説明

自車位置特定方法及び自車位置特定装置

【課題】自車位置を高精度に特定することができる自車位置特定方法及び自車位置特定装置を提供する。
【解決手段】ナビゲーションシステム1の制御ユニット2において、道路上又は道路周辺にある各地物の種類及び位置を示す道路地物データを記憶する地図データ記憶部12と、道路地物データに基づき、車両前方に連続して配置された同種類の地物があるか否かを判断するナビゲーションコンピュータ10と、車両に設けられ、互いに異なる角度で車両周辺を撮影するカメラ5,6から画像データを取得する画像プロセッサ15とを備えた。画像プロセッサ15は、ナビゲーションコンピュータ10が連続する同種類の各地物があると判断した場合に、2つのカメラ5,6から取得した画像データに基づき、車両周辺の各地物を検出して、車両から地物までの各相対距離を算出するとともに、算出した各相対距離と道路地物データとに基づき自車位置を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車位置特定方法及び自車位置特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ナビゲーション装置は、GPS(Global positioningsystem)衛星からの受信電波を利用して三角測量に基づき自車両の絶対座標を演算するとともに、車速センサ及びジャイロから受信したパルスに基づく自律航法により自車位置を算出している。さらに、自車両の走行軌跡に基づき、その算出した自車位置と地図データとを比較して、自車位置を道路上の位置に特定するマップマッチングを行っている。
【0003】
一方、最近、高度道路交通システム(ITS;Intelligent Transport Systems)の開
発に伴い、各地点に応じた情報提供や、警告、操作支援等を行うナビゲーションシステムが提案されている。このような情報提供、警告、操作支援を、的確なタイミングで行うには、高精度な自車位置特定機能が必要となる。しかし、GPSや上記した各センサに基づき算出された自車位置は、時々誤差が生じることがある。
【0004】
この課題に対し、特許文献1には、車載カメラを用いて、自車位置を修正するナビゲーション装置が記載されている。このナビゲーション装置は、車載カメラにより、車両前方の背景を撮影する。また、画像認識により交差点シンボル又は道路のエッジ消失点と車両との距離を算出し、この距離を交差点までの距離とする。さらに、地図データに記憶されたその交差点の位置から、交差点までの距離だけ離れた地点に自車位置を修正する。
【特許文献1】特開平9−243389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記したナビゲーション装置では、例えば、横断歩道等の交差点シンボルが連続して設置されている場合、自車位置の特定が困難になることがある。即ち、自車両が、2つの横断歩道の間に存在する場合、カメラが前方の横断歩道のみを撮影すると、一方の横断歩道が車両後方にあるにも関わらず、自車位置が2つの横断歩道の手前にあると誤判断することがある。従って、認識対象の地物が多い場合には、車載カメラを用いても、自車位置が高精度に特定できない虞がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、自車位置を高精度に特定することができる自車位置特定方法及び自車位置特定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両に搭載され、車両前方を撮影する前方撮影装置と車両後方を撮影する後方撮影装置から各画像データをそれぞれ取得する画像データ取得手段と、道路上又は道路周辺にある地物の種類及び位置を示す道路地物データを記憶する道路地物データ記憶手段とを用いて自車位置を特定する自車位置特定方法であって、前記道路地物データに基づき、車両前方に連続して配置された同種類の各地物があるか否かを判断し、連続する同種類の各地物が無いと判断した場合に、前記前方撮影装置及び前記後方撮影装置のうち一方を用いて撮影し、連続する同種類の各地物があると判断した場合に、前記前方撮影装置及び前記後方撮影装置を用いて撮影するとともに、前記画像データ取得手段により取得した前記画像データに基づき、車両周辺の地物を検出し、前記車両から該地物までの相対距離を算出し、該相対距離と前記道路地物データとに基づき自車位置を算出することを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、車両に搭載され、自車位置を特定する自車位置特定装置において、道路上又は道路周辺にある地物の種類及び位置を示す道路地物データを記憶する道路地物データ記憶手段と、前記道路地物データに基づき、車両前方に連続して配置された同種類の各地物があるか否かを判断する判断手段と、車両前方を撮影する前方撮影装置と、車両後方を撮影する後方撮影装置から各画像データをそれぞれ取得する画像データ取得手段と、前記判断手段が、連続する同種類の各地物が無いと判断した場合に、前記前方撮影装置及び前記後方撮影装置のうち一方を用いて撮影し、連続する同種類の各地物があると判断した場合に、前記前方撮影装置及び前記後方撮影装置を用いて撮影する撮影制御手段と、前記撮影装置から取得した前記画像データに基づき、車両周辺の地物を検出し、前記車両から該地物までの相対距離を算出する画像処理手段と、前記画像処理手段により算出された前記車両から前記地物までの相対距離と、前記道路地物データとに基づき、自車位置を算出する自車位置算出手段とを備えたことを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の自車位置特定装置において、前記画像処理手段は、前記判断手段が連続する同種類の各地物があると判断した場合に、前記画像データに基づき、連続する同種類の前記各地物の周辺にある周辺地物を検出し、前記車両から該周辺地物までの相対距離を算出し、前記自車位置算出手段は、前記車両から前記地物及び前記周辺地物までの各相対距離と、前記道路地物データとに基づき、自車位置を算出することを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の自車位置特定装置において、外部装置から受信した位置検出用電波又は車両センサから受信したセンサ信号に基づき自車位置を算出する位置検出手段をさらに備え、前記自車位置算出手段は、前記位置検出手段が算出した自車位置を、前記画像データに基づき算出した自車位置により補正することを要旨とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか1項に記載の自車位置特定装置において、目的地までの案内経路を探索する経路探索手段をさらに備え、前記判断手段は、車両前方の前記案内経路上に、連続して配置された同種類の地物があるか否かを判断することを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、前方撮影装置及び後方撮影装置の少なくとも一方から取得した画像データに基づき、地物の認識及び地物までの相対距離を算出する。また、連続して配置された同種類の地物があり、地物の認識が比較的困難であると予測される場合には、前方撮影装置及び後方撮影装置から画像データを取得する。このため、地物の認識が困難である場所でも、高精度に自車位置を検出できる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、自車位置特定装置は、前方撮影装置及び後方撮影装置の少なくとも一方から取得した画像データに基づき、地物の認識及び地物までの相対距離を算出する。また、連続して配置された同種類の地物があり、地物の認識が比較的困難であると予測される場合には、前方撮影装置及び後方撮影装置から画像データを取得する。このため、地物の認識が困難である場所でも、高精度に自車位置を検出できる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、連続する同種類の地物がある場合には、前方撮影装置及び後方撮影装置から取得した画像データに基づき、連続する同種類の地物の少なくとも一方だけでなく周辺地物も検出する。そして、その地物及び周辺地物と車両との相対距離を算出し、その相対距離及び道路地物データに基づき自車位置を特定する。このため、各地物の判別が困難な場合にも、周辺地物を検出することにより、自車位置を精度よく特定
できる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、外部からの受信電波又は車両センサに基づき算出した自車位置を、画像データに基づき算出した自車位置で補正するので、自車位置をより高精度に特定することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、目的地までの経路上に連続して配置された同種類の地物があるか否かを判断するので、判断対象の地物の数が少なくなり、判断処理を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図7に従って説明する。
図1に示すように、ナビゲーションシステム1は、自車位置特定装置としての制御ユニット2、前方撮影装置としての前方カメラ5、後方撮影装置としての後方カメラ6及びディスプレイ7を備えている。制御ユニット2は、判断手段、撮影制御手段、位置検出手段及び経路探索手段としてのナビゲーションコンピュータ10を備えている。ナビゲーションコンピュータ10は、CPU、RAM、ROM等(図示略)を有し、経路探索プログラム、自車位置特定プログラムを格納している。そして、このプログラムに従って各種処理の主制御を行う。
【0018】
また、制御ユニット2は、GPS受信部11を備え、GPS受信部11はGPS衛星から衛星軌道情報及び時刻情報を受信する。ナビゲーションコンピュータ10は、GPS受信部11により受信した情報に基づき、三角測量の原理を用いて、ナビゲーションシステム1が搭載された車両C(図2参照)の自車位置を算出する。さらに、ナビゲーションコンピュータ10は、車両Cに設けられた車速センサ30から車速パルスを入力し、パルス数をカウントする。また、ナビゲーションコンピュータ10は、ジャイロ31から方位検出信号を入力し、ナビゲーションコンピュータ10に記憶された現在方位を更新する。そして、車速パルス及び方位検出信号に基づき、自律航法により車両Cの位置を算出する。さらに、GPS測位に基づく位置と自律航法により算出された位置とを参照して自車位置を特定する。
【0019】
また、制御ユニット2は、道路地物データ記憶手段としての地図データ記憶部12を備えている。地図データ記憶部12は、内蔵されたハードディスク、又は光ディスク等の外部記憶媒体である。この地図データ記憶部12には、目的地までの経路を探索するための各経路ネットワークデータ(以下、経路データ20という)と、ディスプレイ7に地図画面を出力するための各地図描画データ21とが格納されている。
【0020】
経路データ20は、全国を各区域に区画したリージョン毎のデータであって、ノードデータ、リンクデータ、リンクコスト、接続データ等を有している。ノードデータは、交差点、道路の端点等を示す各ノードの番号等の識別データ、隣接するノードの識別データ等を有している。リンクデータは、リンクIDや、道路種別等を示すデータを有している。リンクコストは、リンク長、平均旅行時間等から構成されるデータ群である。接続データは、各リンクの接続先のリンクを示すデータである。ナビゲーションコンピュータ10は、この経路データを用いて、目的地と現在の自車位置とを接続する案内経路を探索する。
【0021】
図3に示すように、地図描画データ21は、全国の地図を分割したメッシュ21a毎に格納され、広域の地図から狭域の地図まで各階層毎に分かれている。メッシュ21a毎の各描画データ21bは、ヘッダ21c、道路レイヤ21d、背景レイヤ21e、地図属性レイヤ21f、道路地物データ21gを有している。ヘッダ21cは、その描画データ21bの階層、エリア等を示し、管理目的のデータである。道路レイヤ21dは、ノード、
リンクに関するデータ、道路の形状を示す形状補間データ等を示すデータを有している。背景レイヤ21eは、道路、市街地、河川等を描画するためのデータである。地図属性レイヤ21fは、道路名及び道路種別等のデータである。道路地物データ21gは、信号機、道路標示、標識、ガードレール等を含む道路地物に関するデータであって、メッシュ21a内にある道路地物の種類、地物の座標を有している。
【0022】
ナビゲーションコンピュータ10は、自車位置周辺の地図描画データ21を読み出して、その地図描画データ21をディスプレイ7に出力し、地図画面を表示する。また、ディスプレイ7は、感圧式又は静電式のタッチパネルであって、ユーザの入力操作に基づく信号をナビゲーションコンピュータ10に出力する。
【0023】
また図1に示すように、制御ユニット2は、音声プロセッサ13を備えている。音声プロセッサ13は、音声データを格納したメモリや、D/A変換器等(いずれも図示略)を備え、その音声データを適宜読み出して、ナビゲーションシステム1が備えるスピーカ8から、案内音声や警告音を出力する。
【0024】
また、制御ユニット2は、画像データ取得手段、撮影制御手段、画像処理手段及び自車位置算出手段としての画像プロセッサ15を備えている。画像プロセッサ15は、車両Cに設けられた撮影装置としての前方カメラ5及び後方カメラ6から、前方撮影データG1及び後方撮影データG2をそれぞれ取得する。これらの各カメラ5,6は、カラー画像を撮像するデジタルカメラであって、レンズ、ミラー等から構成される光学機構と、CCD撮像素子(いずれも図示略)とを備えている。
【0025】
図2に示すように、前方カメラ5は、車両Cの前端に取り付けられ、車両前方を撮影する。前方カメラ5の撮影範囲は、車両Cから十メートル〜数十メートル前方であって、道路上方に設置された信号機も車両Cから数m以上離間した状態であれば撮影可能である。後方カメラ6は、車両Cの後端に取り付けられ、車両Cの後方背景を撮影する。後方カメラ6の撮影範囲も、車両Cから十メートル〜数十メートル前方であって、車両Cから数m離れた信号機を撮影可能である。
【0026】
画像プロセッサ15は、前方撮影データG1及び後方撮影データG2の少なくとも一方を用いて、道路標示、信号機、標識、ガードレール等の地物を画像認識する。詳述すると、まずナビゲーションコンピュータ10が、地図描画データ21の道路地物データ21gに基づき、自車位置から所定距離(例えば50m〜100m)前方にある地物を検出する。そして、画像認識の対象である地物が、後方カメラ6のみによって認識可能な状態であるか否かを判断する。後方カメラ6のみによって認識可能な状態とは、後方撮影データG2を用いて、エッジ検出、パターンマッチング等により判別可能な種類の地物が、近距離(例えばその地物位置から20m以内)に同種類の地物が存在しない状態である。このとき、信号機や標識は、車両通過後は、信号灯や標識表示面が見えなくなるため、後方カメラ6によってのみ認識可能な種類の地物に含めない。
【0027】
一つのカメラで画像認識可能な地物を画像認識する場合には、画像プロセッサ15は、後方カメラ6のみを起動する。そして、所定のタイミングで後方カメラ6から後方撮影データG2を取得し、取得した後方撮影データG2を画像メモリ16に記憶する。さらに、この後方撮影データG2に基づき、エッジ検出等を行って車両後方の道路標示、ガードレール等を画像認識する。尚、画像認識には、道路に標示された白線を認識するエッジ検出処理、標識や信号機等を予め記憶したテンプレートと比較するパターンマッチング等、公知の画像認識方法を用いることができる。
【0028】
そして、画像認識により地物を検出すると、画像プロセッサ15は、さらにその地物の
位置までの距離を画像処理により算出する。さらに地図描画データ21の道路地物データ21gが有するその地物の絶対座標に、地物までの距離を加算(又は減算)して、自車位置を演算する。そして、ナビゲーションコンピュータ10が算出した自車位置と、画像認識により算出した自車位置とを比較して、所定範囲以上の差分がある場合には、ナビゲーションコンピュータ10が算出した自車位置を画像認識で演算した推定位置にて修正する。これにより、自車位置を高精度に特定することができる。
【0029】
一方、例えば図4に示すように、車両Cの進行方向前方に連続する第1及び第2横断歩道Z1,Z2がある場合、後方カメラ6によって各横断歩道Z1,Z2のいずれかを画像認識しても、画像認識した横断歩道が交差点Jの手前の横断歩道Z1であるのか、交差点Jの先に標示された横断歩道Z2であるのかを正確に判断することができない。また、一つのカメラ6によって撮影された横断歩道が第1横断歩道Z1及び第2横断歩道Z2のどちらかであるかを判断するには、結局GPS受信部11等に基づきナビゲーションコンピュータ10が算出した自車位置を用いなければならず、その自車位置に誤差が生じている場合には、画像認識による自車位置も誤検出してしまう。このように、一つのカメラによる画像認識によって自車位置特定が困難である場合には、画像プロセッサ15は、後方カメラ6だけでなく前方カメラ5を起動する。そして、誤判断が生じやすい第1及び第2横断歩道Z1,Z2だけでなく、第1及び第2横断歩道Z1,Z2周辺の地物を認識対象とする。このとき、第1又は第2横断歩道Z1,Z2から所定距離(例えば50m)以内の地物であって、進行方向において第1及び第2横断歩道Z1,Z2の手前、第1及び第2横断歩道Z1,Z2との間、第1及び第2横断歩道Z1,Z2の先の地物がある場合には、それらの地物を周辺地物とする。
【0030】
例えば図4に示すように、車両前方に2つの連続する横断歩道Z1,Z2を検出した場合、画像プロセッサ15は、各横断歩道Z1,Z2周辺の地物として、交差点J手前に標示されたダイヤマークD、交差点Jに設けられた信号機T、第2横断歩道Z2付近の歩道に設けられたガードレールGを認識対象の周辺地物とする。そして、画像プロセッサ15は、前方カメラ5及び後方カメラ6の同期をとって同じタイミングで撮影を行い、前方撮影データG1及び後方撮影データG2をそれぞれ入力する。各撮影データG1,G2を入力すると、画像プロセッサ15はそれらの撮影データG1,G2を画像メモリ16に記憶し、地物を画像認識する。
【0031】
例えば、図4に示すように、第1及び第2横断歩道Z1,Z2が車両前方にある場合、画像プロセッサ15は、前方カメラ5及び後方カメラ6を起動している。そして、図4のように車両Cが第1横断歩道Z1に接近すると、前方カメラ5は車両前方の第1横断歩道Z1を撮影し、後方カメラ6は車両後方のダイヤマークDを撮影する。画像プロセッサ15は、前方撮影データG1に基づき第1横断歩道Z1を検出し、後方撮影データG2に基づきダイヤマークDを検出する。また、前方撮影データG1及び後方撮影データG2を画像処理して、第1横断歩道Z1及びダイヤマークDまでの各相対距離をそれぞれ算出する。さらに、道路地物データ21gのうち、第1横断歩道Z1及びダイヤマークDの道路地物データ21gを読み出して、第1横断歩道Z1及びダイヤマークDの座標を取得する。そして、それらの第1横断歩道Z1及びダイヤマークDの座標に、画像処理により算出した各相対距離をそれぞれ加算(又は減算)して、自車位置を特定する。
【0032】
一方、図5に示すように、車両Cが、2つの横断歩道Z1,Z2の間に到達すると、前方カメラ5は車両前方の信号機Tを撮影し、後方カメラ6は、車両後方の第1横断歩道Z1を撮影する。画像プロセッサ15は、前方撮影データG1に基づき信号機Tを検出するとともに、後方撮影データG2に基づき第1横断歩道Z1を検出する。これにより、自車位置が第1横断歩道Z1と、信号機Tとの間にあると判断することができる。さらに、前方撮影データG1及び後方撮影データG2に基づき、第1横断歩道Z1及び信号機Tまで
の相対距離を算出する。そして、道路地物データ21gのうち、第1横断歩道Z1及び信号機Tの道路地物データ21gを読出し、第1横断歩道Z1及び信号機Tの座標に、算出した各相対距離を加算(又は減算)して、車両位置を特定する。
【0033】
さらに車両Cが走行し、図6に示すように、第2横断歩道Z2を通過すると、前方カメラ5は車両前方のガードレールGを撮影し、後方カメラ6は車両後方の第2横断歩道Z2を撮影する。画像プロセッサ15は、前方撮影データG1に基づき、ガードレールGを検出するとともに、後方撮影データG2に基づき第2横断歩道Z2を検出する。この場合も、前方撮影データG1及び後方撮影データG2に基づき、ガードレールG及び第2横断歩道Z2までの各相対距離をそれぞれ算出する。さらに、ガードレールG及び第2横断歩道Z2の座標を道路地物データ21gから読み出し、それらの座標に各相対距離を加算(又は減算)して、自車位置を特定する。
【0034】
次に、本実施形態の処理手順について図7に従って説明する。ナビゲーションコンピュータ10は、画像認識を開始するか否かを判断する(ステップS1)。画像認識の開始トリガは、例えば車両のイグニッションモジュールからオン信号、ディスプレイ7に隣設された操作スイッチ9の押釦に応じた信号、タッチパネル操作により出力される信号等である。ナビゲーションコンピュータ10は、開始トリガを入力すると、画像認識を開始すると判断して(ステップS1においてYES)、ステップS2に進む。
【0035】
ステップS2では、ナビゲーションコンピュータ10は、自車位置特定プログラムに従って、地図描画データ21の道路レイヤ21dに基づき、自車位置が道路上に適切にマッチングしているか否かを判断する。マップマッチングできていると判断した場合には(ステップS2においてYES)、ステップS3に進む。マップマッチングできていない場合には(ステップS2においてNO)、ステップS9に進み、画像認識終了であるか否かを判断する。
【0036】
ステップS3では、ナビゲーションコンピュータ10は、画像認識による自車位置特定のために、GPS受信部11、車速センサ30及びジャイロ31に基づき逐次更新している自車位置を、図示しないメモリ等から取得する。さらに、ナビゲーションコンピュータ10は、取得した自車位置に基づき、自車位置周辺の道路地物データ21gを、地図描画データ21から取得する(ステップS4)。例えばこのとき、自車位置を中心とした所定距離(例えば50m〜100m)内の道路地物データ21g、又は進行方向において所定距離内の道路地物データ21g等を取得する。
【0037】
さらに、ナビゲーションコンピュータ10は、取得した道路地物データ21gに基づき、車両前方に地物があるか否かを判断する(ステップS5)。本実施形態では、通常時の画像認識では、後方カメラ6のみを起動しているので、このステップS5では、車両前方の地物のうち、例えば道路標示やガードレールといった、後方カメラ6で認識可能な地物を認識対象の地物とする。
【0038】
車両前方に、後方カメラ6で認識可能な地物があると判断すると(ステップS5においてYES)、一つのカメラ6を用いた自車位置特定が困難であるか否かを判断する(ステップS6)。上記したように、車両前方に、連続する第1及び第2横断歩道Z1,Z2等、連続する同種類の地物がある場合、ナビゲーションコンピュータ10は、後方カメラ6のみでは自車位置を特定困難な状態であると判断し(ステップS6においてYES)、ステップS7に進む。
【0039】
ステップS7では、ナビゲーションコンピュータ10及び画像プロセッサ15は、上記したように、複数のカメラ5,6を用いた画像認識を行う。まず、ナビゲーションコンピ
ュータ10は、自車位置周辺の道路地物データ21gのうち、特定困難であると判断した地物と、その周囲にある地物(以下、周辺地物という)の道路地物データ21gを検出する。ここでは、後方カメラ6で撮影可能な道路標示、ガードレールG等だけでなく、前方カメラ5により認識可能な信号機T、標識等の地物に関するデータも検出する。
【0040】
周辺地物を検出すると、画像プロセッサ15は、前方撮影データG1及び後方撮影データG2を取得し、それらの前方撮影データG1及び後方撮影データG2に対して、エッジ検出、パターンマッチング等を行い、特定困難な地物及び周辺地物が検出されたか否かを判断する。それらの地物が検出されると、画像プロセッサ15は、車両Cから各地物までの各相対距離をそれぞれ算出する。また、道路地物データ21gのうち、それらの地物の座標を読み出し、各座標に各相対距離を加算又は減算して、自車位置を特定する。例えば、図4に示すように、自車位置が、連続する第1及び第2横断歩道Z1,Z2の手前にある場合、ダイヤマークD及び第1横断歩道Z1を画像認識することにより、自車位置を第1及び第2横断歩道Z1,Z2の手前の位置に特定することができる。
【0041】
図5に示すように、自車位置が、第1横断歩道Z1及び第2横断歩道Z2の間にある場合には、各カメラ5,6により、信号機Tと第1横断歩道Z1とを画像認識することにより、自車位置を第1横断歩道Z1及び第2横断歩道Z2の間に特定することができる。図6に示すように、車両Cが第2横断歩道Z2を通過した場合、各カメラ5,6により、ガードレールGと第2横断歩道Z2とを画像認識することにより、自車位置を進行方向において第2横断歩道Z2の先に特定することができる。
【0042】
一方、図7に示すステップS6において、連続して配置された同種類の地物がなく、一つのカメラ6で自車位置を特定できると判断した場合には(ステップS6においてNO)、後方カメラ6のみを用いた画像認識を行う(ステップS8)。このとき、画像プロセッサ15は、後方撮影データG2に対しエッジ検出、パターンマッチング等を行い、道路標示やガードレールG等を認識し、自車位置を特定する。そして、GPS受信部11、車速センサ30、ジャイロ31に基づく自車位置と比較して、所定範囲以上の誤差がある場合には、画像認識により算出した自車位置によって修正する。
【0043】
自車位置を特定すると(ステップS7,S8)、ナビゲーションコンピュータ10は、画像認識による自車位置特定を終了するか否かを判断する(ステップS9)。例えば、終了トリガは、イグニッションモジュールのオフ信号、操作スイッチ9の押釦に基づく信号、タッチパネル操作に基づく信号である。終了トリガを入力すると、ナビゲーションコンピュータ10は、画像認識による自車位置特定を終了すると判断して(ステップS9においてYES)、処理を終了する。終了トリガを入力しない場合には(ステップS9においてNO)、ステップS2に戻る。
【0044】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、ナビゲーションシステム1の制御ユニット2は、道路上又は道路周辺にある各地物の種類及び位置を示す道路地物データ21gを地図描画データ21に記憶するようにした。また、ナビゲーションコンピュータ10は、道路地物データ21gに基づき、車両前方に連続して配置された同種類の地物があるか否かを判断し、連続する同種類の各地物がないと判断した場合に、後方カメラ6のみを用いて地物を画像認識し、自車位置を特定するようにした。また、連続する同種類の各地物があると判断した場合に、前方カメラ5及び後方カメラ6を起動して、車両Cの前方及び後方の地物を画像認識して、自車位置を特定するようにした。このため、連続する同種類の地物がある場所では、車両Cの前後方の地物を検出することにより、高精度に自車位置を検出できる。また、一つのカメラ6のみで自車位置を特定できる場合には、前方カメラ5を起動しないので、2つのカメラ5,6による画像認識の実行頻度を必要最小限とし、ナビゲーションシステ
ム1の負荷を軽減することができる。また、カメラ5,6による画像認識により算出した自車位置と、GPS受信部11、車速センサ30及びジャイロ31により算出した自車位置とが異なる場合には、画像認識により算出した自車位置によって修正するようにしたので、自車位置をより高精度に特定することができる。
【0045】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、一つのカメラを用いて車両Cとの前後関係を判断可能な地物を画像認識する場合に、後方カメラ6を用いて撮影したが、前方カメラ5のみを用いて撮影してもよい。
【0046】
・上記実施形態では、カメラ5,6を用いて画像認識する地物を、道路標示、道路周辺に設けられた信号機T、ガードレールG、標識としたが、他の物にしてもよい。例えば、橋や線路等の改造されにくい建造物等を認識対象の地物にするようにしてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、車両前方の地物を検出するようにしたが、図8に示すように、ナビゲーションコンピュータ10が目的地までの経路Rtを探索している場合には、進行方向前方であって、その経路Rt上又は経路Rt周辺の地物を検出するようにしてもよい。そして、経路Rt上に、例えば連続する横断歩道Z1,Z3が検出された場合に、その周辺の歩行者用信号機Ta等を周辺地物として画像認識する。このようにすると経路Rt周辺の地物のみを検出すればよいので、ナビゲーションシステム1の負荷を軽減できる。
【0048】
・上記実施形態では、車両前端に前方カメラ5を設け、車両後端に後方カメラ6を設けるようにしたが、車両前方及び車両後方をそれぞれ撮影可能な位置であれば、その他の位置に設けるようにしてもよい。例えば前方カメラ5は、車両Cのルーフ上に設けるようにしてもよいし、後方カメラ6を光軸を車両後方に向けてサイドミラーに取り付けるようにしてもよい。
【0049】
・上記実施形態では、連続する同種類の地物を検出した場合に、その周辺にある周辺地物までの相対距離を取得し、この相対距離を自車位置特定に用いるようにしたが、連続する同種類の地物及び周辺地物の画像認識に基づき、少なくとも車両Cと連続する同種類の地物との前後関係を判定してもよい。このとき、車両Cと連続する同種類の地物との前後関係に基づき、該地物と車両Cとの相対距離を算出し、その相対距離と道路地物データ21gに基づき自車位置を算出してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態のナビゲーションシステムのブロック図。
【図2】カメラの取付位置の説明図。
【図3】地図描画データのデータ構成の説明図。
【図4】連続する同種類の各地物及びその手前にある車両の説明図。
【図5】連続する同種類の各地物及びその中間にある車両の説明図。
【図6】連続する同種類の各地物及び各地物を通過した車両の説明図。
【図7】本実施形態の処理手順の説明図。
【図8】別例の地物を検出する手順の説明図。
【符号の説明】
【0051】
1…ナビゲーションシステム、2…自車位置特定装置としての制御ユニット、5…前方撮影装置としての前方カメラ、6…後方撮影装置としての後方カメラ、10…判断手段、撮影制御手段、位置検出手段、経路探索手段としてのナビゲーションコンピュータ、12…道路地物データ記憶手段としての地図データ記憶部、15…画像データ取得手段、撮影制御手段、画像処理手段及び自車位置算出手段としての画像プロセッサ、21g…道路地
物データ、C…車両、G…地物、周辺地物としてのガードレール、IM…画像データ、Rt…経路、T…地物、周辺地物としての信号機、Ta…地物、周辺地物としての歩行者用信号機、Z1…地物としての第1横断歩道、Z2…地物としての第2横断歩道、Z3…地物としての横断歩道。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、車両前方を撮影する前方撮影装置と車両後方を撮影する後方撮影装置から各画像データをそれぞれ取得する画像データ取得手段と、道路上又は道路周辺にある地物の種類及び位置を示す道路地物データを記憶する道路地物データ記憶手段とを用いて自車位置を特定する自車位置特定方法であって、
前記道路地物データに基づき、車両前方に連続して配置された同種類の各地物があるか否かを判断し、連続する同種類の各地物が無いと判断した場合に、前記前方撮影装置及び前記後方撮影装置のうち一方を用いて撮影し、連続する同種類の各地物があると判断した場合に、前記前方撮影装置及び前記後方撮影装置を用いて撮影するとともに、
前記画像データ取得手段により取得した前記画像データに基づき、車両周辺の地物を検出し、前記車両から該地物までの相対距離を算出し、該相対距離と前記道路地物データとに基づき自車位置を算出することを特徴とする自車位置特定方法。
【請求項2】
車両に搭載され、自車位置を特定する自車位置特定装置において、
道路上又は道路周辺にある地物の種類及び位置を示す道路地物データを記憶する道路地物データ記憶手段と、
前記道路地物データに基づき、車両前方に連続して配置された同種類の各地物があるか否かを判断する判断手段と、
車両前方を撮影する前方撮影装置と、車両後方を撮影する後方撮影装置から各画像データをそれぞれ取得する画像データ取得手段と、
前記判断手段が、連続する同種類の各地物が無いと判断した場合に、前記前方撮影装置及び前記後方撮影装置のうち一方を用いて撮影し、連続する同種類の各地物があると判断した場合に、前記前方撮影装置及び前記後方撮影装置を用いて撮影する撮影制御手段と、
前記撮影装置から取得した前記画像データに基づき、車両周辺の地物を検出し、前記車両から該地物までの相対距離を算出する画像処理手段と、
前記画像処理手段により算出された前記車両から前記地物までの相対距離と、前記道路地物データとに基づき、自車位置を算出する自車位置算出手段と
を備えたことを特徴とする自車位置特定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の自車位置特定装置において、
前記画像処理手段は、前記判断手段が連続する同種類の各地物があると判断した場合に、前記画像データに基づき、連続する同種類の前記各地物の周辺にある周辺地物を検出し、前記車両から該周辺地物までの相対距離を算出し、
前記自車位置算出手段は、前記車両から前記地物及び前記周辺地物までの各相対距離と、前記道路地物データとに基づき、自車位置を算出することを特徴とする自車位置特定装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の自車位置特定装置において、
外部装置から受信した位置検出用電波又は車両センサから受信したセンサ信号に基づき自車位置を算出する位置検出手段をさらに備え、
前記自車位置算出手段は、前記位置検出手段が算出した自車位置を、前記画像データに基づき算出した自車位置により補正することを特徴とする自車位置特定装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の自車位置特定装置において、
目的地までの案内経路を探索する経路探索手段をさらに備え、
前記判断手段は、車両前方の前記案内経路上に、連続して配置された同種類の地物があるか否かを判断することを特徴とする自車位置特定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−157636(P2008−157636A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343349(P2006−343349)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】