説明

腫瘍の経過観察レポート自動作成診断支援システム

【課題】腫瘍を自動的かつ正確に検出することができ、経過観察を前提とした画像データから治療効果を評価する上で、診断(画像読影)に要する時間を縮減し、診断レポートを自動的に作成することができるシステム、すなわち、腫瘍の経過観察レポート自動作成診断支援システムを提供すること。
【解決手段】PET、SPECT、CT、MRIなどによって撮像された画像データを格納するサーバー、被検者のプロフィールデータを格納するサーバー、腫瘍の経過観察において使用する各種プログラムがインストールされたサーバー、及び標準化後の画像データ・数値データを格納するサーバー、並びに、入力装置、出力装置、RAM、及びCPUを備え、データ標準化サブシステム;経過観察解析支援サブシステム;レポート自動作成支援サブシステム;レポート出力サブシステム;から構成される腫瘍の経過観察レポート自動作成診断支援システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍の経過観察レポート自動作成診断支援システム、詳しくは、データ標準化サブシステム、経過観察解析支援サブシステム、レポート自動作成支援サブシステム、レポート出力サブシステム等を備えた、腫瘍の経過観察レポート自動作成診断支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医用画像の高精細化やモダリティ画像の増加により、これまで発見が困難であった小さな病変も容易に検出することが可能となった。しかし、一人当たりの被検者から得られる診断画像枚数は数100〜1000枚以上となり、今後はさらに増加することが見込まれている。このため、医師による悪性腫瘍などの病変部位の抽出に関する読影には多くの時間と労力が必要とされている。
【0003】
また診断によっては、異なるモダリティ画像同士での比較診断及び治療前後での経過観察診断を行う必要があり、その際に複数のディスプレイを用意するか、別操作によって比較する画像を予め作成しておかなければならないなど、操作性上の問題やレポート作成上の問題が指摘されている。そこで、コンピュータによる診断支援システム(CAD)の開発が求められている(非特許文献1参照)。
【0004】
これまでに腫瘍の自動判定として、マンモグラフィ画像に関するコンピュータ画像支援診断(CAD)を用いた乳癌の自動検出(特許文献1参照)及び肝臓、腎臓などの腫瘍領域を自動的に抽出・検出する画像診断支援システムが提案されている(非特許文献2〜4参照) 。
【0005】
また、1つ又は複数の医用イメージング・デバイスから検査処理情報を自動的に取得し、このデータを解析センターに自動的に送信し、さらに有用なレポートを顧客に自動的に提供するための装置(特許文献2参照)や、異なる複数のモダリティ画像を1つのディスプレイに用途に合わせて表示する画像表示装置(特許文献3)などが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−575号公報
【特許文献2】特開2002−140439号公報
【特許文献3】特開平1−99083号公報
【非特許文献1】多次元医用画像の知的診断支援第一回シンポジウム論文集、pp.1、2005
【非特許文献2】PET/CT画像からの腫瘍候補領域自動抽出による支援診断システム(新田修平,本田清士,糟谷友美,本谷秀堅, 深見忠典,湯浅哲也,赤塚孝雄,呉勁,武田:MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY,vol.24 N0.3,pp.181-190,2006.)
【非特許文献3】画素値の確率分布に基づくPET/CT画像中の腫瘍領域の抽出(新田修平,本谷秀堅,深見忠典,湯浅哲也,赤塚孝雄,呉勁,武田徹,織内昇,遠藤啓吾,渡邊順久:MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY, Vol.24 No.5,pp.409-418,2006.)
【非特許文献4】PET/CT画像中の腫瘍抽出高精度化のための判別器の学習(深田好秀,新田修平,本谷秀堅,深見忠典,湯浅哲也,赤塚孝雄,呉勁,武田徹,織内昇,遠藤啓吾,渡邊順久:画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2007),pp.341-348,2007.)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、腫瘍の自動抽出診断支援システムなどの医用支援システムは幾つか検討されているが、それらは1回の撮像データのみの腫瘍の自動抽出診断支援を対象としており、腫瘍の経過観察支援に対応したシステムは検討されておらず、また医用システムとしても診断工程の一部を部分的に利便化するものに過ぎない上に、システムとしての拡張性に乏しく、十分なものとなっていない。
【0008】
経過観察において、呼吸などの影響により画像の位置や形状が変化することから、各種モダリティ画像での位置合わせを正確に行うことは困難であり、病変部位の位置、体積(XYZ方向の最大径)、特徴量、浸潤やリンパ節転移や遠隔転移の有無、放射性薬剤の集積度に関する経時変化を画像及び数値データとして自動的に作成することができず、治療方針を策定する上で有用とされる定量的解析が困難な状況にある。また、それらの病変部位の変化をレポートに手作業で記載する際に、誤記入や書落としの割合を減らし、かつレポート作成に要する時間を短縮することもできていない状況にある。
【0009】
本発明の課題は、腫瘍を自動的かつ正確に検出することができ、経過観察を前提とした画像データから治療効果を評価する上で、診断(画像読影)に要する時間を縮減し、誤記入や書き落としのない診断レポートを自動的に作成することができるシステム、すなわち、腫瘍の経過観察レポート自動作成診断支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、上記課題を解決するために以下の(A)〜(D)のサブシステムから構成される腫瘍の経過観察レポート自動作成診断システムを提供する。
(A)(a)、又は(a)及び(b)の機能を有するデータ標準化サブシステム;
(a) 検査画像データ格納サーバーに格納されている画像データから、標準化された数値データを作成して、画像データとリンクした標準化数値データの形態で標準化データ格納サーバーに格納する機能、
(b) 検査画像データ格納サーバーに格納されている2種以上のモダリティの画像データを合成処理することにより得られる合成画像データから、標準化された数値データを作成して、合成画像データとリンクした標準化数値データの形態で標準化データ格納サーバーに格納する機能、
(B)入力装置からの命令に従い、標準化サブシステムにおいて標準化データ格納サーバーに格納された標準化数値データと、同じく標準化データ格納サーバーに格納されている過去データとを比較・評価するための経過観察解析支援サブシステム;
(C)あらかじめ設定された基準に従って、経過観察解析支援サブシステムの比較結果に基づいて、治療の効果の評価に関するレポートを自動的に作成するレポート自動作成支援サブシステム;
(D)入力装置からの命令に従い、被検者のプロフィール、レポート、及びレポート作成の基礎となった画像データ及び標準化数値データを、出力装置からアウトプットする、レポート出力サブシステム;
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、PET、SPECT、CT、MRI、超音波診断装置など各種モダリティ画像を利用したステージングを含めた腫瘍診断の精度を向上させ、早期発見や早期治療の可能性を増大させ、腫瘍による死亡率の低下が期待できる。また画像読影やレポートの作成に要する労力を低減し、時間を短縮することができる上に、読影結果を誤って判定したり、誤って記入する確率が大幅に縮減できる。そして、読影とレポートの作成に要する労力と時間が低減されるため、医師一人が単位時間に診断できる患者数が増加する。また、医用データの定量的解析が可能となるため、効率良く、高度な臨床研究が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の腫瘍の経過観察レポート自動作成診断支援システムとしては、データ標準化サブシステム、経過観察解析支援サブシステム、レポート自動作成サブシステム、レポート出力サブシステムの各サブシステムと、それを実現するためのハードウエア構成(デバイス構成)であるモダリティ装置、モダリティによって撮像された画像データを格納する検査画像データ格納サーバー、被検者のプロフィールを格納するサーバー、腫瘍の経過観察において各種演算処理時に使用する各種プログラムがインストールされたプログラムサーバー、及び標準化後の画像データ・数値データを格納する標準化データ格納サーバー、並びに、入力装置、出力装置、RAM(メモリ)、及び前記サーバーに格納されているデータを演算処理するCPU(演算処理装置)を備えていれば特に制限されず、本発明の一実施形態に係るシステムは、医用画像計測装置PET、SPECT、CT、MRI、超音波診断装置などの各種モダリティ装置、好ましくは検査画像データ格納サーバーとコンピューターネットワークで電子的に接続されているモダリティ装置により計測された画像データを検査画像データ格納サーバーに格納した上で、当該画像データより様々な演算処理を施すことにより、腫瘍データ、経時変化データなどの所望のデータをレポートとして自動的に作成及び出力する。以下、本発明の一実施形態として図1に例示される腫瘍の経過観察レポート自動作成診断支援システム構成図(ハードウェア構成図)により説明する。
【0013】
腫瘍の経過観察レポート自動作成診断支援システム構成は、1又は2以上のモダリティ装置、例えばモダリティ装置1,2、モダリティによって撮像された画像データを格納する検査画像データ格納サーバー3、氏名、性別、年齢、血液等の検査結果(血液型、血液・生化学検査、腫瘍関連検査、遺伝子検査等のデータ、尿や髄液、病理画像や診断結果)、既往症、薬に対するアレルギーの有無などの被検者のプロフィールを格納した被検者プロフィールデータサーバー4、腫瘍の経過観察において演算処理時に使用する各種プログラム(腫瘍自動検出プログラム6、標準化数値データ作成プログラム7、腫瘍条件検索プログラム8、経過観察解析支援プログラム9、レポート作成支援プログラム10、機械学習機能プログラム11など)がインストールされたプログラムサーバー5、キーボード及びマウスなどの入力装置27、CPU(演算処理装置)28、RAM(ランダムアクセスメモリ)29、ディスプレイ装置、プリンターなどの出力装置30、並びに、各モダリティや合成モダリティ画像データと、各モダリティや合成モダリティ画像データから作成された標準化された数値データとを格納した標準化データ32、及び腫瘍を自動検出する上で有用な医用参考過去データ33(過去の一般的症例データ)を格納した標準化データ格納サーバー31から構成される。
【0014】
前記腫瘍自動検出プログラム6にはサブプログラムとして、画像データ確認プログラム12、追加撮像命令プログラム13、被検者本人の過去データを取得しうるプログラム14等が実装されている。上記画像データ確認プログラム12は、撮像した腫瘍の画像が標準化数値データ作成プログラム7を正常に実行することができる解像度・鮮明度等を有しているかどうかを判定しうるプログラムである。上記追加撮像命令プログラム13は、撮像した腫瘍の画像が標準化数値データ作成プログラム7を正常に実行することができない画像データ確認プログラム12からの命令による再撮像や、異常領域を自動的に検出した腫瘍自動検出プログラム6からの命令による拡大撮像・異方向撮像を実行するプログラムであり、通常、医師の指示により実行される。被検者本人の過去データを取得しうるプログラム14は、その都度更新された被検者本人の過去データを取得するプログラムである。
【0015】
前記標準化数値データ作成プログラム7にはサブプログラムとして、腫瘍位置特定プログラム15、腫瘍体積及び/又はXYZ方向の最大径算出プログラム16、腫瘍特徴量算出プログラム17、腫瘍種類特定プログラム18、浸潤の有無検出プログラム19、リンパ節転移の有無検出プログラム20、遠隔転移の有無検出プログラム21、放射性薬剤集積度算出プログラム22、腫瘍の進行度を決定するグレーディングプログラム23等が実装されている。上記腫瘍位置特定プログラム15は、前記腫瘍自動検出プログラム6によって腫瘍が検出された場合に、検出された臓器及びその臓器における検出位置を特定するプログラムであって、任意の空間座標系を適用して正確な腫瘍位置を特定するプログラムである。上記腫瘍体積算出プログラム16は、前記腫瘍自動検出プログラム6によって腫瘍が検出された場合に、当該腫瘍の体積を算出するプログラムであり、画像データから直接算出することもできるが、腫瘍の最大径から間接的に算出することができる。上記腫瘍特徴量算出プログラム17は、モダリティ装置により計測された信号変化、形状、密度、薬剤集積度、さらには前記腫瘍自動検出プログラム6によって腫瘍が検出された場合に、当該腫瘍の密度を算出するプログラムである。上記腫瘍種類特定プログラム18は、前記腫瘍自動検出プログラム6によって腫瘍が検出された場合に、当該腫瘍の種類を特定する(肺がんの場合:腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がんの可能性を示唆する(良性の可能性が高いか低いかの判定を支援する))プログラムである。上記浸潤の有無検出プログラム19は、上記腫瘍自動検出プログラム6によって腫瘍が検出された場合に、当該腫瘍が上皮基底膜を越えるなど浸潤性を有しているか否かを検出するプログラムである。上記リンパ節転移の有無検出プログラム20は、前記腫瘍自動検出プログラム6によって腫瘍が検出された場合に、当該腫瘍によるリンパ節への転移の有無を検出するプログラムである。上記遠隔転移の有無検出プログラム21は、前記腫瘍自動検出プログラム6によって腫瘍が検出された場合に、当該腫瘍が遠隔転移によって生じた腫瘍であるか否かを検出するプログラムである。例えば、原発腫瘍が肺がんとした場合、脳病変、骨病変、肝臓病変や副腎病変等は遠隔転移と考える。上記放射性薬剤集積度算出プログラム22は、前記腫瘍自動検出プログラム6によって腫瘍が検出された場合に、当該腫瘍における放射性薬剤集積度(SUV)を算出するプログラムである。また、上記グレーディングプログラム23は、前記腫瘍自動検出プログラム6によって腫瘍が検出された場合に、当該腫瘍の進行度を決定するグレーディングプログラムである。
【0016】
前記腫瘍条件検索プログラム8は、入力装置27からの命令に従って、標準化データ格納サーバーに格納された、腫瘍の位置データ、体積(XYZ方向の最大径)データ、腫瘍の特徴量(形状、密度、信号変化、薬剤の集積度)、放射性薬剤の集積度(SUV)データなどの定量データや、腫瘍の種類、浸潤の有無、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無、腫瘍グレードデータなどの腫瘍特性データから、各種条件を設定することにより、条件を充足するデータの抽出を可能とするプログラムである。
【0017】
前記画像経過観察解析支援プログラム9にはサブプログラムとして、画像マッチングプログラム24、数値データ定量比較プログラム25、腫瘍特性データ比較プログラム26等が実装されている。上記画像マッチングプログラム24には、さらにサブプログラムとして、テンプレートマッチングプログラムと、グローバルマッチングプログラム及びローカルマッチングプログラム等が実装されており、上記テンプレートマッチングプログラムは、医用画像データに関する局所的な位置合わせを実行するプログラムであり、上記グローバルマッチングプログラムは、各臓器や部位の境界を重視した対極的位置合わせを実行するプログラムであり、上記ローカルマッチングプログラムは、相互相関値に基づく局所的位置合わせを実行するプログラムである。上記数値データ定量比較プログラム25は、標準化データ格納サーバーに格納されている体積(XYZ方向の最大径)データ、腫瘍の特徴量(形状、密度、信号変化、薬剤の集積度)等の数値データを定量的に比較するプログラムである。上記腫瘍特性データ比較プログラム26は、標準化データ格納サーバーに格納されている腫瘍の種類、浸潤の有無、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無等の腫瘍特性データを定性的に比較するプログラムである。
【0018】
前記レポート作成支援プログラム10は、あらかじめ設定された基準に従って、画像、数値データ、腫瘍特性データ等の経過観察解析支援サブシステムの比較結果に基づいて、異常病変等の腫瘍の変化、治療の効果の評価などに関するレポートを自動的に作成するプログラムであり、レポート結果は入力装置27からの命令により、被検者プロフィールに基づいた各モダリティ又は合成モダリティ画像データ、これら画像データとリンクした標準化数値データ、腫瘍特性データ等と共に、ディスプレイ等の出力装置30に表示される。出力されたレポート結果は医師により必要に応じて修正される。
【0019】
前記機械学習機能プログラムは、医用参考過去データが入力されると、腫瘍を識別する上で当該データを自律的に分析(学習)、整理、さらに腫瘍自動検出プログラムを更新させる機能や、画像、数値データ、腫瘍特性データ等の経過観察解析支援サブシステムの比較結果に基づいて作成されるレポートの医師による修正結果をレポート作成支援プログラム10に反映させる機能などを有する、機械的に学習するプログラムである。
【0020】
上記標準化データ32は、具体的には、被検者IDデータを主キーとして、検査日データ、腫瘍画像データ、各モダリティ又は合成モダリティにおける腫瘍の位置データ、腫瘍の体積(最大径)データ、腫瘍特徴量(信号変化、形状、密度、薬剤の集積度)データ、腫瘍種類(肺がんの場合;腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がん)データ、浸潤の有無データ、リンパ節転移の有無データ、遠隔転移の有無データ、放射性薬剤集積度(SUV)データ、腫瘍グレードデータより構成されるデータが各被検者ごとに構成されている。これらのデータは、一つのデータセットとして標準化データ格納サーバーに格納されている。
【0021】
本発明の経過観察レポート自動作成診断支援システムの対象となる腫瘍としては、肺がん(腺がん、扁平上皮がん、大細胞がん、小細胞がん)、胃がん、食道がん、子宮頚がん、肝臓がん、腎臓がん、膵臓がん、大腸がん、膀胱がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、咽頭がん、喉頭がん等のがん疾患、耳下腺腫瘍、脳腫瘍、全身に発生する種々の肉腫、種々の良性腫瘍等を具体的に例示することができる。
【0022】
次に、データ標準化サブシステム(A)の(a)、すなわち、1種のモダリティ装置で撮像され、検査画像データ格納サーバーに格納されている画像データから、標準化された数値データを作成して、画像データとリンクした標準化数値データの形式で標準化データ格納サーバーに格納する機能を有するサブシステムを、図2に示すフローチャートにより以下説明する。
【0023】
モダリティ装置1によって撮像された画像データが、コンピューターネットワークで電子的に接続されている検査画像データ格納サーバー3に格納される。検査を開始しているにも関わらず、画像データが検査画像データ格納サーバー3に格納されていなければ、追加撮像命令プログラム13が実行され、再度撮像を実施する処理は、画像データが検査画像データ格納サーバー3に格納されるまで繰り返し自動的に実行してもよいが、通常、入力装置からの医師の命令に基づいて追加撮像命令プログラム13を実行する。これは、検査時に得られた画像データから自動的に病変部位候補を検出し、患者の検査が終わる前に、医師から追加撮影等に関する指示情報を検査医や技師に提示し、再検査を必要とせずにより確実な診断が行えるように支援するものである。
【0024】
画像データが検査画像データ格納サーバー3に格納されると、CPU28はプログラムサーバー5に記憶されている画像データ確認プログラム12をロードすることにより、腫瘍を自動検出する上で検査画像データが十分に撮像されているか否かを確認する。一般的には、決まった撮影手順で検査が実施されるので、サーバーからの指示で再度撮影を自動的に行わない。X線CT等では、被曝が増加するので一度撮影した画像を確認して、必要で有れば追加撮影となる。必ず医師等の確認を行う。なお、検査画像データが腫瘍を自動検出する上で十分でないと画像データ確認プログラム12により判定される場合に、追加撮像命令プログラム13が自動的に実行されようにしておくこともできる。
【0025】
検査画像データ格納サーバー3に格納された検査画像データが、画像データ確認プログラム12によって腫瘍を自動検出する上で十分であると判断された場合には、過去データ取得プログラム14が実行され、腫瘍を検出する上で有用なデータ(被検者本人の過去データ32、医用参考過去データ(一般症例)33)を標準化データ格納サーバー31より取得する。被検者本人の過去データ32、医用参考過去データ(一般症例)33が取得されると、撮像された画像データと共に、腫瘍自動検出工程(腫瘍自動検出プログラム6)に処理が移行される。腫瘍自動検出工程(腫瘍自動検出プログラム6)では、被検者本人の過去データ32、医用参考過去データ(一般症例)33を参照することにより、撮像された検査データに腫瘍が存在するか否かを識別する。また、異常領域を検出した場合は、腫瘍自動検出プログラム6からの命令により、追加撮像命令プログラム13が実行され、1又は複数の拡大撮像や異なる方向からの撮像が自動的に行われる。
【0026】
腫瘍自動検出プログラム6の実行が終了すると、腫瘍の検出有無に関わらず、中間結果データ及び実行結果データが標準化数値データ作成工程(標準化数値データ作成プログラム7)に渡される。標準化数値データ作成工程(標準化数値データ作成プログラム7)では、腫瘍が検出された場合には、腫瘍位置特定プログラム15、腫瘍体積算出プログラム16、腫瘍特徴量算出プログラム17、腫瘍種類特定プログラム18、浸潤の有無検出プログラム19、リンパ節転移の有無検出プログラム20、遠隔転移の有無検出プログラム21、放射性薬剤集積度算出プログラム22、グレーディングプログラム23を各々実行し、それらの実行結果を被検者プロフィールデータサーバー4に格納されている被検者のデータ(氏名、ID、検査日、年齢、性別などのデータ)及び検査画像データと併せ、データの標準化処理を実行し、画像データと数値データを1組のデータ群(データT)として作成した上で、標準化データ格納サーバー31に格納する。
【0027】
腫瘍が検出されなかった場合には、腫瘍位置特定プログラム15、腫瘍体積算出プログラム16、腫瘍特徴量算出プログラム17、腫瘍種類特定プログラム18、浸潤の有無検出プログラム19、リンパ節転移の有無検出プログラム20、遠隔転移の有無検出プログラム21、放射性薬剤集積度算出プログラム22、グレーディングプログラム23のいずれに関しても実行はせず、被検者プロフィールデータサーバー4に格納されている被検者のデータ(氏名、ID、検査日、年齢、性別などのデータ)及び検査画像データと併せ、データの標準化処理を実行し、標準化データ格納サーバー31に格納する。
【0028】
RAM29には、1種のモダリティ装置で撮像された画像データより標準化データを作成するまでの各種の処理(プログラム)をCPU28が実行する過程で必要とされる入力データ、中間処理結果データ及び当該プログラムを適宜記憶するものとする。
【0029】
図3は、データ標準化サブシステム(A)の(b)、すなわち、本発明に係る2種以上のモダリティ装置で撮像された画像データより合成画像を作成し、その後に標準化データを作成するまでのフローチャートである。図3に示すように、検査を開始すると2種以上のモダリティ装置(モダリティ装置1、モダリティ装置2)によって撮像された画像データが各々検査画像データ格納サーバー3に格納される。
【0030】
検査を開始しているにも関わらず、いずれか又は全ての画像データが検査画像データ格納サーバー3に格納されていなければ、検査終了前に、撮影不足部位を医師ないし技師に提示し、許諾後(自動撮影が許される場合はこの許諾無し)に、取得できていない画像データを撮像するモダリティ装置に対して、追加撮像命令プログラム13が実行され、再度撮像を実施する。この処理は、画像データが検査画像データ格納サーバー3に格納されるまで繰り返し実行される。画像データが検査画像データ格納サーバー3に格納されると、CPU28はプログラムサーバー5に記憶されている画像データ確認プログラム12をロードすることにより、画像データの合成処理及び腫瘍の自動検出を実行する上で検査画像データが十分に撮像されているか否かを各々に対して確認する。
【0031】
検査画像データのいずれか又は全てが画像データの合成処理及び腫瘍の自動検出を実行する上で十分でないと、画像データ確認プログラム12により判定されると、画像データの合成処理及び腫瘍の自動検出を実行する上で十分でないと判定された画像データを撮像した、いずれか又は全てのモダリティ装置に対して、検査終了前に、撮影不足部位等を医師ないし技師に提示し、許諾後(自動撮影が許される場合はこの許諾無し)に、追加撮像命令プログラム13が実行され、再度撮像を実施する。この処理は、撮像画像が腫瘍を自動検出する上で十分なデータとなるまで繰り返し実行される。
【0032】
検査画像データ格納サーバー3に格納された全ての画像データが画像データ確認プログラム12によって画像データの合成処理及び腫瘍の自動検出を実行する上で検査画像データが十分であると判断された場合には、画像マッチングプログラム24(テンプレートマッチングプログラム)が実行され、合成画像データが作成される。合成画像データが作成されると、過去データ取得プログラム14が実行され、腫瘍を検出する上で有用なデータ(被検者本人の過去データ32、医用参考過去データ(一般症例)33)を標準化データ格納サーバー31より取得する。被検者本人の過去データ32、医用参考過去データ(一般症例)33が取得されると、撮像された画像データと同時に、腫瘍自動検出工程(腫瘍自動検出プログラム6)に処理が移行される。
【0033】
腫瘍自動検出工程(腫瘍自動検出プログラム6)では、被検者本人の過去データ32、医用参考過去データ(一般症例)33を参照することにより、合成画像データに腫瘍が存在するか否かを識別する。腫瘍自動検出プログラム6の実行が終了すると、腫瘍の検出有無に関わらず、中間結果データ及び実行結果データが標準化数値データ作成工程(標準化数値データ作成プログラム7)に渡される。
【0034】
標準化数値データ作成工程(標準化数値データ作成プログラム7)では、腫瘍が検出された場合には、腫瘍位置特定プログラム15、腫瘍体積算出プログラム16、腫瘍特徴量算出プログラム17、腫瘍種類特定プログラム18、浸潤の有無検出プログラム19、リンパ節転移の有無検出プログラム20、遠隔転移の有無検出プログラム21、放射性薬剤集積度算出プログラム22、グレーディングプログラム23を各々実行し、それらの実行結果を被検者プロフィールデータサーバー4に格納されている被検者のデータ(氏名、ID、検査日、年齢、性別などのデータ)、検査画像データ及び合成画像データと併せ、データの標準化処理を実行し、画像データと数値データを1組のデータ群(データT)として作成した上で、標準化データ格納サーバー31に格納する。
【0035】
腫瘍が検出されなかった場合には、腫瘍位置特定プログラム15、腫瘍体積算出プログラム16、腫瘍特徴量算出プログラム17、腫瘍種類特定プログラム18、浸潤の有無検出プログラム19、リンパ節転移の有無検出プログラム20、遠隔転移の有無検出プログラム21、放射性薬剤集積度算出プログラム22、グレーディングプログラム23のいずれに関しても実行はせず、被検者プロフィールデータサーバー4に格納されている被検者のデータ(氏名、ID、検査日、年齢、性別などのデータ)、検査画像データ及び合成画像データと併せ、データの標準化処理を実行し、標準化データ格納サーバー31に格納する。
【0036】
図4は、経過観察解析支援サブシステム(B)、すなわち、入力装置からの命令に従い、標準化サブシステムにおいて標準化データ格納サーバーに格納された標準化数値データと、同じく標準化データ格納サーバーに格納されている過去データとを比較するまでのフローチャートである。
【0037】
図4に示すように、経過観察解析支援プログラム9では、あらかじめ設定された基準又は入力装置からの命令に従って、標準化データ格納サーバー31より、経過観察する上で設定された過去(第1時期)と現在(第2時期)における、検査画像データ、合成画像データ、腫瘍位置データ、腫瘍体積データ、腫瘍特徴量(信号変化、形状、密度、薬剤の集積度)データ、腫瘍種類データ、浸潤の有無データ、リンパ節転移の有無データ、遠隔転移の有無データ、放射性薬剤集積度データ、腫瘍グレードデータを取得する。標準化データ格納サーバー31よりデータの取得が完了すると、経過観察解析支援プログラムのサブプログラムである、画像マッチングプログラム24、数値データ定量比較プログラム25、腫瘍特性データ比較プログラム26を各々、実行する。
【0038】
画像マッチングプログラム24(グローバルマッチングプログラム、ローカルマッチングプログラム)を実行することにより過去(第1時期)と現在(第2時期)の経過観察画像データを比較し、数値データ定量比較プログラム25を実行することにより過去(第1時期)と現在(第2時期)の経過観察数値データを比較し、腫瘍特性データ比較プログラム26を実行することにより過去(第1時期)と現在(第2時期)の経過観察特性データを比較する。そして、過去(第1時期)と現在(第2時期)に関する上記経過観察画像データ、上記経過観察数値データ、上記経過観察特性データと、被検者プロフィールデータサーバー4に格納されている被検者のデータ(氏名、ID)とを併せて、経過観察解析データを作成する。
【0039】
次に、レポート自動作成支援プログラム10は、標準化データ格納サーバー31に格納されている、検査画像データ、合成画像データ、腫瘍位置データ、腫瘍体積データ、腫瘍特徴量データ、腫瘍種類データ、浸潤の有無データ、リンパ節転移の有無データ、遠隔転移の有無データ、放射性薬剤集積度データ、腫瘍グレードデータより、設定された各種指標値を電子計算処理し、当該結果を、時系列、円グラフ、棒グラフなど各種チャートで示すことにより、病状の経過及び治療効果に関して定量的・定性的な評価の支援を可能とする。かかるレポート自動作成支援プログラム10を実行することにより、あらかじめ設定された基準に従って、画像、数値データ、腫瘍特性データ等の経過観察解析支援サブシステムの比較結果に基づいて、異常病変等の腫瘍の変化、治療の効果の評価などに関するレポートを自動的に作成する。
【0040】
図5は、入力装置からの命令に従い、被検者のプロフィール、レポート、レポート作成の基礎となった画像データ及び標準化数値データをディスプレイ上に出力表示した結果を示す。ディスプレイ表示例(図5)では、まず、異常病変等の腫瘍の変化、治療の効果の評価などに関するレポートが画面上部に表示され、その下方画面左側に標準化データ格納サーバー31より取得された過去(第1時期)の検査画像データ、数値データを、その下方画面中央に標準化データ格納サーバー31より取得された現在(第2時期)の検査画像データ、数値データを、その下方画面右側に前記経過観察解析支援プログラム9を実行することにより出力された経過観察解析データを表示している。表示形式、表示対象項目に関しては、あらかじめ設定された基準又は入力装置からの命令に従って、所望する形式、項目を、表示することができる。
【0041】
以下、経過観察に関する実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。また、経過観察として過去(第1時期)を術前データ、現在(第2時期)を術後データとして実施した。
【0042】
本発明の実施形態で用いた画像は、山形済生病院で撮影された(GE社製PET/CT Discovery LS8)全身PET/CT画像である。原画像の構成を表1に示す。本明細書では図6に示す術前・術後ともに腫瘍が残っているケース(パターン1)と、図7に示す術後には、腫瘍が消えてなくなったケース(パターン2)の2症例を用いて実施した。また、術後のPET画像中ではFDGの集積が消えCT画像上でまだ腫瘍の影が残っているケース(パターン3)が無いため、パターン2の症例を用いて、仮想的に術前のCT画像上にある腫瘍の影が術後の画像にあるとして実施した。
【0043】
【表1】

【0044】
本発明の実施形態では、PET、CTの2種のモダリティの画像データを合成処理することにより得られる合成画像データから、前記自然呼気での影響また空間分解能の相違などの問題を考慮し、画像間での位置合わせを正確に行うために、任意のマッチング手法を適用した。以下、本発明の実施形態で適用したマッチング手法に関して説明する。
【0045】
図8に示すように術前・術後の腫瘍の経過を観察するためにPET/CT画像の比較としてT1〜T4の4つのステップで位置合わせを実施した。これら4つの位置合わせのうち、PET画像間の位置合わせT4はPET画像が検査対象領域の位置合わせに有用な画像パターンを十分に含んでいないことから、直接マッチングすることが困難であるためにT1、T2、T3よりT4を実施することとした。
【0046】
[術前のPET画像から術前のCT画像への腫瘍の位置合わせ(TI)]
術前のPET画像から抽出した腫瘍領域をテンプレートとして、相互情報量を用いたテンプレートマッチングにより対応するCT画像の位置を求めた。具体的な位置合わせの方法を以下に示す。
(1)抽出した腫瘍の大きさに基づいて、テンプレートを作成する。テンプレートの中心は術前のPET画像から抽出した腫瘍領域において、SUVが最大の位置とする。
(2)探索の範囲はx、y、z軸で−12[mm]〜+12[mm]とし、相互情報量が最大となるテンプレートの中心位置を求める。
【0047】
本発明の実施形態では、ピクセル幅とスライス厚の違いを考慮し、テンプレートは2次元で作成し、抽出した腫瘍に外接する長方形の縦横2倍の長方形とした。また、CT画像とPET画像のピクセル幅を合わせるため、PET画像の画像サイズが4倍となるよう線形補間処理を実施した。
【0048】
本発明の実施形態では腫瘍の大きさをCT画像から求めることとしており、その方法を以下に示す。
(1)CT画像中の腫瘍候補領域を抽出するために、対応付けの際に用いたPET画像のテンプレートのサイズを参照してCT画像の局所領域内で判別分析を行い、閾値を決定し、二値化する。
(2)オープニング処理により領域を補正する。
(3)テンプレートのサイズ内にある腫瘍候補領域を開始点としてラベリングを行う。
(4)体積最大のものを腫瘍領域とし、腫瘍の位置(重心)と体積を求める。ここで、(2)の操作で構造化要素は半径l.5[mm]の円とした。
以上の操作により、両画像間の腫瘍の位置合わせを実施した。
【0049】
[術前・術後の両CT画像間の位置合わせ(T2)]
CT画像における術前・術後の検査対象領域の位置合わせ(図8のT2)は、検査対象領域全体に対して行い、その手法には3次元 Elastic Matching 法を参考にし、大局的な位置合わせ(グローバルマッチング)を行った後、局所的な位置合わせ(ローカルマッチング)を実施することとした。
【0050】
位置合わせが済んだ後、術後のCT画像での腫瘍は、局所領域内(術前のCT画像で抽出した腫瘍の外接直方体の大きさの2倍)において判別分析による閾値処理の後、オープニング処理により領域を補正し、局所領域内で体積最大のものを腫瘍領域とし、体積を求めた。
【0051】
以下、術前・術後の両CT画像間の位置合わせ(T2)において本発明の実施形態で適用した、グローバルマッチングとローカルマッチングに関する手法を記載する。
【0052】
[グローバルマッチング]
術前と術後の検査対象領域の輪郭上で対応点を見つけることは困難であるために術前・術後の画像それぞれで作成した距離画像においてそれらの二乗誤差が最小となるような変形パラメータを算出した。
【0053】
その前処理として検査対象領域の形状をクロージングにより補正し、距離画像は検査対象領域の外側が正、内側か負の距離となるように作成した。また、二乗誤差の最小化には共役方向法を用いている。
【0054】
距離画像を用いることにより、対応点を仮定することなく、検査対象領域の外形を一致させる変形を求めた。
【0055】
また、術前・術後の検査対象領域の外接直方体が一致するように術前画像の拡大・縮小と平行移動による変形を実施した。
【0056】
[ローカルマッチング]
検査対象領域の外形のみの位置合わせでは検査対象領域内の画像パターンを考慮していないことから、血管などの画像パターンのずれが数多く残る結果となったため、グローバルマッチングの後にローカルマッチングを実施した。
【0057】
図9に本発明の実施形態で適用したローカルマッチングの概要を示す。
【0058】
ローカルマッチングでは、まず術前画像の検査対象領域から一定間隔にテンプレートVOIを設置し、術後画像の探索領域VOIから相互相関値が最大になる移動ベクトル(シフトベクトル)を求めた。
【0059】
以上の手続きを設定した全てのテンプレートVOIについて行い、シフトベクトルを求めた。
【0060】
テンプレートVOIの中心をx−y方向に8ピクセル間隔、z方向には2ピクセル間隔で設定し、マトリックスサイズを17×17×5[voxels]とする。これらの値は、グローバルマッチング後の血管のずれを考慮し、実験的に定めている。
【0061】
ローカルマッチングにより得られるシフトベクトルは、設定したVOI内の画像パターンのエネルギーが低い場合、画像のノイズの影響などにより確度が低くなる。そもそも生体の位置合わせであるのでシフトベクトルの分布は空間的に連続であるはずであるが、確度の低いシフトベクトルの存在により、この連続性が損なわれることが多い。
【0062】
本発明の実施形態では計算量を考慮して、各シフトベクトルの重み付き平均を求めることにより、分布を平滑化した。この重みの値 w(x)を、変形前と変形後の間における相互相関の値の改善量で定めることとした。
【0063】
以下に、数式を用いて説明する。
【0064】
変形する術前画像の中心位置におけるテンプレートVOIをT(x)、参照する術後画像の中心位置における探索VOIをR(x)とし、テンプレートVOIと探索VOIとの相互相関値を最大にする移動量、すなわちシフトベクトルをc(x)として表している。また、移動前の相互相関値E(R(x)、T(x))と移動後の相互相関値E(R(x+c(x))、T(x))の差に基づく重み係数次式で計算した。
【0065】
【数1】

【0066】
ただし、Ωxはx近傍の領域である。この時
【0067】
【数2】

【0068】
により、シフトレベルを平滑化してc’(x)を得る。
【0069】
[術後のCT画像から術後のPET画像への位置合わせT3]
術後におけるCT画像からPET画像の位置合わせ(図8のT3)についても術後のCT画像をテンプレートとして相互情報量を用いて対応するPET画像の位置をテンプレートマッチングによって求めた。具体的な位置合わせの方法を以下に示す。
(1)抽出した腫瘍の大きさに基づいて、テンプレートを作成する。テンプレートの中心は術後のCT画像から抽出した腫瘍領域の重心とする。
(2)探索の範囲はx、y、z軸で−12[mm]〜+12[mm]とし、相互情報量が最大となるテンプレートの中心位置を求める。
【0070】
「術前のPET画像から術前のCT画像への腫瘍の位置合わせ(TI)」と同様にテンプレートは2次元で作成し、その横幅と縦幅はそれぞれ抽出した腫瘍の縦幅と横幅の2倍とした。また、PET画像の画像サイズが4倍となるよう線形補間処理を行った。術前における処理と同様に、SUVが最大の位置を腫瘍の位置とみなすこととした。
【0071】
本発明の実施形態では検査対象領域の腫瘍の抽出が済んでいる術前のPET画像を入力とし、術前のCT画像、術後のCT画像とPET画像のそれぞれと位置合わせを行い、腫瘍の大きさとSUV値の変化を出力した。
【0072】
[術前・術後の両PET画像間の位置合わせ(T4)]
前記、T1、T2、T3を実施することにより、術前・術後の両PET画像間の位置合わせT4を実施した。
【0073】
図10にグローバルマッチングの結果を示す。図10の左がグローバルマッチング前、右がグローバルマッチング後の結果を示す。これらの図において薄い灰色が術後の検査対象領域、濃い灰色が術前の検査対象領域、黒色が二つの検査対象領域が重なった領域を示す。
【0074】
グローバルマッチング(位置合わせ)することにより、横隔膜付近の重なりが増えたことが確認できる。
【0075】
図11にローカルマッチングにより得られたシフトベクトル(a)、相互相関値の重み付け平均によるシフトベクトルの補正結果(b)、グローバルマッチング後の検査対象領域の差分画像(c)、補正したシフトベクトルにより変形した際の検査対象領域の差分画像(d)をそれぞれ示す。
【0076】
図11(a)、(b)が示すように、式(1)の重み付け平均を求めることにより、シフトベクトルの分布が連続する。
【0077】
また、図11(c)、(d)が示すようにグローバルマッチング後に見られる血管部の位置ずれによるアーチファクトがローカルマッチングによって軽減されていることが分かる。
【0078】
図12にPET画像、CT画像ともに術後に腫瘍が残っている症例(パターン1)に提案手法を適用した結果を示す。図12(a)、(b)は十字線が術前のPET画像から得られた腫瘍の位置と残りの各画像において対応する位置を示す。
【0079】
図12(c)、(d)は対応する腫瘍位置の拡大図であり、腫瘍領域を白色でCT画像に重ねたものとCTとPETの原画像を示す。
【0080】
図12(e)は、提案システムが自動的に求めた術前・術後での腫瘍のSUVの変化と体積の変化を示す。図12に示すようにパターン1に対して、腫瘍の位置を正しく対応づけることができ、さらに腫瘍の体積をCT画像から計測できている。
【0081】
また同様に、図13にPET画像、CT画像ともに術後の画像から腫瘍が消えた症例(パターン2)に本処理を適用した結果を示す。この場合、術後のCT画像で対応する点に腫瘍は無く、術後には腫瘍が消えたことを自動で判断できている。
【0082】
前述したように本発明で使用するデータベースにはCT画像上には腫瘍が残っているがPET画像上で薬剤の集積が消えたケース(パターン3)が無いため、図13に示すパターン2の症例を用いて術前のCT画像上にある腫瘍の影が術後のCT画像に仮想的にあるとして術後のPET画像と対応付けを行った。
【0083】
その結果、図14(a)で十字に示す部分が対応付けられた。図14(b)が示すように術後のPET画像ではFDGの集積が無いため、SUVが大幅に減少するという結果を出力することができた。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明のハードウエア構成を示す図である。
【図2】本発明の1種のモダリティ装置で撮像された画像データより標準化データを作成するまでのフローチャートを示す図である。
【図3】本発明の2種以上のモダリティ装置で撮像された画像データより合成画像データを作成し、その後に標準化データを作成するまでのフローチャートを示す図である。
【図4】本発明の経過観察解析支援サブシステムに関するフローチャートを示す図である。
【図5】本発明のレポート自動作成支援システムにより出力されたレポートをディスプレイ表示したイメージ図である。
【図6】術後にも腫瘍が残っているケースのPET/CT画像(パターン1)を示す図である。
【図7】術後には腫瘍が消えたケースのPET/CT画像(パターン2)を示す図である。
【図8】本発明の各モダリティ画像間の対応と経過観察を示す図である。
【図9】本発明のローカルマッチングの概要を示す図である。
【図10】本発明のローカルマッチング結果を示す図である。
【図11】本発明のシフトベクトルの補正とローカルマッチング結果を示す図である。
【図12】本発明のPET画像、CT画像ともに術後に腫瘍が残っているケース(パターン1)の出力結果を示す図である。
【図13】本発明のPET画像、CT画像ともに術後には腫瘍が消えたケース(パターン2)の出力結果を示す図である。
【図14】本発明のPET画像ではFDGの集積が消えCT画像ではまだ腫瘍の影が残っているケース(パターン3)を示す図である。
【符号の説明】
【0085】
1・・・モダリティ装置1
2・・・モダリティ装置2
3・・・検査画像データ格納サーバー
4・・・被検者プロフィールデータサーバー
5・・・プログラム サーバー
6・・・腫瘍自動検出プログラム
7・・・標準化数値データ作成プログラム
8・・・腫瘍条件検索プログラム
9・・・経過観察解析支援プログラム
10・・・レポート作成支援プログラム
11・・・機械学習機能プログラム
12・・・画像データ確認プログラム
13・・・追加撮像命令プログラム
14・・・過去データ取得プログラム
15・・・腫瘍位置特定プログラム
16・・・腫瘍体積算出プログラム
17・・・腫瘍特徴量算出プログラム
18・・・腫瘍種類特定プログラム
19・・・浸潤の有無検出プログラム
20・・・リンパ節転移の有無検出プログラム
21・・・遠隔転移の有無検出プログラム
22・・・放射性薬剤集積度算出プログラム
23・・・腫瘍グレーディングプログラム
24・・・画像マッチングプログラム
25・・・数値データ定量比較 プログラム
26・・・腫瘍特性データ比較 プログラム
27・・・入力装置
28・・・CPU
29・・・RAM
30・・・出力装置
31・・・標準化データ格納サーバー
32・・・標準化データ
33・・・医用参考過去データ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モダリティ装置、モダリティによって撮像された画像データを格納する検査画像データ格納サーバー、被験者のプロフィールデータを格納するサーバー、腫瘍の経過観察において各種演算処理時に使用する各種プログラムがインストールされたプログラムサーバー、及び標準化後の画像データ・数値データを格納する標準化データ格納サーバー、並びに、入力装置、出力装置、RAM、及び前記サーバーに格納されているデータを演算処理するCPUを備え、以下の(A)〜(D)のサブシステムから構成される腫瘍の経過観察レポート自動作成診断支援システム。
(A) (a)、又は(a)及び(b)の機能を有するデータ標準化サブシステム;
(a) 検査画像データ格納サーバーに格納されている画像データから、標準化された数値データを作成して、画像データとリンクした標準化数値データの形式で標準化データ格納サーバーに格納する機能、
(b) 検査画像データ格納サーバーに格納されている2種以上のモダリティの画像データを合成処理することにより得られる合成画像データから、標準化された数値データを作成して、合成画像データとリンクした標準化数値データの形式で標準化データ格納サーバーに格納する機能、
(B)入力装置からの命令に従い、標準化サブシステムにおいて標準化データ格納サーバーに格納された標準化数値データと、同じく標準化データ格納サーバーに格納されている過去データとを比較・評価するための経過観察解析支援サブシステム;
(C) あらかじめ設定された基準に従って、経過観察解析支援サブシステムの比較結果に基づいて、治療の効果の評価に関するレポートを自動的に作成するレポート自動作成支援サブシステム;
(D) 入力装置からの命令に従い、被験者のプロフィール、レポート、レポート作成の基礎となった画像データ及び標準化数値データを、出力装置からアウトプットする、レポート出力サブシステム;
【請求項2】
プログラムサーバーが、標準化数値データ作成プログラム、腫瘍自動検出プログラム、腫瘍条件検索プログラム、経過観察解析支援プログラム、レポート作成支援プログラム、及び機械学習機能プログラムを格納していることを特徴とする請求項1記載の経過観察レポート自動作成診断支援システム。
【請求項3】
標準化数値データ作成プログラムが、腫瘍位置特定プログラム、腫瘍体積及び/又はXYZ方向の最大径算出プログラム、腫瘍特徴量(信号変化、形状、密度、造影剤を含む薬剤の集積度)算出プログラム、腫瘍種類特定プログラム、浸潤の有無検出プログラム、リンパ節転移及び/又は遠隔転移の有無検出プログラム、放射性薬剤集積度算出プログラム、及び腫瘍の進行度を決定するグレーディングプログラムを備えていることを特徴とする請求項2記載の経過観察レポート自動作成診断支援システム。
【請求項4】
腫瘍自動検出プログラムが、画像データ確認プログラム、標準化データ格納サーバーに格納された、腫瘍を自動検出する上で有用な医用参考過去データ(過去の一般的症例)、及び/又は本人の過去データを取得しうるプログラムを備えていることを特徴とする請求項2記載の経過観察レポート自動作成診断支援システム。
【請求項5】
腫瘍条件検索プログラムが、入力装置からの命令に従って、標準化データ格納サーバーに格納された、腫瘍の位置データ、体積(XYZ方向の最大径)データ、腫瘍の特徴量(信号変化、形状、密度、薬剤の集積度)に関するデータ、浸潤の有無、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無に関するデータ、放射性薬剤の集積度(SUV)データ、腫瘍のグレードに関するデータなど、各種条件を設定することにより、条件を充足するデータの抽出を可能とする、腫瘍条件検索プログラムを備えていることを特徴とする請求項2記載の経過観察レポート自動作成診断支援システム。
【請求項6】
経過観察解析支援プログラムが、医用画像データに関する局所的な位置合わせプログラム(テンプレートマッチングプログラム)と、各臓器や部位の境界を重視した対極的位置合わせプログラム(グローバルマッチングプログラム)及び相互相関値に基づく局所的位置合わせプログラム(ローカルマッチングプログラム)とを備えた画像マッチングプログラムと、数値データ定量比較プログラムと、腫瘍特性データ比較プログラムとを有することを特徴とする請求項2記載の経過観察レポート自動作成診断支援システム。
【請求項7】
レポート作成支援プログラムが、あらかじめ設定された基準に従って、画像、数値データ、腫瘍特性データ等の経過観察解析支援サブシステムの比較結果に基づいて、異常病変等の腫瘍の変化、治療の効果の評価などに関するレポートを自動的に作成するプログラムを備えていることを特徴とする請求項2記載の経過観察レポート自動作成診断支援システム。
【請求項8】
機械学習機能プログラムが、医用参考過去データが入力されると、腫瘍を識別する上で当該データを自律的に分析(学習)、整理、さらに腫瘍自動検出プログラムを更新させる機能を有する、機械学習機能プログラムを格納した、請求項2記載の経過観察レポート自動作成診断支援システム。
【請求項9】
プログラムサーバーが、さらに、追加撮像命令プログラムを格納することを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の経過観察レポート自動作成診断システム。
【請求項10】
標準化データ格納サーバーに格納される標準化数値データが、各モダリティ又は合成モダリティにおける腫瘍の位置データ、体積(XYZ方向の最大径)データ、腫瘍の種類データ、腫瘍の特徴量(信号変化、形状、密度、薬剤の集積度)に関するデータ、浸潤の有無、リンパ節転移の有無、遠隔転移の有無に関するデータ、放射性薬剤の集積度(SUV)データ、腫瘍のグレードに関するデータ及び腫瘍を自動検出する上で有用な医用参考過去データ(過去の一般的症例)を含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか記載の経過観察レポート自動作成診断システム。
【請求項11】
各モダリティ又は合成モダリティ画像データとリンクした標準化数値データを一つのデータ形式として標準化データ格納サーバーに格納することを特徴とする請求項10記載の経過観察レポート自動作成診断支援システム。
【請求項12】
モダリティ装置が検査画像データ格納サーバーとコンピューターネットワークで電子的に接続されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の経過観察レポート自動作成診断支援システム。
【請求項13】
モダリティ装置が、PET、SPECT、CT、MRI、超音波診断装置から選ばれる1又は2以上の装置であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか記載の経過観察レポート自動作成診断支援システム。
【請求項14】
腫瘍が、肺がんであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか記載の経過観察レポート自動作成診断支援システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−29481(P2010−29481A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195358(P2008−195358)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【出願人】(304036754)国立大学法人山形大学 (59)
【Fターム(参考)】