説明

自動車の走行方向を検出するための方法

本発明は、事故回避保護システムを有する車両の走行方向を検出するための方法であって、次のステップ、
a)車両方向の車両の前の対象物を検出するステップと、
b)相互の相対位置に基づき車両と対象物が接触する可能性を算出するステップと、
c)対象物が接触する可能性に関する算出結果に基づき運転者によらない制動及び/又は操舵行程を作動するステップとを含む方法に関する。
保護システムの誤った作動を回避するために、本発明に従って、別のステップ、すなわち、
e)予防的に作用する保護システム114又はこの予防的に作用する保護システム114と結合された安全装置116を有する車両の走行方向を算出するステップ、及び後退走行が検出されたときに、運転者によらない制動及び/又は操舵行程を阻止又は中断するステップが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の走行方向を検出するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の自動車は、周辺対象物との衝突をもたらすかもしれない走行状態で、運転者の注意を危険に向けさせる安全手段を制御する安全システムを部分的にすでに利用しており、この安全手段により、車両の性能上衝突を回避する介入を行うことができ及び/又はこの安全手段により受動的な安全性が高められ、すなわち車両乗員に対するあり得る事故のその後の災害が低減される。安全システムの制御のために基礎は、適切な周辺センサによる現在の走行状態の検出及び車両と検出された対象物との衝突の危険性に関して検出されたデータの電子評価である。この場合、しばしば、車両の周辺に存在する対象物の検出されたデータに基づき走行状態が正しく分析されないという問題が生じる。これによって、安全手段の誤った作動に至る可能性があり、これにより走行快適性の悪化、及び例えば不必要な制動行程の場合のように、走行安全性を危うくすることがある。
【0003】
自動車の走行方向を検出するために、コスト増加を回避するために自動車に存在するセンサが使用される。少なくとも4つの車輪を有する自動車用の走行安定性制御及び乗員保護システムのような安全システムは、ヨー速度信号を発生するセンサ、横加速度信号を発生するセンサ、操舵角度信号を発生するセンサ、車輪の回転運動信号を出力するホイール速度センサ、縦方向加速度信号を発生するセンサを備え、これらは、アンチロックコントロールシステム及びトラクションスリップコントロールシステム及びヨートルクコントロールシステムと、エアバッグシステムと、シートベルトシステムとに結合することができる。安全装置は、ブレーキ装置の車輪ブレーキ及び/又は自動車の操舵システムに作用することができる。
【0004】
今日大量に使用されている大部分のホイール速度センサは、車輪回転数の値に関する情報を1つしか供給せず、この値から走行方向を導くことができない。回転方向を検出できるホイール速度センサが公知であるが、コスト増加のため標準仕様の車両にまれに使用されるに過ぎない。
【0005】
しかし、走行方向の情報は、走行安定性制御又は運転者支援システムにとって非常に重要であるので、この情報は、他の既存の値から発生される。例えば、後退走行の際のヨートルクコントロールシステムの介入は、アクチュエータの誤った作動を排除するために回避されなければならない。ヨートルクコントロールシステム(ESPシステム)における後退走行の検出はカーブ走行の際にもっぱら行われるが、この理由は、直進走行の場合、ヨー角速度
【0006】
【数1】

【0007】
がゼロとはまったく区別されず、したがって制御介入を行う必要がないからである。後退走行は、測定されたヨー角速度
【0008】
【数2】

【0009】
を車両モデルで算出された目標ヨー角速度
【0010】
【数3】

【0011】
と比較することによって算出される。符号は逆であり、このことは、両方の値の時間的な導関数、ヨー加速度についても当てはまり、したがって、車両は後方に通過するカーブにある。この場合、ヨー角速度とならんで、横加速度センサ及び操舵角度センサの値は、後退走行の検出部に入る(特許文献1)。
【0012】
自動車の衝突を早期に検出するための予防的に作用する周辺センサを使用する事故回避保護システムについても、誤制御を回避するために後退走行の検出が必要である。事故が回避されるか又は事故のその後の災害が低減される予防的に作用する保護システムでは、この場合、次の基本的なステップが通常実施される。
【0013】
a)車両方向の車両の前の対象物を検出するステップ、
b)相互の相対位置に基づき車両と対象物が接触する可能性(moeglichen Kontakts)を算出するステップ、
c)対象物と接触する可能性に関する算出結果に基づき、運転者によらない制動行程又は操舵行程を準備または作動するステップ。
【0014】
この場合、例えば、運転者によらない自動制動介入又は車両速度の値の低減は、対象物が後退走行中に前方から接近する場合には反生産的である。このような状態は、例えば、前方からより高速の車両が自動車に接近する間に、自動車が後方に下り坂走行する際に生じることがある。
【0015】
この状態は、ヨートルクコントロールシステムでは後退走行の上述の検出によって防止することができない、この理由は、自動車のカーブ走行が後退走行を検出するための前提条件であるからである。しかし、説明した誤った作動は、自動車の衝突の早期検出のための予防的に作用する保護システムにおいても、直線の後退走行の際にも生じることがある。
【0016】
この検出は、複数の安全装置、同様に特に走行安定性装置ならびに乗員保護装置を含む予防的に作用する事故回避保護システムを有する自動車のために設けられ、この場合、安全及び乗員保護装置は、自動車の衝突を早期に検出するための車両周囲を検出する少なくとも1つの周辺センサによって制御することができる。周囲検出のためにセンサとして、レーダ及び/又は赤外線センサならびにカメラシステムを個別に又は組み合わせて使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】独国特許出願公開第19515048A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、自動車の周辺を検出するための周辺センサを使用する、自動車の衝突を早期に検出するための予防的に作用する保護システムについても、既存の信号に基づく後退走行検出が存在することが望ましいであろう。
【0019】
本発明の課題は、自動車の周辺を検出するための周辺センサを使用する、自動車の衝突を早期に検出するための予防的に作用する事故回避保護システムに、既存の信号に基づく後退走行の検出を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
この問題は、同一範疇の種類の方法に関し、本発明に従って、独立請求項の特徴によって解決される。本発明の別の有利な実施形態は、下位請求項に示されている。
【0021】
有利に、本発明によれば、予防的に作用する事故回避保護システム又はこの事故回避保護システムと結合された安全システムを有する車両の走行方向が算出され、かつ後退走行が検出されたときに、予防的に作用する保護システムが作動解除される。これによって、運転者によらない自動制動及び/又は操舵行程が阻止又は中断される。本発明によって、後退走行検出部が予防的に作用する事故回避保護システムに付設され、このシステムは、固有の走行状態を算出するか又は固有の走行状態に関する情報を受け取り、この場合、衝突する可能性がある対象物に対する相対速度又は相対位置を固有の走行状態に関連付ける。この場合、同様に、事故回避保護システムと結合された安全システムによって、車両の後退走行が算出され、この場合、結合される安全システムは車両の内部又は外部に配置することができ、事故回避保護システムと導体接続して又は無線で通信する。
【0022】
後退走行検出は、予防的に作用する事故回避保護システム又は他の安全及び/又は乗員保護システム及び/又は運転者支援システムの構成部材である加速度センサ及び/又は周辺センサの信号に基づき検出されることが有利である。同様に、車両同士の通信を利用できる場合、他の交通参加者の周辺センサを後退走行検出の算出に結びつけることができることが有利である。同様に、さらに、例えば、後退ギヤ、後退灯の制御又は後退ギヤ用の選択レバーを検出するセンサのような後退走行検出センサは、後退走行を検出するために又はその妥当性のために使用することができる。この場合、考慮すべきことは、例えば、後退ギヤを入れることなく、車両は下り坂で後方に走行できるので、これらの別のセンサによって確実に検出できるのは後退走行のみでないことである。
【0023】
この問題は、同様に、周辺センサを含む自動車の事故回避保護システムにより、自動車の走行方向検出部に事故回避保護システムが設けられ、この事故回避保護システムが少なくとも1つの後退走行検出装置、好ましくは後退走行を算出するための加速度センサ及び/又は周辺センサを備えることによって、有利に解決される。後退走行検出装置としては、後退走行を算出するためにその信号を直接又はモデルで使用できるすべてのセンサと理解される。
【0024】
本発明の実施例を図面に示し、以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に従って形成された安全システムを有する自動車の概略ブロック図である。
【図2】車両前面の周辺センサによって後退走行時に検出された周辺対象物の相対速度の典型的な分布図である。
【図3】車両前面の周辺センサによって前進走行時に検出された周辺対象物の相対速度の典型的な分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に、自動車100の運転者によってアクセルペダル102により制御される駆動モータ101を利用できる自動車100が示されている。駆動モータ101によって提供される駆動トルクは、自動車100を駆動するために、図示していない駆動列を介して2つの車輪又は4つの全車輪107VL、107VR、107HL、107HRに伝達される。本実施例の図面では、自動車100の前輪107VL、107VRは操舵可能に形成され、操舵伝動系108を介して自動車100の運転者が操作可能な操舵ハンドル109と結合される。さらに、自動車100は、例えば油圧ブレーキ装置として形成されるブレーキ装置を利用できる。ブレーキ装置は、自動車100の運転者によってブレーキペダル103により操作される。ブレーキペダル103の操作に基づき、図示していないブレーキ力ブースタを介して、マスタシリンダ104内のブレーキ圧が構築される。油圧ユニット105を介して、ブレーキ圧を車輪ブレーキ106VL、106VR、106HL、106HRに伝達することができる。このため、分かりやすさの理由から図1に示さない油圧管路が設けられる。車輪ブレーキ106VL、106VR、106HL、106HRは、車両に固定して取り付けられたブレーキピストンを含み、このピストンは、車輪ブレーキ106VL、106VR、106HL、106HRに圧力が加えられたときに、車輪固定して取り付けられたブレーキディスクに押圧され、これによって、ブレーキトルクが発生される。油圧ユニット105は、当業者にそれ自体の公知の方法で形成され、車輪ブレーキ106VL、106VR、106HL、106HR内の運転者によらないブレーキ圧の設定を可能にする。特に、車輪ブレーキ106VL、106VR、106HL、106HR内のブレーキ圧を油圧ユニット105によって自動的に高めることができる。
【0027】
さらに、自動車100は、走行状態センサ110を利用できる。このセンサは、特に、ホイール速度センサの信号から自動車100の縦方向速度を決定することができる当該ホイール速度センサ、自動車100のヨーレートを決定するためのヨーレートセンサ、及び必要に応じて自動車100の横方向及び縦方向加速度を決定するための横方向及び/又は縦方向加速度センサを含む。好ましくは、走行状態センサ110は、操舵可能な前輪107VL、107VRの旋回角度を検出するための操舵伝動系108の内部に配置された操舵角度センサをさらに含む。走行状態センサ110の測定データを用いて、特に、自動車100のそれぞれ現在の走行動力学的な状態を決定することができる。走行状態センサ110の他に、自動車100は、個々の車両コンポーネントの作動状態を算出することができるセンサをさらに備える。この場合、特に、アクセルペダル位置を検出するためのアクセルペダルセンサ、ならびにブレーキ装置のマスタシリンダ104内の運転者によって設定されるブレーキ圧を検出するための圧力センサが対象とされる。圧力センサの代わりに、ブレーキペダル103の位置を検出するペダルストロークセンサを設けることもできる。最後に述べたセンサによって、特に、自動車100の縦方向案内の際の運転者の挙動を算出することができる。
【0028】
自動車100の周辺の周辺対象物112、121、124を検出するため、自動車は、周辺センサ111をさらに利用できる。周辺センサ111は、自動車100の前の空間角度範囲に対応する検出領域113を有する例えば1つ又は複数のレーダセンサを含む。レーダセンサの場合、例えば、自動的に車間距離を制御するための自動車100内に設けられたACCシステム(ACC:アダプティブクルーズコントロール)のセンサを対象とすることができ、このセンサは本発明の範囲において付加価値的機能を実施することができる。レーダセンサの代わりに又は追加して、周辺センサ111は例えば赤外線センサ又はビデオセンサ含むことができる。さらに、周辺センサ111の検出領域113は、適切な周辺センサによって、検出領域がさらに自動車100の側方及び/又は後方の周辺を含むようにも拡大することができる。検出領域113に存在し、かつ周辺センサ111によって検出された周辺対象物112、121、124は、自動車100との衝突する可能性に鑑みかつ後退走行の算出に関して重要であり、これらの対象物では、道路交通において自動車100と共に移動する別の自動車112、121及び静止対象物124が対象とされる。静止対象物は、通常、駐車した車両、交通標識板、ガードレール、道路境界、建物等である。別の自動車112、121から用語的に区別するために、したがって、自動車100は以下に自己車両100としても表示される。
【0029】
周辺センサ111により、周辺センサの検出領域113に存在する周辺対象物112、121、124の相対位置及び相対速度vrelは、自己車両100に関し決定される。この場合、周辺対象物112、121、124の位置として、周辺対象物112の基準点の位置が対象とされ、これらの基準点では、センサデータに基づき推定される自己車両100に面する対象物前面の中心点が通常対象とされる。センサデータに基づき、周辺センサ111の評価用電子装置で、検出された周辺対象物112、121、124の第1の分類がさらに行われる。この場合、例えば、周辺対象物112、121の検出された移動に基づき、かつ周辺対象物112、121の検出された輪郭に基づき、道路縁部又は道路の側に存在する周辺対象物124から、道路交通で移動する周辺対象物112、121が区別される。
【0030】
周辺センサ111がビデオセンサを含む場合、車線マークをさらに検出することができ、かつ周辺センサの評価用電子装置111は、車線マークの推移から、自己車両100及び道路交通に参加している周辺対象物112が移動する道路の推移を算出することができる。周辺センサ111の使用によって車線マークを検出できない場合、道路の推移は、例えば道路を画定するガードレールのような周辺対象物124を利用して推定することができる。必要に応じて行われるこの利用の他に、自己車両100の後退走行を検出するために、道路交通に参加していない周辺対象物124が観測される。したがって、以下に、周辺対象物という用語は、自己車両100の周辺のすべての対象物を表し、これについて、対象物が周辺センサの検出領域113に存在することを前提とされる。
【0031】
以下において、周辺センサ111が車両縦方向に前方に向けられた少なくとも1つのレーダセンサを含むことが前提とされる。
【0032】
さらに、周辺センサ111は、検出された周辺対象物112、121、124の例えば後方散乱断面のような測定値を提供し、これらの測定値により、周辺対象物112、121、124の検出の品質に関する帰納的推論が可能である。
【0033】
前述のセンサによって検出されたデータは、自己車両100の内部で、予防的に作用する保護システム114に供給され、これらのデータに基づき潜在的に危険な走行状態が検出され、このような走行状態で自己車両100の安全装置116を制御するための制御命令が決定される。
【0034】
安全装置116は、自己車両100のブレーキ装置に影響を及ぼすことができる油圧ユニット105を含む。この場合、ほぼ自動的な制動行程を実行することができるか、又はブレーキピストンとブレーキディスクとの間の空隙を低減するか又は除去する例えば小さなブレーキ圧を構築することによって、車輪ブレーキ106VL、106VR、106HL、106HRを次の制動行程のために予備調節することができる。さらに、油圧ユニット105の規定の機能を作動するためのしきい値に影響を及ぼして、さし迫った衝突の場合にこれらの機能を迅速に作動できる。このような機能に関する1つの例は、それ自体の公知のハイドロリックブレーキアシスタント(HBA)であり、この装置において、運転者によってブレーキ装置で調整されたブレーキ圧が危険な走行状態で最大値に高められて、最大の減速が保証される。ブレーキペダル勾配、すなわち運転者がブレーキペダルを踏む速度、又はブレーキ圧勾配、すなわちブレーキ装置のマスタシリンダ104の内部のブレーキ圧の変化速度が、所定の作動閾値を越えた場合、この機能が通常作動される。この作動閾値を低くすることによって、HBAを迅速に作動することができるので、自己車両100の制動行程が短縮される。追加して又は油圧ユニット105と共に、自動的に制御可能な操舵、例えば重畳操舵に影響を及ぼすことができる。これによって、周辺対象物112を回避するために、自動的な操舵を実行することができる。
【0035】
自己車両100の別の安全装置116が、図1のブロック115に概略的に示されている。安全装置115は、光学的、音響学的又は接触的に周辺対象物112との衝突の可能性について運転者に警告するための装置を含む。光学的警告は、例えば、自己車両100の運転者が見ることができるディスプレイによって及び/又は例えば自己車両100のダッシュボードに配置される警告灯によって出力することができる。音響学的な警告は、例えば、スピーカによって又は自己車両100に設けられたオーディオシステムによって出力することができる警告音を含む。接触による警告は、例えば操舵伝動系108に配置された操舵アクチュエータにより、この操舵アクチュエータが操舵ハンドル109に短時間トルクを付勢することによって出力することができる。代わりに又は追加して、自己車両100は、油圧ユニット105によって短時間実施されるブレーキ圧上昇によっても制動することもでき、この結果、運転者の注意を危険な状態に向けさせるブレーキ圧が引き起こされる。
【0036】
さらに、安全装置115は、受動的な車両安全性を高めるための1つ又は複数の装置を含むことが好ましい。この場合、特に、衝突の場合に車両乗員をより良く確保できるために、車両乗員が着用するシートベルトを引き締めることができる可逆のシートベルトテンショナを使用することができる。さらに、自己車両100に、シートの調整によって車両乗員を好適な位置に移動させる車両乗員の着座位置を調整するための装置、ならびにさし迫る衝突の際に、運転者を負傷から保護する自己車両100の閉じた安全空間を設けるために、自己車両100のウィンドウ及び/又はスライディングルーフを閉鎖することができる装置を設けることができる。さらに、安全装置115は、エアバッグ及び/又は火工技術のシートベルトテンショナのような不可逆の安全装置を予備調節するためのアクチュエータを含むことができ、このアクチュエータは、通常、衝突の可能性の場合に縦方向加速度信号に基づく不可逆の安全装置の作動閾値を低減し、この結果、不可逆の安全装置は衝突の際に迅速に応答する。
1.縦方向加速度信号に基づく後退走行の検出
予防的に作用する保護システム114は、実施例に従って、後退走行を検出するための縦加速度センサ120の縦方向加速度信号を使用する。縦方向加速度センサ120は、エアバッグシステムに、全輪駆動車用に電子ブレーキシステムに、そして自動車の別の電子安全システム又は運転者支援システムに使用される。測定された縦方向加速度信号αsensorには符号が付けられ、静的及び動的な部分を有する。
【0037】
自己車両100に作用するセンサ信号αsensorの縦加速度の静的部分の検出は、水平に配向されない縦方向加速度センサ120に生じる。この理由は、センサ120の組み込み又は縦方向の道路の勾配αに理由付けることができる。斜面下降加速度に依拠する部分は、例えば、gsin(α)に基づき、g=重力加速度及びα=車両の縦方向傾斜角度である。重力加速度は、通常、g≒9.81m/sの値をとり、この場合も基礎とされる。
【0038】
静的な部分を決定するために、車両停止状態で縦方向加速度センサ120により測定された符号付きの加速度値
【0039】
【数4】

【0040】
は、予防的に作用する保護システム114のメモリに記憶される。
【0041】
接近中、自己車両100の車両速度va_egoは、測定された縦加速度αsensorから積分によって算出される。重要なことは、測定された縦方向加速度信号αsensorが静的部分
【0042】
【数5】

【0043】
について処理されることである。すなわち、
【0044】
【数6】

【0045】
したがって、自己車両100の車両速度va_egoのモデル信号は、接近行程の時間tの間に
【0046】
【数7】

【0047】
から形成される。車両速度va_egoのこのモデル信号は、時間間隔dtの間の加速及び減速の部分を形成する。車両速度va_egoが正の符号を有する場合、車両は、前進走行していると予想され、反対の負の符号の場合、後退走行していると予想される。
【0048】
【数8】

【0049】
から算出された車両速度va_egoの妥当性のために、次に、この車両速度が、
【0050】
【数9】

【0051】
の値が規定の予め設定された
【0052】
【数10】

【0053】
の速度範囲内にあるかどうか、すなわち、縦方向加速度信号から算出された車両速度
【0054】
【数11】

【0055】
が、ホイール速度センサから算出された車両速度
【0056】
【数12】

【0057】
の許容可能な公差範囲にあるかどうかについて調べられる。このために、すべての4つの車輪信号から形成された車両速度
【0058】
【数13】

【0059】
の値又は車輪の最小車輪速度
【0060】
【数14】

【0061】
が算出される。va_egoの上述の計算の品質度として、計算された車両速度の値の差が利用される。
【0062】
【数15】

【0063】
Qの数値的に小さな値は、縦加速度から上述の方法で計算された車両速度va_egoの比較的優れた信頼性を示している。特に、小さな値は、道路勾配が計算中に著しく変化しなかったことを示唆している。
【0064】
車両速度が確定された閾値(例えば5km/h)を数値的に越え、かつ品質度Qが規定値(例えば2km/h)を下回った場合、走行方向はva_egoの符号から確認される。
【0065】
予防的に作用する保護システム114との安全システム116の結合は、後退走行が確認された際に中断されるか、あるいは車両動力学に介入するアクチュエータの制御が保護システム114によって阻止される。当然、保護システム114は、同様にロジックにより、前進走行の算出後に安全システム116を制御することができる。
【0066】
自己車両100の次の停止の際に、本方法が新たに開始される。
【0067】
例えば、後退ギヤ、後退灯の制御又は後退ギヤ用の選択レバーを示す信号のような別の情報は、後退走行の確実なそれぞれ他の検出の妥当性のためにも使用することができる。
2.周辺センサに基づく後退走行の検出
周辺センサは、アダプティブテンポマートのような運転者支援システムに、そして事故を低減するか又は回避する予防的に作用する保護システム114に使用される。周辺センサは、画像又は反射に基づき、自己車両100と共に道路交通で移動しかつ静止する周辺対象物112、121、124、その位置及び相対速度vrelを検出する。この場合、112は、前進走行123の際に自己車両100と共に同一の方向に移動する車両を示しており、一方、車両121は、自己車両100の後退走行の際に同一の方向122に移動する。例えば124のような「静止対象物」は、道路に対し相対的に移動しないような対象物である。
【0068】
図2と図3は、車両前面に配置された周辺センサ111による後退走行又は前進走行の算出の概略的過程を示している。
【0069】
予防的に作用する保護システム114の内部で、すべての4つの車輪センサ信号
【0070】
【数16】

【0071】
から又は少なくとも1つの車輪センサ信号
【0072】
【数17】

【0073】
から、自己車両100の速度の値を算出することができる。車両速度の算出は、当然、車輪回転数信号から車両速度を算出するアンチロックブレーキシステム又はESPシステムのような安全装置116からも利用できる。
【0074】
周辺センサの111により、自己車両100の周辺の周辺対象物112、121と124が検出され、規定の期間dtの間に観測される。車両縦方向の自己車両100に対する周辺対象物112、121、124の検出された相対速度vrel、及びその時間的な推移が測定されかつ評価される。この場合、走行中又は停止中に、すべての周辺対象物112、121、124の数値的な相対速度
【0075】
【数18】

【0076】
が規定の期間dtにわたって数値的な車両速度
【0077】
【数19】

【0078】
又は
【0079】
【数20】

【0080】
と一致する当該の周辺対象物は、「静止する周辺対象物124」として分類される。
【0081】
ある程度の期間にわたる観測が必要であるが、この理由は、周辺対象物124が静止していない場合にも、周辺対象物124が自己車両100の速度に数値的に一致する相対速度を短時間有する可能性があるからである。このことは、観測された周辺対象物、例えば112又は121が、偶然、自己車両100の2倍の速度でその縦方向軸の方向に移動するとき、常に生じることがある。しかし、この状態は、通常、より長い期間にわたっては生じないであろう。特に、自己車両100の速度が変化する場合、生じないであろう。
【0082】
自己車両100の速度vwh_egoが変化するとき、静止していると分類するまでの期間dtの持続時間を短縮することができるが、「静止している周辺対象物124」として分類するための速度条件は引き続き満たされたままであり、すなわち、周辺対象物124の数値的な相対速度は、自己車両の「変更された」車両速度vwh_egoと相応して引き続き同一である。
【0083】
自己車両100の走行中、静止する周辺対象物124は、相対速度及び/又は車間距離に基づきさらに分類される。自己車両100からの距離が大きくなる周辺対象物124は、132で「静止、遠ざかっている」として分類される。自己車両からの距離が短くなる「静止している周辺対象物」は、130で「静止/接近している」として分類される。
【0084】
図2と図3に、クラスによる対応する分類が概略的に示され、この場合、周辺対象物112、121、124は点によって示されている。この場合、図2では、自己車両100から遠ざかる静止している周辺対象物124では、値
【0085】
【数21】

【0086】
であり、クラス132に分類され、一方、クラス130の周辺対象物は、すなわち、「静止、接近している」と分類されない。クラス130と132との間に位置する周辺対象物112、121は、静止している周辺対象物の条件
【0087】
【数22】

【0088】
を満たさない。
【0089】
図3は、静止している周辺対象物124の図2と異なる分類を示している。ここでは、自己車両100は静止している周辺対象物124に接近している。静止している周辺対象物はクラス130に分類される。
【0090】
次に、予防的に作用する保護システム114は、本実施例に設けられた前面センサ111で、次の条件の下に後退走行を算出する。
【0091】
・「静止/遠ざかっている」として分類された周辺対象物124の数が、最後の車両停止状態以降に規定の数を越えている、及び/又は
・最後の車両停止状態の後に周辺対象物124が「静止/遠ざかっている」として分類された期間が、規定の期間を越えている、及び
・最後の車両停止状態の後に周辺対象物124が「静止/接近している」として分類された期間が、規定の期間を下回っている。
【0092】
前述の方法を前面センサによって、同様に、後部に設けられた周辺センサによって実施でき、この場合、遠ざかる又は接近する周辺対象物124に関し逆のロジックが得られることは当然であり、詳細な説明を必要としない。
【0093】
本方法は、接近の際に、前進走行又は逆に後退走行を基準とすることができる。後退走行を起点として前進走行が、あるいは前進走行を起点として後退走行が、周辺信号を評価することによって検出される。
【0094】
別の実施例に従って、例えば、車両が前進又は後退走行しているかどうかが、自己車両100の周囲に存在する他の車両によって検出され、かつ車両同士の通信を介して、情報として自己車両100で利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予防的に作用する保護システム(114)を有する車両の走行方向を検出するための方法であって、
a)車両方向の車両の前の周辺対象物(112、121、124)を検出するステップと、
b)相互の相対位置及び速度に基づき車両(100)と周辺対象物が接触する可能性を算出するステップと、
c)周辺対象物と接触する可能性に関する算出結果に基づき、運転者によらない制動行程及び/又は操舵行程を作動するステップを有する方法において、
別のステップ、すなわち、
e)予防的に作用する保護システム(114)、又は予防的に作用する保護システムと結合された内部又は外部の安全装置(116)を有する、車両の走行方向を算出するステップと、後退走行が検出されたときに、運転者によらない制動行程及び/又は操舵行程を阻止又は中断するステップ、
を特徴とする方法。
【請求項2】
後退走行検出が、縦方向加速度センサ(120)及び/又は周辺センサ(111)の信号に基づき検出されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数の安全装置と少なくとも1つの周辺センサとを含む予防的に作用する保護システムを有する自動車において、車両(100)の走行方向検出部に、予防的に作用する保護システム(114)が設けられ、保護システム(114)が少なくとも1つの後退走行検出装置、好ましくは後退走行を算出するための加速度センサ(120)及び/又は周辺センサ(111)を備えることを特徴とする自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−502515(P2010−502515A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527812(P2009−527812)
【出願日】平成19年9月12日(2007.9.12)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059561
【国際公開番号】WO2008/031837
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(399023800)コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト (162)
【Fターム(参考)】