音であるか否かを判定する。
【0038】
ステップS110において、自車両の外部で発生している音が緊急車両の出力音であると判別されなければステップS100以降の処理を繰り返す。ステップS110において、自車両の外部で発生している音が緊急車両の出力音であると判別されると、制御部20は、距離情報取得部21bおよび車両位置情報取得部21aの処理により、自車両と緊急車両との距離および自車両の位置を取得する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、緊急車両の出力音の音圧に対応する自車両と緊急車両との距離を特定して自車両距離情報とし、GPS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力する信号に基づいて自車両の位置を特定して自車両位置情報とする。
【0039】
さらに、制御部20は、距離情報取得部21bおよび車両位置情報取得部21aの処理により、他車両と緊急車両との距離および他車両の位置を取得する(ステップS130)。すなわち、制御部20は、通信部44を介して他車両と通信を行い、他車両で生成された他車両距離情報と他車両位置情報とを受信する。
【0040】
そして、制御部20は、緊急車両位置取得部21cの処理により、緊急車両の位置を取得する(ステップS140)。すなわち、複数の車両(本実施形態においては自車両と他車両)の位置と、各車両から緊急車両までの距離とに整合する位置を緊急車両の位置として取得する。
【0041】
図3は、本実施形態における緊急車両の位置の取得法を説明する説明図である。同図3において、太い曲線は道路を示し、三角を付した白丸は自車両の位置P0、ハッチを付した丸は他車両の位置P1,P2、白丸は緊急車両の位置P3を示している。制御部20は、車両位置情報として自車両の位置P0と他車両の位置P1,P2を特定しており、さらに、自車両の位置P0から緊急車両までの距離L0と他車両の位置P1から緊急車両までの距離L1と他車両の位置P2から緊急車両までの距離L2とを特定している。そこで、これらの情報に整合する緊急車両の位置を特定するため、各位置P0,P1,P2を中心とした半径L0,L1,L2の円C0,C1,C2を想定し、各円C0,C1,C2の円周上に緊急車両が存在すると推定することで緊急車両の位置を特定する。
【0042】
より具体的には、本実施形態においては、各円C0,C1,C2の円周上を緊急車両の位置の候補とし、各車両の位置P0,P1,P2から各距離L0,L1,L2に矛盾しない位置として想定し得る緊急車両の位置を限定していくことで緊急車両の位置を特定する。例えば、自車両の位置P0から緊急車両までの距離L0を半径とする円C0と他車両の位置P1から緊急車両までの距離L1を半径とする円C1との円周は、双方とも緊急車両の位置の候補であるため、これらの位置P0,P1および距離L0,L1に整合する緊急車両の位置は各円C0,C1の交点である。従って、2つの円C0,C1を想定したとき、交点が存在する場合にはその交点が緊急車両の位置の候補となり、円の数を増やすことによって緊急車両の位置の候補を限定することができる。
【0043】
各車両の位置と各車両から緊急車両までの距離が正確である場合、円を3個以上(すなわち、3台以上の車両)想定すれば、すべての円が交わる場合の交点を一つに特定することができるため、本実施形態においては、少なくとも2台の他車両についてその位置および緊急車両までの距離を特定する。そして、各円が交わる位置を緊急車両の位置とする。以上の処理によれば、車両の数を増やすほど、正確に緊急車両の位置を特定することが可能である。
【0044】
なお、各車両の位置や各車両から緊急車両までの距離には誤差が含まれ得る。図3に示す例においては、距離L0に誤差が含まれる例を想定しており、当該誤差に起因して円C0,C1,C2が共通の交点を持たない状態となっている。しかし、当該誤差に起因する交点の変動量は比較的小さく、緊急車両の位置に対応した交点は比較的狭い領域に密集し、緊急車両の位置に対応しない交点は密集しない。そこで、円C0,C1,C2が共通の交点を持たない場合には、所定の面積内に交点が所定個数以上存在する領域を特定し、当該領域内で緊急車両の位置(例えば、交点の重心位置や中央位置、特定の交点の位置)を特定すればよい。
【0045】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、複数の車両の位置と各車両から緊急車両までの距離とに基づいて緊急車両の位置を取得する限りにおいて、他にも種々の構成を採用可能である。例えば、位置および緊急車両からの位置を取得する対象となる複数の車両に自車両が含まれない構成とし、自車両以外の他車両のみから車両位置情報と距離情報とを取得する構成であっても良い。また、無線通信によって車両位置情報と距離情報とを取得する際には、車車間通信によって車両同士が通信を行うように構成するほか、一旦、車両位置情報と距離情報とを他の装置に送信し、当該他の装置から自車両に送信する路車間通信を採用しても良い。
【0046】
また、車両の位置を取得する構成として、車両の位置をセンサやカメラによって特定する構成を採用しても良いし、地図上での自車両の軌跡,車車間通信,路車間通信等によって位置を取得する構成等を採用可能である。むろん、他車両と緊急車両との距離を特定するために、他車両の音声取得部にて取得した音を示す情報に基づいて自車両において他車両距離情報を算出しても良い。
【0047】
さらに、車車間通信によって他車両からその位置と緊急車両までの距離を示す情報を取得する際に、情報の取得対象となる他車両を限定する構成としても良い。例えば、複数のマイクを用いるなどして緊急車両の方向をおおよそ特定し、自車両から緊急車両の方向を向いた所定の範囲(例えば扇形)に含まれる他車両と通信を行って他車両位置情報および他車両距離情報を取得する構成としてもよい。また、上述の円の交点を正確に取得することが可能な位置に存在する他車両を選択しても良い。例えば、自車両と緊急車両とを結ぶ直線および他車両と緊急車両とを結ぶ直線を定義し、自車両に関する直線に対して他車両に関する直線の角度が所定の角度以上になる他車両を選択すれば、上述の各円の周が交わる角度が大きくなり、緊急車両の位置を特定するための精度を高めることができる。
【0048】
さらに、位置と緊急車両までの距離を特定する対象となる車両の数を2台とし、各車両から見た緊急車両の方向を、例えば、緊急車両の出力音等に基づいて特定すれば、上述の円を2つ想定するとともにその交点であって、緊急車両の方向に近い位置に存在する交点を緊急車両の位置として特定することが可能である。
【0049】
さらに、円の交点に基づいて緊急車両の位置を特定する構成において、異常値(例えば、他の交点と所定距離以上離れた交点を形成する円)を除外する構成を採用しても良い。
この構成によれば、緊急車両の位置の特定精度を向上することができる。
【0050】
さらに、上述の円の交点に隣接する地図上の道路を緊急車両の位置と見なす構成を採用しても良い。すなわち、緊急車両は道路上に存在する場合が多いため、緊急車両の位置が道路上であると見なすことにより緊急車両の位置を特定する際の精度を向上することができる。例えば、ナビゲーション装置等にて利用される地図情報を取得して地図上の道路を特定し、上述の交点に隣接する道路上で緊急車両の位置を特定すればよい。また、このとき、各交点から最も距離の短い道路上の位置を緊急車両の位置とする構成や、緊急車両の軌跡に最も合致する道路を選択し、当該道路上で緊急車両の位置を特定する構成としても良い。
【0051】
より具体的には、緊急車両位置取得部21cにおいて、異なる時刻にて上述の交点を特定して複数の交点の軌跡を取得すれば、当該軌跡は緊急車両の軌跡に近い形状となる。そこで、当該交点の軌跡を緊急車両の軌跡と見なし、地図情報を参照して当該緊急車両の軌跡に最も合致する道路形状を抽出する、いわゆるマップマッチング処理を行えば、緊急車両の位置を正確に特定することが可能になる。むろん、緊急車両の位置として定義される道路上の位置は、地図情報におけるノードに一致していても良いし、緊急車両が存在することが推定されるリンクを特定することによって当該リンク上の道路に緊急車両が存在すると見なしても良く、種々の構成を採用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】緊急車両検出装置のブロック図である。
【図2】緊急車両検出処理のフローチャートである。
【図3】緊急車両の位置の取得法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0053】
10…ナビゲーション装置、20…制御部、21…緊急車両検出プログラム、21a…車両位置情報取得部、21b…距離情報取得部、21c…緊急車両位置取得部、30…記録媒体、30a…地図情報、41…GPS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…通信部、45…音声取得部、46…スピーカー、47…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両の位置を示す車両位置情報を取得する車両位置情報取得手段と、
前記複数の車両のそれぞれに搭載された音声取得部にて取得された緊急車両の出力音によって特定される、前記緊急車両と前記複数の車両のそれぞれとの距離を示す距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記車両位置情報と前記距離情報とに基づいて、前記複数の車両の位置および前記緊急車両と前記複数の車両のそれぞれとの距離に整合する前記緊急車両の位置を取得する緊急車両位置取得手段と、
を備える緊急車両検出装置。
【請求項2】
前記車両位置情報取得手段は、車車間通信を行う通信部によって前記車両位置情報を取得し、
前記距離情報取得手段は、前記通信部によって前記距離情報を取得する、
請求項1に記載の緊急車両検出装置。
【請求項3】
前記複数の車両は3台以上である、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の緊急車両検出装置。
【請求項4】
前記緊急車両位置取得手段は、地図情報を取得し、当該地図情報が示す道路上で前記緊急車両の位置を特定する、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の緊急車両検出装置。
【請求項5】
複数の車両の位置を示す車両位置情報を取得する車両位置情報取得工程と、
前記複数の車両のそれぞれに搭載された音声取得部にて取得された緊急車両の出力音によって特定される、前記緊急車両と前記複数の車両のそれぞれとの距離を示す距離情報を取得する距離情報取得工程と、
前記車両位置情報と前記距離情報とに基づいて、前記複数の車両の位置および前記緊急車両と前記複数の車両のそれぞれとの距離に整合する前記緊急車両の位置を取得する緊急車両位置取得工程と、
を含む緊急車両検出方法。
【請求項6】
複数の車両の位置を示す車両位置情報を取得する車両位置情報取得機能と、
前記複数の車両のそれぞれに搭載された音声取得部にて取得された緊急車両の出力音によって特定される、前記緊急車両と前記複数の車両のそれぞれとの距離を示す距離情報を取得する距離情報取得機能と、
前記車両位置情報と前記距離情報とに基づいて、前記複数の車両の位置および前記緊急車両と前記複数の車両のそれぞれとの距離に整合する前記緊急車両の位置を取得する緊急車両位置取得機能と、
をコンピュータに実現させる緊急車両検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−134480(P2009−134480A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309521(P2007−309521)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】