説明

薄膜積層デバイスの製造方法及び液晶表示装置の製造方法

【課題】製造工程の増加を抑制して、製造工程において、プラスチック基板の変形及び支持基板からの剥離を抑制すると共に、プラスチック基板と支持基板との間への処理液の侵入を抑制する。
【解決手段】支持基板1に支持させたプラスチック基板11を処理室に搬入した後にその処理室の内部を真空引きする真空引き処理よりも前にプラスチック基板11に貫通孔11aを形成した後に、真空引き処理を行ったときにプラスチック基板11と支持基板1との間に介在する気体を貫通孔11aを介して外部に排出させるように構成された蓋部材3によって貫通孔3を覆うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜積層デバイスの製造方法及び液晶表示装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶表示装置等の表示装置の軽量化のために基板の薄型化が図られており、割れやすさ等の観点から、ガラス基板に代えてプラスチック基板を用いた表示装置の研究開発がされている。
【0003】
プラスチック基板を用いた表示装置の製造方法として、プラスチック基板単体をシート状にして搬送して複数の製造工程を行う方法と、プラスチック基板をロール状にして連続的に送り出して複数の製造工程を行う方法とが知られている。シート状のプラスチック基板を搬送して表示装置を製造する方法は、ガラス基板を用いての表示装置の製造に使用していた既存設備を一部利用できる点で、ロール状のプラスチック基板を連続的に送り出して表示装置を製造する方法に比べて、設備投資によるコストを低減できる。
【0004】
しかし、プラスチック基板は、ガラス基板に比べて剛性が小さく、熱変形温度が比較的低いため、スパッタ法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法による成膜処理及びドライエッチング処理等の加熱を伴う処理において、膨張収縮や反り返り等の変形が生じやすく、プラスチック基板への成膜ムラや、プラスチック基板上に形成した各膜に対してエッチングムラが生じやすい。そのため、プラスチック基板を用いた表示装置は、ガラス基板を用いたものに比べて製造し難い。
【0005】
そこで、プラスチック基板を支持基板に貼着した状態で搬送することにより、プラスチック基板の変形を抑制する方法が知られている。
【0006】
特許文献1の方法では、繰り返し使用可能な程度の接着力(すなわち、一時的に接着した後に剥がすことが可能な程度の接着力)を有する接着材によってプラスチック基板を支持基板に接着している。特許文献2の方法では、加熱処理によって接着力が弱まる接着材により、プラスチック基板を支持基板に接着している。特許文献3の方法では、プラスチック基板を別のプラスチック材料からなる支持基板に圧着して貼り付けている。特許文献4の方法では、熱圧着によってプラスチック基板を支持基板に融着している。
【特許文献1】特開2000−241823号公報
【特許文献2】特開2000−241822号公報
【特許文献3】特開昭58−147713号公報
【特許文献4】特開2000−187201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、液晶表示装置を製造する工程には、複数回に亘る高温の加熱処理、溶剤処理及び洗浄処理等が含まれるため、特許文献1の方法のように、繰り返し使用可能な程度の接着力でプラスチック基板を支持基板に接着した場合には、プラスチック基板が支持基板から剥がれてしまう虞がある。
【0008】
特許文献2の方法であっても、接着力を弱める加熱処理とは別に、成膜処理及びドライエッチング処理等の加熱を伴う処理を複数回に亘って行う必要がある。さらに、液晶表示装置の製造には、加熱処理を含むフォトリソグラフィー法が用いられているため、これらの加熱処理及び加熱を伴う処理によって接着材の接着力が弱まってプラスチック基板が支持基板から剥がれてしまう虞がある。
【0009】
特許文献3の方法のように、支持基板がプラスチック材料によって形成されている場合には、支持基板もプラスチック基板と同様に熱変形温度が比較的低いため、上記加熱を伴う処理において、プラスチック基板が支持基板ごと曲がりやすい。その結果、上述したような成膜ムラやエッチングムラが生じやすい。
【0010】
また、特許文献1〜特許文献4の方法のように、プラスチック基板と支持基板とを直接に接着して固定した場合には、上記加熱を伴う処理において、プラスチック基板と支持基板との膨張係数の違いにより、プラスチック基板が、支持基板ごと曲がったり、支持基板から剥がれてしまいやすく、プラスチック基板の変形を十分に抑制できずに上述したような成膜ムラやエッチングムラが生じやすい。その結果、安定した製造を行うことが難しい。
【0011】
これに対して、支持基板に配置させたプラスチック基板の外縁部をゴムシート等の弾性部材の一部に接着すると共に、その弾性部材の他の一部を支持基板に接着して、プラスチック基板を支持基板に支持させることが考えられる。このようにすれば、製造工程において、プラスチック基板が膨張又は収縮したときに、その膨張又は収縮に伴って支持基板の表面に水平方向に生じる力を弾性部材によって吸収すると共に分散し、プラスチック基板の膨張又は収縮に拘わらず、プラスチック基板の変形及び支持基板からの剥離を抑制することが可能になる。
【0012】
このように、弾性部材によってプラスチック基板を支持基板に支持させる場合には、プラスチック基板と支持基板との間に溶剤や洗浄液等の処理液が入り込むことを抑制する観点から、溶剤処理や洗浄処理等のウェット処理の際にプラスチック基板と支持基板との間は密閉されていることが好ましい。
【0013】
ところで、スパッタ法やCVD法による成膜処理及びドライエッチング処理を行うには、支持基板に支持させたプラスチック基板を処理室に搬入した後にその処理室の内部を真空引きする真空引き処理が前処理として行われる。
【0014】
しかし、プラスチック基板と支持基板との間が密閉されている状態で真空引き処理を行うと、プラスチック基板と支持基板との間にわずかに介在する空気及び水分等の気体が膨張することにより、プラスチック基板が支持基板から一部浮き上がって撓むため、プラスチック基板を搬送することが困難になると共に、成膜ムラ及びエッチングムラが生じてしまう。
【0015】
そこで、真空引き処理を行う前にプラスチック基板に貫通孔を形成し、且つウェット処理を行う前に貫通孔を塞ぐことにより、真空引き処理を行ったときにプラスチック基板と支持基板との間の気体を貫通孔から外部に排出してプラスチック基板の撓みを抑制すると共に、プラスチック基板と支持基板との間に処理液が入り込むことを抑制する方法が考えられる。しかしながら、この方法によると、真空引き処理の前に貫通孔を形成する工程を行い、且つウェット処理の前に貫通孔を塞ぐ工程を行う必要があるため、製造工程が大幅に増加してしまう。
【0016】
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、製造工程の増加を抑制して、製造工程において、プラスチック基板の変形及び支持基板からの剥離を抑制すると共に、プラスチック基板と支持基板との間への処理液の侵入を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、この発明では、支持基板に支持させたプラスチック基板が搬入された処理室の真空引き処理よりも前にプラスチック基板に貫通孔を形成した後、真空引き処理時に両基板の間に介在する気体を貫通孔を介して外部に排出させるように構成された蓋部材によって貫通孔を覆うようにした。
【0018】
具体的に、本発明に係る薄膜積層デバイスの製造方法は、支持基板にプラスチック基板を重ねて配置した状態で、枠状の弾性部材の内縁部を上記プラスチック基板の外縁部に接着すると共に、上記弾性部材の外縁部を上記支持基板に接着することにより、上記プラスチック基板を上記支持基板に支持させる第1の工程と、上記支持基板に支持させたプラスチック基板を処理室に搬入した後に該処理室の内部を真空引きする真空引き処理と、該真空引き処理によって真空引きされた処理室で上記プラスチック基板に薄膜を形成する成膜処理と、該薄膜が形成されたプラスチック基板を処理液によって処理するウェット処理とを行って、上記プラスチック基板に上記薄膜をパターニングする第2の工程と、上記薄膜がパターニングされた上記プラスチック基板を上記支持基板から分離させる第3の工程とを含む薄膜積層デバイスの製造方法であって、上記真空引き処理よりも前に上記プラスチック基板に貫通孔を形成した後に、上記真空引き処理を行ったときに上記プラスチック基板と上記支持基板との間に介在する気体を上記貫通孔を介して外部に排出させるように構成された蓋部材によって上記貫通孔を覆う。
【0019】
上記蓋部材は、未硬化の熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0020】
上記第2の工程は、上記薄膜が形成されたプラスチック基板をドライエッチング室に搬入した後に該ドライエッチング室の内部を真空引きする真空引き処理と、該真空引き処理によって真空引きされたドライエッチング室で上記薄膜をドライエッチングしてパターニングするドライエッチング処理とを含み、上記ドライエッチング室の真空引き処理よりも前に、上記プラスチック基板に上記貫通孔を形成することが好ましい。
【0021】
上記蓋部材は、上記プラスチック基板に対する接触面が鏡面状に形成されたゴムシートであることが好ましい。
【0022】
上記蓋部材の一端側で上記貫通孔を覆うことが好ましい。
【0023】
上記第2の工程は、上記薄膜が形成されたプラスチック基板をドライエッチング室に搬入した後に該ドライエッチング室の内部を真空引きする真空引き処理と、該真空引き処理によって真空引きされたドライエッチング室で上記薄膜をドライエッチングしてパターニングするドライエッチング処理とを含むことが好ましい。
【0024】
上記第1の工程よりも前に、上記プラスチック基板に上記貫通孔を形成することが好ましい。
【0025】
また、本発明に係る液晶表示装置の製造方法は、支持基板にプラスチック基板を重ねて配置した状態で、枠状の弾性部材の内縁部を上記プラスチック基板の外縁部に接着すると共に、上記弾性部材の外縁部を上記支持基板に接着することにより、上記プラスチック基板を上記支持基板に支持させる第1の工程と、上記支持基板に支持させたプラスチック基板を処理室に搬入した後に該処理室の内部を真空引きする真空引き処理と、該真空引き処理によって真空引きされた処理室で上記プラスチック基板に薄膜を形成する成膜処理と、該薄膜が形成されたプラスチック基板を処理液によって処理するウェット処理とを行って、上記プラスチック基板に上記薄膜をパターニングする第2の工程と、上記薄膜がパターニングされた上記プラスチック基板を上記支持基板から分離させる第3の工程とを含む液晶表示装置の製造方法であって、上記真空引き処理よりも前に上記プラスチック基板に貫通孔を形成した後に、上記真空引き処理を行ったときに上記プラスチック基板と上記支持基板との間に介在する気体を上記貫通孔を介して外部に排出させるように構成された蓋部材によって上記貫通孔を覆う。
【0026】
−作用−
次に、本発明の作用について説明する。
【0027】
製造工程において、プラスチック基板は、加熱又は冷却されることによって膨張又は収縮する。本発明に係る薄膜積層デバイスの製造方法によると、第1の工程では、枠状の弾性部材の内縁部をプラスチック基板の外縁部に接着すると共に、弾性部材の外縁部を支持基板に接着することにより、プラスチック基板を支持基板に支持させるため、支持基板に支持させたプラスチック基板に薄膜をパターニングする第2の工程において、プラスチック基板が膨張又は収縮したとしても、プラスチック基板の膨張又は収縮に伴って支持基板の表面に水平な方向に生じる力が弾性部材によって吸収されると共に分散される。そのことにより、プラスチック基板は、その全体が支持基板上に支持されながら支持基板の表面に水平な方向に膨張又は収縮することが可能になる。すなわち、プラスチック基板の膨張又は収縮に拘わらず、プラスチック基板の全体が支持基板上に支持される状態が維持される。そのことに加え、プラスチック基板と支持基板との間が密閉状態となり、第2の工程においてウェット処理を行っても、プラスチック基板の周縁からプラスチック基板と支持基板との間に処理液が入り込むことが抑制される。
【0028】
そして、第2の工程において真空引き処理を行うよりも前にプラスチック基板に貫通孔を形成した後に、真空引き処理を行ったときにプラスチック基板と支持基板との間に介在する気体を貫通孔を介して外部に排出させるように構成された蓋部材によって貫通孔を覆う。そのことにより、真空引き処理によってプラスチック基板と支持基板との間の気体が外部に排出され、成膜処理を行う際にプラスチック基板の撓みが抑制されるため、成膜ムラが抑制される。さらに、プラスチック基板と支持基板との間の気体が外部に排出された後は蓋部材によって貫通孔が自動的に塞がれ、ウェット処理を行う際に蓋部材によって貫通孔が塞がれているため、貫通孔からプラスチック基板と支持基板との間に処理液が入り込むことが抑制される。したがって、真空引き処理の前にプラスチック基板に貫通孔を形成する工程及びその貫通孔をウェット処理の前に塞ぐ工程の少なくとも一方を省略することが可能になる。その結果、製造工程の増加が抑制され、製造工程において、プラスチック基板の変形及び支持基板からの剥離が抑制されると共に、プラスチック基板と支持基板との間への処理液の侵入が抑制される。
【0029】
上記蓋部材が未硬化の熱硬化性樹脂である場合には、真空引き処理によってプラスチック基板と支持基板との間の気体が、貫通孔及び蓋部材中を介して外部に排出される。その後、成膜処理に伴う加熱によって貫通孔を覆っている蓋部材が硬化して貫通孔が自動的に塞がれるため、後にウェット処理を行ったときに貫通孔から処理液が入り込むことが抑制される。したがって、蓋部材を硬化させる工程(貫通孔を塞ぐ工程)を第2の工程での成膜処理に伴う加熱とは別個に行う必要がなくなるため、製造工程の増加が抑制される。
【0030】
さらに、第2の工程が、薄膜が形成されたプラスチック基板をドライエッチング室に搬入した後にそのドライエッチング室の内部を真空引きする真空引き処理と、その真空引き処理によって真空引きされたドライエッチング室で薄膜をドライエッチングしてパターニングするドライエッチング処理を含む場合であっても、ドライエッチング室の真空引き処理よりも前に上記貫通孔を形成すると、その真空引き処理によってプラスチック基板と支持基板との間の気体が外部に排出されるため、ドライエッチング処理において、プラスチック基板が撓むことが抑制され、薄膜のエッチングムラが抑制される。そして、薄膜をウェットエッチングしてパターニングする場合に対して、薄膜を精度良くパターニングすることが可能になる。
【0031】
上記蓋部材が、プラスチック基板に対する接触面が鏡面状のゴムシートである場合には、真空引き処理によってプラスチック基板と支持基板との間の気体が、プラスチック基板の表面から蓋部材を一部浮き上がらせ、蓋部材の浮き上がった一部とプラスチック基板との間の隙間から外部に排出される。さらに、プラスチック基板と支持基板との間の気体が外部に排出された後は浮き上がった蓋部材の一部が再びプラスチック基板に接触して貫通孔が塞がれる。蓋部材におけるプラスチック基板への接触面は鏡面状に形成されているので、蓋部材とプラスチック基板との密着性が高く、後にウェット処理を行ったときに貫通孔から処理液が入り込むことが抑制される。このように、真空引き処理において、プラスチック基板と支持基板との間の気体が外部に排出され、プラスチック基板と支持基板との間の気体が外部に排出された後に貫通孔が自動的に塞がれることにより、プラスチック基板に貫通孔を形成する工程及びその貫通孔を塞ぐ工程の双方を省略することが可能になるため、製造工程の増加が抑制される。
【0032】
特に、蓋部材の一端側で貫通孔を覆う場合には、蓋部材が一端側で浮き上がりやすくなるため、真空引き処理によってプラスチック基板と支持基板との間の気体が確実に外部に排出される。
【0033】
また、第2の工程が、薄膜が形成されたプラスチック基板をドライエッチング室に搬入した後にそのドライエッチング室の内部を真空引きする真空引き処理と、その真空引き処理によって真空引きされたドライエッチング室で薄膜をドライエッチングしてパターニングするドライエッチング処理を含む場合であっても、ドライエッチング室の真空引き処理によってプラスチック基板と支持基板との間の気体が外部に排出されるため、ドライエッチング処理において、プラスチック基板が撓むことが抑制され、薄膜のエッチングムラが抑制される。そして、薄膜をウェットエッチングしてパターニングする場合に対して、薄膜を精度良くパターニングすることが可能になる。
【0034】
ところで、第1の工程の後にプラスチック基板に貫通孔を形成する場合には、プラスチック基板に貫通孔を形成する際にプラスチック基板を支持している支持基板を損傷させやすい。これに対して、第1の工程よりも前にプラスチック基板に貫通孔を形成する場合には、プラスチック基板に貫通孔を形成した後にプラスチック基板を支持基板に支持させるため、支持基板の損傷が抑制される。これにより、支持基板を再利用することが可能になる。
【0035】
また、本発明に係る液晶表示装置の製造方法によると、第1の工程において、枠状の弾性部材の内縁部をプラスチック基板の外縁部に接着すると共に、弾性部材の外縁部を支持基板に接着するため、支持基板に支持させたプラスチック基板に薄膜をパターニングする第2の工程において、プラスチック基板が膨張又は収縮したとしても、プラスチック基板の膨張又は収縮に伴って支持基板の表面に水平な方向に生じる力が弾性部材によって吸収されると共に分散されるため、プラスチック基板の膨張又は収縮に拘わらず、プラスチック基板の全体が支持基板上に支持される状態が維持される。そのことに加え、プラスチック基板と支持基板との間が密閉状態となり、第2の工程においてウェット処理を行っても、プラスチック基板と支持基板との間に処理液が入り込むことが抑制される。
【0036】
そして、第2の工程において真空引き処理を行うよりも前にプラスチック基板に貫通孔を形成した後に、真空引き処理を行ったときにプラスチック基板と支持基板との間に介在する気体を貫通孔を介して外部に排出させるように構成された蓋部材によって貫通孔を覆う。そのことにより、真空引き処理によってプラスチック基板と支持基板との間の気体が外部に排出され、成膜処理を行う際にプラスチック基板の撓みが抑制されるため、成膜ムラが抑制される。さらに、プラスチック基板と支持基板との間の気体が外部に排出された後は蓋部材によって貫通孔が自動的に塞がれ、ウェット処理を行う際に蓋部材によって貫通孔が塞がれているため、貫通孔からプラスチック基板と支持基板との間に処理液が入り込むことが抑制される。したがって、真空引き処理の前にプラスチック基板に貫通孔を形成する工程及びその貫通孔をウェット処理の前に塞ぐ工程の少なくとも一方を省略することが可能になる。その結果、製造工程の増加が抑制され、製造工程において、プラスチック基板の変形及び支持基板からの剥離が抑制されると共に、プラスチック基板と支持基板との間への処理液の侵入が抑制される。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、支持基板に支持させたプラスチック基板が搬入された処理室の真空引き処理を行うよりも前にプラスチック基板に貫通孔を形成した後に、真空引き処理を行ったときにプラスチック基板と支持基板との間に介在する気体を貫通孔を介して外部に排出させるように構成された蓋部材によって貫通孔を覆うので、製造工程の増加を抑制でき、製造工程において、プラスチック基板の変形及び支持基板からの剥離を抑制できると共に、プラスチック基板と支持基板との間への処理液の侵入を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の各実施形態に限定されるものではない。
【0039】
《発明の実施形態1》
図1〜図17は、本発明の実施形態1を示している。図1は、液晶表示装置Sを概略的に示す断面図である。図2及び図3は、液晶表示装置Sを構成する一対の基板10,30の一部をそれぞれ拡大して概略的に示す断面図である。
【0040】
液晶表示装置Sは、図1に示すように、それぞれプラスチック基板11,31に複数の薄膜が積層された薄膜積層デバイスであるアクティブマトリクス基板10及び対向基板30と、これらアクティブマトリクス基板10と対向基板30との間に設けられた液晶層40とを備えている。この液晶表示装置Sは、複数の画素(図示省略)から構成されて画像表示を行う表示部Dを有している。
【0041】
アクティブマトリクス基板10及び対向基板30は、互いに対向して配置され、例えば矩形状等にそれぞれ形成されている。これらアクティブマトリクス基板10及び対向基板30は、液晶層40側の表面に配向膜41,42がそれぞれ設けられていると共に、液晶層40とは反対側の表面に偏光板43,44がそれぞれ設けられている。そして、これら両基板10,30の間には枠状のシール材45が設けられ、このシール材45の内側に液晶材料が封入されていることにより、上記液晶層40が設けられている。
【0042】
アクティブマトリクス基板10は、プラスチック基板11における表示部Dに、互いに平行に延びる複数のゲート線と、各ゲート線に交差して互いに平行に延びる複数のソース線とが設けられている。これら各ゲート線及び各ソース線は、例えばTa等から形成されている。そして、各ゲート線と各ソース線との交差部毎に、後述する複数の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor、以下、TFTと称する)23及び各TFT23にそれぞれ接続された複数の画素電極24が設けられている。
【0043】
プラスチック基板11の表面には、図2に示すように、例えばSiNx等からなるベースコート層12が形成されている。ベースコート層12の表面には、上記各ゲート線が形成されている。これら各ゲート線は、各TFT20のゲート電極13を構成している。さらに、ベースコート層12上には、各ゲート線(ゲート電極13)を覆うように、例えばSiNx等からなる絶縁膜14が形成されている。
【0044】
絶縁膜14の表面には、その絶縁膜14を介して各ゲート電極13に重なるように、例えばアモルファスシリコン等からなる半導体層19が形成されている。また、絶縁膜14の表面には、上記各ソース線も形成されている。各ソース線は、各TFT23のソース電極21を構成している。
【0045】
各半導体層19の表面には、各ゲート電極13に重なるように、例えばSiNx等からなるチャネル保護層17が形成されている。各半導体層19及びチャネル保護層17の表面には、n型不純物が高濃度にドープされたn+アモルファスシリコン等からなるn+半導体層20が形成されている。
【0046】
このn+半導体層20は、チャネル保護層17上で2つの領域に分断されており、その一部からチャネル保護層17が露出している。一方のn+半導体層20及び絶縁膜14の表面には、上記ソース電極21が形成されている。他方のn+半導体層20及び絶縁膜14の表面には、ドレイン電極22が形成されている。このように、各画素毎にボトムゲート型のTFT23が形成されている。
【0047】
尚、本実施形態では、各TFT23がボトムゲート型のTFTであるとして説明したが、各TFT23は、トップゲート型のTFTであってもよい。
【0048】
また、絶縁膜14の表面には、各TFT23のドレイン電極22にそれぞれ接続され、例えばITO(Indium Tin Oxide)等からなる複数の画素電極24がマトリクス状に設けられている。各TFT23には、例えばSiNx等からなる保護膜25が積層されている。この保護膜25は、各画素電極24を露出させる開口を有している。このアクティブマトリクス基板10には、液晶層40の厚みを保持するための複数の柱状のスペーサ(図示省略)が形成されている。
【0049】
上記対向基板30は、図3に示すように、プラスチック基板31における表示部Dに、例えばSiNx等からなるベースコート層32が形成されている。このベースコート膜32の表面には、各画素電極24にそれぞれ重なり合うように複数のカラーフィルタ33が形成されている。隣り合う各カラーフィルタ33の間には、これら各カラーフィルタ33を区画するようにブラックマトリクス層34が形成されている。また、対向基板30には、各カラーフィルタ33及びブラックマトリクス層34を覆うようにITO等からなる共通電極35が形成されている。
【0050】
尚、本実施形態では、ゲート線(ゲート電極13)、ソース線(ソース電極21)及びドレイン電極22がTaから形成されているとしているが、これら配線及び電極は、Al、Mo、MoW、MoNb、Al合金、Ti及びITO等の少なくとも1つから形成されていてもよい。また、半導体層19及びn+半導体層20は、それぞれアモルファスシリコンから形成されているとしているが、その他に多結晶シリコン、微結晶シリコン又は酸化物半導体等から形成されていてもよい。
【0051】
こうして、液晶表示装置Sは、互いに対向する各画素電極24と共通電極35との間で液晶層40に電圧を印加することにより、液晶分子の配向を制御して所望の表示を行うようになっている。
【0052】
−製造方法−
次に、上記液晶表示装置Sを製造する方法について説明する。
【0053】
液晶表示装置Sは、アクティブマトリクス基板10及び対向基板30を作製し、これらアクティブマトリクス基板10と対向基板30とをシール材45を介して貼り合わせると共に、両基板10,30の間でシール材45の内側に液晶材料を封入した後、両基板10,30に偏光板43,44を貼り付けて製造する。本発明に係る液晶表示装置Sの製造方法は、特にアクティブマトリクス基板10及び対向基板30の作製方法に特徴があるため、アクティブマトリクス基板10及び対向基板30の作製方法について、以下に図4〜図17を参照しながら詳述する。図4〜図17は、アクティブマトリクス基板10及び対向基板30の作製方法を説明するための図である。
【0054】
(アクティブマトリクス基板10の作製方法)
まず、アクティブマトリクス基板10の作製方法について説明する。アクティブマトリクス基板10の作製方法は、第1の工程と、第2の工程と、第3の工程とを含む。
【0055】
(第1の工程)
第1の工程でプラスチック基板11及び支持基板1に枠状の弾性部材であるシリコン系ゴムシート(以下、単にゴムシートと称する)2を接着する接着処理室50は、図6に示すように、プラスチック基板11が重ねられた支持基板1を載置するための基板ステージ51と、ゴムシート2を所定の位置で保持することが可能な弾性部材ホルダ52とを備えている。また、接着処理室50は、真空ポンプ(図示省略)を備えており、接着処理室50の内部を真空引きすることが可能になっている。
【0056】
プラスチック基板11は、厚さ0.1mm程度であり、例えばエポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネイト樹脂及びアクリル樹脂等の少なくとも1つから形成されている。支持基板1は、厚さ0.7mm程度のガラス基板(コーニング1737)である。ゴムシート2は、例えば1.0cm程度の幅に形成されており、プラスチック基板11及び支持基板1への接触面が鏡面状に形成されて、接着剤を用いることなくプラスチック基板11及び支持基板1に接着することが可能になっている。このゴムシート2のプラスチック基板11及び支持基板1に対する接着代は0.5mm程度である。
【0057】
第1の工程では、まず、プラスチック基板11を支持基板1の所定の位置(例えば中央位置)に重ねて配置した状態で、支持基板1に重ねたプラスチック基板11を上記接着処理室50の内部に搬入して、プラスチック基板11をゴムシート2に対向して配置させる。次に、接着処理室50の内部を真空引きした後、図4及び図5に示すように、ゴムシート2の内縁部をプラスチック基板11の外縁部に接着すると共に、そのゴムシート2の外縁部を支持基板1に接着することにより、プラスチック基板11を支持基板1に支持させる。
【0058】
尚、本実施形態では、支持基板1にガラス基板を適用しているが、支持基板1には、金属基板、セラミック基板及び樹脂基板等のプラスチック基板11の変形を抑制可能な程度の剛性又は厚みを有する基板を適用することも可能である。
【0059】
次に、支持基板1に支持させたプラスチック基板11を接着処理室50から搬出した後に、図7に示すように、レーザー等によってプラスチック基板11に貫通孔11aを形成する。
【0060】
その後、プラスチック基板11をオーブン室に搬入し、支持基板1及びプラスチック基板11に接着させたゴムシート2を窒素雰囲気中において例えば250℃程度で120分間に亘って焼成する。これにより、ゴムシート2中のシロキサンが除去される。そして、ゴムシート2から発生したシロキサンによってプラスチック基板11及び支持基板1とゴムシート2との界面でSiO膜が形成され、そのSiO膜が両基板1,11及びゴムシート2に固着することにより、両基板1,11とゴムシート2との接着力が高められるため、製造工程中にプラスチック基板11が支持基板1から剥がれることが抑制される。
【0061】
(第2の工程)
次に行う第2の工程では、支持基板1に支持させたプラスチック基板11に複数の薄膜を積層して、各TFT23及び各画素電極24等を形成する。
【0062】
まず、真空引き処理及びスパッタ法による成膜処理を行うことにより、図10に示すように、ベースコート層12を積層する。すなわち、支持基板1に支持させたプラスチック基板11を成膜処理室に搬入した後、その成膜処理室の内部を真空引きする真空引き処理を行う。続いて、真空引き処理によって真空引きされた成膜処理室において、プラスチック基板11の表面にスパッタ法によってベースコート層(例えば150nm程度等)12を形成する成膜処理を行う。このとき、ゴムシート2上にもベースコート層12が形成される。これにより、後に行うウェット処理において、ゴムシート2が処理液を吸収することが抑制され、ゴムシート2を介してプラスチック基板11と支持基板1との間に処理液が侵入することが抑制される。
【0063】
次に、ベースコート層12を積層したプラスチック基板11を成膜処理室から搬出した後、図8及び図9に示すように、後の工程で真空引き処理を行ったときにプラスチック基板11と支持基板1との間に介在する空気及び水分等の気体を外部に排出させるように構成された蓋部材3によって、プラスチック基板11の貫通孔11aを覆う。本実施形態の蓋部材3は、未硬化の熱硬化性樹脂であり、貫通孔11aを覆うように未硬化の熱硬化性樹脂をプラスチック基板11に塗布することによって設けられる。
【0064】
次に、真空引き処理及びスパッタ法による成膜処理を行うことにより、ベースコート層12の表面にTa膜(例えば厚さ100nm〜150nm程度)を形成する。このとき、成膜処理に伴う加熱によって貫通孔11aを覆っている蓋部材3が硬化する。
【0065】
続いて、ドライエッチング処理を含むフォトリソグラフィーによってTa膜をパターニングすることにより、各ゲート線(各ゲート電極13)を形成する。本実施形態では、ドライエッチング処理を行う前にプラスチック基板11に新たに貫通孔11aを形成する。
【0066】
すなわち、Ta膜にレジスト材料を塗布するレジスト材料塗布処理を行った後に焼成処理を行うことによってレジスト膜を形成し、そのレジスト膜に対してマスクを用いた露光処理及び現像処理を行って、Ta膜における各ゲート線(各ゲート電極13)を形成する領域にマスクレジスト層を形成する。次に、レーザー等によってプラスチック基板11に貫通孔11aを形成する。続いて、マスクレジスト層が形成されたプラスチック基板11をドライエッチング室に搬入した後にそのドライエッチング室の内部を真空引きする真空引き処理を行う。そして、真空引き処理によって真空引きされたドライエッチング室でマスクレジスト層をマスクとしてTa膜をドライエッチングしてパターニングするドライエッチング処理を行った後、剥離液又はアッシング等によってマスクレジスト層を除去することによって各ゲート線(各ゲート電極13)を形成する。
【0067】
次に、真空引き処理及びCVD(Chemical Vapor Deposition)法による成膜処理を繰り返し連続して行うことにより、図11に示すように、絶縁膜(例えば厚さ200nm〜500nm程度)14及びアモルファスシリコン膜等の半導体膜(例えば厚さ10nm〜150nm程度)15をベースコート層12及び各ゲート線(各ゲート電極13)上に順に積層する。
【0068】
次に、未硬化の熱硬化性樹脂を塗布することによって貫通孔11aを蓋部材3で覆う。
【0069】
その後、真空引き処理及びCVD法による成膜処理を行うことにより、SiNx膜(例えば厚さ100nm〜300nm程度)16を半導体膜15に積層する。このとき、成膜処理に伴う加熱によって蓋部材3が硬化する。
【0070】
続いて、ウェットエッチング処理を含むフォトリソグラフィーによってSiNx膜をパターニングすることにより、図12に示すように、エッチストッパとして各チャネル保護層17を形成する。すなわち、レジスト材料塗布処理、焼成処理、露光処理及び現像処理を行って、SiNx膜16における各チャネル保護層17を形成する領域にマスクレジスト層を形成する。そして、そのマスクレジスト層をマスクとしてSiNx膜16をウェットエッチングしてパターニングするウェットエッチング処理を行った後、剥離液又はアッシング等によってマスクレジスト層を除去することによって各チャネル保護層17を形成する。
【0071】
次に、レーザー等によってプラスチック基板11に貫通孔11aを再び形成した後、未硬化の熱硬化性樹脂を塗布することによって貫通孔11aを蓋部材3で覆う。
【0072】
その後、真空引き処理及びCVD法による成膜処理を行うことにより、n+アモルファスシリコン膜等のn+半導体膜(例えば厚さ50nm〜150nm程度)18を各チャネル保護層17を覆うように半導体膜15上に積層する。このとき、成膜処理に伴う加熱によって蓋部材3が硬化する。続いて、ウェットエッチング処理を含むフォトリソグラフィーによって半導体膜15及びn+半導体膜18の双方をパターニングすることにより、図13に示すように、半導体層19及びn+半導体層20を形成する。
【0073】
次に、レーザー等によってプラスチック基板11に貫通孔11aを再度形成した後、未硬化の熱硬化性樹脂を塗布することによって貫通孔11aを蓋部材3で覆う。
【0074】
その後、真空引き処理及びスパッタ法による成膜処理を行うことにより、各n+半導体層20を覆うように絶縁膜14にTa膜(例えば厚さ100nm〜300nm程度)を積層する。このとき、成膜処理に伴う加熱によって蓋部材3が硬化する。
【0075】
続いて、ドライエッチング処理を含むフォトリソグラフィーによってTa膜をパターニングすることにより、図14に示すように、各ソース線(ソース電極21)及びドレイン電極22を形成すると共に、チャネル部のn+半導体層20を除去する。ここでも、ドライエッチング処理を行う前にプラスチック基板11に再び貫通孔11aを形成する。そうして、プラスチック基板11に各TFT23を形成する。
【0076】
次に、未硬化の熱硬化性樹脂を塗布することによって貫通孔11aを蓋部材3で覆う。
【0077】
その後、真空引き処理及びスパッタ法による成膜処理を行うことにより、絶縁膜14上にITO膜(例えば厚さ50nm〜200nm程度)を積層する。このとき、成膜処理に伴う加熱で蓋部材3が硬化する。続いて、ウェットエッチング処理を含むフォトリソグラフィーによってITO膜をパターニングすることにより、図15に示すように、各画素電極24を形成する。
【0078】
次に、レーザー等によってプラスチック基板11に貫通孔11aを新たに形成した後、未硬化の熱硬化性樹脂を塗布することによって貫通孔11aを蓋部材3によって覆う。
【0079】
その後、真空引き処理及びCVD法による成膜処理を行うことにより、SiNx膜(例えば厚さ100nm〜700nm程度)を積層する。続いて、ウェットエッチング処理を含むフォトリソグラフィーによってSiNx膜をパターニングすることにより、保護層25を形成する。
【0080】
次に、保護層25を覆うように感光性樹脂材料を塗布して焼成することによって樹脂層(例えば厚さ2μm〜5μm程度)を形成した後に、マスクを用いた露光処理及び現像処理を行ってその樹脂層をパターニングすることにより、各スペーサを形成する。その後、各スペーサが形成されたプラスチック基板11に印刷法等によって配向膜41を設けた後、その配向膜41の表面に液晶分子の配向を制御するためのラビング処理を行う。
【0081】
(第3の工程)
その後に行う第3の工程では、各TFT23及び各画素電極24等が形成されたプラスチック基板11のゴムシート2が接着している外縁部をレーザーやダイシング装置等を用いて切断することにより、図16に示すように、プラスチック基板11を支持基板1から分離させる。このようにして、アクティブマトリクス基板10が作製される。
【0082】
(対向基板30の作製方法)
次に、対向基板30の作製方法について説明する。対向基板30の作製方法も、第1の工程と、第2の工程と、第3の工程とを含む。
【0083】
(第1の工程)
対向基板30の作製における第1の工程でも、上記アクティブマトリクス基板10の作製における第1の工程と同様に、図4及び図5に示すように、支持基板1にプラスチック基板31を重ねて配置した状態で、枠状の弾性部材であるゴムシート2の内縁部をプラスチック基板31の外縁部に接着すると共に、そのゴムシート2の外縁部を支持基板1に接着することにより、プラスチック基板31を支持基板1に支持させる。支持基板1及びゴムシート2は、アクティブマトリクス基板10の作製で用いたものと同様のものであって、プラスチック基板31の大きさに合わせたものを用いる。
【0084】
その後、図7に示すように、レーザー等によってプラスチック基板31に貫通孔31aを形成する。
【0085】
(第2の工程)
次に行う第2の工程では、支持基板1に支持させたプラスチック基板31に複数の薄膜を積層して、各カラーフィルタ33及び共通電極35を形成する。
【0086】
まず、真空引き処理及びスパッタ法による成膜処理を行うことにより、図17に示すように、支持基板1に支持させたプラスチック基板31にベースコート層(例えば厚さ150nm程度)32を形成する。このとき、アクティブマトリクス基板10の作製と同様に、ゴムシート2上にもベースコート層32が形成されることにより、後に行うウェット処理においてゴムシート2が処理液を吸収することが抑制される。その後、ベースコート層32上に印刷法等によって各カラーフィルタ33及びブラックマトリクス層34を形成する。
【0087】
次に、図8及び図9に示すように、未硬化の熱硬化性樹脂を塗布することによって蓋部材3で貫通孔31aを覆う。
【0088】
続いて、真空引き処理及びスパッタ法による成膜処理を行うことにより、各カラーフィルタ33及びブラックマトリクス層34を覆うようにITO膜(例えば厚さ50nm〜200nm程度)を形成する。このとき、成膜処理に伴う加熱で蓋部材3が硬化する。続いて、ウェットエッチング処理を含むフォトリソグラフィーによってITO膜をパターニングすることにより、共通電極35を形成する。
【0089】
その後、共通電極35が形成されたプラスチック基板31に印刷法等によって配向膜42を設け、その配向膜42の表面に液晶分子の配向を制御するためのラビング処理を行う。
【0090】
(第3の工程)
その後に行う第3の工程では、アクティブマトリクス基板10の作製と同様に、ゴムシート2が接着しているプラスチック基板31の外縁部をレーザーやダイシング装置等を用いて切断することにより、図16に示すように、プラスチック基板31を支持基板1から分離させる。このようにして、対向基板30が作製される。
【0091】
−実施形態1の効果−
したがって、この実施形態1によると、アクティブマトリクス基板10の作製における第1の工程では、支持基板1にプラスチック基板11を重ねて配置した状態で、枠状のゴムシート2の内縁部をプラスチック基板11の外縁部に接着すると共に、ゴムシート2の外縁部を支持基板1に接着することにより、プラスチック基板11を支持基板1に支持させるため、第2の工程において、プラスチック基板11が膨張又は収縮したとしても、プラスチック基板11の膨張又は収縮に伴って支持基板1の表面に水平な方向に生じる力がゴムシート2によって吸収されると共に分散される。そのことにより、プラスチック基板11は、その全体が支持基板1上に支持されながら支持基板1の表面に水平な方向に膨張又は収縮することが可能になる。すなわち、プラスチック基板11の膨張又は収縮に拘わらず、プラスチック基板11の全体が支持基板1上に支持された状態を維持できる。そのことに加え、プラスチック基板11と支持基板1との間が密閉状態となり、第2の工程において現像処理及びウェットエッチング処理等のウェット処理を行っても、プラスチック基板11の周縁からプラスチック基板11と支持基板1との間に現像液及びエッチング液等の処理液が入り込むことを抑制できる。
【0092】
そして、第2の工程において真空引き処理を行うよりも前にプラスチック基板11に貫通孔11aを形成した後に、真空引き処理を行ったときにプラスチック基板11と支持基板1との間に介在する気体を貫通孔11aを介して外部に排出させるように構成された未硬化の熱硬化性樹脂である蓋部材3によって貫通孔11aを覆うため、真空引き処理によって、プラスチック基板11と支持基板1との間の気体が、貫通孔11a及び蓋部材3中を介して外部に排出される。その後、成膜処理に伴う加熱によって貫通孔11aを覆っている蓋部材3が硬化して貫通孔11aが自動的に塞がれるため、後にウェット処理を行ったときに貫通孔11aから処理液が入り込むことを抑制できる。したがって、蓋部材3を硬化させる工程(貫通孔11aを塞ぐ工程)を第2の工程での成膜処理に伴う加熱とは別個に行う必要がなくなる。その結果、アクティブマトリクス基板10の作製工程の増加を抑制でき、その作製工程において、プラスチック基板11の変形及び支持基板1からの剥離を抑制できると共に、プラスチック基板11と支持基板1との間への処理液の侵入を抑制できる。
【0093】
さらに、第2の工程が、薄膜が形成されたプラスチック基板11をドライエッチング室に搬入した後にそのドライエッチング室の内部を真空引きする真空引き処理と、その真空引き処理によって真空引きされたドライエッチング室で薄膜をドライエッチングしてパターニングするドライエッチング処理を含み、ドライエッチング室の真空引き処理の前に貫通孔11aを形成することにより、その真空引き処理によってプラスチック基板11と支持基板1との間の気体が貫通孔11aを介して外部に排出されるため、ドライエッチング処理において、プラスチック基板11が撓むことを抑制でき、薄膜のエッチングムラを抑制できる。そして、薄膜をウェットエッチングしてパターニングする場合に対して、薄膜を精度良くパターニングすることができる。
【0094】
また、対向基板30の作製における第1の工程においても、支持基板1にプラスチック基板31を重ねて配置した状態で、枠状のゴムシート2の内縁部をプラスチック基板31の外縁部に接着すると共に、ゴムシート2の外縁部を支持基板1に接着することにより、プラスチック基板31を支持基板1に支持させるため、プラスチック基板31の膨張又は収縮に拘わらず、プラスチック基板31の全体が支持基板1上に支持された状態を維持できることに加え、第2の工程においてウェット処理を行っても、プラスチック基板31の周縁からプラスチック基板31と支持基板1との間に処理液が入り込むことを抑制できる。
【0095】
そして、第2の工程において真空引き処理を行うよりも前にプラスチック基板31に貫通孔31aを形成した後に、アクティブマトリクス基板10の作製と同様に、未硬化の熱硬化性樹脂である蓋部材3によって貫通孔31aを覆うため、蓋部材3を硬化させる工程(貫通孔31aを塞ぐ工程)を第2の工程での成膜処理に伴う加熱とは別個に行う必要がなくなる。その結果、対向基板30の作製工程の増加を抑制でき、その作製工程において、プラスチック基板31の変形及び支持基板1からの剥離を抑制できると共に、プラスチック基板31と支持基板1との間への処理液の侵入を抑制できる。
【0096】
《発明の実施形態2》
図18〜図20は、本発明の実施形態2を示している。尚、以降の各実施形態では、図1〜図17と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。図18は、本実施形態の蓋部材3によって貫通孔11a(31a)が覆われたプラスチック基板11(31)を概略的に示す平面図である。図19は、図18のXIX−XIX線に沿ってプラスチック基板11(31)を概略的に示す断面図である。
【0097】
上記実施形態1では、蓋部材3が未硬化の熱硬化性樹脂であるとしたが、本実施形態では、蓋部材3が、プラスチック基板11,31に対する接触面が鏡面状に形成されたシリコン系ゴムシートである。以下に、本実施形態におけるアクティブマトリクス基板10及び対向基板30の作製方法についてそれぞれ説明する。
【0098】
(アクティブマトリクス基板10の作製方法)
本実施形態の作製方法では、第1の工程よりも前に、レーザー等によってプラスチック基板11に貫通孔11aを形成する。
【0099】
(第1の工程)
次に、第1の工程では、上記実施形態1と同様に、支持基板1にプラスチック基板11を重ねて配置した状態で、枠状のゴムシート2の内縁部をプラスチック基板11の外縁部に接着すると共に、そのゴムシート2の外縁部を支持基板1に接着することにより、プラスチック基板11を支持基板1に支持させる。
【0100】
その後、図18及び図19に示すように、プラスチック基板11の貫通孔11aを覆うように蓋部材3をプラスチック基板11に貼り付ける。このとき、蓋部材3の一端側で貫通孔11aを覆う。この蓋部材3は、プラスチック基板11への固着を抑制する観点から、予め焼成処理を施すことによって蓋部材3中のシロキサンが除去されていることが好ましい。
【0101】
(第2の工程)
次に行う第2の工程では、まず、真空引き処理及びスパッタ法による成膜処理を行うことにより、プラスチック基板11の表面にベースコート層12を積層する。このとき、真空引き処理によって、プラスチック基板11と支持基板1との間の気体が、図20に示すように、プラスチック基板11の表面から蓋部材3の一端側を浮き上がらせ、蓋部材3の浮き上がった一端側とプラスチック基板11との間の隙間から外部に排出される。そして、プラスチック基板11と支持基板1との間の気体が外部に排出された後に蓋部材3の浮き上がった一端側がプラスチック基板11に再び接触して貫通孔11aが塞がれる。以降、説明は省略するが、真空引き処理毎に蓋部材3による貫通孔11aの開閉が同様に行われる。
【0102】
続いて、真空引き処理及びスパッタ法による成膜処理を行うことによってベースコート層12の表面にTa膜を積層した後、ドライエッチング処理を含むフォトリソグラフィーによってTa膜をパターニングすることにより、ゲート線(ゲート電極13)を形成する。
【0103】
次に、真空引き処理及びCVD法による成膜処理を繰り返し連続して行うことにより、絶縁膜14、アモルファスシリコン膜等の半導体膜15及びSiNx膜16をベースコート層12、各ゲート線(各ゲート電極13)上に順に積層する。続いて、ウェットエッチング処理を含むフォトリソグラフィーによってSiNx膜16をパターニングすることによってチャネル保護層17を形成する。
【0104】
次に、真空引き処理及びCVD法による成膜処理を行うことによって各チャネル保護層17を覆うようにn+半導体膜18を半導体膜15上に積層した後、ウェットエッチング処理を含むフォトリソグラフィーによって半導体膜15及びn+半導体膜18の双方をパターニングすることにより、半導体層19及びn+半導体層20を形成する。
【0105】
続いて、真空引き処理及びスパッタ法による成膜処理を行うことによって各n+半導体層20を覆うように絶縁膜14にTa膜を積層した後、ドライエッチング処理を含むフォトリソグラフィーによってTa膜をパターニングすることにより、各ソース線(ソース電極21)及び各ドレイン電極22を形成すると共に、チャネル部のn+半導体層20を除去する。
【0106】
次に、真空引き処理及びスパッタ法による成膜処理を行うことによって絶縁膜14上にITO膜を積層した後、ウェットエッチング処理を含むフォトリソグラフィーによってITO膜をパターニングすることにより、各画素電極24を形成する。続いて、真空引き処理及びCVD法による成膜処理を行うことによってSiNx膜を積層した後、ウェットエッチング処理を含むフォトリソグラフィーによってSiNx膜をパターニングすることにより、保護層25を形成する。
【0107】
その後、保護膜25が形成されたプラスチック基板31に、フォトリソグラフィーによって各スペーサを形成した後、印刷法等によって配向膜41を設け、その配向膜41の表面に液晶分子の配向を制御するためのラビング処理を行う。
【0108】
(第3の工程)
その後に行う第3の工程では、上記実施形態1と同様に、各TFT23及び各画素電極24等が形成されたプラスチック基板11のゴムシート2が接着している外縁部を切断することによってプラスチック基板11を支持基板1から分離させる。
【0109】
(対向基板30の作製方法)
対向基板30の作製でも、上記アクティブマトリクス基板の作製と同様に、第1の工程を行う前に、レーザー等によってプラスチック基板31に貫通孔31aを形成する。
【0110】
(第1の工程)
次に、対向基板30の作製における第1の工程でも、上記アクティブマトリクス基板10の作製における第1の工程と同様に、支持基板1にプラスチック基板31を重ねて配置した状態で、枠状のゴムシート2の内縁部をプラスチック基板31の外縁部に接着すると共に、そのゴムシート2の外縁部を支持基板1に接着することにより、プラスチック基板31を支持基板1に支持させる。
【0111】
その後、アクティブマトリクス基板の作製と同様に、図18及び図19に示すように、プラスチック基板11の貫通孔31aを覆うように蓋部材3をプラスチック基板11に貼り付ける。
【0112】
(第2の工程)
次に行う第2の工程では、まず、真空引き処理及びスパッタ法による成膜処理を行うことによってプラスチック基板31にベースコート層32を積層する。次に、ベースコート層32上に印刷法等によって各カラーフィルタ33及びブラックマトリクス層34を形成する。
【0113】
続いて、真空引き処理及びスパッタ法による成膜処理を行うことによって各カラーフィルタ33及びブラックマトリクス層34を覆うようにITO膜を形成した後、ウェットエッチングを含むフォトリソグラフィーによってパターニングすることにより、共通電極35を形成する。その後、印刷法等によって配向膜を設け、その配向膜の表面に液晶分子の配向を制御するためのラビング処理を行う。
【0114】
(第3の工程)
その後に行う第3の工程では、上記実施形態1と同様に、各カラーフィルタ33及び共通電極35等とが形成されたプラスチック基板31におけるゴムシート2が接着している外縁部を切断することによってプラスチック基板31を支持基板1から分離させる。
【0115】
−実施形態2の効果−
したがって、この実施形態2によると、アクティブマトリクス基板10の作製では、第2の工程において真空引き処理を行うよりも前にプラスチック基板11に貫通孔11aを形成した後に、真空引き処理を行ったときにプラスチック基板11と支持基板1との間に介在する気体を貫通孔11aを介して外部に排出させるように構成されたシリコン系ゴムシートである蓋部材3によって貫通孔11aを覆うため、真空引き処理によってプラスチック基板11と支持基板1との間の気体が、図20に示すように、プラスチック基板11の表面から蓋部材3を一部浮き上がらせ、蓋部材3の浮き上がった一部とプラスチック基板11との間の隙間から外部に排出される。そして、プラスチック基板11と支持基板1との間の気体が外部に排出された後は蓋部材3の浮き上がった一部が再びプラスチック基板11に接触して貫通孔11aが塞がれる。蓋部材3におけるプラスチック基板11への接触面は鏡面状に形成されているので、蓋部材3とプラスチック基板11との密着性が高く、後にウェット処理を行ったときに貫通孔11aから処理液が入り込むことを抑制できる。したがって、プラスチック基板11に貫通孔11aを形成する工程及びその貫通孔11を蓋部材3で覆う工程を一度行うだけで、その後に行う各真空引き処理において、プラスチック基板11と支持基板1との間の気体が外部に排出され、プラスチック基板11と支持基板1との間の気体が外部に排出された後に貫通孔11aが自動的に塞がれる。そのことにより、プラスチック基板11に貫通孔11aを形成する工程及びその貫通孔11aを塞ぐ工程の双方を省略できる。その結果、アクティブマトリクス基板10の作製工程の増加を抑制でき、その作製工程において、プラスチック基板11の変形及び支持基板1からの剥離を抑制できると共に、プラスチック基板11と支持基板1との間への処理液の侵入を抑制できる。
【0116】
さらに、蓋部材3の一端側で貫通孔11aを覆うため、蓋部材3が一端側で浮き上がりやすくなり、真空引き処理によってプラスチック基板11と支持基板1との間の気体を確実に外部に排出できる。
【0117】
また、第2の工程が、薄膜が形成されたプラスチック基板11をドライエッチング室に搬入した後にそのドライエッチング室の内部を真空引きする真空引き処理と、その真空引き処理によって真空引きされたドライエッチング室で薄膜をドライエッチングしてパターニングするドライエッチング処理を含むことにより、ドライエッチング室の真空引き処理によってプラスチック基板11と支持基板1との間の気体が外部に排出されるため、ドライエッチング処理において、プラスチック基板11が撓むことを抑制でき、薄膜のエッチングムラを抑制できる。そして、薄膜をウェットエッチングしてパターニングする場合に対して、薄膜を精度良くパターニングできる。
【0118】
また、対向基板30の作製でも、第2の工程において真空引き処理を行うよりも前にプラスチック基板11に貫通孔31aを形成した後に、シリコン系ゴムシートである蓋部材3によって貫通孔31aを覆うため、真空引き処理において、プラスチック基板11と支持基板1との間の気体が外部に排出され、プラスチック基板11と支持基板1との間の気体が外部に排出された後に貫通孔31aが自動的に塞がれる。そのことにより、プラスチック基板11に貫通孔31aを形成する工程及びその貫通孔31aを塞ぐ工程の双方を省略できる結果、対向基板30の作製工程の増加を抑制でき、その作製工程において、プラスチック基板11の変形及び支持基板1からの剥離を抑制できると共に、プラスチック基板11と支持基板1との間への処理液の侵入を抑制できる。
【0119】
ところで、アクティブマトリクス基板10及び対向基板30の作製において、第1の工程の後にプラスチック基板11,31に貫通孔11a,31aを形成する場合には、プラスチック基板11,31に貫通孔11a,31aを形成する際にプラスチック基板11,31を支持している支持基板1を損傷させやすい。これに対して、第1の工程よりも前にプラスチック基板11,31に貫通孔11a,31aを形成することにより、プラスチック基板11,31に貫通孔11a,31aを形成した後にプラスチック基板11,31を支持基板1に支持させるため、支持基板1の損傷を抑制できる。これによって、支持基板1を再利用できる。
【0120】
《その他の実施形態》
上記実施形態では、プラスチック基板11,31に貫通孔11a,31aを形成してその貫通孔11a,31aを介してプラスチック基板11,31と支持基板1との間の気体を外部に排出するとしたが、図21及び図22に示すように、プラスチック基板11におけるゴムシート2が接着する領域の一部に微細な凹凸が形成された粗面領域5を設けてもよい。この粗面領域5は、プラスチック基板11におけるゴムシート2の幅方向の一部が接着する領域にサンドブラスト等によって設ける。
【0121】
このようにすれば、プラスチック基板11の粗面領域5では、プラスチック基板11とゴムシート2との接着力が低下するため、真空引き処理を行ったときに、図23に示すように、プラスチック基板11からゴムシート2の一部が剥離して、剥離したゴムシート2の一部とプラスチック基板11との隙間からプラスチック基板11と支持基板1との間の気体が外部に排出される。そのことにより、成膜処理及びドライエッチング処理においてプラスチック基板11の撓みが抑制される。そして、プラスチック基板11と支持基板1との間の気体が外部に排出された後はゴムシート2が再び支持基板1に接触する。ゴムシート2の支持基板1への接触面は鏡面状に形成されていることにより、支持基板1における粗面領域5を除く領域とゴムシート2との密着性は比較的高いため、後にウェット処理を行ったとしても、ゴムシート2の周縁からプラスチック基板11と支持基板1との間に処理液が入り込むことを抑制できる。したがって、真空引き処理の前に貫通孔11aを形成する工程及びその貫通孔11aをウェット処理の前に塞ぐ工程の双方を省略することが可能になる。また、プラスチック基板31についても同様に、図中に示すように、プラスチック基板31におけるゴムシート2が接着する領域の一部に粗面領域5を設けてもよい。
【0122】
上記実施形態1では、アクティブマトリクス基板10及び対向基板30の双方がプラスチック基板11,31を有しているとしたが、本発明はこれに限られず、アクティブマトリクス基板10及び対向基板30の少なくとも一方がプラスチック基板を有していればよい。
【0123】
上記実施形態1では、アクティブマトリクス基板10及び対向基板30をそれぞれ単体で形成する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、アクティブマトリクス基板10及び対向基板30をそれぞれ複数枚形成可能な大きさのプラスチック母基板を用いて形成してもよい。すなわち、アクティブマトリクス基板10を複数枚形成可能な大きさのプラスチック母基板に複数の薄膜をパターン形成することによってアクティブマトリクス母基板を形成した後、そのアクティブマトリクス母基板を所定の大きさに分断することにより、複数のアクティブマトリクス基板10を形成してもよい。また、対向基板30を複数枚形成可能な大きさのプラスチック母基板に複数の薄膜をパターン形成することによって対向母基板を形成した後、対向母基板を所定の大きさに分断することにより、複数の対向基板30を形成してもよい。
【0124】
上記実施形態1では、弾性部材はシリコン系ゴムシート2であるとしたが、本発明はこれに限られず、弾性部材はポリテトラフルオロエチレン系ゴムシート等であってもよい。特に、ポリテトラフルオロエチレン系ゴムシートにおけるプラスチック基板11(31)及び支持基板1を接着する表面が、鏡面状に形成されている場合には、上記実施形態1と同様に、接着剤を用いることなく、ポリテトラフルオロエチレン系ゴムシートをプラスチック基板11(31)及び支持基板1に接着することができる。また、その他に、弾性部材は、弾性を有し、製造工程において、プラスチック基板11(31)を支持基板1に支持させた状態を維持することができる強度を有するものであればよい。
【0125】
上記実施形態では、対向基板30に各カラーフィルタ33が形成されているとしたが、本発明はこれに限られず、液晶表示装置Sは、アクティブマトリクス基板10に各カラーフィルタ33が形成された、いわゆるCOA(Color filter On Array)構造を有していてもよい。
【0126】
上記実施形態1では、それぞれプラスチック基板11,31に複数の薄膜が積層されたアクティブマトリクス基板10及び対向基板30を有する液晶表示装置Sについて説明したが、本発明はこれに限られず、エレクトロルミネッセンス表示装置、プラズマ表示装置、エレクトロクロミック表示装置及びフィールドエミッションディスプレイ等の表示装置の製造方法として適用することが可能であり、プラスチック基板に複数の薄膜が積層された構造を有するデバイスを製造する方法として適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0127】
以上説明したように、本発明は、薄膜積層デバイスの製造方法及び液晶表示装置の製造方法について有用であり、特に、製造工程の増加を抑制して、製造工程において、プラスチック基板の変形及び支持基板からの剥離を抑制すると共に、プラスチック基板と支持基板との間への処理液の侵入を抑制することが要望される薄膜積層デバイスの製造方法及び液晶表示装置の製造方法に適している。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【図1】液晶表示装置を概略的に示す断面図である。
【図2】アクティブマトリクス基板の一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【図3】対向基板の一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【図4】支持基板に支持された状態のプラスチック基板を概略的に示す平面図である。
【図5】図4のV−V線断面を概略的に示す図である。
【図6】プラスチック基板及び支持基板にゴムシートを接着する接着処理室を概略的に示す断面図である。
【図7】貫通孔が形成された状態のプラスチック基板を概略的に示す平面図である。
【図8】蓋部材によって貫通孔を覆った状態のプラスチック基板を概略的に示す平面図である。
【図9】図8のIX−IX線断面を概略的に示す図である。
【図10】ゲート電極が形成された状態のプラスチック基板の一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【図11】チャネル保護層を形成するためのSiNx膜が形成された状態のプラスチック基板の一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【図12】n+半導体膜が形成された状態のプラスチック基板の一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【図13】半導体層及びn+半導体層が形成されたプラスチック基板の一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【図14】ソース電極及びドレイン電極が形成された状態のプラスチック基板の一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【図15】保護層が形成された状態のプラスチック基板の一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【図16】アクティブマトリクス基板(対向基板)を支持基板から分離させた状態を概略的に示す断面図である。
【図17】共通電極が形成された状態のプラスチック基板の一部を概略的に示す断面図である。
【図18】実施形態2の蓋部材によって貫通孔を覆った状態のプラスチック基板を概略的に示す平面図である。
【図19】図18のXIX-XIX線断面を概略的に示す図である。
【図20】真空引き処理時の蓋部材を概略的に示す断面図である。
【図21】その他の実施形態において、プラスチック基板を支持基板に支持させた状態を示す平面図である。
【図22】図21のXXII-XXII線断面を概略的に示す図である。
【図23】真空引き処理時のゴムシートを概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0129】
S 液晶表示装置
1 支持基板
2 シリコン系ゴムシート(弾性部材)
3 蓋部材
10 アクティブマトリクス基板
30 対向基板
11,31 プラスチック基板
11a,31a 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板にプラスチック基板を重ねて配置した状態で、枠状の弾性部材の内縁部を上記プラスチック基板の外縁部に接着すると共に、上記弾性部材の外縁部を上記支持基板に接着することにより、上記プラスチック基板を上記支持基板に支持させる第1の工程と、
上記支持基板に支持させたプラスチック基板を処理室に搬入した後に該処理室の内部を真空引きする真空引き処理と、該真空引き処理によって真空引きされた処理室で上記プラスチック基板に薄膜を形成する成膜処理と、該薄膜が形成されたプラスチック基板を処理液によって処理するウェット処理とを行って、上記プラスチック基板に上記薄膜をパターニングする第2の工程と、
上記薄膜がパターニングされた上記プラスチック基板を上記支持基板から分離させる第3の工程とを含む薄膜積層デバイスの製造方法であって、
上記真空引き処理よりも前に上記プラスチック基板に貫通孔を形成した後に、上記真空引き処理を行ったときに上記プラスチック基板と上記支持基板との間に介在する気体を上記貫通孔を介して外部に排出させるように構成された蓋部材によって上記貫通孔を覆う
ことを特徴とする薄膜積層デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の薄膜積層デバイスの製造方法において、
上記蓋部材は、未硬化の熱硬化性樹脂である
ことを特徴とする薄膜積層デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の薄膜積層デバイスの製造方法において、
上記第2の工程は、上記薄膜が形成されたプラスチック基板をドライエッチング室に搬入した後に該ドライエッチング室の内部を真空引きする真空引き処理と、該真空引き処理によって真空引きされたドライエッチング室で上記薄膜をドライエッチングしてパターニングするドライエッチング処理とを含み、
上記ドライエッチング室の真空引き処理よりも前に、上記プラスチック基板に上記貫通孔を形成する
ことを特徴とする薄膜積層デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の薄膜積層デバイスの製造方法において、
上記蓋部材は、上記プラスチック基板に対する接触面が鏡面状に形成されたゴムシートである
ことを特徴とする薄膜積層デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の薄膜積層デバイスの製造方法において、
上記蓋部材の一端側で上記貫通孔を覆う
ことを特徴とする薄膜積層デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の薄膜積層デバイスの製造方法において、
上記第2の工程は、上記薄膜が形成されたプラスチック基板をドライエッチング室に搬入した後に該ドライエッチング室の内部を真空引きする真空引き処理と、該真空引き処理によって真空引きされたドライエッチング室で上記薄膜をドライエッチングしてパターニングするドライエッチング処理とを含む
ことを特徴とする薄膜積層デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項4に記載の薄膜積層デバイスの製造方法において、
上記第1の工程よりも前に、上記プラスチック基板に上記貫通孔を形成する
ことを特徴とする薄膜積層デバイスの製造方法。
【請求項8】
支持基板にプラスチック基板を重ねて配置した状態で、枠状の弾性部材の内縁部を上記プラスチック基板の外縁部に接着すると共に、上記弾性部材の外縁部を上記支持基板に接着することにより、上記プラスチック基板を上記支持基板に支持させる第1の工程と、
上記支持基板に支持させたプラスチック基板を処理室に搬入した後に該処理室の内部を真空引きする真空引き処理と、該真空引き処理によって真空引きされた処理室で上記プラスチック基板に薄膜を形成する成膜処理と、該薄膜が形成されたプラスチック基板を処理液によって処理するウェット処理とを行って、上記プラスチック基板に上記薄膜をパターニングする第2の工程と、
上記薄膜がパターニングされた上記プラスチック基板を上記支持基板から分離させる第3の工程とを含む液晶表示装置の製造方法であって、
上記真空引き処理よりも前に上記プラスチック基板に貫通孔を形成した後に、上記真空引き処理を行ったときに上記プラスチック基板と上記支持基板との間に介在する気体を上記貫通孔を介して外部に排出させるように構成された蓋部材によって上記貫通孔を覆う
ことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−177090(P2009−177090A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16757(P2008−16757)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】