説明

薄膜トランジスタを具備したフラットパネルディスプレイ

【課題】 駆動用TFTの活性層の大きさを変更せずに、同じ駆動電圧を加えた状態でもホワイトバランスを合わせられるフラットパネルディスプレイを提供する。また、各副画素に最適の電流を供給することによって適正な輝度を実現し、寿命が長いフラットパネルディスプレイを提供する。
【解決手段】 自発光素子を具備する複数の副画素を含む画素と、前記副画素の各々に備えられた、少なくともチャンネル領域を有する半導体活性層を具備し、前記自発光素子に電流を供給するために前記自発光素子に接続されてなる、駆動用薄膜トランジスタ(20r、20g、20b)とを含むフラットパネルディスプレイであって、前記半導体活性層のチャンネル領域が、少なくとも2つの前記副画素に関して相異なる方向に配置されてなることを特徴とするフラットパネルディスプレイである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を具備したアクティブマトリックス(Active Matrix:AM)型フラットパネルディスプレイに係る。より詳細には、本発明は、多結晶シリコンを半導体活性層として具備し、各副画素別にその方向が異なる、薄膜トランジスタを具備したフラットパネルディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ素子や、有機ELディスプレイ素子または無機ELディスプレイ素子などのフラットパネルディスプレイに使われる薄膜トランジスタは、各画素の動作を制御するスイッチング素子及び画素を駆動させる駆動素子として使われる。
【0003】
このようなTFTは、基板上に、高濃度の不純物でドーピングされたドレイン領域およびソース領域、ならびにドレイン領域とソース領域との間に形成されたチャンネル領域からなる半導体活性層を有する。この半導体活性層上には、ゲート絶縁膜及び半導体活性層のチャンネル領域上部のゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極が形成される。前記半導体活性層はシリコンの結晶状態によって非晶質シリコンと多結晶シリコンとに区分される。
【0004】
非晶質シリコンを利用したTFTは低温蒸着が可能であるという長所があるが、電気的特性及び信頼性が低下し、かつ表示素子の大面積化が難しい。このため、最近では、多結晶シリコンが多く使用されている。多結晶シリコンは数十ないし数百cm/V・sの高い電子移動度を有し、高周波動作特性及び漏れ電流値が低いため、高解像度かつ大面積のフラットパネルディスプレイに非常に適している。
【0005】
前述したようなTFTは、フラットパネルディスプレイにおいてスイッチング素子や画素の駆動素子として使われるが、能動駆動方式のAM型有機ELディスプレイは各副画素当り少なくとも2つのTFTを具備する。
【0006】
有機電界発光素子(以下、「EL素子」)は、アノード電極とカソード電極との間に有機物よりなる発光層を有する。EL素子においては、それら電極に正極及び負極電圧が各々印加されるにつれて、アノード電極から注入された正孔が、正孔輸送層を経由して発光層に移動する。電子は、カソード電極から電子輸送層を経由して発光層に注入される。この発光層で、電子と正孔とが再結合して励起子を生成し、この励起子が励起状態から基底状態に変化する際に、発光層の蛍光性分子が発光することによって画像を形成する。フルカラー有機ELディスプレイの場合には、EL素子として赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の三色を発光する画素を具備させることによりフルカラーを実現する。
【0007】
ところで、前記のような有機ELディスプレイにおいて、各色彩を発光するR、G、Bの各発光層の発光効率(cd/A)が色相別に異なる。また、このような発光層の輝度は各副画素に印加される電流値に大体比例する。このため、同じ電流を印加した場合に、ある色は輝度が低く、ある色は輝度が高くなり、適正な色バランスまたはホワイトバランスを得難い。例えば、G発光層の発光効率がR発光層及びB発光層に比べて3ないし6倍高いと、ホワイトバランスを合わせるためにはR及びB発光層にそれだけ多くの電流を流さなければならない。
【0008】
このように、ホワイトバランスを合わせるための従来の方法として、駆動ラインを通じて供給される電圧、すなわち、Vdd値を各画素別に別に印加する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、駆動用TFTのサイズを調節することによってホワイトバランスを合わせる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。すなわち、駆動用TFTのチャンネル領域のチャンネル幅をWとし、チャンネル長をLとする時、その比であるW/LをR、G、Bの各画素別に別に設計してR、G、Bの各EL素子に流れる電流量を調節する方法である。
【0010】
特許文献3には各画素の大きさが異なるように形成することによってホワイトバランスを合わせる方法が開示されている。すなわち、発光効率が最も高いG発光領域の発光面積をR及びB発光領域の発光面積に比べて最も小さく形成してホワイトバランス及び長寿命化を図る方法である。このような発光面積の差はアノード電極の面積による。
【0011】
それ以外にも、データラインを通じて、R、G、B各画素別に異なる電圧を印加して、電流量を制御することによって、輝度を調節する方法が知られている。
【0012】
ところで、前記のような方法は、多結晶シリコンを使用するフラットパネルディスプレイのTFTにおける、その結晶構造を考慮していない。すなわち、TFT活性層の配列方向及び多結晶シリコンの結晶方向を考慮する際に、それらの方向によって電子移動度が変わる可能性があり、この場合に前記のような方法によってもホワイトバランスを合わせられない問題が発生しうる。
【0013】
一方、有機EL素子においては、各副画素あたりにEL素子に流れる電流量が限界値を超えると、単位面積あたりの輝度が大きく増加し、これによりEL素子の寿命が急激に縮まる。したがって、素子の寿命のためにも各副画素当り最適の電流量を供給しなければならない。
【特許文献1】特開平5−107561号公報
【特許文献2】特開2001−109399号公報
【特許文献3】特開2001−290441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は前記問題点を解決するために案出されたものであり、本発明の目的は、駆動用TFTの活性層の大きさを変更せずに、同じ駆動電圧を加えた状態でもホワイトバランスを合わせられるフラットパネルディスプレイを提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、各副画素に最適の電流を供給することによって適正な輝度を実現し、寿命が長いフラットパネルディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は、自発光素子を具備する複数の副画素を含む画素と、前記副画素の各々に備えられた、少なくともチャンネル領域を有する半導体活性層を具備し、前記自発光素子に電流を供給するために前記自発光素子に接続されてなる、駆動用薄膜トランジスタとを含むフラットパネルディスプレイであって、前記半導体活性層のチャンネル領域が、少なくとも2つの前記副画素に関して相異なる方向に配置されてなることを特徴とするフラットパネルディスプレイを提供する。
【0017】
本発明の他の特徴によれば、前記副画素は異なる色相を有する。
【0018】
本発明の他の特徴によれば、前記チャンネル領域は、前記副画素の色相別に相異なる方向に配置されている。
【0019】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、同一の駆動電圧が前記副画素に加えられた際に、前記副画素の自発光素子を流れる電流値に応じて決定されてなる。
【0020】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記チャンネル領域の電子移動度に応じて決定されてなる。
【0021】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記半導体活性層は多結晶シリコンからなる。
【0022】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記多結晶シリコンは異方性結晶粒を有する。
【0023】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記チャンネル領域を形成する多結晶シリコンの結晶粒界の方向に応じて決定されてなる。
【0024】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、同一の駆動電圧が各副画素に加えられた際に、前記副画素を流れる電流値に比例する、前記副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記チャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度に応じて決定されてなる。
【0025】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記チャンネル領域の電子移動度に比例する、前記副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記チャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度に応じて決定されてなる。
【0026】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記多結晶シリコンは、レーザーによる結晶化法により形成されてなる。
【0027】
本発明はまた前記の目的を達成するために、自発光素子を具備する、赤色、緑色及び青色の副画素を含む画素と、前記副画素の各々に備えられた、少なくともチャンネル領域を有する半導体活性層を具備し、前記自発光素子に電流を供給するために前記自発光素子に接続されてなる、駆動用薄膜トランジスタとを含むフラットパネルディスプレイであって、前記半導体活性層のチャンネル領域が、前記副画素の色相別に相異なる方向に配置されてなることを特徴とするフラットパネルディスプレイを提供する。
【0028】
本発明の他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、同一の駆動電圧が前記副画素に加えられた際に、前記副画素の自発光素子を流れる電流値に応じて決定されてなる。
【0029】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記緑色の副画素の自発光素子を流れる電流値が最も低くなる方向に決定されてなる。
【0030】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記電流値が赤色、青色及び緑色の副画素の順に低くなる方向に決定されてなる。
【0031】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記チャンネル領域の電子移動度に応じて決定されてなる。
【0032】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記緑色の副画素の駆動用薄膜トランジスタにおける前記半導体活性層のチャンネル領域の電子移動度が、最も低くなる方向に決定されてなる。
【0033】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記半導体活性層のチャンネル領域の電子移動度が、赤色、青色及び緑色の副画素の順に低くなる方向に決定されてなる。
【0034】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記半導体活性層は多結晶シリコンよりなる。
【0035】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記多結晶シリコンは異方性結晶粒を有する。
【0036】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記チャンネル領域を形成する多結晶シリコンの結晶粒界の方向により決定されてなる。
【0037】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記緑色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記緑色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度が、他の副画素における角度より大きくなるように決定されてなる。
【0038】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記赤色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記赤色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度が、他の副画素における角度より小さくなるように決定されてなる。
【0039】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記チャンネル領域を形成する多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度が、緑色、青色及び赤色の副画素の順に小さくなる方向に決定されてなる。
【0040】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記多結晶シリコンは、平行に配列された第1結晶粒界と、前記第1結晶粒界の間に前記第1結晶粒界にほぼ垂直に延びた第2結晶粒界とからなる。
【0041】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記チャンネル領域を形成する多結晶シリコンの前記第1結晶粒界の方向によって決定されてなる。
【0042】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記緑色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記緑色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの第1結晶粒界とがなす角度が、他の副画素における角度より小さくなるように決定されてなる。
【0043】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記赤色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記赤色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの第1結晶粒界とがなす角度が、他の副画素における角度より大きくなるように決定されてなる。
【0044】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記チャンネル領域の方向は、前記副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの第1結晶粒界とがなす角度が、緑色、青色及び赤色の順に大きくなるように決定されてなる。
【0045】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記緑色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向は、前記緑色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの第1結晶粒界に対して平行である。
【0046】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記赤色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向は、前記赤色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの第1結晶粒界に対して垂直である。
【0047】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記多結晶シリコンは、レーザーによる結晶化法により形成されてなる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
【0049】
第1に、TFTの半導体活性層の大きさや駆動電圧を変更せずに、同じ大きさの半導体活性層を有するフラットパネルディスプレイであっても、ホワイトバランスを合わせることができる。
【0050】
第2に、副画素別に適正電流を供給できるので、適正輝度を得ることができ、かつ寿命が短くなることを防止できる。
【0051】
第3に、各画素あたりの駆動用TFTが占める面積を広げずに素子に流れる電流量だけを調節することによって、開口率の減少問題を解決でき、信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
以下、添付した図面を参照して、本発明の望ましい実施例を詳細に説明する。
【0053】
図1は、本発明のフラットパネルディスプレイのうち、望ましい一実施例に関するAM型有機ELディスプレイのTFT半導体活性層構造を説明するための平面図である。図1によれば、前記有機ELディスプレイの各画素は、R、G及びBの副画素が縦方向(図1で上下方向)に反復して配置されるように備えられている。しかし、このような画素の構成は、必ずこれに限定される必要はなく、各色相の副画素がモザイク状、格子状など多様なパターンに配列されて画素を構成していてもよい。
【0054】
このような有機ELディスプレイは、複数のゲートライン51が横方向(図1で左右方向)に配設され、複数のデータライン52が縦方向に配設されている。そして、電力を供給するための駆動ライン53も縦方向に配設されている。それらゲートライン51、データライン52及び駆動ライン53は一つの副画素を取り囲むように備わる。
【0055】
一方、前記のような構成において、R、G及びB画素の各副画素は第1TFTと、第2TFTの少なくとも2つのTFTを具備するが、前記第1TFT(10r、10g、10b)はゲートライン51の信号によって素子の動作を制御するスイッチングTFTとなり、前記第2TFT(20r、20g、20b)は素子を駆動する駆動用TFTとなる。もちろん、このようなTFTの数及び配置はディスプレイの特性及び駆動方法によって多様な数が存在し、その配置方法も多様に存在することはもちろんである。
【0056】
それら第1TFT(10r、10g、10b)及び第2TFT(20r、20g、20b)は、各々半導体活性層である第1活性層(11r、11g、11b)及び第2活性層(21r、21g、21b)を有するが、それら半導体活性層(以下、単に「活性層」とも記載)は各々後述するチャンネル領域(図示せず)を有する。前記チャンネル領域は、第1活性層(11r、11g、11b)及び第2活性層(21r、21g、21b)のほぼ中央部に位置し、ゲート電極の下に、ゲート電極から絶縁されて存在する。
【0057】
図1に示したように、前記駆動用TFTをなす第2活性層は、各副画素別に相異なる方向を有するように配置される。本発明の望ましい一実施例によれば、それら第2活性層は各色相別に別の方向を有するように配置される。すなわち、R画素を構成する第2活性層21r、G画素を構成する第2活性層21g、およびB画素を構成する第2活性層21bが、それぞれ相異なる方向を向くように配置される。したがって、R、G、Bの色相を有する各副画素が図1のようなストライプ状に配列されておらず、モザイク状に配列されている場合には、第2活性層の方向に関しても、モザイク状に配列される。
【0058】
各副画素の色相がR、G、B以外に他の色相で構成されている場合、他の色相に関しても、色相別に方向を別にして配置されうる。なお、本発明のフラットパネルディスプレイにおいては、半導体活性層のチャンネル領域が、少なくとも2つの副画素に関して相異なる方向に配置されていればよい。ここで、「2つの副画素に関して相異なる方向に配置」とは、画素中に含まれるある副画素におけるチャンネル領域の方向が、同じ画素中に含まれる他の副画素におけるチャンネル領域の方向と異なることを意味する。好ましくは、副画素が異なる色相を有する。また、好ましくは、チャンネル領域は、副画素の色相別に相異なる方向に配置される。つまり、副画素として、R、G、およびBが用いられるのであれば、R、G、B別に、チャンネル領域の方向が決定されるとよい。なお、以下の説明においては、副画素が、R、G、およびBからなる実施例について示すが、副画素として他の副画素が含まれる形態など、他の形態についても同様であり、副画素がR、G、およびBからなる形態に限定する意図ではない。
【0059】
本発明の望ましい一実施例によれば、前記第1活性層(11r、11g、11b)及び第2活性層(21r、21g、21b)は、多結晶シリコン薄膜により形成される。そして、前述したように、前記第2活性層(21r、21g、21b)はR、G、B色の画素別に、相異なる方向を有するように配置されている。この時、少なくとも、第2活性層(21r、21g、21b)のうち、その中央部分を形成するチャンネル領域が、相異なる方向を向いていれば十分である。ただし、チャンネル領域のみの方向を制御すると構造設計が複雑になる傾向があるため、図示するように、第2活性層全体が他の方向を有していてもよい。以下では、TFTの半導体活性層におけるチャンネル領域の方向について、活性層の方向として説明するが、これはチャンネル領域の方向だけを制御してもよいことを意味する。つまり、以下の説明においては、活性層の方向を制御する実施例を示すが、活性層の方向を制御する形態に限定されるのではなく、チャンネル領域のみの方向を制御する形態も含まれる。これは、後述するあらゆる実施例でも同様である。
【0060】
本発明によれば、このように駆動用TFTとして使われる第2TFTの活性層のチャンネル領域が、R、G、Bの各表示画素別に別の方向を向いているため、活性層の大きさを同一にし、同一の駆動電圧が用いられる場合であっても、各画素のホワイトバランスを合わせられる。以下ではこのような原理をより詳細に説明する。
【0061】
前記のように、有機ELディスプレイにおいては、R、G、Bの各画素の発光効率が異なるため、各発光層の輝度に差が生じていた。したがって、同一電流値が流れる際に、ホワイトバランスを合わせることができなかった。参考までに、表1に、現在有機ELディスプレイで一般的に広く使われるR、G、Bの有機発光層の発光効率と、ホワイトバランスを満足させるためにR、G、Bの各副画素に流すべき電流値とを示す。
【0062】
【表1】



表1に示すように、ホワイトバランスを合わせるために流れるべき電流値は、G副画素が最も小さく、B副画素がその次であり、R副画素が最も大きい。
【0063】
このような電流値の差は、自発光素子に電流を供給する駆動用TFTである、図1の第2TFT(20r、20g、20b)の活性層を、相異なる方向を向くように配置することによって、補正されうる。すなわち、R、G、Bの各副画素の第2TFT(20r、20g、20b)の活性層を、相異なる方向を向くように形成することによって、各副画素の発光素子、例えば、EL素子に供給される電流値が変わる。
【0064】
換言すれば、前記第2TFT(20r、20g、20b)の活性層の方向が、同じ駆動電圧が印加された際に各副画素の自発光素子を流れる電流値に応じて決定され、ホワイトバランスが調整される。つまり、各副画素の自発光素子を流れる電流値を考慮して、ホワイトバランスが調整されるように、第2TFTの活性層の方向が決定される。表1の副画素を用いる場合を想定すれば、ホワイトバランスを合わせるために、最も輝度が高いG副画素の電流値が最も低くなる方向にG副画素の第2TFT20gの活性層の方向が制御される。表1のように、R、B及びGの順に電流比が小さくなる場合には、望ましくは、各副画素の電流値が、R、B及びG副画素の順に低くなる方向に、Rを表示する第2TFT20r、Bを表示する第2TFT20b、Gを表示する第2TFT20gの各活性層の方向を調節する。すなわち、R副画素の電流値が最も大きくなるように、Rを表示する第2活性層21rの方向を決定し、B副画素の電流値がその次に大きくなるようにB第2活性層21bの方向を決定し、G副画素の電流値が最も小さくなるようにG第2活性層21gの方向を決定する。これにより、各副画素の輝度は補正されて、フラットパネルディスプレイのホワイトバランスが合わせられる。
【0065】
第2TFTの活性層の方向は、活性層のチャンネル領域の電子移動度に応じて、決定されてもよい。つまり、チャンネル領域の電子移動度を考慮して、ホワイトバランスが調整されるように、第2TFTの活性層の方向が決定される。活性層のチャンネル領域での電子移動度が大きければ、より多くの電流が流れ、チャンネル領域での電子移動度が小さければ、より少ない電流が流れるからである。
【0066】
具体的には、ホワイトバランスを合わせるために、最も発光効率が高いG副画素の駆動用TFTにおける半導体活性層のチャンネル領域の電子移動度が最も低くなる方向に、G副画素の第2TFT20gにおける活性層の方向が決定される。望ましくは、各副画素の第2TFTにおける活性層チャンネル領域の電子移動度が、R、B及びG副画素の順に低くなる方向に、Rを表示する第2TFT20r、Bを表示する第2TFT20b、Gを表示する第2TFT20gの各活性層の方向が決定される。すなわち、R副画素のR第2活性層21rにおけるチャンネル領域の電子移動度が最も大きくなるように、R第2活性層21rの方向を決定し、B副画素のB第2活性層21bにおけるチャンネル領域の電子移動度がその次に大きくなるように、B第2活性層21bの方向を決定し、G副画素のG第2活性層21gにおけるチャンネル領域の電子移動度が最も小さくなるように、G第2活性層21gの方向を決定する。これにより、各副画素での電流値に関して前述のような差が生じ、各副画素の輝度は補正されて、フラットパネルディスプレイのホワイトバランスが合わせられる。
【0067】
各副画素における電流値及び電子移動度は、活性層を形成する材料、例えば、多結晶シリコン薄膜の結晶構造により変わる。すなわち、多結晶シリコン薄膜の結晶構造を変化させることによって、前述したような電流値の差及び電子移動度の差が生じうる。以下、これをより詳細に説明する。
【0068】
図2は、TFTの活性層をなす多結晶シリコン薄膜の異方性結晶構造を示す図である。図2のような異方性結晶構造を有する多結晶シリコン薄膜は、非晶質シリコン薄膜を公知の連続側面結晶化法(SLS:Sequential Lateral Solidification、以下、「SLS法」と記載)により結晶化することによって、形成されうる。しかし、前記異方性結晶構造は、必ずしもSLS法により形成された結晶構造に限定されない。多結晶シリコン薄膜の結晶構造が異方性を有すれば、いかなる結晶化法でも適用できる。望ましくはレーザーによる結晶化法が使われる。
【0069】
前記SLS法は、シリコンの結晶粒が液相と固相との境界面でその境界面に対して垂直な方向に成長するという事実を利用した技術である。マスクを利用してレーザービームを透過させて非晶質シリコンの一部を溶融し、この溶融されたシリコンの部分と溶融されていないシリコンの部分との境界から、溶融されたシリコンの部分に結晶成長させることによって結晶化する方法である。
【0070】
このようなSLS法により形成された結晶構造は、図2に示したように、互いに所定間隔離れた複数の第1結晶粒界61と、この第1結晶粒界61の間に第1結晶粒界61にほぼ垂直な方向に延びた第2結晶粒界62とからなる。前記第1結晶粒界61は、互いに出会う第2結晶粒界62によって形成される。第2結晶粒界62は、マスクを通過した光によって溶融され、成長する。このようなシリコン薄膜60は、第1結晶粒界61の間に縦方向に形成された第2結晶粒界62を有する。第2結晶粒界は、より密度が高い。
【0071】
このような第1結晶粒界61及び第2結晶粒界62を有するシリコン薄膜60が、異方性結晶粒からなる異方性結晶構造を有すると、チャンネル領域の方向によってTFT特性が異なり、TFTに異方性が付与されうる。図示した結晶構造を有するシリコン薄膜60に、活性層のチャンネル領域をいずれの方向に形成するかによって、チャンネル領域での電子移動度及び電流値を制御できる。つまり、チャンネル領域の方向は、同一の駆動電圧が各副画素に加えられた際に、副画素を流れる電流値に比例する、副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と、チャンネル領域を形成する多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度に応じて決定されてもよい。また、チャンネル領域の方向は、チャンネル領域の電子移動度に比例する、副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と、チャンネル領域を形成する多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度に応じて決定されてもよい。多結晶シリコンの結晶粒界の方向および各副画素の自発光素子を流れる電流値および/または電子移動度を考慮して、ホワイトバランスが調整されるように、第2TFTの活性層の方向が決定される。これについて、以下詳細に説明する。
【0072】
図3及び図4は、第1結晶粒界61と活性層のチャンネル領域において電流が流れる方向とがなす角度によって、チャンネル領域での電子移動度及び電流比がどのように変わるかを示すグラフである。ここで回転角度は、第2結晶粒界62にほぼ垂直な方向に備えられた第1結晶粒界61と活性層のチャンネル領域において電流が流れる方向とがなす角度を示す。
【0073】
図3において、Pは、ソース領域及びドレイン領域にP型不純物が添加された素子で測定されたTFTの電子移動度を示す。Nは、ソース領域及びドレイン領域にN型不純物が添加されて測定されたTFTの電子移動度を示す。図3に示すように、TFTのチャンネル領域での電子移動度は、活性層のチャンネル領域において電流が流れる方向と第1結晶粒界61とがなす角度が大きくなるほど増大する。つまり、活性層のチャンネル領域と第1結晶粒界61とがなす角度が0゜から90゜に増加するほど、前記電子移動度が増大する。
【0074】
このような現象は、キャリアの移動に対する抵抗成分が、どの程度多いかという観点から説明されうる。活性層のチャンネル領域において電流が流れる方向が、第1結晶粒界61と0゜をなす場合、すなわち、第2結晶粒界62とほぼ垂直に配置された場合には、キャリアの移動時に第2結晶粒界62とキャリアの移動方向とが垂直になるので、キャリアの移動に対する抵抗成分が大きく、電子移動度が落ちる。活性層のチャンネル領域の方向が第1結晶粒界61と90゜をなす場合、すなわち、第2結晶粒界62とほぼ平行に配置された場合には、キャリアの移動時に結晶粒界62とキャリアの移動方向とが平行になるのでキャリアの移動に対する抵抗成分が少なく、電子移動度が大きい。
【0075】
このような電子移動度の差は図4に示したように、電流比の差により現れる。図4からは、活性層のチャンネル領域において電流が流れる方向と第1結晶粒界とがなす角度が増大するにつれて、電流比が増大することが分かる。図4によれば、活性層のチャンネル領域において電流が流れる方向と第1結晶粒界とがなす角度が90゜になる際、すなわち、チャンネル領域と第2結晶粒界とがほぼ平行になる場合の電流値が、チャンネル領域において電流が流れる方向と第1結晶粒界とがなす角度が0゜である場合の電流値より、3.5倍以上となる。したがって、例えば、最も多くの電流値を必要とするR副画素の駆動用TFTにおけるチャンネル領域を、そのチャンネル領域において電流が流れる方向と第1結晶粒界とがなす角度が90゜になるように設計し、最も少ない電流値を必要とするG副画素の駆動用TFTにおけるチャンネル領域を、そのチャンネル領域において電流が流れる方向と第1結晶粒界とがなす角度が0゜になるように設計すれば、活性層の大きさを同一にしてかつ同じ駆動電圧を印加してもホワイトバランスを合わせることができる。この時、もちろんB副画素の駆動用TFTのチャンネル領域は0゜と90゜との間の値から適当な値を選んで回転させればよい。上の表1のようなデータを有する素子では、そのチャンネル領域において電流が流れる方向と第1結晶粒界とがなす角度を、約70゜〜75゜の範囲内で設計すればよい。
【0076】
図5は、図2に示したようなシリコン薄膜に、第2結晶粒界62の方向に対して相異なる方向を有するようにR第2活性層21r、G第2活性層21g及びB第2活性層21bを形成することを概念的に示す図である。
【0077】
図5においては、R第2活性層21rは、そのチャンネル領域C1が、第2結晶粒界62にほぼ平行な方向、すなわち、第1結晶粒界61と90゜をなす方向に配置されている。換言すれば、赤色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向は、赤色の副画素のチャンネル領域を形成する多結晶シリコンの第1結晶粒界に対して垂直である。G第2活性層21gは、そのチャンネル領域C2が、第2結晶粒界62に垂直な方向、すなわち、第1結晶粒界61と0゜をなす方向に配置されている。換言すれば、緑色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向は、緑色の副画素のチャンネル領域を形成する多結晶シリコンの第1結晶粒界に対して平行である。そして、B第2活性層21bは、そのチャンネル領域C3が、第2結晶粒界62、すなわち、第1結晶粒界61にやや傾くように配置されている。
【0078】
各第2活性層(21r、21g、21b)の傾斜角度は、使われる有機物によって変わる。あらかじめ各画素の輝度及びホワイトバランスを合わせるための電流比を求めた後、G副画素を基準として各副画素の第2活性層の傾斜値を設定すればよい。
【0079】
このような方法により第2TFT(20r、20g、20b)の第2活性層(21r、21g、21b)の方向を決定して、図1のような有機ELディスプレイを形成する。図1には図示されていないが、図5に示されている第2結晶粒界62は、図の縦方向(上下方向)に形成されており、第1結晶粒界61は図の横方向(左右方向)に形成されている。R副画素については、第2TFT20rの第2活性層21rが、いずれも第1結晶粒界61に垂直な方向に配置されている。このため、第2活性層21rの電子移動度が大きくなり、同じ駆動電圧でもEL素子にさらに多くの電流が供給される。G副画素については、第2TFT20gの第2活性層21gが、いずれも第1結晶粒界61に平行な方向に配置されている。このため、電子移動度が小さくなり、同じ駆動電圧でもR画素に比べて少ない電流がEL素子に供給される。また、B副画素については、第2TFT20bの第2活性層21bが、いずれも第1結晶粒界61からやや傾いて配置されている。このため、電子移動度及び電流量がRとGとの間の値となる。これらの機構により、R、G、Bの副画素間で、ホワイトバランスが合致する。
【0080】
このように、好ましくは、チャンネル領域の方向は、緑色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と緑色の副画素のチャンネル領域を形成する多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度が、他の副画素における角度より大きくなるように決定される。また、チャンネル領域の方向は、赤色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と赤色の副画素のチャンネル領域を形成する多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度が、他の副画素における角度より小さくなるように決定される。R、G、Bの副画素を用いる場合には、好ましくは、チャンネル領域の方向は、副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向とチャンネル領域を形成する多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度が、緑色、青色及び赤色の副画素の順に小さくなる方向に決定される。
【0081】
そして、多結晶シリコンが、前記第1結晶粒界と前記第2結晶粒界とからなる場合には、好ましくは、チャンネル領域の方向は、チャンネル領域を形成する多結晶シリコンの第1結晶粒界の方向によって決定される。より好ましくは、チャンネル領域の方向は、緑色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記緑色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの第1結晶粒界とがなす角度が、他の副画素における角度より小さくなるように決定される。チャンネル領域の方向は、前記赤色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記赤色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの第1結晶粒界とがなす角度が、他の副画素における角度より大きくなるように決定されてもよい。チャンネル領域の方向は、前記副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの第1結晶粒界とがなす角度が、緑色、青色及び赤色の順に大きくなるように決定されてもよい。
【0082】
一方、図1に示したような本発明の望ましい一実施例で、スイッチング素子である第1TFT(10r、10g、10b)の第1活性層(11r、11g、11b)の方向が、R第2活性層21rと同じく、結晶粒界62に平行に配置されている。これは、スイッチング素子である第1TFT(10r、10g、10b)の電子移動度を大きくさせ、スイッチング特性を向上させるためである。図1では第2TFT(20r、20g、20b)の第2活性層(21r、21g、21b)の方向だけが、各副画素別に別に調節されている。しかし、同様の改良を、スイッチング素子である第1TFT(10r、10g、10b)の第1活性層(11r、11g、11b)にも適用可能である。
【0083】
以上説明した有機ELディスプレイの各画素の構造について、図6〜図9を用いて説明する。
【0084】
図6は、図1の副画素のうち、G副画素に関する部分拡大平面図である。しかし、このような構造は、G画素に限定されず、他の副画素にも同様に適用されうる。以下の説明では、これを特定の副画素ではなく本発明が適用される不特定のいずれかの副画素も意味する。図面符号も特定の副画素ではなく、不特定の副画素を示す。
【0085】
図7は、図6に示した不特定の副画素に対する等価回路図である。図7に示すように、本発明の望ましい一実施例に関するAM有機ELディスプレイの各副画素は、スイッチング用の第1TFT10と、駆動用の第2TFT20の2つのTFTと、キャパシタ30及び一つのEL素子40とからなる。ただし、TFT及びキャパシタの数は、これに限定されない。所望の素子設計に応じて、より多くのTFT及びキャパシタが具備されうる。
【0086】
第1TFT10は、ゲートライン51に印加されるスキャン信号に駆動されて、データライン52に印加されるデータ信号を伝達する役割をする。第2TFT20は前記第1TFT10を通じて伝えられるデータ信号により、すなわち、ゲートとソース間の電圧差Vgsによって、EL素子40に流入される電流量を決定する。キャパシタ30は第1TFT10を通じて伝えられるデータ信号を、1フレームの期間、貯蔵する役割を果たす。
【0087】
このような回路を実現するために、図6、図8及び図9のような構造を有する有機ELディスプレイが形成される。これをより詳細に説明する。
【0088】
図6、図8及び図9に示すように、ガラス材の絶縁基板1に、バッファ層2が形成されており、このバッファ層2の上部に第1TFT10、第2TFT20、キャパシタ30及びEL素子40が具備される。
【0089】
図示するように、前記第1TFT10はゲートライン51に接続され、TFTオン/オフ信号を印加するゲート電極13と、ゲート電極13の上部に形成されてかつデータライン52と接続して第1活性層11にデータ信号を供給するソース電極14と、第1TFT10とキャパシタ30とを連結してキャパシタ30に電源を供給するドレイン電極15とより構成される。第1活性層11とゲート電極13との間にはゲート絶縁膜3が備えられている。
【0090】
充電用キャパシタ30は、第1TFT10と第2TFT20との間に位置して1フレームの期間、第2TFT20を駆動させるのに必要な駆動電圧を貯蔵する。図6及び図8に示すように、第1TFT10のドレイン電極15と接続する第1電極31;第1電極31の上部に第1電極31とオーバーラップされるように形成され、電力を印加する駆動ライン53と電気的に連結される第2電極32;及び第1電極31と第2電極32との間に形成されて誘電体として使われる層間絶縁膜4から構成される。もちろん、このような充電用キャパシタ30の構造は必ずこれに限定されることではなく、TFTのシリコン薄膜とゲート電極13の導電層とが第1及び第2電極として使われ、ゲート絶縁層が誘電層として使われることもあり、それ以外にも多様な方法により形成できる。
【0091】
第2TFT20は図6及び図9に示したように、キャパシタ30の第1電極31と連結されてTFTオン/オフ信号を供給するゲート電極23;ゲート電極23の上部に形成されて駆動ライン53と接続して第2活性層21に駆動のためのレファレンス共通電圧を供給するソース電極24;及び第2TFT20とEL素子40とを連結してEL素子40に駆動電源を印加するドレイン電極25から構成される。第2活性層21とゲート電極23との間にはゲート絶縁膜3が備えられている。ここで、第2活性層21のチャンネル領域は副画素の色相によってその結晶粒界と平行、垂直、または傾いて配列されている。
【0092】
一方、EL素子40は電流が流れることによって、R、G、Bの光を発光して所定の画像情報を表示する。図6及び図9に示したように、第2TFT20のドレイン電極25に連結されてこれよりプラス電源を供給されるアノード電極41;画素全体を覆うように備えられてマイナス電源を供給するカソード電極43;及びアノード電極41及びカソード電極43の間に配置されて発光する有機発光膜42から構成される。図面の未説明符号である5はSiO等よりなる絶縁性パッシベーション膜であり、6はアクリルなどよりなる絶縁性平坦化膜である。
【0093】
以上説明したような本発明の望ましい実施例による有機ELディスプレイの層状構造は必ず前述したところに限定されず、それ以外のいかなる構造も本発明に適用可能なのはもちろんである。
【0094】
前述したような構造を有する本発明の望ましい一実施例による有機ELディスプレイは次のように製造できる。
【0095】
まず、図8及び図9に示したように、ガラス材の絶縁基板1上にバッファ層2を形成する。前記バッファ層2はSiOで形成でき、PECVD法、APCVD法、LPCVD法、ECR法等により蒸着されうる。そして、一般的には、このバッファ層2は約3000Å厚さに蒸着される。
【0096】
バッファ層2の上部には非晶質シリコン薄膜が蒸着されるが、約500Å厚さに蒸着される。非晶質シリコン薄膜は多様な方法により結晶化されて、多結晶シリコン薄膜になる。この時、結晶化された多結晶シリコン薄膜は、図2に示したような縦方向に延びた結晶粒界を有する異方性結晶構造であることが望ましい。本発明の望ましい一実施例においては前述したような異方性結晶構造を得るためにSLS法を使用したが、それ以外にも異方性結晶構造を得られる結晶化法であればいかなる結晶化法でも使用できる。
【0097】
異方性結晶構造を有する多結晶シリコン薄膜を形成した後にはその上に、図1に示したように、各副画素別に第2TFT(20r、20g、20b)の第2活性層(21r、21g、21b)が結晶粒界の方向に対して相異なる方向を有するようにパターニングされる。この時、第1活性層(11r、11g、11b)も同時にパターニングされる。
【0098】
活性層のパターニングを行った後、その上にSiO等によりゲート絶縁膜3をPECVD法、APCVD法、LPCVD法、ECR法等により蒸着して形成し、MoW、Al/Cu等により導電膜を作った後パターニングしてゲート電極を形成する。前記半導体活性層、ゲート絶縁膜、ゲート電極は多様な順序及び方法によりパターニングされうる。
【0099】
活性層、ゲート絶縁膜、ゲート電極のパターニングが終わった後にはそのソース及びドレイン領域にN型またはP型不純物をドーピングする。
【0100】
このようにドーピング工程が終わった後には図8及び図9に示したように、層間絶縁膜4及びパッシベーション膜5を形成した後、コンタクトホールを通じてソース電極14、24及びドレイン電極15、25を活性層11、21に接続して平坦化膜6を形成する。このような膜構造は素子設計によって多様な構造を採用できることはもちろんである。
【0101】
一方、第2TFT20に接続するEL素子40は多様な方法により形成されうる。例えば、まず、ITOにより第2TFT20のドレイン電極25に接続するアノード電極41を形成した後パターニングし、その上に有機膜42を形成する。この時、前記有機膜42には低分子または高分子有機膜が使われうるが、低分子有機膜を使用する場合にホール注入層、ホール輸送層、有機発光層、電子輸送層、電子注入層などが単一あるいは複合の構造で積層形成され、使用可能な有機材料も銅フタロシアニン(CuPc)、N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3)などを初めとして多様な化合物が適用されうる。これらの低分子有機膜は真空蒸着により形成されうる。
【0102】
高分子有機膜の場合には、ホール輸送層HTL及び発光層EMLよりなる構造を有しうる。この時、前記ホール輸送層として、PEDOTが使用されうる。また、発光層として、PPV(Poly−Phenylenevinylene)系及びポリフルオレン系など高分子有機物質が使用されうる。これらから、スクリーン印刷やインクジェット印刷方法を用いて形成する。
【0103】
有機膜を形成した後、Al/Ca等によりカソード電極43を全面蒸着する、あるいはパターニングされる。そして、カソード電極43の上部は、ガラスまたはメタルキャップにより密封される。
【0104】
以上の説明は、本発明を有機ELディスプレイに適用した場合に関するが、本発明はこれに限定されず、液晶表示装置や、無機電界発光表示装置などTFTを利用するいかなる構造にも適用可能である。また、以上、本発明の望ましい実施例について説明したが、当該技術分野の当業者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び領域から離脱しない範囲内での多様な修正や変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の望ましい一実施例によるAM型有機ELディスプレイのTFT活性層構造を説明するための平面図である。
【図2】TFTの活性層をなす多結晶シリコン薄膜の異方性結晶構造を示す平面図である。
【図3】活性層の方向とチャンネル領域の電子移動度との関係を示すグラフである。
【図4】活性層の方向と電流比との関係を示すグラフである。
【図5】図2による多結晶シリコン薄膜において異方性結晶構造によって活性層の方向を別に形成した状態を示す平面図である。
【図6】図1の単一画素を示す部分の拡大平面図である。
【図7】図6の単位画素に関する等価回路図である。
【図8】図6のI−I線断面図である。
【図9】図6のII−II線断面図である。
【符号の説明】
【0106】
51 ゲートライン
52 データライン
53 駆動ライン
10r、10g、10b 第1TFT
20r、20g、20b 第2TFT
11r、11g、11b 第1活性層
21r、21g、21b 第2活性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自発光素子を具備する複数の副画素を含む画素と、
前記副画素の各々に備えられた、少なくともチャンネル領域を有する半導体活性層を具備し、前記自発光素子に電流を供給するために前記自発光素子に接続されてなる、駆動用薄膜トランジスタとを含むフラットパネルディスプレイであって、
前記半導体活性層のチャンネル領域が、少なくとも2つの前記副画素に関して相異なる方向に配置されてなることを特徴とするフラットパネルディスプレイ。
【請求項2】
前記副画素は異なる色相を有する、請求項1に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項3】
前記チャンネル領域は、前記副画素の色相別に相異なる方向に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項4】
前記チャンネル領域の方向は、同一の駆動電圧が前記副画素に加えられた際に、前記副画素の自発光素子を流れる電流値に応じて決定されてなる、請求項1に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項5】
前記チャンネル領域の方向は、前記チャンネル領域の電子移動度に応じて決定されてなる、請求項1に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項6】
前記半導体活性層は多結晶シリコンからなる、請求項1に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項7】
前記多結晶シリコンは異方性結晶粒を有する、請求項6に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項8】
前記チャンネル領域の方向は、前記チャンネル領域を形成する多結晶シリコンの結晶粒界の方向に応じて決定されてなる、請求項6に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項9】
前記チャンネル領域の方向は、同一の駆動電圧が各副画素に加えられた際に、前記副画素を流れる電流値に比例する、前記副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記チャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度に応じて決定されてなる、請求項8に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項10】
前記チャンネル領域の方向は、前記チャンネル領域の電子移動度に比例する、前記副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記チャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度に応じて決定されてなる、請求項9に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項11】
前記多結晶シリコンは、レーザーによる結晶化法により形成されてなる、請求項6に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項12】
自発光素子を具備する、赤色、緑色及び青色の副画素を含む画素と、
前記副画素の各々に備えられた、少なくともチャンネル領域を有する半導体活性層を具備し、前記自発光素子に電流を供給するために前記自発光素子に接続されてなる、駆動用薄膜トランジスタとを含むフラットパネルディスプレイであって、
前記半導体活性層のチャンネル領域が、前記副画素の色相別に相異なる方向に配置されてなることを特徴とするフラットパネルディスプレイ。
【請求項13】
前記チャンネル領域の方向は、同一の駆動電圧が前記副画素に加えられた際に、前記副画素の自発光素子を流れる電流値に応じて決定されてなる、請求項12に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項14】
前記チャンネル領域の方向は、前記緑色の副画素の自発光素子を流れる電流値が最も低くなる方向に決定されてなる、請求項13に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項15】
前記チャンネル領域の方向は、前記電流値が赤色、青色及び緑色の副画素の順に低くなる方向に決定されてなる、請求項13に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項16】
前記チャンネル領域の方向は、前記チャンネル領域の電子移動度に応じて決定されてなる、請求項12に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項17】
前記チャンネル領域の方向は、前記緑色の副画素の駆動用薄膜トランジスタにおける前記半導体活性層のチャンネル領域の電子移動度が、最も低くなる方向に決定されてなる、請求項16に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項18】
前記チャンネル領域の方向は、前記半導体活性層のチャンネル領域の電子移動度が、赤色、青色及び緑色の副画素の順に低くなる方向に決定されてなる、請求項16に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項19】
前記半導体活性層は多結晶シリコンよりなる、請求項12に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項20】
前記多結晶シリコンは異方性結晶粒を有する、請求項19に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項21】
前記チャンネル領域の方向は、前記チャンネル領域を形成する多結晶シリコンの結晶粒界の方向により決定されてなる、請求項19に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項22】
前記チャンネル領域の方向は、前記緑色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記緑色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度が、他の副画素における角度より大きくなるように決定されてなる、請求項21に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項23】
前記チャンネル領域の方向は、前記赤色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記赤色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度が、他の副画素における角度より小さくなるように決定されてなる、請求項21に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項24】
前記チャンネル領域の方向は、前記副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記チャンネル領域を形成する多結晶シリコンの結晶粒界とがなす角度が、緑色、青色及び赤色の副画素の順に小さくなる方向に決定されてなる、請求項21に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項25】
前記多結晶シリコンは、平行に配列された第1結晶粒界と、前記第1結晶粒界の間に前記第1結晶粒界にほぼ垂直に延びた第2結晶粒界とからなる、請求項19に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項26】
前記チャンネル領域の方向は、前記チャンネル領域を形成する多結晶シリコンの前記第1結晶粒界の方向によって決定されてなる、請求項25に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項27】
前記チャンネル領域の方向は、前記緑色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記緑色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの第1結晶粒界とがなす角度が、他の副画素における角度より小さくなるように決定されてなる、請求項26に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項28】
前記チャンネル領域の方向は、前記赤色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記赤色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの第1結晶粒界とがなす角度が、他の副画素における角度より大きくなるように決定されてなる、請求項26に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項29】
前記チャンネル領域の方向は、前記副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向と前記副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの第1結晶粒界とがなす角度が、緑色、青色及び赤色の順に大きくなるように決定されてなる、請求項26に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項30】
前記緑色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向は、前記緑色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの第1結晶粒界に対して平行である、請求項26に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項31】
前記赤色の副画素のチャンネル領域において電流が流れる方向は、前記赤色の副画素のチャンネル領域を形成する前記多結晶シリコンの第1結晶粒界に対して垂直である、請求項26に記載のフラットパネルディスプレイ。
【請求項32】
前記多結晶シリコンは、レーザーによる結晶化法により形成されてなる、請求項19に記載のフラットパネルディスプレイ。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate



【図3】
image rotate



【図4】
image rotate



【図5】
image rotate



【図6】
image rotate



【図7】
image rotate



【図8】
image rotate



【図9】
image rotate


【公開番号】特開2004−272193(P2004−272193A)
【公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−274643(P2003−274643)
【出願日】平成15年7月15日(2003.7.15)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】