説明

薄膜トランジスタとその作製方法

【課題】ドレイン電流のオン/オフ比が高く維持されつつ、光電流とオフ電流が十分に小さい薄膜トランジスタを提供することを課題とする。
【解決手段】ゲート電極層と、ゲート電極層を覆って設けられたゲート絶縁層と、ゲート電極層と全面が重畳して設けられた第1の半導体層と、第1の半導体層上に接して設けられ、前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、第2の半導体層に接して設けられた不純物半導体層と、少なくとも前記第1の半導体層の側壁を覆って設けられたサイドウォール絶縁層と、少なくとも前記不純物半導体層に接して設けられたソース電極及びドレイン電極層と、を有する薄膜トランジスタとする。第2の半導体層は、第1の半導体層上に離間して設けられていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
薄膜トランジスタ及びその作製方法に関する。更には、該薄膜トランジスタを有し、該薄膜トランジスタの作製方法を適用することができる表示装置、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、絶縁性表面を有する基板(例えば、ガラス基板)上の半導体薄膜(厚さ数nm以上数百nm以下程度)によって構成された、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)が注目されている。TFTは、例えば、液晶表示装置などの表示装置のスイッチング素子として開発が急がれている。TFTには、主に非晶質半導体または多結晶半導体が用いられ、更には微結晶半導体を用いたものも知られている(例えば、特許文献1)。表示装置では、搭載するTFTのスイッチング特性が表示品質や消費電力に影響する。
【0003】
TFTのスイッチング特性を評価するパラメータの1つに電流のオン/オフ比が挙げられる。電流のオン/オフ比を高くするには、オン電流を大きくし、オフ電流を小さくすればよい。
【0004】
なお、本明細書において、「オン/オフ比」とは、TFTのオフ電流に対するオン電流の比をいう。「オフ電流」とは、TFTがオフしているときのドレイン電流をいい、「オン電流」とは、TFTがオンしているときにソースとドレインの間に流れる電流をいう。そして、本明細書において、「ドレイン電流」とは、ソースとドレインの間に流れる電流をいう。
【0005】
ところで、オフ電流の経路の一として、ソース電極及びドレイン電極の一方から半導体層を経てソース電極及びドレイン電極の他方に至る経路が挙げられる。このオフ電流は、半導体層側壁に接するサイドウォール絶縁層を設けることで抑制することができる(例えば、特許文献2)。
【0006】
ただし、TFTは、オン/オフ比が大きければ十分というわけではなく、光リーク電流を低減することなども重要である。ここで、光リーク電流とは、TFTの半導体層に光が照射されることで、光起電効果により生じる、ソースとドレインの間に流れる電流をいう。特に、液晶表示装置の画素トランジスタとして用いられるTFTには、バックライトの光が基板側から照射されるため、光リーク電流を十分に低く抑える必要がある。そのため、TFTの半導体層を遮光するための技術開発が数多くなされてきた(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−044134号公報
【特許文献2】特開平01−117068号公報
【特許文献3】特開平10−020298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、光リーク電流が抑制され、オン/オフ比が高いTFTを提供することを課題とする。
【0009】
更には、本発明の一態様は、光リーク電流が抑制され、オン/オフ比が高いTFTを簡略に作製する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、少なくともチャネル形成領域が結晶性半導体により設けられたTFTであって、該結晶性半導体は、全面がゲート電極と重畳することで遮光され、少なくとも該結晶性半導体の側面にはサイドウォール絶縁層が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様は、第1の配線層と、前記第1の配線層を覆って設けられた絶縁層と、前記第1の配線層と全面が重畳して設けられた第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に接して設けられ、前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、前記第2の半導体層に接して設けられた不純物半導体層と、少なくとも前記第1の半導体層の側壁を覆って設けられたサイドウォール絶縁層と、少なくとも前記不純物半導体層に接して設けられた第2の配線層と、を有することを特徴とするTFTである。
【0012】
または、本発明の一態様は、第1の配線層と、前記第1の配線層を覆って設けられた絶縁層と、前記第1の配線層と全面が重畳して設けられた第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に接して離間して設けられ、前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、前記第2の半導体層に接して設けられた不純物半導体層と、少なくとも前記第1の半導体層の側壁を覆って設けられたサイドウォール絶縁層と、少なくとも前記不純物半導体層に接して設けられた第2の配線層と、を有することを特徴とするTFTである。
【0013】
または、本発明の一態様は、第1の配線層を形成し、前記第1の配線層を覆って絶縁層を形成し、前記第1の配線層と重畳して第1の半導体層と、前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、不純物半導体層と、を積層した半導体島を形成し、前記半導体島を覆って絶縁膜を形成し、前記絶縁膜を異方性エッチングして前記不純物半導体層を露出させることで、少なくとも前記第1の半導体層の側壁を覆うサイドウォール絶縁層を形成し、前記不純物半導体層及び前記サイドウォール絶縁層上に第2の配線層を形成し、前記第2の半導体層及び前記不純物半導体層の一部をエッチングすることでソース領域及びドレイン領域を形成することを特徴とするTFTの作製方法である。
【0014】
または、本発明の一態様は、第1の配線層を形成し、前記第1の配線層を覆って絶縁層を形成し、前記第1の配線層と重畳して第1の半導体層と、前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、不純物半導体層と、を積層した半導体島を形成し、前記半導体島を覆って第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜を形成し、前記第2の絶縁膜を異方性エッチングして前記第1の絶縁膜を露出させることで第1のサイドウォール絶縁層を形成し、前記第1のサイドウォール絶縁層と重畳していない部分の第1の絶縁膜をエッチングして前記不純物半導体層を露出させることで、第1のサイドウォール絶縁層とともに少なくとも第1の半導体層の側壁を覆う第2のサイドウォール絶縁層を形成し、前記不純物半導体層及び前記第2のサイドウォール絶縁層上に第2の配線層を形成し、前記第2の半導体層及び前記不純物半導体層の一部をエッチングすることでソース領域及びドレイン領域を形成することを特徴とするTFTの作製方法である。
【0015】
なお、本明細書において、「膜」とは、CVD法(プラズマCVD法などを含む)またはスパッタリング法などにより、被形成面の全面に形成されたものをいう。一方で、「層」とは、「膜」が加工されて形成されたもの、または被形成面の全面に形成されて加工を要しないものをいう。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様であるTFTによれば、光リーク電流が抑制され、オン/オフ比が高いTFTを得ることができる。
【0017】
本発明の一態様であるTFTの作製方法によれば、光リーク電流が抑制され、オン/オフ比が高いTFTを簡略に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1のTFTを説明する図。
【図2】第1の配線層と半導体層が重畳しているか否かによるI−V曲線の違いを比較する図。
【図3】第1の半導体層の有無によるI−V曲線の違いを比較する図。
【図4】サイドウォール絶縁層の有無によるI−V曲線の違いを比較する図。
【図5】図4(A)のI−V曲線が得られたTFTについてのSTEM像。
【図6】図1のTFTの作製方法を説明する図。
【図7】図1のTFTの作製方法を説明する図。
【図8】図1のTFTの作製方法を説明する図。
【図9】実施の形態3のTFTを説明する図。
【図10】図9のTFTの作製方法を説明する図。
【図11】実施の形態5のTFTを説明する図。
【図12】図11のTFTの作製方法を説明する図。
【図13】実施の形態7のTFTを説明する図。
【図14】図13のTFTの作製方法を説明する図。
【図15】表示装置のアレイ基板の作製方法の一例を説明する図。
【図16】表示装置のアレイ基板に設けるTFTの一例を説明する図。
【図17】電子機器を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。また、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さないことがある。また、便宜上、絶縁層は上面図には表さないことがある。ただし、サイドウォール絶縁層については上面図に表すものとする。
【0020】
(実施の形態1)
本実施の形態は、本発明の一態様であるTFTの一構成例について説明する。
【0021】
図1には、本実施の形態のTFTの断面図(上面図のX−Yにおけるもの)及び上面図が示されている。図1に示すTFTは、基板100上に設けられ、第1の配線層102と、第1の配線層102を覆って設けられた絶縁層104と、第1の配線層102と全面が重畳して設けられた第1の半導体層106と、第1の半導体層106上に接して設けられ、第1の半導体層106よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層108と、第2の半導体層108に接して設けられた不純物半導体層110と、少なくとも第1の半導体層106の側壁を覆って設けられた上部サイドウォール絶縁層112と、少なくとも不純物半導体層110に接して設けられた第2の配線層114と、を有することを特徴とする。更には、第1の配線層102に起因して生じる絶縁層104の段差に下部サイドウォール絶縁層113が設けられている。
【0022】
上部サイドウォール絶縁層112及び下部サイドウォール絶縁層113によりこれらよりも上に設けられる層の被覆性が向上するため、第1の半導体層106と第2の半導体層108をテーパ形状に加工しなくてもよい。従って、第1の半導体層106及び第2の半導体層108の側面では、テーパ角が60°以上90°以下であってもよい。
【0023】
基板100は、絶縁性基板である。基板100として、例えば、ガラス基板または石英基板を用いることができる。本実施の形態においては、ガラス基板を用いる。基板100がマザーガラスである場合には、第1世代(例えば、320mm×400mm)〜第10世代(例えば、2950mm×3400mm)のものを用いればよいが、これに限定されるものではない。
【0024】
第1の配線層102は、導電性材料(例えば金属、または一導電型の不純物元素が添加された半導体など)により形成すればよい。なお、単層で形成してもよいし、複数の層を積層して形成してもよい。ここでは、例えば、チタン層によりアルミニウム層を挟持した3層の積層構造として形成する。なお、第1の配線層102は、少なくとも走査線とゲート電極を構成する。
【0025】
絶縁層104は、絶縁性材料(例えば、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは酸化シリコンなど)により形成すればよい。なお、単層で形成してもよいし、複数の層を積層して形成してもよい。ここでは、例えば、窒化シリコン層上に酸化窒化シリコン層が積層された2層の積層構造として形成する。なお、絶縁層104は、少なくともゲート絶縁層を構成する。
【0026】
なお、「酸化窒化シリコン」とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多いものであって、好ましくは、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)及び水素前方散乱法(HFS:Hydrogen Forward Scattering)を用いて測定した場合に、組成範囲として酸素が50〜70原子%、窒素が0.5〜15原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が0.1〜10原子%の範囲で含まれるものをいう。
【0027】
なお、「窒化酸化シリコン」とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものであって、好ましくは、RBS及びHFSを用いて測定した場合に、組成範囲として酸素が5〜30原子%、窒素が20〜55原子%、シリコンが25〜35原子%、水素が10〜30原子%の範囲で含まれるものをいう。ただし、酸化窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンを構成する原子の合計を100原子%としたとき、窒素、酸素、シリコン及び水素の含有比率が上記の範囲内に含まれるものとする。
【0028】
第1の半導体層106は、キャリア移動度の高い半導体材料により形成するとよい。キャリア移動度の高い半導体材料として、例えば、結晶性半導体が挙げられる。結晶性半導体として、例えば、微結晶半導体が挙げられる。ここで、微結晶半導体とは、非晶質と結晶構造(単結晶、多結晶を含む)の中間的な構造の半導体をいう。微結晶半導体は、自由エネルギー的に安定な第3の状態を有する半導体であって、短距離秩序を持ち格子歪みを有する結晶質な半導体であり、結晶粒径が2nm以上200nm以下、好ましくは10nm以上80nm以下、より好ましくは、20nm以上50nm以下の柱状結晶または針状結晶が基板表面に対して法線方向に成長している半導体である。このため、柱状結晶または針状結晶の界面には、結晶粒界が形成されることもある。
【0029】
微結晶半導体の一である微結晶シリコンでは、そのラマンスペクトルのピークが単結晶シリコンを示す520cm−1よりも低波数側にシフトしている。すなわち、単結晶シリコンを示す520cm−1とアモルファスシリコンを示す480cm−1の間に微結晶シリコンのラマンスペクトルのピークがある。また、未結合手(ダングリングボンド)を終端するため水素またはハロゲンを少なくとも1原子%またはそれ以上含ませている。さらに、He、Ar、Kr、またはNeなどの希ガス元素を含ませて格子歪みをさらに助長させることで、安定性が増し良好な微結晶半導体が得られる。
【0030】
また、第1の半導体層106に含まれる酸素及び窒素の濃度(二次イオン質量分析法による測定値)を、1×1018cm−3未満とすると、第1の半導体層106の結晶性を高めることができる。
【0031】
第2の半導体層108は、バッファ層として機能するためキャリア移動度の低い半導体材料により形成するとよく、好ましくは、非晶質半導体と微小半導体結晶粒を有し、従来の非晶質半導体と比較して、一定光電流法(CPM:Constant Photocurrent Method)やフォトルミネッセンス分光測定で測定されるUrbach端のエネルギーが小さく、欠陥吸収スペクトル量が少ない半導体層である。すなわち、このような半導体層は、従来の非晶質半導体と比較して欠陥が少なく、価電子帯のバンド端(移動度端)における準位のテイル(裾)の傾きが急峻である秩序性の高い半導体層である。なお、本明細書において、このような半導体層を「非晶質半導体を含む層」と記載することとする。
【0032】
第2の半導体層108は、「非晶質半導体を含む層」、ハロゲンを含有する「非晶質半導体を含む層」、または窒素を含有する「非晶質半導体を含む層」、最も好ましくはNH基若しくはNH基を含有する「非晶質半導体を含む層」とするとよい。ただし、これらに限定されない。
【0033】
第1の半導体層106と第2の半導体層108の界面領域は、微結晶半導体領域、及び当該微結晶半導体領域の間に充填される非晶質半導体を有する。具体的には、第1の半導体層106から伸びた錐形状の微結晶半導体領域と、第2の半導体層108と同様の「非晶質半導体を含む層」と、で構成される。
【0034】
第2の半導体層108を、例えば、「非晶質半導体を含む層」、ハロゲンを含有する「非晶質半導体を含む層」、または窒素を含有する「非晶質半導体を含む層」、またはNH基若しくはNH基を含有する「非晶質半導体を含む層」とすると、TFTのオフ電流を低減することができる。また、上記の界面領域において、錐形状の微結晶半導体領域を有するため、縦方向(膜厚方向)の抵抗、すなわち、第2の半導体層108と、不純物半導体層110により構成されるソース領域またはドレイン領域と、の間の抵抗を低くすることができ、TFTのオン電流を高めることができる。
【0035】
なお、第1の半導体層106が薄くなるとオン電流が低下し、第1の半導体層106が厚くなると第1の半導体層106と第2の配線層114の接触面積が増大し、オフ電流が増大する。
【0036】
上記の微結晶半導体領域は、絶縁層104から第2の半導体層108に向かって幅が狭くなる錐形状の結晶粒により大部分が構成されているとよい。または、絶縁層104から第2の半導体層108に向かって幅が広がる結晶粒により大部分が構成されていてもよい。
【0037】
上記の界面領域において、微結晶半導体領域が絶縁層104から第2の半導体層108に向かって幅が狭くなる錐形状の結晶粒で構成される場合には、第1の半導体層106側のほうが、第2の半導体層108側と比較して、微結晶半導体領域の占める割合が高い。微結晶半導体領域は、第1の半導体層106の表面から厚さ方向に成長するが、原料ガスにおいてシランに対する水素の流量が小さく(すなわち、希釈率が低く)、または窒素を含む原料ガスの濃度が高いと、微結晶半導体領域における結晶成長が抑制され、結晶粒が錐形状になり、堆積されて形成される半導体は、大部分が非晶質となる。
【0038】
なお、上記の界面領域は、窒素、特にNH基若しくはNH基を含有することが好ましい。これは、微結晶半導体領域に含まれる結晶の界面、微結晶半導体領域と非晶質半導体領域の界面において、窒素、特にNH基若しくはNH基がシリコン原子のダングリングボンドと結合すると、欠陥を低減させ、キャリアが流れやすくなるためである。このため、窒素、好ましくはNH基若しくはNH基を1×1020cm−3乃至1×1021cm−3とすることで、シリコン原子のダングリングボンドを窒素、好ましくはNH基若しくはNH基で架橋しやすくなり、キャリアが流れやすくなる。この結果、結晶粒界や欠陥におけるキャリアの移動を促進する結合ができ、上記の界面領域のキャリア移動度が向上する。そのため、TFTの電界効果移動度が向上する。
【0039】
なお、上記の界面領域の酸素濃度を低減させることにより、微結晶半導体領域と非晶質半導体領域の界面または結晶粒間の界面における欠陥を低減させ、キャリアの移動を阻害する結合を低減させることができる。
【0040】
絶縁層104の界面から第2の半導体層108の錐形状の結晶粒の先端までの距離を3nm以上80nm以下、好ましくは5nm以上30nm以下とすることで、TFTのオフ電流を効果的に抑制することができる。
【0041】
不純物半導体層110は、一導電型を付与する不純物元素を添加した半導体により形成する。TFTがn型である場合には、一導電型を付与する不純物元素として、例えば、PまたはAsが挙げられる。TFTがp型である場合には、一導電型を付与する不純物元素として、例えば、Bを添加することも可能であるが、TFTはn型とすることが好ましい。そのため、ここでは、例えば、Pを添加したシリコンを用いる。なお、不純物半導体層110は非晶質半導体により形成してもよいし、微結晶半導体などの結晶性半導体により形成してもよい。
【0042】
不純物半導体層110を非晶質半導体により形成する場合には、堆積性ガスの流量に対する希釈ガスの流量を1倍以上10倍以下、好ましくは1倍以上5倍以下とすればよい。不純物半導体層110を結晶性半導体により形成する場合には、堆積性ガスの流量に対する希釈ガスの流量を10倍以上2000倍以下、好ましくは50倍以上200倍以下とすればよい。
【0043】
上部サイドウォール絶縁層112は、絶縁層104と同様に、絶縁性材料(例えば、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは酸化シリコンなど)により形成すればよい。または、非晶質シリコンにより形成してもよい。ここでは、例えば、酸化窒化シリコン層を形成する。
【0044】
下部サイドウォール絶縁層113は、上部サイドウォール絶縁層112と同じ材料により形成すればよく、同一の工程によって形成することができる。下部サイドウォール絶縁層113により、第1の配線層102に起因して生じる絶縁層104の段差が緩和され、第2の配線層114の被覆性を良好なものとすることができる。更には、第1の配線層102と第2の配線層114の間隔を十分なものとすることができ、寄生容量を低減することができる。
【0045】
第2の配線層114は、第1の配線層102と同様に、導電性材料(例えば金属、または一導電型の不純物元素が添加された半導体など)により形成すればよい。なお、単層で形成してもよいし、複数の層を積層して形成してもよい。ここでは、例えば、チタン層によりアルミニウム層を挟持した3層の積層構造として形成する。なお、第2の配線層114は、少なくとも信号線、ソース電極及びドレイン電極を構成する。
【0046】
ここで、図1に示すTFTの構造について説明する。
【0047】
図1に示すTFTは、第1の半導体層106としてキャリア移動度の高い半導体層が設けられ、第2の半導体層108としてキャリア移動度の低い半導体層が設けられているため、オン電流を大きく、オフ電流を小さくすることができる。オン電流の主な経路は第1の半導体層106であり、オフ電流の主な経路は第2の半導体層108であるからである。
【0048】
更には、図1に示すTFTは、少なくとも第1の半導体層106の側壁を覆って上部サイドウォール絶縁層112が設けられているため、オフ電流を更に小さくすることができる。
【0049】
ところで、TFTの光照射下におけるオフ電流の増大(光電流の増大)を抑えるには、第1の半導体層106の基板100側を遮光する必要がある。ただし、遮光のための層を設けるなどして作製工程を増やすと生産性が低下してしまう。そのため、ゲート電極として機能する第1の配線層102が、第1の半導体層106を遮光するとよい。
【0050】
ここで、図1に示すTFTは、第1の半導体層106の全面が第1の配線層102と重畳しているため、基板100側からの光による光電流の影響が抑えられる。
【0051】
図2(A)は、図1のTFT(サイドウォール絶縁層は設けられていない)についてのゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idの変化を表す。図2(B)は、第1の配線層102により構成されるゲート電極が狭く、少なくとも第1の半導体層106の端部の一部が第1の配線層102と重畳せず、はみ出しているTFTについてのゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idの変化を表す。なお、ここで、図2(A)及び図2(B)は、基板100側から光を照射せずに測定を行った結果である。
【0052】
なお、本明細書において、「ゲート電圧」とは、ソースの電位に対するゲートの電位の電位差をいう。
【0053】
図2(A)と図2(B)を比較すると、図2(A)ではゲート電圧Vgがマイナス方向にシフトするとオフ電流が増大しているが、図2(B)ではゲート電圧Vgがマイナス方向にシフトしてもオフ電流の増大が抑えられている。従って、図2(A)の結果が得られたTFT(サイドウォール絶縁層は設けられていない図1のTFT)では、オフ電流が増大してしまい、十分なスイッチング特性を得ることが難しいことがわかる。
【0054】
図3(A)は、図2(B)の結果が得られたTFTについてのゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idの変化を表す。図3(A)の曲線130は光照射下で測定を行ったものであり、曲線131は光照射していない状態で測定を行ったものである。図3(B)の結果が得られたTFTは、第1の半導体層106が設けられておらず、第2の半導体層108が非晶質半導体層であることを除けば、図3(A)の結果が得られたTFTとほぼ同じものである。図3(B)の曲線132は光照射下で測定を行ったものであり、曲線133は光照射していない状態で測定を行ったものである。なお、測定時のドレイン電圧は、10Vとした。
【0055】
なお、本明細書において、「ドレイン電圧」とは、ソースの電位に対するドレインの電位の電位差をいう。
【0056】
非晶質半導体層は、堆積性ガスの流量を大きくすることで形成することができる。例えば、堆積性ガスの流量に対する希釈ガスの流量を1倍以上10倍以下、好ましくは1倍以上5倍以下とすればよい。
【0057】
図3(A)と図3(B)を比較すると、半導体層が非晶質半導体層のみである場合には、半導体層がゲート電極からはみ出した構造であっても光照射下におけるオフ電流の増大は抑えられていることがわかる。
【0058】
従って、光照射下におけるオフ電流の増大は半導体層が非晶質半導体層であるTFTでは問題にならず、半導体層が結晶性を有するTFTにおいて特有の問題であることがわかる。
【0059】
図4(A)は、図1のTFTについてのゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idの変化を表す。図4(B)の結果が得られたTFTは、上部サイドウォール絶縁層112及び下部サイドウォール絶縁層113が設けられていないこと以外は図1のTFTと同じである。
【0060】
図4(A)は、上部サイドウォール絶縁層112の表面から第1の半導体層106の表面までの距離(便宜上、これを「サイドウォール絶縁層の厚さ」という。以下、同じ。)を30nm〜40nmとしたときのゲート電圧Vgに対するドレイン電流Idの変化を表す。ここで、上部サイドウォール絶縁層112の表面から第1の半導体層106の表面までの距離とは、上部サイドウォール絶縁層112の表面上の任意の一点と第1の半導体層106の表面の任意の一点を結ぶ線分のうち、最も短い線分の長さをいう。更には、このときの上部サイドウォール絶縁層112近傍の走査透過型電子顕微鏡像(STEM像)を図5に示す。
【0061】
図4(A)と図4(B)を比較すると、図4(A)ではゲート電圧Vgがマイナス方向にシフトしてもオフ電流の増大が抑えられている。更には、図4(A)と図4(B)では、オン電流に違いが見られない。
【0062】
従って、図1のように、上部サイドウォール絶縁層112を設けることで、オフ電流を抑えることができるといえる。
【0063】
なお、図5に示すSTEM像には、第1の配線層102A、絶縁層104A、第1の半導体層106A、第2の半導体層108A、不純物半導体層110A、上部サイドウォール絶縁層112A及び第2の配線層114Aが示されている。上部サイドウォール絶縁層112Aの厚さdは概ね35nmと見積もることができる。
【0064】
図4(A)より、上部サイドウォール絶縁層112の厚さは、少なくとも上記した範囲であることが好ましい。
【0065】
なお、図4(A)には曲線140に異常点が見られるが、これは上部サイドウォール絶縁層112を1層の絶縁層により設けたため、基板面内の厚さのばらつきを小さくできなかったためであると考えられる。これは、実施の形態3で説明するTFTとすることで解決することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態のTFTは、光リーク電流が抑制され、オン/オフ比が高いTFTである。
【0067】
(実施の形態2)
本実施の形態は、本発明の一態様であるTFTの作製方法の一例について説明する。具体的には、実施の形態1で説明したTFTの作製方法について説明する。なお、実施の形態1と同じものを指す場合には、原則として同じ符号を用いるものとする。
【0068】
まず、基板100上に第1の配線層102を形成する(図6(A))。第1の配線層102は、CVD法またはスパッタリング法により導電性材料膜を基板100上の全面に形成し、フォトリソグラフィ法により加工して形成すればよい。
【0069】
次に、第1の配線層102を覆って絶縁層104を形成し、絶縁層104上に第1の半導体膜200、第2の半導体膜202及び不純物半導体膜204を形成する(図6(B))。
【0070】
第1の半導体膜200は、プラズマCVD装置の反応室内において、シリコンを含む堆積性気体(SiHなど)と水素を混合させ、グロー放電プラズマにより形成する。または、シリコンを含む堆積性気体と、水素と、He、Ne、Krなどの希ガスと、を混合させ、グロー放電プラズマにより形成する。シリコンを含む堆積性気体の流量に対して、水素の流量を10〜2000倍、好ましくは10〜200倍に希釈して形成する。
【0071】
または、GeH若しくはGeなどの堆積性気体を用いて、第1の半導体膜200をゲルマニウムにより形成してもよい。
【0072】
なお、第1の半導体膜200を形成する前に、プラズマCVD装置の反応室内を排気しつつ、シリコンまたはゲルマニウムを含む堆積性気体を導入して、反応室内の不純物元素を除去すると、形成される膜の界面における不純物元素を少なくすることが可能であり、TFTの電気的特性を向上させることができる。
【0073】
第2の半導体膜202は、プラズマCVD装置の反応室内において、シリコンを含む堆積性気体と水素を混合させ、グロー放電プラズマにより形成する。このとき、第1の半導体膜200の形成条件よりも、シリコンを含む堆積性気体に対する水素の流量を減らして(すなわち、希釈率を低くして)形成することで、結晶成長が抑制され、膜が堆積されると、微結晶半導体領域を含まない第2の半導体膜202を形成することができる。
【0074】
なお、第2の半導体膜202の成膜初期には、第1の半導体膜200の形成条件よりも、シリコンを含む堆積性気体に対する水素の流量を減らす(すなわち、希釈率を低くする)ことで、第2の半導体膜202に微結晶半導体領域を残存させることができる。または、上記条件よりも、更に、シリコンを含む堆積性気体に対する水素の流量を減らしていく(すなわち、希釈率を低くしていく)と、第2の半導体膜202を、「非晶質半導体を含む層」となる半導体膜とすることができる。または、上記条件よりも、シリコンを含む堆積性気体に対する水素の流量を更に減らし(すなわち、希釈率を低くしていく)、且つ窒素を含むガスを混合させることで、第2の半導体膜202の非晶質半導体領域を大きく形成することができる。なお、第2の半導体膜202もゲルマニウムを用いて形成してもよい。
【0075】
また、第2の半導体膜202の成膜初期においては、第1の半導体膜200を種結晶として、全体に膜が堆積される。その後は部分的に結晶成長が抑制され、錐形状の微結晶半導体領域が成長する(成膜中期)。さらに、錐形状の微結晶半導体領域の結晶成長が抑制され、上層に微結晶半導体領域を含まない第2の半導体膜202が形成される(成膜後期)。
【0076】
なお、第2の半導体膜202には窒素が、1×1020cm−3乃至1×1021cm−3で含まれることが好ましい。このとき、窒素は、NH基若しくはNH基の状態で存在することが好ましい。半導体原子のダングリングボンドを窒素、NH基若しくはNH基で架橋しやすくなり、キャリアが流れやすくなるためである。
【0077】
第2の半導体膜202の形成時には、堆積性ガスの流量に対する希釈ガスの流量は10倍以上2000倍以下、好ましくは50倍以上200倍以下とすればよく、好ましくは第1の半導体膜200を形成するときよりも希釈ガスの流量比を小さくする。
【0078】
なお、第2の半導体膜202の酸素濃度は低いことが好ましい。第2の半導体膜202の酸素濃度を低減させることにより、微結晶半導体領域と非晶質半導体領域との界面や、第1の半導体膜200の微結晶半導体領域と第2の半導体膜の微結晶半導体領域との界面における、キャリアの移動を阻害する結合を少なくすることができる。
【0079】
不純物半導体膜204は、第1の半導体膜200または第2の半導体膜202の形成ガスに一導電型を付与する不純物元素を含ませて形成すればよい。例えば、形成ガスにPHを含む気体を加えればよい。
【0080】
次に、不純物半導体膜204上にレジストマスク206を形成する(図6(C))。
【0081】
次に、レジストマスク206を用いて、第1の半導体膜200、第2の半導体膜202及び不純物半導体膜204を加工して、第1の半導体層106、第2の半導体層208及び不純物半導体層210を形成する(図7(A))。
【0082】
次に、第1の半導体層106、第2の半導体層208及び不純物半導体層210を覆ってサイドウォール絶縁膜212を形成する(図7(B))。
【0083】
次に、サイドウォール絶縁膜212をエッチングして上部サイドウォール絶縁層112及び下部サイドウォール絶縁層113を形成する(図7(C))。ここで、エッチングは、異方性の高いエッチング方法を採用する。すなわち、基板100の表面に対して垂直な方向に等しい厚さで薄くなるようにエッチングを行う。本実施の形態において、このエッチングは、不純物半導体層210を露出させるまで行う。このように異方性の高いエッチング方法を採用することにより、少なくとも第1の半導体層106の側壁を覆う上部サイドウォール絶縁層112と、第1の配線層102に起因して生じる絶縁層104の段差に下部サイドウォール絶縁層113と、を形成することができる。
【0084】
次に、不純物半導体層210、上部サイドウォール絶縁層112及び下部サイドウォール絶縁層113を覆って導電膜214を形成する(図8(A))。導電膜214は、CVD法またはスパッタリング法により形成すればよい。
【0085】
次に、導電膜214上にレジストマスク216を形成する(図8(B))。
【0086】
次に、レジストマスク216を用いて、導電膜214、不純物半導体層210及び第2の半導体層208を加工して、第2の配線層114、不純物半導体層110及び第2の半導体層108を形成する(図8(C))。なお、ここでは、第1の半導体層106を露出させず、且つ第2の半導体層108を露出させるように加工を行う。
【0087】
以上説明したように、図1に示すTFTを作製することができる。従って、本実施の形態のTFTの作製方法によれば、光リーク電流が抑制され、オン/オフ比が高いTFTを簡略に作製することができる。
【0088】
(実施の形態3)
実施の形態1及び実施の形態2にて説明したTFTとその作製方法では、サイドウォール絶縁層が1層の絶縁層により構成される形態について説明したが、これに限定されず、サイドウォール絶縁層が複数の異なる材料層により構成されていてもよい。本実施の形態では、サイドウォール絶縁層が2層の絶縁層により構成されている形態について説明する。
【0089】
すなわち、図9(A)に示す本実施の形態のTFTは、基板300上に設けられ、第1の配線層302と、第1の配線層302を覆って設けられた絶縁層304と、第1の配線層302と全面が重畳して設けられた第1の半導体層306と、第1の半導体層306上に接して設けられ、第1の半導体層306よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層308と、第2の半導体層308に接して設けられた不純物半導体層310と、少なくとも第1の半導体層306の側壁を覆って設けられた積層サイドウォール絶縁層と、少なくとも不純物半導体層310に接して設けられた第2の配線層314と、を有することを特徴とする。ここで、積層サイドウォール絶縁層は、上部下地サイドウォール絶縁層322と上部サイドウォール絶縁層312が積層されて設けられている。上部下地サイドウォール絶縁層322と上部サイドウォール絶縁層312は、異なる材料により形成されていることが好ましい。更には、第1の配線層302に起因して生じる絶縁層304の段差に下部下地サイドウォール絶縁層323と下部サイドウォール絶縁層313が積層されて設けられている。
【0090】
サイドウォール絶縁層を積層サイドウォール絶縁層とすることで、絶縁層が1層である場合よりも形成時のエッチングの制御が行いやすく、例えば第10世代(例えば、2950mm×3400mm)のマザーガラスを基板300として用いる場合であっても、基板面内におけるサイドウォール絶縁層のトータルの厚さを均一にすることができる。
【0091】
なお、その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0092】
なお、本実施の形態のTFTは、図9(A)に示すものに限定されず、図9(B)に示すような形態であってもよい。すなわち、上部下地サイドウォール絶縁層322と下部下地サイドウォール絶縁層323がオーバーエッチングされて、第2の配線層314の表面に凹部330〜333が設けられていてもよい。このとき、空洞334〜337が設けられていてもよい。
【0093】
(実施の形態4)
本実施の形態は、本発明の一態様であるTFTの作製方法の一例について説明する。具体的には、実施の形態3で説明したTFTの作製方法について説明する。なお、実施の形態3と同じものを指す場合には、原則として同じ符号を用いるものとする。
【0094】
実施の形態3にて説明したTFTでは、サイドウォール絶縁層が2層の絶縁層により構成されている。ここでは、窒化シリコン層上に酸化窒化シリコン層が積層されて設けられた積層サイドウォール絶縁層を有するTFTの作製方法について説明する。
【0095】
まず、実施の形態2の図7(A)と同様の状態とし、その後、レジストマスク206を除去する。
【0096】
次に、第1の半導体層306、第2の半導体層408及び不純物半導体層410を覆って窒化シリコン膜413及び酸化窒化シリコン膜412を形成する(図10(A))。
【0097】
次に、酸化窒化シリコン膜412をエッチングして上部サイドウォール絶縁層312及び下部サイドウォール絶縁層313を形成する(図10(B))。ここで、エッチングには、異方性の高いエッチング方法を採用する。すなわち、基板300の表面に対して垂直な方向に等しい厚さで薄くなるようにエッチングを行う。本実施の形態において、このエッチングは、窒化シリコン膜413を露出させるまで行う。
【0098】
酸化窒化シリコン膜412のエッチングは、窒化シリコン膜413に対するエッチングレートが低く、酸化窒化シリコン膜412に対するエッチングレートが高い条件により行うことが好ましい。例えば、CとArの混合ガスを用いて、バイアスをかけた状態で行う誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)を用いて行えばよい。または、CHFとHeの混合ガスを用いてもよい。
【0099】
次に、窒化シリコン膜413をエッチングして上部下地サイドウォール絶縁層322及び下部下地サイドウォール絶縁層323を形成する(図10(C))。その後の工程は、実施の形態2と同様である。
【0100】
窒化シリコン膜413のエッチングは、酸化窒化シリコン膜412に対するエッチングレートが低く、窒化シリコン膜413に対するエッチングレートが高い条件により行う。例えば、CHFとHeの混合ガスをエッチングガスとして用いたドライエッチングにより行えばよい。または、希HPO若しくは濃HPOをエッチャントとして用いたウエットエッチングにより行えばよい。
【0101】
このように、複数の異なる材料膜を形成し、該材料膜をエッチングすることで、複数の異なる材料からなるサイドウォール絶縁層を形成することができる。
【0102】
本実施の形態にて説明したように積層サイドウォール絶縁層の形成ではエッチングを制御性よく行うことができ、例えば第10世代(例えば、2950mm×3400mm)のマザーガラスを基板300として用いる場合であっても、基板面内におけるサイドウォール絶縁層の厚さのばらつきを小さくすることができる。更には、サイドウォール絶縁層の厚さのばらつきを小さくすることができるのみならず、サイドウォール絶縁層が1層の絶縁層により構成される場合において生じうる、絶縁層304または不純物半導体層410へのプラズマダメージ及び膜減りを低減することができる。
【0103】
なお、本明細書において、「膜減り」とは、エッチングなどの加工により、層または膜が薄くなることをいう。
【0104】
なお、窒化シリコン膜413及び酸化窒化シリコン膜412は、上記した窒化シリコン膜と酸化窒化シリコン膜の組み合わせに限定されない。窒化シリコン膜と酸化シリコン膜であってもよいし、窒化酸化シリコン膜と酸化窒化シリコン膜であってもよいし、窒化酸化シリコン膜と酸化シリコン膜であってもよい。ただし、エッチング選択比を確保できる組み合わせとすることが好ましい。すなわち、エッチャントに対する一方のエッチングレートが他方のエッチングレートよりも大きく、または小さいことが好ましい。
【0105】
以上説明したように、実施の形態3のTFTを作製することができる。
【0106】
(実施の形態5)
実施の形態1乃至実施の形態4にて説明したTFTとその作製方法では、チャネル形成領域と重畳する部分に第2の半導体層が残存し、残存した第2の半導体層により第1の半導体層のチャネル形成領域と重畳する部分が覆われている形態について説明したが、これに限定されず、第1の半導体層が露出されていてもよい。本実施の形態では、チャネル形成領域と重畳する部分に第2の半導体層が残存せず、第1の半導体層が露出されている形態について説明する。
【0107】
すなわち、図11に示す本実施の形態のTFTは、基板500上に設けられ、第1の配線層502と、第1の配線層502を覆って設けられた絶縁層504と、第1の配線層502と全面が重畳して設けられた第1の半導体層506と、第1の半導体層506上に接して離間して設けられ、第1の半導体層506よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層508と、第2の半導体層508に接して設けられた不純物半導体層510と、少なくとも第1の半導体層506の側壁を覆って設けられた上部サイドウォール絶縁層512と、少なくとも不純物半導体層510に接して設けられた第2の配線層514と、を有することを特徴とする。すなわち、第1の半導体層506上であって、不純物半導体層510と重畳する部分にのみ第2の半導体層508が設けられている。更には、第1の配線層502に起因して生じる絶縁層504の段差に下部サイドウォール絶縁層513が設けられている。
【0108】
第1の半導体層506上であって、不純物半導体層510と重畳する部分にのみ第2の半導体層508が設けられることで、TFTの電界効果移動度及びオン電流を向上させることができる。
【0109】
更には、後に実施の形態9で説明するように、チャネル形成領域と重畳する領域に更なるゲート電極を配置することで、TFTの電界効果移動度及びオン電流を制御しやすく、これらを飛躍的に向上させることができる。
【0110】
なお、その他の構成は、実施の形態1及び実施の形態3と同様である。
【0111】
なお、実施の形態3で説明したTFTと本実施の形態のTFTを組み合わせてもよい。すなわち、本実施の形態のTFTの上部サイドウォール絶縁層512が、異なる複数の材料層が積層されて設けられたものであってもよい。このようなサイドウォール絶縁層は、実施の形態4で説明したように作製することができる。
【0112】
(実施の形態6)
本実施の形態は、本発明の一態様であるTFTの作製方法の一例について説明する。具体的には、実施の形態5で説明したTFTの作製方法について説明する。なお、実施の形態5と同じものを指す場合には、原則として同じ符号を用いるものとする。
【0113】
実施の形態5にて説明したTFTでは、第2の半導体層が第1の半導体層上であって、不純物半導体層と重畳する部分にのみ設けられている。
【0114】
まず、実施の形態2の図8(A)と同様の状態とする。すなわち、上部サイドウォール絶縁層512及び下部サイドウォール絶縁層513が設けられた状態で、第1の半導体層506、第2の半導体層608及び不純物半導体層610を覆って導電膜614を形成する(図12(A))。
【0115】
次に、導電膜614上にレジストマスク616を形成する(図12(B))。
【0116】
次に、レジストマスク616を用いて、導電膜614、不純物半導体層610及び第2の半導体層608を加工して、第2の配線層514、不純物半導体層510及び第2の半導体層508を形成する(図12(C))。なお、ここでは、第1の半導体層506を露出させるまで加工を行い、第2の半導体層508は離間して設けられる。
【0117】
なお、ここで、第1の半導体層506を露出させるまで行う加工は、一のエッチング工程により行ってもよいし、複数のエッチング工程により行ってもよい。例えば、導電膜614及び不純物半導体層610を加工するエッチングを行った後に、第2の半導体層608をエッチングしてもよい。
【0118】
第2の半導体層608のエッチングにウエットエッチングを用いる場合には、エッチャントとして、例えばNを用いることができる。更には、KOH、NHCHCHNHを含むエッチャントを用いてもよい。または、HFとHNOとを含むエッチャントを用いることもできる。その他、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAHとも呼ばれる)水溶液を用いてもよい。
【0119】
ドライエッチングを用いる場合には、ガス種として、例えば水素を含むガスを用いればよい。または、塩素、臭素若しくはヨウ素を含むガスを用いてもよく、HCl、HBr若しくはHIなどを含むガス用いてもよい。または、CF、SF、NF、SiF、BF、XeF、ClF、SiCl、PCl若しくはBClなどを含むガスを用いることができる。更には、CFとOの混合ガスまたはSFとClの混合ガスを用いることができる。
【0120】
以上説明したように、実施の形態5のTFTを作製することができる。
【0121】
(実施の形態7)
実施の形態1乃至実施の形態6にて説明したTFTとその作製方法では、第2の半導体層として「非晶質半導体を含む層」を用いたが、これに限定されず、第2の半導体層は非晶質半導体により形成してもよい。
【0122】
すなわち、図13に示す本実施の形態のTFTは、基板700上に設けられ、第1の配線層702と、第1の配線層702を覆って設けられた絶縁層704と、第1の配線層702と全面が重畳して設けられた第1の半導体層706と、第1の半導体層706上に接して設けられ、第1の半導体層706よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層708と、第2の半導体層708に接して設けられた不純物半導体層710と、少なくとも第1の半導体層706の側壁を覆って設けられた上部サイドウォール絶縁層712と、少なくとも不純物半導体層710に接して設けられた第2の配線層714と、を有し、第2の半導体層708が非晶質半導体層であることを特徴とする。更には、第1の配線層702に起因して生じる絶縁層704の段差に下部サイドウォール絶縁層713が設けられている。
【0123】
第2の半導体層708を非晶質半導体層としても、オフ電流を十分に下げることができる。
【0124】
なお、その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0125】
なお、実施の形態3で説明したTFTと本実施の形態のTFTを組み合わせてもよい。すなわち、本実施の形態のTFTの上部サイドウォール絶縁層712が、異なる複数の材料層が積層されて設けられたものであってもよい。このようなサイドウォール絶縁層は、実施の形態4で説明したように作製することができる。
【0126】
なお、実施の形態5で説明したTFTと本実施の形態のTFTを組み合わせてもよい。すなわち、本実施の形態のTFTにおいて、チャネル形成領域となる部分の第1の半導体層706が露出されていてもよい。このようなTFTは、実施の形態6で説明したように作製することができる。
【0127】
以上説明したように、本実施の形態のTFTは、他の実施の形態のTFTと適宜組み合わせて実施することができる。
【0128】
(実施の形態8)
本実施の形態は、本発明の一態様であるTFTの作製方法の一例について説明する。具体的には、実施の形態7で説明したTFTの作製方法について説明する。なお、実施の形態7と同じものを指す場合には、原則として同じ符号を用いるものとする。
【0129】
実施の形態7にて説明したTFTでは、第2の半導体層708となる第2の半導体膜802は非晶質半導体により形成する。第2の半導体層708を非晶質半導体により形成するには、一般的な非晶質半導体の形成方法を適用すればよい。すなわち、第2の半導体膜802の形成に際して、結晶核を生成しない条件とすればよい。半導体膜を形成するに際して結晶核を生成しない条件として、例えば、シランの希釈率を小さくすることが挙げられる。
【0130】
まず、基板700上に第1の配線層702を形成する(図14(A))。第1の配線層702は、CVD法またはスパッタリング法により導電性材料膜を基板700上の全面に形成し、フォトリソグラフィ法により加工して形成すればよい。
【0131】
次に、第1の配線層702を覆って絶縁層704を形成し、絶縁層704上に第1の半導体膜800、第2の半導体膜802及び不純物半導体膜804を形成する(図14(B))。
【0132】
第1の半導体膜800は、実施の形態2の第1の半導体膜200と同様の材料及び方法により形成すればよい。
【0133】
第2の半導体膜802は、第1の半導体膜800よりも堆積性ガスの流量に対する希釈ガスの流量を少なくすればよく、例えば、堆積性ガスの流量に対する希釈ガスの流量を1倍以上10倍以下、好ましくは1倍以上5倍以下とすればよい。
【0134】
不純物半導体膜804は、実施の形態2の不純物半導体膜204と同様の材料及び方法により形成すればよい。
【0135】
次に、不純物半導体膜804上にレジストマスク806を形成する(図14(C))。その後の工程は、実施の形態2と同様である。
【0136】
以上説明したように、実施の形態7のTFTを作製することができる。
【0137】
(実施の形態9)
実施の形態1乃至実施の形態8にて説明したTFTとその作製方法は、表示装置のアレイ基板に適用することができる。本実施の形態は、一例として実施の形態1にて説明したTFTを用いたアレイ基板とその作製方法について説明し、更には表示装置とその作製方法について説明する。
【0138】
まず、図1のTFTを覆って、絶縁膜900を形成する(図15(A))。
【0139】
絶縁膜900は、絶縁性材料(例えば、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは酸化シリコンなど)により形成すればよい。なお、単層で形成してもよいし、複数の層を積層して形成してもよい。ここでは、例えば、窒化シリコンにより形成する。
【0140】
次に、絶縁膜900に、第2の配線層114に達するように開口部902を形成することで、絶縁層904を形成する(図15(B))。開口部902は、フォトリソグラフィ法を用いて形成すればよい。
【0141】
なお、絶縁膜900をインクジェット法により形成するなどして、既に開口部902が設けられている場合には、開口部902を更に形成する工程は不要である。
【0142】
次に、開口部902を介して第2の配線層114に接続されるように、画素電極層906を形成する(図15(C))。
【0143】
画素電極層906は、透光性を有する導電性高分子(導電性ポリマーともいう。)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性組成物を用いて形成した画素電極層906は、シート抵抗が10000Ω/□以下であり、且つ波長550nmにおける透光率が70%以上であることが好ましい。また、導電性組成物に含まれる導電性高分子の抵抗率が0.1Ω・cm以下であることが好ましい。
【0144】
なお、導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、またはアニリン、ピロール及びチオフェンの2種以上の共重合体若しくはその誘導体などがあげられる。
【0145】
画素電極層906は、例えば、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添加したインジウム錫酸化物などを用いて形成することができる。
【0146】
画素電極層906は、上記材料により形成した膜をフォトリソグラフィ法により加工することで、形成すればよい。
【0147】
なお、図示していないが、絶縁層904と画素電極層906との間に、スピンコーティング法などにより形成した有機樹脂により形成される絶縁層を有していてもよい。
【0148】
以上説明したように画素電極層906まで形成したアクティブマトリクス基板を用いて、表示装置を作製することができる。
【0149】
ところで、チャネル形成領域と重畳する部分に画素電極層によって更なるゲート電極を形成してもよい。チャネル形成領域と重畳して更なるゲート電極を設けることで、TFTの電界効果移動度及びオン電流を向上させることができる。特に、実施の形態5にて説明した図11のTFTに対して更なるゲート電極を設けると、TFTの電界効果移動度及びオン電流を飛躍的に向上させることができる。更なるゲート電極からチャネル形成領域となる半導体層までの距離が近いからである。
【0150】
図11のTFTに、更なるゲート電極が設けられた形態を図16に示す。図16に示すTFTは、基板500上に設けられ、第1の配線層502と、第1の配線層502を覆って設けられた第1の絶縁層504と、第1の配線層502と全面が重畳して設けられた第1の半導体層506と、第1の半導体層506上に接して離間して設けられ、第1の半導体層506よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層508と、第2の半導体層508に接して設けられた不純物半導体層510と、少なくとも第1の半導体層506の側壁を覆って設けられた上部サイドウォール絶縁層512と、少なくとも不純物半導体層510に接して設けられた第2の配線層514と、を有し、該TFTは絶縁層910によって覆われ、絶縁層910は開口部912を有し、絶縁層910上に設けられた画素電極層914の一部である画素電極として機能する部分914Aは開口部912を介して第2の配線層514と接続され、絶縁層910上に設けられた画素電極層914の他の一部である更なるゲート電極として機能する部分914Bは第1の半導体層506のチャネル形成領域と重畳して設けられている。
【0151】
図16において、絶縁層910は部分914Bにより構成される、更なるゲート電極のゲート絶縁層として機能する。絶縁層910は、第1の絶縁層504と同じ材料によって、同程度の厚さで形成することが好ましい。
【0152】
なお、図16では、第1の配線層502により構成されるゲート電極と、部分914Bにより構成される「更なるゲート電極」の電位を同じ電位としているが、これに限定されない。「更なるゲート電極」に接続される配線を独立に設けて、第1の配線層502により構成されるゲート電極とは異なる電位としてもよい。
【0153】
図16に示すTFTは、電界効果移動度が格段に高く、オン電流が非常に大きいTFTとすることができる。従って、スイッチング特性を良好なものとすることができる。このようなTFTを表示装置に用いることで、コントラスト比が高い表示装置を得ることができる。表示装置としては、液晶表示装置及びEL表示装置を挙げることができる。
【0154】
液晶表示装置は、上記アクティブマトリクス基板がセル工程及びモジュール工程を経ることで作製される。以下に、セル工程及びモジュール工程の一例について説明する。
【0155】
セル工程では、上記した工程により作製したアクティブマトリクス基板と、これに対向する基板(以下、対向基板という)を貼り合わせて液晶を注入する。まず、対向基板の作製方法について、以下に簡単に説明する。
【0156】
まず、基板上に遮光層を形成し、該遮光層上に赤、緑、青のいずれかのカラーフィルター層を形成し、該カラーフィルター層上に対向電極層を形成し、該対向電極層上にリブを形成する。
【0157】
遮光層は、遮光性を有する材料により選択的に形成する。遮光性を有する材料として、例えば、黒色樹脂(カーボンブラック)を含む有機樹脂、またはクロムを主成分とする材料(クロム、酸化クロムまたは窒化クロム)を用いることができる。遮光性を有する材料の膜を選択的に形成するには、フォトリソグラフィ法などを用いればよい。
【0158】
カラーフィルター層は、白色光が照射された際に、赤、緑、青のいずれかの光のみを通過させることができる材料により選択的に形成すればよく、塗り分けを行って選択的に形成すればよい。カラーフィルターの配列は、ストライプ配列、デルタ配列または正方配列を用いればよい。
【0159】
対向基板上の対向電極層は、アクティブマトリクス基板が有する画素電極層と同様の材料及び方法により、対向基板上の全面に形成すればよい。
【0160】
対向電極層上のリブは、視野角を拡げるために形成され、有機樹脂材料により選択的に形成される。必要に応じて適宜形成すればよい。
【0161】
更には、カラーフィルター層を形成後、対向電極層の形成前にオーバーコート層を形成してもよい。オーバーコート層を形成することで対向電極層の被形成面の平坦性を向上させ、カラーフィルター層に含まれる材料の一部が液晶材料中に侵入することを防ぐことができる。オーバーコート層には、アクリル樹脂またはエポキシ樹脂をベースとした熱硬化性材料が用いられる。
【0162】
なお、リブの形成前または形成後にスペーサとしてポストスペーサ(柱状スペーサ)を形成してもよい。ビーズスペーサ(球状スペーサ)を用いる場合には、ポストスペーサを形成しなくてもよい。
【0163】
次に、配向膜をアクティブマトリクス基板及び対向基板上に形成する。配向膜の形成は、例えば、ポリイミド樹脂などを有機溶剤に溶かし、これを印刷法またはスピンコーティング法などにより塗布し、有機溶媒を溜去した後基板を焼成することにより行う。配向膜には、液晶分子がある一定のプレチルト角を持って配向するようにラビング処理を施すとよい。ラビング処理は、例えば、ベルベットなどの毛足の長い布により配向膜を擦ることで行えばよい。
【0164】
次に、アクティブマトリクス基板と対向基板を、シール材料により貼り合わせる。ビーズスペーサを用いる場合には、ビーズスペーサを所望の領域に分散させて貼り合わせるとよい。
【0165】
次に、貼り合わせられたアクティブマトリクス基板と対向基板の間に、液晶材料を注入する。液晶材料を注入した後、注入口を紫外線硬化樹脂などで封止する。または、液晶材料をアクティブマトリクス基板と対向基板のいずれかの上に滴下した後に、これらの基板を貼り合わせてもよい。
【0166】
次に、アクティブマトリクス基板と対向基板を貼り合わせた液晶セルの両面に偏光板を貼り付けてセル工程が完了する。
【0167】
次に、モジュール工程として、端子部の入力端子にフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuit)を接続する。FPCはポリイミドなどの有機樹脂フィルム上に導電膜により配線が形成されており、異方性導電性ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)を介して入力端子と接続される。ACPは接着剤として機能するペーストと、金などがメッキされた数十〜数百μm径の導電性表面を有する粒子と、により構成される。ペースト中に混入された粒子が入力端子上の導電層とFPCに形成された配線に接続された端子上の導電層に接触することで、電気的な接続を実現する。なお、FPCの接続後にアクティブマトリクス基板と対向基板に偏光板を貼り付けてもよい。
【0168】
以上のように、液晶表示装置を作製することができる。
【0169】
なお、液晶材料としてブルー相を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は、液晶相の1つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は、狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために、5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いる。ブルー相を示す液晶材料とカイラル剤を含む液晶組成物は、応答速度が10μs〜100μsと短く、光学的に等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。
【0170】
または、本実施の形態の表示装置は、EL表示装置であってもよい。本実施の形態の表示装置がEL表示装置である場合には、画素電極層906上にEL層を形成し、該EL層上に更なる画素電極層を形成すればよい。
【0171】
上記したように形成した画素電極層906は、陽極とすることができるため、陰極となる更なる画素電極層を形成する材料としては、仕事関数が小さい材料(例えば、Ca、Al、MgAg、AlLi)を用いればよい。
【0172】
EL層は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されて形成された積層膜により構成されていてもよく、少なくとも発光層を有する。発光層はホール輸送層を介して更なる画素電極層と接続されることが好ましい。
【0173】
なお、本実施の形態のEL表示装置は、トップエミッションとしてもよいし、ボトムエミッションとしてもよいし、デュアルエミッションとしてもよい。
【0174】
なお、本実施の形態では、実施の形態1のTFTを用いたアレイ基板について説明したが、これに限定されず、実施の形態3、実施の形態5または実施の形態7のTFTを用いてもよい。
【0175】
(実施の形態10)
上記実施の形態にて説明したTFT及び表示装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用のモニタ、電子ペーパー、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0176】
上記実施の形態にて説明した表示装置は、例えば電子ペーパーに適用することができる。電子ペーパーは、情報を表示するあらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。例えば、電子ペーパーを用いて、電子書籍(電子ブック)、ポスター、電車などの乗り物の車内広告、クレジットカードなどの各種カードにおける表示などに適用することができる。
【0177】
図17(A)は、電子書籍の一例を示している。図17(A)に示す電子書籍は、筐体1000及び筐体1001で構成されている。筐体1000及び筐体1001は、蝶番1004により連結され、開閉させることができ、紙の書籍と同様に扱うことができる。
【0178】
筐体1000には表示部1002が組み込まれ、筐体1001には表示部1003が組み込まれている。表示部1002及び表示部1003は、一の画面を分割して表示する構成としてもよいし、異なる画面を表示する構成としてもよい。異なる画面を表示する構成とすることで、例えば、右側の表示部(図17(A)では表示部1002)に文章を表示し、左側の表示部(図17(A)では表示部1003)に画像を表示することができる。表示部1002及び表示部1003は、上記実施の形態で説明した表示装置を適用することができる。
【0179】
図17(A)では、筐体1000に、電源入力端子1005、操作キー1006及びスピーカ1007などが備えられている。操作キー1006は、例えば頁を送る機能を備えていてもよい。なお、筐体の表示部と同一面にキーボードやポインティングデバイスなどを備えていてもよいし、筐体の裏面や側面に、外部接続用端子(イヤホン端子、USB端子、及びUSBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)または記録媒体挿入部などを備えていてもよい。なお、図17(A)に示す電子書籍は、更には、無線で情報を送受信できる構成を備えていてもよい。
【0180】
図17(B)は、デジタルフォトフレームの一例を示している。図17(B)に示すデジタルフォトフレームは、筐体1011に表示部1012が組み込まれた構成である。表示部1012は、上記実施の形態で説明した表示装置を適用することができる。
【0181】
なお、図17(B)に示すデジタルフォトフレームは、操作部、外部接続用端子(USB端子、USBケーブルなどの各種ケーブルと接続可能な端子など)、記録媒体挿入部などを備える構成とするとよい。これらの構成は、表示部と同一面に備えられていてもよいが、側面や裏面に備えるとデザイン性が向上するため好ましい。例えば、デジタルフォトフレームの記録媒体挿入部に、デジタルカメラで撮影した画像データを記憶したメモリを挿入して画像データを読み込み、取り込んだ画像データを表示部1012に表示させることができる。なお、図17(B)に示すデジタルフォトフレームは、無線で情報を送受信出来る構成としてもよい。
【0182】
図17(C)は、テレビジョン装置の一例を示している。図17(C)に示すテレビジョン装置は、筐体1021に表示部1022が組み込まれ、スタンド1023により筐体1021が支持されている。表示部1022は、上記実施の形態で説明した表示装置を適用することができる。
【0183】
図17(C)に示すテレビジョン装置の操作は、筐体1021が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機により行うことができる。リモコン操作機が備える操作キーにより、チャンネルや音量の調整を行うことができ、表示部1022に表示される映像を選択することができる。また、リモコン操作機自体に、当該リモコン操作機から出力する情報を表示する表示部が設けられていてもよい。
【0184】
なお、図17(C)に示すテレビジョン装置は、受信機やモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することで、片方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0185】
図17(D)は、携帯電話機の一例を示している。図17(D)に示す携帯電話機は、筐体1031に組み込まれた表示部1032の他、操作ボタン1033、操作ボタン1037、外部接続ポート1034、スピーカ1035、及びマイク1036などを備えている。表示部1032は、上記実施の形態で説明した表示装置を適用することができる。
【0186】
図17(D)に示す携帯電話機は、表示部1032がタッチパネルであってもよい。表示部1032がタッチパネルである場合、電話の発信、或いはメールの作成などは、表示部1032をタッチパネルとして使用することで行うことができる。
【0187】
表示部1032の画面は、主として3つのモードがある。第1のモードは、画像の表示を主とする表示モードであり、第2のモードは、文字などの情報の入力を主とする入力モードである。第3のモードは表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示/入力モードである。
【0188】
例えば、電話の発信、或いはメールを作成する場合には、表示部1032を、文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合には、表示部1032の画面の大部分を使用してキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0189】
図17(D)に示す携帯電話機の内部に、ジャイロ、加速度センサなどの傾きを検出するセンサを備えた検出装置を設けることで、携帯電話機の向き(縦または横)に応じて、表示部1032の表示情報を自動的に切り替える構成とすることもできる。
【0190】
画面モードの切り替えは、表示部1032への接触、または筐体1031の操作ボタン1037の操作により行われる構成としてもよいし、表示部1032に表示される画像の種類によって切り替わる構成としてもよい。
【0191】
入力モードにおいて、表示部1032の光センサで検出される信号を検知し、表示部1032のタッチ操作が一定期間行われていないときに、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替える構成としてもよい。
【0192】
表示部1032は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部1032を掌や指で触れ、掌紋及び指紋などをイメージセンサで撮像することで、本人認証を行うことができる。表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0193】
以上説明したように、上記実施の形態にて説明したTFT及び表示装置は様々な電子機器に適用することができる。
【符号の説明】
【0194】
100 基板
102 第1の配線層
102A 第1の配線層
104 絶縁層
104A 絶縁層
106 第1の半導体層
106A 第1の半導体層
108 第2の半導体層
108A 第2の半導体層
110 不純物半導体層
110A 不純物半導体層
112 上部サイドウォール絶縁層
112A 上部サイドウォール絶縁層
113 下部サイドウォール絶縁層
114 第2の配線層
114A 第2の配線層
130 曲線
131 曲線
132 曲線
133 曲線
140 曲線
200 第1の半導体膜
202 第2の半導体膜
204 不純物半導体膜
206 レジストマスク
208 第2の半導体層
210 不純物半導体層
212 サイドウォール絶縁膜
214 導電膜
216 レジストマスク
300 基板
302 第1の配線層
304 絶縁層
306 第1の半導体層
308 第2の半導体層
310 不純物半導体層
312 上部サイドウォール絶縁層
313 下部サイドウォール絶縁層
314 第2の配線層
322 上部下地サイドウォール絶縁層
323 下部下地サイドウォール絶縁層
330〜333 凹部
334〜337 空洞
408 第2の半導体層
410 不純物半導体層
412 酸化窒化シリコン膜
413 窒化シリコン膜
500 基板
502 第1の配線層
504 絶縁層
506 第1の半導体層
508 第2の半導体層
510 不純物半導体層
512 上部サイドウォール絶縁層
513 下部サイドウォール絶縁層
514 第2の配線層
608 第2の半導体層
610 不純物半導体層
614 導電膜
616 レジストマスク
700 基板
702 第1の配線層
704 絶縁層
706 第1の半導体層
708 第2の半導体層
710 不純物半導体層
712 上部サイドウォール絶縁層
713 下部サイドウォール絶縁層
714 第2の配線層
800 第1の半導体膜
802 第2の半導体膜
804 不純物半導体膜
806 レジストマスク
900 絶縁膜
902 開口部
904 絶縁層
906 画素電極層
910 絶縁層
912 開口部
914 画素電極層
914A 部分
914B 部分
1000 筐体
1001 筐体
1002 表示部
1003 表示部
1004 蝶番
1005 電源入力端子
1006 操作キー
1007 スピーカ
1011 筐体
1012 表示部
1021 筐体
1022 表示部
1023 スタンド
1031 筐体
1032 表示部
1033 操作ボタン
1034 外部接続ポート
1035 スピーカ
1036 マイク
1037 操作ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の配線層と、
前記第1の配線層を覆って設けられたゲート絶縁層と、
前記第1の配線層と全面が重畳して設けられた第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に接して設けられ、前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、
前記第2の半導体層に接して設けられた不純物半導体層と、
少なくとも前記第1の半導体層の側壁を覆って設けられたサイドウォール絶縁層と、
少なくとも前記不純物半導体層に接して設けられた第2の配線層と、を有することを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
第1の配線層と、
前記第1の配線層を覆って設けられたゲート絶縁層と、
前記第1の配線層と全面が重畳して設けられた第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に接して離間して設けられ、前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、
前記第2の半導体層に接して設けられた不純物半導体層と、
少なくとも前記第1の半導体層の側壁を覆って設けられたサイドウォール絶縁層と、
少なくとも前記不純物半導体層に接して設けられた第2の配線層と、を有することを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項3】
請求項2において、
前記第1の半導体層のチャネル形成領域となる部分に重畳して、更なる配線層が設けられていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第1の配線層の厚さに起因して生じる前記ゲート絶縁層の段差には更なるサイドウォール絶縁層が設けられていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記第1の半導体層は、微結晶半導体層であり、
前記第2の半導体層は、非晶質半導体と微結晶半導体を含み、
前記第1の半導体層から成長した結晶の先端は前記第2の半導体層まで成長していることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記サイドウォール絶縁層の表面から前記第1の半導体層の表面までの距離は、30nmより大きいことを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層の側面は60°以上90°以下のテーパを有することを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
前記サイドウォール絶縁層は、異なる複数の材料層が積層して設けられていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
前記サイドウォール絶縁層では、窒化シリコンの層上に、酸化シリコンの層または酸化窒化シリコンの層が積層されて設けられていることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項10】
第1の配線層を形成し、
前記第1の配線層を覆ってゲート絶縁層を形成し、
前記第1の配線層と重畳して第1の半導体層と、前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、不純物半導体層と、を積層した半導体島を形成し、
前記半導体島を覆って絶縁膜を形成し、
前記絶縁膜を異方性エッチングして前記不純物半導体層を露出させることで、少なくとも前記第1の半導体層の側壁を覆うサイドウォール絶縁層を形成し、
前記不純物半導体層及び前記サイドウォール絶縁層上に第2の配線層を形成し、
前記第2の半導体層及び前記不純物半導体層の一部をエッチングすることでソース領域及びドレイン領域を形成することを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項11】
第1の配線層を形成し、
前記第1の配線層を覆ってゲート絶縁層を形成し、
前記第1の配線層と重畳して第1の半導体層と、前記第1の半導体層よりもキャリア移動度が低い第2の半導体層と、不純物半導体層と、を積層した半導体島を形成し、
前記半導体島を覆って第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜を形成し、
前記第2の絶縁膜を異方性エッチングして前記第1の絶縁膜を露出させることで第1のサイドウォール絶縁層を形成し、
前記第1のサイドウォール絶縁層と重畳していない部分の第1の絶縁膜をエッチングして前記不純物半導体層を露出させることで、第1のサイドウォール絶縁層とともに少なくとも第1の半導体層の側壁を覆う第2のサイドウォール絶縁層を形成し、
前記不純物半導体層及び前記第2のサイドウォール絶縁層上に第2の配線層を形成し、
前記第2の半導体層及び前記不純物半導体層の一部をエッチングすることでソース領域及びドレイン領域を形成することを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記第1のサイドウォール絶縁層は、窒化シリコンにより形成され、
前記第2のサイドウォール絶縁層は、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンにより形成されることを特徴とする薄膜トランジスタの作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−151382(P2011−151382A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284099(P2010−284099)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】